(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】半導体検査装置及び半導体検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240105BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240105BHJP
G06N 3/08 20230101ALI20240105BHJP
G06N 3/04 20230101ALI20240105BHJP
G06T 7/30 20170101ALI20240105BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240105BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G06N20/00 130
G06N3/08
G06N3/04
G06T7/30
G06T7/00 350B
G06T7/00 610C
(21)【出願番号】P 2021524694
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2020016739
(87)【国際公開番号】W WO2020246149
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2019103830
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 智親
(72)【発明者】
【氏名】樋口 貴文
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和宏
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0193680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0345140(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0148226(US,A1)
【文献】特開2019-129169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
G06T 1/00
G06T 7/00
G06T 7/30
G06N 3/04
G06N 3/08
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスからの光を検出して検出信号を出力する光検出器と、
前記光を前記光検出器に導く光学系と、
前記検出信号に基づいて、前記半導体デバイスの光学画像である第1の光学画像を生成する画像生成部と、
第1のCAD画像の入力を受け付ける受付部と、
複数の光学画像
と、前記複数の光学画像の対象となった半導体デバイスに対応する複数のCAD画像とを用いて、機械学習によって
得られた学習モデルにより、前記第1のCAD画像を前記
第1の光学画像に似せた第2のCAD画像に変換する
変換処理を行う画像変換部と、
前記
第1の光学画像と前記第2のCAD画像に基づいて位置合わせを行う位置合わせ部と、
を備え
、
前記画像変換部は、訓練データとして前記複数のCAD画像を用い、教師データとして前記複数の光学画像であって、前記CAD画像におけるダミーパターンが表れにくい光学画像を用いた事前の機械学習によって構築された前記学習モデルにより、前記第1のCAD画像からダミーパターンを抜き出す処理を実行させることで前記第2のCAD画像に変換する、
半導体検査装置。
【請求項2】
前記機械学習は、ディープラーニングである、
請求項
1のいずれか1項に記載の半導体検査装置。
【請求項3】
前記画像変換部は、前記半導体デバイス上の互いに対応する位置における前記第1の光学画像及び前記第1のCAD画像を用いて
得られた学習
モデルを用いる、
請求項1
又は2に記載の半導体検査装置。
【請求項4】
前記位置合わせの結果を基に、前記第1の光学画像に対応して得られた画像と前記第1のCAD画像とを重畳して出力する出力部をさらに備える、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の半導体検査装置。
【請求項5】
光学系を介して半導体デバイスからの光を検出して検出信号を出力するステップと、
前記検出信号に基づいて、前記半導体デバイスの光学画像である第1の光学画像を生成するステップと、
第1のCAD画像の入力を受け付けるステップと、
複数の光学画像
