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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240105BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20240105BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L31/02 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021016658
(22)【出願日】2021-02-04
(62)【分割の表示】P 2019152775の分割
【原出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021082830
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】下原 健史
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159710(WO,A1)
【文献】特開2012-080065(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077792(WO,A1)
【文献】特開2007-201184(JP,A)
【文献】特開2016-001633(JP,A)
【文献】特開2013-033864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/0232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光部を有する光半導体素子と、
前記光半導体素子に直接的に又は光透過性の接着層のみを介して接合された光透過部と、を備え、
前記光透過部における前記光半導体素子とは反対側の表面には、屈折率が前記光透過部に向かって空気の屈折率から前記光透過部の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層が設けられており、
前記光半導体素子と前記第1屈折率変化層との間の距離をAとし、前記複数の受光部において隣り合う受光部の間の距離をBとし、前記空気の屈折率に対する前記光透過部の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin-1(sin5°/n)}]が成立し、
前記光半導体素子において、前記複数の受光部は、半導体基板における前記光透過部側の表面に沿った部分に設けられており、
前記光透過部は、前記光半導体素子に前記接着層のみを介して接合されており、
前記光透過部における前記光半導体素子側の表面には、屈折率が前記光透過部に向かって前記接着層の屈折率から前記光透過部の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第3屈折率変化層が設けられている、光検出装置。
【請求項2】
前記半導体基板における前記光透過部とは反対側の表面には、凹凸構造を有する第2屈折率変化層が設けられており、
前記第2屈折率変化層の前記凹凸構造の屈折率は、前記半導体基板に向かって、前記半導体基板とは反対側において前記第2屈折率変化層に接する領域の屈折率から前記半導体基板の屈折率に連続的に変化している、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記半導体基板における前記光透過部とは反対側の前記表面には、前記第2屈折率変化層を覆う光吸収層が設けられており、
前記第2屈折率変化層の前記凹凸構造の屈折率は、前記半導体基板に向かって前記光吸収層の屈折率から前記半導体基板の屈折率に連続的に変化している、請求項2に記載の光検出装置。
【請求項4】
複数の受光部を有する光半導体素子と、
前記光半導体素子に直接的に又は光透過性の接着層のみを介して接合された光透過部と、を備え、
前記光透過部における前記光半導体素子とは反対側の表面には、屈折率が前記光透過部に向かって空気の屈折率から前記光透過部の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層が設けられており、
前記光半導体素子と前記第1屈折率変化層との間の距離をAとし、前記複数の受光部において隣り合う受光部の間の距離をBとし、前記空気の屈折率に対する前記光透過部の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin -1 (sin5°/n)}]が成立し、
前記光半導体素子において、前記複数の受光部は、半導体基板における前記光透過部とは反対側の表面に沿った部分に設けられており、
前記光透過部は、前記光半導体素子に前記接着層のみを介して接合されており、
前記光透過部における前記光半導体素子側の表面には、屈折率が前記光透過部に向かって前記接着層の屈折率から前記光透過部の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第3屈折率変化層が設けられている、光検出装置。
【請求項5】
前記半導体基板における前記光透過部とは反対側の表面には、光吸収層が設けられている、請求項に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記半導体基板における前記光透過部側の表面には、屈折率が前記半導体基板に向かって前記接着層の屈折率から前記半導体基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第4屈折率変化層が設けられている、請求項4又は5に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記光透過部は、ガラス基板である、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記第1屈折率変化層は、前記光透過部とは別体の層である、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記第1屈折率変化層は、前記光透過部と一体的に形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項10】
複数の受光部を有する光半導体素子と、
前記光半導体素子に直接的に又は光透過性の接着層のみを介して接合された光透過部と、を備え、
前記光透過部における前記光半導体素子とは反対側の表面には、屈折率が前記光透過部に向かって空気の屈折率から前記光透過部の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層が設けられており、
