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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】敷設方法及び敷設装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/115 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
E02D3/115
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020196321
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084438
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】江崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-013679(JP,A)
【文献】特開2019-082049(JP,A)
【文献】特開2002-146762(JP,A)
【文献】特開2006-241935(JP,A)
【文献】特許第2743954(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
E02F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対象部材を地盤の中に埋め込んで敷設する方法であって、
前記対象部材の周囲に沿う所定の掘削軌道で掘削用チェーンを走行させて前記地盤を掘削しながら前記対象部材を前記地盤の中に挿入していく第1工程と、
所定の深さに前記対象部材が到達した後に前記対象部材を前記地盤の中に残置する第2工程と、を備える、敷設方法。
【請求項2】
前記対象部材は、部材本体と、前記部材本体の周囲を囲み内側に前記部材本体を保持し且つ前記掘削用チェーンの前記掘削軌道での走行を案内するガイド部を外側に含むガイドフレームと、を有し、
前記第1工程では、
前記掘削用チェーンの走行中に前記ガイドフレームを前記地盤に向かって押すことで前記対象部材を前記地盤の中に挿入していく処理と、
前記ガイドフレームに前記ガイドフレームを延長する延長フレームを継ぎ足す処理と、が実行される、請求項1に記載の敷設方法。
【請求項3】
前記第2工程では、前記掘削用チェーンを前記掘削軌道に沿って前記地盤の中から前記地盤の外に引き抜いて回収する、請求項1又は2に記載の敷設方法。
【請求項4】
前記対象部材は前記地盤への挿入方向を長手方向とする長尺の板状をなす部材であり、
前記掘削用チェーンの前記掘削軌道は、
前記対象部材の板幅方向の両端の縁部に沿って前記長手方向に延在する一対の側面部分と、
前記対象部材の前記挿入方向の先端の縁部に沿って延在し前記側面部分同士を接続する先端部分と、を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の敷設方法。
【請求項5】
前記地盤に設けられた既設構造物に沿って前記対象部材を前記地盤の中に敷設する敷設方法であって、
前記掘削用チェーンは、前記地盤の外に設置されたチェーン駆動部を駆動源として走行し、
前記チェーン駆動部の周囲における前記掘削用チェーンの軌道は、前記掘削軌道に比較して前記既設構造物から離間している、請求項1~4の何れか一項に記載の敷設方法。
【請求項6】
所定の対象部材を地盤の中に埋め込んで敷設する装置であって、
前記対象部材の周囲に沿う所定の掘削軌道で走行して前記地盤を掘削する掘削用チェーンと、
