IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特許7413299静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法
<>
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図1
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図2
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図3
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図4
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図5
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図6
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図7
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図8
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図9
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図10
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図11
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図12
  • 特許-静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/36 20060101AFI20240105BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20240105BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01F27/36 158
H01F27/245 150
H01F41/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021038685
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138671
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向山 弘文
(72)【発明者】
【氏名】井坂 進
(72)【発明者】
【氏名】寺倉 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋子
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-074322(JP,U)
【文献】実開昭48-090117(JP,U)
【文献】特開平05-299268(JP,A)
【文献】特開昭53-075421(JP,A)
【文献】特開昭53-072126(JP,A)
【文献】特開2000-033433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/36
H01F 27/245
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる鉄心脚と、
前記鉄心脚の端部に設けられたヨークと、
前記鉄心脚に巻回された巻線と、
前記第1方向と交差する面に沿って形成され、前記巻線を支持する巻線支持板と、
前記第1方向に積層された複数のシールド金属板によって構成され、前記巻線支持板に重ねられた板状の磁気シールドと、
を備え、
前記ヨークは、前記第1方向と交差する第2方向に積層された複数のヨーク金属板によって形成され、
前記磁気シールドは、前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向に複数の分割板に分割され、
前記ヨークの側面に、前記磁気シールドに対向する対向領域が形成され、
前記対向領域は、複数の前記ヨーク金属板の端面によって平坦に形成されている、静止誘導電器。
【請求項2】
前記分割板は、前記対向領域と対向する部分に、この部分を前記第3方向に複数に分割する1または複数のスリット状の切り込みが形成されている、請求項1記載の静止誘導電器。
【請求項3】
前記切り込みの長さは、前記分割板と前記対向領域とが対向する領域の幅以上である、請求項2記載の静止誘導電器。
