(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F16H 61/16 20060101AFI20240105BHJP
F16H 59/48 20060101ALI20240105BHJP
F16H 59/40 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
F16H61/16
F16H59/48
F16H59/40
(21)【出願番号】P 2020172798
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】東 人司
(72)【発明者】
【氏名】河野 通太
(72)【発明者】
【氏名】曽田 浩司
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-097323(JP,A)
【文献】特開平02-304258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/16
F16H 59/00-61/12
F16H 61/68-61/688
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に作業装置を連結可能な連結装置と、
前記車体に設けられた原動機と、
前記車体を走行させる走行装置と、
複数の速度段のうちのいずれかに切り換わる変速動作を行うことで、前記原動機の動力を変速して
、変速後の動力を前記走行装置に伝達する変速装置と、
前記車体の加速を検出する加速検出装置と、
前記変速装置の
前記変速動作
が行
われたとき
に、前記加速検出装置で検出
された
前記加速が閾値以上
になると、
前記変速動作を停止する変速牽制部と、
を備え
、
前記変速牽制部は、前記変速装置の前記変速動作が減速する変速であって、前記変速動作の開始後の前記加速が前記閾値以上になると、前記減速の変速を停止してから、前記変速装置の速度段を前記変速動作の開始前の速度段に戻す作業車両。
【請求項2】
前記加速検出装置は、前記変速動作の開始時の車速と、前記変速動作の開始後の現在の車速とに基づいて、前記加速を演算する請求項
1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記変速装置は、シフタの操作によって
前記複数
の速度段に変速する装置を含み、
前記変速牽制部は、前記シフタに連結する連結部材を前記シフタで変速した側と反対側に移動させることで前記変速動作を停止
してから、前記変速装置の速度段を前記変速動作の開始前の速度段に戻す請求項1
又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記連結部材は、前記シフタを中立位置に保持する第1位置と、前記シフタを第1減速位置に保持する第2位置と、前記シフタを第2減速位置に保持する第3位置とに切換え可能であり、
前記変速牽制部は、前記シフタが前記第1減速位置である場合に前記連結部材を前記第2位置から
前記第1位置に移動させ、前記シフタが前記第2減速位置である場合に前記連結部材を前記第3位置から
前記第1位置に移動させる移動機構を含んでいる請求項
3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記移動機構は、前記連結部材の前記第1位置に対応する停止位置と、前記連結部材の前記第2位置に対応する一方位置と、前記連結部材の前記第3位置に対応する他方位置とに切換え可能であり、
前記変速牽制部は、作動油によって前記移動機構を前記停止位置、
前記一方位置及び
前記他方位置のいずれかに切換え可能な電磁弁と、前記電磁弁を制御可能な制御装置と、を含んでいる請求項
4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記変速動作を開始後の
前記加速が
前記閾値以上
になると、前記電磁弁を制御して前記移動機構を
前記停止位置に移動させる請求項
5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記変速装置は、
前記複数
の速度段に切換え可能な副変速部を含んでいる請求項1~
6のいずれかに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主変速、副変速等のミッション(変速装置)を備えたトラクタとして特許文献1が知られている。
