(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240105BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240105BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20240105BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01L27/06 311B
H01L29/78 613A
H01L29/78 614
H01L29/78 623A
(21)【出願番号】P 2021043381
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】栗山 保彦
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-267410(JP,A)
【文献】特開2014-026996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0029144(US,A1)
【文献】特開2010-050312(JP,A)
【文献】特開2018-073865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0115154(US,A1)
【文献】国際公開第2019/012839(WO,A1)
【文献】特開2005-093496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
H01L 27/06
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた絶縁体層と、前記絶縁体層上に設けられた半導体層とを備えるSOI(Silicon On Insulator)基板上に形成された半導体装置であって、
第1電源線と、
第2電源線と、
前記第1電源線と第1ノードとの間に、前記第1電源線側をアノードとする向きで直列に接続された複数の第1ダイオードと、
前記第1ノードと前記第2電源線との間に接続された第1抵抗と、
ゲートが前記第1ノードに接続され、ソースが前記第1電源線に接続され、ボディが前記第1電源線に接続され、ドレインが第2ノードに接続された第1のP型トランジスタと、
ゲートが前記第1ノードに接続され、ソースが前記第2電源線に接続され、ボディが前記第2電源線に接続され、ドレインが前記第2ノードに接続された第1のN型トランジスタと、
ゲートが前記第2ノードに接続され、ソースが前記第1電源線に接続され、ボディが前記第1電源線に接続され、ドレインが第3ノードに接続された第2のP型トランジスタと、
ゲートが前記第2ノードに接続され、ソースが前記第2電源線に接続され、ボディが前記第2電源線に接続され、ドレインが前記第3ノードに接続された第2のN型トランジスタと、
ゲートが前記第3ノードに接続され、ソースが前記第2電源線に接続され、ボディが前記第2電源線に接続され、ドレインが前記第1電源線に接続された第3のN型トランジスタと、
を備え、
前記第1のP型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値は、前記第1のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値よりも小さく、
前記第2のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値は、前記第2のP型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値よりも小さく、
前記第2のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値は、前記第1のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値よりも小さく、
前記第1のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値は、前記第3のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値よりも小さい、
半導体装置。
【請求項2】
アノードが前記第2電源線に接続され、カソードが前記第1電源線に接続された第2ダイオードをさらに備え、
前記複数の第1ダイオードそれぞれのPN接合の面積は、前記第2ダイオードのPN接合の面積よりも小さい、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のP型トランジスタ、並びに前記第1乃至第3のN型トランジスタのそれぞれは、完全空乏型のトランジスタである、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層は、
第1方向に延伸し、前記第1方向と交差する第2方向に並んで設けられる第1のN型拡散領域及び第2のN型拡散領域と、
前記第1方向に延伸し、前記第2方向において前記第1のN型拡散領域と前記第2のN型拡散領域との間に設けられる第3のN型拡散領域と、
前記第1のN型拡散領域と前記第3のN型拡散領域との間に設けられる第1部分と、前記第2のN型拡散領域と前記第3のN型拡散領域との間に設けられる第2部分と、前記第3のN型拡散領域を前記第
1方向に分断し、前記第1部分と前記第2部分とを接続する第3部分と、を含む、第1のP型拡散領域と、
前記第3のN型拡散領域と前記第1のP型拡散領域の前記第3部分とに周囲を囲われ、前記第1のP型拡散領域の前記第3部分と前記第1方向で接している第2のP型拡散領域と、
を含み、
前記第3のN型拡散領域上に設けられた第1コンタクトと、
前記第2のP型拡散領域上に設けられた第2コンタクトと、
前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトと接続されている配線と、
をさらに備え、
前記第1のN型拡散領域及び前記第2のN型拡散領域は、前記第3のN型トランジスタのドレインとして機能し、
前記第3のN型拡散領域は、前記第3のN型トランジスタのソースとして機能し、
前記第1のP型拡散領域は、前記第3のN型トランジスタのボディとして機能する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
信号線と、
アノードが前記信号線に接続され、カソードが前記第1電源線に接続された第3ダイオードと、
アノードが前記第2電源線に接続され、カソードが前記信号線に接続された第4ダイオードと、
をさらに備え、
前記第3及び第4ダイオードそれぞれのPN接合の面積は、前記複数の第1ダイオードそれぞれのPN接合の面積のいずれよりも大きい、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体層は、第1の拡散領域と、前記第1の拡散領域と接して設けられる第3のP型拡散領域と、前記第1の拡散領域と接して設けられる第4のN型拡散領域と、を含み、
前記第1の拡散領域上に設けられた酸化膜と、
前記酸化膜上に設けられた導電体と、
をさらに備え、
前記第3のP型拡散領域と前記第4のN型拡散領域とは、前記第1の拡散領域を挟むように設けられ、
前記第1の拡散領域は、P型の拡散領域又はN型の拡散領域であり、
前記導電体は、電気的にフローティング状態であり、
前記第1の拡散領域と前記第3のP型拡散領域との接触面、又は前記第1の拡散領域と前記第4のN型拡散領域との接触面が、前記複数の第1ダイオードの一部として機能する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の拡散領域がP型の拡散領域である場合、前記第1の拡散領域に含まれるP型の不純物の濃度は、前記第3のP型拡散領域に含まれるP型の不純物の濃度よりも低く、
前記第1の拡散領域がN型の拡散領域である場合、前記第1の拡散領域に含まれるN型の不純物の濃度は、前記第4のN型拡散領域に含まれるN型の不純物の濃度よりも低い、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記第1電源線と接続された第1端子と、
前記第2電源線と接続された第2端子と、
前記第1電源線と前記第2電源線とに接続され、高周波信号を増幅する第2半導体装置と、
を備え、
前記第2半導体装置は、前記第1端子と前記第2端子との間に、第1の電圧を印加されて動作し、
前記複数の第1ダイオードのそれぞれの順方向電圧の合計は、前記第1の電圧よりも大きい、
半導体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ESD(Electro Static Discharge)に対する保護装置が知られている。ESDは、静電放電であり、異なる電位にある2つの物体の間で、瞬間的に大きな電流が流れる現象である。ESDが生じると、電位の高い物体から電位の低い物体へと電流が流れる。電流が流入したノードの電圧は急上昇し得る。電流が流出したノードの電圧は急下降し得る。保護装置は、ESDが生じた際に電流経路として機能し、電流経路を介してESDの電荷が放電されることで、急激な電圧の上昇または下降を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置のESD耐性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、基板と、基板上に設けられた絶縁体層と、絶縁体層上に設けられた半導体層とを備えるSOI(Silicon On Insulator)基板上に形成される。実施形態に係る半導体装置は、第1及び第2電源線と、複数の第1ダイオードと、第1抵抗と、第1及び第2のP型トランジスタと、第1乃至第3のN型トランジスタと、を備える。複数の第1ダイオードは、第1電源線と第1ノードとの間に、第1電源線側をアノードとする向きで直列に接続される。第1抵抗は、第1ノードと第2電源線との間に接続される。第1のP型トランジスタは、ゲートが第1ノードに接続され、ソースが第1電源線に接続され、ボディが第1電源線に接続され、ドレインが第2ノードに接続される。第1のN型トランジスタは、ゲートが第1ノードに接続され、ソースが第2電源線に接続され、ボディが第2電源線に接続され、ドレインが第2ノードに接続される。第2のP型トランジスタは、ゲートが第2ノードに接続され、ソースが第1電源線に接続され、ボディが第1電源線に接続され、ドレインが第3ノードに接続される。第2のN型トランジスタは、ゲートが第2ノードに接続され、ソースが第2電源線に接続され、ボディが第2電源線に接続され、ドレインが第3ノードに接続される。第3のN型トランジスタは、ゲートが第3ノードに接続され、ソースが第2電源線に接続され、ボディが第2電源線に接続され、ドレインが第1電源線に接続される。第1のP型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値は、第1のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値よりも小さい。第2のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値は、第2のP型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値よりも小さい。第2のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値は、第1のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値よりも小さい。第1のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値は、第3のN型トランジスタのゲート幅をゲート長で除算した値よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る半導体装置の回路構成の一例を示す回路図。
