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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】消化器内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240105BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20240105BHJP
【FI】
A61B1/045 616
G01J5/48 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020151235
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045572
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】709003964
【氏名又は名称】太田 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】太田 英敏
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-079089(JP,A)
【文献】特開2019-158803(JP,A)
【文献】特表2015-513233(JP,A)
【文献】特開2018-134151(JP,A)
【文献】特開2017-006337(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159288(WO,A1)
【文献】特開2006-149846(JP,A)
【文献】特開2001-286436(JP,A)
【文献】米国特許第06652452(US,B1)
【文献】特開2003-153912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G01J 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を照射する光源部と、
照射された前記被検体の可視光画像を撮像する可視光画像撮像部と、
前記被検体サーモグラフィ画像撮像するサーモグラフィ画像撮像部と、
前記可視光画像及び前記サーモグラフィ画像を合成する画像処理部と、
を備え
前記画像処理部は、温度刺激に対する温度回復が局所的に遅い疾患部位を全体とは異なる態様で表示する、
消化器内視鏡。
【請求項2】
遠赤外線を任意の角度で反射する一又は複数のミラーをさらに備え、
前記サーモグラフィ画像撮像部は、前記ミラーが反射する前記被検体のサーモグラフィ画像を撮像する
ことを特徴とする請求項1に記載の消化器内視鏡。
【請求項3】
管型消化器内視鏡であって、
前記被検体に温度刺激を与えるノズルをさらに備え、
前記可視光画像撮像部及び前記サーモグラフィ画像撮像部は、それぞれ前記温度刺激を与える前後の前記被検体の様子を前記可視光画像又は前記サーモグラフィ画像として撮像する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の消化器内視鏡。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記可視光画像から前記被検体の形状的特徴を抽出し、前記サーモグラフィ画像に前記形状的特徴を合成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の消化器内視鏡。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記サーモグラフィ画像から、任意に設定可能な設定温度より高温又は低温である領域を切り出し、前記領域を前記可視光画像の該当する部分に合成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の消化器内視鏡。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記可視光画像の上に、透明度の調整が可能な前記サーモグラフィ画像を重ね合わせる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の消化器内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消化器官の疾患を容易に検出可能とする消化器内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
消化器官内を観察する装置として、消化器内視鏡が知られている。消化器内視鏡を用いることで、被験者の体への負担が少ない状態で、消化器官内を観察できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特願2020-061457
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消化器内視鏡による診察では、消化器官内を可視光画像として撮影し、その可視光画像に映し出された消化器官内壁の表面上に疾患が見られなければ異常なしと判断する。
【0005】
