(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】一組の部品を表す複数の図面データを管理するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240105BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20240105BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q30/0601 310
(21)【出願番号】P 2022099951
(22)【出願日】2022-06-21
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2021215458
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517404991
【氏名又は名称】キャディ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇志郎
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-157510(JP,A)
【文献】特開2018-116454(JP,A)
【文献】赤堀 英明,Focus on the News,NTT技術ジャーナル,一般社団法人電気通信協会,2020年08月01日,Vol.32 No.8,pp.69-71
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の部品を表す複数の図面データを管理するためのコンピュータの動作方法であって、
前記複数の図面データに含まれる対象図面データについて、既に記憶された既存図面データと関連するか否かを判定するステップと、
前記判定の結果が肯定的である場合において、前記既存図面データに紐づけられた実績情報が記憶されているとき、前記実績情報を取得するステップと、
前記実績情報を表示するための実績表示情報を端末に送信するステップと
を含み、
前記判定は、前記既存図面データが、前記対象図面データが表す部品と同一の属性
であって、材質、表面処理、加工方法又はこれらのうちの2以上の組み合わせである属性を有する部品を表すか否かの判定を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記属性は、前記対象図面データに対して文字認識又は記号認識を施すことで抽出する。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の方法であって、
前記判定は、前記対象図面データ及び前記既存図面データをそれぞれベクター化して抽出される特徴量をさらに用いて行う。
【請求項4】
請求項
3に記載の方法であって、
前記特徴量は、ベクター化された図面データが有する複数の線分の度数分布又は角度分布である。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載の方法であって、
前記実績表示情報は、前記既存図面データ、並びに前記既存図面データが表す部品の金額又は単価及び属
性を含む。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載の方法であって、
前記実績情報は、受注実績情報であり、
前記判定は、前記既存図面データが、前記対象図面データが表す部品と同一の製造業者から過去に受注した部品を表すものであるか否かの判定を含む。
【請求項7】
コンピュータに、一組の部品を表す複数の図面データを管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記複数の図面データに含まれる対象図面データについて、既に記憶された既存図面データと関連するか否かを判定するステップと、
前記判定の結果が肯定的である場合において、前記既存図面データに紐づけられた実績情報が記憶されているとき、前記実績情報を取得するステップと、
前記実績情報を表示するための実績表示情報を端末に送信するステップと
を含み、
前記判定は、前記既存図面データが、前記対象図面データが表す部品と同一の属性
であって、材質、表面処理、加工方法又はこれらのうちの2以上の組み合わせである属性を有する部品を表すか否かの判定を含む。
【請求項8】
一組の部品を表す複数の図面データを管理するための装置であって、
前記複数の図面データに含まれる対象図面データについて、既に記憶された既存図面データと関連するか否かを判定し、
前記判定の結果が肯定的である場合において、前記既存図面データに紐づけられた実績情報が記憶されているとき、前記実績情報を取得して、前記実績情報を表示するための実績表示情報を端末に送信し、
前記判定は、前記既存図面データが、前記対象図面データが表す部品と同一の属性
