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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】相転移放熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
F28D15/02 102A
F28D15/02 L
F28D15/02 101B
F28D15/02 102H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021544782
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2019125968
(87)【国際公開番号】W WO2020155899
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】201910086904.3
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521338754
【氏名又は名称】株洲智▲熱▼技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲純▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲広▼帆
(72)【発明者】
【氏名】姚 春▲紅▼
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 秋成
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-130561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0003555(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0105404(US,A1)
【文献】国際公開第2011/121819(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相転移熱交換媒体が内部に設けられた相転移ユニットを含む相転移放熱装置であって、
前記相転移ユニットは蒸発部と凝縮部を含み、蒸発部の内部に蒸発室を有し、凝縮部の内部に凝縮室を有し、前記蒸発室と前記凝縮室が連通し、前記蒸発室内の相転移熱交換媒体は発熱源の熱を吸収して前記凝縮室へ移動可能であり、凝縮室は外部へ熱を放出することで発熱源を冷却し、
前記蒸発部は、弾性変形可能な薄壁により構成され、前記蒸発室の内部の作動圧力が正圧であり、前記発熱源と接触する、前記蒸発部の前記薄壁の接触面は、前記発熱源と前記蒸発部との接触効果が向上するように、正圧の前記作動圧力下で弾性変形するように構成されていることを特徴とする相転移放熱装置。
【請求項2】
前記蒸発室は、前記発熱源の平面構造と適合する平面状のキャビティであり、または、前記発熱源の曲面形状構造と適合する曲面状のキャビティであり、または、前記発熱源の多面体構造と適合する多面体状のキャビティであり、前記蒸発室が前記発熱源の形状と適合しない場合と比べて、前記発熱源と前記蒸発室との接触面積が増大することを特徴とする請求項1に記載の相転移放熱装置。
【請求項3】
前記凝縮室は蒸発室に直接連結されるか、又は接続管路を介して蒸発室に連結されることを特徴とする請求項1に記載の相転移放熱装置。
【請求項4】
前記凝縮部は複数の凝縮分岐板を含み、前記凝縮室は凝縮分岐板の内部に対応して設けられる平面状空洞であり、又は、
前記凝縮部は複数の凝縮分岐管を含み、前記凝縮室は凝縮分岐管の内部に対応して設けられる円筒形空洞であり、又は、
前記凝縮部は複数の凝縮テーパ管を含み、前記凝縮室は凝縮テーパ管の内部に対応して設けられる円錐形空洞であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の相転移放熱装置。