特許文献1の作業車両において、副変速装置は、シフタによって変速を切り換える構成であり、シフタをと回転している回転体に噛み合わせることにより変速を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような作業車両において、運転者が変速を行うレバー等を操作して変速を行った場合にシフタの接続に時間がかかることがあり、このような場合には、作業車両の走行が不安定になる恐れがあった。
本発明は、上記したような実情に鑑みて、変速時における走行を安定させることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の作業車両は、車体と、前記車体に作業装置を連結可能な連結装置と、前記車体に設けられた原動機と、前記車体を走行させる走行装置と、複数の速度段のうちのいずれかに切り換わる変速動作を行うことで、前記原動機の動力を変速して、変速後の動力を前記走行装置に伝達する変速装置と、前記車体の加速を検出する加速検出装置と、前記変速装置の前記変速動作が行われたときに、前記加速検出装置で検出された前記加速が閾値以上になると、前記変速動作を停止する変速牽制部と、を備え、前記変速牽制部は、前記変速装置の前記変速動作が減速する変速であって、前記変速動作の開始後の前記加速が前記閾値以上になると、前記減速の変速を停止してから、前記変速装置の速度段を前記変速動作の開始前の速度段に戻す。
【0006】
本発明の一態様では、前記加速検出装置は、前記変速動作の開始時の車速と、前記変速動作の開始後の現在の車速とに基づいて、前記加速を演算する。
また、本発明の一態様では、前記変速装置は、シフタの操作によって前記複数の速度段に変速する装置を含み、前記変速牽制部は、前記シフタに連結する連結部材を前記シフタで変速した側と反対側に移動させることで前記変速動作を停止してから、前記変速装置の速度段を前記変速動作の開始前の速度段に戻す。
【0007】
また、本発明の一態様では、前記連結部材は、前記シフタを中立位置に保持する第1位置と、前記シフタを第1減速位置に保持する第2位置と、前記シフタを第2減速位置に保持する第3位置とに切換え可能であり、前記変速牽制部は、前記シフタが前記第1減速位置である場合に前記連結部材を前記第2位置から前記第1位置に移動させ、前記シフタが
前記第2減速位置である場合に前記連結部材を前記第3位置から前記第1位置に移動させる移動機構を含んでいる。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記移動機構は、前記連結部材の前記第1位置に対応する停止位置と、前記連結部材の前記第2位置に対応する一方位置と、前記連結部材の前記第3位置に対応する他方位置とに切換え可能であり、前記変速牽制部は、作動油によって前記移動機構を前記停止位置、前記一方位置及び前記他方位置のいずれかに切換え可能な電磁弁と、前記電磁弁を制御可能な制御装置と、含んでいる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記変速動作を開始後の前記加速が前記閾値以上になると、前記電磁弁を制御して前記移動機構を前記停止位置に移動させる。
さらに、本発明の一態様では、前記変速装置は、前記複数の速度段に切換え可能な副変速部を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、変速動作を行った場合に車体の加速が増加する場合などは変速動作を中止することから、変速時の走行が不安定になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】変速牽制時の制御装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4は作業車両1の一実施形態を示す側面図であり、
図4は作業車両1の一実施形態を示す平面図である。本実施形態の場合、作業車両1はトラクタである。但し、作業車両1は、トラクタに限定されず、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0013】
以下、トラクタ(作業車両)1の運転席9に着座した運転者の前側を前方、運転者の後側を後方、運転者の左側を左方、運転者の右側を右方として説明する。また、作業車両1の前後方向に直交する方向である水平方向を車体幅方向として説明する。
図4に示すように、トラクタ1は、車体3と、連結装置4と、変速装置5と、原動機8とを備えている。車体3は走行装置7を有していて走行可能である。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
