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特許7413237サスペンションアッセンブリおよびディスク装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】サスペンションアッセンブリおよびディスク装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20240105BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G11B21/21 D
G11B5/60 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020190263
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079213
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 健一郎
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-062012(JP,A)
【文献】特開2016-033840(JP,A)
【文献】特開2017-107628(JP,A)
【文献】特開平11-283346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/21
G11B 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部および基端部を有する支持板と、
金属板と前記金属板に積層された第1絶縁層と前記第1絶縁層に積層され複数の配線および接続パッドを形成した導電層と、前記導電層および前記第1絶縁層に積層された第2絶縁層とを有し、前記支持板の上に設置された配線部材と、
前記配線部材に載置され、前記先端部の側に位置する流出端と前記基端部の側の位置する流入端とを有するヘッドスライダと、前記流出端に設けられ前記配線に電気的に接続された接続パッドと、を具備する磁気ヘッドと、を備え、
前記配線部材は、前記磁気ヘッドが搭載されるヘッド設置領域と、少なくとも一部が前記ヘッド設置領域内に位置し前記ヘッドスライダの前記流入端の側の端部に隙間を置いて対向するエッチング領域と、を有している
サスペンションアッセンブリ。
【請求項2】
前記配線部材は、前記支持板に対して変位可能に支持され前記ヘッド設置領域を構成するタング部を有し、前記支持板は、前記タング部および前記配線部材を介して、前記ヘッドスライダに当接した凸部を有し、
前記エッチング領域は、前記凸部よりも前記流入端の側に位置している
請求項1に記載のサスペンションアッセンブリ。
【請求項3】
前記配線部材は、前記第2絶縁層および前記第1絶縁層を貫通して形成され前記流出端と前記凸部との間に位置する透孔を有し、前記磁気ヘッドは、前記透孔に充填された接着剤により前記金属板に貼付されている請求項2に記載のサスペンションアッセンブリ。
【請求項4】
前記エッチング領域は、前記第1絶縁層に形成された第1凹所と、前記第2絶縁層に形成され前記第1凹所に重なって位置する第2凹所と、を含んでいる請求項1に記載のサスペンションアッセンブリ。
【請求項5】
前記配線部材は、前記ヘッド設置領域に設けられ前記ヘッドスライダの前記流出端の側の端部を支持した支持ポストを有している請求項1に記載のサスペンションアッセンブリ。
【請求項6】
記録層を有するディスク状の記録媒体と、
請求項1に記載のサスペンションアッセンブリと、
を備えるディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、サスペンションアッセンブリおよびこれを備えるディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置として、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)は、筐体内に回転自在に配設された複数枚の磁気ディスクと、磁気ディスクに対して情報のリード、ライトを行う複数の磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気ディスクに対して移動可能に支持したヘッドアクチュエータと、を備えている。
ヘッドアクチュエータは、回動自在に支持されたアクチュエータブロックと、アクチュエータブロックからそれぞれ延出し、先端部に磁気ヘッドを支持している複数本のサスペンションアッセンブリ(ジンバルアッセンブリと称する場合もある)と、を有している。サスペンションアッセンブリは、一端がアームに固定されたベースプレートと、ベースプレートから延出するロードビームと、ロードビームおよびベースプレート上に設けられたフレキシャ(配線部材)と、を有している。フレキシャは、変位自在なジンバル部を有し、このジンバル部に磁気ヘッドが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8,854,826号明細書