【請求項4】
第1方向に延びる鉄心脚に線体を巻回して巻線を形成する第1工程と、
複数のヨーク金属板を前記第1方向と交差する第2方向に積層することによってヨークを形成し、前記ヨークを前記鉄心脚の端部に設ける第2工程と、
前記第1方向に積層された複数のシールド金属板によって構成され、前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向に複数の分割板に分割された板状の磁気シールドを設ける第3工程と、
前記巻線を支持する巻線支持板を、前記第1方向と交差する面に沿って設ける第4工程と、
を含み、
前記第2工程において、前記ヨークを形成するにあたって、前記ヨークの側面に、複数の前記ヨーク金属板の端面によって、前記磁気シールドに対向する平坦な対向領域を形成し、前記対向領域は、複数のヨーク金属板の相互の積層位置を調整することによって形成し、
前記第3工程において、前記磁気シールドの一部を、前記対向領域に対向するように配置する、静止誘導電器の製造方法。
【請求項5】
第1方向に延びる鉄心脚に線体を巻回して巻線を形成する第1工程と、
複数のヨーク金属板を前記第1方向と交差する第2方向に積層することによってヨークを形成し、前記ヨークを前記鉄心脚の端部に設ける第2工程と、
前記第1方向に積層された複数のシールド金属板によって構成され、前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向に複数の分割板に分割された板状の磁気シールドを設ける第3工程と、
前記巻線を支持する巻線支持板を、前記第1方向と交差する面に沿って設ける第4工程と、
を含み、
前記第2工程において、前記ヨークを形成するにあたって、前記ヨークの側面に、複数の前記ヨーク金属板の端面によって、前記磁気シールドに対向する平坦な対向領域を形成し、前記対向領域は、積層したときに前記端面が前記対向領域をなすように予め形成した前記ヨーク金属板を積層することによって形成し、
前記第3工程において、前記磁気シールドの一部を、前記対向領域に対向するように配置する、静止誘導電器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器、リアクトル等の静止誘導電器は、輸送および据付スペースの制約により、小型化を要求されることが多い。静止誘導電器を小型化すると、漏れ磁束が増大する場合がある。静止誘導電器の周辺のタンク壁、支持鋼材などに漏れ磁束が入射すると、局部過熱が生じることがある。そのため、静止誘導電器には、漏れ磁束の発生に対する対策が求められている。
【0003】
漏れ磁束の対策としては、「縦積み磁気シールド」と呼ばれる磁気シールドを用いる技術がある。この磁気シールドは、複数の薄い強磁性の金属板が横並びに積層され、全体として板状に形成されている。この構造の磁気シールドは、漏れ磁束が金属板に入射する面の幅が小さくなるため、渦電流による損失を抑制することができる。
【0004】
しかし、縦積み磁気シールドは、特殊治具を用いて金属板を積層して接着する必要があるなどの理由により、製造に手間がかかる。この問題は、厚さ方向に複数の金属板が積層された「平積み磁気シールド」によって解決できる。しかし、平積み磁気シールドは、漏れ磁束が金属板に入射する面の幅が大きいため、縦積み磁気シールドに比べて漏れ磁束による発熱量が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6158579号公報
【文献】特開平8-298214号公報
【文献】特開平4-155807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、磁気シールドの製造が容易であり、かつ漏れ磁束による発熱量が小さい静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の静止誘導電器は、鉄心脚と、ヨークと、巻線と、巻線支持板と、磁気シールドと、を持つ。前記鉄心脚は、第1方向に延びる。前記ヨークは、前記鉄心脚の端部に設けられている。前記巻線は、前記鉄心脚に巻回されている。前記巻線支持板は、前記第1方向と交差する面に沿って形成されている。前記巻線支持板は、前記巻線を支持する。前記磁気シールドは、前記第1方向に積層された複数のシールド金属板によって構成されている。前記磁気シールドは、前記巻線支持板に重ねられている。前記磁気シールドは、板状とされている。前記ヨークは、複数のヨーク金属板によって形成されている。複数の前記ヨーク金属板は、前記第1方向と交差する第2方向に積層されている。前記磁気シールドは、第3方向に複数の分割板に分割されている。前記第3方向は、前記第1方向および前記第2方向と交差する。前記ヨークの側面に、対向領域が形成されている。前記対向領域は、前記磁気シールドに対向する。前記対向領域は、複数の前記ヨーク金属板の端面によって平坦に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の静止誘導電器を示す側面図。