消化器内視鏡の1つとして、カプセル型内視鏡が知られている。本願発明者によって成された関連技術(特許文献1を参照。)に係る温度センサ付きカプセル型内視鏡は、少なくとも一部が透明であり、内蔵する部品を保護するカプセルと、前記カプセルの透明な部分の外面に装着され、消化器官内の温度により色彩が変化する温度センサと、前記カプセルの内部に配置され、前記温度センサを撮影するカメラとを備える。
【0006】
温度センサ付きカプセル型内視鏡は、被検者によって嚥下され、消化器官内を通って体外に排出される。その過程において、カメラが温度センサを撮影することにより、消化器官内壁の表面の様子とともに、温度センサの色彩の変化の有無を確認し、消化器官内の温度を測定することができる。
【0007】
本願発明者が、関連技術に示す温度センサ付きカプセル型内視鏡を消化器官内壁に接触させ、消化器官内壁の表面上の温度を測定したところ、表面上に疾患がある場合のみならず、表面上に疾患がなく、又は表面的には治癒した部分であっても、深部に疾患があり、又は残っていると表面温度が高くなることを発見した。そのため、本願発明者は、消化器官内壁の表面の温度を測定することが、消化器官内の疾患を把握するために重要であると認識した。
【0008】
温度センサ付きカプセル型内視鏡では、温度センサが消化器官内壁に接触する点の温度をピンポイントに測定することができる。また、温度センサと消化器官内壁との接触を保ったまま温度センサ付きカプセル型内視鏡を消化器官内壁に沿って移動させると、消化器官内壁の表面の温度を1次元的に掃引測定することができる。これを拡張させ、消化器官内の温度を面で捉えて測定することができれば、消化器官内の疾患を漏れなくかつ迅速に検出することが可能となる。また、面で捉えて測定した温度を色分けして表示できれば、消化器官内の温度を視覚で容易に把握することが可能となる。さらに、消化器官内壁の形状といった視覚的情報と消化器官内の温度とを同時に一画像として表示できれば、消化器官内の疾患が視角でより容易に把握可能となる。
【0009】
前記発見に基づき、本開示は、面で捉えて測定した消化器官内の温度及び消化器官内の視角的情報を同時に確認できる消化器内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示の消化器内視鏡は、可視光画像撮像部と、サーモグラフィ画像撮像部と、可視光画像とサーモグラフィ画像とを合成する画像処理部と、を備える。
【0011】
具体的には、本開示に係る消化器内視鏡は、被検体を照射する光源部と、照射された前記被検体を可視光画像として撮像する可視光画像撮像部と、前記被検体をサーモグラフィ画像として撮像するサーモグラフィ画像撮像部と、前記可視光画像撮像部及び前記サーモグラフィ画像撮像部からの画像情報に基づき、前記被検体の画像を作成する画像処理部と、を備える。
【0012】
本開示に係る消化器内視鏡は、遠赤外線を任意の角度で反射する一又は複数のミラーをさらに備え、前記サーモグラフィ画像撮像部は、前記ミラーが反射する前記被検体のサーモグラフィ画像を撮像してもよい。
【0013】
本開示に係る消化器内視鏡は、管型消化器内視鏡であって、前記被検体に温度刺激を与えるノズルをさらに備え、前記可視光画像撮像部及び前記サーモグラフィ画像撮像部は、それぞれ前記温度刺激を与える前後の前記被検体の様子を前記可視光画像又は前記サーモグラフィ画像として撮像してもよい。
【0014】
本開示に係る消化器内視鏡は、前記画像処理部が、前記可視光画像から前記被検体の形状的特徴を抽出し、前記サーモグラフィ画像に前記形状的特徴を合成してもよい。
【0015】
本開示に係る消化器内視鏡は、前記画像処理部が、前記サーモグラフィ画像から、任意に設定可能な設定温度より高温又は低温である領域を切り出し、前記領域を前記可視光画像の該当する部分に合成してもよい。
【0016】
本開示に係る消化器内視鏡は、前記画像処理部が、前記可視光画像の上に、透明度の調整が可能な前記サーモグラフィ画像を重ね合わせてもよい。
【0017】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、面で捉えて測定した消化器官内の温度及び消化器官内の視角的情報を同時に確認できる消化器内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る消化器内視鏡の概略構成と使用形態の一例を示す。
図2】実施形態1に係る消化器内視鏡の概略構成と使用形態の一例を示す。
図3】実施形態1に係る消化器内視鏡が撮像する可視光画像を説明する図である。
図4】実施形態1に係る消化器内視鏡が撮像するサーモグラフィ画像を説明する図である。
図5】実施形態1に係る消化器内視鏡が作成する合成画像を説明する図である。
図6】実施形態1に係る消化器内視鏡が作成する合成画像を説明する図である。
図7】実施形態1に係る消化器内視鏡が作成する合成画像を説明する図である。
図8】実施形態2に係る消化器内視鏡の概略構成と使用形態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0021】
(実施形態1)
