IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒラノ技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-テンター装置 図1
  • 特許-テンター装置 図2
  • 特許-テンター装置 図3
  • 特許-テンター装置 図4
  • 特許-テンター装置 図5
  • 特許-テンター装置 図6
  • 特許-テンター装置 図7
  • 特許-テンター装置 図8
  • 特許-テンター装置 図9
  • 特許-テンター装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】テンター装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/08 20060101AFI20240105BHJP
   B29C 55/20 20060101ALI20240105BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20240105BHJP
   B29C 55/16 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B29C55/08
B29C55/20
B29C55/14
B29C55/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020074972
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021171937
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390002015
【氏名又は名称】ヒラノ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 孝史
(72)【発明者】
【氏名】和田 繁紀
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-264647(JP,A)
【文献】特開2000-354700(JP,A)
【文献】特開2011-025598(JP,A)
【文献】特開2017-002478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを拡布状態で前後方向に走行させるために、前記フィルムの左右両側に配された左右一対の無端状のテンターチェーンが、左右一対の駆動スプロケットと左右一対の従動スプロケットの間にそれぞれ架け渡され、
左右一対の前記従動スプロケットは、前記前後方向に沿って移動できるように左右一対のエアーシリンダのピストンロッドにそれぞれ取り付けられ、
前記エアーシリンダの内部は、ピストンを境に前記ピストンロッドが配されていない第1空間と前記ピストンロッドが配された第2空間に仕切られ、
前記テンターチェーンを張った状態を維持するために、前記エアーシリンダの前記第1空間に圧縮空気を送って前記ピストンにテークアップ圧力をかけ、
前記テンターチェーンを緩めて、その長さを縮めるときは、前記エアーシリンダの前記第1空間に送る圧縮空気の圧力を減分圧力値だけ下げて、前記ピストンに前記減分圧力値だけ下がった前記テークアップ圧力をかけると共に、前記第2空間に前記圧縮空気を送り前記ピストンに、前記テークアップ圧力の強さ以上で、かつ、1秒より短いパルス幅を有するパルス状の背圧をかける、
テンター装置。
【請求項2】
前記テンターチェーンを張って、その長さを伸ばすときは、前記エアーシリンダの前記第1空間に送る前記圧縮空気の圧力を増分圧力値だけ上げて、前記ピストンに前記増分圧力値だけ上がった前記テークアップ圧力をかける、
請求項1に記載のテンター装置。
【請求項3】
左側の前記従動スプロケットの前後方向の位置を測定する左センサと、
右側の前記従動スプロケットの前後方向の位置を測定する右センサと、
前記左センサ、又は、前記右センサのどちらか一方の前記センサが測定した位置を基準として、他方の前記センサが測定した位置との偏差が、プラス基準偏差より大きくなったときは前記テンターチェーンを緩め、前記偏差が、マイナス基準偏差より小さくなったときは前記テンターチェーンを張る、
請求項2に記載のテンター装置。
【請求項4】
前記テンターチェーンを緩めるときに、前記偏差が前記プラス基準偏差より小さくなるまで、前記テークアップ圧力を所定時間毎に前記減分圧力値ずつ段階的に下げると共に、前記減分圧力値ずつ段階的に下げる毎に前記背圧をかける、
請求項に記載のテンター装置。
【請求項5】
前記テンターチェーンを張るときに、前記偏差が前記マイナス基準偏差より大きくなるまで、前記テークアップ圧力を所定時間毎に前記増分圧力値ずつ段階的に上げる、
請求項に記載のテンター装置。
【請求項6】
前記エアーシリンダの前記第1空間に前記圧縮空気を送って前記テークアップ圧力をかけるメイン回路と、
前記エアーシリンダの前記第2空間に前記圧縮空気を送って前記背圧をかける背圧回路と、
を有する請求項1に記載のテンター装置。
【請求項7】
前記メイン回路は、前記テークアップ圧力を調整する電空レギュレータと、前記第1空間に前記圧縮空気を送り前記テークアップ圧力をかけたり、前記第1空間に前記圧縮空気を送るのを停止したりする電磁弁を有し、
