(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】工作物の工作物壁を加工するための加工ユニットおよび加工機ならびに前述した形態の加工ユニットを製作するための方法
(51)【国際特許分類】
B21J 5/12 20060101AFI20240105BHJP
B21J 13/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B21J5/12 Z
B21J13/02 H
(21)【出願番号】P 2021562009
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2020061676
(87)【国際公開番号】W WO2020229156
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】102019112547.2
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518004369
【氏名又は名称】フェルス システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Felss Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Dieselstrasse 2, D-75203 Koenigsbach-Stein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウード トラウツ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ムートニー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス クルーゲ
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-072886(JP,U)
【文献】特開平08-090448(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00734803(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第02241386(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/12
B21J 13/02
B23B 29/02-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(7)の工作物壁を加工するための加工ユニットであって、前記工作物(7)と前記加工ユニットとを該加工ユニットの作業軸線(8)に沿って、前記加工ユニットにより該加工ユニットの前進ストローク方向(9)で前記工作物(7)に向かって実施される前進ストロークと、前記加工ユニットにより該加工ユニットの後退ストローク方向(10)で前記工作物(7)から離れる方向に実施される後退ストロークとで相対運動させて、工作物(7)の工作物壁を加工するための加工ユニットであって、
前記工作物壁を加工するための加工工具(3)であって、前記加工ユニットの前記前進ストロークおよび前記後退ストロークの際に前記工作物(7)に接触している加工工具(3)と、
前記加工工具(3)用に設けられた工具支持体(4)であって、前記前進ストローク方向(9)に向けられた支持体側の前進ストローク時支持面(11)と、該支持体側の前進ストローク時支持面(11)から前記後退ストローク方向(10)で前記加工ユニットの前記作業軸線(8)に沿って離間させられ、前記後退ストローク方向(10)に向けられ、これにより、前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)と反対の側に向けられた支持体側の後退ストローク時支持面(13)とを有し、前記加工工具(3)は、前記前進ストローク方向(9)で前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)の前方に配置されており、前記加工工具(3)は、前記加工ユニットの前記前進ストロークの際には、前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)に前記前進ストローク方向(9)と逆向きで支持されており、前記後退ストロークの際には、前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)に対して前記後退ストローク方向(10)と逆向きで支持されている、工具支持体(4)と、
前記加工工具(3)を前記作業軸線(8)に沿って前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)と前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)とに対して締め付けることができる締付け装置(5)であって、前記工具支持体(4)と構造的に別体の引張要素(14)を有し、該引張要素(14)は、前記作業軸線(8)に沿って延在していて、該作業軸線(8)に沿って、一方では、前記加工工具(3)に結合されていて、他方では、前記締付け装置(5)の調整要素(15)がねじ山係合している調整ねじ山(19a)を有する、締付け装置(5)と
を備え、
前記加工工具(3)が、前記作業軸線(8)に沿って前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)に向かい合って位置しているとき、前記締付け装置(5)の前記調整要素(15)は、前記作業軸線(8)に沿って前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)と反対の側の前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)に向かい合って位置しており、
前記締付け装置(5)の、前記工具支持体(4)と構造的に別体の前記引張要素(14)には、前記作業軸線(8)に沿って引張プリロードを加えることができ、