【
図3】第1実施形態に係る半導体装置の平面レイアウトの一例を示す平面図。
【
図4】第1実施形態に係る半導体装置の平面レイアウトの一例を示す平面図。
【
図5】
図4のV-V線に沿った半導体装置の断面構造を示す断面図。
【
図6】第1実施形態に係る半導体装置に含まれるダイオードの断面構造の一例を示す断面図。
【
図7】第1実施形態に係る半導体装置の通常状態における動作の一例を示す概略図。
【
図8】第1実施形態に係る半導体装置に正のESDが印加された場合の動作の一例を示す概略図。
【
図9】第2実施形態に係る半導体装置の回路構成の一例を示す回路図。
【
図10】第2実施形態に係る半導体装置に負のESDが印加された場合の動作の一例を示す概略図。
【
図11】第3実施形態に係る半導体システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図12】第3実施形態に係る半導体装置の回路構成の一例を示す回路図。
【
図13】第1比較例に係る半導体装置の回路構成を示す回路図。
【
図14】第2比較例に係る半導体装置の回路構成を示す回路図。
【
図15】第1実施形態及び第2実施形態並びに第1比較例及び第2比較例に係る半導体装置のシミュレーション結果を示すテーブル。
【
図16】第2実施形態と第1比較例とのそれぞれでHBMかつ+2kVが印加された際の電圧波形のシミュレーション結果を示す図。
【
図17】第1実施形態と第2実施形態とのそれぞれでHBMかつ-2kVが印加された際の電圧波形のシミュレーション結果を示す図。
【
図18】第2実施形態と第1比較例とのそれぞれでMMかつ+200Vが印加された際の電圧波形のシミュレーション結果を示す図。
【
図19】第1実施形態と第2実施形態とのそれぞれでMMかつ-200Vが印加された際の電圧波形のシミュレーション結果を示す図。
【
図20】第2実施形態と第2比較例とのそれぞれで電源電圧が印加された際の電流波形のシミュレーション結果を示す図。
【
図21】第2実施形態と第2比較例とのそれぞれで抵抗値が変動した際のシミュレーション結果を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
【0008】
なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。参照符号を構成する文字の後の数字は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。同じ文字を含んだ参照符号で示される要素を相互に区別する必要がない場合、これらの要素はそれぞれ文字のみを含んだ参照符号により参照される。
【0009】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る半導体システム1は、ESDに対する保護装置を含む、半導体システムの一種である。半導体システム1は、例えばSOI(Silicon On Insulator)CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスによって製造された集積回路(IC)である。半導体システム1は、例えば無線通信に関する高周波信号を増幅する機能を有する。以下に、第1実施形態に係る半導体システム1について説明する。
【0010】
[1-1]構成
[1-1-1]半導体システム1の全体構成
図1は、第1実施形態に係る半導体システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、半導体システム1は、電源線PL1と、電源線PL2と、端子T1と、端子T2と、半導体装置10と、半導体装置20とを備える。
【0011】
電源線PL1及び電源線PL2の各々は、半導体システム1に含まれる各装置への電源電圧の供給に使用される。端子T1及びT2の各々は、半導体システム1の外部の機器と接続可能に構成される。端子T1は、半導体システム1の正側の電源端子であり、電源線PL1に接続される。端子T1には、例えば電源電圧が印加される。端子T2は、半導体システム1の負側の電源端子であり、電源線PL2に接続される。端子T2は、例えば接地される。
【0012】
半導体装置10及び20は、例えば1つの半導体チップ上に集積(実装)される。半導体装置10は、ESD対策に使用される保護装置である。半導体装置10は、電源線PL1及びPL2に接続される。半導体装置10は、半導体システム1にESDが印加された際に電源線PL1と電源線PL2との間の放電経路として機能し、半導体装置20を保護する。半導体装置20は、電源線PL1及びPL2に接続される。半導体装置20は、半導体システム1が有する種々の動作を実行する。半導体装置20は、例えば無線通信に関する高周波信号を増幅する。
【0013】
[1-1-2]半導体装置10の構成
(半導体装置10の回路構成)
図2は、第1実施形態に係る半導体装置10の回路構成の一例を示す回路図である。
図2に示すように、半導体装置10は、ダイオードDI11及びDI12と、抵抗R1と、トランジスタPM1及びPM2と、トランジスタNM1、NM2、及びNM3と、を含む。
【0014】
ダイオードDI11及びDI12のそれぞれは、PN接合ダイオードである。ダイオードDI11及びDI12のそれぞれの順方向電圧は、例えば0.7Vである。トランジスタPM1及びPM2のそれぞれはP型のMOSFETであり、トランジスタNM1、NM2、及びNM3のそれぞれはN型のMOSFETである。
【0015】
ダイオードDI11及びDI12は、電源線PL1とノードN1との間に、アノード側が電源線PL1側となるように直列に接続される。具体的には、ダイオードDI11のアノードは、電源線PL1に接続される。ダイオードDI11のカソードは、ダイオードDI12のアノードに接続される。ダイオードDI12のカソードは、ノードN1に接続される。
【0016】
抵抗R1の一端は、ノードN1に接続される。抵抗R1の他端は、電源線PL2に接続される。
【0017】
トランジスタPM1とトランジスタNM1との組は、インバータINV1を構成している。具体的には、トランジスタPM1のゲートは、ノードN1に接続される。トランジスタPM1のソースは、電源線PL1に接続される。トランジスタPM1のドレインは、ノードN2に接続される。トランジスタPM1のボディは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM1のゲートは、ノードN1に接続される。トランジスタNM1のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM1のドレインは、ノードN2に接続される。トランジスタNM1のボディは、電源線PL2に接続される。インバータINV1は、ノードN1の論理レベルを反転させて、ノードN2に出力する。
【0018】
トランジスタPM2とトランジスタNM2との組は、インバータINV2を構成している。具体的には、トランジスタPM2のゲートは、ノードN2に接続される。トランジスタPM2のソースは、電源線PL1に接続される。トランジスタPM2のドレインは、ノードN3に接続される。トランジスタPM2のボディは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM2のゲートは、ノードN2に接続される。トランジスタNM2のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM2のドレインは、ノードN3に接続される。トランジスタNM2のボディは、電源線PL2に接続される。インバータINV2は、ノードN2の論理レベルを反転させて、ノードN3に出力する。
【0019】
トランジスタNM3のゲートは、ノードN3に接続される。トランジスタNM3のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM3のドレインは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM3のボディは、電源線PL2に接続される。
【0020】
トランジスタPM1のサイズは、トランジスタNM1のサイズよりも小さい。トランジスタNM1のサイズは、トランジスタNM3のサイズよりも小さい。トランジスタNM2のサイズは、トランジスタPM2のサイズよりも小さい。トランジスタNM2のサイズは、トランジスタNM1のサイズよりも小さい。
【0021】
なお、本明細書において、トランジスタのサイズの大小関係は、トランジスタのゲート電極のゲート長“L”とゲート幅“W”とから定まるアスペクト比“W/L”の大小関係に基づいて比較される。言い換えると、トランジスタの大小関係は、トランジスタのゲート幅“W”をゲート長“L”で除算した値“W/L”の大小関係に基づいて比較される。また、ゲート長“L”の等しい複数のトランジスタが並列接続されている場合は、並列接続された複数のトランジスタのゲート幅を合計して、合計されたゲート幅のトランジスタがひとつ設けられていると見なしてもよい。
【0022】
また、半導体装置10の構成は、検出部と、駆動部と、シャントMOSを含んでいる、と言い換えることもできる。検出部は、ダイオードDI11及びDI12と、抵抗R1とを含む。検出部は、電源線PL1の電圧が上昇したことを検出する。駆動部は、インバータINV1及びINV2を含む。駆動部は、検出部の検出結果に基づいて、シャントMOSのゲートを駆動する。シャントMOSは、トランジスタNM3である。シャントMOSは、検出部によってゲートを駆動され、ESDが検出された際に放電経路として機能する。
【0023】
(トランジスタNM3の構造)
以下に、トランジスタNM3の構造について説明する。なお、以下で参照される図面において、X方向とY方向とで定められる平面は支持基板の表面に対して平行な面に対応し、Z軸方向は支持基板の表面に対する鉛直方向に対応する。支持基板は、少なくともトランジスタNM3が形成される半導体基板であり、例えば、支持基板に、半導体装置10及び20が1つの半導体チップとして形成される。
【0024】
図3は、第1実施形態に係る半導体装置10の平面レイアウトの一例を示す平面図である。
図3は、半導体装置10に含まれる構造の内、トランジスタNM3として機能する部分を含む半導体層のレイアウトに着目して示している。
図3に示すように、半導体装置10は、アクティブ領域ARと、複数のコンタクトCCとを含む。
【0025】
アクティブ領域ARは、支持基板上に設けられた絶縁体層の上の半導体層であり、Y方向に延伸して設けられる。具体的には、アクティブ領域ARは、N型拡散領域101と、N型拡散領域102と、P型拡散領域103と、P型拡散領域104とを含む。
【0026】
N型拡散領域101及び102は、半導体層中でN型の不純物が拡散された領域である。P型拡散領域103及び104は、半導体層中でP型の不純物が拡散された領域である。P型拡散領域103に含まれるP型の不純物の濃度は、P型拡散領域104に含まれるP型の不純物の濃度よりも低い。
【0027】
N型拡散領域101は、トランジスタNM3のドレインとして機能する。N型拡散領域102は、トランジスタNM3のソースとして機能する。P型拡散領域103は、トランジスタNM3のボディとして機能する。P型拡散領域104は、P型拡散領域103と電気的に接続される。
【0028】
