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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】電子部品取付装置及び電子部品取付方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20240105BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B23P21/00 305B
B25J13/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020112044
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022011124
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 和範
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊満
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0045650(US,A1)
【文献】特開2012-076805(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085897(WO,A1)
【文献】特開2017-216347(JP,A)
【文献】特開2007-211321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221492(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
B25J 1/00-21/02
H05K 1/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられたソケットに、所定の軸回りに回転可能に基板に連結されたスロットを介して電子部品を取り付ける電子部品取付装置であって、
第1ロボットアームと、
前記スロットを所定の位置で保持する保持装置と、
前記第1ロボットアームを制御する制御部とを備え、
前記スロットには、前記電子部品が取り付けられる前には、前記ソケットを保護するための保護カバーが取り付けられており、
前記制御部は、前記電子部品を前記スロットに取り付ける取付動作を前記第1ロボットアームに実行させ、
前記取付動作では、前記第1ロボットアームは、前記保持装置で保持された状態の前記スロットに前記電子部品を取り付け
前記制御部は、前記取付動作よりも前に、前記スロットから前記保護カバーを取り除く除去動作を前記第1ロボットアームに実行させる電子部品取付装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品取付装置において、
前記保持装置は、第2ロボットアームであり、
前記制御部は、前記スロットを保持する保持動作を前記第2ロボットアームに実行させる電子部品取付装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品取付装置において、
前記スロットは、前記基板に倒伏して前記電子部品を前記ソケットに装着させる倒伏状態と前記基板から起き上がった起立状態との間で回転移動可能に構成され、
前記第2ロボットアームは、前記スロットを前記起立状態で保持する電子部品取付装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子部品取付装置において、
前記制御部は、前記取付動作よりも前に、前記スロットを前記倒伏状態から前記起立状態へ起き上がらせる起立動作を前記第2ロボットアームに実行させる電子部品取付装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子部品取付装置において、
前記スロットは、前記倒伏状態において前記基板にロックされるように構成されており、
前記制御部は、前記取付動作よりも前に、前記倒伏状態の前記スロットのロックを解除する解除動作を前記第1ロボットアームに実行させる電子部品取付装置。
【請求項6】
請求項に記載の電子部品取付装置において、
前記除去動作では、前記保持装置は、前記スロットを保持している電子部品取付装置。
【請求項7】
基板に設けられたソケットに、所定の軸回りに回転可能に基板に連結されたスロットを介して電子部品を取り付ける電子部品取付方法であって、
前記スロットを所定の位置で保持装置によって保持する工程と、
前記保持装置で保持された状態の前記スロットに前記電子部品を第1ロボットアームによって取り付ける工程と
前記スロットに前記電子部品が取り付けられる前に、前記スロットに取り付けられている、前記ソケットを保護するための保護カバーを前記第1ロボットアームによって前記スロットから取り除く工程とを含む電子部品取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、電子部品取付装置及び電子部品取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に設けられたソケットに電子部品を取り付ける構成が知られている。例えば、特許文献1では、CPUがCPUソケットに取り付けられている。CPUは、CPUソケットに載置され、その状態でカバーによって固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-211321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ソケットを用いた電子部品の取付構造においては、電子部品とソケットとの適切な電気的接続を維持するために、電子部品は高い位置決め精度でソケットに取り付けられる。また、CPU等の電子部品は、繊細であるため、取り付け時の取り扱いは電子部品が破損しないように慎重に行われる。
【0005】
このようなソケットへの電子部品の取り付けを自動化することが考えられる。しかしながら、前述のように、ソケットを用いた電子部品の取付構造においては、電子部品とソケットとの高い位置決め精度及び電子部品の慎重な取り扱い等の課題が多いのが実情である。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安定的で且つ高い精度でのソケットへの電子部品の取り付けを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された電子部品取付装置は、基板に設けられたソケットに、所定の軸回りに回転可能に基板に連結されたスロットを介して電子部品を取り付ける電子部品取付装置であって、第1ロボットアームと、前記スロットを所定の位置で保持する保持装置と、前記第1ロボットアームを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記電子部品を前記スロットに取り付ける取付動作を前記第1ロボットアームに実行させ、前記取付動作では、前記第1ロボットアームは、前記保持装置で保持された状態の前記スロットに前記電子部品を取り付ける。
【0008】
ここに開示された電子部品取付方法は、基板に設けられたソケットに、所定の軸回りに回転可能に基板に連結されたスロットを介して電子部品を取り付ける電子部品取付方法であって、前記スロットを所定の位置で保持装置によって保持する工程と、前記保持装置で保持された状態の前記スロットに前記電子部品を第1ロボットアームによって取り付ける工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
前記電子部品取付装置によれば、ロボットアームを用いて、安定的で且つ高い精度で電子部品をソケットへ取り付けることができる。
【0010】
前記電子部品取付方法によれば、ロボットアームを用いて、安定的で且つ高い精度で電子部品をソケットへ取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、双腕ロボットの正面図である。
図2図2は、双腕ロボットの平面図である。
図3図3は、第1エンドエフェクタ及び第2エンドエフェクタの斜視図である。
図4図4は、第1拡張ハンドの斜視図である。
図5図5は、第2拡張ハンドの斜視図である。
図6図6は、第3拡張ハンドの斜視図である。
図7図7は、第4拡張ハンドの斜視図である。
図8図8は、制御部のブロック図である。
図9図9は、スロット及び固定フレームが起立状態におけるCPUソケットの斜視図である。
図10図10は、固定解除動作における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図11図11は、ロック解除動作の開始時における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図12図12は、ロック解除動作の完了時における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図13図13は、保持動作における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図14図14は、第1除去動作における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図15図15は、取付動作における、第2拡張ハンドのピンを中心とする部分断面図である。
図16図16は、取付動作における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図17図17は、ロック動作における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図18図18は、第5拡張ハンドの斜視図である。
