(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ヒンジが修飾された抗体断片及び作製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20240105BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240105BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240105BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240105BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240105BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240105BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240105BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240105BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 111
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12N15/13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021120669
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2018521860の分割
【原出願日】2016-10-27
【審査請求日】2021-08-20
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モン, ユイ-チュイ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】キム, ホックスン
(72)【発明者】
【氏名】キム, イングリッド
(72)【発明者】
【氏名】シュピース, クリストフ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/102157(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/138449(WO,A1)
【文献】Brezski, Randall J. ET AL,The Journal of Immunology,2008年,Vol.181,pp. 3183-3192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗体断片を含む組成物であって、前記抗体断片は、残基K
222(EU付番)で終端する切断型ヒンジ領域を含む
IgG1アイソタイプのFabであ
り、
且つ前記抗体断片は、既存の抗ヒンジ抗体に対して低減された反応性を有するかまたは反応性を有しない、組成物。
【請求項2】
前記Fabは、CDKのアミノ酸配列を含むアミノ酸で終端する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Fabは、配列番号5及びその保存的修飾からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記単離された抗体断片は、FcγRIIIa、C1qまたはそれらの組み合わせへの低減された結合を示す、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の抗体断片をコードする単離された核酸を含む組成物。
【請求項6】
請求項
5に記載の組成物を含む宿主細胞。
【請求項7】
抗体断片が生産されるように請求項
6に記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体断片の生産方法。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的製剤。
【請求項9】
医薬品として使用するための請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
疾患の治療に使用するための請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
分子経路及び/または機構の阻害に使用するための請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
疾患の治療用の医薬の製造における請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
分子経路及び/または機構の阻害用の医薬の製造における請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
分子経路及び/または機構の活性化用の医薬の製造における請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
疾患を有する個体を治療するための医薬であって、有効量の請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物を含む、医薬。
【請求項16】
個体における分子経路及び/または機構を阻害するための医薬であって、分子経路及び/または機構を阻害するために有効量の請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物を含む、医薬。
【請求項17】
個体における分子経路及び/または機構を活性化するための医薬であって、分子経路及び/または機構を活性化するために有効量の請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物を含む、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年10月30日出願の米国仮特許出願第62/248,792号、及び2016年6月7日出願の米国仮特許出願第62/346,905号の優先権を主張するものであり、これらの各々の内容は、優先権が主張されるこれらの各々への参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2016年10月26日に作成された該ASCIIコピーは、00B206_0271_SL.txtという名称であり、26,185バイトのサイズである。
【0003】
本開示は、既存の抗ヒンジ抗体(AHA)に対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片(例えば、Fab及びF(ab’)2)、及びかかる抗体断片を含む組成物、ならびにかかる抗体断片及び組成物の作製方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
抗体は、可動性ヒンジ領域によってFcに接続されている2つのFab領域から構成される。Fabが抗原の認識及び結合を媒介する一方で、Fcの2つの重要な機能は、Fcγ受容体との結合によってエフェクター機能を媒介すること(1)、及びサルベージ受容体FcRnへの結合によって長期の血清半減期を付与すること(2)、である。特に、IgGの緩徐な薬物動態は、それが他のバイオ治療薬と比較して頻度の低い投薬を可能にするため、治療薬としての抗体の奏功に寄与する。結果として、大半の承認された治療用抗体は、完全長IgGフォーマットを有する。IgGとは異なり、単離されたFab断片の血清半減期は短く(3)、かかる特性は、FDAにより承認された3つのFab分子にあてはまるように、短い血漿半減期が所望される適応に必要とされる(4)。血小板表面受容体GPIIb/IIIaに対して指向される1つの治療用Fab分子(アブシキシマブ、REOPRO(登録商標))は、パパインによるタンパク質分解切断によって商業的に生産され(5)、これはFab生産の元来の方法である(6)。分子クローニングの前進に伴い、抗体断片の組換え発現は、Fab分子を生成するための魅力的な経路となっており、これらは第2の承認されたFab治療薬である抗VEGF(ラニビズマブ、Lucentis(登録商標))(7)及び最近承認されたダビガトランに対するFab(イダルシズマブ、Praxbind(登録商標))(33)により例示される。Fab分子は、例えば、投薬後に持続しない一過性の全身活性が所望される場合、または投与及び活性が眼などの末梢分画に限局される場合に、有利である。
【0005】
抗体ヒンジ領域に対する多くのプロテアーゼが、病原体及び腫瘍細胞が宿主の免疫応答を回避しようとする機構として関連付けられてきた(13)。結果として生じるC末端ネオエピトープは、しかしながら、やがては免疫系によって認識され、抗ヒンジ抗体(AHA)が生成される。Fabの上部ヒンジ領域及びF(ab’)2の下部ヒンジ領域へのかかる自己抗体が、いくつかの研究において示されてきた(17~21)。これらの既存のAHA価はドナー間で異なり(20)、それはかかるネオエピトープへの過去及び現在の曝露を表し得る。ある特定の例において、AHAは、代理Fcとして作用して、タンパク質分解により不活化された抗体のエフェクター機能を復元し得る(22)。FabまたはF(ab’)2分子を治療フォーマットとして使用することの1つの理論的根拠は、エフェクター機能を排除することであるため、エフェクター機能を既存のAHAによって回復させて、いかなる潜在的な安全性に関する懸念も危険にさらすことは望ましくないであろう。したがって、とりわけ、薬物治療後の免疫応答を最小限に抑えることによって治療場面においてより優れた安全性プロファイルを提供する可能性がある、ヒト血清中の既存のAHAとの低減された反応性を有するまたは反応性を有しない新規のFab及びF(ab’)2分子が当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、既存の抗ヒンジ抗体(AHA)に対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片(例えば、Fab及びF(ab’)2)、及びかかる抗体断片を含む組成物、ならびにかかる抗体断片及び組成物の作製方法及び使用方法に関する。
【0007】
ある特定の実施形態において、本開示は、単離された抗体断片及びそれを含む組成物を対象とし、この抗体断片は、既存の抗ヒンジ抗体に対して低減された反応性を有するかまたは反応性を有しない。ある特定の実施形態において、本開示の単離された抗体断片は、FcγRIIIa及び/またはC1qへの低減された結合を示す、かつ/または結合を示さない。ある特定の実施形態において、抗体断片は、Fab、Fab’またはF(ab’)2である。
【0008】
ある特定の実施形態において、本開示は、抗体断片及びそれを含む組成物を対象とし、この抗体断片は、Fabである。ある特定の実施形態において、本開示は、Fab分子を対象とし、このFabは、残基D221で終端する。ある特定の実施形態において、Fabは、CDKTHT(配列番号14)、CDKTHL(配列番号15)、CDKTH(配列番号16)、CDKT(配列番号17)、CDK及びCDからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアミノ酸で終端する。ある特定の実施形態において、Fabは、KYGPP(配列番号18)、KYGP(配列番号19)、KYG、KY及びKからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアミノ酸で終端する。ある特定の実施形態において、Fabは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及びその保存的修飾からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0009】
ある特定の実施形態において、本開示は、抗体断片及びそれを含む組成物を対象とし、この抗体断片は、F(ab’)2である。ある特定の実施形態において、本開示は、F(ab’)2分子を対象とし、このF(ab’)2は、C末端の1、2、3、4、または5つのアミノ酸の欠失を含む。本開示のある特定の実施形態において、F(ab’)2は、EU231位における欠失を含む。本開示のある特定の実施形態において、F(ab’)2は、EU231~232における欠失を含む。本開示のある特定の実施形態において、F(ab’)2は、EU231~233における欠失を含む。本開示のある特定の実施形態において、F(ab’)2は、EU231~234位における欠失を含む。ある特定の実施形態において、F(ab’)2は、EU230~234位における欠失を含む。
【0010】
ある特定の実施形態において、本開示は、単離された核酸及びそれを含む組成物を対象とし、この核酸は、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片をコードする。ある特定の実施形態において、本開示は、該核酸を含む宿主細胞を対象とする。ある特定の実施形態において、本開示は、抗体が生産されるように該宿主細胞を培養することを含む、抗体断片の生産方法を対象とする。ある特定の実施形態において、本開示は、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的製剤を対象とする。
【0011】
ある特定の実施形態において、本開示は、医薬品として使用するための、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片を対象とする。ある特定の実施形態において、本開示は、疾患の治療に使用するための、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片を対象とする。ある特定の実施形態において、本開示は、分子経路及び/または機構の阻害または活性化に使用するための、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片を対象とする。ある特定の実施形態において、本開示は、疾患の治療用の医薬品の製造における、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片の使用を対象とする。ある特定の実施形態において、本開示は、分子経路及び/または機構の阻害または活性化用の医薬品の製造における、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片の使用を対象とする。
【0012】
ある特定の実施形態において、本開示は、疾患を有する個体に、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない有効量の抗体断片を投与することを含む、個体の治療方法を対象とする。ある特定の実施形態において、本開示は、分子経路及び/または機構を阻害するまたは活性化するために、個体に、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない有効量の抗体断片を投与することを含む、個体における分子経路及び/または機構の阻害方法または活性化方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A~1Dは、既存のヒト抗体の、ヒトIgG1、IgG2及びIgG4のFabへの結合を示す。(1A)上部ヒンジを含むFab領域(PDB:1HZH)のX線結晶構造;軽鎖(101)、重鎖(102)、鎖間ジスルフィド(103)、及び上部ヒンジ(104)。単離されたFab分子において、上部ヒンジは、構造的及び機能的役割を有しない突出した非構造化(unstructured)領域である。上部ヒンジの残基は、既存のAHAへの結合を乱しているT225L突然変異(105)を示すようにマゼンタ色で表示される。残基の番号付けは、EU付番命名法に従う。