前記対象部材及び前記掘削用チェーンを一緒に前記地盤の中に挿入する挿入駆動部と、を備える、敷設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、敷設方法及び敷設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象部材を地盤の中に埋め込んで敷設するためにボーリング穴を掘削する方法が知られている。例えば、下記特許文献1に記載の凍結工法では、地盤にボーリング穴を掘削し、そのボーリング穴に凍結管を敷設して所定範囲の地盤を凍結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許2743954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような敷設方法では、ボーリング穴に対して対象部材を安定して挿入し設置するために、対象部材に対して比較的大きいボーリング穴を形成する必要がある。すなわち、敷設される対象部材に比較してやや広い領域で地盤を掘削する必要があり、このため、幅が狭い場所には対象部材を敷設することが困難であった。そこで本発明は、狭い場所において対象部材を地盤の中に敷設することを可能にする敷設方法及び敷設装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の敷設方法は、所定の対象部材を地盤の中に埋め込んで敷設する方法であって、対象部材の周囲に沿う所定の掘削軌道で掘削用チェーンを走行させて地盤を掘削しながら対象部材を地盤の中に挿入していく第1工程と、所定の深さに対象部材が到達した後に対象部材を地盤の中に残置する第2工程と、を備える。
【0006】
この敷設方法によれば、掘削軌道で走行する掘削用チェーンによって対象部材の周囲の地盤を掘削しながら、対象部材を地盤の中に挿入する。地盤を掘削した後に対象部材を挿入するときのように、掘削する領域を広くして余裕を持たせる必要が無いため、この敷設方法によれば、狭い場所において対象部材を地盤の中に敷設することができる。
【0007】
対象部材は、部材本体と、部材本体の周囲を囲み内側に部材本体を保持し且つ掘削用チェーンの掘削軌道での走行を案内するガイド部を外側に含むガイドフレームと、を有してもよい。第1工程では、掘削用チェーンの走行中にガイドフレームを地盤に向かって押すことで対象部材を地盤の中に挿入していく処理と、ガイドフレームにガイドフレームを延長する延長フレームを継ぎ足す処理と、が実行されてもよい。この敷設方法によれば、ガイドフレームを押す処理によって、対象部材を地盤の中に挿入できる。
【0008】
第2工程では、掘削用チェーンを掘削軌道に沿って地盤の中から地盤の外に引き抜いて回収してもよい。この敷設方法によれば、対象部材を残置した後に、地盤の中から掘削用チェーンを回収することができる。
【0009】
本発明の敷設方法では、対象部材は、地盤への挿入方向を長手方向とする長尺の板状をなす部材であってもよい。掘削用チェーンの掘削軌道は、対象部材の板幅方向の両端の縁部に沿って長手方向に延在する一対の側面部分と、対象部材の挿入方向の先端の縁部に沿って延在し側面部分同士を接続する先端部分と、を有してもよい。この敷設方法によれば、長尺の板状をなす対象部材を地盤の中に敷設することができる。
【0010】
本発明の敷設方法は、地盤に設けられた既設構造物に沿って対象部材を地盤の中に敷設する敷設方法であって、掘削用チェーンは、地盤の外に設置されたチェーン駆動部を駆動源として走行し、チェーン駆動部の周囲における掘削用チェーンの軌道は、掘削軌道に比較して既設構造物から離間していてもよい。この敷設方法によれば、チェーン駆動部と既設構造物とが干渉することを回避できる。
【0011】
本発明の敷設装置は、所定の対象部材を地盤の中に埋め込んで敷設する装置であって、対象部材の周囲に沿う所定の掘削軌道で走行して地盤を掘削する掘削用チェーンと、対象部材及び掘削用チェーンを一緒に地盤の中に挿入する挿入駆動部と、を備える。
【0012】
この敷設装置によれば、上述した敷設方法と同様に、狭い場所において対象部材を地盤の中に敷設することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、狭い場所において対象部材を地盤の中に敷設することができる敷設方法及び敷設装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、対象部材の一例である凍結管の内部の流路を示す模式図であり、(b)は、(a)の凍結管を挿入方向から見た断面図であり、(c)は、(a)の凍結管が敷設された地盤の断面図である。
