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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】固体燃料バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 1/02 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
F23D1/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020568185
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2020002138
(87)【国際公開番号】W WO2020153404
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-07-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/002549
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】嶺 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】馬場 彰
(72)【発明者】
【氏名】倉増 公治
(72)【発明者】
【氏名】川添 裕三
(72)【発明者】
【氏名】水戸 昌平
(72)【発明者】
【氏名】谷口 斉
(72)【発明者】
【氏名】北風 恒輔
【合議体】
【審判長】鈴木 充
【審判官】村山 美保
【審判官】間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207559(WO,A1)
【文献】特開平4-24404(JP,A)
【文献】特許第6231047(JP,B2)
【文献】特開2003-240227(JP,A)
【文献】特開平9-112820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料とその搬送気体の混合流体が流れ、火炉に向かって開口する燃料ノズルと、
前記燃料ノズルの外周側に配置され、燃焼用気体を噴出させる燃焼用ガスノズルと、
前記燃料ノズルの中心側に設けられ、前記燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を前記混合流体に付与する燃料濃縮器とを備えた固体燃料バーナであって、
前記燃料濃縮器は、前記混合流体に旋回を与える複数の羽根を有し、各々の羽根が燃料ノズルの内側に全面固定されることなく前記燃料ノズルの内面から離れて配置されるものであって、前記混合流体の流れ方向の上流側に配置される第1の旋回器と、前記第1の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に配置され、前記複数の羽根の旋回方向が前記第1の旋回器とは逆方向である第2の旋回器と、を有し、
前記第2の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に、前記燃料ノズルの流路を流路断面における内側と外側とに区画する流路区画部材が設けられ、
前記第1の旋回器の外径は、前記流路区画部材の上流端の内径以下であり、
前記第1の旋回器で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給し、
前記流路区画部材は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状であり、
前記第2の旋回器の外径が、前記流路区画部材の上流端の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きいことを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項2】
前記燃料ノズルの流路は、内径が、前記第1の旋回器の上流側では同一または単調増加の上流部と、前記上流部の下流側に連通して内径が徐々に拡大する拡管部と、前記拡管部の下流側に連通して内径が一定の下流部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の固体燃料バーナ。
【請求項3】
前記第1の旋回器の少なくとも一部が前記燃料ノズルの流路の上流部の範囲に位置し、
前記第2の旋回器の少なくとも一部が前記燃料ノズルの流路の下流部の範囲に位置する
ことを特徴とする請求項に記載の固体燃料バーナ。
【請求項4】
前記各旋回器の外径は、前記燃料ノズルの流路の上流部の内径未満である
ことを特徴とする請求項又はに記載の固体燃料バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料を搬送して燃焼させる固体燃料バーナに関し、特にバイオマス粒子のように粒径の大きな燃料粒子に適した固体燃料バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント等のボイラに用いられる固体燃料バーナの着火性を向上させ、火炎の安定性を高めるため、燃料濃度を局部的に高めることが行われている。
一般に微粉炭等を燃料とする固体燃料バーナでは、燃料搬送ガスと燃料粒子との混合流体に対して、燃料ノズル内でノズル内壁面に向かう速度成分を付与して燃料粒子がノズル内壁面沿いに濃縮するような燃料濃縮器(機構)を設けることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1(特許第6231047号明細書:JP6231047B2)では、燃料ノズル(1次空気ノズルと称することもある)(9)の中心部に、混合流体に旋回を付与する第一旋回器(6)と、第一旋回器(6)とは逆向きの旋回を付与する第二旋回器(7)とを設ける技術が記載されている。特許文献1記載の技術では、第一旋回器(6)で混合流体に強い旋回をかけて、固体燃料粒子を燃料ノズルの外周側(燃料ノズルの内壁面沿い)に移動させる。
続いて、第二旋回器(7)で第一旋回器(6)とは逆向きの旋回を付与することで混合流体の旋回を弱める。
したがって、バーナの開口部、燃料ノズルの先端部に設置された保炎器(10)の周辺で固体燃料粒子が濃縮された状態が保たれ、バーナに供給される燃料濃度が低い低負荷時でも燃料粒子の着火性が高まり、火炎の安定性が向上する。