図2】第1の実施形態の静止誘導電器の磁気シールドを示す斜視図。
図3】第1の実施形態の静止誘導電器のヨークおよび磁気シールドを示す斜視図。
図4】第1の実施形態の静止誘導電器のヨークおよび磁気シールドを示す側面図。
図5】第1の実施形態の静止誘導電器のヨークの一部を示す側面図。
図6】比較形態としてのヨークの一部を示す側面図。
図7】第2の実施形態の静止誘導電器のヨークおよび磁気シールドを示す斜視図。
図8】第2の実施形態の静止誘導電器のヨークの一部を示す側面図。
図9】比較形態としてのヨークの一部を示す側面図。
図10】第3の実施形態の静止誘導電器のヨークの一部を示す側面図。
図11】比較形態としてのヨークの一部を示す側面図。
図12】第4の実施形態の静止誘導電器のヨークおよび磁気シールドを示す斜視図。
図13】第4の実施形態の静止誘導電器の磁気シールドを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の静止誘導電器および静止誘導電器の製造方法を、図面を参照して説明する。
【0010】
以下の説明において、XYZ直交座標系のZ方向、X方向、およびY方向は以下のように定義される。Z方向は鉛直方向である。+Z方向は上方である。X方向は静止誘導電器の前後方向である。+X方向(図1において右方向)は静止誘導電器の前方である。X方向は、Z方向に直交する。Y方向は、Z方向およびX方向に直交する。Z方向およびX方向に沿う平面をXZ平面という。Z方向およびY方向に沿う平面をYZ平面という。X方向およびY方向に沿う平面をXY平面という。Z方向は第1方向の一例である。X方向は第2方向の一例である。Y方向は第3方向の一例である。これらの定義は、静止誘導電器の使用時の姿勢を限定しない。この実施形態では、第1方向、第2方向および第3方向は互いに直交するが、第1方向、第2方向および第3方向は、90°からわずかにずれた角度で交差していてもよい。以下の各実施形態において、共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略することがある。
【0011】
実施形態の静止誘導電器は、例えば、鉄心脚に一相の巻線が巻回されて構成されるリアクトルであってよい。実施形態の静止誘導電器は、鉄心脚に複数相の巻線が巻回されて構成される変圧器であってもよい。実施形態の静止誘導電器は、絶縁性ガスを用いたガス絶縁静止誘導電器であってよい。実施形態の静止誘導電器は、絶縁油を用いた油入静止誘導電器であってもよい。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の静止誘導電器10を示す側面図である。図2は、磁気シールド6を示す斜視図である。図3は、鉄心ヨーク2および磁気シールド6を示す斜視図である。図2および図3は、図1の「A」で示す箇所を拡大した図である。図4は、鉄心ヨーク2および磁気シールド6の一部を示す側面図である。
【0013】
図1に示すように、静止誘導電器10は、鉄心脚1と、鉄心ヨーク(ヨーク)2と、固定部材3と、巻線4と、巻線支持板5と、磁気シールド6と、巻線支持絶縁物7と、を備える。鉄心脚1と鉄心ヨーク2とは、鉄心を構成する。
【0014】
鉄心脚1は金属製である。鉄心脚1は、Z方向に延びる円柱状、直方体状などとされる。
鉄心ヨーク2は、Y方向から見て、鉄心脚1の上端部および下端部にそれぞれ設けられている。鉄心脚1の上端部に設けられる鉄心ヨーク2は第1鉄心ヨーク2Aである。鉄心脚1の下端部に設けられる鉄心ヨーク2は第2鉄心ヨーク2Bである。
【0015】
図3に示すように、鉄心ヨーク2は、複数のヨーク金属板8によって形成されている。ヨーク金属板8はYZ平面に沿う平板状とされている。例えば、ヨーク金属板8は、Y方向に沿う一対の辺と、Z方向に沿う一対の辺とを有する矩形状に形成されている。複数のヨーク金属板8は、X方向に積層されている。図3に示す鉄心ヨーク2は、第2鉄心ヨーク2B(図1参照)である。
【0016】
鉄心ヨーク2のX方向の端部2aを含む部分では、ヨーク金属板8の高さ寸法(Z方向の寸法)および幅寸法(Y方向の寸法)は、それぞれ端部2aに近いほど小さいことが好ましい。
【0017】
