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特許7413449金属製物品の個体識別方法、シールパット、及びコイル材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】金属製物品の個体識別方法、シールパット、及びコイル材
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240105BHJP
   B65H 75/18 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G06K19/077 220
G06K19/077 248
G06K19/077 280
B65H75/18 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022107805
(22)【出願日】2022-07-04
(65)【公開番号】P2023013993
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2021117642
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593005644
【氏名又は名称】JFE物流株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣海 敬明
(72)【発明者】
【氏名】小森 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】八尋 和広
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 昇史
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-298492(JP,A)
【文献】特開2007-171301(JP,A)
【文献】特開2002-157569(JP,A)
【文献】特開2003-058838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
B65H 75/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の物品の表面に、絶縁材料からなる基体を介して、上記物品の個体識別情報を格納可能なRFIDタグを取り付け、上記RFIDタグ内の個体識別情報によって上記物品の個体識別を行い、
上記金属製の物品は、金属帯をロール状に巻きつけられ結束バンドで拘束されてなるコイル材であり、
上記基体は、上記コイル材の表面と上記結束バンドとの間に差し込まれる差し込み部を有し、上記差し込み部以外の位置に上記RFIDタグが設けられ、上記差し込みでコイル材表面に取り付けられる、
ことを特徴とする金属製物品の個体識別方法。
【請求項2】
上記RFIDタグは、上記基体における上記物品側の裏面とは反対側のおもて面側にICチップが設けられ、そのICチップに電気的に接続した無線通信用のアンテナが、上記基体のおもて面に沿って延在し、更に、そのアンテナの一部を、上記基体の裏面に配置して上記物品の金属面に接触させる、
ことを特徴とする請求項1に記載した金属製物品の個体識別方法。
【請求項3】
上記RFIDタグを取り付けた上記物品は梱包紙で梱包され、その梱包された状態で物品の個体識別を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載した金属製物品の個体識別方法。
【請求項4】
上記基体は、上記結束バンドを結束する際に、上記コイル材の表面と上記結束バンドとの間に配置されるシールパットである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載した金属製物品の個体識別方法。
【請求項5】
金属製の物品の表面に、絶縁材料からなる基体を介して、上記物品の個体識別情報を格納可能なRFIDタグを取り付け、上記RFIDタグ内の個体識別情報によって上記物品の個体識別を行い、
上記RFIDタグは、上記基体における上記物品側の裏面とは反対側のおもて面側にICチップが設けられ、そのICチップに電気的に接続した無線通信用のアンテナが、上記基体のおもて面に沿って延在し、更に、そのアンテナの一部を、上記基体の裏面に配置して上記物品の金属面に接触させる、
ことを特徴とする金属製物品の個体識別方法。
【請求項6】
金属帯をロール状に巻きつけられ結束バンドで拘束されてなるコイル材における上記コイル材の表面と上記結束バンドとの間に配置されるシールパットであって、
そのシールパットの表面にRFIDタグを備える、ことを特徴とするシールパット。
【請求項7】
上記RFIDタグは、シールパットのおもて面側にICチップが設けられ、そのICチップに電気的に接続した無線通信用のアンテナが、シールパットの上記おもて面に沿って延在し、そのアンテナの一部が、シールパットの裏面に配置されている、
ことを特徴とする請求項6に記載したシールパット。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のRFIDタグ付きのシールパットを備えたコイル材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯をロール状に巻き付けたコイル材などの金属製の物品を識別管理するための、当該物品の個体識別方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
