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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】中空樹脂粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240105BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20240105BHJP
   C08F 212/06 20060101ALI20240105BHJP
   C08F 212/34 20060101ALI20240105BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
C08F2/18
C08F212/06
C08F212/34
C08F220/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021553404
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039134
(87)【国際公開番号】W WO2021085189
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019195808
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】松浦 春彦
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/040376(WO,A1)
【文献】特開2016-069619(JP,A)
【文献】特開2000-313818(JP,A)
【文献】国際公開第2009/112382(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/067638(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子の製造方法であって、
該中空樹脂粒子の平均粒子径が0.1μm~1.270μmであり、
該シェル部が、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、および式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含み、
該モノマー組成物中の、該芳香族系架橋性モノマー(a)と該芳香族系単官能モノマー(b)と該(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)の合計の含有割合が80重量%~100重量%であり、
分散安定剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む水溶液に、該モノマー組成物と重合開始剤と沸点100℃未満の有機溶媒を含む有機混合溶液を分散させ、懸濁重合を行う、
中空樹脂粒子の製造方法。
【化1】
(R1はHまたはCH3を表し、R2はH、アルキル基,またはフェニル基を表し、R3-Oは炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは該オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。)
【請求項2】
前記オキシアルキレン基が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記モノマー組成物が、芳香族系架橋性モノマー(a)を10重量%~70重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を10重量%~70重量%、および一般式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を0.5重量%~30重量%含む、請求項1または2に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記シェル部が、前記芳香族系ポリマー(P1)と、さらに、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、スチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である非架橋性ポリマー(P2)を含む、請求項1から3までのいずれかに記載の中空樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記芳香族系架橋性モノマー(a)がジビニルベンゼンである、請求項1から4までのいずれかに記載の中空樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記芳香族系単官能モノマー(b)がスチレンおよびエチルビニルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から5までのいずれかに記載の中空樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空樹脂粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を用いた情報処理の高速化を図るため、多層プリント基板の絶縁層を低誘電化、低誘電正接化する試みがなされている。その一環として、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空粒子を熱硬化性樹脂に混在させることで、樹脂層に空域を導入し、低誘電化、低誘電正接化を図る検討がなされている。
【0003】
中空粒子として、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをはじめとするアクリル系多官能モノマーを主成分としたモノマーを疎水性溶剤と共に懸濁重合することでアクリル系中空樹脂粒子が得られることが報告されている(特許文献1)。
【0004】
一般に、アクリル系樹脂は比誘電率、誘電正接の数値が高いことが知られている。このことから、特許文献1に記載のアクリル系中空樹脂粒子は、樹脂層の低誘電化、低誘電正接化を図る目的に対しては不向きである。
【0005】
また、中空粒子として、例えば、ジビニルベンゼンを炭素数8~18の飽和炭化水素類(具体的には、ヘキサデカン)と共に懸濁重合することでスチレン系中空樹脂粒子を得られること(特許文献2)が報告されている。
【0006】
特許文献2に記載のスチレン系中空樹脂粒子は、アクリル系中空樹脂粒子に比べて、比誘電率、誘電正接の低い素材(架橋性ポリスチレン)からなる。このため、樹脂層の低誘電化、低誘電正接化を図る目的には有効な粒子である。しかし、その製造には、炭素数8~18の飽和炭化水素類(具体的には、ヘキサデカン)を使用しているため、蒸留等による中空部分からの溶媒除去が難しく、得られるスチレン系中空樹脂粒子中に炭素数8~18の飽和炭化水素類が残存しており、中空部分を完全に空気に置換したスチレン系中空樹脂粒子が得られ難い。また、中空部分を完全に空気に置換したスチレン系中空樹脂粒子とするためには、上記のような溶媒除去のために製造コストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6513273号
