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特許7413288新規なビニルホスフィン類及びそれから得られる光開始剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】新規なビニルホスフィン類及びそれから得られる光開始剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/50 20060101AFI20240105BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240105BHJP
   B01J 31/06 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C07F9/50
B01J35/02 J
B01J31/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020572619
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056435
(87)【国際公開番号】W WO2019175319
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】18161811.7
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520355301
【氏名又は名称】ハンスイェルク・グリュッツマッハー
(73)【特許権者】
【識別番号】520355312
【氏名又は名称】マルク・ビスピングホフ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハンスイェルク・グリュッツマッハー
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ビスピングホフ
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02584112(US,A)
【文献】国際公開第2012/049424(WO,A2)
【文献】英国特許出願公開第00812818(GB,A)
【文献】国際公開第2010/096778(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第00911284(GB,A)
【文献】Odom, J. D.; Riethmiller,Spectra and structure of phosphorus-boron compounds. II. A Vibrational and nuclear magnetic resonance spectral investigation of phosphine-trichloroborane,Inorganic Chemistry,1973年,12(5),,1123-7
【文献】Tierney, P. A.,Some physical properties of boron trichloride-phosphine,Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry ,1962年,24,,1163-9
【文献】Royen, P.,Formation of so-called solid phosphine, particularly its phenyl derivatives. (Also a study of partially halogenated phosphine),Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie,1936年,229,,112-28
【文献】Drake, John E.,Phosphine-borane derivatives. VIII. Boron-11 nuclear magnetic resonance parameters of the mixed boron trihalide adducts of phosphine and,Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry ,1974年,36(11),,2613-15
【文献】Yurchenko, R. I.,Reaction of 1-(2'-haloethyl)adamantanes with phosphine-aluminum trichloride complex,Zhurnal Obshchei Khimii ,1992年,62(4),,953-4
【文献】Pass, F.,Organic phosphorus compounds III. A new method for the preparation of primary phosphines,Monats. Chem. ,1962年,93,,230-6
【文献】Busacca, Carl A.,Hydrophosphination of Propargylic Alcohols and Amines with Phosphine Boranes,Organic Letters,2013年,15(5),,1132-1135
【文献】Toffano, M.,Applications of tricoordinated phosphorus compounds in homogeneous catalysis,Science of Synthesis,2009年,Volume Date 2008, 42,347-389
【文献】Hashimoto, Takeshi,Synthesis of 1,3-bis(diphenylphosphinoyl)alkanes via double addition of diphenylphosphine to α,β-unsaturated carbonyl compounds: sequential 1,4- and 1,2-addition promoted by NbCl5-BF3・OEt2 [niobium(V) chloride-diethyl ether-boron trifluoride complex],Synlett,1992年,(4),,340-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(XIIa2)及び(XIIb):
【化1】
(式中、
nは整数であり
は、nが1の場合には、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールであり、
は、nが1より大きい場合には、アルカン-n-イル、アルケン-n-イル、アルキン-n-イル、又はアリール-n-イルであり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールであり、
は存在せず、
ここで、
については、前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカン-n-イル、アルケン-n-イル、アルキン-n-イル置換基が、そしてRについては前述のアルキル、アルケニル、及びアルキニル置換基が、
・ 非置換アリールジイルからなる群から選択される二価の基によって中断されていないか、1回、2回、又は2回より多く中断されており、
加えて又はそれに代わって、
・ 非置換アリール及びハロゲンからなる群から選択された置換基で置換されていないか、1回、2回、又は2回より多く置換されており、
かつ、
Pnは、リンであり、
fは2であり、かつ
及びRは互いに独立に、水素又はアルキルである。)
の化合物、シクロペンチルホスフィン又はシクロヘキシルホスフィンの製造方法であって、
以下のステップ:
aaa)
・ 式(XIIIa)(式XIIaの化合物を得るために)又は
・ 式(XIIIb)(式XIIbの化合物を得るために):
【化2】
の化合物
・ シクロペンテン又はシクロヘキセン
を、三塩化アルミニウムと、ホスフィン(PH)と間で形成されるものから選択される少なくとも1つの1:1ルイス付加物と反応させるステップ、を含む製造方法。
【請求項2】
式(XIIa2)及び(XIIb)において、
nは1であり、
は、水素、アルキル、又はアリールであり、
は、水素、アルキル、又はアリールであり、
ここで、R及びRについて、前述したアルキル置換基は、
・ 非置換アリールからなる群から選択される置換基で置換されていないか、1回、2回、又は2回より多く置換されている、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(XIIa2)及び(XIIb)において、
nは1であり、
は、水素、C~C-アルキル、又はフェニルであり、
は、水素、C~C-アルキル、又はフェニルであり、
ここで、R及びRについて、前述したアルキル置換基は、
非置換アリールからなる群から選択される置換基で置換されていないか、1回、2回、又は2回より多く置換されている、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(XIIIa)の化合物が、アセチレン、フェニルアセチレン、1,2-ジフェニルアセチレン、及び3-ヘキシンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
式(XIIa)の化合物が、ビニルホスフィン、1-フェニルビニルホスフィン及び3-ヘキセン-3-イルホスフィンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
式(XIIIb)の化合物が、エチレン、プロピレン、イソブテン、1-ブテン、2-ブテン、ビニルベンゼン、シクロヘキセン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ブテン、シクロペンタジエン、スチレン、 trans-スチルベン、ジビニルベンゼンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
式(XIIb)の化合物が、tert-ブチルホスフィン、(1-ヘキシル)-ホスフィン、(2-ヘキシル)-ホスフィン、(3-ヘキシル)-ホスフィン、3,3-ジメチルブチルホスフィン、3,3-ジメチルブタン-2-イルホスフィン、1,2-ジフェニルエチルホスフィン、及び1-フェニルエチルホスフィンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
最初にホスフィン(PH)と、三塩化アルミニウムとを混合して希釈剤中でルイス付加物を形成し、次に所望の量の式(XIIIa)又は(XIIIb)の化合物、シクロペンテン又はシクロヘキセンを添加することによって実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記希釈剤が、
・ 芳香族炭化水素及びハロゲン化芳香族炭化水素、
脂肪族炭化水素、及
・ ハロゲン化脂肪族又はオレフィン系炭化水素
びに前述した希釈剤の混合物
から選択される、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
バッチ式で又は連続式で行う、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
反応温度が、-30℃~120℃である、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
反応圧力が、800hPa~10MPaである、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
10hPa未満の酸素分圧下で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれがリン原子に結合したビニル官能基を有する新規なビスアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィン酸、その塩、及びそれらの誘導体のための出発物質として有用であるアルキル及びビニルホスフィン類を調製するための非常に効率的なプロセス、並びに後者を調製するための汎用性の高いプロセス(方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
モノ及びビスアシルホスフィンオキシドなどの光開始剤は、さらに官能化された置換基をもつものを含めて、光誘起開裂が生じる波長について調整可能である、又は移行(マイグレーション)を回避するために、例えば食品包装において、他の添加剤、例えば、増感剤、安定剤又は界面活性剤に結合可能である光開始剤が非常に望まれていることから、大きな商業的注目を集めている。
【0003】
さらに、水溶性は、コーティング、接着剤、インク、及び塗装材料などの環境にやさしい生産に対する、例えば、水性UVインクジェットインクに対する、急増する需要に対処するために、及び興味深い新規分野、例えば、組織工学のためのヒドロゲルの製造などへの適用性を拡大させるために、一般に光重合開始剤にとってますます興味深い特性になってきている。
【0004】
しかし、対応する酸化物又はホスフィン酸、ならびにそれらの塩及び誘導体のための中間体としてしばしば用いられるモノ-及びビスアシルホスフィン類の合成は、通常、高い反応性のホスフィン類、例えば、ホスフィン(PH)、一級ホスフィン、RPH、又は二級ホスフィンRPHの使用を必要とするが、上の課題を達成するためのそれらの構造の可変性は一般には低い。
【0005】
モノ-及びビスアシルホスフィンオキシド及びそれらの前駆体を調製するためのプロセスは、例えば、国際公開第2006/056541号、国際公開第2010/121387号、及び国際公開第2011/003772号により知られている。
【0006】
欧州特許出願公開第1 135 399号公報は、モノ-及びビスアシルホスフィン並びにそれらのそれぞれの酸化物(オキシド)及び硫化物(スルフィド)の調製方法を開示している。そのプロセスは、置換モノハロホスフィン類(RPCl)又はジハロホスフィン類(RPCl)をアルカリ金属と、又はマグネシウムとリチウムの組み合わせと、適切な場合は触媒の存在下で反応させ、得られた金属化ホスフィンをカルボン酸ハロゲン化物とさらに反応させるステップ、及び得られたモノ-又はビスアシルホスフィン類を硫黄又は酸素移行性酸化剤(oxygen transferring oxidant)でさらに酸化するステップを含む。
【0007】
国際公開第05/014605号により、溶媒中、プロトン源の存在下、溶媒中で、最初にモノハロホスフィン類(RPCl)又はジハロホスフィン(RPCl)をアルカリ金属と反応させ、次にそうして得られたホスフィン類をカルボン酸ハロゲン化物と反応させるステップを含むプロセスによって置換アシルホスフィン類を調製することがさらに知られている。
【0008】
国際公開第2006/074983号は、最初に、モノハロホスフィン類(RPCl)又はジハロホスフィン類(RPCl)を、20~200℃の温度において、加圧下、三級脂肪族アミン又は芳香族アミンの存在下で、非プロトン性溶媒中において水素により接触還元することによって、対応するハロゲンを有しないホスフィン類を得て、次に、そのホスフィン類をカルボン酸ハロゲン化物と反応させてモノ-又はビスアシルホスフィン類を得る、ビスアシルホスフィン類の調製方法を開示している。
