(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】モーアユニット
(51)【国際特許分類】
A01D 34/73 20060101AFI20240105BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A01D34/73 Z
A01D34/64 H
(21)【出願番号】P 2020213820
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高岡 将樹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 純輝
(72)【発明者】
【氏名】三原 明人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】廣津 有記
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03214893(US,A)
【文献】特開2011-205946(JP,A)
【文献】特開2017-018054(JP,A)
【文献】特開2011-254765(JP,A)
【文献】特開平08-294316(JP,A)
【文献】米国特許第05499492(US,A)
【文献】実開平02-131819(JP,U)
【文献】特開2019-216650(JP,A)
【文献】特開2007-300806(JP,A)
【文献】実開平01-156392(JP,U)
【文献】特開2008-274817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/73
A01D 34/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体にリンク機構を介して昇降可能に支持されるモーアユニットであって、
回転軸芯周りに回転駆動されることで地面の草を刈ることが可能なブレードと、
前記ブレードを覆うと共に下面が開放されたハウジングと、
前記ハウジングの外部に設けられた給水部と、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記給水部に供給された洗浄水を放水する放水部と、
前記給水部と前記放水部とに亘って接続される給水管と、が備えられ、
前記放水部は、前記ハウジングの内壁面に放水し、
前記給水部は、前記走行機体の幅方向において、前記リンク機構の横外側に設けられ
、
前記給水部は、前記ハウジングの上方、かつ、前記ハウジングの幅方向の一方側に備えられ、
前記ハウジングの外壁面に、前記ハウジングの幅方向の一方側に設けられた棒状部材からなり、前記給水部を保護する保護部が備えられているモーアユニット。
【請求項2】
前記放水部は、前記内壁面のうち天井面に放水する請求項1に記載のモーアユニット。
【請求項3】
前記放水部は、前記天井面のうち、少なくとも平面視で前記ブレードの回転軌跡に重複する箇所に放水する請求項2に記載のモーアユニット。
【請求項4】
前記ハウジングの内部に、前記ブレードの回転軌跡の外形に沿った円弧形状を有する縦壁部が備えられ、
前記放水部は、前記縦壁部と前記縦壁部に対して前記ブレードが位置する側と反対側に位置する前記ハウジングの側壁との間の空間に位置する箇所に備えられている請求項1から3のいずれか一項に記載のモーアユニット。
【請求項5】
前記給水管は、前記給水部に接続された主給水管と、前記主給水管から分岐して前記放水部に接続される枝給水管とが備えられ、
前記枝給水管は、前記空間に配置されている請求項4に記載のモーアユニット。
【請求項6】
前記主給水管は、前記主給水管と一体に構成され、前記枝給水管が接続される分岐接続部が備えられ、
前記分岐接続部は、分岐点から前記主給水管における水流方向下流側に向かうほど前記主給水管から離れる傾斜状態で備えられている請求項5に記載のモーアユニット。
【請求項7】
前記保護部は、前記給水部の近傍に配置された第一保護部材と第二保護部材が備えられ、
前記第一保護部材と前記第二保護部材とは、平面視において、前記第一保護部材と前記第二保護部材の間に前記給水部が位置するように配置され、
前記第一保護部材及び前記第二保護部材の上端の高さは、前記給水部の上端の高さよりも高い請求項
1から6のいずれか一項に記載のモーアユニット。
【請求項8】