【文献】特開2002-080503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、樹脂層に空域を導入して、低誘電化、低誘電正接化を可能とする中空樹脂粒子であって、中空部分を簡易に形成させて得ることができる、中空樹脂粒子を提供することにある。また、そのような中空樹脂粒子を簡易に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、
該シェル部が、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、および式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含む。
【化1】
(RはHまたはCHを表し、RはH、アルキル基,またはフェニル基を表し、R-Oは炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは該オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。)
【0010】
一つの実施形態においては、上記オキシアルキレン基が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0011】
一つの実施形態においては、上記モノマー組成物が、芳香族系架橋性モノマー(a)を10重量%~70重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を10重量%~70重量%、および一般式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を0.5重量%~30重量%含む。
【0012】
一つの実施形態においては、上記シェル部が、上記芳香族系ポリマー(P1)と、さらに、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、スチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である非架橋性ポリマー(P2)を含む。
【0013】
一つの実施形態においては、上記芳香族系架橋性モノマー(a)がジビニルベンゼンである。
【0014】
一つの実施形態においては、上記芳香族系単官能モノマー(b)がスチレンおよびエチルビニルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0015】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の製造方法は、
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の製造方法であって、
分散安定剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む水溶液に、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、および式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物と重合開始剤と沸点100℃未満の有機溶媒を含む有機混合溶液を分散させ、懸濁重合を行う。
【化2】
(RはHまたはCHを表し、RはH、アルキル基,またはフェニル基を表し、R-Oは炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは該オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。)
【0016】
本発明の実施形態による半導体材料は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、樹脂層に空域を導入して、低誘電化、低誘電正接化を可能とする中空樹脂粒子であって、中空部分を簡易に形成させて得ることができる、中空樹脂粒子を提供することができる。また、そのような中空樹脂粒子を簡易に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1で得られた中空樹脂粒子(1)のTEM写真図である。
図2】実施例2で得られた中空樹脂粒子(2)のTEM写真図である。
図3】実施例3で得られた中空樹脂粒子(3)のTEM写真図である。
図4】実施例4で得られた中空樹脂粒子(4)のTEM写真図である。
図5】実施例5で得られた中空樹脂粒子(5)のTEM写真図である。
図6】実施例6で得られた中空樹脂粒子(6)のTEM写真図である。
図7】実施例7で得られた中空樹脂粒子(7)のTEM写真図である。
図8】実施例8で得られた中空樹脂粒子(8)のTEM写真図である。
図9】実施例9で得られた中空樹脂粒子(9)のTEM写真図である。
図10】実施例10で得られた中空樹脂粒子(10)のTEM写真図である。
図11】実施例11で得られた中空樹脂粒子(11)のTEM写真図である。
図12】実施例12で得られた中空樹脂粒子(12)のTEM写真図である。
図13】比較例1で得られた粒子(C1)のTEM写真図である。
図14】比較例2で得られた粒子(C2)のTEM写真図である。
図15】比較例3で得られた粒子(C3)のTEM写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0020】
≪≪1.中空樹脂粒子≫≫
≪1-1.中空樹脂粒子の構造≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子である。ここでいう中空とは、内部が樹脂以外の物質、例えば、気体や液体等で満たされている状態を意味し、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、気体で満たされている状態を意味する。
【0021】
中空部分は、1つの中空領域からなるものであってもよいし、複数の中空領域からなるものであってもよい。シェル部を構成する樹脂成分が相対的に多くなり、基材等の中空部分への浸入を防ぐ観点から、中空部分は1つの中空領域からなることが好ましい。
【0022】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm~5.0μmであり、より好ましくは0.15μm~1.0μmであり、さらに好ましくは0.2μm~0.8μmであり、特に好ましくは0.3μm~0.6μmである。中空樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。中空樹脂粒子の平均粒子径が0.1μm未満の場合、シェル部の厚みが相対的に薄くなるため、十分な強度を有する中空樹脂粒子とならないおそれがある。中空樹脂粒子の平均粒子径が5.0μmより大きい場合、懸濁重合中にモノマー成分が重合して生じるポリマーと溶剤との相分離が生じにくくなるおそれがあり、これによってシェル部の形成が困難となるおそれがある。
【0023】
≪1-2.シェル部≫