と、前記複数の光学画像の対象となった半導体デバイスに対応する複数のCAD画像とを用いて、機械学習によって
得られた学習モデルにより、前記第1のCAD画像を前記
第1の光学画像に似せた第2のCAD画像に変換する
変換処理を行うステップと、
前記
第1の光学画像と前記第2のCAD画像に基づいて位置合わせを行うステップと、
を備え、
前記変換するステップにおいては、訓練データとして前記複数のCAD画像を用い、教師データとして前記複数の光学画像であって、前記CAD画像におけるダミーパターンが表れにくい光学画像を用いた事前の機械学習によって構築された前記学習モデルにより、前記第1のCAD画像からダミーパターンを抜き出す処理を実行させることで前記第2のCAD画像に変換する、
半導体検査方法。
【請求項6】
前記機械学習は、ディープラーニングである、
請求項
5に記載の半導体検査方法。
【請求項7】
前記半導体デバイス上の互いに対応する位置における前記第1の光学画像及び前記第1のCAD画像を用いて
得られた学習
モデルを用いる、
請求項
5又は6に記載の半導体検査方法。
【請求項8】
前記位置合わせの結果を基に、前記第1の光学画像に対応して得られた画像と前記第1のCAD画像とを重畳して出力するステップをさらに備える、
請求項
5~7のいずれか1項に記載の半導体検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイスを検査する半導体検査装置及び半導体検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイスを検査対象デバイス(DUT:device under test)として画像を取得して、その画像を基に故障箇所の分析等の各種分析が行われている(下記特許文献1および下記特許文献2参照)。例えば、下記特許文献1には、LSM画像等の光学画像を高解像度化して再構成画像を生成し、CADデータの複数のレイヤを基に第2のCAD画像を生成し、再構成画像を第2のCAD画像に対してアライメントすることが開示されている。このような方法によれば、光学画像の正確なアライメントが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許2018/0293346号公報
【文献】国際公開2015/098342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、様々なプロセスルールが適用された半導体デバイスが普及してきている。様々なプロセスルールが適用された半導体デバイスを対象に、上記従来の方法を用いて検査を行う場合に、光学画像をCAD画像に対して精度よく位置合わせすることが困難となる場合があった。
【0005】
実施形態は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、半導体デバイスを対象に取得された光学画像とその半導体デバイスに対応するCAD画像とを精度よく位置合わせすることが可能な半導体検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態の半導体検査装置は、半導体デバイスからの光を検出して検出信号を出力する光検出器と、光を光検出器に導く光学系と、検出信号に基づいて、半導体デバイスの光学画像である第1の光学画像を生成する画像生成部と、第1のCAD画像の入力を受け付ける受付部と、光学画像を教師データとして用いて第1のCAD画像の変換処理を機械学習によって学習し、当該学習の結果に基づいた変換処理により、第1のCAD画像を光学画像に似せた第2のCAD画像に変換する画像変換部と、光学画像と第2のCAD画像に基づいて位置合わせを行う位置合わせ部と、を備える。
【0007】
あるいは、本開示の他の形態の半導体検査方法は、半導体デバイスからの光を光学系を介して検出して検出信号を出力するステップと、検出信号に基づいて、半導体デバイスの光学画像である第1の光学画像を生成するステップと、第1のCAD画像の入力を受け付けるステップと、光学画像を教師データとして用いて第1のCAD画像の変換処理を機械学習によって学習し、当該学習の結果に基づいた変換処理により、第1のCAD画像を光学画像に似せた第2のCAD画像に変換するステップと、光学画像と第2のCAD画像に基づいて位置合わせを行うステップと、を備える。
【0008】
上記一形態あるいは上記他の形態によれば、半導体デバイスからの光を反映した光学画像と第1のCAD画像とが取得され、第1のCAD画像が機械学習による学習の結果に基づいた変換処理により、光学画像に似せた第2のCAD画像に変換され、その第2のCAD画像と光学画像とが位置合わせされる。これにより、様々なプロセスルールが適用された半導体デバイスを検査対象にした場合に、CAD画像上におけるパターンを光学画像に寄せるように変換してから光学画像と位置合わせをすることにより、位置合わせの精度を高めることができる。