図1Aは、それぞれ出現順に配列番号14~15を開示する。(1B)プールされたヒト血清を、異なる上部ヒンジ長及び末端を有するヒトIgG1 Fabとともにインキュベートした。既存の結合抗体を抗Fc ELISAによって検出した。Fab C末端のD221(D)における切断及びC末端変異型T225L(DKTHL(配列番号20))は、既存の抗体の結合をほぼバックグラウンドにまで大幅に低減した。ヒト好中球エラスターゼの切断部位と一致する、C末端残基としてのT223(DKT)に対して強力な応答が観察された。個々のデータ点の平均値は、水平線によって表される。
図1Bは、それぞれ出現順に配列番号20~21及び27を開示する。(1C)3つの異なるFabをプールされたヒト血清とともにインキュベートし、既存の抗体の結合をELISAによって検出した。DKTHT(配列番号21)C末端を有する異なるFabについて著しいシグナルが観察された。既存の抗体のD
221及びT
225L C末端への低減された結合が、異なるFabにわたって検出された。Fab-1は、(B)及び実施例1全体を通してすべての他のAHA結合実験において使用された抗体可変ドメインを含む。
図1Cは、それぞれ出現順に配列番号21、20、21、20、21及び20を開示する。(1D)プールされたヒト血清を、異なる上部ヒンジ長を有するヒトIgG2 Fab及びIgG4 Fabとともにインキュベートし、結合抗体をELISAによって検出した。ヒトIgG2及びIgG4の上部ヒンジへの既存の抗体は何ら検出可能でない。
図1Dは、配列番号18を開示する。
【
図2】
図2A~2Cは、IdeSによるIgG1-2キメラの切断を示す。(2A)MOEでモデリングした抗体cAC10のF(ab’)
2領域のモデル;軽鎖(201)、重鎖(202)、鎖間ジスルフィド(203)、及び下部ヒンジ(204)。IdeSのP1位は、G236である。残基の番号付けは、EU付番命名法に従う。
図2Aは、配列番号30を開示する。(2B)IgG1及びIgG1-2キメラの下部ヒンジのアライメント。シアン色の残基は、IgG2の下部ヒンジに導入されたIgG2アイソタイプ残基である。
図2Bは、それぞれ出現順に配列番号31及び59を開示する。(2C)ヒトIgG1及びIgG1-2キメラの切断効率。1mg/mlのIgG1及びIgG1-2を、表示される異なるIdeS量とともに37℃で24時間インキュベートした。切断をキャピラリー電気泳動法によって分析した。IgG1が1:500のIdeS:IgG比でF(ab’)
2へと効率的に切断された一方で、IgG1-2は、完全な切断のために50倍高いIdeS濃度を必要とする。
【
図3A-B】
図3A~3Eは、P1及びP2位において変異型を有するヒトIgG1のIdeSによる切断を示す。(3A)P1及びP2位に変異型を有する抗体のキャピラリー電気泳動を、1mg/mlで1:10比のIdeS:IgGにより37℃で24時間消化させた。P1及びP2残基は、1文字コードで表記される。ロイシン及びグリシン(L235G236)は、これらの位置における天然アミノ酸である。すべての抗体変異型は、F(ab’)
2断片へと完全に切断することができる。(3B)変異型の切断効率を、異なるIdeS:IgG比で生産されたF(ab’)
2の量によって評価した。変異型VGが野生型配列(LG)と同等に切断される一方で、他の変異型は、完全な消化のために増加した量のIdeSを必要とする。
【
図3C】(3C)変異型の切断効率を、1:10のIdeS:IgG比で生産されたF(ab’)
2の量によって評価した。
【
図3D】(3D)ヒトIgG1変異型に対する発現、精製及びスクリーニング戦略の概略図。
図3Dは、それぞれ出現順に配列番号31~34を開示する。
【
図3E】(3E)76個のヒトIgG1変異型のIdeSによる切断効率。
図3Eは、配列番号31を開示する。
【
図4】
図4A~4Bは、既存のAHAに対するP1及びP2変異型の反応性を示す。(4A)IdeSは、精製中に効率的に除去され、精製F(ab’)
2変異型において、SDS-PAGE、続いてクマシー染色(上部パネル)または抗IdeS抗体での免疫ブロット分析(下部パネル)によって検出不可能である。(4B)プールされたヒト血清を、T225 C末端を有するヒトIgG1 Fab、ならびにP1及びP2位において変異型を有する抗体のIdeS切断によって生成されたF(ab’)
2とともにインキュベートした。既存の結合抗体をELISAによって検出した。F(ab’)
2は、Fabと比較して約1.7倍高いシグナルを示した。ヒンジ変異型は、反応性をFabと同等のレベルまで低減したが、反応性を完全には排除しなかった。
【
図5A-C】
図5A~5Fは、既存のAHA応答に対する切断された変異型の反応性を示す。(5A)IdeS P3、P4、及びP5部位において欠失を有する抗体のIdeS切断下部ヒンジにおけるIdeS P3残基(L234)の欠失が、切断効率に重大な影響を及ぼした一方で、P4(E233)またはP5(P232)位の欠失は、野生型(WT)と比較してIdeSでの切断に影響を及ぼさなかった。(5B)P4及びP5位の欠失は、既存のAHAの結合を回避するには十分でなかった。(5C)IdeS P4~P6(ΔP456)及びP4~P7(ΔP4567)部位の欠失を有する抗体のIdeS切断。1:200のIdeS:IgG比で、ΔP4567変異型の切断効率が、野生型下部ヒンジ配列(WT)と比較して若干低減された一方で、ΔP456は、野生型と同等の切断効率を示した。
【
図5D-E】(5D)プールされたヒト血清を、IdeS消化によって生産されたF(ab’)
2とともにインキュベートし、結合抗体をELISAによって検出した。下部ヒンジ欠失ΔP456及びΔP4567は、既存のAHAによって認識されなかった。(5E)IdeSは、ΔP456ヒンジ変異型を高い特異性で切断した。野生型(WT)及びΔP456ヒンジIgGの消化後、還元されたF(ab’)
2を質量分析によって分析した。予想された分子量に対応する単一重鎖種のみが観察された。
【
図5F】(5F)下部ヒンジ領域において生成された欠失を図示する概略図。
図5Fは、それぞれ出現順に配列番号35、31、36~40、31、及び41~42を開示する。
【
図6】
図6A~6Bは、ヒト、カニクイザル及びアカゲザルのIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4アイソタイプの上部、コア及び下部ヒンジ領域における、アミノ酸残基のアライメント(6A)及びアミノ酸残基のEU付番(6B)を示す。
図6Aは、それぞれ出現順に配列番号43~54を開示する。
図6Bは、それぞれ出現順に配列番号43、46、55及び52を開示する。
【
図7】E.coliにおける上部ヒンジ切断または突然変異を有するFabの発現レベルを示す。図は、それぞれ出現順に配列番号14~15を開示する。
【
図8】1:500または1:10のIdeS:IgG比で生産されたΔP456及びΔP4567変異型の切断の効率を示す。図は、それぞれ出現順に配列番号56~58を開示する。
【
図9A】
図9A~9Dは、修飾P1及びP2残基を有する欠失変異型の、既存のAHAとの反応性を示す。(9A)変異型の切断効率を、1:10のIdeS:IgG比で生産されたF(ab’)
2の量によって評価した。
図9Aは、配列番号31を開示する。
【
図9B】(9B)変異型の切断効率を、1:100のIdeS:IgG比で生産されたF(ab’)
2の量によって評価した。
図9Bは、配列番号31を開示する。
【
図9C】(9C)変異型の切断効率を、1:500のIdeS:IgG比で生産されたF(ab’)
2の量によって評価した。
図9Cは、配列番号31を開示する。
【
図9D】(9D)変異型に結合した既存のAHAの、抗Fc ELISAによる検出。
図9Dは、配列番号56を開示する。
【
図10A】
図10A~10Bは、修飾P1及びP2残基を有するΔP456及びΔP4567変異型の、既存のAHAへの反応性を示す。(10A)変異型の切断効率を、1:10及び1:200のIdeS:IgG比で生産されたF(ab’)
2の量によって評価した。
図10Aは、それぞれ出現順に配列番号56~57を開示する。
【
図10B】(10B)変異型に結合した既存のAHAの、抗Fc ELISAによる検出。
図10Bは、配列番号56を開示する。
【
図11】AHA ELISAにおけるF(ab’)
2及びFab分子の力価曲線を示す。F(ab’)
2力価曲線の中央におけるOD 450nm(1.15)に対応する希釈率は、F(ab’)
2及びFabについてそれぞれ70及び14であった。ゆえに、F(ab’)
2は、IgG1 Fabよりも5倍高いAHA反応性を有する。F(ab’)
2、F(ab’)
2ΔP456、Fab T
225、Fab T
225L及びFab D
221をウェルにコーティングした。プールされたヒト血清の段階希釈をウェルに添加し、対照ウェルは未コーティングとした。同様の結果が4つの他の実験において得られた。この図ならびに
図1B及び
図5Dに示されるデータは、同じ実験から収集された。図は、それぞれ出現順に配列番号21及び20を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.定義
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むがこれらに限定されない、種々の抗体構造を包含する。
【0015】
「抗体断片」とは、無傷抗体が結合する抗原と結合する無傷抗体の一部を含む、無傷抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;1本鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、抗体断片は、Fab分子である。ある特定の実施形態において、抗体断片は、F(ab’)2分子である。
【0016】
「完全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書で、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指して交換可能に使用される。
【0017】
「天然抗体」とは、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン(variable heavy domain)または重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン(variable light domain)または軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの型うちの1つに割り当てられ得る。
【0018】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義して使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域を含む。本明細書で別途明記されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれるEU付番系に従う。
【0019】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含有する(例えば、Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照されたい)。FcRsは、例えば、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説される。今後特定されるものも含む他のFcRが、本明細書における「FcR」という用語に包含される。
【0020】
「Fc受容体」または「FcR」という用語はまた、母体IgGの胎児への移行(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))、ならびに免疫グロブリンの恒常性の調節に関与する、新生児受容体FcRnも含む。FcRnへの結合の測定方法は既知である(例えば、Ghetie and Ward.,Immunol.Today 18(12):592-598(1997)、Ghetie et al.,Nature Biotechnology,15(7):637-640(1997)、Hinton et al.,J.Biol.Chem.279(8):6213-6216(2004)、WO2004/92219(Hinton et al.)を参照されたい。
【0021】
インビボでのヒトFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトヒト細胞株で、または変異型Fc領域を有するポリペプチドが投与された霊長類で、アッセイすることができる。WO2000/042072(Presta)は、FcRへの結合が改善また低減された抗体変異型について記載している。例えば、Shields et al.J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。
【0022】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより異なる、抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害活性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害活性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0023】
「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1の216~238(EU付番)または226~251(Kabat付番)の区間として定義される。ヒンジは、3つの明確に異なる領域、すなわち上部、中部(例えば、コア)及び下部ヒンジにさらに分類され得る。例えば、Brezski and Georgiou,Curr.Opin.Immunol.40,62-69(2016)を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、一般に、次のように定義される。
【0024】
上部ヒンジは、配列EPKSCDKTHT(配列番号22)を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態において、上部ヒンジは、216~225位(EU付番)または226~238位(Kabat付番)のアミノ酸を含む。
【0025】
中部(例えば、コア)ヒンジは、配列CPPC(配列番号23)を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態において、コアヒンジは、226~229位(EU付番)または239~242位(Kabat付番)のアミノ酸を含む。
【0026】
下部ヒンジは、配列PAPELLGGP(配列番号24)を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態において、下部ヒンジは、230~238位(EU付番)または243~251位(Kabat付番)のアミノ酸を含む。
