(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】硝酸を使用してグリコールアルデヒドを酸化する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/27 20060101AFI20240105BHJP
C07C 59/153 20060101ALI20240105BHJP
C07C 59/06 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C07C51/27
C07C59/153
C07C59/06
(21)【出願番号】P 2021572016
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 CN2019089998
(87)【国際公開番号】W WO2020243907
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イェン, チェン
(72)【発明者】
【氏名】クセマ, ブライト
(72)【発明者】
【氏名】マストロヤンニ, セルジョ
(72)【発明者】
【氏名】ストレフ, ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マリオン, フィリップ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第01198339(DE,A)
【文献】国際公開第2018/095973(WO,A1)
【文献】Zhang Zhiyong,Reaction and separation process research of glyoxal produced with acetaldehyde,Chinese Doctoral Dissortations Full-text Database Engineering Science and Technology 1,2013年05月15日,Vol.2013, No.05,ISSN: 1674-022X
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有機酸を合成する方法であって、溶媒の存在下においてグリコールアルデヒドを硝酸で酸化することを含
み、
グリコールアルデヒドに対する硝酸のモル比が0.5~8mol/molであり、
-前記有機酸は、グリコール酸であるか又はグリコール酸を含み、ここでグリコールアルデヒドは、反応スキーム1:
に従ってグリコール酸に酸化され、前記溶媒中の硝酸の濃度は、20重量%超であるか、又は
-前記有機酸は、グリオキシル酸であるか又はグリオキシル酸を含み、ここでグリコールアルデヒドは、反応スキーム2:
に従ってグリオキシル酸に酸化され、前記溶媒中の硝酸の濃度は、30重量%以下である、方法。
【請求項2】
グリコールアルデヒドは、開始剤の存在下において硝酸で酸化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開始剤は、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム又はこれらの混合物などの亜硝酸塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機酸は、グリコール酸、グリオキシル酸又はこれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
グリコール酸への選択率は、少なくとも70%であり、及びグリコール酸への収率は、少なくとも70%である、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒中の硝酸の濃度は、30重量%~60重量%である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
グリオキシル酸への選択率は、少なくとも45%であり、及びグリオキシル酸への収率は、20%超である、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒中の硝酸の濃度は、5重量%~30重量%である、請求項
1~4及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
グリコールアルデヒドと、硝酸と、溶媒とを含
み、グリコールアルデヒドに対する硝酸のモル比が0.5~8mol/molである、混合物。
【請求項10】
開始剤を更に含む、請求項
9に記載の混合物。
【請求項11】
前記開始剤は、亜硝酸塩である、請求項
10に記載の混合物。
【請求項12】
前記亜硝酸塩は、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム及びこれらの混合物からなる群から選択される亜硝酸塩である、請求項
11に記載の混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の有機酸を合成する方法であって、溶媒の存在下においてグリコールアルデヒドを硝酸で酸化することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリコール酸は、従来、主に清缶剤、洗浄剤、皮革なめし剤、金属イオンのキレート剤などとして使用されてきた。近年、その用途は、化粧品、パーソナルケア及び外用医薬品に広がっている。医薬品のために使用されるグリコール酸は、高純度グレードを必要とし、より低レベルの有害不純物を含むことが望まれる。グリコール酸は、近年、生分解性とガスバリア機能とを備えたポリグリコール酸の原料としても期待されている。
【0003】
