(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6555 20140101AFI20240105BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240105BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240105BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240105BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240105BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240105BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20240105BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/613
H01M10/633
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/615
H01M10/617
(21)【出願番号】P 2020148416
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527684(JP,A)
【文献】国際公開第2013/009759(WO,A2)
【文献】特開2003-163103(JP,A)
【文献】特開2003-258323(JP,A)
【文献】国際公開第2013/088702(WO,A1)
【文献】特開2016-081836(JP,A)
【文献】特開2011-014436(JP,A)
【文献】特開2018-063767(JP,A)
【文献】特表2021-520027(JP,A)
【文献】国際公開第2019/203969(WO,A1)
【文献】特開2020-017509(JP,A)
【文献】特開2006-127920(JP,A)
【文献】特開2021-106124(JP,A)
【文献】特開2007-213939(JP,A)
【文献】特開2019-192381(JP,A)
【文献】特開2008-027661(JP,A)
【文献】国際公開第2005/013408(WO,A1)
【文献】特開平11-354166(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010252(WO,A1)
【文献】特開2010-067386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6555
H01M 10/613
H01M 10/633
H01M 10/651
H01M 10/625
H01M 10/615
H01M 10/617
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板及び負極板が収容されているケースを備える電池セルと、
前記ケースの表面と対面している第1放熱板と、
前記ケースの表面と対面しており、前記第1放熱板から間隔を空けて配置されている第2放熱板と、
前記第1放熱板と前記第2放熱板に接続されており、前記ケースの表面に対面している発熱部材と、
を備えており、
前記第1放熱板から前記発熱部材を介して前記第2放熱板へ通電可能に構成されている、
電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールであって、
前記発熱部材は、樹脂を含有している、電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池モジュールであって、
前記発熱部材は、前記ケースを平面視したときに、前記ケースの外周側における厚みが、前記ケースの中央側における厚みよりも厚い、電池モジュール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電池モジュールであって、
前記発熱部材は、前記ケースを平面視したときに、少なくとも前記ケースの角部に対面するように配置されている、電池モジュール。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電池モジュールであって、
前記第1放熱板及び前記第2放熱板は、平面視において、前記ケースの中心部から放射状に延びるとともに、前記ケースの外周方向に沿って交互に配置されている、電池モジュール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電池モジュールであって、
前記発熱部材に流れる電流を制御する制御部と、
前記電池セルの温度を検出するセル温度検出部と、をさらに備えており、