【0009】
本開示の他の形態の半導体検査装置は、半導体デバイスからの光を検出して検出信号を出力する光検出器と、光を光検出器に導く光学系と、検出信号に基づいて、半導体デバイスの光学画像である第1の光学画像を生成する画像生成部と、第1のCAD画像の入力を受け付ける受付部と、第1のCAD画像を教師データとして用いて第1の光学画像の再構成処理を機械学習によって学習し、当該学習の結果に基づいた再構成処理により、第1の光学画像を第1のCAD画像に似せた第2の光学画像に再構成する画像変換部と、第2の光学画像と第1のCAD画像に基づいて位置合わせを行う位置合わせ部と、を備える。
【0010】
あるいは、本開示の他の形態の半導体検査方法は、半導体デバイスからの光を光学系を介して検出して検出信号を出力するステップと、検出信号に基づいて、半導体デバイスの光学画像である第1の光学画像を生成するステップと、第1のCAD画像の入力を受け付けるステップと、第1のCAD画像を教師データとして用いて第1の光学画像の再構成処理を機械学習によって学習し、当該学習の結果に基づいた再構成処理により、第1の光学画像を第1のCAD画像に似せた第2の光学画像に再構成するステップと、第2の光学画像と第1のCAD画像に基づいて位置合わせを行うステップと、を備える。
【0011】
上記他の形態によれば、半導体デバイスからの光を反映した光学画像と第1のCAD画像とが取得され、光学画像が機械学習による学習の結果に基づいた再構成処理により、第1のCAD画像に似せた第2の光学画像に変換され、その第2の光学画像と第1のCAD画像とが位置合わせされる。これにより、様々なプロセスルールが適用された半導体デバイスを検査対象にした場合に、光学画像上における不鮮明な部分をCAD画像に寄せるように変換してからCAD画像と位置合わせをすることにより、位置合わせの精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
実施形態によれば、半導体デバイスを対象に取得された光学画像とその半導体デバイスに対応するCAD画像とを精度よく位置合わせできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態にかかる観察システム1の概略構成図である。
【
図2】(a)は、再構成処理の対象である第1の光学画像の一例を示す図、(b)は、(a)の第1の光学画像を対象にした再構成処理により生成された第2の光学画像一例を示す図、(c)は、(a)の第1の光学画像に対応する第1のCAD画像の一例を示す図である。
【
図3】(a)は、
図1の記憶部27に記憶された第1の光学画像の一例を示す図、(b)は、
図1の記憶部27に記憶された(a)の第1の光学画像に対応する第1のCAD画像を示す図である。
【
図4】
図1の画像解析部31によって、第1のCAD画像GC
1を対象としたパターン変換処理によって生成された画像のイメージを示す図である。
【
図5】第1のCAD画像GC
1を用いた画像解析部31によるパターン変換処理のイメージを示す図である。
【
図6】観察システム1による再構成処理の学習モデルを生成する事前学習の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】観察システム1によるパターン変換処理の学習モデルを生成する事前学習の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】観察システム1による半導体デバイスSの解析処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、実施形態にかかる半導体検査装置である観察システム1の概略構成図である。
図1に示す観察システム1は、ロジックLSI、メモリ等のIC(集積回路)、パワーデバイス等の半導体デバイスを検査するために、半導体デバイスの発熱像等の画像を取得及び処理する光学システムである。この観察システム1は、複数の検出器3、2次元カメラ5、照明装置7、ダイクロイックミラー9とハーフミラーなどのビームスプリッタ11とを内蔵する光学装置(光学系)13、対物レンズ15、ステージ17、コンピュータ(Personal Computer)19、テスタ21、入力装置23、及び表示装置25を含んで構成されている。
【0016】