図19図19は、第6拡張ハンドの斜視図である。
図20図20は、第7拡張ハンドの斜視図である。
図21図21は、ロック解除動作の完了後における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図22図22は、保持動作における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図23図23は、第1除去動作における、CPUソケットを中心とするマザーボードの側面図である。
図24図24は、取付動作における、CPUソケットを中心とするマザーボードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
《実施形態1》
実施形態1に係る双腕ロボット100について説明する。図1は、双腕ロボット100の正面図である。図2は、双腕ロボット100の平面図である。図2では、双腕ロボット100が作業システム1000に組み込まれた状態が図示されている。尚、第1ロボットアーム1及び第2ロボットアーム4の状態は、図1図2とで異なる。
【0014】
双腕ロボット(以下、単に「ロボット」とも称する)100は、第1ロボットアーム1と、第2ロボットアーム4と、制御部7(図8参照)とを備えている。ロボット100は、CPU81をマザーボード8に取り付ける。ロボット100は、電子部品取付装置の一例である。CPU81は、電子部品の一例であり、マザーボード8は、基板の一例である。
【0015】
<ロボットアーム>
第1ロボットアーム1及び第2ロボットアーム4は、多関節型のロボットアームである。より具体的には、第1ロボットアーム1及び第2ロボットアーム4は、水平多関節型のロボットアームである。第1ロボットアーム1及び第2ロボットアーム4は、協調して動作を実行する。第1ロボットアーム1には、第1エンドエフェクタ3が連結される。第2ロボットアーム4には、第2エンドエフェクタ6が連結される。第2ロボットアーム4は、保持装置の一例である。
【0016】
以下、説明の便宜上、互いに直交するX,Y,Z軸を設定する。Z軸は、上下方向に延びている。
【0017】
第1ロボットアーム1は、第1リンク11と第2リンク12と第1リスト2とを有している。第2ロボットアーム4は、第1リンク41と第2リンク42と第2リスト5とを有している。以下、各リンクにおいて長手方向の一端部を第1端部と称し、長手方向において第1端部と反対側の端部を第2端部と称する。
【0018】
第1ロボットアーム1に関し、第1リンク11の第1端部11aは、Z軸方向に延びる第1軸A1回りに回転可能に基台10に連結されている。第2リンク12の第1端部12aは、Z軸方向に延びる第2軸A2回りに回転可能に第1リンク11の第2端部11bに連結されている。第1リンク11の第2端部11bの上に第2リンク12の第1端部12aが配置されている。第2リンク12には、第1リスト2が連結されている。
【0019】
第2ロボットアーム4に関し、第1リンク41の第1端部41aは、第1軸A1回りに回転可能に基台10に連結されている。つまり、第1リンク41は、第1リンク11と同軸状に基台10に連結されている。第1リンク41の第1端部41aは、第1リンク11の第1端部11aの上に配置されている。第2リンク42の第1端部42aは、Z軸方向に延びる第2軸B2回りに回転可能に第2リンク41の第2端部41bに連結されている。第1リンク41の第2端部41bの下に第2リンク42の第1端部42aが配置されている。第2リンク42には、第2リスト5が連結されている。
【0020】
ロボット100は、第1リンク11を駆動する第1モータ13と、第2リンク12を駆動する第2モータ14と、第1リンク41を駆動する第3モータ43と、第2リンク42を駆動する第4モータ44とを有している(図8参照)。例えば、第1モータ13、第2モータ14、第3モータ43及び第4モータ44は、サーボモータである。サーボモータは、モータの回転位置を検出するエンコーダを備えている。ロボット100は、図示を省略するが、各モータの駆動力を対応するリンクに伝達する伝達機構を有している。例えば、伝達機構は、ギヤ列とプーリ及びベルトとの組み合わせである。
【0021】
第1エンドエフェクタ3は、第1ロボットアーム1の先端部、具体的には、第1リスト2に連結されている。第1リスト2は、第1エンドエフェクタ3を、Z軸方向に延びる第3軸A3に沿って直動させると共に、Z軸方向に延びる第4軸A4回りに回転させる。この例では、第3軸A3と第4軸A4とは、同軸である。
【0022】
第2エンドエフェクタ6は、第2ロボットアーム4の先端部、具体的には、第2リスト5に連結されている。第2リスト5は、第2エンドエフェクタ6を、Z軸方向に延びる第3軸B3に沿って直動させると共に、Z軸方向に延びる第4軸B4回りに回転させる。この例では、第3軸B3と第4軸B4とは、同軸である。
【0023】
<第1リスト>
第1リスト2は、第1接続部21と、第1リンク22と、第2リンク23と、第2接続部24とを有している。第1接続部21は、第2リンク12の第2端部12bに固定的に取り付けられている。第1リンク22は、XY平面と平行に延びる第1連動軸C1回りに回転可能に第1接続部21に連結されている。第2リンク23は、第1連動軸C1と平行な第2連動軸C2回りに回転可能に第1リンク22に連結されている。第2接続部24は、第1連動軸C1と平行な第3連動軸C3回りに回転可能に第2リンク23に連結されている。
【0024】
第1接続部21には、第5モータ25(図8参照)が設けられている。第1リスト2には、第5モータ25の駆動力を第1リンク22、第2リンク23及び第2接続部24のそれぞれに伝達する伝達機構(図示省略)が設けられている。例えば、伝達機構は、ギヤ列である。第1リンク22、第2リンク23及び第2接続部24は、1つの第5モータ25の駆動力によって連動して動作する。伝達機構は、第1リンク22、第2リンク23及び第2接続部24のそれぞれの回転角が一定の関係を維持するように、第1リンク22、第2リンク23及び第2接続部24を回転させる。具体的には、第2接続部24が姿勢を維持したまま、Z軸方向に延びる第3軸A3の方向にのみ移動するように、第1リンク22、第2リンク23及び第2接続部24は互いに連動して回転する。つまり、第1リスト2は、実質的には、第2接続部24を第3軸A3に沿って直動させる。
【0025】
第2接続部24には、Z軸方向に延びる第4軸A4回りに回転可能に第1エンドエフェクタ3が連結される。第2接続部24には、第6モータ27(図8参照)と、第6モータ27の駆動力を第1エンドエフェクタ3に伝達する伝達機構(図示省略)とが設けられている。第1エンドエフェクタ3は、第6モータ27によって第4軸A4回りに回転させられる。
【0026】
<第2リスト>
第2リスト5は、実質的に第1リスト2と同様の構成をしている。第2リスト5は、第1接続部51と、第1リンク52と、第2リンク53と、第2接続部54とを有している。
【0027】
第1接続部51は、第2リンク42の第2端部42bに固定的に取り付けられている。第1リンク52は、XY平面と平行に延びる第1連動軸D1回りに回転可能に第1接続部51に連結されている。第2リンク53は、第1連動軸D1と平行な第2連動軸D2回りに回転可能に第1リンク52に連結されている。第2接続部54は、第1連動軸D1と平行な第3連動軸D3回りに回転可能に第2リンク53に連結されている。
【0028】
第1接続部51には、第7モータ55(図8参照)が設けられている。第2リスト5には、第7モータ55の駆動力を第1リンク52、第2リンク53及び第2接続部54のそれぞれに伝達する伝達機構(図示省略)が設けられている。第1リンク52、第2リンク53及び第2接続部54は、1つの第7モータ55の駆動力によって連動して動作する。伝達機構は、第1リンク52、第2リンク53及び第2接続部54のそれぞれの回転角が一定の関係を維持するように、第1リンク52、第2リンク53及び第2接続部54を回転させる。具体的には、第2接続部54が姿勢を維持したままZ軸方向に延びる第3軸B3の方向にのみ移動するように、第1リンク52、第2リンク53及び第2接続部54は互いに連動して回転する。つまり、第2リスト5は、実質的には、第2接続部54を第3軸B3に沿って直動させる。
【0029】
第2接続部54には、Z軸方向に延びる第4軸B4回りに回転可能に第2エンドエフェクタ6が連結される。第2接続部54には、第8モータ57(図8参照)と、第8モータ57の駆動力を第2エンドエフェクタ6に伝達する伝達機構(図示省略)とが設けられている。第2エンドエフェクタ6は、第8モータ57によって第4軸B4回りに回転させられる。
【0030】
<第1エンドエフェクタ>
図3は、第1エンドエフェクタ3及び第2エンドエフェクタ6の斜視図である。第1エンドエフェクタ3は、第1リスト2の第2接続部24に回転可能に連結されたベース30と、ベース30に設けられた第1ハンド31と、第1ビジョンセンサ35とを有している。
【0031】
ベース30は、第4軸A4と直交する面内で拡がっている。
【0032】
第1ハンド31は、取付プレート36を介してベース30に取り付けられている。取付プレート36は、第4軸A4を中心とする半径方向にベース30から延びている。第1ハンド31は、取付プレート36の先端に設けられている。
【0033】
第1ハンド31は、一対の指32と、一対の指32を駆動するアクチュエータ(図示省略)とを有している。一対の指32は、互いに平行に且つ水平方向に延びている。一対の指32は、水平な方向に摺動可能にガイド33に支持されている。一対の指32は、互いに平行な状態を維持したまま、互いに離間したり、互いに接近したりするようにガイド33によって案内される。
【0034】