前記背圧回路は、前記第2空間に前記圧縮空気を送り前記背圧をかけたり、前記第2空間に前記圧縮空気を送るのを停止したりする電磁弁を有する、
請求項に記載のテンター装置。
【請求項8】
前記テンターチェーンには、前記フィルムを支持するクリップ、又は、ピンが所定間隔毎に設けられている、
請求項1に記載のテンター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを左右対称に幅方向に延伸させるテンター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルムを左右対称に延伸させるためにテンター装置が使用されている。しかし、左右一対のテンターチェーンの間にフィルムを拡布状態で張設し、走行させていると、一方のテンターチェーンの長さが他方のテンターチェーンの長さより延びたり縮んだりすると、左右対称の位置にあるクリップやピンの位置がずれて、フィルムを左右対称に延伸できなくなる。
【0003】
そこで従来、左右のクリップやピンの位置が左右対称になるように、左右のテンターチェーンの長さを左右の従動スプロケットのそれぞれの位置を移動させて調整できるテンター装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5230523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記テンター装置において、テンターチェーンの長さを縮ませるときに、エアーシリンダによって従動スプロケットの位置を駆動スプロケット側に移動させても、テンターチェーンの長さが迅速に縮まないという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、テンターチェーンの長さを迅速に縮めることができるテンター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フィルムを拡布状態で前後方向に走行させるために、前記フィルムの左右両側に配された左右一対の無端状のテンターチェーンが、左右一対の駆動スプロケットと左右一対の従動スプロケットの間にそれぞれ架け渡され、左右一対の前記従動スプロケットは、前記前後方向に沿って移動できるように左右一対のエアーシリンダのピストンロッドにそれぞれ取り付けられ、前記エアーシリンダの内部は、ピストンを境に前記ピストンロッドが配されていない第1空間と前記ピストンロッドが配された第2空間に仕切られ、前記テンターチェーンを張った状態を維持するために、前記エアーシリンダの前記第1空間に圧縮空気を送って前記ピストンにテークアップ圧力をかけ、前記テンターチェーンを緩めて、その長さを縮めるときは、前記エアーシリンダの前記第1空間に送る圧縮空気の圧力を減分圧力値だけ下げて、前記ピストンに前記減分圧力値だけ下がった前記テークアップ圧力をかけると共に、前記第2空間に前記圧縮空気を送り前記ピストンに、前記テークアップ圧力の強さ以上で、かつ、1秒より短いパルス幅を有するパルス状の背圧をかける、テンター装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、テンターチェーンの長さを縮めるときは、エアーシリンダの第1空間のテークアップ圧力を減分圧力値だけ下げると共に、エアーシリンダの第2空間からピストンに背圧をかけることにより、エアーシリンダのピストンが、テンターチェーンの長さを縮める方向に迅速に移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のテンター装置の平面図である。
図2】テンター装置の右側の搬入口の平面拡大図である。
図3】テンター装置の右側の搬入口の側部拡大図である。
図4】テンター装置の右側の搬入口側から見た一部切欠き拡大図である。
図5】テンター装置の配管の回路図である。
図6】テンター装置のブロック図である。
図7】右テンターチェーンの長さの制御方法を示すフローチャートである。
図8】右テンターチェーンを張るときのタイムチャートであって、(a)が偏差を示し、(b)がテークアップ圧力を示している。
図9】右テンターチェーンを緩めるときのタイムチャートであり、(a)が偏差を示し、(b)がテークアップ圧力を示し、(c)が背圧を示している。
図10】背圧を架けるときのシングル電磁弁138Rとシングル電磁弁142Rのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態のテンター装置10について図1図10を参照して説明する。本実施形態のテンター装置10は、例えば、光学系フィルム、位相差フィルム、二次電池系フィルム、又は、太陽電池系フィルムなどの熱可塑性樹脂のフィルムFを左右対称に延伸して熱処理するものである。なお、本明細書において、「前後方向」とは、テンター装置10におけるフィルムFの搬入口側から搬出口側に向かう走行方向を意味し、「左右方向」とはフィルムFの幅方向を意味する。
【0011】
(1)テンター装置10
テンター装置10について図1図4を参照して説明する。テンター装置10は、フィルムFを左右対称に延伸するものであり、左右一対のテンターチェーン12,14を有している。左テンターチェーン12は、左従動スプロケット16と左駆動スプロケット18に架け渡された無端チェーンであり、右テンターチェーン14は、右従動スプロケット20と右駆動スプロケット22との間に架け渡された無端チェーンである。左従動スプロケット16と右従動スプロケット20は、フィルムFの搬入口側に配され、左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22はフィルムFの搬出口側に配されている。