複数の検出器3は、それぞれ、ステージ17に載置される半導体デバイスSからの光を検出する光検出器である。例えば、検出器3は、赤外波長に感度を持つInGaAs(インジウムガリウムアーセナイド)カメラ、InSb(インジウムアンチモン)カメラ等の撮像装置であってもよい。また、検出器3は、レーザ光を半導体デバイスS上で2次元的に走査しながら反射光を検出することにより、LSM(Laser Scanning Microscope)画像またはEOFM(Electro Optical Frequency Mapping)画像を取得するための検出信号を出力する検出システムであってもよい。複数の検出器3は、それぞれ、光学装置13に対して切り替えて光学的に接続可能にされ、半導体デバイスSからの光を、対物レンズ15及び光学装置13内のダイクロイックミラー9を介して検出する。
【0017】
2次元カメラ5は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を内蔵するカメラであり、ステージ17に載置される半導体デバイスSからの反射光を検出して半導体デバイスの2次元パターン像の検出信号を出力する光検出器である。この2次元カメラ5は、対物レンズ15と、光学装置13内のダイクロイックミラー9及びビームスプリッタ11とを介して半導体デバイスSの2次元パターン像を検出する。
【0018】
対物レンズ15は、半導体デバイスSに対向して設けられ、複数の検出器3及び2次元カメラ5に結像する像の倍率を設定する。この対物レンズ15には、複数の倍率の異なる内蔵レンズが含まれ、検出器3或いは2次元カメラ5に像を結ぶ内蔵レンズを、高倍率レンズと低倍率レンズとの間で切り替える機能を有する。
【0019】
ダイクロイックミラー9は、半導体デバイスSの発光像、発熱像、反射像等の像を検出器3に導光するために所定波長範囲の光を透過し、半導体デバイスSの2次元パターン像を2次元カメラ5に導光するために所定波長範囲以外の波長の光を反射させる。ビームスプリッタ11は、ダイクロイックミラー9によって反射されたパターン像を2次元カメラ5に向けて透過させるとともに、照明装置7から出射された2次元パターン像生成用の照明光をダイクロイックミラー9に向けて反射させることにより、その照明光をダイクロイックミラー9及び対物レンズ15を経由して半導体デバイスSに照射する。
【0020】
テスタ21は、半導体デバイスSに所定の電気信号のテストパターン、所定の電圧、又は所定の電流を印加する。このテストパターンの印加によって、半導体デバイスSの故障に起因する発光あるいは発熱が発生する。
【0021】
コンピュータ19は、検出器3及び2次元カメラ5で取得された検出信号を処理する画像処理装置(プロセッサ)である。詳細には、コンピュータ19は、機能的構成要素として、記憶部27、画像処理部(受付部、画像生成部)29、画像解析部(画像変換部、位置合わせ部、出力部)31、及び制御部33により構成されている。また、コンピュータ19には、コンピュータ19に対してデータを入力するためのマウス、キーボード等の入力装置23、コンピュータ19による画像処理結果を表示するためのディスプレイ装置等の表示装置(出力部)25が付属している。
【0022】
図1に示すコンピュータ19の各機能部は、コンピュータ19のCPU等の演算処理装置がコンピュータ19の内蔵メモリやハードディスクドライブなどの記憶媒体に格納されたコンピュータプログラム(画像処理プログラム)を実行することによって実現される機能である。コンピュータ19の演算処理装置は、このコンピュータプログラムを実行することによってコンピュータ19を
図1の各機能部として機能させ、後述する半導体検査処理を順次実行する。このコンピュータプログラムの実行に必要な各種データ、及び、このコンピュータプログラムの実行によって生成された各種データは、全て、コンピュータ19のROMやRAM等の内蔵メモリやハードディスクドライブなどの記憶媒体に格納される。
【0023】
ここで、コンピュータ19の各機能部の機能について説明する。
【0024】
