(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】妥当性確認方法、妥当性確認システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/906 20190101AFI20240105BHJP
【FI】
G06F16/906
(21)【出願番号】P 2020169782
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】澤入 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康文
(72)【発明者】
【氏名】森田 克明
【審査官】松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/172325(WO,A1)
【文献】特開2015-049775(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
妥当性確認システムが、頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得するステップと、
前記妥当性確認システムが、前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するステップと、
前記妥当性確認システムが、複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて、特徴量を演算するステップと、
前記妥当性確認システムが、複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う第1のクラスタリング実行ステップと、
前記妥当性確認システムが、前記第1のクラスタリング実行ステップの前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記正解カットセットを含まないクラスタを出力する第1の出力ステップと、
を有する妥当性確認方法。
【請求項2】
前記妥当性確認システムが、前記第1の出力ステップによって出力された前記クラスタに含まれる前記確認対象カットセットについての妥当性の確認結果を取得するステップと、
前記確認結果が妥当ではない場合、
前記妥当性確認システムが、前記PRAモデルの修正情報を受け付けるステップと、
をさらに有する請求項1に記載の妥当性確認方法。
【請求項3】
前記妥当性確認システムが、前記第1のクラスタリング実行ステップで生成された前記クラスタに含まれる前記確認対象カットセットのそれぞれについて、前記正解カットセットを含む前記クラスタに属する場合には第1識別情報を付し、前記正解カットセットを含まない前記クラスタに属する場合には第2識別情報を付すステップと、
前記妥当性確認システムが、前記第1識別情報又は前記第2識別情報を付した全ての複数の前記確認対象カットセットについて、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う第2のクラスタリング実行ステップと、
前記妥当性確認システムが、前記第2のクラスタリング実行ステップの前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記第2識別情報が付された前記確認対象カットセットだけを含むクラスタを出力する第2の出力ステップと、
をさらに有する請求項1又は請求項2に記載の妥当性確認方法。
【請求項4】
前記妥当性確認システムが、前記第1のクラスタリング実行ステップで生成された前記クラスタに含まれる前記確認対象カットセットのそれぞれについて、前記正解カットセットを含む前記クラスタに属する場合には第1識別情報を付し、前記正解カットセットを含まない前記クラスタに属する場合には第2識別情報を付すステップと、
前記妥当性確認システムが、前記第1識別情報又は前記第2識別情報を付した全ての前記確認対象カットセットを、前記事象の進展の類型ごとに分類するステップと、
前記妥当性確認システムが、前記分類するステップによって分類したグループごとに前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う第2のクラスタリング実行ステップと、
前記妥当性確認システムが、前記第2のクラスタリング実行ステップの前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記第2識別情報が付された前記確認対象カットセットだけを含むクラスタを出力する第2の出力ステップと、
をさらに有する請求項1又は請求項2に記載の妥当性確認方法。
【請求項5】
前記妥当性確認システムが、前記第2の出力ステップによって出力された前記クラスタに含まれる前記確認対象カットセットについての妥当性の確認結果を取得するステップと、
前記確認結果が妥当ではない場合、
前記妥当性確認システムが、前記PRAモデルの修正情報を受け付けるステップと、
をさらに有する請求項3又は請求項4に記載の妥当性確認方法。
【請求項6】
前記特徴量の演算は、
前記妥当性確認システムが、前記確認対象カットセットおよび前記正解カットセットの文字列がどのような単語をどのように組み合わせて構成されているかをベクトル化することによって行う、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の妥当性確認方法。
【請求項7】
前記妥当性確認システムが、前記イベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する失敗要因とを複数設定した失敗要因情報を取得し、前記起因事象が発生する要因と前記緩和機能ごとの前記失敗要因とを前記イベントツリーの構造に基づいて組み合わせて、前記正解カットセットを複数作成するステップ、
をさらに有する請求項1から請求項6の何れか1項に記載の妥当性確認方法。
【請求項8】
前記正解カットセットを複数作成するステップでは、
前記妥当性確認システムが、前記起因事象と前記緩和機能を前記イベントツリーの構造に基づいて組み合わせた前記事象の進展の類型の発生確率又は発生頻度に基づいて、前記発生確率又は発生頻度が所定の閾値以上の前記事象の進展の類型について、前記正解カットセットを作成する、
請求項7に記載の妥当性確認方法。
【請求項9】
前記正解カットセットを複数作成するステップでは、
前記妥当性確認システムが、前記正解カットセットを構成する前記起因事象が発生する要因の発生確率又は発生頻度と、前記緩和機能が失敗する要因の発生確率又は発生頻度とに基づいて当該正解カットセットの発生確率又は発生頻度を計算し、当該発生確率又は当該発生頻度が所定の閾値以下の場合、当該正解カットセットを作成しない、
請求項7または請求項8に記載の妥当性確認方法。
【請求項10】
頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得する正解カットセット取得部と、
前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するカットセット取得部と、
複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて、特徴量を演算する特徴量演算部と、
複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う階層的クラスタリング部と、