グリコール酸を製造するための従来知られている方法の典型的な例としては、(1)高温高圧条件下、強酸性触媒の存在下で一酸化炭素と、ホルムアルデヒドと、水とを反応させる方法;(2)ホルムアルデヒドをシアン化水素と反応させる方法;(3)クロロ酢酸と水酸化ナトリウムとを反応させる方法;(4)エチレングリコールの酸化によって得られるグリオキサールと強アルカリとの間でカニッツァーロ反応を行ってグリコール酸塩を形成し、次いで酸を添加して、得られたグリコール酸塩からグリコール酸を遊離させる方法;(5)エチレングリコールを酸化することにより得られるグリオキサールと水との間の液相反応を無機触媒の存在下で行う方法;(6)貴金属触媒及び酸素の存在下でエチレングリコールを接触酸化する方法;及び(7)エチレングリコールをメタノール及び酸素で酸化的エステル化してグリコール酸メチルを得た後、これをグリコール酸に加水分解する方法が挙げられる。
【0004】
方法(1)は、高温高圧条件下、酸性ポリオキソメタレートなどの強酸性触媒の存在下で行われる。そのため、高温高圧の特殊な反応装置及び特殊な反応条件が必要である。同時に、高温高圧の反応条件を使用して得られるグリコール酸には、多量の様々な不純物が含まれている。
【0005】
ホルムアルデヒドをシアン化水素と反応させる方法(2)では、非常に有毒な出発原料、すなわちシアン化水素を使用する必要がある。
【0006】
モノクロロ酢酸を水酸化ナトリウムと反応させる方法(3)は、ほぼ化学量論量の水酸化ナトリウムを使用することを必要とする。1つの問題点は、生成した塩化ナトリウムがスラリー濃度を上げ、作業性を低下させることである。もう1つの問題点は、この塩を完全に除去することはできず、生成物中に残ることである。
【0007】
方法(4)~(7)に共通する問題点は、エチレングリコールが化石由来原料から製造されることである。例えば、エチレングリコールは、エチレンオキシドを原料として製造することができる。エチレングリコールの製造工程は、長く、加えて、爆発性のあるエチレンオキシドを製造プロセスで適切に取り扱わなければならない。
【0008】
Electrochimica Acta(1994),39(11-12),1877-80で報告されているように、グリコールアルデヒドを酸化するための以前の取り組みでは、Pt電極上でのグリコールアルデヒドの電気化学的酸化による主生成物は、グリオキサールであり、グリコール酸の生成は、わずかなものにすぎないことが示されている。選択性をグリコール酸にシフトするために、Biの吸着原子層の堆積による電極表面の電気化学的修飾が必要であるが、工業生産に容易に変換されないプロセスである。
【0009】
グリオキシル酸は、農薬、アロマ、化粧品、医薬品及びポリマーの重要な中間体である。グリオキシル酸の主な用途は、食品、飲料及び芳香剤のためのバニリンである。グリオキシル酸は、水質浄化、殺虫剤並びにワニス材料及び染料の中間体としても使用される。これは、食品の保存において、重合の架橋剤として且つめっき添加剤として使用することもできる。
【0010】
グリオキシル酸を製造するための従来から知られている商業的方法は、グリオキサールの酸化によるものである。例えば、米国特許第4698441号明細書は、グリオキサールの硝酸酸化が、グリオキシル酸を製造するための工業プロセスとして使用されたことを開示している。不利なことに、グリオキサールは、化石由来の原料であり、シュウ酸は、このプロセスの副産物として形成される。
【0011】
グリオキシル酸は、マレイン酸のオゾン処理によっても生成することができる。このプロセスの主な欠点は、オゾン及び過酸化物含有オゾン分解生成物が安全でなく、爆発しやすいことである。
【0012】
従来の製造方法は、上述した欠点を有する。特に、これらの方法によって得られるグリコール酸又はグリオキシル酸は、化石由来原料を利用している。
【0013】
従来の技術の欠点を克服することができる、低コストであり、複雑でない装置、穏やかな反応条件、取り扱い易さなどの望ましい特徴を有する、バイオベースの材料などの安価且つ持続可能な原料に基づいて有機酸、特にグリコール酸及び/又はグリオキシル酸を高収率且つ高選択率で調製するための工業的に適用可能なプロセスを開発することが依然として求められている。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明は、少なくとも1種の有機酸を合成する方法であって、溶媒の存在下においてグリコールアルデヒドを硝酸で酸化することを含む方法に関する。
【0015】
本発明は、グリコールアルデヒドと、硝酸と、溶媒とを含む混合物にも関する。
【0016】
定義
特許請求の範囲を含めた本明細書の全体を通して、用語「1つを含む」は、特に明記しない限り、用語「少なくとも1つを含む」と同じ意味であると理解されるべきであり、「~の間」は、その両端を含むと理解されるべきである。
【0017】
本明細書で用いる場合、有機基に関連して、用語「(Cn~Cm)」(式中、n及びmは、それぞれ整数である)は、基が1つの基当たりn個の炭素原子~m個の炭素原子を含有し得ることを示す。
【0018】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(即ち少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0019】
用語「及び/又は」は、「及び」、「又は」の意味及びまたこの用語に関連する要素の他の可能な組み合わせも全て包含する。
【0020】
説明の継続において、特に明記しない限り、端の値は、与えられている値の範囲に含まれることが明記される。
【0021】
比、濃度、量及び他の数値データは、本明細書において範囲形式で示される場合がある。このような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために使用され、範囲の限界点として明示的に列挙される数値を包含するだけでなく、それぞれの数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのようにその範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲を包含するように柔軟に解釈されるべきであることが理解されるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
硝酸酸化を受けるグリコールアルデヒドは、バイオベースの原材料であり得る。バイオベースの原材料とは、元々、生物に由来する1種又は複数の物質からなる製品を指す。これらの物質は、天然有機化合物又は自然界に存在する合成有機化合物であり得る。