前記制御部は、前記セル温度検出部により検出された前記電池セルの温度が、第1閾値よりも低い場合に、前記発熱部材に通電するように構成されている、電池モジュール。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電池モジュールであって、
前記発熱部材に流れる電流を制御する制御部と、
前記発熱部材の温度を検出する発熱部材温度検出部と、
外気温を検出する外気温検出部と、をさらに備えており、
前記制御部は、前記外気温が所定の値よりも低い場合に前記発熱部材の制御温度を算出し、前記発熱部材の温度が前記制御温度に一致するように、前記発熱部材に流れる電流を制御する、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に電池モジュールが開示されている。特許文献1の電池モジュールは、電池セルと、電池セルの表面と対面している放熱板とを備えている。放熱板により、電池セルの熱が放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池モジュールを低温環境(例えば、寒冷地や高い高度)で使用する場合、電極間の抵抗が増大することに起因して電池モジュールの性能が低下する。このため、電池セルを加熱して使用することが望まれる。特許文献1の技術では、電池セルを放熱することは可能であるものの、電池セルを加熱することができない。本明細書では、電池セルの放熱及び加熱を効率よく行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する電池モジュールは、正極板及び負極板が収容されているケースを備える電池セルと、前記ケースの表面と対面している第1放熱板と、前記ケースの表面と対面しており、前記第1放熱板から間隔を空けて配置されている第2放熱板と、前記第1放熱板と前記第2放熱板に接続されており、前記ケースの表面に対面している発熱部材と、を備えている。前記第1放熱板から前記発熱部材を介して前記第2放熱板へ通電可能に構成されている。
【0006】
電池モジュールの使用時(例えば、発電時や充電時)には、電池セルが発熱することがある。上記の構成では、電池セルの熱を、第1放熱板及び第2放熱板を介して電池セルの周囲に放熱することができる。一方で、上記の電池モジュールは、第1放熱板と第2放熱板に接続された発熱部材を備えており、第1放熱板から発熱部材を介して第2放熱板へ通電可能に構成されている。したがって、電池モジュールを低温環境で使用する際には、発熱部材へ通電して発熱部材を発熱させることにより、電池セルを加熱することができる。このため、電池モジュールを低温環境で使用する際に、その性能が低下することを抑制することができる。このように、上記の電池モジュールでは、電池セルの放熱に利用する放熱板を、発熱部材へ通電するため(発熱部材を発熱させるため)の電極として併用することができる。このため、電池モジュールの状態や周囲の環境に応じて、電池セルの放熱及び加熱を効率よく行うことができる。
【0007】
前記発熱部材は、樹脂を含有していてもよい。
【0008】
この構成では、発熱部材が比較的軽量で薄膜となるため、電池モジュール全体の重量や体格を小さくすることができる。
【0009】
前記発熱部材は、前記ケースを平面視したときに、前記ケースの外周側における厚みが、前記ケースの中央側における厚みよりも厚くてもよい。
【0010】
電池モジュールが発熱する際には、電池セルの中心部がより高温になり易い。すなわち、電池セルのケースの外周部は、中心部と比較して昇温し難い。ここで、発熱部材は、厚みが厚いほど通電したときの発熱量が大きい。このため、上記の構成のように、ケースの外周側における厚みを中央側における厚みよりも厚くすることにより、ケースの外周側における発熱部材の発熱量を、ケースの中央側における発熱部材の発熱量よりも大きくすることができる。したがって、上記の構成によれば、効率よく電池セルを加熱することができ、ケースの各位置における温度を均一化することができる。
【0011】
前記発熱部材は、前記ケースを平面視したときに、少なくとも前記ケースの角部に対面するように配置されていてもよい。
【0012】
上述の通り、電池モジュールが発熱する際には、電池セルのケースの角部は、最も高温になり易い中心部から離れた部分に位置しているため、昇温し難い。上記の構成では、少なくともこのような角部が発熱部材により覆われている。このため、効率よく電池セルを加熱することができ、ケースの各位置における温度を均一化することができる。
【0013】
前記第1放熱板及び前記第2放熱板は、平面視において、前記ケースの中心部から放射状に延びるとともに、前記ケースの外周方向に沿って交互に配置されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、電池セルの中心部の熱を放射方向に放熱することができる。したがって、電池セルの放熱性が向上する。
【0015】
前記発熱部材に流れる電流を制御する制御部と、前記電池セルの温度を検出するセル温度検出部と、をさらに備えてもよい。前記制御部は、前記セル温度検出部により検出された前記電池セルの温度が、第1閾値よりも低い場合に、前記発熱部材に通電するように構成されていてもよい。