同時に、旋回が弱められた混合流体が開口部から噴出するので、混合流体が火炉内に過度に広がることなく、二次空気や三次空気等の燃焼用ガス(空気)との混合を緩やかにして窒素酸化物(NOx)生成の抑制が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6231047号明細書(「0004」、「0048」~「0061」、図1図3図21
【文献】特許第4919844号明細書(「0021」~「0023」)
【文献】特開2010-242999号公報(「0033」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
火力発電用石炭(微粉炭)焚ボイラにおける混燃用の燃料としては、木質系原料をペレットにしたものが多用されている。ここで、ペレットは、そのまま使用されるのではなく、粉砕装置として石炭用ミル(微粉炭機)をベースにした改良ミル(粉砕機・分級機)で粉砕・分級して得た燃料粒子を搬送気体で固体燃料バーナに搬送し、燃料粒子と搬送気体との混合流体がバーナに供給され、微粉炭と同様に燃焼される。
【0006】
しかしながら、バイオマス燃料は石炭に比べて微粉砕しにくく、ミルの粉砕動力が多大(粒径50mmの木質チップから石炭と同じ粒度にするのに概ね石炭の10倍程度の動力が必要)となり、現状の微粉炭と同レベルまで微粒化することは困難である。また、バイオマス燃料を微粉化すると急速燃焼の可能性が高くなり、その防止対策も必要となる。これらのことから、バイオマス燃料は石炭に比べて、かなり粗い粒子の状態でミルから排出される(特許文献2;特許第4919844号公報、特許文献3;特開2010-242999号公報等参照)。
結果的に、粒子の粗いバイオマス燃料は、微粉炭に比べて着火性が低くなっている。
【0007】
一方、着火性の低い燃料を使用する場合に、混合流体の流速を下げれば着火しやすくなるが、粒子の大きなバイオマス燃料に対して流速を下げて粉砕装置からバーナまで搬送することは、搬送系統内での滞留を招く可能性があるため、現実的ではない。
よって、バーナで燃焼させる直前までは混合流体(燃料搬送気体)の流速を高く保つ必要がある。
このため、燃料ノズルの流路断面積を上流側、即ち粉砕装置から接続される燃料搬送系統(燃料搬送配管との接続部)側では小さく、下流側、即ち火炉開口部側では上流側よりも大きくして流速を低減することで、着火性を向上させることが考えられる。
ここで、特許文献3は、混合流体の燃料濃縮を図るための機構として、ベンチュリーと燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を付与する燃料濃縮器とを備え、燃料ノズルの火炉側開口部の内径が、ベンチュリーの上流端の内径よりも大きく形成された固体燃料バーナを開示している。このような構成であれば、搬送系統内では混合流体の流速を高く保持しながら、燃料粒子をバーナで燃焼させる直前に流速を低減できるので、着火性の向上が図られる。
一方、特許文献3に記載の固体燃料バーナの燃料ノズル上流側、ミルからバーナに至る燃料搬送配管との接続部には、曲管部が設けられている。混合流体は、燃料搬送配管から曲管部を経て燃料ノズルの直管部へと連通する流路を流れることになる。
発明者らのシミュレーションモデル等による解析の結果、このような構成では、曲管部を通過した高速の流体は上面に衝突後、反射されるように下方に流れやすく、特にベンチュリーでノズル中心軸側に燃料を濃縮した後、紡錘状の燃料濃縮器により、燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を付与すると、周方向の燃料粒子の偏りが生じ、燃料ノズル各部の長さの設定等によっては、燃料ノズルの上側の流体の流速が過度に遅くなりやすいことが判明した。そして、流速が過度に遅くなると、燃料の自重で燃料が径方向の中央部に向けて片寄りやすくなり、燃料ノズルの出口近傍では、上側の径方向外側において、燃料の濃度が低い領域が発生して、燃料の濃縮効果が下がる可能性があることがわかった。
【0008】
本発明は、固体燃料バーナにおいて、バイオマス燃料(木質系原料をペレットにしたもの等)をミルで粉砕して得られるような粒子の粗い燃料を使用する場合でも、燃料ノズル内に設けられた燃料濃縮器による燃料の濃縮効果を確保し、着火性と火炎の安定性を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するために、
請求項1に記載の発明の固体燃料バーナは、
固体燃料とその搬送気体の混合流体が流れ、火炉に向かって開口する燃料ノズルと、
前記燃料ノズルの外周側に配置され、燃焼用気体を噴出させる燃焼用ガスノズルと、
前記燃料ノズルの中心側に設けられ、前記燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を前記混合流体に付与する燃料濃縮器とを備えた固体燃料バーナであって、
前記燃料濃縮器は、前記混合流体に旋回を与える複数の羽根を有し、各々の羽根が燃料ノズルの内側に全面固定されることなく前記燃料ノズルの内面から離れて配置されるものであって、前記混合流体の流れ方向の上流側に配置される第1の旋回器と、前記第1の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に配置され、前記複数の羽根の旋回方向が前記第1の旋回器とは逆方向である第2の旋回器と、を有し、
前記第2の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に、前記燃料ノズルの流路を流路断面における内側と外側とに区画する流路区画部材が設けられ、
前記第1の旋回器の外径は、前記流路区画部材の上流端の内径以下であり、
前記第1の旋回器で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給し、
前記流路区画部材は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状であり、
前記第2の旋回器の外径が、前記流路区画部材の上流端の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きいこと
を特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明の固体燃料バーナは、請求項1に記載の固体燃料バーナにおいて、
前記燃料ノズルの流路は、内径が、前記第1の旋回器の上流側では同一または単調増加の上流部と、前記上流部の下流側に連通して内径が徐々に拡大する拡管部と、前記拡管部の下流側に連通して内径が一定の下流部と、を有する、
ことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の固体燃料バーナにおいて、
前記第1の旋回器の少なくとも一部が前記燃料ノズルの流路の上流部の範囲に位置し、
前記第2の旋回器の少なくとも一部が前記燃料ノズルの流路の下流部の範囲に位置する
ことを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項又はに記載の固体燃料バーナにおいて、
前記各旋回器の外径は、前記燃料ノズルの流路の上流部の内径未満である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、2つの旋回器を有する燃料濃縮器と流路区画部材とを有することで、固体燃料バーナにおいて、バイオマス燃料(木質系原料をペレットにしたもの等)をミルで粉砕して得られるような粒子の粗い燃料を使用する場合でも、燃料ノズル内に設けられた燃料濃縮器による燃料の濃縮効果を確保し、着火性と火炎の安定性を向上させることができる。
また、流路区画部材を有しない場合に比べて、燃料ノズル外側(内壁沿い)への燃料粒子の濃縮効果を高くでき、かつその効果が消失しにくいので、燃料濃縮器としての第1の旋回器と第2の旋回器の組み合わせにおいて、過剰な旋回付与とその打ち消しの必要が無くなる。よって、バーナの圧力損失を低減できる。また、燃料濃縮器としての第1の旋回器と第2の旋回器の組み合わせをコンパクト化して、燃料ノズルの全長を短くすることもでき、部材の使用量抑制にもつながる。
また、各旋回器の羽根の外径が流路区画部材の上流端の内径より大きい場合に比べて、燃料を外周側に寄せたまま搬送ガスを内周側に分散することができるため、外周側の燃料の濃縮効果を向上させることができる。また、流路区画部材を通過する混合流体のガス側の流速をさらに低減させることができ、着火性や保炎性を向上させることができる。
また、ノズル開口部に向かって外周側(ノズル内壁側)流路の内径が小さくされることで、流路区画部材とノズルの内壁との間の混合流体の流路断面積が拡張することとなり、燃料粒子の流速が減速され、着火性と火炎の安定性をさらに向上させることができる。
また、流路区画部材の内周側(ノズル中心側)において、第2の旋回器による旋回の打ち消し効果を径方向全体に行きわたらせることができる。したがって、旋回が弱められた混合流体をバーナ開口部から噴出させ、混合流体が火炉内に過度に広がることなく、二次空気や三次空気等の燃焼用ガス(空気)との混合を緩やかにして窒素酸化物(NOx)生成の抑制作用を高めることができる。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、燃料ノズルが、第1の旋回器の上流側では同一または単調増加の直管状で、その下流側に連通して内径が徐々に拡大する拡管部、さらに拡管部の下流側に連通して内径が上流側よりも大きい直管状の下流部を有しており、搬送配管内では、粒径の大きな燃料粒子の滞留を招かぬように高流速で搬送しつつ、火炉開口部側では上流側よりも流路断面積が大きく流速が低減されることで、燃料の濃縮効果を確保しつつ、着火性と火炎の安定性が向上することができる。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、第1の旋回器については、燃料ノズル外側(内壁沿い)への燃料粒子の濃縮、第2の旋回器については、旋回の打ち消しを有効に作用させることができる。すなわち、第1の旋回器は、その羽根が長手方向の少なくとも一部において上流部にかかっており、上流部を流れてきた混合流体に対して効率よく径方向外向きの速度成分を与えることができる。
【0025】
請求項に記載の発明によれば、燃料濃縮器を燃料ノズルの軸方向に引き出して取り外して、保守、点検を行うことができる。したがって、保守、点検の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本発明の実施例1の燃焼システムの全体説明図である。
図2図2は実施例1の固体燃料バーナの説明図である。
図3図3図2の矢印III方向から見た図である。
図4図4は実施例1の流路区画部材の説明図であり、図4(A)は側面図、図4(B)は図4(A)のIVB-IVB線断面図、図4(C)は変更例1の図4(B)に対応する図、図4(D)は変更例2の図4(B)に対応する図である。
図5図5は比較例の説明図である。
図6図6はシミュレーション結果の説明図である。
図7図7は本発明の固体燃料バーナを備えたボイラ(燃焼装置)の説明図であり、図7(A)は缶(ボイラ)前後各3段の固体燃料バーナのうちの缶前側および缶後ろ側の最上段にバイオマス燃料を使用する、本発明の固体燃料バーナを設けた場合の説明図、図7(B)および図7(D)は缶前側の最上段にバイオマス燃料を使用する、本発明の固体燃料バーナを設けた場合の説明図、図7(C)および図7(E)は缶後ろ側の最上段にバイオマス燃料を使用する、本発明の固体燃料バーナを設けた場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明の実施例1の燃焼システムの全体説明図である。
図1において、火力発電所等で使用される実施例1の燃焼システム(燃焼装置)1では、バイオマス燃料(固体燃料)がバンカ(燃料ホッパ)4に収容されている。バンカ4のバイオマス燃料は、ミル(粉砕機)5で粉砕される。粉砕された燃料は、ボイラ(火炉)6の固体燃料バーナ7に燃料配管8を通じて供給されて、燃焼される。なお、固体燃料バーナ7は、ボイラ6に複数設置されている。
【0029】
ボイラ6から排出された排ガスは、脱硝装置9で脱硝される。脱硝された排ガスは、空気予熱器10を通過する。空気予熱器10では、ブロア11から送られた空気と排ガスとの熱交換が行われる。したがって、排ガスが低温化されると共に、ブロア11からの空気が加熱される。ブロア11からの空気は、空気配管12を通じて、固体燃料バーナ7およびボイラ6に燃焼用空気として供給される。
空気予熱器10を通過した排ガスは、ガスガスヒータ(熱回収器)13を通過する際に熱が回収されて低温化する。
【0030】
ガスガスヒータ(熱回収器)13を通過した排ガスは、乾式集塵機14で排ガス中の塵等が回収、除去される。
乾式集塵機14を通過した排ガスは、脱硫装置15に送られて脱硫される。
脱硫装置15を通過した排ガスは、湿式集塵機16で排ガス中の塵等が回収、除去される。
湿式集塵機16を通過した排ガスは、ガスガスヒータ(再加熱器)17で再加熱される。
