(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】スタビライザの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60G 21/055 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
B60G21/055
(21)【出願番号】P 2021210188
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 知征
(72)【発明者】
【氏名】藤村 麟太郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 寛弘
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-133909(JP,A)
【文献】特開2009-190065(JP,A)
【文献】特開昭57-124533(JP,A)
【文献】国際公開第2010/035712(WO,A1)
【文献】特開2007-320343(JP,A)
【文献】実開昭56-120906(JP,U)
【文献】特開2007-320344(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170787(WO,A1)
【文献】特開2015-205675(JP,A)
【文献】特開平02-283519(JP,A)
【文献】特開昭63-273541(JP,A)
【文献】実開昭55-153208(JP,U)
【文献】特開2008-143313(JP,A)
【文献】特開平07-237428(JP,A)
【文献】実開昭60-020404(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 21/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する方向が異なる二組の一対の押圧部材によって筒状部材の端部を同時にそれぞれ挟み込んで押圧することによって、スタビライザの両端部を構成する第1および第2端部であって、扁平な形状をなす部分における前記筒状部材の一端部の外周面と内周面との差をそれぞれ示す肉厚が、前記スタビライザの本体部における直線部分の外周面と内周面との差を示す肉厚と同等の肉厚を有する第1および第2端部を形成する、
ことを特徴とするスタビライザの製造方法。
【請求項2】
一方の前記一対の押圧部材の移動量をブロックによって規制し、
他方の前記一対の押圧部材の移動量を、一方の前記一対の押圧部材への当接によって規制する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスタビライザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタビライザの製造方法およびスタビライザに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられるスタビライザは、車両に取り付けられて、該車両の姿勢を安定させる。スタビライザは、例えば中実の棒状部材を変形させて形成される(例えば、特許文献1を参照)。スタビライザは、両端部が車両と接続し、その接続部分は、平面状をなしている。スタビライザの端部は、棒状部材をつぶして平板化させた後、ボルト等が挿通される孔が形成される。この際、平板部の両側面部を切り落として、当該平板部の幅が調整される。
【0003】
ところで、車両の軽量化のために、スタビライザを軽量化することが求められている。スタビライザの軽量化としては、形成する材料を中実の棒状部材から中空の筒状部材に変更することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、材料を筒状部材に変更した場合、両端部を平板化した後、この平板部の両側面部を切り落とすと、当該側面部の肉厚が薄くなったり、側面部が切り落とされたりする。このように、側面部の肉厚が確保できなくなると、スタビライザの強度が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スタビライザにおける両端部の強度の確保と軽量化とを両立することができるスタビライザの製造方法およびスタビライザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るスタビライザの製造方法は、互いに対向する方向が異なる二組の一対の押圧部材によって筒状部材の端部をそれぞれ挟み込んで押圧することによって、スタビライザの両端部を構成する第1および第2端部であって、前記スタビライザの本体部の肉厚と同等の肉厚を有する第1および第2端部を形成する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るスタビライザの製造方法は、上記発明において、前記一対の第1の押圧部材と、前記一対の第2の押圧部材とが同時に前記第1および第2端部を挟み込んで押圧する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るスタビライザの製造方法は、上記発明において、一方の前記一対の押圧部材の移動