図4に示すように、鉄心ヨーク2の側面2bには、磁気シールド6に対向する対向領域12が形成されている。対向領域12は、XY平面に沿う平坦面である。対向領域12は、複数のヨーク金属板8の内辺縁8aの端面8bによって形成されている。内辺縁8aは、矩形状のヨーク金属板8の4つの辺のうち巻線4に対向する辺に相当する。内辺縁8aはY方向に延在する。第2鉄心ヨーク2B(図1参照)の内辺縁8aは、矩形状のヨーク金属板8の4つの辺のうち上辺に相当する。第1鉄心ヨーク2A(図1参照)の内辺縁8aは、矩形状のヨーク金属板8の4つの辺のうち下辺に相当する。対向領域12は、同じ高さにある複数の内辺縁8aがX方向に並ぶことによって形成されている。
【0018】
図1に示すように、固定部材3は、YZ平面に沿う平板状とされている。固定部材3は、Z方向から見て、鉄心ヨーク2の前方および後方にそれぞれ設けられている。固定部材3は、巻線支持板5の外面5aからZ方向に突出して形成されている。固定部材3は、Y方向に延在する。例えば、固定部材3は金属製である。
【0019】
巻線4は、線体が鉄心脚1に巻き回されて構成されている。Z方向から見て、鉄心脚1に巻き回された巻線4は、Z方向から見て鉄心脚1と同心の円環形状となる。巻線4は、単相でもよいし、複数相でもよい。例えば、線体は、絶縁被覆された導線である。
【0020】
巻線支持板5は、磁気シールド6および巻線支持絶縁物7を介して巻線4を支持する。巻線支持板5は、XY平面に沿う平板状とされている。巻線支持板5は、Y方向に延在する。巻線支持板5は、Z方向から見て、鉄心ヨーク2の前方および後方にそれぞれ設けられている。
【0021】
図2に示すように、磁気シールド6は、巻線支持板5の内面5b(外面5aと反対の面)に重ねられている。磁気シールド6は、XY平面に沿う平板状とされている。磁気シールド6は、全体として、X方向に沿う一対の辺と、Y方向に沿う一対の辺とを有する矩形状とされている。
【0022】
磁気シールド6は、積層された複数のシールド金属板9によって構成されている。例えば、シールド金属板9は、珪素鋼板である。シールド金属板9はXY平面に沿う平板状とされている。複数のシールド金属板9は、Z方向に積層されている。磁気シールド6は、シールド金属板9がZ方向に積層されているため、平積み形態の磁気シールドである。
【0023】
磁気シールド6は、Y方向に複数に分割されている。磁気シールド6は、Y方向に並ぶ複数の分割板11で構成されている。この実施形態では、磁気シールド6は3つに分割されている。分割板11は、X方向に沿う一対の辺と、Y方向に沿う一対の辺とを有する矩形状とされている。
【0024】
分割板11は、長方形状とされている。分割板11のX方向の寸法(長さL)は、Y方向の寸法(幅W)より大きい。複数の分割板11は、Y方向に間隔をおいて配置されている。そのため、隣り合う分割板11は互いに接触していない。なお、磁気シールド6の分割数は、3に限らず、2以上の任意の数であってよい。
【0025】
図3に示すように、磁気シールド6の一部(すなわち、分割板11の長さ方向の一部)は、巻線支持板5に対して、XY平面に沿って鉄心ヨーク2に近づく方向に延出している。
【0026】
図4に示すように、巻線支持板5から延出した磁気シールド6の一部は、鉄心ヨーク2の対向領域12に対向する。詳しくは、複数の分割板11の延出方向の先端11aを含む部分は対向領域12に対向する。分割板11は、対向領域12には接触せず、対向領域12から間隔をおいて配置される。分割板11の対向面11bと対向領域12とは、ギャップを介して向かい合う。対向面11bと対向領域12とは、ほぼ平行である。
【0027】
図1に示すように、巻線支持絶縁物7は、巻線4と磁気シールド6との間に介在する。巻線支持絶縁物7は、XY平面に沿う板状とされる。
【0028】
次に、第1の実施形態の静止誘導電器の製造方法について説明する。この実施形態の製造方法は、図1に示す静止誘導電器10を製造する方法の例である。この実施形態の製造方法は、第1~第4の工程を有する。
図1に示すように、第1工程では、鉄心脚1に線体を巻回して巻線4を形成する。
【0029】
図3に示すように、第2工程では、複数のヨーク金属板8をX方向に積層することによって鉄心ヨーク2を形成する。図4に示すように、鉄心ヨーク2の形成にあたっては、内辺縁8aが同じ高さとなるように複数のヨーク金属板8の相互の積層位置を調整することによって対向領域12を形成する。図4に示す「y」は、分割板11と対向領域12とが対向する領域の幅(X方向の寸法)である。
【0030】
この実施形態の製造方法では、通常品と同じヨーク金属板8を使用して対向領域12を形成することができる。このことを、図5および図6を用いて説明する。図6は、比較形態としての鉄心ヨーク402の一部を示す側面図である。図6に示すように、比較形態の鉄心ヨーク402は、対向領域12を持たない通常品である。端部2aを含む4枚のヨーク金属板8をそれぞれヨーク金属板8A~8Dという。ヨーク金属板8A~8Dの高さ寸法は、それぞれd1a、d2a、d3a、d4aである。