前記光半導体素子と前記第1屈折率変化層との間の距離をAとし、前記複数の受光部において隣り合う受光部の間の距離をBとし、前記空気の屈折率に対する前記光透過部の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin -1 (sin5°/n)}]が成立し、
前記光半導体素子において、前記複数の受光部は、半導体基板における前記光透過部とは反対側の表面に沿った部分に設けられており、
前記半導体基板における前記光透過部とは反対側の表面には、光吸収層が設けられている、光検出装置。
【請求項11】
複数の受光部を有する光半導体素子と、
前記光半導体素子に直接的に又は光透過性の接着層のみを介して接合された光透過部と、を備え、
前記光透過部における前記光半導体素子とは反対側の表面には、屈折率が前記光透過部に向かって空気の屈折率から前記光透過部の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層が設けられており、
前記光半導体素子と前記第1屈折率変化層との間の距離をAとし、前記複数の受光部において隣り合う受光部の間の距離をBとし、前記空気の屈折率に対する前記光透過部の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin -1 (sin5°/n)}]が成立し、
前記光半導体素子において、前記複数の受光部は、半導体基板における前記光透過部とは反対側の表面に沿った部分に設けられており、
前記光透過部は、前記光半導体素子に前記接着層のみを介して接合されており、
前記半導体基板における前記光透過部側の表面には、屈折率が前記半導体基板に向かって前記接着層の屈折率から前記半導体基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第4屈折率変化層が設けられている、光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の受光部を有する光半導体素子と、光半導体素子に接合された光透過基板と、を備える光検出装置が知られている。このような光検出装置においては、光透過基板が、薄型化された光半導体素子の補強基板として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-125883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光検出装置においては、光半導体素子の薄型化と共に、複数の受光部の高密度化が進んでいる。しかし、光透過基板について十分な厚さを確保しつつ、隣り合う受光部の間の距離を小さくすると、隣り合う受光部の間で発生するクロストークが問題となる場合があった。
【0005】
本発明は、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減することができる光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光検出装置は、複数の受光部を有する光半導体素子と、光半導体素子に直接的に又は光透過性の接着層のみを介して接合された光透過基板と、を備え、光透過基板における光半導体素子とは反対側の表面には、屈折率が光透過基板に向かって空気の屈折率から光透過基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層が設けられており、光半導体素子と第1屈折率変化層との間の距離をAとし、複数の受光部において隣り合う受光部の間の距離をBとし、空気の屈折率に対する光透過基板の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin-1(sin1°/n)}]が成立する。
【0007】
本発明の光検出装置では、光半導体素子と第1屈折率変化層との間の距離をAとし、隣り合う受光部の間の距離をBとし、空気の屈折率に対する光透過基板の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin-1(sin1°/n)}]が成立する。この関係式は、光透過基板における光半導体素子とは反対側の表面に入射角1°で入射した光が、隣り合う受光部のうちの一方の受光部に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子における光透過基板側の表面、及び光透過基板における光半導体素子とは反対側の表面で順次反射されたときに、当該一部の光が、隣り合う受光部のうちの他方の受光部に向かって進行し得ることを意味する。つまり、本発明の光検出装置では、光透過基板に入射角1°で入射した光さえも、隣り合う受光部の間でクロストークが発生する原因になるほど、光透過基板について十分な厚さが確保され、且つ隣り合う受光部の間の距離が小さくされているといえる。ここで、本発明の光検出装置では、屈折率が光透過基板に向かって空気の屈折率から光透過基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層が、光透過基板における光半導体素子とは反対側の表面に設けられている。そのため、光透過基板における光半導体素子とは反対側の表面に入射角1°で入射した光が、隣り合う受光部のうちの一方の受光部に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子における光透過基板側の表面で反射されたとしても、当該一部の光が、光透過基板における光半導体素子とは反対側の表面で反射され難くなり、その結果、当該一部の光が、隣り合う受光部のうちの他方の受光部に向かって進行し難くなる。よって、本発明の光検出装置によれば、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減することができる。
【0008】
本発明の光検出装置では、光半導体素子において、複数の受光部は、半導体基板における光透過基板側の表面に沿った部分に設けられており、半導体基板における光透過基板とは反対側の表面には、凹凸構造を有する第2屈折率変化層が設けられており、第2屈折率変化層の凹凸構造の屈折率は、半導体基板に向かって、半導体基板とは反対側において第2屈折率変化層に接する領域の屈折率から半導体基板の屈折率に連続的に変化していてもよい。これにより、隣り合う受光部のうちの一方の受光部に入射した光のうちの一部の光が半導体基板を透過したとしても、当該一部の光が、半導体基板における光透過基板とは反対側の表面で反射され難くなり、その結果、当該一部の光が、隣り合う受光部のうちの他方の受光部に向かって進行し難くなる。したがって、例えば半導体基板の薄型化に伴い、隣り合う受光部のうちの一方の受光部に入射した光のうちの一部の光が半導体基板を透過し得る場合にも、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減することができる。更に、隣り合う受光部のうちの一方の受光部において電荷の再結合による自己発光が生じたとしても、自己発光による光が、半導体基板における光透過基板とは反対側の表面で反射され難くなり、その結果、自己発光による光が、隣り合う受光部のうちの他方の受光部に向かって進行し難くなる。したがって、電荷の再結合による自己発光が生じ得る構成を受光部が有する場合にも、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減することができる。