であって、材質、表面処理、加工方法又はこれらのうちの2以上の組み合わせである属性を有する部品を表すか否かの判定を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一組の部品を表す複数の図面データを管理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車1台に約3万点の部品が存在するように、製造業において、必要となる部品は多岐にわたる。製造業者は一般に、こうした多品種の部品をすべて自社で加工することはせず、外部の加工業者への製造委託を利用している。
【0003】
製造委託に当たっては、製造業者は、委託する部品を表す部品図面を、見積、発注等のために、電子媒体又は当該電子媒体から印刷した紙媒体により加工業者に提供するところ、主にPDF形式のデータとして当該電子媒体は管理されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造業者において、見積、発注等の業務を担う購買担当は、上述のとおり、PDF形式の画像データとして図面データを管理しているところ、たとえば、経験の浅い購買担当にとっては、当該図面データからはいずれの加工業者に製造委託をすべきかの判断がつかない。多くの場合、ある製品に必要な部品数は数十以上、数百以上、さらには数千以上といった数になるため、各部品について、適切な委託先を選定することは容易ではない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、一組の部品を表す複数の図面データを管理するための装置、方法及びそのためのプログラムにおいて、当該一組の図面データに含まれる各図面データにより表される部品の製造委託を支援することにある。
【0006】
PDF形式の図面データを例に説明したが、より一般には、ラスターデータを含む図面データについて、同様の問題が存在し、JPG形式、TIFF形式等がデータ形式の例として挙げられる。ここで、「ラスターデータ」とは、複数のピクセルを含むデータである。JPG形式又はTIFF形式の図面データは一般にラスターデータのみを含むが、PDF形式の図面データはラスターデータに加えてベクターデータ又はテキストデータを含むことがある。また、PDF形式の図面データは、レイヤーを含まないことが多いが、複数のレイヤーを含んでもよい。
【0007】
また、購買担当が、DXF形式に代表されるCAD(Computer Aided Design)データとして図面データを管理することもあり、一組の部品を表す複数の図面データの少なくとも一部がCADデータである場合においても、同様の問題が存在し得る。ここで、「CADデータ」とは、CADソフトウェアで編集が可能な図面データをいい、ベクターデータを含む。「ベクターデータ」とは、複数の点と、当該複数の点のうちの少なくとも2つの点をそれぞれ繋ぐ1又は複数の線分又は弧を含むデータである。
【0008】
上述の説明では、製造業者による製造委託を支援することを本発明の目的として記述したが、後述のとおり、加工業者による製造受託を支援することを目的として、本発明を適用することも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、一組の部品を表す複数の図面データを管理するための方法であって、前記複数の図面データに含まれる対象図面データについて、既に記憶された第1の既存図面データと関連するか否かを判定するステップと、前記判定の結果が肯定的である場合において、前記第1の既存図面データに紐づけられた第1の実績情報が記憶されているとき、前記第1の実績情報を取得するステップと、前記第1の実績情報を表示するための第1の実績表示情報を端末に送信するステップとを含む。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記判定の結果が否定的である場合において、前記対象図面データが表す部品と同一の属性を有する部品を表す第2の既存図面データに紐づけられた第2の実績情報が記憶されているとき、前記第2の実績情報を取得するステップと、前記第2の実績情報を表示するための第2の実績表示情報を端末に送信するステップとをさらに含む。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、第2の態様の方法であって、前記属性は、部品の材質、表面処理、加工方法、特殊加工又はこれらのうちの2以上の組み合わせである。
【0012】
また、本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様の方法であって、前記判定は、前記対象図面データが前記第1の既存図面データと一致するか否かの判定を含む。
【0013】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様の方法であって、前記判定は、前記対象図面データ及び前記既存図面データをそれぞれベクター化して抽出される特徴量を用いて行う。
【0014】