【0031】
図5は、静止誘導電器10の鉄心ヨーク2の一部を示す側面図である。図5に示すように、静止誘導電器10における鉄心ヨーク2の形成にあたっては、前述のように、複数のヨーク金属板8の相互の積層位置(高さ位置)を調整することによって対向領域12を形成する。ヨーク金属板8としては、通常品と同じヨーク金属板8を使用できる。端部2aを含む4枚のヨーク金属板8としては、ヨーク金属板8A~8D(図6参照)をそのまま使用できる。そのため、前記4枚のヨーク金属板8の高さ寸法であるd1b、d2b、d3b、d4bは、それぞれd1a、d2a、d3a、d4a図6参照)に等しい。すなわち、d1a=d1b、d2a=d2b、d3a=d3b、d4a=d4bとなる。
図1に示すように、鉄心ヨーク2は、Y方向から見て鉄心脚1の上端部および下端部に設ける。
【0032】
この製造方法では、通常品のヨーク金属板8を、積層位置(高さ位置)を変えるだけでそのまま使用できるため、鉄心ヨーク2の製造が容易となる。
【0033】
図1に示すように、第3工程では、巻線4の上面および下面に、巻線支持絶縁物7を形成する。図3に示すように、複数の分割板11に分割された磁気シールド6を、巻線支持絶縁物7の外面に設ける。磁気シールド6は、磁気シールド6は、一部が対向領域12に対向するように配置する。
第4工程では、巻線支持板5および固定部材3を設ける。
以上の工程を経て、静止誘導電器10を得る。
【0034】
なお、図5では、対向領域12は4枚のヨーク金属板8によって形成されるが、対向領域を形成するヨーク金属板の数は特に限定されない。例えば、対向領域は、2枚のヨーク金属板によって形成されてもよいし、6枚のヨーク金属板によって形成されてもよい。
【0035】
第1の実施形態の静止誘導電器10では、Z方向に積層された複数のシールド金属板9で構成された磁気シールド6(すなわち、平積み形態の磁気シールド)を使用する。そのため、縦積み形態の磁気シールドを用いる場合に比べて製造工程数が少ない。よって、磁気シールド6の製造が容易である。
【0036】
第1の実施形態の静止誘導電器10は、XY平面に沿う磁気シールド6がY方向(第3方向)に複数に分割されている。Y方向は、鉄心脚1の延在方向(Z方向)およびX方向と交差する方向である。そのため、磁気シールド6は、巻線4から発生した漏れ磁束の入射方向に対し垂直、かつ磁気シールド6内での磁束の流れを妨げない方向に分割されている。したがって、漏れ磁束が入射することによる渦電流の発生を抑制することができる。
【0037】
磁気シールドにおいて発熱量の大きくなる部位としては、磁気シールドが吸収した漏れ磁束の還流先であるヨークと近接する箇所が挙げられる。磁気シールドがヨークと近接した箇所で発熱しやすいのは、磁気シールドが吸収した漏れ磁束が、ヨークとのギャップを移行する際に熱が発生しやすいからである。
【0038】
静止誘導電器10では、鉄心ヨーク2の側面に、磁気シールド6に対向する平坦な対向領域12が形成されている。そのため、磁気シールド6と鉄心ヨーク2とは広い面積で対向する。よって、磁気シールド6と鉄心ヨーク2との間の移行磁束密度を低減し、発熱量を抑制することができる。静止誘導電器10は、発熱量を抑えることができるため、漏れ磁束の大きな静止誘導電器、ガス絶縁静止誘導電器などに好適に適用できる。
【0039】
第1の実施形態の静止誘導電器の製造方法によれば、鉄心ヨーク2の対向領域12を、ヨーク金属板8の相互の積層位置(高さ位置)を調整することによって形成する。この方法は、通常品のヨーク金属板8を、積層位置を変えるだけでそのまま使用できるため、鉄心ヨーク2の製造が容易となる。
【0040】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の静止誘導電器110の鉄心ヨーク102および磁気シールド6を示す斜視図である。
図7に示すように、鉄心ヨーク102の側面102bには、受容凹部113が形成されている。受容凹部113は、YZ平面に沿う内側面113aと、XY平面に沿う底面113bとによって形成される。受容凹部113は、Y方向に延びる溝状の凹部である。
【0041】
底面113bは、対向領域112となる。対向領域112は、複数のヨーク金属板108の内辺縁108aの端面108bによって形成されている。受容凹部113は、分割板11の先端11aを含む部分を受容する。
【0042】
なお、図7では、対向領域112は4枚のヨーク金属板108によって形成されるが、対向領域を形成するヨーク金属板の数は特に限定されない。例えば、対向領域は、2枚のヨーク金属板によって形成されてもよいし、6枚のヨーク金属板によって形成されてもよい。
