IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ パスツ−ル リミテッドの特許一覧

特許7413271固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法
<>
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図1
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図2
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図3
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図4
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図5
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図6
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図7
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図8
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図9
  • 特許-固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】固有蛍光を使用して、アジュバント化タンパク質濃度及びパーセント吸着を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240105BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/05
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020551410
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2019052232
(87)【国際公開番号】W WO2019180618
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】62/645,367
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500096994
【氏名又は名称】サノフィ パスツ-ル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アウサル サルバドール フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ロケ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ストラレンドルフ キルステン エイプリル
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン ナシーン
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0330840(US,A1)
【文献】特開2007-171213(JP,A)
【文献】特開2016-220573(JP,A)
【文献】特開2017-207495(JP,A)
【文献】特開2011-058914(JP,A)
【文献】特開2017-067696(JP,A)
【文献】特表2010-535015(JP,A)
【文献】特表2010-534837(JP,A)
【文献】特表2009-537846(JP,A)
【文献】国際公開第2005/106454(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 ー G01N 21/83
G01N 33/48 ー G01N 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された化合物の濃度を、前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法であって、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物について固有蛍光強度値を得ることであって、前記選択された化合物は少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含み、前記組成物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記組成物についての前記固有蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定されることと、
(b)(a)にて得られた前記固有蛍光強度値を、前記選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料の固有蛍光強度値を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、前記選択された化合物の濃度を前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定することと、
を含み、固有蛍光強度値を得ることは、フローセルに取り付けられた蛍光強度値決定手段による、方法。
【請求項2】
(b)の較正曲線は、前記代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成され、前記較正試料内の前記代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)の較正曲線は、前記代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも5つの較正試料を使用して作成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(b)の較正曲線は、
(a)前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む前記組成物内で前記選択された化合物の疑わしい濃度の約50%、75%、100%、125%、及び150%を示す濃度を有する前記代表的化合物の少なくとも5つの較正試料を調製すること、
(b)(a)の各較正試料を、250nmから300nmの間の波長を使用して励起すること、
(c)(b)の各試料の放出スペクトルを、各較正試料について最大蛍光強度を生成する300nmから500nmの間の波長を使用して決定すること、
(d)前記最大蛍光強度を生成した(c)の前記波長における固有蛍光強度値を、前記較正試料内の前記代表的化合物の濃度に対してプロットすることであって、それにより、前記代表的化合物の較正曲線を作成すること、
によって作成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記選択された化合物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は多糖タンパク質複合体からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記代表的化合物は前記選択された化合物と同一である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記代表的化合物は前記選択された化合物に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記代表的化合物は前記代表的化合物のアジュバント化複合体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物は280nmから290nmの間の波長で励起され、前記放出スペクトルは320nmから360nmの間の波長で決定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
選択された化合物のパーセント(%)吸着を、前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法であって、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物の2つの試験試料を得ることであって、前記選択された化合物は少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含み、第1の試験試料内で前記アジュバント化複合体は実質的に溶液内にあり、第2の試験試料内で前記アジュバント化複合体は実質的に溶液から分離して沈殿することと、
(b)(i)前記第1の試験試料について固有蛍光強度値を得ることであって、前記第1の試験試料は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記第1の試験試料についての前記固有蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定されること、及び、(ii)前記固有蛍光強度値を、前記選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、前記第1の試験試料内で前記選択された化合物の濃度を決定することによって、前記第1の試験試料内で前記選択された化合物の濃度を決定することと、
(c)(i)前記第2の試験試料の上澄みについて固有蛍光強度値を得ることであって、前記第2の試験試料の前記上澄みは250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記第2の試験試料の上澄みについての前記固有蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定されること、及び、(ii)前記固有蛍光強度値を、前記選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、前記第2の試験試料内で前記選択された化合物の濃度を決定することによって、前記第2の試験試料の上澄み内で前記選択された化合物の濃度を決定することと、
(d)(c)にて決定された濃度を(b)にて決定された濃度で割ることによってパーセント(%)吸着を計算することであって、それにより、選択された化合物のパーセント(%)吸着を、前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する、計算することと、
を含み、固有蛍光強度値を得ることは、フローセルに取り付けられた蛍光強度値決定手段による、方法。
【請求項11】
(b)及び/又は(c)の較正曲線は、前記代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成され、前記較正試料内の前記代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(b)及び/又は(c)の較正曲線は、前記代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも5つの較正試料を使用して作成される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
(b)及び/又は(c)の較正曲線は、
(a)前記第2の試験試料内で実質的に溶液から分離して沈殿した前記アジュバント化複合体の疑わしい濃度の約50%、75%、100%、125%、及び150%を示す濃度を有する前記代表的化合物の少なくとも5つの較正試料を調製すること、
(b)(a)の各較正試料を、250nmから300nmの間の波長を使用して励起すること、
(c)(b)の各試料の放出スペクトルを、各較正試料について最大蛍光強度を生成する300nmから500nmの間の波長を使用して決定すること、
(d)前記最大蛍光強度を生成した(c)の前記波長における固有蛍光強度値を、前記較正試料内の前記代表的化合物の濃度に対してプロットすることであって、それにより、前記代表的化合物の較正曲線を作成すること、
によって作成される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(b)及び(c)の較正曲線は同じ較正曲線である、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記選択された化合物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は多糖タンパク質複合体からなる群から選択される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記代表的化合物は前記選択された化合物と同一である、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記代表的化合物は前記選択された化合物に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記代表的化合物は前記代表的化合物のアジュバント化複合体である、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の試験試料及び前記第2の試験試料の上澄みは280nmから290nmの間の波長で励起され、前記放出スペクトルは320nmから360nmの間の波長で決定される、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
インラインで実施される、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項21】
前記選択された化合物は、アルミニウム塩、乳剤、ペプチド、核酸、及びその組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアジュバントによってアジュバント化される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記アルミニウム塩はAlOOH及びAlPOの1つ以上である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記芳香族アミノ酸は、トリプトファン、チロシン、及びフェニルアラニンからなる群から選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記選択された化合物の固有蛍光は、付加された蛍光プローブ又はマーカーの非存在下で決定される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記選択された化合物は、約320nmから360nmの間の最大放出を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物を製造する方法であって、選択された化合物の濃度を、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法を使用して、前記選択された化合物のアジュバント化複合体のバッチにて決定することを含み、前記選択された化合物の前記アジュバント化複合体の前記バッチを組み込んだ組成物を製剤化することは、前記決定の結果に基づいて進められる、方法。
【請求項27】
ワクチン製剤内のタンパク質の濃度を測定するシステムであって、
前記ワクチン製剤がそこを通って流れることができる導管と、
前記導管に結合され、前記導管内の前記ワクチン製剤内の前記タンパク質の固有蛍光強度値を示す信号を出すことが可能な蛍光強度センサーであって、蛍光強度値決定手段である、蛍光強度センサーと、
前記センサーに結合され、前記センサーからの信号を受信し、プログラムを記憶する非一時的メモリを含むコンピューターと、
を備え、前記プログラムは、前記導管内の前記ワクチン製剤内の前記タンパク質の固有蛍光強度値を示す前記信号を、前記コンピューターにおいて前もって作成され記憶された較正曲線と比較し、前記信号と前記較正曲線の比較から、前記ワクチン製剤内の前記タンパク質の濃度の出力を提供し、前記較正曲線は代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料の固有蛍光強度値を使用して作成される、システム。
【請求項28】
前記導管は、内部にタンパク質を有する前記ワクチン製剤の供給部と前記センサーの下流に位置する前記ワクチン製剤の貯蔵コンテナーとの間に延在する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
ポンプは、前記センサーの上流の導管内にある、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記導管は前記ワクチン製剤の貯蔵コンテナーの入口と出口との間に延在し、前記センサーは前記入口と前記出口との間にある、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