【0009】
必要な一級ホスフィンRPH又は二級ホスフィンRPHは、対応するハロ-又はジハロホスファン類又はそれらのそれぞれの酸化物(オキシド)を水素化アルミニウムリチウムと反応させることによって通常は調製される。それにより、アルキル-又はジアルキルホスフィン類が非常に中程度の収率で得られる。
【0010】
一級又は二級ビニルホスフィン類は、米国特許第3,048,638号明細書又はFedorov, S. V.; Krivdin, L. B.; Rusakov, Y. Y.; Chernysheva, N. A .; Mikhailenko, V. L., Magnetic Resonance in Chemistry, 2010, S48に開示されているようにビニルマグネシウムハライドとハロホスフィン類の反応により、又はAlHCl2によるビニルホスホネートの還元により(Cabioch, J. L.; Denis, J. M., J. Orgmet. Chem., 1989, 227を参照されたい)、得ることができる。
【0011】
第一級及び第二級ホスフィン類は、例えば、Hoff, M. C.; Hill, P., Journal of Organic Chemistry, 1959, 356、米国特許第4,922,025号明細書、欧州特許出願公開第057 924 号公報、米国特許第5,536,880号明細書、米国特許第5,892,120号明細書に開示されているように、酸又は酸性触媒の存在下でホスフィン(PH3)をアルケンと反応させることによって、あるいは、Stiles, A. R.: Rust, F. F.; Vaughan, W. E., JACS, 1952, 3282、米国特許第4163760号明細書に開示されているように、ホスフィン(PH3)へのアルケンのフリーラジカル付加により、あるいは、ホスフィン(PH3)への官能化アルケンの熱添加によって(国際公開第2004/094440号を参照されたい)、さらに調製することができる。
【0012】
しかし、上に挙げた全ての方法に共通する特徴は、厳しい反応条件が必要とされ、収率が低く、選択性が低く、このことがこれらのプロセスを商業的には非常に魅力的ではないものにしている。
【0013】
上記の合成経路は、特に商業的利用可能性を考慮した場合、リンに直接結合した有機非カルボニル残基について、限られたバリエーションを許容するだけであることが、当業者には明らかである。
【0014】
つい最近、この制限を克服する試みが成功した。国際公開第2014/053455号は、追加の官能基、とりわけ、ペンダントアクリル官能基による架橋を可能にする官能基を含む新規のモノ-及びビスアシルホスフィンオキシドを開示している。そのような官能基は、モノ及びビスアシルホスフィン又はそれらの対応する塩に電子不足オレフィンを付加させることによって導入された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2006/056541号
【文献】国際公開第2010/121387号
【文献】国際公開第2011/003772号
【文献】欧州特許出願公開第1135399号公報
【文献】国際公開第05/014605号
【文献】国際公開第2006/074983号
【文献】米国特許第3,048,638号明細書
【文献】米国特許第4,922,025号明細書
【文献】欧州特許出願公開第057924号公報
【文献】米国特許第5,536,880号明細書
【文献】米国特許第5,892,120号明細書
【文献】米国特許第4,163,760号明細書
【文献】国際公開第2004/094440号
【文献】国際公開第2014/053455号
【非特許文献】
【0016】
【文献】Fedorov, S. V.; Krivdin, L. B.; Rusakov, Y. Y.; Chernysheva, N. A .; Mikhailenko, V. L., Magnetic Resonance in Chemistry, 2010, S48
【文献】Cabioch, J. L.; Denis, J. M., J. Orgmet. Chem., 1989, 227
【文献】Hoff, M. C.; Hill, P., Journal of Organic Chemistry, 1959, 356
【文献】Stiles, A. R.: Rust, F. F.; Vaughan, W. E., JACS, 1952, 3282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、架橋及び/又は既知の置換パターンの変化(バリエーション)を可能にする、置換基を有する高光活性光開始剤、及びその調製のための汎用性の高いプロセスが依然として必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、下記式(I)の化合物を包含する:
【化1】
式中、
nは整数であり、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1、2、3、又は4、さらにより好ましくは1又は2、最も好ましくは1であり、
mは1又は2であり、
は、nが1の場合は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールであり、
は、nが1より大きい場合は、アルカン-n-イル、アルケン-n-イル、アルキン-n-イル、又はアリール-n-イルであり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、C~C14-アリールであり、これは非置換であるか、又は、フッ素、C~C-アルキル、C~C-ハロアルキル、及びフェニルからなる群から選択される最大3つまでの同一又は異なる置換基で置換されており、又は-(O)(Cat)であり、ここで-(O)(Cat)は全体としてヒドロキシを表すか、又はCatはp価のカチオンの1/p当量分を表し、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、
ここで、
については、前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルカン-n-イル、アルケン-n-イル、アルキン-n-イル置換基が、そしてR及びRについては前述のアルキル、アルケニル、及びアルキニル置換基が、
・ 非置換アリールジイルからなる群から選択される二価の基によって中断されていないか、1回、2回、又は2回より多く中断されており、
加えて又はそれに代わって、
・ 非置換アリール及びハロゲンからなる群から選択された、好ましくは非置換アリールジイルからなる群から選択された置換基で置換されていないか、1回、2回、又は2回より多く置換されており、
かつ、
については、前述のアルキル、アルケニル、及びアルキニル置換基は
・ -O-、-NR-、-CO-、-OCO-、-O(CO)O-、-NR(CO)-、-NR(CO)O-、-O(CO)NR-、-NR(CO)NR-からなる群から選択される非連続的な官能基によって中断されていないか、1回、2回、又は2回より多く中断されており、
加えて又はそれに代わって、
・ ヘテロシクロジイル及びアリールジイルからなる群から選択される二価の基によって中断されていないか、1回、2回、又は2回より多く中断されており、
加えて又はそれに代わって、以下の:
・ ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、保護されたホルミル、ハロゲン、シアノ、C~C14-アリール、ヘテロシクリル、C~C-アルコキシ、C~C14-アリールオキシ、C~C14-アリールチオ、C~C-アルキルチオ、-COOM、-SOM、-PO、-PO(N(R、-N(R、-PO(OR、-SON(R、-NRSO、-N(R、-N(RAn、-CON(R、-COR、-(CO)OR、-O(CO)OR、-NR(CO)R、-NR(CO)OR、-O(CO)N(R、-NR(CO)N(R、-Si(OR(R3-y、-OSi(OR(R3-y(y=1、2、又は3である)
からなる群から選択される置換基で置換されていないか、1回、2回、又は2回より多く置換されており、
ここで用いられている全ての式において、
は、独立に、水素、C~C-アルキル、C~C14-アリール、及びヘテロシクリルからなる群から独立に選択されるか、又はN(Rは全体としてN含有ヘテロ環であり、
は、独立に、C~C-アルキル、C~C14-アリール、及びヘテロシクリルからなる群から選択されるか、又はN(Rは全体としてN含有ヘテロ環であり、
Mは、水素、又はq価金属イオンの1/q当量分であるか、又はアンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、1つ以上N置換されたグアニジニウムイオン、あるいは第一級、第二級、第三級、又は第四級有機アンモニウムイオン、特に 式[N(C~C18-アルキル)(sは1、2、3、又は4であり、tは(4-s)である)の式のもの、又はヘテロシクリリウムであり、
Anはr価のアニオンの1/r当量分である。
【0019】
本発明の範囲は、一般的な又は好ましい範囲又は好ましい態様の範囲内で、互いに、すなわち特定の範囲と好ましい範囲との間の任意の組み合わせで、上で示した及び以下で示す置換基の定義、パラメータ、及び説明の全ての組み合わせを包含する。
【0020】
本明細書において使用するときにはいつでも、「含む」、「例えば」、「など」、及び「のような」という用語は、それぞれ、「それを含むがそれに限定されない」又は「例えば限定されることなく」の意味である。
【0021】
本明細書で使用する場合、及び特に別段の記載のない限り、アリールは炭素環式芳香族置換基を示し、前記炭素環式芳香族置換基は非置換であるか、1つの環当たり最多で5つのまでの同一又は異なる置換基で置換されている。例えば、そして好ましくは、置換基は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素、ニトロ、シアノ、ホルミル又は保護されたホルミル、ヒドロキシ又は保護されたヒドロキシ、C~C-アルキル、C~C-ハロアルキル、C~C-アルコキシ、C~C-ハロアルコキシ、C~C14-アリール、特に、フェニル及びナフチル、ジ(C~C-アルキル)アミノ、(C~C-アルキル)アミノ、CO(C~C-アルキル)、OCO(C~C-アルキル)、NHCO(C~C-アルキル)、N(C~C-アルキル)CO(C~C-アルキル)、CO(C~C14-アリール)、 OCO(C~C14-アリール)、NHCO(C~C14-アリール)、N(C~C-アルキル)CO(C~C14-アリール)、COO-(C~C-アルキル)、COO-(C~C14-アリール)、CON(C~C-アルキル)、又はCONH(C~C-アルキル)、COM、CONH、SONH、SON(C~C-アルキル)、SOM、及びPOからなる群から選択される。
【0022】
好ましい態様では、炭素環式芳香族置換基は、非置換であるか、又はフッ素、塩素、シアノ、C~C-アルキル、C~C-ハロアルキル、C~C-アルコキシ、C~C-ハロアルコキシ、C~C14-アリール、特にフェニルからなる群から選択される、1つの環当たり最多で3つまでの同一又は異なる置換基で置換されている。
【0023】
より好ましい態様では、炭素環式芳香族置換基は、非置換であるか、又はフッ素、C~C-アルキル、C~C-フルオロアルキル、及びフェニルからなる群から選択される1つの環当たり最多で3つまでの同一又は異なる置換基で置換されており、 さらにより好ましい態様では置換基はオルト位には配置されていない。
【0024】
上で与えた定義は、それらの好ましい範囲を含めて、アリールオキシ、アリールチオ、アリールジイル、及びアリール-n-イル置換基にも同様に適用される。好ましいアリール置換基は、C~C14-アリール置換基、より好ましくはフェニル、ナフチル、フェナントレニル、及びアントラセニルである。
【0025】
好ましいアリールジイル置換基は、C~C14-アリールジイル置換基、より好ましくは1,2-、1,3-、又は1,4-フェニレンである。C~C14という文言は、それぞれの炭素環式芳香環システムの炭素原子の数が6~14であることを示している。上述した可能なかつ好ましい置換パターンが同様に適用可能である。
【0026】
本明細書で使用する場合、特に別段の記載がない限り、ヘテロシクリルは、1つの環当たり、0、1、2、又は3個の骨格原子が、但し全体の環システム中少なくとも1つの骨格原子が、リン、窒素、硫黄、及び酸素、好ましくは窒素、硫黄、及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子であるヘテロ環式脂肪族、芳香族、又は混合された脂肪族及び芳香族置換基を表し、そのようなヘテロ環式脂肪族、芳香族、又は混合された脂肪族及び芳香族置換基は非置換であるか、又は1つの環当たり最多で可能な限界までの同一又は異なる置換基で置換されており、その置換基は、その好ましい範囲を含めて、炭素環式芳香族置換基について上に示したものと同じ群から選択される。
【0027】
好ましいヘテロシクリル置換基及びヘテロアリール置換基は、それぞれ、ピリジニル、オキサゾリル、チオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、インドリル、ピリダジニル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、及びキノリニルであり、非置換であるか、又はヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、クロロ、フッ素、C~C-アルキル、C~C-フルオロアルキル、C~C-アルコキシ、C~C-フルオロアルコキシ、及びフェニルからなる群から選択される1、2、又は3つの置換基で置換されている。当業者は、例えば窒素に隣接したヒドロキシル基をもつ例えばヘテロアリール置換基は、典型的には、ケト化合物(例えば、2-ヒドロキシピリジンの場合はピリドン)として描写又は表示されることに気付く。これらの互変異性形もまた上記の定義に含まれる。
【0028】
上に示した定義は、それらの好ましい範囲を含めて、ヘテロシクリリウム及びヘテロアリーリウムカチオン、及び二価のヘテロシクロジイル及びヘテロアリールジイル置換基にも同様に適用される。
【0029】
好ましいヘテロシクリリウムカチオンは、N-(C~C-アルキル)イミダゾリウム又はピリジニウムカチオンである。
【0030】
本明細書で使用する場合、及び特に別段の記載がない限り、保護されたホルミルは、アミナール、アセタール、又は混合アミナールアセタールへの変換によって保護されているホルミル置換基であり、アミナール、アセタール、及び混合アミナールアセタールは非環式又は環式のいずれかである。
【0031】
例えば、そして好ましくは、保護されたホルミルは、1,1-(2,4-ジオキシシクロペンタンジイル)である。
【0032】
本明細書で使用する場合、及び特に別段の記載がない限り、保護されたヒドロキシは、ケタール、アセタール、又は混合アミナールアセタールへの変換によって保護されているヒドロキシ基であり、アミナール、アセタール、及び混合アミナールアセタールは非環式又は環式のいずれかである。保護されたヒドロキシの具体例は、テトラヒドロピラニル(O-THP)である。