【0014】
原動機8は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3には運転席9が設けられている。
連結装置4は、車体3の後部に設けられている。連結装置4は、圃場(農地)等に対して作業を行う作業装置(対地作業機)2をトラクタ1の後部に連結するための部分である。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置、トレーラ等である。
【0015】
連結装置4は、例えば、油圧シリンダ等のアクチュエータにより駆動して作業装置2を上昇又は下降させる昇降装置である(以下、「昇降装置4」ともいう)。本実施形態の場合、昇降装置4は、3点リンク機構であって、リフトアーム4a、ロアーリンク4b、トップリンク4c、リフトロッド4d、リフトシリンダ4eを有している。トップリンク4c及びリフトロッド4dを作業装置2に連結することができる。また、リフトシリンダ4eを伸縮することにより作業装置2を昇降することができる。なお、連結装置4は、上述した実施形態に限定されず、作業装置2を牽引するスイングドローバ等であってもよい。
【0016】
図1に示すように、変速装置5は、前後進切換部10と、主変速部11と、副変速部12と、PTO動力伝達部13と、前輪動力伝達部14とを備えている。
前後進切換部10は、原動機8のクランク軸15から走行系の推進軸16へ伝達される動力、即ち、推進軸16の回転の方向を正転(前進)及び逆転(後進)のいずれかに切り換える装置である。前後進切換部10は、クランク軸15の回転に伴って回転をする伝達軸20と、油圧によって前進側と後進側とに切り換わる油圧クラッチ21と、複数のギア22、23、24、25とを有している。油圧クラッチ21が前進側に切り換わると、伝達軸20の動力は、ギア25、26を介して推進軸16に伝達される。油圧クラッチ21が後進側に切り換わると、伝達軸20の動力は、ギア22、23、24、25を介してギア26を介して推進軸16に伝達される。
【0017】
主変速部11は、推進軸16の動力が伝達され、複数段に切り換わる変速部である。第1主切換部31と、第2主切換部32、第3主切換部33と、複数のギア34~44とを有している。複数のギア34~44の外形は異なっていて、これにより伝達される動力が複数段に切り換わるようになっている。即ち、ギア34~41によって4段に切り換わり、ギア39、42~44によって2段に切り換わる。
【0018】
第1主切換部31、第2主切換部32及び第3主切換部33は、少なくとも一方側と他方側とに切換え可能な油圧クラッチである。第1主切換部31が一方側に切り換わると、推進軸16の動力は、ギア34、41を介してギア42に噛み合うギア43と ギア39に噛み合うギア44とに伝達される。第1主切換部31が他方側に切り換わると、推進軸16の動力は、ギア35、40、42を介してギア43に伝達され、ギア35、40、39を介してギア44に伝達される。
【0019】
第2主切換部32が一方側に切り換わると、推進軸16の動力は、ギア36、39を介してギア44に伝達され、ギア36、39、42を介してギア43に伝達される。第2主切換部32が他方側に切り換わると、推進軸16の動力は、ギア37、38、42を介してギア43に伝達され ギア37、38、39を介してギア44に伝達される。
第3主切換部33が一方側に切り換わると、ギア43に伝達された動力が伝達軸47に伝達される。第3主切換部33が他方側に切り換わると、ギア44に伝達された動力が伝達軸47に伝達される。
【0020】
副変速部12は、クリープ部50と、第1副切換部51と、第2副切換部52とを有している。クリープ部50は、伝達軸47に接続されていて、シフタによって一方側と他方側とに切り換わる。クリープ部50が一方側に切り換わった場合、伝達軸47の動力は、シフタを介して伝達軸57に伝達される。また、クリープ部50が他方側に切り換わった場合、伝達軸47の動力は、ギア53~56を介して伝達軸57に伝達される。つまり、クリープ部50が一方側に切り換わると、伝達軸47の動力が減速されずに伝達軸57に伝達され、クリープ部50が他方側に切り換わると、伝達軸47の動力がギア53~56によって減速されて伝達軸57に伝達される。
【0021】
第1副切換部51は、伝達軸57に一体回転し且つ軸方向に移動自在なシフタ61と、伝達軸57に相対回転自在に設けられたギア62とを有している。第1副切換部51において、シフタ61を一方側(高速位置)に切り換えて当該シフタ61が回転体67に噛み合うと、伝達軸57の動力は、ギア62、63、64、65を介して出力軸66に伝達される。なお、ギア63、64は、伝達軸80に一体回転自在に設けられ、ギア65は出力軸66と一体回転自在に設けられている。