【0009】
本発明の光検出装置では、半導体基板における光透過基板とは反対側の表面には、第2屈折率変化層を覆う光吸収層が設けられており、第2屈折率変化層の凹凸構造の屈折率は、半導体基板に向かって光吸収層の屈折率から半導体基板の屈折率に連続的に変化していてもよい。これにより、半導体基板における光透過基板とは反対側の表面に入射した光(半導体基板を透過した一部の光や、自己発光による光等)が光吸収層によって吸収されるため、当該光が外部に出射して光半導体素子に再入射するのを防止することができる。
【0010】
本発明の光検出装置では、光透過基板は、光半導体素子に接着層のみを介して接合されており、光透過基板における光半導体素子側の表面には、屈折率が光透過基板に向かって接着層の屈折率から光透過基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第3屈折率変化層が設けられていてもよい。これにより、光透過基板における光半導体素子側の表面で光が反射され難くなるため、隣り合う受光部の間で発生するクロストークをより確実に低減することができる。
【0011】
本発明の光検出装置では、光半導体素子において、複数の受光部は、半導体基板における光透過基板とは反対側の表面に沿った部分に設けられていてもよい。このように、光半導体素子が裏面入射型の構成を有する場合にも、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減することができる。
【0012】
本発明の光検出装置では、半導体基板における光透過基板とは反対側の表面には、光吸収層が設けられていてもよい。これにより、半導体基板に入射した光が半導体基板を透過し得る場合にも、当該光が光吸収層によって吸収されるため、当該光が外部に出射して光半導体素子に再入射するのを防止することができる。更に、電荷の再結合による自己発光が生じ得る構成を受光部が有する場合にも、自己発光による光が光吸収層によって吸収されるため、自己発光による光が外部に出射して光半導体素子に再入射するのを防止することができる。
【0013】
本発明の光検出装置では、光透過基板は、光半導体素子に接着層のみを介して接合されており、光透過基板における光半導体素子側の表面には、屈折率が光透過基板に向かって接着層の屈折率から光透過基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第3屈折率変化層が設けられていてもよい。これにより、光透過基板における光半導体素子側の表面で光が反射され難くなるため、隣り合う受光部の間で発生するクロストークをより確実に低減することができる。
【0014】
本発明の光検出装置では、光透過基板は、光半導体素子に接着層のみを介して接合されており、半導体基板における光透過基板側の表面には、屈折率が半導体基板に向かって接着層の屈折率から半導体基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第4屈折率変化層が設けられていてもよい。これにより、半導体基板における光透過基板側の表面で光が反射され難くなるため、隣り合う受光部の間で発生するクロストークをより確実に低減することができる。
【0015】
本発明の光検出装置では、光透過基板は、ガラス基板であってもよい。これにより、補強基板として機能する光透過基板を容易に且つ確実に得ることができる。
【0016】
本発明の光検出装置では、第1屈折率変化層は、光透過基板とは別体の層であってもよい。これにより、屈折率が連続的に変化する機能を有する第1屈折率変化層を容易に且つ確実に得ることができる。
【0017】
本発明の光検出装置では、第1屈折率変化層は、光透過基板と一体的に形成されていてもよい。これにより、光検出装置の部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減することができる光検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の光検出装置の断面図である。
図2】光透過基板の厚さと、内部反射光が到達する距離との関係を示す模式図である。
図3】光半導体素子と第1屈折率変化層との間の距離と、隣り合う受光部の間の距離との関係を示すグラフである。
図4】第2実施形態の光検出装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0021】
図1に示されるように、第1実施形態の光検出装置1Aは、光半導体素子2Aと、光透過基板3と、を備えている。光半導体素子2Aは、Z方向において互いに対向する表面2a,2bを有している。光透過基板3は、Z方向において互いに対向する表面3a,3bを有している。光透過基板3は、表面3bが表面2aと向かい合った状態で、光半導体素子2A上に配置されている。したがって、表面2aは、光半導体素子2Aにおける光透過基板3側の表面であり、表面2bは、光半導体素子2Aにおける光透過基板3とは反対側の表面である。また、表面3aは、光透過基板3における光半導体素子2Aとは反対側の表面であり、表面3bは、光透過基板3における光半導体素子2A側の表面である。本実施形態では、表面2a、表面2b、表面3a及び表面3bは、互いに平行である。以下、Z方向に垂直な一方向をX方向といい、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向という。
【0022】
光半導体素子2Aは、半導体基板21と、複数の受光部22と、を有している。半導体基板21は、Z方向において互いに対向する表面21a,21bを有している。表面21aは、半導体基板21における光透過基板3側の表面であり、表面21bは、半導体基板21における光透過基板3とは反対側の表面である。半導体基板21は、例えば、第1導電型の半導体材料によって矩形板状に形成されている。一例として、X方向における半導体基板21の幅は15mm程度であり、Y方向における半導体基板21の幅は15mm程度であり、Z方向における半導体基板21の幅(すなわち、半導体基板21の厚さ)は20μm程度である。
【0023】