【0033】
本明細書で使用する場合、及び特に別段の記載がない限り、アルキル、アルカンジイル、アルケニル、アルケンジイル、アルキニル、アルカン-n-イル、アルケン-n-イル、アルキン-n-イル、アルコキシ、及びアルキルチオは、直鎖、又は部分的に又は全体として環状、分岐又は非分岐であり、明示的に別段の記載がない限りは、いずれかの官能基によって中断されることも、置換されていることもない。
【0034】
~C18-アルキルの用語は、直鎖、又は部分的もしくは全体として環状、分岐又は非分岐のアルキル置換基が、C~C18-アルキル置換基への任意選択によって存在していてもよい置換基の炭素原子を除いて、1~18の炭素原子を含むことを示す。同じことは、指定された数の炭素原子を有するアルカンジイル、アルケニル、アルケンジイル、アルキニル、アルカン-n-イル、アルケン-n-イル、アルキン-n-イル、アルコキシ、及びアルキルチオ、並びに指定された数の炭素原子を有するさらなる置換基にも同様に適用される。
【0035】
誤解を避けるために、アルケニルの用語は、直鎖、又は一部又は全体として環状、分岐又は非分岐の置換基内で、その位置に関係なく少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を、しかしそれだけでなく1より多い二重結合を含む置換基も意味する。同じことがアルケン-n-イルにも適用される。
【0036】
誤解を避けるために、アルキニルの用語は、直鎖、又は一部又は全体として環状、分岐又は非分岐の置換基内で、その位置に関係なく少なくとも1つの少なくとも1つの炭素-炭素三重結合、しかしそれだけでなく1より多い二重結合を含む置換基をも意味する。同じことがアルキン-n-イルにも当てはまる。
【0037】
~C-アルキルの具体例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチルである。C~C-アルキルの追加の例は、n-ペンチル、イソペンチル、シクロヘキシル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチルである。C~C18-アルキルの追加の例は、ノルボルニル、アダマンチル、n-デシル、n-ドデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシルである。
【0038】
~C-アルカンジイル置換基の具体例は、メチレン、1,1-エチレン、1,2-エチレン、1,1-プロピレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、1,1-ブチレン、1,2-ブチレン、2,3-ブチレン及び1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、1,6-ヘキシレン、1,1-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、1,2-シクロヘキシレン、及び1,8-オクチレンである。
【0039】
~C-アルコキシ置換基の具体例は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、及びtert-ブトキシである。C~C-アルコキシの追加の例はシクロヘキシルオキシである。
【0040】
~C18-アルケニル及びC~C-アルケニル置換基の具体例には、ビニル、アリル、3-プロペニル、及びブテン-2-イルが含まれる。
【0041】
~C18-アルキニル及びC~C-アルキニル置換基の具体例には、エチニルが含まれる。
【0042】
上で使用されているように、C~C-ハロアルキル及びC~C-ハロアルコキシは、ハロゲン原子で1回、1回より多く、又は完全に置換されているC~C-アルキル及びC~C-アルコキシ置換基である。フッ素で部分的に又は完全に置換されている置換基は、それぞれC~C-フルオロアルキル及びC~C-フルオロアルコキシといわれる。
【0043】
~C-ハロアルキル置換基の具体例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、クロロメチル、フルオロメチル、ブロモメチル、2-ブロモエチル、2-クロロエチル、ノナフルオロブチル、及びn-パーフルオロオクチルである。
【0044】
式(I)の好ましい化合物は、
nが1であり、
mが1又は2であり、
が、水素、アルキル、又はアリールであり、
が、水素、アルキル、又はアリールであり、
が、アルケニル、非置換フェニル、又はC~C-アルキル又はC~C-ハロアルキルからなる群から選択される置換基によって1回、2回、又は3回置換されたフェニル、又は-(O)(Cat)であり、-(O)(Cat)は全体として-OHを表すか、Catはp価カチオンの1/p当量分を表し、
はアリールであるものであり、
ここで、
及びRついて上述したアルキル置換基、又は
についてすなわち上述したアルケニル置換基は、
・ 非置換アリールからなる群から選択される置換基で置換されていないか、1回、2回、又は2回より多く置換されている。
【0045】
式(I)のさらにより好ましい化合物は、
nが1であり、
mが2であり、
が、水素、C~C-アルキル、又はフェニルであり、
が、水素、C~C-アルキル、又はフェニルであり、
が、アルケニル、又は-(O)(Cat)であり、-(O)(Cat)は全体として-OHを表すか、又はCatはp価カチオンの1/p当量分を表し、
はC~C14-アリールであるものであり、
ここで、
及びRについて上述したアルキル置換基、又は
についてすなわち上述したアルケニル置換基は、
・ 非置換アリールからなる群から選択される置換基で置換されていないか、1回、2回、又は2回より多く置換されている。
【0046】
式(I)の好ましい化合物には、式(II):
【化2】
の化合物が含まれ、
式中、
mは1又は2であり、かつ
vは(3-m)であり、
、R、及びRは、好ましい態様を含めて上に示した意味を有する。
【0047】
疑念を避けるため、及び式(II)が式(I)に基づいてどのように読み取れるかを説明するためには、式(I)においてnは1である必要があり、かつRは次のアルケニル置換基-[RC=CHR](mが1である場合)である必要があることに留意すべきである。
【0048】
式(I)の好ましい化合物には、式(III):
【化3】
の化合物も含まれる。
式中、
-(O)(Cat)は全体として-OHを表すか、Catはp価カチオンの1/p当量分を表し、
、R、及びRは、好ましい態様を含めて上に示した意味を有する。
【0049】
別の好ましい態様では-(O)(Cat)は全体として-OHを表すか、Catはリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、グアニジニウム、式[N(C~C-アルキル)(sは1、2、3、又は4であり、tは(4-s)である)の四級アンモニウム、s個の(C~C-アルキル)で1回、2回、3回、又は4回N置換されたグアニジニウム、又はヘテロシクリリウムである。
【0050】
さらにより好ましい態様では、-(O)(Cat)は全体として-OHを表すか、又はCatは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、式[N(C~C-アルキル)の第四級アンモニウム、及びテトラ-N-メチル-グアニジニウム又はジ-N-(C~C-アルキル)-イミダゾリウムからなる群から選択される。
【0051】
置換基-[RC=CHR]の例には、ビニル(エテニル)、1-フェニル-エテン-1-イル、1,2-ジフェニルエテン-1-イル、及び3-ヘキセン-3-イルが含まれ、1-フェニル-エテン-1-イル、1,2-ジフェニルエテン-1-イル、及び3-ヘキセン-3-イルは、Z配置であることが好ましい。
【0052】
置換基Rの例には、フェニル、p-tert-ブチルフェニル、3-シアノフェニル、4-シアノフェニル、4-メチルフェニル、3-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル(メシチル)、4-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、p-クロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、4-ブロモフェニル、3-ブロモフェニル、4-ヨードフェニル、3-ヨードフェニル、3,4-ジブロモフェニル、4-ニトロフェニル、3-ニトロフェニル、p-トリフルオロメチル、p-エトキシカルボニル-フェニル、p-メトキシカルボニルフェニル、及びp-イソプロピルフェニルが含まれ、フェニルがさらに好ましい。
【0053】
式(I)の具体的な化合物には以下のものが含まれる。
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ビニル-ホスフィンオキシド(ビニル-ビス(メシトイル)ホスフィンオキシドともいわれる)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(1-フェニルエテン-1-イル)-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(3-ヘキセン-3-イル)-ホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ビニル-ホスフィン酸、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ビニル-ホスフィン酸ナトリウム塩、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ビニル-ホスフィン酸テトラ-(n-ブチル)アンモニウム塩、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ビニル-ホスフィン酸1,1,3,3-テトラ-N-メチル-グアニジニウム塩、ビス-(ベンゾイル)-ビニル-ホスフィンオキシド、ビス(ベンゾイル)-(1-フェニルエテン-1-イル)-ホスフィンオキシド、ビス(ベンゾイル)-( 3-ヘキセン-3-イル)-ホスフィンオキシド、(ベンゾイル)-ビニル-ホスフィン酸、(ベンゾイル)-ビニル-ホスフィン酸ナトリウム塩、(ベンゾイル)-ビニル-ホスフィン酸テトラ-(n-ブチル)アンモニウム塩、(ベンゾイル)-ビニル-ホスフィン酸 1,1,3,3-テトラ-N-メチル-グアニジニウム塩、1-フェニルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、及び1-メチルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド。
【0054】
式(I)の化合物は以下の方法により調製することができ、以下の方法もまた本発明に包含される。
【0055】
調製法A
式(I)の化合物は、例えば、以下のステップを含む方法(プロセス)によって調製することができる。
a)式(IV):
【化4】
(式中、
wは1又は2であり、
n、R、及びRは、好ましい態様を含めて上の式(I)について定義されたものと同じ意味を有し、
は、好ましい態様も含めて上の式(I)で定義されたR3と同じ意味を有するが、-(O)(Cat)の意味は除く。)
の化合物を、m当量の式(V)(ここで、wが1である場合はmは1であり、wが2である場合はmは1又は2である):
【化5】
(式中、
は、好ましい態様を含めて上の式(I)について定義されたものと同じ意味を有し、
LGは、脱離基、好ましくはクロロ、ブロモ、又はヨード、C~C-アルキルスルホニルオキシ、又はC~C-アルコキシ、より好ましくはクロロを表す。)
の化合物と反応させるステップであって、
ステップa)における式(V)の化合物との反応は、好ましくは、
・ 下で定義されている、好ましい態様を含めた、少なくとも1つのルイス酸の存在下、又は
・ 少なくとも1つの塩基の存在下、
のいずれかで行われ、式(VI):
【化6】
の化合物を得るためのステップ、
b)式(VI)の化合物を、式(I)の化合物へと酸化するステップ。
【0056】
ステップa)については、適切な塩基には、使用するホスフィンと比較してより高い塩基性を有する全ての塩基が含まれ、好ましくは、アンモニア、一級アミン、二級アミン、又は三級アミン、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びDBN、N-ヘテロ芳香族化合物、例えば、非置換の又は置換されたピリジン類又はキノリン類、アルコラート、例えば、リチウム-、ナトリウム-、及びカリウム-の、-メトキシド、-エトキシド、及び-tert-ブトキシド、アミド類、例えば、リチウム-ジイソプロピルアミド、水酸化物、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム水酸化物、並びに炭酸塩類、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウムカーボネートが含まれる。
【0057】
塩基の量は、式(V)の化合物に対して0.1~100モル当量の範囲、好ましくは0.5~5モル当量の範囲、より好ましくは0.9~1.2モル当量の範囲、さらにより好ましくは使用される式(V)の化合物に対して、1.00~1.05モル当量の範囲であることができる。
【0058】
反応中に塩基から形成された塩は、例えば、沈殿及びデカンテーション、濾過、又は遠心分離により、好ましくは、所望する場合又は必要な場合は濾過により除去することができる。
【0059】
このプロセスを実施するための典型的かつ好ましい反応圧力範囲は、50hPa~10MPa、好ましくは900hPa~0.5MPaであり、例えば、周囲圧力(常圧)下である。
【0060】
ステップb)の酸化は、当業者に知られている任意の方法で行うことができ、それには分子状酸素、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム又は過炭酸カリウム、モノペルオキソ二硫酸又は一過硫酸、過酢酸及び3-クロロ過安息香酸などの過酸、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩、重クロム酸カリウムなどのクロム酸塩又は重クロム酸塩、及び前述したもののすべての水溶液を用いた反応が含まれる。
【0061】
上記でRが-(O)(Cat)を表し、かつ-(O)(Cat)が-OHを表さない場合、ステップb)での酸化は、カチオンCatの存在下で行われることが好ましい。
【0062】
ステップa)及びb)は、ワンポット合成として、又は別個のステップで、かつ、連続的又はバッチ式のいずれかで実施されうる。
【0063】
好ましくは、ステップa)及びb)は溶媒中で行われる。適切な溶媒には以下のものが含まれる。
・ 芳香族炭化水素及びハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、o-、m-、及びp-キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼン、
・ 脂肪族炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及び