【請求項5】
前記蒸発部及び/又は前記凝縮部の内部に複数のリブ、突起又はフィンが設けられることで、耐圧能力を向上させることを特徴とする請求項4に記載の相転移放熱装置。
【請求項6】
前記凝縮部は凝縮天板をさらに含み、前記凝縮天板の内部に平面状凝縮室又は曲面状凝縮室を有し、凝縮天板の内部の前記凝縮室は、凝縮分岐板、凝縮分岐管又は凝縮テーパ管の内部の凝縮室と連通することを特徴とする請求項4に記載の相転移放熱装置。
【請求項7】
凝縮フィンをさらに含み、
前記凝縮フィンはろう付けによって凝縮分岐板、凝縮分岐管、または凝縮テーパ管の外面に接続され、前記凝縮室は前記凝縮フィンを通じて外部へ熱を放出することで前記発熱源を冷却することを特徴とする請求項4に記載の相転移放熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相転移放熱装置の技術分野に関し、特に熱流束の高い相転移放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットやモノのインターネットなどのソフトウェアコンピューティングの発展に伴い、コンピュータ、ノートコンピュータやサーバなどには、情報処理の高速化、情報記憶の高容量化が求められてきた。CPU及び内部メモリのパワー損失がますます大きくなるので、放熱装置の高熱流束化が期待される。さらに、CPU及び内部メモリのパワー密度が大きくなるに伴い、放熱装置の熱流束が高くなり、従来のヒートパイプは、ヒートパイプの内径のサイズ、相転移熱交換媒体などにより制限されて、熱伝達能力がCPU及び内部メモリの技術発展の要件を満たせなくなる。
【0003】
従来の銅水ヒートパイプ放熱装置及び一般的なフィン型放熱装置は放熱の要件を満たせないため、より高熱流束の3D相転移放熱装置又は液冷放熱装置が使用されるしかない。液冷放熱装置は、液冷装置や外付け熱交換器などの周辺設備を必要とし、コストが高く、しかもメンテナンスが複雑である。CPUの直接メーカーは全て放熱技術を突破することに取り込んでおり、その中でも、液冷放熱装置を試みるメーカーもあるが、液冷放熱装置では液冷源、分液器、クイックカップリングなどの複雑な内部付帯設備、及び外部の複雑な熱交換周辺設備が必要とされ、また、液冷の場合のリークのリスクが設備作動の安全性に影響を与えることを考慮して、普及させていない。
【0004】
現在の放熱装置では、基板内に複数本の湾曲ヒートパイプが設けられており、これらのヒートパイプの形状がさまざまである。従来の放熱装置は主として、以下の問題及び欠陥がある。
【0005】
まず、ヒートパイプの熱伝達限界による制限のため、従来の45mm×69mmのCPUの場合、直径Φ6のヒートパイプが多くとも3~4本配置されるしかなく、ヒートパイプのプロセスがすでに非常に洗練され、成熟しているが、このようなヒートパイプも毛細管限界がΦ6ヒートパイプ1本あたり40Wに達するしかない。このため、従来のヒートパイプ放熱装置は、熱流束が600J/(m2・s)よりも大きいCPUによる放熱の要件を満たすことができない。また、放熱風量の増加による放熱装置の熱抵抗向上が限られ、風量の増加に伴いアルミフィンの底部と頂部での温度差が増加し、放熱装置の実際の有効面積が少なくなり、放熱装置の熱交換による熱抵抗低下が非常に限られる。このため、従来のヒートパイプ放熱装置は、熱抵抗が0.016K/Wよりも低く、環境温度30℃の条件下で、CPUの表面温度が62℃以上に達する。
【0006】
次に、ヒートパイプは通常銅パイプであり、脱イオン水の相転移を通じてヒートパイプ内部の温度を均一とする。ヒートパイプのレイアウトの制限のため、CPUが接触する基板面の温度を均一とすることができないとともに、冷却空気と直接接触するアルミフィンの温度を均一とすることもできない。熱は最終的にアルミフィンを通じて冷却空気と熱交換されるようになり、従来のヒートパイプによる放熱装置の性能向上が限られる。
【0007】