本実施形態に係る消化器内視鏡の概略構成の一例を図1及び図2に示す。消化器内視鏡10は、光源部11、可視光画像撮像部12、サーモグラフィ画像撮像部13及び画像処理部14を備える。図1は、可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13が、可視光経路201及び遠赤外線経路202を通る電磁波を捉え、被検体101を撮像する一例を示した図である。図2は、可視光画像撮像部12が図1と同様である一方で、消化器内視鏡10がミラー15をさらに備え、サーモグラフィ画像撮像部13が図1の遠赤外線経路202より長い遠赤外線経路203を通る電磁波を捉え、被検体101を撮像する一例を示した図である。
【0022】
本実施形態における消化器内視鏡10は、管型消化器内視鏡又はカプセル型消化器内視鏡に適用することができる。管型消化器内視鏡の場合は挿入部に、カプセル型消化器内視鏡の場合はカプセル内部に、光源部11、可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13を備えてもよい。その場合、画像処理部14は、可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13と離れた部分にあり、可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13とケーブル又は無線により通信してもよい。さらに、消化器内視鏡10は、被検体101を撮像する際のパラメータや画像処理内容の設定を可能とする設定部16(不図示)、画像処理部14が作成した画像を表示する画像表示部17(不図示)並びに可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13のそれぞれの撮像するタイミングを操作できる操作部18をさらに備えてもよい。
【0023】
以下に本実施形態に係る消化器内視鏡10の構成と動作について図1及び図2を用いて具体的に示す。図1及び図2に記載の光源部11は、消化器内の被検体101を照射する。光源部11は、自身と電気的に接続する光源装置(不図示)から電力を供給されてもよい。また、光源部11は、電池により電力を供給されてもよい。光源部11は、特定の色彩に限定した光を照射してもよい。例えば、NBI(Narrow Band Imaging)に用いられる青色光及び緑色光等を挙げることができる。
【0024】
図1及び図2に記載の可視光画像撮像部12は、レンズ(不図示)、可視光画像撮像素子(不図示)及び可視光画像送信部(不図示)を備える。レンズは、光源部11が発した可視光のうち、被検体101で反射された可視光、例えば、可視光経路201を通る可視光、を可視光画像撮像素子に集める。可視光画像撮像素子は、受光した可視光の情報を電気信号に変換する。可視光画像送信部は、電気信号を可視光画像情報301として、ケーブル又は無線通信を介して画像処理部14に送信する。
【0025】
図1及び図2に記載のサーモグラフィ画像撮像部13は、レンズ(不図示)又はミラー(不図示)、サーモグラフィ画像撮像素子(不図示)及びサーモグラフィ画像送信部(不図示)を備える。レンズ又はミラーは、被検体101が発する遠赤外線、例えば、遠赤外線経路202又は203を通る遠赤外線、をサーモグラフィ画像撮像素子に集める。レンズを使用する場合は、遠赤外線を透過しやすいゲルマニウムを用いてもよい。ミラーには、金属コーティングした反射鏡が使用できる。サーモグラフィ画像撮像素子は、受光した遠赤外線の情報を電気信号に変換する。サーモグラフィ画像送信部は、電気信号をサーモグラフィ画像情報302として、ケーブル又は無線通信を介して画像処理部14に送信する。
【0026】
可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13は、図1に示すように、それぞれが被検体101を向いて撮像してもよい。
【0027】
また、図2に示すように、消化器内視鏡10は、遠赤外線を任意の角度で反射するミラー15をさらに備え、可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13が異なる向きを向いていてもよい。この場合、ミラー15で反射された遠赤外線、例えば、遠赤外線経路203を通る遠赤外線、をサーモグラフィ画像撮像部13が撮像することにより、可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13は同一の被検体101をそれぞれ可視光画像及びサーモグラフィ画像として撮像する。ミラー15には、金属コーティングした反射鏡が使用できる。可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13が、被検体101を同じアングルで撮像できるように、ミラー15は、可視光画像撮像部12のレンズ付近に配置されることが望ましい。サーモグラフィ画像の画角又は倍率が、可視光画像の画角又は倍率に近づくように、ミラー15を複数用いてもよいし、ミラー15の曲率を調整してもよい。消化器内の狭い空間で被検体101とサーモグラフィ画像撮像部13との距離が十分確保できない場合であっても、ミラー15を用いて遠赤外線経路203を長くすることにより、サーモグラフィ画像撮像部13が被検体101にピントを合わせることができる。曲率を有するミラー15は、屈折率の波長依存性の影響を受けないため、遠赤外線を容易に集光できる。遠赤外線を集光するには、ゲルマニウム等を用いたレンズよりも、アルミニウム等を用いるミラーの方が安価に実現できる。