ガスガスヒータ(再加熱器)17を通過した排ガスは、煙突18から大気に排気される。
なお、ミル5自体の構成は、従来公知の種々の構成を使用可能であり、例えば、特開2010-242999号公報等に記載されているので詳細な説明は省略する。
【0031】
図2は実施例1の固体燃料バーナの説明図である。
図3図2の矢印III方向から見た図である。
図2図3において、実施例1の固体燃料バーナ7は、搬送気体が流れる燃料ノズル21を有する。燃料ノズル21の下流端の開口は、ボイラ6の火炉22の壁面(火炉壁、水管壁)23に設けられている。燃料ノズル21は、搬送気体の流れ方向の上流端部に曲管部の一例としてのエルボ20が形成されている。エルボ20では、混合流体の流れ方向が略90°曲げられるように屈曲している。エルボ20の上流端には、燃料配管8が接続される。燃料ノズル21は中空の筒状に形成されており、燃料ノズル21の内部には、固体燃料(粉砕されたバイオマス燃料)と搬送気体とからなる混合流体が流れる流路24が形成されている。
【0032】
燃料ノズル21の外周には、燃焼用空気を火炉22に噴出する内側燃焼用ガスノズル(2次燃焼用ガスノズル)26が設置されている。また、内側燃焼用ガスノズル26の外周側には、外側燃焼用ガスノズル(3次燃焼用ガスノズル)27が設置されている。各燃焼用ガスノズル26,27は、ウインドボックス(風箱)28からの空気を火炉22内に向けて噴出する。実施例1では、内側燃焼用ガスノズル26の下流端には、燃料ノズル21の中心に対して径方向外側に傾斜(下流側に行くに連れて径が拡大)するガイドベーン26aが形成されている。また、外側燃焼用ガスノズル27の下流部には、軸方向に沿ったスロート部27aと、ガイドベーン26aに平行する拡大部27bとが形成されている。したがって、各燃焼用ガスノズル26,27から噴出された燃焼用空気は、軸方向の中心から拡散するように噴出される。
【0033】
また、燃料ノズル21の下流端の開口部には、保炎器31が支持されている。
図2図3において、燃料ノズル21の流路断面の中心部には、点火バーナ(オイルガン)32が貫通して配置されている。点火バーナ32は、燃料ノズル21の衝突板フランジ20aに支持された衝突板32aに貫通した状態で支持されている。
【0034】
燃料ノズル21には、混合流体の流れ方向に対して、エルボ20の下流側に、上流部の一例としての直管部21aが設けられている。直管部21aは、流路24の断面積が同一の直管状に形成されている。
直管部21aの下流側には、下流側に行くにつれて内径(すなわち断面積)が拡大する拡大部21bが接続されている。拡大部21bの下流側には、下流端に向けて断面積が同一な直管状の下流部21cが接続されている。
実施例1では、拡大部21bの内壁が、直管部21aの延長線に対してなす角θ1は、10°~15°に設定されている。θ1が10°未満の場合、燃料ノズル21の軸方向の長さが長くなり、θ1が15°を超える場合、混合流の流れに剥離が発生して、流れに澱みが発生して澱んだ部分に燃料が溜まりやすくなる問題があるため、θ1は10°~15°が好ましい。
【0035】
燃料ノズルの形状が、上流側から直管部21a(=上流部)、拡大部21b、下流部21cのように、直管、拡管、直管のように連通することは必ずしも必須のことではない。例えば、後述の流路区画部材が設けられていれば、着火性および火炎の安定性が向上し、全体を通じて直管状であっても問題ない場合もある。
ノズル全体を通じて、バイオマス燃料のような粒子の粗い燃料を使用しても旋回を過度に強める必要が無く、圧力損失や燃料粒子の旋回器(34a,34b)への付着をできるように構成されていれば良い。
【0036】
燃料ノズル21の内部には、燃料濃縮器34が配置されている。燃料濃縮器34は、点火バーナ32に支持されている。燃料濃縮器34は、上流側の第1の旋回器34aと、下流側の第2の旋回器34bとを有する。
第1の旋回器34aは、点火バーナ32を軸とする螺旋状に形成された複数枚の第1の旋回羽根34cを有する。また、第2の旋回器34bは、第1の旋回羽根34cとは逆方向(逆巻きの螺旋状)に傾斜する第2の旋回羽根34dを有する。各旋回羽根34c,34dは、燃料ノズル21の内面に固定されておらず、旋回羽根34c,34dの外周端は燃料ノズル21の内面から離間して設置されている。
【0037】
したがって、実施例1の燃料濃縮器34では、燃料と搬送気体との混合流体に、第1の旋回器34aを通過する際に、径方向の外側に向かう旋回が付与される。よって、燃料が燃料ノズル21の内壁面に向かって濃縮される。そして、第2の旋回器34bを通過する際に逆の旋回が付与され、旋回が弱まる。よって、燃料濃縮器34の下流側では、混合流体は、燃料が外周側に濃縮され且つ直進流に近い流れとなっている。
【0038】
このような拡管形状を有する燃料ノズル21内に第1の旋回器34aと第2の旋回器34bとを配置するにあたり、第1の旋回器34aについては、燃料ノズル21外側(内壁沿い)への燃料粒子の濃縮、第2の旋回器34bについては、旋回の打ち消しが有効に作用し、燃料の濃縮効果および旋回の打ち消し効果が損なわれにくくなるように燃料ノズル内の配置を適切に設定することが望ましい。
第1の旋回器34aは、その羽根34cが長手方向(の少なくとも一部)において上流部(直管部21a)にかかっていることが望ましい。これにより、上流部21aを流れてきた混合流体に対して効率よく径方向外向き(ノズル内壁向き)の速度成分を与えることができる。
【0039】
また、第1の旋回器34aは、その羽根34cの長手方向(燃料ノズルの軸方向)下流側端部が燃料ノズル21の上流部(上流側の直管部21a)と拡大部21b(上流部に連通する拡管部)との境界部と同じ位置かそれよりも下流側、即ち拡大部21b側に位置するように設けられることが望ましい。これは、燃料粒子のノズル内壁からの跳ね返りを少なくして、濃縮効果を高めるためである。過剰な旋回を付与しなくても済むので、第2の旋回器34bによる旋回の打ち消し作用もあまり高めずに抑制することができ、2つの旋回器34a,34bを通じた燃料ノズル21の流路内の圧力損失の増大を抑制するのにも効果がある。
また、第2の旋回器34bについては、その羽根34dが長手方向(の少なくとも一部)において下流部21c(下流側の直管部)にかかっていることが望ましい。即ち、その羽根の長手方向(燃料ノズル21の軸方向)下流側端部が燃料ノズル21の下流部21c(下流側の直管部)側に位置するように設けられることが望ましい。これにより、第2の旋回器34bとして圧力損失を抑制しつつ、旋回の打ち消し効果が十分なものを第1の旋回器34aとの適切な間隔を空けて配置できる。