図2】実施形態に係る敷設装置の側面図である。
図3】(a)は、凍結部材及び掘削用チェーンの拡大図であり、(b)は、(a)を挿入方向から見た断面図である。
図4】実施形態に係る敷設装置の正面図である。
図5】地盤を掘削する第1工程を示す正面図である。
図6】第1工程における延長フレームを継ぎ足す処理を示す正面図である。
図7】第2工程において掘削用チェーンを地盤の外に引き抜いて回収する処理を示す正面図である。
図8】掘削用チェーンの変形例を示す拡大図である。
図9】敷設装置の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る敷設方法及び敷設装置について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0016】
[凍結工法]
本発明の実施形態に係る敷設方法及び敷設装置では、所定の対象部材を地盤の中に埋め込んで敷設する方法の一例として、凍結管を敷設する凍結工法を説明する。本実施形態に係る凍結工法は、凍結管を地盤の中に埋め込んで敷設する工程の後に、凍結管に冷媒を循環させることで地盤を凍結させる工程を備える。
【0017】
図1(a)は、凍結工法に適用される凍結管21の内部の流路Fを示す模式図である。本実施形態に係る凍結管21は、長尺の板状をなす。以下では、各図に示されるように、凍結管21の長手方向をZ方向、凍結管21の板幅方向をX方向、凍結管21の板厚方向をY方向とする。凍結管21の長手方向(Z方向)は、地盤Gへの挿入方向である。本実施形態では、地盤Gに対して凍結管21が鉛直下方に向けて挿入されるものとする。凍結管21は、例えば、押出成形されたアルミニウムなどの金属によって形成される。凍結管21の長手方向の長さは、例えば2~30mであり、最大では約100m程度のものもあり得る。また、図1(b)の挿入方向から見た断面図に示されるように、凍結管21の板幅(X方向の寸法)は例えば50mmであり、板厚(Y方向の寸法)は例えば5mmである。凍結管21は、柔軟性を有しており、曲げ伸ばしが容易である。凍結管21は、ロール状に巻き取ることと、ロール状に巻き取られた状態から直線状に引き延ばすこととが可能である。
【0018】
図1(b)に示されるように、凍結管21は、内部に流路Fを有する。図1(a)に示されるように、凍結管21の内部の流路Fは、凍結管21に冷媒Lを導入するための流路F1と、導入された冷媒Lを排出するための流路F2とを含む。本実施形態では、凍結管21には6つの流路が設けられ、右側の3つの流路は凍結管21に冷媒Lを導入するための流路F1であり、左側の3つの流路は導入された冷媒Lを排出するための流路F2である。冷媒Lは、凍結管21の内部を循環することで、凍結管21及び凍結管21の周囲の地盤Gを冷却する。冷媒Lは、例えば、液化二酸化炭素である。
【0019】
図1(c)は、凍結管21が敷設された地盤Gの断面図である。冷媒Lは、循環ポンプ(不図示)によって、それぞれの凍結管21を循環する。それぞれの凍結管21には、冷媒Lを導入する配管P1と、冷媒Lを排出する配管P2とが接続される。凍結管21に導入された冷媒Lは、気化熱によって周囲を冷却する。凍結管21から排出された冷媒Lは、冷却機(不図示)によって冷却され、再び凍結管21に導入される。凍結管21の周囲の地盤Gは、地盤Gが含む水分が凍結することで凍土に変化する。図1(c)に示されるように、本実施形態の凍結工法は、複数の凍結管21を所定の間隔で敷設する。複数の凍結管21の周囲の地盤Gは、凍結管21を敷設する方向(X方向)に沿って凍土が繋がり凍土壁Iを形成する。本実施形態の凍結工法では、凍土壁Iを形成することで、所定の範囲への水の浸入を防止する止水を行う。
【0020】
[敷設装置]