複数のN型拡散領域101のそれぞれは、アクティブ領域ARのX方向における一端から他端まで、X方向に延伸して設けられる。複数のN型拡散領域101は、アクティブ領域ARにおいて、Y方向に並んで設けられる。以下では、Y方向に並んだ複数のN型拡散領域101のうち、奇数番目に配置されたN型拡散領域101のことを“101odd”とも呼び、偶数番目に配置されたN型拡散領域101のことを“101even”とも呼ぶ。
【0029】
複数のN型拡散領域102のそれぞれは、アクティブ領域ARのX方向における一端から他端までX方向に延伸して、且つ隣り合うN型拡散領域101の間に設けられる。
【0030】
複数のP型拡散領域103のそれぞれは、Y方向に隣り合うN型拡散領域101の間に設けられる。具体的には、P型拡散領域103は、第1部分103a、第2部分103b、及び第3部分103cを含む。第1部分103aは、アクティブ領域ARのX方向における一端から他端までX方向に延伸して、且つN型拡散領域101oddとN型拡散領域102との間に設けられる。第2部分103bは、アクティブ領域ARのX方向における一端から他端までX方向に延伸して、且つN型拡散領域101evenとN型拡散領域102との間に設けられる。第3部分103cは、Y方向に延伸して且つN型拡散領域102を分断して設けられ、第1部分103aと第2部分103bとを接続している。N型拡散領域102は、P型拡散領域103の第3部分103cによって、N型拡散領域102aと102bとに分離される。
【0031】
複数のP型拡散領域104の組は、P型拡散領域104aと、P型拡散領域104bとを含む。複数のP型拡散領域104の組はそれぞれ、P型拡散領域103の第3部分103cを、X方向に挟んで設けられる。P型拡散領域104aは、P型拡散領域103の第3部分103cと、N型拡散領域102aによって囲まれている。P型拡散領域104bは、P型拡散領域103の第3部分103cと、N型拡散領域102bによって囲まれている。
【0032】
以上で説明されたN型拡散領域101と、N型拡散領域102と、P型拡散領域103と、P型拡散領域104との組み合わせが、Y方向に繰り返し設けられる。
【0033】
複数のコンタクトCCのそれぞれは、コンタクトCCが設けられた拡散領域と、後述する配線層に設けられた導電体とを、電気的に接続している。複数のコンタクトCCは、N型拡散領域101、N型拡散領域102、P型拡散領域104のそれぞれに設けられる。
【0034】
具体的には、各N型拡散領域101において、複数のコンタクトCCが、X方向に並んで設けられる。N型拡散領域102a及び102bのそれぞれにおいて、複数のコンタクトCCが、X方向に並んで設けられる。P型拡散領域104a及び104bのそれぞれにおいて、コンタクトCCが、N型拡散領域102a及び102bのそれぞれに設けられたコンタクトCCとX方向に並んで設けられる。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る半導体装置10の平面レイアウトの一例を示す平面図である。
図4は、半導体装置10に含まれる構造の内、トランジスタNM3として機能する部分を含む配線層のレイアウトに着目して示している。
図4に示すように、半導体装置10は、導電体111と、導電体112と、導電体113とをさらに含む。
【0036】
導電体111は、アクティブ領域ARと重なって設けられた部分と、アクティブ領域ARと重ならない部分とを有する。導電体111のアクティブ領域ARと重なった部分は、トランジスタNM3のゲート電極の配線として機能する。導電体111のアクティブ領域ARと重ならない部分は、ゲート電極の配線として機能する。導電体111は、アクティブ領域ARと重なって設けられた部分において、第1部分111a、第2部分111b、及び第3部分111cの組を複数含む。導電体111は、アクティブ領域ARと重ならない部分において、第4部分111dと、第5部分111eとを含む。
【0037】
導電体111は、アクティブ領域ARにおいて、P型拡散領域103とZ方向に重なるように設けられる。具体的には、導電体111の第1部分111aは、P型拡散領域103の第1部分103aとZ方向に重なるように設けられる。導電体111の第2部分111bは、P型拡散領域103の第2部分103bとZ方向に重なるように設けられる。導電体111の第3部分111cは、P型拡散領域103の第3部分103cとZ方向に重なるように設けられる。
【0038】
また、導電体111の第1部分111a及び第2部分111bのそれぞれは、X方向において、アクティブ領域ARの外部の領域まで延伸して設けられる。
【0039】
導電体111の第4部分111dと第5部分111eとは、それぞれY方向に延伸し、アクティブ領域ARと重ならないように、X方向においてアクティブ領域ARを挟むように設けられる。導電体111の第4部分111dは、アクティブ領域ARと重ならない部分において、複数の第1部分111a及び第2部分111bと接続される。導電体111の第5部分111eは、アクティブ領域ARと重ならない部分において、複数の第1部分111a及び第2部分111bと接続される。
【0040】
導電体112及び113のそれぞれは、導電体111よりも上の層に設けられる。導電体112及び113のそれぞれは、例えば金属を含む。導電体112は、トランジスタNM3のドレインの配線として機能する。導電体113は、トランジスタNM3のソースの配線として機能する。導電体112及び113の設けられる層は、例えば配線層と呼ばれる。
【0041】
導電体112は、複数の第1部分112hと、第2部分112vとを含む。複数の第1部分112hのそれぞれは、X方向に延伸し、N型拡散領域101上に設けられた複数のコンタクトCCと接するように設けられる。第2部分112vは、X方向においてアクティブ領域ARの外部の領域において、Y方向に延伸して設けられる。第2部分112vには、複数の第1部分112hが接続される。
【0042】
導電体113は、複数の第1部分113hと、第2部分113vとを含む。複数の第1部分113hのそれぞれは、X方向に延伸し、N型拡散領域102a及び102bと、P型拡散領域104a及び104bとのそれぞれの上に設けられたコンタクトCCと接するように設けられる。第2部分113vは、X方向においてアクティブ領域ARの外部の領域において、Y方向に延伸して設けられる。第2部分113vには、複数の第1部分113hが接続される。
【0043】
図5は、
図4のV-V線に沿った断面構造を示す断面図である。
図5に示すように、半導体装置10は、支持基板200、絶縁体層210、半導体層220、配線層230、絶縁膜120、導電体111の第3部分111c、絶縁体300、コンタクトCCを含んでいる。
図5に示す領域では、半導体層220は、N型拡散領域102a及び102bと、P型拡散領域103の第3部分103cと、P型拡散領域104a及び104bとを含んでいる。
図5に示す領域では、配線層230は、導電体113の第1部分113hを含んでいる。
【0044】
支持基板200は、例えばシリコンを含む。
【0045】
絶縁体層210は、支持基板200上に設けられる。絶縁体層210は、例えば酸化シリコンを含む。
【0046】
半導体層220は、絶縁体層210上に設けられる。
図5に示す領域では、半導体層220内において、X方向に向かって順に、N型拡散領域102a、P型拡散領域104a、P型拡散領域103の第3部分103c、P型拡散領域104b、N型拡散領域102bが並んで設けられている。
【0047】
P型拡散領域103の第3部分103c上には、絶縁膜120が設けられる。絶縁膜120は、酸化シリコンを含む。P型拡散領域103の第3部分103c上に設けられた絶縁膜120上には、導電体111の第3部分111cが設けられる。
【0048】
絶縁膜120は、アクティブ領域ARにおいて、P型拡散領域103と、導電体111の第3部分111cとの間に設けられる。絶縁膜120は、トランジスタNM3のゲート絶縁膜として機能する。
【0049】
半導体層220の上に、複数のコンタクトCCが設けられる。具体的には、N型拡散領域102a及び102bと、P型拡散領域104a及び104bとのそれぞれの上にコンタクトCCが設けられる。
【0050】
半導体層220の上方に、配線層230が設けられる。
図5に示す領域では、配線層230には、導電体113の第1部分113hが設けられている。導電体113の第1部分113hは、N型拡散領域102a及び102bと、P型拡散領域104a及び104bとのそれぞれの上に設けられたコンタクトCCと接している。
【0051】
半導体層220よりも上方であって、これまでに説明した構造物が設けられていない領域は、絶縁体300で満たされている。絶縁体300は、例えば酸化シリコンである。
【0052】
図3乃至
図5を参照して、トランジスタNM3の構造について説明したが、トランジスタNM3以外のトランジスタについても、同様の構造を有しても良い。
【0053】
また、
図3乃至
図5を参照して説明したトランジスタNM3の構造は、例えば以下のように言い換えることができる。
【0054】
トランジスタNM3は、X方向の長さがゲート長に対応する単位FETが、Y方向に複数並列接続されたものである。複数の単位FETが並列接続された構成は、例えばマルチフィンガーFETと呼ばれる。
【0055】
ゲート電極として機能する導電体111は、はしご形に形成されている。導電体111のうち、X方向に延伸し、且つP型拡散領域103の第1部分103a及び第2部分103bと重なっている、導電体111の第1部分111a及び第2部分111bが、真性FETのゲートである。
【0056】
はしご型に形成された導電体111は、Y方向に延伸して設けられる第4部分111dと第5部分111eとを含む。導電体111の第4部分111dと第5部分111eとは、複数の第1部分111a及び第2部分111bを、言い換えるとマルチフィンガーFETの各ゲートを接続するためのものである。図示していないが、導電体111は、その上層に設けられた配線と、コンタクトで接続されている。
【0057】
X方向に延伸して設けられているゲート電極は、一対ごとに、中心部分でY方向に延伸する部分によって接続されている。具体的には、導電体111の第1部分111a及び第2部分111bは、第3部分111cによって接続されている。この構成は、ボディ接合を形成するためのものである。
【0058】
導電体111の第3部分111cは、P型拡散領域103の第3部分103cと重なって設けられる。また、P型拡散領域103の第3部分103cは、P型拡散領域104の組に、X方向に挟まれている。このように構成することで、トランジスタのボディとして機能するP型拡散領域103と電気的に接続されているP型拡散領域104を設けることができる。また、P型拡散領域104上に設けられたコンタクトCCは、ソースとして機能するN型拡散領域102上に設けられたコンタクトCCとX方向に並んでいる。そして、P型拡散領域104上に設けられたコンタクトCCと、N型拡散領域102上に設けられたコンタクトCCとは、導電体113の第1部分113hに接続される。このように、トランジスタのボディとソース配線とが接続されている。
【0059】
(ダイオードの構造)
図6は、第1実施形態に係る半導体装置10に含まれるダイオードDI11の断面構造の一例を示す断面図である。
図6に示すように、半導体装置10は、支持基板200、絶縁体層210、半導体層220、配線層230、絶縁膜120、導電体111、絶縁体300、コンタクトCCを含んでいる。
図6に示す領域では、半導体層220は、P型拡散領域105、N型拡散領域106、及びN型拡散領域107を含んでいる。
図6に示す領域では、配線層230は、導電体114及び導電体115を含んでいる。
【0060】
支持基板200及び絶縁体層210は、
図5で説明した断面構造と同様である。
【0061】