複数の受光部22は、半導体基板21の表面21aに沿った部分に設けられている。複数の受光部22は、例えば、X方向及びY方向に沿ってマトリックス状に配列されている。各受光部22は、例えば、第1導電型の半導体材料からなる半導体基板21のうち表面21aに沿った部分に第2導電型の領域が形成されることで構成されたフォトダイオード(PN接合に対応する部分)である。一例として、X方向における各受光部22の幅は50μm程度であり、Y方向における各受光部22の幅は50μm程度である。また、一例として、X方向において隣り合う受光部22の間の距離は1μm程度であり、Y方向において隣り合う受光部22の間の距離は1μm程度である。
【0024】
光半導体素子2Aは、光透過基板3側の表面2aを受光面とする受光素子である。上述したように、半導体基板21における光透過基板3側の表面21aに沿った部分に複数の受光部22が設けられているから、光半導体素子2Aは、表面入射型の受光素子である。したがって、図示は省略されているが、半導体基板21には、複数の受光部22と電気的に接続された複数の配線(複数の貫通配線等)が設けられており、半導体基板21における光透過基板3とは反対側の表面21bには、複数の配線と電気的に接続された複数のパッドが設けられている。なお、光半導体素子2Aは、複数の受光部22が複数の光検出チャネルとして機能するように構成された表面入射型の受光素子であれば、上述した構成を有するものに限定されない。
【0025】
光透過基板3は、光透過性の接着層4によって光半導体素子2Aに接合されている。本実施形態では、光透過基板3は、ガラス基板であり、例えば、矩形板状に形成されている。一例として、X方向における光透過基板3の幅は15mm程度であり、Y方向における光透過基板3の幅は15mm程度であり、Z方向における光透過基板3の幅(すなわち、光透過基板2の厚さ)は300μm~500μm程度である。
【0026】
接着層4は、例えば、エポキシ樹脂等からなる。一例として、Z方向における接着層4の幅(すなわち、接着層4の厚さ)は50μm程度である。光検出装置1Aでは、光透過基板3が、光透過性の接着層4のみを介して光半導体素子2Aに接合されている。なお、本明細書において、光透過基板が、光透過性の接着層のみを介して光半導体素子に接合されているとの表現は、光半導体素子と光透過基板との間に接着層のみが存在する状態、又は光半導体素子と光透過基板との間に接着層及び後述する少なくも1つの屈折率変化層のみが存在する状態を意味する。
【0027】
光透過基板3の表面3aには、第1屈折率変化層5が設けられている。第1屈折率変化層5は、屈折率が光透過基板3に向かって空気の屈折率から光透過基板3の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有している。第1屈折率変化層5の凹凸構造は、例えば、100nm~200nm程度の中心間距離で並んだ複数の凸部又は複数の凹部によって構成されており、モスアイ構造と称される場合がある。第1屈折率変化層5は、空気側から表面3aに入射する光が表面3aで反射されること、及び光透過基板3側から表面3aに入射する光が表面3aで反射されることを防止する。第1屈折率変化層5は、光透過基板3とは別体の層である。一例として、第1屈折率変化層5は、フィルム状の第1屈折率変化層5が光透過基板3の表面3aに貼り付けられることで構成されている。
【0028】
半導体基板21の表面21bには、第2屈折率変化層6が設けられている。第2屈折率変化層6は、屈折率が半導体基板21に向かって、後述する光吸収層7の屈折率から半導体基板21の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有している。第2屈折率変化層6の凹凸構造は、例えば、100nm~200nm程度の中心間距離で並んだ複数の凸部又は複数の凹部によって構成されており、モスアイ構造と称される場合がある。第2屈折率変化層6は、半導体基板21側から表面21bに入射する光が表面21bで反射されることを防止する。第2屈折率変化層6は、半導体基板21とは別体の層である。一例として、第2屈折率変化層6は、フィルム状の第2屈折率変化層6が半導体基板21の表面21bに貼り付けられることで構成されている。
【0029】
半導体基板21の表面21bには、第2屈折率変化層6を覆う光吸収層7が設けられている。光吸収層7は、例えば、黒樹脂等からなる。光吸収層7は、半導体基板21側から第2屈折率変化層6に入射した光を吸収する。
【0030】
光透過基板3の表面3bには、第3屈折率変化層8が設けられている。第3屈折率変化層8は、屈折率が光透過基板3に向かって接着層4の屈折率から光透過基板3の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有している。第3屈折率変化層8の凹凸構造は、例えば、100nm~200nm程度の中心間距離で並んだ複数の凸部又は複数の凹部によって構成されており、モスアイ構造と称される場合がある。第3屈折率変化層8は、接着層4側から表面3bに入射する光が表面3bで反射されること、及び光透過基板3側から表面3bに入射する光が表面3bで反射されることを防止する。第3屈折率変化層8は、光透過基板3とは別体の層である。一例として、第3屈折率変化層8は、フィルム状の第3屈折率変化層8が光透過基板3の表面3bに貼り付けられることで構成されている。
【0031】
光検出装置1Aでは、光半導体素子2Aと第1屈折率変化層5との間の距離をAとし、複数の受光部22において隣り合う受光部22の間の距離をBとし、空気の屈折率に対する光透過基板3の屈折率をnとすると、下記式(1)が成立する。
A>B/[2tan{sin-1(sin1°/n)}]…(1)
【0032】
上記式(1)は、光透過基板3の表面3aに入射角1°で入射した光が、隣り合う受光部22のうちの一方の受光部22(以下、単に「一方の受光部22」という)に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子2Aの表面2a及び光透過基板3の表面3aで順次反射されたときに、当該一部の光が、隣り合う受光部22のうちの他方の受光部22(以下、単に「他方の受光部22」という)に向かって進行し得ることを意味する。なお、各受光部22が、例えば、第1導電型の半導体材料からなる半導体基板21に第2導電型の領域が形成されることで構成されたフォトダイオード(PN接合に対応する部分)である場合には、隣り合う受光部22の間の距離Bとは、隣り合う第2導電型の領域の間の距離である。隣り合う受光部22の間の距離Bを、隣り合う空乏層(光半導体素子2Aの通常駆動時における空乏層)の間の距離と捉えてもよい。
【0033】
上記式(1)について、図2を参照して詳細に説明する。図2に示される構成では、光透過基板3が光半導体素子2Aに直接的に接合されており、光透過基板3の表面3aに第1屈折率変化層5が設けられていない。
【0034】