【0016】
上記の構成では、電池セルの温度が第1閾値よりも低い場合に、発熱部材に通電して電池セルを加熱する。例えば、第1閾値を電池モジュールの性能が低下し得る温度に設定することにより、効率よく電池セルを加熱することができる。
【0017】
前記発熱部材に流れる電流を制御する制御部と、前記発熱部材の温度を検出する発熱部材温度検出部と、外気温を検出する外気温検出部と、をさらに備えてもよい。前記制御部は、前記外気温が所定の値よりも低い場合に前記発熱部材の制御温度を算出し、前記発熱部材の温度が前記制御温度に一致するように、前記発熱部材に流れる電流を制御してもよい。
【0018】
外気温が比較的低い場合、電池セルの温度も低くなり易い。このため、上記の構成では、外気温が所定の値よりも低い場合に、当該外気温に応じた制御温度を算出する。そして、算出した制御温度に一致するように発熱部材に流れる電流を制御する。このような構成では、外気温に応じた温度に発熱部材を制御することができるため、効率よく電池セルを加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】電池モジュールが搭載された移動体の制御系の構成を示すブロック図。
【
図6】発熱部材を加熱する処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】発熱部材を加熱する処理の他の一例を示すフローチャート。
【
図8】外気温と発熱部材の制御温度の関係を示すグラフ。
【
図10】第3実施例に係る電池モジュールの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施例)
第1実施例に係る電池モジュール2について図面を参照して説明する。
図1~
図4に示すように、電池モジュール2は、電池セル50と、第1放熱板100と、複数の第2放熱板110と、複数の発熱部材120と、絶縁部材130(
図2~
図4参照)と、を備えている。電池セル50、絶縁部材130、各放熱板100、110、及び、発熱部材120は、Z方向に積層されている。電池モジュール2は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車、自律飛行可能な飛行装置(例えば無人航空機)等に搭載される。
【0021】
電池セル50は、例えばリチウムイオン二次電池である。電池セル50は、ケース51と、正極タブ52と、負極タブ53とを備えている。ケース51は、例えばラミネートフィルムや金属から構成されている。ケース51は略扁平形状に構成されている。ケース51のZ方向の厚みは、ケース51のX方向の幅及びY方向の幅と比較して薄く構成されている。ケース51は、平面視(
図1参照)において略長方形状に構成されている。ケース51の第1方向(Y方向)の幅B1は、ケース51の第2方向(X方向)の幅B2よりも狭い。第1方向(Y方向)と第2方向(X方向)は直交している。ケース51の内部には、複数の正極板と、複数の負極板と、複数のセパレータと、電解液とが収容されている(いずれも図示省略)。ケース51の内部の正極板と負極板とセパレータとは、ケース51の厚み方向(Z方向)に積層されている。ケース51の内部の構成については、例えばリチウムイオン二次電池の構成としてよく知られているので詳細な説明を省略する。
【0022】
電池セル50の正極タブ52及び負極タブ53は、ケース51から第1方向(Y方向)に突出している。正極タブ52及び負極タブ53は、ケース51の長辺(第2方向(X方向)に延びる辺)から外側に突出している。正極タブ52は、ケース51に収容されている正極板に電気的に接続されている。負極タブ53は、ケース51に収容されている負極板に電気的に接続されている。
【0023】
図2~
図4に示すように、ケース51の表面には、絶縁部材130が配置されている。絶縁部材130は、ケース51の表面の略全域を覆っている。絶縁部材130は、例えば、液晶ポリマーによって構成されている。
【0024】
各放熱板100、110は、絶縁部材130の表面に配置されている。各放熱板100、110は、電池セル50のケース51の表面と、絶縁部材130を介して対面している。各放熱板100、110は、例えば、銅やアルミニウム等の金属によって構成されている。各放熱板100、110は、略扁平形状に構成されている。各放熱板100、110のZ方向の厚みは、各放熱板100のX方向の幅及びY方向の幅と比較して薄く構成されている。
【0025】