・ ハロゲン化脂肪族又はオレフィン系炭化水素、例えば、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン、及びテトラクロロメタン、
並びに前述した溶媒の混合物。
【0064】
ステップa)においては少なくとも1つの塩基が用いられ、あるいは一般的にはステップb)において追加で、
・ エーテル類、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、及び高級グリコールエーテル類、
・ アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、
・ スルホン類、例えば、テトラエチレンスルホン、
・ エステル類、例えば、酢酸エチル、
又は前述の溶媒の混合物を、あるいは先に記載した溶媒とともに、使用することができる。
【0065】
ステップb)においては、水を用いることもでき、その場合、Rは-(O)(Cat)を表し、全体として-OHを表すか、又はCatがp価カチオンの1/p当量分を表す。
【0066】
各ステップの反応時間は、典型的には1分~72時間、好ましくは5分~24時間の範囲である。
【0067】
溶媒の量は全く重要ではなく、経済的側面によって制限されるだけであり、なぜなら、式(I)の化合物又は式(VI)の中間体が最終的に単離される場合、溶媒は除去されなければならないからである。
【0068】
反応を促進するために、混合のためのエネルギーを、例えば標準的な撹拌機及び/又は静的混合要素によって、反応混合物に導入する。
【0069】
上記プロセスを実施するための典型的かつ好ましい反応温度範囲は、-30℃~120℃、好ましくは-10~80℃である。
【0070】
当業者には、所望の反応温度が、用いる溶媒の1013hPaにおける沸点より高い場合、反応は十分な圧力下で行われることが明らかである。
【0071】
調製方法A)は、上で定義された式(II)及び(III)の化合物を調製するのに特に適しており、それは式(VII):
【化7】
(式中、
zは1又は2であり、
及びRは、上記式(I)について上で定義されたものと好ましい態様を含めて同じ意味を有する。)
の化合物を、m当量の式(V):
【化8】
(式中、
及びLGは上で定義したものと同じ意味を有する)
の化合物と反応させて(ここで、zが1である場合はmは1又は2であり、zが2である場合はmは1である)、式(VIII):
【化9】
(式中、
zは1又は2であり、
zが1である場合、mは1又は2であり、あるいは
zが2である場合、mは1であり、
、R、及びRは、上で式(I)について定義されたものと好ましい態様を含めて同じ意味を有する。)
の化合物を得るステップ、
及び
b)式(VIII)の化合物を、
・ zが1である場合には、式(III)(式中、Rは-(O)(Cat)を表し、-(O)(Cat)は、好ましくはカチオンCatの存在下では-OHを表さない)の化合物へと、
・ zが2である場合いは、式(II)の化合物へと
酸化するステップ、によるものである。
【0072】
式(VI)及び(VIII)の化合物は新規化合物であり、式(I)の化合物の調製並びに式(II)及び(III)の化合物の調製のための中間体としても本発明に包含される。
【0073】
式(VI)の具体的な化合物には以下のものが含まれる。
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ビニル-ホスフィン(これは、ビニル-ビス(メシトイル)ホスフィンともいわれる)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(1-フェニルエテン-1-イル)-ホスフィン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(3-ヘキセン-3-イル)-ホスフィン、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ビニル-ホスフィン、ビス-(ベンゾイル)-ビニル-ホスフィン、ビス(ベンゾイル)-(1-フェニルエテン-1-イル)-ホスフィン、ビス(ベンゾイル)-(3-ヘキセン-3-イル)-ホスフィン、(ベンゾイル)-ビニル-ホスフィン、1-フェニルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン、及び1-メチルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィン。
【0074】
調製法B
別の実施形態では、Rが-(O)(Cat)を表す式(I)の化合物は、代わりに、例えば、以下のステップを含むプロセスによって調製されてもよい:
aa)下記式(IX):
【化10】
(式中、
n、R、及びRは、好ましい態様を含めて上で定義されたものと同じ意味を有する。)
の化合物を、下記式(X):
【化11】
(式中、Rは、式(I)について好ましい態様を含めて上で定義されたものと同じ意味を有する)
の化合物(アルデヒド)と反応させて、下記式(XI):
【化12】
の化合物を得るステップ、及び
bb)式(XI)の化合物のアルコール官能基を、好ましくはカチオンCatの存在下で、式(I)(式中、Rは-(O)(Cat)を表し、-(O)(Cat)は全体として-OHを表さない)の化合物へと酸化するステップ。
【0075】
ステップaa)は、水の中で行ってもよい。
【0076】
反応を促進するために、混合エネルギーを、例えば、標準的な撹拌機及び/又は静的混合要素によって、反応混合物に導入する。
【0077】
ステップaa)による方法を実施するための典型的かつ好ましい反応温度範囲は、-30℃~120℃、好ましくは-10~80℃である。
【0078】
当業者には、所望の反応温度が、用いる溶媒の1013hPaにおける沸点より高い場合には、その反応は十分な圧力下で行われることが明らかである。
【0079】
ステップbb)におけるアルコール官能基の酸化は、当業者に知られている任意の方法で原理的には行うことができ、それには、ジアルキルスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、及びアミン、例えばトリエチルアミンの存在下での、N-クロロコハク酸イミド又は元素状塩素との反応(Cory-Kim酸化)が含まれる。
【0080】
このタイプの酸化は、E. J. Corey, C. U. Kim, Journal of the American Chemical Society 1972, 94, 7586-7587、及び O. Berger, L. Gavara, J.-L. Montchamp, Organic Letters 2012, 14, 3404-3407)に開示されている。
【0081】
この酸化はさらに以下によって実施することができる。
・ 酸化剤として塩化オキサリル、触媒としてジメチルスルホキシド、及び塩基としてアミンを使用するいわゆるSwern酸化によって(K. Omura, D. Swern, Tetrahedron 1978, 34, 1651-1660に開示されている);
・ 酸化剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド、及び触媒としてジメチルスルホキシドを用いる、いわゆるPfitzner-Moffatt酸化によって(K. E. Pfitzner, J. G. Moffatt, Journal of the American Chemical Society 1963, 85, 3027-3027に開示されている);
・ Dess-Martinペルヨージナンなどの超原子価ヨウ素試薬を使用して(D. B. Dess, J. C. Martin, The Journal of Organic Chemistry 1983, 48, 4155-4156を参照されたい);
・ 化学量論的酸化剤としてN-メチルモルホリン-N-オキシドを、触媒として過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP)を触媒として使用するいわゆるLey-Griffith酸化によって(W. P. Griffith, S. V. Ley, G. P. Whitcombe, A. D. White, Journal of the Chemical Society, Chemical Communications 1987, 1625-1627);
・ アセトン及びアルミニウムアルコラートを使用するいわゆるOppenauer酸化によって(R. V. Oppenauer, Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas 1937, 56, 137-144に開示されている);
・ クロム(VI)化合物、例えば、三酸化クロム又はピリジニウムクロロクロメートを使用して。
【0082】
式(I)の他の化合物を調製するためにRが-(O)(Cat)を表す式(I)の化合物のカチオンを変えるためには、カチオンを交換するための当業者に知られている全ての方法がここでも採用することができる。これらの方法には、イオン交換、例えば、弱酸性又は強酸性のイオン交換体を用いたイオン交換、対応する塩の対の異なる溶解度を利用するための塩の添加、又は全体として-(O)(Cat)が-OHを表す場合には所望のカチオンを含む塩基を単に追加する、が含まれる。
【0083】
式(IV)、(VII)、及び(IX)の化合物は、これまでに知られていなかったか、あるいはそれらの調製手順が面倒であり、したがって商業的に魅力がないため、これまで商業的に入手可能でなかったかのいずれかであった。
【0084】
したがって、本発明はさらに、下記式(XIIa)及び(XIIb)の化合物の調製方法を含む。
【0085】
【化13】
式中、
n、R、及びRは、式(I)について好ましい態様を含めて上で定義されたものと同じ意味を有し、Rは、-(O)(Cat)の意味を除いて、好ましい態様を含めて上の式(I)について定義されたRと同じ実施形態を有し、
かつ、
Pnは、リン、ヒ素、及びアンチモンからなる群から選択されるニクトゲン(第15族元素)であり、好ましくは、リン又はヒ素、より好ましくはリンであり、
fは0、1、又は2であり、
及びRは互いに独立に、水素又はアルキルである。
【0086】
この方法は以下のステップを含む。
aaa)
・ 式(XIIIa)(式XXIIaの化合物を得るために)又は
・ 式(XIIIb)(式XXIIbの化合物を得るために)
【化14】
(式中、
n、R、及びRは、式(I)について好ましい態様を含めて上で定義されたものと同じ意味を有し、R及びRは、式(XIIa)及び(XIIb)について上で定義されたものと同じ意味を有する)
の化合物を、少なくとも1つ、好ましくは1つのルイス酸の存在下で、下記式(XIV):
【化15】
の化合物と反応させるステップ。
【0087】
好ましい態様では、式(XIIIa)又は(XIIIb)の化合物を、少なくとも1つの、好ましくは1つのルイス酸の存在下で、ホスフィン(PH)、アルシン(AsH)又はスチビン(SbH)、好ましくはホスフィン(PH)又はアルシン(AsH)、さらにより好ましくはホスフィン(PH)と反応させる。
【0088】
特定の実施態様では、上で定義した式(VII):
【化16】
の化合物は、少なくとも1つの、好ましくは1つのルイス酸の存在下で、下記式(XIIIa2):
【化17】
の化合物をホスフィン(PH)と反応させることによって調製される。
【0089】
少なくとも1つのルイス酸に関する「存在下で」という用語は、ルイス酸が、用いたホスフィンと、かつ少なくとも部分的又は実質的又は完全に生成物ホスフィンとも、典型的にはルイス付加体を形成するという事実を包含する。
【0090】
式(XIIIa)及び(XIIIa2)の具体的な化合物には、アセチレン、フェニルアセチレン、1,2-ジフェニルアセチレン、及び3-ヘキシンが含まれる。
【0091】
式(XIIIb)の具体的な化合物には、エチレン、プロピレン、イソブテン、1-ブテン、2-ブテン、ビニルベンゼン、シクロヘキセン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ブテン、シクロペンタジエン、スチレン、 trans-スチルベン、ジビニルベンゼン、好ましくはイソブテンが含まれる。式(XIIa)の具体的な化合物には、ビニルホスフィン、ジビニルホスフィン、トリビニルホスフィン、1-フェニルビニルホスフィン、ビス-(1-フェニルビニル)ホスフィン、トリス-(1-フェニルビニル)ホスフィン、3-ヘキセン-3-イルホスフィン、及びビス(3-ヘキセン-3-イル)ホスフィンが含まれる。
【0092】
式(XIIb)の具体的な化合物には、tert-ブチルホスフィン、tert-ブチルアルシン、tert-ブチルスチビン、(1-ヘキシル)-ホスフィン、(2-ヘキシル)-ホスフィン、(3-ヘキシル)-ホスフィン、 3,3-ジメチルブチルホスフィン、3,3-ジメチルブタン-2-イルホスフィン、シクロペンチルホスフィン、シクロヘキシルホスフィン、1,2-ジフェニルエチルホスフィン、及び1-フェニルエチルホスフィンが含まれる。
【0093】
ビニルホスフィン、ジビニルホスフィン及びトリビニルホスフィン化合物を除いて、式(XIIa)の化合物は新規であり、したがって、本発明に含まれる。
【0094】
それらは、式(I)、(IV)、(VII)及び(IX)の化合物の前駆体として適しているだけでなく、他のリン又はヒ素含有化学物質、例えば、触媒による変換のための配位子、農業分野の製品及び医薬品のための前駆体としても有用である。
【0095】
式(XIIb)の化合物は、式(I)の化合物の調製において、リンを含み、置換基Rを有する式(IV)の出発物質として役立ち、あるいは電子産業に適用される望ましい化合物である。
【0096】
tert-ブチルホスフィン及びtert-ブチルアルシン、特にtert-ブチルホスフィンが、これまでに知られている全てのプロセスと比較して優れた純度及び選択性で製造できることは、本発明の主要な発見である。特に、それら生成物はいかなる検出可能な不純物も、例えば電子産業における使用に有害である硫黄を示さない。
【0097】
式(XIIa)又は(XIIb)の化合物を調製するための本発明による方法は、少なくとも1つの、好ましくは1つのルイス酸の存在下で行われる。
【0098】
本発明との関連で、用語「ルイス酸」は、例えば、Roempp's Chemie-Lexikon, 第8版, Franck'sche Verlagshandlung 1983年, 第3巻, H-Lで説明されているように、電子の空き(electron vacancy)を有するという、それらの化合物の一般的な慣習による定義を意味することが理解される。
【0099】
好ましい態様では、上述した少なくとも1つのルイス酸は、メチルアルミノキサン(MAO)及び下記式(XV)で表される化合物を含む群から選択される。
【化18】
(式中、
hは、2、3、4、又は5であり、
gは、0又は最大hの整数、好ましくは0、1、又は2、より好ましくは0又は1、さらにより好ましくは0であり、
Metは、
hが2の場合は、Sn、又は別の態様ではSn、Fe、Mn、及びZnであり、
