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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】研磨用組成物及び合成樹脂研磨方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20240105BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240105BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
B24B37/00 H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020559320
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048762
(87)【国際公開番号】W WO2020122191
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018234788
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019179366
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石田 博之
(72)【発明者】
【氏名】若林 諒
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-537704(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102516882(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108188863(CN,A)
【文献】特表2018-533071(JP,A)
【文献】特開2001-342456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
H01L 21/304
H01L 21/463
B24B 3/00 - 3/60
B24B 21/00 - 39/06
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、ピロリドン化合物又はカプロラクタム化合物、及び水を含有し、pHが3.0以上3.4以下である、研磨用組成物。
【請求項2】
前記砥粒がアルミナである、請求項に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記アルミナの体積基準の平均粒子径が0.1μm以上0.5μm以下である、請求項に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記アルミナのBET比表面積が10m/g以上50m/g以下である、請求項またはに記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記アルミナのα化率が50%以上である、請求項のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
前記砥粒がシリカである、請求項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
前記シリカの体積基準の平均粒子径が0.02μm以上0.3μm以下である、請求項に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
前記価数が1価の酸のアルミニウム塩の含有量が5質量%以上15質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記価数が1価の酸のアルミニウム塩が硝酸アルミニウムまたは塩化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項10】
合成樹脂の研磨に使用される請求項1~のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて合成樹脂研磨する、合成樹脂研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、特に合成樹脂製品等を研磨する用途に適した研磨用組成物、及び研磨用組成物を用いて合成樹脂製品等を研磨する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される研磨用組成物は、アルミナからなる砥粒、硝酸アルミニウムやグリコール類等を含む研磨促進剤、及び水を含有し、合成樹脂製品等を研磨する用途に用いられる。また、特許文献2に開示される研磨用組成物は、砥粒、及びピロリドン化合物/又はポリビニルカプロラクタムの水分散液を含み、有機高分子眼科基材を研磨する用途に用いられる。
【0003】
これら研磨用組成物には、研磨対象物を迅速に研磨する能力(即ち、高い研磨能力)を有することが求められている。しかしながら、例えば、特許文献1の研磨用組成物においては、アルミナを増量して研磨能力を高めているが、原料コストが増大し、アルミナの粒子径を大きくした場合には研磨後の研磨対象物の表面粗さが大きくなる。また、硝酸アルミニウムを増量した場合には研磨機の腐食及び手あれの問題が生じ、グリコール類を増量した場合にはアルミナの場合と同様、原料コストが増大する。特許文献2の研磨用組成物においても、研磨能力の向上は図られているが、研磨後の研磨対象物の表面性状や研磨用組成物の研磨能力の安定性については明らかではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-11239号公報