第1放熱板100は、第1延在部100aと、第2延在部100bを備えている。第1延在部100aは、ケース51の中心部55を通ってY方向に延在している。第1延在部100aの長手方向の幅C1(Y方向の長さ)は、ケース51のY方向の幅B1よりも大きい。第1延在部100aは、平面視において、その長手方向における両端が、ケース51のY方向の両端から突出している。第2延在部100bは、ケース51の中心部55を通ってX方向に延在している。第2延在部100bの長手方向の幅C2(X方向の長さ)は、ケース51のX方向の幅B2よりも大きい。第2延在部100bは、平面視において、その長手方向における両端が、ケース51のX方向の両端から突出している。第1延在部100aと第2延在部100bとは、ケース51の中心部55において交差している。すなわち、第1延在部100aと第2延在部100bは、ケース51の中心部55で繋がっている。第1放熱板100は、平面視において略十字形状に構成されている。
【0026】
各第2放熱板110は、第1放熱板100の第1延在部100a及び第2延在部100bの延在方向に対して傾斜して延びている。具体的には、各第2放熱板110は、ケース51の中心から、ケース51の各角部56に向かってそれぞれ延びている。本実施例では、4つの第2放熱板110が配置されている。各第2放熱板110のそれぞれは、ケース51の各角部56よりも外側まで突出している。各第2放熱板110は、平面視において略長方形状に構成されている。各第2放熱板110は、第1放熱板100から間隔を空けて配置されている。
【0027】
上述した説明から明らかなように、各放熱板100、110は、ケース51の中心部55から放射状に延びている。また、第1放熱板100と第2放熱板110とは、ケース51の周方向に沿って交互に配置されている。
【0028】
図1に示すように、発熱部材120は、平面視において、ケース51の上部の4か所に配置されている。発熱部材120は、ケース51の各角部56を含むケース51の外周部に主に配置されている。発熱部材120は、主にエラストマーやプラスチック等の樹脂により構成されている。発熱部材120は、電流を流すことにより、発熱するように構成されている。
図1~
図3に示すように、発熱部材120は、電池セル50のケース51の表面と、絶縁部材130、第1放熱板100、第2放熱板110を介して対面している。発熱部材120は、第1放熱板100の表面から第2放熱板110の表面に跨るように配置されている。すなわち、発熱部材120は、第1放熱板100と第2放熱板110に接続されている。
図2に示すように、X方向に沿ったケース51の端面においては、ケース51の一方の端部(第2放熱板110の表面)から第1放熱板100の表面に跨る範囲と、ケース51の他方の端部から第1放熱板100の表面に跨る範囲とが発熱部材120によって覆われている。すなわち、
図2に示す断面においては、発熱部材120は、第1放熱板100の一部を除くケース51の上部全域を覆っている。また、
図3に示すように、ケース51の中央部分57には、発熱部材120は設けられていない。ケース51の中央部分57では、第1放熱板100と第2放熱板110が露出している。また、
図4に示すように、X方向に沿ってケース51の中心部55を通る断面においては、発熱部材120は設けられていない。Y方向に沿ってケース51の中心部55を通る断面においても同様である。すなわち、第1放熱板100の大部分は、発熱部材120に覆われていない。発熱部材120は、略一定の厚みを有している。発熱部材120は、スプレー法や印刷法といった公知の手法により被覆することができる。
【0029】
上述の通り、発熱部材120は、第1放熱板100と第2放熱板110とに接続されている。第1放熱板100と第2放熱板110とは、間隔を空けて配置されているため、これら放熱板100、110を電極として機能させることにより、発熱部材120に通電することができる。例えば、第1放熱板100と第2放熱板110とを外部電源(不図示)に接続することにより、各放熱板100、110を正極及び負極として機能させることができる。
【0030】
本実施例の電池モジュール2では、ケース51の表面に、絶縁部材130を介して対面する第1放熱板100及び第2放熱板110が配置されている。このため、電池セル50で発生した熱を、これらの放熱板100、110を介して電池セル50の周囲に放熱することができる。また、本実施例の電池モジュール2では、第1放熱板100と第2放熱板110に接続された発熱部材120がさらに配置されている。第1放熱板100及び第2放熱板110を電極として利用し、この発熱部材120へ通電することにより、発熱部材から生じた熱により、電池セル50を加熱することができる。したがって、例えば、電池モジュール2を低温環境で使用する際には、電池セル50を加熱することにより、その性能が低下することを抑制することができる。このように、本実施例の電池モジュール2では、放熱板100、110を、電池セル50の熱を放熱するためだけでなく、発熱部材120へ通電するための電極として利用することができる。このため、電池モジュール2の状態や周囲の環境に応じて、電池セル50の放熱及び加熱を効率よく行うことができる。
【0031】
また、本実施例では、発熱部材120が、主に樹脂により構成されている。したがって、電池セル50を加熱するために金属により構成された発熱体やヒータを採用する場合と比較して軽量となる。このため、電池モジュール2全体の重量や体格を小さくすることができる。
