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特許7413354バルーン操作性を向上させるためのバルーン内偏向機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】バルーン操作性を向上させるためのバルーン内偏向機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20240105BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61M25/10
A61M25/092 500
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021507590
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 IB2019056455
(87)【国際公開番号】W WO2020035757
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】16/103,793
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】キース・ジョセフ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘレラ・ケビン・ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ビークラー・クリストファー・トーマス
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116814(JP,A)
【文献】特開昭63-046172(JP,A)
【文献】特表2005-510310(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用器具であって、
患者の体内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結された拡張可能なバルーンと、
前記シャフトの前記遠位端に連結されたバルーン内偏向アセンブリであって、
前記拡張可能なバルーンを少なくとも部分的に通って延在し、(i)前記拡張可能なバルーンの近位側に連結され、前記シャフトの長手方向軸に対して屈曲するように構成された弾性要素、及び(ii)前記拡張可能なバルーンの遠位側に連結された剛性要素、を備える、前記シャフトの遠位部分、並びに
前記剛性要素に連結され、前記弾性要素を屈曲させ、それによって前記拡張可能なバルーンを偏向させるように構成された、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤ、を備える、バルーン内偏向アセンブリと、を備え
支持可撓性ガイドワイヤルーメンを更に備え、
前記弾性要素は、前記支持可撓性ガイドワイヤルーメンを包囲し、前記支持可撓性ガイドワイヤルーメンは、前記弾性要素内に挿入されており、
前記剛性要素が、前記弾性要素の長さの一部にわたって前記弾性要素が屈曲するのを防ぐように構成されている補強管を含み、
前記弾性要素は前記補強管の内部に延び、前記補強管は前記弾性要素の外周を取り囲み、前記シャフトの前記長手方向軸に沿った長手方向において前記補強管が存在しない前記弾性要素の部分が、前記弾性要素が屈曲可能な可撓性要素を形成し、前記長手方向において前記補強管が存在する前記弾性要素の部分は、前記可撓性要素を形成しておらず、
前記弾性要素上の前記補強管の長さが、前記弾性要素の上の屈曲位置を決定するように構成されている、医療用器具。
【請求項2】
前記弾性要素がバネを含む、請求項1に記載の医療用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療用プローブに関し、具体的には、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なカテーテルが、その遠位端を操作するためにステアリング機構を採用する。例えば、米国特許出願公開第2015/0141982号は、少なくとも1つの順応性のあるバルーン部材と、肺静脈又は心門を含む、心臓のチューブ状の領域で、円環状の感知又は焼灼を実現するために、バルーン部材の外表面上に設けた少なくとも1つの電極と、を有するバルーン電極アセンブリを有する、カテーテルについて記載している。またカテーテルは、焦点接着用に適合されたバルーン電極アセンブリの遠位側の先端電極及び/又は輪状電極を有する電極アセンブリを含んでもよい。一実施形態では、牽引ワイヤは、カテーテルの双方向の偏向を可能にする。
【0003】