このような凍結工法において、凍結部材2(特許請求の範囲の対象部材に相当)を敷設する敷設装置1と、敷設装置1を用いて実行される敷設方法について説明する。凍結部材2は、前述の凍結管21と、凍結管21を保持するとともに最終的に凍結管21と一緒に地盤Gの中に残置されるガイドフレーム22(図3参照)と、を有する。凍結部材2及びガイドフレーム22の詳細については後述される。図2は、実施形態に係る敷設装置1をX方向側から見た側面図である。図2に示されるように、敷設装置1は、クローラ等により地盤G上を自走可能な本体部10と、本体部10の前面側に配置される掘削用チェーン11と、挿入駆動部12及びチェーン駆動部13とを備える。チェーン駆動部13は例えば電動機を備え掘削用チェーン11を駆動させる。チェーン駆動部13によって駆動する掘削用チェーン11は、凍結部材2の周囲に沿った所定の掘削軌道31で走行することで地盤Gを掘削する。上記の掘削軌道31は、凍結部材2の周囲に沿う軌道である。挿入駆動部12は、凍結部材2及び掘削用チェーン11を一緒に下方(Z方向の下向き)に押すことで地盤Gの中に挿入する。本実施形態では、凍結部材2の凍結管21は、ロール状に巻き取られた状態で敷設装置1の本体部10の後部に配置され、直線状に引き伸ばしながら地盤Gの中に挿入される。掘削用チェーン11、掘削軌道31、挿入駆動部12及びチェーン駆動部13の詳細については後述する。
【0021】
図3(a)は、凍結部材2及び掘削用チェーン11の挿入方向における先端部分をY方向側(正面)から見て拡大する拡大図である。掘削用チェーン11は、例えば、チェーン部11a及び掘削部11bを有する。チェーン部11aは、複数の可動する部品が連結して構成される環状の可動部品である。チェーン部11aは、チェーン駆動部13を駆動源として掘削軌道31を含む所定の軌道に沿って周回する。掘削部11bは、チェーン部11aに所定の間隔で設けられる爪状の部品である。掘削部11bは、上記軌道の外周側に配置されるようにチェーン部11aに設けられる。周回する掘削部11bは、地盤Gを削り取ると共に削り取った地盤Gを地盤Gの外に排出する。
【0022】
前述のとおり、本実施形態では、凍結部材2は、凍結管21(特許請求の範囲の部材本体に相当)と、ガイドフレーム22とを有する。ガイドフレーム22は、凍結管21の周囲を囲む棒状の剛性部材である。凍結管21が長尺の板状を構成する本実施形態では、ガイドフレーム22は、凍結管21の側面部分と、凍結管21の挿入方向における先端部分とに沿って延在する。側面部分は、凍結管21の板幅方向(X方向)の両端の縁部に沿って長手方向(挿入方向)に延在する一対の部分である。先端部分は、凍結管21の挿入方向の先端の縁部に沿って延在し側面部分同士を接続する部分である。ガイドフレーム22は、側面部分に沿って長手方向に延在すると共に先端部分に沿ってU字型に湾曲することで、凍結管21の周囲を囲む。
【0023】
図3(b)は、凍結部材2及び掘削用チェーン11を挿入方向から見た断面図である。図3(b)に示されるように、ガイドフレーム22は、内側に凍結管21を保持する。ガイドフレーム22は、例えば、保持部材23によって凍結管21を挟持することで、内側に凍結管21を保持する。ロール状に巻き取られた凍結管21は、ガイドフレーム22に保持されることで、直線状に引き伸ばされる。
【0024】
ガイドフレーム22は、外側にガイド部22aを含む。図3(a)に示されるように、ガイド部22aは、掘削用チェーン11の掘削軌道31での走行を案内する。具体的には、図3(b)に示されるように、ガイド部22aの凸部分と掘削用チェーン11の内側の凹部分とが組み合うことで、掘削用チェーン11は、ガイド部22aの凸部分に案内されて掘削軌道31で走行する。換言すれば、掘削用チェーン11の掘削軌道31は、ガイドフレーム22のガイド部22aに沿っている。ガイドフレーム22と同様に、掘削軌道31は、側面部分31aと、先端部分31bとを有している(図3(a)参照)。側面部分31aは、凍結管21の板幅方向の両端の縁部に沿って長手方向(挿入方向)に延在する一対の部分である。先端部分31bは、凍結管21の挿入方向の先端の縁部に沿って延在し側面部分31a同士を接続する部分である。先端部分31bでは、掘削軌道31は、ガイドフレーム22に沿ってU字型に湾曲する。