【0012】
このテンター装置10は、クリップテンター装置であり、左右一対のテンターチェーン12,14には、所定間隔毎にクリップ60がそれぞれ設けられ、各クリップ60は、フィルムFの左右両側部(両耳部)を挟持しながら、左右一対のテンターレール24,26に沿って移動する。この場合にフィルムFを左右対称に延伸するために、左右一対のクリップ60,60は、左右対称の位置を移動する。
【0013】
左テンターレール24と右テンターレール26はテンター台28の上に設置されている。搬出口側にある左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22は、前後方向に移動しないようにテンター台28の上に固定されている。左駆動スプロケット18は左モータ52によって回転し、右駆動スプロケット22は右モータ54によって回転する。
【0014】
左右一対のテンターチェーン12,14の間隔は、搬入口から搬出口に向かって拡がるように設置され、この拡がりによってフィルムFを左右対称に延伸させる。
【0015】
テンター装置10によって搬送されるフィルムFを加熱処理するための熱処理室30が、テンター装置10の経路上に設けられている。この熱処理室30内部を左右一対のテンターチェーン12,14が走行し、フィルムFの走行路の上下に不図示のノズルが配され、フィルムFに対し熱風を噴射して熱処理して左右対称に拡げる。
【0016】
そして、テンター装置10を制御する制御部50が、設けられている。
【0017】
(2)左従動スプロケット16、右従動スプロケット20
左従動スプロケット16、右従動スプロケット20について説明する。まず、右従動スプロケット20について図1図4を参照して説明する。なお、本明細書において、左右対称の部材については、部材の符号の後に左側は「L」、右側は「R」を付ける。
【0018】
右テンターチェーン14を移動させるための右従動スプロケット20は、水平に配された板状の右スライド部32Rの上面から垂直に立設された回転軸56Rに、回転自在に取り付けられている。
【0019】
右スライド部32Rは、水平に配された板状の右幅移動台34Rに取り付けられている。具体的には、右幅移動台34Rの中央部には、前後方向に貫通したスライド孔36Rが開口し、このスライド孔36Rの左右両側部にはそれぞれスライド溝38Rが設けられている。この左右一対のスライド溝38Rに板状の右スライド部32Rの左右両側部が嵌め込まれ、右スライド部32Rは、スライド孔36Rに沿って前後方向に移動自在となっている。
【0020】
右スライド部32Rの搬出口側の一端には、下方に突出した突出片40Rが設けられている。この突出片40Rは、右幅移動台34Rの下面よりさらに下方に突出している。
【0021】
右幅移動台34Rの下面であって、スライド孔36Rよりも搬出口側の位置には、右エアーシリンダ128Rが水平方向に取り付けられている。この右エアーシリンダ128Rのピストンロッド132Rは、搬入口側に向かって前後方向で、かつ、水平に伸縮する。このピストンロッド132Rの先端部は、突出片40Rに固定されている。これにより、右エアーシリンダ128Rのピストンロッド132Rが伸縮すると、右スライド部32Rがスライド孔36Rに沿って前後方向に移動する。右エアーシリンダ128Rの押圧力(以下、「テイクアップ圧力」という)によって右従動スプロケット20が搬入口側に押圧され、右テンターチェーン14が架け渡されているので搬出口側に右従動スプロケット20が引っ張られ、これら両者の力のバランスが取れた位置で、右スライド部32Rは停止している。
【0022】
右幅移動台34Rの下面の搬入口側の右端部には、車輪62Rが取り付けられ、左端部には車輪64Rが取り付けられている。また、右幅移動台34Rの搬入口側の下方には、車輪台66が左右方向に設けられ、この車輪台66はテンター台28に固定されている。車輪62、車輪64は、車輪台66の上を移動する。
【0023】
右幅移動台34Rの下面から、取付け部68Rが垂設され、この取付け部68Rの下端には移動体72Rが設けられている。移動体72Rには、水平方向で、かつ、左右方向に貫通したネジ孔70Rが開口している。移動体72Rの下方には、ネジ台74が設けられ、このネジ台74の上にはネジレール76が水平、かつ、左右方向に設けられている。そして、移動体72Rは、このネジレール76の上を左右方向に移動する。ネジ台74の上面には、ネジ棒支持部80Rとネジ棒支持部82Rが設けられ、ネジ台74の右端部はテンター台28に固定されている。
【0024】
ネジ台74の上方には、ネジ棒78Rが回転自在に左右方向に配され、このネジ棒78Rは移動体72Rのネジ孔70Rに螺合する。ネジ棒78Rの右側は回転自在にネジ棒支持部80Rに支持され、ネジ棒78Rの左側はネジ棒支持部82Rに回転自在に支持され、さらにネジ棒78Rの右端部はテンター台28を貫通し、その先端にハンドル84Rが取り付けられている。これにより、作業員がハンドル84Rを回転させるとネジ棒78Rが回転し、それと共にネジ孔70Rを有した移動体72Rが左右方向に移動し、右幅移動台34Rが左右方向に移動する。このとき、車輪62Rと車輪64Rが車輪台66の上を移動し、右幅移動台34Rは左右方向にスムーズに移動できる。