別の例として、米国特許第6,585,717号は、カテーテルなどの可撓性本体の部分を、単一平面内の2つ以上の方向で、並びに2つ以上の平面内で偏向させるように位置付けられた偏向機構について記載している。本発明は、カテーテルの遠位部分を360度超偏向させてループを提供することを可能にする。一実施形態では、カテーテルの偏向構造は、シースから解放されるとカテーテル先端部に所望の形状を取らせる、ポリマー、バネ強化ステンレス、又は超弾性合金から作られてもよい。張力がプルワイヤに適用され、それによって偏向構造を屈曲させてもよい。
【0004】
米国特許第5,395,327号は、ステアリングシャフトの遠位端を操作するためのハンドル及び装置を含むコントローラに連結された、ステアリングシャフトを含むステアリング機構について記載している。ステアリングシャフトは、リードバネがその遠位端に対して定位置に固定された可撓性コイルバネを、ステアリングシャフトの遠位端に含む。1つ又は2つ以上のステアリングワイヤが、その遠位端でリードバネに固定される。ステアリングワイヤは、ステアリングシャフトを通ってコントローラまで延在し、コントローラのステアリング装置は、ステアリングワイヤの一方又は両方に張力をかけるために使用される。ステアリングワイヤの遠位端をリードバネに取り付けることは、互いに反対であってもよく、又はより大きい操作性を提供するためにオフセットされてもよい。張力は、コントローラ筐体に対して横方向に装着されたウェッジによって、又はコントローラ筐体に対して横方向に装着されたシャフトの回転によって、ステアリングワイヤ上にかけられてもよく、ステアリングワイヤは、一方向の回転が一方のステアリングワイヤを張り、もう一方の方向の回転がもう一方のステアリングワイヤを張るように、シャフトに取り付けられている。2つの独立して回転可能なシャフトを使用して、2本のステアリングワイヤを別々に制御してもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、拡張可能なバルーンと、バルーン内偏向アセンブリと、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤと、を含む医療用器具を提供する。拡張可能なバルーンは、患者の体内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結される。バルーン内偏向アセンブリはまた、シャフトの遠位端に連結され、拡張可能なバルーンを部分的に通って延在し、(i)拡張可能なバルーンの近位側に連結され、シャフトの長手方向軸に対して屈曲するように構成された弾性要素、及び(ii)拡張可能なバルーンの遠位側に連結された剛性要素、を含む、シャフトの遠位部分を含む。1つ又は2つ以上の牽引ワイヤは剛性要素に連結され、弾性要素を屈曲させ、それによって拡張可能なバルーンを偏向させるように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態では、弾性要素はバネを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、剛性要素は、弾性要素の長さの少なくとも一部にわたって弾性要素が屈曲するのを防ぐように構成される補強管を含む。
【0008】
一実施形態では、補強管の長さは、弾性要素の上の屈曲位置を決定するように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態によると、医療用器具を患者の体内に挿入することであって、医療用器具が、(i)シャフトの遠位端に連結された拡張可能なバルーンと、(ii)シャフトの遠位端に連結されたバルーン内偏向アセンブリであって、拡張可能なバルーンを部分的に通って延在し、(a)拡張可能なバルーンの近位側に連結され、シャフトの長手方向軸に対して屈曲するように構成された弾性要素、及び(b)拡張可能なバルーンの遠位側に連結された剛性要素、を含む、シャフトの遠位部分を含む、バルーン内偏向アセンブリと、を含む、ことを含む、医療方法が更に提供される。1つ又は2つ以上の牽引ワイヤが剛性要素に連結され、弾性要素を屈曲させ、それによって拡張可能なバルーンを偏向させるように構成される。拡張可能なバルーンは、患者の器官内にナビゲートされる。拡張可能なバルーンは、器官内部の組織にアクセスするために、バルーン内偏向アセンブリを使用して偏向する。医療処置は、拡張可能なバルーンを使用して組織上で行われる。
【0010】
一実施形態では、拡張可能なバルーンを偏向させることは、シャフトの長手方向軸に対して少なくとも直角で偏向を達成するために必要な力で、バルーンを偏向させることを含む。一実施形態では、医療処置を行うことは、組織をアブレーションすることを含む。
【0011】