また、本発明の第6の態様は、第1から第3のいずれかの態様の方法であって、前記判定は、前記対象図面データが前記第1の既存図面データと類似するか否かの判定を含む。
【0015】
また、本発明の第7の態様は、第4又は第6の態様の方法であって、前記判定は、前記第1の既存図面データが、前記対象図面データが表す部品と同一の属性を有する部品表すか否かの判定を含む。
【0016】
また、本発明の第8の態様は、第4又は第6の態様の方法であって、前記判定は、前記第1の既存図面データに紐づけられた前記第1の実績情報が、入力された条件に合致するか否かの判定をさらに含む。
【0017】
また、本発明の第9の態様は、第6の態様の方法であって、前記判定の結果が肯定的である場合において、前記対象図面データと類似する前記第1の既存図面データを取得するステップをさらに含み、前記第1の実績表示情報は、前記第1の既存図面データを含む。
【0018】
また、本発明の第10の態様は、第1から第9のいずれかの態様の方法であって、前記第1の実績情報は、発注先又は発注元を含む。
【0019】
また、本発明の第11の態様は、第1から第9のいずれかの態様の方法であって、前記第1の実績情報は、金額又は単価を含む。
【0020】
また、本発明の第12の態様は、第1の態様の方法であって、前記第1の実績表示情報によって表示される実績表示画面は、前記複数の図面データにより表示される複数の図面のいずれかを選択するための選択領域と、当該複数の図面のうちの選択された、前記対象図面データにより表される対象図面を表示するための対象図面領域と、当該対象図面に関連する、1又は複数の既存図面データにより表される1又は複数の既存図面を表示するための既存図面表示領域とを有する。
【0021】
また、本発明の第13の態様は、第12の態様の方法であって、前記既存図面表示領域は、前記第1の既存図面データにより表される第1の既存図面及び前記第1の実績情報の少なくとも一部を含む。
【0022】
また、本発明の第14の態様は、コンピュータに、一組の部品を表す複数の図面データを管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、前記複数の図面データに含まれる対象図面データについて、既に記憶された第1の既存図面データと関連するか否かを判定するステップと、前記判定の結果が肯定的である場合において、前記第1の既存図面データに紐づけられた第1の実績情報が記憶されているとき、前記第1の実績情報を取得するステップと、前記第1の実績情報を表示するための第1の実績表示情報を端末に送信するステップとを含む。
【0023】
また、本発明の第15の態様は、一組の部品を表す複数の図面データを管理するための装置であって、前記複数の図面データに含まれる対象図面データについて、既に記憶された第1の既存図面データと関連するか否かを判定し、前記判定の結果が肯定的である場合において、前記第1の既存図面データに紐づけられた第1の実績情報が記憶されているとき、前記第1の実績情報を取得し、前記第1の実績情報を表示するための第1の実績表示情報を端末に送信する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、一組の部品を表す複数の図面データに含まれる少なくとも一部の対象図面データについて、関連する既存図面データの有無を判定し、有る場合に当該既存図面データに紐づけて記憶された実績情報を表示するための実績表示情報を送信することによって、製造業者、加工業者、介在業者等の当該実績情報の閲覧者は、各部品について、製造委託を円滑に勧めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる、複数の図面データを管理するための装置を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態にかかる、複数の図面データを管理するための方法の流れを示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかる、発注実績情報の一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態にかかる、発注実績情報の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態にかかる、複数の図面データを管理するための装置を示す。装置100は、製造業者が用いる製造業者端末110とインターネット等のIPネットワークを介して通信し、複数の図面データの管理を可能とする。また、装置100は、加工業者が用いる加工業者端末120とも同様に通信し、加工業者に対しても図面管理サービスを提供可能である。本実施形態においては、製造業者に対する図面管理サービスの例を説明する。