【0027】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。5つの主要なクラスの抗体、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0028】
「単離された」抗体または抗体断片とは、その天然環境の構成成分から分離された抗体である。抗体または抗体断片は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定される、95%または99%超の純度に精製され得る。抗体純度の評価のための方法の概説に関しては、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0029】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、いずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、最大配列同一性パーセントを達成するために配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的での整列は、当該技術分野の技術範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)においてユーザ文書とともに申請されており、これは、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードから編集され得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用する場合は編集すべきである。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変更はない。
【0030】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される。
100×分数X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によってそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解される。別途具体的に示されない限り、本明細書で使用されるすべてのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0031】
「単離された」核酸とは、その天然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常は核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子が染色体外に、またはその天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0032】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびにそれが導入された宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動的に連結されている核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0033】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は交換可能に使用され、外因性核酸が中に導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一であり得るか、または突然変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する突然変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0034】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
【0035】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中に実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片は、疾患の発症を遅延させるために、または疾患の進行を減速させるために使用される。
【0036】
薬剤、例えば、本明細書に記載される抗体断片、または薬剤を含む薬学的製剤の「有効量」とは、必要な投与量で必要な期間にわたって所望の治療または予防結果を達成するのに有効な量を指す。
【0037】
「添付文書」という用語は、かかる治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含有する、治療剤製品の市販パッケージに通例含まれる指示書を指して使用される。
【0038】
「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
【0039】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される「細胞傷害性薬剤」という用語は、細胞機能を阻害もしくは阻止する、かつ/または細胞死もしくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性薬剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);化学療法剤もしくは化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びそれらの断片;抗生物質;細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片及び/または変異型を含む)などの毒素;ならびに下に記載される種々の抗腫瘍または抗癌薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「約」または「およそ」という用語は、通常の当業者によって決定される、特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、それは、その値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定系の限度に部分的に依存するであろう。例えば、「約」は、当該技術分野における実施につき、3以内のまたは3を超える標準偏差を意味することができる。代替的に、「約」は、所与の値の最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%、さらにより好ましくは最大1%の範囲を意味することができる。代替的に、特に生体系またはプロセスに関して、この用語は、値の一桁以内、好ましくは5倍以内、及びより好ましくは2倍以内であることを意味することができる。
【0042】
II.組成物及び方法
ある特定の実施形態において、本開示は、部分的に、既存の抗ヒンジ抗体(AHA)を回避するように抗体断片を操作する方法に基づく。ある特定の実施形態において、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない抗体断片(例えば、Fab及びF(ab’)2)、及びこれらの抗体断片を作製する方法が提供される。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片は、薬物治療後の免疫応答を最小限に抑えることによって治療場面においてより優れた安全性を提供し得る。
【0043】
A.例となる抗体断片
ある特定の実施形態において、本開示は、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない、抗体断片(例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2)、及びそれを含む組成物を提供する。例えば、限定するものではないが、本明細書に記載される抗体断片は、参照抗体断片、例えば、天然ヒンジ領域を有する抗体断片と比べて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%低減されるAHA反応性を示す。ある特定の実施形態において、参照抗体断片は、天然ヒンジ領域を有するIgG1抗体断片である。
【0044】
ある特定の実施形態において、本開示の単離された抗体断片、及びそれを含む組成物は、FcγRIIIa及び/またはC1qへの低減された結合を示す、かつ/または結合を示さない。例えば、限定することなく、本開示の抗体断片は、参照抗体断片、例えば、天然ヒンジ領域を有する抗体断片と比べて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%低減される、FcγRIIIa及び/またはC1qへの結合を示す。ある特定の実施形態において、参照抗体断片は、天然ヒンジ領域を有するIgG1抗体断片である。
【0045】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される方法の関連において用いられる抗体断片は、天然ヒンジ領域または修飾ヒンジ領域を含む。例えば、限定することなく、本開示の抗体断片は、天然ヒンジ領域または修飾ヒンジ領域を含むFab断片であり得る。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片は、天然ヒンジ領域または修飾ヒンジ領域を含むF(ab’)2である。
【0046】
天然ヒンジ領域は、通常は抗体分子のCH1ドメインと会合したヒンジ領域である。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される抗体断片の天然ヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプのものであり得る。例えば、限定することなく、Fab断片は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプのものであり得る。ある特定の実施形態において、抗体断片、例えば、Fab断片は、天然ヒンジ領域を含むIgG2アイソタイプのものである。ある特定の実施形態において、抗体断片、例えば、Fab断片は、天然ヒンジ領域を含むIgG4アイソタイプのものである。
【0047】
修飾ヒンジ領域は、長さ及び/または組成が天然ヒンジ領域とは異なる任意のヒンジである。かかるヒンジは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ハムスター、ラクダ、ラマまたはヤギのヒンジ領域などの、他の種由来のヒンジ領域を含み得る。他の修飾ヒンジ領域は、CH1ドメインのそれとは異なるクラスまたはサブクラスの抗体に由来する完全なヒンジ領域を含み得る。ゆえに、例えば、クラスγ1のCH1ドメインがクラスγ4のヒンジ領域に結合され得る。代替的に、修飾ヒンジ領域は、天然ヒンジ、または反復における各単位が天然ヒンジ領域に由来する反復単位を一部含み得る。
【0048】
ある特定の実施形態において、天然ヒンジ領域は、修飾ヒンジ領域を生成するように1つ以上のアミノ酸残基を置換する、欠失させる及び/または付加することによって改変される。ある特定の実施形態において、Fab断片は、修飾ヒンジ領域を含むIgG1アイソタイプのものである。ある特定の実施形態において、Fab断片は、修飾ヒンジ領域を含むIgG2アイソタイプのものである。ある特定の実施形態において、Fab断片は、修飾ヒンジ領域を含むIgG4アイソタイプのものである。
【0049】
ある特定の実施形態において、修飾ヒンジ領域は、上部ヒンジ領域内の1つ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/または付加を含む。例えば、限定することなく、開示される発明の主題の修飾ヒンジ領域は、アミノ酸EU216~225位において1つ以上の置換、欠失及び/または付加を有し得る。代替的にまたは追加的に、修飾ヒンジ領域は、下部ヒンジ領域内の1つ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/または付加を含む。ある特定の実施形態において、開示される発明の主題の修飾ヒンジ領域は、アミノ酸EU230~238位において1つ以上の置換、欠失及び/または付加を有し得る。代替的にまたは追加的に、修飾ヒンジ領域は、アミノ酸EU238位よりもC末端側に1つ以上のアミノ酸の付加を含み得る。ある特定の実施形態において、修飾ヒンジ領域は、中部、例えばコアのヒンジ領域内の1つ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/または付加を含む。例えば、限定することなく、開示される発明の主題の修飾ヒンジ領域は、アミノ酸EU226~229位において1つ以上の置換、欠失及び/または付加を有し得る。
【0050】
ある特定の実施形態において、修飾または改変は、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上のアミノ酸残基の置換である。ある特定の実施形態において、置換は、上部ヒンジ領域、中部ヒンジ領域及び/または下部ヒンジ領域内で生成され得る。ある特定の実施形態において、225位のアミノ酸残基が置換され得る。例えば、限定することなく、225位のアミノ酸残基が、スレオニン(T)を除く任意のアミノ酸に変更され得る。ある特定の実施形態において、225位のアミノ酸、例えば、スレオニンは、ロイシン(L)に変更され得る(例えば、EU付番に従ってT225L)。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片は、置換T225Lを含むFab断片である。
【0051】
ある特定の実施形態において、IgG1抗体断片の上部ヒンジ領域は、IgG2及び/またはIgG4抗体の上部ヒンジ領域内に存在する1つ以上のアミノ酸残基で置換され得、これは、例えば、IgG2及びIgG4抗体の上部ヒンジ領域がAHAに対して低減された反応性を示すか、または反応性を示さないためである(例えば、
図1を参照されたい)。例えば、限定することなく、IgG1抗体断片の上部ヒンジ領域は、IgG2及び/またはIgG4抗体の天然ヒンジ領域内に存在する1つ以上のアミノ酸残基で置換され得る(
図6を参照されたい)。ある特定の実施形態において、IgG1抗体断片の修飾ヒンジ領域は、(例えば、IgG1抗体の天然ヒンジ領域と比較して)アミノ酸EU220位のシステインを保持する。ある特定の実施形態において、IgG1抗体断片の修飾ヒンジ領域は、例えば、IgG1抗体断片の上部ヒンジ領域がIgG4の上部ヒンジ領域(例えば、上部ヒンジ領域全体)と置き換えられているIgG抗体断片において、アミノ酸EU220位のシステインを保持しない。ある特定の実施形態において、IgG1抗体断片の上部ヒンジ領域は、IgG2、IgG3及び/またはIgG4抗体の上部ヒンジ領域内に存在する1つ以上のアミノ酸残基で置換され得、ここでIgG1抗体の131位のアミノ酸残基が、セリン(S)からシステイン(C)に変更される(すなわち、S131C)。
【0052】
ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片、例えば、Fab、F(ab’)2またはFab’は、アミノ酸EU235~236位において置換を含み得る。例えば、限定することなく、236位のアミノ酸、例えば、グリシン(G)が、アラニン(A)に変更され得る(例えば、G236A)。ある特定の実施形態において、抗体断片、例えば、F(ab’)2は、EU付番に従って235位における置換を含み得る。ある特定の実施形態において、235位のアミノ酸、例えば、ロイシン(L)が、バリン(V)に変更(例えば、L235V)、イソロイシン(I)に変更(例えば、L235I)、またはメチオニン(M)に変更(例えば、L235M)され得る。