【0040】
実施例1では、第1の旋回羽根34cの外径DW1は、直管部の内径D1に対して、一例として70%に設定されているが、60%~85%に設定することが好ましい。60%未満では、付与される旋回が弱く燃料の濃縮効果が低くなる。また、85%を超えると旋回流が強くなりすぎる場合がある。
第2の旋回羽根34dの外径DW2は、第1の旋回羽根34cの外径DW1以上の大きさに形成されている(すなわち、DW2≧DW1)。また、実施例1では、外径DW2<内径D1に形成されている。さらに、第2の旋回羽根34dの外径DW2は、下流部21cの内径D2に対して、一例として65%に設定されており、55%~80%に設定することが好ましい。55%未満では、逆旋回で旋回を打ち消す効果が低くなる。また、80%を超えると、メンテナンス時に点火バーナ32を燃料ノズル21から引き抜くことが困難になる。したがって、点火バーナ32を引き抜かない構成の場合は、外径DW2が内径D2の80%を超えたり、外径DW2≧内径D1としたりすることも可能である。
【0041】
また、実施例1では、混合流の流れ方向に対して、燃料ノズル21の下流端fsから直管部21aの下流端(=拡大部21bの上流端)までの距離をL1とし、燃料ノズル21の下流端fsから下流部21cの上流端(=拡大部21bの下流端)までの距離をL2とし、燃料ノズル21の下流端fsから第2の旋回器34bの中央部までの距離をL4とし、燃料ノズル21の下流端fsから第1の旋回器34aの中央部までの距離をL5とした場合に、実施例1では、一例として、以下のように設定されている。
(1)L2=L4
(2)L5-L4=0.7×D2
(3)L5-L1=0.1×D2
【0042】
なお、(1)については、L2≠L4とすることも可能である。
(2)については、0.7×D2~1.3×D2が好ましいことが燃焼試験で確認された。0.7未満になると、第1の旋回器34aの旋回で燃料が外径側に十分に到達する前に、第2の旋回器34bで旋回が打ち消されることとなり、燃料の濃縮効果が低減する。1.3を超えると、旋回の打ち消しが遅くなって、燃料ノズル21の下流端で旋回が強く残り、NOxが増える問題があった。
【0043】
(3)については、0×D2~0.5×D2とすることが好ましい。0未満、すなわち、L5-L1<0の場合は、第1の旋回器34aの大部分が拡大部21bに配置されることとなり、燃料ノズル21の内径に対して第1の旋回羽根34cの外径の比率が相対的に低下し、燃料の濃縮効果が下がる。一方、0.5を超えると、第1の旋回器34aで付与された旋回で外周側に片寄らせた燃料が、燃料ノズル21の内周面に衝突して、反射される形で径方向内側に戻されやすくなり、燃料の濃縮効果が低下する。
【0044】
すなわち、実施例1では、第1の旋回器34aは、少なくとも一部が燃料ノズル21の直管部(上流部)21aの範囲に位置する。また、第2の旋回器34bは、少なくとも一部が燃料ノズル21の下流部21cの範囲に位置する。したがって、拡管形状(拡大部21b)を有する燃料ノズル21内に第1の旋回器34aと第2の旋回器34bとを配置するにあたり、第1の旋回器34aについては、燃料ノズル外側(内壁沿い)への燃料粒子の濃縮、第2の旋回器34bについては、旋回の打ち消しが有効に作用し、燃料が損なわれにくくなっている。
第1の旋回器34aは、その羽根34cが長手方向(の少なくとも一部)において上流部(直管部21a)にかかっており、上流部21aを流れてきた混合流体に対して効率よく径方向外向き(ノズル内壁向き)の速度成分を与えることができる。
【0045】
図4は実施例1の流路区画部材の説明図であり、図4(A)は側面図、図4(B)は図4(A)のIVB-IVB線断面図、図4(C)は変更例1の図4(B)に対応する図、図4(D)は変更例2の図4(B)に対応する図である。
図2図3において、燃料濃縮器34の下流側には、流路区画部材36が配置されている。流路区画部材36は、支持部材37により燃料ノズル21の内面に支持されている。実施例1の流路区画部材36は、上流端S1から下流端S2に向かうに連れて内径が縮小する部分円錐状(コニカル形状)に形成されている。したがって、流路区画部材36は、流路24を外側流路24aと内側流路24bとに区画する。
図3図4において、支持部材37は、径方向に沿って延びる板状に形成されている。支持部材37は、周方向に対して間隔をあけて複数配置されている。図3において、実施例1では、支持部材37は、保炎器31の内周側突起31aどうしの間に対応する位置に配置されている。
【0046】
図2において、実施例1の固体燃料バーナ7では、燃料濃縮器34の下流側に流路区画部材36が配置されている。したがって、実施例1の固体燃料バーナ7では、第2の旋回器34bによりノズル中心側の流体の旋回が弱められた下流側に流路区画部材36が配置されており、流路が外周側(ノズル内壁側)と内周側(ノズル中心側)に区画・分離される。したがって、燃料濃縮器34の第1の旋回羽根34cで燃料ノズル21の内周壁に向かって濃縮された燃料のほとんどが、外側流路24aに供給される。よって、燃料濃縮器34により径方向の外側に向けられた粒子の流れを流路区画部材36が妨げにくいと共に、外側流路24aにおいて径方向外側に向かう燃料が内周壁で反射されて再び中心軸側に向かおうとしても、流路区画部材36で阻止される。よって、第1の旋回器34aによって一旦外周側(ノズル内壁側)に濃縮した燃料粒子が再分散されることが抑制され、濃縮効果がノズル開口部近傍まで保持される。
したがって、流路区画部材36を有しない特許文献1に記載の構成に比べて、着火性の悪いバイオマス燃料を粉砕した固体燃料粒子を使用する場合でも、燃料の濃縮効果を確保することができる。
【0047】
特に、実施例1では、燃料濃縮器34が燃料ノズル21の内面に全面固定されていない。燃料濃縮器34を燃料ノズル21の内面に支持する構成では、支持する部位が濃縮される燃料粒子の衝突によって摩耗する。したがって、支持する部位を耐摩耗性の特殊材料で構成する必要があり、コストが増大する問題がある。これに対して実施例1では、燃料濃縮器34が燃料ノズル21に支持されておらず、摩耗する部位がなく、コストの増大を抑制可能である。
【0048】
