IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 上海交通大学の特許一覧

特許7413437白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法
<>
  • 特許-白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法 図1
  • 特許-白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法 図2
  • 特許-白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法 図3
  • 特許-白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法 図4
  • 特許-白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法 図5
  • 特許-白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/091 20210101AFI20240105BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20240105BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240105BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240105BHJP
   C25B 11/065 20210101ALI20240105BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20240105BHJP
   C25B 1/04 20210101ALN20240105BHJP
【FI】
C25B11/091
B01J27/24 M
B01J37/04 102
B01J37/08
C25B11/065
C25B11/054
C25B1/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022078826
(22)【出願日】2022-05-12
(65)【公開番号】P2022186607
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】202110623615.X
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】800 Dongchuan Rd.,Minhang District,Shanghai,200240,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】李 新昊
(72)【発明者】
【氏名】孫 露▲ハン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 接勝
(72)【発明者】
【氏名】石橋 一伸
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-141792(JP,A)
【文献】特開2006-008472(JP,A)
【文献】特表2013-539718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/091
B01J 27/24
B01J 37/04
B01J 37/08
C25B 11/065
C25B 11/054
C25B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源と、コバルト源と、硫黄源とともに焼成することによって、コバルト含有炭素担体を得ることと、
湿式含浸法によって、白金源を溶液形態でコバルト含有炭素担体と混合することで、コバルト含有炭素担体に白金源を白金ナノ粒子として持担させることと、
を含
コバルト源は、金属コバルトまたはコバルト塩であり、
硫黄源は、硫酸塩であり、
白金源は、白金塩である、触媒としての白金コバルトヘテロ材料の製造方法。
【請求項2】
炭素源は、モノシアナミド、ジシアンジアミド、メラミン、チオ尿素及び尿素から選ばれる少なくとも一種であり、
コバルト源は、金属コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト及び硫酸コバルトから選ばれる少なくとも一種であり、
硫黄源は、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種であり、
白金源は、二塩化白金、四塩化白金及び硝酸白金から選ばれる少なくとも一種である、
請求項に記載の触媒としての白金コバルトヘテロ材料の製造方法。
【請求項3】
白金源を水溶液の形態で、コバルト含有炭素担体が水に分散されてなる分散体に添加することで、コバルト含有炭素担体に白金ナノ粒子を持担させる、請求項1又は2に記載の触媒としての白金コバルトヘテロ材料の製造方法。
【請求項4】
水分解による水素発生電極における、請求項1又は2に記載の白金コバルトヘテロ材料の製造方法による白金コバルトヘテロ材料の触媒としての使用。
【請求項5】