前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記正解カットセットを含まないクラスタを出力する出力部と、
を有する妥当性確認システム。
【請求項11】
コンピュータに、
頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得するステップと、
前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するステップと、
複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて、特徴量を演算するステップと、
複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行うステップと、
前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記正解カットセットを含まないクラスタを出力するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、確率論的リスク評価モデルの妥当性確認方法、妥当性確認システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントのリスク評価に確率論的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment:PRA)モデルが用いられることがある(特許文献1)。PRAモデルに誤りがあるとリスク評価の精度が低下する。リスク評価の精度を保つため、従来、技術者が、PRAモデルに基づいて生成される頂上事象のカットセットを手作業で確認している。原子力発電プラントのPRAモデルから出力される頂上事象のカットセットの数は、1プラントあたり、数万から数十万になることがある。これら全てを技術者が手作業によって確認することは困難である。現状では、技術者が、発生確率又は発生頻度の高い上位のカットセットだけを選んで確認を行うことが一般的である。
【0003】
特許文献2には、トレーニングデータの特徴ベクトルをクラスタリングし、クラスタリングされた特徴ベクトルを用いて、認識すべきデータの特徴ベクトルを補間演算した後に音声認識モデルに入力して、音声認識モデルを最適に調整する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5480033号公報
【文献】国際公開第2018/005858号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確認対象のカットセットの量が膨大であったとしても、効率よくカットセットの妥当性を確認する方法が求められている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる妥当性確認方法、妥当性確認システム及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の妥当性確認方法は、妥当性確認システムが、頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得するステップと、前記妥当性確認システムが、前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するステップと、前記妥当性確認システムが、複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて、特徴量を演算するステップと、前記妥当性確認システムが、複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行うステップと、前記妥当性確認システムが、前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち前記正解カットセットを含まないクラスタを出力するステップと、を有する。
【0008】
また、本開示の妥当性確認システムは、頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得する正解カットセット取得部と、前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するカットセット取得部と、複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて、特徴量を演算する特徴量演算部と、複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う階層的クラスタリング部と、前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち前記正解カットセットを含まないクラスタを出力する出力部と、を有する。
【0009】
また、本開示のプログラムは、コンピュータに、頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得するステップと、前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するステップと、複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて、特徴量を演算するステップと、複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行うステップと、前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち前記正解カットセットを含まないクラスタを出力するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の妥当性確認方法、妥当性確認システム及びプログラムによれば、確率論的リスク評価モデルの妥当性を効率的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る妥当性確認システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る妥当性確認処理の全体の概要を示す図である。
【
図3】実施形態に係る頂上事象のカットセットを説明する図である。
【
図4】実施形態に係るイベントツリーの一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る起因事象の発生要因および緩和機能の失敗要因の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る妥当性確認処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る妥当性確認システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本開示の妥当性確認システムについて、
図1~
図7を参照しながら説明する。
(システム構成)
図1は、実施形態に係る妥当性確認システムの一例を示すブロック図である。
妥当性確認システム1は、確率論的リスク評価モデル(以下、PRAモデルと呼ぶ。)を構成する頂上事象のカットセットの妥当性確認作業を支援する。図示するように妥当性確認システム1は、PRAモデル管理装置10と、正解カットセット作成装置20と、妥当性確認支援装置30とを備える。PRAモデル管理装置10と正解カットセット作成装置20は、妥当性確認支援装置30と通信可能に接続されている。