【0022】
第2副切換部52は、伝達軸57に一体回転するギア71と、ギア71に噛み合うギア72とギア72と一体回転する回転体73と、回転体73と一体回転し且つ当該回転体73に設けられたギア74と、伝達軸57と相対回転し且つギア74と一体回転する伝達体75と、伝達体75と一体回転するギア76と、ギア76に噛み合うギア77と、ギア77の回転に伴って回転する回転体78とを含んでいる。第2副切換部52は、伝達軸80と一体回転し且つ軸方向に移動自在なシフタ79を含んでいる。
【0023】
シフタ79を中立位置Nから一方側(低速位置:第1減速位置L)に切り換えて、シフタ79が回転体73に噛み合うと、伝達軸57の動力は、ギア71、72、シフタ79を介して伝達軸80に伝達される。シフタ79を中立位置Nから他方側(中速位置:第2減速位置M)に切り換えてシフタ79が回転体78に噛み合うと、伝達軸57の動力は、ギア71、72、回転体73、ギア74、伝達体75、ギア76、77、回転体78及びシフタ79を介して伝達軸80に伝達される。
【0024】
したがって、副変速部12によれば、高速側(高速段)と、中速側(中速段)と、低速側(低速段)との3段に切り換えられ、切り換えられた動力は、出力軸66を介して後輪を回転させる後輪デフ装置82に伝達される。
PTO動力伝達部13は、伝達軸20の動力が伝達されるPTO回転軸27と、PTO回転軸27の動力を切り換える切換機構28と、切換機構28からの動力が伝達されるPTO軸29とを含んでいる。したがって、PTO動力伝達部13によって、原動機8からの動力が、PTO回転軸27及び切換機構28を介してPTO軸29に伝達される。
【0025】
前輪動力伝達部14は、出力軸66の動力がギアを介して伝達される伝達軸18と、切換機構19とを有している。切換機構19によって切り換えられた動力が、前輪側へ伝達される。
図2に示すように、トラクタ1は、制御装置93を備えている。制御装置93には、運転者が手動によって変速操作を行う操作部材88が接続されている。操作部材88は、運転席9の周囲に設けられたレバー、スイッチ等であって、増速位置88aと、減速位置88bとに切換えが可能である。
【0026】
操作部材88が中立位置から増速位置88aに操作する(シフトアップ操作する)と、副変速部12は増速の変速動作(増速動作)を行う。
例えば、副変速の変速段が中速段であるときに、操作部材88を中立位置から増速位置88aにシフトアップ操作すると、第2副切換部52のシフタ79にはめ込まれた連結部材(シフトフォーク)87は、中速位置(第3位置)87Mから中立位置(第1位置)87Nに移動する一方、第1副切換部51のシフタ61にはめ込まれた連結部材(シフトフォーク)85が中立位置85Nから高速位置85Hへ移動し、シフタ61が高速段である高速位置Hに切り換えられることで、副変速部12が中速段から高速段に切り換えられる。
【0027】
また、副変速の変速段が低速段であるときに、操作部材88を中立位置から増速位置88aにシフトアップ操作すると、連結部材(シフトフォーク)87が低速位置(第2位置)87Lから中速位置(第3位置)87Mへ移動し、シフタ79が中速段である中速位置Mに切り換えられることで、副変速部12が低速段から中速段に切り換えられる。
操作部材88が中立位置から減速位置88bに操作する(シフトダウン操作する)と、副変速部12は減速の変速動作(減速動作)を行う。
【0028】
例えば、副変速の変速段が高速段であるときに、操作部材88を中立位置から減速位置88bにシフトダウン操作すると、連結部材(シフトフォーク)85が高速位置85Hから中立位置85Nへ移動する一方、連結部材(シフトフォーク)87が中立位置(第1位置)87Nから中速位置(第3位置)87Mへ移動し、シフタ79が中速位置Mに切り換えられることで、副変速部12が高速段から中速段に切り換えられる。
【0029】
副変速の変速段が中速段であるときに、操作部材88を中立位置から減速位置88bにシフトダウン操作すると、連結部材(シフトフォーク)87が中速位置(第3位置)87Mから低速位置(第2位置)87Lに移動し、シフタ79が低速位置Lに切り換えられることで、副変速部12が高速段から中速段に切り換えられる。