前記締付け装置(5)の前記引張要素(14)に前記作業軸線(8)に沿って引張プリロードが加えられているとき、前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)と反対の側の前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)は、前記締付け装置(5)の前記調整要素(15)によって前記作業軸線(8)に沿って前記加工工具(3)に向かって押圧されており、該加工工具(3)は、前記締付け装置(5)の前記調整要素(15)と、引張荷重が加えられた前記引張要素(14)とによって、前記作業軸線(8)に沿って前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)と前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)とに対して締め付けられている、
加工ユニットにおいて、
前記引張要素(14)は、該引張要素(14)を引張締付け機器(23)の、引張方向(28)に引張可能な引張機構(27)に結合するための連結装置を有し、
前記工具支持体(4)の、前記後退ストローク方向(10)に位置する端部が、前記工具支持体(4)を前記引張締付け機器(23)の、雌ねじ山を備えた機器側の支持体(25)に結合するためのピン状のねじ山付き突出部(21)を有し、
前記工具支持体(4)の前記ねじ山付き突出部(21)が前記引張締付け機器(23)の前記機器側の支持体(25)の前記雌ねじ山内にねじ込まれ、ひいては、結合され、前記工具支持体(4)が前記後退ストローク方向(10)で前記引張締付け機器(23)の前記機器側の支持体(25)に有効に支持されているときに、前記引張締付け機器(23)の、前記引張要素(14)に結合された前記引張機構(27)を、前記後退ストローク方向(10)に合致する引張方向に引っ張ることができることにより、前記加工工具(3)が前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)に支持されているときに、前記引張締付け機器(23)の前記引張機構(27)に結合された前記引張要素(14)に前記引張締付け機器(23)によって引張荷重を加えることができ、
前記引張要素(14)に前記引張締付け機器(23)によって引張荷重が加えられているときに、前記調整要素(15)をねじり操作によって前記引張要素(14)における目標位置へと前記作業軸線(8)に沿って送ることができ、かつ
前記調整要素(15)が前記目標位置へと送られたときに、前記引張要素(14)に前記引張締付け機器(23)によって前記引張荷重を加えることを終了させることができ、これにより、前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)と反対の側の前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)を前記締付け装置(5)の前記調整要素(15)によって前記作業軸線(8)に沿って前記加工工具(3)に向かって押圧することができる
ことにより、前記締付け装置(5)の前記引張要素(14)に前記引張締付け機器(23)によって前記作業軸線(8)に沿って引張プリロードを加えることができる
ことを特徴とする、加工ユニット。
【請求項2】
前記引張要素(14)に前記引張締付け機器(23)によって前記引張荷重を加えることを終了させた後、前記締付け装置(5)の前記引張要素(14)には、締付けねじり方向への前記締付け装置(5)の前記調整要素(15)のねじり操作によって前記作業軸線(8)に沿って引張プリロードを加えることができることを特徴とする、請求項1記載の加工ユニット。
【請求項3】
前記引張要素(14)の連結装置として、前記引張締付け機器(23)の前記引張機構(27)との螺合を形成するための連結ねじ山(19b)が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の加工ユニット。
【請求項4】
前記工具支持体(4)の前記ねじ山付き突出部(21)の横断面が、前記工具支持体(4)の、前記前進ストローク方向(9)で隣接する部分に比べて減少させられていて、前記工具支持体(4)の、前記作業軸線(8)の横方向に延在する支持体側の当接面(22)が形成されており、前記工具支持体(4)の前記ねじ山付き突出部(21)が前記引張締付け機器(23)の前記機器側の支持体(25)の前記雌ねじ山内にねじ込まれているときに、前記工具支持体(4)は、前記支持体側の当接面(22)において前記後退ストローク方向(10)で前記引張締付け機器(23)の前記機器側の支持体(25)に有効に支持されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項5】
前記引張要素(14)は、タイロッドとして形成されていることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項6】
前記工具支持体(4)は、中空体として形成されていて、前記作業軸線(8)に沿って延びる、前記引張要素(14)用の収容部(16)を有することを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項7】
前記引張要素(14)は、前記加工工具(3)に形状接続的に結合されていることを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項8】
前記締付け装置(5)の前記調整要素(15)は、調整ナットとして形成されていて、操作工具に適合させられる外側輪郭を有することを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項9】
前記工具支持体(4)は、前記後退ストローク方向(10)で前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)によって画定されていることを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項10】
前記加工ユニットは、連結要素(29)を有し、該連結要素(29)は、前記工具支持体(4)の、前記後退ストローク方向(10)に向けられた側に配置されていて、前記工具支持体(4)に結合され
ており、前記連結要素(29)は、前記作業軸線(8)に沿った前記工作物(7)と前記加工ユニットとの相対運動を発生させることができる加工駆動装置(34)に前記加工ユニットを結合するように構成されていることを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項11】
前記工具支持体(4)と前記連結要素(29)とは、前記作業軸線(8)に沿って有効に互いに形状接続的
に螺合されており、