【0025】
右幅移動台34Rの搬入口側には、右幅移動台34Rと独立したセンサ台86が設けられ、このセンサ台86の上面にはセンサレール88が設けられている。このセンサレール88には、右センサ42Rが設けられ、センサレール88に沿って左右方向に移動できる。この右センサ42Rを移動させる理由は、ハンドル84Rで右幅移動台34Rを移動させた場合に、それと共に右センサ42Rを追随して移動させる必要があるからである。
【0026】
右センサ42Rは、磁歪式直線変位センサよりなる。磁歪式直線変位センサとは、磁歪効果(ウィーデマン効果)を利用して磁歪棒の周囲にある測定用マグネットの位置を測定するセンサである。センサ台86に設けられたセンサ本体44Rから磁歪棒46Rが水平に突出し、右スライド部32Rの底面から測定用マグネット48Rが突出している。そして、右テンターチェーン14が熱処理室30の熱などによって延びると、右従動スプロケット20が取り付けられた右スライド部32Rの測定用マグネット48Rが、磁歪棒46Rの周囲を直線状に移動し、右テンターチェーン14の延びた長さと縮んだ長さを測定できる。
【0027】
右駆動スプロケット22を回転自在に支持する駆動側右移動台90Rは、上記したように前後方向は固定されているが、左右方向に移動可能となっている。この構造は、右幅移動台34Rを移動させるのと同様に、図1に示すように駆動側右移動台90Rの下面に取り付けられた不図示の移動体に不図示のネジ孔が左右方向に貫通し、このネジ孔を左右方向に貫通するネジ棒94Rをハンドル92Rで回転させることにより、駆動側右移動台90Rは、左右方向に移動可能となっている。
【0028】
左従動スプロケット16と左駆動スプロケット18も、右従動スプロケット20と右駆動スプロケット22の取付け構造と左右対称の構造を有している。車輪台66、ネジ台74、センサ台86は、左右共用であり、車輪台66、ネジ台74の右側に右幅移動台34Rが配され、左側に左幅移動台34Lが配され、また、センサ台86の右側には右センサ42Rが配され、左側には左センサ42Lが配されている。
【0029】
なお、右エアーシリンダ128Rの押圧力は、後から説明する右電空レギュレータ118Rによって調整され、左エアーシリンダ128Lの押圧力は、左電空レギュレータ118Lによって調整される。
【0030】
以上の構造により、左右一対のハンドル84L、84Rを操作することにより、左右一対の左幅移動台34Lと右幅移動台34Rが、左右方向に移動して搬入口におけるウエブFの拡張幅を調整できる。また、左右一対のハンドル92L、92Rを操作することにより、左右一対の駆動側右移動台90L、90Rが、左右方向に移動して搬出口におけるウエブFの拡張幅を調整できる。
【0031】
(3)配管の回路100の構成
次に、テンター装置10における左エアーシリンダ128Lと右エアーシリンダ128Rを動作させるための配管の回路100について図5を参照して説明する。
【0032】
図5に示すように、回路100は、圧縮空気を供給するポンプ102を有し、このポンプ102には、左メイン回路104、右メイン回路106、左背圧回路108、右背圧回路110が並列に接続され、ポンプ102から各回路104~110に圧縮空気が送られる。
【0033】
具体的には、図5に示すように、ポンプ102から出た管は分岐され、一方は増圧弁112、ミストセパレータ114を経てさらに分岐され左メイン回路104と右メイン回路106に接続されており、増圧弁112で増圧されミストセパレータ114で水分がなくなった圧縮空気がそれぞれ送られる。他方は、減圧弁116を経てさらに分岐され、左背圧回路108と右背圧回路110とに接続され、減圧弁116で減圧された圧縮空気がそれぞれ送られる。
【0034】
左メイン回路104について図5を参照して説明する。左メイン回路104は、左電空レギュレータ118L、ダブル電磁弁120L、圧力スイッチ122L、スピードコントローラ126Lから構成されている。上記したミストセパレータ114から分岐した管は、左電空レギュレータ118Lを経てダブル電磁弁120Lの入口に接続されている。左電空レギュレータ118Lは、送られてきた圧縮空気の圧力を調整するものであり、図6に示す制御部50の制御によって、基準圧力TL(MPa)に制御すると共に、基準圧力TL(MPa)から増分圧力値ΔTL1(MPa)上げたり、減分圧力値ΔTL2(MPa)下げたりする。ダブル電磁弁120Lの第1接続口から出た管は、安全用の圧力スイッチ122Lを経てスピードコントローラ126Lに接続され、左エアーシリンダ128Lの第1空間134Lに接続されている。左エアーシリンダ128Lは、ピストン130Lを境に第1空間134Lと第2空間136Lに仕切られ、ピストン130Lからはピストンロッド132Lが突出し、このピストンロッド132Lは、第2空間136Lを貫通している。
【0035】
左背圧回路108について図5を参照して説明する。左背圧回路108は、シングル電磁弁138Lとスピードコントローラ140Lとシングル電磁弁142Lから構成されている。
【0036】
上記した減圧弁116から分岐した管は、シングル電磁弁138Lの入口に接続されている。シングル電磁弁138Lの出口に接続された管は、スピードコントローラ140Lを介して左エアーシリンダ128Lの第2空間136Lに接続されている。シングル電磁弁138Lは、OFF状態で入口と出口を遮断し、ON状態で入口から出口に圧縮空気を送れるように開通する。また、シングル電磁弁138Lの出口から出た管は分岐し、シングル電磁弁142Lの入口に接続されている。シングル電磁弁142Lの出口はダブル電磁弁120Lの第2接続口に接続されている。シングル電磁弁142Lは、OFF状態で入口と出口を開通して両方向から圧縮空気を送れるようにし、ON状態で入口と出口を遮断する。