【文献】特表2008-537704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、好適に使用可能な研磨用組成物、特に合成樹脂製品等を研磨する用途においてより好適に使用可能な研磨用組成物を提供すること、及び研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、砥粒、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、ピロリドン化合物又はカプロラクタム化合物及び水を含有し、pHが7.0以下である、研磨用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、好適に使用可能な研磨用組成物、特に合成樹脂製品等を研磨する用途においてより好適に使用可能な研磨用組成物が提供される。また本発明によれば、このような研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する研磨方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、砥粒、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、ピロリドン化合物又はカプロラクタム化合物及び水を含有し、pHが7.0以下である。研磨対象物は特に限定されないが、合成樹脂を研磨するために好ましく用いることができる。研磨用組成物は、例えば、合成樹脂基板あるいは合成樹脂製品を得るための半製品を研磨する用途に用いられる。合成樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂(ポリメチルメタアクリル)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニルエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの完全フッ素化樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)などの部分フッ素化樹脂、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などのフッ素化樹脂共重合体)等が挙げられる。また熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂を研磨する用途に好適に使用でき、特にアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂を研磨する用途に一層好適に使用することができる。
【0009】
また、研磨対象物の成形方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の成形方法としては、例えば、射出成形、ブロー成形、押出し成形、Tダイ法、インフレーション法、真空成形、圧空成形、カレンダー成形等が挙げられる。また熱硬化性樹脂の成形方法としては、例えば、注型、真空成形、圧空成形、圧縮成形、プレス成形、ハンドレイアップ、圧縮成形、プレス成形、射出成成形等が挙げられる。本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、これらの成形方法により成形された合成樹脂を研磨する用途に好適に使用することができ、具体的にはこれらの成形方法により成形、また加工された合成樹脂に生じる加工痕などの欠陥やうねりを除去し、低欠陥、平坦、平滑な表面を得ることができる。
【0010】
砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨する役割を担う。砥粒は、アルミナ、シリカ、酸化セリウム、ジルコニア、チタニア、酸化鉄、酸化マンガンなどのケイ素及び金属元素の酸化物からなる粒子を用いることができる。なかでもアルミナ及びシリカが好適である。アルミナは、α-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、κ-アルミナ、及び非晶質アルミナのいずれであってもよい。また、例えば、アルミナ等の砥粒に加えて、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニア、コロイダルチタニア、フュームドシリカ、フュームドアルミナ、フュームドジルコニア、フュームドチタニア、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、及びチタニアゾルなどを少なくとも1種含有してもよい。コロイド状の金属酸化物は、研磨用組成物中においてコロイド状に分散することによって研磨用組成物の粘度を増大する。これにより、研磨用組成物中の砥粒の分散性が向上し、砥粒のケーキングが抑制される。これらの金属酸化物はまた、研磨用組成物中において、砥粒同士の凝集を抑制する。これにより、凝集した砥粒に起因するスクラッチの発生が抑制される。
【0011】