【0053】
ある特定の実施形態において、修飾または改変は、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上のアミノ酸残基の欠失である。ある特定の実施形態において、1つ以上の欠失は、上部ヒンジ領域、中部ヒンジ領域及び/または下部ヒンジ領域内で生成され得る。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片、例えば、Fab、F(ab’)2またはFab’は、EU230~238位における1つ以上のアミノ酸の1つ以上の欠失を有する修飾ヒンジ領域を含む。ある特定の実施形態において、抗体断片は、EU231位における欠失を含む。ある特定の実施形態において、抗体断片は、EU231及びEU232における欠失を含む。ある特定の実施形態において、抗体断片は、EU231、EU232及びEU233における欠失を含む。ある特定の実施形態において、抗体断片は、EU231、EU232、EU233及びEU234における欠失を含む。ある特定の実施形態において、抗体断片は、EU230、EU231、EU232、EU233及びEU234における欠失を含む。
【0054】
ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片は、C末端の1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上のアミノ酸の欠失を含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体断片は、例えば、C末端切断を生成するような、上部ヒンジ領域における1つ以上のアミノ酸の欠失を含む。ある特定の実施形態において、C末端切断を得るために、EU222~225における1つ以上のアミノ酸が欠失され得る。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体断片、例えば、Fab断片は、C末端切断を含む。例えば、限定することなく、本明細書に記載される抗体断片、例えば、Fab断片のC末端は、アミノ酸残基D221(EU付番に従う)で終端する。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体断片、例えば、Fab断片のC末端は、アミノ酸残基K222(EU付番に従う)で終端する。
【0055】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される、抗体断片、例えば、Fab断片の重鎖のC末端は、CDKTHT(配列番号14)、CDKTHL(配列番号15)、CDKTH(配列番号16)、CDKT(配列番号17)、CDK及びCDから選択される配列を有するアミノ酸で終端する。ある特定の実施形態において、Fab断片の重鎖のC末端は、アミノ酸配列CDKTHX(配列番号25)において終端し、ここでXは、Tを除く任意のアミノ酸である。ある特定の実施形態において、Fab断片は、表1に開示されるように「CDKTHT」、(配列番号14)「CDKTHL」、(配列番号15)「CDKTH」、(配列番号16)「CDKT」、(配列番号17)「CDK」または「CD」から選択される重鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される発明の主題は、配列番号1、2、3、4、5または6に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、抗体断片、例えば、Fab断片を提供する。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片は、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0056】
ある特定の実施形態において、C末端における切断及び/または突然変異の代替手段として、既存のAHA応答を回避するために、IgG2またはIgG4 Fab断片が使用され得る。例えば、限定することなく、本開示の抗体断片は、配列番号7または8におけるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含み得る。ある特定の実施形態において、IgG2またはIgG4 Fab断片は、C末端の1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上または5つ以上のアミノ酸の欠失を含み得る。ある特定の実施形態において、本開示のFabは、配列VERK(配列番号26)で終了する重鎖定常領域を含むIgG2 Fab断片である。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される、抗体断片、例えば、IgG4 Fab断片の重鎖のC末端は、KYGPP(配列番号18)、KYGP(配列番号19)、KYG、KY及びKから選択される配列を有するアミノ酸で終端する。ある特定の実施形態において、本開示のFabは、表1に開示されるように、「KYGPP」、(配列番号18)「KYGP」、(配列番号19)「KYG」、「KY」及び「K」から選択される重鎖定常領域を含むIgG4 Fab断片である。例えば、限定することなく、本開示の抗体断片は、配列番号9、10、11、12または13に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含み得る。
表1-Fab重鎖配列
【0057】
本開示は、本明細書に記載される配列の保存的修飾を含む抗体断片をさらに提供する。例えば、限定することなく、本開示は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13に記載されるアミノ酸配列またはその保存的修飾を含む重鎖定常領域を含む、抗体断片を提供し、この抗体断片は、本明細書に記載される抗体断片の所望の特性を保持する。例えば、限定することなく、かかる抗体断片は、上記に開示されるように、AHAに対して低減された反応性を有するまたは反応性を有しない。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「保存的配列修飾」という用語は、そのアミノ酸配列を含有する抗体断片の特性に大きな影響を及ぼさないアミノ酸修飾を指すことを意図する。かかる保存的修飾には、アミノ酸置換、付加及び欠失が含まれる。修飾は、部位特異的突然変異誘発及びPCR介在性突然変異誘発などの当該技術分野で既知の標準技法によって、本開示の抗体断片に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられる置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。例となる保存的アミノ酸置換が表2に示される。
【0059】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される配列は、最大約1、最大約2、最大約3、最大約4、最大約5、最大約6、最大約7、最大約8、最大約9または最大約10個のアミノ酸残基が修飾及び/または置換され得る。
【0060】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従って下記のように群分けされ得る。
【0061】
ある特定の実施形態において、非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴い得る。
表2
【0062】
本開示の他の修飾ヒンジ領域は、全体的に合成であり得、長さ、組成及び可動性などの所望の特性を保有するように設計することができる。例えば、限定することなく、本開示の修飾ヒンジ領域は、ヒンジ領域の可動性を増加させるまたは減少させるように改変することができる。例えば、限定することなく、ヒンジ領域の可動性を増加させ得る修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の、可動性を増加させる1つ以上のアミノ酸残基(例えば、グリシン)での置換が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、ヒンジ領域の可動性を減少させ得る修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の、ポリペプチドの剛性に折り目をつける(crease)1つ以上のアミノ酸残基(例えば、プロリン)での置換が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
B.抗体断片の作製方法
ある特定の実施形態において、抗体断片は、ヒンジ操作技術によって作製される。
【0064】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される方法に関連して使用するための抗体断片出発材料は、任意の好適な酵素的切断及び/または消化技法を用いて、任意の全抗体(例えば、全モノクローナル抗体)から得ることができる。ある特定の実施形態において、抗体断片は、IdeSでの切断によって得ることができる。
【0065】
ある特定の実施形態において、Fab分子は、タンパク質分解消化または組換え発現によって生成される。タンパク質分解消化は、Fab生産の元来の方法であった(6)。タンパク質分解消化を介したFab分子の生成は、プロテアーゼ切断部位によって規定されるFab重鎖のC末端配列をもたらす。転じて、Fab分子は典型的に、抗体の上部ヒンジの一部分を含む。抗体のこの上部ヒンジ領域は、FabとFc領域との間のリンカーとしての役目を果たすが、Fab分子において何の構造的または機能的役割も有しない。それは、しばしばFab分子の結晶構造に完全には分解されないため、非構造化付属部とみなされ得る(
図1Aを参照されたい)。血小板表面受容体GPIIb/IIIaに対して指向される1つの治療用Fab分子(アブシキシマブ、REOPRO(登録商標))は、パパインによるタンパク質分解切断によって商業的に生産される。
【0066】
分子クローニングの前進に伴い、抗体断片の組換え発現は、Fab分子を生成するための魅力的な経路である(7)。生産経路としてのタンパク質分解消化とは対照的に、Fab分子の組換え発現は、組み込まれる上部ヒンジ領域の長さを定める際に柔軟性を提供する。ある特定の実施形態において、Fab断片は、組換え発現によって生産される。
【0067】
抗体の高い親和性はしばしば、結合活性を促進する二価標的結合によって可能になる。対照的に、Fabの標的結合は、一価性である。これはしばしば、完全長IgGと比較してより低い標的親和性につながる。2つのFab断片をつなげてF(ab’)2を作り出すことによって、短い血清半減期などのFabの主要な特性を保存しながら結合活性が復元され得る。それに加えて、特異的抗体によって複数の疾患媒介因子を標的とすることは、治療用抗体の開発のためにますます重要となってきている(8)。F(ab’)2分子は、小さな二重特異性抗体断片を生産するための天然の足場を提供する。Fab分子の生産とは対照的に、F(ab’)2の組換え発現は、発現されるFab’分子が融合部として非天然のホモまたはヘテロ二量体化ドメインを必要とするため、天然には可能でない(9、10)。よって、F(ab’)2分子を生成するための2つの主要な手法、すなわち(i)化学的コンジュゲーション及び(ii)タンパク質分解消化がある。化学的コンジュゲーションの場合、組換え発現されたFab’分子がホモまたはヘテロ二官能性架橋剤によって連結される(3、9、11、12)。Fab分子を生産するためのタンパク質分解消化手法と類似して、いくつかの既知のプロテアーゼが、下部ヒンジ領域において無傷抗体を切断して、F(ab’)2分子を生産し得る(13)。かかるタンパク質分解消化は、2つのFab分子がコア-ヒンジの2つのジスルフィド結合によって結合されている、非常に安定したF(ab’)2分子をもたらすペプシンが最も広く使用されるが(14)、より最近ではStreptococcus pyogenesの高度に特異的なIgG分解酵素IdeSが記載されている(15、16)。IdeSの使用は、ペプシン消化で観察されるC末端における不均一性を排除することによって、高度に均一な産物の生成を可能にする(3)。ある特定の実施形態において、F(ab’)2断片は、IdeS切断によって生産される。
【0068】
C.組換え法及び組成物
抗体断片は、例えば米国特許第4,816,567号に記載される、組換え法及び組成物を使用して生産され得る。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体断片をコードする単離された核酸またはかかる核酸を含む組成物が提供される。それに加えて、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。かかる核酸を含む宿主細胞もまた提供される。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。ある特定の実施形態において、Fab分子を作製する方法が提供され、本方法は、上記に提供されるFabをコードする核酸を含む宿主細胞を、Fabの発現に好適な条件下で培養することと、任意選択で、Fabを宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0069】
Fabの組換え生産については、例えば、上述のFabをコードする核酸が単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクター中に挿入される。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、Fabの重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0070】
Fabをコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核生物細胞または真核生物細胞が含まれる。例えば、Fabは、細菌において生産することができる。細菌におけるFabなどの抗体断片の発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(また、E.coliにおける抗体断片の発現について記載している、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照されたい。)発現後、Fabは、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。
【0071】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物が、Fabをコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、これには、そのグリコシル化経路が「ヒト化」された真菌及び酵母株が含まれる。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0072】
グリコシル化タンパク質の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と併せて使用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されている。