【0037】
ダブル電磁弁120Lについて説明する。
【0038】
ダブル電磁弁120LがOFF状態において、シングル電磁弁138L、シングル電磁弁142LもOFF状態である。左電空レギュレータ118Lの第2接続口から出た圧縮空気は、OFF状態のシングル電磁弁142L、スピードコントローラ140Lを経て左エアーシリンダ128Lの第2空間136Lに送られる。左エアーシリンダ128Lの第1空間134L内の圧縮空気は、スピードコントローラ126Lを経て、ダブル電磁弁120Lの第1接続口から入りサイレンサから排気される。なお、このときには、シングル電磁弁138Lは、OFF状態で入口と出口は遮断されている。
【0039】
次に、ダブル電磁弁120LがON状態であって、シングル電磁弁138L、シングル電磁弁142LもOFF状態のときがある。このときは左電空レギュレータ118Lからの圧縮空気はダブル電磁弁120Lの入口から入り第1接続口から出て、スピードコントローラ126Lを経て左エアーシリンダ128Lの第1空間134Lに送られ、ピストン130Lが張り側に移動するように圧力をかける。この圧力(押圧力)が上記した「テークアップ圧力」である。また、シングル電磁弁138Lは、OFF状態で入口と出口は遮断され、シングル電磁弁142Lは、OFF状態で入口と出口は開通して、第2空間136Lの圧縮空気は、ダブル電磁弁120Lの第2接続口から入りサイレンサから排気される。
【0040】
次に、ダブル電磁弁120LがON状態であって、シングル電磁弁138L、シングル電磁弁142Lが共にON状態のときがある。このときは左電空レギュレータ118Lからの圧縮空気はダブル電磁弁120Lの入口から入り第1接続口から出て、スピードコントローラ126Lを経て左エアーシリンダ128Lの第1空間134Lに送られ、ピストン130Lが張り側に移動するようにテークアップ圧力をかける。また、シングル電磁弁138LはON状態であるため、入口から出口に圧縮空気を送り、スピードコントローラ140Lを経て左エアーシリンダ128Lの第2空間136Lに圧力をかけて、ピストン130Lを緩み側に移動させる。以下、この圧力を「背圧」という。背圧の強さとしては、テークアップ圧力と同じ強さか、又は、それ以上の強さであり、例えば、テークアップ圧力の2倍を最大とする。なお、背圧をかけるときはシングル電磁弁142LもON状態であるので、入口と出口は遮断されている。
【0041】
右メイン回路106と右背圧回路110も、左メイン回路104と同様の構成を有し、右電空レギュレータ118R、ダブル電磁弁120R、圧力スイッチ122R、スピードコントローラ126Rを経て、右エアーシリンダ128Rの第1空間134Rに接続されている。右エアーシリンダ128Rは、ピストン130R、ピストンロッド132Rを有し、ピストン130Rによって第1空間134Rと第2空間136Rに仕切られている。
【0042】
なお、スピードコントローラ126L、140Lは、左エアーシリンダ128Lの動作速度を調節する空圧機器である。流れる空気の量を調節して速度を制御する役割を持ち、空気が流れれば速く動作し、少なければゆっくりと動作する。また、安全用の圧力スイッチ122Lは、左エアーシリンダ128Lに送られる圧縮空気の圧力が許容値を超えた場合にはOFF状態となる。
【0043】
右背圧回路110も同様にシングル電磁弁138R、スピードコントローラ140R、シングル電磁弁142Rを有し、右エアーシリンダ128Rの第2空間136Rに接続されている。
【0044】
(4)テンター装置10の電気的構成
テンター装置10の電気的構成について図6のブロック図を参照して説明する。
【0045】
コンピュータよりなる制御部50には、左駆動スプロケット18を駆動させる左モータ52、右駆動スプロケット22を駆動させる右モータ54、ポンプ102が接続されている。
【0046】
また、制御部50には、左エアーシリンダ128Lを駆動させるための左メイン回路104の左電空レギュレータ118L、ダブル電磁弁120L、圧力スイッチ122L、スピードコントローラ126Lが接続され、左背圧回路108のシングル電磁弁138L、シングル電磁弁142L、スピードコントローラ140Lが接続されている。
【0047】
また、制御部50には、右メイン回路106の右電空レギュレータ118R、ダブル電磁弁120R、圧力スイッチ122R、スピードコントローラ126Rが接続され、右背圧回路110のシングル電磁弁138R、シングル電磁弁142R、スピードコントローラ140Rが接続されている。
【0048】
また、制御部50には、左センサ42Lと右センサ42Rが接続されている。制御部50は左センサ42Lが測定した左テンターチェーン12の伸びた長さ、又は、縮んだ長さを基準として、右センサ42Rが測定した右テンターチェーン14の伸びた長さ、又は、縮んだ長さとの偏差sを算出する。この右テンターチェーン14の伸びた長さ、又は、縮んだ長さの偏差sの許容範囲を、マイナス基準偏差(例えば、-0.1mm)<0<プラス基準偏差(例えば、0.1mm)とする。
【0049】