【0025】
図4は、敷設方法を開始する前の敷設装置1の正面図である。前述のとおり、敷設装置1は、掘削用チェーン11と、挿入駆動部12及びチェーン駆動部13とを備える。チェーン駆動部13は、本体部10の上部に設置され地盤Gの外に位置している。チェーン駆動部13は、掘削用チェーン11の駆動源である。本実施形態では、チェーン駆動部13は、挿入駆動部12の上面に固定される。チェーン駆動部13は、例えば、電動機を備える。チェーン駆動部13は、掘削用チェーン11をチェーン駆動部13の周囲の軌道32で駆動する。軌道32は、例えば、電動機の回転軸の周囲に沿う軌道である。この場合、掘削用チェーン11は、軌道32において、回転軸のギヤと噛み合うことで駆動力を得る。掘削用チェーン11は、軌道32及び掘削軌道31を含む所定の軌道で周回する。
【0026】
挿入駆動部12は、地盤Gに対して上下に移動する駆動部である。挿入駆動部12は、例えば、油圧ジャッキによって本体部10に対し上下に移動する台座である。挿入駆動部12の前面にはガイドフレーム22の上端部が保持され、挿入駆動部12の上面には、前述のとおり、チェーン駆動部13が固定される。挿入駆動部12が上下動することにより、本体部10に対してチェーン駆動部13とガイドフレーム22とが一緒に上下動する。敷設作業の開始時には、挿入駆動部12は、可動範囲の上端に移動した後で凍結部材2のガイドフレーム22を保持する。このとき、ガイドフレーム22上の掘削用チェーン11の下端部が地盤Gの直上に位置する。
【0027】
[敷設方法]
次に、敷設装置1を用いて実行される敷設方法について図5~7を参照しながら説明する。最初に、第1工程を実行する。図5は、掘削用チェーン11を駆動して地盤Gを掘削しながら凍結部材2を地盤Gの中へ挿入していく第1工程を示す正面図である。第1工程では、挿入駆動部12は、凍結部材2のガイドフレーム22を保持したまま下側に移動する。掘削用チェーン11は、ガイドフレーム22の周囲に沿う掘削軌道31で走行しながら地盤Gと接触する。地盤Gに接触する掘削用チェーン11は、ガイドフレーム22の周囲の地盤Gを掘削する。具体的には、走行する掘削用チェーン11は、掘削軌道31の先端部分31bにおいて挿入方向の地盤Gを削り取ると共に、掘削軌道31の側面部分31aにおいて削り取った地盤Gを地盤Gの外に排出することで、地盤Gを掘削する。
【0028】
第1工程では、上記のように掘削用チェーン11で地盤Gを掘削しながら凍結部材2を地盤Gの中に挿入していく。具体的には、掘削用チェーン11を走行させた状態で、挿入駆動部12を本体部10に対して下降させ凍結部材2のガイドフレーム22を地盤Gに向かって押すことで凍結部材2を地盤Gの中に挿入していく処理を行う。挿入駆動部12は、凍結部材2及び掘削用チェーン11を一緒に地盤Gの中に挿入する。
【0029】
そして、挿入駆動部12が可動範囲の下端に到達したときに、挿入駆動部12及び掘削用チェーン11が一旦停止され、ガイドフレーム22及び掘削用チェーン11の長さが延長される。図6は、第1工程における延長フレーム24を継ぎ足す処理を示す正面図である。延長フレーム24は、ガイドフレーム22を挿入方向に延長する部品である。延長フレーム24は、例えば、挿入駆動部12の上下の可動範囲と同程度の長さを有する。本実施形態では、延長チェーン14を継ぎ足す処理も実行する。延長チェーン14は、掘削用チェーン11を延長する部品である。延長チェーン14も、例えば、挿入駆動部12の上下の可動範囲と同程度の長さを有する。
【0030】
延長フレーム24を継ぎ足す処理は、凍結部材2を地盤Gの中に挿入する処理の後で実行される。本実施形態では、まず、ガイドフレーム22を地盤Gの中に挿入された先端部分31bを含む下部と、挿入駆動部12に保持される上部とに分離する。掘削用チェーン11もガイドフレーム22と同様に分離する。次に、挿入駆動部12が可動範囲の上端に移動する。ガイドフレーム22及び掘削用チェーン11は、分離した位置で上部と下部が離間する。最後に、離間したガイドフレーム22の上部と下部との間に、延長フレーム24を継ぎ足す。同様に、離間した掘削用チェーン11の上部と下部との間に、延長チェーン14を継ぎ足す。