【0028】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からIPネットワークを介してアクセス可能なデータベース104等の記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部102において実行することができる。以下で記憶部103に記憶されるものとして記述されるデータはデータベース104に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0029】
装置100は、まず、製造業者端末110を用いる製造業者に関連づけられた、一組の部品を表す複数の図面データを取得する(S201)。たとえば、当該複数の図面データは、製造業者の購買担当が装置100により提供されるウェブページからアップロードして登録することによって記憶部103に記憶されたものであり、これを読み出すことで取得される。図面データにより表示される図面には、部品を表す線分及び記号が含まれ、さらに部品を表す文字が含まれる。当該文字には、製造番号、図番、及び部品名の少なくともいずれかが含まれ、さらに材質及び表面処理の少なくとも一方が含まれてもよい。これらの線分、記号及び文字は、ラスター形式の図面データにおいては、単純にピクセルの値であり、当該図面データにより表される図面を閲覧者が閲覧して認識可能となるものである。
【0030】
次に、装置100は、当該複数の図面データのそれぞれについて、既に記憶された既存図面データと関連する図面データの有無を判定する(S202)。ここで、関連図面データには、既に記憶された既存図面データと一致する図面データ及び既に記憶された既存図面データと類似する図面データの少なくとも一方が含まれる。ここで、判定は、当該複数の図面データに含まれるすべての図面データについて行うことは必ずしも必要ではなく、一部の図面データについて行わないことも考えられる。
【0031】
一致の有無について、たとえば、判定の対象となる対象図面データから特徴量を抽出し、当該特徴量と既に記憶されたいずれかの既存図面データの特徴量との間の差が第1の所定の範囲以内である場合に一致すると判定することが考えられる。さらに具体的には、装置100が、対象図面データ及び既存図面データを必要に応じてベクター化し、ベクター化された図面データから特徴量を抽出してもよい。特徴量の一例としては、ベクター化された図面データが有する複数の線分の度数分布又は角度分布が挙げられる。一例として、図面の横方向を0°とする座標を定め、-22.5°以上22.5°未満、22.5°以上67.5°未満、67.5°以上112.5°未満及び112.5°以上167.5°未満の角度を有する線分の度数を用いることが考えられる。また、より好ましくは、各線分をその長さで重みづけした角度分布を用いることが考えられる。本明細書において「ベクター化」とは、複数の点と、当該複数の点のうちの少なくとも2つの点をそれぞれ繋ぐ1又は複数の線分又は弧を含むデータに変換することである。
【0032】
類似の有無について、一致の有無の判定で用いるアルゴリズムと同一のアルゴリズムにおいて、対象図面データの特徴量といずれかの既存図面データの特徴量との差が、第1の所定の範囲以内には含まれないが、第1の所定の範囲よりも広い第2の所定の範囲に含まれる場合に類似すると判定することが考えられる。代替的に、一致の有無の判定で用いるアルゴリズムとは異なるアルゴリズムを用いてもよい。
【0033】
装置100は、対象図面データについて、判定結果が肯定的である場合、すなわち、既存図面データ(「第1の既存図面データ」に相当)と関連するデータである場合において、当該既存図面データにより表される部品の発注実績情報(「第1の実績情報」に相当)があるとき、当該発注実績情報を取得する(S203)。発注実績情報は、発注先を含み、金額又は単価、ロット数及び発注日の少なくともいずれかをさらに含んでもよい。特に対象図面データが既存図面データと類似する場合、その図面データも取得することが好ましい。
【0034】
これに対し、装置100は、対象図面データについて、関連する既存図面データが無い場合、対象図面データにより表される部品の属性を判定し(S204)、判定された属性と同一属性の部品を表す既存図面データ(「第2の既存図面データ」に相当)に紐づけられた発注実績情報(「第2の実績情報」に相当)を取得してもよい(S205)。
【0035】
ここで判定される属性には、たとえば、部品の材質、表面処理、加工方法又はこれらのうちの2以上の組み合わせが挙げられる。材質は、図面データに対して文字認識を施すことで抽出される文字に基づいて判定することが可能である。表面処理は、図面データに対して文字認識又は記号認識を施すことで抽出される文字又は記号に基づいて判定することが可能である。加工方法も、表面処理と同様に、図面データに対して文字認識又は記号認識を施すことで抽出される文字又は記号に基づいて判定することが可能である。
【0036】
