(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20240105BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20240105BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240105BHJP
【FI】
H05B3/14 F
H05B3/03
C01B32/168
(21)【出願番号】P 2021501959
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005907
(87)【国際公開番号】W WO2020170991
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019029258
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】井上 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】増原 直治
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0146214(US,A1)
【文献】特開平04-259785(JP,A)
【文献】特開2005-011651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/14
H05B 3/03
C01B 32/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、前記一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部と、を備えるカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に延びる接続領域の両端に一対の電極を配置する工程と、
b)前記回転体を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記回転体の周囲において前記カーボンナノチューブシートが径方向に積層された筒状中間体を形成する工程と、
c)周方向における前記接続領域の外側にて前記筒状中間体を切断し、前記筒状中間体のうち前記接続領域にて周方向に延びる部位である積層シート状のカーボンナノチューブ構造体により電気的に接続されている前記一対の電極間の抵抗を測定する工程と、
d)前記c)工程にて測定された抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、前記回転体を回転させることにより、前記カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記カーボンナノチューブ構造体上に前記カーボンナノチューブシートを積層する工程と、
e)周方向における前記接続領域の外側にて前記カーボンナノチューブシートを切断することにより、前記接続領域にて周方向に延びる積層シート状の接続シート部を形成する工程と、
f)前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項2】
一対の電極と、前記一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部と、を備えるカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極を配置する工程と、
b)前記回転体を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記回転体の周囲において前記カーボンナノチューブシートが径方向に積層された筒状中間体を形成する工程と、
c)前記一対の電極間の抵抗を測定する工程と、
d)前記c)工程にて測定された抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、前記回転体を回転させることにより、前記カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記筒状中間体上に前記カーボンナノチューブシートを積層する工程と、
e)前記一対の電極上に積層されたカーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定する工程と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記a)工程において、前記一対の電極は周方向に180°離れた位置に配置され、
前記e)工程は、
前記一対の電極のそれぞれの中央部にて前記カーボンナノチューブシート層および前記一対の電極を切断することにより、前記一対の電極間で周方向に延びる接続シート部を形成し、前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程、または、
前記一対の電極および筒状の前記カーボンナノチューブシート層を前記回転体から取り外し、前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定し、前記一対の電極間の前記カーボンナノチューブシート層を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、前記一対の電極間を接続する接続シート部を形成する工程、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記d)工程における前記カーボンナノチューブシートの巻回数が、
前記初期測定抵抗と、
前記カーボンナノチューブシートの積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報と、
に基づいて決定されることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項5】
一対の電極と、前記一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部と、を備えるカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極を配置する工程と、
b)前記一対の電極間の抵抗を測定しつつ、前記回転体を回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回する工程と、
c)前記b)工程にて測定される抵抗が所定の抵抗に到達するまで前記b)工程を継続することにより、前記一対の電極上に積層されたカーボンナノチューブシート層を形成する工程と、
d)前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定する工程と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記a)工程において、前記一対の電極は周方向に180°離れた位置に配置され、
前記d)工程は、
前記一対の電極のそれぞれの中央部にて前記カーボンナノチューブシート層および前記一対の電極を切断することにより、前記一対の電極間で周方向に延びる接続シート部を形成し、前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程、または、
前記一対の電極および筒状の前記カーボンナノチューブシート層を前記回転体から取り外し、前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定し、前記一対の電極間の前記カーボンナノチューブシート層を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、前記一対の電極間を接続する接続シート部を形成する工程、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項7】
一対の電極と、前記一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部と、を備えるカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に延びる接続領域の両端に一対の電極を配置するとともに、前記一対の電極の周方向外側にて前記接続領域および前記一対の電極を間に挟む位置に一対の測定用電極を配置する工程と、
b)前記回転体を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上および前記一対の測定用電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記回転体の周囲において前記カーボンナノチューブシートが径方向に積層された筒状中間体を形成する工程と、
c)周方向における前記一対の測定用電極の外側にて前記筒状中間体を切断し、前記筒状中間体のうち前記一対の測定用電極の間にて周方向に延びる部位である積層シート状のカーボンナノチューブ構造体により電気的に接続されている前記一対の測定用電極間の抵抗を測定する工程と、
d)前記c)工程にて得られた測定値に基づいて求められる前記一対の電極間の抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、前記回転体を回転させることにより、前記カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記カーボンナノチューブ構造体上に前記カーボンナノチューブシートを積層する工程と、
e)周方向における前記接続領域の外側かつ前記一対の測定用電極の内側にて前記カーボンナノチューブシートを切断することにより、前記接続領域にて周方向に延びる積層シート状の接続シート部を形成する工程と、
f)前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項8】
一対の電極と、前記一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部と、を備えるカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極を配置するとともに、周方向に離れた位置に一対の測定用電極を配置する工程と、
b)前記回転体を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上および前記一対の測定用電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記回転体の周囲において前記カーボンナノチューブシートが径方向に積層された筒状中間体を形成する工程と、
c)前記一対の測定用電極間の抵抗を測定する工程と、
d)前記c)工程にて得られた測定値に基づいて求められる前記一対の電極間の抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、前記回転体を回転させることにより、前記カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記筒状中間体上に前記カーボンナノチューブシートを積層する工程と、
e)前記一対の電極上に積層されたカーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定する工程と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記a)工程において、前記一対の電極は周方向に180°離れた位置に配置され、
前記e)工程は、
前記一対の電極のそれぞれの中央部にて前記カーボンナノチューブシート層および前記一対の電極を切断することにより、前記一対の電極間で周方向に延びる接続シート部を形成し、前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程、または、
前記一対の電極および筒状の前記カーボンナノチューブシート層を前記回転体から取り外し、前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定し、前記一対の電極間の前記カーボンナノチューブシート層を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、前記一対の電極間を接続する接続シート部を形成する工程、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記d)工程における前記カーボンナノチューブシートの巻回数が、
前記初期測定抵抗と、
前記カーボンナノチューブシートの積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報と、
に基づいて決定されることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項11】
一対の電極と、前記一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部と、を備えるカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極を配置するとともに、周方向に離れた位置に一対の測定用電極を配置する工程と、
b)前記一対の測定用電極間の抵抗を測定しつつ、前記回転体を回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上および一対の測定用電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回する工程と、
c)前記b)工程にて得られた測定値に基づいて求められる前記一対の電極間の抵抗が所定の抵抗に到達するまで前記b)工程を継続することにより、前記一対の電極上に積層されたカーボンナノチューブシート層を形成する工程と、
d)前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定する工程と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記a)工程において、前記一対の電極は周方向に180°離れた位置に配置され、
前記d)工程は、
前記一対の電極のそれぞれの中央部にて前記カーボンナノチューブシート層および前記一対の電極を切断することにより、前記一対の電極間で周方向に延びる接続シート部を形成し、前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程、または、
前記一対の電極および筒状の前記カーボンナノチューブシート層を前記回転体から取り外し、前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定し、前記一対の電極間の前記カーボンナノチューブシート層を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、前記一対の電極間を接続する接続シート部を形成する工程、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項7ないし12のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記a)工程と前記b)工程との間において、前記一対の測定用電極上に粘着剤が付与されることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記粘着剤はペースト状のロジンであることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし
4並びに請求項7ないし10のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記b)工程よりも前に、前記カーボンナノチューブシートの積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報に基づいて、前記目標抵抗に対応する目標巻回数が求められ、
前記初期巻回数は前記目標巻回数よりも少なく設定されることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記回転体に巻回される前記カーボンナノチューブシートに対して接着剤が付与されることを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載のカーボンナノチューブデバイスの製造方法であって、
前記接着剤は導電性添加材を含むことを特徴とするカーボンナノチューブデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブデバイスの製造方法に関する。
【0002】
[関連出願の参照]
本願は、2019年2月21日に出願された日本国特許出願JP2019-029258からの優先権の利益を主張し、当該出願の全ての開示は、本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、複数のカーボンナノチューブを様々な形状に成形し、ヒータやセンサ等の様々な製品に利用することが提案されている。例えば、特開2010-257971号公報(文献1)および特開2010-034056号公報(文献2)では、カーボンナノチューブを利用した面熱源が開示されている。文献1および文献2の面熱源は、所定数(例えば、100層)のカーボンナノチューブフィルムを積層した加熱素子と、加熱素子の両端部に接続された2つの電極と、を備える。また、文献2の面熱源では、2つの電極がカーボンナノチューブフィルム積層体により形成され、加熱素子と2つの電極とが、カーボンナノチューブの接着性により互いに直接接着されることが開示されている。
【0004】
ところで、文献1および文献2の面熱源では、積層される各カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの密度(いわゆる、繊維密度)のばらつきにより、同じ層数のカーボンナノチューブフィルムを積層した場合であっても、加熱素子の抵抗にばらつきが生じる。このため、所望の抵抗を有する面熱源を製造することは困難である。また、面熱源の大面積化も困難である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一対の電極と、一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部とを備えるカーボンナノチューブデバイスの製造方法に向けられており、所望の抵抗を有するカーボンナノチューブデバイスを提供することを主な目的としている。
【0006】
本発明の好ましい一の形態に係るカーボンナノチューブデバイスの製造方法は、a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に延びる接続領域の両端に一対の電極を配置する工程と、b)前記回転体を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記回転体の周囲において前記カーボンナノチューブシートが径方向に積層された筒状中間体を形成する工程と、c)周方向における前記接続領域の外側にて前記筒状中間体を切断し、前記筒状中間体のうち前記接続領域にて周方向に延びる部位である積層シート状のカーボンナノチューブ構造体により電気的に接続されている前記一対の電極間の抵抗を測定する工程と、d)前記c)工程にて測定された抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、前記回転体を回転させることにより、前記カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記カーボンナノチューブ構造体上に前記カーボンナノチューブシートを積層する工程と、e)周方向における前記接続領域の外側にて前記カーボンナノチューブシートを切断することにより、前記接続領域にて周方向に延びる積層シート状の接続シート部を形成する工程と、f)前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程とを備える。本発明によれば、所望の抵抗を有するカーボンナノチューブデバイスを提供することができる。