量をブロックによって規制し、他方の前記一対の押圧部材の移動量を、一方の前記一対の押圧部材への当接によって規制する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るスタビライザは、互いに対向する方向が異なる二組の一対の押圧部材によって筒状部材の端部をそれぞれ挟み込んで押圧されてなるスタビライザであって、筒状の本体部と、前記本体部の一端側に設けられ、平板状をなす第1端部であって、前記本体部の肉厚と同等の肉厚を有する環状をなす第1端部と、前記本体部の他端側に設けられ、平板状をなす第2端部であって、前記本体部の肉厚と同等の肉厚を有する環状をなす第2端部と、を備え、前記第1および第2端部は、互いに反対側に形成される平面状の第1および第2平面部と、互いに反対側に形成され、かつ前記第1および第2平面部の連結部分にそれぞれ位置する平面状の第3および第4平面部と、をそれぞれ有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スタビライザにおける両端部の強度の確保と軽量化とを両立することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるスタビライザを含むサスペンション機構の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスタビライザの構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す領域Rにおけるスタビライザを矢視Aからみた平面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す矢視Cからみたスタビライザの端面を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施の形態にかかるスタビライザを作製するための筒状部材の構成を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施の形態にかかるスタビライザの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚さの比率などは現実のものとは異なる場合があり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態にかかるスタビライザを含むサスペンション機構の一例を示す斜視図である。
図1に示すサスペンション機構100は、スタビライザ1と、サスペンション101、102と、リンク103、104とを備える。サスペンション101、102は、伸縮自在なコイルばねを含む。サスペンション機構100が自動車に設けられる場合、タイヤ111、112(例えば前輪)に対してそれぞれ設けられて、路面の凹凸に応じてタイヤ111、112から伝達される振動を吸収する。スタビライザ1とサスペンション101、102とは、それぞれリンク103、104を介して接続される。
【0015】
図2は、
図1に示すスタビライザの構成を示す平面図である。
図3は、
図2に示す領域Rにおけるスタビライザを矢視Aからみた平面図である。
図4は、
図3に示すB-B線断面図である。
図5は、
図3に示す矢視Cからみたスタビライザの端面を示す平面図である。
【0016】
スタビライザ1は、金属や、各種繊維(例えば炭素繊維)からなる筒状部材を用いて形成される。スタビライザ1は、本体部10と、本体部10の一端に連なる第1端部11と、本体部10の他端に連なる第2端部12とを有する。
【0017】
本体部10は、中央部が直線状に延び、かつ当該本体部10の両端部が屈曲してなる。
【0018】
第1端部11は、扁平な形状をなす扁平部11aを有する。扁平部11aには、厚さ方向に貫通する孔部11bが形成される(
図3および
図4参照)。また、
図4に示すように、本体部10の肉厚T
10と第1端部11の肉厚T
11とは、同等またはほぼ同じである。ここでいう「ほぼ同じ」とは、製造上の誤差程度の差を含んで同じであることをいう。第1端部11は、矢視C方向からみた平面視において、閉じた環状(肉の内周面同士が接触している形状)をなす(
図5参照)。なお、この平面視は、
図5に示す閉じた環状をなすものに限らず、中空空間を有する環状をなすものであってもよい。この際、第1端部11の強度を確保するという観点で、閉じた環状の方が好ましい。
【0019】
また、第1端部11は、平面部11c~11fを有し、自動車等に取り付けられた際に、例えば平面部11cがボルトの頭部やワッシャ、ナット等の締結部材が接触する。平面部11cおよび11dと、平面部11eおよび11fとは、互いに垂直な平面をなす。スタビライザ1において、締結部材が接触する面は、平面であることが好ましい。
【0020】
第2端部12は、第1端部11と同様の形状なす。第2端部12は、扁平な形状をなす扁平部を有し、厚さ方向に貫通する孔部が形成される。また、第2端部12は、本体部10の肉厚と同等またはほぼ同じ肉厚を有する。
【0021】
続いて、上述したスタビライザ1の端部作製処理について、
図6~
図8を参照して説明する。スタビライザ1は、母材を加工することによって作製される。本実施の形態では、筒状の母材を屈曲させた後、両端部を平板状に加工し、各端部に貫通孔を形成する。