図2に示される構成において、光Lが、光透過基板3の表面3aに入射角αで入射して光透過基板3内を屈折角βで進行し、光Lのうちの一部の光L1が、光半導体素子2Aの表面2a及び光透過基板3の表面3aで順次反射された場合について検討する。その場合に、空気の屈折率に対する光透過基板3の屈折率をnとし、光透過基板3の厚さをTとし、内部反射光が到達する距離(光Lが光半導体素子2Aの表面2aに至った位置と、光透過基板3の表面3aで反射された一部の光L1が光半導体素子2Aの表面2aに至った位置との距離)をDとすると、下記式(2)及び式(3)が成立する。
n=sinα/sinβ…(2)
D=T×tanβ×2…(3)
【0035】
上記式(2)及び式(3)より、下記式(4)が得られる。
D=2×T×tan{(sin-1(sinα/n)}…(4)
【0036】
ここで、隣り合う受光部22の間の距離をBとすると、下記式(5)が成立する場合に、一方の受光部22に向かって進行した光Lのうちの一部の光L1が、光半導体素子2Aの表面2a及び光透過基板3の表面3aで順次反射されることで、他方の受光部22に向かって進行し得ることになる(以下、この状態を「隣り合う受光部22の間でクロストークが発生し得る状態」という)。
D>B…(5)
【0037】
上記式(4)及び式(5)より、下記式(6)が得られる。
T>B/[2tan{sin-1(sinα/n)}]…(6)
【0038】
光検出装置1Aでは、接着層4が光透過基板3に比べて薄いといえるため、接着層4を光透過基板3と同一部材とみなし、上記式(6)におけるTをA(光半導体素子2Aと第1屈折率変化層5との間の距離)に置き換えることができる。また、光検出装置1Aでは、光透過基板3に入射角α=1°で入射した光Lについても、隣り合う受光部22の間でクロストークが発生し得る状態になるほど、光透過基板3について十分な厚さを確保すること、及び隣り合う受光部22の間の距離を小さくすることを狙っている。
【0039】
以上により、光検出装置1Aでは、上記式(1)が成立する。図3は、光半導体素子2Aと第1屈折率変化層5との間の距離Aと、隣り合う受光部22の間の距離Bとの関係を示すグラフである。図3に示されるグラフにおいて、実線の直線は、A=B/[2tan{sin-1(sin1°/n)}]を示している。したがって、光検出装置1Aにおける距離A及び距離Bは、実線の直線よりも下側の領域の値となる。
【0040】
以上説明したように、光検出装置1Aでは、光半導体素子2Aと第1屈折率変化層5との間の距離をAとし、隣り合う受光部22の間の距離をBとし、空気の屈折率に対する光透過基板3の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin-1(sin1°/n)}]が成立する。この関係式は、光透過基板3の表面3aに入射角1°で入射した光が、一方の受光部22に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子2Aの表面2a及び光透過基板3の表面3aで順次反射されたときに、当該一部の光が、他方の受光部22に向かって進行し得ることを意味する。つまり、光検出装置1Aでは、光透過基板3に入射角1°で入射した光さえも、隣り合う受光部22の間でクロストークが発生する原因になるほど、光透過基板3について十分な厚さが確保され、且つ隣り合う受光部22の間の距離が小さくされているといえる。ここで、光検出装置1Aでは、屈折率が光透過基板3に向かって空気の屈折率から光透過基板3の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層5が、光透過基板3の表面3aに設けられている。そのため、光透過基板3の表面3aに入射角1°で入射した光が、一方の受光部22に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子2Aの表面2aで反射されたとしても、当該一部の光が、光透過基板3の表面3aで反射され難くなり、その結果、当該一部の光が、他方の受光部22に向かって進行し難くなる。よって、光検出装置1Aによれば、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減することができる。
【0041】
光透過基板3の表面3aに入射した光が、一方の受光部22に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子2Aの表面2a及び光透過基板3の表面3aで順次反射されたときに、当該一部の光が、他方の受光部22に向かって進行するのを防止するための手段として、光透過基板3を薄くすることも考えられる。しかし、光透過基板3の薄型化は、光検出装置1Aの耐久性の低下や、光検出装置1Aの反り等の問題に繋がるおそれがある。そこで、光検出装置1Aでは、光透過基板3について、そのような問題に繋がるおそれがない厚さ(すなわち、光透過基板3に入射角1°で入射した光さえも、隣り合う受光部22の間でクロストークが発生する原因になる厚さ)を確保しつつも、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減し得る構成が実現されている。
【0042】
また、光半導体素子2Aと光透過基板3との間の領域にレンズ等の光学要素が配置されていると、当該領域に入射した光(光透過基板3を透過した光や、半導体基板21で反射された光、自己発光による光等)が光学要素で反射されてクロストークが発生するおそれがある。光検出装置1Aでは、光透過基板3が、光透過性の接着層4のみを介して光半導体素子2Aに接合されており、そのようなクロストークを発生させ得る光学要素が排除されたシンプルな構成が採用されている。
【0043】
また、光検出装置1Aでは、光半導体素子2Aにおいて、複数の受光部22が、半導体基板21の表面21aに沿った部分に設けられており、屈折率が半導体基板21に向かって光吸収層7の屈折率から半導体基板21の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第2屈折率変化層6が、半導体基板21の表面21bに設けられている。これにより、一方の受光部22に入射した光のうちの一部の光が半導体基板21を透過したとしても、当該一部の光が、半導体基板21の表面21bで反射され難くなり、その結果、当該一部の光が、他方の受光部22に向かって進行し難くなる。したがって、例えば半導体基板21の薄型化に伴い、一方の受光部22に入射した光のうちの一部の光が半導体基板21を透過し得る場合にも、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減することができる。更に、一方の受光部22において電荷の再結合による自己発光が生じたとしても、自己発光による光が、半導体基板21の表面21bで反射され難くなり、その結果、自己発光による光が、他方の受光部22に向かって進行し難くなる。したがって、電荷の再結合による自己発光が生じ得る構成を受光部22が有する場合にも、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減することができる。なお、電荷の再結合による自己発光が生じ得る構成としては、例えば、MPPC(Multi-Pixel Photon Counter)、APD(アバランシェ・フォトダイオード)等の受光部の構成がある。