【0007】
本発明の好ましい他の形態に係るカーボンナノチューブデバイスの製造方法は、a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極を配置する工程と、b)前記回転体を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記回転体の周囲において前記カーボンナノチューブシートが径方向に積層された筒状中間体を形成する工程と、c)前記一対の電極間の抵抗を測定する工程と、d)前記c)工程にて測定された抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、前記回転体を回転させることにより、前記カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記筒状中間体上に前記カーボンナノチューブシートを積層する工程と、e)前記一対の電極上に積層されたカーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定する工程とを備える。本発明によれば、所望の抵抗を有するカーボンナノチューブデバイスを提供することができる。
【0008】
好ましくは、前記a)工程において、前記一対の電極は周方向に180°離れた位置に配置される。前記e)工程は、前記一対の電極のそれぞれの中央部にて前記カーボンナノチューブシート層および前記一対の電極を切断することにより、前記一対の電極間で周方向に延びる接続シート部を形成し、前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程、または、前記一対の電極および筒状の前記カーボンナノチューブシート層を前記回転体から取り外し、前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定し、前記一対の電極間の前記カーボンナノチューブシート層を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、前記一対の電極間を接続する接続シート部を形成する工程、を備える。
【0009】
好ましくは、前記d)工程における前記カーボンナノチューブシートの巻回数が、前記初期測定抵抗と、前記カーボンナノチューブシートの積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報と、に基づいて決定される。
【0010】
本発明の好ましい他の形態に係るカーボンナノチューブデバイスの製造方法は、a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極を配置する工程と、b)前記一対の電極間の抵抗を測定しつつ、前記回転体を回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回する工程と、c)前記b)工程にて測定される抵抗が所定の抵抗に到達するまで前記b)工程を継続することにより、前記一対の電極上に積層されたカーボンナノチューブシート層を形成する工程と、d)前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定する工程とを備える。本発明によれば、所望の抵抗を有するカーボンナノチューブデバイスを提供することができる。
【0011】
好ましくは、前記a)工程において、前記一対の電極は周方向に180°離れた位置に配置される。前記d)工程は、前記一対の電極のそれぞれの中央部にて前記カーボンナノチューブシート層および前記一対の電極を切断することにより、前記一対の電極間で周方向に延びる接続シート部を形成し、前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程、または、前記一対の電極および筒状の前記カーボンナノチューブシート層を前記回転体から取り外し、前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定し、前記一対の電極間の前記カーボンナノチューブシート層を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、前記一対の電極間を接続する接続シート部を形成する工程、を備える。
【0012】
本発明の好ましい他の形態に係るカーボンナノチューブデバイスの製造方法は、a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に延びる接続領域の両端に一対の電極を配置するとともに、前記一対の電極の周方向外側にて前記接続領域および前記一対の電極を間に挟む位置に一対の測定用電極を配置する工程と、b)前記回転体を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上および前記一対の測定用電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記回転体の周囲において前記カーボンナノチューブシートが径方向に積層された筒状中間体を形成する工程と、c)周方向における前記一対の測定用電極の外側にて前記筒状中間体を切断し、前記筒状中間体のうち前記一対の測定用電極の間にて周方向に延びる部位である積層シート状のカーボンナノチューブ構造体により電気的に接続されている前記一対の測定用電極間の抵抗を測定する工程と、d)前記c)工程にて得られた測定値に基づいて求められる前記一対の電極間の抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、前記回転体を回転させることにより、前記カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記カーボンナノチューブ構造体上に前記カーボンナノチューブシートを積層する工程と、e)周方向における前記接続領域の外側かつ前記一対の測定用電極の内側にて前記カーボンナノチューブシートを切断することにより、前記接続領域にて周方向に延びる積層シート状の接続シート部を形成する工程と、f)前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程とを備える。本発明によれば、所望の抵抗を有するカーボンナノチューブデバイスを提供することができる。
【0013】
本発明の好ましい他の形態に係るカーボンナノチューブデバイスの製造方法は、a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極を配置するとともに、周方向に離れた位置に一対の測定用電極を配置する工程と、b)前記回転体を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上および前記一対の測定用電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記回転体の周囲において前記カーボンナノチューブシートが径方向に積層された筒状中間体を形成する工程と、c)前記一対の測定用電極間の抵抗を測定する工程と、d)前記c)工程にて得られた測定値に基づいて求められる前記一対の電極間の抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、前記回転体を回転させることにより、前記カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回し、前記筒状中間体上に前記カーボンナノチューブシートを積層する工程と、e)前記一対の電極上に積層されたカーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定する工程とを備える。本発明によれば、所望の抵抗を有するカーボンナノチューブデバイスを提供することができる。
【0014】
好ましくは、前記a)工程において、前記一対の電極は周方向に180°離れた位置に配置される。前記e)工程は、前記一対の電極のそれぞれの中央部にて前記カーボンナノチューブシート層および前記一対の電極を切断することにより、前記一対の電極間で周方向に延びる接続シート部を形成し、前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程、または、前記一対の電極および筒状の前記カーボンナノチューブシート層を前記回転体から取り外し、前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定し、前記一対の電極間の前記カーボンナノチューブシート層を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、前記一対の電極間を接続する接続シート部を形成する工程、を備える。
【0015】
好ましくは、前記d)工程における前記カーボンナノチューブシートの巻回数が、前記初期測定抵抗と、前記カーボンナノチューブシートの積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報と、に基づいて決定される。
【0016】
本発明の好ましい他の形態に係るカーボンナノチューブデバイスの製造方法は、a)軸方向を向く回転軸を中心として回転可能な回転体の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極を配置するとともに、周方向に離れた位置に一対の測定用電極を配置する工程と、b)前記一対の測定用電極間の抵抗を測定しつつ、前記回転体を回転させることにより、カーボンナノチューブシートを前記一対の電極上および一対の測定用電極上を通過させつつ前記外側面上に巻回する工程と、c)前記b)工程にて得られた測定値に基づいて求められる前記一対の電極間の抵抗が所定の抵抗に到達するまで前記b)工程を継続することにより、前記一対の電極上に積層されたカーボンナノチューブシート層を形成する工程と、d)前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定する工程とを備える。本発明によれば、所望の抵抗を有するカーボンナノチューブデバイスを提供することができる。
【0017】
好ましくは、前記a)工程において、前記一対の電極は周方向に180°離れた位置に配置される。前記d)工程は、前記一対の電極のそれぞれの中央部にて前記カーボンナノチューブシート層および前記一対の電極を切断することにより、前記一対の電極間で周方向に延びる接続シート部を形成し、前記接続シート部の両端部を前記一対の電極に固定する工程、または、前記一対の電極および筒状の前記カーボンナノチューブシート層を前記回転体から取り外し、前記カーボンナノチューブシート層を前記一対の電極に固定し、前記一対の電極間の前記カーボンナノチューブシート層を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、前記一対の電極間を接続する接続シート部を形成する工程、を備える。
【0018】
好ましくは、前記a)工程と前記b)工程との間において、前記一対の測定用電極上に粘着剤が付与される。
【0019】
好ましくは、前記粘着剤はペースト状のロジンである。
【0020】
好ましくは、前記b)工程よりも前に、前記カーボンナノチューブシートの積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報に基づいて、前記目標抵抗に対応する目標巻回数が求められ、前記初期巻回数は前記目標巻回数よりも少なく設定される。
【0021】
好ましくは、前記回転体に巻回される前記カーボンナノチューブシートに対して接着剤が付与される。
【0022】
好ましくは、前記接着剤は導電性添加材を含む。
【0029】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】一の実施の形態に係るカーボンナノチューブヒータの側面図である。
【
図2】カーボンナノチューブヒータの平面図である。
【
図6】カーボンナノチューブヒータの製造の流れの第1の例を示す図である。
【
図7】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図8】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図9】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図10】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図11】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図12】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図13】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図14】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図15】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図16】接続シート部の電極への固定の流れを示す図である。
【
図17】接続シート部の電極への固定の様子を示す図である。
【
図18】接続シート部の電極への固定の様子を示す図である。
【
図19】接続シート部の電極への固定の様子を示す図である。
【
図20】接続シート部の電極への固定の様子を示す図である。
【
図21】接続シート部の電極への固定の様子を示す図である。
【
図22】カーボンナノチューブヒータの製造の流れの第2の例を示す図である。
【
図24】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図25】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図26】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図27】カーボンナノチューブヒータの製造の流れの第3の例を示す図である。
【
図28】カーボンナノチューブヒータの製造の流れの一部を示す図である。
【
図30】カーボンナノチューブヒータの製造の流れの第4の例を示す図である。
【
図33】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図34】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図35】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図36】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図37】製造途上のカーボンナノチューブヒータを示す図である。
【
図38】カーボンナノチューブヒータの製造の流れの第5の例を示す図である。
【
図40】カーボンナノチューブヒータの製造の流れの第6の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るカーボンナノチューブヒータ1を示す側面図である。
図2は、カーボンナノチューブヒータ1を示す平面図である。カーボンナノチューブヒータ1は、例えば、対象物の加熱に利用される比較的薄型のシート状ヒータである。
図2に示す例では、カーボンナノチューブヒータ1の平面視における形状は、略矩形の帯状である。以下の説明では、
図1中の左右方向を「長手方向」とも呼び、
図1中の上下方向を単に「上下方向」とも呼ぶ。また、
図2中の上下方向(すなわち、長手方向に垂直な方向)を、「幅方向」とも呼ぶ。なお、上述の上下方向は、実際の重量方向と一致しなくてもよい。
【0032】
カーボンナノチューブヒータ1は、カーボンナノチューブデバイス2と、収容部31と、放熱部34とを備える。カーボンナノチューブデバイス2、収容部31および放熱部34の平面視における形状はそれぞれ、例えば、長手方向に延びる略矩形の帯状である。なお、カーボンナノチューブヒータ1、カーボンナノチューブデバイス2、収容部31および放熱部34の平面視におけるそれぞれの形状は、必ずしも長手方向に長い略矩形である必要はなく、長手方向と幅方向との長さが略同じである略正方形であってもよく、幅方向に長い略矩形であってもよい。
【0033】
カーボンナノチューブデバイス2は、電力を供給されることにより発熱する略シート状の発熱体である。本明細書におけるシート状とは、縦横の長さに対して厚さが薄い形状を意味し、可撓性を有していても有していなくてもよい。また、本明細書におけるシート状とは、フィルム状と呼ばれる形状も含む概念である。カーボンナノチューブデバイス2は、接続シート部21と、一対の電極22と、支持シート部23とを備える。一対の電極22は、長手方向に離間して配置される。接続シート部21および支持シート部23は、一方の電極22から他方の電極22へと長手方向に延び、一対の電極22を接続する。
【0034】
接続シート部21は、導電性のシート部材である。接続シート部21は、多数のカーボンナノチューブにより形成された可撓性を有するシート状のカーボンナノチューブ成形体である。具体的には、接続シート部21は、複数のカーボンナノチューブシートが厚さ方向に積層された積層シート状のカーボンナノチューブ成形体である。接続シート部21におけるカーボンナノチューブシートの積層数は、カーボンナノチューブデバイス2に求められる性能により様々に変化するが、例えば10層~100層であり、本実施の形態では約40層である。
【0035】
接続シート部21の平面視における形状は、例えば、長手方向に延びる略矩形の帯状である。接続シート部21の長手方向の長さ(以下、単に「長さ」とも呼ぶ。)は、カーボンナノチューブデバイス2に求められる性能により様々に変化するが、例えば10mm~1000mmである。接続シート部21の幅方向の幅(以下、単に「幅」とも呼ぶ。)も、カーボンナノチューブデバイス2に求められる性能により様々に変化するが、例えば10mm~1000mmである。接続シート部21の長手方向の両端部は、一対の電極22にそれぞれ固定されて電気的に接続されている。換言すれば、接続シート部21は、一対の電極22の間にて長手方向に延びるとともに幅方向に広がる。接続シート部21の長さおよび幅は、例えば、200mmおよび60mmである。また、接続シート部21の長さおよび幅は、例えば、94mmおよび180mmである。好ましくは、接続シート部21は、対角線の長さが200mm以上である略矩形状である。
【0036】
一対の電極22はそれぞれ、幅方向に延びる略矩形帯状の薄板状部材である。各電極22は、例えば銅(Cu)等により形成された金属箔である。各電極22の厚さは、例えば20μm~300μmであり、好ましくは50μm~100μmである。
図1に示す例では、各電極22は、間に接続シート部21の端部を挟んで2つ折りに折り畳まれて押圧されることにより、接続シート部21と接続される。カーボンナノチューブデバイス2では、接続シート部21により、一対の電極22が電気的に接続される。
【0037】
支持シート部23は、絶縁体により形成された可撓性を有する絶縁性のシート部材である。支持シート部23は、例えば、ポリエステル、フッ素樹脂等の樹脂繊維により形成されたメッシュシートである。支持シート部23の長手方向両端部は、例えば、接着剤により一対の電極22の上面に固定されている。なお、支持シート部23の材料および構造は、様々に変更されてよい。
【0038】
カーボンナノチューブデバイス2では、接続シート部21を形成する多数のカーボンナノチューブは、例えば、長手方向に略平行に延びる。当該多数のカーボンナノチューブは、長手方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。当該多数のカーボンナノチューブは、略同じ方向に延びていてもよく、異なる方向に延びていてもよい。
【0039】