【文献】米国特許第8,913,348号明細書
【文献】米国特許第9,117,446号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、磁気ヘッドは、接着剤により、サスペンションの先端部、あるいは、フレキシャのジンバル部に貼り付け固定される。磁気ヘッドは、ハンダ、導電性接着剤等により、フレキシャの配線に電気的に接続されている。
この発明の実施形態の課題は、配線部材に対して磁気ヘッドを安定して接合することが可能なサスペンションアッセンブリおよびこれを備えるディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、サスペンションアッセンブリは、先端部および基端部を有する支持板と、金属板と前記金属板上に積層された第1絶縁層と前記第1絶縁層上に積層され複数の配線および接続パッドを形成した導電層と、前記導電層および前記第1絶縁層に積層された第2絶縁層とを有し、前記支持板の上に設置された配線部材と、前記配線部材に載置され、前記先端部の側に位置する流出端と前記基端部の側の位置する流入端とを有するヘッドスライダと、前記流出端に設けられ前記配線に電気的に接続された接続パッドと、を具備する磁気ヘッドと、を備えている。前記配線部材は、前記磁気ヘッドが搭載されるヘッド設置領域と、少なくとも一部が前記ヘッド設置領域内に位置し前記ヘッドスライダの前記流入端の側の端部に隙間を置いて対向するエッチング領域と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)を示す斜視図。
図2図2は、前記HDDのアクチュエータアッセンブリを示す斜視図。
図3図3は、前記アクチュエータアッセンブリの1つのヘッドサスペンションアッセンブリを示す斜視図。
図4図4は、前記ヘッドサスペンションアッセンブリの分解斜視図。
図5図5は、前記ヘッドサスペンションアッセンブリの平面図。
図6図6は、磁気ヘッドを省略して示す前記ヘッドサスペンションアッセンブリのジンバル部の平面図。
図7図7は、図5の線A-Aに沿ったジンバル部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下図面を参照しながら、実施形態に係るディスク装置ついて説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の大きさ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
(実施形態)
ディスク装置として、実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)について詳細に説明する。
図1は、トップカバーを外して示す実施形態に係るHDDの斜視図である。
図示のように、HDDは、矩形状の筐体10を備えている。筐体10は、上面の開口した矩形箱状のベース12と、図示しないトップカバーと、を有している。ベース12は、矩形状の底壁12aと、底壁12aの周縁に沿って立設された側壁12bとを有し、例えば、アルミニウムにより一体に成形されている。トップカバーは、例えば、ステンレスにより矩形板状に形成され、複数のねじによりベース12の側壁12b上にねじ止めされる。
【0009】
筐体10内には、ディスク状の記録媒体として複数枚の磁気ディスク18、および磁気ディスク18を支持および回転させるスピンドルモータ19が設けられている。スピンドルモータ19は、底壁12aに配設されている。各磁気ディスク18は、例えば、直径95mm(3.5インチ)の円板状に形成され非磁性体、例えば、ガラスあるいはアルミニウムからなる基板と、基板の上面(第1面)および下面(第2面)に形成された磁気記録層とを有している。磁気ディスク18は、スピンドルモータ19の図示しないハブに互いに同軸的に嵌合され、更に、クランプばね20によりクランプされている。これにより、磁気ディスク18は、ベース12の底壁12aと平行に位置した状態に支持されている。複数枚の磁気ディスク18は、スピンドルモータ19により所定の回転数で回転される。
本実施形態においては、例えば、4枚の磁気ディスク18が筐体10内に配置されているが、磁気ディスク18の枚数はこれに限らず、3枚以下、あるいは、5枚以上としてもよい。
【0010】
