(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】フィルム状接着剤及び半導体加工用シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20240105BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240105BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240105BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J201/00
H01L21/52 E
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2021509254
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011975
(87)【国際公開番号】W WO2020196156
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019054995
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑耶
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037631(WO,A1)
【文献】特開2008-231366(JP,A)
【文献】特開2016-216562(JP,A)
【文献】特開2004-327623(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121488(WO,A1)
【文献】特開2012-167174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/35
C09J 201/00
H01L 21/52
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性のフィルム状接着剤であって、
40℃で7日間保存前でありかつ熱硬化前、及び40℃で7日間保存後でありかつ熱硬化前で、下記要件1)及び2)
:
1)前記フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×10
4Pa以下である。
2)ライン/スペース(L/S)が100μm/100μmで厚みが10μmの銅配線を有するガラス基板の前記銅配線側に対して、10mm×10mm×20μmの前記フィルム状接着剤を80℃で1.96Nの荷重を1秒間与えて圧着した部分の中央部1.1mm×5mmの領域において、前記スペース部分100面積%のうちの空気残存率が20面積%以下である。
を満たし、
前記フィルム状接着剤が、重合体成分(a)、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)を含有し、前記重合体成分(a)がアクリル樹脂であり、前記熱硬化剤(b2)が、下記一般式(1)で表される軟化点が60~130℃の樹脂である、フィルム状接着剤。
【化1】
(一般式(1)中、nは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記フィルム状接着剤の厚さが5~50μmである、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
支持シートを備え、前記支持シートの一方の面上に、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤を備えた、半導体加工用シート。
【請求項4】
前記支持シートが、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、
前記粘着剤層が、前記基材と、前記フィルム状接着剤と、の間に配置されている、請求項3に記載の半導体加工用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤及び半導体加工用シートに関する。
本願は、2019年3月22日に日本に出願された特願2019-054995号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは、通常、その裏面に貼付されているフィルム状接着剤によって、基板の回路形成面にダイボンディングされる。そして、得られたものを用いて、半導体パッケージが作製され、この半導体パッケージを用いて、最終的に、目的とする半導体装置が製造される。
【0003】
裏面にフィルム状接着剤を備えた半導体チップ(フィルム状接着剤付き半導体チップ)は、例えば、裏面にフィルム状接着剤を備えた半導体ウエハを用いて、半導体ウエハの半導体チップへの分割と、フィルム状接着剤の切断と、を同時に行うことによって作製される。このような方法としては、例えば、ダイシングブレードを用いて、半導体ウエハを分割するとともに、同時にフィルム状接着剤を切断する方法が知られている(特許文献1参照)。この場合、切断前のフィルム状接着剤は、ダイシング時に半導体ウエハを固定するために使用されるダイシングシートに対して積層されて一体化された、ダイシングダイボンディングシートとして利用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の方法では、フィルム状接着剤の特性が不十分である場合、例えば、フィルム状接着剤付き半導体チップを用いて半導体パッケージを製造したとき、加熱を経た半導体パッケージ中で、半導体チップと基板との間、又は半導体チップ同士の間において、剥離が生じ、半導体パッケージの信頼性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、フィルム状接着剤付きチップを基板の回路形成面にダイボンディングして、その後、半導体パッケージを製造する場合において、保存安定性が高く、信頼性が高い半導体パッケージを製造できるフィルム状接着剤、及び前記フィルム状接着剤を備えた半導体加工用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
(1)熱硬化性のフィルム状接着剤であって、
40℃で7日間保存前でありかつ熱硬化前、及び40℃で7日間保存後でありかつ熱硬化前で、下記要件1)及び2)を満たす、フィルム状接着剤。
1)前記フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下である。
2)ライン/スペース(L/S)が100μm/100μmで厚みが10μmの銅配線を有するガラス基板の前記銅配線側に対して、10mm×10mm×20μmの前記フィルム状接着剤を80℃で1.96Nの荷重を1秒間与えて圧着した部分の中央部1.1mm×5mmの領域において、前記スペース部分100面積%のうちの空気残存率が20面積%以下である。
(2)前記フィルム状接着剤の厚さが5~50μmである、前記(1)に記載のフィルム状接着剤。
(3)支持シートを備え、前記支持シートの一方の面上に、前記(1)又は(2)に記載のフィルム状接着剤を備えた、半導体加工用シート。
(4)前記支持シートが、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、
前記粘着剤層が、前記基材と、前記フィルム状接着剤と、の間に配置されている、前記(3)に記載の半導体加工用シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルム状接着剤付きチップを基板の回路形成面にダイボンディングして、その後、半導体パッケージを製造する場合において、保存安定性が高く、信頼性が高い半導体パッケージを製造できるフィルム状接着剤、及び前記フィルム状接着剤を備えた半導体加工用シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る半導体加工用シートを模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る半導体加工用シートを模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施形態に係る半導体加工用シートを模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明のさらに他の実施形態に係る半導体加工用シートを模式的に示す断面図である。
【
図6】実施例において、空気残存率試験に用いた基板の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◇フィルム状接着剤
本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤は、熱硬化性のフィルム状接着剤であって、40℃で7日間保存前でありかつ熱硬化前、及び40℃で7日間保存後でありかつ熱硬化前で、下記要件1)及び2)を満たすものである。
1)前記フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下である。
2)ライン/スペース(L/S)が100μm/100μmで厚みが10μmの銅配線を有するガラス基板の前記銅配線側に対して、10mm×10mm×20μmの前記フィルム状接着剤を80℃で1.96Nの荷重を1秒間与えて圧着した部分の中央部1.1mm×5mmの領域において、前記スペース部分100面積%のうちの空気残存率が20面積%以下である。
【0011】
本実施形態のフィルム状接着剤において、上記要件1)及び2)を満たすことにより、フィルム状接着剤付きチップを基板の回路形成面にダイボンディングして、その後、半導体パッケージを製造する場合において、半導体チップと基板との間、又は半導体チップ同士の間において、剥離が生じ難い、信頼性が高い半導体パッケージを製造できる。
【0012】
上記要件1)と2)との関係については、以下であると考えられる。上記要件1)における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下であると、上記要件2)におけるスペース部分にフィルム状接着剤が充填されやすくなり、空気残存率が低下するものと考えられる。
【0013】
また、本実施形態のフィルム状接着剤は、上記要件1)及び2)を、40℃で7日間保存前であり且つ熱硬化前、及び40℃で7日間保存後であり且つ熱硬化前の両方で満たすものである。40℃7日間の静置保存は、常温(約25℃)3カ月の静置保存に相当する促進処理である。したがって、本実施形態のフィルム状接着剤は、長期間の保存を経た後であっても、保存安定性が高く上記の信頼性を発揮できる。
【0014】
上記の信頼性をより向上させる点では、本実施形態のフィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下であり、9×103Pa以下であることが好ましく、7×103Pa以下であることがより好ましく、5×103Pa以下であることがさらに好ましい。80℃という温度は、本実施形態のフィルム状接着剤が使用されるボンディングの工程の加熱温度を想定したものである。
【0015】
本実施形態のフィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’の下限値は、特に制限されるものではないが、1×103Pa以上であってもよく、1.5×103Pa以上であってもよく、2×103Pa以上であってもよい。80℃における貯蔵弾性率G’が上記下限値以上であると、ダイボンディングの工程において荷重をかけた際にもフィルム状接着剤の厚みが安定し、より信頼性の高い半導体パッケージを製造できる。
【0016】
本実施形態のフィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’の上記数値範囲の一例としては、1×103Pa以上3×104Pa以下であってもよく、1×103Pa以上9×103Pa以下であってもよく、1.5×103Pa以上7×103Pa以下であってもよく、2×103Pa以上5×103Pa以下であってもよい。
【0017】
後述の実施例において示されるように、フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’の値が低いほど、フィルム状接着剤を基板の回路形成面に圧着した際に生じ得る、スペース部分の上記空気残存率を低減することができる。
【0018】
半導体パッケージの信頼性を向上させる観点からは、上記空気残存率の値は低いほど好ましい。本実施形態のフィルム状接着剤の上記要件2)における上記空気残存率は20面積%以下であり、19面積%以下であることが好ましく、18面積%以下であることがより好ましい。空気残存率の下限は0面積%であってよく、半導体パッケージの信頼性を発揮する上では、5面積%以上であってもよく、10面積%以上であってもよい。
【0019】
上記の空気残存率は、後述の実施例に記載の取得方法及び条件により、取得されたものとする。