たとえば、図面には、表題欄と呼ばれるセル構造を有する部分があり、ここに、製造番号、図番、部品名、材質、表面処理等が記載されることが多い。したがって、材質について、図面データから抽出された文字に基づいて判定することが可能である。装置100が提供する図面管理サービスを利用するユーザーごとに、表題欄のセル構造を登録しておけば、材質を表すセルに記載された文字に基づいて材質を判定可能である。表面処理及び加工方法についても、表題欄に記載されていれば、図面データに含まれる、表題欄を表示するためのデータから抽出された文字に基づいて判定可能である。
【0037】
加工方法について、表題欄に記載された文字ではなく、部品の寸法を表す文字に基づいて判定可能であることがある。たとえば、「t3」という記載があれば、これは部品の厚さを表しており、板金加工、旋盤加工及びフライス加工といった代表的な加工方法のうち、板金加工によって製造される部品であることを判定することができる。
【0038】
そして、装置100は、取得した発注実績情報を表示するための発注実績表示情報(「実績表示情報」に相当)を製造業者端末110に送信する(S206)。発注実績表示情報は、たとえばHTML形式のファイルとして送信され、製造業者端末110の表示画面にウェブブラウザ上で発注実績情報を表示するための情報とすることができる。あるいは、製造業者端末110にインストールされたアプリケーション(以下「アプリ」とも呼ぶ。)を動作させ、発注実績表示情報は、当該アプリ上で発注実績情報を表示するための情報としてもよい。
【0039】
図3に、本発明の第1の実施形態にかかる、発注実績情報の一例を示す。発注実績表示画面300は、24個の部品を表す24枚の図面を表示可能であり(
図3においては一部のみ表示)、各図面を表す図面データについて、関連する既存図面データの有無が判定され、一致する既存図面データがある場合において、当該既存図面データに発注実績情報も紐づけて記憶されているとき、「発注実績あり」のラベルを表示し、一致する既存図面データが無い場合には、「新規図面」のラベルを表示している。発注実績表示情報は、各図面に対応するラベルを表示するためのラベル情報を含んでもよい。また、発注実績表示情報は、一組の部品を表す複数の図面データのすべてについて同時に送信してもよいし、複数回に分けて送信してもよい。また、発注実績表示情報は、一致又は類似する既存図面データを含んでもよい。
【0040】
新規図面については、類似する既存図面データの有無についての判定がさらに行われ、類似する既存図面データがある場合、「類似あり」のラベルが当該既存図面データにより表示される類似図面とともに表示され、ない場合、「類似なし」のラベルが表示されている。一致する既存図面データも類似する既存図面データもない場合には、同一属性の既存図面データの有無の判定が行われ、
図3の例では、材質が鉄、表面処理が黒染め、加工方法が板金加工であるという一組の属性が判定され、同一属性の部品の過去の発注実績情報として、発注先の上位3社が表示されている。
【0041】
図4に、本発明の第1の実施形態にかかる、発注実績情報の別の例を示す。発注実績表示画面400は、装置100により取得された複数の図面データにより表示される複数の図面のいずれかを選択するための選択領域401と、当該複数の図面のうちの選択された対象図面を表示するための対象図面表示領域402と、当該対象図面と関連する1又は複数の既存図面を表示するための既存図面表示領域403とを有する。選択領域401に表示されたいずれかの図面が選択されると、対象図面表示領域402により大きく表示され、図面の詳細が確認できる。既存図面表示領域403には、当該該対象図面と関連するいずれかの既存図面について、当該既存図面を表示するための既存図面データに紐づけられた発注実績情報の少なくとも一部がさらに表示されてもよい。
図4の例では、金額が発注実績情報として一番上の既存図面について表示されている。
図4では、「類似あり」などのラベル表示がなされていないが、
図3と同様に行ってもよい。
【0042】
このように、一組の部品を表す複数の図面データに含まれる少なくとも一部の対象図面データについて、関連する既存図面データの有無を判定し、有る場合に当該既存図面データに紐づけて記憶された発注実績情報を表示するための発注実績表示情報を送信することによって、製造業者の購買担当等の当該発注実績情報の閲覧者は、各部品について、製造委託先の有力な候補を視覚的に容易に把握することができる。
【0043】
発注実績情報に金額又は単価が含まれていれば、当該閲覧者は、委託先との価格交渉における適正な水準を容易に把握することができる。
【0044】
関連する既存図面データが無い場合には、必要に応じて、各図面データから判定される属性に基づいて、同一属性の部品について記憶された発注実績情報を表示させることで、製造委託先の候補をより幅広く把握することができる。
【0045】