【0032】
また、本実施例では、発熱部材120は、ケース51を平面視したときに、ケース51の角部56を覆うように配置されている。ケース51の角部56は、最も高温になり易い中心部55から離れた部分に位置しているため、昇温し難い。したがって、角部56を発熱部材120により覆うことにより、昇温し難い部分を効率良く加熱することができ、ケース51の各位置における温度を均一化することができる。
【0033】
また、第1放熱板100及び第2放熱板110は、平面視において、ケース51の中心部55から放射状に延びるとともに、ケース51の外周方向に沿って交互に配置されている。このため、電池セル50の中心部55の熱を放射方向に放熱することができる。したがって、電池セルの放熱性が向上する。
【0034】
また、発熱部材120は、電流が流れる方向の長さが短いほど、その抵抗が小さくなる。すなわち、第1放熱板100から発熱部材120を介して第2放熱板110に電流を流すときには、第1放熱板100と第2放熱板110の間隔が狭いほど、発熱部材120が昇温し易い。本実施例では、
図3に示す中央部分57は、第1放熱板100と第2放熱板110の間隔が比較的狭い(
図1も参照)。このため、仮に発熱部材120が中央部分57に配置されている場合、中央部分57における発熱部材120が高温になり易い。一方で、ケース51の中央部分57は、ケース51の外周部分と比較して外気等により冷却され難い。これらを鑑みて、本実施例では、中央部分57にあえて発熱部材120を設けない構成とすることで、発熱部材120へ通電した際に、電池セル50が過度に加熱されることを抑制することができる。
【0035】
次に、電池モジュール2の制御方法について説明する。特に、移動体1(例えば、自動車や飛行装置)に搭載された電池モジュール2を発熱部材120によって加熱する処理について説明する。まず、電池モジュール2が搭載された移動体1の制御系の構成について説明する。
図5は、移動体1の制御系の構成を部分的に示している。したがって、移動体1の実際の制御系の構成には、図示されていない1又は複数の要素が存在する。
【0036】
図5に示すように、移動体1は、電池モジュール2と、セル温度検出部70と、外気温検出部72と、発熱部材温度検出部73と、制御部74とを備えている。セル温度検出部70は、電池モジュール2の電池セル50の温度を検出する。外気温検出部72は、移動体1の周囲の外気温を検出する。発熱部材温度検出部73は、発熱部材120の温度を検出する。検出されたセル温度や外気温、発熱部材温度は、制御部74に送信される。制御部74は、移動体1全体の動作を制御する。制御部74は、CPU74aとメモリ74bを備えている。CPU74aは、メモリ74bに格納されている各種プログラムに従って様々な処理を実行する。メモリ74bは、加熱フラグ76と外気温フラグ78をさらに記憶している。加熱フラグ76は、「1」又は「0」のいずれかの値に設定される。加熱フラグ76は、発熱部材120へ通電している状況(すなわち、発熱部材120が加熱されている状況)では「1」に設定され、発熱部材120へ通電していない状況(すなわち、発熱部材120が加熱されていない状況)では「0」に設定される。外気温フラグ78は、「1」又は「0」のいずれかの値に設定される。外気温フラグ78は、2つの閾値(高閾値と、高閾値よりも低い値である低閾値)に基づいていずれかの値に設定される。具体的には、外気温が、高閾値よりも高い場合には「1」に設定され、低閾値よりも低い場合には「0」に設定される。外気温が、高閾値と低閾値の間の閾値範囲である場合には、当該閾値範囲に入る直前に設定されている値が維持される。また、制御部74は、第1放熱板100と第2放熱板110との間に流れる電流を制御する。これにより、第1放熱板100と第2放熱板110とに接続された発熱部材120に電流が流れ、発熱部材120が発熱する。
【0037】
本実施例では、発熱部材120の加熱処理を実行するための2つの異なる態様について説明する。以下に説明する
図6及び
図7の加熱処理は、いずれか一方の処理のみを実行してもよいし、双方の処理を並行して実行してもよい。まず、
図6を参照して、発熱部材120の加熱処理の1つ目の態様について説明する。
図6は、電池モジュール2の電池セル50の温度に基づいて発熱部材120を加熱する処理を示すフローチャートである。
【0038】
S10において、制御部74は、移動体1が起動しているか否かを判断する。制御部74は、移動体1が起動していると判断する場合(S10でYES)にはS12へ進む。
【0039】
S12において、制御部74は、セル温度検出部70により検出された電池セル50のセル温度が、第1閾値よりも低いか否かを判断する。第1閾値の具体的な値は特に限定されないが、例えば、電池モジュール2の性能が低下し得る温度である10℃に設定される。制御部74は、セル温度が第1閾値よりも低いと判断する場合(S12でYES)にはS14へ進み、セル温度が第1閾値よりも高いと判断する場合(S12でNO)にはS20へ進む。