【0073】
植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を生産するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載する)を参照されたい。
【0074】
脊椎動物細胞も宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で成長するように適合された哺乳類細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されるような293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頚部癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、例えばMather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載される、TRI細胞、MRC 5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。Fab生産に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0075】
D.薬学的製剤
本明細書に記載される抗体断片、例えば、Fab及びF(ab’)2の薬学的製剤は、所望の程度の純度を有する抗体を、1つ以上の任意選択的な薬学的に許容される担体と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製される。例えば、限定するものではないが、凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。ある特定の実施形態において、水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されるものが含まれ得、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0076】
ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片は、約80%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、約99%超、約99.1%超、約99.2%超、約99.3%超、約99.4%超、約99.5%超、約99.6%超、約99.7%超、約99.8%超または約99.9%超の純度のものであり得る。
【0077】
薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、これには、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書における例となる薬学的に許容される担体には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの、介在性薬物分散剤がさらに含まれる。rHuPH20を含む、ある特定の例となるsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0078】
本明細書における製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な2つ以上の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有し得る。かかる活性成分は、好適には、意図される目的に有効である量で組み合わせて存在する。
【0079】
本開示の組成物は、当該技術分野で既知の多様な方法によって投与することができる。投与の経路及び/または様式は、所望の結果に応じて変動する。活性化合物は、化合物を、埋め込み物、経皮パッチ、及びマイクロカプセル封入送達系を含む放出制御製剤などの、急速な放出から保護する担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤の調製のための多くの方法は、例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978によって記載されている。ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、米国食品医薬品局の医薬品の製造及び品質管理に関する基準(GMP)条件の下で製造される。
【0080】
担体は、(例えば、注射または注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または上皮投与に好適であり得る。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体断片は、化合物を、酸の作用及び化合物を不活化し得る他の天然の条件から保護するために材料中にコーティングされ得る。
【0081】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技法もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中、またはマイクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示される。
【0082】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。
【0083】
インビボ投与に使用される製剤は、一般に、滅菌のものである。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜を介した濾過によって容易に達成され得る。
【0084】
開示される薬学的組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有することができる。微生物の存在の防止は、上記の滅菌手順によって、ならびに、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの種々の抗菌剤及び抗真菌剤の包含によって、の両方で確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を組成物に含めることもまた、望ましくあり得る。さらに、注射用剤型の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤の包含によってもたらすことができる。
【0085】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体が医薬品としてヒト及び動物に投与されるとき、それらは単独で、または、例えば、約0.01%~約99.5%(または約0.1~約90%)の抗体断片を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する薬学的組成物として、与えることができる。
【0086】
E.治療法及び組成物
本明細書に提供される抗体断片のいずれも、治療方法において使用することができる。ある特定の実施形態において、抗体断片として使用するための医薬品が提供される。ある特定の実施形態において、特定の疾患適応症の治療に使用するための抗体断片が提供される。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片を使用して、眼疾患及び/または障害を治療することができる。ある特定の実施形態において、本開示の抗体断片を使用して、短い半減期を示す抗体断片の適用が有益であろう疾患及び/または障害を治療することができる。ある特定の実施形態において、治療方法において使用するための抗体断片が提供される。
【0087】
ある特定の実施形態において、本開示は、個体に有効量の抗体断片またはそれを含む組成物を投与することを含む、特定の疾患を有する個体の治療方法において使用するための抗体断片を提供する。ある特定の実施形態において、本方法は、個体に、例えば下記に記載される、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。ある特定の実施形態において、本開示は、特定の分子経路及び/または機構の阻害に使用するための抗体断片を提供する。ある特定の実施形態において、本開示は、個体に、特定の分子経路及び/または機構を阻害するために有効の抗体断片を投与することを含む、個体における特定の分子経路及び/または機構の阻害方法において使用するための抗体断片を提供する。ある特定の実施形態において、本開示は、特定の分子経路及び/または機構の活性化に使用するための抗体断片を提供する。ある特定の実施形態において、本開示は、個体に、特定の分子経路及び/または機構を活性化するために有効の抗体断片を投与することを含む、個体における特定の分子経路及び/または機構の阻害方法において使用するための抗体断片を提供する。上記の実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0088】
ある特定の実施形態において、本開示は、医薬品の製造または調製における抗体断片の使用を提供する。ある特定の実施形態において、医薬品は、特定の疾患の治療のためのものである。ある特定の実施形態において、医薬品は、特定の疾患を有する個体に有効量の医薬品を投与することを含む、該疾患の治療方法において使用するためのものである。ある特定の実施形態において、本方法は、個体に、例えば下記に記載される、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。ある特定の実施形態において、医薬品は、特定の分子経路及び/または機構の阻害または活性化のためのものである。ある特定の実施形態において、医薬品は、個体に、特定の分子経路及び/または機構を阻害するために有効量の医薬品を投与することを含む、個体における特定の分子経路及び/または機構の阻害方法または活性化方法において使用するためのものである。上記の実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0089】
ある特定の実施形態において、本開示は、特定の疾患の治療方法を提供する。ある特定の実施形態において、本方法は、かかる疾患を有する個体に有効量の抗体断片を投与することを含む。ある特定の実施形態において、本方法は、個体に、例えば下記に記載される、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。上記の実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0090】
ある特定の実施形態において、本開示は、個体における特定の分子経路及び/または機構の阻害方法を提供する。ある特定の実施形態において、本方法は、個体に、特定の分子経路及び/または機構を阻害するために有効量の抗体断片を投与することを含む。ある特定の実施形態において、「個体」は、ヒトである。
【0091】
ある特定の実施形態において、本開示は、例えば、上記の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供される抗体断片のうちのいずれかを含む薬学的製剤を提供する。ある特定の実施形態において、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗体断片のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。ある特定の実施形態において、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗体断片のうちのいずれかと、例えば下記に記載される、少なくとも1つの追加の治療剤とを含む。
【0092】
本開示の抗体断片は、療法において単独で、または他の薬剤と組み合わせてのいずれでも使用することができる。例えば、本開示の抗体断片は、少なくとも1つの追加の治療薬と共投与され得る。
【0093】
上述のかかる併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療薬が同じまたは別個の製剤に含まれる)、及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本開示の抗体の投与は、追加の治療剤(単数または複数)の投与前に、投与と同時に、及び/または投与後に生じ得る。ある特定の実施形態において、抗体断片の投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約1ヶ月以内、または約1週間、2週間もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。本明細書に記載される抗体断片は、放射線療法と併用することもできる。
【0094】
抗体断片(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、眼内、及び鼻腔内、ならびに局所治療で所望の場合、病変内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、眼内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短時間であるか、または慢性的であるかに部分的に応じて、例えば、静脈注射または皮下注射などの注射によって任意の好適な経路で行われ得る。単回投与または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。
【0095】
抗体断片は、グッドメディカルプラクティス(good medical practice)と一致した様式で製剤化、投薬、及び投与される。これに関連して考慮する要因には、治療されている特定の疾患、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、及び医師に既知の他の要因を含む。抗体断片は、必ずしもそうである必要はないが、任意選択で、問題の疾患を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤とともに製剤化される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体断片の量、疾患または治療の種類、及び上で考察される他の要因に左右される。これらは一般に、本明細書に記載されるものと同じ投薬量及び投与経路で使用されるか、または本明細書に記載される投薬量の約1~99%、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0096】