シェル部は、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含む。シェル部が、このような、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含むことにより、本発明の効果が発現し得る。特に、芳香族系ポリマー(P1)を構成するモノマーとして、特定構造の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を採用することにより、本発明の効果が発現し得る。
【0024】
シェル部中の芳香族系ポリマー(P1)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは60重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは80重量%~100重量%であり、特に好ましくは90重量%~100重量%である。
【0025】
<芳香族系ポリマー(P1)>
芳香族系ポリマー(P1)は、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる。すなわち、芳香族系ポリマー(P1)は、芳香族系架橋性モノマー(a)由来の構造単位、芳香族系単官能モノマー(b)由来の構造単位、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)由来の構造単位を有する。
【0026】
モノマー組成物は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、芳香族系架橋性モノマー(a)を10重量%~70重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を10重量%~70重量%、および(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を0.5重量%~30重量%含み、より好ましくは、芳香族系架橋性モノマー(a)を20重量%~65重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を20重量%~65重量%、および(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を1重量%~25重量%含み、さらに好ましくは、芳香族系架橋性モノマー(a)を30重量%~60重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を30重量%~60重量%、および(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を1.5重量%~20重量%含み、特に好ましくは、芳香族系架橋性モノマー(a)を40重量%~50重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を40重量%~50重量%、および(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を2重量%~15重量%含む。
【0027】
モノマー組成物は、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含む。モノマー組成物中の、芳香族系架橋性モノマー(a)と芳香族系単官能モノマー(b)と(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)の合計の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは80重量%~100重量%であり、より好ましくは85重量%~100重量%であり、さらに好ましくは90重量%~100重量%であり、特に好ましくは95重量%~100重量%である。
【0028】
モノマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)以外の、任意の適切なその他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0029】
(芳香族系架橋性モノマー(a))
芳香族系架橋性モノマー(a)は、架橋性を有する芳香族系モノマーであれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な芳香族系架橋性モノマーを採用し得る。このような芳香族系架橋性モノマー(a)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレートなどが挙げられる。本発明の効果をより一層発現させ得る点、および、反応性の点から、芳香族系架橋性モノマー(a)としては、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0030】
芳香族系架橋性モノマー(a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0031】
(芳香族系単官能モノマー(b))
芳香族系単官能モノマー(b)は、単官能の芳香族系モノマーであれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な芳香族系単官能モノマーを採用し得る。このような芳香族系単官能モノマー(b)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、例えば、スチレン、エチルビニルベンゼン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンなどが挙げられる。本発明の効果をより一層発現させ得る点、および、反応性の点から、芳香族系単官能モノマー(b)としては、スチレンおよびエチルビニルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0032】
芳香族系単官能モノマー(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
((メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c))
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)は、式(1)により表される。
【化3】
【0034】
式(1)中、RはHまたはCHを表す。
【0035】
式(1)中、RはH、アルキル基,またはフェニル基を表す。
【0036】
式(1)中、R-Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。すなわち、式(1)中、Rは、炭素原子数2~18のアルキレン基を表す。
【0037】
式(1)中、R-Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2~8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基である。また、R-Oが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、R-Oの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、ここでいう付加形態は、形態そのものを意味するものであり、付加反応によって得られなければならないことを意味するものではない。
