(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】エクソソーム上の蛍光及び抗体数を決定する際に、レーザ光による蛍光色素の退色を低減するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2021571297
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 DE2020000149
(87)【国際公開番号】W WO2021004563
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】102019004870.9
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516313966
【氏名又は名称】パーティクル メトリックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴァヘルニッヒ,ハンノ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムブレヒト,クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】シフマン,イェンス
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202018005287(DE,U1)
【文献】欧州特許出願公開第02594981(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/83
G01N 15/00-G01N 15/14
G01N 33/00-G01N 33/98
G01N 35/00-G01N 35/10
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
ACS PUBLICATIONS
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクソソーム上の蛍光及び抗体数を決定する際に、レーザ光による蛍光色素の品質低下を低減するための装置であって、
d)測定セル(17)の所定の測定位置において、異なる色のレーザによる種々の測定点(26)を保存する手段を備え、サンプル(18)と相互作用した個々のレーザビーム(24)のフォーカシングが、ビデオカメラ(13)に収束ビーム束の中心として記録され、
e)
マルチノッチフィルタから成るノッチフィルタ(6)と、
前記ノッチフィルタ(6)と同じ光路長を模倣して前記測定セル(17)における測定点(26)を調節する際に液体レンズ(15)と前記測定セル(17)の測定位置(26)との間で収束ビームパスにおける蛍光とレーザ散乱光との光路長を同じに設定及び固定するための石英ガラス(16)と、のための交換装置(7)を備え、
2秒以下の時間で、
個々のレーザが測定セルの各測定点にガイドされ、イメージがビデオカメラ(13)により記録され、対応するデータがパターン認識及び粒子トラッキング解析に送られた後、レーザがスイッチオフされることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ビデオカメラ(13)は、
sCMOS又はeCCDであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
エクソソーム上の蛍光及び抗体数を決定する際に、レーザ光による蛍光色素の強度低下を低減するための方法であって、請求項1に記載の装置において、
d)測定セル(17)が、用いるレーザの位置検知、フォーカシング及び保存のためのテスト液で満たされ、
e)検定液が調査するエクソソームを含むサンプル液で置き換えられ、測定セル(17)が泡を含んでいないかチェックされ、全てのレーザが位置1に戻され、
f)レーザが各々の保存されたフォーカス地点に連続的に移動されて分析開始時にスイッチオンされ、イメージが光センサ(12)により記録され、対応するデータがパターン認識に送信されることを特徴とする
方法。
【請求項4】
プログラムがコンピュータで実行される場合に、請求項3に記載された方法ステップを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【請求項5】
プログラムがコンピュータで実行される場合に、請求項
3に記載された方
法を実行する ための
コンピュータプログラムのプログラムコードを有する
機械可読キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、エクソソーム上の蛍光及び抗体数を決定する際に、レーザ光による蛍光色素の強度低下を低減するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エクソソーム上の蛍光及び抗体数を決定する装置は、DE 20 2018 005 287 U1で知られている。
【0003】
生物学における小胞とは、一重又は二重の膜若しくはタンパク質から成る網状の膜により包まれ、細胞内在性で非常に小さい円形から楕円形の泡である。小胞は、異なる細胞プロセスが進行する別個の細胞コンパートメントを形成する。小胞の大きさは、約1マイクロメートルである。小胞は、細胞内で多くの物質の輸送を担う。
【0004】
細胞外小胞が生じる機構については、現時点においても完全には説明されていない。3タイプの細胞外小胞が、それらの起源又は大きさに基づいて分類されている。
【0005】