白金コバルトヘテロ材料において、白金元素の含有量は、0.001-20wt%で、コバルト元素の含有量は0.001-30wt%である、請求項4に記載の白金コバルトヘテロ材料の触媒としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金基ヘテロ構造の水電解触媒の分野に属し、特に白金コバルトヘテロ材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の化石燃料の大量消費は、人類に多大な富をもたらすと同時に、温室効果、酸性雨、粉塵汚染などの深刻な環境問題を引き起こしてきた。様々な再生可能エネルギーの中でも、カーボンフリーの水素エネルギーは、非常に重要かつ有望なクリーンエネルギー源である。現在、水電解は、化石燃料の消費を削減、あるいは代替できる環境に優しい水素製造技術である。触媒は、水素の析出反応のポイントであり、効率的で耐久性があり費用対効果の高い電極触媒の合理的な設計は、純粋でクリーンな水素燃料の大量生産を促進することができる。
【0003】
安価で効果的な非白金系電極触媒の開発には多大な努力が払われているが、白金を含む電極触媒は、最も低い過電圧と水素製造における優れた耐久性を持ち、水素製造における最も効率的で標準的な触媒である。白金系触媒は、実際にはコストの問題があり、白金系触媒の水素製造における触媒活性をさらに向上させ、白金の有効利用や白金使用量の削減を実現することは大きな関心事である。
【0004】
低白金含量の水電解電極触媒の設計においては、研究成果は主に白金成分の構造設計に着目したものに集中している。白金クラスターやナノ粒子の分散性を高めるために微細な担体構造を設計したり、地球上に豊富に存在する金属元素を触媒に充填して合金構造やコアシェル構造の白金系バイメタル触媒やポリメタル触媒を合成したり、さらには他の金属との相乗効果によって最終的に白金の質量活性をさらに高めたりすることによって、最大の白金利用率を達成している。しかし、これらの精密で複雑な合成方法では、グラム単位で大規模に触媒を工業的に合成することはできず、実用化には極めて困難な状況が続いている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】ルハン・スン(Lu-Han Sun)他「効率的な水素原子の解離とガス発生のために超微細Ptナノ粒子を安定化および活性化するためのヘテロ接合ベースの電子供与体(“Heterojunction-Based Electron Donators to Stabilize and Activate Ultrafine Pt Nanoparticles for Efficient Hydrogen Atom Dissociation and Gas Evolution”)」、2021年、アンゲヴァンテ・ケミー(Angewandte Chemie)、60巻、P.25766-25770
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、新規な白金系金属触媒、特に白金の触媒活性を遷移金属によって向上させる白金コバルトヘテロ材料を提供することにある。
まず、本発明は、炭素担体と、炭素担体に持担される白金ナノ粒子とを含み、前記炭素担体は、コバルトを含む炭素担体である、白金コバルトヘテロ材料を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、炭素源と、コバルト源とを焼成することによって、コバルト含有炭素担体を得ることと、白金源を湿式含浸法で含浸させることによって、コバルト含有炭素担体に白金ナノ粒子を持担させることと、を含む、白金コバルトヘテロ材料の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、白金コバルトヘテロ材料の製造方法による白金コバルトへテロ材料の使用を提供する。
本発明は、高温焼成と湿式含浸法により白金コバルトヘテロ構造を合成するもので、プロセスが簡単で、グリーンで安全、制御しやすく、活性安定性が良く、量産化が可能という特徴を有する。
【0009】
電気化学触媒用の白金コバルトヘテロ材料の開発は、化学・エネルギー分野への重要な応用だけでなく、電極触媒材料研究にも新たな視野を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例11の白金コバルトヘテロ材料で作製した実施例22の電極のデジタル写真である。
図2】実施例11で作製した白金コバルトヘテロ材料の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例11で作製した白金コバルトヘテロ材料の透過型電子顕微鏡写真である。
図4】実施例11で作製した白金コバルトヘテロ材料のX線回折パターンである。
図5】実施例22および比較例1で得られた電極の線形走査ボルタンメトリーグラフである。
図6】実施例22の電極について、24時間にわたる定電位安定性サイクル試験での電流対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、白金コバルトヘテロ材料およびその製造方法に関するものである。白金コバルトヘテロ材料は、コバルト含有炭素担体に白金ナノ粒子を持担させたものである。簡単な湿式含浸法により、コバルト含有炭素担体の表面に微細な白金ナノ粒子を生成できる。白金コバルトヘテロ材料の製造方法は、主に、高温焼成によりコバルト含有炭素担体材料を製造する工程と、湿式含浸法により白金コバルトヘテロ材料を製造する工程とを含む。コバルト含有炭素担体は、高温焼成時に窒素がドープされたコバルト含有窒素ドープ炭素担体であってもよい。