【0038】
式(1)中、R-Oとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基(代表的には、オキシテトラメチレン基)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0039】
式(1)中、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数(「鎖長」と称することがある)を表す。mは、1~100の数であり、好ましくは1~40の数であり、より好ましくは2~30の数であり、さらに好ましくは3~20の数であり、特に好ましくは4~18の数であり、最も好ましくは5~15の数である。mが上記範囲内にあることにより、本発明の効果がより発現し得る。
【0040】
式(1)中、R-Oが2種以上の場合、例えば、オキシエチレン基(CO)とオキシプロピレン基(CO)からなる場合、mは、それぞれのオキシアルキレン基の平均付加モル数の合計となる。具体的には、例えば、-(R-O)-が、-[(CO)(CO)]-である場合(上述の通り、付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい)、m=p+qとなる。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、例えば、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、プロポキシポリエチレングリコールメタクリレート、ブトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヘキサオキシポリエチレングリコールメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールテトラメチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート、モノエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどが挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)としては、市販品も採用でき、例えば、日油株式会社製の商品名「ブレンマー」シリーズが採用できる。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0044】
<非架橋性ポリマー(P2)>
シェル部は、芳香族系ポリマー(P1)と、さらに、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、スチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である非架橋性ポリマー(P2)を含んでいてもよい。
【0045】
シェル部中の非架橋性ポリマー(P2)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0重量%~40重量%であり、より好ましくは0重量%~30重量%であり、さらに好ましくは0重量%~20重量%であり、特に好ましくは0重量%~10重量%である。
【0046】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα―オレフィンなどが挙げられる。モノマー組成物への溶解性の観点から、原料に長鎖のα-オレフィンを使用した側鎖結晶性ポリオレフィン、メタロセン触媒で製造された低分子量ポリオレフィンやオレフィンオリゴマーの使用が好ましい。
【0047】
スチレン系ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体などが挙げられる。
【0048】
(メタ)アクリル酸系ポリマーとしては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0049】
スチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーとしては、例えば、スチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-プロピル(メタ)アクリレート共重合体などが挙げられる。
【0050】
≪1-3.中空樹脂粒子の比誘電率≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の比誘電率は、好ましくは1.0~2.5であり、より好ましくは1.0~2.4であり、さらに好ましくは1.0~2.3である。本発明の実施形態による中空樹脂粒子の比誘電率が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。本発明の実施形態による中空樹脂粒子の比誘電率が2.5を上回る場合、中空樹脂粒子を、例えば、熱硬化性樹脂に混在させても、十分な低誘電化効果を得ることができない。
【0051】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の比誘電率は、例えば「混合系の誘電率」(応用物理、第27巻、第8号(1958))を参考に算出することができる。分散媒と中空樹脂粒子の混合系の比誘電率をε、分散媒となる基材(例えば、ポリイミドやエポキシ等の樹脂組成物)の比誘電率をε、中空樹脂粒子の比誘電率をε、混合系中の中空樹脂粒子の体積率をφとした場合、下記式が成り立つ。すなわち、ε、ε、φを実験的に求めれば、中空樹脂粒子の比誘電率εを算出することができる。
【数1】
【0052】
なお、分散媒と中空樹脂粒子の混合系中の中空樹脂粒子の体積率φは以下のように求めることができる。
【数2】
【0053】
中空樹脂粒子の密度はピクノメーター(コーテック株式会社、TQC50mL比重瓶)と液状ポリマーであるARUFON UP―1080(東亜合成株式会社、密度1.05g/cm)を用いて実験的に求めることができる。具体的には、中空樹脂粒子の割合が10重量%となるよう、中空樹脂粒子とARUFON UP―1080を遊星攪拌脱泡機(KURABO社製、マゼルスターKK-250)を用いて脱泡攪拌し、評価用混合物を作製する。評価用混合物を容量50mLのピクノメーターに充填し、混合物で満たされたピクノメーターの重量から、空の状態のピクノメーターの重量を差し引くことで充填した評価用混合物の重量を算出する。この値から、以下式を用いて中空樹脂粒子の密度を算出することができる。
【数3】
【0054】
≪1-4.中空樹脂粒子の用途≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、各種用途に採用し得る。本発明の効果をより活用し得る点で、例えば、層間絶縁膜、ドライフィルムレジスト、ソルダーレジスト、ボンディングワイヤ、マグネットワイヤ、半導体封止材、エポキシ封止材、モールドアンダーフィル、アンダーフィル、ダイボンドペースト、バッファーコート材、銅張積層板、フレキシブル基板などの半導体材料に好適である。これらの中でも、層間絶縁膜、ソルダーレジスト、マグネットワイヤ、エポキシ封止材、アンダーフィル、バッファーコート材、銅張積層板、フレキシブル基板などの半導体材料に、特に好適である。このような半導体材料に一般的に用いられる、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリビスマレイミド、エポキシ樹脂に、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を添加することによって、低誘電化、低誘電正接化を図ることができる。すなわち、本発明の実施形態における半導体材料は、本発明の実施形態による中空樹脂粒子を含む。また、本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、塗料組成物、化粧料、紙被覆組成物、断熱性組成物、光拡散性組成物、光拡散フィルム等の用途でも使用できる。