制御部50は、左センサ42Lの測定した長さを基準にして、右センサ42Rが測定した長さとの偏差sがマイナス基準偏差(例えば、-0.1mm)より小さくなった場合は、右テンターチェーン14の長さが、左テンターチェーン12の長さがより縮んだとする。
【0050】
一方、制御部50は、左センサ42Lの測定した長さを基準にして、右センサ42Rが測定した長さとの偏差sがプラス基準偏差(例えば、0.1mm)より大きくなった場合には、右テンターチェーン14の長さが、左テンターチェーン12の長さよりも伸びたとする。
【0051】
(5)テンター装置10の動作状態
テンター装置10の動作状態について説明する。図1に示すように、熱処理室30の内部のノズルから熱風を吹き出し、熱処理室30の内部を150℃~190℃に設定する。左右一対のテンターチェーン12,14の間に、左右一対のクリップ60,60によってフィルムFを左右対称に拡布し、左モータ52と右モータ54によって左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22を駆動し、フィルムFを1~60m/分で前後方向に搬入口から搬出口に走行させる。これによって、フィルムFが熱処理されて幅方向に左右対称に延伸し、目的のフィルムFを製造できる。
【0052】
しかし、フィルムFの製造を行っていると、熱処理室30の熱などによって左テンターチェーン12と右テンターチェーン14の長さが伸びたり縮んだりして、左右のクリップ60,60の位置が左右対称の位置からずれてくる。左右対称の位置からずれてくると、フィルムFが左右対称に延伸されず不良品となる。そこで制御部50は、左センサ42Lと右センサ42Rの測定結果に基づいて、左右のクリップ60,60の位置が左右対称の位置になるように所定時間毎(例えば、10秒毎)にフィードバック制御を行う。このフィードバック制御方法について説明する。
【0053】
(6)左テンターチェーン12と右テンターチェーン14とのバランスが取れている場合
まず、左テンターチェーン12と右テンターチェーン14の長さが同じであり左右一対のクリップ60,60が左右対称の位置にあってバランスが取れている場合についての制御方法について説明する。
【0054】
右センサ42Rの測定した右テンターチェーン14の長さと、左センサ42Lの測定した左テンターチェーン12の長さは等しいため、偏差s=0である。
【0055】
図5に示すように、制御部50は、ポンプ102によって一定の圧力で圧縮空気を送り出し、増圧弁112とミストセパレータ114を経て左メイン回路104と右メイン回路106に圧縮空気を送り込む。このときにダブル電磁弁120Lとダブル電磁弁120Rは、共にON状態である。左メイン回路104の左電空レギュレータ118Lと右メイン回路106の右電空レギュレータ118Rを制御して、左エアーシリンダ128Lの第1空間134Lと右エアーシリンダ128Rの第1空間134Rに基準圧力TL、TRでテークアップ圧力をかける。但し、TL=TRであり、例えば、0.35MPaである。
【0056】
基準圧力TL、TRのテークアップ圧力によって、ピストン130Lの左従動スプロケット16とピストンロッド132Rの右従動スプロケット20が同じ位置で、左テンターチェーン12と右テンターチェーン14とを同じテンションで張ることができる。
【0057】
なお、左背圧回路108は、シングル電磁弁138LがOFF状態となるため、ポンプ102からの圧縮された空気はスピードコントローラ140Lに至らず、左エアーシリンダ128Lの第2空間136Lにも流れない。また、シングル電磁弁142Lは、OFF状態であるため、左エアーシリンダ128Lの第2空間136Lからの圧縮空気は、ダブル電磁弁120Lのサイレンサを経て排気される。
【0058】
(7)右テンターチェーン14を張る場合
左センサ42Lの測定した左テンターチェーン12の長さを基準として、右センサ42Rの測定した右テンターチェーン14の長さが短いときは、右センサ42Rが測定した長さとの偏差sがマイナス偏差になる。この偏差sがマイナス基準偏差より小さくなった場合には、図1に示すように、右テンターチェーン14が架け渡されている右従動スプロケット20を搬入口側に移動させ、右テンターチェーン14を張って、その長さを伸ばす必要がある。この場合の制御方法について説明する。
【0059】
制御部50は、左テンターチェーン12のテンションと長さは基準として保持しておくため、左メイン回路104と左背圧回路108とは、上記のバランスが取れている場合と同じ状態に保持するため、ダブル電磁弁120Lは共にON状態であり、0.35MPaの基準圧力TLでテークアップ圧力を左エアーシリンダ128Lの第1空間134Lにかける。
【0060】
制御部50は、図5図8に示すように、右電空レギュレータ118Rを制御し、基準圧力TRから増分圧力値ΔTR1(例えば、ΔTR1=0.01MPa)上げる。すると、ON状態のダブル電磁弁120R、圧力スイッチ122R、スピードコントローラ126Rを経て、右エアーシリンダ128Rの第1空間134Rに送られる圧縮空気の圧力が増分圧力値ΔTR1だけ上がり、テークアップ圧力がTR+ΔTR1と増圧され、ピストン130Rとピストンロッド132Rが伸びる方向(張る側)に移動する。すると、右従動スプロケット20が搬入口側に移動し、右テンターチェーン14のテンションが大きくなり長さを伸ばすことができる。
【0061】