また、実施例1の固体燃料バーナ7では、燃料ノズル21内にベンチュリー、即ちノズル中心向きに燃料粒子の速度成分を付与する部材が曲管部(エルボ20)を経た直後に無く、続いてその下流側に燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を付与する燃料濃縮器が配置される構成ではない。すなわち、特許文献3に記載の構成とは異なる。特許文献3の技術では、一旦ベンチュリーでノズル中心向きに燃料粒子の速度成分を付与し、次いで紡錘形状の燃料濃縮器により燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を付与するというように向きが反転する2段階の濃縮作用を行うことになる。このため、燃料ノズルの長さをある程度確保する必要があるが、他の炉外機器、配管、構造物との関係上、これを短くするためには、ベンチュリーの絞りや燃料濃縮器の径方向の拡がりを急なものに設定する必要が出てくる。燃料ノズル上流側の曲管部では混合流体が急激に曲がるため、ノズル断面内における燃料粒子の分布に偏りが生じるが、ベンチュリーの絞りや燃料濃縮器の径方向の拡がりを急なものに設定するとこの偏りがそのまま下流側に残存しやすい。
【0049】
これに対して、実施例1に記載の固体燃料バーナ7では、混合流体は曲管部を経た流路において、燃料ノズル21の中心向きの作用をうけることなく、第1の旋回器34aにより、燃料ノズル21の中心から離れる向きの速度成分を付与され、濃縮作用が1段階で完了するので、燃料ノズル21の長さを、特許文献3に記載の構成に比べて短縮できる。燃料ノズル21の長さが短縮できれば、バーナ設置の自由度が増し、他の炉外機器、配管、構造物との干渉を回避できる利点がある。また旋回の効果により周方向(ノズル内壁沿い)の混合が促進されるので、周方向の燃料粒子の分布に偏りが生じにくく、着火性と火炎の安定性向上に効果がある。
【0050】
また、実施例1の固体燃料バーナ7では、流路区画部材36を有しており、燃料ノズル21外側(内壁沿い)への燃料粒子の濃縮効果が高く、かつその効果が消失しにくいので、燃料濃縮器34としての第1の旋回器34aと第2の旋回器34bの組み合わせにおいて、過剰な旋回付与とその打ち消しの必要が無くなるので、バーナの圧力損失の低減に効果がある。また、燃料濃縮器34としての第1の旋回器34aと第2の旋回器34bの組み合わせをコンパクト化して、燃料ノズル21の全長を短くすることもでき、部材の使用量抑制にもつながる。
【0051】
さらに、実施例1の固体燃料バーナ7では、特許文献1の技術に比べて、粒径の粗い燃料粒子を含む混合流体に対して、燃料ノズル21内壁沿いへの燃料粒子の濃縮とそのバーナ開口端部までの保持効果をより少ない旋回の付与で実現できる。即ち、一旦燃料ノズル21内壁沿いへ濃縮された燃料粒子がノズル中心側に再分散しにくい、あるいは流速の低減による開口端の保炎器31近傍での着火性の向上により、第1の旋回器34aにおける旋回の強さ、つまり第1の旋回羽根34cの角度等を相対的に緩やかなものとすることができる。このことは、第2の旋回器34bにおける旋回の打ち消し効果を相対的に緩やかなものにできることにつながる。これらのことから燃料ノズル21内の圧力損失の低減が図られる。さらに、木質系原料のペレットを粉砕したような粒子の粗いバイオマス燃料でも、局部的な混合流体の滞留が生じにくいので、旋回器(旋回羽根)への燃料粒子の付着抑制が図られる。
【0052】
そして、実施例1では、流路区画部材36がコニカル形状に形成されており、流路区画部材36を通過する間に、流路区画部材36と燃料ノズル21との間を通過する流体の流速が低下する。そして、濃縮された燃料は流速が低下した状態で、火炉6に供給される。したがって、着火性の低いバイオマス燃料でも、着火性を確保することができる。
【0053】
また、実施例1の流路区画部材36は、下流端S2における混合流体の流速が上流端S1における流速よりも低減されるように、下流端S2における外側流路24aの断面積が上流端S1における外側流路24aの断面積よりも拡大するようなコニカルな形状となっている。すなわち、実施例1では流路区画部材36の上流端の内径DS1は、下流端の内径DS2よりも大きく形成されている。このような傾斜形状であれば、軸方向に沿った筒状の場合よりも、固体燃料粒子が傾斜面に沿って移動しやすく、上面に堆積しにくくなる。また、DS1>DS2とすることで、ノズル開口部に向かって外周側(ノズル内壁側)流路の断面積が徐々に拡張することとなり、燃料粒子の流速が減速され、着火性と火炎の安定性の向上に一層効果がある。
なお、流路区画部材36が軸方向に対して傾斜する傾斜角θ2を、10°~15°とすることが好ましい。なお、θ2を10°~15°にすることが好ましい理由は、θ1の場合と同様である。
【0054】
また、流路区画部材36の上流端S1の内径DS1は、第1の旋回羽根34cの外径DW1および第2の旋回羽根34dの外径DW2以上に設定されている。DS1<DW2の場合、DS1の外周流路に搬送ガスも流入してしまい、粒子濃度濃縮効果が薄くなる。そのため、DS1≧DW2にすることで、粒子は外周側に流入し、搬送ガスは外周及び内周に分配されるため、流路区画部材36を通過する粒子濃度を濃縮する効果がある。別の見方をすると、第2の旋回器34bによる旋回の打ち消し効果が流路内周側(ノズル中心側)に留められるので、外周側(ノズル内壁側)における燃料粒子濃縮の保持効果を一段と高く保つことができる。
【0055】
また、実施例1では、流路区画部材36の下流端の内径DS2は、第2の旋回羽根34dの外径DW2よりも小さく形成されている。すなわち、DW2>DS2に設定されている。DW2>DS2とすることで、流路区画部材36の内周側(ノズル中心側)において、第2の旋回器34bによる旋回の打ち消し効果を径方向全体に行きわたらせることができる。これにより、旋回が弱められた混合流体をバーナ開口部から噴出させ、混合流体が火炉6内に過度に広がることなく、二次空気や三次空気等の燃焼用ガス(空気)との混合を緩やかにして窒素酸化物(NOx)生成の抑制作用を高めることができる。
【0056】
さらに、実施例1の流路区画部材36は、燃料ノズル21の内周壁側から支持部材37によって支持されている。仮に、中心軸(点火バーナ32)側から流路区画部材36を支持すると、点火バーナ32および/または燃料濃縮器34の保守点検等の際に、衝突板32aとともに衝突板フランジ20aから分離して炉外へ引き抜く際、流路区画部材36と支持部材37とを切り離さないと直管部21aを通過させられない。すなわち、保守点検作業の作業性が低下する問題がある。これに対して、実施例1では、流路区画部材36が燃料ノズル21の内周壁側から支持されており、点火バーナ32および/または燃料濃縮器34の保守・点検が容易に行える。