図6に示した領域において、半導体層220には、Y方向に順に、P型拡散領域105、N型拡散領域106、N型拡散領域107が並んで設けられる。P型拡散領域105は、半導体層220中でP型の不純物が拡散された領域である。N型拡散領域106及び107は、半導体層220中でN型の不純物が拡散された領域である。N型拡散領域106に含まれるN型の不純物の濃度は、N型拡散領域107に含まれるN型の不純物の濃度よりも低い。
【0062】
N型拡散領域106上には、絶縁膜120が設けられる。N型拡散領域106上に設けられた絶縁膜120上には、導電体111が設けられる。導電体111は、電気的にフローティング状態である。
【0063】
P型拡散領域105と、N型拡散領域107とのそれぞれの上に、コンタクトCCが設けられる。
【0064】
半導体層220の上方に、配線層230が設けられる。
図6に示す領域では、配線層230には、導電体114及び115が設けられている。導電体114は、P型拡散領域105上に設けられたコンタクトCCと接している。導電体115は、N型拡散領域107上に設けられたコンタクトCCと接している。
【0065】
半導体層220内の、半導体が設けられていない領域と、半導体層220よりも上方であって、これまでに説明した構造物が設けられていない領域は、絶縁体300で満たされている。絶縁体300は、例えば酸化シリコンである。
【0066】
P型拡散領域105は、ダイオードDI11のアノードに対応する。N型拡散領域106及び107は、ダイオードDI11のカソードに対応する。P型拡散領域105と、N型拡散領域106との接触面が、ダイオードDI11のPN接合に対応している。
【0067】
導電体114は、ダイオードDI11のアノードの配線として機能する。導電体115は、ダイオードDI11のカソードの配線として機能する。
【0068】
図6に示したダイオードの構造は、例えばラテラル型と呼ばれ、トランジスタと類似の構造を有している。具体的には、P型拡散領域105、N型拡散領域106、及びN型拡散領域107は、それぞれトランジスタのソース又はドレイン、ボディ、ドレイン又はソースと構造が類似している。また、N型拡散領域106上に設けられた絶縁膜120と導電体111とは、トランジスタのゲート絶縁膜及びゲート電極と構造が類似している。
【0069】
本明細書では、導電体111がトランジスタのゲート電極と見なされた場合に、導電体111のY方向の長さが、トランジスタのゲート長“L”に対応し、導電体111のX方向の長さがトランジスタのゲート幅“W”に対応している。ダイオードDI11のPN接合の面積は、半導体層220のZ方向の厚さと、P型拡散領域105及びN型拡散領域106それぞれのX方向の長さとから算出できる。
【0070】
また、P型拡散領域105並びにN型拡散領域106及び107は、導電体111をマスクとして用いたイオン注入処理によって形成される。このため、P型拡散領域105並びにN型拡散領域106及び107それぞれの形状は、導電体111の形状に対応して形成される。よって、ラテラル型のダイオードにおいて、ゲート幅“W”が長いとPN接合の面積は広くなり、ゲート幅“W”が短いとPN接合の面積は狭くなると表現できる。
【0071】
なお、
図6ではダイオードDI11を例に説明したが、ダイオードDI12の構造も同様である。また、
図6では導電体111の下方にN型拡散領域106が設けられる場合を例に説明したが、N型拡散領域106はP型拡散領域に置き換えられても良い。例えば、導電体111の下方にP型拡散領域を設けた場合は、導電体111の下方に設けられたP型拡散領域とN型拡散領域107との接触面が、ダイオードのPN接合として機能する。
【0072】
[1-2]動作
第1実施形態に係る半導体装置10は、条件に応じて、異なる動作を行う。以下に、半導体システム1に電源電圧が印加され通常動作している場合と、半導体システム1に正のESDが印加された場合とについて、順に説明する。
【0073】
なお、動作の一例を示す概略図において、オン状態のトランジスタ又はダイオードには丸印を付し、オフ状態のトランジスタ又はダイオードにはバツ印を付す。また、電流について説明するために、矢印記号を付している。
【0074】
(通常動作における動作)
図7は、第1実施形態に係る半導体システム1の通常状態における動作の一例を示す概略図である。
図7は、半導体システム1に電源装置PSが接続されている場合を例示している。以下に、
図7を参照して、半導体システム1に電源電圧が印加され通常動作している際の、半導体装置10の動作について説明する。
【0075】
電源装置PSの正の出力は、端子T1に接続されている。電源装置PSの負の出力は、端子T2に接続され且つ接地されている。電源装置PSは、半導体システム1が通常動作するための電源電圧を、半導体システム1に供給する。電源電圧は、例えば1.2Vである。このように構成されることにより、電源線PL1には1.2Vの電圧が印加され、電源線PL2の電圧は0Vとなる。
【0076】
ダイオードDI11及びDI12それぞれの順方向電圧は0.7Vであるから、順方向電圧の合計は1.4Vである。電源線PL1の電圧は1.2Vであり、順方向電圧の合計よりも低いため、ダイオードDI11及びDI12はオフ状態である。ダイオードDI11及びDI12がオフ状態であるため、ノードN1の電圧は、抵抗R1を介して接続されている電源線PL2の電圧と略等しい。
【0077】
ノードN1の電圧が電源線PL2の電圧と略等しいため、トランジスタPM1はオン状態となり、トランジスタNM1はオフ状態となる。すると、矢印A1に示すように、オン状態となったトランジスタPM1を介して、電源線PL1からノードN2へ電流が流れる。その結果、ノードN2の電圧が、電源線PL1の電圧と略等しくなる。
【0078】
ノードN2の電圧が、電源線PL1の電圧と略等しくなったため、トランジスタPM2はオフ状態となり、トランジスタNM2はオン状態となる。すると、矢印A2に示すように、オン状態となったトランジスタNM2を介して、ノードN3から電源線PL2へ電流が流れる。その結果、ノードN3の電圧が、電源線PL2の電圧と略等しくなる。
【0079】
ノードN3の電圧が電源線PL2の電圧と略等しくなっている場合、トランジスタNM3はオフ状態となる。
【0080】
このように、半導体システム1に電源電圧が印加され通常動作している際には、半導体装置10のトランジスタNM3はオフ状態となる。このため、電源線PL1と電源線PL2は、接続されていない。よって、電源線PL1と電源線PL2との間の電流経路は形成されていない。つまり、半導体システム1が通常動作している際には、半導体装置10は放電経路として機能しない。また、電源線PL1及びPL2に接続されたその他の半導体装置、例えば半導体装置20は、電源電圧を用いて種々の動作を行う。半導体装置20の行う動作は、例えば高周波信号の増幅である。
【0081】
(正のESDが印加された際の動作)
図8は、第1実施形態に係る半導体装置に正のESDが印加された場合の一例を示す概略図である。
図8は、半導体システム1にESD試験装置TD1が接続されている場合を例示している。以下に、
図8を参照して、半導体システム1の電源線PL1に、ESDによって正の電圧が生じる場合の、半導体装置10の動作について説明する。
【0082】
ESD試験装置TD1の正の出力は、端子T1に接続されている。ESD試験装置TD1の負の出力は、端子T2に接続され且つ接地されている。このように構成されることにより、ESD試験装置TD1は、端子T1に対して正のESDを生じさせ、電源線PL1にESDによる電流を注入し、電源線PL1の電圧を上昇させることができる。
【0083】
正のESDが発生した際の半導体装置10の動作を、順に説明する。
【0084】
ESD試験装置TD1が正のESDを端子T1に印加すると、矢印A11に示すように、ESDによる電流が電源線PL1に流入し、電源線PL1の電圧が上昇する。
【0085】
電源線PL1の電圧が上昇し、ダイオードDI11及びDI12の順方向電圧の合計よりも大きくなると、ダイオードDI11及びDI12がオン状態になる。ダイオードDI11及びDI12がオン状態になると、矢印A12に示すように、ダイオードDI11及びDI12並びに抵抗R1を介して、電源線PL1から電源線PL2へ電流が流れる。抵抗R1に電流が流れると、抵抗R1の両端に電圧差が生じ、ノードN1の電圧が上昇する。
【0086】
ノードN1の電圧が上昇し、インバータINV1の閾値電圧を超えると、トランジスタPM1はオフ状態となり、トランジスタNM1はオン状態となる。トランジスタNM1がオン状態になると、矢印A13に示すように、オン状態になったトランジスタNM1を介して、ノードN2から電源線PL2へ電流が流れ、ノードN2の電圧が低下する。トランジスタNM1のサイズは大きいため、ノードN2の電圧は素早く低下する。
【0087】
ノードN2の電圧が低下していくと、やがてインバータINV2の閾値電圧を下回る。ノードN2の電圧がインバータINV2の閾値電圧を下回ると、トランジスタPM2はオン状態となり、トランジスタNM2はオフ状態となる。トランジスタPM2がオン状態になると、矢印A14に示すように、オン状態になったトランジスタPM2を介して、電源線PL1からノードN3へ電流が流れ、ノードN3の電圧が上昇する。トランジスタPM2のサイズは大きいため、ノードN3の電圧は素早く上昇する。
【0088】
ノードN3の電圧が上昇していくと、やがてトランジスタNM3の閾値電圧を超える。ノードN3の電圧が、トランジスタNM3の閾値電圧を超えると、トランジスタNM3がオン状態になる。トランジスタNM3がオン状態になると、矢印A15に示すように、オン状態になったトランジスタNM3を介して、電源線PL1から電源線PL2へ電流が流れ、ESDによって流入した電荷が放電される。
【0089】
このように、半導体システム1に正のESDが生じた際には、半導体装置10のトランジスタNM3がオン状態となり、ESDの放電経路として機能する。これにより、半導体システム1に正のESDが生じた際に、電源線PL1の電圧が上昇することが抑制される。電源線PL1の電圧が上昇することが抑制されることで、電源線PL1に接続されたその他の半導体装置、例えば半導体装置20は、ESDによる電圧上昇から保護される。
【0090】
[1-3]効果
以上で説明した第1実施形態に係る半導体システム1によれば、ESD耐性を向上させることができる。以下に、第1実施形態に係る半導体システム1の詳細な効果について説明する。
【0091】
例えば高周波信号を増幅するために、SOICMOSプロセスによって製造された半導体システムが用いられる。半導体システムには、ESDが印加された際に損傷することを防ぐために、ESD保護装置が含まれる。ESD保護装置は、ESD耐性を備えた上で、占有面積が狭く、電源電圧が印加された際の突入電流が小さいことが好ましい。
【0092】
ESD保護装置の構成として、ESDが印加されたことを検出する検出部と、ESDの放電経路として機能するシャントMOSと、検出部の検出結果に基づいてシャントMOSのゲートを駆動する駆動部と、を含む構成が知られている。放電経路として機能するシャントMOSは、ESDの電流に耐えるために大きなサイズで設けられる。このため、シャントMOSのゲート容量は大きい。シャントMOSのゲートの電圧を高速に遷移させるために、駆動部として、例えば複数のインバータが直列に接続されて用いられる。
【0093】
一般的に、インバータは出力信号の立ち上がりと立ち下がりとが略等しい特性となるように、PMOSトランジスタをNMOSトランジスタのサイズよりも大きいサイズで設ける。また、例えばインバータを2つ直列に接続し、容量負荷を駆動する際には、1段目のインバータの駆動能力に対して、2段目のインバータの駆動能力が大きくなるように、インバータを構成するトランジスタのサイズを定めることが知られている。