図1に例示するカーボンナノチューブデバイス2では、当該多数のカーボンナノチューブが、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液等を主成分とする接着剤により互いに接着され、さらに、支持シート部23の下面に接着されている。当該接着剤は、エポキシ系、アクリル系またはシリコンゴム系の接着剤であってもよい。当該接着剤は、好ましくは、導電性添加材を含む。当該導電性添加材は、例えば、銀(Ag)等の金属微粒子、グラフェン(具体的には、シート状グラフェンを粉砕した粉体)、ミルドファイバー、または、カーボンナノチューブの粉体である。当該導電性添加材の直径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm未満である。なお、上記接着剤は、導電性添加材を含んでいなくてもよい。
【0040】
収容部31は、カーボンナノチューブデバイス2の全体を内部に収容して(すなわち、被覆して)固定する外装部材である。収容部31は、可撓性を有する絶縁性のシート状部材である。収容部31は、例えば、樹脂または弾性高分子材料により形成される。
【0041】
図1および
図2に示す例では、収容部31は、下部材32と、上部材33とを備える。下部材32は、カーボンナノチューブデバイス2を下側から支持して被覆する。上部材33は、カーボンナノチューブデバイス2を間に挟んで下部材32の上面上に固定されることにより、カーボンナノチューブデバイス2を上側から被覆する。換言すれば、カーボンナノチューブデバイス2は、下部材32と上部材33とにより封止される。下部材32は、例えば、剥離紙上にシリコン樹脂を膜状に塗布して硬化させることにより形成される。上部材33は、例えば、下部材32上にシリコン樹脂を膜状に塗布して硬化させることにより形成される。あるいは、下部材32および/または上部材33は、樹脂フィルムの表面に接着剤層が設けられたラミネートフィルム、または、シリコンシート等であってもよい。
【0042】
カーボンナノチューブヒータ1は、さらに、図示省略の一対の端子を備える。当該一対の端子は、収容部31の内部において、一対の電極22とそれぞれ電気的に接続される。また、当該一対の端子は、一対の電極22から収容部31を貫通して収容部31の外部へと延びる。カーボンナノチューブデバイス2への電力の供給は、当該一対の端子を介して行われる。これにより、カーボンナノチューブデバイス2が発熱する。
【0043】
カーボンナノチューブヒータ1では、収容部31は、必ずしもカーボンナノチューブデバイス2の全体を内部に収容する必要はなく、少なくとも接続シート部21の全体を内部に収容していればよい。換言すれば、カーボンナノチューブヒータ1では、各電極22の一部または全体が、収容部31から外部に露出していてもよい。この場合、上述の一対の端子は省略され、収容部31から露出している一対の電極22に電線が直接的に接続されてもよい。
【0044】
放熱部34は、収容部31の外面に設けられるシート状(すなわち、膜状または薄板状)の部材である。
図1に示す例では、放熱部34は、収容部31の上面(すなわち、上側の主面)に設けられる。放熱部34は、例えば、収容部31の上面に接着剤等で固定された金属箔等の金属製のシート状の部材である。当該金属として、例えば、アルミニウム(Al)や銅が利用可能である。放熱部34は、例えば、収容部31の上面に蒸着等により形成された金属製の薄膜であってもよい。放熱部34は、接続シート部21の主面に沿って、当該主面に略平行に広がる。放熱部34は、接続シート部21の主面に垂直な方向において、接続シート部21の略全体と重なる。換言すれば、放熱部34は、平面視において、接続シート部21の略全体を覆う。放熱部34の上面(すなわち、収容部31と反対側の主面)は、カーボンナノチューブデバイス2の接続シート部21からの熱を均等化して放熱する放熱面である。
【0045】
カーボンナノチューブヒータ1では、放熱部34の温度を測定する温度センサ36が設けられる。
図1および
図2に示す例では、温度センサ36は、放熱部34の周縁部に設けられる。温度センサ36の取り付け位置は、放熱部34上において様々に変更されてよい。温度センサ36としては、例えば、電気式の測温抵抗体、熱電対またはサーミスタが利用可能である。カーボンナノチューブヒータ1では、温度センサ36からの出力(すなわち、温度測定値等)に基づいたカーボンナノチューブヒータ1の温度制御や過熱防止が行われる。また、カーボンナノチューブヒータ1では、サーモスタットを用いたカーボンナノチューブヒータ1の温度制御や過熱防止が行われてもよい。この場合、サーモスタットに内蔵される温度により変化する部位(例えば、バイメタル型サーモスタットの場合、バイメタル)が上記温度センサに相当する。
【0046】
次に、カーボンナノチューブヒータ1の製造について説明する。
図3は、カーボンナノチューブデバイス2を製造するデバイス製造装置4の構成を示す側面図である。
図4は、デバイス製造装置4を示す平面図である。
図3では、図の理解を容易にするために、カーボンナノチューブシート94および各電極22の厚さを実際よりも厚く描いている。また、各電極22に平行斜線を付す。
図4では、図の理解を容易にするために、デバイス製造装置4の一部の構成の図示を省略している。
【0047】
デバイス製造装置4は、基板保持部41と、回転体42と、回転機構43と、接着剤付与部44と、押圧ローラ45と、制御部46とを備える。
図3中において、基板保持部41は、回転体42の回転軸J1の左上に位置する。接着剤付与部44および押圧ローラ45は、回転軸J1の右上に位置する。
【0048】
基板保持部41は、多数のカーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイ91が立設した基板92の下面に接触し、基板92を下側から保持する。基板92は、例えば、平板状の薄板状部材である。基板92は、例えば、シリコン基板、または、表面に二酸化ケイ素膜が設けられたステンレス鋼製の基板である。なお、基板92は、可撓性を有する長尺の薄板状部材であってもよい。この場合、デバイス製造装置4には、基板92のうち、カーボンナノチューブアレイ91が剥離された部分を巻き取る回収部(例えば、回収ローラおよびモータ)が設けられることが好ましい。
【0049】
カーボンナノチューブアレイ91は、例えば、鉄(Fe)等の触媒を利用した化学気相成長法(すなわち、CVD法)により、基板92の表面に対して所定の配向方向(本実施の形態では、略垂直)に配向する多数のカーボンナノチューブを基板92上に成長させることにより形成される。カーボンナノチューブアレイ91の形成は、他の様々な方法により行われてもよい。
【0050】
カーボンナノチューブアレイ91の厚さ(すなわち、カーボンナノチューブアレイ91に含まれるカーボンナノチューブの上下方向における長さ)は、例えば、50μm~1000μmである。本実施の形態では、カーボンナノチューブアレイ91の厚さは、50μm~500μmである。カーボンナノチューブアレイ91の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製)または非接触膜厚計(株式会社キーエンス製)により測定される。
【0051】
カーボンナノチューブアレイ91では、例えば、1cm2当たりに109本~1011本のカーボンナノチューブが存在する。隣接するカーボンナノチューブ間の距離は、例えば、100nm~200nmである。各カーボンナノチューブの外径は、例えば、10nm~30nmである。各カーボンナノチューブは、例えば、5層~10層の多層カーボンナノチューブである。各カーボンナノチューブは、4層以下または11層以上の多層カーボンナノチューブであってもよく、単層カーボンナノチューブであってもよい。
【0052】
カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度は、例えば、10mg/cm3~60mg/cm3である。好ましくは、カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度は、20mg/cm3~50mg/cm3である。カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度は、単位面積当たりのカーボンナノチューブアレイ91の質量(すなわち、目付量)を、カーボンナノチューブアレイ91の厚さで除算することにより求められる。
【0053】
回転体42は、
図3中の紙面に垂直な方向(以下、「軸方向」とも呼ぶ。)を向く回転軸J1を中心とする略円柱状または略円筒状の部材である。回転体42の外側面は、軸方向に平行に延びる略円筒面である。当該軸方向は、カーボンナノチューブデバイス2の幅方向に対応する方向であるため、「幅方向」とも呼ぶ。回転体42の外側面上には、カーボンナノチューブヒータ1の支持シート部23となる予定の絶縁性シート部材230(例えば、ポリエステル繊維で形成されたメッシュシート)が着脱可能に取り付けられている。絶縁性シート部材230は、例えば、回転体42の外周面を、回転軸J1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」とも呼ぶ。)の全周に亘って覆う。
【0054】
回転体42の外側面上には一対の電極が配置される。回転体42の外側面上には、複数組の一対の電極が配置されてもよい。本実施の形態では、回転体42の外側面上に三対の電極が配置され、絶縁性シート部材230を介して回転体42の外側面に着脱可能に取り付けられる。以下の説明では、第1の電極対の2つの電極に符号22aを付し、第2の電極対の2つの電極に符号22bを付し、第3の電極対の2つの電極に符号22cを付す。また、電極22a,22b,22cを区別しない場合は、上記と同様、電極22と呼ぶ。デバイス製造装置4では、後述するように、三対の電極22の間にそれぞれ接続シート部21が形成され、3つのカーボンナノチューブデバイス2が形成される。
【0055】
以下の説明では、回転体42の外側面において、第1の電極対の2つの電極22aの間にて周方向に延びる領域、第2の電極対の2つの電極22bの間にて周方向に延びる領域、および、第3の電極対の2つの電極22cの間にて周方向に延びる領域をそれぞれ、「接続領域421」と呼ぶ。3つの接続領域421のうち、
図3中において回転軸J1の左側に位置する接続領域421の周方向の両端には、一対の電極22aが配置される。また、回転軸J1の右下に位置する接続領域421の周方向の両端には、一対の電極22bが配置される。回転軸J1の右上に位置する接続領域421の周方向の両端には、一対の電極22cが配置される。
【0056】
回転体42は、回転機構43により、回転軸J1を中心として回転可能である。
図3に示す例では、回転体42は、図中における時計回りに回転する。回転機構43は、例えば、回転体42に接続された電動モータである。回転機構43により回転体42が回転することにより、基板92上のカーボンナノチューブアレイ91が
図3中の左側から右側へと向かう方向(以下、「引出方向」と呼ぶ。)に引き出され、引出方向に延びるカーボンナノチューブシート94が形成される。カーボンナノチューブシート94の幅方向の幅は、カーボンナノチューブアレイ91の幅方向の幅と略同じである。
図4に示す例では、カーボンナノチューブシート94は、略矩形状である。カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94は、三対の電極22上を通過しつつ、回転体42の外側面上に巻回される。これにより、回転体42の外側面上において、カーボンナノチューブシート94が、回転軸J1を中心とする径方向(以下、単に「径方向」とも呼ぶ。)に積層される。
【0057】
カーボンナノチューブシート94は、複数のカーボンナノチューブにより形成されたシート状のカーボンナノチューブ成形体である。詳細には、カーボンナノチューブシート94は、カーボンナノチューブアレイ91から引出方向に引き出された複数のカーボンナノチューブ単糸が、幅方向に配列されるとともに互いに連結されてシート状成形体(ウェブ状成形体とも捉えられる。)となったものである。カーボンナノチューブ単糸とは、ファンデンワールス力等により、複数のカーボンナノチューブが長手方向に連続して接続された線状のカーボンナノチューブ成形体である。
【0058】
接着剤付与部44は、回転体42の外側面と径方向に対向する位置に配置される。接着剤付与部44は、回転体42の外側面上に巻回されたカーボンナノチューブシート94に、上述の接着剤(好ましくは、導電性添加材を含む接着剤)を付与する。接着剤付与部44は、例えば、回転体42上のカーボンナノチューブシート94に向けて、接着剤を噴霧するスプレーノズルである。あるいは、接着剤付与部44は、回転体42上のカーボンナノチューブシート94に接触または近接して、接着剤を塗布するコータであってもよい。
【0059】
押圧ローラ45は、上述の軸方向(すなわち、幅方向)を向く回転軸J2を中心とする略円柱状または略円筒状の部材であり、回転軸J2を中心として回転可能である。押圧ローラ45の幅方向の幅は、カーボンナノチューブシート94の幅方向の幅よりも大きい。押圧ローラ45は、接着剤付与部44よりも回転体42の回転方向前側(すなわち、カーボンナノチューブシート94の巻回方向の下流側)に位置し、回転体42の外側面と径方向に対向する。押圧ローラ45は、図示省略の押圧機構(例えば、電動シリンダまたはエアシリンダ)によって回転体42に向けて押圧されることにより、接着剤が付与されたカーボンナノチューブシート94を回転体42の外側面に向けて押圧する。これにより、カーボンナノチューブシート94は、回転体42の外側面上に取り付けられた絶縁性シート部材230上に圧密される。回転体42の回転軸J1と押圧ローラ45の回転軸J2との間の径方向の距離は、上述の押圧機構により調節可能であり、回転体42の回転中においても調節することができる。
【0060】
制御部46は、プロセッサ、メモリ、入出力部およびバス等を備える通常のコンピュータシステムである。バスは、プロセッサ、メモリおよび入出力部を接続する信号回路である。メモリは、プログラムおよび各種情報を記憶する。プロセッサは、メモリに記憶されるプログラム等に従って、メモリ等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値演算等)を実行する。入出力部は、操作者からの入力等を受け付け、他の構成(例えば、回転機構43)への信号を出力する。当該コンピュータシステムが所定のプログラムに基づいて処理を行うことにより、制御部46の各機能(例えば、記憶部および演算部)が実現される。制御部46は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)であってもよく、回路基板等であってもよい。なお、
図4では、制御部46の図示を省略している。
【0061】
制御部46の記憶部には、カーボンナノチューブシート94が厚さ方向に積層された積層体について、カーボンナノチューブシート94の積層数と、当該積層体の抵抗との関係を示す積層抵抗情報が、予め格納されている。積層抵抗情報は、カーボンナノチューブヒータ1の製造よりも前に、実験等により予め取得される。積層抵抗情報は、当該積層体の抵抗そのものを情報として有していてもよく、当該積層体の抵抗を決定する所定のパラメータを情報として有していてもよい。
【0062】
本実施の形態では、積層抵抗情報は、カーボンナノチューブシート94の積層数と、当該積層体の長手方向の単位長さ当たりの抵抗との関係を示す。
図5に示すように、上記積層体の単位長さ当たりの抵抗は、カーボンナノチューブシート94の積層数が増加するに従って漸次減少する。なお、当該積層体の長手方向の長さが変化すると単位長さ当たりの抵抗も変化する場合(例えば、積層体の長手方向の長さが増大すると、単位長さ当たりの抵抗が漸次減少する場合)、積層体の各長さに対応する積層抵抗情報が、制御部46の記憶部に格納される。
【0063】
次に、カーボンナノチューブヒータ1の製造の流れの第1の例について、
図6を参照しつつ説明する。
図7ないし
図15は、製造途上のカーボンナノチューブヒータ1を示す図である。
【0064】
カーボンナノチューブヒータ1が製造される際には、まず、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗として予め設定されている目標抵抗が、作業者により制御部46に入力される。当該目標抵抗は、例えば1Ω~100Ωであり、本実施の形態では20Ωである。続いて、制御部46の演算部により、当該目標抵抗に対応するカーボンナノチューブシート94の積層数(すなわち、回転体42に対する巻回数であり、以下、「目標巻回数」と呼ぶ。)が、積層抵抗情報に基づいて求められる。具体的には、例えば、予め設定されている接続シート部21の長さに対応する積層抵抗情報が選択される。そして、当該積層抵抗情報において、目標抵抗を接続シート部21の長さにより除算した値と対応する単位長さ当たりの抵抗が求められ、当該単位長さ当たりの抵抗に対応する積層数が目標巻回数として求められる。単位長さ当たりの抵抗を求める際には、接続シート部21と電極22との接触抵抗が考慮されることが好ましい。
【0065】
上述のように、カーボンナノチューブシート94では、カーボンナノチューブの密度(いわゆる、繊維密度)にばらつきが生じている可能性があるため、目標巻回数だけカーボンナノチューブシート94を巻回したとしても、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗は必ずしも目標抵抗に等しくなるとは限らない。そこで、
図6に例示する製造方法では、当該目標巻回数に基づいて、目標巻回数よりも少ない初期巻回数が演算部により設定される(ステップS11)。初期巻回数は、目標巻回数よりも所定の巻回数(例えば1回転~20回転であり、好ましくは1回転~9回転)だけ少ない巻回数とされる。
【0066】
続いて、
図3および
図4に示すように、回転体42の外側面に絶縁性シート部材230が取り付けられ、絶縁性シート部材230上に三対の電極22が取り付けられる。各一対の電極22は、回転体42の外側面において、上述の接続領域421の両端に配置される(ステップS12)。各電極22の上側の主面(すなわち、回転体42の外側面に対向する主面である下面とは反対側の上面)上には、導電性ペーストが付与される。当該導電性ペーストは、例えば、低融点ハンダ、金属ペーストまたは導電性接着剤である。導電性接着剤は、例えば、上述の導電性添加材を含む接着剤である。なお、ステップS12は、ステップS11と並行して行われてもよく、ステップS11よりも前に行われてもよい。
【0067】
ステップS11およびステップS12が終了すると、制御部46により回転機構43が制御され、回転体42が上述の初期巻回数だけ回転される。これにより、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、三対の電極22a,22b,22c上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。換言すれば、三対の電極22a,22b,22cのそれぞれの間にて、カーボンナノチューブシート94が積層される。
【0068】
このとき、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。接着剤は、例えば、0.1質量%~10質量%(好ましくは、1質量%~5質量%)のPVAを含むPVA水溶液である。カーボンナノチューブシート94に接着剤が付与されることにより、カーボンナノチューブシート94を構成するカーボンナノチューブが凝集する。すなわち、当該接着剤は、カーボンナノチューブを凝集させる凝集剤でもある。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45により回転体42の外側面に向けて押圧され、当該外側面上の絶縁性シート部材230上に圧密される。
【0069】
デバイス製造装置4では、
図7に示すように、回転体42の周囲においてカーボンナノチューブシート94が初期巻回数に等しい積層数だけ径方向に積層された筒状中間体51が形成される(ステップS13)。
図7では、三対の電極22のうち、第1の電極対の2つの電極22aのみを示す。以下では、一対の電極22a、および、当該一対の電極22aを備えるカーボンナノチューブデバイス2に注目して、その製造方法について説明する。なお、一対の電極22b、および、一対の電極22cをそれぞれ備えるカーボンナノチューブデバイス2の製造についても同様である。
図7に示すカーボンナノチューブシート94の積層数は、図示の都合上、実際の積層数よりも少なく描いている。