【0012】
コバルト含有炭素担体材料の高温焼成は、炭素源とコバルト源(これに硫黄源を加えてもよい)を一段階焼成してコバルト含有炭素担体(コバルト含有窒素ドープ炭素担体であってもよい)を得ることを含む。炭素源は、モノシアナミド、ジシアンジアミド、メラミン、チオ尿素、尿素、グルコース等から選択することができ、好ましくはジシアナミドである。コバルト源は、コバルト(例えば、コバルトシート)、硝酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト等から選択することができ、好ましくはコバルトシートである。硫黄源は、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等から選択することができ、好ましくは硫酸アンモニウムである。コバルト含有炭素担体材料は、通常、炭素源および/または硫黄源中の窒素によって、窒素がドープされている。コバルト含有炭素担体のコバルト含有量は、通常、0.001~50wt%である。
【0013】
湿式含浸法による白金コバルトヘテロ材料の製造方法は、白金源を含む溶液をコバルト含有炭素担体に加えることで、担体に白金を担持させて、白金コバルトヘテロ材料を得ることを含む。また、白金源は、コバルト含有炭素担体の分散体に、例えば、コバルト含有炭素担体の水分散体に添加することができる。具体的な一実施形態では、コバルト含有炭素担体材料を超音波処理および攪拌により水中に分散させて分散体を得る。そして、攪拌しながら、白金源を含む溶液を分散体に滴下する。その後、白金源添加後のコバルト含有炭素担体を回収して洗浄および乾燥することで、黒色固体試料である白金コバルトヘテロ材料が得られる。また、洗浄や乾燥後に生成物を還元することもできるが、必須ではない。白金源は、二塩化白金、四塩化白金、硝酸白金等から選択することができ、好ましくは四塩化白金である。
【0014】
具体的には、コバルト源、炭素源、硫黄源を一定の割合で混合し、600~1200℃で1~10時間焼成した後、自然冷却し、すり鉢で粉末化することで、コバルト含有炭素担体材料を得ることができる。湿式含浸法により白金源を担体材料に担持することによって、白金コバルトヘテロ材料が得られる。硫黄源(例えば硫酸アンモニウム)と炭素源(例えばジシアンジアミド)の質量比は、通常1:10~1:300、具体的には1:50~1:100である。コバルト源の使用量は、所望のコバルト含有量に応じて決定でき、通常、炭素源(例えばジシアンジアミド)とコバルト源の質量比(例えば、コバルト質量計で)は、10:1~1000:1、例えば20:1~200:1、50:1~100:1などを選ぶことができる。白金源の使用量は、所望の白金含有量に応じて選択することができ、一般に、上記コバルト源と白金源(例えば、四塩化白金)の質量比は、100:1~1:10、例えば、100:1~1:1、50:1~10:1等を選ぶことができる。
【0015】
上記工程に従って得られた本発明の白金コバルトヘテロ材料において、白金は、ナノ粒子の形態でコバルト含有炭素担体に分散される。炭素担体に含まれるコバルト粒子のサイズは、白金ナノ粒子の5~100倍であり、白金ナノ粒子は、サイズの大きいコバルト粒子の周囲に分散される。ただし、本発明は、これに限定されない。
【0016】
用途や実用上の必要性に応じて、本発明の製造方法によって得られる白金コバルトヘテロ材料は、白金元素を0.001~40wt%、コバルト元素を0.001~50wt%含有する。水素析出用触媒として、コバルトは、通常0.001~30wt%の範囲で、白金は0.001~20wt%の範囲で使用される。
【0017】
得られた白金コバルトヘテロ材料の用途として、例えば、水素を析出させる水電解反応の電極を作るための触媒として利用できることが挙げられる。触媒は、炭素繊維布、カーボンペーパー、チタンメッシュ、ニッケルフォームなど、さまざまな捕集材に担持して水素発生用電極を作製できる。
【0018】
本発明により製造される白金コバルトヘテロ材料のその他の用途として、例えば、酸素還元、窒素還元、水酸化、酸素生成のための水電解、有機合成触媒等が挙げられる。
実施例
白金コバルトヘテロ材料の製造
製造方法の全体過程は以下のようになる。硫黄源物質と炭素源物質とを所定の比例で混合する。混合によって得られた粉末と、コバルトシートとを混合して積層し(例えば、粉末を複数部に分け、コバルトシートを複数個に分割して混合して積層する)、1時間~6時間焼成した後、常温に冷却する。その結果、コバルト含有炭素担体材料が得られる。次に、コバルト含有炭素担体材料を水中に分散させる(例えば、超音波処理および攪拌によって分散させる)。白金源物質を含む溶液を、コバルト含有炭素担体の分散液に添加(例えば滴下)し、室温で攪拌する。生成物を洗浄(水および/またはエタノールなどで洗浄)、乾燥し、その後、任意の還元剤(水素化ホウ素ナトリウムまたは水素アルゴンガスなどで)で還元して、白金コバルトヘテロ材料を得る。
【0019】
実施例1.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末に、コバルトシート4gを混合して積層し、600℃で4時間焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を水およびエタノールで順次洗浄し、乾燥させ、その後、水素化ホウ素ナトリウムで還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0020】
実施例2.