疾患の予防または治療について、本開示の抗体断片の適切な投薬量(単独でまたは1つ以上の他の追加の治療薬と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の種類、抗体断片の種類、疾患の重症度及び経過、抗体断片が予防目的または治療目的のために投与されるか、以前の療法、患者の病歴、及び抗体断片への応答、ならびに主治医の裁量に依存する。抗体断片は、1回で、または一連の治療にわたって患者に好適に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、1回以上の別個の投与によってであれ連続注入によってであれ、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体断片が、患者に投与するための初回候補投薬量となり得る。1つの典型的な1日用量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。病態に応じて数日間以上にわたる反復投与では、治療は一般に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されるだろう。抗体断片の1つの例となる投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)のうちの1つ以上の用量が患者に投与され得る。かかる用量は、断続的に、例えば、毎週または3週間に1回(例えば、患者が約2~約20回、または例えば約6回用量の抗体断片を受けるように)投与され得る。より高い初回負荷量、続いて1回以上のより低い用量が、投与されてもよい。この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易に監視される。
【0097】
上の製剤または治療方法のうちのいずれも、本開示の抗体断片の代わりに、またはそれに加えて、免疫複合体を使用して行われ得ることが理解される。
【0098】
F.免疫複合体
本明細書に開示される発明の主題はまた、化学療法剤もしくは化学療法薬、成長阻害剤、タンパク質、ペプチド、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体などの1つ以上の細胞傷害性薬剤と複合された本明細書に記載される抗体断片を含む、免疫複合体を提供する。例えば、開示される発明の主題の抗体断片は、別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合模倣体などの1つ以上の他の結合分子に(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合またはその他によって)機能的に連結され得る。
【0099】
ある特定の実施形態において、免疫複合体は、抗体断片が1つ以上の薬物に複合された抗体-薬物複合体(ADC)であり、この薬物には、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第0425235B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDFなどのオーリスタチン(MMAE及びMMAF)(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン:カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993)、及びLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic & Med.Chem.Letters 16:358-362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.& Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002)、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン、ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテシン;ならびにCC1065を含むが、これらに限定されない。
【0100】
ある特定の実施形態において、免疫複合体には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、ならびにトリコテセン(tricothecene)を含むがこれらに限定されない酵素活性毒素またはその断片に複合された本明細書に記載される抗体断片が含まれる。
【0101】
ある特定の実施形態において、免疫複合体には、放射性原子に複合されて放射性複合体を形成する、本明細書に記載される抗体断片が含まれる。放射性複合体の産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。非限定的な例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性複合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、mri)のためのスピン標識、例えば、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。
【0102】
抗体断片及び細胞傷害性薬剤の複合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質結合剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への複合のための例となるキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号)が使用されてもよい。リンカーの非限定的な例は、上記に開示される。
【0103】
本明細書のイムヌオ複合体(immunuoconjugates)は、(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されている、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋剤試薬で調製された、かかる複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0104】
G.製品
本開示のある特定の実施形態において、上述の障害の治療、予防及び/または診断に有用な材料を含有する製造品が提供される。製品は、容器と、容器上のまたは容器に関連付けられたラベルまたは添付文書とを含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成され得る。容器は、それ自体で、または別の組成物と組み合わせて、病態の治療、予防及び/または診断に有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静注溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物本中の少なくとも1つの活性薬剤は、本開示の抗体断片である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選定の病態を治療するために使用されることを指示する。さらに、製品は、(a)本開示の抗体断片を含む組成物を中に収容した第1の容器、及び(b)さらなる細胞傷害性薬剤あるいは治療剤を含む組成物を中に収容した第2の容器を含み得る。本開示のこの実施形態の製品は、これらの組成物が特定の病態を治療するために使用され得ることを指示する添付文書をさらに含み得る。代替的に、または追加的に、製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝剤を含む第2の(または第3の)容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0105】
上記の製品はいずれも、本明細書に記載される抗体断片の代わりに、またはそれに加えて、免疫複合体を含み得ることが理解される。
【実施例】
【0106】
以下は、本開示の方法及び組成物の実施例である。上記に提供された概要を得ると、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0107】
実施例1-ヒンジ操作による既存の抗ヒンジ抗体応答の回避
Fab及びF(ab’)2抗体断片は、治療アッセイ及び免疫アッセイにおいて完全長抗体の代替的フォーマットとしての役目を果たす。それらは、小さなサイズ、短い血清半減期、及びエフェクター機能の欠如という利点を提供する。侵襲性疾患に関連するいくつかのプロテアーゼは、抗体をヒンジ領域において切断し、ネオエピトープに対する抗ヒンジ抗体(AHA)をもたらすことが知られている。血清中の既存のAHAは、代理Fcとして作用して、抗体断片において欠如しているFcの特性を再導入し得る。この応答は、疾患と闘う自然過程の間には所望されるが、それは一般的には、治療用抗体断片に不要である。この研究において、IdeSプロテアーゼによる効率的なタンパク質分解切断を維持する、抗体の下部ヒンジ領域における切断部を特定した。結果として生じたF(ab’)2C末端におけるネオエピトープは、検出可能な既存のAHAを有さず、これは、既存のAHA応答が所望されない場合のタンパク質分解消化によるインビトロでのF(ab’)2生産のための実用的な経路を提供した。この研究において、抗体の上部ヒンジ領域もまた研究され、これは、ヒトIgG1、IgG2及びIgG4の上部ヒンジのC末端残基の、ヒト血清中の既存のAHA反応性への寄与に関する詳細な分析を提供した。既存の抗体はIgG2及びIgG4アイソタイプのFabに対して何ら観察されなかったが、ヒトIgG1の上部ヒンジのほとんどの残基に対しては著しい応答が観察された。T225L突然変異(本明細書で「T225L変異型」とも称される)及び天然C末端D221を、血清反応性が最小である解決策として特定した。この研究は、既存のAHAに対して最小の反応性を有する、治療アッセイ及び免疫アッセイ用のFab及びF(ab’)2断片の生産を可能にした。
【0108】
材料及び方法
プラスミド構築及び抗体発現:抗体を標準的な分子生物学技法によって、以前に記載されたようにE.coli発現ベクター(9、23)、または哺乳類発現ベクター(24)にクローニングした。E.coli発現は、Simmons et al.(23)に記載されるように行った。IgG及びFabは、以前に記載されたように、CHO(25)またはHEK293T(26)細胞の30mLの一過性トランスフェクション培養物中で発現させた。
【0109】
IdeSのクローニング、発現、及び精製:IdeSをN末端グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として発現させた。Streptococcus pyogenes MGAS1882(Uniprot ID H8HDR0)由来のIdeSの成熟配列を、E.coli発現に対してコドン最適化し、GeneArt(商標)によって合成し、標準的な分子生物学技法によってE.coli発現ベクター(23)にクローニングした。IdeSを、Simmons et al.(23)に記載される条件を用いて発現させ、グルタチオンセファロース(GSH)カラムを使用して精製した。GSH カラムからの50mMトリス-HCl(pH8,0)、20mMグルタチオン中の溶出画分を濃縮し、S200カラムに負荷し、200mM K2HPO4(pH6.2)、250mM KClで溶出した。
【0110】
抗体及びFab精製:発現後、細胞を重力によってペレット化した。上清を50ml Falconチューブ(Corning、Corning,NY,USA)に移した。400μlの50% MabSelect SuRe(商標)タンパク質親和性スラリーまたはGamma Bind(商標)Plusスラリー(GE Healthcare、Pittsburgh,PA,USA)を、それぞれIgG及びFab精製のために上清に添加した。混合物をInnova 2000プラットフォーム加振機(New Brunswick Scientific、Enfield,CT,USA)上で室温で一晩インキュベートした。上清を除去し、樹脂を、25μmサイズ膜を有する96ウェルの2mlフィルタープレート(Thompson Instrument,Oceanside,CA,USA)に移した。樹脂を、Sorvall(商標)HT6遠心分離機(Thermo Scientific,Waltham,MA,USA)を使用した1,120倍gで5分間の遠心分離によって、1mlの1倍PBS(pH7.4)で3回洗浄した。Fab精製については、溶出前に樹脂を0.2倍PBS pH5.0でさらに洗浄した。IgGを50mMリン酸 pH2.9を使用して溶出し、溶出液を1,000倍gで5分間の遠心分離によって、20倍PBS pH11.0で中和した。Fab断片を10mMクエン酸ナトリウムpH2.9を使用して溶出し、0.3Mトリス pH9.0で中和した。溶出されたIgG及びFabを、Sorvall(商標)HT6遠心分離機(Thermo Scientific、Waltham,MA,USA)を使用した1,000倍gで5分間の遠心分離によって、0.2μmの96ウェルフィルタープレート(Orochem、Naperville,IL,USA)に通して濾過した。
【0111】
IgGヒンジ変異型のIdeS消化:1mg/mlのIgGを定められたIdeS:IgG比(w/w)とともに37℃で24時間インキュベートした。AHAアッセイ用の高度に純粋なF(ab’)2材料を大量に生成するための規模拡大消化については、最大1:10のIdeS:IgG比を使用して完全な消化を促進した。
【0112】
IdeSによるIgG切断後のF(ab’)2精製:IdeS切断された試料を25mM酢酸ナトリウム(pH4.4)(緩衝液A)で希釈し、緩衝液Aにおいて150cm/時(0.7cm直径、10cmベッド高さ)で平衡化した1mL SPセファロース高性能強陽イオン交換カラム(GE Healthcare、Pittsburgh,PA,USA)に負荷した。カラムをベースラインまで緩衝液Aで洗浄し、F(ab’)2を30カラム体積にわたって0~0.5M NaClの直線塩勾配により溶出した。溶出液を3Mトリス(pH9.0)の添加によってpHを7.0に調整するように中和し、0.22μm STERIFLIP(登録商標)(EMD Millipore、Billerica,MA,USA)に通して濾過した。SP溶出されたF(ab’)2を、伝導率を<5mS/cmに低下させるために緩衝液Aで希釈した後のMonoS 5/50 GL強陽イオン交換カラム(GE Healthcare、Pittsburgh,PA,USA)によりさらに精製した。カラムをベースライン(<0.05mAU)まで緩衝液Aで洗浄し、F(ab’)2を40カラム体積にわたって0~0.6M NaClの塩勾配を用いて溶出した。溶出されたF(ab’)2溶液を3Mトリス(pH9.0)でpHを7.0に調整するように中和し、0.22μm STERIFLIP(登録商標)(EMD Millipore、Billerica,MA,USA)に通して濾過した。
【0113】
Fab及びF(ab’)2断片の質量分析:Agilent 6224 TOF LC-MSシステム(Agilent Technology、Santa Clara,CA,USA)を使用して質量分析データを取得した。F(ab’)2を100mMジチオトレイトールで37℃で20分間還元した。ポリペプチド鎖をPLRP-S逆相カラム(Agilent Technologies、Santa Clara,CA,USA)により分離させた。還元された軽鎖及び重鎖の無傷な質量を、MassHunterソフトウェア(Qualitative Analysis B.03.01)を使用したMaximun Entropy Deconvolutionによって得た。
【0114】
キャピラリー電気泳動法によるタンパク質の分析:すべての試料を、5μlの試料体積を7μlのHTタンパク質発現試料緩衝液と混合することによって調製し、70℃で5分間インキュベートした。32μlの水を試料に添加し、1,000倍gで5分間遠心分離した。LabChip GXIIユーザーガイドに提供された製造業者の指示に従ってチップを調製し、試料をCaliper GX IIマイクロ流体システム(PerkinElmer(登録商標)Biotechnology、Waltham,MA,USA)により分析した。試料をCaliper GX IIマイクロ流体システム(PerkinElmer(登録商標)Biotechnology、Waltham,MA,USA)により分析した。すべての試薬はPerkinElmer(登録商標)から得た。