【0055】
≪≪2.中空樹脂粒子の製造方法≫≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の製造方法は、分散安定剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む水溶液に、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、および式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物と重合開始剤と沸点100℃未満の有機溶媒を含む有機混合溶液を分散させ、懸濁重合を行う。
【化4】
(RはHまたはCHを表し、RはH、アルキル基,またはフェニル基を表し、R-Oは炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは該オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。)
【0056】
水溶液中での有機混合溶液の分散は、水溶液中で有機混合溶液を液滴状で存在させることができさえすれば、特に限定されず、公知の方法で行い得る。
【0057】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の製造方法においては、有機混合溶液に含まれるモノマー組成物が、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、および(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むことにより、懸濁重合で用いる有機溶媒として沸点100℃未満の有機溶媒を好ましく使用でき、得られる中空樹脂粒子の中空部分からの溶媒除去が容易になり、製造コストの低減が可能となる。
【0058】
≪2-1.水溶液(水相)≫
水溶液は、水性媒体と、分散安定剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0059】
水性媒体としては、例えば、水、水と低級アルコール(メタノール、エタノール等)との混合媒体などが挙げられる。
【0060】
分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。また、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用できる。さらに、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩;ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物;なども使用できる。
【0061】
分散安定剤の添加量は、有機混合溶液100重量部に対して、0.5重量部~10重量部が好ましい。分散安定剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0062】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0063】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等の非反応性のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム等の反応性のアニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0064】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルトリエチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキルジエチルアンモニウム塩、N-ポリオキシアルキレン-N,N,N-トリアルキルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0065】
両性イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル塩、亜リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。
【0066】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。
【0067】
界面活性剤の添加量は、有機混合溶液100重量部に対して、0.01重量部~1重量部が好ましい。界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0068】
水溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。
【0069】
≪2-2.有機混合溶液(油相)≫
有機混合溶液は、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、および(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物と重合開始剤と沸点100℃未満の有機溶媒を含む。
【0070】
有機混合溶液に含まれるモノマー組成物としては、≪≪1.中空樹脂粒子≫≫の≪1-2.シェル部≫の<芳香族系ポリマー(P1)>の項目における説明をそのまま援用し得る。
【0071】
重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、例えば、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;などが挙げられる。
【0072】
重合開始剤の添加量は、モノマー組成物100重量部に対して、0.1~5重量部の範囲が好ましい。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0073】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子の製造方法において好適な、沸点100℃未満の有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、などが挙げられる。
【0074】
沸点100℃未満の有機溶媒は、混合溶媒であってもよい。
【0075】
沸点100℃未満の有機溶媒の添加量は、モノマー組成物100重量部に対して、20量部~250重量部が好ましい。
【0076】