【0013】
(PRAモデル管理装置の構成)
PRAモデル管理装置10は、カットセット出力部11と、修正受付部12と、記憶部13とを備える。
カットセット出力部11は、PRAモデルを解析して、頂上事象のカットセットを出力する。頂上事象とは、例えば、原子力発電プラントにおける重大な事故事象である。頂上事象のカットセットとは、頂上事象を引き起こす1つまたは複数の基事象の組合せである。基事象とは、例えば、ポンプの起動失敗、逆止弁の開失敗など、重大な事故事象に繋がる個々の故障・失敗事象である。以下、頂上事象のカットセットを単にカットセットと記載する。例えば、原子力発電プラントの場合、PRAモデルから出力されるカットセットの数は、数万から数十万になることがある。PRAモデルから出力される複数のカットセットをカットセットリストと呼ぶ。
修正受付部12は、PRAモデルに対する修正指示を受け付け、PRAモデルを修正する。
記憶部13は、PRAモデルを記憶する。PRAモデルには、FT(Fault Tree)(
図3)やET(Event Tree)が含まれている。
【0014】
(正解カットセット作成装置の構成)
正解カットセット作成装置20は、正解カットセット作成部21と、記憶部22と、を備える。
正解カットセット作成部21は、PRAモデルがリスク評価の対象とする頂上事象に関して、その頂上事象に至る事象の進展を示すETから正しい(妥当な)カットセットを作成する。正解カットセット作成部21が作成する正しいカットセットを、正解カットセットとよぶ。
記憶部22は、正解カットセットの元となるETを記憶する(
図4)。
【0015】
(妥当性確認支援装置の構成)
妥当性確認支援装置30は、カットセット取得部31と、正解カットセット取得部32と、特徴量演算部33と、階層的クラスタリング部34と、制御部35と、出力部36と、記憶部37と、を備える。
カットセット取得部31は、PRAモデル管理装置10が出力した確認対象のカットセットを取得する。
正解カットセット取得部32は、正解カットセット作成装置20が出力した正解カットセットを取得する。
【0016】
特徴量演算部33は、カットセット取得部31が取得したカットセットの文字列の特徴量と、正解カットセット取得部32が取得した正解カットセットの文字列の特徴量を演算する。確認対象カットセットに含まれる基事象や正解カットセットに含まれる失敗要因等のID(識別情報)は、所定のルールに従ってコード化され、テキストデータ(文字列)として表されている。特徴量演算部33は、コード化された文字列をWord2Vec等のテキスト分析を用いて、カットセットに出現する単語やその関係性に基づいて特徴量を演算する。演算結果の特徴量は、ベクトルとして表される。
【0017】
階層的クラスタリング部34は、特徴量演算部33が演算した確認対象カットセットおよび正解カットセットの特徴量に基づいて、階層的クラスタリングを実行し、PRAモデルから作成された確認対象カットセットや正解カットセットを類似するカットセット同士に分類する。
制御部35は、確認対象カットセットの妥当性確認処理の制御を行う。例えば、制御部35は、階層的クラスタリングによって生成された複数クラスタの中から、技術者による確認対象のクラスタ(不適切なカットセットが含まれると考えられるクラスタ)を抽出したり、確認対象カットセットを事故シーケンス別に分類して、分類後のグループごとに階層的クラスタリングを実行したりする。
【0018】
出力部36は、階層的クラスタリングの結果などを表示装置に表示したり、電子データとして出力したりする。
記憶部37は、カットセットリスト、正解カットセット、処理中のデータなどを記憶する。
【0019】
(妥当性確認処理の概要)
次に
図2を用いて、妥当性確認システム1を用いたカットセット妥当性確認処理の概要について説明する。
図2は、実施形態に係る妥当性確認処理の全体の概要を示す図である。
まず、PRAモデル管理装置10が、ある頂上事象(例えば、炉心損傷)のPRAモデルからカットセットを抽出し、出力する(S1)。
図3にPRAモデルの一例を示す。
図3の円で示したA~Eは基事象を示し、四角で示したP~Qは中間事象を示し、ORゲートは、基事象A、C、中間事象Pの何れかが発生すると、頂上事象が発生することを示す。2つのANDゲートのうち、上のANDゲートは、基事象Bと中間事象Qが発生すると、中間事象Pが発生することを示している。下のANDゲートは、基事象Dと基事象Eが発生すると、中間事象Qが発生することを示している。
図3のFTの場合、頂上事象を引き起こすカットセットは、(1)基事象A、(2)基事象B、基事象D、基事象Eの組合せ、(3)基事象Cである。PRAモデル管理装置10は、例えば、
図3のFTに基づいて、カットセット1(基事象A)、カットセット2(基事象B、基事象D、基事象E)、カットセット3(基事象C)を含むカットセットリストを出力する(S1)。
【0020】
一方、正解カットセット作成装置20は、同じ頂上事象についてのイベントツリーから正解カットセットを作成し、出力する(S2)。イベントツリーの一例を
図4に示す。
図4上部のヘディングには、起因事象IE(Initiating Event)と、緩和機能FE(Function Event)を示すFE1、FE2、FE3、FE4が並んでいる。緩和機能は、イベントツリーの左から右へ向けて事象が進展するに伴い発生する順に並べられている。起因事象は、頂上事象を引き起こし得る起因となる事象であって、最初に発生する事故事象等を示す。緩和機能は、起因事象から頂上事象が発生するまでの間に生じる事象またはその事象を緩和する機能や設備を示し、緩和機能による対策(事象の場合は、事象への対策)に成功すれば、頂上事象まで事象が進展することを防ぐことができ、失敗すると頂上事象へ向けて事象が進展する。イベントツリーでは、緩和機能ごとの分岐点において、成功を水平(右)方向の線で表し、失敗を垂直(下)方向の線で表す。例えば、IEが発生した後、FE1にて対応に成功すれば、炉心損傷に至ることを防ぐことができる(収束1)。IE発生後、FE1で成功、FE2で失敗、FE3で失敗すると頂上事象である炉心損傷(炉心損傷2)が発生してしまう。正解カットセット作成装置20は、起因事象が発生する要因と、緩和機能に失敗する要因とをイベントツリーの構造に基づき組み合わせて、頂上事象が生じるときの起因事象の発生要因および各緩和機能の失敗要因の連鎖を示す正解カットセットを多数作成する。
【0021】
発生要因と失敗要因の一例を
図5に示す。
図5の表の1行目(No=1)は、発生確率又は発生頻度が最も高い要因を示す。以下、発生確率の場合を例に説明を行うと、具体的には、IEの発生要因のうち最も発生確率が高い発生要因がA1である。例えば、IEを“原子炉の冷却機能の喪失”とすると、A1は、“一次冷却水ポンプの故障”等である。また、FE1の失敗要因のうち最も発生確率が高い失敗要因はB1である。例えば、FE1を“原子炉冷却材の漏えい”とすると、B1は、“一次冷却水ポンプの停止操作失敗”等である。同様に、FE2の最も発生確率が高い失敗要因はC1、FE3の最も発生確率が高い失敗要因はD1、FE4の最も発生確率が高い失敗要因はE1である。起因事象の発生要因と各緩和機能の失敗要因は、FTの分析等によって特定され、発生確率が高い要因の上位20個(20個は一例であって、例えば、15個でも25個でもよい。)が技術者により選定され、正解カットセット作成装置20の記憶部22へ予め格納されている。正解カットセット作成装置20は、IE、FE1~4の上位20個の要因を、イベントツリーの構成に基づいて組み合わせて複数の正解カットセットを作成する。例えば、
