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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】新規人工核酸、その製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/067 20060101AFI20240105BHJP
   C07H 19/167 20060101ALI20240105BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20240105BHJP
   C07H 1/00 20060101ALI20240105BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240105BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20240105BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240105BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20240105BHJP
   A61K 31/708 20060101ALI20240105BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240105BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240105BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240105BHJP
   C12Q 1/6853 20180101ALI20240105BHJP
【FI】
C07H19/067 CSP
C07H19/167
C07H21/04 Z
C07H21/04 B
C07H1/00
A61P43/00 111
A61K31/7072
A61K31/7068
A61K31/7076
A61K31/708
A61K31/712
A61K48/00
C12N15/09 Z ZNA
C12Q1/6853 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021512077
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014332
(87)【国際公開番号】W WO2020203896
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019067564
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴 育哉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晴久
(72)【発明者】
【氏名】折田 文子
(72)【発明者】
【氏名】今西 武
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518826(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047097(WO,A1)
【文献】RAHMAN,S.M. et al,Design, Synthesis, and Properties of 2',4'-BNANC: A Bridged Nucleic Acid Analogue,Journal of the American Chemical Society,2008年,Vol.130, No.14,pp.4886-4896
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/067
C07H 19/167
C07H 21/04
C07H 1/00
A61P 43/00
A61K 31/7072
A61K 31/7068
A61K 31/7076
A61K 31/708
A61K 31/712
A61K 48/00
C12N 15/09
C12Q 1/6853
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物又はその塩:
【化1】
(式中、
Baseは、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であり、
は、直鎖アルキレン基であり、
は、単結合又はアルキレン基であり、
Xは、置換基を有していてもよいアルキレン基、又はこのアルキレン基中の少なくとも1つのメチレン基が-N(R)-(式中、Rは、水素原子又はアルキル基である)、-O-、又は-S(=O)-(式中、kは0、1、又は2である)に置き換わった基であり、
及びRは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヒドロキシル基の保護基、置換基を有するホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロキシホスフィニル基、又は置換基を有していてもよいヒドロキシメルカプトホスフィニル基であるか、或いは、R及びRは、隣接する2個の酸素原子及びフラノースの3位~5位の炭素原子と共に、置換基を有していてもよい環を形成しており、
は、置換基を有していてもよいアミノ基である)。
【請求項2】
がメチレン基であり、且つ、Aが単結合である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
Xが、-C2n-(式中、nは1~10の整数である)である、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
が、下記式(A):
【化2】
(式中、R3a及びR3bは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はアミノ基の保護基であるか、或いは、R3a及びR3bは、隣接する窒素原子と共に、置換基を有していてもよい環を形成している)
で表される基であるか、或いは、下記式(B):
【化3】
(式中、R3c~R3fは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である)
で表される基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
式(A)において、R3a及びR3bが、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアミノ基の保護基であるか、或いは、R3a及びR3bが、隣接する窒素原子と共に、置換基としてアルキル基を有していてもよい5~10員の含窒素脂肪族複素環を形成しており、
式(B)において、R3c~R3fが、同一又は異なって、水素原子、又はアミノ基の保護基である、
請求項4に記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
及びRが、同一又は異なって、水素原子、置換基としてアルコキシ基を有していてもよいアルキル基、置換基としてアルコキシ基を有していてもよいアリール基、置換基としてアルコキシ基を有していてもよいアラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、式:-Si(R)(式中、各Rは、同一又は異なって、アルキル基又はアリール基である)で表される基、式:-P(R)(R)(式中、R及びRは、同一又は異なって、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、シアノアルコキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、シアノアルキルチオ基、又はアルキルアミノ基である)で表される基、ジヒドロキシホスフィニル基、又はヒドロキシメルカプトホスフィニル基であるか、或いは、
及びRが、隣接する2個の酸素原子及びフラノースの3位~5位の炭素原子と共に、置換基としてアルキル基を有していてもよい6~10員の脂肪族複素環を形成している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
Baseが、置換基を有していてもよい2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基、置換基を有していてもよい2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、置換基を有していてもよいプリン-9-イル基、又は置換基を有していてもよい6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。
【請求項8】
下記式(1A)~(1C)のいずれかで表される、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその塩:
【化4】
[式中、
3a’及びR3b’は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基であり、
Zは、単結合、酸素原子、S(=O)(式中、mは0、1、又は2である)、C(R13)(R14)(式中、R13及びR14は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基である)、又はNR15(式中、R15は、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である)であり、
3c’~R3f’は、同一又は異なって、水素原子、又はアミノ基の保護基であり、Base、R、及びRは、前記と同じである]。
【請求項9】
請求項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩を製造する方法であって、
(I)下記式(2A):
【化5】
(式中、Base、A、A、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を、式(3A):L-X-R(式中、Lは、脱離基であり、X及びRは、前記と同じである)で表される化合物と反応させる工程、又は
(II)下記式(2B):
【化6】
(式中、Lは、脱離基であり、Base、A、A、X、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を、式(3B):R-H(式中、Rは、前記と同じである)で表される化合物と反応させる工程
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Rがアミノ基の保護基で保護されていてもよいアミノ基である化合物又はその塩を製造する方法であって、
(IIIa)下記式(2B):
【化7】
(式中、Lは、脱離基であり、Base、A、A、X、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を、アジ化物塩と反応させて、下記式(1J):
【化8】
(式中、Base、A、A、X、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を得る工程、
(IIIb)式(1J)で表される化合物を、下記式(3C):
【化9】
(式中、R3g~R3iは、同一又は異なって、アルキル基又はアリール基である)
で表される化合物と反応させた後、加水分解により下記式(1L):
【化10】
(式中、Base、A、A、X、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を得る工程、及び
(IIIc)必要により、式(1L)で表される化合物のアミノ基を保護する工程
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Rが下記式(B):
【化11】
(式中、R3c~R3fは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である)
で表される基である化合物又はその塩の製造方法であって、
請求項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Rがアミノ基である化合物をグアニジル化する工程を含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Baseが下記式(1K’)又は(1Q’):
【化12】
(式中、Qは、水素原子又は置換基であり、Q及びQは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基である(但し、Q及びQは同時に水素原子ではない))
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
(VIb)請求項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Baseが下記式(1P’):
【化13】
(式中、環Gは、5員又は6員の含窒素複素環であり、Qは前記と同じである)
で表される化合物を、アンモニアと反応させる工程
を含む、方法。
【請求項13】
(VIc)工程(VIb)の反応により得られる化合物をアミノ基の保護基で保護する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Baseが下記式(1R’)又は(1S’):
【化14】
(式中、Q~Qは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基である)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
請求項1に記載の式(1)で表される化合物のうち、Baseが下記式(1O’):
【化15】
(式中、Qは、水素原子又は置換基である)
で表される化合物又はその塩を、下記式(3E)又は(3F):
【化16】
(式中、Q~Qは、前記と同じである)
で表される化合物と反応させる工程を含む、方法。
【請求項15】
下記式(4):
【化17】
(式中、
Baseは、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であり、
は、直鎖アルキレン基であり、
は、単結合又はアルキレン基であり、
Xは、置換基を有していてもよいアルキレン基、又はこのアルキレン基中の少なくとも1つのメチレン基が-N(R)-(式中、Rは、水素原子又はアルキル基である)、-O-、又は-S(=O)-(式中、kは0、1、又は2である)に置き換わった基であり、
は、置換基を有していてもよいアミノ基である)
で表される単位を有するオリゴヌクレオチド又はその塩。
【請求項16】
検査試料において標的核酸を検出する方法であって、
(I)前記標的核酸の標的部位を含む塩基配列を、クランプ核酸を用いる核酸増幅法によって、選択的に増幅させる工程であって、前記クランプ核酸が、請求項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩である工程、及び
(II)前記増幅された塩基配列を検出する工程
を含む、方法。
【請求項17】
検査試料における標的核酸を検出する、又は検査試料における標的核酸の標的部位を含む塩基配列を選択的に増幅するための組成物であって、
(a)前記組成物は、プライマー及びプローブを含み、該プライマー及びプローブのうち少なくともいずれかが、請求項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩である、
(b)前記組成物は、フォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブを含み、該フォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブのうち少なくともいずれかが、請求項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩である、又は、
(c)前記組成物は、クランプ核酸及びプライマーを含み、該クランプ核酸及びプライマーのうち少なくともいずれかが、請求項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩である、
組成物。
【請求項18】
二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレチドを鎖侵入させるための組成物であって、前記標的部位の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する、請求項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩を含有する組成物。
【請求項19】
単離された二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレオチドを鎖侵入させる方法であって、前記標的部位の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する、請求項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩と、前記二重鎖DNAとを混合する工程を含む、方法。
【請求項20】
前記工程は、(i)前記オリゴヌクレオチド又はその塩と前記二重鎖DNAとを、一本鎖DNA結合タンパク質の存在下で混合する工程であるか、(ii)前記オリゴヌクレオチド又はその塩と前記二重鎖DNAとを、一本鎖DNA結合タンパク質の非存在下で混合する工程であり、
前記工程が(ii)であるとき、混合物を加熱する工程、又は混合物を25~75℃に維持する工程をさらに含む、
請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規人工核酸、その製造方法及び用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドは、天然DNA若しくは天然RNA又は人工核酸の短い配列であり、様々な遺伝子の転写及び翻訳レベルにおいて遺伝子の発現を調節したり、遺伝子の配列状況を検査したりすることで特定の疾患を治療したり診断するために大変有用であることが明らかにされてきている。
遺伝子の発現を調節したり遺伝子情報を検査・診断したりする手法は、標的対象により二種類に大別できる。第一は、メッセンジャーRNA(mRNA)やマイクロRNA(miRNA)のように標的対象が一本鎖RNA又は一本鎖DNAの場合であり、第二は、標的対象が二重鎖ゲノムDNAの場合である。
標的対象が一本鎖RNA又は一本鎖DNAの場合、オリゴヌクレオチドが一本鎖RNA又は一本鎖DNAと相補的に結合して二重鎖を形成するアンチセンス法により遺伝子の翻訳過程を阻害(あるいは遺伝子診断)することが可能である。また、オリゴヌクレオチドが二重鎖RNA分子である場合、オリゴヌクレオチドの標的mRNAとの相補的結合は、RISC複合体の「スライサー」酵素により標的mRNAの分解を引き起す(RNA干渉法)。RNA干渉法の場合、オリゴヌクレオチドは、標的mRNAの3’UTR領域(3’非翻訳領域)と結合して不完全な相補性の効力により標的mRNAの翻訳を阻害することができる内因性マイクロRNAと同等のオリゴヌクレオチドであり得る(マイクロRNAミミックス)。
オリゴヌクレオチドは、例えば、長いアンチセンス非コーディングRNAと相補的に結合することにより、あるいは相補的マイクロRNAを阻害することにより、遺伝子の活性化又はこれの転写の増加を誘導し得、結果としてマイクロRNAの標的mRNAの翻訳を増加することもできる(アンチマイクロRNA)。
標的対象が二重鎖ゲノムDNAの場合、オリゴヌクレオチドが二重鎖ゲノムDNAと相互作用(結合)して遺伝子の発現を調節(制御)する手法がある。
図1は、非特許文献1のFigure 5に対応する図面であり、オリゴヌクレオチドの二重鎖ゲノムDNAへの結合様式が示されている。上記手法は、結合様式の違いにより二種類に分別できる。一つは、オリゴヌクレオチドが二重鎖ゲノムDNAの「外側」にフーグスチーン(Hoogsteen)型水素結合又は逆フーグスチーン型水素結合を通じて結合して三重鎖を形成して遺伝子発現を調節するアンチジーン法である(図1のA)。他方は、オリゴヌクレオチドがゲノムDNAの二重鎖を部分的に解き、オリゴヌクレオチドが鎖侵入(ストランドインベージョン)して一本鎖になったDNAとワトソンクリック(Watson-Crick)型水素結合を再形成することで遺伝子発現を調節するストランドインベージョン法である(図1のB~D)。
遺伝子の発現を調節したり遺伝子情報を検査・診断したりする手法に用いられる機能性材料としてのオリゴヌクレオチドには、標的核酸との配列特異的で優れた結合親和性や分解酵素に対する強い抵抗性や生体内での安全性などの特性が求められる。天然素材のDNAやRNAは分解酵素への抵抗性に乏しく、結合親和性も十分でなく、機能性素材として不適である。そのため、これまでにオリゴヌクレオチドの高機能化を目指して数多くの人工核酸が開発されてきた。
その代表的なものとして、ペプチド核酸(PNA)、架橋構造型核酸、モルフォリノ核酸(PMO)とともに、核酸のリン酸ジエステル部の非結合酸素原子一つを硫黄原子で置換したホスホロチオアート型核酸(PSオリゴ)等を挙げることができる。
前記架橋構造型核酸の代表例としては、LNA(下記構造式1)、BNANC(下記構造式2)、ENA(下記構造式3)が挙げられる。
【化1】
これらの架橋構造型核酸は、ワトソンクリック型水素結合を介して一本鎖RNAに対して配列高選択的に結合する能力に優れていることが実証されている(特許文献1~3)。 このように従来の人工核酸は特定遺伝子の発現を制御したり遺伝子配列を高感度高精度で検証・診断したりする機能性素材として利用されている。
しかしながら、オリゴヌクレオチドの用途の多様化が進む中で既開発の人工核酸の機能性にはまだまだ改善される余地が残されており、さらなる高機能化を目指した新規人工核酸の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2003/105309号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/167387号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/207841号明細書
【非特許文献】
【0004】
【文献】Acc. Chem. Res. 1999, 32, 624~630頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、様々なゲノムテクノロジーに有用な新規人工核酸、それらの製造方法及び用途等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、前記構造式2で表されるBNANCの窒素原子上に、置換基を有していてもよいアミノ基を所定のリンカーを介して結合させた人工核酸は、一本鎖DNAに対する配列高選択的で強固な結合能、及び優れた分解酵素耐性能を併せ持つことを見出した。また、本発明者らは、前記人工核酸が、アンチセンス法、アンチジーン法(ストランドインベージョン法を含む)等、様々なゲノムテクノロジーに有用であることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づいて更に検討を重ねて本発明を完成した。
本発明は、以下の態様を包含する。
項1.
下記式(1)で表される化合物又はその塩:
【化2】
(式中、
Baseは、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であり、
は、直鎖アルキレン基であり、
は、単結合又はアルキレン基であり、
Xは、置換基を有していてもよいアルキレン基、又はこのアルキレン基中の少なくとも1つのメチレン基が-N(R)-(式中、Rは、水素原子又はアルキル基である)、-O-、又は-S(=O)-(式中、kは0、1、又は2である)に置き換わった基であり、
及びRは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヒドロキシル基の保護基、置換基を有するホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロキシホスフィニル基、又は置換基を有していてもよいヒドロキシメルカプトホスフィニル基であるか、或いは、R及びRは、隣接する2個の酸素原子及びフラノースの3位~5位の炭素原子と共に、置換基を有していてもよい環を形成しており、
は、置換基を有していてもよいアミノ基である)。
項2.
がメチレン基であり、且つ、Aが単結合である、項1に記載の化合物又はその塩。
項3.
Xが、-C2n-(式中、nは1~10の整数である)である、項1又は2に記載の化合物又はその塩。
項4.
が、下記式(A):
【化3】
(式中、R3a及びR3bは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はアミノ基の保護基であるか、或いは、R3a及びR3bは、隣接する窒素原子と共に、置換基を有していてもよい環を形成している)
で表される基であるか、或いは、下記式(B):
【化4】
(式中、R3c~R3fは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である)
で表される基である、項1~3のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。
項5.
式(A)において、R3a及びR3bが、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアミノ基の保護基であるか、或いは、R3a及びR3bが、隣接する窒素原子と共に、置換基としてアルキル基を有していてもよい5~10員の含窒素脂肪族複素環を形成しており、
式(B)において、R3c~R3fが、同一又は異なって、水素原子、又はアミノ基の保護基である、
項4に記載の化合物又はその塩。
項6.
及びRが、同一又は異なって、水素原子、置換基としてアルコキシ基を有していてもよいアルキル基、置換基としてアルコキシ基を有していてもよいアリール基、置換基としてアルコキシ基を有していてもよいアラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、式:-Si(R)(式中、各Rは、同一又は異なって、アルキル基又はアリール基である)で表される基、式:-P(R)(R)(式中、R及びRは、同一又は異なって、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、シアノアルコキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、シアノアルキルチオ基、又はアルキルアミノ基である)で表される基、ジヒドロキシホスフィニル基、又はヒドロキシメルカプトホスフィニル基であるか、或いは、
及びRが、隣接する2個の酸素原子及びフラノースの3位~5位の炭素原子と共に、置換基としてアルキル基を有していてもよい6~10員の脂肪族複素環を形成している、
項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。
項7.
Baseが、置換基を有していてもよい2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基、置換基を有していてもよい2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、置換基を有していてもよいプリン-9-イル基、又は置換基を有していてもよい6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル基である、項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。
項8.
下記式(1A)~(1C)のいずれかで表される、項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその塩:
【化5】
[式中、
3a’及びR3b’は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基であり、
Zは、単結合、酸素原子、S(=O)(式中、mは0、1、又は2である)、C(R13)(R14)(式中、R13及びR14は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基である)、又はNR15(式中、R15は、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である)であり、
3c’~R3f’は、同一又は異なって、水素原子、又はアミノ基の保護基であり、Base、R、及びRは、前記と同じである]。
項9.
項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩を製造する方法であって、
(I)下記式(2A):
【化6】
(式中、Base、A、A、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を、式(3A):L-X-R(式中、Lは、脱離基であり、X及びRは、前記と同じである)で表される化合物と反応させる工程、又は
(II)下記式(2B):
【化7】
(式中、Lは、脱離基であり、Base、A、A、X、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を、式(3B):R-H(式中、Rは、前記と同じである)で表される化合物と反応させる工程
を含む、方法。
項10.
項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Rがアミノ基の保護基で保護されていてもよいアミノ基である化合物又はその塩を製造する方法であって、
(IIIa)下記式(2B):
【化8】
(式中、Lは、脱離基であり、Base、A、A、X、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を、アジ化物塩と反応させて、下記式(1J):
【化9】
(式中、Base、A、A、X、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を得る工程、
(IIIb)式(1J)で表される化合物を、下記式(3C):
【化10】
(式中、R3g~R3iは、同一又は異なって、アルキル基又はアリール基である)
で表される化合物と反応させた後、加水分解により下記式(1L):
【化11】
(式中、Base、A、A、X、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物を得る工程、及び
(IIIc)必要により、式(1L)で表される化合物のアミノ基を保護する工程
を含む、方法。
項11.
項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Rが下記式(B):
【化12】
(式中、R3c~R3fは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である)
で表される基である化合物又はその塩の製造方法であって、
項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Rがアミノ基である化合物をグアニジル化する工程を含む、方法。
項12.
項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Baseが下記式(1K’)又は(1Q’):
【化13】
(式中、Qは、水素原子又は置換基であり、Q及びQは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基である(但し、Q及びQは同時に水素原子ではない))
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
(VIb)項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Baseが下記式(1P’):
【化14】
(式中、環Gは、5員又は6員の含窒素複素環であり、Qは前記と同じである)
で表される化合物を、アンモニアと反応させる工程
を含む、方法。
項13.
(VIc)工程(VIb)の反応により得られる化合物をアミノ基の保護基で保護する工程をさらに含む、項12に記載の方法。
項14.
項1に記載の式(1)で表される化合物又はその塩のうち、Baseが下記式(1R’)又は(1S’):
【化15】
(式中、Q~Qは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基である)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
項1に記載の式(1)で表される化合物のうち、Baseが下記式(1O’):
【化16】
(式中、Qは、水素原子又は置換基である)
で表される化合物又はその塩を、下記式(3E)又は(3F):
【化17】
(式中、Q~Qは、前記と同じである)
で表される化合物と反応させる工程を含む、方法。
項15.
下記式(4):
【化18】
(式中、
Baseは、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であり、
は、直鎖アルキレン基であり、
は、単結合又はアルキレン基であり、
Xは、置換基を有していてもよいアルキレン基、又はこのアルキレン基中の少なくとも1つのメチレン基が-N(R)-(式中、Rは、水素原子又はアルキル基である)、-O-、又は-S(=O)-(式中、kは0、1、又は2である)に置き換わった基であり、
は、置換基を有していてもよいアミノ基である)
で表される単位を有するオリゴヌクレオチド又はその塩。
項16.
検査試料において標的核酸を検出する方法であって、
(I)前記標的核酸の標的部位を含む塩基配列を、クランプ核酸を用いる核酸増幅法によって、選択的に増幅させる工程であって、前記クランプ核酸が、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩である工程、及び
(II)前記増幅された塩基配列を検出する工程
を含む、方法。
項17.
検査試料における標的核酸を検出する、又は検査試料における標的核酸の標的部位を含む塩基配列を選択的に増幅するための組成物であって、
(a)前記組成物は、プライマー及びプローブを含み、該プライマー及びプローブのうち少なくともいずれかが、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩である、
(b)前記組成物は、フォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブを含み、該フォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブのうち少なくともいずれかが、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩である、又は、
(c)前記組成物は、クランプ核酸及びプライマーを含み、該クランプ核酸及びプライマーのうち少なくともいずれかが、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩である、
組成物。
項17A.
検査試料における標的核酸をプライマー及びプローブを用いて検出するための、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩の使用であって、前記オリゴヌクレオチド又はその塩が、前記プライマー及びプローブのうち少なくともいずれかである、使用。
項17B.
検査試料における標的核酸をフォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブを用いて検出するための、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩の使用であって、前記オリゴヌクレオチド又はその塩が、前記フォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブのうち少なくともいずれかである、使用。
項17C.