前記工具支持体(4)は、前記連結要素(29)に向けられた側に、前記作業軸線(8)に対して横方向に延在する支持体側の当接面(22)と、前記作業軸線(8)に対して横方向に引っ込んでいて、前記支持体側の当接面(22)に対して前記作業軸線(8)に沿って前記連結要素(29)に向かって突出したピン状のねじ山付き突出部(21)とを有し、該ねじ山付き突出部(21)は、雄ねじ山(20)を備え、前記後退ストローク方向(10)に向けられた端面に前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)を形成しており、
前記連結要素(29)は、前記工具支持体(4)に向けられた側に、前記作業軸線(8)に沿って延びかつ雌ねじ山を備える、前記工具支持体(4)の前記ねじ山付き突出部(21)用のピン収容部(32)と、該ピン収容部(32)に比べて前記作業軸線(8)に対して横方向に延出した連結要素側の当接面(33)とを有し、
前記工具支持体(4)と前記連結要素(29)とは、該工具支持体(4)と該連結要素(29)とが、前記支持体側の当接面(22)と前記連結要素側の当接面(33)とで前記作業軸線(8)に沿って有効に相互に押圧されるときに互いに螺合されている
ことを特徴とする、請求項
10記載の加工ユニット。
【請求項12】
前記連結要素(29)は、前記工具支持体(4)に解離可能に結合されていることを特徴とする、請求項10または11記載の加工ユニット。
【請求項13】
工作物(7)の工作物壁を加工するための加工機であって、加工ユニット(1)と、前記工作物(7)と前記加工ユニット(1)とを該加工ユニット(1)の作業軸線(8)に沿って、前記加工ユニット(1)により該加工ユニット(1)の前進ストローク方向(9)で前記工作物(7)に向かって実施される前進ストロークと、前記加工ユニット(1)により該加工ユニット(1)の後退ストローク方向(10)で前記工作物(7)から離れる方向に実施される後退ストロークとで互いに相対的に運動させることができる加工駆動装置(34)とを備える、加工機において、
前記加工ユニット(1)は、請求項1から
12までのいずれか1項により形成されていることを特徴とする、
加工機。
【請求項14】
請求項1記載の加工ユニット(1)を製作するための方法において、
前記工具支持体(4)の前記ねじ山付き突出部(21)を前記引張締付け機器(23)の前記機器側の支持体(25)の前記雌ねじ山内にねじ込むことにより、前記加工ユニット(1)の前記工具支持体(4)を前記後退ストローク方向(10)で前記引張締付け機器(23)の
前記機器側の支持体(25)に有効に支持し、
前記締付け装置(5)の前記引張要素(14)を前記連結装置によって、前記後退ストローク方向(10)に向けられた側で前記引張締付け機器(23)の前記引張機構(27)に結合し、
前記工具支持体(4)が、前記後退ストローク方向(10)で前記引張締付け機器(23)の前記機器側の支持体(25)に支持されていて、前記引張要素(14)が、前記後退ストローク方向(10)で前記加工工具(3)を介して前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)に支持されているときに、前記引張締付け機器(23)の、引張方向(28)に引っ張られる前記引張機構(27)によって、前記引張締付け機器(23)の前記引張機構(27)に結合された前記引張要素(14)に前記後退ストローク方向(10)で引張荷重を加え、
前記引張締付け機器(23)の前記引張機構(27)によって前記引張要素(14)に前記後退ストローク方向(10)で引張荷重が加えられているときに、前記調整要素(15)をねじり操作によって前記引張要素(14)における目標位置へと前記作業軸線(8)に沿って送り、
前記調整要素(15)が前記目標位置へと送られたときに、前記引張締付け機器(23)の前記引張機構(27)によって前記引張要素(14)に前記引張荷重を加えることを終了させ、これにより、前記工具支持体(4)の前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)を前記締付け装置(5)の前記調整要素(15)によって前記作業軸線(8)に沿って前記加工工具(3)に向かって押圧し、前記調整要素(15)と、前記締付け装置(5)の、引張プリロードが加えられた前記引張要素(14)とによって、前記加工工具(3)を前記作業軸線(8)に沿って前記支持体側の前進ストローク時支持面(11)と前記支持体側の後退ストローク時支持面(13)とに対して締め付ける
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記引張締付け機器(23)の、前記締付け装置(5)の前記引張要素(14)に前記後退ストローク方向(10)で引張荷重を加える前記引張機構(27)を前記引張方向(28)に液圧式に引っ張ることを特徴とする、請求項
14記載の方法。
【請求項16】
前記工具支持体(4)の前記ねじ山付き突出部(21)が前記引張締付け機器(23)の前記機器側の支持体(25)の前記雌ねじ山内にねじ込まれているときに、前記工具支持体(4)を、該工具支持体(4)の、前記作業軸線(8)の横方向に延在する支持体側の当接面(22)において前記後退ストローク方向(10)で前記引張締付け機器(23)の前記機器側の支持体(25)に有効に支持することを特徴とする、請求項14または15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物の工作物壁を加工するための加工ユニットであって、工作物と加工ユニットとを加工ユニットの作業軸線に沿って、加工ユニットにより加工ユニットの前進ストローク方向で工作物に向かって実施される前進ストロークと、加工ユニットにより加工ユニットの後退ストローク方向で工作物から離れる方向に実施される後退ストロークとで相対運動させて、工作物の工作物壁を加工するための加工ユニットであって、
工作物壁を加工するための加工工具であって、加工ユニットの前進ストロークおよび後退ストロークの際に工作物に接触している加工工具と、
加工工具用に設けられた工具支持体であって、前進ストローク方向に向けられた支持体側の前進ストローク時支持面と、支持体側の前進ストローク時支持面から後退ストローク方向で加工ユニットの作業軸線に沿って離間させられ、後退ストローク方向に向けられ、これにより、支持体側の前進ストローク時支持面と反対の側に向けられた支持体側の後退ストローク時支持面とを有し、加工工具は、前進ストローク方向で支持体側の前進ストローク時支持面の前方に配置されており、加工工具は、加工ユニットの前進ストロークの際には、支持体側の前進ストローク時支持面に前進ストローク方向と逆向きで支持されており、後退ストロークの際には、支持体側の後退ストローク時支持面に対して後退ストローク方向と逆向きで支持されている、工具支持体と、