空気残存率は、ライン/スペース(L/S)が100μm/100μmで厚みが10μmの銅配線を有するガラス基板の前記銅配線側に対して、10mm×10mm×20μmの前記フィルム状接着剤と、10mm×10mm×100μmの石英ガラスチップと、の積層体であるフィルム状接着剤付きチップの該フィルム状接着剤を、そのチップ側から80℃で1.96Nの荷重を1秒間与えて圧着した部分の中央部1.1mm×5mmの領域において、前記チップの上面から圧着後の前記フィルム状接着剤を観察し、前記スペース部分100面積%のうち、ガラス基板に前記フィルム状接着剤が接触していない部分(空気残存領域)の面積の割合〔スペース部分の領域の空気残存領域の面積値をA、スペース部分の領域の非空気残存領域の面積値をBとしたとき、スペース部分の空気残存率(面積%)=A/(A+B)×100〕として求めることができる。前記チップは、透明なものを使用すればよい。フィルム状接着剤が接触している非空気残存領域と、空気残存領域とでは、チップを透して見えるフィルム状接着剤の色合が異なって見えるので、空気残存領域は目視により容易に区別可能である。同様に、空気残存部分は、取得した画像に対し、画像解析装置を使用して明度や色等の違いを解析することによっても区別可能である。空気残存率は、画像解析装置を使用して算出可能である。
【0020】
本実施形態において、上記要件1)及び2)を求める対象となるフィルム状接着剤は、その製造直後から、25℃を超える温度条件下では保存されておらず、かつ、25℃以下の温度条件下での保存時間が1年以内であるもの、が好ましい。
さらに、このときの温度以外のフィルム状接着剤の保存条件は、以下のとおりである。すなわち、フィルム状接着剤は、空気雰囲気下で保存することが好ましく、静置保存することが好ましく、暗所で保存することが好ましい。そして、これら2以上の条件を満たすように保存することがより好ましく、すべての条件を満たすように保存することが特に好ましい。
【0021】
本明細書においては、半導体チップの回路が形成されている面を「回路形成面」と称し、この回路形成面とは反対側の面を「裏面」と称する。そして、半導体チップと、その裏面に設けられたフィルム状接着剤と、を備えた構造体を、「フィルム状接着剤付き半導体チップ」と称する。
また、本明細書においては、基板の回路が形成されている面も「回路形成面」と称する。
本実施形態のフィルム状接着剤を備えたフィルム状接着剤付き半導体チップは、そのフィルム状接着剤によって、基板の回路形成面へ良好な状態でダイボンディングできる。
【0022】
前記フィルム状接着剤は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0023】
なお、本明細書においては、フィルム状接着剤の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0024】
前記フィルム状接着剤の厚さは、特に限定されないが、1~50μmであることが好ましく、3~50μmであることがより好ましく、5~50μmであることがさらに好ましく、5~40μmであることが特に好ましく、5~30μmであることが最も好ましい。フィルム状接着剤の厚さが前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の被着体(半導体ウエハ、半導体チップ)に対する接着力が、より高くなる。フィルム状接着剤の厚さが前記上限値以下であることで、後述する半導体チップの製造工程において、フィルム状接着剤をより容易に切断でき、また、フィルム状接着剤に由来する切断片の発生量をより低減でき、さらに、半導体装置を薄化するのに有利である。
ここで、「フィルム状接着剤の厚さ」とは、フィルム状接着剤全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるフィルム状接着剤の厚さとは、フィルム状接着剤を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0025】
前記フィルム状接着剤は、その構成材料を含有する接着剤組成物を用いて形成できる。例えば、フィルム状接着剤の形成対象面に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にフィルム状接着剤を形成できる。
接着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、フィルム状接着剤の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0026】
接着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0027】
接着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、接着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する接着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
以下、フィルム状接着剤及び接着剤組成物の含有成分について、詳細に説明する。
【0028】
<<接着剤組成物>>
好ましい接着剤組成物としては、熱硬化性の接着剤組成物が挙げられる。
熱硬化性の接着剤組成物としては、例えば、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)を含有するものが挙げられる。以下、各成分について説明する。
【0029】
<重合体成分(a)>
重合体成分(a)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分であり、フィルム状接着剤に造膜性や可撓性等を付与すると共に、半導体チップ等の接着対象への接着性(貼付性)を向上させるための重合体化合物である。重合体成分(a)は、熱可塑性を有し、熱硬化性を有しない。なお、本明細書において重合体化合物には、重縮合反応の生成物も含まれる。
【0030】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する重合体成分(a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0031】
重合体成分(a)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が好ましい。
【0032】
重合体成分(a)における前記アクリル樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量がこのような範囲内であることで、フィルム状接着剤と被着体との間の接着力を好ましい範囲に調節することが容易となる。
一方、アクリル樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従し易くなり、被着体とフィルム状接着剤との間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0033】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル樹脂のTgが前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤と被着体との間の接着力が抑制されて、ピックアップ時において、フィルム状接着剤付き半導体チップの、後述する支持シートからの引き離しがより容易となる。アクリル樹脂のTgが前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤と半導体チップとの間の接着力が向上する。
【0034】
アクリル樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル; (メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する基を意味する。
【0035】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
【0036】
アクリル樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合して得られた樹脂であってもよい。
【0037】
アクリル樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0038】
アクリル樹脂は、上述の水酸基以外に、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル樹脂の水酸基をはじめとするこれら官能基は、後述する架橋剤(f)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(f)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0039】
アクリル樹脂において、これを構成する構成単位の全量に対する、グリシジル基含有モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、25質量%以下であることが好ましく、例えば、15質量%以下及び10質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合(含有量)が前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤の保存安定性がより高くなる。なお、前記グリシジル基含有モノマーとは、例えば、前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル等の、グリシジル基を有するモノマーを意味する。
【0040】
アクリル樹脂において、これを構成する構成単位の全量に対する、グリシジル基含有モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)の下限値は、特に限定されない。 アクリル樹脂において、前記割合(含有量)は、0質量%以上であってもよいし、例えば、2質量%以上であれば、グリシジル基含有モノマーを用いたことによる効果が、より明らかに得られる。
【0041】
アクリル樹脂において、これを構成する構成単位の全量に対する、グリシジル基含有モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記割合は、好ましくは0~25質量%であり、例えば、0~15質量%、及び0~10質量%のいずれかであってもよい。また、一実施形態において、前記割合は、好ましくは2~25質量%でりあり、例えば、2~15質量%、及び2~10質量%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記割合の一例である。
【0042】
本発明においては、重合体成分(a)として、アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、ピックアップ時において、フィルム状接着剤付き半導体チップの、後述する支持シートからの引き離しがより容易となったり、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従し易くなり、被着体とフィルム状接着剤との間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0043】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0044】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0045】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0046】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0047】
接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(a)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、重合体成分(a)の含有量の割合)は、重合体成分(a)の種類によらず、5~40質量%であることが好ましく、6~30質量%であることがより好ましく、例えば、7~20質量%等であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の構造がより安定化する。
【0048】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、重合体成分(a)の総含有量に対する、アクリル樹脂の含有量の割合は、25~100質量%であることが好ましく、例えば、50~100質量%、70~100質量%、及び90~100質量%のいずれかであってもよい。前記含有量の割合が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の保存安定性がより高くなる。
【0049】
<熱硬化性成分(b)>