記憶部27は、検出器3によって取得された発光像、発熱像等が検出された測定画像、検出器3あるいは2次元カメラ5によって取得された半導体デバイスSのパターン像が検出された第1の光学画像、及び外部から取得されたCADデータを基に作成された半導体デバイスSの高分解能のパターンを示す第1のCAD画像を記憶する。第1の光学画像は、半導体デバイスSの二次元的なパターンの光学的な測定結果を表す画像であり、2次元カメラ5によって検出された2次元パターンの画像であってもよいし、検出器3によって検出された検出信号に基づくLSM画像であってもよい。画像処理部29は、検出器3あるいは2次元カメラ5から受信した検出信号を基に、測定画像及び第1の光学画像を順次生成し、それらの測定画像及び第1の光学画像を順次記憶部27に記憶させる。また、画像処理部29は、外部のPCあるいはサーバ装置等に構築された外部記憶部35からネットワークNWを介してCADデータの入力を受け付け、CADデータから第1のCAD画像を生成して記憶部27に記憶させる。このCADデータは、半導体デバイスSの拡散層、メタル層、ゲート層、素子分離層等の各層のレイアウトに関する設計情報に基づいて、外部のPCあるいはサーバ装置等に格納されたレイアウトビューアと呼ばれるソフトウェア等によって生成される。このCADデータを半導体デバイスSのパターン像を表した第1のCAD画像として使用する。
【0025】
制御部33は、コンピュータ19におけるデータ処理、及びコンピュータ19に接続されたデバイスの処理を制御する。詳細には、制御部33は、照明装置7による照明光の出射、複数の検出器3及び2次元カメラ5による撮像、複数の検出器3の光学装置13への接続の切り替え、対物レンズ15の倍率の切り替え、テスタ21によるテストパターンの印加、表示装置25による観察結果の表示等を制御する。
【0026】
画像解析部31は、記憶部27に順次記憶される各種画像を対象に、再構成処理、パターン変換処理、及び位置合わせ処理を施す。画像解析部31の各処理の機能の詳細について以下に述べる。
【0027】
画像解析部31は、記憶部27に記載された第1の光学画像を基に第1のCAD画像に似せた第2の光学画像を生成する(再構成処理)。この再構成処理は、複数の第1の光学画像を訓練データとして、それらの画像の対象となった半導体デバイスSに対応する第1のCAD画像を教師データとして、機械学習の一種であるディープラーニングによって事前に学習した結果得られた学習モデルを用いて実行される。事前の学習によって得られる学習モデルのデータは記憶部27に記憶され、その後の再構成処理時に参照される。例えば、ディープラーニングの学習モデルとしては、CNN(Convolutional Neural Network)、FCN(Fully Convolutional Networks)、U-Net、ResNet(Residual Network)等が使用されるが、特定のものには限定されず、学習モデルのノードの数、層の数は任意に設定されうる。
【0028】
図2には、画像解析部31によって処理された画像の一例を示しており、(a)は、再構成処理の対象であるLSM画像である第1の光学画像GA
1、(b)は、(a)の第1の光学画像GA
1を対象にした再構成処理により生成された第2の光学画像GB
1、(c)は、(a)の第1の光学画像に対応する第1のCAD画像GC
1を、それぞれ示す。このように、第1の光学画像GA
1の低分解能で不鮮明な部分が再構成処理によって第1のCAD画像GC
1に近づけるように変換され、全体として第1のCAD画像GC
1に似せた第2の光学画像GB
1が生成される。
【0029】
また、画像解析部31は、記憶部27に記載された第1のCAD画像を基に第1の光学画像に似せた第2のCAD光学画像を生成する(パターン変換処理)。このパターン変換処理は、複数の第1のCAD画像を訓練データとして、それらの画像に対応する半導体デバイスSを対象に取得された第1の光学画像を教師データとして、ディープラーニングによって事前に学習した結果得られた学習モデルを用いて実行される。事前の学習には、半導体デバイスS上の任意の範囲を切り出して拡大処理を施した第1の光学画像と、その範囲に対応する位置が切り出されて拡大処理が施された第1のCAD画像との組み合わせを複数用いる。このような事前の学習によって得られる学習モデルのデータは記憶部27に記憶され、その後のパターン変換処理時に参照される。上記と同様に、ディープラーニングの学習モデルとしては、CNN、FCN、U-Net、ResNet等が使用されるが、特定のものには限定されず、学習モデルのノードの数、層の数は任意に設定されうる。
【0030】
図3において、(a)には、記憶部27に記憶されたLSM画像である第1の光学画像GA
1の一例を示し、(b)には、(a)の第1の光学画像GA
1に対応する半導体デバイスSのパターン像を表す第1のCAD画像GC
1を示す。このように、第1の光学画像GA
1において観察される像には第1のCAD画像GC
1のパターンの全てが現れるわけではなく、一部の層(ゲート層、あるいは、ゲート層の下の拡散層と素子分離層など)のパターンが主に現れる。また、第1の光学画像GA
1においては、第1のCAD画像GC
1のパターンの混み具合によってそのパターンの対応する部分に濃淡像が現れる場合もある。
【0031】