筐体10内には、磁気ディスク18に対して情報の記録、再生を行なう複数の磁気ヘッド17、および、これらの磁気ヘッド17を磁気ディスク18に対して移動自在に支持したアクチュエータアッセンブリ22が設けられている。また、筐体10内には、アクチュエータアッセンブリ22を回動および位置決めするボイスコイルモータ(VCM)24、磁気ヘッド17が磁気ディスク18の最外周に移動した際、磁気ヘッド17を磁気ディスク18から離間したアンロード位置に保持するランプロード機構25、および変換コネクタ等の電子部品が実装された基板ユニット(FPCユニット)21が設けられている。
ベース12の底壁12aの外面には、図示しないプリント回路基板がねじ止めされている。プリント回路基板は、スピンドルモータ19の動作を制御するとともに、基板ユニット21を介してVCM24および磁気ヘッド17の動作を制御する制御部を構成している。
【0011】
図2は、アクチュエータアッセンブリ22を示す斜視図である。図示のように、アクチュエータアッセンブリ22は、透孔26を有するアクチュエータブロック29と、透孔26内に設けられた軸受ユニット(ユニット軸受)28と、アクチュエータブロック29から延出する複数、例えば、5本のアーム32と、各アーム32に取付けられたサスペンションアッセンブリ30と、サスペンションアッセンブリ30に支持された磁気ヘッド17と、を備えている。アクチュエータブロック29は、軸受ユニット28により、底壁12aに立設された支持シャフト(枢軸)31の周りで、回動自在に支持されている。
【0012】
本実施形態において、アクチュエータブロック29および5本のアーム32はアルミニウム等により一体に成形され、いわゆるEブロックを構成している。アーム32は、例えば、細長い平板状に形成され、支持シャフト31と直交する方向に、アクチュエータブロック29から延出している。5本のアーム32は、互いに隙間を置いて、平行に設けられている。
アクチュエータアッセンブリ22は、アクチュエータブロック29からアーム32と反対の方向へ延出する支持フレーム33を有している。VCM24の一部を構成するボイスコイル35が支持フレーム33に支持されている。図1に示すように、ボイスコイル35は、ベース12上にその1つが固定された一対のヨーク37間に位置し、これらのヨーク37、および何れかのヨークに固定された磁石とともにVCM24を構成している。
【0013】
図2に示すように、アクチュエータアッセンブリ22は、それぞれ磁気ヘッド17を支持した8個のサスペンションアッセンブリ30を備えている。これらのサスペンションアッセンブリ30は各アーム32の先端部32aにそれぞれ取付けられている。複数のサスペンションアッセンブリ30は、磁気ヘッド17を上向きに支持するアップヘッドサスペンションアッセンブリと、磁気ヘッド17を下向きに支持するダウンヘッドサスペンションアッセンブリと、を含んでいる。アップヘッドサスペンションアッセンブリおよびダウンヘッドサスペンションアッセンブリは、同一構造のサスペンションアッセンブリ30を上下向きを変えて配置することにより構成される。
本実施形態では、図2において、最上部のアーム32にダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30が取付けられ、最下部のアーム32にアップヘッドサスペンションアッセンブリ30が取り付けられている。中間の3本のアーム32の各々には、アップヘッドサスペンションアッセンブリ30およびダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30が取り付けられている。
【0014】
次に、サスペンションアッセンブリ30の一例について詳細に説明する。
図3は、サスペンションアッセンブリを示す斜視図、図4は、サスペンションアッセンブリの分解斜視図、図5は、サスペンションアッセンブリの平面図である。
図3および図4に示すように、各サスペンションアッセンブリ30は、アーム32から延出したサスペンション34を有し、このサスペンション34の先端部に磁気ヘッド17が取り付けられている。なお、磁気ヘッド17およびこれを支持したサスペンションアッセンブリ30を合わせて、ヘッドサスペンションアッセンブリと称する。
支持板として機能するサスペンション34は、数百ミクロン厚の金属板からなる矩形状のベースプレート36と、数十ミクロン厚の金属板からなる細長い板ばね状のロードビーム38と、を有している。ロードビーム38は、その基端部がベースプレート36の先端部に重ねて配置され、複数個所を溶接することによりベースプレート36に固定されている。ロードビーム38の先端部は、支持板の先端部を構成し、ロードビーム38の基端部およびベースプレート36は、支持板の基端部を構成している。ロードビーム38の基端部の幅は、ベースプレート36の幅とほぼ等しく形成されている。ロードビーム38の先端には、棒状のタブ40が突設されている。