図2に示すように、トラクタ1は、変速牽制部90を備えている。変速牽制部90は、変速装置5の変速動作を行ったときに、車体3の加速が閾値以上である場合に、変速装置5の変速動作を停止する。具体的には、変速牽制部90は、変速装置5において、変速動作が減速する変速であって、変速動作を開始後の加速が閾値以上である場合に、減速の変速を停止する。
【0030】
以下、変速牽制部90について詳しく説明する。
変速牽制部90は、複数の移動機構91と、電磁弁92と、制御装置93とを含んでいる。
複数の移動機構91のそれぞれは、作動油の圧力によって連結部材(シフトフォーク)85、87を移動させる可能な機構である。この実施形態では、複数の移動機構91は、第1移動機構91Aと、第2移動機構91Bとを含んでいる。
【0031】
第1移動機構91Aは、中立位置101aと、高速位置101bとに切換え可能なシリンダを含んでいる。第1移動機構91A(シリンダ)は、連結部材(シフトフォーク)85に連結されている。中立位置101aは、連結部材85の中立位置85Nに対応していて、高速位置101bは、連結部材85の高速位置85Hに対応している。
第2移動機構91Bは、中立位置(停止位置)102aと、低速位置(一方位置)102bと、中速位置(他方位置)102cとに位置変更可能なシフトシリンダを含んでいる。第2移動機構91Bは、連結部材(シフトフォーク)87に連結されている。中立位置(停止位置)102aは、連結部材87の中立位置(第1位置)87Nに対応していて、低速位置(一方位置)102bは、連結部材87の低速位置(第2位置)87Lに対応していて、中速位置(他方位置)102cは、連結部材87の中速位置(第3位置)87Mに対応している。
【0032】
第2移動機構91Bは、変速装置5が高速側に切り換えられた状況下でシフタ79を中立位置Nから低速位置(第1減速位置)Lに切り換えたときにおいて、車体3の車速が閾値以上である場合には、連結部材87を低速位置(第2位置)87Lから中立位置(第1位置)87Nに移動させる。また、第2移動機構91Bは、変速装置5が高速側に切り換えられた状況下でシフタ79を中立位置Nから中速位置(第2減速位置)Mに切り換えたときにおいて、車体3の車速が閾値以上である場合には、連結部材87を中速位置(第3位置)87Mから中立位置(第1位置)87Nに移動させる。
【0033】
電磁弁92は、開閉によって移動機構91に作動油を供給する弁であり、油路を介して移動機構91に接続されている。詳しくは、電磁弁92は、第1切換弁92aと、第2切換弁92bと、第3切換弁92c、第4切換弁92dと、第5切換弁92eとを含んでいる。
第1切換弁92aは、制御信号によってソレノイドが励磁されると、油圧ポンプP1から吐出した作動油を第1移動機構91Aに供給し、第1移動機構91Aを中立位置101aに切り換える。第2切換弁92bは、制御信号によってソレノイドが励磁されると、油圧ポンプP1から吐出した作動油を第1移動機構91Aに供給し、第1移動機構91Aを高速位置bに切り換える。
【0034】
第3切換弁92cは、制御信号によってソレノイドが励磁されると、油圧ポンプP1から吐出した作動油を第2移動機構91Bに供給し、第2移動機構91Bを中立位置(停止位置)102aに切り換える。
第4切換弁92dは、制御信号によってソレノイドが励磁されると、油圧ポンプP1から吐出した作動油を第2移動機構91Bに供給し、第2移動機構91Bを低速位置(一方位置)102bに切り換える。
【0035】
第5切換弁92eは、制御信号によってソレノイドが励磁されると、油圧ポンプP1から吐出した作動油を第2移動機構91Bに供給し、第2移動機構91Bを中速位置(他方位置)102cに切り換える。
制御装置93は、トラクタ1の様々な制御を行う。制御装置93には、変速操作を検出可能な操作検出装置94と、変速を検出する変速検出装置95と、車体3の加速を検出する加速検出装置96とが接続されている。操作検出装置94は、操作部材88の変速操作を検出するセンサであって、操作部材88が中立位置から増速位置88aに操作された場合は、増速側に変速操作(シフトアップ操作)が行われたことを検出し、操作部材88が中立位置から減速位置88bに操作された場合は、減速側に変速操作(シフトダウン操作)が行われたことを検出する。
【0036】
加速検出装置96は、前輪の回転数、後輪の回転数、前輪を回転可能に支持する前車軸の回転数、後輪を回転可能に支持する後車軸の回転数の少なくとも1つを検出可能なセンサである。加速検出装置96は、前輪の回転数、後輪の回転数、前車軸の回転数、後車軸の回転数のいずれかを車速に換算し、変速動作の開始時の車速と、変速動作の開始後の現在の車速とに基づいて、車体3の加速を演算する。
【0037】