熱硬化性成分(b)は、熱硬化性を有し、フィルム状接着剤を熱硬化させるための成分である。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する熱硬化性成分(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0050】
熱硬化性成分(b)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、熱硬化性成分(b)は、エポキシ系熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0051】
〇エポキシ系熱硬化性樹脂
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)からなる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0052】
[エポキシ樹脂(b1)]
エポキシ樹脂(b1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂(b1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりも、後述するアクリル樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0054】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換された構造を有する化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。なお、本明細書において「誘導体」とは、特に断りのない限り、元の化合物の1個以上の基がそれ以外の基(置換基)で置換された構造を有するものを意味する。ここで、「基」とは、複数個の原子が結合して構成された原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0055】
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。 不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0056】
エポキシ樹脂(b1)の数平均分子量は、特に限定されないが、フィルム状接着剤の硬化性、並びにフィルム状接着剤の硬化物の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~800g/eqであることがより好ましい。
【0057】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ樹脂(b1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0058】
エポキシ樹脂(b1)の市販品としては、アクリル樹脂微粒子(微粒子状のアクリル樹脂)を含有するものがある。本実施形態においては、アクリル樹脂微粒子を含有しないエポキシ樹脂(b1)を用いることで、例えば、重合体成分(a)として、アクリル樹脂微粒子との相互作用によって、アクリル樹脂微粒子を凝集させ易いものを用いた場合であっても、このようなアクリル樹脂微粒子の凝集が抑制されることがあり、これにより、フィルム状接着剤の保存安定性がより高くなることがある。
このような効果がより明確に得られる点では、例えば、接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、アクリル樹脂微粒子の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、アクリル樹脂微粒子の含有量の割合)は、アクリル樹脂微粒子の由来によらず、0~5質量%であることが好ましく、0~3質量%であることがより好ましい。
【0059】
[熱硬化剤(b2)]
熱硬化剤(b2)は、エポキシ樹脂(b1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(b2)としては、例えば、下記一般式(1):
【0060】
【化1】
(一般式(1)中、nは1以上の整数である。)
で表される樹脂(本明細書においては、「樹脂(1)」と称することがある)と、それ以外の熱硬化剤と、が挙げられる。
【0061】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する熱硬化剤(b2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。例えば、接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、熱硬化剤(b2)として、樹脂(1)のみを含有していてもよいし、樹脂(1)以外の熱硬化剤のみを含有していてもよいし、樹脂(1)とそれ以外の熱硬化剤をともに含有していてもよい。
【0062】
・樹脂(1)
樹脂(1)は、より具体的には、o-クレゾール型ノボラック樹脂である。
一般式(1)中、nは1以上の整数であり、例えば、2以上、4以上、及び6以上のいずれかであってもよい。
nの上限値は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されない。例えば、nが10以下である樹脂(1)は、その製造又は入手がより容易である。
【0063】
一般式(1)中、o-クレゾール-ジイル基(-C6H4(-OH)(-CH3)-)同士を連結しているメチレン基(-CH2-)の、これらo-クレゾール-ジイル基に対する結合位置は、特に限定されない。
【0064】
さらに、樹脂(1)の軟化点は、60~130℃であることが好ましい。樹脂(1)の軟化点が60℃以上であることで、フィルム状接着剤が被着体同士を接着する力、いわゆる接着力を発現しやすい。樹脂(1)の軟化点が130℃以下であることで、フィルム状接着剤のダイボンディング温度を低くでき、ダイボンディング後の基板の反りを高度に抑制できる。
【0065】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する樹脂(1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0066】
・樹脂(1)以外の熱硬化剤
樹脂(1)以外の熱硬化剤は、樹脂(1)に該当しないものであれば、特に限定されない。
樹脂(1)以外の熱硬化剤としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられる。
【0067】
樹脂(1)以外の熱硬化剤のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。 樹脂(1)以外の熱硬化剤のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)等が挙げられる。
【0068】
樹脂(1)以外の熱硬化剤は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する、樹脂(1)以外の熱硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換された構造を有する化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した構造を有する化合物等が挙げられる。
樹脂(1)以外の熱硬化剤における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様である。
【0069】
樹脂(1)以外の熱硬化剤としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、フィルム状接着剤の接着力を調節することが容易となる点から、樹脂(1)以外の熱硬化剤は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0070】
樹脂(1)以外の熱硬化剤のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
樹脂(1)以外の熱硬化剤のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0071】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する、樹脂(1)以外の熱硬化剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0072】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、熱硬化剤(b2)の含有量は、熱硬化剤(b2)の種類によらず、エポキシ樹脂(b1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましく、例えば、5~100質量部、及び10~75質量部のいずれかでってもよい。熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤の吸湿率が低減されて、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0073】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、熱硬化性成分(b)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量)は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、100~900質量部であることが好ましく、130~850質量部であることがより好ましく、160~800質量部であることがさらに好ましく、例えば、400~800質量部、500~800質量部、及び600~800質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(b)の前記含有量がこのような範囲であることで、フィルム状接着剤と、後述する支持シートと、の間の接着力を調節することがより容易となる。
【0074】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が樹脂(1)を含有する場合、[フィルム状接着剤中の樹脂(1)の量(質量部)]/[フィルム状接着剤中のエポキシ樹脂(b1)の量(質量部)]の値(本明細書においては、「(1)/(b1)値」と略記することがある)は、0より大きく、1以下であることが好ましい。(1)/(b1)値が1以下であることにより、フィルム状接着剤の熱硬化が高度に進行し、その結果、後述する半導体加工用シートの保存の有無に関わらず、フィルム状接着剤を用いて得られた半導体パッケージの信頼性が高くなる。一方、フィルム状接着剤中及び接着剤組成物中の樹脂(1)の量(質量部)と、フィルム状接着剤中及び接着剤組成物中のエポキシ樹脂(b1)の量(質量部)は、いずれも正の値であるため、(1)/(b1)値が0(ゼロ)になることはなく、負の値になることもない。
なお、[フィルム状接着剤中の樹脂(1)の量(質量部)]/[フィルム状接着剤中のエポキシ樹脂(b1)の量(質量部)]の値は、[接着剤組成物中の樹脂(1)の量(質量部)]/[接着剤組成物中のエポキシ樹脂(b1)の量(質量部)]の値と同義である。
【0075】
上述の効果がより高くなる点から、(1)/(b1)値は、例えば、0.1~1、0.2~1、0.3~1、及び0.4~1のいずれかであってもよいし、0より大きく、0.9以下、0より大きく、0.8以下、0より大きく、0.7以下、及び0より大きく、0.6以下、のいずれかであってもよいし、0.1~0.9、0.2~0.8、0.3~0.7、及び0.4~0.6のいずれかであってもよい。
【0076】
なお、(1)/(b1)値は、例えば、[フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、樹脂(1)の含有量の割合(質量%)]/[フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、エポキシ樹脂(b1)の含有量の割合(質量%)]と同義であり、[接着剤組成物における、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、樹脂(1)の含有量の割合(質量%)]/[接着剤組成物における、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、エポキシ樹脂(b1)の含有量の割合(質量%)]と同義である。
【0077】
熱硬化剤(b2)として、樹脂(1)を用いた場合には、樹脂(1)以外の熱硬化剤を用いた場合よりも、フィルム状接着剤及び接着剤組成物の保存安定性が高くなる傾向があり、これらを室温下で保存するのに有利である。
【0078】