本発明の一実施形態によると、拡張可能なバルーンと、可撓性ガイドワイヤルーメンと、補強管と、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤとを含む、医療用器具が更に提供される。拡張可能なバルーンは、患者の体内に挿入するためにシャフトの遠位部分に連結される。可撓性ガイドワイヤルーメンは、コイルバネによって囲まれる。補強管は、可撓性ガイドワイヤルーメンに連結される。1つ又は2つ以上の牽引ワイヤは、遠位部分に連結され、可撓性ガイドワイヤルーメンを屈曲させ、それによって拡張可能なバルーンを偏向させるように構成される。
【0012】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による、偏向可能なバルーンカテーテルを備えるバルーンカテーテル法システムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、バルーン内偏向アセンブリを備える、図1の偏向可能なバルーンカテーテルの概略描写図である。
図3A】本発明の一実施形態による、直線状態及び偏向状態の図2の偏向可能なカテーテルを概略的に示す図である。
図3B】本発明の一実施形態による、直線状態及び偏向状態の図2の偏向可能なカテーテルを概略的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態による、バルーン内偏向アセンブリを使用するバルーン処置方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概論
本明細書で任意の数値又は数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において説明されるその意図された目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、挙げられた値の±10%の値の範囲を指してもよく、例えば、「約90%」は、81%~99%の値の範囲を指してもよい。更に、本明細書で使用するとき、「患者」、「ホスト」、「ユーザ」、及び「対象」という用語は、任意のヒト又は動物対象を指し、システム又は方法をヒトにおける使用に限定することを意図していないが、ヒト患者における本発明の使用は、好ましい実施形態を表す。
【0015】
以下に記載及び例示される本発明の実施形態は、バルーン内偏向アセンブリを備える心臓用の拡張可能なバルーンカテーテルを提供する。拡張可能なバルーンは、患者の体内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結される。開示された偏向アセンブリは、バルーンの上に配置された電極のうちの1つ又は2つ以上を、そうでなければアクセスが困難な心腔組織と堅固に接触させるために、バルーンの自然な可撓性(例えば、コンプライアンス)によって補助されて、ユーザがバルーンをその長手方向軸に対して鋭く偏向(即ち、屈曲)させることを可能にする。
【0016】
いくつかの実施形態では、偏向アセンブリは、拡張可能なバルーンを部分的に通って延在し、(i)拡張可能なバルーンの近位側に連結され、シャフトの長手方向軸に対して屈曲するように構成された、バネ又は弾性梁などの弾性要素、及び(ii)拡張可能なバルーンの遠位側に連結された剛性要素、を備える、シャフトの遠位部分を備える。そのようにして、偏向アセンブリ全体がバルーン内部に位置する。
【0017】
バルーン内偏向機能を確立するために、剛性要素は、その近位端で弾性要素に連結され、剛性部分及び可撓性(即ち、弾性)部分の相対長さは、偏向中心(即ち、バルーン内部の偏向の中心点)を決定する。具体的には、この構成により、弾性要素が屈曲する弾性要素の上の位置(即ち、バルーン内偏向アセンブリが偏向する弾性要素の上の位置)を選択することができる。
【0018】
加えて、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤが剛性要素に連結され、弾性要素を屈曲させ、それによって拡張可能なバルーンを偏向させるように構成される。例えば、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤは、医師によって引っ張られると、シャフトの遠位端に対して多数の横向きの方向のうちの1つに剛性要素を偏向させ得る。
【0019】
一実施形態では、弾性要素は、シャフトの長手方向軸に平行なバルーンの直径全体に及ぶ。剛性要素は、弾性要素の少なくとも遠位半分を覆う長さにわたって弾性要素を堅固に固定する補強管を含む。この固定は、弾性要素の被覆部分の上の位置で弾性要素が屈曲することを防止する。1つ又は2つ以上の牽引ワイヤは、補強管の遠位端に取り付けられる。バルーンは、その近位端でシャフトの遠位端に連結される。バルーンの遠位端は、補強管の遠位端に連結される。補強管は、牽引ワイヤとともに引かれると、バルーン内部の弾性要素の上の位置を中心にバルーンを偏向させる。
【0020】