加速検出装置96は、高速側(高速位置H)に切り換えられた状態で、高速位置Hから中速位置(第2減速位置)Mに変速(変速動作)を開始する時点の車速(変速開始時の車速)を保持し、変速開始時と変速動作の開始後の現在の車速との差(車速差)から車体3の加速を検出する。
また、加速検出装置96は、中速側(中速位置M)に切り換えられた状態で、中速位置Mから低速位置(第1減速位置)Lに変速(変速動作)を開始する車速(変速開始時の車速)を保持し、変速開始時と変速動作の開始後の現在の車速との差(車速差)から車体3の加速を検出する。
【0038】
変速検出装置95は、変速を検出するセンサ等であって、シフタ61、79の噛み合いによる変速が行われたかを検出する。変速検出装置95は、シフタ61が回転体67に噛み合った場合、高速の変速が行われたこと(高速の変速が終了したこと)を検出する。変速検出装置95は、シフタ79が回転体73に噛み合った場合、低速の変速が行われたこと(低速の変速が終了したこと)を検出する。変速検出装置95は、シフタ79が回転体78に噛み合った場合、中速の変速が行われたこと(中速の変速が終了したこと)を検出する。
【0039】
制御装置93は、変速段が高速段の状態において、操作検出装置94がシフトダウン操作(第1減速操作)を検出したとき、第1切換弁92aに制御信号を出力することで、シフタ61を高速位置Hから中立位置Nに切り換え且つ、第5切換弁92eに制御信号を出力することで、シフタ79を中立位置Nから中速位置Mに切り換える変速動作(第1変速動作)を開始する。このように、制御装置93は、高速位置Hから中速位置Mに切り換えを行う第1変速動作の際に、加速検出装置96が検出した変速動作(第1変速動作)の開始後の加速を参照し、加速が閾値以上である場合は、高速位置Hから中速位置Mへの変速動作を停止し、第2切換弁92b及び第3切換弁92cに制御信号を出力することにより、変速を高速に戻すことを行う。
【0040】
また、制御装置93は、変速段が中速段の状態において、操作検出装置94がシフトダウン操作(第2減速操作)を検出したとき、第3切換弁92cに制御信号を出力した後、第4切換弁92dに制御信号を出力することで、シフタ79を中速位置M及び中立位置Nを経て低速位置Lに切り換える変速動作(第2変速動作)を行う。このように、制御装置93は、中速位置Mから低速位置Lに切り換えを行う変速動作の際に、加速検出装置96が検出した変速動作の開始後の加速を参照し、加速が閾値以上である場合は、中速位置Mから低速位置Lへの変速動作を停止し、第5切換弁92eに制御信号を出力することで、変速を中速に戻すことを行う。
【0041】
図2に示すように、トラクタ1は、報知装置99を備えている。報知装置99は、例えば、様々な表示を行うモニタ、音を出力するスピーカ等であって、変速状況を報知する。報知装置99は、運転席9の周囲に設けられていて。運転者が変速の状況を報知装置99によって把握することが可能である。操作部材88の操作による変速が受け付けられる、即ち、操作検出装置94によって変速の操作が検出されると、報知装置99は、例えば、スピーカからの音の出力によって変速を受け付けたことを報知したり、モニタに変速が行われたシンボルマークを表示することにより報知を行う。変速が受け付けられた後、上述したように、変速動作が停止されると、当該報知装置99は、スピーカからの音の出力によって変速を中止したことを報知したり、モニタに変速が中止したことを示すシンボルマークを表示することにより報知を行う。また、変速を中止した場合において、変速段が元の変速段に戻らないようなことがあった場合は、報知装置99は、スピーカからの音の出力、又は、モニタの表示等によって、変速段が元に戻らないことを報知する。
【0042】
図3は、変速牽制部90における制御装置93の動作を示すフローである。
図3に示すように、制御装置93は、操作検出装置94が減速の変速の操作(減速操作:シフトダウン操作)を検出したか否かを判断する(S1)。例えば、制御装置93は、操作検出装置94が高速段から中速段への変速操作(第1減速操作)、又は、中速段から低速段への変速操作(第2減速操作)を検出したか否かを判断する。
【0043】
制御装置93は、操作検出装置94がシフトダウン操作を検出していない場合、即ち、シフトアップ操作を検出した場合(S1、No)、増速の変速動作を行う(S2)。例えば、中速段からのシフトアップの場合は、制御装置93は、第2切換弁92b及び第3切換弁92cに制御信号を出力することでシフタ79を中立位置N、シフタ61を高速位置Hに切り換える。或いは、低速段からのシフトアップの場合は、制御装置93は、第5切換弁92eに制御信号を出力することでシフタ79を中速位置Mに切り換える。