【0070】
図8は、
図7中の上側の電極22aの左下の端部(すなわち、長手方向の両端部のうち、他の電極22aと周方向に対向する側の端部)を、当該電極22aが設けられている位置における回転体42の外側面の接線方向から見た図である。電極22aは、
図8に示す長手方向の一方の端部に、電極22aの上側の主面221から、上方に立設する複数の凸部222を備える。回転体42の外側面上に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、電極22aの上記一方の端部において、複数の凸部222の上端に沿って電極22aに接触する。また、電極22aの当該一方の端部以外の部位では、カーボンナノチューブシート94は、電極22aの上側の主面221に接触する。
図7中の下側の電極22aにおいても同様である。
【0071】
カーボンナノチューブシート94の初期巻回数の巻回が終了すると、回転機構43が停止される。そして、
図9に示すように、筒状中間体51が、周方向における接続領域421の外側にて切断される。具体的には、筒状中間体51は、一対の電極22aの外側(すなわち、各電極22aを挟んで接続領域421と反対側の2つの切断位置)にて切断される。本実施の形態では、具体的な切断位置は、周方向にて隣接する電極22aと電極22bとの間、電極22aと電極22cとの間、および、電極22bと電極22cとの間の位置である。筒状中間体51の切断は、例えば、カッター等の切断刃47により行われる。なお、筒状中間体51の切断は、一対の電極22a上にて行われてもよい。
【0072】
続いて、
図10に示すように、一対の電極22a間の抵抗が測定される(ステップS14)。一対の電極22aには、筒状中間体51のうち、接続領域421にて周方向に延びる部位である積層シート状のカーボンナノチューブ構造体52の長手方向両端部が接触している。カーボンナノチューブ構造体52の端部は、上述の導電性ペースト、および、接着剤付与部44から付与された接着剤により、電極22aに仮固定されている。これにより、一対の電極22aは、カーボンナノチューブ構造体52により電気的に接続される。当該抵抗の測定は、例えば、作業者がテスター等の抵抗測定装置48を使用して行う。あるいは、抵抗測定装置48がデバイス製造装置4に設けられており、ステップS13の終了後、ステップS14の抵抗測定が自動的に行われてもよい。
【0073】
ステップS14にて測定された抵抗(以下、「初期測定抵抗」と呼ぶ。)は、制御部46(
図3参照)へと送られる。初期測定抵抗は、上述の目標抵抗以上である。初期測定抵抗が目標抵抗に略等しい場合、カーボンナノチューブシート94の巻回が終了する。
【0074】
初期測定抵抗が目標抵抗よりも大きい場合、制御部46の演算部により、初期測定抵抗と上述の積層抵抗情報とに基づいて、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗が目標抵抗に略等しくなるために必要なカーボンナノチューブシート94の追加すべき巻回数(以下、「追加巻回数」と呼ぶ。)が決定される(ステップS15)。具体的には、初期測定抵抗を接続シート部21の長さにより除算した値と対応する単位長さ当たりの抵抗が求められ、当該当該単位長さ当たりの抵抗に対応する積層数(初期巻回数と同じである場合も、異なる場合もある。)と目標巻回数との差が、追加巻回数として求められる。
【0075】
追加巻回数が決定されると、制御部46により回転機構43が駆動され、回転体42が追加巻回数だけ回転される。これにより、ステップS13と同様に、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、三対の電極22a,22b,22c上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。デバイス製造装置4では、三対の電極22a,22b,22cのそれぞれの間にて、
図11に示すように、カーボンナノチューブ構造体52上にカーボンナノチューブシート94が積層される(ステップS16)。
【0076】
ステップS16においても、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45により回転体42の外側面に向けて押圧され、カーボンナノチューブ構造体52上に圧密される。
【0077】
カーボンナノチューブシート94の追加巻回数の巻回が終了すると、回転機構43が停止される。そして、
図12に示すように、カーボンナノチューブ構造体52上のカーボンナノチューブシート94が、周方向における一対の電極22aの外側(すなわち、各電極22aを挟んで接続領域421と反対側の2つの切断位置)にて切断される。具体的な切断位置は、例えば、各電極22aの複数の凸部222(
図8参照)が設けられる端部とは反対側の端部と径方向に重なる位置である。これにより、接続領域421にて周方向に延びる積層シート状の接続シート部21が形成される(ステップS17)。ステップS17では、カーボンナノチューブシート94を切断する際に、絶縁性シート部材230も共に切断される。これにより、接続領域421にて周方向に延びる支持シート部23が形成される。カーボンナノチューブシート94および絶縁性シート部材230の切断は、例えば、ステップS14と同様のカッター等の切断刃47により行われる。
【0078】
ステップS17が終了すると、一対の電極22a、接続シート部21および支持シート部23が回転体42から取り外され、接続シート部21の長手方向の両端部が、一対の電極22aに固定されることにより、カーボンナノチューブデバイス2が形成される(ステップS18)。具体的には、
図13に示すように、電極22aの上側の主面221上に接続シート部21の端部が仮固定されている状態で、一対の電極22a、接続シート部21および支持シート部23が、回転体42から取り外される。
図13は、一方の電極22a近傍の部位を拡大して示す側面図である(
図14についても同様)。
図13に示す状態で、各電極22aに対する加熱が行われる。これにより、電極22aの変形が容易とされる。電極22aの加熱は、例えば、電極22aに対するレーザの照射により行われる。
【0079】
その後、各電極22aが、
図14に示すように、長手方向に略垂直な折り畳み線223にて2つ折りにされる。これにより、接続シート部21の長手方向の端部が、電極22aにより図中の上下両側から挟持される。電極22aの長手方向の一方の端部に設けられている複数の凸部222は、接続シート部21の長手方向の端部を厚さ方向に貫通し、電極22aの長手方向の他方の端部に接触する。そして、複数の凸部222は、当該他方の端部により押圧されて、電極22aの上記一方の端部に近づくように折れ曲がり、接続シート部21の端部を電極22aの当該一方の端部との間に固定する。
【0080】
電極22aでは、ステップS12において付与された導電性ペーストが硬化することにより、接続シート部21と電極22aとの固定が強化される。また、ステップS12において、電極22aに低融点ハンダが付与されている場合、ステップS18において電極22aが2つ折りに折り畳まれた際に、電極22aが加熱された後、降温することにより、低融点ハンダが硬化し、接続シート部21と電極22aとの固定が強化される。なお、ステップS18では、2つ折りにされた電極22aにおいて、折り畳み線223の両側の部位をステイプラー等で機械的に固定することにより、接続シート部21と電極22aとの固定がさらに強化されてもよい。あるいは、2つ折りにされた電極22aがさらに折り畳まれる(例えば、渦巻き状に折り畳まれる)ことにより、接続シート部21と電極22aとの固定がさらに強化されてもよい。
【0081】
カーボンナノチューブデバイス2が形成されると、
図15に示すように、剥離紙35上にシリコン樹脂を膜状に塗布して硬化させた収容部31の下部材32上に、カーボンナノチューブデバイス2が載置される。そして、下部材32およびカーボンナノチューブデバイス2上にシリコン樹脂が膜状に塗布されて硬化されることにより、収容部31の上部材33が形成される。これにより、
図3に示すように、カーボンナノチューブデバイス2が収容部31の内部に収容され、カーボンナノチューブヒータ1が形成される(ステップS19)。
【0082】
当該製造方法にて製造したカーボンナノチューブヒータ1に40Vの電圧を供給することにより、5分で室温(約20℃)から25℃~100℃程度に昇温することを確認した。当該温度は、カーボンナノチューブヒータ1を厚さ3mmのアルミニウムパネルで挟み、当該アルミニウムパネル表面の温度を温度計で測定することにより取得した。なお、供給電圧や昇温速度、到達温度等は、カーボンナノチューブデバイス2のワット密度(W/cm2)を変更することにより、様々に変更可能である。
【0083】
上述のカーボンナノチューブヒータ1の製造では、所定の配向方向に立設されたカーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイ91から、カーボンナノチューブシート94が引き出されて回転体42の外側面上に巻回されるが、これには限定されない。例えば、カーボンナノチューブシート94は、デバイス製造装置4とは異なるカーボンナノチューブシート製造装置により予め形成され、デバイス製造装置4に設けられる供給ロールに予め巻き付けられていてもよい。この場合、デバイス製造装置4の回転体42が回転することにより、当該供給ロールも回転し、カーボンナノチューブシート94が供給ロールから繰り出されて供給される。上記カーボンナノチューブシート製造装置におけるカーボンナノチューブシート94の製造は、様々な方法により行われてよい。例えば、カーボンナノチューブシート94は、上述のようにカーボンナノチューブアレイから引き出されて形成されてもよく、押圧具等によりカーボンナノチューブアレイが所定方向に傾倒されることにより形成されてもよい。あるいは、カーボンナノチューブシート94は、湿式抄紙法や含浸法等によりシート状の繊維にカーボンナノチューブをネットワーク状に分散させることにより形成されてもよい。また、カーボンナノチューブシート94は、カーボンナノチューブワイヤを編むことにより形成されてもよい。後述するカーボンナノチューブヒータ1の他の製造方法においても同様である。
【0084】
以上に説明したように、カーボンナノチューブデバイス2は、一対の電極22と、一対の電極22間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部21と、を備える。カーボンナノチューブデバイス2の第1の製造方法は、一対の電極22を配置する工程(ステップS12)と、筒状中間体51を形成する工程(ステップS13)と、一対の電極22間の抵抗を測定する工程(ステップS14)と、カーボンナノチューブシート94を積層する工程(ステップS16)と、接続シート部21を形成する工程(ステップS17)と、接続シート部21の両端部を一対の電極22に固定する工程(ステップS18)と、を備える。
【0085】
ステップS12では、軸方向を向く回転軸J1を中心として回転可能な回転体42の外側面において、周方向に延びる接続領域421の両端に一対の電極22が配置される。ステップS13では、回転体42を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、回転体42の周囲においてカーボンナノチューブシート94が径方向に積層された筒状中間体51が形成される。
【0086】
ステップS14では、周方向における接続領域421の外側にて筒状中間体51が切断される。そして、積層シート状のカーボンナノチューブ構造体52により電気的に接続されている一対の電極22間の抵抗が測定される。カーボンナノチューブ構造体52は、筒状中間体51のうち、接続領域421にて周方向に延びる部位である。ステップS16では、ステップS14にて測定された抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、回転体42を回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、カーボンナノチューブ構造体52上にカーボンナノチューブシート94が積層される。ステップS17では、周方向における接続領域421の外側にてカーボンナノチューブシート94が切断されることにより、接続領域421にて周方向に延びる積層シート状の接続シート部21が形成される。
【0087】
当該製造方法にてカーボンナノチューブデバイス2を製造することにより、カーボンナノチューブシート94におけるカーボンナノチューブの密度のばらつき等による影響を抑制して、所望の抵抗(すなわち、目標抵抗に略等しい抵抗)を有するカーボンナノチューブデバイス2を提供することができる。また、上記製造方法により、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。
【0088】
上述のように、カーボンナノチューブデバイス2の第1の製造方法は、ステップS13よりも前に初期巻回数を設定する工程(ステップS11)をさらに備えることが好ましい。ステップS11では、カーボンナノチューブシート94の積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報に基づいて、目標抵抗に対応する目標巻回数が求められる。そして、初期巻回数は、目標巻回数よりも少なく設定される。これにより、ステップS13において筒状中間体51を形成する際に、カーボンナノチューブシート94を過剰に積層することを防止または抑制することができる。その結果、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗を、目標抵抗に精度良く近づけることができる。後述するカーボンナノチューブデバイス2の第4の製造方法においても同様である。
【0089】
好ましくは、ステップS16におけるカーボンナノチューブシート94の巻回数(すなわち、追加巻回数)は、初期測定抵抗と、カーボンナノチューブシート94の積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報と、に基づいて決定される(ステップS15)。これにより、ステップS16において積層されるべきカーボンナノチューブシート94の積層数を精度良く決定することができる。その結果、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗を、目標抵抗に精度良く近づけることができる。カーボンナノチューブデバイス2の第4の製造方法においても同様である。
【0090】
上述のように、カーボンナノチューブデバイス2の第1の製造方法では、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して接着剤が付与されることが好ましい。これにより、接続シート部21の強度を増大することができる。その結果、接続シート部21の破損(例えば、接続シート部21の幅方向への割れ、または、接続シート部21からのカーボンナノチューブの脱落等)を抑制することができる。より好ましくは、上記接着剤は導電性添加材を含む。これにより、接続シート部21の導電性を増大させることができる。その結果、接続シート部21におけるカーボンナノチューブシート94の積層数を低減しつつ、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗を目標抵抗に近づけることができる。したがって、カーボンナノチューブヒータ1を軽量化することができる。
【0091】
上述のように、カーボンナノチューブヒータ1は、上記カーボンナノチューブデバイス2と、収容部31と、放熱部34とを備えることが好ましい。カーボンナノチューブデバイス2は、電力が供給されることにより発熱する発熱体である。収容部31は、カーボンナノチューブデバイス2の接続シート部21を内部に収容する。これにより、接続シート部21の破損をより一層抑制することができる。また、収容部31は可撓性を有するため、カーボンナノチューブヒータ1の設置場所の選択の自由度を向上することができる。放熱部34は、収容部31の外面に設けられて、カーボンナノチューブデバイス2からの熱を均等化して放熱面から放熱する。これにより、カーボンナノチューブヒータ1による加熱対象の各部位における加熱の均一性を向上することができる。
【0092】
好ましくは、収容部31は、接続シート部21の主面に沿って広がるシート状の部材であり、放熱部34は、収容部31上において接続シート部21の主面に平行に広がり、接続シート部21の主面に垂直な方向において接続シート部21全体と重なる。これにより、接続シート部21における温度不均一を好適に抑制することができる。具体的には、接続シート部21の中央部は、接続シート部21の周縁部に比べて熱が逃げにくいため、カーボンナノチューブヒータ1の中央部の温度が周縁部の温度よりも高くなる傾向にあるが、上記放熱部34により、接続シート部21の中央部からの熱が周縁部へと伝達されやすくなるため、カーボンナノチューブヒータ1および接続シート部21の全体において、温度分布の均一性を向上することができる。
【0093】
上述のように、接続シート部21は、一対の電極22間にて広がる矩形状であり、接続シート部21の対角線の長さは200mm以上であることが好ましい。接続シート部21の対角線の長さが200mm以上の場合、接続シート部21の中央部と周縁部との温度差が比較的大きくなる。具体的には、当該温度差は、例えば10℃以上となる。したがって、上述のように、接続シート部21の温度分布の均一性を向上することができるカーボンナノチューブヒータ1の構造は、上記温度差が比較的大きいカーボンナノチューブヒータに特に適している。
【0094】
なお、接続シート部21の長さ、幅および対角線長さが200mm、60mmおよび209mmであり、接続シート部21の中央部の温度を約92℃まで昇温させた場合、接続シート部21の中央部と周縁部との温度差は約14℃であった。また、接続シート部21の長さ、幅および対角線長さが94mm、180mmおよび203mmであり、接続シート部21の中央部の温度を約92℃まで昇温させた場合、接続シート部21の中央部と周縁部との温度差は約23℃であった。一方、接続シート部21の長さ、幅および対角線長さが62mm、145mmおよび158mmであり、接続シート部21の中央部の温度を約92℃まで昇温させた場合、接続シート部21の中央部と周縁部との温度差は約9℃であった。
【0095】
上述のように、カーボンナノチューブヒータ1は、放熱部34の温度を測定する温度センサ36をさらに備えることが好ましい。上述のように、放熱部34によりカーボンナノチューブヒータ1の温度均一性が向上するため、温度センサ36の取り付け位置による測定温度差が生じることを抑制することができる。その結果、温度センサ36の取り付け位置の自由度が向上するとともに、カーボンナノチューブヒータ1の温度を精度良く測定することができる。また、温度センサ36から離れた位置で過熱等の異常が生じた場合であっても、当該異常を精度良く検出することができる。
【0096】
カーボンナノチューブデバイス2の第1の製造方法は、上述のように、接続シート部21を形成する工程(ステップS17)と、接続シート部21の両端部を一対の電極22に固定する工程(ステップS18)と、を備える。ステップS17では、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22の間にて積層されることにより、一対の電極22の間にて長手方向に延びる積層シート状の接続シート部21が形成される。一対の電極22の各電極22は板状である。ステップS18において、各電極22は、接続シート部21の端部を間に挟んで折り畳まれる。当該製造方法にてカーボンナノチューブデバイス2を製造することにより、接続シート部21と電極22との接触抵抗を低減することができる。
【0097】
上述のように、第1の製造方法では、ステップS18よりも前の状態において、各電極22は、長手方向の一方の端部に、各電極22の主面221から立設する複数の凸部222を備えることが好ましい。そして、ステップS18において、各電極22は、長手方向に垂直な折り畳み線223にて2つ折りにされて接続シート部21の端部を挟持し、複数の凸部222は、接続シート部21の端部を貫通して各電極22の長手方向の他方の端部に接触することが好ましい。これにより、接続シート部21と電極22との接触抵抗をさらに低減することができる。