【0031】
延長フレーム24を継ぎ足す処理を実行した後は、挿入駆動部12が可動範囲の上端に位置する。また、ガイドフレーム22は、先端側が地盤Gの中に挿入された状態で挿入駆動部12に保持される。よって、凍結部材2のガイドフレーム22を地盤Gに向かって押すことで凍結部材2を地盤Gの中に挿入していく処理を、再度実行することができる。これにより、延長フレーム24を継ぎ足す処理と、凍結部材2を地盤Gの中に挿入していく処理とを繰り返し実行することで、第1工程では、事前に計画された所定の深さまで凍結部材2を地盤Gの中に挿入する。
【0032】
第1工程の後に、第2工程を実施する。第2工程では、所定の深さに凍結部材2が到達した後に、凍結部材2を地盤Gの中に残置する。本実施形態では、図7に示されるように、第2工程において、さらに、掘削用チェーン11を掘削軌道31に沿って地盤Gの中から地盤Gの外に引き抜いて回収する処理を実施する。具体的には、地盤Gより上方の1つの箇所において掘削用チェーン11を分離した状態で、チェーン駆動部13を駆動すると、掘削用チェーン11はチェーン駆動部13により引っ張られて掘削軌道31に沿って走行すると共に地盤Gの中から地盤Gの外に引き抜かれ回収される。以上によって、敷設方法が終了する。
【0033】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0034】
[変形例]
図8は、掘削用チェーン11の変形例を示す拡大図である。図8の拡大図は、掘削用チェーン11の変形例をチェーン駆動部13の周囲で拡大する。この掘削用チェーン11の変形例によれば、延長フレーム24を継ぎ足す処理において、延長チェーン14を継ぎ足す処理を実行しなくてもよい。この掘削用チェーン11の変形例は、チェーン駆動部13、第1支軸41、第2支軸42、第3支軸43、第4支軸44及び第5支軸45の周囲に沿う軌道32を走行する。第1~5の支軸は、それぞれ回転可能に設けられた回転軸である。第1~5の支軸は、挿入駆動部12に設けられる。掘削用チェーン11は、チェーン駆動部13の回転軸及び第1~5の支軸に緩みなく掛かった状態で走行する。
【0035】
本変形例では、第1~3の支点の回転軸は、チェーン駆動部13に向かって移動可能に設けられる。例えば、チェーン駆動部13に向かって第1~3の支軸を移動する移動機構が設けられる。延長フレーム24を継ぎ足す処理において、挿入駆動部12が上側に移動すると、ガイドフレーム22の下部と上部との間で掘削軌道31が引き延ばされる。掘削用チェーン11の全長は一定であるため、掘削軌道31が引き延ばされることによって、軌道32は引き締められる。第1~3の支点の回転軸は、軌道32の引き締めに応じて、軌道32が小さくなるようにチェーン駆動部13に向かって移動する。チェーン駆動部13及び第1~5の支点の周囲に沿う軌道32は、第1~3の支点がチェーン駆動部13に向かって移動することで、縮小する。以上のように、軌道32を縮小することで、延長チェーン14を継ぎ足す処理を実行しなくても、延長フレーム24を継ぎ足す処理を実行することができる。
【0036】
図9は、敷設装置の変形例をX方向側から見た側面図である。本変形例の敷設装置1Aは、地盤Gに設けられた既設構造物Sの直近の位置で凍結部材2を地盤Gの中に敷設する。既設構造物Sは、例えば、地盤Gの中に基礎が設けられ、基礎から地盤Gの外に向かって築かれた建築物である。本変形例の敷設装置1Aは、この建築物に沿って凍結部材2を地盤Gの中に敷設することで、建築物の基礎に隣接する凍土壁Iを形成する。
【0037】
本変形例の敷設装置1Aでは、チェーン駆動部13の周囲における掘削用チェーン11の軌道32は、地盤G中における掘削軌道31に比較して既設構造物Sから離間して設けられる。また、チェーン駆動部13は、掘削軌道31に比較して既設構造物Sから離間して設けられる。例えば、掘削軌道31は既設構造物Sに沿って設けられるのに対して、軌道32は既設構造物Sから離間するように掘削軌道31から反って設けられる。掘削用チェーン11が周回する所定の軌道は、図9のようにX方向から見て掘削軌道31と軌道32との間で湾曲する。チェーン駆動部13は、掘削軌道31に対して傾いて設けられる。