検査試料における標的核酸の標的部位を含む塩基配列をクランプ核酸及びプライマーを用いて選択的に増幅するための、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩の使用であって、前記オリゴヌクレオチド又はその塩が、前記クランプ核酸及びプライマーのうち少なくともいずれかである、使用。
項18.
二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレチドを鎖侵入させるための組成物であって、前記標的部位の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩を含有する組成物。
項18A.
二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレチドを鎖侵入させるための、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩の使用であって、前記オリゴヌクレオチド又はその塩が、前記標的部位の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する、使用。
項19.
単離された二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレオチドを鎖侵入させる方法であって、前記標的部位の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩と、前記二重鎖DNAとを混合する工程を含む、方法。
項20.
前記工程は、(i)前記オリゴヌクレオチド又はその塩と前記二重鎖DNAとを、一本鎖DNA結合タンパク質の存在下で混合する工程であるか、(ii)前記オリゴヌクレオチド又はその塩と前記二重鎖DNAとを、一本鎖DNA結合タンパク質の非存在下で混合する工程であり、
前記工程が(ii)であるとき、混合物を加熱する工程、又は混合物を25~75℃に維持する工程をさらに含む、
項19に記載の方法。
項21.
項1~8のいずれか一項に記載の化合物又はその塩、或いは、項15に記載のオリゴヌクレオチド又はその塩を含有する医薬組成物。
なお、本明細書で引用される文献の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、様々なゲノムテクノロジーに有用である新規人工核酸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、非特許文献1のFigure 5に対応する図面であり、オリゴヌクレオチドの二重鎖ゲノムDNAへの結合様式を示す。
図2図2は、消化酵素の反応時間と未消化オリゴヌクレオチドの残存率との関係を示すグラフである。
図3図3は、PCRのサイクル数とΔRn(蛍光強度)との関係を示すグラフである。
図4図4は、PNAについてChem. Commun., 2009, 1225-1227に記載の条件でストランドインベージョンが生じることを確認した図である。
図5図5は、本発明のオリゴヌクレオチドについてChem. Commun., 2009, 1225-1227に記載の条件でストランドインベージョンが生じることを示す図である。
図6図6は、本発明のオリゴヌクレオチドについて所定の温度条件でストランドインベージョンが生じることを示す図である。
図7図7は、本発明のオリゴヌクレオチドについて1塩基の相違によりストランドインベージョンが阻害されることを示す図である。
図8図8は、本発明のオリゴヌクレオチドについて所定の温度条件でストランドインベージョンが生じることを示す図である。
図9図9は、本発明のオリゴヌクレオチドについて所定の温度条件でストランドインベージョンが生じることを示す図である。
図10図10は、本発明のオリゴヌクレオチドを2種類以上用いることによりストランドインベージョンが増強されることを示す図である。
図11図11は、本発明の検査試料における標的核酸を検出するためのキットの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<用語の定義>>
本明細書において、「アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖状の飽和炭化水素から1個の水素原子を除いた一価の基をいう。
アルキル基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば1~20、好ましくは1~10、更に好ましくは1~6、特に好ましくは1~4である。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基(例:n-プロピル基、i-プロピル基)、ブチル基(例:n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(例:n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基(例:n-オクチル基、2-エチルヘキシル基)、ノニル基、デシル基が挙げられる。
【0010】
本明細書において、「アルキレン基」とは、直鎖又は分岐鎖状の飽和炭化水素から2個の水素原子を除いた二価の基をいう。
アルキレン基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば1~10、好ましくは1~8、更に好ましくは1~6である。
アルキレン基の例としては、Cアルキレン基(例:メチレン基)、Cアルキレン基(例:メチルメチレン基、ジメチレン基)、Cアルキレン基(例:トリメチレン基、ジメチルメチレン基)、Cアルキレン基(例:テトラメチレン基)、Cアルキレン基(例:ペンタメチレン基)、Cアルキレン基(例:ヘキサメチレン基)が挙げられる。
【0011】
本明細書において、「アルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖状であり、炭素-炭素二重結合を含む不飽和炭化水素から1個の水素原子を除いた一価の基をいう。
アルケニル基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば2~20、好ましくは2~10、更に好ましくは2~6である。
アルケニル基の例としては、エテニル基(即ち、ビニル基)、プロペニル基(例:1-プロペニル基、アリル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ゲラニル基、ファルネシル基が挙げられる。
【0012】
本明細書において、「アルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖状であり、炭素-炭素三重結合を含む不飽和炭化水素から1個の水素原子を除いた一価の基をいう。
アルキニル基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば2~20、好ましくは2~10、更に好ましくは2~6である。
アルキニル基の例としては、エチニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基が挙げられる。
【0013】
本明細書において、「シクロアルキル基」とは、飽和脂肪族炭化水素環に由来する一価の基をいう。
シクロアルキル基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば3~20、好ましくは5~12、更に好ましくは5~10である。
シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0014】
本明細書において、「シクロアルケニル基」とは、炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素環に由来する一価の基をいう。
シクロアルケニル基の炭素原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば3~20、好ましくは5~12、更に好ましくは5~10である。
シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基、アダマンテニル基が挙げられる。
【0015】
本明細書において、「芳香族炭化水素環基」とは、芳香族炭化水素環に由来する一価の基をいい、「アリール基」とも称する。
芳香族炭化水素環の構成原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば6~20、好ましくは6~14、更に好ましくは6~12、特に好ましくは6~10である。
芳香族炭化水素環は、単環であってもよく、縮合環(例:二乃至三環式縮合環)であってもよい。
芳香族炭化水素環基の例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基が挙げられる。
【0016】
本明細書において、「複素環」は、「脂肪族複素環」及び「芳香族複素環」を包含する意味で用いられる。
【0017】
本明細書において、「脂肪族複素環」とは、環の構成原子として、炭素原子、及び、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子等からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含む脂肪族環をいう。
脂肪族複素環の構成原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば5~20、好ましくは5~12、更に好ましくは6~10である。
脂肪族複素環の構成原子のうち、ヘテロ原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば1~4である。
脂肪族複素環の例としては、含酸素脂肪族複素環(例:テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ピラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン)、含硫黄脂肪族複素環(例:テトラヒドロチオフェン、チオピラン、テトラヒドロチオピラン)、含窒素脂肪族複素環(例:ピロリジン、ピペリジン、アゼパン)、含窒素及び酸素脂肪族複素環(例:モルホリン)、含窒素及び硫黄脂肪族複素環(例:チオモルホリン)、シロキサン結合を含有する脂肪族複素環が挙げられる。
【0018】
本明細書において、「芳香族複素環」とは、環の構成原子として、炭素原子、及び、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含む芳香族環をいう。
芳香族複素環の構成原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば5~20、好ましくは5~12、更に好ましくは6~10である。
芳香族複素環の構成原子のうち、ヘテロ原子の数は、特に限定されるものではないが、例えば1~4である。
芳香族複素環は、単環であってもよく、縮合環(例:二乃至三環式縮合環)であってもよい。
芳香族複素環の例としては、含酸素芳香族複素環(例:フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン、ベンゾピラン、キサンテン)、含硫黄芳香族複素環(例:チオフェン、チアントレン)、含窒素芳香族複素環(例:ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、プリン、キノリン、イソキノリン、1,8-ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、プテリジン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナジン)、含酸素及び硫黄芳香族複素環(例:フェノキサチイン)、含窒素及び酸素芳香族複素環(例:オキサゾール、イソオキサゾール、フラザン、フェノキサジン)、含窒素及び硫黄芳香族複素環(例:チアゾール、イソチアゾール、フェノチアジン)が挙げられる。
【0019】
本明細書において、「複素環基」とは、前記複素環から1個の水素原子を除いた一価の基をいう。
【0020】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」又は「置換基で置換されていてもよい」とは、置換基を有しない場合、及び、任意の水素原子に代えて1個の置換基、又は2個以上の同種もしくは異種の置換基を有する場合の両方を含む意味で用いられる。なお、置換基を有する場合、置換基の数は、特に限定されるものではないが、例えば1~3、好ましくは1又は2である。
【0021】
本明細書において、「置換基」とは、水素原子に代わる原子又は原子団をいう。置換基の例としては、ハロゲン原子(例:フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アルキニル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、複素環基、これら2種以上の組合せ(例:ハロアルキル基、シアノアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基)が挙げられる。
なお、「2種以上の組合せ」は、各々の置換基として例示した基の任意の組合せを包含する。
【0022】
本明細書において、「Cx-y」とは、後続の基の炭素原子の数がx以上y以下であることをいう。x及びyは正の整数であり、x<yである。
【0023】
本明細書において、「ハロアルキル基」は、1個又は2個以上の同種もしくは異種のハロゲン原子で置換されたアルキル基をいう。
ハロアルキル基の好適な例は、C1-6ハロアルキル基であり、より好適な例は、C1-4ハロアルキル基であり、更に好適な例は、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、又は2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0024】
本明細書において、「シアノアルキル基」は、1個又は2個以上のシアノ基で置換されたアルキル基をいう。
シアノアルキル基の好適な例は、C1-6シアノアルキル基であり、より好適な例は、C1-4シアノアルキル基であり、更に好適な例は、シアノメチル基又は2-シアノエチル基が挙げられる。
【0025】
本明細書において、「アラルキル基」は、1個又は2個以上の同種もしくは異種のアリール基で置換されたアルキル基をいう。
アラルキル基の好適な例は、C6-14アリールC1-4アルキル基であり、より好適な例は、フェニルメチル基(即ち、ベンジル基)、フェニルエチル基(即ち、フェネチル基)、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、トリフェニルメチル基(即ち、トリチル基)、又はフルオレニルメチル基である。
【0026】
本明細書において、「アルコキシ基」は、式:-O-アルキルで表される基をいう。
アルコキシ基の好適な例は、C1-6アルコキシ基であり、より好適な例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(例:n-プロポキシ基、i-プロポキシ基)、又はブトキシ基(例:t-ブトキシ基)である。
なお、ハロアルコキシ基、及び、シアノアルコキシ基は、それぞれ、式:-O-ハロアルキルで表される基、及び、式:-O-シアノアルキルで表される基をいう。
【0027】
本明細書において、「アルキルチオ基」は、式:-S-アルキルで表される基をいう。 アルキルチオ基の好適な例は、C1-6アルキルチオ基であり、より好適な例は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基(例:n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基)、又はブチルチオ基である。
なお、ハロアルキルチオ基、及び、シアノアルキルチオ基は、それぞれ、式:-S-ハロアルキルで表される基、及び、式:-S-シアノアルキルで表される基をいう。
【0028】
本明細書において、「アルキルアミノ基」は、1個又は2個の同種もしくは異種のアルキル基で置換されているアミノ基をいう。
アルキルアミノ基は、モノアルキルアミノ基及びジアルキルアミノ基を包含する。
モノアルキルアミノ基の好適な例は、モノC1-6アルキルアミノ基であり、より好適な例は、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノプロピルアミノ基(例:モノ(n-プロピル)アミノ基、モノ(i-プロピル)アミノ基)、又はモノブチルアミノ基である。
ジアルキルアミノ基の好適な例は、ジC1-6アルキルアミノ基であり、より好適な例は、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基(例:ジ(n-プロピル)アミノ基、ジ(i-プロピル)アミノ基)、又はジブチルアミノ基である。
【0029】
本明細書において、「置換基を有するホスフィノ基」とは、ホスフィノ基(-PH)の少なくとも1個の水素原子が他の原子又は原子団で置換されている基をいう。
置換基を有するホスフィノ基の例としては、式:-P(R)(R)(式中、R及びRは、同一又は異なって、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、シアノアルコキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、シアノアルキルチオ基、又はアルキルアミノ基である)で表される基が挙げられる。
【0030】
本明細書において、「置換基を有していてもよいジヒドロキシホスフィニル基」とは、ジヒドロキシホスフィニル基(即ち、ホスホノ基)(-P(=O)(OH))、又は少なくとも1個の水素原子が他の原子又は原子団(例:ヒドロキシル基の保護基)で置換されているジヒドロキシホスフィニル基をいう。
後者の基は、置換基を有していてもよい、下記式:
【化19】
で表される基(以下、「二リン酸基」と称する)、及び置換基を有していてもよい、下記式:
【化20】
で表される基(以下、「三リン酸基」と称する)を包含する。
【0031】
本明細書において、「置換基を有していてもよいヒドロキシメルカプトホスフィニル基」とは、ヒドロキシメルカプトホスフィニル基(-P(=O)(OH)(SH))、又は少なくとも1個の水素原子が他の原子又は原子団(例:ヒドロキシル基の保護基)で置換されているヒドロキシメルカプトホスフィニル基をいう。
【0032】
本明細書において、「ヒドロキシル基の保護基」とは、化合物又はその塩の合成、或いは、オリゴヌクレオチド又はその塩の合成においてヒドロキシル基が反応に関与しないようにするための一価の基をいう。
ヒドロキシル基の保護基は、例えば、酸性又は中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解、及び光分解のような方法により開裂し得る基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ヒドロキシル基の保護基の例は、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有するスルホニル基、及び置換基を有するシリル基を包含する。
【0033】
本明細書において、「アシル基」とは、式:-C(=O)-R(式中、Rは、炭化水素基である)で表される基をいう。Rで示される炭化水素基は、直鎖又は分岐鎖状炭化水素基(例:アルキル基)であってもよく、飽和又は不飽和炭化水素環基(例:シクロアルキル基、アリール基)、これらの組合せ(例:アラルキル基)であってもよい。
アシル基は、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、及びアラルキルカルボニル基を包含する。
アルキルカルボニル基の好適な例は、(C1-10アルキル)カルボニル基であり、より好適な例は、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、又はデカノイル基である。
アリールカルボニル基の好適な例は、(C6-14アリール)カルボニル基であり、より好適な例は、ベンゾイル基、又はナフトイル基(即ち、α-ナフトイル基、β-ナフトイル基)である。
アラルキルカルボニル基の好適な例は、(C6-14アリールC1-4アルキル)カルボニル基であり、より好適な例は、ベンジルカルボニル基である。
なお、「アシルオキシ基」、「アシルチオ基」、及び「アシルアミノ基」におけるアシル基も、上記と同様の基が例示できる。
【0034】
本明細書において、「置換基を有するスルホニル基」とは、式:-S(=O)R(式中、Rは、前記と同じである)で表される基をいう。
置換基を有するスルホニル基は、置換基を有していてもよいアルキル基を有するスルホニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基を有するスルホニル基を包含する。
アルキル基を有するスルホニル基の好適な例は、C1-6アルキルスルホニル基であり、より好適な例は、メタンスルホニル基又はエタンスルホニル基である。
アリール基を有するスルホニル基の好適な例は、C6-14アリールスルホニル基であり、より好適な例は、ベンゼンスルホニル基又はp-トルエンスルホニル基である。
【0035】
本明細書において、「置換基を有するシリル基」とは、シリル基(-SiH)の少なくとも1個の水素原子が他の原子又は原子団で置換されているシリル基をいう。
「置換基を有するシリル基」の典型的な例は、式:-Si(R)(式中、各Rは、同一又は異なって、アルキル基又はアリール基である)で表される基である。当該基の例としては、トリアルキルシリル基(例:トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等のトリC1-6アルキルシリル基)、ジアルキルアリールシリル基(例:ジメチルフェニルシリル基等のジC1-6アルキルC6-14アリールシリル基)、アルキルジアリールシリル基(例:t-ブチルジフェニルシリル基等のC1-6アルキルジC6-14アリールシリル基)、トリアリールシリル基(例:トリフェニルシリル基等のトリC6-14アリールシリル基)が挙げられる。
【0036】
本明細書において、「アミノ基の保護基」とは、化合物又はその塩の合成、或いは、オリゴヌクレオチド又はその塩の合成においてアミノ基が反応に関与しないようにするための一価の基をいう。
アミノ基の保護基は、例えば、酸性又は中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解、及び光分解のような方法により開裂し得る基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
アミノ基の保護基の例は、置換基を有していてもよいアシル基(例:置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、置換基を有していてもよいアラルキルカルボニル基)、置換基を有していてもよいN,N-ジアルキルホルムアミジル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基、及び置換基を有するスルホニル基を包含する。
【0037】
本明細書において、「ホルムアミジル基」とは、式:=CH-NHで表される基をいう。N,N-ジアルキルホルムアミジル基の好適な例は、N,N-ジ(C1-6アルキル)ホルムアミジル基であり、より好適な例は、N,N-ジ(C1-4アルキル)ホルムアミジル基であり、さらに好適な例は、N,N-ジメチルホルムアミジル基又はN,N-ジエチルホルムアミジル基である。
【0038】
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」とは、式:-C(=O)-O-アルキルで表される基をいう。
アルコキシカルボニル基の好適な例は、(C1-6アルコキシ)カルボニル基であり、より好適な例は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、又はブトキシカルボニル基(例:t-ブトキシカルボニル基)である。
【0039】
本明細書において、「アルケニルオキシカルボニル基」とは、式:-C(=O)-O-アルケニルで表される基をいう。
アルケニルオキシカルボニル基の好適な例は、(C2-9アルケニルオキシ)カルボニル基であり、より好適な例は、アリルオキシカルボニル基である。
【0040】
本明細書において、「アリールオキシカルボニル基」とは、式:-C(=O)-O-アリールで表される基をいう。
アリールオキシカルボニル基の好適な例は、(C6-14アリールオキシ)カルボニル基であり、より好適な例は、フェノキシカルボニル基又はナフトキシカルボニル基である。
【0041】
本明細書において、「アラルキルオキシカルボニル基」とは、式:-C(=O)-O-アラルキルで表される基をいう。
アラルキルオキシカルボニル基の好適な例は、(C6-14アリールC1-4アルコキシ)カルボニル基であり、より好適な例は、ベンジルオキシカルボニル基又はフルオレニルメチルオキシカルボニル基である。
【0042】
本明細書において、「ハイブリダイズする」とは、所定のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの全部又は一部分が、ストリンジェントな条件下で、別のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの全部又は一部分と水素結合を介して二重鎖を形成することをいう。「ストリンジェントな条件」は、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを行う際に当業者が一般的に用いる条件であればよい。例えば、2つのポリヌクレオチド分子またはオリゴヌクレオチド分子の間に少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性があるときに、一方のポリヌクレオチド分子又はオリゴヌクレオチド分子が他方のポリヌクレオチド分子又はオリゴヌクレオチド分子に特異的にハイブリダイズすることができる条件が挙げられる。ハイブリダイゼーションでのストリンジェンシーは、温度、塩濃度、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの塩基長及びGC含量、並びにハイブリダイゼーション緩衝液に含まれるカオトロピック剤の濃度の関数であることが知られている。ストリンジェントな条件として、例えば、Sambrook, J.ら, 1998, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2編), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載された条件などを用いることができる。
【0043】
本明細書において、「検査」とは、診断や研究などの目的で試料中の核酸等の被検物質を調べることをいう。「検査試料」とは、検査に供される試料をいう。
【0044】
本明細書において、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0045】
<<化合物又はその塩>>
本発明の化合物又はその塩は、下記式(1)で表される化合物又はその塩である:
【化21】
(式中、Base、A、A、X、R、R、及びRは、前記と同じである。なお、フラノースの炭素原子には位置番号を付している。)
【0046】
以下、式(N)で表される化合物又はその塩を、「化合物(N)」と称する。
化合物(1)は、R又はRが、置換基を有していてもよいジヒドロキシホスフィニル基又は置換基を有していてもよいヒドロキシメルカプトホスフィニル基である場合、「ヌクレオチド」と称し、それ以外の基である場合、「ヌクレオシド」と称する。
【0047】