【0044】
また、光検出装置1Aでは、半導体基板21の表面21bに、第2屈折率変化層6を覆う光吸収層7が設けられている。これにより、半導体基板21の表面21bに入射した光(半導体基板21を透過した一部の光や、自己発光による光等)が光吸収層7によって吸収されるため、当該光が外部に出射して光半導体素子2Aに再入射するのを防止することができる。
【0045】
また、光検出装置1Aでは、光透過基板3が、光半導体素子2Aに接着層4のみを介して接合されており、屈折率が光透過基板3に向かって接着層4の屈折率から光透過基板3の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第3屈折率変化層8が、光透過基板3の表面3bに設けられている。これにより、光透過基板3の表面3bで光が反射され難くなるため、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークをより確実に低減することができる。
【0046】
また、光検出装置1Aでは、光透過基板3がガラス基板である。これにより、補強基板として機能する光透過基板3を容易に且つ確実に得ることができる。
【0047】
また、光検出装置1Aでは、第1屈折率変化層5が光透過基板3とは別体の層であり、第2屈折率変化層6が半導体基板21は別体の層であり、第3屈折率変化層8が光透過基板3とは別体の層である。これにより、屈折率が連続的に変化する機能を有する第1屈折率変化層5、第2屈折率変化層6及び第3屈折率変化層8のそれぞれを容易に且つ確実に得ることができる。
【0048】
なお、屈折率が連続的に変化する機能を有する第1屈折率変化層5は、空気側から表面3aに入射する光が表面3aで反射されるのを防止するため、光の入射効率を向上させる機能も有する。この点では、誘電体多層膜によって構成された反射防止膜と同様である。しかし、反射防止膜は波長依存性を有するため、検出すべき光の波長に合わせて反射防止膜を設計すると、受光部22で自己発光が生じた場合に、自己発光による光を透過させることができないおそれがある。それに対し、第1屈折率変化層5は波長依存性を有しないため、検出すべき光及び自己発光による光(波長及び出射方向を予測し得ない自己発光による光)の両方を透過させることができる。このように、第1屈折率変化層5は、「波長によらず光を透過させることができ、その結果、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを確実に低減することができる」という「当業者が予測し得ない効果」を奏する。第2屈折率変化層6及び第3屈折率変化層8についても同様である。
【0049】
光検出装置1Aの製造方法の一例は、次のとおりである。まず、それぞれが光半導体素子2Aとなる複数の部分を含む第1ウェハ、及びそれぞれが光透過基板3となる複数の部分を含む第2ウェハを用意する。続いて、第2ウェハの両主面に、それぞれ、第1屈折率変化層5を含むフィルム及び第3屈折率変化層8を含むフィルムを貼り付ける。その一方で、第1ウェハにおいて表面21bを含む主面に、第2屈折率変化層6を含むフィルムを貼り付け、光吸収層7となる層で当該フィルムを覆う。続いて、第3屈折率変化層8を含むフィルムと、第1ウェハにおいて表面21aを含む主面とが向かい合うように、接着層4によって第1ウェハと第2ウェハとを接合する。続いて、第1ウェハ及び第2ウェハから複数の光検出装置1Aを切り出す。
[第2実施形態]
【0050】
図4に示されるように、第2実施形態の光検出装置1Bは、光半導体素子2Bが裏面入射型の受光素子である点、及び、第2屈折率変化層6を有さず、第4屈折率変化層9を有する点で、上述した第1実施形態の光検出装置1Aと相違している。
【0051】
光半導体素子2Bにおいて、複数の受光部22は、半導体基板21の表面21bに沿った部分に設けられている。複数の受光部22は、例えば、X方向及びY方向に沿ってマトリックス状に配列されている。各受光部22は、例えば、第1導電型の半導体材料からなる半導体基板21のうち表面21bに沿った部分に第2導電型の領域が形成されることで構成されたフォトダイオード(PN接合に対応する部分)である。
【0052】
光半導体素子2Bは、光透過基板3側の表面2aを受光面とする受光素子である。上述したように、半導体基板21における光透過基板3とは反対側の表面21bに沿った部分に複数の受光部22が設けられているから、光半導体素子2Bは、裏面入射型の受光素子である。したがって、図示は省略されているが、半導体基板21における光透過基板3とは反対側の表面21bには、複数の受光部22と電気的に接続された複数のパッドが設けられている。なお、光半導体素子2Bは、複数の受光部22が複数の光検出チャネルとして機能するように構成された裏面入射型の受光素子であれば、上述した構成を有するものに限定されない。
【0053】
光透過基板3の表面3aには、第1屈折率変化層5が設けられている。第1屈折率変化層5は、屈折率が光透過基板3に向かって空気の屈折率から光透過基板3の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有している。第1屈折率変化層5は、光透過基板3とは別体の層である。一例として、第1屈折率変化層5は、フィルム状の第1屈折率変化層5が光透過基板3の表面3aに貼り付けられることで構成されている。
【0054】
光透過基板3の表面3bには、第3屈折率変化層8が設けられている。第3屈折率変化層8は、屈折率が光透過基板3に向かって接着層4の屈折率から光透過基板3の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有している。第3屈折率変化層8は、光透過基板3とは別体の層である。一例として、第3屈折率変化層8は、フィルム状の第3屈折率変化層8が光透過基板3の表面3bに貼り付けられることで構成されている。
【0055】
半導体基板21の表面21aには、第4屈折率変化層9が設けられている。第4屈折率変化層9は、屈折率が半導体基板21に向かって接着層4の屈折率から半導体基板21の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有している。第4屈折率変化層9の凹凸構造は、例えば、100nm~200nm程度の中心間距離で並んだ複数の凸部又は複数の凹部によって構成されており、モスアイ構造と称される場合がある。第4屈折率変化層9は、接着層4側から表面21aに入射する光が表面21aで反射されること、及び半導体基板21側から表面21aに入射する光が表面21aで反射されることを防止する。第4屈折率変化層9は、半導体基板21とは別体の層である。一例として、第4屈折率変化層9は、フィルム状の第4屈折率変化層9が半導体基板21の表面21aに貼り付けられることで構成されている。