【0043】
次に、第2の実施形態の静止誘導電器の製造方法について説明する。この実施形態の製造方法は、静止誘導電器110を製造する方法の例である。この実施形態の製造方法では、第2工程において、対向領域112は、積層したときに端面108bが平坦な領域をなすように予め形成したヨーク金属板108を使用して形成する。このことを、図8および図9を用いて説明する。
【0044】
図9は、比較形態としての鉄心ヨーク402の一部を示す側面図である。図9に示すように、比較形態の鉄心ヨーク402は、対向領域12を持たない通常品である。鉄心ヨーク402において、端部2aを含む4枚のヨーク金属板8をそれぞれヨーク金属板8A~8Dという(図6参照)。ヨーク金属板8A~8Dの高さ寸法は、それぞれd1a、d2a、d3a、d4aである。
【0045】
図8は、静止誘導電器110の鉄心ヨーク102の一部を示す側面図である。図8に示すように、静止誘導電器110における鉄心ヨーク102の形成にあたっては、前述のように、積層したときに端面108bが平坦な領域をなすように予め形成したヨーク金属板108を使用することによって、対向領域112を形成する。例えば、端部2aを含む4枚のヨーク金属板108としては、ヨーク金属板108A~108Dを使用する。
【0046】
ヨーク金属板108A~108Dの高さ寸法d1c、d2c、d3c、d4cは、d1c=d1a、d2c<d2a、d3c<d3a、d4c<d4aを満たす。すなわち、ヨーク金属板108B~108Dの高さ寸法は、通常品であるヨーク金属板8B~8D(図9参照)の高さ寸法に比べて小さい。高さ寸法が小さくなるように形成したヨーク金属板108B~108Dの使用により、鉄心ヨーク102の側面には受容凹部113が形成される。
【0047】
第1工程、第3工程および第4工程は、第1の実施形態の製造方法と同様としてよい。
【0048】
第2の実施形態の静止誘導電器110は、第1の実施形態と同様に、Z方向に積層された複数のシールド金属板9で構成された磁気シールド6(すなわち、平積み形態の磁気シールド)を使用する。そのため、縦積み形態の磁気シールドを用いる場合に比べて、磁気シールド6の製造が容易である。
【0049】
静止誘導電器110は、第1の実施形態と同様に、鉄心ヨーク102の側面102bに、磁気シールド6に対向する平坦な対向領域112が形成されている。そのため、磁気シールド6と鉄心ヨーク102とは広い面積で対向する。したがって、磁気シールド6と鉄心ヨーク102との間の移行磁束密度を低減し、発熱量を抑制することができる。
【0050】
第2の実施形態の静止誘導電器の製造方法によれば、積層したときに端面108bが平坦な領域をなすように予め形成したヨーク金属板108を使用することによって、対向領域112を形成する。そのため、ヨーク金属板108の形状および大きさの選択によって、目的に応じた面積の対向領域112を形成することができる。よって、磁束密度低減効果を調整することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態の静止誘導電器310の鉄心ヨーク302の一部を示す側面図である。図10に示すように、鉄心ヨーク302の側面302bには、対向領域12(図5参照)が形成されている。対向領域12は、複数のヨーク金属板308の内辺縁308aの端面308bによって形成されている。
【0052】
次に、第3の実施形態の静止誘導電器の製造方法について説明する。この実施形態の製造方法は、静止誘導電器310を製造する方法の例である。この実施形態の製造方法では、第2工程において、対向領域12は、積層したときに端面308bが平坦な領域をなすように予め形成したヨーク金属板308を使用して形成する。このことを、図10および図11を用いて説明する。
【0053】
図11は、比較形態としての鉄心ヨーク402の一部を示す側面図である。図11に示すように、比較形態の鉄心ヨーク402は、対向領域12を持たない通常品である。鉄心ヨーク402において、端部2aを含むヨーク金属板8A~8D(図6参照)の高さ寸法は、それぞれd1a、d2a、d3a、d4aである。
【0054】
図10に示すように、静止誘導電器310における鉄心ヨーク302の形成にあたっては、前述のように、積層したときに端面308bが平坦な領域をなすように予め形成したヨーク金属板308を使用することによって、対向領域12を形成する。例えば、端部2aを含む4枚のヨーク金属板308としては、ヨーク金属板308A~308Dを使用する。
【0055】