一実施形態では、弾性要素の弾性率強度は、補強管を完全に偏向させるために、例えば、シャフトの長手方向軸に対して直角にバルーンを偏向させるために、牽引ワイヤの最大必要牽引力を決定することに基づいて選択される。別の実施形態では、バルーンは、アブレーション中の組織冷却のための流れ灌注を維持しながら、鋭い偏向角度をとることができる。
【0021】
バルーン内偏向アセンブリの様々な構成要素の上記の構成により、バルーンの幾何学的中心により近いバルーンの偏向が可能になる。したがって、バルーンの1つ又は2つ以上のアブレーション電極における位置は、鋭い偏向角度で、バルーンに対して広範囲の角度にわたって位置する組織と接触することができる。例えば、開示されたバルーン内偏向アセンブリは、例えば、ユーザがバルーンをほぼ直角に偏向させるとき、バルーン電極のうちの1つ又は2つ以上がバルーンに直接的又は間接的に近位に位置する組織と接触することを可能にする。
【0022】
いくつかの実施形態では、関連するバルーン処置方法、即ち、バルーン内偏向アセンブリを使用する方法が提供される。方法は、バルーンカテーテルを患者の体内に挿入することと、バルーンを標的器官内に前進させる(即ち、ナビゲートする)こととを含む。バルーンが器官内部にあるとき、医師は、バルーンを標的組織にアクセスすることを可能にするために、バルーンを内部に偏向する。次に、医師は、カテーテルを更に操作して、内部に偏向したバルーンと標的組織との間の物理的接触を確立する。いったん医師が接触を行うと、医師は、例えば、組織と接触させた電極の一部を使用して高周波アブレーションを適用することによって、組織を処置することができる。
【0023】
開示されたバルーン内偏向機構及び関連するバルーン処置方法は、開示される機構及び方法が提供されないカテーテルに利用可能な単純な操作によって制限される場合、そうでなければ治療にあまりアクセス可能でないか、又はアクセス不可能であり得るバルーンカテーテルを用いて、医師を組織にアクセスさせる。そのような操作性は、心房細動の治療のための肺静脈隔離術(pulmonary vein isolation、PVI)などの診断的及び/又は治療的な侵襲的心臓手術が無事に完了する機会を増加させる。
【0024】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、偏向可能なバルーンカテーテル40を備えるバルーンカテーテル法システムの概略描写図である。システム20は、カテーテル21を備え、カテーテルのシャフト22の遠位端は、シース23を通して、台29の上に横になっている患者28の、差し込み図25に見られる心臓26の中へ挿入される。カテーテル21の近位端は、制御コンソール24に接続されている。本明細書に記載されている実施形態では、カテーテル21は、拡張可能なバルーンカテーテルの他の可能な医療用途のうちとりわけ、心臓26内の組織の電気的感知、又はバルーン血管形成及びアブレーションなどの任意の好適な治療目的及び/又は診断目的に使用されてもよい。
【0025】
医師30は、カテーテルの近位端付近にあるマニピュレータ32、及び/又はシース23からの偏向を使用してシャフト22を操作することによって、心臓26内の標的位置へシャフト22の遠位端をナビゲートする。シャフト22の挿入中に、バルーンカテーテル40は、シース23によって畳み込まれた構成で維持される。バルーンカテーテル40を畳み込まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的位置までの経路に沿った血管外傷を最小限に抑える働きも行う。
【0026】
制御コンソール24は、カテーテル21からの信号を受信するとともに、心臓26内でカテーテル21を介して治療を施し、更にシステム20の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド及びインタフェース回路38を備えるプロセッサ41、通常は汎用コンピュータを備える。プロセッサ41は通常、本明細書で説明される機能を実行するようにソフトウェアにプログラムされる汎用コンピュータを含む。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、又は代替として、若しくは更に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上で提供及び/又は記憶されてもよい。
【0027】
図1に示される例示的な構成は、単に概念を明確化する目的で選択される。本開示の技法は、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用されることができる。例えば、システム20は、他の構成要素を含み、非心臓処置を実行してもよい。
【0028】
バルーン操作性を向上させるためのバルーン内偏向機構