最後に、従来のヒートパイプのほとんどは、赤銅をシェル材料、アルミ合金を基板材料とし、低温錫ろう付け又は粘着によりヒートパイプと基板の成形後の隙間を充填する。低温錫ろう付けの欠陥には、溶接前に放熱装置全体にニッケルメッキや銅メッキなどの表面処理を施す必要があり、溶接や表面処理によりコストが高くなり、また環境汚染をもたらすこと、はんだ付けによれば、ヒートパイプとアルミ合金基板の平面とが完全に充填されて、局所に孔隙が生じないことを確保しにくく、一方、ヒートパイプがパワーデバイスの下方に設けられて、熱流束が大きいので、孔隙があれば、CPUの局所での温度が上昇し、その結果、デバイスが損失されることが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術の問題を解決するために、本発明は、熱伝達効率を高め、熱拡散を促進するために、相転移放熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成させるために、本発明の相転移放熱装置の技術案は、具体的には、以下のとおりである。
【0010】
相転移熱交換媒体が内部に設けられた相転移ユニットを含む相転移放熱装置であって、前記相転移ユニットは蒸発部と凝縮部を含み、蒸発部の内部に蒸発室を有し、凝縮部の内部に凝縮室を有し、前記蒸発室と前記凝縮室が連通し、発熱源が蒸発室と直接接触し、前記蒸発室内の相転移熱交換媒体は発熱源の熱を吸収して前記凝縮室へ移動可能であり、凝縮室は外部へ熱を放出することで発熱源を冷却する。
【0011】
さらに、前記蒸発室は平面状、曲面状又は多面体状のキャビティであり、発熱源の形状と適合して、発熱源と蒸発室との接触面積を増大する。
【0012】
さらに、前記蒸発室は薄肉キャビティであり、蒸発室の内部の作動圧力が正圧であり、蒸発室と発熱源との接触面が弾性変形して、発熱源と蒸発室との接触効果を向上可能である。
【0013】
さらに、前記凝縮室は蒸発室に直接連結されるか、又は接続管路を介して蒸発室に連結される。
【0014】
さらに、前記凝縮部は複数の凝縮分岐板を含み、前記凝縮室は凝縮分岐板の内部に対応して設けられる平面状空洞であり、又は、
前記凝縮部は複数の凝縮分岐管を含み、前記凝縮室は凝縮分岐管の内部に対応して設けられる円筒形空洞であり、又は、
前記凝縮部は複数の凝縮テーパ管を含み、前記凝縮室は凝縮テーパ管の内部に対応して設けられる円錐形空洞である。
【0015】
さらに、前記蒸発部及び/又は前記凝縮部の内部に複数のリブ、突起又はフィンが設けられることで、負荷能力を向上させる。
【0016】
さらに、蒸発部には取り付けフレームが設けられ、発熱源は取り付けフレームを介して蒸発部に接続される。
【0017】
さらに、前記凝縮部は凝縮天板をさらに含み、前記凝縮天板の内部に平面状凝縮室又は曲面状凝縮室を有し、凝縮天板の内部の前記凝縮室は、凝縮分岐板、凝縮分岐管又は凝縮テーパ管の内部の凝縮室と連通する。
【0018】
さらに、凝縮部に連結される凝縮フィンをさらに含む。
【0019】
さらに、凝縮フィンはろう付けによって凝縮分岐板の外面に接続され、凝縮室は凝縮フィンを通じて外部へ熱を放出することで発熱源を冷却する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の相転移放熱装置は以下の利点を有する。
1)相転移ユニットは発熱源と直接接触するため、移行熱伝導板を増設する必要がなく、発熱源と相転移ユニットとの温度差が小さい。
2)相転移ユニットの蒸発部と発熱源の外形が適合し、熱源が平面構造である場合、蒸発室は平面状の薄肉空洞構造であり、熱源が曲面状構造である場合、蒸発室は曲面薄肉空洞構造であり、発熱源が相転移放熱装置の複数の面と接触可能である場合、蒸発室は多面体の薄肉空洞構造である。発熱源と相転移放熱装置との接触面積を最大とし、蒸発室の内部の相転移熱交換媒体と熱源との温度差を最小とすることが目的である。