ポンプは、前記センサーの下流の前記導管内にある、請求項30に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ワクチン製剤内の抗原の濃度は、製造プロセス及び製品品質における一貫性を確保するために制御される必要がある重要なパラメーターである。そのような製剤の生産中に抗原の濃度をモニターすることは、製剤正確度(formulation accuracy)を制御すること、プロセス関連損失を推定すること、製品同質性をモニターすること、及び所与のアジュバントに対する抗原の適切な吸着を確保すること等の幾つかの理由からも重要である[1,2]。
【0002】
通常、タンパク質ベースワクチン製剤は、懸濁液又は乳剤として生産されるが、これはアルミニウム塩(すなわち、AlOOH、AlPO等)又はスクアレン乳剤(すなわち、スクアレンAS03、MF59等)等のアジュバントの含有の結果である。アジュバントは、しばしばワクチン製剤の重要な成分である[3~5]が、アジュバントの存在は、例えば、アジュバント粒子によって導入される濁度によって、一般に使用されるタンパク質定量法に対する著しい干渉を生じる可能性がある。アルミニウム塩を含むワクチン製剤内に存在する抗原を分析するための多くの方法が公開されているが、そのような方法は、製剤の濁度のために試験の前に抗原脱離を必要とする[6~8]。文献に記載される脱離プロシージャは、むしろ複雑でかつ時間がかかり、変動性のある回復及び問題のある再現性を伴う[9,10]。フローサイトメトリー[11]、化学発光窒素検出(chemiluminescent nitrogen detection)[12]、マイクロケルダール(micro-Kjeldalh)[13]、及びオルトフタルアルデヒドアッセイ(o-phthalaldehyde assay)[9]等の、アジュバント化ワクチン内の抗原の定量について報告された他の方法は懸濁液に直接適用することができる。それでも、これらの方法は、大抵は破壊的であり、また特定の抗体又は特別な試薬を必要とし、したがって、これらの方法は、高速ターンアラウンド又はインラインプロセスモニタリングに適さない。現在のところ、アジュバント化ワクチン製剤のパーセント吸着をインラインで測定する方法も存在しない。
【0003】
ワクチン製剤内のアジュバント化抗原の濃度を正確にかつ再現性よく決定するための新しい非破壊法が必要とされることが明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アジュバント化抗原を含むワクチン製剤内の抗原の濃度を正確にかつ再現性よく決定することに関連する問題を克服するために設計された新規な方法に関する。本明細書で述べる方法は、評価中のワクチン製剤内のアジュバント化抗原の試料における濁度の干渉等の問題を克服する。本明細書で述べる方法は、抗原がアジュバントによって製剤化される場合に、タンパク質の固有蛍光(IF:intrinsic fluorescence)を測定し、定量することができるという、本発明者らによる発見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で報告されるように、或る特定の芳香族アミノ酸を含むタンパク質の固有蛍光は、アジュバントからのタンパク質の脱離についての必要性なしで、ほとんどの混合物、更にはアルミニウム塩アジュバントを含む混合物中のタンパク質濃度を測定するために使用することができる。この発見は、固有蛍光を使用した、選択された化合物の製剤の正確な測定に拡張されており、製剤は、選択された化合物のアジュバント化複合体を含み、選択された化合物は、少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含む。
【0006】
本発明は、幾つかの実施の形態及びその特定の態様を含むが、それに限定されないものとして、以下の節において簡潔に要約される。
【0007】
したがって、第1の実施の形態において、本発明は、選択された化合物の濃度を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法に関する。この実施の形態において、方法は、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物について蛍光強度値を得ることであって、選択された化合物は少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含み、組成物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、組成物についての蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定されることと、
(b)(a)にて得られた蛍光強度値を、選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料の蛍光強度値を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、選択された化合物の濃度を選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定することと、
を含む。
【0008】
この実施の形態の或る特定の態様において、(b)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成され、較正試料内の代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される。
【0009】
この実施の形態の或る特定の態様において、(b)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも5つの較正試料を使用して作成される。
【0010】
この実施の形態の或る特定の態様において、(b)の較正曲線は、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含むの組成物内で選択された化合物の疑わしい濃度の約50%、75%、100%、125%、及び150%を示す濃度を有する代表的化合物の少なくとも5つの較正試料を調製すること、
(b)(a)の各較正試料を、250nmから300nmの間の波長を使用して励起すること、
(c)(b)の各試料の放出スペクトルを、各較正試料について最大蛍光強度を生成する300nmから500nmの間の波長を使用して決定すること、
(d)最大蛍光強度を生成した(c)の波長における蛍光強度の値を、較正試料内の代表的化合物の濃度に対してプロットすることであって、それにより、代表的化合物の較正曲線を作成する、プロットすること、
によって作成される。
【0011】
この実施の形態の或る特定の態様において、種々の方法は280nmから290nmの間の励起波長を使用して実施され、放出スペクトルは320nmから360nmの間の波長で決定される。
【0012】
第2の実施の形態において、本発明は、選択された化合物のパーセント(%)吸着を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法に関する。この実施の形態において、方法は、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物の2つの試験試料を得ることであって、選択された化合物は少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含み、第1の試験試料内でアジュバント化複合体は実質的に溶液内にあり、第2の試験試料内でアジュバント化複合体は実質的に溶液から分離して沈殿することと、
(b)(i)第1の試験試料について蛍光強度値を得ることであって、第1の試験試料は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、第1の試験試料についての蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定される、得ること、及び、(ii)蛍光強度値を、選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、第1の試験試料内で選択された化合物の濃度を決定する、比較することによって、第1の試験試料内で選択された化合物の濃度を決定することと、
(c)(i)第2の試験試料の上澄みについて蛍光強度値を得ることであって、第2の試験試料の上澄みは250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、第2の試験試料の上澄みについての蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定される、得ること、及び、(ii)蛍光強度値を、選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、第2の試験試料内で選択された化合物の濃度を決定する、比較することによって、第2の試験試料の上澄み内で選択された化合物の濃度を決定することと、
(d)(c)にて決定された濃度を(b)にて決定された濃度で割ることによってパーセント(%)吸着を計算することであって、それにより、選択された化合物のパーセント(%)吸着を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定することと、
を含む。
【0013】
この実施の形態の或る特定の態様において、(b)及び/又は(c)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成され、較正試料内の代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される。
【0014】
この実施の形態の或る特定の態様において、(b)及び/又は(c)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも5つの較正試料を使用して作成される。
【0015】
この実施の形態の或る特定の態様において、(b)及び/又は(c)の較正曲線は、
(a)第2の試験試料内で実質的に溶液から分離して沈殿したアジュバント化複合体の疑わしい濃度の約50%、75%、100%、125%、及び150%を示す濃度を有する代表的化合物の少なくとも5つの較正試料を調製すること、
(b)(a)の各較正試料を、250nmから300nmの間の波長を使用して励起すること、
(c)(b)の各試料の放出スペクトルを、各較正試料について最大蛍光強度を生成する300nmから500nmの間の波長を使用して決定すること、
(d)最大蛍光強度を生成した(c)の波長における蛍光強度の値を、較正試料内の代表的化合物の濃度に対してプロットすることであって、それにより、代表的化合物の較正曲線を作成する、プロットすること、
によって作成される。
【0016】
この実施の形態の或る特定の態様において、種々の方法は280nmから290nmの間の励起波長を使用して実施され、放出スペクトルは320nmから360nmの間の波長で決定される。
【0017】
この実施の形態の或る特定の態様において、(b)及び(c)の較正曲線は同じ較正曲線である。
【0018】
第3の実施の形態において、本発明は、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物を製造する方法に関する。この実施の形態において、方法は、選択された化合物の濃度を、本出願において規定される方法(例えば、上記で要約され、以下で詳細に述べられる第1の実施の形態の方法)を使用して、選択された化合物のアジュバント化複合体のバッチにて決定するステップを含み、選択された化合物のアジュバント化複合体のバッチを組み込んだ組成物を製剤化することは、決定の結果に基づいて進められる。
【0019】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、選択された化合物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖タンパク質複合体(polysaccharide-protein conjugate)、ウィルス様粒子(virus-like particle)、又はウィルス懸濁液とすることができるが、それに限定されない。1つの態様において、選択された化合物はタンパク質である。
【0020】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、芳香族アミノ酸は、トリプトファン、チロシン、及びフェニルアラニンの1つ以上とすることができるが、それに限定されない。
【0021】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、選択された化合物は、限定はしないが、アルミニウム塩、乳剤、ペプチド、核酸、及び上記化合物の組み合わせから選択される1つ以上のアジュバントによってアジュバント化される。1つの態様において、アジュバントはAlOOH及びAlPO等のアルミニウム塩である。
【0022】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、アジュバントは、280nmから290nmの間の波長範囲内の光で励起されると、290nm~450nmの範囲内で20%未満の蛍光を示す。
【0023】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、選択された化合物の固有蛍光が決定される。1つの態様において、選択された化合物の固有蛍光は、付加された蛍光プローブ又はマーカーの非存在下で決定される。別の態様において、蛍光強度値は、選択された化合物に結合した蛍光プローブを介して得られる。
【0024】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、選択された化合物は、約320nmから360nmの間の最大放出を有する。
【0025】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、代表的化合物は、選択された化合物と同一である又は選択された化合物と異なるものとすることができる。例えば、代表的化合物は、ペプチド又はタンパク質であるとき、選択された化合物に対して少なくとも90%の配列同一性を有することができる。
【0026】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、代表的化合物は代表的化合物のアジュバント化複合体である。アジュバントは、選択された化合物のアジュバント化複合体の生産において使用されるものと同じアジュバント又は異なるアジュバントとすることができる。
【0027】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、蛍光強度値は、光度計を介して、フローセルに取り付けられた蛍光プローブによって得られる。
【0028】
本発明の関連する実施の形態及び態様において、方法は、インライン、オンライン、又はオフラインで実施される。
【0029】
本発明の第4、第5、及び第6の実施の形態は、本発明の第1、第2、及び第3の実施の形態の方法を実施するために実装することができるシステムに関する。
【0030】
これらの実施の形態の或る特定の態様において、システムは、プログラムを記憶する非一時的メモリを有するコンピューターを含み、プログラムは、実行されると、本発明の方法の一部の又は全ての特徴を実施する。
【0031】
これらの実施の形態の或る特定の態様において、非一時的メモリは、半導体メモリ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタルビデオディスク(DVD)、ブルーレイディスク、又は他の電子若しくは光メモリデバイス等のコンピューター可読媒体とすることができる。さらに、プログラムは、本発明の方法の一部の又は全ての特徴を実施するようにコンピューターに指令するための、実行可能命令又は1つ以上のアルゴリズムを含むコンピュータープログラムである。
【0032】
これらの実施の形態の或る特定の態様において、コンピューターは、本発明の方法の一部の又は全ての特徴を実施するために実装される、汎用プロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、専用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、再構成可能プロセッサ、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は大規模集積回路(LSI)として実装することができるコントローラーを含む。
【0033】