前記放水部は、平面視において、前記ブレードの回転により生じた風の流れ方向に沿う方向に放水するように構成されている請求項1から
7のいずれか一項に記載のモーアユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に縦軸芯周りに回転駆動される複数のブレードを備えたモーアユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモーアユニットでは、給水部に供給された洗浄水をブレードに向けて放水する放水部が備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているモーアユニットでは、ハウジングの内壁を洗浄する場合には、ブレードを回転させながら、ブレードのそれぞれに向けて放水部から放水し、ブレードから跳ね返った水をハウジング内で攪拌することにより、ハウジングの内壁を洗浄していた。つまり、ハウジングの内壁のうち、付着している刈草等の量が多い箇所も少ない箇所も、一律に攪拌された水により洗浄されていた。その結果、付着している刈草等の量が少ない箇所では、付着していた刈草等が十分に落ちたとしても、付着している刈草等の量が多い箇所では、刈草等が残ることがあった。これらの刈草等が落ちるようにするためには、さらに放水を続ける必要があり、効率的に洗浄作業を行うことができないという不都合あった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、効率的に洗浄作業を行うことができるモーアユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモーアユニットは、走行機体にリンク機構を介して昇降可能に支持されるモーアユニットであって、回転軸芯周りに回転駆動されることで地面の草を刈ることが可能なブレードと、前記ブレードを覆うと共に下面が開放されたハウジングと、前記ハウジングの外部に設けられた給水部と、前記ハウジングの内部に設けられ、前記給水部に供給された洗浄水を放水する放水部と、前記給水部と前記放水部とに亘って接続される給水管と、が備えられ、前記放水部は、前記ハウジングの内壁面に放水し、前記給水部は、前記走行機体の幅方向において、前記リンク機構の横外側に設けられ、前記給水部は、前記ハウジングの上方、かつ、前記ハウジングの幅方向の一方側に備えられ、前記ハウジングの外壁面に、前記ハウジングの幅方向の一方側に設けられた棒状部材からなり、前記給水部を保護する保護部が備えられている。
【0007】
この構成によれば、放水部は、ハウジングの内壁面に向けて洗浄水を放水することとなる。放水部が、ハウジングの内壁面に洗浄水を放水することにより、刈草等が付着し易い内壁面、例えば、ハウジング内部の天井壁と側壁との角部分の内壁面等を重点的に洗浄することが可能となる。また、内壁面に向けて放水された洗浄水は、内壁面から跳ね返り、ブレードに衝突し、洗浄水がハウジング内に攪拌される。したがって、ハウジングの内壁面のうち刈草等が付着し易い箇所を重点的に洗浄しつつも、ハウジングの内壁の全体を洗浄することができ、効率的に洗浄作業を行うことができる。
また、この構成によれば、給水部が、ハウジングの幅方向の一方側に設けられているため、ハウジングの幅方向の中心部に設けられている場合と比べ、給水部にアクセスし易く、また、ハウジングの上方に設けられており、また、ハウジングの上方に設けられていることから、さらに、給水部にアクセスし易い。その結果、ホース等を給水部に接続する際、作業者は容易に接続作業を行うことができる。
また、この構成によれば、刈取作業中にハウジングが樹木や岩等に衝突しても、給水部は保護部により保護されるため、給水部が当該衝突等により破損してしまうことを軽減することが可能となる。
【0008】
本発明においては、前記放水部は、前記内壁面のうち天井面に放水すると好適である。
【0009】
この構成によれば、ハウジングの天井面に放水された洗浄水が、ブレード上に滴り落ちたり、ハウジングの側壁部や前後壁部等に洗浄水が流れたりする。その結果、ハウジングの天井面だけでなく、ハウジングの側壁部や前後壁部等やブレードを洗浄することが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記放水部は、前記天井面のうち、少なくとも平面視で前記ブレードの回転軌跡に重複する箇所に放水すると好適である。
【0011】