図4のイベントツリーの場合、1つの正解カットセットのパターン(要因の連鎖)として、FE1にて失敗、FE2にて成功、FE3にて失敗する場合がある。このパターンについて、正解カットセット作成装置20は、IEの発生要因の上位20個、FE1の失敗要因の上位20個、FE3の失敗要因の上位20個を組み合わせて8000個(20×20×20)の正解カットセットを作成する。頂上事象に至る緩和機能の組合せパターンを事故シーケンスと呼ぶ。
図4のイベントツリーの場合、上記のFE1失敗、FE2成功、FE3失敗により炉心損傷(炉心損傷3)へ至る事故シーケンスの他、FE1失敗、FE2失敗、FE3成功、FE4失敗により炉心損傷(炉心損傷4)へ至る事故シーケンス、FE1成功、FE2失敗、FE3失敗により炉心損傷(炉心損傷2)へ至る事故シーケンス、FE1成功、FE2失敗、FE3成功、FE4失敗により炉心損傷(炉心損傷1)へ至る事故シーケンスの計4つの事故シーケンスが存在する。正解カットセット作成装置20は、炉心損傷に至る各事故シーケンス別に各分岐点における失敗要因を組み合わせて、例えば数千~数万個の正解カットセットを作成し、更に、この中から発生確率が低い要因の組み合せによって構成される正解カットセットを削除する等の処理を行って、残った正解カットセットを出力する(S2)。PRAモデルから抽出された確認対象カットセットは、PRAモデルの誤り(例えば、
図3のFTにて、ANDゲートであるべき位置にORゲートが記述されている等)により、不適切である可能性があるのに対し、正解カットセットは、技術者によって正しいことが確認された失敗要因等を、技術者によって正しいことが確認されたETの構成に基づいて組み合わせたものであるため、適切なものであると考えられる。以下の処理では、正しいと考えられる正解カットセットに類似する確認対象カットセットは適切である可能性が高く、正解カットセットに類似しない確認対象カットセットは不適切である可能性が高いと考え、AI技術を用いて、大量の確認対象カットセットを正解カットセットに類似するものと類似しないものに分類する。そして、類似しないと判別された確認対象カットセットをターゲットにして技術者の手動による確認作業を行う。
【0022】
妥当性確認支援装置30は、S1で出力された確認対象カットセットとS2で出力された正解カットセットを取得する。妥当性確認支援装置30は、これらのカットセットの文字列の特徴量を演算し、演算した特徴量に基づいて階層的クラスタリングを行う(S3)。ここでカットセットの文字列の構成について例を挙げて説明する。PRAモデルから出力(S1)された確認対象カットセットは、基事象の組合せである。基事象は、コード化された文字列で表される。例えば、基事象Aは“Aa1bbb1052A”、基事象Bは“Aa1ddd2052A”のように表される。これらのコードの、先頭の3桁“Aa1”はプラントの系統ID、次の4桁”bbb1”や”ddd2”は故障モードID、最後の4桁“052A”は故障に関する機器番号を示している。例えば、PRAモデル管理装置10が出力したカットセットリストに、”カットセット1”と”カットセット2”が含まれ、カットセット1は基事象Aのみ、カットセット2は基事象Bのみを含むものとする。すると、カットセット1は、文字列“Aa1bbb1052A”で表され、カットセット2は、文字列“Aa1ddd2052A”で表される。妥当性確認支援装置30の特徴量演算部33は、カットセット1を“Aa1”、“bbb1”、“052A”の単語に分節し、カットセット2を“Aa1”、“ddd2”、“052A”に分節し、これらをWord2Vec等のテキスト分析により処理し、カットセットの文字列の特徴量を演算する。Word2Vecによって、カットセットの文字列を構成する単語の分散や関連性を表したベクトルを演算することができる。このベクトルが、カットセットの文字列の特徴量である。例えば、単語の出現傾向に基づいて文字列の特徴量を演算するテキスト分析手法の場合、カットセットの意味する内容が異なっていても、単語の出現傾向が類似するもの同士が類似する特徴量が演算されてしまう事が起こりうる。これに対し、各単語について周辺の単語の出現傾向から特徴量を算出するWord2Vecによれば、カットセットに含まれる基事象の組み合わせ情報、カットセットの文字列が持つ意味をベクトルに反映することができ、正解カットセットに類似するものと類似しないものを分類するうえで精度の良い特徴量を演算することができる。なお、特徴量の演算手法は、Word2Vecに限定されない。例えば、tfidf等を用いてカットセットの特徴量を演算してもよい。
【0023】
イベントツリーから出力(S2)された正解カットセットは、起因事象の発生要因と緩和機能の失敗要因の組合せであるが、これらのカットセットも、PRAモデルから出力された確認対象カットセットと同様の体系によりコード化された単語を組み合わせた文字列として表される。つまり、起因事象の発生要因や緩和機能の失敗要因は、PRAモデルを構成する基事象と同様のものである。正解カットセットの全てが確認対象カットセットに存在するわけでは無いが、正解カットセットの一部、例えば、発生確率又は発生頻度が高い要因を組み合わせて作成された正解カットセットは、確認対象カットセットに全く同じものが存在する可能性があり、これらは同じ文字列で表される。妥当性確認支援装置30は、正解カットセットについても、Word2Vec等により特徴量(ベクトル)を演算する。
【0024】
確認対象カットセットと正解カットセットの特徴量を演算すると、妥当性確認支援装置30は、確認対象カットセットと正解カットセットの集合を特徴量に基づいて、階層的クラスタリングする。階層的クラスタリングでは、特徴量ベクトルの距離が近いカットセット同士で集合(クラスタ)にしていく過程を、最終的に全カットセットが1つのクラスタに統合されるまで繰り返される。この処理は、カットセットの文字列のテキスト分析結果が、基事象の組み合わせの類似度を表すと想定して、カットセットをカテゴライズするために行う。
図2の例では、階層的クラスタリングの結果、クラスタ1~Nが生成されている。階層的クラスタリングが完了すると、妥当性確認支援装置30は、クラスタ1~Nのうち正解カットセットを含むクラスタ1~2、4、Nに分類された確認対象クラスタに、“適切”とマーキングし、クラスタ3に属する確認対象クラスタに“不適切”とマーキングする(S4)。例えば、妥当性確認支援装置30は、クラスタ1~2、4、Nに分類された確認対象クラスタに”適切フラグ”を立てるか、クラスタ3の確認対象クラスタに”不適切フラグ”を立てる。“適切”とは、正解カットセットと同じクラスタに分類されたこと、つまり、正しいと考えられる正解カットセットに類似するカットセットであることを示し、“不適切”とは、正解カットセットに類似せず、不適切なカットセットである可能性が高いことを示している。
【0025】
ここで、技術者は、正解カットセットを含まないクラスタ3に属する確認対象クラスタの中から、任意に1つ又は複数の確認対象カットセットを選択し、そのカットセットの妥当性を確認してもよい。カットセットの妥当性は、技術者が目視により確認することにより、判断することができる。
【0026】
確認対象カットセットに正解カットセットを混ぜて階層的クラスタリングすることにより、正しいと考えられる正解カットセットに類似する確認対象カットセットと、正解カットセットに類似しない確認対象カットセットを分類することができる。換言すれば、階層的クラスタリングにより、不適切なカットセットを集約することができる。また、正解カットセットが存在するクラスタのカットセットに適切とマーキングすることにより、正しいと考えられるカットセットの数を増殖させることができる。