【0028】
図1及び図2に記載の画像処理部14は、受信した可視光画像情報301及びサーモグラフィ画像情報302をもとに、被検体101の可視光画像及びサーモグラフィ画像をそれぞれ作成する。被検体101の可視光画像を図3に、サーモグラフィ画像を図4に示す。図3は、消化器内壁102、突起部103及び消化器内腔104を含む被検体101の可視光画像を示す。画像処理部14は、図4に示すように、色と温度の関係を示す指標をサーモグラフィ画像とともに作成してもよい。図4のサーモグラフィ画像は、温度の違いを4種類の模様で表現しているが、これに限定されるものではない。また、画像処理部14は、設定部16により設定できる上限温度と下限温度を用意し、設定された下限温度から上限温度までの間の温度のみを色分けして表現するサーモグラフィ画像を作成してもよい。こうすることで、サーモグラフィ画像内の所望の温度差を色の違いで確認することができる。また、サーモグラフィ画像の色分布を設定部16により変更できてもよい。
【0029】
サーモグラフィ画像及び可視光画像内の被検体101が同一位置及び大きさでない場合は、それぞれの画像内の被検体101が同一位置及び大きさとなるように、いずれか一方又は両方を修正、例えば、画像のトリミング、画像の拡大、縮小等、をすることが望ましい。
【0030】
消化器内視鏡10は、温度センサ(不図示)や湿度センサ(不図示)をさらに備え、消化器内腔104の温度や湿度を測定してもよい。画像処理部14は、これらのセンサにより測定した値により、サーモグラフィ画像撮像部13が取得した温度情報を補正してもよい。
【0031】
図1及び図2に記載の画像処理部14は、被検体101の可視光画像及びサーモグラフィ画像を用いた被検体101の合成画像を作成する。被検体101の合成画像の具体例を図5から図7に示す。例えば、図5に示すように、画像処理部14は、サーモグラフィ画像から、設定部16を介して任意に設定可能な設定温度より高温又は低温である領域111を切り出し、領域111を可視光画像の該当する部分に合成してもよい。図5では、設定温度より高温の領域111を切り出す一例を示す。設定温度は、絶対温度を設定してもよい。設定温度は、サーモグラフィ画像内の平均温度としてもよい。サーモグラフィ画像内の他の部位と比較するために、画像上で指定したポイントの温度を設定温度としてもよい。設定温度は、複数設定可能であってもよく、画像処理部14は、例えば、第1の設定温度以上かつ第2の設定温度以下である領域111をサーモグラフィ画像から切り出してもよい。
【0032】
設定温度を絶対温度とした場合において、抽出された領域111が局所的であるときは、疾患部位を特定することができる。一方で、設定温度を絶対温度とした場合において、被検体101の全体が領域111として抽出されたときは、体温自体が高いことを検出することとなり、病理判断に役立つ。また、体温が高い場合に、疾患部位はさらに高温となるため、サーモグラフィ画像上で被検体101の全体とは異なる色として疾患部位を表示できるので、病理判断に加えて、疾患部位を特定することができる。一方で、設定温度として消化器官内の温度を用いる場合は、抽出された領域111は、設定温度となった部位より高温又は低温であることを示すので、疾患部位として特定できる。
【0033】
また、図6に示すように、画像処理部14は、可視光画像から突起部103の凹凸形状のような形状的特徴を抽出し、サーモグラフィ画像に形状的特徴を合成してもよい。サーモグラフィ画像に形状的特徴を合成することで、サーモグラフィ画像のみでは表現できない被検体101の形状を把握できるようになる。また、図6に示す合成画像では、形状的特徴が表示されることにより、サーモグラフィ画像により示される温度分布と被検体101との位置の対応関係もわかりやすくなり、疾患部位が特定できる。
【0034】
図7は、可視光画像の上に、透明度50%のサーモグラフィ画像を重ね合わせた図である。画像処理部14は、図7に示すように、可視光画像の上に、透明度の調整が可能なサーモグラフィ画像を重ね合わせてもよい。透明度は、これに限定されない。透明度の調節は、設定部16により可能であってもよい。図7に示す合成画像により、サーモグラフィ画像により示される温度分布と被検体101の両方が同時に確認でき、温度分布と被検体101との位置の対応関係もわかりやすくなり、疾患部位が特定できる。
【0035】
画像表示部17は、画像処理部14が作成した被検体101の画像を表示する。表示する画像の選択は、設定部16を介して消化器内視鏡10の操作者が選択してもよい。表示する被検体101の画像は、前述した3つの合成画像のほかに、可視光画像自体又はサーモグラフィ画像自体であってもよい。
【0036】
画像表示部17は、可視光画像、サーモグラフィ画像又は合成画像のうち、指定されたポイントの温度を表示してもよい。その際、画像処理部14は、サーモグラフィ画像情報302に基づいて、指定されたポイントの温度をサーモグラフィ画像撮像部13が取得した温度情報に基づいて算出する。温度センサや湿度センサがある場合は、これらのセンサにより測定した値を、そのポイントの温度の算出に用いてもよい。さらに、画像表示部17は、温度センサや湿度センサがある場合は、これらのセンサにより測定した値を表示してもよい。