本実施形態のフィルム状接着剤は、熱硬化性を有しており、さらに感圧接着性を有することが好ましい。熱硬化性及び感圧接着性をともに有するフィルム状接着剤は、未硬化状態では各種被着体に軽く押圧することで貼付できる。また、フィルム状接着剤は、加熱して軟化させることで各種被着体に貼付できるものであってもよい。フィルム状接着剤は、硬化によって最終的には耐衝撃性が高い硬化物となり、この硬化物は、厳しい高温・高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。
【0079】
前記フィルム状接着剤は、その各種物性を改良するために、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)以外に、さらに必要に応じて、これらに該当しない他の成分を含有していてもよい。
前記フィルム状接着剤が含有する他の成分としては、例えば、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、エネルギー線硬化性樹脂(g)、光重合開始剤(h)、汎用添加剤(i)等が挙げられる。これらの中でも、好ましい前記他の成分としては、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)が挙げられる。
【0080】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0081】
<硬化促進剤(c)>
硬化促進剤(c)は、接着剤組成物及びフィルム状接着剤の硬化速度を調節するための成分である。
好ましい硬化促進剤(c)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩;前記イミダゾール類をゲスト化合物とする包接化合物等が挙げられる。
【0082】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する硬化促進剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0083】
硬化促進剤(c)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、硬化促進剤(c)の含有量は、熱硬化性成分(b)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量)100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~2質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(c)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(c)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(c)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(c)が、高温・高湿度条件下でフィルム状接着剤中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0084】
<充填材(d)>
フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、その熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数をフィルム状接着剤の貼付対象物に対して最適化することで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、フィルム状接着剤が充填材(d)を含有することにより、フィルム状接着剤の硬化物の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0085】
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ、アルミナ又はこれらの表面改質品であることが好ましい。
【0086】
充填材(d)の平均粒子径は、特に限定されないが、10nm~5μmであることが好ましく、例えば、10~800nm、10~600nm、20~300nm、及び30~150nmのいずれかであってもよい。充填材(d)の平均粒子径がこのような範囲であることで、充填材(d)を用いたことによる効果を十分に得られるとともに、フィルム状接着剤の保存安定性がより高くなる。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0087】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する充填材(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0088】
充填材(d)を用いる場合、接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(d)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、充填材(d)の含有量の割合)は、5~30質量%であることが好ましく、7~25質量%であることがより好ましく、9~20質量%であることが特に好ましい。充填材(d)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0089】
<カップリング剤(e)>
フィルム状接着剤は、カップリング剤(e)を含有することにより、被着体に対する接着性及び密着性が向上する。また、フィルム状接着剤がカップリング剤(e)を含有することにより、その硬化物は耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。カップリング剤(e)は、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有する。
【0090】
カップリング剤(e)は、重合体成分(a)、熱硬化性成分(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン、オリゴマー型又はポリマー型オルガノシロキサン等が挙げられる。
【0091】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するカップリング剤(e)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0092】
カップリング剤(e)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、カップリング剤(e)の含有量は、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、フィルム状接着剤の被着体との接着性の向上など、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0093】
<架橋剤(f)>
重合体成分(a)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための架橋剤(f)を含有していてもよい。架橋剤(f)を用いて架橋することにより、フィルム状接着剤の初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0094】
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0095】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0096】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0097】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0098】
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(a)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、重合体成分(a)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)と重合体成分(a)との反応によって、フィルム状接着剤に架橋構造を簡便に導入できる。
【0099】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する架橋剤(f)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0100】
架橋剤(f)の含有量は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、0~5質量部であることが好ましく、0~3質量部であることがより好ましく、0~1質量部であることがさらに好ましく、0質量部であること、すなわち、接着剤組成物及びフィルム状接着剤が架橋剤(f)を含有していないことが特に好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤の保存安定性がより高くなる。
【0101】
<エネルギー線硬化性樹脂(g)>
接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有していてもよい。フィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0102】
エネルギー線硬化性樹脂(g)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0103】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0104】
エネルギー線硬化性樹脂(g)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0105】
接着剤組成物が含有するエネルギー線硬化性樹脂(g)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0106】
エネルギー線硬化性樹脂(g)を用いる場合、接着剤組成物において、接着剤組成物の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、例えば、1~50質量%、1~25質量%、及び1~10質量%のいずれかであってもよい。
【0107】
<光重合開始剤(h)>
接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(g)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(h)を含有していてもよい。
【0108】
前記光重合開始剤(h)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物等が挙げられる。
また、光重合開始剤(h)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0109】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する光重合開始剤(h)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0110】
光重合開始剤(h)を用いる場合、接着剤組成物において、光重合開始剤(h)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0111】
<汎用添加剤(i)>
汎用添加剤(I)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。好ましい汎用添加剤(I)としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0112】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する汎用添加剤(i)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤の汎用添加剤(i)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0113】
<溶媒>
接着剤組成物は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する接着剤組成物は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
接着剤組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0114】
接着剤組成物が含有する溶媒は、接着剤組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0115】
本実施形態の好ましいフィルム状接着剤の一例としては、熱硬化性のフィルム状接着剤であって、40℃で7日間保存前でありかつ熱硬化前、及び40℃で7日間保存後でありかつ熱硬化前で、下記要件1)及び2):