この構成によれば、天井面に放水された洗浄水が、ブレード上に滴り落ちる。その結果、ブレード上に滴り落ちた洗浄水によってブレードは洗浄されることとなり、さらに、ブレードが回転駆動している場合には、回転駆動しているブレードによって洗浄水が攪拌され、ハウジング内を洗浄することが可能となる。
【0012】
本発明においては、前記ハウジングの内部に、前記ブレードの回転軌跡の外形に沿った円弧形状を有する縦壁部が備えられ、前記放水部は、前記縦壁部と前記縦壁部に対して前記ブレードが位置する側と反対側に位置する前記ハウジングの側壁との間の空間に位置する箇所に備えられていると好適である。
【0013】
この構成によれば、縦壁部と後壁部との間の空間に、放水部が備えられているため、放水部に、刈草等が付着してしまうことを軽減し、また、回転駆動するブレードにより飛ばされた小石等が放水部に衝突し、放水部が破損してしまうことを軽減することが可能となる。
【0014】
本発明においては、前記給水管は、前記給水管に接続された主給水管と、前記主給水管から分岐して前記放水部に接続される枝給水管とが備えられ、前記枝給水管は、前記空間に配置されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、主給水管から複数の枝給水管が接続される構成とすることができ、一つの給水部から複数の放水部へ洗浄水を供給することが可能となる。また、枝給水管は、縦壁部と後壁部との間の空間に配置されることとなるため、回転駆動するブレードにより飛ばされた小石等が枝給水管に衝突し、枝給水管が破損してしまうことを軽減することが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記主給水管は、前記主給水管と一体に構成され、前記枝給水管が接続される分岐接続部が備えられ、前記分岐接続部は、分岐点から前記主給水管における水流方向下流側に向かうほど前記主給水管から離れる傾斜状態で備えられていると好適である。
【0017】
この構成によれば、給水部から供給された洗浄水は、主給水管を通過し、主給水管から分岐接続部を介して、枝給水管へ供給される。ここで、分岐接続部は、水流方向下流側に傾斜する傾斜状態で備えられているため、洗浄水が主給水管から分岐接続部へスムーズに流入することができる。その結果、分岐点で洗浄水の流水の勢いが軽減してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
本発明においては、前記保護部は、前記給水部の近傍に配置された第一保護部材と第二保護部材が備えられ、前記第一保護部材と前記第二保護部材とは、平面視において、前記第一保護部材と前記第二保護部材の間に前記給水部が位置するように配置され、前記第一保護部材及び前記第二保護部材の上端の高さは、前記給水部の上端の高さよりも高いと好適である。
【0023】
この構成によれば、給水部は、第一保護部材と第二保護部材との2つの保護部材で保護されるという簡易な構成で保護される。また、給水部は、第一保護部材と第二保護部材との間に位置し、第一保護部材及び第二保護部材の上端の高さは、給水部の上端の高さよりも高いため、作業者がハウジングを上から踏みつけてしまった場合にも、給水部は保護されることとなる。
【0024】
本発明においては、前記放水部は、平面視において、前記ブレードの回転により生じた風の流れ方向に沿う方向に放水するように構成されていると好適である。
【0025】
この構成によれば、放水部から放水された洗浄水は、ブレードの回転により生じた風によって勢いが増す。勢いが増した状態の洗浄水によってハウジング内をより好適に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図7】別実施形態のモーアユニットの構成を示す下面図である。
【
図8】別実施形態のモーアユニットの構成を示す下面図である。
【
図9】別実施形態の乗用型草刈機の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るモーアユニットは、本実施形態では、ゼロターンモーアと称される乗用型草刈機に装備された場合について、図面に基づいて説明する。この実施形態で、機体の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義し、機体の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、