【0098】
上述のように、第1の製造方法では、ステップS18よりも前に、各電極22の主面221上に導電性ペーストが付与されることが好ましい。これにより、接続シート部21と電極22との接触抵抗をより一層低減することができる。
【0099】
上述のように、第1の製造方法では、ステップS18において、各電極22が加熱されることが好ましい。これにより、電極22が接続シート部21に沿って変形しやすくなるため、電極22と接続シート部21とのより好適な接触を実現することができる。その結果、接続シート部21と電極22との接触抵抗をさらに低減することができる。
【0100】
カーボンナノチューブデバイス2の製造では、電極22に対する接続シート部21の固定(ステップS18)は、必ずしも、上記のように電極22を折り畳むことにより行われる必要はなく、例えば、電極22上に位置する接続シート部21の端部を金属箔により覆い、当該金属箔と電極22とを接合することにより、接続シート部21が電極22に固定されてもよい。また、電極22に対する接続シート部21の固定は、上記以外の他の固定方法により行われてもよい。
【0101】
以下、当該他の固定方法の例として、導電性の接続補具を用いた接続シート部21の電極22への固定について、
図16ないし
図21を参照しつつ説明する。
図16では、接続シート部21の電極22への固定の流れを示す図である。
図17ないし
図21は、接続シート部21の端部近傍を示す図である。
【0102】
当該接続補具は、電極22に対する接合特性が接続シート部21よりも良好な材質および形状を有する。接合特性が良好とは、例えば、低融点ハンダ等により電極22に溶着した場合の接合強度が高く、電極22との接触抵抗が低いこと等を意味する。当該接続補具は、例えば、銅等の金属により形成される。
【0103】
接続補具を利用する固定方法では、まず、
図17に示すように、各電極22に対応する接続シート部21の端部に、レーザ照射等により、長手方向に平行なスリット211が形成される。これにより、接続シート部21の端部が、幅方向に並ぶ複数の端部要素212に分割される。端部要素212の幅は、例えば10mm~50mmである。続いて、複数の端部要素212のそれぞれを束ねることにより、
図18に示すように、複数の線状端部213が形成される(ステップS181)。線状端部213は、例えば、端部要素212を指で捻って収束させることにより形成される。なお、複数の線状端部213を形成する際には、必ずしもレーザ照射等によるスリットの形成は行われる必要はない。例えば、スリットが形成されていない接続シート部21の端部において、当該端部の幅方向の一部を指で摘まんで捻ることにより、線状端部213が形成されてもよい。
【0104】
次に、複数の線状端部213がそれぞれ、複数の接続補具により挟持される(ステップS182)。
図19に示す例では、接続補具24aは板状部材である。ステップS182において、接続補具24aは、長手方向に略平行な折り畳み線にて、矢印の向く方向に2つ折りに折り畳まれ、線状端部213を側方(すなわち、幅方向の一方側)から挟んで固定する。
【0105】
図20に示す例では、接続補具24bは、中央部に貫通孔241を有する板状部材である。ステップS182において、線状端部213は、接続補具24の貫通孔241に挿入された後、長手方向に対して所定の角度(例えば、略90°)折り曲げられる。これにより、線状端部213が貫通孔241から抜けることが抑制される。接続補具24bは、幅方向に略平行かつ貫通孔241上を通る折り畳み線にて、矢印の向く方向に2つ折りに折り畳まれ、貫通孔241から突出する線状端部213を挟んで固定する。
【0106】
図21に示す例では、接続補具24cは、筒状部材(例えば、円筒状部材)である。ステップS182において、線状端部213は、接続補具24cの径方向内側に挿入される。接続補具24cは、径方向に圧縮されることにより、内側に位置する線状端部213を挟んで固定する。接続補具24cは、角筒状部材であってもよい。なお、以下の説明では、接続補具24a~24cを区別する必要がない場合、まとめて接続補具24と呼ぶ。
【0107】
ステップS182が終了すると、複数の接続補具24が電極22に接合される(ステップS183)。接続補具24の電極22への接合は、例えば、低融点ハンダにより行われる。当該接合は、他の方法により行われてもよい。また、接続シート部21の幅が比較的小さい場合、ステップS181では、接続シート部21の端部の分割は行われず、接続シート部21の端部全体が1つに束ねられて、1つの線状端部213が形成されてもよい。
【0108】
以上に説明したように、
図16ないし
図21に示す例では、接続シート部21の両端部を一対の電極22に固定する工程(ステップS18)は、一対の電極22の各電極22に対応する接続シート部21の端部を束ねて線状端部213を形成する工程(ステップS181)と、接続シート部21よりも一対の電極22との接合特性が良好な導電性の接続補具24にて線状端部213を挟持する工程(ステップS182)と、接続補具24を各電極22に接合する工程(ステップS183)と、を備える。これにより、接続シート部21と電極22との接触抵抗を低減することができる。
【0109】
図19に示す好ましい例では、接続補具24aは板状部材である。ステップS182において、接続補具24aが、線状端部213を側方から挟んで折り畳まれることにより、線状端部213が固定される。これにより、接続シート部21の端部を接続補具24aに容易かつ強固に固定することができる。
【0110】
図20に示す好ましい例では、接続補具24bは、貫通孔241を有する板状部材である。ステップS182において、線状端部213は接続補具24bの貫通孔241に挿入される。また、接続補具24bが、貫通孔241から突出する線状端部213を挟んで折り畳まれることにより、線状端部213が固定される。これにより、接続シート部21の端部を接続補具24bに容易かつ強固に固定することができる。
【0111】
図21に示す好ましい例では、接続補具24cは筒状部材である。ステップS182において、線状端部213は接続補具24cの内側に挿入され、接続補具24cが径方向に圧縮されることにより、線状端部213が固定される。これにより、接続シート部21の端部を接続補具24cに容易かつ強固に固定することができる。
【0112】
上述のように、ステップS181~S183の好ましい例では、ステップS181において、接続シート部21の端部が幅方向に並ぶ複数の端部要素212に分割され、複数の端部要素212のそれぞれを束ねることにより複数の線状端部213が形成される。続いて、ステップS182において、複数の線状端部213が複数の接続補具24によりそれぞれ挟持される。そして、ステップS183において、複数の接続補具24が各電極22に接合される。これにより、接続シート部21の幅が広い場合であっても、接続シート部21と電極22とを好適に接合することができる。
【0113】
次に、カーボンナノチューブヒータ1の製造の流れの第2の例について、
図22を参照しつつ説明する。
図22に例示する製造方法では、ステップS32における一対の電極22の配置が、
図6のステップS12における一対の電極22の配置と異なる。また、ステップS34における抵抗測定の際、および、ステップS39における接続シート部21の形成の際に、
図6のステップS14およびステップS17とは異なり、カーボンナノチューブシート94の切断が行われない。以下、
図22のステップS31~S40について具体的に説明する。なお、
図22のステップS31,S33,S35~S36,S40は、
図6のステップS11,S13,S15~S16,S19と略同様であるため、説明を簡略化する。また、カーボンナノチューブヒータ1の収容部31および放熱部34の構造は、第1の例と略同様である。
【0114】
第2の例に係るカーボンナノチューブヒータ1の製造方法では、まず、ステップS11と同様に、制御部46の演算部において、カーボンナノチューブヒータ1の目標抵抗に対応する目標巻回数が積層抵抗情報に基づいて求められ、当該目標巻回数に基づいて、目標巻回数よりも少ない初期巻回数が設定される(ステップS31)。
【0115】
続いて、回転体42の外側面に絶縁性シート部材230が取り付けられ、絶縁性シート部材230上に一対の電極22が取り付けられる。当該一対の電極22は、
図23に示すように、周方向に180°離れた位置に配置される(ステップS32)。各電極22の上側の主面(すなわち、回転体42の外側面に対向する主面である下面とは反対側の上面)上には、ステップS12と同様に、上記導電性ペーストが付与される。なお、ステップS32は、ステップS31と並行して行われてもよく、ステップS31よりも前に行われてもよい。
【0116】
ステップS31およびステップS32が終了すると、ステップS13と同様に、回転体42が上述の初期巻回数だけ回転され、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、回転体42の周囲においてカーボンナノチューブシート94が初期巻回数に等しい積層数だけ径方向に積層された筒状中間体51が形成される(ステップS33)。
【0117】
ステップS33では、上記と同様に、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45により回転体42の外側面に向けて押圧され、当該外側面上の絶縁性シート部材230上に圧密される。
【0118】
ステップS33が終了すると、一対の電極22間の抵抗が測定される(ステップS34)。上述のように、ステップS34では、筒状中間体51の切断は行われない。ステップS34にて測定された初期測定抵抗は、上述の目標抵抗以上である。初期測定抵抗が目標抵抗に略等しい場合、カーボンナノチューブシート94の巻回が終了する。
【0119】
初期測定抵抗が目標抵抗よりも大きい場合、ステップS15と同様に、初期測定抵抗と上述の積層抵抗情報とに基づいて、カーボンナノチューブシート94の追加巻回数が、制御部46の演算部により決定される(ステップS35)。
【0120】
追加巻回数が決定されると、ステップS16と同様に、回転体42が追加巻回数だけ回転され、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、筒状中間体51上にカーボンナノチューブシート94が積層され、カーボンナノチューブシート層が形成される(ステップS36)。ステップS36においても、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45により回転体42の外側面に向けて押圧され、筒状中間体51上に圧密される。
【0121】
ステップS36が終了すると、
図24に示すように、一対の電極22、および、一対の電極22上に積層された筒状のカーボンナノチューブシート層53が、絶縁性シート部材230と共に回転体42から取り外される(ステップS37)。
【0122】
ステップS37が終了すると、カーボンナノチューブシート層53が一対の電極22に固定される(ステップS38)。具体的には、電極22上にカーボンナノチューブシート層53が仮固定されている状態で電極22が加熱され、
図25に示すように、長手方向に略垂直な折り畳み線223にて2つ折りにされる。これにより、カーボンナノチューブシート層53の一部(すなわち、電極22上に仮固定されている部位であり、接続シート部21の長手方向の端部となる予定の部位)が、電極22により図中の上下両側から挟持される。電極22の長手方向の一方の端部に設けられている複数の凸部222は、カーボンナノチューブシート層53を厚さ方向に貫通し、電極22の長手方向の他方の端部に接触する。そして、複数の凸部222は、当該他方の端部により押圧されて、電極22の上記一方の端部に近づくように折れ曲がり、カーボンナノチューブシート層53を電極22の当該一方の端部との間に固定する。
【0123】
電極22では、ステップS32において付与された導電性ペーストが硬化することにより、カーボンナノチューブシート層53と電極22との固定が強化される。また、ステップS32において、電極22に低融点ハンダが付与されている場合、ステップS38において電極22が2つ折りに折り畳まれた際に、電極22が加熱された後、降温することにより、低融点ハンダが硬化し、カーボンナノチューブシート層53と電極22との固定が強化される。なお、ステップS38では、2つ折りにされた電極22において、折り畳み線223の両側の部位をステイプラー等で機械的に固定することにより、カーボンナノチューブシート層53と電極22との固定がさらに強化されてもよい。あるいは、2つ折りにされた電極22がさらに折り畳まれる(例えば、渦巻き状に折り畳まれる)ことにより、カーボンナノチューブシート層53と電極22との固定がさらに強化されてもよい。
【0124】
ステップS38が終了すると、一対の電極22間の筒状のカーボンナノチューブシート層53が、絶縁性シート部材230と共に厚さ方向に押圧されて平面状とされる。換言すれば、一対の電極22間のカーボンナノチューブシート層53が厚さ方向に押しつぶされる。これにより、
図26に示すように、一対の電極22間を接続する接続シート部21および支持シート部23が形成され、カーボンナノチューブデバイス2の形成が終了する(ステップS39)。
図26に示す例では、接続シート部21は、支持シート部23の上下双方に支持シート部23を挟んで設けられる。
【0125】
カーボンナノチューブデバイス2が形成されると、ステップS19と同様に、カーボンナノチューブデバイス2が収容部31の内部に収容される。これにより、カーボンナノチューブヒータ1(
図1参照)が形成される(ステップS40)。
【0126】
以上に説明したように、カーボンナノチューブデバイス2の第2の製造方法は、一対の電極22を配置する工程(ステップS32)と、筒状中間体51を形成する工程(ステップS33)と、一対の電極22間の抵抗を測定する工程(ステップS34)と、カーボンナノチューブシート94を積層する工程(ステップS36)と、一対の電極22上に積層されたカーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程(ステップS38)と、を備える。
【0127】
ステップS32では、軸方向を向く回転軸J1を中心として回転可能な回転体42の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極22が配置される。ステップS33では、回転体42を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、回転体42の周囲においてカーボンナノチューブシート94が径方向に積層された筒状中間体51が形成される。
【0128】
ステップS36では、ステップS34にて測定された抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、回転体42を回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、筒状中間体51上にカーボンナノチューブシート94が積層される。
【0129】
当該製造方法にてカーボンナノチューブデバイス2を製造することにより、カーボンナノチューブシート94におけるカーボンナノチューブの密度のばらつき等による影響を抑制して、所望の抵抗(すなわち、目標抵抗に略等しい抵抗)を有するカーボンナノチューブデバイス2を提供することができる。また、上記製造方法により、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。
【0130】
好ましくは、ステップS32において、一対の電極22は周方向に180°離れた位置に配置される。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程は、一対の電極22および筒状のカーボンナノチューブシート層53を回転体42から取り外し、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定し、一対の電極22間のカーボンナノチューブシート層53を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、一対の電極22間を接続する接続シート部21を形成する工程(ステップS37~S39)を備える。これにより、カーボンナノチューブデバイス2を容易に形成することができる。また、接続シート部21におけるカーボンナノチューブシートの積層数を容易に大きくすることができる。
【0131】
上述のように、カーボンナノチューブデバイス2の第2の製造方法は、第1の製造方法と同様に、ステップS33よりも前に初期巻回数を設定する工程(ステップS31)をさらに備えることが好ましい。ステップS31では、カーボンナノチューブシート94の積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報に基づいて、目標抵抗に対応する目標巻回数が求められる。そして、初期巻回数は、目標巻回数よりも少なく設定される。これにより、ステップS33において筒状中間体51を形成する際に、カーボンナノチューブシート94を過剰に積層することを防止または抑制することができる。その結果、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗を、目標抵抗に精度良く近づけることができる。後述するカーボンナノチューブデバイス2の第5の製造方法においても同様である。
【0132】
好ましくは、ステップS36におけるカーボンナノチューブシート94の巻回数は、第1の製造方法と同様に、初期測定抵抗と、カーボンナノチューブシート94の積層数と抵抗との関係を示す積層抵抗情報と、に基づいて決定される(ステップS35)。これにより、ステップS36において積層されるべきカーボンナノチューブシート94の積層数を精度良く決定することができる。その結果、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗を、目標抵抗に精度良く近づけることができる。カーボンナノチューブデバイス2の第5の製造方法においても同様である。
【0133】
上述のように、カーボンナノチューブデバイス2の第2の製造方法では、第1の製造方法と同様に、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して接着剤が付与されることが好ましい。これにより、接続シート部21の強度を増大することができる。その結果、接続シート部21の破損(例えば、接続シート部21の幅方向への割れ、または、接続シート部21からのカーボンナノチューブの脱落等)を抑制することができる。より好ましくは、上記接着剤は導電性添加材を含む。これにより、接続シート部21の導電性を増大させることができる。その結果、接続シート部21におけるカーボンナノチューブシート94の積層数を低減しつつ、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗を目標抵抗に近づけることができる。したがって、カーボンナノチューブヒータ1を軽量化することができる。カーボンナノチューブデバイス2の第3ないし第6の製造方法においても同様である。
【0134】
上述のように、カーボンナノチューブヒータ1は、上述のカーボンナノチューブデバイス2と、収容部31と、放熱部34とを備えることが好ましい。カーボンナノチューブデバイス2は、電力が供給されることにより発熱する発熱体である。収容部31は、カーボンナノチューブデバイス2の接続シート部21を内部に収容する。これにより、接続シート部21の破損をより一層抑制することができる。また、収容部31は可撓性を有するため、カーボンナノチューブヒータ1の設置場所の選択の自由度を向上することができる。放熱部34は、収容部31の外面に設けられて、カーボンナノチューブデバイス2からの熱を均等化して放熱面から放熱する。これにより、カーボンナノチューブヒータ1による加熱対象の各部位における加熱の均一性を向上することができる。
【0135】