Baseの好適な例は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。
前記芳香族複素環基は、好ましくは含窒素芳香族複素環基である。
前記含窒素芳香族複素環基は、好ましくは6~10員の含窒素芳香族複素環基である。 前記6~10員の含窒素芳香族複素環基は、好ましくは2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、プリン-9-イル基、又は6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル基である。
前記芳香族複素環基に置換する置換基の好適な例は、アルキル基、アシル基、及びアミノ基の保護基で置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種である。前記置換基の数は、特に限定されるものではないが、例えば1~3である。
Baseのより好適な例は、置換基を有していてもよいチミニル基、置換基を有していてもよいシトシニル基、置換基を有していてもよいアデニル基、又は置換基を有していてもよいグアニル基である。前記置換基は、好ましくは、アルキル基、アシル基、及びN,N-ジアルキルホルムアミジル基からなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくは、C1-4アルキル基、(C1-4アルキル)カルボニル基、(C6-14アリール)カルボニル基、又はN,N-ジ(C1-4アルキル)ホルムアミジル基である。前記置換基の数は、好ましくは1~3である。
Baseの更に好適な例は、下記:
2,4-ジオキソ-5-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基(例:チミン-1-イル基)、
2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基(即ち、シトシン-1-イル基)、
2-オキソ-4-アシルアミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基(即ち、N-アシル-シトシン-1-イル基)、
2-オキソ-4-アミノ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基(即ち、5-メチルシトシン-1-イル基)、
2-オキソ-4-アシルアミノ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基(即ち、N-アシル-5-メチルシトシン-1-イル基)、
6-アミノ-9H-プリン-9-イル基(即ち、アデニン-9-イル基)、
6-アシルアミノ-9H-プリン-9-イル基(即ち、N-アシル-アデニン-9-イル基)、
2-アミノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル基(例:グアニン-9-イル基)
2-アシルアミノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル基(例:N-アシル-グアニン-9-イル基)、及び
2-(N,N-ジアルキルホルムアミジル)アミノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル基(例:N-(N,N-ジアルキルホルムアミジル)-グアニン-9-イル基)
からなる群から選択される基である。
Baseの最も好適な例は、下記:
チミン-1-イル基、
5-メチルシトシン-1-イル基、
N-アセチル-5-メチルシトシン-1-イル基、
N-イソブチリル-5-メチルシトシン-1-イル基、
N-ベンゾイル-5-メチルシトシン-1-イル基、
アデニン-9-イル基、
N-アセチル-アデニン-9-イル基、
N-イソブチリル-アデニン-9-イル基、
N-ベンゾイル-アデニン-9-イル基、
グアニン-9-イル基、
N-アセチル-グアニン-9-イル基、
N-イソブチリル-グアニン-9-イル基、
N-ベンゾイル-グアニン-9-イル基、及び
N-(N,N-ジメチルホルムアミジル)-グアニン-9-イル基
からなる群から選択される基である。
【0048】
は、直鎖アルキレン基(例:メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基)である。
の好適な例は、直鎖C1-4アルキレン基である。
のより好適な例は、直鎖C1-2アルキレン基である。
の最も好適な例は、メチレン基である。
【0049】
の好適な例は、単結合又は直鎖C1-2アルキレン基(例:メチレン基、ジメチレン基)である。
の更に好適な例は、単結合である。
【0050】
Xの好適な例は、アルキレン基、又はこのアルキレン基中の窒素原子に結合するメチレン基及びRに結合するメチレン基以外のメチレン基のうち、少なくとも1つが-N(R)-(式中、Rは、水素原子又はアルキル基である)、-O-、又は-S(=O)-(式中、kは0、1、又は2である)に置き換わった基である。或いは、Xの好適な例は、アルキレン基、又はこのアルキレン基中の隣接する2つの炭素原子間に-N(R)-(式中、Rは、前記と同じである)、-O-、又は-S(=O)-(式中、kは0、1、又は2である)を有する基である。
Xの更に好適な例は、下記:
式:-C2n-(式中、nは1~10の整数である)で表される基、
式:-(CH)n1-(N(RX1)-(CH)n2)n3-(式中、RX1は水素原子又はC1-4アルキル基であり、n1は2~10の整数であり、n2は2~4の整数であり、n3は1~5の整数であり、n3が2以上の整数であるとき、各RX1は、互いに同一であっても又は異なっていてもよく、各n2は、互いに同一であっても又は異なっていてもよい)で表される基、
式:-(CH)n4-(O-(CH)n5)n6-(式中、n4は2~10の整数であり、n5は2~4の整数であり、n6は1~5の整数であり、n6が2以上の整数であるとき、各n5は、互いに同一であっても又は異なっていてもよい)で表される基、及び
式:-(CH)n7-(S-(CH)n8)n9-(式中、n7は2~10の整数であり、n8は2~4の整数であり、n9は1~5の整数であり、n9が2以上の整数であるとき、各n8は、互いに同一であっても又は異なっていてもよい)で表される基
からなる群から選択される基である。
Xの最も好適な例は、下記:
式:-(CH)n10-(式中、n10は1~6の整数である)で表される基、
式:-C-(N(RX2)-C)n11-(式中、RX2は水素原子又はC1-4アルキル基であり、n11は1~5の整数であり、n11が2以上の整数であるとき、各RX2は、互いに同一であっても又は異なっていてもよい)で表される基、
式:-C-(O-C)n12-(式中、n12は1~5の整数である)で表される基、及び
式:-C-(S-C)n13-(式中、n13は1~5の整数である)で表される基
からなる群から選択される基である。
前記アルキレン基の炭素原子上に任意に置換し得る置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アシルチオ基である。置換基の数は、アルキレン基の炭素原子の数にもよるが、例えば、1~3の整数であり、好ましくは、2又は3である。
【0051】
の好適な例は、下記:
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
ヒドロキシル基の保護基、
置換基を有するホスフィノ基、
置換基を有していてもよいジヒドロキシホスフィニル基、及び
置換基を有していてもよいヒドロキシメルカプトホスフィニル基
からなる群から選択される基である。
で示される「置換基を有していてもよいアルキル基」は、好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよいアルキル基であり、より好ましくは、アルコキシ基で置換されていてもよいアルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよいアラルキル基である。前記置換基の数は、好ましくは1~3である。
で示される「置換基を有していてもよいアリール基」は、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくは、アルコキシ基で置換されていてもよいアリール基である。前記置換基の数は、好ましくは1~3である。
で示される「ヒドロキシル基の保護基」は、好ましくは、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又は式:-Si(R)(式中、各Rは、同一又は異なって、アルキル基又はアリール基である)で表される基である。
で示される「置換基を有するホスフィノ基」は、好ましくは、式:-P(R)(R)(式中、R及びRは、同一又は異なって、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、シアノアルコキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、シアノアルキルチオ基、又はアルキルアミノ基である)で表される基である。当該基のより好適な例は、下記式:
【化22】
(式中、R5a及びR5bは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基であり、R6aは、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、又はシアノアルキル基である)
で表されるホスフィノ基である。
で示される「置換基を有していてもよいジヒドロキシホスフィニル基」は、好ましくは、ジヒドロキシホスフィニル基、二リン酸基、又は三リン酸基であり、より好ましくは、ジヒドロキシホスフィニル基である。これらは、置換基としてヒドロキシル基の保護基を有していてもよく、存在するヒドロキシル基の全部又は一部が、ヒドロキシル基の保護基で置換されていてもよい。
で示される「置換基を有していてもよいヒドロキシメルカプトホスフィニル基」は、好ましくはヒドロキシメルカプトホスフィニル基である。
の最も好適な例は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基、ベンジル基、トリチル基、メトキシメチル基、p-メトキシベンジル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基、アセチル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、下記式:
【化23】
のいずれかで表されるホスフィノ基、ジヒドロキシホスフィニル基、又はヒドロキシメルカプトホスフィニル基である。
【0052】
の好適な例は、Rの好適な例と同じである。
【0053】
とRの組合せの好適な例は、Rが水素原子又はジメトキシトリチル基(例:4,4’-ジメトキシトリチル基)であり、Rが、下記式:
【化24】
(式中、R5a及びR5bは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基であり、R6aは、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、又はシアノアルキル基である)
で表されるホスフィノ基である組合せである。
【0054】
及びRが、隣接する2個の酸素原子及びフラノースの3位~5位の炭素原子と共に環を形成している場合、当該環の好適な例は、置換基を有していてもよい6~10員の脂肪族複素環であり、当該置換基の好適な例は、アルキル基である。
当該環のより好適な例は、下記式:
【化25】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基であり、R~R12は、同一又は異なって、アルキル基である)
のいずれかで表される脂肪族複素環である。
当該環の更に好適な例は、下記式:
【化26】
のいずれかで表される環である。
【0055】
の好適な例は、下記式(A):
【化27】
(式中、R3a及びR3bは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はアミノ基の保護基であるか、或いは、R3a及びR3bは、隣接する窒素原子と共に、置換基を有していてもよい環を形成している)
で表される基である。
3aは、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアミノ基の保護基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である。
3aで示される「アミノ基の保護基」は、好ましくは(C1-4アルキル)カルボニル基又は(C1-4ハロアルキル)カルボニル基であり、より好ましくはアセチル基又はトリフルオロメチルカルボニル基である。
【0056】
3bの好適な例は、R3aの好適な例と同じである。
3aとR3bの組合せの好適な例は、R3a及びR3bが共に水素原子である組合せ、R3aが水素原子であり、R3bがアセチル基又はトリフルオロメチルカルボニル基である組合せ、R3a及びR3bが共にメチル基である組合せ、或いは、R3a及びR3bが共にアセチル基又はトリフルオロメチルカルボニル基である組合せである。
【0057】
3a及びR3bが、隣接する窒素原子と共に環を形成している場合、当該環の好適な例は、置換基を有していてもよい5~10員の含窒素脂肪族複素環であり、当該置換基の好適な例は、アルキル基又はアシル基である。
当該環のより好適な例は、下記式:
【化28】
[式中、Zは、単結合、酸素原子、S(=O)(式中、mは0、1、又は2である)、C(R13)(R14)(式中、R13及びR14は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基である)、又はNR15(式中、R15は、水素原子、アルキル基、又はアシル基である)である]
で表される含窒素脂肪族複素環である。
当該環の更に好適な例は、下記式:
【化29】
[式中、R15は、水素原子、直鎖又は分岐鎖状C1-4アルキル基(例:メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、或いは、(直鎖又は分岐鎖状C1-4アルキル)カルボニル基(例:メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基)である]
で表される含窒素脂肪族複素環である。
当該環の最も好適な例は、4-メチルピペラジン-1-イル基である。
【0058】
の好適な他の例は、下記式(B):
【化30】
(式中、R3c~R3fは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である)
で表される基である。
3c~R3fの好適な例は、水素原子、又はアミノ基の保護基である。
3cは、好ましくは水素原子である。
3dは、好ましくは、アミノ基の保護基であり、より好ましくは、アルコキシカルボニル基、ハロアルコキシカルボニル基、又はシアノアルコキシカルボニル基であり、特に好ましくは、(C1-4アルコキシ)カルボニル基、(C1-4ハロアルコキシ)カルボニル基、又は(C1-4シアノアルコキシ)カルボニル基である。
3eは、好ましくは、アミノ基の保護基であり、より好ましくは、アルコキシカルボニル基、ハロアルコキシカルボニル基、又はシアノアルコキシカルボニル基であり、特に好ましくは、(C1-4アルコキシ)カルボニル基、(C1-4ハロアルコキシ)カルボニル基、又は(C1-4シアノアルコキシ)カルボニル基である。
3fは、好ましくは水素原子である。
【0059】
の最も好適な例は、下記群:
【化31】
から選択される基である。
【0060】
化合物(1)の好適な例は、下記化合物(1A)~(1C)のいずれかである:
【化32】
[式中、
3a’及びR3b’は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基であり、
Zは、単結合、酸素原子、S(=O)(式中、mは0、1、又は2である)、C(R13)(R14)(式中、R13及びR14は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基である)、又はNR15(式中、R15は、水素原子、アルキル基、又はアミノ基の保護基である)であり、
3c’~R3f’は、同一又は異なって、水素原子、又はアミノ基の保護基であり、Base、R、R、及びnは、前記と同じである]。
【0061】
化合物(1)のより好適な例は、下記化合物(1D)~(1I)のいずれかである:
【化33】
(式中、Base、R、及びRは、前記と同じである)。
【0062】
前記塩は、薬学上許容される塩であってもよく、薬学上許容される塩でなくてもよい。 前記塩は、無機塩であってもよく、有機塩であってもよい。
前記塩の例としては、アルカリ金属塩(例:ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アルカリ土類金属塩(例:カルシウム塩、マグネシウム塩)、他の金属塩(例:アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩)、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、アミン塩(例:t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩)、無機酸塩(例:フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩)、有機酸塩(例:メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩)、アミノ酸塩(例:グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩)が挙げられる。
【0063】
<<化合物(1)の製造方法>>
化合物(1)は、例えば、以下の反応スキーム1により得ることができる。
【化34】
(式中、L、各L、及びLは、同一又は異なって、脱離基であり、Mは、アルカリ金属又はアンモニウムであり、R3A及びR3Bは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基であり(但し、R3A及びR3Bは同時に水素原子ではない)、Base、A、A、X、R、R、R、R3c~R3e、及びR3g~R3iは、前記と同じである)
【0064】
[反応スキーム1]
<工程(I)>
工程(I)は、化合物(2A)を、式(3A):L-X-Rで表される化合物と反応させて、化合物(1)を得る工程である。
化合物(2A)は、既知の方法、例えば米国特許出願公開第2007/167387号明細書に記載される方法により得ることができる。
化合物(3A)において、Lで示される脱離基の例は、ハロゲン原子(例:塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキルスルホニルオキシ基(例:メシルオキシ基)、ハロアルキルスルホニルオキシ基(例:トリフルオロメチルスルホニルオキシ基)、又はアリールスルホニルオキシ基(例:トシルオキシ基)である。
化合物(3A)の使用量は、化合物(2A)1モルに対して、通常、1~10モル、好ましくは3~6モルである。
前記反応は、好適には、溶媒の存在下で行われる。
溶媒の例としては、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル)、芳香族炭化水素系溶媒(例:トルエン、キシレン)、これら二種以上の混合溶媒が挙げられる。これらのうち、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン及びキシレンからなる群から選択される少なくとも一種がより好ましい。
前記反応は、好適には、塩基の存在下で行われる。
塩基の例としては、無機塩基[例:アルカリ金属の炭酸塩(例:炭酸ナトリウム、炭酸セシウム)、アルカリ金属の炭酸水素塩(例:炭酸水素ナトリウム)、アルカリ土類金属の炭酸塩(例:炭酸カルシウム)、アルカリ金属の水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属の水酸化物(例:水酸化カルシウム)、金属アルコキシド(例:ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)]、有機塩基[例:第3級アミン(例:トリアルキルアミン)、環状アミン(例:4-(ジメチルアミノ)ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN))]、これらの組合せが挙げられる。これらのうち、第3級アミンが好ましく、トリC1-4アルキルアミンがより好ましい。
塩基の使用量は、化合物(2A)1モルに対して、通常、2~10モル、好ましくは5~8モルである。
前記反応の反応温度は、反応が進行する限り特に制限されるものではないが、例えば30~150℃であり、好ましくは50~120℃である。
前記反応の反応時間は、特に限定されるものではないが、例えば1~24時間、好ましくは1~12時間である。
【0065】
<工程(IIa)>
工程(IIa)は、化合物(2A)を、式(3A’):L-X-Lで表される化合物と反応させて、化合物(2B)を得る工程である。
化合物(3A’)において、Lで示される脱離基の例は、Lと同様である。
化合物(3A’)の使用量は、化合物(2A)1モルに対して、通常、1~20モル、好ましくは1~5モルである。
前記反応は、工程(I)と同様に、溶媒及び/又は塩基の存在下で行うことができる。
【0066】
<工程(IIb)>
工程(IIb)は、化合物(2B)を、式(3B):R-Hで表される化合物と反応させて、化合物(1)を得る工程である。
化合物(3B)の使用量は、化合物(2B)1モルに対して、通常、1~20モル、好ましくは1~5モルである。
前記反応は、工程(I)と同様に、溶媒及び/又は塩基の存在下で行うことができる。
【0067】
<工程(IIc)>
工程(IIc)は、化合物(2A)を、式(3A’’):L-X-OHで表される化合物と反応させて、化合物(2A’)を得る工程である。
化合物(3A’’)の使用量は、化合物(2A)1モルに対して、通常、1~20モル、好ましくは1~5モルである。
前記反応は、工程(I)と同様に、溶媒及び/又は塩基の存在下で行うことができる。
【0068】
<工程(IId)>
工程(IId)は、化合物(2A’)のヒドロキシル基を脱離基Lに変換して化合物(2B)を得る工程である。
工程(IId)の典型的な例は、化合物(2A’)を、ハロゲン化スルホニル(例:アルカンスルホン酸ハライド、ハロアルカンスルホン酸ハライド、アレーンスルホン酸ハライド)と反応させる工程である。この工程により、化合物(2A’)のヒドロキシル基をアルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基に変換することができる。
ハロゲン化スルホニルの使用量は、化合物(2A’)1モルに対して、通常、0.5~5モル、好ましくは1~2モルである。
前記反応は、工程(I)と同様に、溶媒及び/又は塩基の存在下で行うことができる。
【0069】
<工程(IIIa)>
工程(IIIa)は、化合物(2B)を、式:M で表されるアジ化物塩と反応させて、化合物(1J)を得る工程である。
アジ化物塩の例としては、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化アンモニウムが挙げられる。
アジ化物塩の使用量は、化合物(2B)1モルに対して、通常、1~5モル、好ましくは1~2モルである。
前記反応は、好適には、溶媒の存在下で行う。
溶媒の例としては、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル)、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン)、アミド系溶媒(例:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン)、これら二種以上の混合溶媒が挙げられる。これらのうち、アミド系溶媒が好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドがより好ましい。
前記反応の反応温度は、反応が進行する限り特に制限されないが、例えば30~150℃、好ましくは50~120℃である。
【0070】
<工程(IIIb)>
工程(IIIb)は、化合物(1J)を、下記式(3C):
【化35】
で表される化合物と反応させた後、加水分解により化合物(1L)を得る工程である。
化合物(3C)において、R3g~R3iは、好ましくはアリール基であり、より好ましくはC6-10アリール基である。
化合物(3C)の使用量は、化合物(1J)1モルに対して、通常、1~10モル、好ましくは1~3モルである。
前記反応は、好適には、溶媒の存在下で行う。
溶媒の例としては、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル)、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、これら二種以上の混合溶媒が挙げられる。これらのうち、エーテル系溶媒が好ましく、環状エーテルがより好ましく、テトラヒドロフラン及びジオキサンから選択される少なくとも一種が好ましい。
前記反応の反応温度は、反応が進行する限り特に制限されないが、例えば15~30℃である。
なお、工程(IIIb)は、代替的には、化合物(1J)を還元剤(例:水素化アルミニウムリチウム)で還元して化合物(1L)を得る工程であってもよい。
【0071】
<工程(IIIc)>
工程(IIIc)は、化合物(1L)のアミノ基をアミノ基の保護基で保護して化合物(1M)を得る工程である。
前記アミノ基をアミノ基の保護基で保護する方法は、公知又は慣用の方法を採用することができる。例えば、化合物(1L)のアミノ基の保護基として、トリフルオロメチルカルボニル基を導入する工程は、化合物(1L)をトリフルオロ酢酸又はその誘導体(例:無水トリフルオロ酢酸)と反応させる工程である。前記反応は、好適には、溶媒の存在下で行う。溶媒の好適な例は、環状アミン(例:ピリジン)である。
【0072】
<工程(IV)>
工程(IV)は、化合物(1)のうち、Rがアミノ基である化合物(1L)を得る工程である。
工程(IV)は、化合物(1)のうち、Rが、下記式:
【化36】
で表されるフタルイミド残基である化合物を、ヒドラジン化合物(例:ヒドラジン一水和物)と反応させる工程である。
ヒドラジン化合物の使用量は、化合物(1)のうち、Rがフタルイミド残基である化合物1モルに対して、通常、1~10モル、好ましくは1.1~3.5モルである。
前記反応は、好適には、溶媒の存在下で行う。
溶媒の例としては、水、アルコール系溶媒(例:メタノール、エタノール)、これら二種以上の混合溶媒が挙げられる。これらのうち、アルコール系溶媒が好ましい。
なお、工程(IV)は、代替的には、化合物(1)のうち、Rがフタルイミド残基である化合物を加水分解する工程であってもよい。
【0073】
<工程(V)>
工程(V)は、化合物(1L)をグアニジル化し、必要によりアミノ基を保護基で保護して化合物(1N)を得る工程である。
グアニジル化は、通常、グアニジル化剤との反応により行われる。グアニジル化剤の例としては、窒素系グアニジル化剤、硫黄系グアニジル化剤が挙げられる。
窒素系グアニジル化剤の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる:
【化37】
(式中、Lは、脱離基であり、R3c~R3eは、前記と同じである)。
で示される脱離基の例は、Lと同様である。
窒素系グアニジル化剤は、好ましくは、1-アミジノピラゾール塩酸塩、1-カルバミミドイル-1,2,4-トリアゾール塩酸塩、1-(N-t-ブトキシ-アミジノ)ピラゾール、1-(N-ベンジルオキシ-アミジノ)ピラゾール、1-[N,N’-(ジ-t-ブトキシ)アミジノ]ピラゾール、1-[N,N’-(ジ-ベンジルオキシ)アミジノ]ピラゾール、1,2,3-トリス(t-ブトキシカルボニル)グアニジン、又はグッドマン試薬である。