ヨーク金属板308A~308Dの高さ寸法d1d、d2d、d3d、d4dは、d1d>d1a、d2d>d2a、d3d>d3a、d4d=d4aを満たす。すなわち、ヨーク金属板308A~308Cの高さ寸法は、通常品であるヨーク金属板8A~8C(図11参照)の高さ寸法に比べて大きい。高さ寸法が大きくなるように形成したヨーク金属板308A~308Cの使用により、鉄心ヨーク302の側面には、第1実施形態における鉄心ヨーク2と同様に、対向領域12が形成される。
【0056】
第1工程、第3工程および第4工程は、第1の実施形態の製造方法と同様としてよい。
【0057】
第3の実施形態の静止誘導電器310は、第1の実施形態と同様に、Z方向に積層された複数のシールド金属板9で構成された磁気シールド6(すなわち、平積み形態の磁気シールド)を使用する。そのため、縦積み形態の磁気シールドを用いる場合に比べて、磁気シールド6の製造が容易である。
【0058】
静止誘導電器310は、第1の実施形態と同様に、鉄心ヨーク302の側面302bに、磁気シールド6に対向する平坦な対向領域12が形成されている。そのため、磁気シールド6と鉄心ヨーク302とは広い面積で対向する。したがって、磁気シールド6と鉄心ヨーク302との間の移行磁束密度を低減し、発熱量を抑制することができる。
【0059】
第3の実施形態の静止誘導電器の製造方法によれば、積層したときに端面308bが平坦な領域をなすように予め形成したヨーク金属板308を使用することによって、対向領域12を形成する。そのため、ヨーク金属板308の形状および大きさの選択によって、目的に応じた面積の対向領域12を形成することができる。よって、磁束密度低減効果を調整することができる。
【0060】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態の静止誘導電器210の鉄心ヨーク2および磁気シールド206を示す斜視図である。図13は、磁気シールド206を構成する分割板211を示す斜視図である。
図12に示すように、分割板211は、先端211aから長さ方向(X方向)にスリット状の切り込み213が形成されている。切り込み213は、分割板211の一方の面から他方の面にかけて貫通して形成されている。分割板211の先端211aを含む部分(対向領域12に対向する部分)は、切り込み213によって、Y方向に複数に分割されている。
【0061】
図13に示すように、切り込み213の長さL1は、分割板211と対向領域12とが対向する領域の幅y(図12および図4参照)以上であることが好ましい。切り込み213の数は、1でもよいし、複数でもよい。
【0062】
第4の実施形態の静止誘導電器210では、分割板211の、対向領域12と対向する部分に、分割板211の長さ方向(X方向)に沿う切り込み213が形成されているため、対向領域12と対向する箇所で分割板211の有効幅寸法を小さくできる。そのため、漏れ磁束が入射することによる渦電流を抑制することができる。よって、発熱量をさらに抑制できる。
【0063】
切り込み213が複数形成される場合、複数の切り込み213は、Y方向に間隔をおいて形成される。複数の切り込み213を有する分割板211では、渦電流をさらに抑制できる。
【0064】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、Z方向に積層された複数のシールド金属板9で構成された磁気シールド6(すなわち、平積み形態の磁気シールド)を使用する。そのため、縦積み形態の磁気シールドを用いる場合に比べて、磁気シールド6の製造が容易である。
【0065】
静止誘導電器10は、XY平面に沿う磁気シールド6がY方向(第3方向)に複数に分割されている。そのため、漏れ磁束が入射することによる渦電流の発生を抑制することができる。静止誘導電器10では、鉄心ヨーク2の側面に、磁気シールド6に対向する平坦な対向領域12が形成されている。そのため、磁気シールド6と鉄心ヨーク2とは広い面積で対向する。よって、磁気シールド6と鉄心ヨーク2との間の移行磁束密度を低減し、発熱量を抑制することができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1…鉄心脚、2,102,302…鉄心ヨーク(ヨーク)、2b,102b,302b…側面、4…巻線、5…巻線支持板、6,206…磁気シールド、8,108…ヨーク金属板、8b,108b…端面、9…シールド金属板、10,110,210,310…静止誘導電器、11,211…分割板、12,112…対向領域、213…切り込み、X…X方向(第2方向)、y…分割板と対向領域とが対向する領域の幅、Y…Y方向(第3方向)、Z…Z方向(第1方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13