なお、シングル電磁弁138Rは、OFF状態となっており、右エアーシリンダ128Rの第2空間136Rには、圧縮空気は送られない。
【0062】
そして、制御部50は、図8に示すように、所定時間(例えば、10秒)毎に増分圧力値ΔTR1だけテークアップ圧力を上げていくフィードバック制御を行い、偏差sがマイナス基準偏差より大きくなったときに、テークアップ圧力を上げるのを停止させる。これによって、右テンターチェーン14の長さが伸び、右テンターチェーン14と左テンターチェーン12の長さが左右対称になり、フィルムFが左右対称に延伸される。
【0063】
(8)右テンターチェーン14を緩める場合
次に、左センサ42Lの測定した左テンターチェーン12の長さを基準として、右センサ42Rが測定した右テンターチェーン14の長さが長く、偏差sがプラス基準偏差より大きくなった場合には、図1に示すように、右テンターチェーン14が架け渡されている右従動スプロケット20を搬出口側に移動させ、右テンターチェーン14を緩めて、その長さを短くする必要がある。この場合の制御方法について説明する。
【0064】
制御部50は、図5図9に示すように、左テンターチェーン12のテンションと長さは基準として保持しておくため、左メイン回路104と左背圧回路108とは、上記のバランスが取れている場合と同じ状態に保持し、ダブル電磁弁120Lは共にON状態であり、0.35MPaの基準圧力TLでテークアップ圧力を左エアーシリンダ128Lの第1空間134Lにかける。
【0065】
制御部50は、図9に示すように、右電空レギュレータ118Rを制御し、0.35MPaの基準圧力TRから減分圧力値ΔTR2(例えば、ΔTR2=0.01MPa)だけ下げる。すると、ON状態のダブル電磁弁120R、圧力スイッチ122R、スピードコントローラ126Rを経て、右エアーシリンダ128Rの第1空間134Rに送られる圧縮空気の圧力が減分圧力値ΔTR2だけ下がり、テークアップ圧力がTR-ΔTR2と減圧され、ピストン130Rとピストンロッド132Rの張る力(テークアップする圧力)を弱める。
【0066】
また、制御部50は、図9に示すように、テークアップ圧力が減圧されるのと同じタイミングで、右背圧回路110のシングル電磁弁138RをON状態にし、ポンプ102からの圧縮空気を、スピードコントローラ140Rを経て右エアーシリンダ128Rの第2空間136Rに送りパルス状の背圧をかける。この背圧の強さは、テークアップ圧力の基準圧力0.35MPa及び減圧されたテークアップ圧力よりも強い0.40MPaである。一方、シングル電磁弁142Rは、OFF状態からON状態として、圧縮空気が流れないようにする。
【0067】
このシングル電磁弁138Rから圧縮空気でパルス状の背圧をかける時間(パルス幅)T2は、例えば、100m秒であり、右メイン回路106から右エアーシリンダ128Rの第1空間134Rに圧縮空気を送る時間10秒(フィードバック制御する間隔)よりもかなり短く、1秒より短くする。この短い時間(パルス幅)T2であっても第2空間136Rに圧縮空気が送られると、テークアップ圧力より強いパルス状の背圧の力(駆動圧)を弾みとして、減圧されたテークアップ圧力(TR-ΔTR2)で張る側に押されているピストンロッド132Rを緩める側に移動させ、右従動スプロケット20が右テンターチェーン14の長さを縮める側(緩める側)に迅速に移動でき、応答速度を速くできる。
【0068】
このパルス状の背圧をかけるときの、シングル電磁弁138R(図10では「第1シングル電磁弁」と記載する)とシングル電磁弁142R(図10では「第2シングル電磁弁」と記載する)のON/OFFのタイミングについて説明する。図10のタイムチャートに示すように、第1に、右メイン回路106でテークアップ圧力を下げる時間と同時にシングル電磁弁142RをOFF状態からON状態にし、第2空間136Rから圧縮空気が流れないようにする。第2に、T1(例えば、20m秒)後にシングル電磁弁138RをON状態にして0.40MPaのパルス状の背圧を時間T2(すなわち、パルス幅T2=100m秒である)だけかけ、その後にOFF状態とする。第3に、シングル電磁弁138RがOFF状態となってからT3(例えば、20m秒)後にシングル電磁弁142RをOFF状態として、第2空間136Rから圧縮空気を排気する。これによって、背圧をかけるときの右エアーシリンダ128Rの第2空間136Rの圧縮空気の供給を、スムーズに行うことができる。
【0069】
そして、制御部50は、図9に示すように、所定時間(例えば、10秒)毎に、減分圧力値ΔTR2だけテークアップ圧力を下げると同時に、テークアップ圧力より強いパルス状の背圧をかけていくフィードバック制御を行い、偏差sがプラス基準偏差より小さくなったときに、テークアップ圧力を下げるのを停止させる。これによって、右テンターチェーン14が緩んで、その長さが縮み、右テンターチェーン14と左テンターチェーン12の長さが左右対称になり、フィルムFが左右対称に延伸される。
【0070】
(9)右テンターチェーン14の長さの制御方法
上記で説明した右テンターチェーン14の長さの制御方法について図7のフローチャートを参照して説明する。この制御方法においても、左テンターチェーン12の長さ、すなわち左従動スプロケット16の位置を基準として右従動スプロケット20、右テンターチェーン14の長さの調整するものとする。
【0071】
ステップS1において、左エアーシリンダ128Lが基準圧力TLで押圧し、右エアーシリンダ128Rが、基準圧力TRで押圧しているとする。一般的には初期状態において、TL=TRである。そしてステップS2に進む。