ここで、エクソソームは、約50から150nmの大きさを持つ小さな小胞である。
【0006】
上記文献の請求項1は、以下の特徴を持つ装置に関する。
a)複数の異なるレーザ(1,2,3,4)のビームが、粒子含有サンプル(9)を含む測定セル(22)で1つのビームパス(21)となるようにそれぞれ別個の集光プリズム(14)により配光され、サンプル(9)と相互作用したレーザビーム(21)の集束は、蛍光プレイン(5)及び散乱光プレイン(8)からの光より成る収束ビーム束の中心を形成し、光学ユニットコントローラ(18)を有する液体レンズを通過した後、ビデオカメラ(15)に記録され、
b)収束ビームパスは、交換ホイール(17)及びコントローラ(26)により移動されるカラーフィルタ(16)を通過し、
c)タッチスクリーン(19)を有するディスプレイ(9)及び粒子トラッキングプログラムを有する全体コントローラ(20)が、ビデオカメラ(15)を操作するのに用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
統計的に良質な結果を得るための同じサンプルによる連続的な複数回の測定は、用いた蛍光色素が長いレーザ作用時間により急激に退色し、測定後に測定セルでのサンプルの置換を必要とするため、上述のDE 20 2018 005 287 U1に記載された従来技術では実行することができない。
【0008】
レーザ色素(蛍光色素)へのレーザ作用時間が短くなれば、退色は低減し、同じサンプルを用いた複数回の測定が可能となる。
【0009】
そこで、本願は、蛍光色素(蛍光染料)へのレーザ光の作用時間を減らすという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1でクレームされた以下の装置、
エクソソーム上の蛍光及び抗体数を決定する際に、レーザ光による蛍光色素の品質低下を低減するための装置であって、
a)測定セル(17)の所定の測定位置において、異なる色のレーザによる種々の測定点(26)を保存する手段を備え、サンプル(18)と相互作用した個々のレーザビーム(24)のフォーカシングが、ビデオカメラ(13)に収束ビーム束の中心として記録され、
e)マルチノッチフィルタから成るノッチフィルタ(6)と、前記ノッチフィルタ(6)と同じ光路長を模倣して前記測定セル(17)における測定点(26)を調節する際に液体レンズ(15)と前記測定セル(17)の測定位置(26)との間で収束ビームパスにおける蛍光とレーザ散乱光との光路長を同じに設定及び固定するための石英ガラス(16)と、のための交換装置(7)を備え、
2秒以下の時間で、個々のレーザが測定セルの各測定点にガイドされ、イメージがビデオカメラ(13)により記録され、対応するデータがパターン認識及び粒子トラッキング解析に送られた後、レーザがスイッチオフされ、前記ビデオカメラ(13)は、sCMOS又はeCCDであることを特徴とする装置、
及び請求項3でクレームされた以下の方法、
エクソソーム上の蛍光及び抗体数を決定する際に、レーザ光による蛍光色素の強度低下を低減するための方法であって、請求項1に記載の装置において、
a)測定セル(17)が、用いるレーザの位置検知、フォーカシング及び保存のためのテスト液で満たされ、
b)検定液が調査するエクソソームを含むサンプル液で置き換えられ、測定セル(17)が泡を含んでいないかチェックされ、全てのレーザが位置1に戻され、
c)レーザが各々の保存されたフォーカス地点に連続的に移動されて分析開始時にスイッチオンされ、イメージが光センサ(12)により記録され、対応するデータがパターン認識に送信されることを特徴とする方法、
プログラムがコンピュータで実行される場合に、請求項3でクレームされた方法ステップを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム、
プログラムがコンピュータで実行される場合に、請求項3でクレームされた方法を実行するためのコンピュータプログラムのプログラムコードを有する機械可読キャリア、
により達成される。
【0011】
本出願の図面は、以下のような内容となっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】特別なNTAナノ粒子トラッキング方法を示す図。
【
図3】秒単位でのレーザ作用による色素の強度低下を示す図。
【
図4】測定セルにおける測定位置及びレーザの焦点(測定点)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本質的な部分においてDE 20 2018 005 287 U1の
図1に対応している。
【0014】
レーザの数は、従来技術の4つに対して5つになっている。従来技術における液体フィルタ6は、ノッチフィルタ6と石英ガラス16とを交換するための交換装置を有するノッチフィルタ6に置き換えられている。石英ガラス16は、測定セル17における測定点26(
図4参照)を調節する際に、対象物を通って光センサ12までの収束ビームパスで蛍光とレーザ散乱光とを同じ光路長に設定及び固定するのに用いられる。石英ガラス16は、ノッチフィルタ6と同じ光路長を模倣している。
【0015】
従来技術でのビデオカメラ15は、ここでは符号13で示され、コントローラ11により制御されてグラフェンをベースとした光センサ12を有し、光学ユニットコントローラ8を介してカメラ光学ユニット14を用いることにより、液体レンズ15を制御するものであり、液体レンズ15には、レーザ1~5の一つ及び集光プリズム21の一つのビームパス24上にある測定セル17のサンプル18における蛍光プレイン20に対して、ノッチフィルタ6及び測定セル17の光学通路窓19を介して投影される。