有機混合溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、≪≪1.中空樹脂粒子≫≫の≪1-2.シェル部≫の<非架橋性ポリマー(P2)>が挙げられる。
【0077】
非架橋性ポリマー(P2)の添加量は、モノマー組成物100重量部に対して、0重量部~67重量部が好ましい。非架橋性ポリマー(P2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0078】
≪2-3.懸濁重合≫
水溶液中で有機混合溶液を分散させ、形成される懸濁液を重合し、好ましくは後加熱することにより、中空樹脂粒子が得られる。
【0079】
分散は、水溶液中で有機混合溶液を液滴状で存在させることができさえすれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散方法を採用し得る。このような分散方法としては、代表的には、ホモジナイザーを用いた分散方法であり、例えば、超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
【0080】
重合温度は、懸濁重合に適した温度であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合温度を採用し得る。このような重合温度としては、好ましくは30℃~80℃である。
【0081】
重合時間は、懸濁重合に適した時間であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合時間を採用し得る。このような重合時間としては、好ましくは1時間~20時間である。
【0082】
重合後に好ましく行う後加熱は、完成度の高い中空樹脂粒子を得るために好適な処理である。
【0083】
重合後に好ましく行う後加熱の温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度を採用し得る。このような後加熱の温度としては、好ましくは70℃~120℃である。
【0084】
重合後に好ましく行う後加熱の時間は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な時間を採用し得る。このような後加熱の時間としては、好ましくは1時間~10時間である。
【実施例
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0086】
(平均粒子径)
動的光散乱法を利用して、中空樹脂粒子または粒子のZ平均粒子径を測定し、測定されたZ平均粒子径を得られた中空樹脂粒子または粒子の平均粒子径とした。
すなわち、まず、得られたスラリー状の中空樹脂粒子または粒子をイオン交換水で希釈し、0.1重量%に調整した水分散体にレーザー光を照射し、中空樹脂粒子または粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定した。そして、検出された中空樹脂粒子または粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により中空樹脂粒子または粒子のZ平均粒子径を求めた。
このZ平均粒子径の測定は、市販の粒子径測定装置で簡便に実施できる。以下の実施例および比較例では、粒子径測定装置(マルバーン社製ゼータサイザーナノZS)を使用してZ平均粒子径を測定した。通常、市販の粒子径測定装置は、データ解析ソフトが搭載されており、データ解析ソフトが測定データを自動的に解析することでZ平均粒子径を算出できるようになっている。
【0087】
(TEM測定:中空樹脂粒子または粒子の中空の有無と形状の観察)
乾燥粉体としての中空樹脂粒子または粒子に対し、メイワフォーシス社製「オスミウムコータNeoc-Pro」コーティング装置を用いて表面処理(10Pa、5mA、10秒)を行った。次いで、中空樹脂粒子または粒子をTEM(透過型電子顕微鏡、日立ハイテクノロジーズ社製H-7600)にて観察し、中空の有無および中空樹脂粒子または粒子の形状を確認した。この時、加速電圧は80kVとし、倍率は5000倍または1万倍として撮影した。
【0088】
〔実施例1〕
スチレン(St)1.15g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))1.85g、ヘプタン2.4g、HSクリスタ4100(側鎖結晶性ポリオレフィン、豊国製油株式会社)0.3g、ブレンマー50PEP-300(ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノメタクリレート(式(1)において、R=CH、R=H、(R-O)=[(CO)3.5(CO)2.5]、ランダム付加形態)、日油株式会社)0.3g、パーロイルL(重合開始剤、日油株式会社)0.099gを混合し、油相を作製した。
次いで、イオン交換水34gとラピゾールA-80(界面活性剤、日油株式会社)0.017gを混合し、水相を作製した。
水相に油相を加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、SONIFIER450、条件:DutyCycle=50%、OutputControl=5、処理時間3分)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を70℃で4時間加熱することで重合を行い、スラリーを得た。得られたスラリーを100℃にて24時間加熱することで、乾燥粉体としての中空樹脂粒子(1)を得た。得られた中空樹脂粒子(1)の平均粒子径は356nmであり、粒子密度は0.65g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(1)のTEM観察結果を図1に示す。中空樹脂粒子(1)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0089】
〔実施例2〕
スチレンを0.92g、ジビニルベンゼン810を1.48g、ヘプタンを3.0g、パーロイルLを0.10gとした以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(2)を得た。得られた中空樹脂粒子(2)の平均粒子径は382nmであり、粒子密度は0.64g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(2)のTEM観察結果を図2に示す。中空樹脂粒子(2)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0090】
〔実施例3〕
スチレンを1.49g、ジビニルベンゼン810を2.41g、ヘプタンを1.5g、パーロイルLを0.126gとした以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(3)を得た。得られた中空樹脂粒子(3)の平均粒子径は329nmであり、粒子密度は0.69g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(3)のTEM観察結果を図3に示す。中空樹脂粒子(3)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0091】
〔実施例4〕