【0040】
S14において、制御部74は、加熱フラグ76が「1」であるのか否かを判断する。すなわち、制御部74は、発熱部材120へ通電しているのか否かを判断する。加熱フラグ76が「1」であると判断する場合(S14でYES)にはS10へ戻り、加熱フラグ76が「0」であると判断する場合(S14でNO)にはS16へ進む。
【0041】
S16において、制御部74は、発熱部材120への通電を開始する。ここでは、制御部74は、セル温度が第1閾値よりも低いにも関わらず、発熱部材120へ通電していない状態である(加熱フラグ76が「0」)と判断するため、第1放熱板100と第2放熱板110の間に電流を流す。これにより、発熱部材120に電流が流れ、発熱部材120が発熱する。その後、制御部74は、S18において、加熱フラグ76を「0」から「1」へ変更する。制御部74は、S18の処理を終えるとS10へ戻る。
【0042】
一方、制御部74は、セル温度が第1閾値よりも高いと判断した場合(S12でNO)、S20において、加熱フラグ76が「1」であるのか否かを判断する。加熱フラグ76が「1」であると判断する場合(S20でYES)にはS22へ進み、加熱フラグ76が「0」であると判断する場合(S20でNO)にはS10へ戻る。
【0043】
S20でYESと判断される場合は、セル温度が第1閾値よりも高いが、発熱部材120へ通電している状態である。このような場合、制御部74は、S22において、セル温度が第2閾値よりも低いか否かを判断する。第2閾値は、第1閾値よりも高い値に設定される。第2閾値の具体的な値は特に限定されないが、例えば15℃である。制御部74は、セル温度が第2閾値よりも低いと判断する場合(S22でYES)には、発熱部材120への通電を継続してS10へ戻る。一方、制御部74は、セル温度が第2閾値よりも高いと判断する場合(S22でNO)にはS24へ進む。
【0044】
S24において、制御部74は、発熱部材120への通電を終了する。すなわち、制御部74は、セル温度が第2閾値よりも高い場合(S22でYES)には、電池セル50が発熱部材120により十分に加熱されたと判断し、第1放熱板100と第2放熱板110の間に流していた電流を停止する。その後、制御部74は、S26において、加熱フラグ76を「1」から「0」へ変更する。制御部74は、S26の処理を終えるとS10へ戻る。
【0045】
上述した
図6の加熱処理では、電池セル50の現在のセル温度を検出し、当該セル温度が電池モジュール2の性能が低下し得る温度(第1閾値)を下回った場合(S12でYES)に、発熱部材120へ通電して電池セル50を加熱する(S16)。このように、電池セル50を加熱する必要が生じた場合に発熱部材120へ通電することにより、効率よく電池セル50を加熱することができる。
【0046】
また、セル温度が第1閾値よりも高く第2閾値よりも低い場合(S22でYES)には、発熱部材120への通電(すなわち、電池セル50の加熱)を継続し、セル温度が第2閾値よりも高くなった場合(S22でNO)に発熱部材120への通電を終了する(S24)。これにより、セル温度が第1閾値付近で細かく変動することが抑制されるため、処理負荷が低減する。
【0047】
続いて、
図7を参照して、発熱部材120の加熱処理の2つ目の態様について説明する。
図7は、移動体1の周囲の外気温に基づいて発熱部材120を加熱する処理を示すフローチャートである。
【0048】
S40において、制御部74は、移動体1が起動しているか否かを判断する。制御部74は、移動体1が起動していると判断する場合(S40でYES)にはS42へ進む。
【0049】
S42において、制御部74は、移動体1の周囲の外気温及び発熱部材温度を検出する。外気温及び発熱部材温度は、外気温検出部72及び発熱部材温度検出部73により検出することができる。
【0050】
S44において、制御部74は、検出した外気温が第3閾値よりも低いか否かを判断する。第3閾値の具体的な値は特に限定されないが、例えば、電池モジュール2の性能が低下し得る温度である10℃に設定される。第3閾値が、「所定の値」の一例である。制御部74は、外気温が第3閾値よりも低いと判断する場合(S44でYES)にはS46へ進み、外気温が第3閾値よりも高いと判断する場合(S44でNO)にはS66へ進む。
【0051】
S46において、制御部74は、外気温フラグ78が「1」であるのか否かを判断する。制御部74は、外気温フラグ78が「1」であると判断する場合(S46でYES)にはS50へ進み、外気温フラグ78が「0」であると判断する場合(S46でNO)には、S48において外気温フラグ78を「0」から「1」に変更してS50へ進む。
【0052】
S50において、制御部74は、検出した外気温に基づいて発熱部材120の制御温度を算出する。
図8に示すように、発熱部材120を制御すべき温度範囲は、検出された外気温に応じて予め定められている。したがって、制御部74は、S42で検出した外気温に基づいて、発熱部材120の制御温度の範囲(高温度T