冷延や熱延で製造された薄板からなる金属帯は、例えば、ロール状に巻きつけられてコイル材となる。製造されたコイル材には、コイル材を識別管理するために、個体識別情報を有するラベルが取り付けられる。
上記ラベルは、通常、コイル材を覆うように取り付けられた梱包紙に対し、貼り付けられる。
【0003】
また、特許文献1に記載のような、金属面に装着可能なRFIDタグも知られている。
特許文献1に記載のRFIDタグは、コイル(アンテナ)を含む回路を樹脂により封止した成形体からなる。樹脂で封止された一般のRFIDタグは、背面に金属(鉄鋼商品)があると、通信ができなかったり、通信距離が短くなったりする。これに対し、特許文献1に記載のRFIDタグは、回路と取付け面との間の樹脂に磁性粉末を混入することで、取付け部が金属であっても、その悪影響を緩和するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-199823号公報
【文献】特許第6185714号公報
【文献】特許第5971857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のRFIDタグは、構造が複雑であるという課題がある。また、回路を封止する構成であるため、その分、タグの厚みが厚くなってしまうという課題もある。
また、従来のようにコイル材の梱包紙にラベルを貼り付ける場合、梱包前のコイル材をトラックなどで搬送したりする際に、ラベルを貼り付けるコイル材を取り違える可能性がある。更に、顧客にコイル材を渡す際に、一度梱包紙を引きはがし、再度梱包する場合もある。この場合に、梱包紙にラベルが取り付けられていると、再度の梱包の際に、取り付けるラベルを間違える可能性がある。
【0006】
これに対し、特許文献2や特許文献3には、コイル材の個体識別にために、バーコードやラベルに代えて、RFIDタグを用いることが記載されている。特許文献2,3では、コイル材がRFIDタグとリーダーとの間の電波の妨げとなるとの考えから、コイル材中央の空洞内にRFIDタグを設置することを提案している。そして、その空洞内若しくは空洞にリーダーを近づけることで、RFIDタグから情報を読み出すことが提案されている。なお、特許文献2には、空洞内へのRFIDタグの具体的な設置方法について記載はない。一方、特許文献3では、RFIDタグを磁石によって空洞内に設置することが記載されている。
【0007】
しかし、コイル材の表面側(外表面側)にバーコードやラベルを設ける場合に比べ、コイル材中央の空洞内にRFIDタグを設置することは、手間が掛かるおそれがある。
また、RFIDタグをコイル材の空洞内に磁石の磁力で設置することは、コイル材を運搬する際など、移動時の衝撃でRFIDタグが外れるおそれがある。更に、情報の読み取りの際に、空洞内にリーダーを差し入れたり、当該空洞にリーダーを近づけたりしてRFIDタグから読み取る必要があり、情報を読み取り可能な範囲が狭いおそれがある。また、梱包の際や再度梱包する際に、コイル材にRFIDタグがちゃんと設置されているか否かを確認するために、空洞内を覗いて見る必要がある。すなわち、RFIDタグの設置有無の確認が簡易でない。
本発明は、上記のよう点に着目したもので、より簡易且つ確実に、コイル材その他の金属製の物品の個体識別を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題解決のために、本発明の一態様は、金属製の物品の表面に、絶縁材料からなる基体を介して、上記物品の個体識別情報を格納可能なRFIDタグを取付け、上記RFIDタグ内の個体識別情報によって上記物品の個体識別を行う、ことを要旨とする。
このとき、上記RFIDタグは、上記基体における上記物品側の裏面とは反対側のおもて面側にICチップが設けられ、そのICチップに電気的に接続した無線通信用のアンテナが、上記基体のおもて面に沿って延在し、更に、そのアンテナの一部を、上記基体の裏面に配置して上記物品の金属面に接触させる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、金属製の物品に直接、RFIDタグを取り付けるため、梱包紙にラベルを設ける場合に比べ、物品の個体識別を間違え難くなり、且つ、物品を梱包紙で梱包しても、個体識別情報の取得が可能となる。
また、金属製の物品とRFIDタグと間に絶縁材料からなる基体を介在することで、必ずしもRFIDタグを樹脂などで封止するなどの構造が不要となり、RFIDタグの構造を簡易な構成とすることができる。
【0010】
更に、RFIDのアンテナが、基体のおもて面に位置すると共に、アンテナの一部を金属製の物品に電気的に接続する場合には、物品自体がアンテナの一部となって、簡易なアンテナの回路構造であっても、RFIDタグの通信距離を稼ぐことが可能となる。この場合、物品がコイル材の場合、視認しやすいコイル材の外表面(外径側表面)に対し本発明の態様のRFIDタグを取り付けて使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に基づく実施形態に係るRFIDタグをコイル材に取り付けた状態を示す斜視図である。
図2】本発明に基づく実施形態に係るRFIDタグを示す正面図である。
図3】RFIDタグ付きの基体を示す正面図である。
図4】RFIDタグ付きの基体を示す裏面図である。
図5】RFIDタグ付きの基体を示す側面図である。
図6】RFIDタグの別の例を示す図である。
図7】コイルリフターでのコイル材搬送状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態は、金属製の物品の表面に、絶縁材料からなる基体を介して、物品の個体識別情報を格納可能なRFIDタグを取付け、RFIDタグ内の個体識別情報の読み取りによって物品の個体識別を行う。この個体識別は、例えば、金属製物品の個体識別の管理に用いられる。