【0023】
例えば、グリコールアルデヒドは、米国特許第7,094,932号明細書、米国特許第5,397,582号明細書及び国際公開第2017/216311号パンフレットに記載されているようなC1~C3酸素化物の混合物を生成するための炭水化物の高温断片化によって製造することができる。
【0024】
C1~C3酸素化物混合物を得るための熱による断片化に使用される炭水化物は、単糖及び/又は二糖であり得る。一実施形態では、単糖及び/又は二糖は、スクロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、リボース、マンノース、タガトース、ガラクトース、グルコース及びフルクトース又はこれらの混合物からなる群から選択される。更なる実施形態では、単糖は、グルコース、ガラクトース、タガトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、リボース又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
本発明による方法は、硝酸が実際の酸化種の直接の供給源として機能する酸化プロセスとして説明することができる。
【0026】
好ましくは、グリコールアルデヒドは、開始剤の存在下において硝酸で酸化される。有利には、開始剤は、酸化反応の開始を促進するのみならず、目的の有機酸の収率も改善させる。
【0027】
開始剤は、好ましくは、ナイトライト、窒素酸化物又はこれらの混合物である。より好ましくは、開始剤は、ナイトライトである。
【0028】
窒素酸化物は、有利には、NO、NO2及びN2O3からなる群から選択される。
【0029】
ナイトライトは、有機化合物、すなわち亜硝酸エステルであり得、亜硝酸エステルの中でも、亜硝酸イソアミルなどの亜硝酸アルキルを挙げることができる。ナイトライトは、無機化合物、すなわち亜硝酸塩であり得る。ナイトライトは、好ましくは、亜硝酸塩である。より好ましくは、ナイトライトは、亜硝酸アンモニウム、アルカリ金属亜硝酸塩又はこれらの混合物である。アルカリ金属亜硝酸塩の中でも、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム及びこれらの混合物が特に適切である。
【0030】
目的の有機酸の収率を向上させるために、硝酸を用いた酸化反応において塩酸又は硫酸などの鉱酸を使用することができる。
【0031】
本発明による方法で使用される溶媒は、水、エーテル、メタノール又はエタノールであり得る。好ましい溶媒は、水である。
【0032】
グリコールアルデヒドの硝酸酸化によって形成される有機酸は、特にグリコール酸、グリオキシル酸又はこれらの混合物である。
【0033】
本発明による方法は、
(i)グリコールアルデヒドと、硝酸と、溶媒と、任意選択的に開始剤とを混合する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を適切な温度で適切な時間加熱して、目的の有機酸を合成する工程
を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記の鉱酸は、工程(i)の混合物に導入される。
【0035】
当業者であれは、目的の有機酸を合成するために、適切な温度及び適切な時間を選択するであろう。
【0036】
一実施形態では、有機酸は、グリコール酸であるか又はそれを含み、及びグリコールアルデヒドは、反応スキーム1:
に従ってグリコール酸に酸化される。
【0037】
硝酸の濃度が20重量%超、好ましくは30重量%超、より好ましくは30重量%~60重量%である場合、グリコール酸は、少なくとも70%の高い選択性及び少なくとも70%の高い収率で得られることが見出された。
【0038】
本発明による硝酸の濃度は、硝酸の重量を市販の硝酸及び供給された溶媒の重量で割ることによって決定される。
【0039】
例えば、市販の硝酸の濃度は、約65%である。硝酸の濃度は、以下の通りに計算される。
【0040】
グリコールアルデヒドに対する硝酸のモル比は、0.5~8mol/molである。
【0041】
この実施形態における反応温度は、20~120℃である。
【0042】
この実施形態における反応時間は、0.25~25時間である。
【0043】
好ましくは、反応は、開始剤の存在下で行われる。グリコールアルデヒドに対する開始剤のモル比は、0.01~0.2mol/mol、好ましくは0.05~0.1mol/molである。
【0044】
別の実施形態では、有機酸は、グリオキシル酸であるか又はそれを含み、及びグリコールアルデヒドは、反応スキーム2:
に従ってグリオキシル酸に酸化される。
【0045】
硝酸の濃度が30重量%以下、好ましくは5重量%~30重量%、より好ましくは10重量%~20重量%である場合、グリオキシル酸は、少なくとも45%の選択性及び少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%の収率で得られることが見出された。
【0046】
グリコールアルデヒドに対する硝酸のモル比は、0.5~8mol/molである。
【0047】
この実施形態における反応温度は、20~120℃である。
【0048】
この実施形態における反応時間は、0.25~25時間である。
【0049】
好ましくは、反応は、開始剤の存在下で行われる。グリコールアルデヒドに対する開始剤のモル比は、0.01~0.2mol/mol、好ましくは0.05~0.1mol/molである。
【0050】
驚くべきことに、グリコールアルデヒドのカルボニル基の代わりに、グリコールアルデヒドのヒドロキシル基がカルボキシル基に直接酸化されることが見出された。グリオキシル酸の選択性は、反応時間がグリコールアルデヒドのほぼ完全な変換を達成するのに十分長い場合でも安定である。
【0051】
本発明は、グリコールアルデヒドと、硝酸と、溶媒とを含む混合物にも関する。溶媒は、上述したものと同じ意味を有する。
【0052】
グリコールアルデヒドと硝酸とを含む混合物は、開始剤を更に含む。開始剤は、上述したものと同じ意味を有する。