アクチュエータは、例えば、エアシリンダである。アクチュエータは、配管及び電磁弁34(図8参照)を介してエアコンプレッサ(図示省略)に接続されている。エアコンプレッサは、空気を圧送することによってアクチュエータを駆動する。アクチュエータが一対の指32を移動させる方向は、電磁弁34によって切り替えられる。つまり、一対の指32が互いに離間する方向に移動するか、互いに接近する方向に移動するかが電磁弁34によって切り替えられる。
【0035】
第1ビジョンセンサ35は、ベース30に設けられている。第1ビジョンセンサ35は、Z軸方向の下向きに設置され、第1ビジョンセンサ35よりも下方の対象物を撮像する。
【0036】
このように構成にされた第1エンドエフェクタ3は、第1ハンド31によって拡張ハンドを把持する。第1エンドエフェクタ3は、作業内容に応じて、第1ハンド31で把持する拡張ハンドを変更する。これにより、第1エンドエフェクタ3は、様々な作業に対応することができる。
【0037】
<第2エンドエフェクタ>
第2エンドエフェクタ6は、第2リスト5の第2接続部54に回転可能に連結されたベース60と、ベース60に設けられた第2ハンド61と、第2ビジョンセンサ65とを有している。
【0038】
ベース60は、第4軸B4と直交する面内で拡がっている。
【0039】
第2ハンド61は、取付プレート66を介してベース60に取り付けられている。取付プレート66は、第4軸B4を中心とする半径方向にベース60から延びている。第2ハンド61は、取付プレート66の先端に設けられている。
【0040】
第2ハンド61は、一対の指62と、一対の指62を駆動するアクチュエータ(図示省略)とを有している。一対の指62は、互いに平行に且つ水平方向(に延びている。一対の指62は、水平な方向に摺動可能にガイド63に支持されている。一対の指62は、互いに平行な状態を維持したまま、互いに離間したり、互いに接近したりするようにガイド63によって案内される。
【0041】
アクチュエータは、例えば、エアシリンダである。アクチュエータは、配管及び電磁弁64(図8参照)を介してエアコンプレッサ(図示省略)に接続されている。エアコンプレッサは、空気を圧送することによってアクチュエータを駆動する。アクチュエータが一対の指62を移動させる方向は、電磁弁64によって切り替えられる。つまり、一対の指62が互いに離間する方向に移動するか、互いに接近する方向に移動するかが電磁弁64によって切り替えられる。
【0042】
第2ビジョンセンサ65は、ベース60に設けられている。第2ビジョンセンサ65は、Z軸方向の下向きに設置され、第2ビジョンセンサ65よりも下方の対象物を撮像する。
【0043】
このように構成にされた第2エンドエフェクタ6は、第2ハンド61によって拡張ハンドを把持する。第2エンドエフェクタ6は、作業内容に応じて、第2ハンド61で把持する拡張ハンドを変更する。これにより、第2エンドエフェクタ6は、様々な作業に対応することができる。
【0044】
<拡張ハンド>
続いて、第1エンドエフェクタ3及び第2エンドエフェクタ6によって把持される拡張ハンドについて説明する。図4は、第1拡張ハンド37の斜視図である。図5は、第2拡張ハンド38の斜視図である。図6は、第3拡張ハンド67の斜視図である。図7は、第4拡張ハンド68の斜視図である。
【0045】
第1エンドエフェクタ3は、第1拡張ハンド37と第2拡張ハンド38とを選択的に把持する。ここで、第1エンドエフェクタ3において、取付プレート36が延びる方向(即ち、第1ハンド31が第4軸A4から偏心している方向)を前後方向とし、水平方向であって且つ前後方向に直交する方向を横方向とする。
【0046】
第1拡張ハンド37は、ベース37aと、ベース37aに設けられた一対の指37bと、ベース37aに設けられた円筒状のグリップ37dとを有している。一対の指37bは、横方向に並び、概ね上下方向に延びている。指37bの先端には、前後方向に延びる爪37cが設けられている。第1ハンド31は、グリップ37dを把持する。
【0047】
第2拡張ハンド38は、シングルチャック型のハンドである。第2拡張ハンド38は、ベース38aと、ベース38aに設けられたガイド38bと、ガイド38bに支持された一対の指38cと、一対の指38cを駆動するアクチュエータと、ベース38aに設けられたプレート38dと、プレート38dに設けられたピン38eと、ベース38aに設けられた円筒状のグリップ38gとを有している。
【0048】
ベース38a、プレート38d、ガイド38bは、前後方向に並んでいる。プレート38dは、ベース38aとガイド38bとの間に配置されている。プレート38dは、ベース38aから下方に拡がっている。プレート38dの法線方向は、前後方向を向いている。プレート38dの下部は、上部に比べて薄く形成されている。プレート38dのうちガイド38b側の面には段差38fが形成されている。ピン38eは、プレート38dの下部において前後方向のガイド38bの側に延びている。ピン38eの断面は、略半円形に形成されている。
【0049】
一対の指38cは、横方向に並び、ガイド38bから概ね下方に延びている。ガイド38bは、一対の指38cを横方向に離間又は接近するように支持している。アクチュエータは、例えば、エアシリンダである。アクチュエータは、配管及び電磁弁38h(図8参照)を介してエアコンプレッサ(図示省略)に接続されている。アクチュエータが一対の指38cを移動させる方向は、電磁弁38hによって切り替えられる。つまり、一対の指38cが互いに離間する方向に移動するか、互いに接近する方向に移動するかが電磁弁38hによって切り替えられる。第1ハンド31は、グリップ38gを把持する。
【0050】
第2エンドエフェクタ6は、第3拡張ハンド67と第4拡張ハンド68とを選択的に把持する。ここで、第2エンドエフェクタ6において、取付プレート66が延びる方向(即ち、第2ハンド61が第4軸B4から偏心している方向)を前後方向とし、水平方向であって且つ前後方向に直交する方向を横方向とする。
【0051】
第3拡張ハンド67は、ベース67aと、ベース67aに設けられた一対の指67bと、ベース67aに設けられた円筒状のグリップ67dとを有している。一対の指67bは、横方向に並び、概ね上下方向に延びている。指67bの先端部は前後方向に屈曲している。指67bの先端には、下方に延びる爪67cが設けられている。第2ハンド61は、グリップ67dを把持する。
【0052】
第4拡張ハンド68は、回転工具型のハンドである。第4拡張ハンド68は、ベース68aと、ベース68aに設けられた工具本体68bと、工具本体68bに設けられたビット68cと、工具本体68bに内蔵され、ビット68cを回転駆動するモータ68d(図8参照)と、ベース68aに設けられた円筒状のグリップ68eとを有している。第2ハンド61は、グリップ68eを把持する。
【0053】
<制御部>
図8は、制御部7のブロック図である。制御部7は、演算部71と、記憶部72と、サーボ制御部73とを有している。演算部71は、CPU等のプロセッサで形成されている。記憶部72は、ROM、RAM等で形成されている。サーボ制御部73は、CPU等のプロセッサで形成されている。
【0054】
記憶部72には、ロボットコントローラとしての基本プログラム、各種データ等の情報が記憶されている。演算部71は、記憶部72に記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、ロボット100の各種動作を制御する。
【0055】
演算部71は、第1ビジョンセンサ35及び第2ビジョンセンサ65へ制御信号を出力する。第1ビジョンセンサ35及び第2ビジョンセンサ65の出力信号は、演算部71に入力される。演算部71は、第1ビジョンセンサ35及び第2ビジョンセンサ65に対象物を撮像させ、その撮像結果に基づいて対象物の位置及び形状を演算する。また、演算部71は、電磁弁34等及びモータ68dへ制御信号を出力する。例えば、演算部71は、第1ハンド31の一対の指32の離間及び接近を制御する。さらに、演算部71は、ロボット100の制御指令を生成し、制御指令をサーボ制御部73に出力する。例えば、演算部71は、サーボ制御部73を介して、第1ロボットアーム1及び第2ロボットアーム4を制御する。
【0056】
サーボ制御部73に、第1モータ13、第2モータ14、第3モータ43、第4モータ44、第5モータ25、第6モータ27、第7モータ55及び第8モータ57のそれぞれに駆動電流を供給すると共に、それぞれからエンコーダの検出信号を受信する。例えば、サーボ制御部73は、演算部71からの制御指令に基づいて対応するモータに駆動電流を出力する。このとき、サーボ制御部73は、各エンコーダの検出信号に基づいて駆動電流を制御する。
【0057】
<ロボットの動作>
続いて、ロボット100が組み込まれた作業システム1000について説明する。
【0058】
作業システム1000においては、図2に示すようにロボット100の前にベルトコンベア91が配置されている。ベルトコンベア91の近傍には、ツール置き場92が配置されている。図2において図示を省略しているが、ツール置き場92には、第1拡張ハンド37、第2拡張ハンド38、第3拡張ハンド67及び第4拡張ハンド68が載置されている。
【0059】
ベルトコンベア91は、マザーボード8を載せたトレー93を搬送する。ベルトコンベア91には、トレー93をロボット100の前で停止させるストッパ(図示省略)が設けられている。ロボット100は、ストッパによって停止させられたトレー93内のマザーボード8に対してCPU81を取り付ける。ロボット100の側方には、取り付け前の複数のCPU81を収容するCPU置き場94が配置されている。
【0060】
図9は、スロット84及び固定フレーム85が起立状態におけるCPUソケット82の斜視図である。
【0061】