3)相転移ユニットの蒸発部と発熱源との接触により、蒸発室の内部では、従来の相転移装置のように負圧又は微正圧ではなく、正圧状態である。発熱源の熱流束が増加するに伴い、蒸発室の内部の作動圧力が持続的に上昇し、蒸発室と発熱源との接触面が薄肉構造であるので、蒸発室の内部の圧力の上昇に伴い、相転移ユニットは発熱源と十分に接触でき、より緊密に結合され、熱伝達効果が高くなり、発熱源の熱流束が大きい場合、相転移熱交換媒体の気化により相転移ユニットの蒸発部の熱が迅速に拡散され、蒸発部全体の温度差が小さくなる。
4)相転移ユニットが三次元放熱構造であるので、相転移熱交換媒体が気化されると、相転移ユニットの任意の低温部位(低温部位では相転移熱交換媒体が凝縮して、低圧が生じる)に迅速に拡散することができ、それにより、相転移ユニットの温度が均一になり、熱伝達効率が高く、且つ熱伝達が均一になる。
【0021】
さらに、本発明の相転移放熱装置の製造には、銅メッキやニッケルメッキなどの表面処理プロセスが不要であり、放熱装置の相転移構造と冷却フィンは直接高温ろう付けで一体に溶接され、発熱源(例えばパワーデバイスCPU)と相転移放熱装置は接触して、低温はんだ付けで隙間が充填され、それにより、隙間の発生を回避し、本発明の相転移放熱装置の熱伝達限界を顕著に向上させる(200Wよりもはるかに高い)。
【0022】
本発明の相転移放熱装置は、チップ、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、記憶媒体、光源、電池パックなどのパワーエレクトロニクスデバイスの放熱に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】本発明の相転移熱装置の実施例1の斜視図である。
図1b図1aの相転移放熱装置の断面図である。
図2】本発明の相転移放熱装置の実施例2の斜視図である。
図3a】本発明の相転移放熱装置の実施例3の斜視図である。
図3b図3aの相転移放熱装置の断面図である。
図4a】本発明の相転移放熱装置の実施例4の斜視図である。
図4b図4aの相転移放熱装置の断面図である。
図5】本発明の相転移熱交換媒体の相転移ユニットにおける流動の模式図を示す。
図6】本発明の相転移熱交換媒体の相転移ユニットにおける流動の模式図を示す。
図7a】本発明の相転移放熱装置の実施例5の斜視図であり、蒸発部及び凝縮部は別々に設置され、管路を介して連通し、蒸発部は中空矩形キャビティを有し、凝縮部は複数の凝縮分岐板を含む。
図7b図7aの相転移放熱装置の断面図である。
図8a】本発明の相転移放熱装置の実施例6の斜視図であり、蒸発部及び凝縮部は別々に設置され、管路を介して連通し、蒸発部は中空矩形キャビティであり、凝縮部は複数の凝縮分岐管を含み、凝縮分岐管は複数の円筒形空洞を有する。
図8b図8aの相転移放熱装置の断面図である。
図9a】本発明の相転移放熱装置の実施例7の正面図であり、複数の凝縮分岐板は連通している。
図9b図9aの相転移放熱装置の断面図であり、複数の凝縮分岐板は凝縮天板を介して互いに連通している。
図9c図9aの相転移装置の斜視図であり、蒸発部は曲面構造であり、発熱源は相転移放熱装置の蒸発部で包まれている。
図10a】本発明の相転移放熱装置の実施例8の断面図である。
図10b図10aの相転移放熱装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、構造及び機能をよりよく理解できるように、以下、図面を参照して、本発明の相転移放熱装置をさらに詳しく説明する。
【0025】
本発明では、関連する用語の定義は以下のとおりである。
【0026】
熱流束:単位時間当たり単位面積で伝達される熱は熱流束と呼ばれ、q=Q/(S*t)-Qは熱、tは時間、Sは断面積、熱流束の単位は、J/(m2・s)である。
【0027】
熱伝達限界:相転移放熱装置(ヒートパイプを含む)が伝達可能な最大熱流束であって、サイズ、形状、相転移熱交換媒体や作動温度等に関連しており、一般的に使用されるヒートパイプは、毛細管限界、飛散限界、沸騰限界、音速限界、粘性限界などの熱伝達限界があり、ヒートパイプの熱伝達能力が最小の限界の値により決定される。