【0115】
既存の抗ヒンジ抗体酵素結合免疫吸着検定(ELISA):MAXISORP(登録商標) プレート(384ウェル、Nunc、Thermo Fisher Scientific、Rochester,NY,USA)を50mM炭酸塩(pH9.6)中の1μg/ml F(ab’)2またはFabで4℃で一晩コーティングした。プレートをPBS(pH7.4)中0.05%ポリソルベート20で洗浄し、次いでPBS(pH7.4)中0.5%BSA、15ppmプロクリンでブロッキングした。25人の女性及び25人の男性個人からのプールされたヒト血清(BioreclamationIVT、Westbury,NY,USA)をアッセイ緩衝液(PBS(pH7.4)中0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20、15ppm PROCLIN(商標))中に段階希釈し、プレートに添加した。2時間のインキュベーション後、結合した既存の抗ヒンジ抗体を、アッセイ緩衝液中の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)ヤギ抗F(ab’)2標識抗ヒトIgG Fc(Jackson ImmunoResearch、West Grove,PA)、続いて基質として3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB、Moss Inc.,Pasadena,MD,USA)を使用して検出した。反応を1Mリン酸で停止させ、吸光度を450nmで読み取った。すべての試料の提示を可能にするために1:30希釈での吸光度読取り値を図に使用した。比較結果は、1:10血清希釈率で観察された。相対的AHA反応性を計算するために、F(ab’)2の力価曲線を4パラメータ曲線当てはめプログラム(KaleidaGraph、Synerg Software、Reading,PA)により当てはめた。F(ab’)2力価曲線の中央OD(最上位及び最下位OD読取り値の平均OD)を決定した。この中央ODに対応するFab DKTHT(配列番号21)及びF(ab’)2の希釈率を計算し、これを使用して相対的AHA反応性を計算した。
【0116】
SDS-PAGE及び免疫ブロット:SDS-PAGEについては、5μgの精製F(ab’)2変異型及びGST-IdeSをSDS-試料緩衝液と混合し、95℃で5分間加熱し、16,000の相対遠心力で1分間スピンした。試料をNuPAGE 4-12% BisTris/MESゲル(Invitrogen)に負荷した。免疫ブロッティングについては、5ngのタンパク質試料をSDS-PAGEに使用した。ゲルをIBLOT(登録商標)(Invitrogen)によってニトロセルロース膜上に移し、一次抗体として抗IdeS(Genovis、USA、カタログ番号A3-AF1-010、ロット番号A3AF1-7C17H)及び二次抗体としてIRDye800CW標識ロバ抗ヤギ抗体(Li-COR(登録商標)、USA、カタログ番号926-32214、ロット番号B80821-03)で免疫ブロットし、LI-COR(登録商標)Odyssey(登録商標)イメージャ(LI-COR(登録商標)、USA)で撮像した。Odyssey(登録商標)2色タンパク質分子量マーカー(LI-COR(登録商標)、USA)を免疫ブロットに使用し、染色済みSEEBLUE(登録商標)Plus2(Invitrogen、USA)をクマシー染色ゲルに使用した。
【0117】
示差走査蛍光定量によるタンパク質安定性測定:タンパク質安定性をBiorad CFX96 TOUCH(商標)リアルタイムシステム(Biorad、USA)において、SYPRO(登録商標)オレンジ色素原液(Molecular Probes(商標)、USA)の1:200の最終希釈率で決定した。1μlのSYPRO(登録商標)オレンジ色素原液を24μlの精製抗体100μg/mlに添加した。PBS中の最終25μl試料の蛍光度を20~100℃(0.2℃の増分、工程ごとに10秒間保持)で記録した。
【0118】
結果
Fab C末端は、既存のAHAへの応答を決定する:元々、ヒト血清中の自己抗体の、Fab分子の上部ヒンジに対する反応は、パパイン切断抗体であるアブシキシマブで研究された(5)。パパイン切断は、C末端H
224をFab上に残す。後に、上部ヒンジの個々のC末端残基の寄与を詳細に吟味するために、より包括的な研究がビオチン化ペプチド類似体を使用して行われた(20)。この研究において、上部ヒンジ残基K
222~H
224に対して最小のAHA反応性のみが観察された。C末端残基としてT
225を有するペプチドに対してはシグナルは何ら観察されなかった。合成ペプチドの使用は、上部ヒンジ残基D
221~T
225に及ぶFab-テール(
図1A)が無傷分子の関連性の外側に提示されるため、結果を混乱させ得る。ゆえに、無傷Fabの設定におけるFab-テールの、既存のAHAへの結合への寄与を研究した。
【0119】
E.coli及び哺乳類細胞中でのFab分子の組換え発現は、タンパク質分解切断の必要性なしに、規定のC末端を有する分子を容易に生産することを可能にする。C末端の完全性を確実にするために、精製Fabの正確な質量を無傷質量分析法によって確認した。Fab分子をマイクロタイタープレート上にコーティングし、プールされたヒトドナー血清とのインキュベーション後、既存のAHAの結合を抗Fc検出によって定量した。以前の研究と一致するように(20)、C末端のT
223(配列DKTを有する、本明細書で「CDKT」(配列番号17)とも称される)が、既存のAHAに対して、すべての上部ヒンジ変異型のうち最も高い反応性を示した(
図1B)。以前の研究との著しい差異が、C末端のT
225(配列DKTHT(配列番号21)を有する、本明細書で「CDKTHT」(配列番号14)とも称される)で観察される。この変異型は、ペプチドとしてAHAに結合しなかったが(20)、Fabとして試験したときには実質的なAHA反応性が観察された。C末端のD
221(配列Dを有する、本明細書で「CD」とも称される「CD」)の場合、AHAの結合は、ほぼバックグラウンドまで低減された。ゆえに、FabをD
221で終端することは、天然抗体配列を維持しながら既存のAHAによる認識を最低限に抑えるための解決策を提供する。
【0120】
これらの実験によって実証されるように、C末端Fab残基は、AHA結合に対して多大な影響を有する。既存の抗体による結合がC末端における単一のアミノ酸変化によっても防止され得、AHAに対する反応性を最小限に抑えるためのD
221の代替となる経路を提供するかどうかを調査した。Fab C末端に非天然残基を配置するためにT
225L変異型を導入し、それへのAHAの結合を試験した。T
225L変異型は、以前に記載されている(7)。突然変異は、既存のAHAの結合を乱し(
図1B)、このことは、結合におけるC末端の重要性をさらに強調した。T
225Lにおける低減されたAHAが低減されたコーティング効率に起因したという可能性を除外するために、抗原捕捉フォーマットを使用してFab分子を捕捉すると、同様の倍率のAHAシグナル低減が再び観察された。この観察が一般化され得るかどうかを決定するために、3つの異なるFabをプールされたヒト血清とともにインキュベートし、既存の抗体の結合をELISAによって検出した。DKTHT(配列番号21)C末端を有する3つの異なるFabについて著しいシグナルが観察された一方で、既存の抗体の、D
221及びT
225L C末端への低減された結合が確かに検出された。(
図1C)。
【0121】
次に、IgG2及びIgG4アイソタイプのFab分子を研究した。IgG1、IgG2及びIgG4は治療用抗体に一般的に使用されているが、IgG2及びIgG4 Fabの使用は、これまで治療薬開発に活かされてこなかった。ゆえに、完全な上部ヒンジ領域を有するIgG2及びIgG4 Fab(
図1D、それぞれC末端K
218及びP
225)を試験した。IgG1 Fabとは対照的に、IgG2及びIgG4 Fabは、既存のAHAによって認識されなかった。次に、IgG4の上部ヒンジを切断した。IgG4アイソタイプの上部ヒンジの長さは、IgG1と比較するとより短いが(
図6A~Bを参照されたい)、重鎖-軽鎖間ジスルフィドに関与するシステインがC
H1一次構造の中心に位置することから、切断実験において残基K
218及びY
219を含めることが可能であった。これらの切断された上部ヒンジFabは、無傷IgG1上部ヒンジと同様のシグナルを示した(
図1B)。
【0122】
同じアイソタイプ内のすべてのFab分子が、E.coli及びCHOにおいて同様の発現レベルを生み出した(
図7)。同じアイソタイプ内で熱安定性の変化は何ら観察されなかった(表3)。IgG2及びIgG4 Fabの熱安定性は、IgG1アイソタイプと比較して約6℃減少した。
【0123】
結論として、既存のAHAに対して最小の反応性を有する下記の複数のFabフォーマットが存在する。IgG1-D
221、IgG1-T
225L、IgG2及びIgG4。
表3.示差走査蛍光定量によって決定されたT30M Fabの熱安定性
【0124】
IgG2の下部ヒンジを有するIgG1は、効率的に切断できない:F(ab’)
2の下部ヒンジ領域に対する既存のAHAは、文献に広範に記載されている(13、27)。Fab分子の上部ヒンジへのAHAに類似して、これらのAHAは、代理Fcとして作用し得、すなわちアッセイアーチファクトを導入し得る。ゆえに、AHA結合を妨げるF(ab’)
2フォーマットの開発が望ましい。血清中のAHAがIgG1アイソタイプのF(ab’)
2に向かうことが見出されている一方で、IgG2アイソタイプの下部ヒンジへの自己抗体の存在を確立することは可能でなかった。興味深いことに、かかる自己抗体の欠如は、生理的に関連性のあるヒトプロテアーゼがIgG2をF(ab’)
2断片へと効率的に切断する能力の欠如と一致する(28)。しかしながら、IgG2の非効率的な切断が、IdeSプロテアーゼを使用して観察された(28)。IdeSは、G
236の後を切断するStreptococcus pyrogenes由来のIgG特異的エンドプロテアーゼである。抗体ヒンジ領域における切断部位に加えて、それは、IgGに対するその高い特異性に寄与するFcにおける第2の部位を認識する(15、16)。IgG2抗体の非効率的な切断は、切断部位の外側の非活性部位によって引き起こされる可能性がある。ゆえに、IgG2の下部ヒンジ残基をIgG1にグラフティングして、IgG1-2キメラを作り出した(
図2B)。異なるIdeS:IgG比での切断効率を試験した(
図2C)。IgG1野生型が1:500のIdeS:IgG比でF(ab’)
2へと効率的に切断された一方で、IgG1-2キメラの同様の切断を達成するためには少なくとも50倍高いプロテアーゼ濃度が必要であった。下部ヒンジにおける配列差異が、IgG2抗体の良好でない切断効率に少なくとも部分的に寄与すると結論付けられた。ゆえに、IgG1-2キメラは、既存のAHAに結合しないF(ab’)
2分子を生成するための実用的な戦略でない可能性がある。
【0125】
効率的なIdeS切断のためのP1及びP2位の特徴付け:記載されたFab実験で、既存のAHAの結合が単一のC末端T
225L突然変異によって阻止され得ることが実証された。同様の戦略をF(ab’)
2に用いた。第1の工程として、IdeSプロテアーゼによる切断を可能にするP1(EU236)及びP2(EU235)部位における残基を特定した。IdeSのためのP2位におけるL
235、L
235V、L
235I、またはL
235Mを含んだ76個のFab変異型の組を生成し、P1におけるシステインを除く任意のアミノ酸と組み合わせた(
図3D及びE)。抗体を精製し、IdeSによって切断され得る変異型を特定するために1:10のIdeS:IgG比でIdeSにより消化させた。かかる高いプロテアーゼ対抗体比は、切断効率を考慮に入れることなくタンパク質分解を評価するために選定した。IdeSによって切断される7つの変異型を特定した(
図3A)。P2位が試験した4つすべての残基を許容した一方で、P1位においては非常に小さな側鎖を有する2つのアミノ酸、すなわち天然グリシン及びアラニンのみが受け入れられた。この下位組を、3つの異なるIdeS:IgG比、すなわち1:500、1:200及び1:100(
図3B)ならびに1:10(
図3C)で、切断効率についてさらに調査した。P2位における変異型L
235Vは、野生型配列と比較して、切断効率において最小の変化を実証した。すべての他の変異型は、ヒンジの片側のみで優勢な単一の切断によって特徴付けられ、抗体の他方の側を無傷で残した。P1位においてグリシンを有するL
235I及びL
235M変異型は、1:200のIdeS:IgG比で完全に切断可能であった一方で、P1においてアラニンを有するすべてのP2変異型は、著しくより高いプロテアーゼ量を必要とした。よって、IdeSによる効率的な切断は、P1位におけるグリシンを必要とする。
【0126】
C末端F(ab’)
2変異型は、既存のAHAによる認識を阻止しない:IdeSは、擬陽性結果により既存のAHAアッセイの結果を混乱させ得る。これは、IdeSによる血清抗体の結合、及び抗Fc検出抗体によるそれらのその後の認識によって説明され得る。したがって、アッセイに使用したF(ab’)
2分子が、先行のタンパク質分解反応からのIdeSを含有しないことを確実にした。精製F(ab’)
2タンパク質中のIdeSの除去は、SDS-PAGE、続いてクマシー染色及び抗IdeS免疫ブロットによって確認した(
図4A)。
【0127】
精製P1及びP2 F(ab’)
2変異型を次いで、既存のAHAによるそれらの認識について試験した(
図4B)。野生型と比較してシグナルは低減したが、C末端修飾を有する抗体のうち血清自己抗体との反応性を排除したものは何もなかった。P2位に対する変化は、中程度の影響を有するのみであった。P1位におけるG
236A変化は、シグナルをFabと同等のレベルまで低減した。ゆえに、特定の理論に限定されるものではないが、IdeSによる切断を保持すると同時に、F(ab’)
2に対する既存の抗体応答を排除するアミノ酸変異型を有する、下部ヒンジを設計することは可能でない。
【0128】
下部ヒンジにおける欠失は、IdeS切断を保持しながら既存のAHAによる認識を阻止する:下部ヒンジを切断することによってAHAのエピトープを除去する別の戦略を用いた。P1(EU236)及びP2(EU235)残基を切断効率におけるそれらの重要性からそのまま残し、切断効率において最小の影響を有する残基を特定するためにIdeSのP3(EU234)、P4(EU233)及びP5(EU232)部位における単一及び二重の残基欠失を生成した(
図5Fを参照されたい)。著しく低い切断効率がP3位の欠失で観察され、ゆえに、この位置はさらなる研究で考慮されなかった(
図5A)。P4、P5及びこれら両方の組み合わせの欠失(ΔP45、本明細書でEU232~233位におけるアミノ酸残基の欠失とも称される)を有する抗体を、AHAへの結合について試験した(
図5B)。これらの変異型について、野生型ヒンジ配列と比較してより低いシグナルが観察された。既存のAHAによるヒンジ認識をさらに低減するために、欠失を、P6(EU231)及びP7(EU230)残基を含むように延長した(