【0016】
全体コントローラ10は、従来技術の全体コントローラ20に対応し、ディスプレイ9は、従来技術のディスプレイ19に対応する。
【0017】
図2の測定セル17は鉛直上方から見たものであり、
図1でも示したレーザのビームパス24はレーザ通路窓23を通過し、蛍光プレイン20のフォーカスは、液体レンズ15及びカメラ光学ユニット14から石英ガラス16を通る点へと側方にテーパ状となっている。
【0018】
測定セル17の注入口25は、前方に見られる。
【0019】
秒単位でのレーザ作用後の色素強度低下は、
図3に示したパーセンテージからよく読み取ることができる。レーザ光が、測定位置26において蛍光色素にせいぜい2秒作用しただけで、蛍光色素の強度は、かなり弱くなって利用可能な測定結果を与えることができなくなる。
【0020】
測定セル17における測定位置と、レーザのビームパス24に対する光学ユニットの焦点(レーザ散乱光プレイン及び蛍光プレイン)での測定位置26とが、
図4に示す種々の測定位置1-4で示されている。ここでは、カメラ光学ユニット14も示されている。
【0021】
例えば、
図4で4の位置が、
図1に示した構成により実行される。
【0022】
測定セル17は、エクソソームサンプルの代わりに、ポリスチレン粒子又は認証されたエクソソームスタンダードを含むテスト液で満たされる。
【0023】
個々のレーザが、測定セル17の各測定点26(
図4参照)にガイド及び保存される。
【0024】
すなわち、すべての5レーザが、それぞれ測定位置1にガイドされ、光路長が確認及びフォーカスされた後に保存される。その後、すべての5レーザが、次の測定位置にガイドされ、フォーカス及び保存される。
【0025】
すべての5レーザについて、位置3及び位置4についても同じことが実行される。
【0026】
その後、レーザはスイッチオフされる。
【0027】
次のステップとして、測定セルの検定液が、エクソソームを含むサンプル液で置き換えられる。
【0028】
そして、ノッチフィルタ6が、液体レンズ15と測定セル17との間に押し出され、収束ビームパスに移動される。一方、石英ガラス16は、装置7に接続されて固定される。
【0029】
実際の測定は測定位置1で始まり、5つのレーザが保存されたフォーカス点に次々とスイッチされ、イメージが光センサにより記録され、データがパターン認識に送られる。この目的に必要とされる時間は、2秒以下である。その後、レーザはスイッチオフされる。
【0030】
レーザは、測定位置2へと更に移動される。測定は、上記ステップのように行われる。レーザは、その後スイッチオフされる。
【0031】
レーザは、測定位置3へと更に移動される。測定は、再び上記ステップのように行われる。レーザは、その後スイッチオフされる。
【0032】
レーザは、測定位置4へと移動される。データが評価される。
【0033】
粒子は、例えば、充填により、測定セル内の様々な点において異なるレベルの高又は低濃度粒子を形成し得る。そのため、良質で高い統計的確実性を持つ測定結果を得るために、複数の測定位置が測定セル内で必要となる。
【0034】
測定セル内で新たに処理される測定位置では、抗体上の蛍光はまだ新しく未使用である。
【0035】
蛍光は、次の測定位置に移動する際にレーザがスイッチオフされ、レーザによる退色が起こらないことによっても保存される。これは、個々の測定位置及びフォーカス点の前もっての保存、そして、それら位置への再度の高精度高速移動(オブジェクティブのレーザ及び液体レンズにおける遊びの無い高速ステッピングモータ及び精密移動キャリッジ)により初めて可能となる。
【0036】
マルチバンドパスフィルタ6(マルチノッチフィルタ)は、各レーザの高速スイッチングを可能とする。フィルタ交換が不要となるので、時間が短縮されて蛍光の保存となる。
【0037】
上で例示したような念入りな測定方法によれば、1つのエクソソームサンプルについて5つのレーザを用い、4つどころか100又はそれ以上の測定位置26を持つ測定位置にアプローチして測定することができる。これにより、非常に高品質な測定が保証される。
【0038】
マルチバンドパスフィルタ6(ノッチフィルタ)が光強度を低下させるので、カメラには高感度sCMOS、eCCD又はグラフェン光センサを使用する必要がある。
【0039】
本方法は、特別な制御及び解析プログラムによる上記方法及び動作シークエンスの実行に複雑な制御を必要とする。
【符号の説明】
【0040】
1 レーザ375nm
2 レーザ(紫=405nm)
3 レーザ(青=488nm)
4 レーザ(緑=520nm)
5 レーザ(赤=640nm)
6 ノッチフィルタ(マルチバンドパスフィルタ)
7 ノッチフィルタ及び石英ガラスのための交換装置
8 光学ユニットコントローラ
9 タッチスクリーンを有するディスプレイ
10 粒子トラッキングプログラムを有する全体コントローラ
11 光センサ12のコントローラ
12 グラフェンをベースとした光センサ
13 検出器又はビデオカメラeCCD、sCMOS
14 カメラ光学ユニット
15 調整可能なフォーカスを有する液体レンズ
16 石英ガラス
17 測定セル
18 サンプル
19 測定セル17の光学ユニット通路窓
20 蛍光プレイン
21 集光プリズム(すべてのレーザを1つのビームパスにガイドする)
22 散乱光プレイン
23 測定セル17のレーザ通路窓
24 ビームパスレーザ
25 測定セル17の注入口
26 測定位置(レーザ散乱光と蛍光とのフォーカスプレインを持つ測定点)