hが3の場合は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Fe、B、Al、Ga、In、Asからなる群から選択される元素であり、
hが4の場合は、V、Ti、Zr、Hf、Snからなる群から選択された元素であり、
hが5の場合は、V、P、As、Sb、Biからなるグループから選択された元素である、
Xは、フルオリド、クロリド、ブロミド、アイオダイド、アジド、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、又はシアニド、好ましくはフルオロ、クロロ、又はブロモ、より好ましくはフルオロ又はクロロからなる群から、独立に選択され、
は、C~C18-アルキル、シクロペンタジエニル、C~C18-ハロアルキル、C~C18-アルコキシ、C~C18-ハロアルコキシ、C~C14-アリール、C~C18-アリールアルキル、C~C14-アリールオキシ、C~C18-アリールアルコキシ、-O(HC=O)-、-O(C=O)-(C~C18-アルキル)、-O(C=O)-(C~C14-アリール) 、及び-O(C=O)-(C~C18-アリールアルキル)を表すか、又は
2つのRは一緒になって、C~C18-アルカンジイル、C~C18-ハロアルカンジイル、C~C18-アルカンジオキシ、 C~C18-ハロアルカンジオキシ、C~C14-アリールジイル、C~C18-アリールアルカンジイル、C~C14-アリールジオキシ、C~C18-アリールアルカンジオキシ、 -O(C=O)-(C~C18-アルキル) - (C=O) O-、-O(C=O)-(C~C14-アリール) - (C=O) O-、及び-O(C=O)-(C~C18-アリールアルキル) - (C=O) O-、又はオキソ (=O)を表す。
【0100】
1つの態様では、gは0である。
【0101】
この態様について、そのような化合物の例には、
h=2については、二塩化スズ、又は別の実施形態では、二塩化スズ、二塩化亜鉛、二塩化鉄、及び二塩化マンガン、
h=3については、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三ヨウ化ガリウム、三フッ化インジウム、三臭化インジウム又は三ヨウ化インジウム、三塩化スカンジウム、三塩化鉄、三フッ化ヒ素、三塩化ビスマス、
h=4については、四塩化チタン、四臭化チタン、四塩化バナジウム、四塩化スズ、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、臭化三塩化チタン、二臭化二塩化チタン、臭化三塩化バナジウム、塩化三フッ化スズ、
h=5については、五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン、五フッ化ヒ素、塩化五フッ化アンチモン、フッ化四塩化ヒ素
が含まれる。
【0102】
好ましい化合物は、二塩化亜鉛、二塩化鉄、二塩化マンガン、三塩化アルミニウム、及び三フッ化ホウ素であり、三塩化アルミニウム及び三フッ化ホウ素が好ましく、三塩化アルミニウムがさらに好ましい。
【0103】
1つの態様では、gは1、2、又は3である。
【0104】
この態様について、そのような化合物の例には、
h=3については、二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メトキシアルミニウムジクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシアルミニウムジクロライド、メトキシメチルアルミニウムクロライド、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシメチルアルミニウムクロライド、二塩化イソプロポキシガリウム及びフッ化フェノキシメチルインジウム、二塩化アセトキシアルミニウム、二臭化ベンゾイルオキシアルミニウム、二フッ化ベンゾイルオキシガリウム、メチルアセトキシアルミニウムクロライド、及び三塩化イソプロポイルオキシインジウム、トリエチルアルミニウム、及び一実施形態では追加してトリフェニルホウ素、
h=4については、シクロペンタジエニルチタントリクロライド、ジシクロペンタジエニルチタンジクロライド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、及びジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、
h=5については、塩化テトラフェニルアンチモン及び二塩化トリフェニルアンチモン及びオキシ三塩化バナジウム、
が含まれる。
【0105】
一つの態様では、2つ以上のルイス酸、例えば2つ又は3つが使用される。
【0106】
このプロセスは、典型的にかつ好ましくは、最初に式(XIV)の化合物と少なくとも1つのルイス酸を希釈剤中で混合し、次に所望量の式(XIIIa)又は(XIIIb)の化合物を添加することにより行われる。一つの態様では、式(XIV)の化合物及び少なくとも1つのルイス酸の反応によって形成されるルイス付加物の形成は、機械的混合、例えば1~120分以上の機械的混合によって助けられる。
【0107】
式(XIV)の化合物と少なくとも1種のルイス酸を希釈剤中で混合するステップを含む前述のルイス付加物の調製も、ルイス酸、式(IV)の化合物、及び希釈剤について上に開示した全ての好ましい態様を含めて本発明に包含される。さらに、式(XIIIa)又は(XIIIb)の化合物を調製するためのルイス付加物及びそれらの溶液の使用も同様に本発明に包含される。適切な希釈剤には、式(XIV)、(XIIIa)、又は(XIIIb)の化合物と新しい共有結合を形成するようには反応せず又は実質的に反応せず、さらに式(XIV)の化合物と少なくとも1つのルイス酸の反応によって通常形成されるルイス付加物よりも安定である、少なくとも1つのルイス酸とルイス付加物を形成しないものが含まれる。
【0108】
そのような希釈剤には以下のものが含まれる。
・ 芳香族炭化水素及びハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、o-、m-、p-キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼン、
・ 脂肪族炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、
・ ハロゲン化脂肪族又はオレフィン系炭化水素、例えば、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン、及びテトラクロロメタン、
及び前述の溶媒の混合物、ここで、
・ ベンゼン、トルエン、o-、m-、p-キシレン、メシチレンが好ましく、トルエンが特に好ましい。
【0109】
特に、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、トリエチルアルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三ヨウ化ガリウム、三フッ化インジウム、三臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタンと、式(XIV)の化合物との間で形成される1:1ルイス付加物、特にホスフィン(PH)とのルイス付加物は、安定であるが、反応性が高く、貯蔵可能であり、取り扱いが安全であり、特に、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びメシチレン中の溶液として非常に溶けやすく、したがって、上述した方法を実施するために特に有用であることが、本発明の主要な発見である。したがって、上述したルイス付加物、及び芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びメシチレン中、好ましくはトルエン中のそれらの溶液も本発明に含まれる。
【0110】
好ましいルイス付加物は、三塩化アルミニウムとホスフィン(PH)の1:1ルイス付加物及びそのトルエン中の溶液である。
【0111】
ステップaaa)におけるプロセスの反応時間は、典型的には2分~168時間、好ましくは30分~72時間の範囲である。
【0112】
希釈剤の量は全く重要ではなく、経済的側面によって制限されるだけであり、なぜなら、式(XIIa)又は(XIIb)の化合物が最終的に単離される必要がある場合には、希釈剤は除去されなければならないからである。
【0113】
反応を促進するために、混合エネルギーを、例えば標準的な撹拌機による及び/又は静的混合要素による混合エネルギーを、反応混合物に導入する。
【0114】
必須ではないが、混合は、例えば超音波ソノトロード又は高圧ホモジナイザーなどの高力分散装置を使用することによって補助することもできる。
【0115】
このプロセスは、バッチ式で又は連続的に行うことができる。
【0116】
プロセスを実施するための典型的かつ好ましい反応温度範囲は、-30℃~120℃、好ましくは-10~80℃、さらにより好ましくは0~40℃である。
【0117】
当業者には、所望する反応温度が、使用される希釈剤の1013hPaにおける沸点より高い場合には、反応は、十分な圧力下で行われることが明らかである。
【0118】
プロセスを実施するための典型的かつ好ましい反応圧力範囲は、50hPa~10MPa、好ましくは500hPa~1MPaである。
【0119】
ホスフィン(PH)を式(XIV)の化合物として使用する場合、プロセスを実施するための好ましい反応圧力範囲は800hPa~10MPa、好ましくは1000hPa~6MPa、さらにより好ましくは1000hPa~0.5MPaである。
【0120】
一つの態様では、反応は、実質的に酸素を排除して、すなわち10hPa未満、好ましくは5hPa未満、より好ましくは0.15hPa未満の酸素分圧下で行われる。
【0121】
一つの態様では、反応は、不活性ガス、すなわち、使用される反応条件下で反応物質と反応しないか又は実質的に反応しないガス下で行われる。
【0122】
反応中に、式(XIIa)又は(XIIb)の化合物が、使用されるルイス酸のタイプ、又は使用される少なくとも1つのルイス酸とのルイス付加物の形で部分的、実質的又は完全に形成される生成物に応じて形成される。これらのルイス付加物は、調製法Aに記載されているような後続のステップにおいて直接用いるか、又は分離が必要もしくは望ましい場合には、分解して式(XIIa)又は(XIIb)の化合物を純粋な形で放出するために分解することができる。分解は、例えば、熱処理によって行うことができ、式(XIIa)又は(XIIb)の化合物は、例えば、ルイス付加物からの蒸留により、又は水若しくはアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はtert-ブタノールの添加により、又は式(XIIa)又は(XIIb)の化合物から形成されたルイス付加物よりも安定である、用いたルイス酸とのルイス付加物を形成する有機化合物の添加によって、単離される。そのような有機化合物には、エーテル、ニトリル、及びアミンが含まれる。
【0123】
反応に使用される式(XIIIa)又は(XIIIb)の化合物と式(XIV)の化合物のモル比は、分子中に導入されるべき-[RC=CHR]、-[RC-CHR]基のそれぞれの数に左右される。
【0124】
式(XIIa)又は(XIIb)の化合物の反応混合物中において用いられる式(XIIIa)又は(XIIIb)の化合物のモル比及びタイプに応じて、様々な数の-[RC=CHR]、-[RC-CHR]基をもつ式(XIIa)又は(XIIb)の化合物を得ることができることが当業者に知られている。
【0125】
反応に用いられる式(III)の化合物とルイス酸のモル比は、一般に式(XIIIa)又は(XIIIb)の化合物1モル当たりルイス酸0.75~1.5モル、好ましくは0.85~1.2モル、さらにより好ましくは0.90~1.15モルである。
【0126】
ここで、上述した式(IX):
【化19】
の所望する化合物は、
aaaa)式(XIIa)(式中、
Pnはリンであり、かつ
fが2である)の特定の化合物、すなわち式(XIIa2):
【化20】
の化合物を酸化するステップ
によって調製することができる。
【0127】
ステップaaaa)における酸化は、調製法A)におけるステップa)について上に記載されたように実施され得る。したがって、好ましい態様を含めてそこに記載されている同じ試薬及びプロセス条件は、この酸化にも同様に適用される。
【0128】
式(XIIa2)の化合物の具体例には、ビニルホスフィン酸、ヘキセン3-イル-ホスフィン酸、特にZ-ヘキセン-3-イル-ホスフィン酸、ビス(1-フェニルビニル)-ホスフィン酸、及び(1-フェニルビニル)ホスフィン酸、特にビス-Z-(1-フェニルビニル)-ホスフィン酸、及びZ-(1-フェニルビニル)ホスフィン酸が含まれる。
【0129】
有利な点
従来技術により知られている化合物と比較して、式(I)の新規化合物、特に式(II)及び(III)の化合物は、UV及び/又は可視光照射下で高い反応性を示し、リンに直接結合した組み込まれた不飽和による架橋を可能にする。
【0130】
それらの調製は、上で開示した本発明による方法(プロセス)により、そして現在容易に入手可能な出発物質に基づいて、容易に達成することができる。
【0131】
用途
上記の理由により、式(I)の化合物は光開始剤として特に有用である。
【0132】
したがって、本発明のさらなる一つの側面は、以下のものを含む光硬化性組成物に関する。
I)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物、及び
II)好ましい態様を含めて上で定義した式(I)の少なくとも1つの化合物。
【0133】