【0015】
ベースプレート36は、その基端部に円形の開口36aおよびこの開口36aの周囲に位置する円環状の突起部36bを有している。ベースプレート36は、突起部36bをアーム32のかしめ座面に形成された図示しない円形のかしめ孔に嵌合し、この突起部36bをかしめることで、アーム32の先端部32aに締結される。ベースプレート36の基端は、レーザ溶接、スポット溶接あるいは接着によりアーム32の先端部32aに固定されてもよい。
サスペンションアッセンブリ30は、記録信号、再生信号および圧電素子の駆動信号を伝達するための細長い帯状のフレキシャ(配線部材)42と、フレキシャ42に実装された一対の圧電素子(例えば、PZT素子)50と、を有している。図2および図3に示すように、フレキシャ42は、ロードビーム38およびベースプレート36上に配置された先端側部分42aと、ベースプレート36の側縁から外側に延出し、アーム32の側縁に沿ってアクチュエータブロック29まで延びた基端側部分42bと、基端側部分42bの延出端から延出した接続端部42cとを有している。接続端部42cは、並んで設けられた複数の接続パッド(電極パッド)43を有している。これらの接続パッド43は、アクチュエータブロック29に設置された配線基板51の接続端子に電気的に接合される。
【0016】
図3図4図5に示すように、フレキシャ42の先端部は、ロードビーム38の先端部の上に位置し、弾性支持部として機能するジンバル部44を構成している。磁気ヘッド17は、ジンバル部44上に載置および固定され、このジンバル部44を介してロードビーム38に支持されている。駆動素子としての一対の圧電素子50は、ジンバル部44に実装され、磁気ヘッド17の両サイドに配置されている。
【0017】
フレキシャ42は、ベースとなるステンレス等の金属薄板(金属板)46と、金属薄板46上に貼付あるいは固定された帯状の積層部材(フレキシブルプリント配線基板:FPC)48と、を有し、細長い積層板をなしている。積層部材(FPC)48は、大部分が金属薄板46に固定されたベース絶縁層(第1絶縁層)と、ベース絶縁層上に形成されて、複数の信号配線、駆動配線、複数の接続パッドを構成する導電層(配線パターン)と、導電層を覆ってベース絶縁層上に積層されたカバー絶縁層(第2絶縁層)と、を有している。導電層としては、例えば、銅箔を用い、この銅箔をパターニングすることにより複数の信号配線、駆動配線、および接続パッドを形成している。
フレキシャ42の先端側部分42aでは、金属薄板46がロードビーム38およびベースプレート36の表面上に貼付され、あるいは、複数の溶接点にてスポット溶接されている。一例では、金属薄板46は、ロードビーム38の基端部に溶接された2つの溶接点(第1溶接部)B1と、ロードビーム38の先端部に溶接された1つの溶接点(第2溶接部)B2と、を有している。すなわち、金属薄板46は、磁気ヘッド17のリーディング端(流出端)側に位置する溶接点B1と磁気ヘッド17のトレーリング端(流入端)側に位置する溶接点B2との少なくとも2か所でロードビーム38に溶接されている。
【0018】
ジンバル部44において、金属薄板46は、先端側に位置するほぼ矩形状のタング部(支持部)44aと、タング部44aと空間を挟んで基端側に位置するほぼ矩形状の基端部(第1端部)44bと、それぞれ基端部44bとタング部44aとを連結しタング部44aを変位可能に支持している弾性変形可能な一対のアウトリガー(リンク部)44cと、一方のアウトリガー44cからタング部44aの先端側を回って他方のアウトリガー44cまで延びた連結フレーム44dと、連結フレーム44dから延出しタング部44aの先端部に対向したほぼ矩形状の固定パッド部(第2端部)44eと、を一体に有している。固定パッド部44eは、連結フレーム44dとタング部44aとの間に位置している。
基端部44bは、ロードビーム38の表面上に貼付され、溶接点B1でロードビーム38にスポット溶接されている。固定パッド部44eは、溶接点B2でロードビーム38の先端部にスポット溶接されている。溶接点B2は、サスペンション34の中心軸線C1上に位置している。
【0019】
図4に示すように、タング部44aは、磁気ヘッド17を載置可能な大きさおよび形状に形成され、例えば、ほぼ矩形状に形成されている。タング部44aは、その幅方向の中心軸線がサスペンション34の中心軸線C1と一致するように配置されている。タング部44aは、基端部44bの側に位置する後端部45aと、サスペンション34の先端の側に位置する先端部45bとを有している。後端部45aの幅方向の両側部がそれぞれアウトリガー44cに連結されている。タング部44aにおいて、後端部45aと先端部45bとの間の中央部は、他の部分に比較して狭い幅に絞られている。