【0053】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明するために含まれる。言うまでもなく、本発明は、記載される実施例に限定されない。
【実施例】
【0054】
材料
- グリコールアルデヒド二量体、CAS No.23147-58-2、純度>95%、Adamas-betaから、
- 亜硝酸ナトリウム、CAS No.7632-0-0、純度AR>99.0%、Sinopharmから、
- 硝酸、CAS No.7697-37-2、純度AR 65~68%、Sinopharmから。
【0055】
実施例1
240mgのグリコールアルデヒド、28mgの亜硝酸ナトリウム、0.8gの65%硝酸及び2.6mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、60℃で8時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコールアルデヒドの変換率は、92%であり、グリオキシル酸への収率は、45%であった。他の生成物は、グリオキサール(9%)、グリコール酸(7%)及びギ酸(17%)であった。
【0056】
実施例2
480mgのグリコールアルデヒド、56mgの亜硝酸ナトリウム、0.5gの65%硝酸及び1.0mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、60℃で1時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコールアルデヒドの変換率は、30%であり、グリオキシル酸への収率は、22%であった。他の生成物は、グリオキサール(3%)、グリコール酸(1%)、シュウ酸(3%)及びギ酸(1%)であった。
【0057】
実施例3
240mgのグリコールアルデヒド、28mgの亜硝酸ナトリウム、1.6gの65%硝酸及び10mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、60℃で24時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコールアルデヒドの変換率は、99%であり、グリオキシル酸への収率は、55%であった。他の生成物は、グリオキサール(16%)、グリコール酸(5%)及びギ酸(17%)であった。
【0058】
実施例4
240mgのグリコールアルデヒド、28mgの亜硝酸ナトリウム、0.4gの65%硝酸及び1.3mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、40℃で24時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコールアルデヒドの変換率は、55%であり、グリオキシル酸への収率は、22%であった。他の生成物は、グリオキサール(2%)、グリコール酸(5%)及びギ酸(11%)であった。
【0059】
実施例5
240mgのグリコールアルデヒド、0.4gの65%硝酸及び0.5mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、80℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコールアルデヒドの変換率は、100%であった。グリコール酸への収率は、78%であり、グリオキシル酸の収率は、7%であった。
【0060】
実施例6
480mgのグリコールアルデヒド、1.0gの65%硝酸及び1.0mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、60℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコールアルデヒドの変換率は、100%であった。グリコール酸への収率は、87%であり、グリオキシル酸の収率は、10%であった。
【0061】
実施例7
480mgのグリコールアルデヒド、60mgの亜硝酸ナトリウム、1.0gの65%硝酸及び1.0mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、60℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコールアルデヒドの変換率は、100%であり、グリコール酸への収率は、92%であった。
【0062】
実施例8
480mgのグリコールアルデヒド、60mgの亜硝酸ナトリウム、1.0gの65%硝酸及び1.0mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、60℃で15分間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコールアルデヒドの変換率は、100%であり、グリコール酸への収率は、97%であった。
【0063】
実施例9
312mgのグリコール酸、30mgの亜硝酸ナトリウム、1.2gの65%硝酸及び1.0mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、60℃で1時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコール酸の反応は、観察されなかった。
【0064】
実施例10
256mgのグリコール酸、30mgの亜硝酸ナトリウム、0.8gの65%硝酸及び2.6mLの水を、コンデンサーを備えたガラスフラスコ内で混合し、60℃で8時間加熱した。室温まで冷却した後、生成物をHPLCで分析した。グリコール酸の反応は、観察されなかった。
【0065】
スキーム1に示されているように、グリコールアルデヒドのアルデヒド基のみがカルボキシル基に酸化されることは、明らかである。しかしながら、実施例8及び9によれば、グリコール酸のヒドロキシル基は、硝酸の高濃度と低濃度との両方を有する反応媒体中で更なる酸化を受けなかった。35%の高硝酸濃度と15%の低硝酸濃度との少なくとも2つの硝酸濃度が試験された。その結果、スキーム2で例示された反応では、グリコールアルデヒドのヒドロキシル基が直接カルボキシル基に酸化されていることを証明することができる。