カーボンナノチューブデバイス2の第2の製造方法は、上述のように、接続シート部21を形成する工程(ステップS39)と、接続シート部21の両端部を一対の電極22に固定する工程(ステップS38)と、を備える。ステップS39では、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22の間にて積層されることにより、一対の電極22の間にて長手方向に延びる積層シート状の接続シート部21が形成される。一対の電極22の各電極22は板状である。ステップS38において、各電極22は、接続シート部21の端部を間に挟んで折り畳まれる。当該製造方法にてカーボンナノチューブデバイス2を製造することにより、接続シート部21と電極22との接触抵抗を低減することができる。
【0136】
上述のように、第2の製造方法では、第1の製造方法と同様に、ステップS38よりも前の状態において、各電極22は、長手方向の一方の端部に、各電極22の主面221から立設する複数の凸部222を備えることが好ましい。そして、ステップS38において、各電極22は、長手方向に垂直な折り畳み線223にて2つ折りにされて接続シート部21の端部を挟持し、複数の凸部222は、接続シート部21の端部を貫通して各電極22の長手方向の他方の端部に接触することが好ましい。当該接続シート部21の端部とは、接続シート部21となる予定のカーボンナノチューブシート層53の一部である。これにより、接続シート部21と電極22との接触抵抗をさらに低減することができる。
【0137】
上述のように、第2の製造方法では、第1の製造方法と同様に、ステップS38よりも前に、各電極22の主面221上に導電性ペーストが付与されることが好ましい。これにより、接続シート部21と電極22との接触抵抗をより一層低減することができる。
【0138】
上述のように、第2の製造方法では、第1の製造方法と同様に、ステップS38において、各電極22が加熱されることが好ましい。これにより、電極22が接続シート部21となる予定のカーボンナノチューブシート層53に沿って変形しやすくなるため、電極22と接続シート部21とのより好適な接触を実現することができる。その結果、接続シート部21と電極22との接触抵抗をさらに低減することができる。
【0139】
次に、カーボンナノチューブヒータ1の製造の流れの第3の例について、
図27および
図28を参照しつつ説明する。
図27および
図28に例示する製造方法では、一対の電極22間の抵抗が、カーボンナノチューブシート94の巻回開始から継続的に測定される。このため、
図29に示すように、
図23に示すデバイス製造装置4に抵抗測定装置48が設けられ、回転機構43の回転軸に設けられたスリップリング49を介して、各電極22と電気的に接続される。なお、収容部31および放熱部34の構造は、第1および第2の製造方法と略同様である。
【0140】
第3の例に係るカーボンナノチューブヒータ1の製造方法では、まず、ステップS32と同様に、回転体42の外側面に絶縁性シート部材230が取り付けられ、絶縁性シート部材230上に一対の電極22が取り付けられる。当該一対の電極22は、
図29に示すように、周方向に180°離れた位置に配置される(ステップS51)。各電極22の上側の主面(すなわち、回転体42の外側面に対向する主面である下面とは反対側の上面)上には、ステップS32と同様に、上記導電性ペーストが付与される。
【0141】
続いて、回転体42が回転されることにより、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される(ステップS52)。ステップS52では、ステップS33と同様に、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44(
図23参照)から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45(
図23参照)により回転体42の外側面に向けて押圧され、当該外側面上の絶縁性シート部材230上に圧密される。
【0142】
ステップS52では、カーボンナノチューブシート94の巻回は、抵抗測定装置48による一対の電極22間の抵抗の継続的な測定と並行して行われる。そして、抵抗測定装置48により測定される抵抗が、所定の目標抵抗に到達するまでステップS52が継続されることにより、一対の電極22上に積層された筒状のカーボンナノチューブシート層53が形成される(ステップS53)。
【0143】
ステップS52~S53が終了すると、ステップS37~S39と同様に、一対の電極22、および、一対の電極22上に積層された筒状のカーボンナノチューブシート層53が、絶縁性シート部材230と共に回転体42から取り外され(ステップS54)、カーボンナノチューブシート層53が一対の電極22に固定される(ステップS55)。そして、一対の電極22間の筒状のカーボンナノチューブシート層53が、絶縁性シート部材230と共に厚さ方向に押圧されて平面状とされる。これにより、一対の電極22間を接続する接続シート部21および支持シート部23が形成され、カーボンナノチューブデバイス2の形成が終了する(ステップS56)。
【0144】
第3の製造方法では、ステップS54~S56に代えて、ステップS61~S62が行われてもよい。この場合、一対の電極22のそれぞれの長手方向略中央部にてカーボンナノチューブシート層53、一対の電極22および絶縁性シート部材230が切断される。これにより、一対の電極22(をそれぞれ2分割したもの)間で周方向に延びる2つの接続シート部21が形成される(ステップS61)。そして、各接続シート部21の両端部が、一対の電極22(をそれぞれ2分割したもの)に固定されることにより、2つのカーボンナノチューブデバイス2が形成される(ステップS62)。
【0145】
ステップS62における接続シート部21の固定は、例えば、
図13および
図14に示すように、接続シート部21の端部を間に挟んで電極22を折り畳むことにより行われてもよい。この場合、電極22の複数の凸部222は、切断前の電極22の長手方向両端部に設けられることが好ましい。あるいは、ステップS62における接続シート部21の固定は、
図19ないし
図21に示すように、接続補具24a~24cを用いて行われてもよい。
【0146】
カーボンナノチューブデバイス2が形成されると、ステップS40と同様に、カーボンナノチューブデバイス2が収容部31の内部に収容される。これにより、カーボンナノチューブヒータ1(
図1参照)が形成される(ステップS57)。
【0147】
以上に説明したように、カーボンナノチューブデバイス2の第3の製造方法は、一対の電極22を配置する工程(ステップS51)と、一対の電極22間の抵抗を測定しつつカーボンナノチューブシート94を巻回する工程(ステップS52)と、カーボンナノチューブシート層53を形成する工程(ステップS53)と、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程(ステップS55)と、を備える。
【0148】
ステップS51では、軸方向を向く回転軸J1を中心として回転可能な回転体42の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極22が配置される。ステップS52では、回転体42を回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。ステップS53では、ステップS52にて測定される抵抗が所定の抵抗(すなわち、目標抵抗に略等しい抵抗)に到達するまでステップS52を継続することにより、一対の電極22上に積層されたカーボンナノチューブシート層53を形成する。
【0149】
当該製造方法にてカーボンナノチューブデバイス2を製造することにより、カーボンナノチューブシート94におけるカーボンナノチューブの密度のばらつき等による影響を抑制して、所望の抵抗(すなわち、目標抵抗に略等しい抵抗)を有するカーボンナノチューブデバイス2を提供することができる。
【0150】
好ましくは、ステップS51において、一対の電極22は周方向に180°離れた位置に配置される。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程は、ステップS54~S56またはステップS61~S62を実施する工程を備える。
【0151】
ステップS54~S56では、ステップS53の終了後、一対の電極22および筒状のカーボンナノチューブシート層53が回転体42から取り外され、カーボンナノチューブシート層53が一対の電極22に固定される。そして、一対の電極22間のカーボンナノチューブシート層53が厚さ方向に押圧されて平面状とされることにより、一対の電極22間を接続する接続シート部21が形成される。これにより、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。また、接続シート部21におけるカーボンナノチューブシートの積層数を容易に大きくすることができる。
【0152】
ステップS61~S62では、一対の電極22のそれぞれの中央部にてカーボンナノチューブシート層53および一対の電極22を切断することにより、一対の電極22間で周方向に延びる接続シート部21が形成される。そして、接続シート部21の両端部は、一対の電極22に固定される。これにより、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。切断後の電極22を電極片と呼ぶと、ステップS61~62では、一対の電極片の間で周方向に延びる接続シート部21が2組形成され、各接続シート部21の両端部が一対の電極片に固定されることにより、略同形状の2つのカーボンナノチューブデバイス2が製造される。なお、ステップS61では、一対の電極22が切断されることなく、1つのカーボンナノチューブデバイス2の製造に使用されてもよい。後述するカーボンナノチューブデバイス2の第6の製造方法においても同様である。
【0153】
上述のように、カーボンナノチューブデバイス2の第3の製造方法では、第1および第2の製造方法と同様に、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して接着剤が付与されることが好ましい。これにより、接続シート部21の強度を増大することができる。その結果、接続シート部21の破損(例えば、接続シート部21の幅方向への割れ、または、接続シート部21からのカーボンナノチューブの脱落等)を抑制することができる。より好ましくは、上記接着剤は導電性添加材を含む。これにより、接続シート部21の導電性を増大させることができる。その結果、接続シート部21におけるカーボンナノチューブシート94の積層数を低減しつつ、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗を目標抵抗に近づけることができる。したがって、カーボンナノチューブヒータ1を軽量化することができる。
【0154】
上述のように、カーボンナノチューブヒータ1は、上述のカーボンナノチューブデバイス2と、収容部31と、放熱部34とを備えることが好ましい。カーボンナノチューブデバイス2は、電力が供給されることにより発熱する発熱体である。収容部31は、カーボンナノチューブデバイス2の接続シート部21を内部に収容する。これにより、接続シート部21の破損をより一層抑制することができる。また、収容部31は可撓性を有するため、カーボンナノチューブヒータ1の設置場所の選択の自由度を向上することができる。放熱部34は、収容部31の外面に設けられて、カーボンナノチューブデバイス2からの熱を均等化して放熱面から放熱する。これにより、カーボンナノチューブヒータ1による加熱対象の各部位における加熱の均一性を向上することができる。
【0155】
カーボンナノチューブデバイス2の第3の製造方法では、一対の電極22は、必ずしも周方向に180°離れた位置に配置される必要はない。例えば、一対の電極22間の周方向の角度は、一方が120°であり、他方が240°であってもよい。この場合、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程では、上述のステップS61~S62(
図28参照)が実施される。これにより、接続シート部21の長さが異なる2つのカーボンナノチューブデバイス2を並行して形成することができる。
【0156】
一対の電極22間の周方向の角度が180°ではない場合、ステップS52における抵抗測定では、カーボンナノチューブシート層53における一対の電極22の一方側の部位と他方側の部位との並列回路の合成抵抗が、抵抗測定装置48により測定される。そして、カーボンナノチューブシート層53の上記一方側の部位および他方側の部位の長さの比(すなわち、抵抗の比)を用いて、上記合成抵抗から、当該一方側の部位の抵抗、および他方側の部位の抵抗(すなわち、一対の電極22間のそれぞれの抵抗)が、公知の算出方法により求められる。
【0157】
カーボンナノチューブデバイス2の第3の製造方法では、ステップS51において、複数組の一対の電極22が、回転体42の外側面に配置されてもよい。複数組の一対の電極22間の角度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。この場合、ステップS52における抵抗測定では、複数組の一対の電極22から選択された2つの電極22について、当該2つの電極22間の並列回路の合成抵抗が測定され、各組の一対の電極22間におけるカーボンナノチューブシート層53の長さの比を用いて、当該合成抵抗から各組の一対の電極22間の抵抗が求められる。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程では、各組の一対の電極22について、上述のステップS61~S62(
図28参照)が実施される。これにより、複数のカーボンナノチューブデバイス2を並行して形成することができる。
【0158】
上述のカーボンナノチューブデバイス2の第2の製造方法では、第3の製造方法と同様に、ステップS37~S39(
図22参照)に代えて、
図28に示すステップS61~S62が行われてもよい。換言すれば、第2の製造方法において、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程は、ステップS37~S39またはステップS61~S62を実施する工程を備える。ステップS61~S62では、上述のように、一対の電極22のそれぞれの中央部にてカーボンナノチューブシート層53および一対の電極22を切断することにより、一対の電極22間で周方向に延びる接続シート部21が形成される。そして、接続シート部21の両端部は、一対の電極22に固定される。これにより、カーボンナノチューブデバイス2を容易に形成することができる。詳細には、一対の電極片の間で周方向に延びる接続シート部21が2組形成され、各接続シート部21の両端部が一対の電極片に固定されることにより、略同形状の2つのカーボンナノチューブデバイス2が製造される。後述するカーボンナノチューブデバイス2の第5の製造方法においても同様である。
【0159】
カーボンナノチューブデバイス2の第2の製造方法では、第3の製造方法と同様に、一対の電極22は、必ずしも周方向に180°離れた位置に配置される必要はない。例えば、一対の電極22間の周方向の角度は、一方が120°であり、他方が240°であってもよい。この場合、ステップS34における抵抗測定では、上述の並列回路の合成抵抗が測定され、当該合成抵抗から一対の電極22間の抵抗が求められる。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程では、上述のステップS61~S62(
図28参照)が実施される。これにより、接続シート部21の長さが異なる2つのカーボンナノチューブデバイス2を並行して形成することができる。
【0160】
カーボンナノチューブデバイス2の第2の製造方法では、第3の製造方法と同様に、ステップS51において、複数組の一対の電極22が、回転体42の外側面に配置されてもよい。複数組の一対の電極22間の角度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。この場合、ステップS52における抵抗測定では、複数組の一対の電極22から選択された2つの電極22について、当該2つの電極22間の並列回路の合成抵抗が測定され、当該合成抵抗から各組の一対の電極22間の抵抗が求められる。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程では、各組の一対の電極22について、上述のステップS61~S62(
図28参照)が実施される。これにより、複数のカーボンナノチューブデバイス2を並行して形成することができる。
【0161】
次に、カーボンナノチューブヒータ1の製造の流れの第4の例について、
図30を参照しつつ説明する。第4の製造方法は、後述するように、電極22とは別の測定用電極が使用される点を除き、上述の第1の製造方法に類似している。第4の製造方法によりカーボンナノチューブヒータ1が製造される際には、まず、ステップS11(
図6参照)と同様に、カーボンナノチューブデバイス2の目標抵抗が
図31に示す制御部46に入力され、当該目標抵抗に対応するカーボンナノチューブシート94の目標巻回数が、積層抵抗情報に基づいて求められる。そして、当該目標巻回数に基づいて、目標巻回数よりも所定の巻回数だけ少ない初期巻回数が設定される(ステップS71)。
【0162】
続いて、
図31および
図32に示すデバイス製造装置4において、ステップS12と同様に、回転体42の外側面に絶縁性シート部材230が取り付けられる。そして、絶縁性シート部材230上に三対の電極22a,22b,22c、および、三対の測定用電極25a,25b,25cが取り付けられる(ステップS72)。電極22a,22b,22cの形状は、上述のものと同じである。一対の電極22a、一対の電極22bおよび一対の電極22cはそれぞれ、接続領域421の両端に配置される。測定用電極25a,25b,25cは、例えば、回転体42の回転軸J1に略平行に延びる略帯状である。
【0163】
一対の測定用電極25aは、周方向に離れた位置に配置される。一対の測定用電極25b、および、一対の測定用電極25cについても同様である。
図31および
図32に示す例では、一対の測定用電極25aは、一対の電極22aの周方向外側にて、一対の電極22a間の接続領域421、および、一対の電極22aを間に挟む位置に配置される。好ましくは、一対の測定用電極25aは一対の電極22aに近接して配置される。一対の測定用電極25bは、一対の電極22bの周方向外側にて、一対の電極22b間の接続領域421、および、一対の電極22bを間に挟む位置に配置される。好ましくは、一対の測定用電極25bは一対の電極22bに近接して配置される。一対の測定用電極25cは、一対の電極22cの周方向外側にて、一対の電極22c間の接続領域421、および、一対の電極22cを間に挟む位置に配置される。好ましくは、一対の測定用電極25cは一対の電極22cに近接して配置される。以下の説明では、上述のように、電極22a,22b,22cをまとめて「電極22」とも呼ぶ。また、測定用電極25a,25b,25cをまとめて「測定用電極25」とも呼ぶ。ステップS72では、電極22の配置、および、測定用電極25の配置は、いずれが先に行われてもよく、並行して行われてもよい。
【0164】
各電極22上には、上述のように、導電性ペースト(例えば、導電性添加材を含む接着剤)が付与される。各測定用電極25上には、粘着剤が付与される。粘着剤は、好ましくは絶縁性ペーストである。当該絶縁性ペーストとして、好ましくは、ペースト状のロジン(例えば、粉末状のロジンをアルコール等の溶媒に溶かしたもの)が使用される。なお、ステップS72は、ステップS71と並行して行われてもよく、ステップS71よりも前に行われてもよい。
【0165】
ステップS71およびステップS72が終了すると、ステップS13と同様に、回転体42が上述の初期巻回数だけ回転される。これにより、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、三対の電極22a,22b,22cおよび三対の測定用電極25a,25b,25c上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。換言すれば、三対の電極22a,22b,22cのそれぞれの間にて、カーボンナノチューブシート94が積層される。