硫黄系グアニジル化剤の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる:
【化38】
(式中、R3c~R3eは、前記と同じである)。
硫黄系グアニジル化剤は、好ましくは、N,N’-ジ-t-ブトキシ-S-メチルイソチオウレア、又は1,3-ジ-t-ブトキシチオウレアである。
グアニジル化剤の使用量は、化合物(1L)1モルに対して、通常、0.5~10モル、好ましくは0.8~2.0モルである。
化合物(1L)とグアニジル化剤の反応は、好適には、溶媒の存在下で行う。
溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素系溶媒(例:ジクロロメタン)、アミド系溶媒(例:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン)、これら二種以上の混合溶媒が挙げられる。これらのうち、アミド系溶媒が好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドがより好ましい。
前記反応の反応温度は、反応が進行する限り特に制限されないが、例えば15~30℃である。
【0074】
なお、化合物(1N)のうち、R3c~R3eが水素原子である化合物又はその塩を製造する方法は、化合物(1L)を、下記式:
【化39】
(式中、Lは、ハロゲン原子であり、R3j及びR3kは、同一又は異なって、アルキル基である)
で表される2-ハロ-4,6-ジアルコキシピリミジンと反応させて、下記式(1L’):
【化40】
(式中、R3j及びR3kは、前記と同じである)
で表される化合物を得る工程、及び化合物(1L’)のピリミジン環を開裂する(又は加水分解する)工程を含む方法であってもよい。
この方法の詳細は、例えば、Tetrahedron Letters, 56, 2015, 4990~4992頁を参照することができる。
【0075】
また、化合物(1N)のうち、R3c~R3eが水素原子である化合物又はその塩を製造する方法は、化合物(1L)をO-メチルイソウレアと反応させる工程を含む方法であってもよい。
この方法の詳細は、例えば、Anal Chem., 85(18), 2013, 1~17頁を参照することができる。
【0076】
さらに、化合物(1N)のうち、R3c及びR3dが水素原子であり、R3eがベンジルオキシカルボニル基である化合物又はその塩の製造方法は、化合物(1L)を、下記式:
【化41】
(式中、M’は、アルカリ金属である)
で表される化合物及びトリアルキルシリルクロリド(例:トリメチルシリルクロリド等のトリC1-4アルキルシリルクロリド)と反応させる工程を含む方法であってもよい。
この方法の詳細は、例えば、J. Org. Chem., 76, 2011, 6967~6971頁を参照することができる。
なお、この方法により得られる、R3eがベンジルオキシカルボニル基である化合物から、常法によりベンジルオキシカルボニル基を脱保護し、R3eが水素原子である化合物を得ることができる。
【0077】
化合物(1)、(1J)、(1L)、(1M)、(1N)、(2A)、(2A’)、及び(2B)のBaseは、例えば、以下の反応スキーム2により変換することができる。
【化42】
(式中、Qは、水素原子又は置換基であり、Q及びQは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基であり(但し、Q及びQは同時に水素原子ではない)、Q~Qは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基であり、環Gは、5員又は6員の含窒素複素環であり、A、A、R、及びRは、前記と同じである)
【0078】
[反応スキーム2]
<工程(VI)>
工程(VI)は、化合物(1)、(1J)、(1L)、(1M)、(1N)、(2A)、(2A’)、及び(2B)において、Baseを「置換基を有していてもよい2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基」から「置換基を有していてもよい2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基」に変換する工程であり、工程(VIa)~工程(VIc)を含む。
<工程(VIa)>
工程(VIa)は、Baseが「置換基を有していてもよい2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基」である化合物(1O)を、式(3D)で表される化合物及びリン酸ハライドと反応させて、化合物(1P)を得る工程である。
化合物(1O)において、Qは、好ましくは水素原子又はアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子又はC1-4アルキル基である。
化合物(3D)は、好ましくは5員の含窒素複素環化合物であり、より好ましくはトリアゾールである。
化合物(3D)の使用量は、化合物(1O)1モルに対して、通常、5~20モル、好ましくは7~9モルである。
リン酸ハライドは、好ましくはリン酸トリクロリドである。
リン酸ハライドの使用量は、化合物(1O)1モルに対して、通常、1~5モル、好ましくは1~3モルである。
前記反応は、好適には、溶媒の存在下で行う。
溶媒の例としては、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル)、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン)、ハロゲン系溶媒(例:ハロアルカン)、これら二種以上の混合溶媒が挙げられる。これらのうち、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル)が好ましい。
前記反応は、好適には、塩基の存在下で行う。
塩基の例としては、無機塩基[例:アルカリ金属の炭酸塩(例:炭酸ナトリウム、炭酸セシウム)、アルカリ金属の炭酸水素塩(例:炭酸水素ナトリウム)、アルカリ土類金属の炭酸塩(例:炭酸カルシウム)、アルカリ金属の水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属の水酸化物(例:水酸化カルシウム)、金属アルコキシド(例:ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)]、有機塩基[例:第3級アミン(例:トリアルキルアミン)、環状アミン(例:4-(ジメチルアミノ)ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN))]、これらの組合せが挙げられる。これらのうち、第3級アミンが好ましく、トリC1-4アルキルアミンがより好ましい。
塩基の使用量は、化合物(1O)1モルに対して、通常、5~20モル、好ましくは10~15モルである。
前記反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されるものではないが、例えば-5℃~10℃である。
前記反応は、例えば、米国特許第5359067号明細書に記載された方法を採用することもできる。
【0079】
<工程(VIb)>
工程(VIb)は、化合物(1P)を、アンモニアと反応させて、化合物(1K)を得る工程である。
アンモニアの使用量は、化合物(1P)1モルに対して、通常、5~100モル、好ましくは20~50モルである。
前記反応は、好適には、溶媒の存在下で行う。
溶媒の例としては、アミド系溶媒(例:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン)、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、これら二種以上の混合溶媒が挙げられる。これらのうち、エーテル系溶媒が好ましく、環状エーテルがより好ましく、テトラヒドロフラン及びジオキサンから選択される少なくとも一種がさらに好ましい。
前記反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されるものではないが、例えば15~30℃である。
【0080】
<工程(VIc)>
工程(VIc)は、化合物(1K)のアミノ基を保護基で保護して、化合物(1Q)を得る工程である。前記アミノ基を保護基で保護する方法は、公知(例えば、米国特許出願公開第2007/167387号明細書)又は慣用の方法を採用することができる。
【0081】
<工程(VII)>
工程(VII)は、化合物(1)、(1J)、(1L)、(1M)、(1N)、(2A)、(2A’)、及び(2B)において、Baseを「置換基を有していてもよい2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基」から「置換基を有していてもよいプリン-9-イル基」に変換する工程である。
工程(VII)は、具体的には、Baseが「置換基を有していてもよい2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基」である化合物(1O)を、式(3E)で表される化合物と反応させて、化合物(1R)を得る工程である。
化合物(3E)の使用量は、化合物(1O)1モルに対して、通常、1~5モル、好ましくは1~3モルである。
前記反応は、好適には、ルイス酸の存在下で行う。
ルイス酸の例としては、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルが挙げられる。
ルイス酸の使用量は、化合物(1O)1モルに対して、通常、0.5~5モル、好ましくは1~3モルである。
前記反応は、好適には、シリル化剤の存在下で行う。
シリル化剤の例としては、N,O-ビス-トリメチルシリルアセトアミド(BSA)、N,O-ビス-シリルトリフルオロアセトアミド(BSTFA)、ヘキサメチルジシラザン(HMD)、N,O-ビス-ターシャリーブチルジメチルシリルアセトアミド、N-(トリメチルシリル)ジエチルアミン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン、N-メトキシ-N,O-ビス(トリメチルシリル)カルバマート、N-メチル-N-トリメチルシリルアセトアミド、N-メチル-N-トリメチルシリルヘプタフルオロブチルアミド、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、N-トリメチルシリルアセトアミド、これら二種以上の組合せが挙げられる。これらのうち、N,O-ビス-トリメチルシリルアセトアミド(BSA)が好ましい。
シリル化剤の使用量は、化合物(1O)1モルに対して、通常、1~20モル、好ましくは3~8モルである。
前記反応の反応温度は、反応が進行する限り特に制限されないが、例えば30~150℃、好ましくは50~120℃である。
前記反応は、例えば米国特許出願公開第2012/071646号明細書に記載された方法を採用することもできる。
【0082】
<工程(VIII)>
工程(VIII)は、化合物(1)、(1J)、(1L)、(1M)、(1N)、(2A)、(2A’)、及び(2B)において、Baseを「置換基を有していてもよい2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基」から「置換基を有していてもよい6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル基」に変換する工程である。
工程(VIII)は、具体的には、Baseが「置換基を有していてもよい2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル基」である化合物を、式(3F)で表される化合物と反応させて、化合物(1S)を得る工程である。
前記反応は、工程(VII)と同様の条件で行うことができる。
【0083】
化合物(1)の製造方法は、さらに必要であれば、中間生成物及び最終生成物を、常法、例えば、濃縮、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製する工程を含んでもよい。
【0084】
<<化合物(1)を含む組成物>>
本発明の組成物は、上で述べた化合物(1)を含有する。
組成物は、化合物(1)を1種類のみ含有してもよく、2種類以上を含有してもよい。例えば、組成物は、
Baseがチミン-1-イル基である化合物(1);
Baseが5-メチルシトシン-1-イル基、N-アセチル-5-メチルシトシン-1-イル基、N-イソブチリル-5-メチルシトシン-1-イル基、又はN-ベンゾイル-5-メチルシトシン-1-イル基である化合物(1);
Baseがアデニン-9-イル基、N-アセチル-アデニン-9-イル基、N-イソブチリル-アデニン-9-イル基、又はN-ベンゾイル-アデニン-9-イル基である化合物(1);及び
Baseがグアニン-9-イル基、N-アセチル-グアニン-9-イル基、N-イソブチリル-グアニン-9-イル基、N-ベンゾイル-グアニン-9-イル基、又はN-(N,N-ジメチルホルムアミジル)-グアニン-9-イル基である化合物(1)
からなる群より選択される、1種類、2種類、3種類、又は4種類の化合物を含有してもよい。
組成物の形態としては、液体が挙げられる。
組成物の形態が液体の場合、組成物は、通常、溶媒を含んでいる。溶媒としては、公知の溶媒を使用でき、好ましくは、ハロゲン化炭化水素系溶媒(例:ジクロロメタン)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル)、芳香族炭化水素系溶媒(例:トルエン、キシレン)、水、TEバッファーなどが挙げられる。これらのうち、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリルがより好ましい。
組成物は、通常は容器に収容されてユーザに提供される。
組成物は、後述のオリゴヌクレオチド又はその塩の合成に使用され得る。また、組成物は、医薬組成物として用いられ得る。
【0085】
<<オリゴヌクレオチド又はその塩>>
本発明のオリゴヌクレオチド又はその塩は、下記式(4):
【化43】
(式中、Base、A、A、X、及びRは、前記と同じである)
で表される単位を有する。
前記単位は、好ましくは、下記式(4a):
【化44】
(式中、Aは、OH又はSHであり、Base、A、A、X、及びRは、前記と同じである)
で表される単位である。
以下、式(4)又は(4a)で表される単位を有するオリゴヌクレオチド又はその塩を、「オリゴヌクレオチド(4)」と称する。
オリゴヌクレオチド(4)が、式(4)又は(4a)で表される単位を2以上有する場合、各単位の構造は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0086】
オリゴヌクレオチド(4)は、式(4)又は(4a)で表される単位に加えて、他の単位を含んでいてもよい。
他の単位の例としては、下記式(5)~(8):
【化45】
(式中、Aは、同一又は異なって、単結合又は置換基を有していてもよいアルキレン基であり、Rは、水素原子又はヒドロキシル基であり、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はアミノ基の保護基であり、Baseは、前記と同じである)
で表される単位から選択される少なくとも一種が挙げられる。
前記他の単位は、好ましくは、下記式(5a)~(8a):
【化46】
(式中、A~A10は、同一又は異なって、OH又はSHであり、Base及びAは、前記と同じである。)
で表される単位から選択される少なくとも一種が挙げられる。
なお、他の単位は、例えば、米国特許出願公開第2003/105309号明細書、米国特許出願公開第2017/044528号明細書、米国特許出願公開第2006/166908号明細書、米国特許出願公開第2012/208991号明細書、米国特許出願公開第2015/266917号明細書、米国特許出願公開第2003/207841号明細書に記載されているヌクレオチドに由来する単位であってもよい。
【0087】
オリゴヌクレオチド(4)の塩基配列は、標的DNA又は標的RNAの塩基配列(全長又はその一部)に対して相補的である限り、特に制限されない。
オリゴヌクレオチド(4)の長さは、特に限定されるものではなく、標的の塩基配列の長さに応じて選択することができる。オリゴヌクレオチド(4)の長さの下限は、例えば5mer、好ましくは10mer、さらに好ましくは15merであり、オリゴヌクレオチド(4)の長さの上限は、例えば200mer、好ましくは100mer、より好ましくは50mer、さらに好ましくは30merである。オリゴヌクレオチド(4)の長さは、例えば、5~200mer、好ましくは5~50mer、より好ましくは10~40mer、更に好ましくは15~30merである。オリゴヌクレオチド(4)の長さが長くなるほど、標的の塩基配列への結合力は強くなる。
【0088】
オリゴヌクレオチド(4)において、ヌクレオチド単位の総数に対して、式(4)で表される単位の数の割合は、特に限定されるものではなく、使用目的(プライマー、プローブ、クランプ核酸、医薬等)に応じて適宜設計することができる。
【0089】
オリゴヌクレオチド(4)は、塩の形態であってもよい。すなわち、オリゴヌクレオチド(4)を構成するヌクレオチド単位のうち、少なくとも1つのヌクレオチド単位が、塩の形態であってもよい。前記塩は、薬学上許容される塩であってもよく、薬学上許容される塩でなくてもよい。前記塩は、無機塩であってもよく、有機塩であってもよい。前記塩の例としては、化合物(1)で例示した塩と同様、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、他の金属塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、アミン塩、無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸塩が挙げられる。
【0090】
オリゴヌクレオチド(4)は、標識物質により修飾されていてもよい。標識物質としては、特に限定されるものではないが、蛍光物質、ハプテン(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、DNPなど)、放射性同位体など、核酸に付与する標識として当業界において公知の物質であり得る。
【0091】
オリゴヌクレオチド(4)は、配列特異性が高い。
オリゴヌクレオチド(4)は、一本鎖RNAに対する二重鎖形成能を表すTm値が、同じBaseのDNA(式(5)R=H)と比べて高い。
オリゴヌクレオチド(4)は、一本鎖DNAに対する二重鎖形成能を表すTm値も、同じBaseのDNA(式(5)R=H)と比べて高い。
オリゴヌクレオチド(4)は、一本鎖RNAのみならず、一本鎖DNAに対しても高い二重鎖形成能を有することができ、かかる点において従来のオリゴヌクレオチドよりも優れている。オリゴヌクレオチド(4)は、一本鎖RNA又は一本鎖DNAの塩基配列を検査したり、配列高選択的に検出するプローブとして好適に利用することができる。
【0092】
オリゴヌクレオチド(4)は、ヌクレアーゼに対して分解されにくく、生体への投与後、長く生体内に存在することができる。オリゴヌクレオチド(4)は、例えば、センスRNAと二重鎖を形成して病因となる生体内成分(タンパク質)のmRNAの転写を阻害することができる。また、オリゴヌクレオチド(4)は、感染したウイルスの増殖を阻害することもできる。
オリゴヌクレオチド(4)は、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤などの遺伝子の働きを阻害して疾病を治療する医薬として有用である。
また、オリゴヌクレオチド(4)は、安定で優れたアンチセンスもしくはアンチジーン又はアプタマーとしての活性を有し、又は特定遺伝子の検出薬もしくは増幅開始のためのプライマーとして優れた活性を有する。
オリゴヌクレオチド(4)は、各種の生理・生物活性物質、医薬品の材料、RNA干渉法やデコイ法用などの二重鎖オリゴヌクレオチドの機能性材料、cDNAなどの一本鎖核酸を標的とするDNAチップ、モレキュラービーコン(molecular beacon)などの機能性素材、様々なアンチセンス法(リボザイム、DNAザイムを含む)、アンチジーン法や遺伝子相同組み換え法用途への機能性素材、蛍光や発光物質との組合せによる生体微量成分の高感度分析用材料や遺伝子機能解明等の研究用試薬の開発素材として有用である。
【0093】
<<オリゴヌクレオチド(4)の製造方法>>
オリゴヌクレオチド(4)は、慣用の方法、例えば、ホスホロアミダイトプロトコールに従って合成することができる。
例えば、オリゴヌクレオチド(4)の製造方法は、
(I)下記式(4A):
【化47】
(式中、R2’は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヒドロキシル基の保護基、置換基を有するホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロキシホスフィニル基、又は置換基を有していてもよいヒドロキシメルカプトホスフィニル基であり、Base、A、A、X、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物又はその塩を、下記式(4B)~(8B):
【化48】
(式中、
1’は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヒドロキシル基の保護基、置換基を有するホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロキシホスフィニル基、又は置換基を有していてもよいヒドロキシメルカプトホスフィニル基であり、
及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基であり、
は、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、又はシアノアルキル基であり、
Base、A、A、A、X、R、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物又はその塩から選択される少なくとも一種と反応させる工程、及び/又は、
(II)下記式(4B):
【化49】
(式中、Base、A、A、X、R1’、R、R、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物又はその塩を、下記式(4A)~(8A):
【化50】
(式中、Base、A、A、A、X、R2’、R、R、及びRは、前記と同じである)
で表される化合物又はその塩から選択される少なくとも一種と反応させる工程、並びに(III)工程(I)及び/又は工程(II)で得られた化合物を酸化する(特に、リン原子を酸化する)工程
を含む。
オリゴヌクレオチド(4)の製造方法は、さらに必要であれば、中間生成物及び最終生成物を、常法、例えば、濃縮、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過、エタノール沈殿、分取HPLC等により精製する工程を含む。
【0094】
<<オリゴヌクレオチド(4)を含む組成物>>
本発明の組成物は、上で述べたオリゴヌクレオチド(4)を含有する。
組成物は、オリゴヌクレオチド(4)を1種類のみ含有してもよく、2種類以上を含有してもよい。
組成物の形態としては、液体、固体が挙げられる。
組成物の形態が液体の場合、組成物は、通常、溶媒を含んでいる。溶媒としては、公知の溶媒を使用でき、好ましくは、ハロゲン化炭化水素系溶媒(例:ジクロロメタン)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル)、芳香族炭化水素系溶媒(例:トルエン、キシレン)、水が挙げられる。これらのうち、水がより好ましく、バッファーを含有する水(緩衝液)がより好ましい。バッファーの例としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris緩衝液)、トリスヒドロキシメチルアミノメタン-塩酸(Tris-HCl緩衝液)、トリスヒドロキシメチルアミノメタン-EDTA(TE緩衝液)、リン酸ナトリウム、2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミン塩酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-メタンスルホン酸(TES)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシンが挙げられる。
組成物は、さらに塩を含有していてもよい。塩は、金属塩化物を包含し、その例としては、NaCl、MgCl、KClが挙げられる。
組成物は、さらに添加物及び共溶媒を含有していてもよい。その例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ホルムアミド、ウシ血清アルブミン、硫酸アンモニウム、ポリエチレングリコール(PEG)、ゼラチン、非イオン性界面活性剤を含有していてもよい。非イオン性界面活性剤の例としては、Tween20(登録商標)、Triton X-100(登録商標)が挙げられる。
組成物の形態が固体の場合、組成物は、例えば、オリゴヌクレオチド(4)を固相担体に担持させたものであってもよい。固相担体には、生体高分子を担持させることのできる無機材料や有機材料が挙げられる。好ましくはガラス(例:多孔質ガラス(CPG))、シリカゲル、樹脂(例:架橋した非膨潤性のポリスチレン樹脂(HPS))が挙げられる。これらのうち、HPSやCPGがより好ましい。
組成物は、通常は容器に収容されてユーザに提供される。
組成物は、後述の標的核酸の検出、ストランドインベージョンなどに使用され得る。また、組成物は、医薬組成物として用いられ得る。
【0095】
<<検査試料における標的核酸を検出する方法>>
本発明は、検査試料において標的核酸を検出する方法を含む。この方法は、
(I)前記標的核酸の標的部位を含む塩基配列(標的核酸の全長の塩基配列を含む)を、クランプ核酸を用いる核酸増幅法によって、選択的に増幅させる工程であって、前記クランプ核酸がオリゴヌクレオチド(4)である工程、及び
(II)前記増幅された塩基配列を検出する工程
を含む。
【0096】
検査試料は、核酸を含むものであれば、特に限定されない。検査試料は、典型的には、生体から採取された試料である。通常は、生体から採取された試料から夾雑物の除去、核酸の抽出・精製、プレアンプリフィケーションなどの前処理により得られる試料が用いられる。具体的には、血液、血漿、血清、胸水、気管支洗浄液、骨髄液、リンパ液、尿、糞便、腸管洗浄液、切除組織などを用いることができる。またこれらに上記の前処理を行った試料を用いることもできる。本発明の方法は、非常に高感度で核酸の変異を検出し得るため、例えば、病変部位から試料が直接採取される固体試料(例:癌)を用いることも、検査対象試料が微量しか含まれない液体試料(例:血液)を用いることも可能である。検査試料は標的核酸を含む溶液であることが好ましい。血液や切除組織に含まれる細胞内の標的核酸を検出する場合は、公知の方法により細胞の可溶化を行ってもよい。
【0097】
標的核酸は、DNAであってもRNAであってもよいが、好ましくはDNAである。標的核酸は、遺伝子、遺伝子のプロモータ領域などゲノムDNA上の特定の領域であり得る。本発明の検出方法は、標的部位における変異、多型等の検出に用いられ得る。また、本発明の検出方法は対立遺伝子の決定に用いられ得る。検査試料にどのような型の対立遺伝子が含まれるかを検出することができる。また、本発明の検出方法は、メチル化の検出にも用いられ得る。標的核酸をバイサルファイト処理した後、本発明の検出方法を適用することにより、標的核酸におけるメチル化シトシンの存否を検出することができる。