【0057】
また、実施例1では、流路区画部材36と支持部材37(および燃料濃縮器34)を、燃料ノズル21の火炉22側開口端部(下流端)fsないしは固体燃料バーナ7の火炉22壁面開口部から距離をあけて燃料ノズル21内の流体流れ方向上流側、即ち、火炉22の外側に設置している。より具体的には、図2に示すように、燃料ノズル21の火炉側開口端部fsから流路区画部材36の下流端までの距離をL3とした場合、距離L3は、燃料ノズル21の火炉側開口端部fsにおける内径D2に対して、0.15×D2~1.0×D2の範囲とすることが好ましい。0.15未満では、流路区画部材36が火炉からの輻射を受けやすくなる。
【0058】
したがって、0.15×D2以上に設定することで、流路区画部材36等が火炉(炉内)22からの輻射の影響を軽減して、頻繁な保守が必要となる可能性を低減できる。また、燃料粒子が、特に流路区画部材36の上面等に付着・堆積した場合でも発火するリスクや、付着堆積に至らずとも滞留傾向となって燃料ノズル21内で着火するリスクを軽減することもでき、着火域を保炎器31の下流側にしやすくできる。
なお、1.0×D2を超えると、流路区画部材36の下流端S2が、各位置fsおよび火炉壁面開口部から離れすぎる。よって、流路区画部材36での流速低減後の区間が長くなる。流速低減後の区間が長くなると、燃料粒子が燃料ノズル21の壁面に付着堆積する可能性が高くなったり、燃料ノズル21が長大化して固体燃料バーナ7が大型化するといった問題がある。
【0059】
実施例1では、燃料ノズル21は、直管部21a、拡大部21b、下流部21cに渡って、流路24の断面積が同一または単調増加する構成、すなわち、断面積が減少する区間がない構成となっている。仮に、燃料濃縮器34の上流端から流路区画部材36の上流端S1までの間で燃料ノズル21の断面積が減少する区間があると、断面積が減少する区間では流速が増大(加速)することとなる。そして、その後の流路区画部材36の位置で流速が減速すると、いわば、脈動のような流れが形成される。このような場合、流速Fが低下しすぎる領域が生じ、燃料粒子の堆積、滞留が懸念される。
【0060】
これに対して、実施例1では、流路24の断面積が減少する区間がなく、脈動のような流れが発生せず、流速Fは、燃料粒子の堆積、滞留が懸念される低流速の領域に陥ることなく滑らかに減速(漸減)される。よって、実施例1の固体燃料バーナ7では、燃料ノズル21の内部は、流速Fが増大しない(単調減少または同一となる)ように、断面積が単調増加または同一となる(減少しない)ように設定されている。
したがって、燃料濃縮後は断面積が減少せず、流速が増大と減少を繰り返さないため、燃料の堆積、滞留が低減され、濃縮されたまま減速されて火炉6に向けて供給される。すなわち、燃料ノズル21の配管内では、粒径の大きな燃料粒子の滞留を招かぬように高流速で搬送しつつ、火炉6開口部側では上流側よりも流路断面積が大きく流速が低減されることで、着火性と火炎の安定性が向上する。
【0061】
図2図4において、実施例1の支持部材37は、径方向に延びる放射状の板状に形成されており、混合流体に対して極力その流れを妨げない形態となっている。なお、実施例1では、支持部材37は、長手方向の長さが流路区画部材36と同じ長さの1枚の板状の部材を使用しているがこれに限定されず、板が複数に分かれていても、棒状の部材とすることも可能である。
ノズル軸方向で見た支持部材の断面形状は、流れを妨げないものであれば特に限定されず、流線形の翼状(図4(C)参照)、ひし形(図4(D))等でも良い。翼状、ひし形状の場合、流れ方向に沿って、流路が一旦縮小するため、燃料粒子の濃縮がさらに増強され、着火・保炎性が向上する効果がある。
【0062】
ここで、支持部材37の形状が、下流側ほど周方向の厚みが大きなくさび状の構造の場合、混合流体の流れ方向に対して、支持部材の火炉への開口部に面した壁面ないし空間に向かって、混合流体が逆流する渦流が発生する。当該面状の部位は火炉からの輻射を受け高温となるため、耐熱性の高い部材の使用・被覆等の対策を考慮する必要がある。前述の渦流発生により燃料粒子が付着、成長ないし滞留する可能性もある。
【0063】
これに対して、実施例1の支持部材37では、厚み方向が火炉22に対向する板状に形成されており、燃料ノズル21の開口面側から見た場合に、複数の板状の支持部材37が線状となるように配置されている。よって、特許文献1に記載の構成に比べて、混合流体が逆流する渦流が発生しにくく、燃料粒子が付着、成長ないし滞留するのを抑制できる。また、火炉22からの輻射を受け高温となることへの対策も少なくて済み経済的である。
また、実施例1の支持部材37は、保炎器31の内周側突起31aと重ならない位置に配置されており、重なる場合に比べて、混合気体の流れの抵抗が低減されている。
一方、ノズル軸方向で見た支持部材37の断面形状が流線形の翼状、ひし形等流れ方向に沿って、流路が一旦縮小する例(図4(C),(D)に示される例)では、流路が一旦縮小して燃料粒子の濃縮した(即ち分布が生じた)領域の下流に保炎器の突起が位置するため、着火・保炎性が向上する効果がある。
【0064】
また、実施例1では、燃料ノズル(1次ノズル)21の内径に関して、開口部(下流端)における内径D2は、直管部21aの内径D1よりも大きく設定されている。燃料ノズル21の上流側(燃料搬送管)では流路内部で燃料粒子が付着堆積することを防ぐため、混合流体の流速をある程度高く保つ必要があるのに対し、着火性・保炎性の観点から、燃料ノズル(1次ノズル)21の下流端においては流速を十分に低減する必要がある。よって、実施例1では、下流端における内径D2が直管部21aの内径D1よりも大きく設定されており、D1≦D2の場合に比べて、着火性・保炎性が向上している。
【0065】
(シミュレーション結果)
図5は比較例の説明図である。
次に、実施例1の効果を確認する実験(コンピュータシミュレーション)を行った。実験例1では、実施例1の構成において、第1の旋回羽根34cの外径DW1と第2の旋回羽根34dの外径DW2を同一とした。また、実験例2では、第2の旋回羽根34dの外径DW2が、第1の旋回羽根34cの外径DW1よりも大きい場合とした。また、比較例1では、図5の構成において実験を行った。すなわち、図5の構成では、実施例1の拡大部21bや下流部21cを有しない。また、図5の構成では、燃料濃縮器として、旋回羽根ではなく、燃料ノズルの断面積が減少して燃料を径方向の内側に濃縮した後、点火バーナに支持された下流側に行くほど径が大きくなる部材で燃料を径方向外側に移動させることで、径方向の外側に燃料を濃縮するベンチュリ01を有する。