硫酸アンモニウム7gと、モノシアナミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0021】
実施例3.
硫酸アンモニウム7gと、メラミン500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0022】
実施例4.
硫酸アンモニウム7gと、尿素500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0023】
実施例5.
硫酸アンモニウム7gと、チオ尿素500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0024】
実施例6.
硫酸ナトリウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0025】
実施例7.
硫酸カリウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0026】
実施例8.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末と硝酸コバルト24gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0027】
実施例9.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末と硫酸コバルト24gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0028】
実施例10.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末と塩化コバルト24gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0029】
実施例11.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを800℃で4時間焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0030】
実施例12.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを1000℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0031】
実施例13.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを1200℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0032】
実施例14.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート0.4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0033】
実施例15.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート20gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0034】
実施例16.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金37mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0035】
実施例17.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金1.85gを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0036】
実施例18.
硫酸アンモニウム7gと、ジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末とコバルトシート4gを600℃で焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金3.7gを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を洗浄、乾燥し、その後還元することで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0037】
実施例19.
硫酸アンモニウム7gとジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末にコバルトシート4gを混合して積層し、600℃で2時間焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を水およびエタノールで洗浄し、乾燥させ、その後、還元する(水素化ホウ素ナトリウムを利用)ことで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0038】
実施例20.
硫酸アンモニウム7gとジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末にコバルトシート4gを混合して積層し、600℃で6時間焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を水およびエタノールで洗浄し、乾燥させ、その後還元する(水素化ホウ素ナトリウムを利用)ことで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0039】
実施例21.
硫酸アンモニウム7gとジシアンジアミド500gとを混合した。得られた白色粉末にコバルトシート4gを混合して積層し、600℃で4時間焼成した後、常温に冷却した。その結果、コバルト含有窒素ドープ炭素担体材料を得た。四塩化白金370mgを含む溶液(濃度10mg/ml)をコバルト含有窒素ドープ炭素担体に加え、室温で攪拌した。生成物を水およびエタノールで洗浄し、乾燥させ、その後還元する(水素とアルゴンとの混合ガスを利用)ことで、白金コバルトヘテロ材料が得られた。
【0040】
作用電極の製造
触媒は、炭素繊維布、カーボンペーパー、チタンメッシュ、ニッケルフォーム等の各種捕集材に担持できる。捕集材等は、様々な仕様でよい。前記捕集材の所定面積は、任意の面積とすることができる。本発明の実施例で使用する炭素繊維布、カーボンペーパー、チタンメッシュ等は、必要な面積に応じて小分けし、エタノールと水を用いて超音波洗浄を行う。
【0041】
実施例22.
白金コバルトヘテロ材料(実施例11で得られたもの)5mgを小型サンプル管に加え、超純水0.35mL、エタノール0.70mL、5%(質量%)ナフィオン(パーフルオロスルホン酸樹脂)溶液0.08mLを加えて超音波処理してインクを形成し、1cm×1cmの炭素繊維布に0.226mL滴下して自然乾燥させた。
【0042】
実施例23.
白金コバルトヘテロ材料(同じく実施例11で得られたもの)5mgを小型サンプル管に加え、超純水0.35mL、エタノール0.70mL、5%ナフィオン溶液0.08mLを加えて超音波処理してインクを形成し、1cm×1cmのカーボンペーパーに0.226mL滴下して自然乾燥させた。
【0043】
実施例24.