タング部44aは、そのほぼ中心部が、ロードビーム38の先端部に突設されたディンプル(凸部)52に当接している。タング部44aは、一対のアウトリガー44cおよび連結フレーム44dが弾性変形することにより、ディンプル52を支点として種々の向きに変位可能である。これにより、タング部44aおよびタング部44aに搭載される磁気ヘッド17は、磁気ディスク18の表面変動に柔軟に追従してロール方向あるいはピッチ方向に変位し、磁気ディスク18の表面と磁気ヘッド17との間に微小隙間を維持することができる。
【0020】
図3図4図5に示すように、ジンバル部44において、フレキシャ42の積層部材48は、金属板46上に配置され、中心軸線C1に沿って基端部44bから前記空間を通ってタング部44aの上まで延びている。すなわち、積層部材48は、基端部44bの上に貼付された基端部48aと、タング部44aに貼付された先端部48bと、基端部48aから先端部48bまで二股状に延びている一対の帯状のブリッジ部48cと、を有している。先端部48bは、磁気ヘッド17が搭載されるヘッド設置領域を構成している。
先端部48bには、複数の接続パッド(電極パッド)54が幅方向に並んで設けられている。また、先端部48bには、圧電素子50を接続するための複数の接続パッド(電極パッド)55が設けられている。積層部材48は、接続パッド54から先端部48bの両側縁部を回って基端部48a側に延びた複数本の信号配線Wおよび接続パッド55から基端部48a側に延びる複数本の駆動配線Wを有している。これらの信号配線Wおよび駆動配線Wは、積層部材48のほぼ全長に亘って延在し、接続端部42cの接続パッド43に繋がっている。図4に示すように、先端部48bの中央部、特に、配線Wが存在していない領域に透186が設けられている。この透孔86には後述する接着剤が充填される。
【0021】
磁気ヘッド17は、ほぼ矩形状のヘッドスライダ17aと、ヘッドスライダ17aに設けられた図示しない記録素子(ライトヘッド)およびリード素子(リードヘッド)と、を有している。ヘッドスライダ17aは、磁気ディスク18の表面に対向する上面(ABS)17bと反対側の背面17cと、ロードビーム38の先端の側に位置する流出端17dと、ロードビーム38の基端部の側に入りする流入端17eと、を有している。磁気ヘッド17は、ヘッドスライダ17aの流出端17dに設けられた複数の接続パッドPTを有している。これらの接続パッドPTは、磁気ヘッド17の記録素子、リード素子、ヒータ等に電気的に接続されている。
【0022】
磁気ヘッド17は、ヘッドスライダ17aの背面17cが先端部48bに対向した状態で、先端部48bに重ねてタング部44aの上に載置され、接着剤により先端部48bに固定されている。磁気ヘッド17は長手方向の中心軸線がサスペンション34の中心軸線C1と一致するように配置され、また、磁気ヘッド17のほぼ中心部はディンプル52の上に位置している。磁気ヘッド17の接続パッドPTは、半田あるいは銀ペースト等の導電性接着剤Sd(図7参照)により先端部48bの複数の接続パッド54に電気的に接続されている。これにより、磁気ヘッド17は、接続パッド54を介して積層部材48の信号配線Wに接続されている。
【0023】
一対の圧電素子50は、例えば、矩形板状の薄膜圧電素子(PZT素子)を用いている。圧電素子50は、薄膜型(厚さ10μm程度)に限らず、バルク型あるいはバルク積層型(厚さ40μm以上)の圧電素子を用いてもよい。また、圧電素子50は、PZT素子に限らず、他の圧電素子を用いてもよい。更に、駆動素子は、圧電素子に限らず、電流印加により伸縮可能な他の駆動素子を用いてもよい。
圧電素子50は、その長手方向(伸縮方向)が、サスペンション34の中心軸線C1と平行になるように配置されている。2つの圧電素子50は、磁気ヘッド17の幅方向の両側に配置され、互いに平行に並んで配置されている。各圧電素子50の長手方向の両端部は、先端部48bの接続パッド55に実装され電気的に接続されている。これにより、圧電素子50は、接続パッド55を介して積層部材48の駆動配線Wに接続されている。
【0024】
次に、磁気ヘッド17の実装構造について詳細に説明する。
図6は、カバー絶縁層を省略して示すジンバル部44の平面図、図7は、図5の線A-Aに沿ったジンバル部の断面図である。
図6に示すように、積層部材(FPC)48の先端部48bは、タング部44a上に貼付されているとともに、磁気ヘッド17が搭載されるヘッド設置領域を構成している。ヘッド設置領域において、配線Wが存在していない領域に透孔86が設けられている。また、先端部48bは、少なくとも一部がヘッド設置領域内に位置しヘッドスライダ17aの流入端の側の端部に対向するエッチング領域(凹所)PEを有している。磁気ヘッド17は、透孔86に充填された接着剤Adにより、ヘッド設置領域に接着固定される。