【0044】
制御装置93は、操作検出装置94がシフトダウン操作を検出した場合(S1、Yes)、即ち、第1減速操作(高速段から中速段へのシフトダウン)、又は、第2減速操作(中速段から低速段へのシフトダウン)を検出した場合、減速の変速動作を行う(S3)。
例えば、高速段からのシフトダウンの場合は、制御装置93は、第1切換弁92a及び第5切換弁92eに制御信号を出力することでシフタ61を中立位置N、シフタ79を中速位置Mに切り換える変速動作(第1変速動作)を開始する。中速段からのシフトダウンの場合は、制御装置93は、第4切換弁92dに制御信号を出力することでシフタ79を低速位置Lに切り換える変速動作(第2変速動作)を開始する。
【0045】
制御装置93は、第1減速操作又は第2減速操作が開始されたときの車速(第1変速動作の開始時の車速又は第2変速動作の開始時の車速)を保持し、保持した車速と現在の車速とにより車速差(車体3の加速)を求める(S4)。制御装置93は、車体3の加速が閾値以上であるか否かを判断する(S5)。制御装置93は、車体3の加速が閾値以上である場合(S5、Yes)、第1変速動作が行われているときは、当該第1変速動作の停止及び第1変速動作前の変速段への復帰(元の変速段へ戻る復帰動作)を行い(S6)、第2変速動作が行われているときは、当該第2変速動作の停止及び第2変速動作前の変速段への復帰(元の変速段へ戻る復帰動作)を行う(S6)。
【0046】
例えば、第1変速動作を行った場合において、当該第1変速動作の開始時の車速と現在の車速との車速差が5.0km(閾値)以上である場合(車体3の加速が5.0kmである場合)、制御装置93は、第1切換弁92a及び第5切換弁92eへの制御信号の出力を停止することで第1変速動作の停止を行う一方で、第2切換弁92b及び第3切換弁92cに制御信号を出力することで変速段の復帰を行う。
【0047】
或いは、第2変速動作を行った場合において、当該第2変速動作の開始時の車速と現在の車速との車速差が1.0km(閾値)以上である場合(車体3の加速が1.0kmである場合)、制御装置93は、第4切換弁92dへの制御信号の出力を停止することで第2変速動作の停止を行う一方で、第5切換弁92eに制御信号を出力することで変速段の復帰を行う。
【0048】
制御装置93は、車体3の加速が閾値未満である場合(S5、No)、変速検出装置95における検出状態を参照し、高速段から中速段へのシフトダウン(変速動作の完了)、又は、中速段から低速段へのシフトダウン(変速動作の完了)が終了したことを取得する(S7、Yes)と、シフトダウンの変速動作を終了する。また、制御装置93は、シフトダウンの変速動作が完了していない場合(S7、No)、変速動作中に変速操作(シフトアップ操作、シフトダウン操作)が行われたか否かを判断し(S8)、変速操作が行われた場合(S8、Yes)には、S8における変速操作を行う前の動作が第1変速動作(S7、No時の変速動作が第1変速動作)である場合には、第1変速動作の停止及び第1変速動作前の変速段への復帰(元の変速段へ戻る復帰動作)を行い、S8における変速操作を行う前の動作が第2変速動作(S7、No時の変速動作が第2変速動作)である場合には、第2変速動作の停止及び第2変速動作前の変速段への復帰(元の変速段へ戻る復帰動作)を行う(S9:変速動作の停止及び復帰)を行た後に、処理をS1に戻し、変速動作中に変速操作が行われていない場合(S8、No)には、処理をS3に戻すことで減速の変速動作を継続する。なお、制御装置93は、処理S3から処理S6までの間に変速操作が行われた場合も、処理S1に戻る。
【0049】
上述した実施形態では、第1変速動作の開始は、車速に関わらず行っていたが、これに代えて、制御装置93は、車速が第1上限値以下で且つ第1減速操作を検出したときに、第1変速動作の開始を実行し、車速が第1上限値を超えた場合は、第1変速動作の開始を行わないようにしてもよい。また、制御装置93は、車速が第2上限値以下で且つ第2減速操作を検出したときに、第2変速動作の開始を実行し、車速が第2上限値を超えた場合は、第2変速動作の開始を行わないようにしてもよい。なお、第1上限値は、第2上限値よりも大きく設定されている。
【0050】