加工工具を作業軸線に沿って支持体側の前進ストローク時支持面と支持体側の後退ストローク時支持面とに対して締め付けることができる締付け装置であって、工具支持体と構造的に別体の引張要素を有し、引張要素は、作業軸線に沿って延在していて、作業軸線に沿って、一方では、加工工具に結合されていて、他方では、締付け装置の調整要素がねじ山係合している調整ねじ山を有する、締付け装置と
を備え、
加工工具が、作業軸線に沿って支持体側の前進ストローク時支持面に向かい合って位置しているとき、締付け装置の調整要素は、作業軸線に沿って支持体側の前進ストローク時支持面と反対の側の支持体側の後退ストローク時支持面に向かい合って位置しており、
締付け装置の、工具支持体と構造的に別体の引張要素には、作業軸線に沿って引張プリロードを加えることができ、
締付け装置の引張要素に作業軸線に沿って引張プリロードが加えられているとき、支持体側の前進ストローク時支持面と反対の側の支持体側の後退ストローク時支持面は、締付け装置の調整要素によって作業軸線に沿って加工工具に向かって押圧されており、加工工具は、締付け装置の調整要素と、引張荷重が加えられた引張要素とによって、作業軸線に沿って支持体側の前進ストローク時支持面と支持体側の後退ストローク時支持面とに対して締め付けられている、
加工ユニットに関する。
【0002】
本発明は、さらに、工作物の工作物壁を加工するための加工機であって、加工ユニットと、工作物と加工ユニットとを加工ユニットの作業軸線に沿って、加工ユニットにより加工ユニットの前進ストローク方向で工作物に向かって実施される前進ストロークと、加工ユニットにより加工ユニットの後退ストローク方向で工作物から離れる方向に実施される後退ストロークとで互いに相対的に運動させることができる加工駆動装置とを備える、加工機に関する。
【0003】
最後に、本発明は、冒頭に記載した形態の加工ユニットを製作するための方法に関する。
【0004】
前述した形態の加工ユニットおよび加工機は、例えば金属加工に使用され、当該分野では、特に金属製の構成部材に設けられた孔の壁に賦形するために使用される。この場合、多くの使用事例は、該当する構成部材に設けられた盲孔の壁への歯列の形成である。加工プロセス中、加工ユニットは、加工すべき工作物に対して相対的に、加工ユニットの作業軸線に沿って工作物に向けられた前進ストロークと、この前進ストロークに続きかつ前進ストロークと逆向きの後退ストローク方向で工作物から離れる方向に実施される後退ストロークとを実施する。加工ユニットと工作物との相対運動を発生させるためには、作業軸線に沿って、加工ユニットだけが運動させられてもよいし、工作物だけが運動させられてもよいし、加工ユニットと工作物との両方が運動させられてもよい。加工の種別は、特に分離加工および/または変形加工であってよい。
【0005】
前進ストロークの際にも、後退ストロークの際にも、加工ユニットの工具支持体に配置された加工工具は工作物に接触している。その結果、加工に起因した力が、作業軸線に沿って加工工具に相互方向で作用する。品質的に高価値の加工結果を得るためには、加工プロセス中、加工力が加工工具に作用するにもかかわらず、工具支持体に対する加工工具の位置が変化してしまわないことが確保されていなければならない。
【0006】
このことは、独国実用新案第202009005552号明細書に開示された先行技術の事例では、二通りの手段で達成される。
【0007】
独国実用新案第202009005552号明細書に記載の先行技術の両方の形態には、加工ユニットの、工具支持体として機能する工具ボディが共通している。この工具ボディは、加工ユニットの前進ストローク方向に位置する端部に、加工ユニットの作業軸線に沿って延在する円筒形の取付け領域を備えている。この円筒形の取付け領域の横断面は、後退ストローク方向で隣接する工具ボディの残り部分に比べて、作業軸線に対して横方向に延在する肩部を形成しながら減じられている。
【0008】
独国実用新案第202009005552号明細書に記載の先行技術の第1の構造形態の事例では、円筒形の取付け領域が、工具ボディの残り部分に付設された平滑壁状の軸線方向の区分を有している。この平滑壁状の軸線方向の区分には、すでに公知の加工ユニットの前進ストローク方向で、円筒形の取付け領域の、雄ねじ山を備えた軸線方向のねじ山区分が続いている。加工工具はスリーブ状に形成されていて、工具ボディに設けられた円筒形の取付け領域の平滑壁状の軸線方向の区分の長さにほぼ相当する軸線方向の長さを有している。工具ボディに固定するためには、加工工具が、円筒形の取付け領域の平滑壁状の軸線方向の区分に被せ嵌められる。次いで、円筒形の取付け領域のねじ山区分にロックナットがねじ被せられ、このロックナットの締付けによって、加工工具が、一方では、ロックナットと、他方では、工具ボディの残り部分により形成された肩部との間に緊締される。ロックナットと、工具ボディの残り部分に設けられた肩部とによって、加工工具は、加工プロセス中、前進ストローク方向への望ましくない変位に対してだけでなく、後退ストローク方向への望ましくない変位に対しても形状接続的に位置固定されている。両側での形状接続に基づき、加工に起因した大きな力が加工ユニットの作業軸線に沿って加工工具に作用した場合でも、加工工具は、すでに公知の加工ユニットの工具ボディにおける目標位置を維持している。しかしながら、すでに公知の加工ユニットのこの構造形態の使用は、工具ボディに設けられた円筒形の取付け領域の、加工工具に対して前進ストローク方向に突出したねじ山区分と、このねじ山区分に外嵌されたロックナットとが、例えば、加工すべき工作物における空間的な条件に基づき支障となる恐れがある使用事例では排除される。
【0009】
この視点から拡張された使用範囲を、独国実用新案第202009005552号明細書に記載の先行技術の加工ユニットの第2の構造形態が有している。この第2の構造形態は、前進ストローク方向において、工具ボディの円筒形の取付け領域の平滑壁状の軸線方向の区分と、この区分に外嵌された加工工具とによって画定される。これに相応して、第2の構造形態では、加工工具に対して前進ストローク方向に突出した、ロックナットを備えたねじ山区分が設けられていない。しかしながら、すでに公知の加工ユニットの第2の構造形態の使用可能性は、加工工具と、工具ボディに設けられた円筒形の取付け領域の平滑壁状の軸線方向の区分との間の結合が、先行技術の第1の構造形態の事例の形状接続的な結合ほど負荷を受け止めることができない限り制限されている。負荷を受け止める能力が減じられているという理由から、第2の構造形態の加工ユニットを前進ストローク方向で制限する加工工具が、工具ボディの円筒形の取付け領域の平滑壁状の軸線方向の区分に材料接続的な接合、特にろう接または接着によって固定される状況が生じてしまう。