マザーボード8には、CPUソケット82と、スロット84と、固定フレーム85とが設けられている。
【0062】
CPUソケット82には、複数のコンタクトピン(図示省略)が配列されている。複数のコンタクトピンは、CPU81に対応した配列となっている。CPUソケット82は、ベースフレーム83を有している。ベースフレーム83は、CPUソケット82の複数のコンタクトピンを囲むように設けられている。ベースフレーム83には、CPU81が載置される。ベースフレーム83に載置されたCPU81は、コンタクトピンと接触し、電気的に接続される。CPUソケット82は、ソケットの一例である。
【0063】
ベースフレーム83は、平面視略四角形状に形成されている。詳しくは、ベースフレーム83は、互いに略平行に延びる一対の長辺部分83a,83cと、互いに略平行に延びる一対の短辺部分83b、83dとを有している。長辺部分83a,83cのそれぞれには、スロット84が係合する第1係合部83eが設けられている。第1係合部83eは、凹状に窪む形状に形成されている。
【0064】
スロット84は、所定の軸L回りに回転可能にマザーボード8に連結されている。スロット84は、略四角形のフレーム状に形成されている。詳しくは、スロット84は、互いに略平行に延びる一対の長辺部分84a,84cと、互いに略平行に延びる一対の短辺部分84b、84dとを有している。短辺部分84dは、軸L回りに回転可能にマザーボード8に連結されている。短辺部分84dは、軸Lと平行に延びている。
【0065】
スロット84は、金属製の線条で形成され、部分的に樹脂で被覆されている。例えば、長辺部分84a,84cの大部分は樹脂で被覆され、長辺部分84a、84cのうち短辺部分84b側の端部は金属製の線条だけで形成されている。短辺部分84bは、全て金属製の線条で形成されている。
【0066】
長辺部分84a,84cのそれぞれには、CPU81が摺動可能に挿入されるガイド84gが形成されている。ガイド84gは、長辺部分84a,84cの樹脂部分に形成されている。ガイド84gは、スロット84の内側(即ち、スロット84が形成する四角形の内側)に開口する溝状に形成されている。
【0067】
CPU81は、長辺部分84a,84cのガイド84g,84gに、短辺部分84b側から挿入される。詳しくは、CPU81には、キャリアフレーム86が装着されている。キャリアフレーム86は、略四角形の枠状に形成されている。キャリアフレーム86は、CPU81の周縁を覆っている。ガイド84gには、キャリアフレーム86が挿入される。つまり、CPU81は、キャリアフレーム86を介してガイド84gに挿入される。CPU81は、長辺部分84a,84cのガイド84gに挿入されることによって、スロット84に取り付けられる。また、CPU81は、長辺部分84a,84cのガイド84gから引き抜かれることによって、スロット84から取り外される。
【0068】
キャリアフレーム86には、外側(即ち、キャリアフレーム86が形成する四角形の外側)へ突出する突片86aが設けられている。キャリアフレーム86がスロット84へ取り付けられた状態において、突片86aは、スロット84の短辺部分84bにおいてスロット84よりも外側へ突出している。突片86aには、貫通孔86bが形成されている。
【0069】
スロット84は、マザーボード8に倒伏した倒伏状態とマザーボード8から起き上がった起立状態との間で軸L回りに回転移動可能となっている。倒伏状態では、スロット84は、マザーボード8と略平行になっている。起立状態は、CPU81の着脱が実行される着脱位置までスロット84が回転した状態である。例えば、着脱位置は、スロット84が倒伏状態から略90度起き上がった位置であり、起立状態は、スロット84が倒伏状態から略90度起き上がった状態である。スロット84は、倒伏状態から着脱位置を超えてさらに回転移動可能となっている。スロット84は、倒伏状態から起立状態となる方向へねじりコイルバネ(図示省略)によって付勢されている。詳しくは、スロット84に重力以外の外力が作用していない場合、スロット84は、ねじりコイルバネによって、倒伏状態と起立状態との間の自然状態となる。具体的には、自然状態は、スロット84が倒伏状態から90度未満だけ起き上がった状態である。スロット84は、CPU81が取り付けられた状態で倒伏状態となると、CPU81をCPUソケット82に載置する。具体的には、CPU81は、ベースフレーム83に載置され、CPUソケット82のコンタクトピンと電気的に接続される。スロット84がCPU81をCPUソケット82に載置させる位置は一定なので、CPU81を高い位置決め精度でCPUソケット82に載置することができる。
【0070】
スロット84は、倒伏状態において、マザーボード8にロックされるように構成されている。詳しくは、長辺部分84a,84cのそれぞれには、第2係合部84hが設けられている。第2係合部84hは、突起である。第2係合部84hは、長辺部分84a,84cの樹脂部分に形成されている。第2係合部84hは、スロット84が倒伏状態となったときに、ベースフレーム83の第1係合部83eに係合する。第2係合部84hと第1係合部83eとの係合によって、スロット84がマザーボード8に倒伏状態でロックされる。これにより、CPU81がCPUソケット82に載置された状態で保持される。
【0071】
また、長辺部分84a,84cのそれぞれは、短辺部分84bから突出する突片84f,84fを有している。
【0072】
固定フレーム85は、略四角形の枠状に形成されている。所定の軸M回りに回転可能にマザーボード8に連結されている。この例では、軸Mは、軸Lと平行である。固定フレーム85は、マザーボード8に倒伏した倒伏状態とマザーボード8から起き上がった起立状態との間で軸M回りに回転移動可能となっている。倒伏状態では、固定フレーム85は、マザーボード8と略平行になっている。起立状態は、固定フレーム85が倒伏状態から略90度を超えて起き上がった状態である。固定フレーム85は、倒伏状態から起立状態を超えてさらに回転移動可能となっている。固定フレーム85は、倒伏状態から起立状態となる方向へねじりコイルバネ(図示省略)によって付勢されている。詳しくは、固定フレーム85に重力以外の外力が作用していない場合、固定フレーム85は、ねじりコイルバネによって自然状態としての起立状態となる。
【0073】
固定フレーム85の回転方向において、固定フレーム85とマザーボート8との間に、スロット84が位置している。つまり、固定フレーム85が倒伏状態となるときには、同じく倒伏状態となったスロット84を覆うようになっている。固定フレーム85は、倒伏状態において、マザーボード8にネジで固定される。この例では、固定フレーム85は、マザーボード8に3か所でネジで固定される。これにより、固定フレーム85は、スロット84をマザーボード8に押さえ付け、ひいては、CPU81がベースフレーム83に押さえ付けられる。その結果、CPU81とコンタクトピンとの電気的接続が確実なものとなる。
【0074】
マザーボード8がロボット100に搬送されてきたときには、マザーボード8にはCPU81が取り付けられていない。スロット84は、倒伏状態でマザーボード8にロックされた状態となっている。同様に、固定フレーム85も倒伏状態となっており、マザーボード8にネジで固定されている。このとき、スロット84には第1保護カバー87が取り付けられている(図10,11等参照)。第1保護カバー87は、CPUソケット82を保護するために設けられている。
【0075】
第1保護カバー87は、CPU81と同様にガイド84gに挿入されることによって、スロット84に取り付けられている。第1保護カバー87には、外側へ突出する突片87aが設けられている。第1保護カバー87がスロット84へ取り付けられた状態において、突片87aは、スロット84の短辺部分84bにおいてスロット84よりも外側へ突出している。突片87aには、貫通孔87bが形成されている。スロット84の倒伏状態においては、第1保護カバー87は、CPUスロット82の全面を覆っている。
【0076】
続いて、ロボット100によるCPU81の取付作業について説明する。
【0077】
マザーボード8を乗せたトレー93がベルトコンベア91によってロボット100の正面まで搬送されると、ベルトコンベア91のストッパによりトレー93が停止する。
【0078】
トレー93が停止すると、制御部7は、第1ビジョンセンサ35及び第2ビジョンセンサ65にマザーボード8及びCPUソケット82を撮像させる。詳しくは、第1ロボットアーム1及び第2ロボットアーム4は、第1ビジョンセンサ35及び第2ビジョンセンサ65をマザーボード8及びCPUソケット82の上方に移動させる。第1ビジョンセンサ35及び第2ビジョンセンサ65は、マザーボード8及びCPUソケット82周辺を撮像し、制御部7は、マザーボード8及びCPUソケット82の位置を取得する。制御部7は、取得されたマザーボード8及びCPUソケット82の位置に基づいて、以下の動作を第1ロボットアーム1等に実行させる。
【0079】
制御部7は、まず、固定フレーム85のネジ固定を解除する固定解除動作を第2ロボットアーム4に実行させる。図10は、固定解除動作における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。尚、実施形態1の説明で用いるマザーボード8の側面図は、ロボット100側からマザーボード8を見た側面図である。
【0080】
固定解除動作では、第2エンドエフェクタ6は、第4拡張ハンド68を用いる。第2ロボットアーム4は、固定フレーム85を固定するネジの頭の溝に第4拡張ハンド68のビット68cの先端が嵌るように第2エンドエフェクタ6を移動させる。ビット68cの先端がネジの溝に嵌ると、第4拡張ハンド68がネジを緩め、ネジ固定を解除する。制御部7は、この動作を、固定フレーム85を固定するネジの個数だけ実行させる。