図1等に符号(F)で示す方向が機体前側、
図1等に符号(B)で示す方向が機体後側である。
図2等に符号(L)で示す方向が機体左側、
図2等に符号(R)で示す方向が機体右側である。
【0028】
〔全体構成について〕
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、モーアユニット20は、左右の前輪1と左右の後輪2とを有した走行機体において、この走行機体の車体フレーム3の前輪1と後輪2との間で運転部床16の下側にリンク機構4を介して装着されたサイドディスチャージモーアである。
【0029】
走行機体は、左右の前輪1と左右一対の後輪2とが備えられている他、車体後部に設けたエンジン5を有した原動部と、運転座席6及び左右一対の操縦レバー7を有した運転部と、運転座席6の後側近くに位置した転倒保護枠8と、左右の後輪2を支持する伝動装置9と、伝動装置9の前部に位置する動力取り出し軸10の駆動力をモーアユニット20のブレード駆動機構30に伝達する回転軸11とが備えられている。
【0030】
左右の前輪1は、車体フレーム3の前部に連結された前輪支持フレーム12の端部に前輪支持フォーク13を介して縦軸芯周りに揺動可能に支持されている。左右の前輪1は、前輪支持フォーク13と共に前輪支持フレーム12に対して自由に揺動する。左右の後輪2は、伝動装置9が備える一対の静油圧式無段変速装置(図示せず)によって各別に駆動され、左右一対の操縦レバー7による一対の静油圧式無段変速装置の各別な変速操作によって各別に前進側及び後進側に変速され、かつ停止操作される。
【0031】
リンク機構4は、リンク機構4に接続された駆動アーム19に単動型の昇降シリンダ14が連結され、圧油供給によって昇降シリンダ14が伸長作動することでリンク機構4が車体フレーム3に対して上昇駆動され、排油によって昇降シリンダ14が短縮作動することでリンク機構4が車体フレーム3に対して自重下降するように構成されている。
【0032】
即ち、昇降シリンダ14を短縮及び伸長作動させることによって、モーアユニット20を下降させて、モーアユニット20の後方に設けられた左右のゲージ輪25を地面に略接地させて刈取作業を実施する作業姿勢と、モーアユニット20を上昇させてゲージ輪25を地面から上昇させて刈取作業を実施しない非作業姿勢とに切換えることができる。
【0033】
モーアユニット20を作業姿勢にして走行機体を走行させると、モーアユニット20は、ハウジング21の内部に位置する3枚のブレード22L,22C,22Rによって草や芝の刈り処理を行い、刈草を各ブレード22L,22C,22Rの回転によって発生した風によってハウジング21の内部をハウジング21の右端に位置する排出口23に搬送して、走行機体横外側に放出する。
【0034】
〔モーアの構成について〕
図3及び
図4に示すように、モーアユニット20は、ハウジング21と、3枚のブレード22R,22C,22Lと、ゲージ輪25とを備える他、ハウジング21の内部後側に各ブレード22R,22C,22L回転軌跡の外形に沿った円弧形状を有する縦壁部50と、ハウジング21の右端に形成された排出口23と、ハウジング21の前方に接地ローラ36と、ハウジング21の後方に一対の接地ローラ37と、が備えられている。
【0035】
図3に示すように、モーアユニット20の後方に設けられた左右のゲージ輪25のうち、左側のゲージ輪25は、ハウジング21の左側後方に配置されている。平面視で略L字型の支持部材25aに支持されている。右側のゲージ輪25は、ハウジング21の右側後方に配置されている。
【0036】
接地ローラ36は、ハウジング21の幅方向で中央部の前方に配置されている。一対の接地ローラ37は、ハウジング21の幅方向で中央部の後方に、ハウジング21の幅方向に並べて配置されている。
【0037】
図3及び
図4に示すように、ハウジング21は、天井壁21aと側壁とで構成され、ブレード22R,22C,22Lを覆うと共に下面が開放された構成となっている。側壁は、天井壁21aの前縁部からハウジング21の下方向きに延出した前側壁21bと、天井壁21aの後縁部からハウジング21の下向きに延出した後側壁21cと、天井壁21aの横端部からハウジング21の下向きに延出した横側壁21dとによって構成されている
【0038】
排出口23は、天井壁21aの右端と前側壁21bの右端と縦壁部50の右端とによって形成されている。