適切なエチレン性不飽和化合物は1つ以上のオレフィン二重結合を含み、それには、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチル、エチル、2-クロロエチル、N-ジメチルアミノエチル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、イソボルニルエステルなどのアルキルエステル;フェニル、ベンジル、及びo-、m-、p-ヒドロキシフェニルエステル;ヒドロキシアルキルエステル、例えば、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチル又はグリセロール、又は[1,2,3-プロパントリオール]エステル;エポキシアルキルエステル、例えば、グリシジル、2,3-エポキシブチル、3,4-エポキシブチル、2,3-エポキシシクロヘキシル、10,11-エポキシウンデシルエステル;(メタ)アクリルアミド;N-置換(メタ)アクリルアミド、例えば、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-ヘキシルアクリルアミド、N-ヘキシルメタクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド、N-シクロヘキシルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N-フェニルメタクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-ベンジルメタクリルアミド、N-ニトロフェニルアクリルアミド、N-ニトロフェニルメタクリルアミド、N-エチル-N-フェニルアクリルアミド、N-エチル-N-フェニルメタクリルアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、及びN-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、IBMAA(N-イソブトキシメチルアクリルアミド)、(メタ)アクリロニトリル;不飽和酸無水物、例えば、イタコン酸無水物、無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、2-クロロマレイン酸無水物;不飽和エステル、例えば、マレイン酸エステル、フタル酸エステル、イタコン酸エステル、メチレンコハク酸エステル;スチレン類、例えば、メチルスチレン、o- 、m-、又はp-クロロメチルスチレン、及びo-、m-、及びp-ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン;ビニルエーテル類、例えば、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、及びフェニルビニルエーテル;ビニル及びアリルエステル類、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、酪酸ビニル、及び安息香酸ビニル、コハク酸ジビニル、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル;塩化ビニル及び塩化ビニリデン;イソシアヌレート類、例えば、トリアリルイソシアヌレート及びトリス(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレート;N-ビニル複素環式化合物、例えば、N-ビニルピロリドン又は置換N-ビニルピロリドン類、N-ビニルカプロラクタム又は置換N-ビニルカプロラクタム類、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピリジン、が含まれる。
【0134】
さらなる例には、ジアクリレートエステル類、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、ペンタエリトトリトールジイタコネート、ジペンタエリスリトールトリスイタコネート、ジペンタエリスリトールペンタイタコネート、ジペンタエリスリトールヘキサイタコネート、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジイタコネート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトール修飾トリアクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びメタクリレート、グリセロールジ及びトリアクリレート、1,4-シクロヘキサンジアクリレート、200~2,500の分子量を有するポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、アルコキシル化アルコール、例えば、グリセロールのエトキシレートトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシレートテトラアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート;不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸又はオレイン酸、が含まれる。
【0135】
高分子量のエチレン性不飽和化合物のさらなる例には、エチレン性不飽和単官能又は多官能カルボン酸及びポリオール又はポリエポキシドのエステル、及びその主鎖又は側鎖中又は側鎖としてエチレン性不飽和基を有するポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド及び不飽和ポリウレタン及びそれらのコポリマー、アルキド樹脂、ポリブタジエン及びブタジエンコポリマー、ポリイソプレン及びイソプレンコポリマー、側鎖に(メタ)アクリル基を有するポリマー及びコポリマー、並びにそのようなポリマーの1つ又は複数の混合物、が含まれる。
【0136】
さらに適切なエチレン性不飽和化合物には、例えば、米国特許第3844916号明細書、欧州特許第280222号明細書、米国特許第5482649号明細書、又は米国特許第5734002号明細書に記載されている、第1級又は第2級アミンとの反応によって修飾されたアクリレートが含まれる。そのようなアミン変性アクリレートもアミンアクリレートといわれる。アミンアクリレートは、例えば、UCB Chemicals社からEBECRYL 80、EBECRYL 81、EBECRYL 83、EBECRYL 7100の名称で、BASF SE社からLaromer PO 83F、Laromer PO 84F、Laromer PO 94Fの名称で、Cognis社からPHOTOMER 4775 F、PHOTOMER 4967 Fの名称で、Cray Valley社からCN501、CN503、CN550の名称で、Rahn社からGENOMER 5275の名称で入手できる。
【0137】
水が存在する場合は、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物を水に溶解又は乳化させることができる。
【0138】
そのような組成物において、水の濃度は、例えば5~80質量%、好ましくは30~60質量%である。
【0139】
光硬化性組成物中に追加で存在してもしなくてもよいさらなる成分は以下のものである。
・ 水
・ 有機極性希釈剤又は溶媒、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールエーテルなどのエーテル類
・ 有機又は無機顔料
・ 紫外線吸収剤
・ 無機フィラー
・ 熱安定剤
・ イソシアネート及び/又はポリイソシアネート
・ 平坦化剤
・ マット剤(艶消し剤)
・ 消泡剤
・ 減摩剤、例えば、シリコン含有減摩剤
・ 界面活性剤
・ 樹脂、例えば、ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリレート、セルロース樹脂、及びショ糖安息香酸エステル
・ さらなる光開始剤、それにはNorrish Type 1の開始剤が含まれるがそれには限定されず、例えば以下のものが含まれる:2-ヒドロキシ-1- {4- [4- [4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル} -2-メチル-プロパン-1-オン(Irgacure 127)、2-ヒドロキシ-1- [4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-フェニル] -2-メチルプロパン-1-オン(Irgacure 2959)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(Irgacure 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(Irgacure 1173)、ベンジルジメチルケタール及びオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1- [4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン](Lamberti社のEsacure KIP 150)及びモノ-又はビスアシルホスフィンオキシド。
【0140】
エチレン性不飽和成分、式(I)の化合物、及び任意のその他の成分の量は、組成物のタイプ、それを適用するために使用される特定の装置及び用途によって変わる。
【0141】
しかしながら、典型的には、組成物中の光開始剤の量は、0.05~12質量%、好ましくは2~10質量%、より好ましくは4~9質量%の範囲である。
【0142】
本発明はさらに、本発明による光硬化性組成物を電磁放射線、好ましくは紫外線又は青色光放射線に曝露することによって硬化した組成物を調製する方法に関する。
【0143】
電磁放射線の適切な供給源には以下のものが含まれる:ドープされていないか、又は例えば、ヨウ化ガリウム、ヨウ化タリウム、又はその他の金属ハロゲン化物でドープされていることができる、低圧、中圧、高圧、及び超高圧水銀ランプのようなUVランプ;緑、青、紫青のLED又はUV-LED;LEDランプ、集光した、直射の、又は間接的な日光;キセノン又はキセノン水銀アークランプ、例えば、連続出力キセノンショート又はロングアークランプ、フラッシュランプ、例えば、キセノン又はキセノン水銀フラッシュランプ;マイクロ波励起金属蒸気ランプ;エキシマランプ、スーパーアクチニック蛍光管;蛍光灯;及び、希ガス白熱灯。
【0144】
好ましい供給源は、ドープされていないか又はヨウ化ガリウム、ヨウ化タリウム、又はその他の金属ハロゲン化物でドープされていることができる、低圧、中圧、高圧、及び超高圧水銀ランプのようなランプ;緑、青、紫青、又はUV-LED、キセノン又はキセノン水銀アークランプ、例えば、連続出力キセノンショート又はロングアークランプである。
【0145】
本発明による組成物は、様々な目的のために使用することができ、例えば、オーバープリントコーティングにおいて、印刷インク、例えば、スクリーン印刷用インク、オフセット印刷又はフレキソ印刷用のインク、インクジェットインク、枚葉印刷用のインク、電子写真用インク、凹版インク;クリアコート、ホワイトコート、又は着色顔料コートとして、例えば、木材又は金属用;粉体塗装として、塗料として、とりわけ紙、木材、金属又はプラスチック用;日光硬化性塗料として、構造物及び道路のマーキング用;塗料(建物、建造物、車両、航空機などのための、写真複製プロセスのための、ホログラフィック記録材料のための、画像記録プロセスのための、又は有機溶剤を使用して若しくは水性アルカリ性媒体を使用して現像できる印刷版の製造における、スクリーン印刷用マスクの製造のための塗料);歯科用充填剤として、接着剤として、感圧接着剤として、ラミネート樹脂として、エッチングレジスト又は永久レジストとして、液体及びドライフィルムの両方として、光構造化誘電体として、及び電子回路用のソルダーマスクとして、任意のタイプのディスプレイ画面用のカラーフィルターの製造におけるレジストとして、又はプラズマディスプレイ及びエレクトロルミネセントディスプレイの製造時の構造の作成において、光学スイッチ、光学格子の製造(干渉格子)において、かたまりでの硬化(透明な型の中での光硬化)による又はステレオリソグラフィープロセスによる3次元物品の製造において、複合材料の製造において、電子部品のコーティング又はシーリングにおいて、又は光ファイバー用コーティングとして使用することができる。本組成物はまた、光学レンズ、例えば、コンタクトレンズ又はフレネルレンズの製造に、及び医療機器、補助器具、又はインプラントの製造においても適している。本組成物は、サーモトロピック特性を有するゲルの調製にも使用できる。
【0146】
式(I)の化合物は、光硬化性接着剤での使用にも適している。例えば感圧接着剤、ラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、湿気硬化接着剤、シラン反応性接着剤又はシラン反応性シーラントなどの製造、及び関連する用途である。前記の接着剤は、ホットメルト接着剤、ならびに水性又は溶剤型接着剤、液体無溶剤接着剤、又は2液型反応性接着剤であり得る。
【0147】
式(I)の化合物はまた、放射線硬化性粉末コーティングのためのフリーラジカル光開始剤又は光開始系として使用することもできる。
【0148】
上述したように、本発明による硬化は、電磁放射線の照射により実施することができる。しかしながら、硬化される配合物の組成に応じて、照射前、照射中又は照射後の熱硬化が有利であり得る。
【0149】
熱硬化は、当業者に知られている方法によって行われる。一般に、硬化は、オーブン、例えば、循環空気オーブン内で、加熱プレート上で、又はIRランプの照射によって行われる。使用するバインダーシステムに応じて、室温での補助なしの硬化も可能である。硬化温度は一般に、室温と150℃の間、例えば25~150℃、又は50~150℃である。粉体塗装又はコイル塗装の場合には、硬化温度はさらに高く、例えば、350℃までになりうる。
【0150】
以下で、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はそれらに限定されない。
【実施例
【0151】
例1):溶液中でのCl Al-PH 付加物及びその他のルイス酸-PH 付加物の合成
ガスの出入口を備えた500 mLの丸底フラスコ中で、AlCl3(AlfaAesarからの99.998%, 50.0 g, 375 mmol)をトルエン(約250 mL)中に懸濁させた。激しく撹拌しながら圧力計が1800 hPaとなるまで、フラスコをPH3の圧力に曝した。Cl3Al-PH3付加物が形成されると、圧力が低下し、最終的にはその手順を、透明な溶液が得られ、かつAlCl3がその容器中に溶解しなくなるまで繰り返さなければならない。反応混合物をPH3下でさらに30分間撹拌し、次に急冷システムへとパージした。溶液から過剰のPH3を除去するために、激しく攪拌しながらフラスコをアルゴンで15分間フラッシュした。トルエンをフラスコに添加して、総体積を375 mLにし、それにより、Cl3Al-PH3付加物の1.0 Mストック溶液を得た。
【0152】
31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -168.7 (q, 1JPH = 374.5 Hz) ppm。
【0153】
三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、トリエチルアルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三ヨウ化ガリウム、三ヨウ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタンとPH3とのルイス付加物を、上述した厳密に類似した手順に従って調製した 。
【0154】
Cl3B-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -110.2 (q, 1JPH = 421 Hz) ppm
Br3B-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -101.4 (q, 1JPH = 431 Hz) ppm
I3B-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -92.0 (q, 1JPH = 429 Hz) ppm
Br3Al-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -164.4 (q, 1JPH = 372 Hz) ppm
Et3Al-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= - 214.0 (q, 1JPH = 249 Hz) ppm