これらの実施の形態の或る特定の態様において、システムは、選択された化合物の濃度を、選択された化合物のアジュバント化複合体(adjuvanted complex)を含む組成物にて決定し、選択された化合物のパーセント(%)吸着を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する。
【0034】
これらの実施の形態の或る特定の態様において、システムは、(i)搬送手段と、(ii)蛍光強度値決定手段とを含む。
【0035】
これらの実施の形態の或る特定の態様において、搬送手段、例えば、チューブは、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物又は試験試料を蛍光強度値決定手段に搬送する。さらに、蛍光強度値決定手段は、組成物の蛍光強度値を決定する。幾つかの態様において、蛍光強度値決定手段は、フローセルに取り付けられた蛍光プローブであり、フローセルを通して、組成物又は試験試料が搬送手段によって流れる。蛍光プローブは、蛍光強度値を決定するための光度計と通信状態にあることができる。
【0036】
これらの実施の形態の或る特定の態様において、コンピューターは、蛍光強度値を受信し、これらの値を較正曲線と比較し、それにより、選択された化合物の濃度を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する。
【0037】
これらの実施の形態の或る特定の態様において、コンピューターは、蛍光強度値を受信し、これらの値を較正曲線と比較し、それにより、選択された化合物のパーセント(%)吸着を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する。
【0038】
上記は、以下の本発明の詳細な説明をよりよく理解することができるように本発明の特徴及び技術的な利点を幅広く概説した。本発明の追加の特徴及び利点が本明細書に記載され、本発明の特許請求の範囲の主題をなす。本明細書に開示される任意の概念及び具体的な実施形態は、本発明の同じ目的を実施するため他の構造を修飾又は設計するための基礎として容易に利用可能であることが当業者に理解される。また、かかる等価な構築物は、添付の特許請求の範囲に述べられる本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないことが当業者によって明確に理解されなければならない。本発明の構成及び操作方法の両方について、本発明の特性と考えられる新規な特徴は、更なる目的及び利点とともに、添付の図面と組み合せて考慮される場合に以下の記載からより良く理解されるであろう。しかしながら、あらゆる記載、図面、実施例等が解説及び説明の目的に対してのみ提供され、本発明の限定を定義することは何ら意図されないことが明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】0.66mg Al/mLアルミニウム塩アジュバントの非存在下又は存在下での、100μg/mLにおけるFHA(A)、PRN(B)、及びFIM(C)の蛍光スペクトルである。
図2】単独の抗原又はアジュバントに吸着した抗原の経時的な蛍光強度であり、20分の期間にわたる2分間隔での、100μg/mL FHA、並びに、0.66mg Al/mL AlOOH及びAlPOの存在下でのFHAの330nm(280nm励起)における蛍光強度である(n=2)。エラーバーは平均からの標準偏差を示す。
図3】FHA(A)、PRN(B)、FIM(C)の較正曲線であり、単独の抗原及びAlOOH又はAlPOの0.66mg Al/mLに吸着した抗原の製剤を示す。280nmで励起されると、蛍光強度(337nmにおけるFHA、337nmにおけるPRN、及び310nmにおけるFIM)は濃度に対してプロットされた(n=2)。エラーバーは平均からの標準偏差を示す。
図4】低、中、高アジュバント濃度で作成された較正曲線であり、0.32(低)、0.66(中)、及び1.32(高)mg Al/mL Al塩においてAlOOHに吸着したFHA(A)及びAlPOに吸着したFHA(B)を示す(n=2)。エラーバーは平均からの標準偏差を示す。
図5】較正曲線に対する緩衝液及びpHの影響を示す図である。0.66mg Al/mL AlOOHに吸着したPRNの較正曲線は、異なる緩衝液組成及びpHによって作られた。7.4のpHにおける3つの異なる緩衝液(TBS、PBS、及びHEPES)についての個々の較正曲線(A)、及び、3つの異なるpH(6、7.4、及び9)における緩衝液についての個々の較正曲線(B)が示される。
図6】アジュバントの存在下でのタンパク質濃度のインライン決定、及び、固有蛍光分光法による抗原%吸着のアットライン決定(at-line determination)についての概念図を示す。
図7】FHA、及び、TBS内の0.66mg Al/mL AlOOHに吸着したFHAについてのインライン標準曲線である。
図8】本発明のシステムの第1の例示的な実施形態による、ワクチン製剤内のタンパク質の濃度を測定するシステムの概略図である。
図9】本発明のシステムの第2の実施形態による、ワクチン製剤内のタンパク質の濃度を測定するシステムの概略図である。
図10】本発明のシステムの第3の例示的な実施形態による、ワクチン製剤内のタンパク質の濃度を測定するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
I.定義
本明細書中で使用される場合、数量を特定していないもの("a" or "an")は1つ以上を意味する場合がある。本明細書中で使用される場合、数量を特定していない単語(the words "a" or "an")は、「を含む(comprising)」という単語とともに使用される場合に1つ又は2つ以上を意味する場合がある。本明細書中で使用される場合、「別の」は少なくとも2つ目又はそれ以上を意味する場合がある。さらに、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数形の用語は複数のものを含み、複数形の用語は単数のものを含む。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「約」は、明示されているか否かを問わず、例えば整数、分数及びパーセンテージを含む数値を指す。「約」という用語は一般に、当業者が列挙した値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考え得る数値の範囲(例えば、列挙した値の±5%~10%)を指す。場合によっては、「約」という用語は、最も近い有効数字まで四捨五入した数値を含み得る。
【0042】
II.本発明
本発明は、包括的に、溶液内の化合物の濃度を定量するための、タンパク質等の化合物の固有蛍光の使用に関する。蛍光強度とタンパク質濃度との間の線形関係を使用することによって、未知濃度の溶液の蛍光強度を、アッセイし、既知量のタンパク質の蛍光強度に基づいて作成された較正曲線と比較することができる。
【0043】
タンパク質は、芳香族アミノ酸の存在によって固有蛍光を示すという点でバイオ分子の中でも特徴的である。ほとんどのタンパク質は、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びフェニルアラニン(Phe)等の芳香族アミノ酸を含む。UV領域(Pheの場合、約250nm;Tyrの場合、約275nm;Trpの場合、約290nm)で励起されると、これらの芳香族アミノ酸は、310nmから360nmの範囲内の最大放出を有する放出スペクトルを生じることができる[14]。放出スペクトルの強度は、溶液内で利用可能な芳香族アミノ酸の数に比例し、したがって、検査される溶液内のタンパク質の濃度に比例する。タンパク質内で見出される3つの蛍光アミノ酸の中で、選択されたタンパク質の固有蛍光に対するPheの寄与は、量子収量が低いため無視できる。Trp及びTyrは同様の量子収量を持つが、Trpのインドール基が、タンパク質における、280nm近傍のUV吸光及び350nm近傍の蛍光放出の主要源であると報告されている[15]。Tyrの蛍光特性は比較的劣るが、その固有蛍光の分析は、Trpを欠くタンパク質の分析のための有用なツールであることが示されている[16]。
【0044】
本明細書で論じるように、溶液内のタンパク質濃度を測定するための固有蛍光の使用を、タンパク質に加えて複数の成分を含む複雑な溶液の正確な測定に適用することができることが発見された。この発見は、アジュバント等の更なる成分を含むワクチン製剤内のタンパク質抗原の定量に関連する困難さを本発明者らが克服することを可能にした。アジュバント化タンパク質を含むワクチン製剤は、そのような製剤が概して濁っているため、しばしば、アッセイすることが難しい。そのような製剤内のタンパク質抗原の正確な測定は、通常、時間がかかりかつ破壊的なプロセスであるタンパク質脱離ステップを必要としてきた。本発明の方法は、ワクチン製剤内のタンパク質抗原の正確な測定を達成するためにタンパク質脱離ステップを含まない。本明細書で示すように、芳香族アミノ酸を含むタンパク質の固有蛍光は、脱離についての必要性なしで、ほとんどの混合物、更にアルミニウム塩アジュバントを含む混合物中のタンパク質濃度を測定するために使用することができる。
【0045】
上記で簡潔に要約したように、本発明は、タンパク質等の選択された化合物の濃度を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法を含む。そのような方法は、概して、(i)組成物の固有蛍光を測定することと、(ii)測定された蛍光強度値を、選択された化合物を表す化合物の既知の濃度を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、組成物内の選択された化合物の濃度を決定することとを含む。認識されるように、本発明は、(i)組成物の固有蛍光を測定するステップ、及び、(ii)測定された蛍光強度値を較正曲線と比較するステップに基づく更なる方法も包含する。
【0046】
本発明の方法は、脱離ステップを明示的に排除する。すなわち、本発明の方法は、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物内で、選択された化合物からアジュバントを分離するステップを排除することによって実施することができる。本発明の方法は、外因性の蛍光プローブ又はマーカーの非存在下で実施することもできる。本発明の方法は、選択された化合物のアジュバント化複合体の破壊及び/又は選択された化合物の破壊をもたらすアッセイ条件の非存在下で更に実施することができる。
【0047】
本明細書で使用するように、用語「選択された化合物(selected compound)」は、本発明の方法において分析されている化合物を指す。選択された化合物は、概して、少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含む化合物、例えば、少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含むペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質であることになる。しかしながら、1つの代替法において、選択された化合物は、少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含む化合物、例えば、少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含むタンパク質(例えば、抗体又はそのフラグメント)に結合している、芳香族アミノ酸を欠くタンパク質に又はそれによって結合している化合物とすることができる。更なる代替法において、選択された化合物は、蛍光プローブ又はマーカーに又はそれによって結合しているものとすることができる。
【0048】
こうして、また、本明細書で使用するように、選択された化合物は、(i)少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含むペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖タンパク質複合体、ウィルス様粒子、若しくはウィルス懸濁液、又は、(ii)少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含まないが、(a)少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含むペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖タンパク質複合体、ウィルス様粒子、若しくはウィルス懸濁液、若しくは、(b)蛍光プローブ若しくはマーカーに若しくはそれによって結合している、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖タンパク質複合体、ウィルス様粒子、又はウィルス懸濁液のうちの1つ以上である。1つの態様において、選択された化合物は、少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含むタンパク質である。
【0049】
本発明の選択された化合物の芳香族アミノ酸の数は、選択された化合物の同一性に応じて変動することになる。したがって、本発明の選択された化合物は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又はそれより多い数の芳香族アミノ酸を含むことができる。
【0050】
本明細書で使用するように、用語「芳香族アミノ酸(aromatic amino acid)」は、アミノ酸トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、チロキシン、5-ヒドロキシトリプトファン、及びL-DOPAを指す。1つの態様において、芳香族アミノ酸は、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)からなる下位群によって規定することができる。
【0051】
選択された化合物が蛍光プローブ又はマーカーに又はそれによって結合している状況において、蛍光プローブ又はマーカーは、蛍光プローブ又はマーカーに又はそれによって結合している、選択された化合物のアジュバント化複合体の文脈で、検出し、測定することができる蛍光を生じる任意の蛍光プローブ又はマーカーとすることができる。
【0052】
選択された化合物は、単独で又は本明細書で提供される他の記述に加えて、250nmから300nmの間の励起波長に曝露されると、300nmから500nmの間の最大放出を有するものとして特徴付けることもできる。幾つかの選択された化合物の場合、最大放出は、約300nmから450nmの間、300nmから400nmの間、300nmから380nmの間、300nmから370nmの間、300nmから360nmの間、300nmから340nmの間、320nmから400nmの間、320nmから380nmの間、又は320nmから360nmの間にある。
【0053】
本明細書で使用するように、用語「代表的化合物(representative compound)」は、本明細書で規定される較正曲線の作成において使用される化合物を指す。較正曲線を、実施される方法においてアッセイされる選択された化合物を含む較正試料を使用して構成することができることが明らかになる。こうした状況下で、代表的化合物は、選択された化合物と同一である。しかしながら、較正曲線を、選択された化合物と同様であるだけである化合物を含む較正試料を使用して構成することができることも理解されるべきである。例えば、タンパク質が、選択された化合物としてアッセイされるとき、非同一配列を有するタンパク質は、較正曲線の構成において代表的化合物として使用することができる。代表的化合物が、選択された化合物と同一でないとき、代表的化合物は、通常、選択されたタンパク質と(数と同一性の両方で)同じ芳香族アミノ酸の補体を含むことになるが、これは、より少数の又はより多数の芳香族アミノ酸又は異なる芳香族アミノ酸を代表的化合物が有する場合、変動する可能性もある。代表的化合物は、選択された化合物がペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質であるとき、選択された化合物に対して少なくとも80%の配列同一性、又は、選択された化合物に対して少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有することになる。
【0054】
本発明の方法において使用されると、代表的化合物は、代表的化合物のアジュバント化複合体又は代表的化合物の非アジュバント化バージョンとすることができる。代表的化合物は、アジュバント化されると、選択された化合物のアジュバント化複合体の生産で使用されるものと同じアジュバント又は異なるアジュバントによってアジュバント化することができる。
【0055】