【0039】
後側壁21cは、縦壁部50の右及び左側の円弧部分50R,50Lのそれぞれの後端に亘った状態で円弧部分50R,50C,50Lの後方に設けられている。尚、円弧部分50Cの後端は、後側壁21cの前方に位置する。
【0040】
3枚のブレード22R,22C,22Lは、ハウジング21の内部に幅方向に並列配置されている。尚、3枚のブレード22R,22C,22Lのうち、ハウジング21の幅方向での中央に位置するブレード22Cが、少し前方に偏位するように平面視で三角配置される。ブレード22Lは、排出口23から最も離れて存在し、且つ、刈草流動方向での最上手に位置する。ブレード22Rは、排出口23の最も近くに位置し、且つ刈草流動方向での最下手に位置する。
【0041】
ブレード22R,22C,22Lのそれぞれは、ハウジング21の天井壁21aにベアリング支持ケースで成る図示しない支持部材を介して回転可能に支持された駆動軸27L,27C,27Rの下端部に回転可能に支持されている。これにより、ブレード22R,22C,22Lのそれぞれは、駆動軸27L,27C,27Rのハウジング21上下方向の回転軸芯XR,XC,XL周りに駆動軸27L,27C,27Rと共に回転駆動する。
尚、ブレード22R,22C,22Lのそれぞれは、その両端部に設けた切断刃28と、各切断刃28の背後側に設けた起風羽根29とを備えている。
【0042】
縦壁部50は、ブレード22R,22C,22Lの回転軸芯XR,XC,XLのそれぞれと同心の円弧部分50R,50C,50Lを、ブレード22R,22C,22Lの回転軌跡TR,TC,TLに沿うように並設配置した形状を有しており、その左右中央に3つの円弧部分50R,50C,50Lによって形成される凹部を有する。縦壁部50と後側壁21cとの間の空間Sを覆うように、蓋体60が縦壁部50の下端から、前方に延びて設けられている。
【0043】
エンジン5(
図1参照)からの駆動力は、回転軸11によってブレード駆動機構30に伝達される。ブレード駆動機構30に伝達された駆動力は、ブレード22Cの駆動軸27Cを駆動すると共に、3つの駆動軸27L,27C,27Rにわたって巻き掛けられているベルト31を介して、ブレード22R,22Lのそれぞれの駆動軸27R,27Lを駆動する。これにより、各ブレード22R,22C,22Lは、
図4の矢印に示すようにそれぞれの回転軸芯XL,XC,XR周りに回転駆動する。
【0044】
各ブレード22R,22C,22Lによって切断処理された刈草は、各ブレード22R,22C,22Lの起風羽根29によって発生した風により、ハウジング21の内部を排出口23の位置する横一端側に搬送されて、排出口23からハウジング21の横外側に放出される。
【0045】
〔洗浄装置の構成について〕
図3及び
図4に示すように、洗浄装置52は、洗浄水を供給するための単一の給水部53と、ハウジング21の天井壁21aの内壁面(本発明の「天井面」に相当)に洗浄水を放水する3つの放水部54と、放水部54と給水部53とに亘って接続される給水管55とを備えて構成されている。
【0046】
図3に示すように、給水部53は、給水管55に支持されている。給水部53は、ハウジング21の上方、且つ、ハウジング21の幅方向で左側の位置に配置される。
【0047】
ハウジング21の外壁面に、給水部53を保護する保護部40が備えられている。本実施形態では、保護部40は、幅方向で給水部53の左方に設けられている第一保護部材40aと、幅方向で給水部53の右方に設けられている第二保護部材40bとから構成されている。つまり、平面視において、第一保護部材40aと第二保護部材40bの間に給水部53が位置するように配置されている。
【0048】
第一保護部材40aと第二保護部材40bとは、それぞれ、棒状部材からなり、ハウジング21の天井壁21aのうち、側面視で給水部53よりも前側部分から左側の支持部材25aに亘ったブリッジ状に設けられている。第一保護部材40aと第二保護部材40bとは、第一保護部材40a及び第二保護部材40bの上端の高さが、給水部53の上端の高さよりも高くなるように形成されている。
【0049】
図3及び
図4に示すように、給水管55は、給水部53に接続される主給水管56と、主給水管56から分岐して放水部54のそれぞれに接続される3つの枝給水管57とを備えて構成されている。
【0050】
図3及び