図4には、画像解析部31によって、第1のCAD画像GC
1を対象としたパターン変換処理によって生成された画像のイメージを示す。画像解析部31は、第1のCAD画像GC
1に事前のパターン変換処理を施すことにより第2のCAD画像GC
2を生成し、さらに、第2のCAD画像GC
2に所定の画像補正処理、すなわち、ガウスぼかし及びガンマ補正を施すことにより第3のCAD画像GC
3を生成する。また、画像GC
4は、仮に第1のCAD画像GC
1に直接所定の画像補正処理を施した場合の画像である。このように、パターン変換処理が施された第2のCAD画像GC
2においては、第1の光学画像GA
1(
図3(a))に近づくような画像になるように一部の所定のパターンが削除されている。その結果、第2のCAD画像GC
2にぼかし処理等が加えられて生成された第3のCAD画像GC
3は、全体のイメージが第1の光学画像GA
1のイメージに近くなっている。一方で、第1のCAD画像GC
1に直接ぼかし処理等が加えられた画像GC
4は、全体のコントラストが弱い画像に変換されてしまっており、第1の光学画像GA
1のイメージには遠くなっている。
【0032】
図5には、第1のCAD画像GC
1を用いた画像解析部31によるパターン変換処理のイメージを示す。半導体デバイスSの面からの光の観察結果である第1の光学画像には、一般にゲート層のパターンP
Gが反映されるが、ダミーのパターンP
Dは半導体デバイスSのプロセスルールによっては第1の光学画像GA
1には表れにくくなる。画像解析部31は、事前の学習により、このダミーのパターンP
Dを第1のCAD画像GC
1から抜き出す処理を、学習モデルとして構築することができる。これにより、画像解析部31は、第1のCAD画像GC
1上のダミーのパターンP
Dを削除することで第2のCAD画像GC
2に変換することができる。
【0033】
このようにCAD像を光学像と類似の画像に変換するためには、通常の操作では特別な前処理が必要である。一方、機械学習を適用することによって、このような前処理は自動的に実行されることになる。機械学習によって、上記のようなダミーのパターンPDを光学像に似せるためには明るい箇所と表示するのが適切であると判断され、ピッチの細かい他のゲートパターンは光学像に似せるためには暗い箇所と表示するのが適切であると判断される。一方、デバイスルールによってはゲート層に形成されたダミーパターンが光学的に明るく表示されることが適切とは限らず、暗く表示されることが適切なケースもある。半導体デバイスSの同一箇所のCAD像と光学像とを用いて機械学習させることによって、デバイスルールによらず、両者を対応させることによる前処理の自動的な実行が可能となる。
【0034】
なお、近年の先端デバイスではゲートのパターンよりも、ゲートの下に配置されている拡散層と素子分離層がパターンPGのコントラストを生じさせることもある。この場合、半導体デバイスの世代毎における構造の変化に応じた、異なる層から形成された光画像となる。このように、先端デバイスでは拡散層と素子分離層による違いが光画像におけるパターンコントラストの要因となることもあるため、適切に機械学習させる層の情報を抽出した上で、CAD画像を前処理する必要がある。
【0035】
さらに、画像解析部31は、上述した再構成処理によって生成された第2の光学画像GB1と、上述したパターン変換処理によって生成された、第2の光学画像GB1の半導体デバイスS上の範囲に対応する第3のCAD画像GC3とに基づいて、互いの画像位置に関する位置合わせを、画像間のパターンマッチングによって実行する。そして、画像解析部31は、位置合わせの結果を用いて、第1の光学画像GA1と同一の範囲を測定することによって発光、発熱等が検出された測定画像と、第1のCAD画像GC1とを重畳して表示装置25に表示させる。
【0036】
次に、観察システム1によって実行される及び半導体検査方法の処理の手順について、
図6~
図8を参照しながら説明する。
図6は、再構成処理の学習モデルを生成する事前学習の処理の流れを示すフローチャート、
図7は、パターン変換処理の学習モデルを生成する事前学習の処理の流れを示すフローチャート、
図8は、半導体デバイスSの解析処理の流れを示すフローチャートである。
【0037】
まず、
図6を参照して、コンピュータ19によって、ユーザの操作等の任意のタイミングで再構成処理の学習が開始されると、検出器3、2次元カメラ5、照明装置7等が制御されることにより、訓練データである半導体デバイスSの第1の光学画像が複数取得され記憶部27に保存される(ステップS01)。次に、コンピュータ19によって、第1の光学画像に対応するCADデータが外部から複数取得され、それらのCADデータを基に教師データとなる第1のCAD画像が取得され記憶部27に保存される(ステップS02)。