1)前記フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下である。
2)ライン/スペース(L/S)が100μm/100μmで厚みが10μmの銅配線を有するガラス基板の前記銅配線側に対して、10mm×10mm×20μmの前記フィルム状接着剤を80℃で1.96Nの荷重を1秒間与えて圧着した部分の中央部1.1mm×5mmの領域において、前記スペース部分100面積%のうちの空気残存率が20面積%以下である。
を満たし、
前記フィルム状接着剤が、重合体成分(a)、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)を含有し、前記重合体成分(a)がアクリル樹脂であり、前記熱硬化剤(b2)が前記樹脂(1)であり、
前記フィルム状接着剤において、前記フィルム状接着剤の総質量に対する、前記重合体成分(a)の含有量の割合が、6~30質量%であり、
前記フィルム状接着剤において、前記エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量が、前記重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、160~800質量部である、フィルム状接着剤が挙げられる。
【0116】
本実施形態の好ましいフィルム状接着剤の他の例としては、熱硬化性のフィルム状接着剤であって、40℃で7日間保存前でありかつ熱硬化前、及び40℃で7日間保存後でありかつ熱硬化前で、下記要件1)及び2):
1)前記フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下である。
2)ライン/スペース(L/S)が100μm/100μmで厚みが10μmの銅配線を有するガラス基板の前記銅配線側に対して、10mm×10mm×20μmの前記フィルム状接着剤を80℃で1.96Nの荷重を1秒間与えて圧着した部分の中央部1.1mm×5mmの領域において、前記スペース部分100面積%のうちの空気残存率が20面積%以下である。
を満たし、
前記フィルム状接着剤が、重合体成分(a)、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)を含有し、前記重合体成分(a)がアクリル樹脂であり、前記熱硬化剤(b2)が、軟化点が60~130℃の前記樹脂(1)であり、
前記フィルム状接着剤において、前記フィルム状接着剤の総質量に対する、前記重合体成分(a)の含有量の割合が、6~30質量%であり、
前記フィルム状接着剤において、前記エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量が、前記重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、160~800質量部である、フィルム状接着剤が挙げられる。
【0117】
本実施形態の好ましいフィルム状接着剤のさらに他の例としては、熱硬化性のフィルム状接着剤であって、40℃で7日間保存前でありかつ熱硬化前、及び40℃で7日間保存後でありかつ熱硬化前で、下記要件1)及び2):
1)前記フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下である。
2)ライン/スペース(L/S)が100μm/100μmで厚みが10μmの銅配線を有するガラス基板の前記銅配線側に対して、10mm×10mm×20μmの前記フィルム状接着剤を80℃で1.96Nの荷重を1秒間与えて圧着した部分の中央部1.1mm×5mmの領域において、前記スペース部分100面積%のうちの空気残存率が20面積%以下である。
を満たし、
前記フィルム状接着剤が、重合体成分(a)、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)を含有し、前記重合体成分(a)がアクリル樹脂であり、前記熱硬化剤(b2)が前記樹脂(1)であり、
前記フィルム状接着剤において、前記フィルム状接着剤の総質量に対する、前記重合体成分(a)の含有量の割合が、6~30質量%であり、
前記フィルム状接着剤において、前記エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量が、前記重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、160~800質量部であり、
[前記フィルム状接着剤中の前記樹脂(1)の量(質量部)]/[前記フィルム状接着剤中の前記エポキシ樹脂(b1)の量(質量部)]の値が、0より大きく、1以下である、フィルム状接着剤が挙げられる。
【0118】
本実施形態の好ましいフィルム状接着剤のさらに他の例としては、熱硬化性のフィルム状接着剤であって、40℃で7日間保存前でありかつ熱硬化前、及び40℃で7日間保存後でありかつ熱硬化前で、下記要件1)及び2):
1)前記フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下である。
2)ライン/スペース(L/S)が100μm/100μmで厚みが10μmの銅配線を有するガラス基板の前記銅配線側に対して、10mm×10mm×20μmの前記フィルム状接着剤を80℃で1.96Nの荷重を1秒間与えて圧着した部分の中央部1.1mm×5mmの領域において、前記スペース部分100面積%のうちの空気残存率が20面積%以下である。
を満たし、
前記フィルム状接着剤が、重合体成分(a)、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)を含有し、前記重合体成分(a)がアクリル樹脂であり、前記熱硬化剤(b2)が、軟化点が60~130℃の前記樹脂(1)であり、
前記フィルム状接着剤において、前記フィルム状接着剤の総質量に対する、前記重合体成分(a)の含有量の割合が、6~30質量%であり、
前記フィルム状接着剤において、前記エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量が、前記重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、160~800質量部であり、
[前記フィルム状接着剤中の前記樹脂(1)の量(質量部)]/[前記フィルム状接着剤中の前記エポキシ樹脂(b1)の量(質量部)]の値が、0より大きく、1以下である、フィルム状接着剤が挙げられる。
【0119】
<接着剤組成物の製造方法>
接着剤組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
【0120】
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0121】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0122】
ここに示すフィルム状接着剤13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
このようなフィルム状接着剤13は、例えば、ロール状として保存するのに好適である。
【0123】
フィルム状接着剤13は、上述の接着剤組成物を用いて形成できる。
【0124】
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。 第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、フィルム状接着剤13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
【0125】
図1に示すフィルム状接着剤13は、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152のいずれか一方が取り除かれ、生じた露出面が、半導体ウエハ(図示略)の裏面の貼付面となる。そして、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152の残りの他方が取り除かれ、生じた露出面が、後述する支持シート又はダイシングシートの貼付面となる。
【0126】
◇半導体加工用シート
本発明の一実施形態に係る半導体加工用シートは、支持シートを備え、前記支持シートの一方の面上に、前記フィルム状接着剤を備える。
前記半導体加工用シートは、例えば、ダイシングダイボンディングシートとして好適である。
【0127】
本実施形態の半導体加工用シートは、前記フィルム状接着剤を用いて構成されているため、ダイシングによって、半導体ウエハの半導体チップへの分割と、フィルム状接着剤の切断と、を同時に行ったときに、チップ飛びを抑制できる。また、前記半導体加工用シートを用いて、前記フィルム状接着剤を取り込んで形成された半導体パッケージは、信頼性が高い。
【0128】
<<支持シート>>
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0129】
好ましい支持シートとしては、例えば、基材のみからなるもの;基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの等が挙げられる。
支持シートが前記基材及び粘着剤層を備えている場合、前記半導体加工用シートにおいては、前記粘着剤層が、前記基材と、前記フィルム状接着剤と、の間に配置される。
【0130】
基材のみからなる前記支持シートは、キャリアシート又はダイシングシートとして好適である。このような基材のみからなる支持シートを備えた半導体加工用シートは、フィルム状接着剤の、支持シート(すなわち基材)を備えている側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)が、半導体ウエハの裏面に貼付されて、使用される。
【0131】
一方、基材及び粘着剤層を備えた前記支持シートは、ダイシングシートとして好適である。このような支持シートを備えた半導体加工用シートも、フィルム状接着剤の、支持シートを備えている側とは反対側の面(第1面)が、半導体ウエハの裏面に貼付されて、使用される。
【0132】
半導体加工用シートの使用方法は、後ほど詳しく説明する。
以下、支持シートを構成する各層について、説明する。
【0133】
<基材>
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0134】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0135】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0136】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~150μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、半導体加工用シートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0137】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0138】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0139】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
【0140】
基材は、その上に設けられる粘着剤層等の他の層との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものであってもよい。
また、基材は、表面がプライマー処理を施されたものであってもよい。
また、基材は、帯電防止コート層;半導体加工用シートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有するものであってもよい。
【0141】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0142】
<粘着剤層>
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
【0143】
本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0144】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0145】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0146】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。すなわち、粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、その硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。
【0147】
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0148】