白金コバルトヘテロ材料5mgを小型サンプル管に加え、超純水0.35mL、エタノール0.70mL、5%ナフィオン溶液0.08mLを加えて超音波処理してインクを形成し、1cmx1cmチタンメッシュに0.226mL滴下して自然乾燥させた。
【0044】
電解水性能試験
作用電極として、本発明の実施例22~24で得られた電極を使用した。白金メッシュと飽和Ag/AgCl電極をそれぞれ対極および参照電極として使用し、3電極系を構成して水電解性能試験を行った。本発明の白金コバルトヘテロ材料触媒で得られた電極と、以下の比較例の白金炭素系電極とに対して性能を比較した。
【0045】
比較例1:市販の白金炭素電極の作製
化学品販売オンラインで購入した20wt%(白金の含有量)の市販白金炭素(粉末)を粉砕(微細な均一粉末に)し、5mgを小型サンプル管に加え、超純水0.35mL、エタノール0.70mL、5%ナフィオン溶液0.08mLを加えて超音波処理してインクを形成し、1cmx1cmの炭素繊維布に0.2mL滴下し、自然乾燥させることで市販の白金炭素/炭素繊維布電極を得た。
【0046】
比較例2:市販の白金炭素電極の作製
化学品販売オンラインで購入した20wt%の市販白金炭素を粉砕処理し、5mgを小型サンプル管に加え、超純水0.35mL、エタノール0.70mL、5%ナフィオン溶液0.08mLを加えて超音波処理してインクを形成し、1cmx1cmカーボンペーパーに0.2mL滴下し、自然乾燥させることで市販の白金炭素/カーボンペーパー電極を得た。
【0047】
比較例3:市販の白金炭素電極の作製
化学品販売オンラインで購入した20wt%の市販白金炭素を粉砕処理し、5mgを小型サンプル管に加え、超純水0.35mL、エタノール0.70mL、5%ナフィオン溶液0.08mLを加えて超音波処理してインクを形成し、1cmx1cmのチタンメッシュに0.2mLを滴下し、自然乾燥させることで市販の白金炭素/チタンメッシュ電極を得た。
【0048】
以下、主に実施例11で得られた白金コバルトヘテロ材料に対して観察・評価する。
図1は、実施例22で作製した白金コバルトヘテロ材料を用いた、水電解水素発生用電極のデジタル写真である。図2は、実施例11で作製した白金コバルトヘテロ材料の走査型電子顕微鏡写真であるが、ナノサイズのチューブ状をなす。図3は、実施例11で作製した白金コバルトヘテロ材料の透過型電子顕微鏡写真であり、キャリア、Co、Ptを区別できる。淡色部分がキャリア、右上の濃色な大粒子部分がCoに対応し、周りに散在する小さな粒子がPtに対応していることが確認できる。
【0049】
図4は、実施例11で作製した白金コバルトヘテロ材料のX線回折像である。図5は、実施例22で作製した白金コバルトヘテロ材料および比較例1で得られた市販の白金炭素水電解水素製造用電極をアルゴン飽和および0.5M HSO溶液(pH=0)で測定した線形走査ボルタンメトリーグラフを示したものである。
【0050】
図6は、実施例22の電極について、24時間にわたる定電位安定サイクル試験における電流対時間のグラフであり、実施例11で得られた電極の最終状態の電流は、開始時の電流に比べ、大きな減衰は見られなかった。
【0051】
図5および図6のデータから、本発明の実施例11の白金コバルトヘテロ材料で、非常に高い電流密度と優れた安定性を有する水素電極を作製できることがわかる。
明細書では、実施例11の白金コバルトヘテロ材料で作製した作用電極について試験を行ったデータしか記載していないが、他の実施例の白金コバルトヘテロ材料のいずれも実施例22~24で示した方法を参考にして、炭素繊維布、カーボンペーパーまたはチタンメッシュに作用電極を作製することができる。これらの電極はいずれも図5と同様の性能を示したことがテストで実証されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6