【0166】
回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94には、上述のように、導電性添加材を含む接着剤が、接着剤付与部44により付与される。これにより、カーボンナノチューブシート94を構成するカーボンナノチューブが凝集する。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45により回転体42の外側面に向けて押圧され、当該外側面上の絶縁性シート部材230上に圧密される。
【0167】
デバイス製造装置4では、
図33に示すように、回転体42の周囲においてカーボンナノチューブシート94が初期巻回数に等しい積層数だけ径方向に積層された筒状中間体51が形成される(ステップS73)。
図33では、三対の電極22および三対の測定用電極25のうち、一対の電極22aおよび一対の測定用電極25aを示す。以下では、一対の電極22aを備えるカーボンナノチューブデバイス2に注目して、その製造方法について説明する。なお、一対の電極22b、および、一対の電極22cをそれぞれ備えるカーボンナノチューブデバイス2の製造についても同様である。
図33に示すカーボンナノチューブシート94の積層数は、図示の都合上、実際の積層数よりも少なく描いている。
【0168】
カーボンナノチューブシート94の初期巻回数の巻回が終了すると、回転機構43が停止される。そして、
図34に示すように、筒状中間体51が、周方向における一対の測定用電極25aの外側の2つの切断位置にて切断される。具体的には、筒状中間体51は、電極22aおよび測定用電極25aの接続領域421とは反対側の切断位置にて切断される。本実施の形態では、具体的な切断位置は、周方向にて隣接する測定用電極25aと測定用電極25bとの間、測定用電極25aと測定用電極25cとの間、および、測定用電極25bと測定用電極25cとの間の位置である。筒状中間体51の切断は、例えば、カッター等の切断刃47により行われる。
【0169】
続いて、
図35に示すように、一対の測定用電極25a間の抵抗が測定される(ステップS74)。一対の測定用電極25aには、筒状中間体51のうち、一対の測定用電極25aの間にて周方向に延びる部位である積層シート状のカーボンナノチューブ構造体52の長手方向両端部が接触している。カーボンナノチューブ構造体52の端部は、上述の粘着剤(例えば、ペースト状のロジン)、および、接着剤付与部44から付与された接着剤により、測定用電極25aに仮固定されている。これにより、一対の測定用電極25aは、カーボンナノチューブ構造体52により電気的に接続される。また、粘着剤が、カーボンナノチューブ構造体52を構成する多数のカーボンナノチューブの間隙に染み込み、カーボンナノチューブ構造体52を測定用電極25a上に引き寄せる等して、カーボンナノチューブ構造体52と測定用電極25aとの間の接触抵抗を低減する。当該抵抗の測定は、例えば、作業者がテスター等の抵抗測定装置48を使用して行う。あるいは、抵抗測定装置48がデバイス製造装置4に設けられており、ステップS73の終了後、ステップS74の抵抗測定が自動的に行われてもよい。
【0170】
ステップS74にて得られた測定値は、制御部46(
図31参照)へと送られる。制御部46では、当該測定値に基づいて、一対の電極22a間の抵抗である初期測定抵抗が求められる。初期測定抵抗は、例えば、一対の測定用電極25a間の周方向の距離に対する一対の電極22a間の周方向の距離の割合を、上記測定値に対して乗算することにより求められる。また、電極22aと測定用電極25aとの間の距離が小さい場合等、上記測定値が初期測定抵抗とされてもよい。初期測定抵抗は、上述の目標抵抗以上である。初期測定抵抗が目標抵抗に略等しい場合、カーボンナノチューブシート94の巻回が終了する。
【0171】
初期測定抵抗が目標抵抗よりも大きい場合、ステップS15と同様に、制御部46の演算部により、初期測定抵抗と上述の積層抵抗情報とに基づいて、カーボンナノチューブデバイス2の抵抗が目標抵抗に略等しくなるために必要なカーボンナノチューブシート94の追加巻回数が決定される(ステップS75)。
【0172】
追加巻回数が決定されると、制御部46により回転機構43が制御され、回転体42が追加巻回数だけ回転される。これにより、ステップS73と同様に、カーボンナノチューブシート94が、三対の電極22a,22b,22c上および三対の測定用電極25a,25b,25c上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。デバイス製造装置4では、三対の電極22a,22b,22cのそれぞれの間にて、
図36に示すように、カーボンナノチューブ構造体52上にカーボンナノチューブシート94が積層される(ステップS76)。ステップS76においても、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45により回転体42の外側面に向けて押圧され、カーボンナノチューブ構造体52上に圧密される。なお、ステップS75では、ステップS74にて得られた測定値に基づいて、作業者により追加巻回数が求められてもよい。また、ステップS76では、回転機構43が作業者により操作され、回転体42が追加巻回数だけ回転されてもよい。
【0173】
カーボンナノチューブシート94の追加巻回数の巻回が終了すると、回転機構43が停止される。そして、
図37に示すように、カーボンナノチューブ構造体52上のカーボンナノチューブシート94が、周方向に隣接する電極22aと測定用電極25aとの間の切断位置にて切断される。カーボンナノチューブシート94は、電極22a上にて切断されてもよい。換言すれば、カーボンナノチューブシート94は、周方向における接続領域421の外側、かつ、一対の測定用電極25aの内側に位置する2つの切断位置にて切断される。これにより、接続領域421にて周方向に延びる積層シート状の接続シート部21が形成される(ステップS77)。ステップS77では、カーボンナノチューブシート94を切断する際に、絶縁性シート部材230(
図31および
図32参照)も共に切断される。これにより、接続領域421にて周方向に延びる支持シート部23が形成される。カーボンナノチューブシート94および絶縁性シート部材230の切断は、例えば、ステップS74と同様のカッター等の切断刃47により行われる。
【0174】
ステップS77が終了すると、ステップS18と同様に、一対の電極22a、接続シート部21および支持シート部23が回転体42から取り外され、接続シート部21の長手方向の両端部が、一対の電極22aに固定されることにより、カーボンナノチューブデバイス2が形成される(ステップS78)。そして、ステップS19と同様に、カーボンナノチューブデバイス2が収容部31の内部に収容され、カーボンナノチューブヒータ1が形成される(ステップS79)。
【0175】
なお、回転体42の外側面に配置される電極22および測定用電極25の数は、三対には限定されず、一対または二対、あるいは、四対以上であってもよい。
【0176】
以上に説明したように、カーボンナノチューブデバイス2の第4の製造方法は、一対の電極22を配置するとともに、一対の測定用電極25を配置する工程(ステップS72)と、筒状中間体51を形成する工程(ステップS73)と、一対の測定用電極25間の抵抗を測定する工程(ステップS74)と、カーボンナノチューブシート94を積層する工程(ステップS76)と、接続シート部21を形成する工程(ステップS77)と、接続シート部21の両端部を一対の電極22に固定する工程(ステップS78)と、を備える。
【0177】
ステップS72では、軸方向を向く回転軸J1を中心として回転可能な回転体42の外側面において、周方向に延びる接続領域421の両端に一対の電極22が配置される。また、一対の測定用電極25は、一対の電極22の周方向外側にて、接続領域421および一対の電極22を間に挟む位置に配置される。ステップS73では、回転体42を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上および一対の測定用電極25上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、回転体42の周囲においてカーボンナノチューブシート94が径方向に積層された筒状中間体51が形成される。
【0178】
ステップS74では、周方向における一対の測定用電極25の外側にて筒状中間体51が切断される。そして、積層シート状のカーボンナノチューブ構造体52により電気的に接続されている一対の測定用電極25間の抵抗が測定される。カーボンナノチューブ構造体52は、筒状中間体51のうち、一対の測定用電極25の間にて周方向に延びる部位である。ステップS76では、ステップS74にて得られた測定値に基づいて求められる一対の電極22間の抵抗である初期測定抵抗が、所定の目標抵抗よりも大きい場合、回転体42を回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、カーボンナノチューブ構造体52上にカーボンナノチューブシート94が積層される。ステップS77では、周方向における接続領域421の外側かつ一対の測定用電極25の内側にてカーボンナノチューブシート94が切断されることにより、接続領域421にて周方向に延びる積層シート状の接続シート部21が形成される。
【0179】
当該製造方法にてカーボンナノチューブデバイス2を製造することにより、上記第1の製造方法と同様に、カーボンナノチューブシート94におけるカーボンナノチューブの密度のばらつき等による影響を抑制して、所望の抵抗(すなわち、目標抵抗に略等しい抵抗)を有するカーボンナノチューブデバイス2を提供することができる。また、上記製造方法により、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。上述のように、一対の測定用電極25は一対の電極22に近接して配置されることが好ましい。これにより、一対の電極22間の抵抗を、さらに精度良く求めることができる。
【0180】
上述のように、第4の製造方法では、ステップS72とステップS73との間において、一対の測定用電極25上に粘着剤が付与されることが好ましい。これにより、カーボンナノチューブ構造体52と測定用電極25とを好適に接触させ、カーボンナノチューブ構造体52と測定用電極25との間の接触抵抗を低減することができる。その結果、ステップS74における抵抗測定の精度を向上することができる。また、上記粘着剤は、ペースト状のロジンであることがさらに好ましい。これにより、上記接触抵抗をさらに好適に低減することができる。なお、第4の製造方法では、粉末状のロジンが測定用電極25に付与され、後工程においてアルコール等の溶媒が噴霧されることにより、ロジンが溶媒に溶けてペースト状となってもよい。後述するカーボンナノチューブデバイス2の第5および第6の製造方法においても同様である。
【0181】
上述のように、カーボンナノチューブデバイス2の第4の製造方法では、カーボンナノチューブデバイス2を構成する電極22とは別の測定用電極25を利用して抵抗測定が行われるため、抵抗測定に係る構成の設計自由度(例えば、測定用電極25の形状や配置)を向上することができる。また、上述のように、測定用電極25はカーボンナノチューブデバイス2には含まれないため、カーボンナノチューブデバイス2の品質や寿命等への影響を考慮することなく、測定用電極25に上記ロジン等を付与して接触抵抗を低減することができる。カーボンナノチューブデバイス2の第5および第6の製造方法においても同様である。
【0182】
次に、カーボンナノチューブヒータ1の製造の流れの第5の例について、
図38を参照しつつ説明する。第5の製造方法は、後述するように、電極22とは別の測定用電極が使用される点を除き、上述の第2の製造方法に類似している。カーボンナノチューブデバイス2の第5の製造方法では、まず、ステップS31(
図22参照)と同様に、カーボンナノチューブヒータ1の目標抵抗に対応する目標巻回数が積層抵抗情報に基づいて求められ、当該目標巻回数に基づいて、目標巻回数よりも少ない初期巻回数が設定される(ステップS81)。
【0183】
続いて、
図39に示すように、デバイス製造装置4において、回転体42の外側面に絶縁性シート部材230が取り付けられ、絶縁性シート部材230上に一対の電極22、および、一対の測定用電極25が取り付けられる(ステップS82)。当該一対の電極22は、周方向に180°離れた位置に配置される。一対の測定用電極25も、周方向に180°離れた位置に配置される。なお、一対の測定用電極25間の周方向の角度は、必ずしも180°である必要はない。
図39に例示するように、一対の測定用電極25は、一対の電極22に近接して配置されることが好ましい。ステップS32と同様に、各電極22上には上記導電性ペーストが付与される。また、ステップS72と同様に、各測定用電極25上には、上述の粘着剤(例えば、ペースト状のロジン)が付与される。なお、ステップS82は、ステップS81と並行して行われてもよく、ステップS81よりも前に行われてもよい。
【0184】
ステップS81およびステップS82が終了すると、ステップS33と同様に、回転体42が上述の初期巻回数だけ回転され、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、一対の電極22上および一対の測定用電極25上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、回転体42の周囲においてカーボンナノチューブシート94が初期巻回数に等しい積層数だけ径方向に積層された筒状中間体51が形成される(ステップS83)。
【0185】
ステップS83では、上記と同様に、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45により回転体42の外側面に向けて押圧され、当該外側面上の絶縁性シート部材230上に圧密される。
【0186】
ステップS83が終了すると、一対の測定用電極25間の抵抗が測定される(ステップS84)。ステップS84では、筒状中間体51の切断は行われない。ステップS84にて得られた測定値は、制御部46へと送られる。制御部46では、当該測定値に基づいて、一対の電極22間の抵抗である初期測定抵抗が求められる。上述のように、一対の電極22間の周方向の角度、および、一対の測定用電極25間の周方向の角度が共に180°である場合、上記測定値が初期測定抵抗とされる。また、一対の測定用電極25間の周方向の角度が180°ではない場合、上述のステップS34,S52と略同様に、上述の並列回路の合成抵抗が測定され、当該合成抵抗から一対の測定用電極25間の抵抗が求められる。そして、一対の測定用電極25間の周方向の距離に対する一対の電極22間の周方向の距離の割合を、上記一対の測定用電極25間の抵抗に対して乗算することにより、初期測定抵抗が求められる。初期測定抵抗は、上述の目標抵抗以上である。初期測定抵抗が目標抵抗に略等しい場合、カーボンナノチューブシート94の巻回が終了する。
【0187】
初期測定抵抗が目標抵抗よりも大きい場合、ステップS35と同様に、初期測定抵抗と上述の積層抵抗情報とに基づいて、カーボンナノチューブシート94の追加巻回数が決定される(ステップS85)。
【0188】
追加巻回数が決定されると、ステップS36と同様に、回転体42が追加巻回数だけ回転され、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、一対の電極22上および一対の測定用電極25上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、筒状中間体51上にカーボンナノチューブシート94が積層され、カーボンナノチューブシート層が形成される(ステップS86)。ステップS86においても、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45により回転体42の外側面に向けて押圧され、筒状中間体51上に圧密される。
【0189】
ステップS86が終了すると、一対の測定用電極25が回転体42から取り外される。そして、ステップS37と同様に、一対の電極22、および、一対の電極22上に積層された筒状のカーボンナノチューブシート層53(
図24参照)が、絶縁性シート部材230と共に回転体42から取り外される(ステップS87)。
【0190】
ステップS87が終了すると、ステップS38と同様に、カーボンナノチューブシート層53が一対の電極22に固定される(ステップS88)。そして、ステップS39と同様に、一対の電極22間の筒状のカーボンナノチューブシート層53が、絶縁性シート部材230と共に厚さ方向に押圧されて平面状とされる。換言すれば、一対の電極22間のカーボンナノチューブシート層53が厚さ方向に押しつぶされる。これにより、一対の電極22間を接続する接続シート部21および支持シート部23が形成され、カーボンナノチューブデバイス2の形成が終了する(ステップS89)。その後、ステップS40と同様に、カーボンナノチューブデバイス2が収容部31の内部に収容される。これにより、カーボンナノチューブヒータ1(
図1参照)が形成される(ステップS90)。
【0191】
以上に説明したように、カーボンナノチューブデバイス2の第5の製造方法は、一対の電極22を配置するとともに一対の測定用電極25を配置する工程(ステップS82)と、筒状中間体51を形成する工程(ステップS83)と、一対の測定用電極25間の抵抗を測定する工程(ステップS84)と、カーボンナノチューブシート94を積層する工程(ステップS86)と、一対の電極22上に積層されたカーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程(ステップS88)と、を備える。
【0192】
ステップS82では、軸方向を向く回転軸J1を中心として回転可能な回転体42の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極22が配置されるとともに、周方向に離れた位置に一対の測定用電極25が配置される。ステップS83では、回転体42を初期巻回数だけ回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上および一対の測定用電極25上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、回転体42の周囲においてカーボンナノチューブシート94が径方向に積層された筒状中間体51が形成される。
【0193】
ステップS86では、ステップS84にて測定された抵抗である初期測定抵抗が所定の目標抵抗よりも大きい場合、回転体42を回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。これにより、筒状中間体51上にカーボンナノチューブシート94が積層される。
【0194】
当該製造方法にてカーボンナノチューブデバイス2を製造することにより、上記第2の製造方法と同様に、カーボンナノチューブシート94におけるカーボンナノチューブの密度のばらつき等による影響を抑制して、所望の抵抗(すなわち、目標抵抗に略等しい抵抗)を有するカーボンナノチューブデバイス2を提供することができる。また、上記製造方法により、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。一対の測定用電極25は、上述のように、一対の電極22に近接して配置されることが好ましい。これにより、一対の電極22間の抵抗を、さらに精度良く求めることができる。
【0195】
好ましくは、ステップS82において、一対の電極22は周方向に180°離れた位置に配置される。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程は、一対の電極22および筒状のカーボンナノチューブシート層53を回転体42から取り外し、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定し、一対の電極22間のカーボンナノチューブシート層53を厚さ方向に押圧して平面状とすることにより、一対の電極22間を接続する接続シート部21を形成する工程(ステップS87~S89)を備える。これにより、カーボンナノチューブデバイス2を容易に形成することができる。また、接続シート部21におけるカーボンナノチューブシートの積層数を容易に大きくすることができる。