冒頭に記載した先行技術は、欧州特許出願公開第0734803号明細書に基づき公知である。同明細書は、ホルダと工具ヘッドとを備えた回転駆動可能な工具に関する。ホルダと工具ヘッドとは、軸線方向の開口によって貫通される。この開口を通って、タイバーが延在している。このタイバーは、一方の軸線方向の端部で工具ヘッドに支持されている。タイバーは、反対側の軸線方向の端部に雄ねじ山を備えている。タイバーの雄ねじ山には、タイバーに外嵌された引張ナットの雌ねじ山が噛み合っている。引張ナットは、すでに公知の工具のホルダの、工具ヘッドと反対の側の端面に向かい合って位置している。ホルダと工具ヘッドとの、軸線方向に有効な結合を形成するためには、引張ナットのねじりによってタイバーに軸線方向でプリロードが加えられる。
【0010】
冒頭に記載した先行技術から出発して、本発明の根底にある課題は、締付け装置の引張要素に加えられるプリロードが最適に調整される加工ユニットおよびこのような加工ユニットを備えた加工機ならびにこのような加工ユニットを製作するための方法を提供することである。
【0011】
この課題は、本発明によれば、請求項1記載の加工ユニット、請求項11記載の加工機および請求項12記載の製作法によって解決される。
【0012】
請求項1記載の加工ユニットの加工工具は、加工ユニットの作業軸線に沿って前進ストローク方向でも後退ストローク方向でも工具支持体に形状接続的に支持されている。なお、この目的のために、加工工具に対して前進ストローク方向で前方に配置される取付け手段は必要ない。したがって、請求項に記載した加工ユニットは、加工工具に対して前進ストローク方向で前方に配置される取付け手段が支障となる恐れがある使用事例にも、加工に起因した大きな力が加工ユニットの作業軸線に沿って加工工具に作用して、この加工工具から工具支持体に伝達されるようになっている使用事例にも適している。好ましくは、請求項に記載した加工ユニットは、加工工具によって前進ストローク方向で画定される。本発明に係る加工ユニットを具備した加工機は、特にアキシャル成形機として形成されている。
【0013】
加工ユニットの前進ストロークの際には、加工工具が、工具支持体の、前進ストローク方向に位置する側で、そこに設けられた前進ストローク時支持面に形状接続的に支持されている。前進ストロークに続く後退ストロークの際には、工具支持体の、前進ストローク時支持面から後退ストローク方向に離間させられた後退ストローク時支持面に対する加工工具の形状接続的な支持が行われる。このとき、工具支持体の後退ストローク時支持面は、本発明による締付け装置の調整要素によって前進ストローク方向に押圧される。調整要素による工具支持体の後退ストローク時支持面の押圧は、本発明による締付け装置の引張要素によって引き起こされる。この引張要素は加工工具に結合されていて、加工ユニットの後退ストロークの際でも、締付け装置の調整要素を後退ストローク時支持面に向かって引っ張るだけでなく、加工工具を前進ストローク時支持面に向かっても引っ張る。
【0014】
本発明に係る加工ユニットの後退ストロークの際に、加工工具が、後退ストロークの際に加工工具に作用する前進ストローク方向と逆向きの力に基づき、前進ストローク時支持面から離反し、これによって、工具支持体に対する位置を加工ユニットの作業軸線に沿って望ましくない形で変化させてしまうことを阻止するために、本発明による締付け装置の引張要素には、加工ユニットの作業軸線に沿って十分に強いプリロードが加えられている。
【0015】
加工ユニットの作業軸線に沿って本発明による締付け装置の引張要素に加えられるプリロードは、本発明に係る加工ユニットを製作するための本発明に係る方法の範囲内で引張締付け機器によって発生させられる。締付け装置の引張要素を引張締付け機器の引張機構に結合するために、引張要素が相応の連結装置を備えている。引張締付け機器の機器側の支持体に、加工ユニットが工具支持体でもって後退ストローク方向で支持される。その後、引張締付け機器の、加工ユニットの締付け装置の引張要素に結合された引張機構によって、引張要素に後退ストローク方向で引張荷重が加えられる。この目的のために、引張締付け機器の引張機構は後退ストローク方向に引っ張られる。このとき、加工ユニットの締付け装置の引張要素は、引張締付け機器の引張機構と反対の側で加工工具に結合されていて、この加工工具を介して工具支持体の前進ストローク時支持面に後退ストローク方向で支持されている。
【0016】
締付け装置の引張要素に引張荷重が加えられているとき、締付け装置の、引張要素に外嵌されていて、その際、この引張要素にねじ山係合されている調整要素が、ねじり操作によって作業軸線に沿って目標位置へと運動させられる。締付け装置の調整要素の目標位置は、好ましくは、引張締付け機器の引張機構により締付け装置の引張要素に引張荷重を生じさせることを終了させることによって、締付け装置の、後退ストローク時支持面を押圧する調整要素と、前進ストローク時支持面を押圧する加工工具との間で引張要素に加えられたプリロードが所望の量をじかに有しているように選択されている。
【0017】
締付け装置の引張要素に引張荷重を加える最中の調整要素のねじり操作は、好ましくは、調整要素が工具支持体の後退ストローク時支持面から離間させられている場合に行われる。調整要素がねじり操作時に後退ストローク時支持面から離間させられていれば、さもないと生じてしまう、調整要素と工具支持体との間の、調整要素の位置決めの精度を場合により損なう摩擦が回避される。調整要素と工具支持体との間の摩擦を克服することができるので、調整要素のねじり操作のためには、比較的少ない締付けトルクしか必要とならない。
【0018】
調整要素を締付け装置の引張要素に目的に即して位置決めした後、引張要素に引張荷重を加えることが終了させられ、加工ユニットを引張締付け機器から分離することができる。引張要素への、予め発生させられたプリロードの作用のもと、締付け装置の締付け要素が工具支持体の後退ストローク時支持面を押圧する。同じく、引張要素への、予め発生させられたプリロードの作用のもと、加工工具が前進ストローク時支持面に向かって引っ張られる。
【0019】
請求項1記載の加工ユニットおよび請求項12記載の製作法の特別な実施形態は、従属請求項2~10および13から明らかである。
【0020】