【0025】
図6および図7に示すように、積層部材48の先端部48bは、金属板46からなるタング部44aに固定されたベース絶縁層(第1絶縁層)80と、ベース絶縁層80上に形成されて、複数の信号配線W、駆動配線W、複数の接続パッドを構成する導電層(配線パターン)82と、導電層82を覆ってベース絶縁層80上に積層されたカバー絶縁層(第2絶縁層)84と、を有している。導電層としては、例えば、銅箔を用い、この銅箔をパターニングすることにより複数の信号配線W、駆動配線W、および接続パッド54、55を形成している。透孔86は、ベース絶縁層80およびカバー絶縁層84を貫通して形成されている。
磁気ヘッド17は、透孔86に充填された接着剤Adによりタング部44aに接着固定されている。透孔86に充填された接着剤Adは、ヘッドスライダ17aの背面17c、金属板46の表面および透孔86の内周面に接触している。そのため、接着剤Adの接触面積が大きくなり、接着強度が向上する。ヘッドスライダ17aの背面17cの中央部分は、カバー絶縁層84に当接しているとともに、ディンプル52に対向している。
【0026】
先端部48bのエッチング領域PEは、ディンプル52よりも磁気ヘッド17の流入端17eの側に設けられている。エッチング領域PEは、ヘッドスライダ17aの流入端17eの側の端部に隙間G1を置いて対向している。本実施形態によれば、エッチング領域PEは、ヘッドスライダ17aの幅よりも広い幅に形成され、更に、ヘッドスライダ17aの流入端17eを超えて基端部48aの側へ延びている。
【0027】
本実施形態によれば、エッチング領域PEにおいて、ベース絶縁層80の一部をパーシャルエッチングすることにより凹所(第1凹所)PE1が形成されている。凹所PE1の深さdは、ベース絶縁層80の層厚Tの30~70%程度に形成されている。一例では、ベース絶縁層80の層厚Tは8μm、凹所PE1の深さdは3~5μmに形成されている。信号配線Wの少なくとも一部は凹所PE1の底面の上に設けられている。ベース絶縁層80上に積層されたカバー絶縁層84において、凹所PE1および信号配線Wに重なる領域は、凹所PE1の深さに応じて凹み、凹所PE1に対応した形状の凹所(第2凹所)PE2を形成している。一例では、カバー絶縁層84の凹所PE2の深さは3~5μmとなっている。
【0028】
これにより、ディンプル52よりも磁気ヘッド17の流入端17eの側に位置するヘッドスライダ17aの端部は、カバー絶縁層84に当接することなく、隙間G1を置いて凹所PE2の底面に対向している。隙間G1は、凹所PE2の深さに相当している。
ヘッドスライダ17aはカバー絶縁層84の上に直接、載置されている。そのため、ヘッドスライダ17aの流出端17dに設けられた接続パッドPTと信号配線Wの側の接続パッド54との間隔G2は、隙間G1と同程度となり、一例では、3~5μmとなっている。接続パッドPTと接続パッド54とは、導電性接着剤Sdにより互いに電気的に接続されている。
【0029】
積層部材48の先端部48bは、透孔86と接続パッド54との間に設けられた複数、例えば、2つの支持ポスト81を有している。各支持ポスト81は、導電層82およびカバー絶縁層84により、例えば、円柱形状に形成されている。2つの支持ポスト81は、ヘッドスライダ17aの流出端17dの側の2つの角部と対向する位置に設けられている。ヘッドスライダ17aの背面17cの角部は支持ポスト81に当接している。すなわち、ヘッドスライダ17aの流出端17dの側の2つの角部は支持ポスト81の上に載置され、支持ポスト81により支持されている。
【0030】
一方、図1および図2に示すように、HDDの基板ユニット21は、ほぼ矩形状のベース部58と、ベース部58から延出した細長い帯状の中継部57と、中継部57の先端に連続して設けられた配線基板51と、を一体に有している。ベース部58、中継部57、および配線基板51は、フレキシブルプリント配線基板(FPC)により形成されている。ベース部58は、ベース12の底壁12aの上に配置され、配線基板51は、アクチュエータブロック29の設置面に取り付けられている。
ベース部58には、図示しない変換コネクタ、複数のコンデンサ等の電子部品が実装されている。配線基板51には、図示しない多数の接続パッドが設けられている。前述した複数のサスペンションアッセンブリ30のフレキシャ42の接続端部42cは、例えば、ハンダにより配線基板51の接続パッドにそれぞれ接合されている。また、配線基板51にヘッドIC(ヘッドアンプ)53が実装され、このヘッドIC53は図示しない複数の配線を介して接続パッドおよびベース部58に接続されている。これにより、アクチュエータアッセンブリ22の8個の磁気ヘッド17は、それぞれフレキシャ42の配線、接続端部42c、配線基板51、ヘッドIC53、中継部57を介して、ベース部58に電気的に接続される。