【0094】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置10では、インバータINV1において、トランジスタNM1のサイズがトランジスタPM1のサイズよりも大きい。また、インバータINV2において、トランジスタPM2のサイズがトランジスタNM2のサイズよりも大きい。そして、トランジスタNM2のサイズが、トランジスタNM1のサイズよりも小さい。つまり、一般的なインバータとは異なる構成を有している。
【0095】
第1実施形態に係る半導体装置10において、ESDが生じた際にオン状態になるトランジスタ、具体的にはトランジスタNM1とPM2とが、大きいサイズで設けられている。また、ESDを検出した際にオフ状態になるトランジスタ、具体的にはトランジスタPM1とNM2とが、小さいサイズで設けられている。このため、ESDが生じた際にノードN3の電圧を素早く上昇させることができ、トランジスタNM3を素早くオン状態にすることができる。これにより、ESDによって電源線PL1に生じる電圧のピークを抑制することができる。
【0096】
また、ESDを検出する方法として、抵抗とキャパシタとを直列接続し、RC時定数を活用して検出する、いわゆるRCTMOS(RC trigged MOS)が知られている。第1実施形態に係る半導体システム1は、ダイオードの順方向電圧を活用してESDを検出している。これにより、第1実施形態に係る半導体システム1は、RCTMOSに比べて、電源電圧が印加された際の突入電流の大きさを抑制することができる。また、半導体システムの製造時に抵抗値が変動した場合でも、ESD耐性に対する影響が抑制される。
【0097】
なお、第1実施形態に係る半導体システム1において、ダイオードDI11及びDI12を形成するプロセスは、トランジスタを形成するプロセスと統合できる。このため、ダイオードを形成するコストを抑制することができる。
【0098】
また、第1実施形態に係る半導体システム1は、トランジスタPM1、PM2、NM1~NM3のそれぞれにおいて、ボディとソースとが接続されている。これにより、トランジスタのボディをフローティングにした場合と比べて、トランジスタのドレイン・ソース間耐圧を高くすることができる。ドレイン・ソース間耐圧を高くすることができるため、トランジスタの面積を抑制することができる。
【0099】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る半導体システム1の構成は、第1実施形態に係る半導体システム1に対して、半導体装置10が半導体装置11に変更されている点が異なる。以下に、第2実施形態に係る半導体装置11について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0100】
[2-1]半導体装置11の構成
図9は、第2実施形態に係る半導体装置11の回路構成の一例を示す回路図である。
図9に示すように、第2実施形態に係る半導体装置11は、第1実施形態に係る半導体装置10に、ダイオードDI21が追加された構成を有する。
【0101】
ダイオードDI21は、PN接合ダイオードである。ダイオードDI21の順方向電圧は、例えば0.7Vである。
【0102】
ダイオードDI21のアノードは、電源線PL2に接続される。ダイオードDI21のカソードは、電源線PL1に接続される。
【0103】
ダイオードDI21の構造は、ダイオードDI11及びDI12と同様である。ダイオードDI21のPN接合の面積は、ダイオードDI11のPN接合の面積及びダイオードDI12のPN接合の面積のいずれよりも大きい。
【0104】
第2実施形態に係る半導体装置11のその他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置10と同様である。
【0105】
[2-2]動作
第2実施形態に係る半導体装置11は、条件に応じて、異なる動作を行う。半導体システム1に電源電圧が印加され通常動作している場合と、半導体システム1に正のESDが印加された場合とのそれぞれにおける半導体装置11の動作は、第1実施形態で説明した半導体装置10の動作と同様である。以下に、半導体システム1に負のESDが印加された場合の、半導体装置11の動作について説明する。
【0106】
(負のESDが印加された際の動作)
図10は、第2実施形態に係る半導体装置に負のESDが印加された場合の動作の一例を示す概略図である。
図10は、半導体システム1にESD試験装置TD2が接続されている場合を例示している。以下に、
図10を参照して、半導体システム1の電源線PL1に、ESDによって負の電圧が生じる場合の、半導体装置11の動作について説明する。
【0107】
ESD試験装置TD2の正の出力は、端子T2に接続され且つ接地されている。ESD試験装置TD2の負の出力は、端子T1に接続されている。このように構成されることにより、ESD試験装置TD2は、端子T1に対して負のESDを生じさせ、電源線PL1からESDによる電流を引き抜くことで、電源線PL1の電圧を低下させることができる。
【0108】
負のESDが発生した際の半導体装置11の動作を、順に説明する。
【0109】
ESD試験装置TD2が負のESDを端子T1に印加すると、矢印A21に示すように、ESDによる電流が電源線PL1から引き抜かれ、電源線PL1の電圧が低下する。
【0110】
電源線PL1の電圧と電源線PL2の電圧との差が、ダイオードDI21の順方向電圧よりも大きくなるまで、電源線PL1の電圧が低下すると、ダイオードDI21がオン状態になる。ダイオードDI21がオン状態になると、矢印A22に示すように、ダイオードDI21に電流が流れ、ESDによって生じた電荷が放電される。
【0111】
なお、ダイオードDI21がオン状態のとき、ダイオードDI11及びDI12と、トランジスタPM1及びPM2と、トランジスタNM1、NM2、及びNM3のそれぞれは、オフ状態である。
【0112】
また、トランジスタNM3のボディとドレインとの間には、寄生ダイオードが存在する。具体的には、寄生ダイオードのアノードは、トランジスタNM3のボディに接続されている。寄生ダイオードのカソードは、トランジスタNM3のドレインに接続されている。以後、この寄生ダイオードをダイオードDI0と呼ぶ。ダイオードDI21がオン状態のとき、ダイオードDI0もオン状態となり、矢印A23に示すように電流が流れ得る。ダイオードDI0は寄生抵抗成分が大きくなり得るため、矢印A23に示す電流は小さい。よって、負のESDが生じた際の主たる放電経路は、DI21である。
【0113】
このように、半導体システム1に負のESDが生じた際には、半導体装置11のダイオードDI21がオン状態となり、ESDの放電経路として機能する。これにより、半導体システム1に負のESDが生じた際に、電源線PL1の電圧が低下することが抑制される。電源線PL1の電圧が低下することが抑制されることで、電源線PL1に接続されたその他の回路、例えば半導体装置20は、ESDによる電圧低下から保護される。
【0114】
[2-3]効果
以上で説明した第2実施形態に係る半導体システム1によれば、ESD耐性を向上させることができる。以下に、第2実施形態に係る半導体システム1の詳細な効果について説明する。
【0115】
ESD保護装置において、放電経路として用いられるNMOSトランジスタには、ボディとドレインとの間に寄生ダイオードが存在している。放電経路として用いられるNMOSトランジスタのボディとソースとが接続されている場合、負のESDが生じた際に、この寄生ダイオードを放電経路として活用することが知られている。
【0116】
また、SOICMOSプロセスによって製造されたトランジスタは、半導体層に対する最大空乏層幅の割合によって、部分空乏型(Partially Depleted)と完全空乏型(Fully Depleted)とに大別できる。部分空乏型のトランジスタは、半導体層が最大空乏層幅よりも厚い構造を有し、ボディ下部に中性領域が存在する。完全空乏型のトランジスタは、半導体層が最大空乏層幅よりも薄い構造を有し、チャネル全体が空乏化している。
【0117】
完全空乏型もしくは完全空乏型に近い部分空乏型のトランジスタは、高周波特性に優れる。このため、高周波信号を扱う半導体システムでは、完全空乏型もしくは完全空乏型に近い部分空乏型のトランジスタが用いられる。
【0118】
しかしながら、完全空乏型もしくは完全空乏型に近い部分空乏型のトランジスタは、半導体層の厚さの全て又は大部分が空乏化するため、寄生ダイオードの寄生抵抗成分が大きくなり得る。寄生抵抗成分が大きい寄生ダイオードを、放電経路として活用すると、負のESDが生じた際の電源線PL1の電圧の低下が大きくなり得る。
【0119】
これに対して、第2実施形態に係る半導体システム1では、半導体装置11が、ダイオードDI21を含んでいる。ダイオードDI21は、負のESDの放電経路として機能するように、電源線PL1と電源線PL2との間に設けられている。ダイオードDI21は、ラテラル構造のダイオードである。ダイオードDI21は、ラテラル構造であることを利用して、寄生抵抗成分が小さくなるように、十分な面積のPN接合を有するように設けられる。これにより、負のESDが生じた際の電源線PL1の電圧の低下を抑制することができる。
【0120】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る半導体システム1aは、第2実施形態に係る半導体システム1に対して、端子T3及び信号線SLをさらに備え、半導体装置11が半導体装置12に変更され、半導体装置20が半導体装置21に変更されている点が異なる。以下に、第3実施形態に係る半導体システム1aについて、第2実施形態と異なる点を説明する。
【0121】
[3-1]構成
[3-1-1]半導体システム1aの全体構成
図11は、第3実施形態に係る半導体システム1aの構成の一例を示すブロック図である。
図11に示すように、半導体システム1aは、第2実施形態に係る半導体システム1に端子T3と信号線SLとが追加され、半導体装置11が半導体装置12に変更され、半導体装置20が半導体装置21に変更された構成を有する。
【0122】
信号線SLは、半導体システム1aに含まれる各装置への信号の供給に使用される。端子T3は、半導体システム1aの外部の機器と接続可能に構成される。端子T3は、半導体システム1aの信号端子であり、信号線SLに接続される。
【0123】
半導体装置12は、ESD対策に使用される保護装置である。半導体装置12は、電源線PL1及びPL2、並びに信号線SLに接続される。半導体装置12は、半導体システム1aにESDが印加された際に、電源線PL1と電源線PL2との間、信号線SLと電源線PL1又は電源線PL2との間の放電経路として機能し、半導体装置21を保護する。半導体装置21は、電源線PL1及びPL2、並びに信号線SLに接続される。半導体装置21は、半導体システム1aが有する種々の動作を実行する。半導体装置21は、例えば無線通信に関する高周波信号を増幅する。半導体装置21は、例えば信号線SLを介して伝送された信号によって制御される。
【0124】
[3-1-2]半導体装置12の回路構成
図12は、第3実施形態に係る半導体装置12の回路構成の一例を示す回路図である。
図12に示すように、第3実施形態に係る半導体装置12は、第2実施形態に係る半導体装置11に、ダイオードDI31及びDI32が追加された構成を有する。
【0125】
ダイオードDI31及びDI32は、PN接合ダイオードである。ダイオードDI21及びDI32の順方向電圧は、例えば0.7Vである。
【0126】
ダイオードDI31のアノードは、信号線SLに接続される。ダイオードDI31のカソードは、電源線PL1に接続される。
【0127】
ダイオードDI32のアノードは、電源線PL2に接続される。ダイオードDI32のカソードは、信号線SLに接続される。
【0128】