本明細書で使用するように、用語「アジュバント(adjuvant)」は、ワクチン生産の分野におけるその通常のかつ慣用的な意味を有する、例えば、抗原に対する被験体の免疫反応を増強させる薬剤又は免疫薬等の物質である。アジュバントは、被験体において誘起される抗原に対する免疫反応を増強させるためにワクチン製剤にしばしば含まれ、したがって、被験体に投与される異物の量を最小にする。アジュバントは、抗原のためのデポー剤(depot)として役立つことができ、経時的に免疫系に対する抗原の緩徐でかつ一定の提示を可能にする。他のアジュバントは、抗原によって誘起される免疫反応と連携して被験体において発現する免疫反応に関わり合い、増幅するように働く。
【0056】
本発明の方法で使用するための適したアジュバントは、アルミニウム塩、スクアレン乳剤、ペプチド、核酸、鉱油、合成及び天然リン脂質、及びその組み合わせ等の無機化合物を含む。方法で使用するための例示的なアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント(オキシ水酸化アルミニウム又はAlOOHとも呼ばれる)、リン酸アルミニウム(例えば、AlPO)、アモルファスアルミニウムヒドロキシホスフェート硫酸塩(amorphous aluminum hydroxyphosphate sulfate)、及び水酸化リン酸カルシウムを含む。方法で使用するための例示的な乳剤は、スクアレンAF03乳剤、MF59(商標)、ASO3、Montanide(商標)を含む。方法で使用するための例示的なペプチドは、ペプチド・オリゴヌクレオチド微粒子複合体(peptide-oligonucleotide particulate complex)(例えば、IC31)を含む。方法で使用するための例示的な核酸は、ODN1a、CpG1018を含む。
【0057】
本発明の1つの態様において、適したアジュバントは、250nmから300nmの間の波長範囲内の光で励起されると、290nm~450nmの範囲内の検出不能な固有蛍光を示すアジュバントであることになる。代替的に、適したアジュバントは、250nmから300nmの間の波長範囲内の光で励起されると、290nm~450nmの範囲内の固有蛍光を示すアジュバントであることになり、その固有蛍光は、アジュバントと複合体を形成した選択された化合物の固有蛍光の20%未満、好ましくは、アジュバントと複合体を形成した選択された化合物の固有蛍光の20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満である。幾つかの態様において、励起波長は280nmから290nmの間である。
【0058】
本発明の方法は、選択された化合物が、1つのタイプのアジュバントと、又は、同じ組成物において2つ、3つ、4つ、又はそれより多い数のタイプのアジュバントと複合体を形成する、組成物を使用して実施することができる。
【0059】
本明細書で使用するように、用語「組成物(composition)」は、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む任意の組成物とすることができる。非制限的な例は、AlOOH又はAlPOと複合体を形成したペプチド等のアジュバント化抗原を含むワクチン製剤を含む。
【0060】
本発明の方法に目を向けると、また、上記で述べたように、第1の実施形態において、本発明は、タンパク質等の選択された化合物の濃度を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法として規定することができる。そのような方法は、概して、(i)組成物の固有蛍光を測定することと、(ii)測定された蛍光強度値を、選択された化合物を表す化合物の既知の濃度を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、組成物にて選択された化合物の濃度を決定することとを含む。
【0061】
一例としては、この実施形態によって包含される方法は、選択された化合物の濃度を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法であって、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物について蛍光強度値を得ることであって、選択された化合物は少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含み、組成物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、組成物についての蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定されることと、
(b)(a)にて得られた蛍光強度値を、選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む較正試料の蛍光値を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、選択された化合物の濃度を選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定することと、
を含む、方法として記載することができる。
【0062】
この実施形態の或る特定の態様において、(b)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又はそれより多い数の較正試料を使用して作成される。例えば、(b)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成することができ、較正試料内の代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される。
【0063】
この実施形態の或る特定の態様において、(b)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも5つの較正試料を使用して作成され、較正試料内の代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される。
【0064】
較正曲線を作成するために使用される較正試料内の代表的化合物の濃度は、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度及び曲線を作成するために使用される試料の数に応じて変動することになる。しかしながら、較正試料は、概して、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度より低い濃度を有する少なくとも1つの試料、及び、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度より高い濃度を有する少なくとも1つの試料を含むことになる。幾つかの態様において、較正試料は、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度より低い濃度を有する1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれより多い数の試料、及び、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度より高い濃度を有する1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれより多い数の試料を含む。選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度より低い濃度を有する較正試料は、概して、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度の約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、及び100%の値を含む、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度の約20%から100%の間にあることになる。選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度より高い濃度を有する較正試料は、概して、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度の約100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、及び200%の値を含む、選択された化合物の既知の又は疑わしい濃度の約100%から200%の間にあることになる。
【0065】
この実施形態の或る態様において、(b)の較正曲線は、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物内で選択された化合物の疑わしい濃度の約50%、75%、100%、125%、及び150%を示す濃度を有する代表的化合物の少なくとも5つの較正試料を調製すること、
(b)(a)の各較正試料を、250nmから300nmの間の波長を使用して励起すること、
(c)(b)の各試料の放出スペクトルを、各較正試料について最大蛍光強度を生成する300nmから500nmの間の波長を使用して決定すること、
(d)最大蛍光強度を生成した(c)の波長における蛍光強度の値を、較正試料内の代表的化合物の濃度に対してプロットすることであって、それにより、代表的化合物の較正曲線を作成する、プロットすること、
によって作成される。
【0066】
本発明の方法で使用される較正曲線は、限定はしないが、Microsoft Excel(Microsoft)、JMP(SAS)、GraphPad Prism(GraphPad Software)、MATLAB(商標)(MathWorks)、Custom Sensors PX2(Custom Sensors)等のコンピュータソフトウェア、及び、方眼紙(手作業による図面作成)等の任意の関連する手段を使用して作成することができる。較正曲線当てはめモデルのタイプは、同様に変動し、限定はしないが、代表的化合物及び関心の濃度範囲の、線形、多項式、対数、指数関数、べき乗、及びシグモイド型回帰を含むことができる。
【0067】
本明細書で使用するように、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物内の、選択された化合物の「疑わしい濃度(suspected concentration)」は、組成物内の選択された化合物の濃度に関する推定又は根拠のある推測(educated guess)に過ぎない。関連する較正曲線を作成するため、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物について得られる蛍光強度値が、曲線を作成するために使用される最低値と最高値との間のどこかでその曲線上に乗ることになる、曲線を作成することが求められる。選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物の蛍光強度値が事前にわかっていないため、値がどのようなものになる場合があるかを推定又は推測し、その後、推定値より大きい濃度と小さい濃度の両方を有する代表的化合物の試料を使用して較正曲線を作成しなければならない。
【0068】
組成物内のアジュバント化化合物の濃度を正確に測定するための手段は、組成物の特性に関する更なる情報を得ることを可能にする更なるステップと組み合わすことができる。例えば、第2の実施形態において、本発明は、選択された化合物のパーセント(%)吸着を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法を含む。こうして、例えば、アジュバントと複合体を形成したワクチン製剤内で抗原のパーセントを決定することができる。そのような方法は、概して、(i)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物の2つの試料を得ることであって、第1の試料内でアジュバント化複合体は実質的に溶液内にあり、第2の試料内でアジュバント化複合体は実質的に溶液から分離して沈殿することと、(ii)第1の試料の固有蛍光を測定することと、(iii)測定された蛍光強度値を、選択された化合物を表す化合物の既知の濃度を使用して作成された較正曲線と比較することであって、第1の試験試料内で、選択された化合物の濃度を決定することと、(iv)第2の試料の固有蛍光を測定することと、(v)測定された蛍光強度値を、較正曲線と比較することであって、第2の試験試料内で、選択された化合物の濃度を決定することと、(vi)第2の試料について決定された濃度を第1の試料について決定された濃度で割ることによってパーセント(%)吸着を計算することであって、それにより、組成物内で、選択された化合物のパーセント(%)吸着を決定することとを含む。
【0069】
一例としては、この実施形態によって包含される方法は、選択された化合物のパーセント(%)吸着を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法であって、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物の2つの試験試料を得ることであって、選択された化合物は少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含み、第1の試験試料内でアジュバント化複合体は実質的に溶液内にあり、第2の試験試料内でアジュバント化複合体は実質的に溶液から分離して沈殿することと、
(b)(i)第1の試験試料について蛍光強度値を得ることであって、第1の試験試料は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、第1の試験試料についての蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定される、得ること、及び、(ii)蛍光強度値を、選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む較正試料を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、第1の試験試料内で選択された化合物の濃度を決定する、比較することによって、第1の試験試料内で選択された化合物の濃度を決定することと、
(c)(i)第2の試験試料の上澄みについて蛍光強度値を得ることであって、第2の試験試料の上澄みは250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、第2の試験試料の上澄みについての蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定される、得ること、及び、(ii)蛍光強度値を、選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む較正試料を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、第2の試験試料内で選択された化合物の濃度を決定する、比較することによって、第2の試験試料の上澄み内で選択された化合物の濃度を決定することと、
(d)(c)にて決定された濃度を(b)にて決定された濃度で割ることによってパーセント(%)吸着を計算することであって、それにより、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物内で選択された化合物のパーセント(%)吸着を決定することと、
を含む、方法として記載することができる。
【0070】
この実施形態の或る特定の態様において、(b)及び/又は(c)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又はそれより多い数の較正試料を使用して作成される。例えば、(b)及び/又は(c)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成することができ、較正試料内の代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される。
【0071】
この実施形態の或る特定の態様において、(b)及び/又は(c)の較正曲線は、代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも5つの較正試料を使用して作成され、較正試料内の代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される。
【0072】
この実施形態の或る特定の態様において、(b)及び/又は(c)の較正曲線は、
(a)第2の試験試料内で実質的に溶液から分離して沈殿したアジュバント化複合体の疑わしい濃度の約50%、75%、100%、125%、及び150%を示す濃度を有する代表的化合物の少なくとも5つの較正試料を調製すること、
(b)(a)の各較正試料を、250nmから300nmの間の波長を使用して励起すること、