【0028】
熱伝導率:物体の内部のうち、距離1m、面積1m2の熱伝導方向に垂直な2つの平行平面を取り、2つの平面の温度差が1Kであれば、1秒内に一方の平面から他方の平面に伝導される熱をこの物質の熱伝導率として定義し、単位はワット・メートル-1・ケルビンメートル-1(W・m-1・K-1)。
【0029】
熱抵抗:熱が物体上で伝達される場合、物体の両端の温度差と熱源のパワーとの間の比として定義され、単位はワットあたりのケルビンメートル(K/W)又はワットあたりの摂氏度(℃/W)である。
【0030】
図1a~10bに示すように、本発明の相転移放熱装置10は、蒸発部11、凝縮部12、蒸発部11又は凝縮部12内に設けられる相転移熱交換媒体20を含み、蒸発部11と凝縮部12の両方により三次元熱交換構造が構成される。相転移放熱装置10は、作動状態である場合、内部の作動圧力が0.15MPaよりも大きく、正圧状態である場合、蒸発部の外壁面が発熱源と直接接触する。
【0031】
上記蒸発部11と凝縮部12は直接接続されてもよく(図1a~図6参照)、上記蒸発部11と凝縮部12は管路を介して接続される別体式構造としてもよい(図7a~図8b参照)。さらに、上記蒸発部11の形状と発熱源の形状が適合し、蒸発室は、発熱源と蒸発部の外壁面との接触面積を増大するために、平面状、曲面状又は多面体状の薄肉キャビティであってもよく、蒸発部11と発熱源は、少なくとも1つの適切な接触面を有し、それにより、両方が緊密に接触しており、発熱源と、蒸発室の内壁が直接接触する相転移熱交換媒体との温度差が減少する(図9a~10b参照)。
【0032】
よって、本発明では、相転移ユニットの蒸発部と発熱源の外形が適合し、熱源が平面構造である場合、蒸発室は平面状薄肉空洞構造であり、熱源が曲面状構造である場合、蒸発室は曲面薄肉空洞構造であり、発熱源が相転移放熱装置の複数の面と接触可能である場合、蒸発室は多面体の薄肉空洞構造である。発熱源と相転移放熱装置との接触面積を最大として、蒸発室の内部の相転移熱交換媒体と熱源との温度差を最小とすることが目的である。
【0033】
相転移ユニットの蒸発部と発熱源が緊密に接触しており、蒸発室の内部では、従来の相転移装置のように負圧又は微正圧ではなく、正圧状態であり、発熱源の熱流束が増加するに伴い、蒸発室の内部の作動圧力が持続的に上昇し、蒸発室と発熱源との接触面が薄肉構造であるので、蒸発室の内部の圧力の上昇に伴い、相転移ユニットは発熱源と十分に接触でき、より緊密に結合され、熱伝達効果が高くなり、発熱源の熱流束が大きい場合、相転移熱交換媒体の気化により相転移ユニットの蒸発部の熱が迅速に拡散され、蒸発部全体の温度温が小さくなる。
【0034】
図1a~1bには、本発明の第1の実施例が示されており、本発明の相転移放熱装置10は相転移ユニットを含み、相転移ユニットは空洞となる密閉構造を内部に備え、相転移ユニットの内部に相転移熱交換媒体20が収容されており、相転移ユニットの内部空洞は全体として連通している構造であり、相転移熱交換媒体20は相転移ユニットの内部空洞全体を循環流動することができる。
【0035】
相転移ユニットは蒸発部11と凝縮部12を有し、蒸発部11の内部に蒸発室を有し、凝縮部12の内部に凝縮室を有し、蒸発部11の蒸発室は凝縮部12の凝縮室と連通し、蒸発室と凝縮室により相転移ユニットの内部空洞が構成され、凝縮部12は凝縮フィンに連結される。蒸発室内の相転移熱交換媒体20は発熱源30の熱を吸収して気化して蒸発し、凝縮室に流動して冷却して液化し、凝縮室は凝縮フィンを介して外部へ熱を放出する。これによって、相転移放熱装置10は、発熱源30の熱を空気又は他の気体の冷却媒体に伝達して、発熱源を放熱して冷却する効果を達成させる。
【0036】
上記相転移ユニットの蒸発部11は、内部に空洞を有する平面板状体又は曲面板状体であり、蒸発部11の内部に平面状蒸発室又は曲面状蒸発室を有し、蒸発部11の内部の平面状空洞又は曲面状空洞は凝縮部12の内部の凝縮室と連通する。
【0037】