ダイオードDI31及びDI32の構造は、ダイオードDI11、DI12、及びDI21と同様である。ダイオードDI31のPN接合の面積と、ダイオードDI32のPN接合の面積とは、略等しい。ダイオードDI31及びDI32それぞれのPN接合の面積は、ダイオードDI11のPN接合の面積及びダイオードDI12のPN接合の面積のいずれよりも大きい。
【0129】
第3実施形態に係る半導体装置12のその他の構成は、第2実施形態に係る半導体装置11と同様である。
【0130】
[3-2]動作
第3実施形態に係る半導体システム1aは、端子T3にESDが印加された際の動作が、第2実施形態に係る半導体システム1と異なる。端子T1及びT2にESDが印加された場合の動作は、第2実施形態に係る半導体システム1と同様である。以下に、第3実施形態に係る半導体システム1aの端子T3にESDが印加された場合について説明する。
【0131】
端子T3に正のESDが印加され、信号線SLの電圧が上昇した場合について説明する。信号線SLの電圧が、電源線PL1の電圧よりも、ダイオードDI31の順方向電圧以上高くなると、ダイオードDI31がオン状態になる。ダイオードDI31がオン状態になると、信号線SLからダイオードDI31を介して電源線PL1へ、正のESDで生じた電荷が放電される。電源線PL1にESDによる電流が流入した際の動作は、第1実施形態と同様である。
【0132】
端子T3に負のESDが印加され、信号線SLの電圧が低下した場合について説明する。信号線SLの電圧と電源線PL2の電圧との差がダイオードDI32の順方向電圧よりも大きくなるまで、信号線SLの電圧が低下すると、ダイオードDI32がオン状態となる。ダイオードDI32がオン状態となると、信号線SLから電源線PL2へ、負のESDで生じた電荷が放電される。
【0133】
このように、半導体システム1aに端子T3を介してESDが生じた際には、半導体装置12のダイオードDI31又はDI32がオン状態となり、ESDの放電経路として機能する。これにより、半導体システム1aに端子T3を介して正のESDが生じた際に、信号線SLの電圧が上昇することが抑制され、半導体システム1aに端子T3を介して負のESDが生じた際に、信号線SLの電圧が低下することが抑制される。ESDによって信号線SLの電圧が上昇すること及び低下することが抑制されることで、信号線SLに接続されたその他の回路、例えば半導体装置21は、ESDによる電圧の上昇又は低下から保護される。
【0134】
[3-3]効果
以上で説明した第3実施形態に係る半導体システム1aによれば、ESD耐性を向上させることができる。以下に、第3実施形態に係る半導体システム1aの詳細な効果について説明する。
【0135】
ESDは、例えば、半導体システムが備える端子及び端子に接続された配線に生じ得る。例えば、半導体システムが信号端子と信号端子に接続された配線とを備える場合、信号端子と信号端子に接続された配線とについても、ESD耐性を有することが好ましい。
【0136】
第3実施形態に係る半導体システム1aは、信号線SLに接続された半導体装置12を含む。半導体装置12は、信号線SLと電源線PL1との間に設けられたダイオードDI31と、信号線SLと電源線PL2との間に設けられたダイオードDI32とを含む。
【0137】
このように構成されることにより、第3実施形態に係る半導体システム1aは、信号線SLに正のESDが印加された場合に、ダイオードDI31を介して電源線PL1に放電することができる。電源線PL1にESDが印加された際の動作は、第1実施形態で説明した通りである。また、第3実施形態に係る半導体システム1aは、信号線SLに負のESDが印加された場合に、ダイオードDI32を介して電源線PL2に放電することができる。つまり、第3実施形態に係る半導体システム1aは、端子T3及び信号線SLにおいても、ESDによる電圧の上昇又は低下を抑制できる。
【0138】
[4]シミュレーションによる評価
上記説明した第1実施形態及び第2実施形態、並びに後述する第1比較例及び第2比較例について、半導体装置にESDが印加された際の電流及び電圧の時間変化をシミュレーションし、評価を行った。以下に、比較例の構成、シミュレーションの具体的な条件、シミュレーションの結果について、順に説明する。
【0139】
[4-1]比較例の構成
まず、比較例の構成について説明する。実施形態に対してインバータの構成が異なる第1比較例と、いわゆるRCTMOSとして知られている第2比較例とについて、順に説明する。
【0140】
(第1比較例の回路構成)
図13は、第1比較例に係る半導体装置13の回路構成の一例を示す回路図である。
図13に示すように、半導体装置13は、ダイオードDI111、DI112、及びDI121と、抵抗R11と、トランジスタPM11及びPM12と、トランジスタNM11、NM12、及びNM13と、を含む。
【0141】
第1比較例に係る半導体装置13の構成は、第2実施形態に係る半導体装置11の構成に対して、同様の部分と、異なる部分とに分けられる。具体的には、半導体装置13に含まれるダイオードDI111、DI112、及びDI121と、抵抗R11と、トランジスタNM13とは、半導体装置11に含まれるダイオードDI11、DI12、及びDI21と、抵抗R1と、トランジスタNM3とに、それぞれ対応している。また、半導体装置13はインバータINV11及びINV12を含む。これに対して、半導体装置11はインバータINV1及びINV2を含む点が異なる。
【0142】
ダイオードDI111、DI112、及びDI121は、PN接合ダイオードである。ダイオードDI111、DI112、及びDI121の順方向電圧は、例えば0.7Vである。トランジスタPM11及びPM12のそれぞれはP型のMOSFETであり、トランジスタNM11、NM12、及びNM13のそれぞれはN型のMOSFETである。
【0143】
ダイオードDI111及びDI112は、電源線PL1とノードN11との間に、アノード側が電源線PL1側となるように直列接続される。具体的には、ダイオードDI111のアノードは、電源線PL1に接続される。ダイオードDI111のカソードは、ダイオードDI112のアノードに接続される。ダイオードDI112のカソードは、ノードN11に接続される。
【0144】
ダイオードDI121のカソードは、電源線PL1に接続される。ダイオードDI121のアノードは、電源線PL2に接続される。
【0145】
抵抗R11の一端は、ノードN11に接続される。抵抗R11の他端は、電源線PL2に接続される。
【0146】
トランジスタPM11とトランジスタNM11との組は、インバータINV11を構成している。具体的には、トランジスタPM11のゲートは、ノードN11に接続される。トランジスタPM11のソースは、電源線PL1に接続される。トランジスタPM11のドレインは、ノードN12に接続される。トランジスタPM11のボディは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM11のゲートは、ノードN11に接続される。トランジスタNM11のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM11のドレインは、ノードN12に接続される。トランジスタNM11のボディは、電源線PL2に接続される。インバータINV11は、ノードN11の論理レベルを反転させて、ノードN12に出力する。
【0147】
トランジスタPM12とトランジスタNM12との組は、インバータINV12を構成している。具体的には、トランジスタPM12のゲートは、ノードN12に接続される。トランジスタPM12のソースは、電源線PL1に接続される。トランジスタPM12のドレインは、ノードN13に接続される。トランジスタPM12のボディは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM12のゲートは、ノードN12に接続される。トランジスタNM12のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM12のドレインは、ノードN13に接続される。トランジスタNM12のボディは、電源線PL2に接続される。インバータINV12は、ノードN12の論理レベルを反転させて、ノードN13に出力する。
【0148】
トランジスタNM13のゲートは、ノードN13に接続される。トランジスタNM13のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM13のドレインは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM13のボディは、電源線PL2に接続される。
【0149】
トランジスタNM11のサイズは、トランジスタPM11のサイズよりも小さい。トランジスタNM12のサイズは、トランジスタPM12のサイズよりも小さい。トランジスタPM11のサイズは、トランジスタPM12のサイズよりも小さい。トランジスタNM11のサイズは、トランジスタNM12のサイズよりも小さい。トランジスタNM12のサイズは、トランジスタNM13のサイズよりも小さい。
【0150】
ダイオードDI111、DI112、及びDI121それぞれの構造は、第1実施形態で説明したダイオードDI11の構造と同様である。ダイオードDI121のPN接合の面積は、ダイオードDI111のPN接合の面積及びダイオードDI112のPN接合の面積のいずれよりも大きい。
【0151】
(第2比較例の回路構成)
図14は、第2比較例に係る半導体装置14の回路構成の一例を示す回路図である。半導体装置14は、一般にRCTMOSと呼ばれる、ESD保護装置である。
図14に示すように、半導体装置14は、ダイオードDI221と、抵抗R21と、キャパシタC21と、トランジスタPM21、PM22、及びPM23と、トランジスタNM21、NM22、NM23、及びNM24と、を含む。
【0152】
第2比較例に係る半導体装置14の構成は、第2実施形態に係る半導体装置11の構成に対して、同様の部分と、異なる部分とに分けられる。具体的には、半導体装置14に含まれるダイオードDI221と、インバータINV22及びINV23と、トランジスタNM24とは、半導体装置11に含まれるダイオードDI21と、インバータINV1及びINV2と、トランジスタNM3とに、それぞれ対応している。また、半導体装置14は抵抗R21と、キャパシタC21と、インバータINV21とを含む。これに対して、半導体装置11はダイオードDI11及びDI12と、抵抗R1とを含む点が異なる。
【0153】
ダイオードDI221は、PN接合ダイオードである。ダイオードDI221の順方向電圧は、例えば0.7Vである。トランジスタPM21、PM22、及びPM23のそれぞれはP型のMOSFETであり、トランジスタNM21、NM22、NM23、及びNM24のそれぞれはN型のMOSFETである。
【0154】
ダイオードDI221のカソードは、電源線PL1に接続される。ダイオードDI221のアノードは、電源線PL2に接続される。
【0155】
抵抗R21の一端は、電源線PL1に接続される。抵抗R21の他端は、ノードN21に接続される。
【0156】
キャパシタC21の一方電極は、ノードN21に接続される。キャパシタC21の他方電極は、電源線PL2に接続される。
【0157】
トランジスタPM21とトランジスタNM21との組は、インバータINV21を構成している。具体的には、トランジスタPM21のゲートは、ノードN21に接続される。トランジスタPM21のソースは、電源線PL1に接続される。トランジスタPM21のドレインは、ノードN22に接続される。トランジスタPM21のボディは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM21のゲートは、ノードN21に接続される。トランジスタNM21のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM21のドレインは、ノードN22に接続される。トランジスタNM21のボディは、電源線PL2に接続される。インバータINV21は、ノードN21の論理レベルを反転させて、ノードN22に出力する。