【0056】
半導体基板21の表面21bには、光吸収層7が設けられている。光吸収層7は、例えば、黒樹脂等からなる。光吸収層7は、半導体基板21側から表面21bに入射した光を吸収する。
【0057】
光検出装置1Bでは、上述した光検出装置1Aと同様に、光半導体素子2Bと第1屈折率変化層5との間の距離をAとし、隣り合う受光部22の間の距離をBとし、空気の屈折率に対する光透過基板3の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin-1(sin1°/n)}]が成立する。この関係式は、光透過基板3の表面3aに入射角1°で入射した光が、一方の受光部22に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子2Bの表面2a及び光透過基板3の表面3aで順次反射されたときに、当該一部の光が、他方の受光部22に向かって進行し得ることを意味する。つまり、光検出装置1Bでは、光透過基板3に入射角1°で入射した光さえも、隣り合う受光部22の間でクロストークが発生する原因になるほど、光透過基板3について十分な厚さが確保され、且つ隣り合う受光部22の間の距離が小さくされているといえる。ここで、光検出装置1Bでは、屈折率が光透過基板3に向かって空気の屈折率から光透過基板3の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層5が、光透過基板3の表面3aに設けられている。そのため、光透過基板3の表面3aに入射角1°で入射した光が、一方の受光部22に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子2Bの表面2aで反射されたとしても、当該一部の光が、光透過基板3の表面3aで反射され難くなり、その結果、当該一部の光が、他方の受光部22に向かって進行し難くなる。よって、光検出装置1Bによれば、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減することができる。なお、裏面入射型の受光素子である光半導体素子2Bにおいては、表面2aと受光部22との間の距離が、光半導体素子2Bと第1屈折率変化層5との間の距離Aに比べて十分に小さいため、上記関係式において、表面2aと受光部22との間の距離を無視しても実質的に問題はない。特に、光半導体素子2Bの通常駆動時には空乏層が広がることからも、上記関係式において、表面2aと受光部22との間の距離を無視しても実質的に問題はない。
【0058】
光透過基板3の表面3aに入射した光が、一方の受光部22に向かって進行した場合において、当該光のうちの一部の光が、光半導体素子2Bの表面2a及び光透過基板3の表面3aで順次反射されたときに、当該一部の光が、他方の受光部22に向かって進行するのを防止するための手段として、光透過基板3を薄くすることも考えられる。しかし、光透過基板3の薄型化は、光検出装置1Bの耐久性の低下や、光検出装置1Bの反り等の問題に繋がるおそれがある。そこで、光検出装置1Bでは、光透過基板3について、そのような問題に繋がるおそれがない厚さ(すなわち、光透過基板3に入射角1°で入射した光さえも、隣り合う受光部22の間でクロストークが発生する原因になる厚さ)を確保しつつも、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減し得る構成が実現されている。
【0059】
また、光半導体素子2Bと光透過基板3との間の領域にレンズ等の光学要素が配置されていると、当該領域に入射した光(光透過基板3を透過した光や、半導体基板21で反射された光、自己発光による光等)が光学要素で反射されてクロストークが発生するおそれがある。光検出装置1Bでは、光透過基板3が、光透過性の接着層4のみを介して光半導体素子2Bに接合されており、そのようなクロストークを発生させ得る光学要素が排除されたシンプルな構成が採用されている。
【0060】
また、光検出装置1Bでは、光半導体素子2Bにおいて、複数の受光部22が、半導体基板21の表面21bに沿った部分に設けられている。このように、光半導体素子2Bが裏面入射型の構成を有する場合にも、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減することができる。
【0061】
また、光検出装置1Bでは、半導体基板21の表面21bに、光吸収層7が設けられている。これにより、半導体基板21に入射した光が半導体基板21を透過し得る場合にも、当該光が光吸収層7によって吸収されるため、当該光が外部に出射して光半導体素子2Bに再入射するのを防止することができる。更に、電荷の再結合による自己発光が生じ得る構成を受光部22が有する場合にも、自己発光による光が光吸収層7によって吸収されるため、自己発光による光が外部に出射して光半導体素子2Bに再入射するのを防止することができる。
【0062】
また、光検出装置1Bでは、光透過基板3が、光半導体素子2Bに接着層4のみを介して接合されており、屈折率が光透過基板3に向かって接着層4の屈折率から光透過基板3の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第3屈折率変化層8が、光透過基板3の表面3bに設けられている。これにより、光透過基板3の表面3bで光が反射され難くなるため、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークをより確実に低減することができる。
【0063】
また、光検出装置1Bでは、光透過基板3が、光半導体素子2Bに接着層4のみを介して接合されており、屈折率が半導体基板21に向かって接着層4の屈折率から半導体基板21の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第4屈折率変化層9が、半導体基板21の表面21aに設けられている。これにより、半導体基板21の表面21aで光が反射され難くなるため、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークをより確実に低減することができる。
【0064】
また、光検出装置1Bでは、光透過基板3がガラス基板である。これにより、補強基板として機能する光透過基板3を容易に且つ確実に得ることができる。
【0065】
また、光検出装置1Bでは、第1屈折率変化層5が光透過基板3とは別体の層であり、第3屈折率変化層8が光透過基板3とは別体の層であり、第4屈折率変化層9が半導体基板21は別体の層である。これにより、屈折率が連続的に変化する機能を有する第1屈折率変化層5、第3屈折率変化層8及び第4屈折率変化層9のそれぞれを容易に且つ確実に得ることができる。