粘着剤組成物は、上述の接着剤組成物の場合と同じ方法で、塗工できる。
【0149】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);前記粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0150】
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
【0151】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)等の粘着剤組成物は、配合成分が異なる点以外は、上述の接着剤組成物の場合と同じ方法で、製造できる。
【0152】
次に、本実施形態の半導体加工用シートの例を、支持シートの種類ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。
【0153】
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体加工用シートを模式的に示す断面図である。なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0154】
ここに示す半導体加工用シート101は、支持シート10を備え、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に、フィルム状接着剤13を備えている。支持シート10は、基材11のみからなり、半導体加工用シート101は、換言すると、基材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11a上にフィルム状接着剤13が積層された構成を有する。また、半導体加工用シート101は、さらにフィルム状接着剤13上に剥離フィルム15を備えている。
【0155】
半導体加工用シート101においては、基材11の第1面11aにフィルム状接着剤13が積層され、フィルム状接着剤13の、基材11を備えている側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に治具用接着剤層16が積層され、フィルム状接着剤13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16のうち、フィルム状接着剤13と接触していない面16a(上面及び側面)に、剥離フィルム15が積層されている。
ここで、基材11の第1面11aは、支持シート10の第1面10aとも称する。
【0156】
剥離フィルム15は、
図1に示す第1剥離フィルム151又は第2剥離フィルム152と同様のものである。
【0157】
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造であってもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造であってもよい。
【0158】
半導体加工用シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤13の第1面13aに、半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の面16aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0159】
図3は、本発明の他の実施形態に係る半導体加工用シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す半導体加工用シート102は、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、
図2に示す半導体加工用シート101と同じである。すなわち、半導体加工用シート102においては、基材11の第1面11a(支持シート10の第1面10a)にフィルム状接着剤13が積層され、フィルム状接着剤13の第1面13aの全面に、剥離フィルム15が積層されている。
換言すると、半導体加工用シート102は、基材11、フィルム状接着剤13及び剥離フィルム15がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
【0160】
図3に示す半導体加工用シート102は、
図2に示す半導体加工用シート101の場合と同様に、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤13の第1面13aのうち、中央側の一部の領域に、半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、フィルム状接着剤13の周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0161】
図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る半導体加工用シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す半導体加工用シート103は、基材11と、フィルム状接着剤13と、の間に、さらに、粘着剤層12を備えている点以外は、
図2に示す半導体加工用シート101と同じである。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、半導体加工用シート103も、支持シート10の第1面10a上にフィルム状接着剤13が積層された構成を有する。
【0162】
半導体加工用シート103においては、基材11の第1面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の、基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aの全面に、フィルム状接着剤13が積層され、フィルム状接着剤13の第1面13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層され、フィルム状接着剤13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16のうち、フィルム状接着剤13と接触していない面16a(上面及び側面)に、剥離フィルム15が積層されている。
【0163】
図4に示す半導体加工用シート103は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤13の第1面13aに、半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の面16aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0164】
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る半導体加工用シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す半導体加工用シート104は、治具用接着剤層16を備えておらず、かつフィルム状接着剤の形状が異なる点以外は、
図4に示す半導体加工用シート103と同じである。すなわち、半導体加工用シート104は、基材11を備え、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上にフィルム状接着剤23を備えている。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、半導体加工用シート104も、支持シート10の第1面10a上にフィルム状接着剤23が積層された構成を有する。
【0165】
半導体加工用シート104においては、基材11の第1面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の第1面12aの一部、すなわち、中央側の領域に、フィルム状接着剤23が積層されている。そして、粘着剤層12の第1面12aのうち、フィルム状接着剤23が積層されていない領域と、フィルム状接着剤23のうち、粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23a上に、剥離フィルム15が積層されている。
図5中、符号23bは、フィルム状接着剤23の、前記第1面23aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0166】
半導体加工用シート104を、その剥離フィルム15側の上方から見下ろして平面視したときに、フィルム状接着剤23は粘着剤層12よりも表面積が小さく、例えば、円形状等の形状を有する。
【0167】
図5に示す半導体加工用シート104は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤23の第1面23aに、半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、フィルム状接着剤23が積層されていない領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0168】
なお、
図5に示す半導体加工用シート104においては、粘着剤層12の第1面12aのうち、フィルム状接着剤23が積層されていない領域に、
図2及び
図4に示すものと同様に治具用接着剤層が積層されていてもよい(図示略)。このような治具用接着剤層を備えた半導体加工用シート104は、
図2及び
図4に示す半導体加工用シートの場合と同様に、治具用接着剤層の面のうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0169】
このように、半導体加工用シートは、支持シート及びフィルム状接着剤がどのような形態であっても、治具用接着剤層を備えたものであってもよい。ただし、通常は、
図2及び
図4に示すように、治具用接着剤層を備えた半導体加工用シートとしては、フィルム状接着剤上に治具用接着剤層を備えたものが好ましい。
【0170】
本実施形態の半導体加工用シートは、
図2~
図5に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図2~
図5に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0171】
例えば、
図2~
図5に示す半導体加工用シートは、基材、粘着剤層、フィルム状接着剤及び剥離フィルム以外の層が、任意の箇所に設けられていてもよい。
また、半導体加工用シートにおいては、剥離フィルムと、この剥離フィルムと直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
また、半導体加工用シートにおいては、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0172】
◇フィルム状接着剤及び半導体加工用シートの使用方法
本実施形態のフィルム状接着剤及び半導体加工用シートは、フィルム状接着剤付き半導体チップの製造を経て、半導体パッケージ及び半導体装置を製造するために、使用できる。
【0173】
支持シートを備えていないフィルム状接着剤は、半導体ウエハの裏面に貼付された後、例えば、必要に応じて剥離フィルムが取り除かれ、その露出面(換言すると、半導体ウエハに貼付されている側と反対側の面。本明細書においては、「第2面」と称することがある。)に、ダイシングシートが貼付される。このようにして得られた、ダイシングシート、フィルム状接着剤及び半導体ウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層構造体は、この後、公知のダイシング工程に供される。なお、ダイシングシート及びフィルム状接着剤の積層構造は、ダイシングダイボンディングシートと見做すことができる。
【0174】
本明細書においては、このように、ダイシングダイボンディングシート又は前記半導体加工用シートと、半導体ウエハと、が積層されて構成された積層構造体を、「第1積層構造体」と称することがある。
【0175】
ダイシング工程を行うことによって、半導体ウエハは複数個の半導体チップへと分割されるとともに、フィルム状接着剤も半導体チップの外周に沿って切断され、この切断後のフィルム状接着剤を裏面に備えた複数個の半導体チップ(すなわち、フィルム状接着剤付き半導体チップ)が得られる。これら複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップは、ダイシングシート上で、整列した状態で固定されている。
【0176】
本明細書においては、このように、複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップが、ダイシングシート又は前記支持シート上で、整列した状態で固定されている積層構造体を、「第2積層構造体」と称することがある。
【0177】