砥粒の体積基準の平均粒子径(以下「D50」と記すこともある)は、特に制限はないが、例えばアルミナの場合は0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。またシリカの場合は0.05μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を有することができる。また、砥粒の体積基準の平均粒子径は、研磨速度の観点からは、例えばアルミナの場合は5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1.5μm以下がさらに好ましい。またシリカの場合は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。また、表面性状の観点からは、例えばアルミナの場合は、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましい。またシリカの場合は0.3μm以下が好ましく、0.25μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。なお、本発明において体積基準の平均粒子径とはレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置で測定した累積中央値を示す。
【0012】
砥粒の体積基準の積算粒子径分布における10%粒子径(小粒径側からの積算度数が10%となる粒子径。以下「D10」と記すこともある)は、例えばアルミナの場合は0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.15μm以上がさらに好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を有することができる。また、D10は例えばアルミナの場合は1μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましく、0.25μm以下がさらにより好ましく、0.2μm以下が最も好ましい。この範囲であれば、表面性状が良好になる。
【0013】
砥粒の体積基準の積算粒子径分布における90%粒子径(小粒径側からの積算度数が90%となる粒子径。以下「D90」と記すこともある)は、例えばアルミナの場合は0.15μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.25μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が最も好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を有することができる。また、D90は例えばアルミナの場合は8μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましく、1μm以下がより好ましく、0.6μm以下がさらに好ましく、0.5μm以下がさらにより好ましく、0.4μm以下が最も好ましい。この範囲であれば、表面性状が良好になる。
【0014】
砥粒のD50に対するD90の比率(D90/D50)は、例えばアルミナの場合は1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を有することができる。また、D90/D50は例えばアルミナの場合は2.5以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。この範囲であれば、表面性状が良好になる。
【0015】
砥粒のD10に対するD90の比率(D90/D10)は、例えばアルミナの場合は1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、1.7以上が最も好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を有することができる。また、D90/D10は例えばアルミナの場合は6.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましく、2.1以下が最も好ましい。この範囲であれば、表面性状が良好になる。
【0016】
砥粒のD10に対するD50の比率(D50/D10)は、例えばアルミナの場合は1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を有することができる。また、D50/D10は例えばアルミナの場合は2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。この範囲であれば、表面性状が良好になる。
【0017】
また、砥粒のBET比表面積については、特に制限はないが、例えばアルミナの場合は5m/g以上が好ましく、10m/g以上がより好ましく、15m/g以上がさらに好ましい。また、250m/g以下が好ましく、50m/g以下がより好ましく、25m/g以下がさらに好ましい。この範囲であれば、良好な表面形状を保ちながら高い研磨速度を有することができる。なお、BET比表面積は例えばマイクロメリテックス社製のFlowSorbII2300を用いて測定することができる。砥粒に吸着させるガスとしては窒素、アルゴン、クリプトン等を使用することができる。
【0018】
また、砥粒としてアルミナを用いる場合、そのα化率は特に制限はないが、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。この範囲であれば、良好な表面形状を保ちながら高い研磨速度を有することができる。なお、α化率は例えばX線回折測定による(113)面回折線の積分強度比から求めることができる。
【0019】
また、本発明の研磨液中に含有される砥粒の濃度は、特に制限はないが、例えばアルミナの場合は、通常、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。またシリカの場合は0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を有することができる。また砥粒の濃度は、例えばアルミナの場合は、40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。またシリカの場合は40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。この範囲であれば、研磨用組成物のコストが適切となる。