請求項13によれば、加工ユニットの締付け装置の引張要素へのプリロードは、液圧式の引張締付け機器によって発生させられる。引張要素に液圧式に加えられる引張荷重によって、引張要素に量に関して正確な引張荷重を加えることが可能となる。このことは、一方では、引張要素へのプリロードを最大値に調整したいものの、しかしながら同時に、引張要素の、材料に関連した引張強さを上回ってはならない場合に特に重要となる。引張要素に加えられるプリロードを最大値に調整することは、加工ユニットの後退ストロークに際して、加工工具を締付け装置の引張要素によって、工具支持体に設けられた前進ストローク時支持面に向かって引っ張る力の量が大きければ大きいほど、加工工具が工具支持体の前進ストローク時支持面からの離反に抗して一層良好に位置固定されているという背景を前に推奨される。引張要素へのプリロードが正確に調整可能であれば、引張要素の引張強さを最大限に利用することができる。
【0021】
締付け装置の引張要素に、調整要素のねじり操作によってだけでなく、引張締付け機器の補助下でもプリロードが加えられている発明構造形態が可能である。本発明によれば、引張締付け機器による引張要素の解放によって、この引張要素に所望のプリロードがまだじかに生じていない場合には、引張締付け機器の引張機構からの締付け装置の引張要素の分離に続けて、調整要素をねじり操作によって後位置調整することが可能である(請求項2)。
【0022】
連結装置として、引張要素に設けられていて、引張締付け機器の引張機構との解離可能な螺合を形成することができる連結ねじ山が好適である(請求項3)。
【0023】
本発明に係る加工ユニットの別の好適な構成では、締付け装置の引張要素がタイロッドとして形成されている(請求項4)。
【0024】
請求項5によれば、本発明に係る加工ユニットの工具支持体が、好ましくは、加工ユニットの作業軸線に沿って延びる、締付け装置の引張要素、特にタイロッド用の収容部を備えた中空体として形成されている。
【0025】
本発明に係る加工ユニットの改良形態では、工具支持体の前進ストローク時支持面への加工工具の持続的に有効な支持を保証するために、加工工具と締付け装置の引張要素との間に、この引張要素へのプリロードを加工工具による工具支持体の前進ストローク時支持面の押圧に変換する形状接続的な結合部が設けられている(請求項6)。形状接続を形成するためには、加工工具と締付け装置の引張要素とが、互いに対応する構成部分ジオメトリを有している。本発明によれば、加工工具と引張要素とに互いに割り当てられていて、本発明に係る加工ユニットの作業軸線に対して実質的に垂直に延在している面が好適であるか、または互いに形状接続的に結合すべき構成部分のうちの一方の構成部分における円錐形状と、他方の構成部分における対応する逆円錐形状とが好適である。
【0026】
締付け装置の引張要素には、特に調整ナットとして形成された調整要素がねじ山係合していてよい(請求項7)。引張要素へのプリロードが少なくとも部分的に調整要素のねじり操作によって発生させられる場合には、調整ナットは、操作工具に自体適合させられている外側輪郭を備えている。
【0027】
好適な発明構造形態の事例では、加工工具が、加工ユニットを前進ストローク方向で画定している。補足的または代替的には、請求項8によれば、本発明に係る加工ユニットの工具支持体が、後退ストローク方向で後退ストローク時支持面によって画定されることが特定されている。この後退ストローク時支持面が工具支持体の後退ストローク側の画定部を成していると、締付け装置の引張要素のために、工具支持体に十分に大きな押圧面が提供される。さらに、後退ストローク時支持面に割り当てられた調整要素には、特に締付け装置の引張要素へのプリロードを調整するために、アクセスが良好に可能となる。
【0028】
請求項9によれば、本発明の別の好適な構成では、加工工具と、工具支持体と、締付け装置とを備えたユニットが、直接ではなく、むしろ、連結要素を介して加工駆動装置に結合されている。この加工駆動装置は、加工すべき工作物と、本発明に係る加工ユニットとの相対運動を発生させるために用いられる。一方では、加工工具と、工具支持体と、締付け装置とを備えたユニットと、他方では、加工駆動装置との間の連結要素は、例えば駆動側で用途に関連して構造形態が変化し、この場合、加工工具と、工具支持体と、締付け装置とを備えた同一のユニットを用途固有に加工駆動装置に結合することを可能にするアダプタとして用いられてよい。
【0029】
本発明に係る加工ユニットの別の好適な構成では、一方では、加工工具と、工具支持体と、締付け装置とを備えたユニットと、他方では、連結要素との間の結合が、大きな加工力にも耐えられるようにするために、工具支持体と連結要素との間に形状接続的な結合部が設けられている。特に工具支持体と連結要素とは互いに螺合されている。
【0030】
工具支持体と連結要素との間の本発明により好適な螺合は、請求項10から明らかとなる。この発明構造形態の事例では、本発明に係る加工ユニットの工具支持体と連結要素との間に螺合を形成することによって、工具支持体のねじ山付き突出部に後退ストローク方向に有効な引張荷重が生じ、ひいては、締付け装置の引張要素に引張荷重およびプリロードが生じる。工具支持体のねじ山付き突出部は、連結要素に設けられた雌ねじ山にボルトのようにねじ込まれる。このとき、ねじ頭のように、工具支持体の、ねじ山付き突出部に比べて加工ユニットの作業軸線に対して横方向に存在している張出し部が、支持体側の当接面でもって連結要素側の当接面に当接する。したがって、軸線方向で連結要素に支持される工具支持体を連結要素に対して相対的にねじり運動させることに関連した工具支持体の締付けによって、支持体側のねじ山付き突出部が引き伸ばされる。この支持体側のねじ山付き突出部は、後退ストローク方向に向けられた端面に、締付け装置の調整要素用の支持体側の後退ストローク時支持面を形成しているので、支持体側のねじ山付き突出部が、このねじ山付き突出部の端面に支持された調整要素を介して引き伸ばされることによって、締付け装置の、調整要素に結合された引張要素に引張荷重およびプリロードが生じる。
【0031】
以下に、本発明を例示的な概略図に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】金属製の工作物に設けられた盲孔の壁に歯列を作製するための第1の構造形態の加工ユニットの部分ユニットを示す図である。
【
図1b】金属製の工作物に設けられた盲孔の壁に歯列を作製するための第2の構造形態の加工ユニットの部分ユニットを示す図である。
【
図2】