【0027】
次に、妥当性確認支援装置30は、各クラスタ1~Nから正解カットセットを取り除き(S5)、マーキング後の確認対象カットセットを対象として、2回目の階層的クラスタリングを行う(S6)。2回目の階層的クラスタリングでは、適切とマーキングしたカットセットが、1回目の階層的クラスタリングにおける正解カットセットと同様の役割を果たす。また、2回目の階層的クラスタリングでは、妥当性確認支援装置30は、全ての確認対象カットセットを事故シーケンス別に分類して階層的クラスタリングを行ってもよい。
図4のETの場合、妥当性確認支援装置30は、全ての確認対象カットセットを4つの事故シーケンス別に分類して、分類後のグループごとに階層的クラスタリングを行う。例えば、FE1成功、FE2失敗、FE3失敗、炉心損傷2という事故シーケンスについて、妥当性確認支援装置30は、FE2の失敗に関する機器番号、FE3の失敗に関する機器番号を含む確認対象カットセットを抽出して、この事故シーケンスに分類する。事故シーケンス別に階層的クラスタリングを行うことで、計算量、計算時間を低減することができる。確認対象カットセットを事故シーケンス別に分類する処理は技術者が行ってもよい。
【0028】
2回目のクラスタリングの結果、事故シーケンス1についてクラスタ11~13が生成され、事故シーケンス2についてクラスタ21~23が生成され、事故シーケンス3についてクラスタ31~33が生成され、・・・、事故シーケンスMについてクラスタM1~M3が生成されている。これらのうちクラスタ32、クラスタM2には適切とマーキングされたカットセットが含まれていない。適切とマーキングされたカットセットが含まれていないクラスタには、不適切なカットセットが含まれている可能性が高いと考えられる。技術者は、適切とマーキングされたカットセットを含むクラスタを確認対象から除外し、残りのクラスタ32、クラスタM2から、例えば1つずつ(複数でもよい)カットセットを抽出して、妥当性の確認を行う。不適切なカットセットが抽出された場合、技術者は、PRAモデルを修正する。これにより、確認対象クラスタが大量に存在する場合であっても、不適切なカットセットを特定のクラスタに集約して確認対象のカットセットを絞り込むことができるので、効率よく確認作業を行うことができる。
【0029】
(動作)
次に、妥当性確認システム1の動作について説明する。
図6は、実施形態に係る妥当性確認処理の一例を示すフローチャートである。
(正解カットセットの作成)
まず、技術者が確認対象の起因事象を選定し、選定した起因事象と確認対象の頂上事象を正解カットセット作成装置20へ入力する。正解カットセット作成装置20では、正解カットセット作成部21が、入力された起因事象と頂上事象を取得し(S11)、その起因事象から頂上事象へ至るまでのETを記憶部22から読み出す。次に正解カットセット作成部21は、読み出したETに基づいて、事故シーケンスを選定する(S12)。記憶部22には、ETの事故シーケンスごとに発生確率又は発生頻度が設定されている。例えば、
図4のETの場合、炉心損傷1~4のそれぞれに至る事故シーケンスごとに、その事故シーケンスが発生する発生確率が設定されている。正解カットセット作成部21は、それぞれの事故シーケンスの発生確率を閾値と比較して、閾値以上の事故シーケンスを選定する。発生確率の低い事故シーケンスに関するカットセットは、確認対象カットセットにも含まれていない可能性がある為、予め対象としない。
【0030】
次に正解カットセット作成部21は、選定した事故シーケンスの緩和機能を整理する(S13)。例えば、
図4のETについて、S12で炉心損傷3~4に至る事故シーケンスのみが選定された場合、正解カットセット作成部21は、炉心損傷3に至る事故シーケンスに関連するヘディング項目として、IEと、FE1と、FE3を選択し、炉心損傷4に至る事故シーケンスについて、IEと、FE1と、FE4を選択する。
【0031】
次に正解カットセット作成部21は、選定した事故シーケンスに関して、起因事象の発生要因と緩和機能の失敗要因を所定個ずつ抽出する(S14)。例えば、炉心損傷3~4に至る事故シーケンスのみが選定された場合、正解カットセット作成部21は、記憶部22に登録されたIEの発生要因の中から発生確率が上位のものから順に20個を抽出し、FE1、FE3、FE4それぞれの失敗要因について発生確率の上位20個をそれぞれ抽出する。なお、抽出された失敗要因は1つとは限らず、複数の失敗要因の組合せである場合がある。
【0032】
次に正解カットセット作成部21は、抽出した発生要因および失敗要因を組み合わせて正解カットセットを作成する(S15)。例えば、炉心損傷3に至る事故シーケンスに関して、正解カットセット作成部21は、IEの発生要因20個と、FE1の失敗要因20個と、FE3の失敗要因20個を組み合わせて8000通りの正解カットセットを作成する。なお、S14で抽出された20個の発生要因、20個の失敗要因には、それぞれの要因の発生確率が設定されていて、正解カットセット作成部21は、作成した正解カットセットごとにそのカットセットを構成する発生要因と失敗要因の発生確率を掛け合わせて、正解カットセットの発生確率を演算する。(1)正解カットセット作成部21は、正解カットセットの発生確率が所定のカットオフ値以下の場合、その正解カットセットを削除(カットオフ)する。これは、カットオフ値を下回るカットセットは、確認対象のカットセットリストには存在しないと考えられるためであり、カットオフにより、余計な正解カットセットを削減することができる。(2)同じ失敗要因α(又は失敗要因の組み合わせ)が複数の緩和機能(例えば、炉心損傷3に至る事故シーケンスのFE1とFE3)の上位20個のリストに登場する場合、正解カットセット作成部21は、その失敗要因αが前段の緩和機能に含まれる組み合わせにおいては、後段の緩和機能には何の失敗要因も設定しない。これは、FE1がある失敗要因αによって失敗した場合には、失敗要因αによって同時にFE3も失敗していると考えられるためである。例えば、
図5のリストにて、B2とD4が共に失敗要因αであれば、A1、B2、D4を組み合わせて正解カットセットを作成する場合、A1×B2×D4ではなく、A1×B2とする。(3)また、失敗要因に同じ基事象が重複する場合、ブール代数処理と同様にして、1つにマージする。例えば、炉心損傷3に至る事故シーケンスのFE1の失敗要因とFE3の失敗要因にそれぞれB5×PPP、D6×PPPが存在する場合、正解カットセット作成部21は、A1×B5×PPP×D6×PPPではなく、A1×B5×D6×PPPという正解カットセットを作成する。正解カットセット作成部21は、(1)~(3)に留意しつつ、事故シーケンスを構成するIEの発生要因および各緩和機能の失敗要因を組み合わせて正解カットセットを作成する。この処理により、上位20個の確認済み失敗要因から例えば8000個程度の正解カットセットを作成することができる。技術者は、20個の発生要因と20×2個の失敗要因の妥当性を事前に確認しておけばよいので、比較的低い作業負荷で多数の正解カットセットを得ることができる。正解カットセット作成部21は、S13で選定した事故シーケンスごとに正解カットセットを作成する。正解カットセット作成部21は、正解カットセットを妥当性確認支援装置30へ出力する。妥当性確認支援装置30では、正解カットセット取得部32が、正解カットセットを取得し、記憶部37に書き込む。