図2は、本発明の一実施形態による、バルーン内偏向アセンブリを備える、図1の偏向可能なバルーンカテーテル40の概略描写図である。バルーンカテーテル40は、コイルバネ51を介してシャフト22の遠位部分56に連結され、バネ51は、バルーンの遠位端までバルーン55の全長に及んでもよい。支持可撓性ガイドワイヤルーメン57を包囲するバネ51の一部分は、残りの可撓性セグメント53(即ち、可撓性要素)が形成されるように、補強管52内部に延びる。補強管52に連結された2本の牽引ワイヤ54は、バルーン55の双方向の偏向を可能にする。一実施形態では、補強管52の必要な長さは、可撓性要素53の長さを決定するために選択される。この選択により、バネ51の上の位置66でバネ51の屈曲が生じる。例示された実施形態では、バルーン55は、シャフト22の長手方向軸の上に位置するバネ51の上の屈曲位置66を中心に偏向する。1つの例示的な実施形態では、屈曲位置66は、シャフト22の最遠位端に対して遠位に(即ち、バルーン55の最近位端に対して遠位に)、バルーン55の直径の約6分の1に位置する。
【0029】
例示的な実施形態は、シャフト22の遠位部分56及び支持弾性ガイドワイヤルーメン57がバルーンを通って延在するように構成されることを示すが、遠位部分をバルーン内に部分的に延在させることは、本発明の範囲内である。したがって、図2に示されている例示は、単に概念を分かりやすくする目的で選択される。代替の実施形態では、任意の他の好適な構成を使用することができ、例えば、バルーン55の多方向偏向を可能にするために、3本以上の牽引ワイヤ54が使用されてもよい。補強管52の長さは異なってもよく、それに応じて屈曲位置66も異なり得る。バネ51の弾性率は、例えば、バルーン55がシャフトの長手方向軸に対してほぼ直角に偏向する牽引力を決定するように変化し得る。一実施形態では、弾性率は、約1メガパスカル(即ち、10N/m)である。弾性率はまた、アセンブリの歪み力に影響を及ぼすように変化してもよい。更に、バネ51自体は、弾性セグメントの一例として提供される。あらゆる曲げ構成要素は、バネ、例えば、可撓性梁に取って代わることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、バルーンカテーテル40は、バルーン55が容易にシース23内に引き込まれ得るように十分にバルーン55を伸長する(即ち、折り畳む)ために、約8ミリメートルの軸方向移動を必要とする。これは、約4lbsの力、又は約0.5lbs/mm(即ち、約2,000N/m)のバネ定数を必要とする。バネ51は、ステンレス鋼、ニチノール、ベリリウム銅、リン青銅、又は好適な弾性特性を有する任意の他の同様の材料で作られ得る。
【0031】
更に、弾性要素の一部の周囲での補強管の使用もまた必須ではない。代替の実施形態では、偏向アセンブリは、バルーン内部の部分の遠位部分が剛性であり、バルーン内部の部分の近位部分が可撓性である、任意の他の構造を備えてもよい。
【0032】
バルーンは、米国特許第9,907,610号(参照により本明細書に組み込まれる)に図示及び記載されているような機械的拡張、又は機械的及び水力(生理食塩水流を介した)拡張技法の組み合わせなど、任意の好適な技法によって拡張され得ることに留意されたい。
【0033】
図3A及び図3Bは、本発明の一実施形態による、直線状態及び偏向状態の偏向可能なカテーテル40の写真である。示されるように、バルーンカテーテル40は、シャフト22の端部に取り付けられる。
【0034】
図3Aは、シャフト22と概ね平行に整列されたバルーン55を示す。この構成では、RF電極58は、主にシャフト22に対して垂直に、即ち半径方向59にある組織を押すように構成される。そのような一般的に生じる構成の一例は、肺静脈隔離術のための手順である。
【0035】
図3Bは、(牽引ワイヤの少なくとも1本を引くことによって)近位に偏向したバルーン55を示す。バルーンは、拡張されたものとして見られる。示されるように、冷却流体(例えば、血液及び組織を冷却するための生理食塩水)は、灌注孔から流出する。更に示されるように、バルーンは、ほぼバルーン赤道上に位置する点61でバルーンの表面が近位方向60に向けられるように屈曲する。そのようなバルーンの屈曲は、その高周波電極58のうちの少なくとも1つを、そうでなければ別のタイプのアブレーションバルーンを用いてアクセスすることが困難である組織と接触させることができる。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態による、バルーン内偏向アセンブリを使用するバルーン処置方法を概略的に示すフローチャートである。処置は、バルーン挿入工程70において、医師30がバルーンカテーテル40を患者の体内に挿入することから始まる。次に、医師は、バルーンナビゲーション工程72において、バルーンカテーテルを標的器官内にナビゲートする。次に、バルーン内部偏向工程74において、医師30は、バルーンを標的組織にアクセスすることを可能にするために、バルーンを内部に偏向する。次いで、医師30は、バルーン接触工程76において、例えば、内部に偏向したバルーンの近位表面と標的組織との間の堅固な接触を確立するように、シャフトを操作する。医師は次に、バルーン処置工程78において、例えば、組織と接触した電極を使用して高周波アブレーションによって組織を処置する。