シミュレーションでは、燃料ノズル21の下流端において、径方向の燃料の分布(割合)を測定した。結果を図6に示す。
【0066】
図6はシミュレーション結果の説明図である。
図6において、比較例1では、径方向の外側の領域1の燃料の割合が少なく、径方向の中間の領域2の燃料の割合が多い結果となった。すなわち、外周側に燃料が濃縮されておらず、燃料の濃縮効果が不十分であった。
一方、実験例1では、外周側の領域1の燃料の割合が、領域1~領域3の全ての領域の中で最も多く、外周側に燃料が濃縮されていた。また、実験例2では、実験例1よりもさらに領域1の燃料の割合が多い結果が得られた。
【0067】
したがって、比較例1のように、流路区画部材36が設けられていて、燃料濃縮器が設けられていても、拡大部21bを有しない構成では、燃料の濃縮効果が十分でない。これに比べて、実施例1(実験例1,2)のように拡大部21bを有する構成とすることで、断面積が拡大する拡大部21bを通じて流速が低減されて着火性が向上すると共に、比較例1の構成に比べて、燃料の濃縮効果が向上して外周側に燃料が濃縮されることで、着火性、保炎性がさらに向上している。
【0068】
図7は本発明の固体燃料バーナを備えたボイラ(燃焼装置)の説明図であり、図7(A)は缶(ボイラ)前後各3段の固体燃料バーナのうちの缶前側および缶後ろ側の最上段にバイオマス燃料を使用する、本発明の固体燃料バーナを設けた場合の説明図、図7(B)および図7(D)は缶前側の最上段にバイオマス燃料を使用する、本発明の固体燃料バーナを設けた場合の説明図、図7(C)および図7(E)は缶後ろ側の最上段にバイオマス燃料を使用する、本発明の固体燃料バーナを設けた場合の説明図である。
図7(A)に示す形態では、固体燃料バーナ7のうち、最上段の固体燃料バーナ7には、バイオマス燃料が供給される。一方、中段と下段の固体燃料バーナ7′には、固体燃料の一例としての石炭が供給される。石炭は、バンカ4′に収容されたものがミル5′で粉砕されて微粉炭となり、中段と下段の固体燃料バーナ7′に供給される。なお、各段において、固体燃料バーナ7は、燃焼装置1の炉幅方向に沿って複数設置されている。
固体燃料バーナ7′の形態は、必ずしも上述した本発明の固体燃料バーナでなくても良い。
【0069】
図1に示すように、バイオマス燃料を使用した場合、粒子径の大きいバイオマス燃料が未着火のまま炉底に落下することがある。未着火のバイオマス燃料が炉底にたまると、メンテナンスの頻度を高くしないといけなくなったり、燃料の無駄が多くなったりする問題がある。
これらに対して、図7(A)に示す形態では、最上段の固体燃料バーナ7のみでバイオマス燃料が使用される。したがって、最上段の固体燃料バーナ7で未着火のバイオマス燃料が発生しても、炉底に落下するまでの間に、中段と下段の固体燃料バーナ7′で着火されて燃え尽きやすい。特に、ボイラ6において、固体燃料バーナ7,7′が設置されている領域では、上方ほど高温になりやすい。したがって、最上段の固体燃料バーナ7でバイオマス燃料を使用すれば、下段の固体燃料バーナでバイオマス燃料を使用する場合に比べて、未着火のバイオマス燃料が発生しにくい。よって、図7(A)に示す形態では、未着火のバイオマス燃料が炉底に落下しにくく、燃料の無駄等を抑制できる。
【0070】
また、缶前側および缶後側に各3段の固体燃料バーナを備えた既設の燃焼装置1において、最上段の固体燃料バーナ7のみでバイオマス燃料を使用するように変更することも可能である。したがって、既設の石炭のみを使用する燃焼装置1を、バイオマス燃料を使用する燃焼装置1に容易に転換することができる。
さらに、図7(B)、図7(C)に示すように、固体燃料バーナ7,7′の段数が缶前後で異なる構成(あるいは、同数段備えているが、1つ休止させている構成)においても、缶前側または缶後側の最上段の1つの固体燃料バーナ7のみでバイオマス燃料を使用するように変更することも可能である。
【0071】
なお、図1図7において、固体燃料バーナ7,7′を上下方向に3段備えた構成を例示したが、これに限定されない。2段または4段以上の構成とすることも可能である。
このとき、バイオマス燃料を使用する固体燃料バーナ7は、最上段とすることが望ましいが、これに限定されない。最上段と中段の2段以上とすることも可能である。
また、例えば、図7(D)、図7(E)のように最上段において、一方の固体燃料バーナ7ではバイオマス燃料を使用し、他方の固体燃料バーナ7′では微粉炭を使用する構成とすることも可能である。すなわち、バイオマス燃料を使用する固体燃料バーナ7と、微粉炭を使用する固体燃料バーナ7′とを対向させる構成とすることも可能である。
【0072】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、支持部材37の形状は、板状に限定されず、楔状やひし形状、台形状等任意の形状に変更可能である。
また、2次燃焼用ガスノズル26と3次燃焼用ガスノズル27を有する2段の燃焼用ガスノズル26,27の構成を例示したが、これに限定されず、燃焼用ガスノズルは1段または3段以上とすることも可能である。
【0073】
さらに、燃料濃縮器34として、第1の旋回器34aと第2の旋回器34bを2つ有する構成を例示したがこれに限定されない。3つ以上設けることも可能であるし、1つとすることも可能である。なお、旋回器を1つとした場合でも、流路区画部材36において、旋回が弱まるため、流路区画部材36を通過後の混合流体は旋回が弱まった状態で噴出される。また、流路区画部材36での旋回の弱まりを考慮して、第2の旋回器34bの逆旋回を付与する性能を第1の旋回器34aの旋回を付与する性能よりも低くすることも可能である。すなわち、第2の旋回羽根34dの外径を短くしたり傾斜角を小さくしたり軸方向の長さを短くしたり等の変更が可能である。
【0074】
また、燃料ノズル21として、下流部21cを有する構成とすることが望ましいが、これに限定されない。下流部21cを有さず、拡大部21bの下流端が燃料ノズル21の下流端となる構成とすることも可能である。この時は、L2=0となるため、L2≠L4となる。
【符号の説明】
【0075】
7…固体燃料バーナ、
21…燃料ノズル、
22…火炉、
24…混合流体の流路、
24a…外側流路、
26,27…燃焼用ガスノズル、
34…燃料濃縮器、
34c,34d…羽根
36…流路区画部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7