スチレンを1.19g、ジビニルベンゼン810を1.93g、パーロイルLを0.10g、HSクリスタ4100(側鎖結晶性ポリオレフィン、豊国製油株式会社)0.3gの代わりにポリスチレン(PS)(非架橋、重量平均分子量30万)0.18gとした以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(4)を得た。得られた中空樹脂粒子(4)の平均粒子径は390nmであり、粒子密度は0.67g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(4)のTEM観察結果を図4に示す。中空樹脂粒子(4)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0092】
〔実施例5〕
ブレンマー50PEP-300を0.6gとしたことに加え、HSクリスタ4100を使用しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(5)を得た。得られた中空樹脂粒子(5)の平均粒子径は310nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(5)のTEM観察結果を図5に示す。中空樹脂粒子(5)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0093】
〔実施例6〕
ブレンマー50PEP-300(ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノメタクリレート(式(1)において、R=CH、R=H、(R-O)=[(CO)3.5(CO)2.5]、ランダム付加形態)、日油株式会社)0.3gの代わりに、ブレンマーPME-100(ポリエチレングリコールメタクリレート(式(1)において、R=CH、R=CH、(R-O)=(CO))、日油株式会社)0.3gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(6)を得た。得られた中空樹脂粒子(6)の平均粒子径は520nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(6)のTEM観察結果を図6に示す。中空樹脂粒子(6)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0094】
〔実施例7〕
ブレンマー50PEP-300を0.3g用いる代わりに、ブレンマーPME-100を0.3g使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(7)を得た。得られた中空樹脂粒子(7)の平均粒子径は501nmであり、粒子密度は0.63g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(7)のTEM観察結果を図7に示す。中空樹脂粒子(7)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0095】
〔実施例8〕
ブレンマー50PEP-300を0.3g用いる代わりに、ブレンマー55PET-800(ポリエチレングリコールテトラメチレングリコールモノメタクリレート(式(1)においてR=CH、R=H、(R-O)=[(CO)10(CO)]、ランダム付加形態)を0.3g使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(8)を得た。得られた中空樹脂粒子(8)の平均粒子径は325nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(8)のTEM観察結果を図8に示す。中空樹脂粒子(8)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0096】
〔実施例9〕
ラピゾールA-80を0.017g用いる代わりに、コータミン86W(界面活性剤、花王株式会社)0.0081gを使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(9)を得た。得られた中空樹脂粒子(9)の平均粒子径は539nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(9)のTEM観察結果を図9に示す。中空樹脂粒子(9)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0097】
〔実施例10〕
ラピゾールA-80を0.017g用いる代わりに、アデカミン4MAC-30(界面活性剤、株式会社ADEKA)0.034gを使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(10)を得た。得られた中空樹脂粒子(10)の平均粒子径は430nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(10)のTEM観察結果を図10に示す。中空樹脂粒子(10)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0098】
〔実施例11〕
ラピゾールA-80を0.017g用いる代わりに、アデカミン4MAC-30を0.0076g使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(11)を得た。得られた中空樹脂粒子(11)の平均粒子径は1270nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(11)のTEM観察結果を図11に示す。中空樹脂粒子(11)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0099】
〔実施例12〕
スチレンを1.38g、ジビニルベンゼン810を2.22g、ヘプタンの代わりにシクロヘキサンを1.5g、HSクリスタ4100を0.6g、パーロイルLを0.054g、ラピゾールA-80を0.0085g使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(12)を得た。得られた中空樹脂粒子(12)の平均粒子径は416nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(12)のTEM観察結果を図12に示す。中空樹脂粒子(12)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0100】
〔比較例1〕
メタクリル酸メチル(MMA)1.74g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ADPH)(新中村化学株式会社)1.74g、トルエン2.4g、ポリスチレン(非架橋、重量平均分子量30万)0.126g、パーロイルL(重合開始剤、日油株式会社)0.104gを混合し、油相を作製した。
次いで、イオン交換水34gとラピゾールA-80(界面活性剤、日油株式会社)0.034gを混合し、水相を作製した。