図6に示すように、主給水管56は、給水部53から後ろ下方に延びて、ハウジング21の天井壁21a付近の第1屈曲部56aで屈曲する。さらに、主給水管56は、第1屈曲部56aから後側壁21cの後方まで延びて第2屈曲部56bで屈曲し、後側壁21cの後方を水平方向に延びている。
【0051】
給水管55は、主給水管56の水流方向下流側端部にステー62aと、主給水管56のうち第2屈曲部56bとステー62aとの間に位置する箇所にステー62bが設けられている。ステー62a,62bには、ボルト孔(図示せず)が形成され、このボルト孔と後側壁21cのうちボルト孔に対応する箇所に形成されている締結孔(図示せず)とがボルト63によって締結されることにより、給水管55が後側壁21cに支持されている。
【0052】
図4に示すように、主給水管56は、主給水管56から分岐して枝給水管57とのそれぞれが接続される3つの分岐接続部56cを備えている。分岐接続部56cは、主給水管56と一体に構成されており、主給水管56との分岐点から主給水管56における水流方向下流側に向かうほど主給水管56から離れる傾斜状態で備えられている。
【0053】
枝給水管57は、ゴムホースやビニールホース等の可撓性を有する接続管からなり、主給水管56に設けられた複数の分岐接続部56cの各先端部分と放水部54とに亘って接続されている。枝給水管57は、縦壁部50と縦壁部50に対してブレード22R,22C,22Lが位置する側と反対側に位置する後側壁21cとの間の空間Sに位置する箇所に備えられている。
【0054】
図5は放水部54の取り付け部分を示しており、放水部54のそれぞれは、円弧部分50R,50C,50Lのそれぞれに形成された貫通孔65に内嵌した状態で、縦壁部50と縦壁部50に対してブレード22R,22C,22Lが位置する側と反対側に位置する後側壁21cとの間の空間Sに位置する箇所に備えられている。
【0055】
図4及び
図5に示すように、放水部54は、支持部材61によりハウジング21に支持されている。支持部材61は、天井壁21aと縦壁部50とに当接するL字型の当接部材61aと当接部材61aから垂直に延びる垂直部材61bとを有する。当接部材61aは、当接部材61aのうち天井壁21aに当接している部分から下方に延びている。放水部54は、当接部材61aのうち縦壁部50に対向している部分に形成されている貫通孔61dに内嵌した状態で、垂直部材61bの下端部に支持されている。
【0056】
当接部材61aのうち天井壁21aに当接している部分には、長孔61cが形成されている。放水部54は、長孔61cと天井壁21aに形成された締結孔(図示せず)とを挿通するボルト58及びナット59により締結固定される。この構成により、放水部54は、長孔61cの孔の範囲内にて姿勢調整可能に構成されている。
【0057】
放水部54のそれぞれは、放水口に向かうほど天井壁21aに近づくように傾斜に支持されており、天井壁21aのうち、少なくとも平面視でブレード22R,22C,22Lの回転軌跡TR,TC,TL(
図4参照)に重複する箇所に洗浄水を放水する。
【0058】
図4に示すように、例えば、水道栓から図示しないホースを給水部53に接続して給水部53に供給された洗浄水は、給水管55とを通って放水部54に供給されて、ハウジング21の天井壁21aの内壁面に対して横方向から天井壁21aに向けて放水される。尚、ブレード22R,22C,22Lを回転させながら、洗浄水を放水した場合、天井壁21aから洗浄水がブレード22R,22C,22Lへ滴り落ち、各駆動軸27R,27C,27Lの周りに絡み付いている刈草やハウジング21の内面に付着した刈草などを効率良く除去することができる。
【0059】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。以下の別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してよい。なお、本発明の範囲は、各実施形態の内容に限定されるものではない。
【0060】
(1)上記実施形態では、放水部54は、ハウジング21の天井壁21aの内壁面に洗浄水を放水する構成を例に説明したが、ハウジング21の内壁面であればよく、例えば、前側壁21bの内壁面や、天井壁21aの内壁面と前側壁21bの内壁面との境となる角部に放水するように構成されていてもよい。また、放水部54は、縦壁部50に洗浄水を放水するように構成されていてもよい。
【0061】