【0038】
その後、記憶部27に保存された第1の光学画像と第1のCAD画像との複数の組み合わせを用いて、コンピュータ19の画像解析部31により、ディープラーニングにより再構成処理の学習モデルが構築される(ステップS03)。その結果、画像解析部31により、取得された学習モデルのデータは記憶部27に記憶される(ステップS04)。
【0039】
図7を参照して、コンピュータ19によって、ユーザの操作等の任意のタイミングでパターン変換処理の学習が開始されると、複数種類の半導体デバイスSに対応するCADデータが外部から複数取得され、それらのCADデータを基に訓練データとなる第1のCAD画像が複数取得され記憶部27に保存される(ステップS101)。次に、コンピュータ19によって、検出器3、2次元カメラ5、照明装置7等が制御されることにより、教師データである第1のCAD画像に対応する第1の光学画像が複数取得され記憶部27に保存される(ステップS102)。
【0040】
その後、記憶部27に保存された第1のCAD画像と第1の光学画像との複数の組み合わせを用いて、コンピュータ19の画像解析部31により、ディープラーニングによりパターン変換処理の学習モデルが構築される(ステップS103)。その結果、画像解析部31により、取得された学習モデルのデータは記憶部27に記憶される(ステップS104)。
【0041】
図8を参照して、再構成処理の学習モデル及びパターン変換処理の学習モデルの構築後の半導体デバイスSの解析処理の手順を説明する。最初に、コンピュータ19によって、検出器3、2次元カメラ5、照明装置7等が制御されることにより、半導体デバイスSを対象にした第1の光学画像及び測定画像が取得され記憶部27に保存される(ステップS201、ステップS202)。そして、コンピュータ19によって半導体デバイスSのCADデータが取得され、そのCADデータを基に第1のCAD画像が生成されて記憶部27に保存される(ステップS203)。その後、コンピュータ19へのユーザの選択入力に応じて、ステップS204~S205の処理と、ステップS206~S207の処理とのいずれかが実行される。
【0042】
すなわち、コンピュータ19の画像解析部31により、第1のCAD画像を対象に、記憶部27に記憶された学習モデルのデータが参照されてパターン変換処理が施されることにより、第2のCAD画像が取得される(ステップS204)。その後、画像解析部31により、第1の光学画像と、第2のCAD画像に所定の画像補正処理が加えられた第3のCAD画像とに基づいて位置合わせが行われる。最後に、画像解析部31によって、その位置合わせの結果を用いて、測定画像が第1のCAD画像と重畳されて表示装置25上に表示される(ステップS205)。
【0043】
また、画像解析部31により、第1の光学画像を対象に、記憶部27に記憶された学習モデルのデータが参照されて再構成処理が施されることにより、第2の光学画像が取得される(ステップS206)。その後、画像解析部31により、第2の光学画像と、第1のCAD画像とに基づいて位置合わせが行われる。最後に、画像解析部31によって、その位置合わせの結果を用いて、測定画像が第1のCAD画像と重畳されて表示装置25上に表示される(ステップS207)。
【0044】
以上説明した本実施形態にかかる観察システム1によれば、半導体デバイスSからの光を反映した第1の光学画像と、半導体デバイスSのパターン像を示す第1のCAD画像とが取得され、第1のCAD画像が機械学習による学習の結果に基づいた変換処理により、第1の光学画像に似せた第2のCAD画像に変換され、その第2のCAD画像と、第1の光学画像とが位置合わせされる。これにより、様々なプロセスルールが適用された半導体デバイスSを検査対象にした場合に、CAD画像上におけるパターンを光学画像に寄せるように変換してから光学画像と位置合わせをすることにより、位置合わせの精度を高めることができる。
【0045】
また、観察システム1によれば、第1の光学画像が機械学習による学習の結果に基づいた再構成処理により、第1のCAD画像に似せた第2の光学画像に変換され、その第2の光学画像と、第1のCAD画像とが位置合わせされる。これにより、様々なプロセスルールが適用された半導体デバイスSを検査対象にした場合に、光学画像上における不鮮明な部分をCAD画像に寄せるように変換してからCAD画像と位置合わせをすることにより、位置合わせの精度を高めることができる。
【0046】