【0081】
このとき、制御部7は、固定が解除された固定フレーム85を受け止める受け止め動作を第1ロボットアーム1に実行させる。受け止め動作では、第1エンドエフェクタ3は、第1拡張ハンド37を用いる。第1ロボットアーム1は、固定解除動作の終盤に第1拡張ハンド37の爪37cを固定フレーム85の上方に移動させる。固定フレーム85の固定が解除されると、固定フレーム85は、ねじりコイルバネによって起立状態へ回転移動する。その際、固定フレーム85は、第1拡張ハンド37の爪37cに接触し、固定フレーム85の急な跳ね上がりが防止される。こうして、固定フレーム85は、マザーボード8への固定が解除され且つ倒伏状態から少し起き上がった状態で第1拡張ハンド37に支持される。
【0082】
次に、制御部7は、固定フレーム85を起き上がらせるフレーム開け動作を第1ロボットアーム1に実行させる。フレーム開け動作では、第1エンドエフェクタ3は、第1拡張ハンド37を用いる。つまり、第1ロボットアーム1は、受け止め動作に引き続いて、第1拡張ハンド37を用いてフレーム開け動作を実行する。受け止め動作においては、ねじりコイルバネの弾性力によって起き上がろうとする固定フレーム85を第1拡張ハンド37が押さえている。フレーム開け動作では、固定フレーム85がねじりコイルバネの弾性力によってゆっくりと起き上がるように、第1ロボットアーム1が第1拡張ハンド37を移動させる。固定フレーム85は、起立状態、即ち、自然状態まで起き上がると、固定フレーム85の回転移動が自然に停止する。
【0083】
その後、制御部7は、倒伏状態のスロット84のロックを解除するロック解除動作を第1ロボットアーム1に実行させる。図11は、ロック解除動作の開始時における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。図12は、ロック解除動作の完了時における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。
【0084】
ロック解除動作では、図11に示すように、第1エンドエフェクタ3は、第1拡張ハンド37を用いる。つまり、第1ロボットアーム1は、フレーム開け動作に引き続いて、第1拡張ハンド37を用いてロック解除動作を実行する。第1ロボットアーム1は、第1拡張ハンド37の一対の指37bの爪37c,37cが倒伏状態のスロット84の2つの突片84f,84fの下方に位置するように第1エンドエフェクタ3を移動させる。第1ロボットアーム1は、第1拡張ハンド37を上昇させる。これによって、爪37c,37cが突片84f,84fを上方へ押し上げる。スロット84を形成する長辺部分84a,84c等の線条が多少弾性変形することによって、スロット84の第2係合部84h,84hがベースフレーム83の第1係合部83e,83eから離脱する。こうして、スロット84のロックが解除される。スロット84は、ロックが解除されると、図12に示すように、ねじりコイルバネの弾性力によって倒伏状態から自然状態へ起き上がる。ロック解除動作は、解除動作の一例である。
【0085】
続いて、制御部7は、スロット84を起立状態で保持する保持動作を第2ロボットアーム4に実行させる。図13は、保持動作における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。
【0086】
保持動作においては、第2エンドエフェクタ6は、第3拡張ハンド67を用いる。第2ロボットアーム4は、第3拡張ハンド67の一対の指67bの爪67c,67cが自然状態のスロット84をねじりコイルバネの弾性力に抗してさらに起き上がらせるように第2エンドエフェクタ6を移動させる。第2ロボットアーム4は、スロット84が着脱位置まで回転した、即ち、起立状態になったところで、第2エンドエフェクタ6の移動を停止させ、その状態を維持する。つまり、第2ロボットアーム4は、スロット84を起立状態で保持する。この保持動作は、スロットを所定の位置で保持装置によって保持する工程に相当する。
【0087】
その状態で、制御部7は、スロット84から第1保護カバー87を取り除く第1除去動作を第1ロボットアーム1に実行させる。第1除去動作の間、第2ロボットアーム4は、スロット84を起立状態で保持した状態を維持する。図14は、第1除去動作における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。
【0088】
第1除去動作では、第1エンドエフェクタ3は、第2拡張ハンド38を用いる。まず、第1ロボットアーム1は、第2拡張ハンド38のピン38eが第1保護カバー87の貫通孔87bに挿入されるように第1エンドエフェクタ3を移動させる。このとき、図14に示すように、一対の指38cの間にスロット84の一対の長辺部分84a,84cが配置されるように、一対の指38cは、比較的離間している。尚、一対の指38cは、一対の長辺部分84a,84cには接触していない。
【0089】
第1ロボットアーム1は、この状態から第1エンドエフェクタ3を上昇させる。これにより、ピン38eが貫通孔87bに係合し、第1保護カバー87がガイド84gに沿って引き抜かれていく。
【0090】
第1エンドエフェクタ3の上昇に伴って、やがて、一対の指38cは、一対の長辺部分84a,84cよりも上方まで移動する。このとき、一対の指38cの間には、第1保護カバー87が位置している。このような位置まで第1エンドエフェクタ3が上昇すると、第2拡張ハンド38は、一対の指38cによって第1保護カバー87を挟持する。これにより、第2拡張ハンド38は、ピン38eと貫通孔87bとの係合に加えて、一対の指38cによる挟持によっても、第1保護カバー87を保持する。
【0091】
第1ロボットアーム1は、この状態から第1エンドエフェクタ3をさらに上昇させる。最終的に、第1保護カバー87は、スロット84から引き抜かれる。第1除去動作は、除去動作の一例である。
【0092】
第1除去動作では、スロット84は、第2ロボットアーム4によって保持されている。そのため、第1保護カバー87がガイド84gに沿って摺動する際に、スロット84の位置は変わらない。これにより、第1保護カバー87の引き抜き、即ち、取り外しを円滑に行うことができる。
【0093】
第1保護カバー87が取り除かれると、制御部7は、CPU81をスロット84に取り付ける取付動作を第1ロボットアーム1に実行させる。取付動作の間、第2ロボットアーム4は、スロット84を起立状態で保持した状態を維持する。図15は、取付動作における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。図16は、取付動作における、第2拡張ハンド38のピン38eを中心とする部分断面図である。この取付動作は、保持装置で保持された状態のスロットに電子部品を第1ロボットアームによって取り付ける工程に相当する。
【0094】
取付動作では、第1エンドエフェクタ3は、第2拡張ハンド38を用いる。つまり、第1ロボットアーム1は、第1除去動作に引き続いて、第2拡張ハンド38を用いて取付動作を実行する。第1エンドエフェクタ3は、CPU置き場94に収容された一のCPU81を取り出す。第1ロボットアーム1は、CPU置き場94の一のCPU81のキャリアフレーム86の貫通孔86bに第2拡張ハンド38のピン38eが挿入され且つ、一対の指38cの間にキャリアフレーム86が配置されるように、第1エンドエフェクタ3を移動させる。この時点では、一対の指38cは、互いに比較的離間しており、キャリアフレーム86には接触していない。
【0095】
第1ロボットアーム1は、この状態から第1エンドエフェクタ3を上昇させる。これにより、図15に示すように、ピン38eが貫通孔86bに係合し、キャリアフレーム86が持ち上げられる。
【0096】
キャリアフレーム86がCPU置き場94から少し持ち上げられると、第2拡張ハンド38は、一対の指38cによってキャリアフレーム86を挟持する。これにより、第2拡張ハンド38は、ピン38eと貫通孔86bとの係合に加えて、一対の指38cによる挟持によっても、キャリアフレーム86を保持する。
【0097】
この状態で、第1ロボットアーム1は、図16に示すように、CPU81(具体的には、キャリアフレーム86)がスロット84のガイド84gに短辺部分84bの側から挿入されるように第1エンドエフェクタ3を移動させる。第1ロボットアーム1が第1エンドエフェクタ3を下降させることによって、キャリアフレーム86がガイド84gを摺動して、スロット84内に進入していく。
【0098】
ここで、第1エンドエフェクタ3を下降させ続けると、キャリアフレーム86を挟持する一対の指38cがキャリアフレーム86に干渉してしまう。そのため、一対の指38cがキャリアフレーム86に接触する前に、第2拡張ハンド38は、一対の指38cをスロット84に干渉しない位置まで離間させ、キャリアフレーム86の挟持を解除させる。このとき、第2拡張ハンド38は、図15に示すように、ピン38eと貫通孔86bとの係合によって、キャリアフレーム86を保持している。
【0099】
その後、第1ロボットアーム1は、第1エンドエフェクタ3をさらに下降させる。これにより、キャリアフレーム86は、ガイド84gに沿って、スロット84内に最後まで挿入される。
【0100】
尚、取付動作の完了後に、第2ロボットアーム4は、起立状態のスロット84の保持を解除する。これにより、スロット84は、起立状態から自然状態へと回転移動する。
【0101】
この取付動作において、スロット84は、第2ロボットアーム4によって起立状態で保持されている。つまり、スロット84の位置は固定されている。この固定されたスロット84のガイド84gに対し、CPU81がスロット84の短辺部分84bの側から挿入される。第2ロボットアーム4がスロット84を保持しているので、CPU81がガイド84gに挿入される際、及び、CPU81がガイド84gに沿って摺動している際に、スロット84の位置は変わらない。