変異を含む遺伝子(以下、変異型遺伝子)は、野生型遺伝子の塩基配列との相違、即ち変異を有する。当該相違は、置換、挿入、欠失、逆位、重複、及び転座からなる群から選択される1つ以上の変異又はそれらの組合せに起因するものである。
当該相違は、通常、特定の疾患の発症及び/又は治療感受性に関連する場合がある。ここで、「発症」とは、疾患の実際の発症のみならず、発症リスクなども含む。また、「治療感受性」とは、薬物などによる治療の奏効率のみならず、副作用の強弱なども含む。上記疾患としては、例えば、癌、骨髄異形成症候群、感染症などが挙げられるが、これらに限定されない。上記疾患の好適な例は、癌である。
前記遺伝子の好適な例は、ABL/BCR融合遺伝子、HER2遺伝子、EGFR遺伝子、c-KIT遺伝子、KRAS遺伝子、BRAF遺伝子、PIK3CA遺伝子、FLT3遺伝子、MYC遺伝子、MYCN遺伝子、MET遺伝子、BCL2遺伝子、又はEML4/ALK融合遺伝子である。
【0098】
クランプ核酸は、通常、標的核酸(例:変異型遺伝子)に比べて、検査試料中の非標的核酸(例:野生型遺伝子)をより強くクランプする。クランプ核酸が非標的核酸に強く結合し、非標的核酸の増幅が阻害されることによって、標的核酸を選択的に増幅することができる。例えば、特定の遺伝子の変異を検出する場合、野生型の遺伝子配列に完全に相補的な塩基配列を有するクランプ核酸の存在下で核酸増幅を行うことにより、野生型の核酸の増幅が阻害され、変異型の核酸が選択的に増幅される。
具体的には、例えば、標的核酸の標的部位を変異型遺伝子の変異箇所とし、この変異箇所(標的核酸の標的部位)を含む塩基配列を「配列A」とするとき、クランプ核酸は、非標的核酸である野生型遺伝子における配列Aに相応する塩基配列に対して完全に相補的である。
オリゴヌクレオチド(4)は、配列高選択性を有する。したがって、クランプ核酸は、1塩基でも相違する塩基配列に対する結合能は極めて弱く、完全に相補的な塩基配列には特異的に結合し得る。また、オリゴヌクレオチド(4)は、Tm値が高く、安定した二重鎖を形成する。すなわち、クランプ核酸は、非標的核酸と特異的に強く結合し、高いクランプ能力を発揮する。
クランプ核酸の長さは、特に限定されるものではないが、例えば5~30merである。
【0099】
核酸増幅法としては、標的部位を増幅でき、かつクランプ核酸の結合により前記増幅を選択的に阻害できるものである限り、特に制限されない。核酸増幅法の例としては、PCR法(ホットスタートPCR法、マルチプレックスPCR法、ネステッドPCR法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、デジタルPCR法などを含む)、NASBA法(米国特許第5130238号明細書参照)、TMA法(米国特許第5399491号明細書参照)、TRC法(米国特許出願公開第2001/0053518号明細書参照)、LAMP法(米国特許第6410278号明細書参照)、ICAN法(米国特許出願公開第2003/073081号明細書参照)、LCR法(欧州特許出願番号320328号参照)、SDA法(米国特許第5455166号明細書参照)が挙げられる。
【0100】
増幅された標的核酸を検出する方法としては、任意の方法を用いることができる。
検出方法の好適な例は、標的核酸の標的部位(例えば、変異型遺伝子の変異箇所)を含む塩基配列に相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸である検出用プローブを用いる方法である。具体的な方法としては、例えばサザンハイブリダイゼーション法、TaqManTMプローブ法、サイクリングプローブ法が挙げられる。
検出用プローブの好適な例は、一方の末端(通常、5’末端)を蛍光基(レポーター)で、他方の末端(通常、3’末端)を消光基で標識した加水分解プローブである。このプローブを用いると、PCRにおいてDNAポリメラーゼによる伸長反応が進むと、そのエキソヌクレアーゼ活性により蛍光プローブが加水分解され、レポーター色素が遊離し、蛍光を発する。この蛍光強度をモニタリングすることにより、核酸を定量することができる。
また、増幅された標的核酸を検出する方法として、塩基配列解析法が例示される。増幅された標的核酸の塩基配列を公知の配列解析装置(シーケンサー)を用いて解析することにより、標的核酸を検出することができる。
【0101】
なお、検査試料における標的核酸を検出する方法は、例えば米国特許出願公開第2015/240299号明細書に記載の方法を採用することもできる。
【0102】
このように、オリゴヌクレオチド(4)を用いれば、検査試料において標的核酸を配列高選択的に検出することが可能である。
【0103】
<<検査試料における標的核酸を検出する、又は検査試料における標的核酸の標的部位を含む塩基配列を選択的に増幅するための組成物及びキット>>
検査試料における標的核酸を検出する、又は検査試料における標的核酸の標的部位を含む塩基配列を選択的に増幅するための組成物(以下、「検査用組成物」と称する)は、オリゴヌクレオチド(4)を含む。オリゴヌクレオチド(4)は、通常、組成物の形態でキットに含まれる。
検査用組成物において、オリゴヌクレオチド(4)は、上で述べたとおり、標的核酸検出におけるプライマー、プローブ、及び/又はクランプ核酸として用いられ得る。プライマー、プローブ、及び/又はクランプ核酸は、標的核酸や非標的核酸の塩基配列に応じて適宜設計することができる。
一実施形態の検査用組成物は、プライマー及びプローブを含む。これらのうち少なくともいずれかが、オリゴヌクレオチド(4)である。プライマー及びプローブは同じ容器に収容されていてもよいし、別々の容器に収容されていてもよい。
図11(A)は、検査用組成物であるプライマー及びプローブが同じ容器に収容されたキットの一例の模式図である。キット11は、外装箱12と、外装箱12内に設けられ、表面に凹部が形成された容器支持体と、凹部に装着され、プライマー及びプローブが収容された容器13と、添付文書14とを含む。添付文書14には、キット11の取り扱い方法、保管条件、使用期限などを記載しておくことができる。
図11(B)は、検査用組成物であるプライマー及びプローブが別々の容器に収容されたキットの一例の模式図である。キット21は、外装箱22と、外装箱22内に設けられ、表面に長手方向に沿って間隔をおいて第1の凹部及び第2の凹部が形成された容器支持体と、第1の凹部に装着され、プライマーが収容された容器23aと、第2の凹部に装着され、プローブが収容された容器23bと、添付文書24とを含む。
別の実施形態の検査用組成物は、フォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブを含む。これらのうち少なくともいずれかが、オリゴヌクレオチド(4)である。フォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブは、3種類全てが同じ容器に収容されていてもよいし(例:図11(A)に示されるようなキット)、いずれか2種類が同じ容器に収容されていてもよいし(例:図11(B)に示されるようなキット)、3種類全てが別々の容器に収容されていてもよい。
図11(C)は、フォワードプライマー、リバースプライマー及びプローブの全てが別々の容器に収容されたキットの一例の模式図である。キット31は、外装箱32と、外装箱32内に設けられ、表面に長手方向に沿って間隔をおいて第1~第3の凹部が形成された容器支持体と、第1の凹部に装着され、フォワードプライマーが収容された容器33aと、第2の凹部に装着され、リバースプライマーが収容された容器33bと、第3の凹部に装着され、プローブが収容された容器33cと、添付文書34とを含む。
また別の実施態様の検査用組成物は、クランプ核酸及びプライマーを含む。これらのうち少なくともいずれかが、オリゴヌクレオチド(4)である。この検査用組成物は、標的核酸のみを増幅するための検査用組成物であり得る。クランプ核酸及びプライマーは、同じ容器に収容されていてもよいし(例:図11(A)に示されるようなキット)、別々の容器に収容されていてもよい(例:図11(B)に示されるようなキット)。
さらに別の実施形態の検査用組成物は、クランプ核酸、プライマー及びプローブを含む。これらのうち少なくともいずれかが、オリゴヌクレオチド(4)である。クランプ核酸、プライマー及びプローブは、3種類全てが同じ容器に収容されていてもよいし(例:図11(A)に示されるようなキット)、いずれか2種類が同じ容器に収容されていてもよいし(例:図11(B)に示されるようなキット)、3種類全てが別々の容器に収容されていてもよい(例:図11(C)に示されるようなキット)。
キットには、DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、リアクションバッファー、塩、制限酵素等が含まれていてもよい。
本発明は、検査試料における標的核酸を検出する、又は検査試料における標的核酸の標的部位を含む塩基配列を選択的に増幅するための、オリゴヌクレオチド(4)の使用を含む。ここで使用されるオリゴヌクレオチド(4)は、例えば、検査用組成物に含有されるオリゴヌクレオチド(4)と同じ特徴を有する。
【0104】
<<二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレオチドを鎖侵入させるための組成物>>
本発明は、二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレチドを鎖侵入させるための組成物(以下、「ストランドインベージョン用組成物」と称する)を含む。
ストランドインベージョン用組成物は、前記標的部位の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(4)を含有する。
ストランドインベージョン用組成物は、オリゴヌクレオチド(4)を1種類のみ含有してもよく、2種類以上を含有してもよい。一実施形態では、2種類以上のオリゴヌクレオチド(4)は、いずれも、二重鎖DNAの一方の鎖にハイブリダイズする。別の実施形態では、2種類以上のオリゴヌクレオチド(4)は、二重鎖DNAの一方の鎖にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと、二重鎖DNAの他方の鎖にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとを含む。オリゴヌクレオチド(4)を2種類以上用いることにより、ストランドインベージョンをより一層増強させることができる。
ストランドインベージョン用組成物は、さらに一本鎖DNA結合タンパク質を含有してもよい。しかし、本発明のオリゴヌクレオチド(4)を使用すれば、一本鎖DNA結合タンパク質を含有しなくても、ストランドインベージョンを起こすことが、後述の実験により初めて見出された。したがって、ストランドインベージョン用組成物が、一本鎖DNA結合タンパク質を含有しない態様も好ましい。
ストランドインベージョン用組成物は、バッファーを含有する水(又は緩衝液)、塩、添加物、及び共溶媒から選択される少なくとも一種を含有していてもよい。これらの各成分は、「オリゴヌクレオチド(4)を含む組成物」で例示したものを使用することができる。
ストランドインベージョン用組成物において、オリゴヌクレオチド(4)の濃度は、オリゴヌクレオチド(4)や標的の二重鎖DNAの配列やヌクレオチド長を考慮し、当業者が適宜調整することができる。さらにインビトロでストランドインベージョン反応を行う場合は、サンプル中の標的二重鎖DNAの濃度等を考慮し得る。インビボでストランドインベージョン反応を行う場合は、生体内におけるオリゴヌクレオチド(4)の動態(具体的には、血中濃度、血中半減期など)を考慮し得る。ストランドインベージョン用組成物におけるオリゴヌクレオチド(4)の濃度の下限は、例えば50nM、好ましくは100nMであり、オリゴヌクレオチド(4)の濃度の上限は、例えば3000nM、好ましくは2500nM、より好ましくは2000nM、さらに好ましくは1500nM、特に好ましくは1000nmである。オリゴヌクレオチド(4)の濃度は、例えば50~2000nMであり、好ましくは100~1000nMである。
オリゴヌクレオチド(4)は、配列高選択性を有する。したがって、ストランドインベージョン用組成物は、相補的な塩基配列を有する標的部位の塩基配列にのみ特異的に結合し得る。また、オリゴヌクレオチド(4)は、Tm値が高く、標的部位の塩基配列と強く結合して安定したストランドインベージョンを形成する。さらに、オリゴヌクレオチド(4)は、ヌクレアーゼに対して分解されにくい。したがって、オリゴヌクレオチド(4)は、ストランドインベージョン用組成物に好適に利用することができる。
本発明は、二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレチドを鎖侵入させるための、オリゴヌクレオチド(4)の使用を含む。ここで使用されるオリゴヌクレオチド(4)は、例えば、前記ストランドインベージョン用組成物に含有されるオリゴヌクレオチド(4)と同じ特徴を有する。
【0105】
<<二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレオチドを鎖侵入させる方法>>
本発明は、単離された二重鎖DNAの標的部位にオリゴヌクレオチドを鎖侵入させる方法(以下、「ストランドインベージョン法」と称する)を含む。
ストランドインベージョン法は、二重鎖DNAの標的部位の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(4)と二重鎖DNAとを混合する工程を含む。
前記混合工程は、一実施態様において、オリゴヌクレオチド(4)と二重鎖DNAとを、一本鎖DNA結合タンパク質の存在下で混合する工程である。
この工程は、バッファー及び/又は塩の存在下で行ってもよい。前記バッファー及び塩は、例えば、「オリゴヌクレオチド(4)を含む組成物」で記載したものから選択することができる。
【0106】
前記混合工程は、一本鎖DNA結合タンパク質の非存在下で実施することもできる。すなわち、ストランドインベージョン法は、他の実施態様において、オリゴヌクレオチド(4)と二重鎖DNAとを、一本鎖DNA結合タンパク質の非存在下で混合して混合物を調製する工程、及び前記混合物を加熱する工程を含む。
一本鎖DNA結合タンパク質の非存在下での混合工程は、バッファー及び/又は塩の存在下で行ってもよい。前記バッファー及び塩は、例えば、ストランドインベージョン用組成物で記載したものから選択することができる。
混合物の加熱工程において、加熱温度は、例えば、75℃を超える範囲から選択できる。加熱温度の下限は、好ましくは80℃、より好ましくは85℃、さらに好ましくは90℃であり、加熱温度の上限は、好ましくは100℃である。加熱温度は、好ましくは80~100℃、さらに好ましくは85~100℃、特に好ましくは90~100℃である。加熱時間は、特に限定されるものではない。加熱時間の下限は、例えば7分、好ましくは8分、さらに好ましくは9分、特に好ましくは10分であり、加熱時間の上限は、例えば12時間、好ましくは6時間、より好ましくは3時間、さらに好ましくは1時間、特に好ましくは30分である。加熱温度は、例えば7分~12時間、好ましくは8分~6時間、さらに好ましくは9分~1時間、特に好ましくは10分~30分である。
この方法は、さらに加熱された混合物を冷却する工程を含んでいてもよい。前記冷却において、冷却到達温度の下限は、例えば30℃、好ましくは35℃、より好ましくは40℃、さらに好ましくは45℃であり、冷却到達温度の上限は、好ましくは60℃である。冷却到達温度は、例えば、30~60℃、好ましくは40~60℃、更に好ましくは45~60℃である。冷却速度は、特に限定されるものではない。冷却速度の下限は、例えば1℃/分、好ましくは2℃/分であり、冷却速度の上限は、例えば10℃/分、好ましくは9℃/分、さらに好ましくは8℃/分である。冷却速度は、例えば1~10℃/分、好ましくは2~8℃/分である。
【0107】
ストランドインベージョン法は、別の実施態様において、オリゴヌクレオチド(4)と二重鎖DNAとを、一本鎖DNA結合タンパク質の非存在下で混合して混合物を調製する工程、及び前記混合物を25~75℃に維持する工程を含む。
一本鎖DNA結合タンパク質の非存在下での混合工程は、前記と同様、バッファー及び/又は塩の存在下で行ってもよい。前記バッファー及び塩は、例えば、ストランドインベージョン用組成物で記載したものから選択することができる。
混合物を所定の温度範囲に維持する工程において、維持時間は、特に限定されるものではない。維持時間の下限は、例えば2時間、好ましくは4時間、さらに好ましくは6時間であり、維持時間の上限は、例えば60時間、好ましくは48時間、さらに好ましくは24時間である。維持時間は、例えば2~60時間、好ましくは4~48時間、更に好ましくは6~24時間である。
このように、オリゴヌクレオチド(4)を用いれば、一本鎖DNA結合タンパク質が存在するか否かにかかわらず幅広い温度範囲においてストランドインベージョンを生じさせることが可能である。
【0108】
<医薬組成物(又は製剤)>
本発明の医薬組成物(又は製剤)は、化合物(1)又はオリゴヌクレオチド(4)を含んでいる。化合物(1)を含む医薬組成物(又は製剤)としては、例えば、核酸系逆転写酵素阻害剤(Nucleoside Analogue Reversetranscriptase Inhibitor:NRTI)であるAZT(azidothymidine)などの低分子医薬品が挙げられる。オリゴヌクレオチド(4)を含む医薬組成物(又は製剤)としては、例えば、アンチセンス、siRNA(small interfering RNA)、アプタマー、デコイ核酸、CpGオリゴなどの中分子、あるいは高分子の核酸医薬品が挙げられる。
医薬組成物は、液状製剤(例:注射剤、点眼剤、点鼻剤、懸濁剤)、固形製剤(例:錠剤、顆粒剤、散剤)、半固形製剤(例:軟膏剤、坐剤)、その他当業者に公知の製剤形態のいずれであってもよい。
医薬組成物の好適な例は、非経口投与製剤(例:皮下投与剤、静脈内投与剤、経鼻腔投与剤、髄腔内投与剤、脳室内投与剤、硝子体投与剤)である。
医薬組成物の他の好適な例は、局所用製剤である。
医薬組成物は、通常、さらに薬学上許容される担体又は添加剤を含んでいる。
担体は、固体担体及び液体担体を包含する。固体担体の例としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアガム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸が挙げられる。液体担体の例としては、水(生理食塩水を含む)が挙げられる。
添加剤は、安定剤を包含し、その例としては、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;ベンジルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾール等のフェノール類)が挙げられる。
オリゴヌクレオチド(4)は、配列高選択性を有し、Tm値が高く、ヌクレアーゼに対して分解されにくい。したがって、化合物(1)又はオリゴヌクレオチド(4)を含んだ医薬組成物(又は製剤)は、体内においてターゲット(例:標的遺伝子)を配列高選択的に捉えて作用し得る。
【実施例
【0109】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
<<化合物(1)の合成例>>
合成例における記号及び略号は、以下のとおりである。
Bz:ベンゾイル
DMTr:ジメトキシトリチル
Ph:フェニル
i-Pr:イソプロピル
Ts:トシル
BSA:N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:ジメチルアミノピリジン
DMF:ジメチルホルムアミド
PPh:トリフェニルホスフィン
EtN:トリエチルアミン
MeOH:メタノール
TBAF:フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム
TFA:トリフルオロメチルカルボニル
TFAA:無水トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TMSOTf:トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル
rt:室温
d:日
h:時間
min:分
【0111】
[合成例1]
Baseがチミン-1-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがトリフルオロメチルカルボニルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物AP-T-6」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【0112】
【化51】
【0113】
(化合物AP-T-1の合成)
窒素気流下、化合物T-1(4.72 g, 8.93 mmol)をトルエン(80 mL)に溶解し、トリエチルアミン(7.5 mL, 53.58 mmol)、3-ブロモ-1-プロパノール(3.5 mL, 40.19 mmol)を室温で順次加え、100°Cで12時間攪拌した。反応液を冷却し飽和重曹水で反応を停止させた後、酢酸エチル、水で希釈をおこない、有機層と水層にそれぞれ分画した。水層は酢酸エチルで逆抽出をおこなった。最初の分画で得られた有機層と逆抽出で得られた有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:3)によって精製し、化合物AP-T-1(4.15 g, 収率76%)を白色固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 0.94-1.12 (28H, m), 1.79-1.87, 1.96-2.03 (2H, m), 1.92(3H, d, J=1 Hz), 2.37 (1H, t, J=5 Hz), 2.65, 2.97 (2H, ABq, J=11 Hz), 2.86-2.93, 3.05-3.12 (2H, m), 3.67, 4.04 (2H, ABq, J=13 Hz), 3.76-3.83 (2H, m), 3.97 (1H, d, J=3 Hz), 4.35 (1H, d, J=3 Hz), 6.21 (1H, s), 7.70 (1H, d, J=2 Hz), 8.70 (1H, s).
【0114】
(化合物AP-T-2の合成)
窒素気流下、化合物AP-T-1(4.13 g, 7.05 mmol)を塩化メチレン(43 mL)に溶解し、p-トルエンスルホニルクロリド(1.59 g, 8.36 mmol)、トリエチルアミン(1.7 mL, 12.36 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.177 g, 1.45 mmol)を氷冷下で順次加え、室温で4時間攪拌した。反応液を冷却し飽和重曹水で反応を停止させた後、塩化メチレン、水で希釈をおこない有機層と水層にそれぞれ分画した。水層は酢酸エチルで逆抽出をおこなった。最初の分画で得られた有機層、逆抽出で得られた有機層それぞれを飽和食塩水で洗浄した後、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:2)によって精製し、化合物AP-T-2(4.65 g, 88%)を白色泡状固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 0.94-1.12 (28H, m), 1.92 (3H, d, J=1 Hz), 1.95-1.99, 2.06-2.15 (2H, m), 2.42 (3H, s), 2.48, 2.93 (2H, ABq, J=11 Hz), 2.77-2.84, 2.86-2.91 (2H, m), 3.65, 4.02 (2H, ABq, J=13 Hz), 3.93 (1H, d, J=3 Hz), 4.10-4.15, 4.18-4.24 (2H, m), 4.25 (1H, d, J=3 Hz), 5.97 (1H, s), 7.32-7.34 (2H, m), 7.78-7.80(2H, m), 7.70 (1H, d, J=1 Hz), 8.30 (1H, s).
【0115】
(化合物AP-T-3の合成)
窒素気流下、化合物AP-T-2(4.65 g, 6.28 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(49 mL)に溶解し、アジ化ナトリウム(0.52 g, 7.94 mmol)を室温で加え、90°Cで2時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水で反応を停止させた後、酢酸エチル、水で希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1~2:1)によって精製し、化合物AP-T-3(3.38 g, 83%)を白色泡状固体として得た。
1H NMR(CDCl3)δ 0.91-1.12 (28H, m), 1.80-1.93, 1.99-2.09 (2H, m), 1.89(3H, d, J=2 Hz), 2.59, 2.97 (2H, ABq, J=11 Hz), 2.76-2.83, 2.92-2.99 (2H, m), 3.35-3.49 (2H, m), 3.64, 4.02 (2H, ABq, J=13 Hz), 3.96 (1H, d, J=3 Hz), 4.32 (1H, d, J=3 Hz), 6.20 (1H, s), 7.68 (1H, d, J=1 Hz), 8.33 (1H, s).
【0116】
(化合物AP-T-4の合成)
窒素気流下、化合物AP-T-3(3.40 g, 5.57 mmol)をテトラヒドロフラン(48 mL)に溶解し、トリフェニルホスフィン(3.74 g, 14.26 mmol)を加え、室温で14.5時間攪拌をおこなった。続いて反応液に水(3 mL)を室温で加えてさらに3時間攪拌した。得られた反応液の減圧留去をおこなうことにより中間体を得た。得られた中間体をピリジン:トルエン=1:1の混合溶液、ピリジンで順次共沸脱水をおこなった後、窒素気流下、ピリジン(48 mL)に溶解し、無水トリフルオロ酢酸(2.1 mL, 14.90 mmol)を氷冷下で加え、室温で2.5時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水で反応を停止させた後、酢酸エチル、水で希釈をおこない有機層、水層をそれぞれ分画した。水層は酢酸エチルで逆抽出をおこない、最初の分画で得られた有機層、逆抽出で得られた有機層それぞれを飽和食塩水で洗浄した後、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1~3:2)によって精製し、化合物AP-T-4(3.53 g, 93%)を淡黄色固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 0.94-1.12 (28H, m), 1.83-1.89, 2.01-2.12 (2H, m), 1.92 (3H, d, J=1 Hz), 2.60, 2.98 (2H, ABq, J=11 Hz), 2.73-2.82, 3.02-3.08 (2H, m), 3.48-3.55 (2H, m), 3.67, 4.04 (2H, ABq, J=13 Hz), 3.97 (1H, d, J=3 Hz), 4.33 (1H, d, J=3 Hz), 6.22 (1H, s), 7.40 (1H, m), 7.69 (1H, d, J=1 Hz), 9.24 (1H, s).