特に、本実施形態においては機械学習としてディープラーニングが採用されている。この場合、様々なプロセスルールが適用された半導体デバイスSを検査対象にした場合であっても、CAD画像と光学画像のどちらか一方を他方に寄せるように効果的に変換することができる。
【0047】
また、本実施形態では、コンピュータ19の画像解析部31により、半導体デバイスS上の互いに対応する位置における第1の光学画像及び第1のCAD画像を用いて学習される。このような機能により、CAD画像と光学画像のどちらか一方を他方に似せるようにするための変換処理あるいは再構成処理を効率的に構築することができ、効率的に位置合わせを実現できる。
【0048】
ここで、機械学習を適用しない変換処理を用いた場合は、第1のCAD画像から特定のパターンとしてダミーパターンを抜き出すことで、第2のCAD画像を生成できる。例えば、半導体デバイスの世代あるいは種類によってはダミーパターンとダミー以外のパターンとでパターンの密度が異なることから光学画像におけるコントラストが異なる場合がある。その場合には、ダミーパターンのコントラストを合わせることによりCAD画像を光学画像に似せるように変換する必要がある。一方で、本実施形態のように機械学習を適用する変換処理の場合は、上記のようなダミーパターンが光学的にどのように表示されるかを学習することで、半導体のデバイスの世代あるいは種類が変化しても、光学画像へ近づけるための最適な変換が実現できるため、この変換を実行する画像解析部31によって精度の高い位置合わせを効率的に実現できる。
【0049】
また、本実施形態の画像解析部31は、位置合わせの結果を基に、第1の光学画像に対応して得られた測定画像と第1のCAD画像とを重畳して出力する機能を有する。このような機能により、測定画像における検査位置を視覚的に容易に認識させることができる。
【0050】
以上、本開示の種々の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0051】
例えば、上記実施形態の画像解析部31は、測定画像と第1のCAD画像とを位置合わせの結果を用いて重畳して表示させていたが、第1のCAD画像、あるいは第1のCAD画像の基となったCADデータのみを表示させてもよい。この場合、コンピュータ19は、表示された第1のCAD画像あるいはCADデータ上で、位置合わせの結果に基づいて光を照射する解析位置を設定させる機能を有していてもよい。また、コンピュータ19は、半導体デバイスSから検出された発光信号等の信号を、位置合わせの結果を基にCADデータに重畳して表示させる機能を有していてもよい。このように分解能の高いCADデータを表示させることにより、ユーザにとって位置の認識が容易となる。
【0052】
上記実施形態においては、変換処理により、第1のCAD画像から特定のパターンを抜き出すことで第2のCAD画像に変換してもよい。こうすれば、CAD画像を光学画像に効果的に似せるように変換でき、精度の高い位置合わせを効率的に実現できる。
【0053】
ここで、上記の特定のパターンはダミーパターンであってもよい。この場合、より精度の高い位置合わせを実現できる。
【0054】
上記実施形態においては、機械学習は、ディープラーニングであってもよい。この場合、様々なプロセスルールが適用された半導体デバイスを検査対象にした場合であっても、CAD画像と光学画像のどちらか一方を他方に寄せるように効果的に画像を変換することができる。
【0055】
また、半導体デバイス上の互いに対応する位置における第1の光学画像及び第1のCAD画像を用いて学習してもよい。かかる構成を採れば、CAD画像と光学画像のどちらか一方を他方に似せるようにするための画像の変換処理を効率的に構築することができ、効率的に位置合わせを実現できる。
【0056】
また、位置合わせの結果を基に、第1の光学画像に対応して得られた画像と第1のCAD画像とを重畳して出力する出力部あるいはステップをさらに備えていてもよい。かかる出力部あるいはステップを備えれば、光学画像における検査位置を視覚的に容易に認識させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
実施形態は、半導体デバイスを検査する半導体検査装置及び半導体検査方法を使用用途とし、半導体デバイスを対象に取得された光学画像とその半導体デバイスに対応するCAD画像とを精度よく位置合わせすることができるものである。
【符号の説明】
【0058】
1…観察システム、3…検出器(光検出器)、5…2次元カメラ(光検出器)、13…光学装置(光学系)、19…コンピュータ、29…画像処理部(受付部、画像生成部)、31…画像解析部(画像変換部、位置合わせ部)、S…半導体デバイス。