【0102】
このように、取付動作では、第1ロボットアーム1は、第2ロボットアーム4で保持された状態のスロット84にCPU81を取り付ける。これにより、第1ロボットアーム1は、CPU81をガイド84gに正確に挿入することができると共にCPU81をガイド84gに対して安定的に摺動させることができる。つまり、CPU81が損傷しないように慎重な、スロット84へのCPU81の取付を実現することができる。
【0103】
次に、制御部7は、スロット84を倒伏させる倒伏動作を第1ロボットアーム1に実行させる。
【0104】
倒伏動作では、第1エンドエフェクタ3は、第1拡張ハンド37を用いる。第1ロボットアーム1は、自然状態のスロット84を第1拡張ハンド37の爪37cによって倒伏状態の方向へ回転移動させるように第1エンドエフェクタ3を移動させる。スロット84は、爪37cに押圧されることによって、ねじりコイルバネの弾性力に抗して、倒伏状態となるように回転移動していく。
【0105】
スロット84が倒伏状態の直前まで回転移動すると、制御部7は、スロット84をロック状態にするロック動作を第1ロボットアーム1に実行させる。図17は、ロック動作における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。
【0106】
ロック動作では、第1エンドエフェクタ3は、倒伏動作に引き続き、第1拡張ハンド37を用いる。第1ロボットアーム1は、第1拡張ハンド37の爪37c突片84f,84fの上に位置するように第1エンドエフェクタ3を移動させる。その状態で、第1ロボットアーム1は、爪37cがスロット84を上から押すように第1エンドエフェクタ3を下方に移動させる。スロット84を形成する長辺部分84a,84c等の線条が多少弾性変形することによって、スロット84の第2係合部84h,84hがベースフレーム83の第1係合部83e,83eに係合する。その結果、スロット84が倒伏状態でロックされる。
【0107】
続いて、制御部7は、固定フレーム85を倒伏させるフレーム閉じ動作を第1ロボットアーム1に実行させる。フレーム閉じ動作では、第1エンドエフェクタ3は、ロック動作に引き続き、第1拡張ハンド37を用いる。第1ロボットアーム1は、第1拡張ハンド37の爪37cが自然状態の固定フレーム85を倒伏状態へ回転移動させるように第1エンドエフェクタ3を移動させる。固定フレーム85は、爪37cに押圧されることによって、ねじりコイルバネの弾性力に抗して、倒伏状態となるように回転移動していく。固定フレーム85が倒伏状態まで回転すると、第1ロボットアーム1は、そのまま停止して、固定フレーム85を倒伏状態のまま維持する。
【0108】
最後に、制御部7は、固定フレーム85をネジ固定する固定動作を第2ロボットアーム4に実行させる。固定動作では、第2エンドエフェクタ6は、第4拡張ハンド68を用いる。第2ロボットアーム4は、固定フレーム85を固定するネジの頭の溝に第4拡張ハンド68のビット68cの先端が嵌るように第2エンドエフェクタ6を移動させる。ビット68cの先端がネジの溝に嵌ると、第4拡張ハンド68がネジを締め、固定フレーム85をネジ固定する。制御部7は、この動作を、固定フレーム85を固定するネジの個数だけ実行させる。これにより、固定フレーム85がマザーボード8にネジで固定される。
【0109】
以上で、マザーボード8へのCPU81の取り付けが完了する。CPU81の取り付けが完了すると、ベルトコンベア91のストッパが解除され、トレー93が搬送されていき、次のトレー93が搬送されてくる。
【0110】
このようなCPU81の取り付けによれば、CPU81は、マザーボード8に回転可能に連結されたスロット84を介してCPUソケット82に取り付けられるため、CPU81を高い位置決め精度でCPUソケット82に取り付けることができる。その一方で、高い位置決め精度が実現されるが故に、スロット84へのCPU81の取り付けにはあまり余裕がない。具体的には、CPU81とスロット84のガイド84gとの間にはあまり余裕がない。それに加えて、スロット84は、マザーボード8に対して回転可能なので、安定していない。それに対し、ロボット100によれば、第2ロボットアーム4によってスロット84を保持することによって、スロット84を所定の姿勢に維持させる、即ち、スロット84の位置を固定することができる。この状態において、第1ロボットアーム1でCPU81をスロット84に取り付けることによって、CPU81を破損しないように安定的にCPU81をスロット84へ取り付けることができる。
【0111】
以上のように、ロボット100(電子部品取付装置)は、マザーボード8(基板)に設けられたCPUソケット82(ソケット)に、所定の軸L回りに回転可能にマザーボード8に連結されたスロット84を介してCPU81(電子部品)を取り付ける。ロボット100は、第1ロボットアーム1と、スロット84を所定の位置で保持する第2ロボットアーム4(保持装置)と、第1ロボットアーム1を制御する制御部7とを備え、制御部7は、CPU81をスロット84に取り付ける取付動作を第1ロボットアーム1に実行させ、取付動作では、第1ロボットアーム1は、第2ロボットアーム4で保持された状態のスロット84にCPU81を取り付ける。
【0112】
換言すると、ロボット100による電子部品取付方法は、マザーボード8に設けられたCPUソケット82(ソケット)に、所定の軸L回りに回転可能にマザーボード8に連結されたスロット84を介してCPU81(電子部品)を取り付ける電子部品取付方法である。この電子部品取付方法は、スロット84を所定の位置で第2ロボットアーム4(保持装置)によって保持する工程と、第2ロボットアーム4で保持された状態のスロット84にCPU81を第1ロボットアーム1によって取り付ける工程とを含む。
【0113】
これらの構成によれば、第2ロボットアーム4によってスロット84を保持することによって、スロット84を安定した状態に維持することができる。保持されたスロット84に対して第1ロボットアーム1がCPU81を取り付けるので、第1ロボットアーム1は、スロット84の変動を考慮する必要がなく、固定されたスロット84に対してCPU81を取り付ければよい。その結果、スロット84へのCPU81の安定的な取り付けを実現することができる。
【0114】
また、第2ロボットアーム4は、保持装置として機能し、制御部7は、スロット84を保持する保持動作を第2ロボットアーム4に実行させる。
【0115】
この構成によれば、保持装置が第2ロボットアーム4によって実現されるので、保持動作の自由度を向上させることができる。例えば、第2ロボットアーム4によってスロット84を保持する際のスロット84の位置を柔軟に変更することができる。
【0116】
さらに、スロット84は、マザーボード8に倒伏してCPU81をCPUソケット82に載置する倒伏状態とマザーボード8から起き上がった起立状態との間で回転移動可能に構成され、第2ロボットアーム4は、スロット84を起立状態で保持する。
【0117】
この構成によれば、スロット84の倒伏状態では、スロット84がCPUソケット82に近接しており、スロット84の周囲にスペースが少ない。それに対し、第2ロボットアーム4は、起立状態でスロット84を保持することによって、スロット84の周囲にスペースを確保しやすくなる。その結果、第2ロボットアーム2によるスロット84の保持及び第1ロボットアーム1によるスロット84へのCPU81の取り付けが容易になる。
【0118】
また、スロット84には、CPU81が取り付けられる前には、CPUソケット82を保護するための第1保護カバー87が取り付けられており、制御部7は、取付動作よりも前に、スロット84から第1保護カバー87を取り除く第1除去動作(除去動作)を第1ロボットアーム1に実行させる。
【0119】
この構成によれば、CPU81の取り付け前にスロット84から第1保護カバー87を取り除く必要がある。そこで、第1ロボットアーム1が第1保護カバー87をスロット84から取り除く。
【0120】
さらに、第1除去動作では、第2ロボットアーム4は、スロット84を保持している。
【0121】
この構成によれば、第1除去動作においても、第2ロボットアーム4によってスロット84を保持することによって、スロット84を安定した状態に維持することができる。保持されたスロット84から第1ロボットアーム1が第1保護カバー87を取り外すので、第1ロボットアーム1は、スロット84の変動を考慮する必要がなく、固定されたスロット84から第1保護カバー87を取り外せばよい。その結果、スロット84からの第1保護カバー87の安定的な取り外しを実現することができる。
【0122】
《実施形態2》
続いて、実施形態2に係る双腕ロボット100について説明する。実施形態2に係る双腕ロボット100の基本的な構成は、実施形態1と同じである。主に、実施形態2に係る双腕ロボット100の動作内容が、実施形態1と異なる。以下、実施形態2に係る双腕ロボット100の構成のうち実施形態1と同様の構成には、同様の符号を付して説明を省略する。
【0123】
第1エンドエフェクタ3は、第5拡張ハンド237と第6拡張ハンド238とを選択的に把持する。図18は、第5拡張ハンド237の斜視図である。図19は、第6拡張ハンド238の斜視図である。
【0124】
第5拡張ハンド237は、シングルチャック型のハンドである。第5拡張ハンド237は、ベース237aと、ベース237aに設けられたガイド237bと、ガイド237bに支持された一対の指237cと、一対の指237cを駆動するアクチュエータと、ベース237aに設けられた円筒状のグリップ237eとを有している。
【0125】