【0033】
(確認対象カットセットの作成)
次に技術者が、PRAモデル管理装置10へカットセットリストを出力するよう指示する。カットセット出力部11は、記憶部13からPRAモデル(
図3)を読み出して、PRAモデルに基づいてカットセットリストを抽出する(S16)。カットセットリストの抽出には、一般的に提供されているツールを使用することができる。カットセット出力部11は、カットセットリストを妥当性確認支援装置30へ出力する。妥当性確認支援装置30では、カットセット取得部31が、カットセットリストを取得し、記憶部37に書き込む。
なお、S11~15までの処理と、S16の処理の順番は逆でもよいし、同時並行的に行ってもよい。
【0034】
妥当性確認支援装置30が正解カットセットとカットセットリストを取得すると、特徴量演算部33は、それら全てのカットセットをWord2Vec等により分析し、カットセットの文字列の特徴量を演算する(S17)。特徴量演算部33は、全ての正解カットセットおよびカットセットリストに含まれる全ての確認対象カットセットの特徴量を各カットセットと対応付けて記憶部37に記録する。
【0035】
次に階層的クラスタリング部34が、1回目の階層的クラスタリングを実行する(S18)。このとき、技術者は、正解カットセットが含まれないクラスタの数を指定することができる。階層的クラスタリング部34は、全ての正解カットセットと確認対象カットセットを対象として文字列の特徴量に基づいて階層的クラスタリングを行い、正解カットセットを含む1つ又は複数のクラスタと、正解カットセットを含まない技術者によって指定された数のクラスタを生成する。次に出力部36が、1回目の階層的クラスタリング結果を出力する(S19)。例えば、出力部36は、生成されたクラスタごとに、クラスタID、正解カットセットの有無、そのクラスタに属する確認対象カットセットIDなどを出力する。上記の通り、正解カットセットを含まないクラスタには、不適切なカットセットが集約されていると考えることができる。技術者は、正解カットセットを含まないクラスタに属する確認対象カットセットの中から1つ又は複数のカットセットを選択し、選択したカットセットが妥当かどうかを確認してもよい。正解カットセットを使用した階層的クラスタリングにより、確認対象カットセット全体の中から無作為にカットセットを選択して確認するよりも、高確率で不適切なカットセットを選択することができ、カットセットの妥当性確認作業を効率化することができる。例えば、技術者は、カットセットに含まれる基事象に誤りがないか、余計な基事象が含まれていないか、基事象の組合せ条件(OR、AND)に誤りがないかどうか等を確認する。誤りがあった場合、技術者は、修正指示情報をPRAモデル管理装置10に入力する。PRAモデル管理装置10では、修正受付部12が、PRAモデルの修正指示情報を取得し、修正指示情報に基づいて、記憶部13のPRAモデルを修正する。
【0036】
次に制御部35が、全ての確認対象カットセットにマーキングを行う(S20)。例えば、制御部35は、正解カットセットを含むクラスタに属する確認対象カットセットに“適切フラグ”を立ててマーキングし、正解カットセットを含まないクラスタに属する確認対象カットセットに“不適切フラグ”を立ててマーキングする。あるいは、制御部35は、正解カットセットを含むクラスタに属する確認対象カットセットに対してのみ“適切フラグ”を立て、正解カットセットを含まないクラスタに属する確認対象カットセットに対してはフラグを立てないことにより不適切であることを示すマーキングを行ってもよいし、反対に、正解カットセットを含まないクラスタに属する確認対象カットセットに対してのみ“不適切フラグ”を立てることにより適切と不適切のマーキングを行ってもよい。また、マーキングはフラグを立てる以外の方法であってもよい。
【0037】
次に制御部35は、全ての確認対象カットセットを事故シーケンスごとに分類する(S21)。例えば、制御部35は、各カットセットに含まれる基事象の組合せに基づいて、特定の事故シーケンスへの分類を行う。一例として、ある確認対象カットセットに、IEの発生要因を示す基事象、FE1の失敗要因を示す基事象、FE2の失敗要因を示す基事象、FE4の失敗要因を示す基事象が含まれ、FE3の失敗要因を示す基事象が含まれていない場合、制御部35は、この確認対象カットセットを炉心損傷4に至る事故シーケンスに分類する。なお、S21の処理により2回目の階層化クラスタリングの計算負荷を低減することができるが、S21の処理は必須ではない。全ての確認対象カットセットを事故シーケンスごとに分類すること無く、2回目の階層化クラスタリングを行ってもよい。
【0038】
次に階層的クラスタリング部34が、2回目の階層的クラスタリングを実行する(S22)。このとき、技術者は、適切とマーキングしたカットセットが含まれないクラスタの数を指定することができる。階層的クラスタリング部34は、全ての確認対象カットセットを対象として(正解カットセットは除く)、文字列の特徴量に基づく階層的クラスタリングを行い、適切とマーキングされたカットセットを含む1つ又は複数のクラスタと、不適切とマーキングされたカットセットのみを含む技術者によって指定された数のクラスタを生成する。次に出力部36が、2回目の階層的クラスタリング結果を出力する(S23)。例えば、出力部36は、生成されたクラスタごとに、クラスタID、適切とマーキングされたカットセットの有無、そのクラスタに属する確認対象カットセットIDなどを出力する。S20のマーキングによって、正解カットセットに類似する範囲まで正しいとみなすデータが拡張されて2回目の階層的クラスタリングが実行され、不適切とマーキングされたカットセットのみを含むクラスタが生成される。これにより、不適切とマーキングされたカットセットのみを含むクラスタには、1回目の階層クラスタリング結果よりも高い確率で不適切なカットセットが集約されると考えることができる。技術者は、不適切とマーキングされたカットセットのみを含むクラスタ(
図2のクラスタ32,M2)に属する確認対象カットセットの中から1つ又は複数のカットセットを選択し、選択したカットセットが妥当かどうかを確認する。これにより、1回目の階層的クラスタリング結果から選択するよりも高確率で不適切なカットセットを選択することができ、カットセットの妥当性確認作業を効率化することができる。不適切なカットセットが見つかった場合、技術者は、その原因を正す修正指示情報をPRAモデル管理装置10に入力する。PRAモデル管理装置10では、修正受付部12が、PRAモデルの修正指示情報を取得し、修正指示情報に基づいて、記憶部13のPRAモデルを修正する(S24)。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、擬似的な頂上事象のカットセットデータ(正解カットセット)を作成し、それらを確認対象のカットセットと共に階層的クラスタリングすることで、正解カットセットが含まれていないクラスタに、PRAモデルの誤りによって発生する不適切なカットセットを集約する。そして、そのクラスタから任意にカットセットを選択することで、不適切なカットセットを高精度で選択することができる。また、1回目の階層的クラスタリングにより、正解カットセットと類似すると判断された確認対象カットセットを正しいカットセットとみなして、2回目の階層的クラスタリングを実行する。これにより、より確実に不適切である可能性が高い(つまり、正しいカットセットとの類似度が低い)確認対象カットセットを特定のクラスタに集約することができる。PRAモデルの誤りによる不適切なカットセットの比率は一般的に1%未満であると考えられる。カットセット全体の中から、無作為に不適切なカットセットを抽出しようとすると確実性に欠ける。本実施形態によれば、適切とマーキングされたカットセットを含まないクラスタから、例えば数個の抽出で不適切なカットセットを確実に選択することができる。なお、出願人は、本実施形態の方法により、無作為に全体からカットセットを抽出する方法の10倍以上の精度で不適切なカットセットを選択できることを確認している。