作業車両1は、車体3と、車体3に作業装置2を連結可能な連結装置4と、車体3に設けられた原動機8と、車体3を走行させる走行装置7と、原動機8の動力を変速して走行装置7に伝達する変速装置5と、車体3の加速を検出する加速検出装置96と、変速装置5の変速動作を行ったときの加速検出装置96で検出した加速が閾値以上である場合に、変速装置5の変速動作を停止する変速牽制部90と、を備えている。これによれば、作業車両1がトレーラ等の作業装置2を牽引しながら下り坂を走行している場合などに、変速装置5による変速を行って当該車体3が加速しているときは、変速動作を停止することにより、安定してトレーラ等の作業装置2を牽引することができる。
【0051】
変速牽制部90は、変速装置5において変速動作が減速する変速であって変速動作を開始後の加速が閾値以上である場合に、減速の変速を停止する。これによれば、作業車両1がトレーラ等の作業装置2を牽引しながら下り坂を走行している状況下において、変速動作によって加速をしてしまうような場合に、減速の変速を停止することで、トレーラ等の追廻を防止することができる。
【0052】
加速検出装置96は、変速動作の開始時の車速と、変速動作の開始後の現在の車速とに基づいて、加速を演算する。これによれば、車体3の加速を簡単に求めることができる。
変速装置5は、シフタ61,79の操作によって複数段に変速する装置を含み、変速牽制部90は、シフタ61,79に連結する連結部材85,87をシフタ61,79で変速した側と反対側に移動させることで変速動作を停止する。これによれば、シフタ61、79によって変速するような変速に比較的時間がかかるような場合において、車体3が加速してしまうような場合には、変速動作を停止することで、安定して走行を行うことができる。
【0053】
連結部材87は、シフタ79を中立位置Nに保持する第1位置87Nと、シフタ79を第1減速位置Lに保持する第2位置87Lと、シフタ79を第2減速位置Mに保持する第3位置87Mとに切換え可能であり、変速牽制部90は、シフタ79が第1減速位置Lである場合に連結部材87を第2位置87Lから第1位置87Nに移動させ、シフタ79が第2減速位置Mである場合に連結部材87を第3位置87Mから第1位置87Nに移動させる移動機構91(91B)を含んでいる。これによれば、連結部材87の位置を変更することにより、少なくとも2つの減速を行うような場合(第1減速位置Lによる減速、第2減速位置Mによる減速)において、変速動作の中止を素早く行うことができる。
【0054】
移動機構91(91B)は、連結部材87の第1位置87Nに対応する停止位置102aと、連結部材87の第2位置87Lに対応する一方位置102bと、連結部材87の第3位置87Mに対応する他方位置102cとに切換え可能であり、変速牽制部90は、作動油によって移動機構91(91B)を停止位置102a、一方位置102b及び他方位置102cのいずれかに切換え可能な電磁弁92と、電磁弁92を制御可能な制御装置93と、含んでいる。これによれば、制御装置93による電磁弁92の制御によって、移動機構91(91B)を一方位置102bから停止位置102a、又は他方位置102cから停止位置102aに切り換えることにより、シフタ79における変速を素早く停止することができる。
【0055】
制御装置93は、変速動作を開始後の加速が閾値以上である場合に電磁弁92を制御して移動機構91(91B)を停止位置102aに移動させる。これによれば、電磁弁92によってスムーズに停止位置102aに移動させることができる。
変速牽制部90は、加速が閾値以上である場合に、変速装置5の変速動作を停止した後、変速動作を停止する前の変速に戻す。これによれば、変速動作を停止した後、当該変速動作を停止する前の変速に戻すため、変速時の車体3の加速を抑制することができ、より安定した走行を実現することができる。
【0056】
変速装置5は、複数段に切換え可能な副変速部12を含んでいる。これによれば、副変速をしながら車速(速度)の調整を行ったり、圃場、道路などの傾斜に応じて副変速を行う場合であっても、走行を安定させることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 :作業車両(トラクタ)
2 :作業装置
3 :車体
4 :連結装置
5 :変速装置
7 :走行装置
8 :原動機
12 :副変速部
61 :シフタ
85 :連結部材
85N :中立位置
87 :連結部材
87L :第2位置
87M :第3位置
87N :第1位置
88b :減速位置
90 :変速牽制部
91 :移動機構
92 :電磁弁
93 :制御装置
96 :加速検出装置
101a :中立位置
102a :停止位置
102b :一方位置
102c :他方位置
H :高速位置
L :第1減速位置(低速位置)
M :第2減速位置(中速位置)
N :中立位置