一対の指237cは、横方向に並び、概ね上下方向に延びている。指237cの先端には、前後方向に延びる爪237dが設けられている。一対の指237cは、横方向に離間又は接近するようにガイド237bに支持されている。アクチュエータは、例えば、エアシリンダである。アクチュエータは、配管及び電磁弁(図示省略)を介してエアコンプレッサ(図示省略)に接続されている。アクチュエータが一対の指237cを移動させる方向は、電磁弁によって切り替えられる。つまり、一対の指237cが互いに離間する方向に移動するか、互いに接近する方向に移動するかが電磁弁によって切り替えられる。第1ハンド31は、グリップ237eを把持する。
【0126】
第6拡張ハンド238は、シングルチャック型のハンドである。第6拡張ハンド238は、ベース238aと、ベース238aに設けられたガイド238bと、ガイド238bに支持された一対の指238cと、一対の指238cを駆動するアクチュエータと、ベース238aに設けられた円筒状のグリップ238dとを有している。
【0127】
一対の指238cは、横方向に並び、概ね上下方向に延びている。一対の指238cは、前後方向に離間又は接近するようにガイド238bに支持されている。第6拡張ハンド238は、一対の指238cを駆動するアクチュエータを有している。アクチュエータは、例えば、エアシリンダである。アクチュエータは、配管及び電磁弁(図示省略)を介してエアコンプレッサ(図示省略)に接続されている。アクチュエータが一対の指238cを移動させる方向は、電磁弁によって切り替えられる。つまり、一対の指238cが互いに離間する方向に移動するか、互いに接近する方向に移動するかが電磁弁によって切り替えられる。第1ハンド31は、グリップ238dを把持する。
【0128】
第2エンドエフェクタ6は、第7拡張ハンド267と第4拡張ハンド68とを選択的に把持する。図20は、第7拡張ハンド267の斜視図である。
【0129】
第7拡張ハンド267は、シングルチャック型のハンドである。第7拡張ハンド267は、ベース267aと、ベース267aに設けられたガイド267bと、ガイド267bに支持された一対の指267cと、一対の指267cを駆動するアクチュエータと、ベース267aに設けられた円筒状のグリップ267eとを有している。
【0130】
一対の指267cは、横方向に並び、概ね上下方向に延びている。指267cの先端には、前後方向に延びる爪267dが設けられている。一対の指267cは、横方向に離間又は接近するようにガイド267bに支持されている。第7拡張ハンド267は、一対の指267cを駆動するアクチュエータを有している。アクチュエータは、例えば、エアシリンダである。アクチュエータは、配管及び電磁弁(図示省略)を介してエアコンプレッサ(図示省略)に接続されている。アクチュエータが一対の指267cを移動させる方向は、電磁弁によって切り替えられる。つまり、一対の指267cが互いに離間する方向に移動するか、互いに接近する方向に移動するかが電磁弁によって切り替えられる。第2ハンド61は、グリップ267eを把持する。
【0131】
実施形態2の制御部7の構成は、実施形態1と同様である。ただし、記憶部72に記憶された基本プログラム及び各種データ等の情報は、実施形態2の動作に対応するものとなっている。また、演算部71は、電磁弁34、64等に加えて、第5拡張ハンド237の電磁弁等にも制御信号を出力する。
【0132】
続いて、実施形態2に係るロボット100によるCPU81の取付作業について説明する。ロボット100は、トレー93に乗せられて運ばれてくるマザーボード8にCPU81を取り付ける。
【0133】
尚、マザーボード8がロボット100に搬送されてきたときには、CPUソケット82には第2保護カバー88が取り付けられ(図22,23等参照)、スロット84には第1保護カバー87が取り付けられている。第2保護カバー88は、ベースフレーム83に載置されている。ベースフレーム83に載置された第2保護カバー88を、スロット84に取り付けられた第1保護カバー87が覆っている。第1保護カバー87及び第2保護カバー88は、CPUソケット82を保護するために設けられている。尚、第1保護カバー87及び第2保護カバー88の一方を省略してもよい。
【0134】
制御部7は、まず、固定フレーム85のネジ固定を解除する固定解除動作を第2ロボットアーム4に実行させる。この固定解除動作は、実施形態1の固定解除動作と同様である。第2エンドエフェクタ6は、第4拡張ハンド68を用いて、固定フレーム85のネジを取り外す。
【0135】
固定解除動作後、固定フレーム85がねじりコイルバネの弾性力によって起立状態まで自然に起き上がらない場合、又は、固定フレーム85にねじりコイルバネが設けられていない場合には、制御部7は、固定フレーム85を起き上がらせるフレーム開け動作を第1ロボットアーム1に実行させる。フレーム開け動作では、第1エンドエフェクタ3は、第1拡張ハンド37を用いる。第1ロボットアーム1は、第5拡張ハンド237の一対の指237cの爪237d,237dの先端を固定フレーム85に引っ掛けて、固定フレーム85を起立状態まで起き上がらせる。
【0136】
その後、制御部7は、倒伏状態のスロット84のロックを解除するロック解除動作を第1ロボットアーム1に実行させる。
【0137】
ロック解除動作では、第1エンドエフェクタ3は、第5拡張ハンド237を用いる。第1ロボットアーム1は、第5拡張ハンド237の一対の指237cの爪237d,237dが倒伏状態のスロット84の2つの突片84f,84fの下方に位置するように第1エンドエフェクタ3を移動させる。第1ロボットアーム1は、第5拡張ハンド237を上昇させる。これによって、爪237d,237dが突片84f,84fを上方へ押し上げる。スロット84を形成する長辺部分84a,84c等の線条が多少弾性変形することによって、スロット84の第2係合部84h,84hがベースフレーム83の第1係合部83e,83eから離脱する。こうして、スロット84のロックが解除される。ロック解除動作は、解除動作の一例である。
【0138】
ロック解除動作後、スロット84がねじりコイルバネの弾性力によって自然状態まで自然に起き上がらない場合、又は、スロット84にねじりコイルバネが設けられていない場合には、制御部7は、スロット84を起き上がらせる起立動作を第2ロボットアーム4に実行させる。図21は、ロック解除動作の完了後における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。尚、実施形態1の説明で用いるマザーボード8の側面図は、ロボット100と対向する側からマザーボード8を見た側面図である。
【0139】
起立動作では、第2エンドエフェクタ6は、第7拡張ハンド267を用いる。第2ロボットアーム4は、第3拡張ハンド267の一対の指267cの爪267d,267dの間にスロット84の一対の長辺部分84a,84cが位置するように第2エンドエフェクタ6を移動させる。第7拡張ハンド267は、爪267d,267dに一対の長辺部分84a,84cを外側から把持させる。第7拡張ハンド267が一対の長辺部分84a,84cを把持した状態で、第2ロボットアーム4は、スロット84が起き上がるように第2エンドエフェクタ6を移動させる。起立動作の開始時は、第1ロボットアーム1は、第5拡張ハンド237によって2つの突片84f,84fを押し上げた状態を維持している。
【0140】
第7拡張ハンド267がスロット84を挟持できる位置への第2エンドエフェクタ6の移動は、第1ロボットアーム1のロック解除動作中に行なわれてもよい。その場合、スロット84のロックが解除されるとすぐに、第2ロボットアーム4が起立動作を実行することができる。
【0141】
起立動作が完了すると、制御部7は、スロット84を起立状態で保持する保持動作を第2ロボットアーム4に実行させる。図22は、保持動作における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。
【0142】
保持動作においては、第2ロボットアーム4は、第7拡張ハンド267によって起立状態のスロット84を保持する。具体的には、第7拡張ハンド267は、爪267d,267dで一対の長辺部分84a,84cを外側から把持する。これは、第2ロボットアーム6が起立動作を完了したときの状態である。つまり、制御部7は、第2ロボットアーム4が起立動作を完了した状態を維持させる。これにより、スロット84は、起立状態が維持される。この保持動作は、スロットを所定の位置で保持装置によって保持する工程に相当する。
【0143】
その状態で、制御部7は、スロット84から第1保護カバー87を取り除く第1除去動作を第1ロボットアーム1に実行させる。図23は、第1除去動作における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の側面図である。
【0144】
第1除去動作では、第1エンドエフェクタ3は、第6拡張ハンド238を用いる。第1ロボットアーム1は、第6拡張ハンド238の一対の指238cの間に第1保護カバー87の突片87aが位置するように第1エンドエフェクタ3を移動させる。第6拡張ハンド238は、一対の指238cで突片87aを把持する。この状態で、第1ロボットアーム1は、図23に示すように、第1保護カバー87がガイド84gに沿って抜き出る方向へ第1エンドエフェクタ3を移動させる。これにより、第1保護カバー87がスロット84から取り除かれる。第1除去動作は、除去動作の一例である。
【0145】
第1除去動作では、スロット84は、第2ロボットアーム4によって保持されている。そのため、第1保護カバー87がガイド84gに沿って摺動する際に、スロット84の位置は変わらない。これにより、第1保護カバー87の引き抜き、即ち、取り外しを円滑に行うことができる。
【0146】