【0022】
図6は、本発明の一実施の形態にかかるスタビライザを作製するための筒状部材の構成を示す斜視図である。スタビライザ1の母材となる筒状部材20は、一様な内径および外径を有して延びる筒状をなす。筒状部材の肉厚は、例えばスタビライザ1の本体部10の肉厚と同じである。
【0023】
本実施の形態では、二組の一対の押圧部材によって縮径部を挟んで押圧することによって、スタビライザ1の端部を形成する。
図7は、本発明の一実施の形態にかかるスタビライザの製造方法を説明するための図である。
図7に示すように、筒状部材20の端部を介して互いに対向する第1押圧部材31および第2押圧部材32と、筒状部材20の端部を介して互いに対向し、かつ第1押圧部材31および第2押圧部材32の対向方向と直交する方向に対向する第3押圧部材33および第4押圧部材34とによって、筒状部材20の端部を挟んで押圧することによって、第1および第2端部を形成する。この際、各端部は、第1押圧部材31、第2押圧部材32、第3押圧部材33および第4押圧部材34によって、互いに直交する2方向から同時に押圧される。この際、例えば、第1押圧部材31および第2押圧部材32が、第3押圧部材33および第4押圧部材34よりも先に筒状部材20に接触するとともに、第3押圧部材33および第4押圧部材34が第1押圧部材31および第2押圧部材32に当接することによって、第3押圧部材33および第4押圧部材34による押し込み量が規制される。第1押圧部材31、第2押圧部材32、第3押圧部材33および第4押圧部材34は、例えばアクチュエータの駆動によって移動可能となる。
【0024】
第1押圧部材31~第4押圧部材34によって第1端部11および第2端部12を形成する際、筒状部材20の肉厚を維持した押圧が実施される。ここで、完成時の端部の肉厚は、第1押圧部材31および第2押圧部材32の押し込み量によって決まる。具体的には、第1押圧部材31および第2押圧部材32の押し込み量を規制するブロックにより決められる。このブロックは、第1押圧部材31および第2押圧部材32のアクチュエータによる移動量を強制的に止められる位置、かつ筒状部材20とは干渉しない位置に配置され、このブロックによる押圧部材の規制によって、肉厚が押圧前よりも薄くなることを抑制している。また、第3押圧部材33および第4押圧部材34は、第1押圧部材31および/または第2押圧部材32に当接することによって移動量が規制される。このため、第3押圧部材33および第4押圧部材34によって幅方向を押し込む際には、第1押圧部材31および/または第2押圧部材32に圧力がかかり、第3押圧部材33および第4押圧部材34によって肉厚が増大することはない。すなわち、第1端部11および第2端部12は、筒状部材20の肉厚と同等である。筒状部材20の端部以外の部分は本体部10に相当するため、第1端部11および第2端部12の肉厚は、本体部10の肉厚と同等となる。
【0025】
また、筒状部材20の両端部を互いに直交する2方向から押圧して平板化することによって、本体部10の外径に対する第1端部11および第2端部12の幅であって、第1端部11および第2端部12の各延伸方向に対して垂直な方向の最大の幅の増大が抑制される。
【0026】
本実施の形態では、筒状部材20の両端部を互いに直交する2方向から押圧して平板化することによって、スタビライザ1の第1端部11および第2端部12を形成するようにした。本実施の形態によれば、第1縮径部22および第2縮径部23の肉厚を維持しつつ、平板化して第1および第2端部を形成することによって、薄肉化の抑制による両端部の強度の確保と、筒形状によるスタビライザの軽量化とを両立することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、筒状部材20の両端部を互いに直交する2方向から押圧して平板化することによって、幅の増大を抑制しつつ、平面領域を増大させた端部を形成することができる。これにより、第1および第2端部における、締結部材に対する接触領域を増大させることができ、その結果、使用可能な締結部材の種別の自由度を高くしたり、締結部材との接触状態を安定化させたりすることができる。
【0028】
なお、上述した実施の形態では、第1押圧部材31および第2押圧部材32と、第3押圧部材33および第4押圧部材34とが同時に縮径部を挟み込む例について説明したが、同時に限らず、筒状部材20を挟み込むタイミングが互いに異なるようにしてもよい。
【0029】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、端部を平板化し、かつ平板部の幅を抑制することが求められる製品に対して適用可能である。
【0030】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0031】
以上説明したように、本発明に係るスタビライザの製造方法およびスタビライザは、スタビライザにおける両端部の強度の確保と軽量化とを両立するのに好適である。
【符号の説明】
【0032】
1 スタビライザ
10 本体部
11 第1端部
11a 扁平部
11b 孔部
11c~11f 平面部
12 第2端部
20 筒状部材
31 第1押圧部材
32 第2押圧部材
33 第3押圧部材
34 第4押圧部材