Cl3Ga-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= - 156.2 (q, 1JPH = 390 Hz) ppm
Br3Ga-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -160.2 (q, 1JPH = 375 Hz) ppm
I3Ga-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -165.5 (q, 1JPH = 365 Hz) ppm
I3In-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= - 190.9 (q, 1JPH = 332 Hz) ppm
Br3Ti-PH3: 31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -219.1 (q, 1JPH = 218 Hz) ppm
【0155】
例2):Cl Al-PH 付加物の分離
20 mLのシュレンク管中で、AlCl3(6.67 g, 50 mmol)をトルエン(7.5 mL)中に懸濁し、例1に記載のようにして反応を行った。次に、その懸濁液を、テフロン(登録商標)カニューレを通してろ過し、ろ液を-30℃に冷却した。無色の結晶性固体をガラスフリット上に集め、アルゴン流中で乾燥させて、Cl3Al-PH3付加物を白色粉末として得た。
【0156】
例3):ビニルホスフィンの調製
トルエン中、不活性ガス雰囲気下で、例1に従って調製したCl3Al-PH3付加物の撹拌溶液(0.5 M)に、圧力計が1500 hPa(すなわち、500 hPaのアセチレンの過圧)になるまで0℃でアセチレンガスを添加した。15分後、透明な溶液が白色の懸濁液に変化した。1時間後、アセチレン圧を解放し、反応混合物を0℃にて水(5 mL、N2で脱気したもの)をゆっくりと添加することによって加水分解した。反応混合物を20℃で1時間撹拌し、有機相を分離し、水相をトルエン(3x5 mL)で抽出した。
31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -136.4 (tdt, 1JPH = 198.0 Hz, 3JPH, trans = 28.2 Hz, JPH = 13.9 Hz)。
【0157】
例4):ジビニルホスフィンの調製
例1に従って調製されたトルエン中のCl3Al-PH3付加物の撹拌溶液(0.5 M)を、20℃にて0.5バールのアセチレンの過圧に曝した。15分後、その透明な溶液が白色の懸濁液に変化した。24時間後、淡黄色の濁った懸濁液が得られ、アセチレン圧を解放し、その反応混合物を0℃において水(5 mL、N2で脱気したもの)をゆっくり添加することによって加水分解した。不溶性の白色ポリマーのほかに、31P-NMRスペクトルは、モノ(15%)及びジビニルホスフィン(85%)に帰属される弱い信号を示した。
31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -63.6 (dttt, 1JPH = 211.4 Hz, 3JPH, trans = 28.7 Hz, 3JPH, cis = 14.1 Hz, 2JPH = 13.7 Hz) ppm。
【0158】
例5):ビニルホスフィン酸の調製
トルエン中、例3に従って調製したビニルホスフィン(2.5 mmol)及び酢酸緩衝液(pH=7, 5 mL)の撹拌したトルエン溶液に、過酢酸(1.4 mL, 35質量%, 1.25当量)を0℃において30分にわたって添加した。31P-NMR分光法は完全な変換を明らかにした。同様の生成物濃度が有機相中並びに水相中で見られた。
31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= 23.0 (ddt, 1JPH = 563.3 Hz, JPH, trans = 49.8 Hz, 3JPH = 26.4 Hz)。
【0159】
例6):ビニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンの調製
50 mLのシュレンクチューブ中で、AlCl3(1.47 g, 11.0 mmol, 1.1当量)をトルエン(20 mL)に懸濁させた。例1において上述したようにして、それをCl3Al-PH3付加物に変換した。次に、シュレンク管を、激しく撹拌しながら、0℃において2時間、0.5バールのアセチレンで加圧した。Cl3Al-PH3付加物の完全な変換は、31P-NMR分光法によって確認した。その撹拌溶液に、2,4,6-トリメチルベンゾイルクロリド(メシトイルクロリド)(3.32 mL, 20.0 mmol, 1.0当量)を5分間かけて添加し、得られたオレンジ色の懸濁液を20℃で24時間撹拌した。ガラス繊維フィルターを備えたテフロン(登録商標)カニューレで、オレンジ色の懸濁液から溶液を除去し、固体をトルエン(3×5 mL)で洗浄した。アルミニウム錯体AlCl2 [ビニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン] 2] [AlCl4]の単結晶が、ジクロロベンゼン溶液中へのn-ヘキサンの気相拡散によって得られた。
【0160】
その淡黄色の固体をトルエン(15 mL)中に懸濁させ、水(5 mL, N2で脱気したもの)を添加することによって加水分解した。有機相を単離し、水相をトルエン(3×3 mL)で抽出した。一緒にした有機相を、シリンジフィルターを通して濾過し、溶媒を減圧下で除去した。得られた黄色の固体を還流メタノールから再結晶化して、ビニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンを黄色の結晶性固体として得た(2.60 g, 7.38 mmol, 74%)。
1H-NMR (300 MHz, C6D6): δ= 6.69-6.57 (m, 1H, P-CH), 6.56 (s, 4H, Mes-H), 5.63-5.43 (m, 2H, CH=CH 2), 2.25 (s, 12H, o-Mes-CH 3), 2.01 (s, 6H, p-Mes-CH 3) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, C6D6): δ= 216.1 (d, 1JPC = 43.9 Hz, C=O), 139.5 (d, 3JPC = 28.0 Hz, o-Mes), 139.3 (s, p-Mes), 134.7 (d, 2JPC = 29.5 Hz, CH=CH2), 133.8 (s, ipso-Mes), 129.1 (s, m-Mes), 127.4 (d, 1JPC = 7.8 Hz, CH=CH2), 21.1 (s, p-CH3), 20.1 (d, 4JPC = 5.4 Hz, o-CH3) ppm。
31P-NMR (121 MHz, C6D6): δ= 42.9 (dd, 3JPH, trans = 39.7 Hz, 3JPH, cis = 15.7 Hz) ppm。
元素分析 測定値 C, 74.7; H, 7.2; N, 0.1。C22H25O2Pに対する計算値: C, 75.0; H, 7.2; N, 0。
Mp 82-86 °C (メタノールから)。
【0161】
例7):ビニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
例6に従って調製したビニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン(4.23 g, 12.0 mmol, 1.0当量)のトルエン(10 mL)中の撹拌溶液に、暗所で0℃において15分かけて、過酢酸(2.9 mL, 35質量%, 15 mmol, 1.25当量)を添加した。その淡黄色の溶液を20℃で30分間撹拌した。水相を分離して廃棄した。有機相を飽和Na2CO3水溶液(3×10 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。残留物を還流トルエン(15 mL)から再結晶化して、ビニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを淡黄色の固体として得た(3.35 g, 9.10 mmol, 76%)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ= 6.86 (s, 4H, Mes-H), 6.58-6.29 (m, 3H, CH=CH2), 2.28 (s, 18H, Mes-CH 3) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, CDCl3): δ= 215.9 (d, 1JPC = 61.7 Hz C=O), 141.3 (s, p-Mes), 138.5 (s, CH=CH2), 136.0 (d, 2JPC = 42.0 Hz, ipso-Mes), 135.6 (s, o-Mes), 129.2 (s, m-Mes), 126.6 (d, 1JPC = 74.4 Hz, CH=CH2), 21.4 (s, p-CH3), 19.9 (s, o-CH3) ppm。
31P-NMR (121 MHz, C6D6): δ= 9.7 (ddd, 3JPH, trans = 39.7 Hz, JPH = 27.9 Hz, JPH = 23.3 Hz) ppm。
元素分析 測定値 C, 71.4; H, 6.7; N, 0.1。C22H25O3Pに対する計算値: C, 71.7; H, 6.8; N, 0。
Mp 158-160 °C (分解, トルエンから).
【0162】
例8):1-フェニルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン及び1-メチルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン、及び対応するホスフィンオキシド類、1-フェニルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び1-メチルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
例1)に従って調製したCl3Al-PH3付加物のトルエン溶液(10.0 mL, 1 M, 10 mmol, 1.0当量)に、フェニルアセチレン(1.2 mL, 11 mmol, 1.1当量)を0℃において添加した。得られた懸濁液を20℃において4時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(4.2 mL, 30 mmol, 1.5当量)及び2,4,6-トリメチルベンゾイルクロリド(3.32 mL, 20.0 mmol, 1.0当量)を添加し、得られたオレンジ色の懸濁液を80℃において10時間撹拌した。その懸濁液を濾過し、揮発性物質を減圧下で濾液から除去して、1-フェニルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンを黄色の固体として得た。
31P{1H}-NMR (121 MHz, トルエン): δ= 59.6 ppm。
【0163】
メチルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンを、Cl3Al-PH3付加物を含むフラスコをプロピンで加圧することにより、厳密に類似した方法で調製した。
31P{1H}-NMR (121 MHz, トルエン): δ= 68.3 ppm。
【0164】
両方のホスフィンの、それらの対応するホスフィンオキシドへの酸化を、例7)と厳密に類似して実施した。
1-フェニルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド:
31P{1H}-NMR (121 MHz, トルエン): δ= 10.0 ppm。
1-メチルエテニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド:
31P{1H}-NMR (121 MHz, トルエン): δ= 11.1 ppm。
【0165】
例9):( 1-フェニルビニル)ホスフィン及びビス(1-フェニルビニル)ホスフィンを介した(1-フェニルビニル)ホスフィン酸及びビス(1-フェニルビニル)-ホスフィン酸の調製
例1)に従って調製したCl3Al-PH3付加物のトルエン溶液(25.0 mL, 1 M, 25 mmol, 1.25 当量)に、トルエン(15 mL)中のフェニルアセチレン(2.15 mL, 20 mmol, 1.0当量)の溶液を0℃で30分にわたって添加した。その淡いオレンジ色のエマルジョンを20℃で18時間撹拌し、水(N2で脱ガス, 5 mL)で加水分解した。31P-NMRスペクトル中のシグナルの積分は、15%のビス(1-フェニルビニル)ホスフィンに対して85%の(1-フェニルビニル)ホスフィンの生成物比を明らかにした。その混合物にH2O2(5.1 mL, 30質量%, 50 mmol, 1.25当量)を0℃において添加し、その混合物を20℃において6時間撹拌した。有機相を単離し、水相をトルエン(3×5mL)で抽出した。一緒にした有機相をMgSO4上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去して、ホスフィン酸を淡黄色オイルとして得た(2.09 g, > 75%)。
:以下に示す分析データには、シグナルが重複しているため、ホスフィン酸の芳香族領域の1H-及び13C-NMRシグナルは含まれていない。
【0166】
(1-フェニルビニル)ホスフィン:
31P-NMR (121 MHz, トルエン): δ= -122.2 (tdd, 1JPH = 198.9 Hz, 3JPH, trans = 25.9 Hz, 3JPH, cis = 11.9 Hz) ppm。
【0167】
ビス(1-フェニルビニル)ホスフィン:
31P-NMR (121 MHz, トルエン): δ= -37.3 (dtt, 1JPH = 218.4 Hz, 3JPH, trans = 23.4 Hz, 3JPH, cis = 10.3 Hz) ppm。
【0168】
(1-フェニルビニル)ホスフィン酸:
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ= 12.48 (br. d, 2JPH = 25.6 Hz, 1H, OH), 7.32 (d, 1JPH = 571.4 Hz, 1H, PH), 6.18 (d, 3JPH = 46.3 Hz, 1H, trans-CH 2), 6.16 (d, 3JPH = 24.5 Hz, 1H, cis-CH 2) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, CDCl3): δ= 135.3 (d, 1JPC = 12.6 Hz, PC), 129.5 (d, 2JPC = 12.8 Hz, CH2) ppm。
31P-NMR (121 MHz, CDCl3): δ= 25.8 (ddd, 1JPH = 571.4 Hz, 3JPH, trans = 46.3 Hz, 3JPH, cis = 24.5 Hz) ppm。