【0037】
以上説明したように、本開示に係る消化器内視鏡10は、可視光画像撮像部12と、サーモグラフィ画像撮像部13と、可視光画像とサーモグラフィ画像とを合成する画像処理部14と、を備えることにより、面で捉えて測定した消化器官内の温度及び消化器官内の視角的情報を同時に確認できる消化器内視鏡を提供することができる。
【0038】
消化器官は、消化吸収を司るために血流が多いので、熱伝導率が高く、深部体温として恒常性が保たれている。また、消化器官を被包する脂肪は、断熱材の役割を果たし、消化器官と体外との熱のやり取りを遮る。このため、消化器内は、場所によらず、温度が一定に保たれている。このような消化器官内において、局所的に温度が高い又は低い部位は、疾患である可能性が高いことが分かった。また、消化器官内は、前述したように熱伝導率が良いため、消化器官深部にある疾患が発する熱もよく伝達し、消化器官内壁の表面温度が高くなると推測する。そのため、サーモグラフィを用いることにより、消化器官内表面の疾患のみならず、可視光画像のみの内視鏡では、確認できない消化器官深部の疾患も検出することができる。
【0039】
また、サーモグラフィ画像は、温度に応じて発せられる遠赤外線を色で表現するため、被検体の温度分布を確認できる。一方で、サーモグラフィ画像は、可視光画像で確認できる視角的情報のうち、温度差が小さい被検体の形状的特徴といった視角的情報は表現できない場合が多い。本実施形態に係る消化器内視鏡10による合成画像では、被検体の視角的情報と温度分布を同一画像内で同時に確認することができ、温度分布が被検体のどこに対応するか容易にわかる。
【0040】
(実施形態2)
本実施形態に係る消化器内視鏡10は、管型消化器内視鏡である実施形態1の消化器内視鏡10に新たな機能を追加する。以下、追加機能について説明する。また、以下に説明しない点については、実施形態1と同様とする。
【0041】
本実施形態に係る消化器内視鏡10の挿入部の先端20を正面から見た図を図8に示す。先端20は、複数の孔を有し、それぞれの孔に、光源部11、可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13が装着され、被検体101の撮像時に被検体101に対向する。先端20は、孔をさらに設け、複数の光源部11を装着してもよい。また、サーモグラフィ画像撮像部13の孔に、実施形態1で説明したミラー15が装着されてもよい。消化器内視鏡10は、一端が先端20に含まれ、被検体101に温度刺激を与えるノズル19をさらに備える。ノズル19は、消化器内視鏡10を貫通し、ノズル19の他端は、注入部(不図示)に接続されてもよい。注入部は、ボタンを有し、そのボタンが押されると、ポンプ(不図示)及び送水タンク(不図示)からの水や空気をノズル19の他端からノズル19に注入し、ノズル19の一端から水や空気を吹き出させるようにしてもよい。温度刺激は、冷水、温水、冷気、温気等が例示できる。
【0042】
可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13のそれぞれは、温度刺激を与える前後に渡る被検体101の様子を可視光画像又はサーモグラフィ画像として撮像する。可視光画像撮像部12及びサーモグラフィ画像撮像部13のそれぞれは、注入部のボタンと連動して撮像を行ってもよいし、温度刺激を与えた後に操作部18を操作して任意のタイミングで撮像を行ってもよい。
【0043】
例えば、疾患等により血流が少ない状態の被検体101に温度刺激として冷水をかけた場合には、温度が回復するのに時間がかかる。一方で、被検体101が治癒の過程にあって、血流の過渡時に、同様に冷水をかけると、血流が多いので、温度回復が早くなる。すなわち、温度刺激を与え、温度刺激に対する反応の時間変化を、可視光画像及びサーモグラフィ画像を用いて観察することで、被検体101の様子を動的に捉え、静的に観察した場合には発見できない疾患やその治癒状況を確認することができる。
【0044】
本開示に係る消化器内視鏡10は、可視光画像撮像部12と、サーモグラフィ画像撮像部13と、可視光画像とサーモグラフィ画像とを合成する画像処理部14を備えることにより、面で捉えて測定した消化器官内の温度及び消化器官内の視角的情報を同時に確認できる消化器内視鏡を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示に係る消化器内視鏡は、医療機器産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10:消化器内視鏡
11:光源部
12:可視光画像撮像部
13:サーモグラフィ画像撮像部
14:画像処理部
15:ミラー
16:設定部
17:画像表示部
18:操作部
19:ノズル
20:先端
101:被検体
102:消化器内壁
103:突起部
104:消化器内腔
111:領域
201:可視光経路
202、203:遠赤外線経路
301:可視光画像情報
302:サーモグラフィ画像情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8