図5Fを参照されたい)。P4~P7部位の欠失(ΔP4567、本明細書でEU230~233位におけるアミノ酸残基の欠失とも称される)は、中程度に低減された切断効率をもたらし、P4~P6部位の欠失(ΔP456、本明細書でEU231~233位におけるアミノ酸残基の欠失とも称される)は、1:200のIdeS:IgG比で、野生型と同等の切断効率を有した(
図5C及び
図8)。両変異型とも既存のAHA認識をもたらさなかった(
図5D)。IdeSの高い切断特異性が維持されることを確実にするために、ESI-TOF質量分析を用いて、IdeSにより切断されたF(ab’)
2を分析した。G
236の予想された切断部位に対応する単一の質量が、野生型由来のF(ab’)
2ならびにΔP456変異型F(ab’)
2で観察された(
図5E)。
【0129】
図11に示されるように、観察されたΔP456変異型F(ab’)
2のAHA結合シグナルは、2つのFab C末端変異型、すなわちFab D
221及びFab T
225Lと同等である。F(ab’)
2力価曲線の中央におけるOD(1.15)に対応する希釈率は、F(ab’)
2及びFabについてそれぞれ70及び14であった。特定の理論に限定されるものではないが、F(ab’)
2で見られた、Fab T
225と比較して5倍高いAHA活性は、AHAのF(ab’)
2への二価結合の可能性によって説明され得、これはF(ab’)
2分子が既存のAHAを回避する必要があることを示す。F(ab’)
2ΔP456及びFab T
225Lで見られた低減されたAHA反応性が低減されたコーティング効率に起因したという可能性を除外するために、抗原捕捉フォーマットを使用してAHAを検出した。OD読取り値(n=4)は、1:30血清希釈でF(ab’)
2、ΔP456 F(ab’)
2、Fab、Fab T
225L及び緩衝液を受容した抗原コーティングウェルに関して、それぞれ2.2±0.1、0.34±0.03、1.3±0.1、0.36±0.02及び0.32±0.01であった。ゆえに、これらの結果は、ΔP456 F(ab’)
2及びFab T
225Lがそれらの対応する野生型分子と比較して低減されたAHA反応性を有したことを確証した。
【0130】
これらのデータは、ΔP456変異型が、タンパク質分解消化という十分に確立された経路によってF(ab’)2抗体断片を生産する可能性を維持しながら、F(ab’)2の下部ヒンジに対する既存のAHA応答を回避する解決策を提供することを示す。
【0131】
C末端F(ab’)
2変異型の下部ヒンジにおける欠失:既存のAHAによる認識が改変されるかどうかを決定するために、下部ヒンジ領域における欠失を有するC末端変異型を分析した。P1におけるアラニンまたはグリシンとともに、IdeSのためのP2位におけるL
235、L
235V、L
235I、またはL
235Mを含んだ6つのFab変異型の組を、種々のヒンジ領域を欠失させて生成した(
図9)。この下位組を、3つの異なるIdeS:IgG比、すなわち1:10(
図9A)、1:100(
図9B)及び1:500(
図9C)で、切断効率についてさらに調査した。
図9Dに示されるように、P5における欠失と組み合わせた変異型L
235VまたはG
236Aは、P5の欠失単独と比較して低減されたAHAシグナルをもたらした。
図10に示されるように、P1におけるアラニンまたはグリシンとともにP2位におけるL
235V、L
235I、またはL
235Mを含んだΔP456変異型は、ΔP456単独と比較して、AHAシグナルにおける同様の低減を示したが(
図10B)、ΔP456の欠失単独は、ΔP456と組み合わせた変異型と比較してより良好な切断効率を示した(
図10A)。
【0132】
考察
Fab及びF(ab’)2などの抗体断片は、全身にわたる短い半減期及びエフェクターサイレントな(effector-silent)分子が同時に所望される場合、魅力的な治療フォーマットである。ある特定の断片はまた、腫瘍細胞などの侵襲性疾患及び細菌に関連するプロテアーゼの天然産物であり、免疫監視機構を回避しようとして生成されるものである。結果として、Fab及びF(ab’)2断片のC末端ネオエピトープは、免疫系によって認識され、代理Fcを提供し得るAHAをもたらす。
【0133】
この研究において、ヒトIgG1、IgG2及びIgG4アイソタイプの上部ヒンジ領域に及ぶ個々のC末端残基に対する既存のAHAの反応性を詳細に吟味した。IdeS切断されたヒトIgG2抗体の下部ヒンジにおけるネオエピトープに対する既存のAHAは存在しないことが以前に報告されたが、ヒトアイソタイプの上部ヒンジに対する反応性は、これまでに調査が不完全であった。この研究において、IgG2及びIgG4アイソタイプの上部ヒンジに対する既存のAHAは、検出されなかった。これは転じて、これらのアイソタイプが侵襲性疾患のプロテアーゼの標的ではないことを示唆し得る。これは、これらのアイソタイプのエフェクター減弱された性質、ならびにこれらのアイソタイプのFc領域の除去が腫瘍及び細菌に利点を提供しないという事実によって説明され得る。対照的に、IgG1アイソタイプは、これらのプロテアーゼの主要な標的であるように思われる。実際、プラスミン、ヒト好中球エラスターゼ及びLysCを含む、いくつかのプロテアーゼは、ヒトIgG1の上部ヒンジにおいて切断することが記載されている。この研究は、D221を除いてヒトIgG1の上部ヒンジのすべての切断部位に対する既存のAHAが存在することを示す。特定の理論に限定されるものではないが、D221に対するAHAの不在は、ヒトプロテアーゼがこの残基の後を切断する能力の欠如、またはこのネオエピトープに対して抗体を産生する能力の欠如の反映であり得る。C末端T223Fabに対して最も高い反応性が観察された。興味深いことに、このC末端は、細菌及び宿主組織を破壊するための炎症の間に好中球及びマクロファージによって分泌されるプロテアーゼである、ヒト好中球エラスターゼの切断点と一致する(29)。
【0134】
既存のAHAは、エフェクター機能を、エフェクターを欠損するように設計されている分子に迅速に動員することができる。IgG2またはIgG4アイソタイプのFabを使用することで、既存の抗体応答を伴わずに分子を供給する1つの戦略を提供することができる。代替的に、重鎖C末端にT225L突然変異のような非天然残基を導入すること、または上部ヒンジをD221において切断することは、IgG1アイソタイプのための戦略である。T225L突然変異は既存のAHAに対する応答を排除するが、このことは原則として、免疫応答もまた引き出し得ることを暗示する。これは、抗TNFR1ドメイン抗体に関する最近の研究によってさらに支持される(34)。インビトロでのスクリーニング中、既存のヒト抗VH抗体の結合を低減するにはC末端アラニンの付加で十分であったが、1人の被験者は、第I相臨床試験において、修飾C末端に対して特異的な抗体を高レベルで発達することが見出された。それに加えて、より長いテール上にある潜在的なエキソペプチダーゼ活性が、やがては、既存のAHAによって認識されるネオエピトープをもたらし得る。Fab-D221のように非構造化上部ヒンジを完全に除去することは、かかる二次応答の危険性をさらに最小化する。これは、ヒトIgG1のIdeS切断された下部ヒンジに及ぶペプチドと複合して結晶化した抗ヒンジ抗体の結晶構造によって支持される(30)。このペプチドは拡張した立体構造において抗体に結合していることから、上部または下部ヒンジを切断することで、ネオエピトープを成功裏に除去し、ヒンジ領域に対する抗体の免疫応答を抑制し得ることが示唆される。
【0135】
これらの知見はまた、カニクイザルにおける研究のデザインに含意を有し得る。下部ヒンジ領域は、カニクイザルとヒトIgGとの間で高度に保存されているが、上部ヒンジ領域において相当の差異が存在し(31)、これが異種間の反応性を阻止する。これは、ヒトFabに対する既存のAHAからの不利点がこれらの研究によって対処され得ないため、カニクイザルにおける毒性学的研究に影響を有し得る。
【0136】
治療的使用を越えて、Fab-D221はまた、上部ヒンジが、非構造化性質に起因して結晶構造に一般的に溶解されないことから、結晶学的研究のためのFabの組換え発現に対して考慮することができる。この実施例は、等しい安定性及び発現がFab-D221構築物で達成され得ることを実証する。非構造化領域を排除することは、結晶化の成果をさらに改善し得る。
【0137】
これまでのところF(ab’)2分子を生成するための最も効率的な経路は、タンパク質分解消化によるものであり、IdeSなどの高特異性を有するプロテアーゼが好ましい。先に考察されたように、F(ab’)2分子の下部ヒンジに対しても既存のAHAが存在する。IdeS切断された抗体に対するAHA価は、Fabと比較してより高い。特定の理論に限定されるものではないが、これは、本アッセイにおいて結合活性に基づく結合要素を提供するF(ab’)2の二価性質、または増加した力価につながるF(ab’)2の元々のより高い存在量に起因し得る。IdeSによる切断効率を維持しながらAHA反応性を除去するために、いくつかの戦略を用いた。
【0138】
C末端残基は、エピトープ認識において重要な役割を有することから(22)、第1の戦略は、AHAの結合活性を除去するようにF(ab’)2のC末端残基を突然変異させることであった。しかしながら、これは、IdeSによる効率的な切断のためのP1位におけるグリシンの厳格な必要性に起因して可能でなかった。P2位における選択された突然変異の組は、AHA結合に中程度の影響しか有さず、このことは、AHAとの反応性に対するC末端残基の重要性をさらに確証した。P1及びP2変異型のIdeS切断効率とのAHA結合の一致する差異は、おそらく、P2にバリンを有し、P1位にアラニンを有するIgG2アイソタイプが抗ヒンジ抗体応答に対して感受性がより低いことの理由を説明する。効率的な切断のためのP1位におけるグリシンの必要性に伴い、異なるアイソタイプ内での及び複数の種にわたるこの残基の高度な保存が起きる。
【0139】
下部ヒンジにおける3つの残基を欠失させることによって(ΔP456)、既存のAHA認識を除去しながらIdeSの切断効率を維持することが可能であった。それは、P3部位の上流の位置が効率的な切断に軽微な関連性を有することを実証する。既存のAHAに対する反応性を除去することに加えて、下部ヒンジを切断することは、このエピトープに対する免疫応答を減衰させ得る。構造研究に基づいて、AHAは、拡張した立体構造において下部ヒンジに結合し、5つのC末端残基は、抗体の相補性決定領域(CDR)と相互作用する(30)。下部ヒンジから3つの残基を除去することによって、4つの残基のみがIdeS切断後に残った。この短い配列は、強固な免疫応答には不十分であり得、操作されたヒンジに対するデノボ抗体の発達の可能性を低減し得る。
【0140】
既存の抗体はまた、インビトロでエフェクター機能を減少させることが実証されており(32)、これはまた薬物開発中の免疫原性アッセイを混乱させ得る。ヒト化抗体に対する抗治療薬抗体(ATA)の大多数は、イディオタイプであるリウマトイド因子を標的としているが、Fc領域に対する低親和性抗体が記載されている。免疫原性アッセイにおいてリウマトイド因子によるアーチファクトを排除する1つの方法は、Fc領域が欠けている抗体断片を使用することである。しかしながら、他の既存の抗体によって認識されない断片を使用することが重要である。これらの知見は、これらの基準を満たし得る複数のFabフォーマット及びF(ab’)2フォーマットを提供する。
【0141】
要約すると、適切な抗体断片を選定することによって、既存のAHAによる認識を回避することが可能である。Fab分子に関して、下記のいくつかの選択肢が存在する。(1)IgG2またはIgG4アイソタイプを使用すること、(2)C末端残基(T225L)の突然変異、または(3)Fabを残基D221で終端すること。選択肢は、タンパク質分解消化に対する必要性に起因して、F(ab’)2分子に関してより限定される。しかしながら、高い切断効率及び特異性を維持し、かつ既存のAHAとの反応性を除去する、IgG1の下部ヒンジにおける欠失を特定した。これらのフォーマットを使用することで、治療場面における抗体断片に伴う安全性に関する懸念のさらなる最小化を可能にし、アッセイ開発における妨げを除去し得る。
【0142】
実施例2-F(ab’)2ΔP456は、低減されたAHA介在性FcγRIIIa及びC1q結合を有する
精製AHA抗体が代理Fcとして作用して、IdeS生成F(ab’)2によって喪失したADCC/CDC機能を復元し得ることが以前に記載された(20、22)。開示される操作Fab及びF(ab’)2変異型によるAHAの低減された結合が、Fcγ受容体及びC1qの低減された動員によってさらに反映されるかどうかを研究するために、架橋実験を用いた。AHAのFcγRIIIaへの結合を評価するために、上述のようにヒト血清をFabまたはF(ab’)2コーティングウェルに添加し、2時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、可溶性FcγRIIIa(V158)-His-GST(カルボキシ末端においてGly-His6-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(配列番号28に開示される「Gly-His6」)と融合された細胞外ドメインからなる)を0.5μg/mlで添加した。結合したFcγRIIIa(V158)-His-GSTを、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識マウス抗His抗体(Penta-His(配列番号29)、Qiagen、Germantown,MD)、続いて基質としてTMBを使用して検出した。AHAのヒトC1qへの結合を評価するために、上述のようにヒト血清をFabまたはF(ab’)2コーティングウェルに添加し、2時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、精製ヒトC1q(Quidel、San Diego,CA)を添加した。結合したC1qをヤギ抗C1q抗体(Nordic Immunological Laboratories、Tilburg,The Netherlands)、続いてウサギ抗ヤギIgG-HRP(Jackson ImmunoResearch、West Grove,PA)及び基質としてTMBで検出した。
【0143】
F(ab’)2に対するFcγRIIIa及びC1qの著しい結合が観察された一方で、ΔP456 F(ab’)2変異型に対してはシグナルはほとんど検出されなかったことから、F(ab’)2変異型の操作がADCC/CDC活性化の危険性を著しく低減したことが示される。OD読取り値(n=3)は、1:10希釈血清でF(ab’)2、ΔP456変異型、及び未コーティングのウェルに関して、それぞれ、FcγRIIIa結合の場合は0.45±0.05、0.10±0.02及び0.09±0.02、ならびにC1q結合の場合は0.98±0.09、0.158±0.004及び0.107±0.009であった。
【0144】
IV.参考文献
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【0145】
前述の組成物及び方法は、明確な理解のために例証及び例によって多少詳しく説明されてきたが、これらの説明及び例は、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用されるすべての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
【配列表】