水相に油相を加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、SONIFIER450、条件:DutyCycle=50%、OutputControl=5、処理時間3分)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を70℃で4時間加熱することで重合を行い、スラリーを得た。得られたスラリーを100℃にて24時間加熱することで、乾燥粉体としての粒子(C1)を得た。得られた粒子(C1)の平均粒子径は478nmであり、粒子密度は0.614g/cmであった。また、得られた粒子(C1)のTEM観察結果を図13に示す。粒子(C1)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0101】
〔比較例2〕
スチレンを1.31g、ジビニルベンゼン810を2.11g、パーロイルLを0.10g、HSクリスタ4100(側鎖結晶性ポリオレフィン、豊国製油株式会社)0.3gの代わりにポリスチレン(非架橋、重量平均分子量30万)0.18gとしたことに加え、ブレンマー50PEP-300を使用せず、水相に反応性界面活性剤であるRN2025(第一工業製薬社製)0.36gを加えた以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、粒子(C2)を得た。得られた粒子(C2)の平均粒子径は350nmであった。また、得られた粒子(C2)のTEM観察結果を図14に示す。粒子(C2)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子とはなっていないことが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0102】
〔比較例3〕
スチレンを1.38g、ジビニルベンゼン810を2.22g、パーロイルLを0.10g、ポリスチレン(非架橋、重量平均分子量30万)0.18gとしたことに加え、HSクリスタ4100とブレンマー50PEP-300を使用しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、粒子(C3)を得た。得られた粒子(C3)の平均粒子径は430nmであった。また、得られた粒子(C3)のTEM観察結果を図15に示す。粒子(C3)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子とはなっていないことが確認できた。配合量などを表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
実施例1~12に示すように、シェルが、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、および式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含むことで、シェルにより囲われた中空を持つ、平均粒子径0.1μm~5.0μmの中空樹脂粒子を、ヘキサデカン等の高沸点化合物を使用することなく得られることがわかる。
【0105】
<性能評価1>
酢酸エチル8.3gと溶剤可溶型ポリイミドKPI-MX300F(河村産業株式会社)1.7gの混合物に対し、各粒子を10重量%の濃度で分散させた酢酸エチル1.6gを加え、遊星撹拌脱泡機(KURABO社製、マゼルスターKK-250)を用いて脱泡撹拌し、評価用混合物を作製した。
評価用混合物を厚み5mmのガラス板にウエット厚250μmに設定したアプリケーターを用いて塗工した後、60℃で30分、90℃にて10分、150℃にて30分、200℃にて30分加熱することで酢酸エチルを除去した後、室温下まで冷却することで、各粒子を含むフィルムサンプルを得た。得られたフィルムの比誘電率・誘電正接評価を空洞共振法(測定周波数:5.8GHz)にて実施した。結果を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
表2の結果から、本発明によって提供される中空樹脂粒子は、基材の比誘電率・誘電正接を下げる効果を有することが確認でき、基材の低誘電化、低誘電正接化を図る目的に対して有効であることがわかる。
【0108】
<性能評価2>
各実施例、比較例にて得られたスラリーを、ミニスプレードライヤーB-290(日本ビュッヒ株式会社)を用いて乾燥することで、乾燥粉体としての中空樹脂粒子または粒子を得た。得られた中空樹脂粒子または粒子0.425gと、酢酸エチル12.1gと、溶剤可溶型ポリイミドKPI-MX300F(河村産業株式会社)1.7gを遊星攪拌脱泡機(KURABO社製、マゼルスターKK-250)を用いて脱泡攪拌し、評価用混合物を作製した。
評価用混合物を厚み5mmのガラス板にウエット厚250μmに設定したアプリケーターを用いて塗工した後、60℃にて30分、90℃にて10分、150℃にて30分、200℃にて30分加熱することで酢酸エチルを除去した後、室温まで冷却することで、各粒子を含むフィルムサンプルを得た。得られたフィルムの比誘電率・誘電正接評価を空洞共振法(測定周波数:5.8GHz)にて実施した。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
表3の結果から、本発明によって提供される中空樹脂粒子は、比較例1の粒子(C1)に比べて誘電正接の増加を抑制しながら基材の比誘電率を下げる効果を有することが確認でき、基材の低誘電化、低誘電正接化を図る目的に対して有効であることがわかる。なお、本結果から、中空樹脂粒子の比誘電率を算出すると、実施例1の中空樹脂粒子(1)は1.90、実施例2の中空樹脂粒子(2)は2.20、実施例3の中空樹脂粒子(3)は1.93、実施例4の中空樹脂粒子(4)は1.90、実施例7の中空樹脂粒子(7)は2.20、比較例1の粒子(C1)は2.28であった。なお、基材の密度は1.57g/cmとして計算した。
【0111】
<性能評価3>
各実施例、比較例にて得られたスラリーを、ミニスプレードライヤーB-290(日本ビュッヒ株式会社)を用いて乾燥することで、乾燥粉体としての中空樹脂粒子または粒子を得た。得られた中空樹脂粒子または粒子0.4gと、超高耐熱ポリイミドワニス(SPIXAREA HR002、ソマール株式会社)10gを遊星攪拌脱泡機(KURABO社製、マゼルスターKK-250)を用いて脱泡攪拌し、評価用混合物を作製した。
評価用混合物を厚み5mmのガラス板にウエット厚250μmに設定したアプリケーターを用いて塗工した後、120℃にて10分、180℃にて180分、270℃にて60分加熱することで溶剤を除去した後、室温まで冷却することで各粒子を含むフィルムサンプルを得た。得られたフィルムの比誘電率・誘電正接評価を空洞共振法(測定周波数:5.8GHz)にて実施した。結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
表4の結果から、本発明によって提供される中空樹脂粒子は、基材の比誘電率・誘電正接を下げる効果を有することが確認でき、基材の低誘電化、低誘電正接化を図る目的に対して有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の実施形態による中空樹脂粒子、本発明の実施形態による製造方法により得られる中空樹脂粒子は、半導体材料などに利用可能である。
図1
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