(c)(b)の各試料の放出スペクトルを、各較正試料について最大蛍光強度を生成する300nmから500nmの間の波長を使用して決定すること、
(d)最大蛍光強度を生成した(c)の波長における蛍光強度の値を、較正試料内の代表的化合物の濃度に対してプロットすることであって、それにより、代表的化合物の較正曲線を作成する、プロットすること、
によって作成される。
【0073】
(b)及び(c)の較正曲線を同じ較正曲線とすることができること、又は、異なる構成曲線を作成することができることが認識されることになる。
【0074】
さらに、アジュバント化複合体が実質的に溶液から分離して沈殿した後に第2の試験試料の上澄み(supernatant)に残留するアジュバントの存在を考慮する較正曲線を作成することができる。沈殿後の上澄みの残留アジュバントによってもたらされる蛍光オフセットを決定するため、製剤の2つのセットを、それぞれの代表的化合物について調製することができる。製剤の1つのセットはアジュバントなしで作られ、他のセットは、沈殿すると、上澄みに残留すると予想される代表的化合物の濃度を持つように作られる。本発明の較正曲線は、オフセット値を考慮するために改定することができる。
【0075】
選択された化合物のパーセント(%)吸着を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定するこれらの方法において、2つの試験試料がアッセイされる。第1の試験試料内でアジュバント化複合体は実質的に溶液内にある。第2の試験試料内でアジュバント化複合体は実質的に溶液から分離して沈殿し、上澄みがアッセイされる。溶液に出入りするアジュバント化複合体の量が、アッセイに関連する特定の状況に応じて変動することになることが理解されることになる。実際には、アッセイの目的が異なる組成物についてパーセント(%)吸着を得ることであるため、アッセイに関連する特定の状況は、広く変動すると予想される。したがって、用語「実質的に溶液内にある(substantially in solution)」及び「実質的に溶液から分離して沈殿する(substantially settled out of solution)」の規定は、必然的に幅広い。しかしながら、用語は、第1の試験試料内のアジュバント化複合体の量と第2の試験試料の上澄み内のアジュバント化複合体の量との間の少なくとも約10%の差に基づいて規定することができる。本発明の他の適した態様において、第1の試験試料内のアジュバント化複合体の量と第2の試験試料内の量との間に、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれより大きい%の差が存在する。代替的に、用語は、試験試料内のアジュバント化複合体の絶対量に基づいて規定することができる。こうして、本明細書で使用するように、用語「実質的に溶液内にある」は、アジュバント化複合体の少なくとも51%が試料の溶液内にあることを意味することもできる。他の適した態様において、アジュバント化複合体の少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれより大きい%が試料の溶液内にある。同様に、本明細書で使用するように、用語「実質的に溶液から分離して沈殿する」は、アジュバント化複合体の少なくとも51%が試料の溶液から分離して沈殿することを意味することもできる。他の適した態様において、アジュバント化複合体の少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれより大きい%が試料の溶液から分離して沈殿する。更なる代替法において、第1の試験試料は、混合され、かつ、混合の10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒又は120秒以内に励起波長を受けるアジュバント化複合体の溶液として規定することができる。第2の試験試料は、混合され、試料の上澄みが励起波長を受ける前に、少なくとも1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、26分、27分、28分、29分、30分、又はそれより長い時間の間、静止したままであることが許容されるアジュバント化複合体の溶液として規定することができる。
【0076】
本発明の方法のそれぞれにおいて使用される励起波長が、他の因子の中でもとりわけ、選択された化合物の同一性、代表的化合物の同一性、及びアジュバントの同一性等の因子に応じて変動することになることが認識されることになる。しかしながら、Pheが約250nmの波長で蛍光を発し、Tyrが約275nmの波長で蛍光を発し、Trpが約290nmの波長で蛍光を発するため、本発明の方法は、概して、250nmから300nmの間の励起波長を使用して実施されることになる。他の適した範囲は、約250nmから290nmの間、250nmから280nmの間、250nmから270nmの間、250nmから260nmの間、260nmから300nmの間、260nmから290nmの間、260nmから280nmの間、260nmから270nmの間、270nmから300nmの間、270nmから290nmの間、270nmから280nmの間、280nmから300nmの間、280nmから290nmの間、290nmから300nmの間を含む。
【0077】
本発明の方法のそれぞれを実施するときに決定される放出スペクトルが、同じ因子、すなわち、他の因子の中でもとりわけ、選択された化合物の同一性、代表的化合物の同一性、及びアジュバントの同一性に応じて変動することになることも認識されることになる。しかしながら、本発明の方法は、概して、放出スペクトルが300nmから500nmの間の波長で決定される場合に実施されることになる。他の適した範囲は、約300nmから480nmの間、300nmから460nmの間、300nmから440nmの間、300nmから420nmの間、300nmから400nmの間、320nmから480nmの間、320nmから460nmの間、320nmから440nmの間、320nmから420nmの間、320nmから400nmの間、340nmから480nmの間、340nmから460nmの間、340nmから440nmの間、340nmから420nmの間、340nmから400nmの間、360nmから480nmの間、360nmから460nmの間、360nmから440nmの間、360nmから420nmの間、360nmから400nmの間、380nmから480nmの間、380nmから460nmの間、380nmから440nmの間、380nmから420nmの間、380nmから400nmの間、300nmから400nmの間、300nmから380nmの間、300nmから360nmの間、300nmから340nmの間、300nmから320nmの間、320nmから400nmの間、320nmから380nmの間、320nmから360nmの間、320nmから340nmの間、340nmから400nmの間、340nmから380nmの間、340nmから360nmの間、360nmから400nmの間、360nmから380nmの間、及び380nmから400nmの間を含む。
【0078】
本発明の方法は、光の所望の励起波長を生成し、本明細書で規定されるパラメーター内で結果として得られる放出スペクトルを検出することができる任意の関連する機器を使用して実施することができる。許容可能な機器は、光度計、蛍光光度計、分光光度計を含む。
【0079】
本発明の方法は、較正試料から得られる測定値から較正曲線を生成するための任意の手段を使用して実施することができる。このような手段は、例えば、グラフ用紙及びペンシルを使用する手によるもの、及び、コンピュータープログラムの使用等の電子手段を含む。
【0080】
同様に、本発明の方法は、蛍光強度値を較正曲線と比較するための任意の手段を使用して実施することができる。このような手段は、例えば、較正曲線上に蛍光強度値をプロットするためにグラフ用紙及びペンシルを使用する手によるもの、及び、コンピュータープログラムの使用等の電子手段を含む。
【0081】
本発明の方法は、種々の状況において実施することができる。例えば、方法は、ワクチン製剤の小バッチが、実験動物に注入するために調製されるとき等、実験室環境で行われる小規模運用において実施することができる。試料を、個々のバッチから取り外し、本明細書で規定する方法を使用して試験することができる。方法は、ワクチン製剤の商用グレードバッチが販売のために生産されるときの工業環境において等、大規模運用において実施することもできる。この場合も、試料を、個々のバッチから取り外し、本明細書で規定する方法を使用して試験することができる。そのような条件下で、方法は、「オフラインで(off-line)」実施される、すなわち、試料は、例えば、ベンチトップ蛍光光度計を使用して実験室環境で、抗原濃度又は%吸収について試験される。
【0082】
方法は、「インラインで(in-line)」又は「オンラインで(on-line)」実施することもでき、蛍光プローブは、フローセルに結合されて(フローセルは、次に、光度計に接続される)、タンパク質濃度のリアルタイムモニタリングを可能にする。方法は、光度計に接続された蛍光プローブを使用し、プローブを試料に直接接触するように設置して(例えば、プローブを試料に浸すことによって)「インラインで」実施することもできる。図6は、オンライン設定を使用して抗原濃度又は%吸収を決定するときに本発明の方法を使用する例を提供する。そのようなインライン及びオンライン分析は、プロセス分析技術(PAT:Process Analytical Technology)アプリケーションのために重要である。PATは、最終製品品質を確保することを目標として、未処理材料及び製造過程の(in-process)材料並びにプロセスの重要品質(critical quality)及び性能特性の時宜を得た(すなわち、処理中の)測定を通して、製造を設計し、分析し、制御するシステムとして米国FDAによって考えられている[27]。
【0083】
本発明の関連する実施形態及び態様において、蛍光値は、蛍光プローブによって、光度計によってこうして得られる。蛍光プローブは、フローセルに取り付けることができる。適した蛍光プローブは、当業者に知られており、例えば、Custom Sensorsによるオートクレーブ可能前面蛍光プローブ(Autoclaveable Front Surface Fluorescence Probe)、Part♯:3383-001-305-010-2000-101-101を含むことになる。適したフローセルは、当業者に知られており、例えば、種々の経路長においてオートサンプラー及びシッパーシステムとともに使用するためのThermo Scientific(商標)フローセル及びPendoTECHによる使い捨て蛍光フローセル(プロトタイプ)、Part♯:1161362-210を含むことになる。
【0084】
例として、選択された化合物の濃度を、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法は、フローセルに取り付けられた蛍光プローブを使用して光度計によって行うことができる(図6)。蛍光プローブは、アジュバントの非存在下で、選択された化合物又は代表的化合物を含む較正試料を使用して最初に較正され、較正曲線が作成される。その後、アジュバント化製剤の試料が、フローセル内に流され、蛍光について測定される。得られる蛍光強度値は、較正曲線と比較され、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物内での選択された化合物の濃度が決定される。
【0085】
更なる例として、アジュバントへの選択された化合物の%吸着を測定する方法も、フローセルに取り付けられた蛍光プローブを使用して光度計によって実施することができる(図10)。蛍光プローブは、アジュバントの非存在下で、選択された化合物又は代表的化合物を含む較正試料を使用して最初に較正される。その後、アジュバント化製剤の試料が、フローセル内に流され、(アジュバント化複合体が実質的に溶液内にある第1の試験試料として)蛍光について測定され、試料は、その後、静止することで、アジュバント化複合体がフローセルから分離して沈殿され、試料は、(アジュバント化複合体が実質的に溶液から分離して沈殿する第2の試験試料の上澄みとして)非アジュバント化された選択された化合物の蛍光について再び測定される。上澄みを測定する代替のアプローチは、フィルターを使用することでアジュバント化複合体を除去し、試料は、(アジュバント化複合体が実質的に溶液から分離して沈殿する第2の試験試料の上澄みとして)非アジュバント化された選択された化合物の蛍光について再び測定される(図6)。2つの測定値を用いた計算が実施され、選択された化合物の%吸着がこうして測定される。
【0086】
本発明は、第3の実施形態で述べることもできる。この実施形態において、本発明は、選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物を製造する方法に関する。方法は、選択された化合物の濃度を、(本明細書で詳細に述べる第1の実施形態の方法等の)本出願で規定される方法を使用して、選択された化合物のアジュバント化複合体のバッチにて決定するステップを含み、選択された化合物のアジュバント化複合体のバッチを組み込んだ組成物を製剤化することは、決定の結果に基づいて進められる。
【0087】
本発明は、本明細書で規定される本発明の方法のそれぞれを実施するために実装することができるシステムも包含する。
【0088】
図8に示すシステム20は、導管22を含み、導管22を通して、タンパク質を含むワクチン製剤が、内部にワクチン製剤を有するコンテナー24から流れ、コンテナー24に戻ることができる。
【0089】
コンテナー24は、出口26及び入口28を有し、そこを通ってそれぞれ導管22の対向する入口端30及び出口端32が延在する。入口端30は、コンテナー24内でコンテナー下部の近くの撹拌子34に隣接して位置する。コンテナー下部は撹拌プレート36上に位置する。出口端32は、コンテナー24内でコンテナーの上部に隣接して位置する。導管22は、柔軟なチューブ又はシリコンチューブを含むことができる。
【0090】
導管22は、入口端30と出口端32との間で導管22内に直列に配置された蛍光強度センサー38及びポンプ40とループを形成し、ポンプ40はセンサー38の下流にある。
【0091】
こうして、コンテナー24の内部、センサー38、及びポンプ40は、流体連通している。センサー38は、好ましくは、プローブを有する蛍光フローセルであり、プローブは、ワクチン製剤内のタンパク質の蛍光を測定し、その後、その蛍光を示す電気信号を生成し出す。
【0092】
コンピューター42は、PX2測光送信機デバイス44を介してセンサー38に電気接続されて、センサー38から蛍光測定信号を受信する。コンピューターは、プログラムを記憶する非一時的メモリを含み、プログラムは、導管内のワクチン製剤内のタンパク質の蛍光値を示す信号を、コンピューターにおいて前もって作成され記憶された較正曲線と比較する。コンピューターは、その後、信号と較正曲線の比較から、ワクチン製剤内のタンパク質の濃度を示す出力を提供する。
【0093】
図9の第2の例示的な実施形態は、図8の第1の例示的な実施形態の同じ特徴を識別するために同じ符号を使用する。図8の実施形態と図9の実施形態との主要な差は、図9の実施形態における導管22のオープンループ、センサー38に対するポンプ40の上流への位置付け、2つのコンテナーの使用である。導管22は、吸収した原薬(drug substance)を内部に有する供給コンテナー46内に開口するその入口端30を有する。原薬又はその上澄みは、センサー38から上流に位置するポンプ40によってコンテナー46から導管22に引き込まれ、センサー38に達し、センサー38を通過する。センサー38から、原薬は、導管22内で搬送され、出口端32を出て、最終バルク製品を収容する貯蔵コンテナー48に入る。
【0094】
図10の第3の実施形態は、図8の配置構成と同様の配置構成を有し、同様の符号が同じ部品を識別する。差は、コンテナー24が一般的にブランクボックスとして示されていることである。
【実施例
【0095】
III.実施例
1A.材料
フィラメンタスヘマグルチニン(FHA:Filamentous haemagglutinin)、分子量(MW)=220kDa、パータクチン(PRN)、MW=60.3kDa、フィムブリエ(FIM)、タイプ2、MW=19.2kDa、及びタイプ3、MW=17.2kDaが、Sanofi Pasteur(カナダ、トロント)によって製造され提供された。FHAは11のトリプトファン及び28のチロシンアミノ酸を有し、PRNは8つのトリプトファン及び6つのチロシンを有し、FIMタイプ2はトリプトファンを持たず、8つのチロシンを有し、FIMタイプ3はトリプトファンを持たず、7つのチロシンを有する。
【0096】