【0038】
チェーン駆動部13は電動機ではなくてもよい。チェーン駆動部13は電動機が接続されたギヤボックスであってもよい。例えば、ギヤボックスはかさ歯車を備え、電動機は軌道32から離間して設けられてもよい。この場合、ギヤボックスの掘削用チェーン11に駆動力を伝える回転軸の軸方向は、電動機の回転軸の軸方向と交差する。
【0039】
他の変形例について説明する。掘削用チェーン11は、所定の軌道で周回しなくてもよい。例えば、掘削用チェーン11は、掘削軌道31で往復動することで、地盤Gを掘削してもよい。部材本体は、ペーパードレーン工法におけるドレーン材であってもよい。ドレーン材は、長尺の板状をなす。ドレーン材は、内部に板幅方向に並ぶ複数の流路を有する。複数の流路は、敷設後に地盤中の水分を吸い上げる。この場合、ドレーン材とドレーン材を保持するガイドフレーム22とが対象部材を構成する。この変形例に係るドレーン工法は、ドレーン材を地盤の中に埋め込んで敷設する工程の後に、ドレーン材を介して地盤の水分を排水する工程を備える。
【0040】
[作用効果]
本発明の敷設装置1及び敷設方法によれば、掘削軌道31で走行する掘削用チェーン11によって凍結部材2の周囲の地盤Gを掘削しながら、凍結部材2を地盤Gの中に挿入していく第1工程を実施する。地盤Gを掘削した後に凍結部材2を挿入するときのように、掘削する領域を広くして余裕を持たせる必要が無い。すなわち、本発明の敷設装置1及び敷設方法による地盤Gの掘削範囲は、敷設される凍結部材2よりもやや大きい程度に抑えられる。したがって、この敷設装置1及び敷設方法によれば、狭い場所において凍結部材2を地盤Gの中に敷設することができる。また、凍結部材2の敷設によって発生する掘削土の量を削減することができる。
【0041】
第1工程では、掘削用チェーン11の走行中にガイドフレーム22を地盤Gに向かって押すことで凍結部材2を地盤Gの中に挿入していく処理と、ガイドフレーム22にガイドフレーム22を延長する延長フレーム24を継ぎ足す処理とを実施する。この敷設方法によれば、ガイドフレーム22を押す処理によって、凍結部材2を地盤Gの中に挿入できる。
【0042】
第2工程では、掘削用チェーン11を掘削軌道31に沿って地盤Gの中から地盤Gの外に引き抜いて回収する。この敷設方法によれば、凍結部材2を残置した後に、地盤Gの中から掘削用チェーン11を回収することができる。
【0043】
凍結部材2は、地盤Gへの挿入方向を長手方向(Z方向)とする長尺の板状をなす部材である。掘削用チェーン11の掘削軌道31は、凍結部材2の板幅方向(X方向)の両端の縁部に沿って長手方向(Z方向)に延在する一対の側面部分31aと、凍結部材2の挿入方向(Z方向)の先端の縁部に沿って延在し側面部分31a同士を接続する先端部分31bと、を有する。この敷設方法によれば、長尺の板状をなす凍結部材2を地盤Gの中に敷設することができる。また、複数の流路Fが板幅方向(X方向)に並び長尺の板状をなす部材(凍結管21及びドレーン材)を地盤Gの中に敷設する工法を実施できる。
【0044】
図9の変形例に係る敷設装置1A及び敷設方法によれば、チェーン駆動部13の周囲における掘削用チェーン11の軌道32は、掘削軌道31に比較して既設構造物Sから離間する。この変形例に拠れば、チェーン駆動部13と既設構造物Sとが干渉することを回避できる。
【符号の説明】
【0045】
1…敷設装置、2…凍結部材(対象部材)、11…掘削用チェーン、12…挿入駆動部、13…チェーン駆動部、21…凍結管(部材本体)、22…ガイドフレーム、22a…ガイド部、24…延長フレーム、31…掘削軌道、31a…側面部分、31b…先端部分、32…軌道、G…地盤、S…既設構造物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9