【0117】
(化合物AP-T-5の合成)
化合物AP-T-4(3.53 g, 5.17 mmol)をテトラヒドロフラン(47 mL)に溶解し、酢酸(0.49 mL, 8.54 mmol)、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 12.0 mL, 12.0 mmol)を順次加え、室温で20分間攪拌した。得られた反応液の減圧留去をおこない、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=20:1~10:1)により反応残渣を取り除き、中間体を得た。得られた中間体をピリジンで共沸乾燥をおこない、窒素気流下、ピリジン(30 mL)に溶解させた。4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(2.50 g, 7.40 mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。反応液を冷却し、冷水で反応を停止させた後、酢酸エチルで希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:3)によって精製し、化合物AP-T-5(3.91 g, 92%)を黄色泡状固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 1.47 (3H, s), 1.82-1.91, 1.99-2.08 (2H, m), 2.62 (1H, d, J=8 Hz), 2.70-2.78, 2.94-3.02 (2H, m), 2.76, 2.86 (2H, ABq, J=12 Hz), 3.33, 3.39 (2H, ABq, J=11 Hz), 3.46-3.51 (2H, m), 4.26 (1H, d, J=8 Hz), 4.38 (1H, br), 6.09 (6H, s), 6.33 (1H, s), 6.85 (4H, d, J=8 Hz), 7.22-7.46 (10H, m), 7.74 (1H, s), 9.22 (1H, s).
【0118】
(化合物AP-T-6の合成)
窒素気流下、化合物AP-T-5(3.90 g, 5.26 mmol)をアセトニトリルで共沸乾燥をおこない、アセトニトリル(47 mL)に溶解させた。4,5-ジシアノイミダゾール(0.69 g, 5.85 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(2.5 mL, 7.45 mmol)を氷冷下で順次加え、室温で3.5時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水で反応を停止させた後、酢酸エチル、水で希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2~1:2)によって精製し、化合物AP-T-6(4.02 g, 80%)を白色泡状固体として得た。31P NMR(CDCl3)δ 149.4, 150.1.
HRMS(MALDI): calcd for C46H56F3N6NaO10P [M+Na+] 963.3640, found 963.3656
【0119】
(化合物AP-T-7の合成)
化合物T-1(6.70 g, 12.7 mmol)のトルエン溶液(80 mL)にN-(3-ブロモプロピル)フタルイミド(15.3 g, 57.0 mmol)、トリエチルアミン(12.4 mL, 89.2 mmol)を室温で加え、100℃に昇温し、2日間撹拌した。氷冷下で水を加えた後、酢酸エチルにて抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1~2:1)により精製し、化合物AP-T-7(7.68 g, 85%)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl3) δ 0.95-1.11 (28H, m), 1.91(3H, s), 1.95-2.16 (2H, m), 2.58 (1H, d, J = 11 Hz), 2.68-2.75 (1H, m), 2.93 (1H, d, J = 11 Hz), 2.99-3.05 (1H, m), 3.65 (1H, d, J = 13 Hz), 3.77-3.87 (2H, m), 3.94 (1H, d, J = 3 Hz), 4.03 (1H, d, J = 13 Hz), 4.32 (1H, d, J = 3 Hz), 6.16(1H, s), 7.68-7.71 (3H, m), 7.81-7.86 (2H, m), 8.25 (1H, brs).
【0120】
(化合物AP-T-4の合成(化合物AP-T-7経由))
化合物AP-T-7(100 mg, 0.14 mmol)のメタノール溶液(2 mL)にヒドラジン一水和物(0.016 mL, 0.33 mmol)を加えて、室温で一晩撹拌した。その後、ヒドラジン一水和物(0.008 mL, 0.16 mmol)を加えて、室温で3日間撹拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣にジクロロメタンを加え、不溶物を濾別した。濾液を減圧留去した後の残渣をピリジン(3 mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸無水物(0.045 mL, 0.32 mmol)を氷冷下で加えて、室温で1時間40分撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1~3:2)により精製し、化合物AP-T-4(82.9 mg, 87%)を白色固体として得た。
【0121】
[合成例2]
BaseがN-ベンゾイル-5-メチルシトシン-1-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがトリフルオロメチルカルボニルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物AP-C-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化52】
【0122】
(化合物AP-C-1の合成)
窒素気流下、化合物AP-T-4(0.34 g, 0.50 mmol)をアセトニトリル(4.3 mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.88 mL, 6.34 mmol)、1,2,4-トリアゾール(0.29 g, 4.22 mmol)、塩化ホスホリル(99 μL, 1.06 mmol)を氷冷下で順次加え、氷冷下で2時間攪拌した。反応液を飽和重曹水で反応を停止させた後、酢酸エチル、水で希釈をおこない有機層と水層にそれぞれ分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去することにより中間体を得た。得られた中間体を1,4-ジオキサン(4.4 mL)に溶解し、28%アンモニア水(1.1 mL)を加え、室温下で1.5時間攪拌した。得られた反応液の減圧留去をおこなうことにより中間体を得た。得られた中間体をトルエンで共沸脱水をおこなった後、窒素気流下、塩化メチレン(4.3 mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.14 mL, 1.06 mmol)、塩化ベンゾイル(0.11 mL, 0.95 mmol)を氷冷下で順次加え、室温下で11時間攪拌をおこなった。反応液を飽和重曹水で反応を停止させた後、塩化メチレン、水で希釈をおこない有機層と水層にそれぞれ分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1~3:3)によって精製し、化合物AP-C-1(0.29 g, 74%)を黄色泡状固体として得た。
1H NMR(CDCl3)δ 0.95-1.12 (28H, m), 1.84-1.95, 2.00-2.09 (2H, m), 2.13 (3H, d, J=1 Hz), 2.61, 2.99 (2H, ABq, J=11 Hz), 2.74-2.83, 3.00-3.09 (2H, m), 3.49-3.56 (2H, m), 3.68, 4.07 (2H, ABq, J=13 Hz), 3.99 (1H, d, J=3 Hz), 4.39 (1H, d, J=3 Hz), 6.20 (1H, s), 7.01 (1H, m), 7.42-7.47 (2H, m), 7.51-7.57 (1H, m), 7.90 (1H, d, J=1 Hz), 8.30-8.33 (2H, m), 13.46 (1H, s).
【0123】
(化合物AP-C-2の合成)
化合物AP-C-1(1.98 g, 2.47 mmol)をテトラヒドロフラン(20 mL)に溶解し、酢酸(0.20 mL, 3.57 mmol)、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 5.4 mL, 5.4 mmol)を順次加え、室温で20分間攪拌した。得られた反応液の減圧留去をおこない、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=80:1~60:1)により反応残渣を取り除き、中間体を得た。得られた中間体をピリジンで共沸乾燥をおこない、窒素気流下、ピリジン(25 mL)に溶解させた。4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.21 g, 3.57 mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水で反応を停止させた後、水、酢酸エチルで希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1~1:1)によって精製し、化合物AP-C-2(1.64 g, 79%)を黄色泡状固体として得た。
1H NMR(CDCl3)δ 1.64 (3H, s), 1.81-1.91, 1.98-2.08 (2H, m), 2.51 (1H, d, J=9 Hz), 2.70-2.77, 2.94-3.02 (2H, m), 2.77, 2.86 (2H, ABq, J=12 Hz), 3.34, 3.42 (2H, ABq, J=11 Hz), 3.47-3.56 (2H, m), 3.80 (6H, d=1 Hz), 4.28 (1H, dd, J=3,9 Hz), 4.43 (1H, d, J=3 Hz), 6.33 (1H, s), 6.84-6.88 (5H, m), 7.23-7.48 (11H, m), 7.50-7.56 (1H, m), 7.95 (1H, s), 8.28-8.30 (2H, m), 13.45 (1H, brs).
【0124】
(化合物AP-C-3の合成)
窒素気流下、化合物AP-C-2(8.49 g, 5.26 mmol)をアセトニトリルで共沸乾燥をおこない、アセトニトリル(95 mL)に溶解させた。4,5-ジシアノイミダゾール(1.32 g, 11.17 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(4.0 mL, 12.18 mmol)を順次加え、室温で1.5時間攪拌した。反応液を冷却し、水で反応を停止させた後、酢酸エチルで希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物AP-C-3(8.31 g, 86%)を黄色泡状固体として得た。
31P NMR(CDCl3)δ 148.9, 149.6.
HRMS(MALDI): calcd for C53H61F3N7NaO10P [M+Na+] 1066.4062, found 1066.4037
【0125】
[合成例3]
BaseがN-ベンゾイル-アデニン-9-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがトリフルオロメチルカルボニルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物AP-A-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化53】
【0126】
(化合物AP-A-1の合成)
窒素気流下、化合物AP-T-4(4.80 g, 7.05 mmol)をトルエン(75 mL)に溶解し、N6-ベンゾイルアデニン(2.78 g, 11.63 mmol)、N,O-ビストリメチルシリルアセトアミド(9.0 mL, 36.35 mmol)を順次加え、90°Cで0.5時間攪拌した。続いてトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(2.0 mL, 11.63 mmol)を加えて90°Cで1時間攪拌した。反応液を冷却し飽和重曹水で反応を停止させた後、酢酸エチル、水で希釈をおこない、反応液をセライト濾過して濾液を回収した。回収した濾液を有機層と水層にそれぞれ分画し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:2)によって精製し、化合物AP-A-1(5.06 g, 87%)を黄色泡状固体として得た。
1H NMR(CDCl3)δ 0.99-1.13 (28H, m), 1.90-1.98, 2.05-2.16 (2H, m), 2.68, 3.07 (2H, ABq, J=11 Hz), 2.81-2.90, 3.05-3.16 (2H, m), 3.51-3.63 (2H, m), 3.72, 4.04 (2H, ABq, J=13 Hz), 4.50 (1H, d, J=3 Hz), 4.82 (1H, d, J=3 Hz), 6.67 (1H, s), 7.09 (1H, m), 7.51-7.57 (2H, m), 7.60 (1H, m), 8.02-8.05 (2H, m), 8.36 (1H, s), 8.81 (1H, s), 9.10 (1H, s).
【0127】
(化合物AP-A-2の合成)
化合物AP-A-1(5.05 g, 6.36 mmol)をテトラヒドロフラン(60 mL)に溶解し、酢酸(0.48 mL, 8.44 mmol)、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 13.7 mL, 13.7 mmol)を順次加え、室温で20分間攪拌した。得られた反応液の減圧留去をおこない、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=30:1~10:1)により反応残渣を取り除き、中間体を得た。得られた中間体をピリジンで共沸乾燥をおこない、窒素気流下、ピリジン(40 mL)に溶解させた。4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(2.86 g, 8.44 mmol)を加え、室温で14時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水で反応を停止させた後、水、酢酸エチルで希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=60:1)によって精製し、化合物AP-A-2(5.05 g, 91%)を白色泡状固体として得た。
1H NMR(CDCl3)δ1.88-1.97, 2.07-2.13 (2H, m), 2.63 (1H, d, J=9 Hz), 2.79-2.88, 3.03-3.09 (2H, m), 2.94, 3.00 (2H, ABq, J=12 Hz), 3.38, 3.42 (2H, ABq, J=11 Hz), 3.50-3.63 (2H, m), 3.79 (6H, s), 4.46 (1H, dd, J=3,8 Hz), 4.73 (1H, d, J=3 Hz), 6.75 (1H, s), 6.81-6.86 (4H, m), 7.00 (1H, m), 7.20-7.46 (9H, m), 7.50-7.55 (2H, m), 7.59-7.64 (1H, m), 8.00-8.03 (2H, m), 8.36 (1H, s), 8.81 (1H, s), 9.14 (1H, s).
【0128】
(化合物AP-A-3の合成)
窒素気流下、化合物AP-A-2(5.05 g, 5.91 mmol)をアセトニトリルで共沸乾燥をおこない、アセトニトリル(67 mL)に溶解させた。4,5-ジシアノイミダゾール(0.77 g, 6.50 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(2.4 mL, 7.33 mmol)を順次加え、室温で2.5時間攪拌した。飽和重曹水で反応を停止させた後、水、酢酸エチルで希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=45:55~20:80)によって精製し、化合物AP-A-3(5.57 g, 89%)を白色泡状固体として得た。
31P NMR(CDCl3)δ 149.1, 149.4.
HRMS(MALDI): calcd for C53H59F3N9NaO9P [M+Na+] 1076.4018, found 1076.4013
【0129】
[合成例4]
BaseがN-イソブチリル-グアニン-9-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがトリフルオロメチルカルボニルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物AP-G-2」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化54】
【0130】
(化合物AP-G-1の合成)
窒素気流下、化合物AP-T-4(9.31 g, 13.67 mmol)をトルエン(154 mL)に60°Cで溶解し、N2-イソブチリルグアニン(4.66 g, 21.06 mmol)、N,O-ビストリメチルシリルアセトアミド(22.3 mL, 90.24 mmol)を順次加え、100°Cで0.5時間攪拌した。続いてトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(3.8 mL, 21.06 mmol)を加えて100°Cで1時間攪拌した。反応液を冷却し飽和重曹水で反応を停止させた後、酢酸エチル、水で希釈をおこない、反応液をセライト濾過して濾液を回収した。回収した濾液を有機層と水層にそれぞれ分画し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:2)により反応残渣を取り除き、中間体を得た。得られた中間体をテトラヒドロフラン(150 mL)に溶解し、酢酸(1.1 mL, 19.89 mmol)、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 27.8 mL, 27.8 mmol)を順次加え、室温で30分間攪拌した。得られた反応液の減圧留去をおこない、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=15:1~7:1)により反応残渣を取り除き、中間体を得た。得られた中間体をピリジンで共沸乾燥をおこない、窒素気流下、ピリジン(120 mL)に溶解させた。4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(6.29 g, 18.56 mmol)を加え、室温で16.5時間攪拌した。反応液を冷却し、メタノールで反応を停止させた後、水、酢酸エチルで希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1~酢酸エチル:メタノール~100:1、クロロホルム:メタノール=98:2~96:4)によって精製し、化合物AP-G-1(7.69 g, 61%)を白色泡状固体として得た。
1H NMR(CDCl3)δ1.23 (6H, dd, J=2,7 Hz), 1.76-1.82, 2.18-2.22 (2H, m), 2.69-2.76 (1H, m), 2.78-2.87, 3.03-3.07 (2H, m), 2.97, 3.02 (2H, ABq, J=12 Hz), 3.20 (1H, d, J=8 Hz), 3.36-3.48, 4.07-4.18 (2H, m), 3.41, 3.46 (2H, ABq, J=11 Hz), 3.77 (6H, s), 4.22 (1H, d, J=3 Hz), 4.36 (1H, dd, J=3,7 Hz), 6.80-6.84 (5H, m), 6.97 (1H, m), 7.16-7.50 (9H, m), 7.83 (1H, s), 9.82 (1H, s), 12.14 (1H, s).
【0131】
(化合物AP-G-2の合成)
窒素気流下、化合物AP-G-1(7.52 g, 9.00 mmol)をアセトニトリルで共沸乾燥をおこない、アセトニトリル(91 mL)に溶解させた。4,5-ジシアノイミダゾール(1.18 g, 10.0 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(3.5 mL, 10.91 mmol)を順次加え、室温で14.5時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水で反応を停止させた後、水、酢酸エチルで希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=45:55~20:80)によって精製し、化合物AP-G-2(7.27 g, 78%)を白色泡状固体として得た。31P NMR(CDCl3)δ 149.1, 149.2.
HRMS(MALDI): calcd for C50H61F3N9NaO10P [M+Na+] 1058.4123, found 1058.4139
【0132】
[合成例5]
Baseがチミン-1-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがジメチルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物DT-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化55】
【0133】
(化合物DT-1の合成)
窒素気流下、水素化ナトリウム(60% in oil, 4.58 g, 11.45 mmol)のトルエン懸濁液(200 mL)に氷冷下、3-(ジメチルアミノ)-1-プロパノール(15.9 mL, 136.2 mmol)をゆっくり滴下し、氷冷下のまま30分間撹拌した。その後、p-トルエンスルホニルクロリド(21.67 g, 113.7 mmol)を3回に分けて加えた後、氷浴を外し、室温にて2時間30分撹拌した。次いで、氷冷とし、3-(ジメチルアミノ)-1-プロパノール(3.0 mL, 25.7 mmol)をゆっくり滴下し、室温で35分間撹拌した。その後再度氷冷とし、3-(ジメチルアミノ)-1-プロパノール(1.0 mL, 8.6 mmol)をゆっくり滴下し、室温で30分間撹拌した。氷冷下で水を加えてトルエンで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液が僅かに白濁するまで減圧留去し、得られたp-トルエンスルホン酸3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルのトルエン溶液をそのまま次の反応に用いた。
化合物T-1(40 g, 75.8 mmol)のトルエン溶液(240 mL)にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(30 mL, 175 mmol)を室温で加え、反応溶液を100℃に加温した。先に調製したp-トルエンスルホン酸3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルのトルエン溶液を1時間10分かけて滴下し、100℃のままさらに30分撹拌した。その後反応溶液を室温にし、溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:トリエチルアミン:メタノール=20:1:0~20:1:2)により精製し、化合物DT-1(23.47 g, 51%)を白色泡状固体として得た。
1HNMR (DMSO-d6) δ 0.90-1.12(28H, m), 1.61-1.83 (2H, m) , 1.74 (3H, s), 2.11 (6H, s), 2.19-2.34 (2H, m), 2.69-2.81 (4H, m), 3.64 (1H, d, J = 13 Hz), 3.92 (1H, d, J = 3 Hz), 4.04 (1H, d, J = 13 Hz), 4.36 (1H, d, J = 3 Hz), 6.11 (1H, s), 7.49 (1H, s), 11.40 (1H, brs).
【0134】
(化合物DT-2の合成)
窒素気流下、化合物DT-1(3.00 g, 4.90 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(60 mL)にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 10.3 mL, 10.3 mmol)を氷冷下で加えて、室温で45分間撹拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=7:1~6:1)でショートカラムすることにより反応残渣を取り除き中間体を得た。得られた中間体をピリジンで、次にピリジン:トルエン(=1:1)混合溶液にて共沸した後に、ピリジン(60 mL)に中間体を溶解し、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(4.31 g, 12.72 mmol)を氷冷下で加えて、氷浴を外して一晩室温で撹拌した。翌朝、氷冷下飽和重曹水を加え、次いで水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=1:0~10:1)、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=20:1:1~20:2:1)により精製し、化合物DT-2(2.92 g, 89%)を白色泡状固体(一部淡黄色泡状固体)として得た。
1H NMR (CDCl3) δ 1.44 (3H, s), 1.63-1.90 (2H, m), 2.22 (6H, s), 2.29-2.46 (2H, m), 2.78-2.96 (2H, m), 2.73 (1H, d, J = 12 Hz), 2.85 (1H, d, J = 12 Hz), 3.33 (1H, d, J = 11 Hz), 3.37 (1H, d, J = 12 Hz), 3.79 (6H, s), 4.24 (1H, d, J = 3 Hz), 4.36 (1H, d, J = 3 Hz), 6.33(1H, s), 6.83-6.86 (4H, m), 7.21-7.46 (9H, m), 7.76 (1H, s).
【0135】
(化合物DT-3の合成)
窒素気流下、化合物DT-2(1.68 g, 2.50 mmol)のアセトニトリル溶液(40 mL)に、4,5-ジシアノイミダゾール(0.354 g, 3.00 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(1.20 mL, 3.78 mmol)を氷冷下で加え、室温で3時間30分撹拌した。氷冷下飽和重曹水を加え、次いで水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去して得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=20:0:1~20:2:1)により精製し、化合物DT-3(1.95 g, 89%)を白色泡状固体として得た。31P NMR (DMSO-d6) δ 148.62, 147.25.
HRMS(MALDI): calcd for C46H61N6NaO9P [M+Na+] 895.4130, found 895.4117
【0136】
[合成例6]
BaseがN-ベンゾイル-5-メチルシトシン-1-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがジメチルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物DC-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化56】
【0137】
(化合物DC-1の合成)
窒素気流下、化合物DT-1(4.0 g, 6.53 mmol)のアセトニトリル溶液(60 mL)に氷冷下、トリエチルアミン(10.9 ml, 78.4 mmol)、1,2,4-トリアゾール(3.61 g, 52.2 mmol)を加えた後に、塩化ホスホリル(1.25 ml, 13.41 mmol)をゆっくり滴下し、氷冷のまま2時間30分撹拌した。その後、氷冷のまま飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し、白色固体(4.94 g)を得た。続いて得られた白色固体を1,4-ジオキサン(60 mL)に溶解し、28%アンモニア水(15 ml)を加え、室温のまま1時間30分撹拌を続けた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をピリジンで1回、ピリジン:トルエン=1:1の混合溶媒で1回共沸させた後にジクロロメタン(60 mL)に溶かし、氷冷下でトリエチルアミン(1.72 ml, 12.37 mmol)、塩化ベンゾイル(1.14 ml, 9.89 mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。氷冷下飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去して得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=100:0:1~80:1:1)により精製し、化合物DC-1(3.42 g, 73%)を白色泡状固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ 0.92-1.12 (28H, m), 1.62-1.75 (2H, m), 1.99 (3H, d, J = 1 Hz), 2.11 (6H, s), 2.19-2.32 (2H, m), 2.67-2.83 (2H, m), 2.73 (1H, d, J = 11Hz), 2.81 (1H, d, J = 12 Hz), 3.65 (1H, d, J = 13 Hz), 3.91 (1H, d, J = 3 Hz), 4.07 (1H, d, J = 13 Hz), 4.43 (1H, d, J = 3 Hz), 6.13 (1H, s), 7.46-7.51 (2H, m), 7.56-7.61 (1H, m), 7.78 (1H, d, J= 1 Hz), 8.14-8.17 (2H, m), 12.8 (1H, brs).