H、低温度T
L)を算出する。
図8に示すように、例えば、外気温が-30℃である場合には、制御部74は、発熱部材120の制御温度を25℃~50℃と算出する。
【0053】
S52において、制御部74は、加熱フラグ76が「0」であるのか否かを判断する。すなわち、制御部74は、発熱部材120へ通電しているのか否かを判断する。制御部74は、加熱フラグ76が「0」であると判断する場合(S52でYES)にはS54へ進み、加熱フラグ76が「1」であると判断する場合(S52でNO)にはS60へ進む。
【0054】
S54において、制御部74は、S42で検出した発熱部材温度がS50で算出した制御温度の低温度TLよりも低いか否かを判断する。制御部74は、発熱部材温度が低温度TLよりも低いと判断する場合(S54でYES)にはS56へ進み、発熱部材温度が低温度TLよりも高いと判断する場合(S54でNO)にはS40へ戻る。
【0055】
S56において、制御部74は、発熱部材120への通電を開始する。ここでは、制御部74は、発熱部材120へ通電していない状態で、発熱部材温度が制御温度の下限値(すなわち、低温度TL)より低いと判断するため、第1放熱板100と第2放熱板110の間に電流を流す。これにより、発熱部材120に電流が流れ、発熱部材120が発熱する。その後、制御部74は、S58において、加熱フラグ76を「0」から「1」へ変更する。制御部74は、S58の処理を終えるとS40へ戻る。
【0056】
一方、制御部74は、加熱フラグ76が「1」であると判断した場合(S52でNO)、S60において、S42で検出した発熱部材温度がS50で算出した制御温度の高温度THよりも低いか否かを判断する。制御部74は、発熱部材温度が高温度THよりも低いと判断する場合(S60でYES)にはS40へ戻り、発熱部材温度が高温度THよりも高いと判断する場合(S60でNO)にはS62へ進む。
【0057】
S62において、制御部74は、発熱部材120への通電を終了する。すなわち、制御部74は、発熱部材温度が高温度THよりも高い場合(S60でNO)には、電池セル50が発熱部材120により十分に加熱されたと判断し、第1放熱板100と第2放熱板110の間に流していた電流を停止する。その後、制御部74は、S64において、加熱フラグ76を「1」から「0」へ変更する。制御部74は、S64の処理を終えるとS40へ戻る。
【0058】
なお、制御部74は、外気温が第3閾値よりも高いと判断した場合(S44でNO)には、S66において、外気温フラグ78が「1」であるのか否かを判断する。制御部74は、外気温フラグ78が「1」であると判断する場合(S66でYES)にはS68へ進み、外気温フラグ78が「0」であると判断する場合(S66でNO)にはS72へ進む。
【0059】
S68において、制御部74は、外気温が第4閾値よりも低いか否かを判断する。第4閾値は、第3閾値よりも高い値に設定される。第4閾値の具体的な値は特に限定されないが、例えば15℃である。なお、第3閾値及び第4閾値は、上述した外気温フラグ78の説明における低閾値及び高閾値にそれぞれ対応する。制御部74は、外気温が第4閾値よりも低いと判断する場合(S68でYES)にはS50へ進む。すなわち、外気温が第3閾値と第4閾値の間の閾値範囲内にあり、当該閾値範囲に入る直前の外気温が第3閾値よりも低い場合(外気温フラグ78が「1」である場合)には、S50~S64の処理を実行する。一方、制御部74は、外気温が第4閾値よりも高いと判断する場合(S68でNO)にはS70へ進む。
【0060】
S70において、制御部74は、外気温フラグ78を「1」から「0」へ変更する。その後、S72において、制御部74は、加熱フラグ76が「1」であるか否かを判断する。S74及びS76の処理は、S62及びS64の処理と同様である。
【0061】
上述した
図7の加熱処理では、移動体1の周囲の外気温を検出し、当該外気温が電池モジュール2の性能が低下し得る温度(第3閾値)よりも低い場合(S44でYES)に、外気温に基づいた発熱部材120の制御温度を算出する(S50)。そして、当該制御温度に一致するように発熱部材120へ通電する(S56)。このように、
図7の加熱処理では、発熱部材120を、検出した外気温に適した温度に制御するように通電することにより、効率よく電池セル50を加熱することができる。
【0062】
また、外気温が第3閾値よりも高いが、第4閾値よりも低い場合(S68でYES)には、発熱部材120の温度を制御する処理(S50~S64)を実行し、外気温が第4閾値よりも高くなった場合(S68でNO)に、当該処理を停止する。したがって、外気温が第3閾値付近で細かく変動した場合であっても、処理負荷が増大することが抑制される。
【0063】
さらに、
図7の加熱処理では、上限である高温度T
Hよりも低い場合(S60でYES)には、発熱部材120への通電を継続し、発熱部材温度が高温度T
Hよりも高くなった場合(S60でNO)に発熱部材120への通電を終了する(S62)。このように、発熱部材120を制御すべき温度に幅が設けられているため、処理負荷が低減する。