一方、前記半導体加工用シートは、すでにダイシングダイボンディングシートとしての構造を有している。したがって、半導体加工用シートが半導体ウエハの裏面に貼付された段階で、半導体加工用シート(ダイシングシート、フィルム状接着剤)及び半導体ウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層構造体(すなわち、前記第1積層構造体)が得られる。以降は、上述のように、支持シートを備えていないフィルム状接着剤を用いた場合と同様の方法で、ダイシング工程を行うことによって、複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップを含む第2積層構造体が得られる。
【0178】
半導体ウエハのダイシングの方法としては、例えば、ブレードを用いる方法(すなわち、ブレードダイシング)が挙げられるが、これに限定されず、半導体ウエハを個片化する公知の方法全般を適用できる。
【0179】
フィルム状接着剤及び半導体加工用シートのいずれを用いた場合であっても、ダイシング工程においては、半導体ウエハの裏面に本実施形態のフィルム状接着剤が設けられているため、チップ飛びが抑制される。
【0180】
フィルム状接着剤及び半導体加工用シートのいずれを用いた場合であっても、得られたフィルム状接着剤付き半導体チップは、この後、ダイシングシート又は支持シートから引き離されてピックアップされ、フィルム状接着剤によって、基板の回路形成面にダイボンディングされる。そして、ダイボンディング後は、従来法と同様の方法で、半導体パッケージ及び半導体装置が製造される。例えば、必要に応じて、このダイボンディングされた半導体チップに、さらに半導体チップを1個以上積層した後、ワイヤボンディングを行う。次いで、フィルム状接着剤を熱硬化させ、さらに得られたもの全体を樹脂により封止する。これらの工程を経ることにより、半導体パッケージが作製される。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置が作製される。
【0181】
このようにして得られた半導体パッケージは、本実施形態のフィルム状接着剤を用いていることによって、信頼性が高いものとなる。例えば、実装前後の半導体パッケージにおいては、基板と半導体チップとの接合部、並びに、半導体チップ同士の接合部等、フィルム状接着剤が関わる接合部において、剥離が抑制される。
【実施例】
【0182】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0183】
<モノマー>
本実施例及び比較例において、略記しているモノマーの正式名称を、以下に示す。
BA:アクリル酸n-ブチル
MA:アクリル酸メチル
EA:アクリル酸エチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
AN:アクリロニトリル
GMA:メタクリル酸グリシジル
【0184】
<接着剤組成物の製造原料>
本実施例及び比較例において、接着剤組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
【0185】
[重合体成分(a)]
(a)-1:BA(40質量部)、EA(25質量部)、AN(30質量部)及びGMA(5質量部)を共重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量700000、ガラス転移温度14℃)。
(a)-2:BA(55質量部)、MA(10質量部)、GMA(20質量部)及びHEA(15質量部)を共重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量800000、ガラス転移温度-28℃)。
(a)-3:熱可塑性樹脂、ポリエステル(東洋紡社製「バイロン220」、数平均分子量3000、ガラス転移温度53℃)
[エポキシ樹脂(b1)]
(b1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(b1)-2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「EOCN-103S、エポキシ当量209~219g/eq)
(b1)-3:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「EOCN-104S、エポキシ当量213~223g/eq)
(b1)-4:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びアクリルゴム微粒子の混合物(日本触媒社製「BPA328」、エポキシ当量235g/eq)
(b1)-5:多官能芳香族型(トリフェニレン型)エポキシ樹脂(日本化薬社製「EPPN-502H」、エポキシ当量167g/eq、軟化点54℃、重量平均分子量1200)
(b1)-6:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
[熱硬化剤(b2)]
(b2)-1:o-クレゾール型ノボラック樹脂(DIC社製「フェノライトKA-1160」、水酸基当量117g/eq、軟化点80℃、一般式(1)で表され、nが6~7である樹脂)
(b2)-2:ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工社製「BRG556」)
(b2)-3:熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(ADEKA社製「EH-3636AS」、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(c)]
(c)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ-PW」
[充填材(d)]
(d)-1:エポキシ基で修飾された球状シリカ(アドマテックス社製「アドマナノ YA050C-MKK」、平均粒子径50nm)
(d)-2:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたシリカフィラー、平均粒子径500nm)
[カップリング剤(e)]
(e)-1:エポキシ基、メチル基及びメトキシ基を有するオリゴマー型シランカップリング剤(信越シリコーン社製「X-41-1056」、エポキシ当量280g/eq) (e)-2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを付加させたシリケート化合物(三菱化学社製「MKCシリケートMSEP2」)
(e)-3:トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン(東レ・ダウ社製「SZ6083」、シランカップリング剤)
[架橋剤(f)]
(f)-1:TDI系イソシアネート架橋剤(トーソー社製 コロネートL固形分濃度75質量%)
[エネルギー線硬化性樹脂(g)]
(g)-1:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R-684」、紫外線硬化性樹脂、分子量304)
(g)-2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能紫外線硬化性化合物、分子量578)及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5官能紫外線硬化性化合物、分子量525)の混合物(日本化薬社製「KAYARAD DPHA」)
[光重合開始剤(h)]
(h)-1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「IRGACURE(登録商標)184」)
[他の熱硬化剤(b20)]
(b20)-1:後述する方法で製造された、軟化点が160℃のo-クレゾール型ノボラック樹脂。一般式(1)中のnに相当する繰り返し数:18~24
【0186】
[製造例1]
<他の熱硬化剤(b20)-1の製造>
温度計、撹拌機及び還流冷却器を備えたセパラブルフラスコに、o-クレゾール(100質量部)、濃度が92質量%であるパラホルムアルデヒド(33.0質量部)、及びシュウ酸(1.0質量部)を仕込み、得られた混合物を還流させながら4時間反応させた。次いで、得られた反応液に、メチルイソブチルケトン(50.0質量部)を添加し、120℃で5時間反応させた。次いで、得られた反応液を180℃まで加熱し、減圧することにより、反応液からメチルイソブチルケトンを取り除いた。次いで、180℃で溶融した樹脂を抜き出し、これを冷却することにより、固形のo-クレゾール型ノボラック樹脂(他の熱硬化剤(b20)-1)を得た。
【0187】
[実施例1]
<<フィルム状接着剤の製造>>
<接着剤組成物の製造>
重合体成分(a)-1(10質量部)、エポキシ樹脂(b1)-1(25.8質量部)、エポキシ樹脂(b1)-2(23質量部)、熱硬化剤(b2)-1(25質量部)、硬化促進剤(c)-1(0.2質量部)、充填材(d)-1(15質量部)、及びカップリング剤(e)-1(1質量部)をメチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することにより、上述のすべての成分の合計濃度が50質量%である接着剤組成物を得た。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量はすべて、溶媒成分を含まない目的物の量である。
【0188】
<フィルム状接着剤の製造>
ポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されている剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた接着剤組成物を塗工し、100℃で1分加熱乾燥させることにより、厚さ20μmのフィルム状接着剤を形成した。
【0189】
<<半導体加工用シートの製造>>
上記で得られたフィルム状接着剤の、剥離フィルムを備えている側とは反対側の表面(換言すると露出面)に、基材としてポリエチレン製フィルム(グンゼ社製、厚さ80μm)を貼り合せることにより、基材、フィルム状接着剤及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、半導体加工用シートを得た。
【0190】
<<フィルム状接着剤の評価>>
<貯蔵弾性率G’の測定>
上記で得た製造直後、熱硬化前の厚さ20μmのフィルム状接着剤を積層後、その積層体を打ち抜き、φ10mm×1mmの試験片を得た。粘弾性計測定装置(Rheometric scientific社製 ARES))を用いて、周波数:11Hz、昇温速度:10℃/minの測定条件で、0℃から100℃までの貯蔵弾性率G’を測定した。このうち、80℃における貯蔵弾性率G’(経時なし)〔Pa〕の値を得た。
また、上記で得た製造直後、熱硬化前のフィルム状接着剤を、40℃の空気雰囲気下で7日間静置保存した後(経時あり)のフィルム状接着剤についても、上記の貯蔵弾性率G’(経時なし)同様に貯蔵弾性率G’を測定し、80℃における貯蔵弾性率G’(経時あり)〔Pa〕の値を得た。
【0191】
<空気残存率試験>
[フィルム状接着剤付きチップの製造]
上記で得られた製造直後の半導体加工用シートから、剥離フィルムを取り除いた。石英ガラスウエハ(150mm径、厚さ100μm)に、常温下で直ちに、テープ貼合装置 (リンテック社製「Adwill RAD2500」)を用いて、上記の半導体加工用シートを、そのフィルム状接着剤によって貼付した。以上により、経時履歴のない半導体加工用シートを用いて、基材、フィルム状接着剤及び石英ガラスウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第1積層構造体(本明細書においては、「第1積層構造体(1-1)」と称することがある)を得た。
【0192】
次いで、この第1積層構造体(1-1)中のフィルム状接着剤のうち、ガラスウエハに貼付されていない周縁部近傍の露出面を、ダイシング用リングフレームに固定した。
次いで、ダイシング装置(ディスコ社製「DFD6362」)を用いてダイシングすることにより、ガラスウエハを分割するとともに、フィルム状接着剤も切断し、大きさが10mm×10mmのガラスチップを得た。このときのダイシングは、ダイシングブレードの移動速度を5mm/sec、ダイシングブレードの回転数を50000rpmとし、半導体加工用シートに対して、そのフィルム状接着剤のガラスウエハの貼付面から40μmの深さの領域まで(すなわち、フィルム状接着剤の厚さ方向の全領域と、基材のフィルム状接着剤側との積層面から20μmの深さの領域まで)ダイシングブレードで切り込むことにより行った。ダイシングブレードとしては、ディスコ社製「R07-SDC400-BB300-100 54×0.23A2×40」を用いた。
以上により、経時履歴のない熱硬化前のフィルム状接着剤を備えた半導体加工用シートを用いて、裏面に切断後のフィルム状接着剤を備えた複数個のチップ(換言すると、複数個のフィルム状接着剤付きチップ)が、フィルム状接着剤によって、基材上に整列した状態で固定されている、第2積層構造体(本明細書においては、「第2積層構造体(1-1)」と称することがある)を得た。