【0031】
図1に示すように、ランプロード機構25は、ベース12に設置されたランプ60と、ランプ60に係合可能なタブ40と、を有している。前述したように、タブ40は、サスペンションアッセンブリ30のロードビーム38の先端に設けられている。ランプ60は、ベース12の底壁12aに固定され、磁気ディスク18の周縁部近傍に位置している。ランプ60は、ブロック状に形成されたランプ本体62を備えている。ランプ本体62の一側部には、8つのサスペンションアッセンブリ30に設けられたタブ40をそれぞれ支持およびガイドする8つのガイド面(ガイド部)64が形成されている。
【0032】
HDDの動作時、アクチュエータアッセンブリ22はVCM24により支持シャフト31の回りで回動され、複数の磁気ヘッド17は、各磁気ディスク18の表面に対向した状態で、所望のシーク位置に移動される。図1に示すように、HDDの非作動時、アクチュエータアッセンブリ22は磁気ヘッド17が磁気ディスク18の最外周の外に位置するアンロード位置に回動され、複数のサスペンションアッセンブリ30のタブ40は、それぞれ対応するランプ60のガイド面64に乗り上げる。これにより、磁気ヘッド17は、ランプ60により、磁気ディスク18から離間したアンロード位置に保持される。
【0033】
以上のように構成されたHDDおよびサスペンションアッセンブリによれば、磁気ヘッド17が搭載される積層部材48のヘッド設置領域に、凹所PE1、PE2を有するエッチング領域PEを設けることにより、磁気ヘッド17の流入端17eの側の端部と積層部材48との間に隙間G1を形成している。そのため、圧電素子50の駆動に伴う、ディンプル52を中心とした磁気ヘッド17の回転移動の際、磁気ヘッド17の流入端17eと積層部材48との接触を防止し、磁気ヘッド17を円滑に移動させることができる。上記構成によれば、隙間を形成するための第2カバー絶縁層を更に設ける必要がなく、磁気ヘッド17を直接、カバー絶縁層84に重ねて載置することができる。そのため、第2カバー絶縁層の厚さ分だけ、磁気ヘッド17の接続パッドPTと積層部材48の接続パッド54との間隔を狭くすることが可能となり、これらの接続パッドPT、54を導電性接着剤SDにより容易に、かつ、確実に接合することができる。すなわち、接続パッドの接合プロセスを良好に行うことが可能となる。
【0034】
本実施形態によれば、積層部材48は支持ポスト81を有し、この支持ポスト81により磁気ヘッド17の流出端17dの側の端部を支持している。そのため、磁気ヘッド17の回転移動の際、磁気ヘッド17の流出端17dおよび接続パッドPTの変位を規制し、接続パッドPTと接続パッド54との接合部に作用する負荷を低減することができる。これにより、確実な接合状態を保持し、信頼性の向上を図ることが可能となる。
以上により、本実施形態によれば、配線部材に対して磁気ヘッドを安定して接合することが可能なサスペンションアッセンブリおよびこれを備えるディスク装置が得られる。
【0035】
本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、積層部材48のエッチング領域PEは、矩形状に限らず、他の任意の形状を選択可能である。エッチング領域PEは、ベース絶縁層80をパーシャルエッチングして形成された凹所を有する構成としているが、これに限らず、ベース絶縁層だけでなく、金属板、導電層、カバー絶縁層のいずれか、あるいは、2つ以上をパーシャルエッチングして凹所を形成する構成としても良い。
サスペンションアッセンブリを構成する要素の材料、形状、寸法等は、上述した実施形態に限定されることなく、必要に応じて種々変更可能である。ディスク装置において、磁気ディスクは4枚に限らず、3枚以下あるいは6枚以上としてもよく、サスペンションアッセンブリの数および磁気ヘッドの数も磁気ディスクの設置枚数に応じて増減すればよい。
【符号の説明】
【0036】
10…筐体、12…ベース、12a…底壁、12b…側壁、17…磁気ヘッド、
17a…ヘッドスライダ、17d…流出端、17e…流入端、17c…背面、
18…磁気ディスク、19…スピンドルモータ、22…アクチュエータアッセンブリ、
30…サスペンションアッセンブリ、32…アーム、36…ベースプレート、
38…ロードビーム、42…フレキシャ(配線部材)、44…ジンバル部、
44a…タング部、48…積層部材(FPC)、48b…先端部、50…圧電素子、
52…ディンプル(凸部)、54…接続パッド、81…支持ポスト、86…透孔、
PE…エッチング領域(凹所)、W…配線、PT…接続パッド、Ad…接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7