【0037】
図4に示される例示的なフローチャートは、単に概念を分かりやすくする目的で選択される。バルーンの拡張及び灌注の操作などの追加の工程は、意図的に高度に単純化されたフローチャートから省略される。
【0038】
本明細書に記述される実施形態は、主として肺静脈隔離術に関するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、耳鼻咽喉学又は神経学の手術などの他の用途でも使用され得る。
【0039】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を一読すると当業者が着想すると思われるそれらの変形及び修正であって、先行技術に開示されていない変形及び修正を含む。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠部と見なすものとする。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 医療用器具であって、
患者の体内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結された拡張可能なバルーンと、
前記シャフトの前記遠位端に連結されたバルーン内偏向アセンブリであって、
前記拡張可能なバルーンを少なくとも部分的に通って延在し、(i)前記拡張可能なバルーンの近位側に連結され、前記シャフトの長手方向軸に対して屈曲するように構成された弾性要素、及び(ii)前記拡張可能なバルーンの遠位側に連結された剛性要素、を備える、前記シャフトの遠位部分、並びに
前記剛性要素に連結され、前記弾性要素を屈曲させ、それによって前記拡張可能なバルーンを偏向させるように構成された、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤ、を備える、バルーン内偏向アセンブリと、を備える、医療用器具。
(2) 前記弾性要素がバネを含む、実施態様1に記載の医療用器具。
(3) 前記剛性要素が、前記弾性要素の長さの少なくとも一部にわたって前記弾性要素が屈曲するのを防ぐように構成されている補強管を含む、実施態様1に記載の医療用器具。
(4) 前記補強管の長さが、前記弾性要素の上の屈曲位置を決定するように構成されている、実施態様3に記載の医療用器具。
(5) 医療方法であって、
医療用器具を患者の体内に挿入することであって、前記医療用器具が、(i)シャフトの遠位端に連結された拡張可能なバルーンと、(ii)前記シャフトの前記遠位端に連結されたバルーン内偏向アセンブリであって、
前記拡張可能なバルーンを部分的に通って延在し、(a)前記拡張可能なバルーンの近位側に連結され、前記シャフトの長手方向軸に対して屈曲するように構成された弾性要素、及び(b)前記拡張可能なバルーンの遠位側に連結された剛性要素、を備える、前記シャフトの遠位部分、並びに
前記剛性要素に連結され、前記弾性要素を屈曲させ、それによって前記拡張可能なバルーンを偏向させるように構成された、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤ、を備える、バルーン内偏向アセンブリと、を備える、ことと、
前記拡張可能なバルーンを前記患者の器官内にナビゲートすることと、
前記器官内の組織にアクセスするために、前記バルーン内偏向アセンブリを使用して前記拡張可能なバルーンを偏向させることと、
前記拡張可能なバルーンを使用して組織上で医療処置を行うことと、を含む、医療方法。
【0041】
(6) 前記拡張可能なバルーンを偏向させることが、前記シャフトの前記長手方向軸に対して少なくとも直角で偏向を達成するために必要な力で、前記バルーンを偏向させることを含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記医療処置を行うことが、前記組織をアブレーションすることを含む、実施態様5に記載の方法。
(8) 医療用器具であって、
患者の体内に挿入するためにシャフトの遠位部分に連結された拡張可能なバルーンと、
コイルバネによって囲まれている可撓性ガイドワイヤルーメンと、
前記可撓性ガイドワイヤルーメンに連結された補強管と、
前記遠位部分に連結され、前記可撓性ガイドワイヤルーメンを屈曲させ、それによって前記拡張可能なバルーンを偏向させるように構成された、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤと、を備える、医療用器具。
図1
図2
図3A
図3B
図4