FHA、PRN、及びFIMの両方のタイプのバッチを、それぞれ973.4μg/mL~1200.9μg/mL、147.7μg/mL~241.9μg/mL、及び242.0μg/mL~402.0μg/mLに及ぶ濃度で調製した。AlOOHアジュバントは、Brenntag Biosector(デンマーク、フレズレクソン)によって10.2mgAl/mLで供給された。AlPOアジュバントは、Sanofi Pasteur(カナダ、トロント)によって4.1mg Al/mLで調製した。150mM NaCl(pH7.4)(TBS)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、150mMクエン酸塩(pH6)、100mM重炭酸塩(pH9)、及び0.5Mリン酸塩(pH7.4)を有する緩衝液10mM Tris-HClは、Sigma-Aldrich(米国、ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich)によって供給された試薬によって自主製作した。HEPESは、Life Technologiesによって1M濃縮溶液で供給され、Milli-Q水によって10mMに希釈し、pHを、1M HClを使用して調整した。
【0097】
1B.製剤の調製
全ての製剤は、適用可能な量のタンパク質に適切な量のアジュバントを添加し、その後、指定された緩衝液を最終希釈液として使用することによって調製した。製剤は、その後、Adams(商標)ニューテーターミキサー(Nutator Mixer)(Becton Dickinson、米国、ニュージャージ州)上で、室温で30分間混合することで、アジュバントへの抗原吸着を可能にした。
【0098】
述べない限り、標準曲線及び試験試料のために使用される緩衝液はTBSであった。しかしながら、他の緩衝液(PBS、HEPES、クエン酸塩、及び重炭酸塩)は、較正曲線に対する緩衝液及びpH条件の影響を試験するために使用した。パーセント吸着の影響を試験するため、異なる濃度(0mM、2mM、20mM、及び80mM)のリン酸塩を、TBS内の製剤に添加した。
【0099】
較正曲線正確度に対するアジュバントの存在及びアッセイ間変動性の影響を評価するために調製されたFHAを含む試験試料は、AlOOH又はAlPOを含む製剤についての0.66mg Al/mLのアジュバント濃度とともに、10μg/mL、50μg/mL、及び200μg/mLの抗原濃度で調製した。沈降の影響を評価するために作製されたFHAを含む試験試料は、AlOOH又はAlPOを含む製剤についての0.66mg Al/mLのアジュバント濃度とともに、100μg/mLの抗原濃度で調製した。
【0100】
較正曲線正確度に対するアジュバントの存在、緩衝液、及びpHの影響を評価するために作製されたPRNを含む試験試料は、AlOOH又はAlPOを含む製剤について0.66mg Al/mLのアジュバント濃度とともに、10μg/mL、50μg/mL、及び100μg/mLの抗原濃度で調製した。
【0101】
較正曲線正確度に対するアジュバントの存在の影響を評価するために調製されたFIMを含む試験試料は、AlOOH又はAlPOを含む製剤について0.66mg Al/mLのアジュバント濃度とともに、10μg/mL、50μg/mL、及び200μg/mLの抗原濃度で調製した。
【0102】
1C.蛍光測定
全ての製剤の蛍光測定は、Chirascan Plus分光光度計(Applied Photophysics、英国、サリー)を使用して収集した。試料は、280nmの励起波長で励起され、放出スペクトルは、800Vの一定の光電子増倍管設定及び20℃の設定温度を使用して、290nm~400nmの間で、1nm増分でかつ1ポイント当たり0.5秒の測定時間で収集した。最大放出ピークが見出されると、スペクトル収集は、最大放出ピークから±20nmに設定した。標準的な10mm石英キュベットを、製剤を測定するために使用した。読み値(reading)は、最適結果のために混合直後に採取した。
【0103】
1D.沈降研究
FHA試料は、10回インバージョンを繰り返すことによって混合し、330nmにおける蛍光強度を、20分間、2分間隔で収集した。330nmにおける蛍光強度は、2つの値(duplicate)間で平均した。
【0104】
1E.較正曲線
アジュバントの影響を評価するために作成されたFHA較正曲線は、AlOOH又はAlPOを含む製剤について、0μg/mL、1μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、500μg/mL、及び750μg/mLの抗原濃度並びに0.66mg Al/mLのアジュバント濃度の試料によって作成した。アジュバント濃度の影響を評価するために作成されたFHA較正曲線は、5μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、及び200μg/mLの抗原濃度、並びに、0.33mg Al/mL、0.66mg Al/mL、及び1.32mg Al/mLのAlOOH又はAlPO濃度の試料によって作成した。
【0105】
アジュバントの影響を評価するために作成されたPRN較正曲線は、AlOOH又はAlPOを含む製剤について、0μg/mL、1μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、及び100μg/mLの抗原濃度並びに0.66mg Al/mLのアジュバント濃度の試料によって作成した。緩衝液組成及びpHの影響を評価するために作成されたPRN較正曲線は、0μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、及び100μg/mLの抗原濃度、並びに、0.66mg Al/mLのAlOOH濃度の試料によって作成した。
【0106】
アジュバントの影響を評価するために作成されたFIM較正曲線は、AlOOH又はAlPOを含む製剤について、0μg/mL、1μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、150μg/mL、200μg/mL、及び300μg/mLの抗原濃度並びに0.66mg Al/mLのアジュバント濃度の試料によって作成した。
【0107】
最大強度に達する波長を選択し、このポイントにおける蛍光を、2つの値間で平均され、その濃度に対してプロットした。アジュバント及びアジュバント濃度の影響を評価するために生成される較正曲線の場合、蛍光強度を2つの値間で平均した。全ての他の較正曲線の場合、レプリケート(replicate:反復値)は得られなかった。検出限界(LOD:limit of detection)及び定量限界(LOQ:limit of quantification)は、以下のように、医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)(ICH)指針[17]を使用して計算した。
LOD=3.3σ/S
LOQ=10σ/S
σ=ブランクの標準偏差
S=線形回帰曲線の傾斜
線形性限界(LOL:limit of linearity)は、GraphPad Prismバージョン6.00(GraphPad Software、米国、カルフォルニア州、ラホヤ)を使用して、線形回帰のRが0.980以上であるとともに、線形性からの逸脱についてのラン検定がp値>0.05を生じるまで、較正曲線から、抗原の最高濃度から始まるデータポイントを除去することによって確立した。
【0108】
線形回帰傾斜の統計的比較は、GraphPad Prismバージョン6.00(GraphPad Software、米国、カルフォルニア州、ラホヤ)を使用して、共分散分析(ANCOVA)によって実施した。傾斜は、単なる偶然で計算された1より大きい検定統計量(test statistic)Fを得る確率(p値)が、0.05以下と評価された場合、統計的に異なると考えられた。
【0109】
1F.アッセイ間変動性
アッセイ間変動性は、FHA-AlOOH製剤の10の分取された較正曲線に対して、0.66mg Al/mLのAlOOHに吸着されたFHAの低(10μg/mL)、中(50μg/mL)、及び高(100μg/mL)濃度で調製された試験試料の10の分取物を測定することによって調査した。
【0110】
1G.パーセント吸着
パーセント吸着は、パーセント吸着レベルの差を生じさせるため、0mM、2mM、20mM、及び80mMリン酸塩が存在する状態で、0.66mg Al/mLのAlOOHに吸着された50μg/mLのPRNによって試験した。全製剤の蛍光を、10分間の14000rpmでの遠心分離後に、上澄みの蛍光とともに収集した。製剤及び上澄みの濃度を、それらのそれぞれの標準曲線を使用して逆算した。
【0111】
1H.マイクロケルダール(micro-Kjeldalh)との比較
未知の抗原濃度の試料は、マイクロケルダール法[18]と固有蛍光(IF)法の両方によって測定した。IF法の場合、アジュバントなしの試料をTBS内で希釈し、AlPOを含む試料を、0.66mg Al/mLのAlPOを含むTBS内で希釈し、ついには、それぞれの較正曲線範囲内の濃度値が得られた。全ての希釈液を、それらのそれぞれの標準曲線の線形回帰を使用して逆算した。逆算された濃度は、マイクロケルダールの結果と比較した。
【0112】
2A.タンパク質抗原の蛍光スペクトルに対するアルミニウム塩アジュバントの影響
アルミニウム塩アジュバントの存在下でタンパク質濃度を検出するIF法の実現可能性を調査するため、100μg/mLのFHA、PRN、及びFIMの製剤が、AlOOH又はAlPOの存在下で、280nmで励起され、290nm~400nmのその全放出スペクトルを、正方形10mmキュベットにおいて即座に収集した(図1)。アルミニウム塩の非存在下で、FHA及びPRNはともに、330nmの近くに最大を有する幅広でかつ十分に検出可能なピークを示した(図1A、1B)。一方、FIMは、310nmの近くに最大蛍光強度を有するより幅狭のピークを示した(図1C)。FIMにおいて検出されたより低い放出波長は、その構造におけるトリプトファンの欠如に起因しており、チロシンが蛍光スペクトルに対する主要な一因になる[19]。アルミニウム塩の添加は、最大放出波長に著しく影響を及ぼさなかった。しかしながら、蛍光強度は、製剤で使用されるアジュバントのタイプに応じて影響を受けた。蛍光強度の著しい増加が、AlPOを含む試料について観察されたが、AlOOHの存在は、調査中のタンパク質の蛍光スペクトルに特に影響を及ぼさなかった(図1)。
【0113】
これらの結果は、ワクチンにおいて一般に使用されるアジュバント濃度におけるアルミニウム塩の存在が、タンパク質の蛍光特性に干渉せず、アルミニウム塩アジュバント化ワクチン内のタンパク質の検出にこの方法が相応しいことを示す。
【0114】
2B.沈降の影響
アルミニウム塩アジュバントの懸濁液は、経時的に沈降することが知られている[20]。IFに対する沈降の影響を調査するため、単独の又は0.66mg Al/mLのAlOOH又はAlPOに吸着した100μg/mL FHAを含む製剤の蛍光強度を、全体で20分間、2分間隔で測定した。抗原FHAは、中性pHでAlOOHとAlPOの両方に高い程度に結合することが分かっているため選択された[21]。予想されるように、FHAの蛍光強度は、経時的な変化を単独で示さなかった。一方、蛍光強度の減少は、両方のアルミニウム塩について見られた(図2)。アルミニウムアジュバントが沈殿するにつれて、アジュバントに結合したタンパク質は、励起ビームの下に引き下ろされ、それが、蛍光強度の減少の観察をもたらした(図2)。しかしながら、蛍光強度が乱されなかった時間は、アジュバントに応じて変動した。AlPOに吸着したタンパク質は、約10分後に沈殿することが見出された。一方、AlOOHにおいて、沈殿は、約16分後に起こり始めた(図2)。これは、おそらく、アルミニウム塩の粒子サイズ、形状、密度、及びゼータ電位の大きさによって大きく影響を受ける可能性がある沈降速度の差による。沈降の影響に対処するため、全ての更なる蛍光測定は、キュベット内で試料を混合してから2分以内に得られた。
【0115】
2C.較正曲線
検出が、アジュバントの存在下で可能であると証明されると、タンパク質濃度に対する蛍光の線形応答の調査を行った。較正曲線は、1μg/mLから関心のタンパク質バッチについて考えられる最高濃度の間で、0.66mg Al/mLのAlOOH又はAlPO内の又はTBS(対照)内のFHA、PRN、及びFIMについて生成した。線形回帰の傾斜を、ANCOVAを使用して比較した。
【0116】
線形トレンドは、0.993より大きい相関係数(R)を持って、単独の抗原とアルミニウム塩アジュバントに吸着された抗原の両方において明瞭に検出することができる(図3)(表1)。
【0117】
【表1】
【0118】
ほとんどの部分について、アジュバントの添加は、特にFHA及びPRNについて、R値のわずかな減少を実際にもたらした。それは、十中八九、アジュバントマトリクスに固有のより大きい複雑さによってもたらされる変動性の増加による。標準曲線における試料ごとのアジュバント粒子サイズ分布及び/又は濃度の変化は、変動性を増加させ、相関係数に悪い影響を及ぼすことになる。
【0119】
検出限界(LOD)及び定量限界(LOQ)は、ブランクの標準偏差に基づくICH指針を使用して決定された(表1)[17]。PRN製剤は、全体として、最低のLOD及びLOQを有し、FIM及びFHAがそれに続くことが見出された。これは、FHAと比較して、PRN内の蛍光分子Trpのより高いモル濃度に関連付けられ得る。同一のw/v濃度下で、PRN試料が、FHAに比べてTrpの約2.6倍高いモル濃度をもたらすことが推定される。
【0120】
製剤に対するAlPOの添加は、全ての抗原についての較正曲線傾斜における有意の増加(p値<0.0001)をもたらし、感度の増加を示した(図3)。製剤に対するAlOOHの添加もまた、較正曲線傾斜に対して、全ての事例でAlPOと同じ程度ではないが、統計的に有意の影響を及ぼした。FHA製剤におけるAlOOHの含有は、傾斜を増加させ(p値=0.002)、感度の改善も示唆した。PRN及びFIM製剤内のAlOOHの存在は、傾斜を減少させ(それぞれ、p値=0.0007及びp値<0.0001)、感度の降下を示した。したがって、較正曲線感度が、考察中の抗原-アジュバントの組み合わせに特有であることが確立された。
【0121】
線形性限界(LOL)は、線形性からの逸脱についてのラン検定についてR≧0.980とp値>0.05の両方を生じた抗原の最高濃度として計算され、これは、抗原依存性があることが見出された(表1)。IFアッセイは、試験される製剤について許容できる程度に正確であった。FIM製剤は、試験試料の最高の総合パーセント回復を生じ、FHA及びPRNがそれに続いた(表2)。パーセント回復及び試験試料濃度又は特定のアルミニウム塩の存在に関する明らかなトレンドは存在しなかった。
【0122】
【表2】
【0123】
2D.アッセイ間変動性
低(10μg/mL)、中(50μg/mL)、及び高(100μg/mL)タンパク質濃度の、0.66mg Al/mLのAlOOHに吸着されたFHAの製剤を、アッセイ間変動性を調査するために使用した。低、中、高濃度試料についての変動係数(CV)は、実施された全部で10の実験について、それぞれ、7.4%、1.5%、及び0.6%であり、IFアッセイの高い再現性を示した(表3)。
【0124】
【表3】
【0125】
2E.アジュバント濃度の影響
アジュバント濃度の影響を調査するため、FHAについての較正曲線を、低(0.33mg Al/mL)、中(0.66mg Al/mL)、及び高(1.32mg Al/mL)アジュバント濃度で作成し、ANCOVAを使用して比較した。
【0126】
較正曲線の傾斜は、アジュバントの濃度に応じて著しく変化し、感度の変化を示した(図4)。0.33mg Al/mLのAlOOHの場合、較正曲線は、0.66mg Al/mL及び1.32mg Al/mLの製剤に比べて、有意に低い傾斜を有した(両方についてp値<0.0001)が、0.66mg Al/mLの傾斜と1.32mg Al/mLの傾斜との間に有意の差は存在しなかった(p値=0.6)(図4A)。AlPOの場合、0.33mg Al/mLから0.66mg Al/mLへのアジュバント濃度の増加は、較正曲線の傾斜を有意に増加させた(p値<0.0001)。しかしながら、1.32mg Al/mLへの更なる増加は、傾斜の減少を生じたが、0.33mg Al/mL曲線の傾斜より依然として有意に急峻である(p値=0.01)(図4B)。R値は、AlOOH濃度を増加させることによって改善するのが見られた(0.989から0.999に)。しかしながら、AlPOの濃度を増加させる場合、逆のことが得られた(0.992から0.980に)。これは、AlPO含量の増加が、飽和点の近くで蛍光を増強し、曲線の線形性を乱すことを示唆している可能性がある。対照的に、AlOOH濃度の増加は、依然として蛍光飽和を下回りながら、金属増強蛍光(MEF:metal enhanced fluorescence)を提供するのにちょうど十分であり得る。
【0127】
2F.緩衝液種及びpHの影響