【0138】
(化合物DC-2の合成)
窒素気流下、化合物DC-1(1.21 g, 1.69 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(25 mL)にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 3.55 mL, 3.55 mmol)を氷冷下で加えて、室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1)でショートカラムすることにより反応残渣を取り除き中間体を得た。得られた中間体をピリジンにて1回、次にピリジン:トルエン(=1:1)混合溶液にて1回共沸した後に、中間体をピリジン(32 mL)に溶解し、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.26 g, 3.72 mmol)を氷冷下で加えて、氷浴を外して一晩室温で撹拌した。翌朝4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(0.23 g, 0.68 mmol)を氷冷下で加えて、室温で3時間撹拌した。氷冷下飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:1~30:1)により精製し、化合物DC-2(1.25 g, 95%)を黄色泡状固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.54 (3H,s), 1.60-1.76 (2H, m), 2.12 (6H, s), 2.19-2.34 (2H, m), 2.63-2.87 (4H, m), 3.23 (1H, d, J = 11 Hz), 3.27 (1H, d, J = 11 Hz), 3.75 (6H, s), 4.08-4.11 (1H, m), 4.33 (1H, d, J = 3 Hz), 5.63 (1H, d, J = 5 Hz), 6.16 (1H, s), 6.91-6.95 (4H, m), 7.24-7.52 (11H, m), 7.57-7.62 (1H, m), 7.93 (1H, s), 8.13-8.16 (2H, m), 12.8 (1H, brs).
【0139】
(化合物DC-3の合成)
窒素気流下、化合物DC-2(2.28 g, 2.94 mmol)のアセトニトリル溶液(47 mL)に、氷冷下で4,5-ジシアノイミダゾール(0.417 g, 3.53 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(1.40 mL,4.41 mmol)を加えて、室温で2時間30分撹拌した。その後、氷冷下飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:トリエチルアミン=30:1~20:1)により精製し、化合物DC-3(2.46 g, 86%)を白色泡状固体として得た。
31P NMR (DMSO-d6) δ 148.89, 147.22.
HRMS(MALDI): calcd for C53H66N7NaO9P[M+Na+] 998.4552, found 998.4556
【0140】
[合成例7]
BaseがN-ベンゾイル-アデニン-9-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがジメチルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物DA-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化57】
【0141】
(化合物DA-1の合成)
窒素気流下、化合物DT-1(2.00 g, 3.26 mmol)のトルエン溶液(35 mL)にN6-ベンゾイルアデニン(0.820 g, 3.43 mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(3.25 mL, 13.2 mmol)を順次加えて、100°Cまで昇温し、そのまま100℃で20分間撹拌した。その後、室温下で5分間撹拌した後にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.620 mL, 3.43 mmol)を滴下し、100°Cまで加温し、そのまま100℃で1時間20分撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、次いで水と酢酸エチルで希釈した後、セライト濾過をおこなった。濾液を酢酸エチルにて抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1)により精製し、化合物DA-1(1.78 g, 75 %)を黄色泡状固体として得た。1H NMR (DMSO) 0.93-1.17 (28H, m), 1.71‐1.78 (2H, m) , 2.15 (6H, s), 2.25-2.38 (2H, m), 2.77-2.92 (4H, m), 3.68 (1H, d, J = 13 Hz), 4.00 (1H, d, J = 13 Hz), 4.62 (1H, d, J = 3 Hz), 4.98 (1H, d, J = 3 Hz), 6.71 (1H, s), 7.54-7.57 (2H, m), 7.63-7.67 (1H, m), 8.03-8.06 (2H, m), 8.44 (1H,s), 8.69 (1H, s), 11.3 (1H, brs).
【0142】
(化合物DA-2の合成)
窒素気流下、化合物DA-1(1.26 g, 1.74 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(32 mL)にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 3.65 mL, 3.65 mmol)を氷冷下で加えて、室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)でショートカラムすることにより反応残渣を取り除き中間体を得た。得られた中間体をピリジンで、次にピリジン:トルエン(=1:1)混合溶液にて共沸した後に、中間体をピリジン(32 mL)に溶解し、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.18 g, 3.48 mmol)を氷冷下で加えて、氷浴を外して一晩室温で撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=20:0:1~20:4:1)により精製し、化合物DA-2(1.24 g, 91%)を白色泡状固体として得た。
1H NMR (DMSO) δ1.69-1.79 (2H, m), 2.15 (6H, s), 2.24-2.40 (2H, m), 2.73-2.98 (4H, m), 3.18 (1H, d, J = 11 Hz), 3.27-3.32 (1H, m), 3.72 (6H, s), 4.40-4.43 (1H, m), 4.68 (1H, d, J = 3 Hz), 5.52 (1H, d, J = 6 Hz), 6.73 (1H, s), 6.84-6.87 (4H, m), 7.19-7.41 (9H, m), 7.52-7.58 (2H, m), 7.62-7.68 (1H, m), 8.03-8.06 (2H, m), 8.52 (1H,s), 8.78 (1H, s), 11.2 (1H, brs).
【0143】
(化合物DA-3の合成)
窒素気流下、化合物DA-2(191.3 mg, 0.24 mmol)のアセトニトリル溶液(5 mL)に、氷冷下4,5-ジシアノイミダゾール(34.5 mg, 0.29 mmol)、2-シアノエチルN,N,N',N'-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.116 mL, 0.37 mmol)を加えて室温で4時間撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、次いで水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し、得られた粗成績体をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=80:1)により精製し、化合物DA-3(189.8 mg, 79%)を淡黄色泡状固体(一部白色泡状固体)として得た。
31P NMR (DMSO-d6) δ148.76, 148.06.
HRMS(MALDI): calcd for C53H64N9NaO8P [M+Na+] 1008.4508, found 1008.4513
【0144】
[合成例8]
BaseがN-イソブチリル-グアニン-9-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがジメチルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物DG-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化58】
【0145】
(化合物DG-1の合成)
窒素気流下、化合物DT-1(113.1 mg, 0.18 mmol)のトルエン溶液(2.0 mL)にN2-イソブチリルグアニン(65.3 mg, 0.30 mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(0.275 ml, 1.113 mmol)を順次加えて、95°Cまで昇温し、そのまま95℃で50分間撹拌した。その後、室温下5分間撹拌した後にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.052 mL, 0.29 mmol)を滴下し、95℃で2時間30分撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、次いで水と酢酸エチルで希釈した後、セライト濾過をおこなった。得られた濾液を酢酸エチルにて抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=30:1~20:1)により精製し、化合物DG-1(88.8 mg, 68%)を黄色泡状固体として得た。
1HNMR (DMSO-d6) δ 0.93-1.09 (28H, m), 1.12 (6H, d, J = 7 Hz), 1.67-1.71 (2H, m), 2.13 (6H, s), 2.20-2.37 (2H, m), 2.73-2.89 (5H, m), 3.68 (1H, d, J = 13 Hz), 4.03 (1H, d, J = 13 Hz), 4.21 (1H, d, J = 3 Hz), 4.70 (1H, d, J = 3 Hz), 6.40 (1H, s), 7.91 (1H, s), 12.2 (1H, brs).
【0146】
(化合物DG-2の合成)
窒素気流下、化合物DG-1(2.56 g, 3.61 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(58 mL)にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 7.6 mL, 7.6 mmol)を氷冷下で加えて、室温で30分間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し得られた残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1~5:1)でショートカラムすることにより反応残渣を取り除き中間体を得た。得られた中間体をピリジンで、次にピリジン:トルエン(=1:1)混合溶液にて共沸した後に、中間体をピリジン(60 mL)に溶解し、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(3.18 g, 9.40 mmol)を氷冷下で加えて、氷浴を外して一晩室温で撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1~7:1)、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1~5:1)により精製し、化合物DG-2(2.47 g, 89%)を白色泡状固体として得た。
1H NMR(DMSO-d6)δ1.12 (6H, dd, J = 1.2 Hz, J = 6.8 Hz), 1.78-1.86 (2H, m), 2.43 (6H, brs), 2.67 (1H, brs), 2.77-2.94 (4H, m), 3.14-3.22 (5H, m), 3.73 (6H, s), 4.25 (1H, brs), 4.62 (1H, d, J = 2.8 Hz), 5.57 (1H, brs), 6.45 (1H, s), 6.84-6.88 (4H, m), 7.20-7.38 (9H, m), 8.08 (1H, s), 12.15 (1H, brs).
【0147】
(化合物DG-3の合成)
窒素気流下、化合物DG-2(1.11 g, 1.45 mmol)のアセトニトリル溶液(50 mL)に、氷冷下4,5-ジシアノイミダゾール(0.21 g, 1.75 mmol)、2-シアノエチルN,N,N',N'-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.69 mL,2.18 mmol)を加えて室温で一晩撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=20:0:1~20:2:1)により精製し、化合物DG-3(1.11 g, 79%)を白色泡状固体として得た。
31P NMR (DMSO-d6) δ 148.97, 147.81.
HRMS(MALDI): calcd for C50H66N9NaO9P [M+Na+] 990.4613, found 990.4604
【0148】
[合成例9]
Baseがチミン-1-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-ヘキシレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rがジメチルアミノ基である化合物(1)(以下、「化合物DH-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化59】
【0149】
(化合物DH-1の合成)
窒素気流下、水素化ナトリウム(2.27 g, 56.82 mmol)をトルエン(86 mL)に懸濁させ、6-ジメチルアミノ-1-ヘキサノール(8.6 mL, 51.65 mmol)を加えて氷冷下で30分攪拌した。続いてp-トルエンスルホニルクロリド(10.83 g, 56.82 mmol)を加えた後、室温下で6-ジメチルアミノ-1-ヘキサノール(7.38 mL, 44.44 mmol)を3回に分けて加えながら4時間攪拌した。反応液を冷却し水で反応を停止させた後、トルエンで希釈をおこない有機層と水層にそれぞれ分画した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ減圧留去することによりp-トルエンスルホン酸3-(ジメチルアミノ)-1-ヘキシルのトルエン溶液を90mL得た。
窒素気流下、化合物T-1(5.0 g, 9.47 mmol)をトルエン(35 mL)に溶解させ、N,N-ジイソプロピルアミン(13.1 mL, 75.76 mmol)を加えた後、100°Cで先に調製したp-トルエンスルホン酸3-(ジメチルアミノ)-1-ヘキシルのトルエン溶液を1.5時間かけて滴下し、そのまま1時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、濾過して濾液を回収した。回収した濾液を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=16:4:1~20:1:1)によって精製し、化合物DH-1(1.02 g, 16%)を淡黄色泡状固体として得た。
1H NMR(DMSO-d6)δ 0.95-1.14 (28H, m), 1.29-1.54 (8H, m), 1.74 (3H, d, J=1 Hz), 2.09 (6H, s), 2.16 (3H, t, J=7 Hz), 2.70, 2.78 (2H, ABq, J=11 Hz), 2.61-2.83 (2H, m), 3.64, 4.04 (2H, ABq, J=13 Hz), 3.92 (1H, d, J=3 Hz), 4.35 (1H, d, J=3 Hz), 6.10 (1H, s), 7.49 (1H, d, J=1 Hz), 11.34 (1H, s).
【0150】
(化合物DH-2の合成)
化合物DH-1(1.02 g, 1.55 mmol)をテトラヒドロフラン(10 mL)に溶解し、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 3.3 mL, 3.3 mmol)を順次加え、室温で30分間攪拌した。得られた反応液の減圧留去をおこない、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1~8:1)により反応残渣を取り除き、中間体を得た。得られた中間体をピリジンで共沸乾燥をおこない、窒素気流下、ピリジン(20 mL)に溶解させた。4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.05 g, 3.10 mmol)を加え、室温で14.5時間攪拌した。4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.05 g, 3.10 mmol)を追加し室温で9時間攪拌した後、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(0.54 g, 1.59 mmol)を追加し室温で15時間攪拌した。反応液を冷却し、メタノールで反応を停止させた後、水、酢酸エチルで希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=20:1:1~20:3:1)によって精製し、化合物DH-2(0.70 g, 63%)を淡黄色泡状固体として得た。
1H NMR(DMSO-d6)δ 1.27-1.50 (8H, m), 1.31 (3H, s), 2.08 (6H, s), 2.15 (2H, t, J=7 Hz), 2.57-2.68, 2.72-2.84 (2H, m), 2.72 (2H, s), 3.20 (2H, s), 3.74 (6H, s), 4.04-4.06 (1H, m), 4.21 (2H, d, J=3 Hz), 5.54 (1H, d, J=5 Hz), 6.11 (1H, s), 7.22-7.44 (9H, m), 7.62 (1H, d, J=1 Hz), 11.25 (1H, s).
【0151】
(化合物DH-3の合成)
窒素気流下、化合物DH-2(294 mg, 0.41 mmol)をアセトニトリルで共沸乾燥をおこない、アセトニトリル(4.5 mL)に溶解させた。4,5-ジシアノイミダゾール(54 mg, 0.46 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(164 μL, 0.50 mmol)を順次加え、室温で2.5時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水で反応を停止させた後、酢酸エチル、水で希釈をおこない有機層を分画した。得られた有機層を水と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=20:1:1~20:2:1、酢酸エチル:ヘキサン=4:1~6:1)によって精製し、化合物DH-3(255 mg, 66%)を白色泡状固体として得た。
31P NMR(CDCl3)δ 148.7, 148.9.
HRMS(MALDI): calcd for C49H67N6NaO9P [M+Na+] 937.4599, found 937.4611
【0152】
[合成例10]
Baseがチミン-1-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、Rが4-メチルピペラジン-1-イル基である化合物(1)(以下、「化合物Pip-T-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化60】
【0153】
(化合物Pip-T-1の合成)
化合物T-1(4.0 g、7.58 mmol)のトルエン溶液(100 mL)に1,3-ジブロモプロパン(3.45 mL, 33.8 mmol)、トリエチルアミン(7.4 mL, 53.2 mmol)を室温で加え、100℃に昇温し、3時間撹拌した。反応溶液を室温とし、1-メチルピペラジン(3.8 mL, 34.1 mmol)を加え、再び100℃に昇温し、3時間30分撹拌した。その後、反応溶液を室温としてから、セライト濾過を行い、濾液を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン:ジクロロメタン=22:2:1:75)により精製し、化合物Pip-T-1(2.46 g, 49%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO-d6) δ 0.90-1.04(28H, m), 1.67-1.80 (5H, m), 2.20-2.58 (13H, m), 2.67-2.80 (4H, m), 3.64(1H, d, J = 14 Hz), 3.92 (1H, d, J = 3 Hz), 4.04(1H, d, J = 14 Hz), 4.37 (1H, d, J = 3 Hz), 6.11(1H, s), 7.49(1H, d, J = 1 Hz ), 11.41 (1H, s).
【0154】
(化合物Pip-T-2の合成)
窒素気流下、化合物Pip-T-1(0.894 g, 1.34 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(24 mL)にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 2.80 mL, 2.80 mmol)を氷冷下で加えて、室温で40分間撹拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)でショートカラムすることにより反応残渣を取り除き中間体を得た。続いて得られた中間体をピリジンで、次にピリジン:トルエン(=1:1)混合溶液にて共沸した後に、中間体をピリジン(22 mL)に溶解し、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.179 g, 3.48 mmol)を氷冷下で加えて、氷浴を外して一晩室温で撹拌した。翌朝氷冷とし4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(0.181 g, 0.534 mmol)を追加し、室温で2時間30分撹拌した。その後氷冷下で飽和重曹水を加え、水で希釈し、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=20:0:1~20:1:1)にて精製することにより化合物Pip-T-2(0.656 g, 67%)を白色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.31(3H,s), 1.60-1.71 (2H, m), 2.07-2.56 (13H, m), 2.61-2.83 (4H, m), 3.16-3.23 (2H, m), 4.05-4.07 (1H, m), 4.21-4.22 (1H, m),5.54 (1H, d, J = 6 Hz), 6.11(1H, s), 6.90-6.92 (4H, m), 7.23-7.44 (9H, m), 7.62 (1H, s), 11.36 (1H, s).
【0155】
(化合物Pip-T-3の合成)
窒素気流下、化合物Pip-T-2(0.496 g, 0.68 mmol)のアセトニトリル溶液(25 mL)に、4,5-ジシアノイミダゾール(0.121 g, 1.02 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.390 mL, 1.23 mmol)を氷冷下で加え、室温で5時間撹拌した。氷冷下に飽和重曹水を加え、次いで水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=20:0:1~20:1:1)にて精製することにより化合物Pip-T-3(0.490 g, 78%)を白色泡状固体として得た。31P NMR (DMSO-d6) δ 148.62, 147.22.
HRMS(MALDI): calcd for C49H66N7NaO9P [M+Na+] 950.4552, found 950.4546
【0156】
[合成例11]
Baseがチミン-1-イル基であり、Aがメチレン基であり、Aが単結合であり、Xがn-プロピレン基であり、RがDMTrであり、Rが-P(N(i-Pr))(OCCN)であり、RがNHC(=NCOCCN)(NHCOCCN)である化合物(1)(以下、「化合物Gua-T-3」と称する)は、下記反応スキームに従って合成した。
【化61】
【0157】
(化合物Ce-1の合成)
2-シアノエタノール(1.85 ml, 27.3 mmol)のアセトニトリル溶液(160 mL)に炭酸N,N'-ジスクシンイミジル(8.0 g, 31.2 mmol)、ピリジン(2.7 mL, 33.5 mmol)を氷冷下で加え、室温で8時間30分撹拌した。反応溶液を減圧留去し、得られた残渣にジクロロメタンと飽和重曹水を加え、ジクロロメタンにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトニトリル=1:0~4:1)により精製し、化合物Ce-1(5.58 g, 96%)を白色固体として得た。
1HNMR (CDCl3) δ 2.86 (2H, t, J = 6 Hz), 2.87 (4H, s), 4.53 (2H, t, J = 7 Hz).
【0158】
(化合物Ce-2の合成)
化合物Ce-1(2.5 g, 11.8 mmol)のジクロロメタン溶液(50 mL)にS-メチルイソチオ尿素硫酸塩(0.78 g, 5.6 mmol)、1.0 M炭酸水素ナトリウム水溶液(22.4 ml, 22.4 mmol)を加え、室温で7時間30分激しく撹拌した。その後飽和重曹水を加え、ジクロロメタンにて抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=1:0~10:1)により精製し、化合物Ce-2(0.60 g, 38%)を淡黄色油状物質として得た。
1HNMR (CDCl3) δ 2.46 (3H, s), 2.80 (4H, t, J = 6 Hz), 4.37-4.42 (4H, m), 11.81 (1H, brs).
【0159】
(化合物Gua-T-1の合成)
窒素気流下、化合物AP-T-7(1.40 g、1.96 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(30 mL)にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液, 4.1 mL, 4.1 mmol)を氷冷下で加えて、室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=20:1~6:1)でショートカラムすることにより反応残渣を取り除き中間体を得た。得られた中間体をピリジンで、次にピリジン:トルエン(=1:1)混合溶液にて共沸した後に、中間体をピリジン(30 mL)に溶解し、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.00 g, 2.95 mmol)を氷冷下で加えて、氷浴を外して一晩室温で撹拌した。翌朝、氷冷とし飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1~1:0)により精製し、化合物Gua-T-1(1.51 g, 99%)を白色泡状固体として得た。1HNMR (CDCl3) δ 1.45 (3H, d , J = 1 Hz), 1.95-2.12 (2H, m), 2.57 (1H, d, J = 9 Hz), 2.70-2.83 (3H, m), 2.90-3.00 (1H, m), 3.31 (1H, d, J = 10 Hz), 3.37 (1H, d, J = 10 Hz), 3.76-3.87 (8H, m), 4.23 (1H,dd ,J = 3 Hz , J = 9 Hz), 4.36 (1H, d , J = 3 Hz), 6.30 (1H, s), 6.82-6.87 (4H, m), 7.22-7.45 (9H, m), 7.66-7.71 (2H, m), 7.73 (1H, d, J = 1 Hz), 7.80-7.85 (2H, m), 8.23 (1H, s).
【0160】
(化合物Gua-T-2の合成)
化合物Gua-T-1(1.01 g, 1.30 mmol)のメタノール溶液(22 mL)にヒドラジン一水和物(0.19 mL, 3.91 mmol)を加えて、室温で8時間40分撹拌した。その後、ヒドラジン一水和物(0.075 mL, 1.54 mmol)を追加し、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=5:1~4:1)でショートカラムすることにより反応残渣を取り除き中間体を得た。続いて得られた中間体をジメチルホルムアミド(7.5 ml)に溶解し、化合物Ce-2(0.38 g, 1.34 mmol)、トリエチルアミン(0.182 ml, 1.31 mmol)を加えて、室温で4時間撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル:ヘキサン=1:2:2~0:1:0)により精製し、化合物Gua-T-2(0.79 g, 69%)を白色泡状固体として得た。
1HNMR (CDCl3) δ1.45 (3H, s), 1.88-2.05 (2H, m), 2.61 (1H, d, J = 9 Hz), 2.72-2.87 (7H, m), 2.91-2.98 (1H, m), 3.33 (1H, d, J = 10 Hz), 3.38 (1H, d, J = 11 Hz), 3.54-3.61 (2H, m), 3.80 (6H, s), 4.24-4.31 (3H ,m), 4.35-4.42 (3H, m), 6.32 (1H, s), 6.86-6.84 (4H, m), 7.23-7.45 (9H, m), 7.75 (1H, s), 8.36 (1H, t, J = 6 Hz), 8.39 (1H, s), 11.73 (1H, s).