凝縮部12は内部に空洞を有する複数の凝縮分岐板を含み、凝縮分岐板の内部が平面状凝縮室であり、複数の凝縮分岐板は蒸発部11に接続され、凝縮分岐板の内部の平面状凝縮室は蒸発部11の内部の平面状蒸発室又は曲面状蒸発室と連通する。上記複数の凝縮分岐板は、好ましくは平行に並設され、凝縮分岐板は蒸発部11に垂直に接続され、凝縮分岐板の外側に凝縮フィンが接続され、凝縮分岐板内の熱が凝縮フィンを介して外部へ放出される。
【0038】
さらに、図2に示すように、凝縮部12は凝縮天板121をさらに含み、凝縮天板121の内部に平面状凝縮室又は曲面状凝縮室を有し、凝縮天板121の内部の凝縮室は凝縮分岐板の内部の凝縮室と連通し、凝縮部12は全体として櫛状である。相転移熱交換媒体20は、蒸発部11の蒸発室内で吸熱し、凝縮部12の凝縮分岐板及び凝縮天板121を介して放熱し、蒸発部11の蒸発室と凝縮分岐板及び凝縮天板121内の凝縮室とで循環流動することで、発熱源30を放熱する。凝縮天板121は凝縮分岐板と一体成形されてもよい。相転移ユニットの蒸発部11と凝縮部12も好ましくは一体成形構造である。
【0039】
図3a~3bに示すように、本実施例では、凝縮部12の凝縮分岐板は他の形態を取り、つまり、前記凝縮部12は複数の円筒形の凝縮分岐管を含み、前記凝縮室は凝縮分岐管の内部に対応して設けられる円筒形空洞である。図4a~4bに示すように、前記凝縮部12は複数の凝縮テーパ管をさらに含んでもよく、前記凝縮室は凝縮テーパ管の内部に対応して設けられる円錐形空洞である。実際に使用する際には、構造のニーズに応じて凝縮分岐板、凝縮分岐管又は凝縮テーパ管を使用してもよい。
【0040】
上記蒸発部11は発熱源30と直接接触し、つまり、蒸発部11の表面(蒸発室の外面)は発熱源30と直接接触し、蒸発部11の表面は従来の放熱装置の基板の代わりとして機能し、それにより、発熱源30と蒸発部11との熱伝達効率が高まる。蒸発部11は、好ましくは、内部に空洞を有する平面板状体であり、蒸発部11の一方の側に接触吸熱面を有し、発熱源30は平面状の熱源面を有し、蒸発部11の接触吸熱面は発熱源30の熱源面と接触して設けられる。
【0041】
上記蒸発部には、発熱源と相転移放熱装置を一体に取り付けるための取り付けフレームが設けられてもよく、取り付けフレームは発熱源と蒸発部を固定して接続することにより、蒸発室の内部の圧力増加による蒸発部の塑性変形を回避することができる。
【0042】
上記発熱源30の熱源面の面積が、相転移ユニットの蒸発部11の接触吸熱面の面積よりも小さく、内部の相転移熱交換媒体20は相転移流動を通じて発熱源30から熱を二次元方向に沿って迅速に伝達し、相転移ユニットの蒸発室内の温度の均一性を確保できる。気化した相転移熱交換媒体20は凝縮分岐板に入って第3の方向に沿って流動し、この第3の方向は平面板状体の蒸発部11に垂直であり、すなわち、蒸発部11の内部の二次元放熱方向に垂直である。
【0043】
図5~6には、相転移ユニットにおける相転移熱交換媒体20の循環流動状況が示されており、蒸発部11の相転移熱交換媒体20は、発熱源30の熱を吸収した後、蒸発部11の内部の蒸発室内に二次元平面に沿って拡散し、次に、気化して蒸発部11の凝縮部12に垂直な凝縮分岐板に流れ、さらに凝縮天板121内に流れ、凝縮分岐板及び凝縮天板121の外面には凝縮フィンが接続されており、凝縮分岐板及び凝縮天板121内の相転移熱交換媒体20に含まれる熱が、凝縮フィンを介して外部へ拡散し、それにより、より有利な放熱効果や性能が得られる。
【0044】
図7a、7b、8a、8bに示すように、これらの実施例では、前記凝縮部12の凝縮室は、蒸発部11と凝縮部12が発熱源30の内部システムの構造に応じて合理的に配置できるように、直接ではなく、管路を介して蒸発部11に連結されている。図7a、7bは、凝縮分岐板を有する凝縮部を示し、図8a、8bは凝縮分岐管を有する凝縮部を示す。
【0045】