緩衝液組成及びpHの影響は、種々の緩衝液種及びpHで製剤化された0.66mg Al/mLのAlOOH内のPRNの較正曲線を作成することによって調査し、ANCOVAを使用して比較した。
【0128】
異なる緩衝液種が中性pHで比較されたとき(図5A)、有意の差は傾斜に観察されなかった(p値=0.2)。しかしながら、pHを変更することは、PRN-AlOOH製剤についての較正曲線の傾斜に有意の変化をもたらした(p値=0.04)(図5B)。これらの結果は、抗原濃度の正確な決定を確保するために、較正曲線が試験試料の緩衝液pHに適合すべきであることを示唆する。正確度が最も重要である場合、緩衝液条件及びpHが試験試料及び較正曲線について同一であることが推奨される。正確度を効率又は制約のためにレバレッジすることができる、試料容積制限又は高スループットニーズ(すなわち、緩衝液組成、pH及びイオン強度のスクリーニング)等の或る特定の状況下で、単一緩衝液条件の較正曲線を利用すること(又は、複数の緩衝液条件をプールすること)は、オプションとすることができる。
【0129】
2G.パーセント吸着
抗原吸着のパーセントは、ワクチンの製剤開発中に所望のレベルに調整される必要がある重要なパラメーターである[22]。PRN-AlOOH製剤が、アルミニウム塩アジュバントに対する抗原のパーセント吸着を決定するIF法の有用性を調査するためのモデルとして使用された。異なるレベルの吸着を得るため、AlOOHを、異なる量のリン酸イオンで前処理した。リン酸イオンの濃度が0mMから80mMまで増加したとき、非結合PRNの濃度の有意の増加が、IFアッセイによって検出され(表4)、67%から7.6%への吸着のパーセントの減少になった。全抗原濃度の小さい減少が、リン酸塩によって処理された試料において検出され、それは、IFによるPRNの定量に対する、PRN吸着の程度又はリン酸塩濃度の或る程度の影響を示唆することができる。
【0130】
【表4】
【0131】
2H.マイクロケルダールとの比較
IF法は、マイクロケルダール技法と比較された。この基本的な分析技法は、有機窒素の定量を通してタンパク質濃度を決定し、アジュバント化試料と非アジュバント化試料の両方に適用することができる。未知の抗原濃度の試料(アジュバント化と非アジュバント化の両方)を、マイクロケルダール及びIFによって測定した。FHA、PRN、FHA-AlPO、及びPRN-AlPOについてのバッチにわたるパーセント差は、それぞれ、0.0%~16.0%、2.7%~7.1%、9.0%~14.1%、及び3.2%~6.6%であった(表5)。アジュバント製剤と非アジュバント化製剤の両方についての結果は、マイクロケルダール法とIF法の間で非常に良好な一致を示した(表5)。
【0132】
【表5】
【0133】
2I.インライン法:蛍光フローセルの概念実証-パートA
概念実証(POC:proof of concept)研究は、使い捨てフローセルに取り付けられた蛍光プローブを組み込んだプロトタイプシステムの機能及び正確度を実証するために行った。そのようなインライン蛍光測定は、処理ライン内でフローセルを積分することによって実施し、したがって、オフラインサンプリングについての必要性を回避した。フローセルは、環境光の干渉を回避するため、ブラックボックス内に配置した。ソース及びリターンからなる光ファイバーケーブルは、光度計とフローセルを接続した。280nmの波長を有する光源は、光学窓を通して試料内の電子を励起するために使用した。放出した光子は、光源と同じ角度で位置決めされた後方散乱光検出器によって検出した。吸収フィルター(emission filter)を検出器の前に設置することで、337nmのみを有する光子が通過し、光の望ましくない任意の波長を遮断することを可能にした。
【0134】
蛍光の強度は、フルオロフォア(芳香族アミノ酸)の量に比例し、したがって、タンパク質の濃度に比例する。この理論に基づいて、タンパク質濃度は、関心のタンパク質の較正曲線に基づいて定量することができる。FHAは、POC研究のためのモデル抗原として使用した。較正曲線を、アジュバント化FHA及び非アジュバント化FHAについて生成した。既知のFHA濃度の試料を、方法の事前の正確度及び精度(precision)を決定するために試験した。
【0135】
FHA濃度と蛍光信号との間の相関は、単独のFHAと、TBS内で0.66mg Al/mLのAlOOHに吸着したFHAの両方について線形応答R>0.99を示した(図7)。
【0136】
インライン法は、たとえフローセルの種々のバッチを使用するときでも、単独のFHAと、TBS内で0.66mg Al/mLのAlOOHに吸着したFHAの両方について高い再現性-18.4%未満の変動係数を示した(表6)。
【0137】
【表6】
【0138】
インライン法は、単独のFHAと、TBS内で0.66mg Al/mLのAlOOHに吸着したFHAの両方について高い正確度-94%を超える正確度を示した(表7)。
【0139】
【表7】
【0140】
2J.インライン法:蛍光フローセルの概念実証-パートB
更なる概念実証(POC)研究は、使い捨てフローセルに取り付けられた蛍光プローブを組み込んだプロトタイプシステムの機能及び正確度を更に調査するために行った。
【0141】
PRN(+/-AlPO)及びA05、骨髄炎菌血清群B抗原(+/-AlPO)を別個の実験において利用した。PRNは19のチロシン及び13のトリプトファンを有する。A05は10のフェニルアラニン及び5のチロシンを有する。AlPOは、蛍光を発する共役電子を欠いているため、アジュバントに吸着するタンパク質は、固有蛍光によって測定することもできるが、アジュバント粒子及びAlの光散乱は、そのイオン形態によって測定の正確度に影響を及ぼす場合がある。
【0142】
各タンパク質組成について、タンパク質濃度及び%吸着を、蛍光フローセルを使用して計算した(図8の場合と同様に)。この研究で使用され収集される励起波長及び放出波長は、それぞれ、280nm及び337nmであった。等間隔に配置された5つの濃度を有する試料が、標準曲線を構成するために選択された(表8)。標準曲線の正確度は、その後、較正範囲内の別の5つの製剤に対して検証した。
【0143】
【表8】
【0144】
試験されるタンパク質のそれぞれは、非アジュバント化及び/又はAlPOアジュバント化のいずれでも、タンパク質濃度を決定するときに優れた線形関係(R>0.98)を示した。本技法は、これらの抗原について吸着した原薬の稼働範囲(operating range)(表8)を定量することができた(データは示さず)。他の抗原と違って、A05は、タンパク質の蛍光強度に最も寄与するアミノ酸であるトリプトファンを欠いている。それでも、インライン法は、A05が試験されたときに、標準曲線において優れた線形結果を生じることができた。したがって、内因性の弱い蛍光強度にもかかわらず、A05等のチロシン及びフェニルアラニンベース抗原も、フローセルによる固有蛍光測定に適する。
【0145】
AlPOのパーセント(%)吸着は、アジュバント粒子がフローセルから分離して沈殿した後、インラインで決定された。これにより、蛍光プローブが上澄みの蛍光だけを測定することが可能になる。沈殿プロセスを支援し、詰まりを回避するため、試料を、最初の20分の沈降後に1秒間、チューブを通して短時間で圧送し、それに続いて、全体で45分の継続時間になるように、更なる25分の沈殿が設けられる。パーセント(%)吸着は、濃度に変換された、測定された上澄み蛍光、及び、理論的な吸着した試料濃度に基づいて計算した。これらの条件下で、フローセルは、SDS-PAGEによる結果と比較して、オフセット及び補正係数によって補正された、完全に吸着したA05及び部分的吸着したA05についての同等の結果を生じることができた。補正係数及びオフセットは、抗原バッチの差、貯蔵条件、及び濾過状態に応じて同様に変動する場合がある。
【0146】
IV.コメント
アルミニウム塩アジュバントの存在下でのタンパク質濃度の決定は、アジュバントの内因性の微粒子特性(particulate nature)及びアジュバント粒子に対するしばしば非常に強い抗原吸着によって、複雑なタスクである。濁度由来の干渉を回避するため、アルミニウム塩アジュバント化ワクチン内のタンパク質の定量のための固有蛍光(IF)の使用が検討された。本明細書で、タンパク質からのIFを、より一般的に使用される2つのアルミニウム塩アジュバントの存在下で検出することができ、そのIFが線形応答を生じることができることが証明される。その結果は、IFアッセイが、ほとんどのワクチンで使用される濃度範囲内でタンパク質抗原を十分に定量するのに、非常に正確で、再現性があり、感度があることを示す。
【0147】
ワクチン内のタンパク質濃度の決定のために通常使用される伝統的な方法と比較すると、多くの利点がIF法について明らかである。古典的な方法と対照的に、IFアッセイは、非常に単純で、非破壊的で、必要とされるアッセイ開発が最小限である。この文脈で、IF法は、バイオ医薬製品(biopharmaceutical product)及びワクチン内の全タンパク質を決定するために広く使用される方法であるマイクロケルダール法と同等の結果を生じることが示された[13,23]。IF法の別の利点は、IF法が、脱離、分離、又は化学反応についての必要性なしで、ワクチン試料に直接適用できることである。IFの非破壊的かつ非侵襲的特性は、おそらく、アッセイの最も重要な特徴であり、それらの特徴は、プロセス分析技術(PAT)ツールの実装のために、また、設計による品質(QbD:Quality by Design)アプローチを支持するために極めて重要である[24,25]。PAT概念は、実際には、品質特性をリアルタイムにモニターすることによってプロセスを理解することを目指す[25]。したがって、過剰処理及びリジェクトの数も低減しながら、試験効率及び一貫性を高めるためにインライン/オンラインで適用できる非破壊的定量法についての必要性が存在する。IF法は、インライン蛍光光度計を使用したワクチン製造中に抗原濃度の製造過程のモニタリングのために適合することができる[26]。
【0148】
本明細書において、一般的に使用されるアルミニウム塩アジュバントを含むワクチン内のタンパク質濃度を決定するための、直接的で、非破壊的で、単純で、安価な蛍光法アッセイが述べられる。方法は、ほとんどのワクチン内で見出されるタンパク質濃度範囲内で高い正確度、感度、及び再現性を示した。この技法の適用は、アルミニウムアジュバントを含むワクチン内のタンパク質濃度の決定に限定されず、なぜならば、この技法が、カチオン性ペプチド-CpG、スクアレン乳剤、サポニン、リポソーム等のような他のタイプのアジュバント系によって製剤化されたタンパク質の定量について大きな将来性を有するからである。
【0149】
本発明は、次の態様を包含する。
[項1]
選択された化合物の濃度を、前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法であって、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物について蛍光強度値を得ることであって、前記選択された化合物は少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含み、前記組成物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記組成物についての前記蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定されることと、
(b)(a)にて得られた前記蛍光強度値を、前記選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料の蛍光値を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、前記選択された化合物の濃度を前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定することと、
を含む、方法。
[項2]
(b)の較正曲線は、前記代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成され、前記較正試料内の前記代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される、項1に記載の方法。
[項3]
(b)の較正曲線は、前記代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも5つの較正試料を使用して作成される、項1又は2に記載の方法。
[項4]
(b)の較正曲線は、
(a)前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む前記組成物内で前記選択された化合物の疑わしい濃度の約50%、75%、100%、125%、及び150%を示す濃度を有する前記代表的化合物の少なくとも5つの較正試料を調製すること、
(b)(a)の各較正試料を、250nmから300nmの間の波長を使用して励起すること、
(c)(b)の各試料の放出スペクトルを、各較正試料について最大蛍光強度を生成する300nmから500nmの間の波長を使用して決定すること、
(d)前記最大蛍光強度を生成した(c)の前記波長における蛍光強度の値を、前記較正試料内の前記代表的化合物の濃度に対してプロットすることであって、それにより、前記代表的化合物の較正曲線を作成すること、
によって作成される、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
前記選択された化合物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖タンパク質複合体、ウィルス様粒子、又はウィルス懸濁液からなる群から選択される、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
前記代表的化合物は前記選択された化合物と同一である、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
前記代表的化合物は前記選択された化合物に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
前記代表的化合物は前記代表的化合物のアジュバント化複合体である、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
前記励起波長は280nmから290nmの間にあり、前記放出スペクトルは320nmから360nmの間の波長で決定される、項1~8のいずれか一項に記載の方法。
[項10]
選択された化合物のパーセント(%)吸着を、前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する方法であって、
(a)選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物の2つの試験試料を得ることであって、前記選択された化合物は少なくとも1つの芳香族アミノ酸を含み、第1の試験試料内で前記アジュバント化複合体は実質的に溶液内にあり、第2の試験試料内で前記アジュバント化複合体は実質的に溶液から分離して沈殿することと、
(b)(i)前記第1の試験試料について蛍光強度値を得ることであって、前記第1の試験試料は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記第1の試験試料についての前記蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定されること、及び、(ii)前記蛍光強度値を、前記選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、前記第1の試験試料内で前記選択された化合物の濃度を決定することによって、前記第1の試験試料内で前記選択された化合物の濃度を決定することと、
(c)(i)前記第2の試験試料の上澄みについて蛍光強度値を得ることであって、前記第2の試験試料の前記上澄みは250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記第2の試験試料の上澄みについての前記蛍光強度値を得るため300nmから500nmの間の波長で決定されること、及び、(ii)前記蛍光強度値を、前記選択された化合物を表す代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成された較正曲線と比較することであって、それにより、前記第2の試験試料内で前記選択された化合物の濃度を決定することによって、前記第2の試験試料の上澄み内で前記選択された化合物の濃度を決定することと、
(d)(c)にて決定された濃度を(b)にて決定された濃度で割ることによってパーセント(%)吸着を計算することであって、それにより、選択された化合物のパーセント(%)吸着を、前記選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物にて決定する、計算することと、