【0020】
価数が1価の酸のアルミニウム塩は研磨促進剤としての機能、および被研磨面の面品質を向上する機能を有する。価数が1価の酸のアルミニウム塩を少量しか含有しない研磨用組成物は、研磨能力が低い。従って、研磨用組成物の研磨能力をより確実に向上させるという観点から見た場合、研磨用組成物中の価数が1価の酸のアルミニウム塩の含有量は、0.01質量%以上であることが必要であり、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、4質量%超がさらに好ましく、5質量%以上が最も好ましい。一方、研磨用組成物の価数が1価の酸のアルミニウム塩を大量に含有しても性能の大幅な向上は得られずコストの面で不利となるため、15質量%以下とする。これらの含有量は、価数が1価の酸のアルミニウム塩が水和水を有する場合は、水和水を除いた含有量である。なお、価数が1価の酸のアルミニウム塩の好ましい例として、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。
【0021】
前記実施態様に係る研磨用組成物は、研磨促進剤として硝酸アルミニウム以外に、無機酸、有機酸、またはこれらの塩を含んでもよい。無機酸の具体例としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、スルファミン酸等が挙げられる。有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ニコチン酸、ピコリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0022】
塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩)、アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩)、アルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩)等が挙げられる。塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
【0023】
前記実施態様に係る研磨用組成物は、水溶性ポリマーとしてピロリドン化合物又はカプロラクタム化合物を含む。水溶性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは3000以上であり、より好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは10000以上であり、最も好ましくは30000以上である。これにより、スラリーの分散性向上との技術的効果がある。また、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下、さらに好ましくは10万以下である。これにより、安定性が向上する技術的効果を有する。
【0024】
前記実施態様に係る研磨組成物において用いられる好適なピロリドン化合物は、ポリビニルピロリドン(以下、PVPという。)である。本発明におけるスラリー組成物に用いられるPVPの重量平均分子量は3,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましい。また、60,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。これらの範囲内の重量平均分子量をもつPVPは様々な化学製品供給業者から容易に入手できる。
【0025】
ピロリドン化合物はPVP以外の化合物として、例えば、N-オクチル-2-ピロリドン、N-ドデシル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、N-ヘキシル-2-ピロリドン、N-デシル-2-ピロリドン、N-オクタデシル-2-ピロリドン、N-ヘキサデシル-2-ピロリドン、ポリビニルピロリドンのコポリマーが挙げられ、これらを組み合わせても構わない。
【0026】
ピロリドン化合物は該スラリー組成物中の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。ピロリドン化合物は、価数が1価の酸のアルミニウム塩と共に含有されることにより合成樹脂の研磨促進に有効に働く。
【0027】
カプロラクタム化合物はε-カプロラクタムと呼ばれる含窒素有機化合物であり、そのほとんどが、ナイロン6の製造に使用されている。カプロラクタムはピロリドン化合物の代替として使用することができる。カプロラクタム化合物の含有量は、スラリー組成物中0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。ε-カプロラクタムの合成法は、シクロヘキサノンからシクロヘキサノンオキシムを合成し、これをベックマン転位によりε-カプロラクタムに転換する方法が主要な工業的方法として知られている。シクロヘキサノンからシクロヘキサノンオキシムを合成する方法としては、例えば、チタノシリケート触媒の存在下に、シクロヘキサノン、過酸化水素、及びアンモニアを反応させることによりシクロヘキサノンオキシムを製造する際に、反応系から使用済み触媒を取り出し、この使用済み触媒と未使用の触媒を併用して反応を行う方法等がある。
【0028】