【0169】
ビス(1-フェニルビニル)ホスフィン酸:
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ= 12.48 (br. d, 2JPH = 25.6 Hz, 1H, OH), 6.26 (dd, 3JPH = 20.1 Hz, 2JHH = 1.2 Hz, 1H, cis-CH 2), 5.99 (dd, 3JPH = 40.6 Hz, 2JHH = 1.4 Hz, 1H, trans-CH 2) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, CDCl3): δ = 136.7 (d, 1JPC = 13.2 Hz, PC), 131.8 (d, 2JPC = 7.6 Hz, CH2) ppm。
31P-NMR (121 MHz, CDCl3): δ = 30.4 (tt, 3JPH, trans = 40.4 Hz, 3JPH, cis = 19.9 Hz) ppm。
【0170】
例10):トリス(1-フェニルビニル)ホスフィンの調製
トルエン中の 例1)に従って調製したCl3Al-PH3付加物の撹拌溶液(10.0 mL, 1M, 10 mmol, 1.0当量)に、フェニルアセチレン(3.55 mL, 33 mmol, 3.3当量)を0℃において5分間にわたって添加した。その黄色のエマルジョンを20℃において24時間、60℃において3時間撹拌した。それを水(N2で脱ガス, 3 mL)で加水分解し、20℃において30分間撹拌した。有機相を単離し、水相をトルエン(3×3mL)で抽出した。一緒にした有機相をシリンジフィルターを通して濾過し、溶媒を減圧下で除去した。その淡黄色の固体を還流MeOH(約50 mL)から再結晶化して、ホスフィンを淡黄色の結晶性固体(2.62 g, 7.70 mmol, 77%)として得た。X線回折に適した単結晶が、還流MeOHから得られた。
1H-NMR (300 MHz, C6D6): δ= 7.72-7.62 (m, 6H, o-Ph-H), 7.15-7.07 (m, 6H, m-Ph-H), 7.07-7.00 (m, 3H, p-Ph-H), 5.89 (dd, 3JPH = 12.7 Hz, 2JHH = 1.5 Hz, 3H, trans-CH), 5.58 (dd, 3JPH = 5.6 Hz, 2JHH = 1.5 Hz, 3H, cis-CH) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, C6D6): δ= 145.7 (d, 2JPC = 15.9 Hz, ipso-Ph), 142.1 (d, 1JPC = 23.5 Hz, P-C), 128.7 (d, 4JPC = 1.0 Hz, m-Ph), 128.1 (d, 5JPC = 1.7 Hz, p-Ph), 127.2 (d, 3JPC = 11.8 Hz, o-Ph), 126.2 (d, 2JPC = 3.2 Hz, CH2) ppm。
31P-NMR (121 MHz, C6D6): δ= -3.1 (dd, 3JPH, trans = 12.7 Hz, 3JPH, cis = 5.6 Hz) ppm。
元素分析測定値C, 84.7; H, 6.3; N, 0.1。C24H21Pに対する計算値: C, 84.7; H, 6.2; N, 0。
Mp 75-78 °C (メタノールから)。
【0171】
例11):(Z)-(1,2-ジフェニルビニル)ホスフィンの調製
トルエン(20 mL)中のジフェニルアセチレン(3.21 g, 18 mmol, 1当量)の溶液を、トルエン中の例1)に従って調製したCl3Al-PH3の溶液(20.0 mL, 1 M, 20mmol, 1.1当量)に20℃で激しく撹拌しながら30分にわたって添加し、得られた淡白色の懸濁液を20℃で3.5時間撹拌した。そのアルミニウム錯体を、0℃においてリン酸緩衝液(pH = 7, 0.1 M, 5 mL)を添加することにより加水分解した。その反応混合物を20℃において30分間撹拌した後、有機相を単離し、揮発性物質を減圧下で除去して、淡黄色の固体を得た。31P-NMRスペクトル中のシグナルの積分は、95%の一級ホスフィンである(Z)-(1,2-ジフェニルビニル)ホスフィン及び5%の二級ホスフィンであるビス((Z)-(1,2-ジフェニルビニル))ホスフィン)の混合物であることを明らかにした。還流メタノールからの再結晶により、純粋な(Z)-(1,2-ジフェニルビニル)ホスフィンを白色の結晶性固体(2.50 g, 11.8 mmol, 65%)として得た。X線回折に適した単結晶は、還流メタノールから得られた。
1H-NMR (300 MHz, C6D6): δ= 7.46-7.37 (m, 4H, Ph-H), 7.26-7.01 (m, 7H, Ph-H and C=CH), 3.82 (dd, 1JPH = 206.8 Hz, 4JHH = 1.4 Hz, 2H, PH) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, C6D6): δ= 146.1 (d, JPC = 5.1 Hz, C), 138.9 (d, 2JPC = 12.7 Hz, PCCH), 138.7 (s, C), 134.4 (d, 1JPC = 20.1 Hz, PC), 132.0 (s, CH), 129.5 (d, JPC = 6.0 Hz, CH), 128.6 (d, JPC = 15.2 Hz, CH), 127.6 (d, JPC = 5.5 Hz, CH), 127.3 (d, JPC = 3.6 Hz, CH) ppm。
31P-NMR (121 MHz, C6D6): δ= -133.7 (td, 1JPH = 206.7 Hz, 3JPH = 13.7 Hz) ppm。
元素分析 測定値C, 79.5; H, 6.2; N, 0.1。C14H13Pに対する計算値: C, 79.2; H, 6.2; N, 0。
Mp 49-51℃ (メタノールから)。
【0172】
例12):ビス((Z)-(1,2-ジフェニルビニル))ホスフィンの調製
ジフェニルアセチレン(4.00 g, 22.5 mmol, 2.25当量)を含むフラスコに、トルエン中の例1)に従って調製したCl3Al-PH3の溶液(10.0 mL, 1 M, 10 mmol, 1.0当量)を添加した。その黄色のエマルジョンを20℃において4時間及び60℃において28時間撹拌した。それを、水(N2で脱ガス, 3 mL)で加水分解し、20℃において30分間撹拌した。有機相を単離し、水相をトルエン(3×3 mL)で抽出した。一緒にした有機相をシリンジフィルターを通して濾過し、溶媒を減圧下で除去し、残留物を還流n-ヘキサンから再結晶化して、ビス((Z)-(1,2-ジフェニルビニル))ホスフィンを淡黄色の結晶性固体として得た(3.80 g, 9.7 mmol, 77%)。
1H-NMR (300 MHz, CD2Cl2): δ= 7.42-7.11 (m, 10H, Ph), 6.99 (br. d, 3JPH, trans = 17.5, 2H, C=CH), 6.96-6.91 (m, 4H, p-Ph), 5.27 (dt, 1JPH, 228.3 Hz, JHH = 0.9 Hz, 1H, PH) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, CD2Cl2): δ= 144.3 (d, JPC = 3.5 Hz, C), 141.3 (d, 2JPC = 17.4 Hz, PCCH), 139.1 (d, 1JPC = 22.9 Hz, PC), 138.5 (d, JPC = 1.5 Hz, C), 129.9 (d, JPC = 5.9 Hz, CH), 128.4 (d, JPC = 16.6 Hz, CH), 128.0 (d, JPC = 2.9 Hz, CH), 127.6 (d, JPC = 50.4 Hz, CH) ppm。
31P-NMR (121 MHz, C6D6): δ= -75.2 (dt, 1JPH = 226.9 Hz, 3JPH, trans = 17.5 Hz) ppm。
元素分析 測定値C, 85.4; H, 6.1; N, 0.1。C28H23Pに対する計算値: C, 86.1; H, 5.9; N, 0。
Mp 70-73°C (n-ヘキサンから)。
【0173】
例13):ビス((Z)-3-ヘキセン-3-イル)ホスフィン、(Z)-3-ヘキセン-3-イル)ホスフィン、及び(Z)-3-ヘキセン-3-イルホスフィン酸の調製
トルエン(15 mL)中の3-ヘキシン(2.16 mL, 19 mmol, 1当量)の溶液を、トルエン中の例1に従って調製したCl3Al-PH3の溶液(1 M, 20.0 mL, 20 mmol, 1.05当量)に、20℃において激しく撹拌しながら45分間かけて添加し、得られた淡白色の懸濁液を20℃で1時間撹拌した。リン酸緩衝液(pH = 7, 0.1 M, 5 mL)を0℃において添加し、その反応混合物を20℃で1時間撹拌し、その後、有機相をテフロン(登録商標)カニューレを介してシュレンクフラスコに移した。31P-NMRスペクトル中のシグナルを積分することにより、その溶液は93%の一級ホスフィンである((Z)-3-ヘキセン-3-イル)ホスフィンと7%の二級ホスフィンであるビス((Z) -3-ヘキセン-3-イル)ホスフィンの混合物を含むことが決定された。真空蒸留により、残留物中に無色のオイルとして純粋なビス((Z)-3-ヘキセン-3-イル)ホスフィンが得られた(200 mg, 1.01 mmol, 5%)。
【0174】
蒸留留出物である純粋な(Z)-3-ヘキセン-3-イル)ホスフィンに、H2O2(5.8 mL, 30質量%, 57 mmol, 1.5当量)を添加した。その混合物を0℃において30分間撹拌した後、有機相を分離し、水相をトルエン(3×5 mL)で抽出した。減圧下で、一緒にした有機相からの揮発性物質の除去により、(Z)-3-ヘキセン-3-イルホスフィン酸が無色のオイルとして得られた(2.11 g, 14.2 mmol, 75%)。
【0175】
(Z)-3-ヘキセン-3-イルホスフィン:
31P-NMR (101 MHz, トルエン): δ= -150.1 (td, 1JPH = 197.2 Hz, 3JPH, trans = 18.7 Hz) ppm。
【0176】
ビス((Z)-3-ヘキセン-3-イル)ホスフィン:
1H-NMR (300 MHz, C6D6): δ= 5.82 (dtt, 3JPH = 19.6 Hz, 3JHH = 7.2, 4JHH = 1.5 Hz, 2H, C=CH), 4.16 (d, 1JPH = 214.9 Hz, 1H, PH), 2.50-2.21 (m, 4H, CH-CH 2), 2.24-1.95 (m, 4H, C-CH 2), 1.04 (t, 3JHH = 7.4 Hz, 6H, C-CH2-CH 3), 0.95 (t, 3JHH = 7.5 Hz, 6H, CH-CH2-CH 3) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, C6D6): δ= 140.2 (d, 2JPC = 21.7 Hz, C=CH), 136.1 (d, 1JPC = 16.4 Hz, C=CH), 32.9 (d, 2JPC = 2.3 Hz, C=CH2), 25.0 (d, 3JPC = 18.8 Hz, CH=CH2), 14.6 (s, CH-CH2-CH3), 14.2 (d, 3JPC = 1.4 Hz, C-CH2-CH3) ppm。
31P-NMR (121 MHz, C6D6): δ= -86.2 (dtt, 1JPH = 214.8 Hz, 3JPH, trans = 19.6 Hz, 3JPH = 4.9 Hz) ppm。
【0177】
(Z)-3-ヘキセン-3-イルホスフィン酸:
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ= 12.57 (br. s, 1H, OH), 7.44 (d, 1JPH = 553.0 Hz, 1H, PH), 6.11 (dt, 3JPH = 43.1, 3JHH = 7.8 Hz, 1H, CCH), 2.50-2.32 (m, 2H, CCH 2), 2.32-2.16 (m, 2H, CCHCH 2), 1.08 (t, 3JHH = 7.4 Hz, 3H, CCHCH2CH 3), 1.02 (t, 3JHH = 7.5 Hz, 3H, CCH2CH 3) ppm。
13C{1H}-NMR (75 MHz, CDCl3): δ= 146.9 (d, 2JPC = 13.3, CH), 133.0 (d, 1JPC = 125.4 Hz, CP), 25.7 (d, 3JPC = 12.8 Hz, CCHCH2), 22.6 (d, 2JPC = 12.7 Hz, CCH2), 14.0 (d, 3JPC = 5.1 Hz, CCH2 CH3), 13.9 (d, 4JPC = 2.2 Hz, CCHCH2 CH3) ppm。
31P-NMR (121 MHz, CDCl3): δ= 23.1 (dm, 1JPH = 553.8 Hz) ppm。
元素分析 測定値C, 49.1; H, 8.8; N, 0.8。C6H13O2Pに対する計算値: C, 48.7; H, 8.8; N, 0。
【0178】
例14):tert-ブチルホスフィンtBuPH 2 の調製
アルゴンパージした200mLのステンレス鋼オートクレーブに、トルエン中の例1)に従って調製したCl3Al-PH3のトルエン溶液(1 M, 50.0 mL, 50 mmol, 1当量)を入れた。次に、イソブテン(3 g, 50 mmol, 1当量)を0℃にてオートクレーブ中に凝縮させた。オートクレーブを密閉し、内容物をマグネチックスターラーで撹拌し、70℃に8時間加熱した。圧力を解放し、-80℃の冷却トラップを通してオートクレーブを15分間アルゴンでフラッシュした。冷却トラップに残留イソブテンが全く凝縮していなかった。31P-NMRは、δ= -61.7 ppmにデセットのトリプレットを示した。これは、Cl3Al-tBuPH2付加物に帰属することができる。トリエチルアミン(10 mL, 72 mmol, 1.44当量)を添加すると、tert-ブチルホスフィンが付加物から放出され、-80℃の冷却トラップ中に蒸留された(4.0 g, 44 mmol, 88%)。
31P-NMR (121 MHz, CDCl3): δ= -78.7 (tdec, 1JPH = 189.5 Hz, 3JPH = 11.3 Hz) ppm。
【0179】
例15):様々な一級ホスフィンの調製
トルエン中の例1)に従って調製したCl3Al-PH3(1 M)及びアルケン(1当量)の等モル量をシュレンク管中で混合した。その混合物を70℃で撹拌し、反応を31P-NMR分光法でモニターした。次に、リン酸緩衝液(pH = 7, 0.1 M, 5 mL)をチューブに添加して、アルミニウム錯体からホスフィンを放出させた。
反応時間と分析データを表1に示す。
【0180】
【表1】