上述の説明では、ある図面データについて関連する既存図面データの有無を判定する上で、各図面データから抽出される特徴量を用いる例を挙げたが、ユーザーに関連づけられた表題欄のセル構造を参照して、図面データに含まれる表題欄を表示するためのデータから抽出された文字を追加的又は代替的に用いてもよい。より一般には、図面データに対して文字認識又は記号認識を施すことで抽出される文字又は記号に基づいて判定される属性を追加的又は代替的に用いてもよい。また、加工業者端末110から条件を受信し、発注先、金額等の発注実績情報が当該条件と一致することを上記判定において追加的に用いてもよい。複数の分析から得られる一致度又は類似度を加点して、最もスコアの高い図面データを一致する図面データとして判定したり、スコアを1又は複数の閾値と比較して一致する図面データ又は類似する図面データとして判定したりすることが考えられる。また、一致度又は類似度は、機械学習により生成した予測モデルを用いて算出してもよい。
【0046】
また、図面データに対する文字認識又は記号認識により抽出された文字又は記号に基づいて加工方法を判定することについて説明したが、予め定められた特殊な加工を必要とするか否かの判定を行い、当該判定の結果を関連する既存図面データの有無に用いたり、同一属性の部品の特定に用いたりしてもよい。一例として、カム機構の加工は難易度が高く、加工できる加工業者は必ずしも多くない。したがって、図面データが表す部品はカム機構の加工を必要とすることが分かれば、製造委託先の候補を効果的に絞り込むことができる。また、曲げ加工において、厚みの4倍以下の高さの曲げも難易度が高く、材質がアルミの部品を傷なしに仕上げる加工も難易度が高い。こうした特殊加工は製造業において数多く存在し、装置100において、図面データに対して、予め定められた所定の加工の検出処理を施してもよい。所定の加工としては、上述したカム機構の加工、厚みに対する高さの比が所定の値以下又は未満の曲げ加工、及び、アルミの傷なし加工のほか、ギアの加工などが挙げられる。
【0047】
上述の説明では、対象図面データに関連する第1の既存図面データが無い場合に対象図面データが表す部品と同一の属性の部品を表す第2の既存図面データに紐づけられた第2の実績情報を取得しているが、第1の既存図面データが有る場合に第1の実績情報に加えて第2の実績情報を取得してもよく、第1の既存図面データの有無に関わらず第2の実績情報のみを取得することも考えられる。
【0048】
また、
図2において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法がS201で必ず開始され、S206で必ず終了することを意味するものではない。
【0049】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、製造業者による製造委託を支援する例を記述したが、本実施形態では、加工業者による製造受託を支援する例を記述する。
【0050】
本実施形態にかかる方法は、第1の実施形態にかかる方法と同様であるが、装置100が取得する実績情報が発注実績情報ではなく、受注実績情報であり、装置が加工業者端末120に送信する情報が、発注実績表示情報ではなく、受注実績表示情報である点において異なる。
【0051】
加工業者が見積依頼に対して見積金額を提示する際に、見積を依頼した製造業者から過去に受注した部品の受注金額又は受注単価を把握できれば、新たに提示する見積金額が適正な水準であることを事前に確認することができる。異なる製造業者から過去に受注した部品を表す図面データが関連図面データとして判定されることも有益であるが、同一の製造業者から過去に受注した部品を表す図面データの中から関連図面データが判定されることが好ましい。このことは、同一属性の部品を表す図面データの判定においても同様である。
【0052】
製造業者を識別するために、装置100は、加工業者端末120から送信される一組の部品を表す複数の図面データを記憶する際に、当該一組の部品を製造委託する製造業者を識別する製造業者識別子を併せて記憶することが好ましい。製造業者識別子を当該複数の図面データに関連づける方法は任意の方法を用いればよく、一例として、加工業者端末120を用いる加工業者が装置100が提供するウェブページ上で入力してもよい。
【0053】
加工業者が製造業者から直接委託を受ける場合のほか、製造業者から委託を受けた商社が二次委託先の加工業者に委託する場合もある。この場合、商社等の介在業者は、製造業者から受け取った図面データに加えて、自らが加工業者に提供する図面データも、装置100で提供される図面管理サービス上で管理する。上述の製造業者識別子をより一般に委託業者識別子とすれば、前者には製造業者を識別する識別子を関連づけ、後者には介在業者である自らを識別する識別子を関連づければよい。
【0054】
なお、上述の実施形態において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0055】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【符号の説明】
【0056】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 データベース
110 製造業者端末
120 加工業者端末
300 発注実績表示画面