(2)上記実施形態では、ハウジング21の内部後側に縦壁部50が備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、縦壁部50は、ハウジング21の内部後側に備えられていてもよい。この場合、放水部54や枝給水管57は、縦壁部50とハウジング21の前側壁21bとの間の空間に位置する箇所に配置されていてもよい。また、ハウジング21は、縦壁部50を備えない構成としてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、洗浄装置52は、給水部53と給水管55と、放水部54とを備える構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、
図7に示すように、洗浄装置52は、複数の放水部54にそれぞれ給水部53を備える構成としてもよい。また、
図7に示すように、放水部54は、平面視において、ブレード22R,22C,22Lの回転により生じた風の流れ方向Wに沿う方向に放水するように構成されていてもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、主給水管56に枝給水管57を介して複数の放水部54が設けられている構成を例に説明したが、
図8に示すように、主給水管56に直接多数の放水部54が備えられるように構成されていてもよい。このとき、複数の給水部53を備える構成としてもよい。
【0064】
(5)上記実施形態では、給水部53は、ハウジング21の上方、且つハウジング21の幅方向で左側の位置に配置されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、給水部53は、ハウジング21の幅方向で左側又は中央側に配置されていてもよく、また、ハウジング21の横外側に配置されていてもよい。
【0065】
(6)上記実施形態では、保護部40は、第一保護部材40aと第二保護部材40bとを備える構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、保護部40は、上部が開放されている円筒型の一つの部材から構成されていてもよく、円筒の中心部分に給水部53が配置されるように構成されていてもよい。また、保護部40を備えない構成としてもよい。また、給水部53を複数備える構成をしてもよく、このとき、それぞれの給水部53に保護部40が備えられる構成としてもよい。
【0066】
(7)上記実施形態では、ブレードが3つ備えられている構成を例に説明したが、2つ以下、又は、4つ以上のブレードが備えられている構成としてもよい。また、このとき、放水部の数、分岐接続部56cの数及び枝給水管57の数は、ブレードの数と異なる構成としてもよい。
【0067】
(8)上記実施形態では、放水部54のそれぞれは、放水口に向かうほど天井壁21aに近づくように傾斜に支持されることで天井壁21aに向けて洗浄水が放水される構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、放水部54は、天井壁21aの壁面と平行となるように設けられたうえで、放水部54の放水口が斜め上方向に開口するように形成されることによって、天井壁21aに向けて洗浄水が放水される構成としてもよい。
【0068】
(9)上記実施形態では、乗用草刈り機としてゼロターンモーアに、本発明に係るモーアユニット20が搭載された構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、
図9に示すように、トラクタ100に、本発明に係るモーアユニット20が搭載された構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、モーアがサイドディスチャージ仕様に構成されたものに限らず、マルチング仕様に構成されたものや、リアディスチャージ仕様に構成されたものなどにも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
20 :モーアユニット
21 :ハウジング
22L,22C,22R :ブレード
40 :保護部
40a :第一保護部材
40b :第二保護部材
50 :縦壁部
53 :給水部
54 :放水部
55 :給水管
56 :主給水管
57 :枝給水管
56c :分岐接続部
S :空間
TC,TL,TR :回転軌跡
XL,XC,XR :回転軸芯