【0040】
また、不適切とマーキングされたカットセットのみを含むクラスタに属する全ての確認対象カットセットを技術者が確認することによりPRAモデルの精度を高めることができるが、確認するカットセットの数が膨大になると、技術者が確認しきれない可能性がある。一方、PRAモデルに含まれている誤った要素(基事象や論理式)に関連するカットセットを1つでも確認し、その誤った要素を修正することができるならば、誤った要素に関連するカットセットは全て正しく修正される。従って、PRAモデルに存在する誤った要素に関連するカットセットの何れか1つを的確に選んで、技術者に確認を求めることができれば、技術者は、少数のカットセットだけを確認すれば良く、効率的にPRAモデルを修正することができる。本実施形態によれば、不適切なカットセットを(少数であっても)短時間に確実に見つけることができるので、数十万規模のカットセットが存在する場合でも、PRAモデルの誤りを確実に修正し、品質低下を防ぐことができる。
【0041】
また、正解カットセット作成の際には、ETの各分岐点の失敗要因の妥当性確認は、高々20個程度しか行わないが、それを組み合わせることで、正解カットセットを増殖させることができる。さらにAI技術を活用し、1回目の階層的クラスタリング結果に基づいてマーキングを行うことにより、正しいとみなすカットセットの数をさらに増殖させることができる。これにより、数十万規模のカットセットを効率的に確認し、不適切なカットセットを抽出することができる。
【0042】
また、PRAの出力結果であるカットセット、ETの各分岐点の失敗要因等を組み合わせて作成する正解カットセットは文字列であるため、Word2Vec等のテキスト分析により特徴量を捉えたベクトルへ変換できる。その技術を利用し、類似性の高い(=ベクトル空間上の距離が近い)カットセットを階層的クラスタリングによりグループ化することができる。これにより、正解カットセットに類似しないカットセットを特定のクラスタに集約することができる。
【0043】
また、カットセットの確認作業は、安全性向上の観点から技術者によって継続的に実行される作業である。本実施形態の妥当性確認システム1を導入することによって、確認作業の効率化、省力化の効果を長期的にわたって享受することができる。
【0044】
上記実施形態では、原子力発電プラントにおいて作成されたPRAモデルのカットセットの確認作業を省力化・効率化するについて述べた。上述の通り、原子力発電プラントでは、カットセットの数が数万~数十万に達することがあり、本実施形態のPRAモデルの妥当性確認方法は有効である。しかし、妥当性確認システム1の適用分野は、原子力プラントに限定されない。PRAモデルを用いてリスク評価を行うどのような産業分野にも適用が可能である。
【0045】
図7は、妥当性確認システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述のPRAモデル管理装置10、正解カットセット作成装置20、妥当性確認支援装置30は、それぞれコンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0046】
なお、PRAモデル管理装置10、正解カットセット作成装置20、妥当性確認支援装置30の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。PRAモデル管理装置10、正解カットセット作成装置20、妥当性確認支援装置30は、それぞれ通信可能な複数のコンピュータ900によって構成されていても良い。また、PRAモデル管理装置10、正解カットセット作成装置20、妥当性確認支援装置30が1台のコンピュータ900によって構成されていても良い。
【0047】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0048】
<付記>
各実施形態に記載の確率論的リスク評価モデルの妥当性確認方法、妥当性確認システム1及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0049】
(1)第1の態様に係る確率論的リスク評価モデルの妥当性確認方法は、頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得するステップと(S15)、前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するステップと(S16)、複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて、特徴量を演算するステップと(S17)、複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う第1のクラスタリング実行ステップと(S18)、前記第1のクラスタリング実行ステップの前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記正解カットセットを含まないクラスタを出力する第1の出力ステップと(S19)、を有する。
これにより、正解カットセットを含むクラスタに適切である可能性が高いカットセットを集約して、これらを確認対象から除外することができる。また、正解カットセットを含まないクラスタに不適切である可能性が高いカットセットを集約し、確認対象のカットセットを限定することができる。これにより、確認対象カットセットが十数万個以上存在する場合でも、効率よくカットセットの妥当性確認を行うことができる。
【0050】
(2)第2の態様に係る妥当性確認方法は、(1)の妥当性確認方法であって、前記第1の出力ステップによって出力された前記クラスタに含まれる前記確認対象カットセットについての妥当性の確認結果を取得するステップと、前記確認結果が妥当ではない場合、前記PRAモデルの修正情報を受け付けるステップと、をさらに有する(S19に対して確認・修正を行う場合)。
正解カットセットを含まないクラスタからカットセットを選択して妥当性の確認を行うことで、高い確率で不適切なカットセットを発見し、PRAモデルを修正することができる。
【0051】
(3)第3の態様に係る妥当性確認方法は、(1)~(2)の妥当性確認方法であって、前記第1のクラスタリング実行ステップで生成された前記クラスタに含まれる前記確認対象カットセットのそれぞれについて、前記正解カットセットを含む前記クラスタに属する場合には第1識別情報を付し、前記正解カットセットを含まない前記クラスタに属する場合には第2識別情報を付すステップ(S20)と、前記第1識別情報又は第2識別情報を付した全ての複数の前記確認対象カットセットについて、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う第2のクラスタリング実行ステップ(S22)と、前記第2のクラスタリング実行ステップの前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記第2識別情報が付された前記確認対象カットセットだけを含むクラスタを出力する第2の出力ステップ(S23)と、をさらに有する。