前記実施態様に係る研磨組成物は、水溶性ポリマーとして、ピロリドン化合物又はカプロラクタム化合物に加えてこれ以外の水溶性ポリマーを含んでもよい。例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類や、セルロース誘導体、デンプン誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンオキサイド等であってもよい。
【0029】
水は、研磨用組成物中の水以外の成分を分散又は溶解する媒質としての役割を担う。水は、工業用水、水道水、蒸留水、又はそれらをフィルター濾過したものであってもよく、不純物をできるだけ含有しないことが好ましい。
【0030】
研磨用組成物のpHは7.0以下であり、6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.5以下がさらに好ましい。また2.0以上が好ましく、2.3以上がより好ましい。また、研磨能力の向上の観点から、pHは2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、3.6以上がさらに好ましい。また、4.5以下が好ましく、4.4以下がより好ましく、4.3以下がさらに好ましい。研磨用組成物のpHがこの範囲であれば、研磨用組成物の研磨能力が向上される。また、長期保管時の経時変化に対する安定性の観点からは2.8以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。また、3.6以下が好ましく、3.4以下がより好ましい。研磨用組成物のpHがこの範囲であれば、長期に亘って安定した研磨性能を保持することができる。なお、pHは前述の酸、または水酸化カリウム等の公知のアルカリを適宜加えることで調整することができる。
【0031】
研磨用組成物のゼータ電位は0mV以上が好ましい。研磨用組成物のゼータ電位がこの範囲であれば、研磨用組成物の研磨能力が向上され、また研磨用組成物の安定性が向上する。
【0032】
研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨するときには、研磨パッドを研磨対象物に押し付けた状態で、研磨用組成物を研磨パッドに供給しながら研磨パッド及び研磨対象物のいずれか一方を他方に対して摺動させる。研磨時に供給する研磨用組成物の温度が低すぎる場合には、研磨用組成物が凍結したり、研磨用組成物の冷却コストが嵩んだりする虞がある。
【0033】
前記実施形態の研磨用組成物は、消泡剤、防カビ剤、界面活性剤、防錆剤等をさらに含有してもよい。
【0034】
前記実施形態に係る研磨用組成物は、使用時の濃度よりも高い濃度にて希釈用原液を製造し、その希釈用原液を水で希釈することによって調製されてもよい。使用時の濃度よりも高い濃度にて希釈用原液を製造することにより、研磨用組成物の輸送コストや保管場所を抑えることができる。
【実施例
【0035】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1~1~1-21においては、アルミナ、ポリビニルピロリドン、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩である研磨促進剤、及び水を混合して研磨用組成物を調製した。実施例1-1~1-21の各研磨用組成物中のアルミナ、ポリビニルピロリドン、研磨促進剤の含有量、アルミナの体積基準の平均粒子径および水溶性ポリマーの重量平均分子量、各研磨組成物のゼータ電位の正負およびpHは表1に示すとおりである。比較例1-1~1-25においては、表2に示されるアルミナ、水溶性ポリマー、研磨促進剤及び水を混合して研磨用組成物を調製した。pHは、硝酸、または水酸化カリウムを適宜加えて調整した。なお、アルミナの体積基準の平均粒子径は株式会社堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950で、研磨用組成物のゼータ電位は協和界面化学株式会社製の電気音響法高濃度ゼータ電位計ZetaProbeで正負を測定し、pHは株式会社堀場製作所社製のpHメーターF-72で測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
実施例1-1~1-21及び比較例1-1~1-25の研磨用組成物を用いて以下の研磨条件にてアクリル樹脂を研磨した。
研磨対象物:アクリル樹脂(ロックウェル硬度M85)
研磨機:日本エンギス株式会社製EJ-380IN
研磨パッド:フジボウ愛媛株式会社製スエードパッドN17
研磨荷重:150g/cm2(14.7kPa)
研磨時間:3分
研磨用組成物の使用量:45ml
研磨用組成物の供給量:15ml/分
【0039】
アクリル樹脂の研磨速度は、メトラー・トレド株式会社製電子秤XS205により、研磨前後のアクリル樹脂の重量差から算出した。得られた研磨速度値を表1及び表2に示した。研磨後のアクリル樹脂の研磨面を株式会社キーエンス社製レーザー顕微鏡VK-X200、対物・接眼レンズともに20倍、観測視野角528×705μmにより観察することにより、表面性状を評価した。表面にスクラッチが全く観察されない場合をA、前述視野角におけるスクラッチの数が1~2本の場合をB、3~10本の場合をC、11本以上の場合をDで表示した。
【0040】
また、研磨用組成物の安定性は、80℃に加温したYamato社製送風定温恒温器DK600Tに研磨用組成物を7日間保管した後、研磨速度を測定し、保管前後の研磨速度から変化率を算出した。研磨速度の変化率が10%以内の場合をA、10~20%の場合をB、20%以上の場合をCで表示した。研磨用組成物の安定性を評価していないものは-で表示した。
【0041】