第1保護カバー87が取り除かれると、制御部7は、CPU81をスロット84に取り付ける取付動作を第1ロボットアーム1に実行させる。図24は、取付動作における、CPUソケット82を中心とするマザーボード8の斜視図である。
【0147】
取付動作では、第1エンドエフェクタ3は、第1除去動作に引き続き、第6拡張ハンド238を用いる。第1エンドエフェクタ3は、CPU置き場94に収容された一のCPU81を取り出す。第1ロボットアーム1は、CPU置き場94の一のCPU81のキャリアフレーム86の突片86aが第6拡張ハンド238の一対の指238cの間に位置するように第1エンドエフェクタ3を移動させる。第6拡張ハンド238は、一対の指238cで突片86aを把持する。この状態で、第1ロボットアーム1は、図24に示すように、CPU81(具体的には、キャリアフレーム86)がスロット84のガイド84gに挿入されるように第1エンドエフェクタ3を移動させる。この取付動作は、保持装置で保持された状態のスロットに電子部品を第1ロボットアームによって取り付ける工程に相当する。
【0148】
詳しくは、スロット84は、第2ロボットアーム4によって起立状態で保持されている。つまり、スロット84の位置は固定されている。この固定されたスロット84のガイド84gに対し、CPU81がスロット84の短辺部分84bの側から挿入される。第2ロボットアーム4がスロット84を保持しているので、CPU81がガイド84gに沿って摺動している際に、スロット84の位置は変わらない。
【0149】
このように、取付動作では、第1ロボットアーム1は、第2ロボットアーム4で保持された状態のスロット84にCPU81を取り付ける。これにより、CPU81が損傷しないように慎重な、スロット84へのCPU81の挿入を実現することができる。
【0150】
CPU81の取り付けが完了すると、制御部7は、第2保護カバー88を取り除く第2除去動作を第1ロボットアーム1に実行させる。第2除去動作では、第1エンドエフェクタ3は、第5拡張ハンド237を用いる。第1ロボットアーム1は、第2保護カバー88が第5拡張ハンド237の一対の指237cの爪237d,237dの間に位置するように第1エンドエフェクタ3を移動させる。第5拡張ハンド237は、爪237d,237dで第2保護カバー88を把持する。この状態で、第1ロボットアーム1は、第2保護カバー88を取り除くように第1エンドエフェクタ3を移動させる。これにより、第2保護カバー88が取り除かれる。
【0151】
次に、制御部7は、スロット84を倒伏させる倒伏動作を第2ロボットアーム4に実行させる。
【0152】
倒伏動作では、第2エンドエフェクタ6は、第7拡張ハンド267を用いる。第2ロボットアーム4は、ここまでスロット84の保持を継続している。第2ロボットアーム4は、その状態から、スロット84が倒伏するように第2エンドエフェクタ6を移動させる。第2ロボットアーム4は、スロット84がロックされる直前、即ち、倒伏状態の直前まで倒伏させる。
【0153】
スロット84が倒伏状態の直前まで達すると、制御部7は、スロット84をロック状態にするロック動作を第1ロボットアーム1に実行させる。
【0154】
ロック動作では、第1エンドエフェクタ3は、第5拡張ハンド237を用いる。第1ロボットアーム1は、第5拡張ハンド237の一対の指237cの爪237d,237dがスロット84の上に位置するように第1エンドエフェクタ3を移動させる。具体的には、第5拡張ハンド237の爪237d,237dをスロット84の突片84f,84fの上に移動させる。その状態で、第1ロボットアーム1は、第5拡張ハンド237の爪237d,237dがスロット84を上から押すように第1エンドエフェクタ3を下方に移動させる。スロット84を形成する長辺部分84a,84c等の線条が多少弾性変形することによって、スロット84の第2係合部84h,84hがベースフレーム83の第1係合部83e,83eに係合する。その結果、スロット84が倒伏状態でロックされる。
【0155】
続いて、制御部7は、固定フレーム85を倒伏させるフレーム閉じ動作を第1ロボットアーム1に実行させる。フレーム閉じ動作では、第1エンドエフェクタ3は、ロック動作に引き続き、第5拡張ハンド237を用いる。第1ロボットアーム1は、第5拡張ハンド237の一対の指237cの爪237d,237dが固定フレーム85(具体的には、倒伏状態のときに上面となる部分)に接触するように第1エンドエフェクタ3を移動させる。第1ロボットアーム1は、その状態から第5拡張ハンド237の爪237d,237dで固定フレーム85を倒伏状態となる方向へ押圧するように、第1エンドエフェクタ3を移動させる。
【0156】
最後に、制御部7は、固定フレーム85をネジ固定する固定動作を第2ロボットアーム4に実行させる。固定動作では、第2エンドエフェクタ6は、第4拡張ハンド68を用いる。第2ロボットアーム4は、固定フレーム85を固定するネジの頭の溝に第4拡張ハンド68のビット68cの先端が嵌るように第2エンドエフェクタ6を移動させる。このとき、第1ロボットアーム1は、フレーム閉じ動作の完了後、第5拡張ハンド237で固定フレーム85を上から押さえている。ビット68cの先端がネジの溝に嵌ると、第4拡張ハンド68がネジを締め、固定フレーム85をネジ固定する。制御部7は、この動作を、固定フレーム85を固定するネジの個数だけ実行させる。これにより、固定フレーム85がマザーボード8にネジで固定される。
【0157】
以上で、マザーボード8へのCPU81の取り付けが完了する。
【0158】
このようなCPU81の取り付けによれば、CPU81は、マザーボード8に回転可能に連結されたスロット84を介してCPUソケット82に取り付けられるため、CPU81を高い位置決め精度でCPUソケット82に取り付けることができる。それに加えて、ロボット100によれば、第2ロボットアーム4によってスロット84を保持することによって、スロット84を所定の姿勢に維持させる、即ち、スロット84の位置を固定することができる。この状態において、第1ロボットアーム1でCPU81をスロット84に取り付けることによって、CPU81を破損しないように安定的にCPU81をスロット84へ取り付けることができる。
【0159】
以上のように、実施形態2に係るロボット100は、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0160】
それに加えて、制御部7は、取付動作よりも前に、スロット84を倒伏状態から起立状態へ起き上がらせる起立動作を第2ロボットアーム4に実行させる。
【0161】
この構成によれば、CPU81を取り付ける際にスロット84が倒伏状態になっている場合には、取付動作の前にスロット84を起立状態に起き上がらせる必要がある。このとき、制御部7は、起立動作を第2ロボットアーム4に実行させる。第2ロボットアーム4は、取付動作においてスロット84の保持動作を実行するので、起立動作の後、そのまま保持動作に移行することができる。
【0162】
また、スロット84は、倒伏状態においてマザーボード8にロックされるように構成されており、制御部7は、取付動作よりも前に、倒伏状態のスロット84のロックを解除する解除動作を第1ロボットアーム4に実行させる。
【0163】
この構成によれば、スロット84が倒伏状態でロックされている場合には、第1ロボットアーム1がスロット84のロックを解除する。ロック解除の後には第2ロボットアーム4による起立動作が実行される。第1ロボットアーム1に解除動作を行わせることによって、第2ロボットアーム4には、起立動作に備えさせることができる。その結果、第1ロボットアーム1による解除動作の後、第2ロボットアーム4による起立動作に円滑に移行することができる。
【0164】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0165】
例えば、電子部品は、CPU81に限定されない。電子部品は、例えば、ICデバイスであってもよく、より具体的には、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)であってもよい。
【0166】
また、ソケットは、CPUソケット82に限定されない。ソケットは、例えば、ICソケットであってもよい。
【0167】
スロット84を保持する保持装置は、第2ロボットアーム4に限定されない。例えば、スロット84を保持する専用機を保持装置として設けてもよい。
【0168】
また、第2ロボットアーム4、即ち、保持装置によって保持されるスロット84の位置は、倒伏状態に比べて、マザーボード8から起き上がった位置であれば、任意の位置に設定することができる。
【0169】
第2ロボットアーム4がスロット84の保持動作を行い、第1ロボットアーム1がCPU81の取付動作を行う限りは、それ以外の動作は、可能な範囲で第1ロボットアーム1及び第2ロボットアーム4の何れが行ってもよい。
【0170】
1台の双腕ロボット100が第1ロボットアーム1及び第2ロボットアーム4を備える構成に限定されない。例えば、第1ロボットアーム1は、一のロボットに設けられ、第2ロボットアーム4は、別のロボットに設けられていてもよい。つまり、2台のロボットで前述の動作を実現してもよい。
【符号の説明】
【0171】
100 双腕ロボット
1 第1ロボットアーム
4 第2ロボットアーム(保持装置)
8 マザーボード(基板)
81 CPU(電子部品)
82 CPUソケット(ソケット)
84 スロット
87 第1保護カバー(保護カバー)
L 軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図11
図12
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図20
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