正解カットセットを含むクラスタに属するカットセットを正とみなし適切とのマーキング(第1識別情報)を行って階層的クラスタリングを行うことで、適切と考えられるカットセットの範囲を広げ、不適切と考えられるカットセットを更に絞り込むことができる。
【0052】
(4)第4の態様に係る妥当性確認方法は、(1)~(2)の妥当性確認方法であって、前記第1のクラスタリング実行ステップで生成された前記クラスタに含まれる前記確認対象カットセットのそれぞれについて、前記正解カットセットを含む前記クラスタに属する場合には第1識別情報を付し、前記正解カットセットを含まない前記クラスタに属する場合には第2識別情報を付すステップ(S20)と、前記第1識別情報又は前記第2識別情報を付した全ての前記確認対象カットセットを、前記事象の進展の類型ごとに分類するステップ(S21)と、前記分類するステップによって分類したグループごとに前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う第2のクラスタリング実行ステップ(S22)と、前記第2のクラスタリング実行の前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記第2識別情報が付された前記確認対象カットセットだけを含むクラスタを出力する第2の出力ステップ(S23)と、をさらに有する。
(3)の妥当性確認方法による効果に加え、階層的クラスタリングの要する計算負荷を低減することができるので、確認対象カットセットが膨大となった場合でも、効率よく処理することができる。
【0053】
(5)第5の態様に係る妥当性確認方法は、(3)~(4)の妥当性確認方法であって、前記第2の出力ステップによって出力された前記クラスタに含まれる前記確認対象カットセットについての妥当性の確認結果を取得するステップと、前記確認結果が妥当ではない場合、前記PRAモデルの修正情報を受け付けるステップと、をさらに有する。
適切とマーキングされたカットセットを含まないクラスタからカットセットを選択して妥当性の確認を行うことで、高い確率で不適切なカットセットを発見し、PRAモデルを修正することができる。
【0054】
(6)第6の態様に係る妥当性確認方法は、(1)~(5)の妥当性確認方法であって、前記特徴量の演算は、前記確認対象カットセットおよび前記正解カットセットの文字列がどのような単語をどのように組み合わせて構成されているかをベクトル化することによって行う。
これにより、各カットセットを表す文字列における単語の組合せによって示される当該カットセットの特徴を適切に表した(保持した)特徴量を演算することができ、階層的クラスタリングにおいて、適切なカットセットと、不適切なカットセットに精度よく分離することができる。
【0055】
(7)第7の態様に係る妥当性確認方法は、(1)~(6)の妥当性確認方法であって、前記イベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する失敗要因とを複数設定した失敗要因情報を取得し(S14)、前記起因事象が発生する要因と前記緩和機能ごとの前記失敗要因とを前記イベントツリーの構造に基づいて組み合わせて、前記正解カットセットを複数作成するステップ(S15)、をさらに有する。
これにより、正解カットセットを作成することができる。
【0056】
(8)第8の態様に係る妥当性確認方法は、(7)の妥当性確認方法であって、前記正解カットセットを複数作成するステップでは、前記起因事象と前記緩和機能を前記イベントツリーの構造に基づいて組み合わせた前記事象の進展の類型の発生確率又は発生頻度に基づいて、前記発生確率又は発生頻度が所定の閾値以上の前記事象の進展の類型について、前記正解カットセットを作成する。
【0057】
(9)第9の態様に係る妥当性確認方法は、(7)~(8)の妥当性確認方法であって、前記正解カットセットを複数作成するステップでは、前記正解カットセットを構成する前記起因事象が発生する要因の発生確率又は発生頻度と、前記緩和機能が失敗する要因の発生確率又は発生頻度とに基づいて当該正解カットセットの発生確率又は発生頻度を計算し、当該発生確率又は当該発生頻度が所定の閾値以下の場合、当該正解カットセットを作成しない。
PRAモデルから抽出されるカットセットリストには、発生確率又は発生頻度が低いカットセットが含まれていない。(8)、(9)の態様によれば、確認対象カットセットに無い、発生確率又は発生頻度が低い、不要な正解カットセットの作成を抑制し、データ量を抑え、計算負荷を抑制することができる。
【0058】
(10)第10の態様に係る妥当性確認システムは、頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得する正解カットセット取得部32と、前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するカットセット取得部31と、複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて特徴量を演算する特徴量演算部33と、複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行う階層的クラスタリング部34と、前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記正解カットセットを含まないクラスタを出力する出力部36と、を有する。
【0059】
(11)第11の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、頂上事象への事象の進展を示すイベントツリーのヘディングに設定された起因事象および緩和機能について、前記起因事象が発生する要因と、前記緩和機能が失敗する要因とを前記イベントツリーの構造に基づき組み合わせて作成された正解カットセットを複数取得するステップと、前記頂上事象のPRAモデルを構成するカットセットである確認対象カットセットを複数取得するステップと、複数の前記確認対象カットセットおよび複数の前記正解カットセットのそれぞれについて、特徴量を演算するステップと、複数の前記確認対象カットセットに複数の前記正解カットセットを加えたカットセットの集合について、前記特徴量に基づく階層的クラスタリングを行うステップと、前記階層的クラスタリングによって生成されたクラスタのうち、前記正解カットセットを含まないクラスタを出力するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0060】
10・・・PRAモデル管理装置
11・・・カットセット出力部
12・・・修正受付部
13・・・記憶部
20・・・正解カットセット作成装置
21・・・正解カットセット作成部
22・・・記憶部
30・・・妥当性確認支援装置
31・・・カットセット取得部
32・・・正解カットセット取得部
33・・・特徴量演算部
34・・・階層的クラスタリング部
35・・・制御部
36・・・出力部
37・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU、
902・・・主記憶装置、
903・・・補助記憶装置、
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース