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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】パネルユニットおよび構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/02 20060101AFI20240105BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20240105BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
E01D19/02
E01D21/00 B
E04B1/16 M
E04B1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020185294
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074883
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 有寿
(72)【発明者】
【氏名】光山 恵生
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一正
(72)【発明者】
【氏名】山崎 啓治
(72)【発明者】
【氏名】北村 健
(72)【発明者】
【氏名】万仲 直也
(72)【発明者】
【氏名】金子 康一
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-041933(JP,A)
【文献】特開平04-277233(JP,A)
【文献】特開平07-292819(JP,A)
【文献】特開2018-159200(JP,A)
【文献】特開平09-268520(JP,A)
【文献】特開平10-102423(JP,A)
【文献】特開2018-119281(JP,A)
【文献】特開2001-280089(JP,A)
【文献】特開平06-081315(JP,A)
【文献】特開平06-185202(JP,A)
【文献】特開平10-030212(JP,A)
【文献】特開2006-348536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E02D 27/01
E04B 1/16
2/86
E04C 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の構築時に前記構造物の構築箇所に移設し埋設型枠として用いるパネルユニットであって、
前記構造物の補強筋と、前記補強筋の途中を支持する鉄筋架台と、前記補強筋を囲むように配置された複数のプレキャストパネルを有し、前記プレキャストパネルを囲むように外部支保工が取付けられ
前記鉄筋架台は水平材を有し、前記水平材の両端部が前記プレキャストパネルに連結されたことを特徴とするパネルユニット。
【請求項2】
前記構造物は橋脚であり、
前記補強筋は前記橋脚の帯鉄筋を含むことを特徴とする請求項1記載のパネルユニット。
【請求項3】
前記プレキャストパネルの内側に、前記帯鉄筋の外側に位置する鉛直柱状のスペーサが設けられたことを特徴とする請求項2記載のパネルユニット。
【請求項4】
前記外部支保工は、端太と支柱を有し、
前記端太は、上下複数段に配置された水平材であり、前記プレキャストパネルの外側に取り付けられ、
前記支柱は、前記端太の長手方向に間隔を空けて前記端太の外側に複数配置され、各支柱が上下複数段の前記端太に取付けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のパネルユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれかに記載のパネルユニットを地組する工程(a)と、
前記パネルユニットを前記構造物の構築箇所に移設する工程(b)と、
前記パネルユニットを埋設型枠として用い、前記プレキャストパネルの内側にコンクリートを打設する工程(c)と、
前記外部支保工を撤去する工程(d)と、
を有することを特徴とする構造物の構築方法。
【請求項6】
構造物の構築時に前記構造物の構築箇所に移設し埋設型枠として用いるパネルユニットであって、前記構造物の補強筋と、前記補強筋を囲むように配置された複数のプレキャストパネルを有し、前記プレキャストパネルを囲むように外部支保工が取付けられたパネルユニットを地組する工程(a)と、
前記パネルユニットを前記構造物の構築箇所に移設する工程(b)と、
前記パネルユニットを埋設型枠として用い、前記プレキャストパネルの内側にコンクリートを打設する工程(c)と、
前記外部支保工を撤去する工程(d)と、
を有し、
前記補強筋は中間帯鉄筋を含み、
前記工程(b)で設置された1または上下複数段の前記パネルユニットの内部において、上下の中間帯鉄筋の平面位置がずらされていることを特徴とする構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の構築に用いるパネルユニットおよびこれを用いた構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋脚を施工するにあたり、従来工法では現地で鉄筋・型枠組立を行い、型枠内にコンクリートを打設している。ただしこの場合、現地での組立作業は高所作業となり、また組立作業に必要な材料をクレーンによって何度も揚重する必要がある。さらに、剛性の低い木製型枠が通常使用されることから、型枠を固めるためにチェーン、ターンバックル、単管等多くの仮設資材を必要とする。そのため現場作業が長期化し、現場作業の安全面にも懸念がある。
【0003】
また、現地での組立作業は、鉄筋工・大工といった専門性の高い技能労働者を必要とするため、それらの人員の確保と施工の進捗に合わせたクリティカルな日程調整をしなければならず、日程が合わない場合は工程が遅延する。
【0004】
これに対し、特許文献1~3には、橋脚の施工時にプレキャスト型枠を埋設型枠として用いることが記載されており、これにより従来工法と比較して施工が容易となり、工期短縮、安全性向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-268520号公報
【文献】特開平10-30212号公報
【文献】特開平8-35260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3では、プレキャスト型枠の内部に配置した鋼材を用い、プレキャスト型枠の内部にコンクリートを打設する際の打設圧に対しプレキャスト型枠を支持させる。しかしながら、打設圧に抵抗するため鋼材が大きくなり型枠内部の作業スペースが減少する、鋼材が埋め殺しとなることからコストが高くなるといった課題があった。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、コンクリートの打設圧に対し好適に抵抗できるパネルユニット等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、構造物の構築時に前記構造物の構築箇所に移設し埋設型枠として用いるパネルユニットであって、前記構造物の補強筋と、前記補強筋の途中を支持する鉄筋架台と、前記補強筋を囲むように配置された複数のプレキャストパネルを有し、前記プレキャストパネルを囲むように外部支保工が取付けられ、前記鉄筋架台は水平材を有し、前記水平材の両端部が前記プレキャストパネルに連結されたことを特徴とするパネルユニットである。
【0009】
本発明では、プレキャストパネルと帯鉄筋等の補強筋を含むパネルユニットを構造物の構築箇所に移設した後、パネルユニットを埋設型枠としてコンクリートを打設し、橋脚等の構造物の施工ができる。係るパネルユニットを用いることで、従来工法と比較して施工が容易となり、工期短縮、安全性向上を図ることができる。
【0010】
さらに、本発明のパネルユニットではプレキャストパネルを囲むように外部支保工が設けられており、これによりコンクリートの打設圧に抵抗できるため、プレキャストパネルの内部に設ける鋼材を低減できる。そのため、パネル内部の作業スペースを容易に確保でき、鋼材の無駄も減る。また外部支保工により、パネルユニットの移設時の変形も防ぐことができ、プレキャストパネル等のひびわれも防止できる。
【0011】
前記構造物は例えば橋脚であり、前記補強筋は前記橋脚の帯鉄筋を含む。また前記プレキャストパネルの内側に、前記帯鉄筋の外側に位置する鉛直柱状のスペーサが設けられることが望ましい。
本発明のパネルユニットを用いて構築する構造物は典型的には橋脚であり、パネルユニットは橋脚の帯鉄筋を含んでいる。このパネルユニットのプレキャストパネルの内側に主筋等の配置を行った後コンクリートを打設することで、橋脚の構築を好適に行える。
【0012】
前記外部支保工は、端太と支柱を有し、前記端太は、上下複数段に配置された水平材であり、前記プレキャストパネルの外側に取り付けられ、前記支柱は、前記端太の長手方向に間隔を空けて前記端太の外側に複数配置され、各支柱が上下複数段の前記端太に取付けられることが望ましい。
このような高い剛性の外部支保工により、コンクリートの打設圧に好適に抵抗でき、パネルユニットを好適に形状保持できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明のパネルユニットを地組する工程(a)と、前記パネルユニットを前記構造物の構築箇所に移設する工程(b)と、前記パネルユニットを埋設型枠として用い、前記プレキャストパネルの内側にコンクリートを打設する工程(c)と、前記外部支保工を撤去する工程(d)と、を有することを特徴とする構造物の構築方法である。
第2の発明は、第1の発明のパネルユニットを用いた構造物の構築方法である。
【0014】
前記工程(b)において、井桁状の吊鋼材を前記外部支保工に連結して前記パネルユニットを吊り上げることが望ましい。
平面剛性の高い吊鋼材でパネルユニットを吊り上げることで、移設時のパネルユニットの変形を防止することができる。
【0015】
第3の発明は、構造物の構築時に前記構造物の構築箇所に移設し埋設型枠として用いるパネルユニットであって、前記構造物の補強筋と、前記補強筋を囲むように配置された複数のプレキャストパネルを有し、前記プレキャストパネルを囲むように外部支保工が取付けられたパネルユニットを地組する工程(a)と、前記パネルユニットを前記構造物の構築箇所に移設する工程(b)と、前記パネルユニットを埋設型枠として用い、前記プレキャストパネルの内側にコンクリートを打設する工程(c)と、前記外部支保工を撤去する工程(d)と、を有し、前記補強筋は中間帯鉄筋を含み、前記工程(b)で設置された1または上下複数段の前記パネルユニットの内部において、上下の中間帯鉄筋の平面位置がずらされていることを特徴とする構造物の構築方法である
これにより、パネルユニットの内部において作業者の移動を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、コンクリートの打設圧に対し好適に抵抗できるパネルユニット等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】橋脚100を示す図。
図2】定規架台200を示す図。
図3】補強筋10を組み立てる工程について説明する図。
図4】パネル31を設置する工程について説明する図。
図5】パネル31の鉛直方向の断面を示す図。
図6】外部支保工40を取り付ける工程について説明する図。
図7】外部支保工40を示す図。
図8】外部支保工40の設置方法について説明する図。
図9】パネルユニット1を移設する工程について説明する図。
図10】上下の外部支保工40の連結について説明する図。
図11】3段のパネルユニット1の内部を示す鉛直方向の断面図。
図12】主筋4を設置した状態を示す図。
図13】コンクリート5を打設する工程について説明する図。
図14】外部支保工40を撤去する工程について説明する図。
図15】外部支保工40を撤去する工程について説明する図。
図16】予めパネル31に外部支保工40を取り付ける例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(1.橋脚100)
図1は、本発明の実施形態に係るパネルユニット1を用いて構築される橋脚100の一部を示す図である。橋脚100は柱状の構造物であり、上下に積層したパネルユニット1を埋設型枠とし、その内部にコンクリートを打設することで構築される。
【0020】
パネルユニット1の外周部には、プレキャストパネル31(以下、パネルということがある)が水平方向に複数並べて配置される。パネル31はコンクリートやモルタルなどのセメント系材料を用いて工場等で予め製作された板状部材であり、例えば鋼繊維等の補強繊維を含有させた高強度繊維補強モルタルなどのセメント系材料を用いることができる。これによりひび割れ発生強度を大きくでき、またひび等が生じた後も耐久性を有する。しかしながら、パネル31の材料がこれに限ることはない。
【0021】
(2.橋脚100の構築方法)
本実施形態では、橋脚100を構築するに当たって、橋脚近傍の地組ヤードでパネルユニット1の地組を行う。ここでは、まず図2に平面を示すように、パネルユニット1の地組を行うための定規架台200を組み立てる。
【0022】
定規架台200はH形鋼などの鋼材を平面の縦横に格子状に配置して形成され、定規架台200上でパネルユニット1が順次地組される。各パネルユニット1を組み立てる際に定規架台200が目印変わりとなり、また定規架台200により水平精度が確保されることで、毎回精度の良い組み立てが可能となる。水平精度確保等の必要に応じて、定規架台200を均しコンクリートの上に設置することも可能である。
【0023】
次に、図3(a)に示すように、帯鉄筋11や中間帯鉄筋12などを含む橋脚100の補強筋10を定規架台200上で組み立てる。帯鉄筋11は橋脚100の周方向に沿って環状に設けられるせん断補強筋であり、中間帯鉄筋12は帯鉄筋11のはらみ出しを抑制する。
【0024】
補強筋10の組み立て時の位置固定には、鉄筋架台20を用いる。鉄筋架台20は、定規架台200の所定の目印位置に複数の鉛直材21を立設し、これらの鉛直材21に水平材22を取付けて一体化したものである。水平材22は上下複数段に設けられる。
【0025】
鉄筋架台20は鉄骨により形成される。鉛直材21は例えばH形鋼を鉛直方向に配置したものであり、水平材22は例えば溝形鋼をその開放面を上にして水平方向に配置したものである。ただしこれに限ることはなく、その他の鋼材を鉛直材21や水平材22として用いてもよい。
【0026】
補強筋10は鉄筋架台20に設置して固定される。補強筋10は例えば水平材22に載置したり、鉛直材21に固定材(不図示)で取付けたりして設置できるが、その設置方法は特に限定されない。
【0027】
なお、本実施形態では図3(b)に示すように中間帯鉄筋12の端部に下方に延びるプレート状の定着体121が設けられており、中間帯鉄筋12の下段の帯鉄筋11の位置がたわみ等の影響により若干下方にずれる場合にも、定着体121の帯鉄筋11に対する掛かりを確保できる。
【0028】
補強筋10の組み立てを行った後、図4に示すように、複数のパネル31を鉄筋架台20に取付ける。これらのパネル31は橋脚100の周方向に沿って水平方向に並べて配置され、補強筋10を平面ロ字状に囲む閉断面を形成する。ただし、パネル31の配置は橋脚100の平面形状に応じて定められ、特に限定されない。例えばパネル31が円弧状に配置される部分があってもよい。
【0029】
図5はパネル31の鉛直方向の断面を示す図である。図5に示すように、パネル31は、鉄筋架台20の水平材22の端部に設けたエンドプレート221の孔にボルト222の軸部を通し、軸部の先端をパネル31に埋設したインサート311に内側から締め込むことで水平材22と連結される。ボルト222の締め込み作業を容易に行えるよう、水平材22の底面や側面に切り欠きを設けてもよい。なお、上記のインサート311はパネル31を厚さ方向に貫通しており、後述する外部支保工の取付時に外側からボルトを締め込むこともできるようになっている。
【0030】
ここで、パネル31の厚さは例えば3cm以上8cm以下とし、その一軸圧縮強度は、例えば内部に打設するコンクリートより高く、80N/mm2以上180N/mm2以下とする。これにより、薄厚でありながら高い耐久性を実現できる。また、パネル31の内面は目荒らしによる凹凸を有し、これにより内部に打設するコンクリートとの付着性を向上させる。
【0031】
また、パネル31の内側には鉛直柱状のスペーサ13が設けられており、このスペーサ13により帯鉄筋11のかぶり厚が確保される。スペーサ13は、パネル31の内面に取り付けた鉛直材14に水平棒材15を介して取付けられる。
【0032】
本実施形態では、次に、図6に示すように、パネルユニット1の外周に沿ってパネル31を囲むように外部支保工40を設置する。
【0033】
図7は外部支保工40を示す図である。図7(a)は外部支保工40について図5と同様の断面を示したものであり、図7(b)は外部支保工40を外側から見たものである。
【0034】
図7に示すように、外部支保工40は、パネルユニット1の外周に沿って配置される端太41と、その外側の支柱42とをボルト等で締結した構成となっている。
【0035】
端太41は、パネル31の外側に取り付けられる長尺の水平材であり、水平方向に並んだ複数のパネル31に亘って配置される。端太41は例えば溝形鋼を用いたものであり、上下複数段に配置される。図7の例では、背中合わせに配置した上下一対の端太41が上下に複数組(図の例では2組)設けられる。
【0036】
端太41の長手方向の所定位置では、上下一対の端太41のパネル31側の面を架け渡すように板材43が設けられる。これらの端太41の間で、板材43の孔にボルト431の軸部を通し、軸部の先端を前記のインサート311に外側から締め込む。これにより、外部支保工40がパネル31に取付けられる。
【0037】
支柱42は、H形鋼の上下端にエンドプレート421を設けたものであり、端太41の長手方向に間隔を空けて複数設けられる。各支柱42は前記した上下複数段の端太41に取り付けられ、これによりパネル31を支持するための高い剛性が得られる。
【0038】
各支柱42の下端のエンドプレート421は、繋ぎ材44に連結される。繋ぎ材44は端太41の長手方向に沿って配置される水平材であり、例えばH形鋼が用いられ、上面のフランジ部分に支柱42の下端のエンドプレート421がボルト等で固定される。下面のフランジ部分は、定規架台200の上に設置される。
【0039】
ここで、外部支保工40は、図8(a)で模式的に示すようにパネルユニット1の外周の対向する1組の辺に当たる部分で先に配置する。これらの外部支保工40はパネルユニット1(パネル31)から若干離して定規架台200上に載置し、その後、これらの外部支保工40の両端部に当接するように、パネルユニット1の外周の残りの一組の辺に当たる部分で図8(b)に示すように外部支保工40を配置する。そして、当該外部支保工40を定規とし、図8(c)の矢印aに示すように、先に配置した外部支保工40をジャッキ等でパネルユニット1(パネル31)に向けて移動させる。これにより、外部支保工40がパネルユニット1の外周に沿った平面形状となるよう精度良く配置を行うことができる。定規架台200の上面には、外部支保工40の移動がしやすいよう、テフロン(登録商標)などの摺動板(不図示)が設けられる。
【0040】
図8(d)に示すように、端太41の端部にはエンドプレート411が設けられており、最終的には、先に配置した外部支保工40の端太41のエンドプレート411が、ボルト412とナット413によって、後に配置した外部支保工40の端太41の側面に連結される。
【0041】
また、後に配置した外部支保工40の端太41に図8(d)に示すように仮設の位置調整用部材45を設け、位置調整用部材45のナット451に締め込んだボルト46によって先に配置した外部支保工40の端太41を矢印bに示すように内側に押し込むことで、上記エンドプレート411のボルト孔とこれに連結される端太41の側面のボルト孔との位置合わせを行うことができる。
【0042】
本実施形態では、以上のようにしてパネルユニット1が地組される。地組する1ユニットの高さは例えば2m程度とし、これを図9(a)に示すようにクレーン(不図示)を用いて吊り上げ、図9(b)に示すように橋脚100の既設部分Aの上(橋脚100の構築箇所)に移設する。パネルユニット1の吊り上げ、吊り降ろしは鉄筋架台20ごと行う。
【0043】
パネルユニット1の移設時には、クレーンのジブ先端から井桁状の吊鋼材2を吊り下げ、この吊鋼材2を外部支保工40と連結してパネルユニット1を吊り上げる。吊鋼材2の平面剛性は高く、移設時のパネルユニット1の変形やパネル31のひび割れを防止することができる。
【0044】
続いて、図9(c)に示すように、先程設置したパネルユニット1の上に、上記と同様の手順で新たなパネルユニット1を移設する。
【0045】
この際、下段のパネルユニット1の外部支保工40の支柱42の上端と、上段のパネルユニット1の外部支保工40の繋ぎ材44とを連結する。
【0046】
図10はこの連結部を示す図である。図10に示すように、支柱42の上端のエンドプレート421の下面には板状のワッシャー422が設けられており、このワッシャー422は頭付きのピン420によりエンドプレート421に取付けられる。当該ピン420の軸部はワッシャー422の孔423を通るが、この孔423がピン420の軸部の径よりも大きくなっていることで、ワッシャー422が平面内で移動可能である。
【0047】
下段のパネルユニット1の外部支保工40の支柱42と上段のパネルユニット1の外部支保工40の繋ぎ材44は、ボルト424の軸部を、ワッシャー422の下方からワッシャー422の孔425、エンドプレート421の孔426、繋ぎ材44の下面のフランジ部の孔441に貫通させ、当該軸部の先端にナット427を締め込むことで連結される。
【0048】
ワッシャー422の孔425とフランジ部の孔441はボルト424の軸部の径と同程度の大きさであるが、エンドプレート421の孔426はそれより大きいものとなっており、繋ぎ材44の位置に多少のずれがある場合にも、孔425の位置をワッシャー422の平面移動により調整し、フランジ部の孔441の位置に合わせたうえでボルト424の軸部を通すことが可能になっている。また、支柱42のエンドプレート421と繋ぎ材44の下面のフランジ部の間にライナープレート(不図示)を挟むことで、上段の外部支保工40の鉛直精度の修正も可能である。
【0049】
本実施形態では、以上のようにして図9(d)に示すように橋脚100の既設部分Aの上で複数段(図の例では3段)のパネルユニット1を上下に積層する。
【0050】
図11(a)は、これら3段のパネルユニット1の内部を示す鉛直方向の断面図である。本実施形態では、図11(a)に示すように、3段のパネルユニット1のうち最下段のパネルユニット1については、その上方に位置する中段と最上段のパネルユニット1に対して中間帯鉄筋12の平面位置をずらして配置している。
【0051】
これは、作業者の移動の便宜を考慮したものである。すなわち、図11(a)の矢印Rに示すように、作業者がパネルユニット1の内部で横に移動したい場合、パネルユニット1段分の中間帯鉄筋12を乗り越えるだけでよく、後述する主筋の配置や接合などパネルユニット1の内部で行う各種の作業の施工性が向上する。一方、図11(b)に示すように3段のパネルユニット1の中間帯鉄筋12の平面位置が揃っている場合、矢印Rに示すように、作業者がパネルユニット1の内部で横に移動したい場合、パネルユニット3段分の中間帯鉄筋12を乗り越える必要があり、作業者の移動に困難が生じる。なお、図11(a)の例ではパネルユニット単位で中間帯鉄筋12の平面位置を変えているが、図11(c)の中段のパネルユニット1に示すように、1つのパネルユニット1の内部で上下の中間帯鉄筋12の平面位置を変えてもよい。
【0052】
橋脚100の構築方法の説明に戻る。本実施形態では、図9(d)のようにパネルユニット1を積層した後、主筋4の建込みを行い、パネル31の内側に配置して既設部分Aの主筋と接合する。図12は主筋4の建込みを行った後の最上段のパネルユニット1の平面を示す図である。
【0053】
本実施形態では中実の橋脚100を構築するものとし、パネル31の内側にコンクリートを打設する。この時、外部支保工40はコンクリートの打設圧に抵抗する。コンクリートは特に限定されないが、高流動コンクリートとすることで締固めなどの手間を省いて省人化することも可能である。
【0054】
図13は、コンクリート5を打設した後の状態を図12と同様の平面で示す図である。前記したようにパネルユニット1のパネル31は埋設型枠として用いられ、撤去はされない。
【0055】
外部支保工40は、コンクリート5の打設後、クレーン(不図示)等で上方に吊り上げて撤去する。この際、本実施形態では、まず図14(a)に示すように、上段のパネルユニット1の外部支保工40(以下「上段の外部支保工40」という)に取付けたチェーンブロック60を用い、下段のパネルユニット1の外部支保工40(以下「下段の外部支保工40」という)を、上段の外部支保工40および下段のパネルユニット1のパネル31から取り外したうえで、矢印cに示すように一旦吊り降ろす。
【0056】
チェーンブロック60は、上段の外部支保工40の支柱42に設けた取付金具428に取り付けられ、そのチェーンの下端は、同じく下段の外部支保工40の支柱42に設けた取付金具428に取付ける。
【0057】
こうして下段の外部支保工40を吊り降ろした後、下段の外部支保工40の支柱42の上端のエンドプレート421に、車輪429aと吊り金具429bを取り付ける。
【0058】
車輪429aと吊り金具429bは別々の支柱42に取り付けられる。車輪429aを取り付けた支柱42と対応する位置にある、上段の外部支保工40の支柱42の外面には、鉛直方向のガイドレール50が設けられる。
【0059】
吊り金具429bは上方のクレーン(不図示)によって外部支保工40を吊り上げるためのものであり、当該クレーンから吊り下げられたワイヤ70の先端が吊り金具429bに取付けられる。
【0060】
その後、図14(b)に示すように、チェーンブロック60を取り外して下段の外部支保工40をワイヤ70により上方に吊り上げる。この時、図15に示すように、当該外部支保工40の車輪429aを、上段の外部支保工40のガイドレール50上で上方に走行させ、吊り上げ時の外部支保工40の姿勢を安定させる。
【0061】
上記の手順を繰り返すことで、上下複数段の外部支保工40が、下段から順に上方に吊り上げて撤去される。
【0062】