[変形例]
【0066】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、光透過基板3は、光半導体素子2A又は光半導体素子2Bに直接的に接合されていてもよい。直接的に接合する手段としては、ダイレクトボンディング(例えば、プラズマ活性化接合、表面活性化接合、原子拡散接合、陽極接合、フュージョンボンディング、親水化接合等)がある。光透過基板3が光半導体素子2Aに直接的に接合されている場合、接着層4及び第3屈折率変化層8は不要である。なお、光半導体素子2A又は光半導体素子2Bと光透過基板3との間の領域にレンズ等の光学要素が配置されていると、当該領域に入射した光(光透過基板3を透過した光や、半導体基板21で反射された光、自己発光による光等)が光学要素で反射されてクロストークが発生するおそれがある。光検出装置1Aでは、光透過基板3が光半導体素子2Aに直接的に接合されており、そのようなクロストークを発生させ得る光学要素が排除されたシンプルな構成が採用されている。同様に、光検出装置1Bでは、光透過基板3が光半導体素子2Bに直接的に接合されており、そのようなクロストークを発生させ得る光学要素が排除されたシンプルな構成が採用されている。
【0067】
また、光半導体素子2A又は光半導体素子2Bは、複数の受光部22が2次元に配列されたものに限定されず、複数の受光部22が1次元に配列されたものであってもよい。また、光透過基板3は、ガラス以外の光透過性材料によって形成されていてもよい。
【0068】
また、光検出装置1A及び光検出装置1Bにおいて、第1屈折率変化層5は、例えば光透過基板3の表面3aに凹凸構造を形成することで、光透過基板3と一体的に形成されていてもよい。光検出装置1A及び光検出装置1Bにおいて、第3屈折率変化層8は、例えば光透過基板3の表面3bに凹凸構造を形成することで、光透過基板3と一体的に形成されていてもよい。光検出装置1Aにおいて、第2屈折率変化層6は、例えば半導体基板21の表面21bに凹凸構造を形成することで、半導体基板21と一体的に形成されていてもよい。光検出装置1Bにおいて、第4屈折率変化層9は、例えば半導体基板21の表面21aに凹凸構造を形成することで、半導体基板21と一体的に形成されていてもよい。これらによれば、光検出装置1A及び光検出装置1Bの部品点数を削減することができる。
【0069】
また、光検出装置1Aには、第2屈折率変化層6、光吸収層7及び第3屈折率変化層8の少なくとも1つが設けられていなくてもよい。また、光検出装置1Bには、光吸収層7、第3屈折率変化層8及び第4屈折率変化層9の少なくとも1つが設けられていなくてもよい。光検出装置1Aに第2屈折率変化層6が設けられており、且つ光検出装置1Aに光吸収層7が設けられていない場合には、第2屈折率変化層6の凹凸構造の屈折率は、半導体基板21に向かって、半導体基板21とは反対側において第2屈折率変化層6に接する領域(空間、又は光吸収層7以外の他の部材)の屈折率から半導体基板21の屈折率に連続的に変化していればよい。これにより、一方の受光部22に入射した光のうちの一部の光が半導体基板21を透過したとしても、当該一部の光が、半導体基板21の表面21bで反射され難くなり、その結果、当該一部の光が、他方の受光部22に向かって進行し難くなる。したがって、例えば半導体基板21の薄型化に伴い、一方の受光部22に入射した光のうちの一部の光が半導体基板21を透過し得る場合にも、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減することができる。更に、一方の受光部22において電荷の再結合による自己発光が生じたとしても、自己発光による光が、半導体基板21の表面21bで反射され難くなり、その結果、自己発光による光が、他方の受光部22に向かって進行し難くなる。したがって、電荷の再結合による自己発光が生じ得る構成を受光部22が有する場合にも、隣り合う受光部22の間で発生するクロストークを低減することができる。
【0070】
なお、複数の受光部を有する光半導体素子と、光半導体素子に直接的に又は光透過性の接着層のみを介して接合された光透過基板と、を備える光検出装置においては、光透過基板における光半導体素子とは反対側の表面に、屈折率が光透過基板に向かって空気の屈折率から光透過基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層が設けられており、光半導体素子と第1屈折率変化層との間の距離をAとすると、A>50μmが成立してもよい。複数の受光部において隣り合う受光部の間の距離は、近年の光半導体素子の高解像度化に伴って1μm以下になっており、その場合に、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減するためには、図3に示されるように、光半導体素子と第1屈折率変化層との間の距離を50μm以下にしなければならない。しかし、そのための光透過基板の薄型化は、光検出装置の耐久性の低下や、光検出装置の反り等の問題に繋がるおそれがある。そこで、この光検出装置では、光透過基板について、そのような問題に繋がるおそれがない厚さ(すなわち、A>50μmが成立し得る厚さであって、光透過基板に入射角1°で入射した光さえも、隣り合う受光部の間でクロストークが発生する原因になる厚さ)を確保しつつも、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減し得る構成が実現される。
【0071】
また、複数の受光部を有する光半導体素子と、光半導体素子に直接的に又は光透過性の接着層のみを介して接合された光透過基板と、を備える光検出装置においては、光透過基板における光半導体素子とは反対側の表面に、屈折率が光透過基板に向かって空気の屈折率から光透過基板の屈折率に連続的に変化する凹凸構造を有する第1屈折率変化層が設けられており、光半導体素子と第1屈折率変化層との間の距離をAとし、複数の受光部において隣り合う受光部の間の距離をBとし、空気の屈折率に対する光透過基板の屈折率をnとすると、A>B/[2tan{sin-1(sin5°/n)}]が成立してもよい。この光検出装置では、光透過基板について、十分な厚さ(すなわち、光透過基板に入射角5°で入射した光が、隣り合う受光部の間でクロストークが発生する原因になる厚さ)を確保しつつも、隣り合う受光部の間で発生するクロストークを低減し得る構成が実現される。
【符号の説明】
【0072】
1A,1B…光検出装置、2A,2B…光半導体素子、2a,2b…表面、3…光透過基板、3a,3b…表面、4…接着層、5…第1屈折率変化層、6…第2屈折率変化層、7…光吸収層、8…第3屈折率変化層、9…第4屈折率変化層、21…半導体基板、21a,21b…表面、22…受光部。
図1
図2
図3
図4