図1bに示した部分ユニットを、この部分ユニットのタイロッドにプリロードを発生させる際の引張締付け機器に取り付けた状態で示す図である。
【
図3】
図1aに示した部分ユニットを含めた第1の構造形態の加工ユニットを示す図である。
【0033】
図1aには、加工ユニット1が部分ユニット2の範囲で示してある。この部分ユニット2自体は、加工工具3と、工具支持体4と、締付け装置5とを有している。
【0034】
加工工具3は、超硬合金から成る従来の変形加工ダイである。この変形加工ダイは、
図1aに破線で示した金属製の工作物7に設けられた盲孔6の壁に歯列を作製するために用いられる。この目的のために、加工工具3は、慣用のように、賦形用の歯列を備えている。加工工具3に設けられた賦形用の歯列の歯は、加工ユニット1の作業軸線8に沿って延在している。
【0035】
盲孔6の壁に歯列を製作するためには、加工ユニット1と工作物7とが、作業軸線8に沿って互いに相対的に運動させられる。その際には、加工ユニット1により前進ストローク方向(矢印9)で工作物7に向かって実施される前進ストロークに続いて、後退ストローク方向10への加工ユニット1の、工作物7から離れる方向に向けられた後退ストロークが行われる。
【0036】
加工ユニット1の前進ストロークの際にも、後退ストロークの際にも、加工工具3は工作物7の壁に接触している。加工に起因して作業軸線8に沿って加工工具3に作用する力は、工具支持体4に伝達される。
【0037】
加工ユニット1の前進ストロークの際には、盲孔6の壁に係合する加工工具3が、支持体側の前進ストローク時支持面11に前進ストローク方向9と逆向きで支持されている。加工工具3の、工具支持体4の前進ストローク時支持面11に向かい合って位置する対向面12と同様に、支持体側の前進ストローク時支持面11も作業軸線8に対して実質的に垂直に延在している。
【0038】
後退ストローク方向10への加工ユニット1の後退ストロークの際には、盲孔6の壁に接触している加工工具3が、作業軸線8に沿って工具支持体4の前進ストローク時支持面11から離反させられるようになる。このことは、支持体側の後退ストローク時支持面13に対する加工工具3の、後退ストローク方向10と逆向きに有効な支持によって阻止される。支持体側の後退ストローク時支持面13は、支持体側の前進ストローク時支持面11から後退ストローク方向10に離間させられていて、この場合、支持体側の前進ストローク時支持面11と反対の側に向けられている。
【0039】
工具支持体4の後退ストローク時支持面13に対する加工工具3の支持は、直接ではなく、締付け装置5の、引張要素として設けられていて、工具支持体4と構造的に別体のタイロッド14と、このタイロッド14に外嵌されていて、調整ナット15として形成された調整要素とを介して行われる。
【0040】
締付け装置5のタイロッド14は、中空体として形成された工具支持体4の収容部16内に作業軸線8に沿って延在している。タイロッド14は、前進ストローク方向9で加工工具3と同一平面を成して終端している。したがって、図示の例の形態では、加工工具3が、タイロッド14の、前進ストローク方向9に位置する端面と共に加工ユニット1を前進ストローク方向9で画定している。代替的には、タイロッド14の、前進ストローク方向9に位置する端面が、加工工具3の、前進ストローク方向9に位置する端面に対して前進ストローク方向9と逆向きに引っ込められていてよい。両方の形態において、盲孔6の壁をその軸線方向の全長にわたって加工工具3によって加工することができる。
【0041】
タイロッド14は、前進ストローク方向9に位置する側で加工工具3に形状接続的に結合されている。この目的のために、タイロッド14の横断面は拡大されて、作業軸線8に対して垂直に延在するタイロッド側の肩部17が形成されている。タイロッド14に設けられた肩部17は、タイロッド14と加工工具3との間に形状接続を形成するために、同じく作業軸線8に対して垂直に延在する工具側の肩部18と協働する。
【0042】
タイロッド14の、後退ストローク方向10に向けられた端部は、タイロッド側の雄ねじ山19を備えている。このタイロッド側の雄ねじ山19は、締付け装置5の調整ナット15がねじ山係合している調整ねじ山19aを成している。作業軸線8を中心とした調整ナット15のねじり操作によって、調整ナット15をタイロッド14に沿って前進ストローク方向9にまたは後退ストローク方向10に選択的に変位させることができる。調整ねじ山19aと、この調整ねじ山19aに噛み合う、調整ナット15に設けられた雌ねじ山とのセルフロック構成に基づき、調整ナット15は、この調整ナット15に作業軸線8に沿った力が作用する場合でも、作業軸線8に沿って調整された位置を維持している。作業軸線8を中心とした調整ナット15のねじり操作は、調整ナット15の外側輪郭に適合させられる工具によって可能となる。
【0043】
工具支持体4の、後退ストローク方向10に位置する端部では、工具支持体4のピン状のねじ山付き突出部21に、支持体側の雄ねじ山20が設けられている。ねじ山付き突出部21の、後退ストローク方向10に向けられた端面は、工具支持体4の後退ストローク時支持面13を成している。ねじ山付き突出部21の横断面は、工具支持体4の、前進ストローク方向9で隣接する部分に比べて減少させられている。その結果、工具支持体4に、ねじ山付き突出部21と同心的なかつ作業軸線8の横方向に延在する環状の支持体側の当接面22が形成されている。
【0044】
図1bに示した加工ユニット51の部分ユニット52は、締付け装置5のタイロッド14と加工工具3との間の形状接続の構造的な実現の点でしか、
図1aに示した部分ユニット2と異なっていない。
【0045】
部分ユニット2のタイロッド側の肩部17と、この肩部17と協働する工具側の肩部18との代わりに、部分ユニット52の形態では、互いに協働する形状接続要素として、タイロッド側の円錐形部53と、工具側の対応円錐形部54とが設けられている。
【0046】
工作物7に対して加工ユニット1,51の後退ストロークが実施されるときに、加工工具3が支持体側の前進ストローク時支持面11から離反しないようにするために、タイロッド14には、作業軸線8に沿って引張プリロードが加えられている。このプリロードに基づき、タイロッド14が、加工工具3を支持体側の前進ストローク時支持面11に向かって引っ張っていると同時に調整ナット15を支持体側の後退ストローク時支持面13に向かって引っ張っている。
【0047】
作業軸線8に沿ってタイロッド14にプリロードを発生させるためには、
図2に概略的に示したように、液圧式の引張締付け機器23が用いられる。