を含む、方法。
[項11]
(b)及び/又は(c)の較正曲線は、前記代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも3つの較正試料を使用して作成され、前記較正試料内の前記代表的化合物は250nmから300nmの間の波長で励起され、放出スペクトルは、前記較正試料のそれぞれについて300nmから500nmの間の波長で決定される、項10に記載の方法。
[項12]
(b)及び/又は(c)の較正曲線は、前記代表的化合物の異なる既知の濃度を含む少なくとも5つの較正試料を使用して作成される、項10又は11に記載の方法。
[項13]
(b)及び/又は(c)の較正曲線は、
(a)前記第2の試験試料内で実質的に溶液から分離して沈殿した前記アジュバント化複合体の疑わしい濃度の約50%、75%、100%、125%、及び150%を示す濃度を有する前記代表的化合物の少なくとも5つの較正試料を調製すること、
(b)(a)の各較正試料を、250nmから300nmの間の波長を使用して励起すること、
(c)(b)の各試料の放出スペクトルを、各較正試料について最大蛍光強度を生成する300nmから500nmの間の波長を使用して決定すること、
(d)前記最大蛍光強度を生成した(c)の前記波長における蛍光強度の値を、前記較正試料内の前記代表的化合物の濃度に対してプロットすることであって、それにより、前記代表的化合物の較正曲線を作成すること、
によって作成される、項10~12のいずれか一項に記載の方法。
[項14]
(b)及び(c)の較正曲線は同じ較正曲線である、項10~13のいずれか一項に記載の方法。
[項15]
前記選択された化合物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖タンパク質複合体、ウィルス様粒子、又はウィルス懸濁液からなる群から選択される、項10~14のいずれか一項に記載の方法。
[項16]
前記代表的化合物は前記選択された化合物と同一である、項10~15のいずれか一項に記載の方法。
[項17]
前記代表的化合物は前記選択された化合物に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、項10~15のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
前記代表的化合物は前記代表的化合物のアジュバント化複合体である、項10~17のいずれか一項に記載の方法。
[項19]
前記励起波長は280nmから290nmの間にあり、前記放出スペクトルは320nmから360nmの間の波長で決定される、項10~18のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
蛍光強度値を得ることは、フローセルに取り付けられた蛍光プローブによる、項1~19のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
インライン、オンライン、又はオフラインで実施される、項1又は10に記載の方法。
[項22]
前記選択された化合物は、アルミニウム塩、乳剤、ペプチド、核酸、及びその組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアジュバントによってアジュバント化される、項1~21のいずれか一項に記載の方法。
[項23]
前記アルミニウム塩はAlOOH及びAlPO の1つ以上である、項22に記載の方法。
[項24]
前記芳香族アミノ酸は、トリプトファン、チロシン、及びフェニルアラニンからなる群から選択される、項1~23のいずれか一項に記載の方法。
[項25]
前記選択された化合物の固有蛍光が決定される、項1~24のいずれか一項に記載の方法。
[項26]
前記選択された化合物の固有蛍光は、付加された蛍光プローブ又はマーカーの非存在下で決定される、項1~25のいずれか一項に記載の方法。
[項27]
前記選択された化合物は、約320nmから360nmの間の最大放出を有する、項1~26のいずれか一項に記載の方法。
[項28]
選択された化合物のアジュバント化複合体を含む組成物を製造する方法であって、選択された化合物の濃度を、項1~27のいずれか一項に記載の方法を使用して、前記選択された化合物のアジュバント化複合体のバッチにて決定することを含み、前記選択された化合物の前記アジュバント化複合体の前記バッチを組み込んだ組成物を製剤化することは、前記決定の結果に基づいて進められる、方法。
[項29]
ワクチン製剤内のタンパク質の濃度を測定するシステムであって、
前記ワクチン製剤がそこを通って流れることができる導管と、
蛍光強度センサーであって、前記導管に結合され、前記導管内の前記ワクチン製剤内の前記タンパク質の蛍光強度値を示す信号を出すことが可能な、蛍光強度センサーと、
前記センサーに結合され、前記センサーからの信号を受信し、プログラムを記憶する非一時的メモリを含むコンピューターと、
を備え、前記プログラムは、前記導管内の前記ワクチン製剤内の前記タンパク質の蛍光値を示す前記信号を、前記コンピューターにおいて前もって作成され記憶された較正曲線と比較し、前記信号と前記較正曲線の比較から、前記ワクチン製剤内の前記タンパク質の濃度の出力を提供する、システム。
[項30]
前記導管は、内部にタンパク質を有する前記ワクチン製剤の供給部と前記センサーの下流に位置する前記ワクチン製剤の貯蔵コンテナーとの間に延在する、項29に記載のシステム。
[項31]
ポンプは、前記センサーの上流の導管内にある、項30に記載のシステム。
[項32]
前記導管は前記ワクチン製剤の貯蔵コンテナーの入口と出口との間に延在し、前記センサーは前記入口と前記出口との間にある、項29に記載のシステム。
[項33]
ポンプは、前記センサーの下流の前記導管内にある、項32に記載のシステム。
本発明はその或る特定の実施形態を参照して記載されているが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修飾を行い得ることを理解する。添付の特許請求の範囲は、記載される具体的な実施形態に限定されない。
【0150】
参考資料
本明細書で言及される全ての特許及び出版物は、本発明の属する技術分野の当業者の技術水準の指標である。各々の引用される特許及び出版物はその全体が引用することにより本明細書の一部をなす。以下の参考資料は、全て本出願で引用されている。
[1] Agnolon V, Bruno C, Galletti B, Mori E, Ugozzoli M, Pergola C, et al. Multiplex immunoassay for in vitro characterization of acellular pertussis antigens in combination vaccines. Vaccine 2016; 34:1040-6.
[2] Katkocin DM, Hsieh C-L. Pharmaceutical Aspects of Combination Vaccines. In: Ellis RW, editor. Comb. Vaccines, Totowa, NJ: Humana Press; 1999, p. 51-93.
[3] Baldwin SL, Bertholet S, Reese VA, Ching LK, Reed SG, Coler RN. The Importance of Adjuvant Formulation in the Development of a Tuberculosis Vaccine. J Immunol 2012; 188:2189-97.
[4] Carter D, Reed SG. Role of adjuvants in modeling the immune response: Curr Opin HIV AIDS 2010; 5:409-13.
[5] Reed SG, Orr MT, Fox CB. Key roles of adjuvants in modern vaccines. Nat Med 2013; 19:1597-608.
[6] Hutcheon CJ, Becker JO, Russell BA, Bariola PA, Peterson GJ, Stroop SD. Physiochemical and functional characterization of antigen proteins eluted from aluminum hydroxide adjuvant. Vaccine 2006; 24:7214-25.
[7] Rinella JV, Workman RF, Hermodson MA, White JL, Hem SL. Elutability of Proteins from Aluminum-Containing Vaccine Adjuvants by Treatment with Surfactants. J Colloid Interface Sci 1998; 197:48-56.
[8] Fox CB, Kramer RM, Barnes V L, Dowling QM, Vedvick TS. Working together: interactions between vaccine antigens and adjuvants. Ther Adv Vaccines 2013; 1:7-20.
[9] Zhu D, Saul A, Huang S, Martin LB, Miller LH, Rausch KM. Use of o-phthalaldehyde assay to determine protein contents of Alhydrogel-based vaccines. Vaccine 2009; 27:6054-9.
[10] Hem SL, HogenEsch H, Middaugh CR, Volkin DB. Preformulation studies-The next advance in aluminum adjuvant-containing vaccines. Vaccine 2010; 28:4868-70.
[11] Ugozzoli M, Laera D, Nuti S, Skibinski DAG, Bufali S, Sammicheli C, et al. Flow cytometry: An alternative method for direct quantification of antigens adsorbed to aluminum hydroxide adjuvant. Anal Biochem 2011; 418:224-30.
[12] Amari JV, Levesque P, Lian Z, Lowden T, deAlwis U. Concentration determination of a recombinant vaccine antigen adsorbed onto an alum adjuvant by chemiluminescent nitrogen detection. Pharm Res 2005; 22:33-7.
[13] Wang H, Pampati N, McCormick WM, Bhattacharyya L. Protein Nitrogen Determination by Kjeldahl Digestion and Ion Chromatography. J Pharm Sci 2016; 105:1851-7.
[14] Eftink MR. Intrinsic Fluorescence of Proteins. In: Lakowicz JR, editor. Top. Fluoresc. Spectrosc., vol. 6, Boston: Kluwer Academic Publishers; 2002, p. 1-15.
[15] Ghisaidoobe A, Chung S. Intrinsic Tryptophan Fluorescence in the Detection and Analysis of Proteins: A Focus on Foerster Resonance Energy Transfer Techniques. Int J Mol Sci 2014; 15:22518-38.
[16] Poveda JA, Prieto M, Encinar JA, Gonzalez-Ros JM, Mateo CR. Intrinsic Tyrosine Fluorescence as a Tool to Study the Interaction of the Shaker B “Ball” Peptide with Anionic Membranes. Biochemistry (Mosc) 2003; 42:7124-32.
[17] ICH Expert Working Group. Validation of Analytical Procedures: Text and Methodology Q2(R1). Step 4 version 2015.
[18] Ma T, Zuazaga G. Micro-Kjeldahl Determination of Nitrogen. A New Indicator and an Improved Rapid Method. Ind Eng Chem Anal Ed 1942; 14:280-2.
[19] Lakowicz JR, Geddes CD, editors. Topics in Fluorescence Spectroscopy. New York: Plenum Press; 1991.
[20] Hem SL, Johnston CT. Production and Characterization of Aluminum-Containing Adjuvants. Vaccine Dev. Manuf., Hoboken, NJ, USA: John Wiley & Sons, Inc.; 2014, p. 319-46.
[21] Denoel P, Poolman J, Carletti G, Veitch K. Effects of adsorption of acellular pertussis antigens onto different aluminum salts on the protective activity in an intranasal murine model of Bordetella pertussis infection. Vaccine 2002; 20:2551-5.
[22] Hem SL, Hogenesch H. Relationship between physical and chemical properties of aluminum-containing adjuvants and immunopotentiation. Expert Rev Vaccines 2007; 6:685-98.
[23] Doshi J., Ravetkar S., Ghole V., Rehani K. Comparative quantitation for the protein content of diphtheria and tetanus toxoids by DC protein assay and Kjeldahl method. Biologicals 2003; 31:187-9.
[24] Pramod K, Tahir Ma, Charoo N, Ansari S, Ali J. Pharmaceutical product development: A quality by design approach. Int J Pharm Investig 2016; 6:129.
[25] Bakeev KA, editor. Process Analytical Technology: Spectroscopic Tools and Implementation Strategies for the Chemical and Pharmaceutical Industries. Chichester, UK: John Wiley & Sons, Ltd; 2010.
[26] Faassen S, Hitzmann B. Fluorescence Spectroscopy and Chemometric Modeling for Bioprocess Monitoring. Sensors 2015; 15:10271-91.
[27] (Guidance for Industry PAT - A Framework for Innovative Pharmaceutical Development, Manufacturing, and Quality Assurance, Pharmaceutical CGMPs, September 2004).
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10