【0064】
以上、一実施例について説明したが、具体的な態様は上記実施例に限定されるものではない。以下の説明において、上記の説明における構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
(第2実施例)
第2実施例の電池モジュール102では、
図9に示すように、第1放熱板100と第2放熱板110が、Y方向に沿って間隔を空けて交互に配置されている。本実施例では、2つの第1放熱板100の間に、1つの第2放熱板110が配置されている。各第1放熱板100は、平面視において、ケース51の各長辺(X方向に延びる辺)を覆うようにX方向に沿ってそれぞれ延びている。すなわち、各第1放熱板100は、ケース51の各長辺からY方向にわずかに外側に突出するように配置されている。第2放熱板110は、平面視において、ケース51の中心部55を通ってX方向に沿って延びている。各放熱板100、110の長手方向(X方向)の幅は、ケース51の長辺の幅よりも長い。したがって、各放熱板100、110は、ケース51の短辺(Y方向に延びる辺)からX方向にわずかに外側に突出している。
【0066】
電池セル50の正極タブ52及び負極タブ53は、ケース51の短辺から外側に突出している。正極タブ52及び負極タブ53は、平面視において、各放熱板100、110と重ならないように配置されている。
【0067】
第1放熱板100と第2放熱板110の間の間隔には、発熱部材120がそれぞれ配置されている。発熱部材120は、第1放熱板100の表面から第2放熱板110の表面に跨る範囲に設けられている。
【0068】
本実施例の構成では、第1放熱板100と第2放熱板110の間隔(すなわち、発熱部材120の通電方向の長さ)が任意の位置において略等しい。このため、発熱部材120に電流を流したときに、発熱部材120が略均等に昇温する。このため、電池セル50の加熱を均一化することができる。
【0069】
(第3実施例)
第3実施例の電池モジュール202では、
図10に示すように、第2実施例と比較して、第1放熱板100が、Y方向内側に突出する矩形状の突出部100cを備えている。突出部100cは、第1放熱板100のX方向の略中間位置に設けられている。発熱部材120は、突出部100cが設けられている範囲には、配置されていない。すなわち、第2実施例と比較して、発熱部材120がケース51のX方向の略中間位置において分割されている。
【0070】
上述したように、電池モジュール202が発熱する際には、電池セル50の中心部が外周部と比較してより高温になり易い。本実施例の構成では、第2実施例と比較して、ケース51の中心側の領域に第1放熱板100(突出部100c)が設けられている。このため、高温になり易い電池セル50の中心部の熱を効率良く放熱することができる。
【0071】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下に変形例を記載する。
【0072】
上述した実施例では、第1放熱板100と第2放熱板110が、放射状に配置される態様や、Y方向に沿って配置される態様について説明した。しかしながら、各放熱板100、110の数や配置は特に限定されない。
【0073】
また、上述した実施例では、発熱部材120が略一定の厚みを有していた。しかしながら、例えば、平面視において、ケース51の外周側における厚みが、ケース51の中央側における厚みより厚くてもよい。発熱部材120は、その厚みが厚いほど抵抗が小さくなる。すなわち、発熱部材120の厚みが厚いほど、発熱部材120に電流を流したときに発熱部材120が昇温し易い。したがって、上記の構成では、外気等により比較的冷却され易いケース51の外周側において、発熱部材120の厚みを厚くすることにより、電池セル50のケース51の各位置における温度を均一化することができる。なお、発熱部材120の厚みは、中央側から外周側に向かうにつれて漸次的に厚くなるように構成してもよいし、中央側から外周側に向かって段階的に厚くなるように構成してもよい。
【0074】
また、発熱部材120は、その温度に応じて抵抗値が変動する。具体的には、発熱部材120は、その温度が高くなるほど、抵抗値が増加する。したがって、
図7のS42における発熱部材120の温度の検出では、発熱部材120の抵抗値に基づいて算出した値を用いてもよい。
【0075】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0076】
1:移動体、2:電池モジュール、50:電池セル、51:ケース、52:正極タブ、53:負極タブ、55:中心部、56:角部、57:中央部分、70:セル温度検出部、72:外気温検出部、73:発熱部材温度検出部、74:制御部、76:加熱フラグ、78:外気温フラグ、100:第1放熱板、100a:第1延在部、100b:第2延在部、100c:突出部、110:第2放熱板、120:発熱部材、130:絶縁部材