【0048】
図2に基づき、
図1bの加工ユニット51もしくは部分ユニット52のタイロッド14にプリロードを発生させるための手順を説明する。相応して、引張締付け機器23によって、
図1aの加工ユニット1もしくは部分ユニット2のタイロッド14にプリロードが加えられる。
【0049】
作業軸線8に沿って締付け装置5のタイロッド14に引張プリロードが全く加えられていないかまたは僅かしか加えられていない状態において、加工ユニット51の部分ユニット52が工具支持体4の雄ねじ山20でもって、引張締付け機器23の、機器側の支持体25として設けられた部分に設けられたねじ山付き孔24の雌ねじ山にねじ込まれる。これによって、工具支持体4が、機器側の支持体25に後退ストローク方向10で有効に支持される。タイロッド14に外嵌された調整ナット15は、工具支持体4の支持体側の後退ストローク時支持面13に力なしにまたはタイロッド14への僅かなプリロードの作用下で接触している。
【0050】
さらに、部分ユニット52のタイロッド14が、タイロッド側の雄ねじ山19の、連結ねじ山19bとして設けられた区分でもって、引張締付け機器23の引張機構27に設けられたねじ山付き孔26にねじ込まれ、これによって、引張機構27に結合される。
【0051】
いま、工具支持体4が機器側の支持体25に後退ストローク方向10で支持されていると、引張締付け機器23の、部分ユニット52のタイロッド14に結合された引張機構27が、
図2に矢印28により示した、後退ストローク方向10に合致する引張方向に引っ張られ、この引張方向28への引張機構27の引張に基づき、反対側の端部で加工工具3を介して工具支持体4に支持されたタイロッド14に、加工ユニット51もしくは部分ユニット52の後退ストローク方向10で引張荷重が加えられる。
【0052】
タイロッド14への引張荷重に基づき、締付け装置5の調整ナット15が工具支持体4の後退ストローク時支持面13から離反し、調整ナット15が、作業軸線8を中心としたねじり操作によって、タイロッド14上で作業軸線8に沿って予め規定された目標位置へと送られるようになっている。なお、調整ナット15のねじり操作の際、この調整ナット15と工具支持体4の後退ストローク時支持面13との間に、調整ナット15のねじり操作を困難にしかつ調整ナット15の調整の精度を場合により損なってしまう摩擦が生じることはない。
【0053】
調整ナット15がタイロッド14上の目標位置に送られると、タイロッド14が引張締付け機器23の引張機構27から分離される。この引張締付け機器23の引張機構27からのタイロッド14の分離後、現状発生させられているタイロッド14へのプリロードの作用下で、調整ナット15が工具支持体4の後退ストローク時支持面13を押圧していて、加工工具3が工具支持体4の前進ストローク時支持面11を押圧している。
【0054】
タイロッド14上の調整ナット15の目標位置は、引張締付け機器23の引張機構27からのタイロッド14の分離後、1つには、工作物7の加工の範囲内で加工ユニット51の後退ストロークが実施されるときに、支持体側の前進ストローク時支持面11からの加工工具3の離反が有効に阻止され、もう1つには、加工ユニット51の後退ストロークに起因したタイロッド14への引張荷重と、予め調整されたタイロッド14へのプリロードとの合計を成すタイロッド14への合成引張荷重が、タイロッド14の、材料に関連した引張強さを上回らないように測定されたプリロードがタイロッド14に加えられるように規定されている。
【0055】
タイロッド14の引張強さを最大限に利用することができるようにするために、引張締付け機器23の引張機構27は、タイロッド14にプリロードを加える目的で液圧式に引張方向28に引っ張られる。タイロッド14に液圧式に加えられる引張荷重によって、タイロッド14へのプリロードの、量に関して正確な調整が可能となる。その結果、タイロッド14へのプリロードを機能確実に最大値に調整することができる。この最大値は、加工に起因したタイロッド14への引張荷重と合算しても、タイロッド14の破折には繋がらない。
【0056】
前述した形でプリロードが加えられたタイロッド14を備えた部分ユニット52は、引張締付け機器23の機器側の支持体25から緩められ、これによって、引張締付け機器23から分離される。
【0057】
次いで、部分ユニット52が、連結要素として設けられたアダプタに接合されて、加工ユニット51が形成される。
【0058】
相応して、
図3によれば、加工ユニット1の製作時のプロセスが認められる。まず、部分ユニット2において、前述した形でタイロッド14にプリロードが加えられる。次いで、部分ユニット2が、アダプタ29として形成された連結要素に結合されて、加工ユニット1が形成される。
【0059】
アダプタ29によって、加工ユニット1が、アキシャル成形機31として形成された加工機の加工駆動装置34の、
図3に破線で示した工具取付け部30内に位置固定される。アキシャル成形機31の加工駆動装置34によって、加工すべき工作物7に対する加工ユニット1の前進ストロークと後退ストロークとが発生させられる。
【0060】
アダプタ29への部分ユニット2の結合のためには、工具支持体4とアダプタ29とが互いに螺合される。
【0061】
この目的のためには、工具支持体4の、雄ねじ山20を備えたねじ山付き突出部21が、アダプタ29に設けられたピン収容部32の壁に設けられた雌ねじ山にボルトのようにねじ込まれる。このとき、ねじ頭のように、工具支持体4の、ねじ山付き突出部21に比べて加工ユニット1の作業軸線8に対して横方向に存在している張出し部が、支持体側の当接面22でもって連結要素側のもしくはアダプタ側の当接面33に当接する。
【0062】
軸線方向でアダプタ29に支持される工具支持体4をアダプタ29に対して相対的にねじり運動させることに関連した工具支持体4の締付けによって、アダプタ29のピン収容部32にねじ込まれた支持体側のねじ山付き突出部21が引き伸ばされる。この支持体側のねじ山付き突出部21は、後退ストローク方向10に向けられた端面に、締付け装置5の調整ナット15用の支持体側の後退ストローク時支持面13を形成しているので、支持体側のねじ山付き突出部21が、このねじ山付き突出部21の端面に支持された調整ナット15を介して引き伸ばされることによって、タイロッド14に、予め発生させられたプリロードを超える僅かな引張荷重およびプリロードが生じる。組付けに起因したタイロッド14への付加的なプリロードは、引張締付け機器23により発生させられるタイロッド14へのプリロードの測定時に考慮されなければならない。