【0193】
[フィルム状接着剤付きチップの基板へのダイボンディング]
空気残存率試験に用いる基板(30mm×30mm×0.5mmのガラス基板上にCu電極が形成されている)を用意した。
図6に、空気残存率試験に用いた上記基板の概略構成図を示す。この基板130には、ガラス基板30上に、ライン/スペース(L/S)が100μm/100μm、電極厚み10μmで、
図6に示す配線パターンのくし型電極32,33が形成されている。なお、
図6に示す配線パターンの寸法及び数は、実際とは異なっている。
【0194】
マニュアルダイボンディング装置(CAMMAX Precima社製「EDB65」)を用い、上記で得られた第2積層構造体(1-1)中のフィルム状接着剤付きチップを、基材からピックアップした。次いで、このピックアップしたフィルム状接着剤付きチップの中のフィルム状接着剤を、前記基板の回路形成面の
図6に示すボンディング位置(図中のBの位置)10mm×10mmに圧着することにより、フィルム状接着剤付きチップを前記基板上にダイボンディングした。このときのダイボンディングは、80℃に加熱したフィルム状接着剤付きシリコンチップに対して、その前記基板への接触面に対して直交する方向に、1.96N(200gf)の力を1秒加えることで行った。
以上により、経時履歴のない熱硬化前のフィルム状接着剤を備えた半導体加工用シートを用いて、空気残存率試験用基板(本明細書においては、「空気残存率試験用基板(経時なし)」と称することがある)を得た。
【0195】
上記で得られた製造直後の半導体加工用シートを、40℃の空気雰囲気下で、7日間静置保存した。
次いで、上述の製造直後の半導体加工用シートに代えて、この静置保存後、すなわち経時後の半導体加工用シートを用いた点以外は、上述の空気残存率試験用基板(経時なし)の場合と同じ方法で、基板を得た。
以上により、経時履歴のある熱硬化前のフィルム状接着剤を備えた半導体加工用シートを用いて空気残存率試験用基板(本明細書においては、「空気残存率試験用基板(経時あり)」と称することがある)を得た。
【0196】
その後、デジタル顕微鏡(キーエンス社製 VHX-1000)を用いて、上記で作製した空気残存率試験用基板(経時なし)、及び空気残存率試験用基板(経時あり)を、そのガラスチップ側から同軸落斜観察をした。基板のライン(L)部分は配線の高さの分、フィルム状接着剤の方向に凸に形成されているので、フィルム状接着剤と密着し易く、基本的にL部分の全ての領域で、フィルム状接着剤と密着している様子が観察された。対して、スペース(S)部分は、配線の高さの分、フィルム状接着剤の方向に凹に形成されているので、フィルム状接着剤と密着し難く、ガラス基板とフィルム状接着剤との間の一部に、空気が存在している様子(空気残存)が観察される場合があった。取得した画像において、空気残存部分は白色、非空気残存部分はグレーで確認され、色差として容易に区別できた。上記のように観察した後、画像解析ソフトウエア(日本ローパー社製「ImagePro」)を用いて、上記で取得した画像を、下記方法により二値化処理した。すなわち、前記画像について、256ピクセルヒストグラムにおいて前記ソフトウエア上で自動計算を行い、ヒストグラムの中間値で処理を実施した。
図6に示す空気残存率測定位置(図中のMの位置、すなわち、ボンディング位置Bの中央部分)1.1mm×5.0mmから、5本分のスペース部分の領域を抜き取り、それらスペース部分の領域のうち、空気残存部分に対応する領域を白色として空気残存領域に分類し、残りの部分を黒色として非空気残存領域に分類して、前記画像を修正した。得られた修正画像において、擬似カラープロファイルを割り当てて、相対面積及び比率を算出した。
以上により、二値化後の画像を取得し、スペース部分の領域の空気残存領域の面積値Aと、スペース部分の領域の非空気残存領域の面積値Bと、を求め、スペース部分100面積%における空気残存率(面積%)=A/(A+B)×100を算出した。結果を表1に示す。
【0197】
<半導体パッケージの信頼性の評価>
[フィルム状接着剤付き半導体チップの製造]
上記で得られた製造直後の半導体加工用シートにおいて、剥離フィルムを取り除いた。裏面をドライポリッシュ仕上げで研磨したシリコンウエハ(直径200mm、厚さ75μm)を用い、その裏面(研磨面)に、常温下で直ちに、テープ貼合装置 (リンテック社製「Adwill RAD2500」)を用いて、上記の半導体加工用シートを、そのフィルム状接着剤によって貼付した。以上により、経時履歴のない半導体加工用シートを用いて、基材、フィルム状接着剤及びシリコンウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第1積層構造体(本明細書においては、「第1積層構造体(1-2)」と称することがある)を得た。
【0198】
次いで、この第1積層構造体(1-2)中のフィルム状接着剤のうち、シリコンウエハに貼付されていない周縁部近傍の露出面を、ウエハダイシング用リングフレームに固定した。 次いで、ダイシング装置(ディスコ社製「DFD6361」)を用いてダイシングすることにより、シリコンウエハを分割するとともに、フィルム状接着剤も切断し、大きさが8mm×8mmのシリコンチップを得た。このときのダイシングは、ダイシングブレードの移動速度を30mm/sec、ダイシングブレードの回転数を30000rpmとし、半導体加工用シートに対して、そのフィルム状接着剤のシリコンウエハの貼付面から40μmの深さの領域まで(すなわち、フィルム状接着剤の厚さ方向の全領域と、基材のフィルム状接着剤側の面から20μmの深さの領域まで)ダイシングブレードで切り込むことにより行った。ダイシングブレードとしては、ディスコ社製「Z05-SD2000-D1-90 CC」を用いた。
以上により、経時履歴のない半導体加工用シートを用いて、裏面に切断後のフィルム状接着剤を備えた複数個のシリコンチップ(換言すると、複数個のフィルム状接着剤付きシリコンチップ)が、フィルム状接着剤によって、基材上に整列した状態で固定されている、第2積層構造体(本明細書においては、「第2積層構造体(1-2)」と称することがある)を得た。
【0199】
[フィルム状接着剤付き半導体チップの基板へのダイボンディング]
基板として、銅箔張り積層板(三菱ガス化学社製「CCL-HL830」)の銅箔(厚さ15μm)に回路パターンが形成され、この回路パターン上にソルダーレジスト(太陽インキ社製「PSR-4000 AUS308」)の層が形成されている基板(シーマ電子社製「SM15-031-10A」、サイズ:157.0mm×70.0mm×0.2mm)を用意した。
【0200】
ピックアップ・ダイボンディング装置(キャノンマシナリー社製「BESTEM D-02」)を用い、上記で得られた第2積層構造体(1-2)中のフィルム状接着剤付きシリコンチップを、基材からピックアップした。次いで、このピックアップしたフィルム状接着剤付きシリコンチップを、その中のフィルム状接着剤を前記基板上に圧着することにより、フィルム状接着剤付きシリコンチップを前記基板上にダイボンディングした。このときのダイボンディングは、120℃に加熱したフィルム状接着剤付きシリコンチップに対して、その前記基板への接触面に対して直交する方向に、2.45N(250gf)の力を0.5秒加えることで行った。
以上により、フィルム状接着剤付き半導体チップがダイボンディングされた基板を得た。
【0201】
[半導体パッケージ(1)の製造]
上記で得られた、ダイボンディング後の基板を、160℃で1時間加熱することにより、この基板上のフィルム状接着剤を熱硬化させた。
次いで、封止装置(アピックヤマダ社製「MPC-06M TriAl Press」)を用いて、このダイボンディング後及び熱硬化後の基板上に封止樹脂(京セラケミカル社製「KE-1100AS3」)を載せ、この封止樹脂を175℃に加熱し、さらにこの状態の封止樹脂に7MPaの圧力を2分加えることにより、厚さ400μmの封止樹脂からなる層(封止層)を形成した。次いで、この封止層を形成している封止樹脂を、175℃で5時間加熱することにより、熱硬化させ、封止基板を得た。
【0202】
次いで、この封止基板にダイシングテープ(リンテック社製「Adwill D-510T」)を貼付し、ダイシング装置(ディスコ社製「DFD6361」)を用いて、この封止基板をダイシングすることにより、大きさが15mm×15mmの半導体パッケージを得た。このときのダイシングは、ダイシングブレードの移動速度を50mm/sec、ダイシングブレードの回転数を30000rpmとし、ダイシングテープに対して、その封止基板の貼付面から40μmの深さの領域までダイシングブレードで切り込むことにより行った。ダイシングブレードとしては、ディスコ社製「ZHDG-SD400-D1-60 56×0.17A3×40-L-S3」を用いた。
以上により、経時履歴のない半導体加工用シートを用いて、目的とする半導体パッケージ(本明細書においては、「半導体パッケージ(1)」と称することがある)を得た。 ここでは、上記の方法で、25個の半導体パッケージ(1)を得た。
【0203】
[半導体パッケージ(2)の製造]
上記で得られた製造直後の半導体加工用シートを、40℃の空気雰囲気下で、7日間静置保存した。
次いで、上述の製造直後の半導体加工用シートに代えて、この静置保存後、すなわち経時後の半導体加工用シートを用いた点以外は、上述の半導体パッケージ(1)の場合と同じ方法で、半導体パッケージを得た。
以上により、経時履歴のある半導体加工用シートを用いて、目的とする半導体パッケージ(本明細書においては、「半導体パッケージ(2)」と称することがある)を得た。 ここでは、上記の方法で、25個の半導体パッケージ(2)を得た。
【0204】
[半導体パッケージの信頼性の評価]
上記で得られた25個の半導体パッケージ(1)を、温度85℃、相対湿度60%の環境下で168時間静置保存することにより吸湿させた。
次いで、直ちに、この吸湿後の半導体パッケージ(1)に対して、温度160℃で予備加熱を行った後、最高温度を260℃として1分加熱するIRリフローを3回行った。このときのIRリフローは、卓上リフロー炉(千住金属工業社製「STR-2010N2M」)を用いて行った。
【0205】
次いで、走査型超音波探傷装置(Sonoscan社製「D-9600」)を用いて、このIRリフロー後の半導体パッケージを解析した。また、断面研磨機(リファインテック社製「リファイン・ポリッシャーHV」)を用いて、このIRリフロー後の半導体パッケージを切断することにより断面を形成し、デジタル顕微鏡(キーエンス社製「VHX-1000」)を用いて、この断面を観察した。そして、基板とシリコンチップとの接合部と、シリコンチップ同士の接合部と、の少なくとも一方において、幅が0.5mm以上の剥離が認められた場合を「剥離あり」と判定し、認められなかった場合を「剥離なし」と判定した。さらにこの判定結果に基づいて、下記基準により、半導体パッケージ(1)の信頼性を評価した。
(評価基準)
A:「剥離あり」と判定された半導体パッケージの個数が3個以下である。
B:「剥離あり」と判定された半導体パッケージの個数が4個以上である。
【0206】
さらに、上述の半導体パッケージ(1)の場合と同じ方法で、半導体パッケージ(2)の信頼性を評価した。
これら半導体パッケージ(1)及び(2)の評価結果を、「剥離あり」と判定された半導体パッケージの個数(表1の該当欄中、括弧内に示している)とともに、表1に示す。
【0207】
<<フィルム状接着剤の製造及び評価>>
[比較例1~3]
接着剤組成物の含有成分の種類及び含有量が、表1に示すとおりとなるように、接着剤組成物の製造時における、配合成分の種類及び配合量のいずれか一方又は両方を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状接着剤及び半導体加工用シートを製造し、フィルム状接着剤を評価した。結果を表1に示す。
【0208】
なお、表1中の含有成分の欄の「-」との記載は、接着剤組成物がその成分を含有していないことを意味する。
【0209】
【0210】
上記結果から明らかなように、フィルム状接着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下であると、フィルム状接着剤の空気残存率が低く、製造された半導体パッケージにおける剥離が生じ難く、信頼性の高いものであった。
実施例1のフィルム状接着剤は、40℃で7日間保存後(経時あり)であっても、貯蔵弾性率G’が3×104Pa以下に抑えられており、保存安定性が顕著に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0212】
101,102,103,104・・・半導体加工用シート、10・・・支持シート、10a・・・支持シートの第1面、11・・・基材、11a・・・基材の第1面、12・・・粘着剤層、13,23・・・フィルム状接着剤、13a,23a・・・フィルム状接着剤の第1面、13b,23b・・・フィルム状接着剤の第2面、130・・・基板、30・・・ガラス基板、32,33・・・電極、L・・・ライン、S・・・スペース、B・・・ボンディング位置、M・・・空気残存率測定位置