【0072】
ステップS2において、左センサ42Lと右センサ42Rの偏差sを測定する。そしてステップS3に進む。
【0073】
ステップS3において、偏差sがマイナスであり、マイナス基準偏差よりも小さければステップS4に進み(yの場合)、大きければステップS5に進む(nの場合)。
【0074】
ステップS4において、右エアーシリンダ128Rにかけるテークアップ圧力TRを増分圧力値ΔTR1(0.01MPa)だけ上げて右テンターチェーン14の長さを伸ばし、ステップS2に戻る。そしてステップS2において再び偏差sを測定し、偏差sが、マイナス基準偏差より大きくなるようにフィードバック制御を行う。そして、偏差sがマイナス基準偏差より大きくなった場合には、左テンターチェーン12と左右対称になるように右テンターチェーン14の長さが伸びた状態であるので、その状態を続ける。
【0075】
ステップS5において、偏差sがプラス基準偏差より大きかった場合にはステップS6に進み(yの場合)、そうでない場合には偏差sがプラス基準偏差より小さいためステップS2に戻る(nの場合)。
【0076】
ステップS6において、右エアーシリンダ128Rにかけるテークアップ圧力TRを減分圧力値ΔTR2(0.01MPa)だけ下げ、ステップS7に進む。
【0077】
ステップS7において、減分圧力値ΔTR2(0.01MPa)だけ下げる同じタイミングで、右エアーシリンダ128Rの第2空間136Rに、テークアップ圧力より強く、かつ、パルス幅が100m秒のルス状の背圧を付加する。これによって、右従動スプロケット20の応答性能が良くなり、右テンターチェーン14の長さが縮まる。そしてステップS2に戻り再び偏差sを測定し、プラス偏差sが、プラス基準偏差より小さくなるまでフィードバック制御を行う。偏差sがプラス基準偏差より小さくなった場合には、左テンターチェーン12と左右対称になるように右テンターチェーン14の長さが縮んだ状態であるので、その状態を続ける。
【0078】
(10)効果
本実施形態によれば、左テンターチェーン12に対し右テンターチェーン14が短い場合には、左従動スプロケット16を搬入口側に移動させるため、右エアーシリンダ128Rの第1空間134Rのテークアップ圧力を上げて、右テンターチェーン14を張り、その長さを伸ばすことができる。
【0079】
また、逆に左テンターチェーン12に対し右テンターチェーン14が長い場合には、右従動スプロケット20を搬出口側に移動させるため、右エアーシリンダ128Rの第1空間134Rのテークアップ圧力を下げると共に、第2空間136Rにテークアップ圧力より強いパルス状の背圧をかけて、この背圧が駆動圧となってピストンロッド132Rが緩み側に迅速に移動し、右テンターチェーン14を緩めて、その長さを縮めることができる。
【0080】
(11)変更例
上記実施形態では、左テンターチェーン12の長さを基準に右テンターチェーン14の長さを調整したが、これに代えて右テンターチェーン14を基準に左テンターチェーン12の長さを調整してもよい。この場合には、右センサ42Rを基準として、左センサ42Lの測定した長さに対し偏差sを求める。
【0081】
上記実施形態では、右メイン回路106においてテークアップ圧力を下げたり上げたりする時間は10秒毎であったが、これに代えて、1秒以上であればよい。また、右背圧回路110でパルス状の背圧をかける時間(パルス幅)は100m秒であったが、パルス状であって1秒より短ければ、100m秒より長くてもよく短くてもよい。
【0082】
上記実施形態では、右メイン回路106において背圧は、テークアップ圧力を下げた時間とほぼ同時にかけたが、これに代えて、複数回のパルス状の背圧をかけてもよい。また、テークアップ圧力を下げた時間とほぼ同時にかけるのでなく、背圧を1秒以上遅らせてかけてもよい。
【0083】
上記実施形態では、右メイン回路106において背圧は、テークアップ圧力より強かったが、右エアーシリンダの構造が異なり、弱い背圧であっても駆動圧となってピストンロッド132Rが緩み側に迅速に移動する場合には、テークアップ圧力と同じ強さ、又は、テークアップ圧力の80%の強さであってもよい。
【0084】
上記実施形態では、クリップテンター装置で説明したが、これに代えてピンでフィルムFFを固定するピンテンター装置であってもよい。
【0085】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
F・・・フィルムF、10・・・テンター装置、12・・・左テンターチェーン、14・・・右テンターチェーン、16・・・左従動スプロケット、18・・・左駆動スプロケット、20・・・右従動スプロケット、22・・・右駆動スプロケット、24・・・左テンターレール、26・・・右テンターレール、28・・・テンター台、30・・・熱処理室、32・・・左スライド部、36・・・右スライド部、40・・・左センサ、42・・・右センサ、50・・・制御部、52・・・左モータ、54・・・右モータ、60・・・クリップ、62・・・レール、100・・・回路、102・・・ポンプ、104・・・左メイン回路、106・・・右メイン回路、108・・・左背圧回路、110・・右背圧回路、128L・・・左エアーシリンダ、128R・・・右エアーシリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10