【0158】
トランジスタPM22とトランジスタNM22との組は、インバータINV22を構成している。具体的には、トランジスタPM22のゲートは、ノードN22に接続される。トランジスタPM22のソースは、電源線PL1に接続される。トランジスタPM22のドレインは、ノードN23に接続される。トランジスタPM22のボディは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM22のゲートは、ノードN22に接続される。トランジスタNM22のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM22のドレインは、ノードN23に接続される。トランジスタNM22のボディは、電源線PL2に接続される。インバータINV22は、ノードN22の論理レベルを反転させて、ノードN23に出力する。
【0159】
トランジスタPM23とトランジスタNM23との組は、インバータINV23を構成している。具体的には、トランジスタPM23のゲートは、ノードN23に接続される。トランジスタPM23のソースは、電源線PL1に接続される。トランジスタPM23のドレインは、ノードN24に接続される。トランジスタPM23のボディは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM23のゲートは、ノードN23に接続される。トランジスタNM23のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM23のドレインは、ノードN24に接続される。トランジスタNM23のボディは、電源線PL2に接続される。インバータINV23は、ノードN23の論理レベルを反転させて、ノードN24に出力する。
【0160】
トランジスタNM24のゲートは、ノードN24に接続される。トランジスタNM24のソースは、電源線PL2に接続される。トランジスタNM24のドレインは、電源線PL1に接続される。トランジスタNM24のボディは、電源線PL2に接続される。
【0161】
トランジスタNM21のサイズは、トランジスタPM21のサイズよりも小さい。トランジスタPM22のサイズは、トランジスタNM22のサイズよりも小さい。トランジスタNM22のサイズは、トランジスタNM24のサイズよりも小さい。トランジスタNM23のサイズは、トランジスタPM23のサイズよりも小さい。トランジスタNM23のサイズは、トランジスタNM22のサイズよりも小さい。
【0162】
ダイオードDI221の構造は、第1実施形態で説明したダイオードDI11の構造と同様である。
【0163】
[4-2]シミュレーションの条件
次に、シミュレーションの具体的な条件について説明する。
【0164】
[4-2-1]各種パラメータの条件
シミュレーションを行う上で、各種パラメータを以下のように定めた。なお、本明細書では、マイクロ(μ)の記載に“u”を用いる。例えば、“um”はマイクロメートルであり、“us”はマイクロ秒である。
【0165】
(共通するパラメータ)
各トランジスタのゲート酸化膜の厚さ:5.5nm
各トランジスタのゲート長:0.25um
電源線PL1と電源線PL2との間の容量:10pF
放電経路として機能するトランジスタのゲート幅:2400um
なお、放電経路として機能するトランジスタは、実施形態と各比較例とにおいて参照符号が異なるため、以下にそれぞれ記載する。
【0166】
(第1実施形態)
トランジスタPM1のゲート幅:16um
トランジスタNM1のゲート幅:42um
トランジスタPM2のゲート幅:80um
トランジスタNM2のゲート幅:21um
トランジスタNM3のゲート幅:2400um
ダイオードDI11及びDI12それぞれのフローティングゲートの幅:10um
抵抗R1の抵抗値:1MΩ
なお、駆動部を構成するトランジスタのゲート幅の合計は、159umである。
【0167】
(第2実施形態)
ダイオードDI21のフローティングゲートの幅:500um
なお、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様のパラメータを用いた。
【0168】
(第1比較例)
トランジスタPM11のゲート幅:32um
トランジスタNM11のゲート幅:14um
トランジスタPM12のゲート幅:80um
トランジスタNM12のゲート幅:35um
トランジスタNM13のゲート幅:2400um
ダイオードDI111及びDI112それぞれのフローティングゲートの幅:10um
ダイオードDI121のフローティングゲートの幅:500um
抵抗R11の抵抗値:1MΩ
なお、インバータINV11及びINV12における、PMOSとNMOSのサイズ比は、16:7である。また、インバータINV12を構成するトランジスタのサイズは、インバータINV11を構成するトランジスタのサイズの2.5倍である。このように、第1比較例に含まれるインバータのパラメータは、各インバータにおいてPMOSトランジスタがNMOSトランジスタよりも大きく、2段目のインバータが1段目のインバータよりも大きい、一般的な構成となっている。
【0169】
また、駆動部を構成するトランジスタのゲート幅の合計は、161umである。つまり、シミュレーションにおいて、第1実施形態及び第2実施形態に含まれる駆動部のゲート幅の合計と、第1比較例に含まれる駆動部のゲート幅の合計とは、ほぼ等しい。
【0170】
(第2比較例)
トランジスタPM21のゲート幅:48um
トランジスタNM21のゲート幅:7um
トランジスタPM22のゲート幅:16um
トランジスタNM22のゲート幅:42um
トランジスタPM23のゲート幅:80um
トランジスタNM23のゲート幅:21um
トランジスタNM24のゲート幅:2400um
抵抗R21の抵抗値:227kΩ
キャパシタC21の容量:1pF
ダイオードDI221のフローティングゲートの幅:500um
なお、駆動部を構成するトランジスタのゲート幅の合計は、214umである。
【0171】
[4-2-2]ESD耐性を評価する条件
シミュレーションにおいて半導体装置のESD耐性を評価する条件について説明する。各半導体装置において、電源線PL2を接地し、電源線PL1にESDを印加した際の、電源線PL1の電圧の変化をシミュレーションした。電源線PL1に印加するESDのモデルは、HBM(Human body model)又はMM(Machine model)を用いた。また、HBMの場合は+2kV又は-2kV、MMの場合は+200V又は-200Vでシミュレーションを行った。以後、電源線PL1の電圧を電圧Vddと呼び、ESDを印加した際のピーク電圧をVdd_peakと呼ぶ。なお、ピーク電圧とは、ESDを印加した際に生じた電圧の中で、絶対値が最も大きくなった際の電圧である。
【0172】
[4-2-3]突入電流を評価する条件
シミュレーションにおいて、電源電圧を印加した際に各半導体装置において生じる突入電流を評価する条件について説明する。各半導体装置において、電源線PL2を接地し、電源線PL1の電圧が0Vの状態において、電源線PL1に、0Vから1.2Vへ1usの期間で線形に立ち上がる電源電圧を印加した際に、半導体装置に流入する突入電流の量をシミュレーションした。以後、電源線PL1に流入する電流を電流Iddと呼び、電源電圧を印加した際に生じる突入電流の最大値をIdd_peakと呼ぶ。電源電圧が0Vから1.2Vへ線形に立ち上がる時間を、Triseと呼ぶ。
【0173】
また、半導体装置に含まれる抵抗の抵抗値は、製造した際に設計値からばらつき得る。ポリシリコンを用いた抵抗の場合、抵抗値は例えば±10%程度ばらつき得る。この製造時のばらつきを考慮するために、半導体装置に含まれる抵抗の抵抗値を0.9倍又は1.1倍に変化させた場合についても、シミュレーションを行った。
【0174】
[4-3]シミュレーションの結果
シミュレーションの結果について、
図15乃至
図21を参照して説明する。
図15は、第1実施形態及び第2実施形態並びに第1比較例及び第2比較例に係る半導体装置のシミュレーション結果を示すテーブルである。
図15では、ESD耐性の評価結果と、突入電流の評価結果について、各条件におけるピーク値をまとめて示している。具体的には、ESD耐性については、HBMかつ+2kVの場合と、HBMかつ-2kVの場合と、MMかつ+200Vの場合と、MMかつ-200Vの場合とについて、各半導体装置それぞれにおけるVdd_peakを示している。Vdd_peakは、4桁目を四捨五入して、3桁にして示している。突入電流については、Triseが1us且つ抵抗値が変動していない場合について、各半導体装置それぞれにおけるIdd_peakを示している。
図16乃至
図21のそれぞれは、各条件におけるシミュレーション結果の一例を示す図である。以下に、
図15に示す値と、
図16乃至
図21に示す例とを適宜参照して、シミュレーション結果について説明する。
【0175】
(HBMかつ+2kVの場合におけるシミュレーション結果)
図15に示すように、HBMかつ+2kVの場合のVdd_peakは、第1実施形態が2.17V、第2実施形態が2.17V、第1比較例が2.96V、第2比較例が2.95Vとなった。このように、HBMかつ+2kVの条件において、第1及び第2実施形態は、第1及び第2比較例に対して、ピーク電圧が抑制されている。第2実施形態と第1比較例とのそれぞれにおけるシミュレーション結果の詳細について、
図16を参照して説明する。
【0176】
図16は、第2実施形態と第1比較例とのそれぞれでHBMかつ+2kVが印加された際の電圧波形のシミュレーション結果を示す図である。
図16の横軸は、時刻をログスケールで示している。
図16の縦軸は、電圧を示している。
図16において、第2実施形態の電圧波形は実線で示され、第1比較例の電圧波形は破線で示されている。第1比較例のVdd_peakは、カーソルm1に示すように、74.90nsecにおいて2.962Vとなっている。これに対して、第2実施形態のVdd_peakは2.17Vであり、第1比較例よりもピーク電圧が抑制されている。
【0177】
第1及び第2実施形態では、正のESDを検出した際にオン状態になるトランジスタが大きなサイズで設けられているため、シャントMOSを素早くオンさせることができ、ピーク電圧を抑制することができる。
【0178】
また、第1又は第2実施形態に含まれる駆動部のゲート幅の合計159umと、第1比較例に含まれる駆動部のゲート幅の合計161umとは、ほぼ等しい。また、第1又は第2実施形態に含まれる放電経路として機能するトランジスタのゲート幅と、第1比較例に含まれる放電経路として機能するトランジスタのゲート幅とは等しい。このように、第1及び第2実施形態に係る半導体装置は、第1比較例に対して半導体基板上に占める面積を増やすことなく、高いESD耐性を実現することができる。
【0179】
(HBMかつ-2kVの場合におけるシミュレーション結果)
図15に示すように、HBMかつ-2kVの場合のVdd_peakは、第1実施形態が-3.05V、第2実施形態が-1.67V、第1比較例が-1.68V、第2比較例が-2.07Vとなった。このように、HBMかつ-2kVの条件において、第2実施形態は、第1実施形態に対して、ピーク電圧が抑制されている。第1実施形態と第2実施形態とのシミュレーション結果の詳細について、
図17を参照して説明する。
【0180】
図17は、第1実施形態と第2実施形態とのそれぞれでHBMかつ-2kVが印加された際の電圧波形のシミュレーション結果を示す図である。