【0161】
(化合物Gua-T-3の合成)
窒素気流下、化合物Gua-T-2(0.50 g, 0.57 mmol)のアセトニトリル溶液(25 mL)に、4,5-ジシアノイミダゾール(81.2 mg, 0.69 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.275 mL, 0.87 mmol)を氷冷下で加え、室温で5時間30分撹拌した。再び氷冷とし、4,5-ジシアノイミダゾール(67.6 mg、0.57 mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.220 mL、0.69 mmol)を追加し、室温で更に3時間撹拌した。その後、氷冷とし飽和重曹水を加え、水で希釈した後、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去後、濾液を減圧留去し得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1)、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=4:1~10:1)により精製し、化合物Gua-T-3(0.50 g, 81%)を白色泡状固体として得た。31P NMR (CDCl3) δ149.27, 148.76.
HRMS(FAB): calcd for C53H66N10O13P[M+H+] 1081.4548, found 1081.4551
【0162】
<<オリゴヌクレオチドの合成例>>
オリゴヌクレオチドは、前記合成例で得られた化合物(AP-T-6、DT-3、DH-3、Pip-T-3、Gua-T-3)を用いて、標準的なホスホロアミダイトプロトコールに従って、核酸自動合成機(Expedite(商標) 8909/ABI社製)により合成した。得られた5種類のオリゴヌクレオチドは、式(4)で表される単位を有しており、X及びRはそれぞれ以下のとおりである。
X=(CH、R=NH(以下、(CHNHという。)
X=(CH、R=NMe(以下、(CHNMeという。)
X=(CH、R=NMe(以下、(CHNMeという。)
X=(CH、R=4-メチルピペラジン-1-イル基(以下、(CHPip-Meという。)
X=(CH、R=NHC(=NH)NH(以下、(CHGuaという。)
5’-末端がジメトキシトリチル基で保護され、固相に支持された状態のオリゴヌクレオチドに対し、それぞれ、28%アンモニア水によるカラムからの切り出し(1.5時間)を行い、切り出したオリゴヌクレオチドを28%アンモニア水中、16時間、60℃で反応させ、すべての保護基の脱保護を行った。なお、(CHGuaに関しては、50%ピペリジン水溶液、24時間室温でカラムからの切り出しを行った。
NAP-10カラムによる簡易精製を行い、逆相HPLC[WakoPak(商標) WS-DNAカラム、10.0mm×250mm)により精製した[条件:0.1Mトリエチルアンモニウム酢酸バッファー(pH7.0)中、3ml/分で30分の8-16%アセトニトリルのグラジエント、カラム温度50℃]。
合成されたオリゴヌクレオチドの純度は、逆相HPLC[WakoPak(商標) WS-DNAカラム、4.6mm×250mm)により確認した[条件:0.1Mトリエチルアンモニウム酢酸バッファー(pH7.0)中、1ml/分で30分の8-16%アセトニトリルのグラジエント、カラム温度50℃、検出波長254nm]。なお、合成されたオリゴヌクレオチドは、全て純度が90%以上であった。
また、合成されたオリゴヌクレオチドの分子量は、MALDI-TOF-MASS測定により決定した。分子量の計算値及び実測値(測定結果)を下表に示す。なお、式(4)で表される単位は、下表中のアンチセンス鎖(配列番号1~4)のXの位置に組み込まれており、Baseはチミンである。X以外の塩基配列はすべてDNA(式(5)R=H)で構成されている。また、対照として、Xの位置に2’,4’-BNANC(N-Me)(式(7)R=Me)を組み込んだオリゴヌクレオチド(以下、表中ではMeという。)及び2’,4’-BNANC(N-H)(式(7)R=Hを組み込んだオリゴヌクレオチド(以下、表中ではHという。)の分子量の計算値及び実測値も示す。
【表1】
【0163】
<<試験例>>
[試験例1]オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)測定(二重鎖形成能評価)
前記合成例で得られた化合物(AP-T-6、DT-3、DH-3、Pip-T-3、Gua-T3)を配列番号5に示される配列の一部に組み込んで合成した本発明の5種類のオリゴヌクレオチド(4)((CHNH、(CHNMe、(CHNMe、(CHPip-Me、(CHGua)(アンチセンス鎖)と、一本鎖DNA(5’-d(AGCAAAAAACGC)-3’;配列番号6)又は一本鎖RNA(5’-r(AGCAAAAAACGC)-3’;配列番号7)(センス鎖)との融解温度(Tm)を測定することにより、アンチセンス鎖の二重鎖形成能を調べた。また、対照として、LNA(式(6))、2’,4’-BNANC(N-Me)(式(7)R=Me)及び2’,4’-BNANC(N-H)(式(7)R=H)を配列番号5に示される配列の一部に組み込んで合成したオリゴヌクレオチドをアンチセンス鎖として用意した。
終濃度をそれぞれ塩化ナトリウム100mM、リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)10mM、アンチセンス鎖4μM、センス鎖4μMとしたサンプル溶液(120μl)を調製し、15℃から110℃まで0.5℃/分にて昇温し、0.5℃間隔で260nmにおける吸光度を分光光度計(株式会社島津製作所製UV-1800)により測定した。
得られた測定値から微分法によりTm値を算出し、独立した少なくとも2回以上の測定結果の平均値をTm値とした。結果を下表に示す。
【0164】
一本鎖DNAに対する二重鎖形成能(Tm値)
【表2】
【0165】
一本鎖RNAに対する二重鎖形成能(Tm値)
【表3】
【0166】
一本鎖DNA又は一本鎖RNAのいずれのターゲットに対しても、本発明のオリゴヌクレオチド(4)は、式(4)又は(4a)で表される単位の増加に従いTm値が高まり、優れた二重鎖形成能を有することが明らかとなった。したがって、本発明のオリゴヌクレオチド(4)は、優れた二重鎖形成能が求められるDNAやRNAをターゲットとした核酸医薬や遺伝子診断の使用に適する。
【0167】
[試験例2]オリゴヌクレオチドの酵素耐性能測定
1)酵素耐性能測定用オリゴヌクレオチドの調製
前記オリゴヌクレオチドの合成例と同様に、配列番号8に示される配列又はその一部が修飾された配列を有する下表のオリゴヌクレオチドを調製した。
【表4】
【0168】
2)サンプル溶液の調製
サンプル溶液は、下表のとおり調製した。
【表5】
【0169】
3)酵素反応
装置(Major Science社製、MD-MINI)を用いて、温度37℃で下記操作を行った。
(1) サンプル溶液をインキュベーション(5分)した。
(2) 酵素CAVP(Crotalus adamanteus Venom ホスホジエステラーゼI)を0.625μg/mLとなるように添加し、反応を開始した。
(3) 反応時間終了時に反応液の濃度が5.0mMとなるようにEDTAを添加し、反応を停止した。
(4) 反応時間は0分、5分、10分、40分、80分とした。
【0170】
4)酵素耐性能の評価
酵素反応の終了したサンプル溶液について、下記条件でHPLC分析を行った。
(条件)
装置 :LC-2010A HT(島津製作所社製)
カラム:XBridge Oligonucleoties BEH C18 カラム 130Å, 2.5μm, 4.6mm×50mm移動相
・A液: 0.1Mトリエチルアンモニウム酢酸バッファー(pH7.0)
・B液: 0.1Mトリエチルアンモニウム酢酸バッファー(pH7.0):アセトニトリル=1:1(v/v)グラジエント:5~30%((v/v)B液)、15分)
流速 :0.8mL/分
カラム温度:50℃
検出波長 :268nm
注入量 :15μL(101.2pmol)
HPLC分析結果から酵素未消化オリゴヌクレオチドの量を測定し、各反応時間の未消化オリゴの残存率(%)を、次式により算出した。
【数1】
【0171】
5)結果
結果を下表及び図2に示す。
【表6】
【0172】
上記結果から明らかなように、本発明のオリゴヌクレオチド(4)は、天然型及びその他の非天然型のオリゴヌクレオチドに比較して優れた酵素耐性を有している。
【0173】
[試験例3]オリゴヌクレオチドのクランプ能
1)クランプ能測定用オリゴヌクレオチドの調製
前記オリゴヌクレオチドの合成例と同様に、下表のオリゴヌクレオチドを調製した。なお、クランプ核酸1(配列番号12)及びクランプ核酸3は、従来の2’,4’-BNANC(N-Me)(式(7)R=Me)に相当し、クランプ核酸2(配列番号12)及びクランプ核酸4は、本発明のオリゴヌクレオチド(4)に相当する。
【表7】
【0174】
2)検査試料の作製
KRAS遺伝子の野生型遺伝子試料として市販のHuman genomic DNA(プロメガ社)を、またG12V変異型遺伝子試料としてSW480培養細胞から抽出したDNA(DSファーマ社)をテンプレートとして用いた。
各DNA量は、各試料のUVスペクトルと、forwardプライマー(配列番号9)、reverseプライマー(配列番号10)及び増幅確認用プローブ(配列番号11)を用いたリアルタイムPCRで得られたCt値により求めた。
当該DNA量に基づき、変異型が10%、1.0%、0.1%、0.01%、及び0%となるモデル検査試料を作製し、それぞれのモデル検査試料を実験あたり各50ngの量で用いた。
【0175】
3)核酸増幅装置及び核酸増幅用試薬
StepOnePlus(ABI社製)をリアルタイムPCR装置に、TaqManTMFast Advanced Master Mix(ABI社製)を核酸増幅用試薬に用いた。本試薬の使用量は、添付マニュアルに準じた。
【0176】
4)プライマー、増幅確認用プローブ、クランプ核酸
Forward及びreverseプライマーを実験あたり各10pmol使用し、増幅確認用プローブを実験あたり2.5pmol使用した。クランプ核酸として、KRAS遺伝子野生型の配列を有するクランプ核酸1~4をそれぞれ実験あたり10pmol又は1.0pmol使用した。
【0177】
5)核酸増幅操作及び結果
検査試料、核酸増幅用試薬、プライマー、増幅確認用プローブ、及びクランプ核酸の混合液を核酸増幅装置にて、(i)50℃で2分間、(ii)95℃で20秒間、(iii)95℃で10秒間、(iv)57℃で60秒間、その後(v)(iii)~(iv)の操作を55回繰り返した。それぞれの検査試料、それぞれのクランプ核酸による増幅確認用プローブでの核酸増幅過程(55サイクルまで)をモニターした。
【0178】
6)結果
クランプ核酸を10pmol使用した場合の核酸増幅曲線を図3-1に示す。Ct値データを下表に示す。表中、Mは変異型を、Wは野生型を示す。なお、Ct値とは、PCR増幅産物がある一定量に達したときのサイクル数を意味しており、ΔCt値とは、変異型が0%の試料と各検査試料との間のCt値の差を意味している。
【0179】
クランプ核酸1~4を用いたリアルタイムPCRにおけるCt値データ(クランプ核酸の使用量:10pmol)
【表8】
【0180】
クランプ核酸を用いない場合、いずれのテンプレートを用いたPCRも増幅に差異が認められないが、18merのクランプ核酸1及び2を用いると、テンプレート中の野生型遺伝子の割合が増加することに伴いCt値が大きくなるなど増幅に差異が認められた。これらの結果は、クランプ核酸1及び2のいずれのオリゴヌクレオチドもクランプ能を有していることを示している。
8merのクランプ核酸3及び4を使用した場合、クランプ核酸3(従来技術)ではクランプ能がほぼ認められなかった一方で、クランプ核酸4(本発明)では8merの短いクランプ核酸であってもクランプ能を発揮した。これらの結果から、本発明のオリゴヌクレオチド(4)は短いクランプ核酸としても使用可能であり、遺伝子の短い領域で変異が集中している癌やウィルスなどの遺伝子領域をターゲットとした場合においても、クランプ核酸として用いることができることが明らかとなった。
【0181】
クランプ核酸を1.0pmol使用した場合の核酸増幅曲線を図3-2に示す。Ct値データを下表に示す。
クランプ核酸1及び2に利用したリアルタイムPCRにおけるCt値データ(クランプ核酸の使用量:1.0pmol)
【表9】
【0182】
クランプ核酸の使用量を10pmolから1.0pmolと1/10に減らした場合、クランプ核酸1(従来技術)では、クランプ効果が大幅に減少した。一方、クランプ核酸2(本発明)では、クランプ効果に変化が見られなかった。したがって、本発明のオリゴヌクレオチド(4)は使用量をより少なくした場合でも、高感度なクランプPCRを実現可能であることが明らかとなった。
【0183】
[試験例4]オリゴヌクレオチドのストランドインベージョン測定
1)ストランドインベージョン用オリゴヌクレオチドの調製
前記オリゴヌクレオチドの合成例と同様に、下表のオリゴヌクレオチドを調製した。
【表10】
なお、LSI-1及びBSI-5、6、11、12、18、19は、配列番号13に示される配列を有し、BSI-4は、配列番号14に示される配列を有し、BSI-21は、配列番号25に示される配列を有し、BSI-22は、配列番号26に示される配列を有する。
【0184】
2)標的の二重鎖DNA[Chem. Commun., 2009, 1225-1227に準拠]
標的の二重鎖DNAは、以下のとおりである。
(DNA-1) pBR322 plasmid (市販品) をテンプレートとした203 bpのPCR産物(配列番号23及び24)
(DNA-2) pBR322 plasmidをベースとした人工遺伝子T1825G (市販品) をテンプレートとした203 bpのPCR産物
(DNA-3) pBR322 plasmidをベースとした人工遺伝子T1825C (市販品) をテンプレートとした203 bpのPCR産物
(DNA-4) pBR322 plasmidをベースとした人工遺伝子T1825A (市販品) をテンプレートとした203 bpのPCR産物
【表11】
なお、DNA-1の標的部位の配列は、配列番号15及び16に示される配列であり、DNA-2の標的部位の配列は、配列番号17及び18に示される配列であり、DNA-3の標的部位の配列は、配列番号19及び20に示される配列であり、DNA-4の標的部位の配列は、配列番号21及び22に示される配列である。
【0185】
3)Chem. Commun., 2009, 1225-1227に準じる方法
(1)サンプル溶液の調製
サンプル溶液は、下表のとおり調製した。
【表12】
【0186】
(2)反応
サーマルサイクラー(StepOnePlus, Applied Biosystems社)を使用し、サンプル溶液を37℃で120分、60分、又は30分反応させた。
【0187】
(3)ゲルシフトアッセイと染色
反応終了後サンプル溶液をアプライしたゲルを2枚作製し、下記の条件にて同時にPAGE(Poly-Acrylamide Gel Electrophoresis)を行った。電気泳動装置pageRun AE-6531(アトー株式会社製)を用い、泳動条件は装置の添付マニュアルに従った。
(条件)
ゲル:15% ポリアクリルアミドゲル
ランニングバッファー :トリス-グリシンバッファー
(25mM トリス, 0.192M グリシン pH 8.4, Davis法用)
サンプルアプライ量 :12 μL ( サンプル10 μL + ローディングバッファー2 μL )
電気泳動終了後、一方のゲルは、核酸を染色するため蛍光染色(GelGreen Nucleic Acid Stain 10,000 ×、Biotium 社)を実施し、他方のゲルには、核酸とタンパク質を同時染色するため銀染色(EzStain Silver, ATTO社)を実施した。染色方法はそれぞれの添付マニュアルに従った。
【0188】
(4)結果
結果を図4図5に示す。
一本鎖DNA結合タンパク質(SSB:Single-Stranded DNA Binding Protein)存在下で、標的の二重鎖DNAに対するPNAオリゴヌクレオチドのストランドインベージョンが認められた。すなわち、文献条件下で結果が再現できた。
本発明のオリゴヌクレオチド(4)に相当するBSI-4~6についてもPNAオリゴヌクレオチドと同様、SSB存在下でストランドインベージョンを認めた。
【0189】
4)SSB非存在下でのオリゴヌクレオチドによるストランドインベージョン
(1)サンプル溶液の調製
サンプル溶液は、下表のとおり調製した。
【表13】
【0190】
(2)反応
サーマルサイクラー(StepOnePlus, Applied Biosystems社)を使用し、サンプル溶液を94℃から54℃まで30秒間に2℃ずつ冷却するか、又は37℃で一定(24時間、48時間)にして反応させた。
なお、94℃から54℃まで30秒間に2℃ずつ冷却する条件は、SSB非存在下で、熱エネルギーで標的の二重鎖DNA(この場合は203bpのPCR産物)を一本鎖にし、徐々に冷却することでストランドインベージョンを起こさせる条件であり、遺伝子解析技術での使用を想定している。
また、37℃で一定にする条件は、in vivoでの反応を想定した条件であり、核酸医薬やゲノム編集での使用を想定している。
【0191】
(3)ゲルシフトアッセイと染色
3)と同様に実施した。なお、染色はGelGreen(蛍光染色)のみとした。
【0192】
(4)結果
結果を図6に示す。
本発明のオリゴヌクレオチド(4)に相当するBSI-5及び6は、使用量を3)の半量(標的dsDNAに対して3.3当量)にしても94℃から54℃に冷却する又は37℃で放置する条件下でストランドインベージョンが確認できた。一方、この条件下ではPNAオリゴヌクレオチドによるストランドインベージョンは確認できなかった。
【0193】
5)1塩基ミスマッチ配列に対するオリゴヌレクオチドのストランドインベージョン塩基認識能
(1)サンプル溶液
サンプル溶液は、下表のとおり調製した。
【表14】
【0194】
(2)反応
サーマルサイクラー(StepOnePlus, Applied Biosystems社)を使用し、サンプル溶液を94℃から54℃まで30秒間に2℃ずつ冷却するか、又は37℃で一定(24時間、48時間)にして反応させた。
【0195】
(3)ゲルシフトアッセイと染色
3)と同様に実施した。なお、染色はGelGreen(蛍光染色)のみとした。
【0196】
(4)結果
結果を図7に示す。
BSI-5及び6の野生型の配列に対するストランドインベージョンは認められたが、1塩基ミスマッチ配列に対しては、ストランドインベージョンが認められなかった。すなわち、本発明のオリゴヌクレオチド(4)を用いたストランドインベージョン用オリゴヌクレオチドは、配列特異性が高いことが認められた。
なお、本条件下では、PNAオリゴヌクレオチドは、野生型配列に対してもストランドインベージョンを生じなかった
【0197】
6)オリゴヌクレオチドのストランドインベージョン機能性比較
(1)サンプル溶液
サンプル溶液は、下表のとおり調製した。
【表15】
【0198】
(2)反応
サーマルサイクラー(StepOnePlus, Applied Biosystems社)を使用し、サンプル溶液を94℃から54℃まで30秒間に2℃ずつ冷却するか、又は37℃で一定(2時間、24時間)にして反応させた。
【0199】
(3)ゲルシフトアッセイと染色
3)と同様に実施した。なお、染色はGelGreen(蛍光染色)のみとした。
【0200】
(4)結果
結果を図8に示す。
いずれの条件下においても、PNA20及びLSI-1はストランドインベージョンを認めることはできなかった。従来発明のオリゴヌクレオチドを用いたBSI-11と12については、BSI-11はBSI-5及び6ほどではないが、ストランドインベージョンが認められたが、BSI-12は認められなかった。
一方、本発明のオリゴヌクレオチド(4)に相当するBSI-5及び6は、37℃一定で2時間経過後であっても、ストランドインベージョンが認められた。
つまり、本発明のオリゴヌクレオチド(4)に相当するBSI-5及び6のストランドインベージョン能が最も優れている。
【0201】
7)BSI-5及び6の一部の塩基としてLNAを用いたオリゴヌクレオチドBSI-18及び19のストランドインベージョン
(1)サンプル溶液
サンプル溶液は、下表のとおり調製した。
【表16】
【0202】
(2)反応
サーマルサイクラー(StepOnePlus, Applied Biosystems社)を使用し、サンプル溶液を94℃から54℃まで30秒間に2℃ずつ冷却するか、又は37℃で一定(24時間、48時間)にして反応させた。
【0203】
(3)ゲルシフトアッセイと染色
3)と同様に実施した。なお、染色はGelGreen(蛍光染色)のみとした。
【0204】
(4)結果
結果を図9に示す。
BSI-5及び6の一部の塩基としてLNAを用いたオリゴヌクレオチドBSI-18及び19においてもストランドインベージョンが認められた。
【0205】
8)2種類以上のオリゴヌクレオチドを用いたストランドインベージョン
(1)サンプル溶液
サンプル溶液は、下表のとおり調製した。
【表17】
【0206】
(2)反応
サーマルサイクラー(StepOnePlus, Applied Biosystems社)を使用し、サンプル溶液を94℃から54℃まで30秒間に2℃ずつ冷却して反応させた。
【0207】
(3)ゲルシフトアッセイと染色
3)と同様に実施した。なお、染色はGelGreen(蛍光染色)のみとした。
【0208】
(4)結果
結果を図10に示す。
BSI-22単独で用いた場合、ネガティブコントロールと比較して、異なるバンドパターンが観察されたが、一部にテンプレートDNA(DNA-1)のバンドが残っていることも確認できた。このことから、BSI-22単独であってもストランドインベージョンが生じていることが示唆された。BSI-22及びBSI-5(同じストランドにハイブリダイゼーション=シス型)を組み合わせて用いた場合、或いは、BSI-22及びBSI-21(異なるストランドにハイブリダイゼーション=トランス型)を組み合わせて用いた場合には、ネガティブコントロールと比較して、異なるバンドパターンが観察され、また、テンプレートDNAのバンドは確認されず、ストランドインベージョンがより効率的に起こっていることが確認できた。BSI-22、BSI-21、及びBSI-5を組み合わせて用いた場合も、ストランドインベージョンが増強されることが判明した。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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