表1から明らかなように、アルミナ、ポリビニルピロリドン、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、及び水を混合して研磨用組成物を使用した実施例1-1~1-21では、研磨速度が1.50μm/分を上回り、かつスクラッチが少なく表面性状が良好であった。さらに、pHが2.8~4.0の範囲にある実施例1-3、1-12~1-14は研磨用組成物の安定性が良好で、特に、pH3.2の実施例1-13は安定性が極めて良好であった。これに対して、表2に示されるように、水溶性ポリマーがポリビニルピロリドン以外である比較例1-5~1-12、水溶性ポリマーを含まない比較例1-1および1-3、研磨促進剤が価数が1価の酸のアルミニウム塩以外である比較例1-13~1-21、研磨促進剤を含まない比較例1-1および1-2、価数が1価の酸のアルミニウム塩の含有量が15質量%を超える比較例1-4、pHが7.0よりも高い比較例1-22~1-24、砥粒を含まない比較例1-25では、研磨速度が低いか、スクラッチが多く表面性状が良好でない結果であった。驚くべきことに、砥粒とポリビニルピロリドンからなる比較例1-2の研磨速度が1.24μm/min、砥粒と価数が1価の酸のアルミニウム塩からなる比較例1-3の研磨速度が1.30μm/minであるのに対し、砥粒に加えてポリビニルピロリドンと硝酸アルミニウムを混合した実施例1-3では研磨速度が3.80μm/minと特異的に高い研磨速度が得られることが確認できた。
【0042】
(実施例2)
実施例2-1においては、表3に示されるシリカ、ポリビニルピロリドン、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩である研磨促進剤、及び水を混合して研磨用組成物を調製した。各研磨用組成物中のシリカ、ポリビニルピロリドン、研磨促進剤の含有量、アルミナの体積基準の平均粒子径および水溶性ポリマーの重量平均分子量、各研磨組成物のゼータ電位の正負およびpHは表3に示すとおりである。
比較例2-1~2-3においては、表3に示されるシリカ、水溶性ポリマー、研磨促進剤及び水を混合して研磨用組成物を調製した。pHは、硝酸、または水酸化カリウムを適宜加えて調整した。なお、シリカの体積基準の平均粒子径は株式会社堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950で、研磨用組成物のゼータ電位は協和界面化学株式会社製の電気音響法高濃度ゼータ電位計ZetaProbeで正負を測定し、pHは株式会社堀場製作所社製のpHメーターF-72で測定した。評価条件は実施例1と同様の条件とし、評価を行った。
【0043】
【表3】
【0044】
表3から明らかなように、シリカ、ポリビニルピロリドン、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、及び水を混合して研磨用組成物を使用した実施例2-1では、研磨速度が1.00μm/分を上回り、かつスクラッチが少なく表面性状が良好であった。これに対して、水溶性ポリマーを含まない比較例2-3、研磨促進剤を含まない比較例2-2、水溶性ポリマーおよび研磨促進剤を含まない比較例2-1では、研磨速度が低く、スクラッチも実施例2-1に比べるとやや劣る結果であった。
【0045】
(実施例3)
実施例3-1および3-2、並びに比較例3-1~3-3では、実施例1と同様に、表4に示されるアルミナ、水溶性ポリマー、研磨促進剤、及び水を混合して研磨用組成物を調製した。得られた研磨用組成物を使用して以下の研磨条件にてポリカーボネート樹脂を研磨した。なお、表4には、表1及び表2と同様に、各研磨用組成物中のアルミナ、ポリビニルピロリドン、価数が1価の酸のアルミニウム塩の含有量、アルミナの体積基準の平均粒子径および水溶性ポリマーの重量平均分子量、各研磨組成物のゼータ電位およびpHが示されている。
研磨対象物:ポリカーボネート樹脂(ロックウェル硬度M70)
研磨機:日本エンギス株式会社製EJ-380IN
研磨パッド:フジボウ愛媛株式会社製スエードパッドN17
研磨荷重:150g/cm2(14.7kPa)
研磨時間:3分
研磨用組成物の使用量:45ml
研磨用組成物の供給量:15ml/分
【0046】
ポリカーボネート樹脂の研磨速度は、メトラー・トレド株式会社製電子秤XS205により、研磨前後のポリカーボネート樹脂の重量差から算出した。得られた研磨速度値を表4に示した。研磨後のポリカーボネート樹脂の研磨面を株式会社キーエンス社製レーザー顕微鏡VK-X200、対物・接眼レンズともに20倍、観測視野角528×705μmにより観察することにより、表面性状を評価した。表面にスクラッチが全く観察されない場合をA、前述視野角におけるスクラッチの数が1~2本の場合をB、3~10本の場合をC、11本以上の場合をDで表示した。また、研磨用組成物の安定性は、実施例1と同様に評価を行った。
【0047】
【表4】
【0048】
表4から明らかなように、アルミナ、ポリビニルピロリドン、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、及び水を混合して研磨用組成物を使用した実施例3-1および3-2では、研磨速度が0.8μm/分を上回り、かつスクラッチが少なかった。これに対して、ポリビニルピロリドン及び/又は価数が1価の酸のアルミニウム塩を含まない比較例3-1~3-3では、研磨速度が低いか、スクラッチが多く表面性状が良好でない結果であった。
【0049】
(実施例4)
実施例4-1~4-2、並びに比較例4-1~4-6では、実施例1、実施例2と同様に、表5に示されるアルミナまたはシリカ、水溶性ポリマー、研磨促進剤、及び水を混合して研磨用組成物を調製した。得られた研磨用組成物を使用して以下の研磨条件にてポリイミド樹脂を研磨した。