図17の横軸は、時刻をログスケールで示している。
図17の縦軸は、電圧を示している。
図17において、第2実施形態の電圧波形は実線で示され、第1実施形態の電圧波形は破線で示されている。第1実施形態のVdd_peakは、カーソルm2に示すように、4.034nsecにおいて-3.046Vとなっている。これに対して、第2実施形態のVdd_peakは-1.67Vであり、第1実施形態よりもピーク電圧が抑制されている。
【0181】
HBMかつ-2kVの条件では、第1電源線PL1の電圧は負の電圧となるため、第1電源線PL1と第2電源線PL2との間に接続されたダイオードが放電経路として機能する。第1実施形態では、トランジスタNM3に寄生しているダイオードDI0が、放電経路として機能するが、ダイオードDI0の寄生抵抗成分は大きい。これに対して、第2実施形態では、寄生抵抗成分の小さいダイオードDI21が、放電経路として機能する。このため、放電経路の寄生抵抗が抑制されている第2実施形態は、第1実施形態よりもピーク電圧を抑制することができる。
【0182】
(MMかつ+200Vの場合におけるシミュレーション結果)
図15に示すように、MMかつ+200Vの場合のVdd_peakは、第1実施形態が2.97V、第2実施形態が2.97V、第1比較例が3.14V、第2比較例が2.97Vとなった。このように、MMかつ+200Vの条件において、第1及び第2実施形態は、第1比較例に対して、ピーク電圧が抑制されている。第2実施形態と第1比較例とのシミュレーション結果の詳細について、
図18を参照して説明する。
【0183】
図18は、第2実施形態と第1比較例とのそれぞれでMMかつ+200Vが印加された際の電圧波形のシミュレーション結果を示す図である。
図18の横軸は、時刻を示している。
図18の縦軸は、電圧を示している。
図18において、第2実施形態の電圧波形は実線で示され、第1比較例の電圧波形は破線で示されている。第1比較例のVdd_peakは、カーソルm4に示すように、17.89nsecにおいて3.139Vである。これに対して、第2実施形態のVdd_peakは、2.97Vであり、抑制されている。また、第1比較例の負電圧の最大値は、カーソルm5に示すように、56.47nsecにおいて-1.857Vである。これに対して、第2実施形態の負電圧の最大値は、第1比較例の負電圧の最大値よりも抑制されている。
【0184】
ESDのモデルがMMの場合、ESDによって生じる電圧は、正負に変化する。ESDのモデルがMM+の場合、まず正のピークが生じ、その後に負のピークが生じる。HBMかつ+2kVの場合で説明したように、第2実施形態は第1比較例よりも、正のESDによるピーク電圧を抑制することができる。このため、MMかつ+200Vの場合であっても、第2実施形態はピーク電圧を抑制することができる。
【0185】
(MMかつ-200Vの場合におけるシミュレーション結果)
図15に示すように、MMかつ-200Vの場合のVdd_peakは、第1実施形態が-4.35V、第2実施形態が-2.18V、第1比較例が-2.23V、第2比較例が-2.07Vとなった。このように、MMかつ-200Vに対して、第2実施形態は、第1実施形態に対して、ピーク電圧が抑制されている。第1実施形態と第2実施形態とのシミュレーション結果の詳細について、
図19を参照して説明する。
【0186】
図19は、第1実施形態と第2実施形態とのそれぞれでMMかつ-200Vが印加された際の電圧波形のシミュレーション結果を示す図である。
図19の横軸は、時刻を示している。
図19の縦軸は、電圧を示している。
図19において、第2実施形態の電圧波形は実線で示され、第1実施形態の電圧波形は破線で示されている。第1実施形態のVdd_peakは、カーソルm3に示すように、13.83nsecにおいて-4.354Vである。これに対して、第2実施形態のVdd_peakは、-2.18Vであり、第1実施形態よりもピーク電圧が抑制されている。
【0187】
ESDのモデルがMM-の場合、まず負のピークが生じ、その後に正のピークが生じる。HBMかつ-2kVの場合で説明したように、第2実施形態は第1実施形態よりも、負のESDによるピーク電圧を抑制することができる。このため、MMかつ-200Vの場合であっても、第2実施形態はピーク電圧を抑制することができる。
【0188】
(突入電流について)
図15に示すように、Triseが1usの場合のIdd_peakは、第1実施形態が31uA、第2実施形態が31uA、第1比較例が28uA、第2比較例が724uAとなった。このように、第1及び第2実施形態並びに第1比較例は、第2比較例に対して、突入電流が抑制されている。第2実施形態と第2比較例とのシミュレーション結果の詳細について、
図20を参照して説明する。
【0189】
図20は、第2実施形態と第2比較例とのそれぞれで電源電圧が印加された際の電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
図20は、電流の波形を示す(a)と、電源電圧の波形を示す(b)とを含む。電流の波形を示す(a)の横軸は、時刻を示している。電流の波形を示す(a)の縦軸は、電流をログスケールで示している。電流の波形を示す(a)において、第2実施形態の電流波形は実線で示され、第2比較例の電流波形は破線で示されている。電源電圧の波形を示す(b)の横軸は、時刻を示している。電源電圧の波形を示す(b)の縦軸は、電圧を示している。電源電圧の波形を示す(b)において、電圧の波形は第2実施形態と第2比較例とで同様であり、実線で示している。電源電圧の波形を示す(b)に示すように、電源電圧は0Vから1.2Vまで、1usかけて上昇している(Trise=1us)。この電源電圧の上昇によって突入電流が生じるが、第2実施形態のIdd_peakは、第2比較例のIdd_peakよりも小さく抑制されている。
【0190】
第2比較例は、検出部にRC回路を用いている。RC回路は、RC時定数を活用して、電源電圧の上昇を検出している。しかし、検出部にRC回路を用いた場合、電源電圧が印加され0Vから電源電圧まで電圧が上昇した場合でも、電圧の上昇を検出し得る。このため、通常の電源電圧を印加した場合であっても、突入電流が大きくなり得る。
【0191】
これに対して、第2実施形態は、検出部にダイオードと抵抗とが直列接続された回路を用いている。第2実施形態では、ダイオードの順方向電圧を活用して、電源電圧の上昇を検出している。このため、ダイオードの順方向電圧に満たない電圧では、検出部は電圧の上昇を検出しない。これにより、第2実施形態は、通常の電源電圧を印加した場合に、突入電流が抑制される。なお、検出部が同様の構成を有する第1実施形態及び第1比較例についても同様である。
【0192】
(抵抗値の変動による影響について)
図21は、第2実施形態と第2比較例とのそれぞれで抵抗値が変動した際のシミュレーション結果を示すテーブルである。第2実施形態と第2比較例とのそれぞれにおいて、抵抗値を0.9倍又は1.1倍に変動させた場合と、変動が無い1倍の場合とのそれぞれについて、シミュレーションを行った。シミュレーションは、HBMかつ+2kVにおけるVdd_peakと、Trise=1usにおけるIdd_peakとについて行った。
図21は、これらのシミュレーション結果をまとめて示している。
【0193】
図21に示すように、HBMかつ+2kVの場合のVdd_peakは、第2実施形態において、抵抗変動比が0.9倍の場合に2.18V、抵抗変動比が1倍の場合に2.17V、抵抗変動比が1.1倍の場合に2.17Vとなった。HBMかつ+2kVの場合のVdd_peakは、第2比較例において、抵抗変動比が0.9倍の場合に3.34V、抵抗変動比が1倍の場合に2.95V、抵抗変動比が1.1倍の場合に2.59Vとなった。Trise=1usの場合のIdd_peakは、第2実施形態において、抵抗変動比が0.9倍の場合に30.8uA、抵抗変動比が1倍の場合に31.4uA、抵抗変動比が1.1倍の場合に31.9uAとなった。Trise=1usの場合のIdd_peakは、第2比較例において、抵抗変動比が0.9倍の場合に143uA、抵抗変動比が1倍の場合に724uA、抵抗変動比が1.1倍の場合に33127uAとなった。
【0194】
第2比較例は、抵抗値が変動すると、HBMかつ+2kVにおけるVdd_peakと、Trise=1usにおけるIdd_peakとのいずれも、大きく変動した。これは、ESDの検出に用いているRC時定数が、抵抗値の変動を受けて変化したためである。
【0195】
これに対して、第2実施形態は、抵抗値が変動しても、HBMかつ+2kVにおけるVdd_peakと、Trise=1usにおけるIdd_peakとのいずれも、変動が抑制されている。これは、ESDの検出に用いているダイオードの順方向電圧は、抵抗値が変動しても変化しないからである。つまり、第2実施形態は、第2比較例に対して、抵抗値の変動に対するロバスト性が高い。なお、検出部が同様の構成を有する第1実施形態及び第1比較例についても同様である。
【0196】
[5]その他変形例等
本明細書において、電圧が略等しいとは、トランジスタのオン抵抗、リーク電流、配線の抵抗成分等の影響による微少な電圧差があった場合でも、略等しいと見なすことを示している。
【0197】
半導体装置20の構成及び実行する動作は、実施形態に示した例に限定されない。例えば、半導体装置20は、アンテナから送信される高周波信号を増幅するための高周波電力増幅器でも良いし、アンテナで受信された微弱な高周波信号を増幅する高周波低雑音増幅器でも良いし、高周波信号の経路を切り替える高周波スイッチでも良い。
【0198】
実施形態では、検出部に2つのダイオード(ダイオードDI11及びDI12)が直列に接続されている場合を例に説明した。これは、1.2Vの電源電圧を例に説明したからである。直列接続されるダイオードの数は、電源電圧に応じて変更して良い。例えば、電源電圧が1.2Vを越える場合には、ダイオードの順方向電圧の合計が電源電圧よりも大きくなるように、ダイオードを3つ以上直列に接続する構成に変更することが望ましい。
【0199】
本明細書において“接続”は、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。また、“電気的に接続される”は、電気的に接続されたものと同様に動作することが可能であれば、絶縁体を介していても良い。また、明細書において“オン状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示し、例えばトランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。
【0200】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0201】
1,1a…半導体システム、10~14,20,21…半導体装置、101,101even,101odd…N型拡散領域、102,102a,102b…N型拡散領域、103…P型拡散領域、104,104a,104b…P型拡散領域、105…P型拡散領域、106…N型拡散領域、107…N型拡散領域、111…導電体、112…導電体、113…導電体、114…導電体、115…導電体、120…絶縁膜、200…支持基板、210…絶縁体層、220…半導体層、230…配線層、300…絶縁体、C21…キャパシタ、DI0,DI11,DI12,DI21,DI31,DI32,DI111,DI112,DI121,DI221…ダイオード、INV1,INV2,INV11,INV12,INV21~INV23…インバータ、NM1~NM3,NM11~NM13,NM21~NM24…トランジスタ、PL1,PL2…電源線、PM1,PM2,PM11,PM12,PM21~PM23…トランジスタ、R1,R11,R21…抵抗、T1~T3…端子、TD1,TD2…ESD試験装置。