以上のようにして、橋脚100の既設部分Aの上に橋脚100の新たな部分が構築される。なお、本実施形態では上記の既設部分Aも以上の手順によって構築されたものとなっており、橋脚100は当該手順を繰り返すことで構築できる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、プレキャストパネル31と帯鉄筋11等の補強筋10を含むパネルユニット1を橋脚100の構築箇所に移設した後、パネルユニット1を埋設型枠としてコンクリート5を打設し、橋脚100の施工ができる。係るパネルユニット1を用いることで、従来工法と比較して施工が容易となり、工期短縮、安全性向上を図ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態のパネルユニット1ではパネル31を囲むように外部支保工40が設けられており、これによりコンクリートの打設圧に抵抗できるため、パネル31の内部に設ける鋼材を低減できる。そのため、パネル内部の作業スペースを容易に確保でき、鋼材の無駄も減る。また外部支保工40により、パネルユニット1の移設時の変形も防ぐことができ、パネル31等のひびわれも防止できる。また外部支保工40は転用可能であるため低コストであり、環境面でも好ましい。
【0065】
外部支保工40は、端太41と支柱42を前記のように組み合わせた構成となっているため、高い剛性の外部支保工40によりコンクリート5の打設圧に好適に抵抗でき、パネルユニット1を好適に形状保持できる。また各支柱42の下端が水平方向の繋ぎ材44に連結されることで、外部支保工40の剛性がさらに向上する。
【0066】
また、外部支保工40の撤去時には、前記した車輪429aがガイドレール50上を走行するように外部支保工40を吊り上げることで、外部支保工40を安定した姿勢で吊り上げることができ、その外側に設けられる外周足場(不図示)等との干渉を防ぐことができる。
【0067】
また本実施形態では予め組み立てた定規架台200上でパネルユニット1の地組を行うので、パネルユニット1を高精度で組み立てることができる。パネルユニット1の地組に用いた定規架台200は他の地組ヤードで転用することも可能である。
【0068】
また、パネルユニット1の移設時には、平面剛性の高い井桁状の吊鋼材2を外部支保工40に取り付けてパネルユニット1を吊り上げるので、移設時のパネルユニット1の変形を防止することができる。
【0069】
また、図11で説明したように、本実施形態では上下の中間帯鉄筋12の平面位置をずらしておくことで、パネルユニット1の内部において作業者の移動を容易に行うことができる。そのため、パネルユニット1の内部で行う各種の作業の施工性が向上する。
【0070】
しかしながら、本発明が以上の実施形態に限られることはない。例えば以上の実施形態ではパネルユニット1を橋脚100の構築に用いる例を説明しており、パネル31の内側に主筋4の配置を行った後コンクリート5を打設することで橋脚100の構築を好適に行えるが、パネルユニット1を用いて構築できる構造物はこれに限らない。例えば橋脚100以外の柱状の構造物を構築する際にも同様の方法が適用でき、また柱状でない構造物についても同様の方法が適用可能である。
【0071】
また、外部支保工40の構成も図7等で説明したものに限らない。例えば、パネルユニット1の角部の端太41をL字状としてもよい。また繋ぎ材44を支柱42の上端に設けることも可能である。
【0072】
さらに、図16の矢印dに示すように、外部支保工40とパネル31を予め一体化したものを補強筋10の周囲に配置し、鉄筋架台20の水平材22とパネル31の連結を行うことも可能である。外部支保工40とパネル31を予め一体化しておくことにより、パネルユニット1の地組を短時間で行うことができる。
【0073】
その他、補強筋10や鉄筋架台20の構成も前記に限ることはない。例えば構造物の内部を中空とする場合もあり、この場合は構造物の中空部を避けて補強筋10や鉄筋架台20が設けられる。
【0074】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0075】
1:パネルユニット
2:吊鋼材
4:主筋
5:コンクリート
10:補強筋
11:帯鉄筋
20:鉄筋架台
31:プレキャストパネル
40:外部支保工
41:端太
42:支柱
43:板材
44:繋ぎ材
50:ガイドレール
100:橋脚
200:定規架台
429a:車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16