図7a~8bに示す実施例では、凝縮部が管路を介して蒸発部に接続されるため、凝縮部と蒸発部を個別に柔軟に配置することができる。例えば、凝縮部12は水平又は垂直に配置され、発熱源が位置するシステムの構造設計のニーズに応じて、構造や配置方向を変更してもよい。発熱源の熱が、蒸発部11の薄壁を介して相転移熱交換媒体20に直接伝達され、相転移熱交換媒体20は吸熱して相転移し、相転移放熱装置10内の蒸発部11と凝縮部12との間で圧力差を生じさせ、それにより、相転移熱交換媒体20を凝縮部12へ流動させ、相転移熱交換媒体は凝縮部12で凝縮した後、重力や毛細管力を通じて蒸発部11に戻り、このように循環する。
【0046】
図9a、9b、9c、10a、10bに示すように、これらの実施例では、蒸発部11の形状が発熱源の形状と適合し、蒸発室は、発熱源と蒸発部の外壁面との接触面積を増大するために、平面状、曲面状又は多面体状の薄肉キャビティであってもよく、蒸発部11と発熱源は、少なくとも1つの、接続に適した適切な接触面を有し、それにより、両方が緊密に接触しており、発熱源と、蒸発室の内壁が直接接触する相転移熱交換媒体との温度差が減少する。
【0047】
図9a、9b、9cに示す蒸発部11は円筒形タンクであり、図10a、10bに示す蒸発部は角柱形タンクであり、発熱源30は相転移ユニットの蒸発部11内に直接取り付けられてもよく、発熱源30と蒸発部11は複数の接触熱交換面を有する。
【0048】
これによって、相転移ユニットの蒸発部11は凝縮部12と連通し、相転移ユニットの一端の蒸発部11は相転移ユニットの他端の凝縮部12と直接連通し、相転移ユニットの内部の相転移熱交換媒体20による蒸発・凝縮において、熱は相転移ユニットの一端から相転移ユニットの他端へかける水平方向、垂直方向において三次元的に拡散し、それにより、相転移ユニットの内部の空洞全体、特に凝縮部12の凝縮室の温度の均一性が高まる。
【0049】
さらに、上記蒸発部11及び/又は前記凝縮部12の内部には、負荷能力を高めるために、複数のリブ、突起又はフィンが設けられる。
【0050】
上記相転移ユニット及び冷却フィンは、銅又はアルミ材料で製造されてもよく、例えば、相転移ユニット及び冷却フィンは、全て銅又はアルミ材料で製造され、相転移ユニット及び冷却フィンは、好ましくは、ろう付けによって接続され、相転移ユニットと冷却フィンとの接触熱抵抗を低下させて、冷却フィンと発熱源30との間の温度差を小さくする。発熱源30(例えばパワーデバイスCPU)と相転移放熱装置10(例えば蒸発部11)は接触して接続された後、隙間の発生を回避するために低温はんだ付けで隙間を充填してもよい。
【0051】
冷却フィンと凝縮分岐板の外壁が一体に溶接されることによって、凝縮分岐板の負荷能力が高くなり、ラジエータが作動する際には、凝縮部12及び蒸発部11の内部の作動圧力が増加し、例えば1MPa以上に増加すると、冷却フィンと凝縮分岐板が溶接されてなる交差構造により、作動に必要な凝縮部12の強度が確保され、凝縮部12の変形が回避され、ラジエータの正常な作動が確保される。
【0052】
本発明の相転移放熱装置は、チップ、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、記憶媒体、光源、電池パックなどのパワーエレクトロニクスデバイスの放熱に適用できる。
【0053】
なお、本発明はいくつかの実施例によって説明されているが、当業者に公知のように、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、これらの特徴及び実施例について様々な変化や等価置換を行ってもよい。また、本発明に基づいて、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、具体的な状況及び材料に適用できるようにこれらの特徴及び実施例について修正してもよい。このため、本発明は、ここで開示される具体的な実施例により制限されず、本出願の特許請求の範囲に入る実施例は全て本発明の特許範囲に含まれる。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b