【0196】
上述のカーボンナノチューブデバイス2の第5の製造方法では、第2の製造方法と同様に、ステップS87~S89(
図38参照)に代えて、
図28に示すステップS61~S62が行われてもよい。換言すれば、第5の製造方法において、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程は、ステップS87~S89またはステップS61~S62を実施する工程を備える。ステップS61~S62では、上述のように、一対の電極22のそれぞれの中央部にてカーボンナノチューブシート層53および一対の電極22を切断することにより、一対の電極22間で周方向に延びる接続シート部21が形成される。そして、接続シート部21の両端部は、一対の電極22に固定される。これにより、カーボンナノチューブデバイス2を容易に形成することができる。
【0197】
カーボンナノチューブデバイス2の第5の製造方法では、第2の製造方法と同様に、一対の電極22は、必ずしも周方向に180°離れた位置に配置される必要はない。この場合、ステップS84における抵抗測定では、上述の一対の測定用電極25間の抵抗の測定値に基づいて、一対の電極22の一方側および他方側の抵抗がそれぞれ求められる。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程では、上述のステップS61~S62(
図28参照)が実施される。これにより、接続シート部21の長さが異なる2つのカーボンナノチューブデバイス2を並行して形成することができる。後述するカーボンナノチューブデバイス2の第6の製造方法においても同様である。
【0198】
カーボンナノチューブデバイス2の第5の製造方法では、第2の製造方法と同様に、ステップS81において、複数組の一対の電極22が、回転体42の外側面に配置されてもよい。複数組の一対の電極22間の角度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。この場合、ステップS84における抵抗測定では、上述の一対の測定用電極25間の抵抗の測定値に基づいて、各組の一対の電極22間の抵抗が求められる。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程では、各組の一対の電極22について、上述のステップS61~S62(
図28参照)が実施される。これにより、複数のカーボンナノチューブデバイス2を並行して形成することができる。カーボンナノチューブデバイス2の第6の製造方法においても同様である。
【0199】
次に、カーボンナノチューブヒータ1の製造の流れの第6の例について、
図40を参照しつつ説明する。第6の製造方法は、後述するように、電極22とは別の測定用電極が使用される点を除き、上述の第3の製造方法に類似している。カーボンナノチューブデバイス2の第6の製造方法では、まず、
図41に示すデバイス製造装置4において、回転体42の外側面に絶縁性シート部材230が取り付けられ、絶縁性シート部材230上に一対の電極22および一対の測定用電極25が取り付けられる(ステップS101)。当該一対の電極22は、周方向に180°離れた位置に配置される。一対の測定用電極25も、周方向に180°離れた位置に配置される。なお、一対の測定用電極25間の周方向の角度は、必ずしも180°である必要はない。
図41に例示するように、一対の測定用電極25は、一対の電極22に近接して配置されることが好ましい。ステップS51と同様に、各電極22上には上記導電性ペーストが付与される。また、ステップS72と同様に、各測定用電極25上には、上述の粘着剤(例えば、ペースト状のロジン)が付与される。
【0200】
続いて、ステップS52と同様に、回転体42が回転されることにより、カーボンナノチューブアレイ91から引き出されたカーボンナノチューブシート94が、一対の電極22上および一対の測定用電極25上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される(ステップS102)。ステップS102では、ステップS52と同様に、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94に対して、接着剤付与部44(
図39参照)から、上述の導電性添加材を含む接着剤が付与される。また、回転体42に巻回されるカーボンナノチューブシート94は、押圧ローラ45(
図39参照)により回転体42の外側面に向けて押圧され、当該外側面上の絶縁性シート部材230上に圧密される。
【0201】
ステップS102では、カーボンナノチューブシート94の巻回は、抵抗測定装置48による一対の測定用電極25間の抵抗の継続的な測定と並行して行われる。そして、抵抗測定装置48により得られた測定値に基づいて、一対の電極22間の抵抗が継続的に求められる。一対の測定用電極25間の抵抗の測定値から一対の電極22間の抵抗を求める方法は、上述のステップS84と同様である。そして、一対の電極22間の抵抗が所定の目標抵抗に到達するまでステップS102が継続されることにより、一対の電極22上に積層された筒状のカーボンナノチューブシート層53が形成される(ステップS103)。
【0202】
ステップS102~S103が終了すると、ステップS87~S89と同様に、一対の測定用電極25が回転体42から取り外される。また、一対の電極22、および、一対の電極22上に積層された筒状のカーボンナノチューブシート層53が、絶縁性シート部材230と共に回転体42から取り外され(ステップS104)、カーボンナノチューブシート層53が一対の電極22に固定される(ステップS105)。そして、一対の電極22間の筒状のカーボンナノチューブシート層53が、絶縁性シート部材230と共に厚さ方向に押圧されて平面状とされる。これにより、一対の電極22間を接続する接続シート部21および支持シート部23が形成され、カーボンナノチューブデバイス2の形成が終了する(ステップS106)。
【0203】
第6の製造方法では、ステップS104~S106に代えて、
図28に示すステップS61~S62が行われてもよい。この場合、上述のように、一対の電極22のそれぞれの長手方向略中央部にてカーボンナノチューブシート層53、一対の電極22および絶縁性シート部材230が切断される。これにより、一対の電極22間で周方向に延びる2つの接続シート部21が形成される(ステップS61)。そして、各接続シート部21の両端部が、一対の電極22に固定されることにより、2つのカーボンナノチューブデバイス2が形成される(ステップS62)。
【0204】
カーボンナノチューブデバイス2が形成されると、ステップS57と同様に、カーボンナノチューブデバイス2が収容部31の内部に収容される。これにより、カーボンナノチューブヒータ1(
図1参照)が形成される(ステップS107)。
【0205】
以上に説明したように、カーボンナノチューブデバイス2の第6の製造方法は、一対の電極22を配置するとともに一対の測定用電極25を配置する工程(ステップS101)と、一対の測定用電極25間の抵抗を測定しつつカーボンナノチューブシート94を巻回する工程(ステップS102)と、カーボンナノチューブシート層53を形成する工程(ステップS103)と、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程(ステップS105)と、を備える。
【0206】
ステップS101では、軸方向を向く回転軸J1を中心として回転可能な回転体42の外側面において、周方向に離れた位置に一対の電極22が配置され、周方向に離れた位置に一対の測定用電極25が配置される。ステップS102では、回転体42を回転させることにより、カーボンナノチューブシート94が一対の電極22上および一対の測定用電極25上を通過しつつ回転体42の外側面上に巻回される。ステップS103では、ステップS102にて得られた測定値に基づいて求められる一対の電極22間の抵抗が所定の抵抗に到達するまでステップS102を継続することにより、一対の電極22上に積層されたカーボンナノチューブシート層53が形成される。
【0207】
当該製造方法にてカーボンナノチューブデバイス2を製造することにより、上記第3の製造方法と同様に、カーボンナノチューブシート94におけるカーボンナノチューブの密度のばらつき等による影響を抑制して、所望の抵抗(すなわち、目標抵抗に略等しい抵抗)を有するカーボンナノチューブデバイス2を提供することができる。また、上記製造方法により、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。一対の測定用電極25は、上述のように、一対の電極22に近接して配置されることが好ましい。これにより、一対の電極22間の抵抗を、さらに精度良く求めることができる。
【0208】
好ましくは、ステップS101において、一対の電極22は周方向に180°離れた位置に配置される。また、カーボンナノチューブシート層53を一対の電極22に固定する工程は、ステップS104~S106またはステップS61~S62を実施する工程を備える。
【0209】
ステップS104~S106では、ステップS103の終了後、一対の電極22および筒状のカーボンナノチューブシート層53が回転体42から取り外され、カーボンナノチューブシート層53が一対の電極22に固定される。そして、一対の電極22間のカーボンナノチューブシート層53が厚さ方向に押圧されて平面状とされることにより、一対の電極22間を接続する接続シート部21が形成される。これにより、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。また、接続シート部21におけるカーボンナノチューブシートの積層数を容易に大きくすることができる。
【0210】
ステップS61~S62では、上述のように、一対の電極22のそれぞれの中央部にてカーボンナノチューブシート層53および一対の電極22を切断することにより、一対の電極22間で周方向に延びる接続シート部21が形成される。そして、接続シート部21の両端部は、一対の電極22に固定される。これにより、当該カーボンナノチューブデバイス2を容易に製造することができる。
【0211】
上述のカーボンナノチューブデバイス2およびカーボンナノチューブヒータ1、ならびに、これらの製造方法では、様々な変更が可能である。
【0212】
例えば、デバイス製造装置4では、回転体42の形状は、必ずしも略円柱状または略円筒状である必要はなく、様々な形状であってよい。回転体42は、例えば、矩形や多角形の断面を有する柱状または筒状であってもよく、平板状であってもよい。また、例えば、平板状の回転体42上に配置された電極22、および、当該回転体42に巻回されたカーボンナノチューブシート94が、当該回転体42から取り外されることなく、当該回転体42と共にカーボンナノチューブデバイス2として利用されてもよい。
【0213】
第1、第2、第4および第5の製造方法では、カーボンナノチューブシート94の初期巻回数の設定、および、追加巻回数の決定等は、必ずしも制御部46により行われる必要はなく、作業者の手作業等により行われてもよい。
【0214】
第1、第2、第4および第5の製造方法では、必ずしも積層抵抗情報が取得される必要はない。この場合、ステップS11,S31,S71,S81の初期巻回数の設定は、例えば、事前の実験等に基づいて予め行われていてもよい。また、第1の製造方法では、筒状中間体51の切断および一対の電極22間の抵抗測定(ステップS14)、並びに、カーボンナノチューブシート94の積層(ステップS16)が繰り返され、ステップS14における一対の電極22間の抵抗が目標抵抗に略等しくなった時点で、ステップS17~S19が行われる。第4の製造方法においても略同様である。第2の製造方法では、一対の電極22間の抵抗測定(ステップS34)、および、カーボンナノチューブシート94の積層(ステップS36)が繰り返され、ステップS34における一対の電極22間の抵抗が目標抵抗に略等しくなった時点で、ステップS37~S40が行われる。第5の製造方法においても略同様である。
【0215】
第1の製造方法における電極22への導電性ペーストの付与は、ステップS18において電極22が折り曲げられるよりも前に行われるのであれば、ステップS13におけるカーボンナノチューブシート94の巻回よりも後に行われてもよく、ステップS13と並行して行われてもよい。あるいは、電極22への導電性ペーストの付与は省略されてもよい。また、電極22の加熱も省略されてもよい。第2ないし第6の製造方法においても同様である。
【0216】
第4の製造方法において測定用電極25に付与される粘着剤は、上述のように、ペースト状のロジン以外の絶縁性ペーストであってもよく、あるいは、導電性接着剤のような導電性ペーストであってもよい。あるいは、測定用電極25への粘着剤の付与は省略されてもよい。第5および第6の製造方法においても同様である。
【0217】
第1の製造方法では、回転体42の外側面上に3つ以上の電極22が配置されている場合、当該3つ以上の電極22のうち、いずれか2つの電極22が一対の電極22として選択され、当該一対の電極22を接続する接続シート部21が形成されてもよい。これにより、接続シート部21の長さの変更を容易とすることができる。
【0218】
デバイス製造装置4の構造は、
図3、
図4、
図23、
図29、
図31、
図32、
図39および
図41に例示するものには限定されず、様々に変更されてよい。例えば、接着剤付与部44および/または押圧ローラ45は、省略されてもよい。あるいは、押圧ローラ45に代えて、回転体42の外側面に、カーボンナノチューブシート94を吸着するための吸引口群が設けられてもよい。当該吸引口群は、押圧ローラ45と共に設けられてもよい。
【0219】
デバイス製造装置4では、基板保持部41を軸方向に揺動させる揺動機構が設けられ、軸方向に揺動する基板92上のカーボンナノチューブアレイ91からカーボンナノチューブシート94が引き出され、幅方向の幅が大きい比較的大面積の接続シート部21が製造されてもよい。これにより、カーボンナノチューブアレイ91においてカーボンナノチューブの密度が周囲よりも低い領域(以下、「低密度領域」と呼ぶ。)が存在する場合であっても、低密度領域のカーボンナノチューブの残存(すなわち、基板92から引き出されずに基板92上に残る現象)によるカーボンナノチューブシート94の密度不均一等の不具合を抑制することができる。これは、カーボンナノチューブアレイ91に対するカーボンナノチューブシート94の相対的揺動が、複数のカーボンナノチューブ単糸を介してカーボンナノチューブアレイ91における引出位置(すなわち、カーボンナノチューブシート94が引き出されるポイント)に作用することにより、当該引出位置近傍において低密度領域のカーボンナノチューブが、周囲の(特に、軸方向に隣接する)カーボンナノチューブと接触して共に引き出されるからである。
【0220】
上述の例では、カーボンナノチューブシート94は、基板92上に立設した状態のカーボンナノチューブアレイ91から引き出されるものとして説明したが、基板92上から剥離された後のカーボンナノチューブアレイ91から引き出されてもよい。
【0221】
カーボンナノチューブデバイス2では、支持シート部23は省略されてもよい。また、電極22の複数の凸部222も省略されてよい。カーボンナノチューブデバイス2では、接続補具24が使用される場合、接続補具24の形状は、
図19ないし
図21に示す接続補具24a~24cには限定されず、様々に変更されてよい。
【0222】
カーボンナノチューブデバイス2では、接続シート部21と電極22との固定は、必ずしも折り畳まれた電極22により接続シート部21の端部が挟まれる必要はなく、また、接続補具24が用いられる必要もない。
【0223】
カーボンナノチューブデバイス2の接続シート部21の大きさおよび形状は、用途に合わせて様々に変更されてよい。例えば、接続シート部21の対角線の長さは、必ずしも200mm以上である必要はなく、200mm未満であってもよい。また、接続シート部21の平面視における形状は、略矩形以外の形状(例えば、台形等)であってもよい。
【0224】
カーボンナノチューブヒータ1では、放熱部34は、上下方向において必ずしも接続シート部21全体と重なる必要はなく、例えば、接続シート部21の一部のみと重なっていてもよい。カーボンナノチューブヒータ1では、収容部31の放熱部34とは反対側の主面、および、側面に、カーボンナノチューブデバイス2からの熱を反射する反射部が設けられてもよい。当該反射部は、例えば、断熱シートの内面に金属箔を設けたシート状部材である。これにより、カーボンナノチューブデバイス2からの熱を効率良く放熱部34に集めることができる。あるいは、収容部31の放熱部34とは反対側の主面、および、側面にも、放熱部34と同様の膜状または薄板状の部材が設けられてもよい。なお、カーボンナノチューブヒータ1では、放熱部34が省略されてもよい。また、温度センサ36も省略されてもよい。
【0225】
カーボンナノチューブヒータ1の収容部31は、必ずしも可撓性を有する必要はなく、硬質部材であってもよい。
【0226】
カーボンナノチューブヒータ1では、収容部31に収容されるカーボンナノチューブデバイス2は、2つ以上であってもよい。例えば、カーボンナノチューブヒータ1は、上記カーボンナノチューブデバイス2に加えて、上記カーボンナノチューブデバイス2と同様の構造を有するとともに収容部31の内部に収容される他のカーボンナノチューブデバイスをさらに備えていてもよい。この場合、好ましくは、当該他のカーボンナノチューブデバイスは、上記カーボンナノチューブデバイス2の側方に隣接して配置され、放熱部34は、カーボンナノチューブデバイス2の接続シート部21の主面に垂直な方向において、カーボンナノチューブデバイス2の接続シート部21全体、および、当該他のカーボンナノチューブデバイスの接続シート部全体と重なる。これにより、複数のカーボンナノチューブデバイスの接続シート部における温度均一性を向上させることができる。なお、カーボンナノチューブヒータ1では、カーボンナノチューブデバイス2および他のカーボンナノチューブデバイスのそれぞれと重なる2つの放熱部34が設けられてもよい。また、複数のカーボンナノチューブデバイス2を備えるカーボンナノチューブヒータ1では、当該複数のカーボンナノチューブデバイス2の一対の電極22が共通化され、一対の共通電極により複数の接続シート部21に電力が供給されてもよい。
【0227】
カーボンナノチューブヒータ1の形状は用途に合わせて様々に変更されてよい。例えば、カーボンナノチューブヒータ1の平面視における形状は、略矩形以外の形状であってもよい。また、カーボンナノチューブヒータ1は、必ずしも薄型のシート状ヒータである必要はなく、比較的厚い部材であってもよい。
【0228】
カーボンナノチューブデバイス2は、必ずしもカーボンナノチューブヒータ1の発熱源として利用される必要はなく、様々な用途に利用可能である。例えば、カーボンナノチューブデバイス2は、サーモスタットや様々なセンサとして利用されてもよい。
【0229】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0230】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【符号の説明】
【0231】
1 カーボンナノチューブヒータ
2 カーボンナノチューブデバイス
21 接続シート部
22,22a,22b,22c 電極
24,24a~24c 接続補具
25,25a,25b,25c 測定用電極
31 収容部
34 放熱部
42 回転体
51 筒状中間体
52 カーボンナノチューブ構造体
53 カーボンナノチューブシート層
92 基板
94 カーボンナノチューブシート
212 端部要素
213 線状端部
221 (電極の)主面
222 凸部
223 折り畳み線
241 (接続補具の)貫通孔
421 接続領域
J1 回転軸
S11~S19,S31~S40,S51~S57,S61~S62,S71~S79,S81~S90,S101~S107,S181~S183 ステップ