研磨対象物:ポリイミド樹脂(ロックウェル硬度M50)
研磨機:日本エンギス株式会社製EJ-380IN
研磨パッド:フジボウ愛媛株式会社製スエードパッドN17
研磨荷重:200g/cm(14.7kPa)
研磨時間:30分
研磨用組成物の使用量:45ml
研磨用組成物の供給量:15ml/分
なお、表5には、表1と同様に、各研磨用組成物中のアルミナまたはシリカ、ポリビニルピロリドン、価数が1価の酸のアルミニウム塩の含有量、アルミナの体積基準の平均粒子径および水溶性ポリマーの重量平均分子量、各研磨組成物のゼータ電位およびpHが示されている。
【0050】
ポリイミド樹脂の研磨速度は、メトラー・トレド株式会社製電子秤XS205により、研磨前後のポリイミド樹脂の重量差から算出した。得られた研磨速度値を表5に示した。研磨後のポリイミド樹脂の研磨面を株式会社キーエンス社製レーザー顕微鏡VK-X200、対物・接眼レンズともに20倍、観測視野角528×705μmにより観察することにより、表面性状を評価した。表面にスクラッチが全く観察されない場合をA、前述視野角におけるスクラッチの数が1~2本の場合をB、3~10本の場合をC、11本以上の場合をDで表示した。また、研磨用組成物の安定性は、実施例1と同様に評価を行った。
【0051】
【表5】
【0052】
表5から明らかなように、アルミナまたはシリカ、ポリビニルピロリドン、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、及び水を混合して研磨用組成物を使用した実施例4-1~4-2では、研磨速度が0.1μm/分を上回り、かつスクラッチが少なかった。これに対して、ポリビニルピロリドン及び/又は価数が1価の酸のアルミニウム塩を含まない比較例4-1~4-6では、研磨速度が低く、またスクラッチも実施例4-1~4-2に比べるとやや劣る結果であった。
【0053】
(実施例5)
実施例5-1、並びに比較例5-1~5-3では、実施例1と同様に、表6に示されるアルミナ、水溶性ポリマー、研磨促進剤、及び水を混合して研磨用組成物を調製した。得られた研磨用組成物を使用して以下の研磨条件にてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を研磨した。
研磨対象物:ポリテトラフルオロエチレン(ロックウェル硬度R20)
研磨機:日本エンギス株式会社製EJ-380IN
研磨パッド:フジボウ愛媛株式会社製スエードパッドN17
研磨荷重:150g/cm2(14.7kPa)
研磨時間:3分
研磨用組成物の使用量:45ml
研磨用組成物の供給量:15ml/分
【0054】
ポリテトラフルオロエチレンの研磨速度は、メトラー・トレド株式会社製電子秤XS205により、研磨前後のポリテトラフルオロエチレンの重量差から算出した。得られた研磨速度値を表4に示した。研磨後のポリテトラフルオロエチレンの研磨面を株式会社キーエンス社製レーザー顕微鏡VK-X200、対物・接眼レンズともに20倍、観測視野角528×705μmにより観察することにより、表面性状を評価した。表面にスクラッチが全く観察されない場合をA、前述視野角におけるスクラッチの数が1~2本の場合をB、3~10本の場合をC、11本以上の場合をDで表示した。また、研磨用組成物の安定性は、実施例1と同様に評価を行った。
【0055】
【表6】
【0056】
表6から明らかなように、アルミナ、ポリビニルピロリドン、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、及び水を混合して研磨用組成物を使用した実施例5-1では、研磨速度が0.50μm/分以上となり、かつスクラッチが少なかった。これに対して、ポリビニルピロリドン及び/又は価数が1価の酸のアルミニウム塩を含まない比較例5-1~5-3では、研磨速度が低いか、スクラッチが多く表面性状が良好でない結果であった。
【0057】
(実施例6)
実施例6-1、並びに比較例6-1~6-3では、実施例1と同様に、表7に示されるアルミナ、水溶性ポリマー、研磨促進剤、及び水を混合して研磨用組成物を調製した。得られた研磨用組成物を使用して以下の研磨条件にてエポキシ樹脂を研磨した。
研磨対象物:エポキシ樹脂(ロックウェル硬度M80-110)
研磨機:日本エンギス株式会社製EJ-380IN
研磨パッド:フジボウ愛媛株式会社製スエードパッドN17
研磨荷重:150g/cm2(14.7kPa)
研磨時間:3分
研磨用組成物の使用量:45ml
研磨用組成物の供給量:15ml/分
【0058】
エポキシ樹脂の研磨速度は、メトラー・トレド株式会社製電子秤XS205により、研磨前後のエポキシ樹脂の重量差から算出した。得られた研磨速度値を表4に示した。研磨後のエポキシ樹脂の研磨面を株式会社キーエンス社製レーザー顕微鏡VK-X200、対物・接眼レンズともに20倍、観測視野角528×705μmにより観察することにより、表面性状を評価した。表面にスクラッチが全く観察されない場合をA、前述視野角におけるスクラッチの数が1~2本の場合をB、3~10本の場合をC、11本以上の場合をDで表示した。また、研磨用組成物の安定性は、実施例1と同様に評価を行った。
【0059】
【表7】
【0060】
表7から明らかなように、アルミナ、ポリビニルピロリドン、0.01質量%以上15質量%以下の価数が1価の酸のアルミニウム塩、及び水を混合して研磨用組成物を使用した実施例6-1では、研磨速度が0.80μm/分を上回り、かつスクラッチが少なかった。これに対して、ポリビニルピロリドン及び/又は価数が1価の酸のアルミニウム塩を含まない比較例6-1~6-3では、研磨速度が低いか、スクラッチが多く表面性状が良好でない結果であった。