このとき、RFIDタグは、基体における物品側の裏面とは反対側のおもて面側にICチップが設けられ、そのICチップに電気的に接続した無線通信用のアンテナが、上記基体のおもて面に沿って延在し、更に、そのアンテナの一部を、上記基体の裏面に配し上記物品の金属面に接触させる、構成が好ましい。
【0013】
以下の例では、金属製の物品として、コイル材を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、圧延鋼板やインゴットなどの金属製の物品であっても適用可能である。
なお、本実施形態で用いるRFIDタグは、金属帯からなるコイル材に取り付けるための個体識別情報を格納したパッシブ型のタグとする。ライターによる書き込みで実行されるRFIDタグへの個体識別情報の格納は、タグをコイル材に取り付けた後でも良いし、取付け前でも良い。
【0014】
(コイル材)
コイル材1は、熱延や冷延で加工された鉄鋼その他の金属帯をロール状に巻きつけられて製造される。製造されたコイル材1は、図1に示すように、周方向に巻きつけられた結束バンド2を結束することによって、コイル状の状態で拘束される。なお、結束バンド2は、周方向と直交する直交方向にも巻きつけられて使用されることもある。
結束バンド2は、一般にフープバンドと呼ばれ、強度確保の観点から一般に、金属材料からなる。
【0015】
コイル材1に巻きつけた結束バンド2は、締付け具によって締付けた状態で、バンド2の端部同士をスポット溶接で連結することで、結束される。
この結束バンド2の端部同士を結束する際に、コイル材1表面を保護するために、バンド結束位置に板状のシールパット3が配置される。すなわち、図1のように、結束バンド2とコイル材1との間に、板状のシールパット3の一部が介在される。
すなわち、シールパット3をコイル材1の表面にあてがうことによって、結束バンド2の端部同士をコイル材1表面から浮かした状態として、結束バンド2の端部同士のスポット溶接作業ができる。
このシールパット3は、厚紙や発泡材等の樹脂など、非金属材料(絶縁材料)からなる。シールパット3の厚みは、例えば3mm~10mmである。
【0016】
<基体>
基体は、厚紙や発泡材等の樹脂など、絶縁材料(非金属材料)からなる板状の部品である。
本実施形態では、基体を、シールパット3から構成する場合を例示する。なお、一つのコイル材1に対し、複数個の結束バンド2が使用される。しかし、少なくとも一つの結束バンド2に使用するシールパット3にRFIDタグ4が設けられていればよい。
シールパット3は、差し込み部3Aと、差し込み部3Aに連続する本体部3Bとからなる(図3参照)。
【0017】
本実施形態のシールパット3は、正面図である図3に示すように、平面視コ字状となっている。具体的には、本実施形態のシールパット3では、左右の足部が、コイル材1の表面と結束バンド2との間に差し込まれる差し込み部3Aを構成し、その2つの足部を連結する根元部分が本体部3Bを構成する。
なお、シールパット3の形状は、図3の形状でなくても良く、平面視、矩形状などの形状でも良い。
【0018】
<RFIDタグ4>
RFIDタグ4は、シールパット3(基体)の本体部3Bに固定される。
RFIDの厚さは、例えば、1mm以下の厚さである。
RFIDタグ4は、図2に示すように、ICチップ5と、ICチップ5に接続した無線通信用のアンテナ6と、フィルム材(不図示)からなる。
フィルム材は、なくても良い。フィルム材は、図2のアンテナとほぼ重なった位置に配置される。フィルム材は、樹脂や紙材からなる基体層である。
【0019】
そのフィルム材のおもて面に、ICチップ5及びアンテナ6が形成されている。
表面にICチップやアンテナを保護する、樹脂製などの表面保護層を有していてもよい。
本実施形態のフィルム材は、短冊状の長方形形状をしている。その短冊状のフィルム材中央部にICチップ5が固定される。なお、このICチップ5の記憶部に、公知のライターによって、コイル材1の個体識別情報が非接触通信で書き込まれて格納される。
【0020】
アンテナ6は、中央のICチップ5から、フィルム材に長手方向に沿って左右対称に延在している。つまり、本実施形態は、ダイポール型アンテナの場合を例示している。
すなわち、本実施形態のアンテナ6は、左右方向に直線状に延在する回路パターンとなっている。アンテナ6の回路パターンは他のパターンであってもよい。アンテナ6として、ループ型や、逆f型などの各種のアンテナパターンを用いることもできる。
なお、アンテナ6は、例えば、フィルム材の表面に印刷等で形成すればよい。
【0021】
アンテナ6は、アルミ箔などの金属体から構成される。アンテナ6は、ICチップ5の位置に近い周波数調整部6Aと、その周波数調整部6Aに連続する外周部6Bとを有する。そして、周波数調整部6Aに形成する開口の数や位置などによって、アンテナ6の周波数帯のピークが、例えば920MHzに調整する。図2中、符号6aは、開口(切欠き)を示す。
また、フィルム材の裏面に粘着層を設けることで、シールパット3の面にRFIDタグ4を貼り付け可能となっている。粘着層は、例えばアンテナ6の外周部6Bと重なる位置に形成する。
【0022】
本実施形態のRFIDタグ4は、ICチップ5とアンテナ6だけから構成させることもできる。この場合、アンテナ6の裏面を、両面粘着テープや粘着剤を用いて、貼り付け面に貼り付ければよい。
そして、本実施形態のRFIDタグ4は、図3に示すように、ICチップ5が、シールパット3(基体)の本体部3Bのおもて面(シールパット3におけるコイル材1を向く裏面とは反対側の面)の長手方向中央部に位置するように設定する。そして、左右のアンテナ6を、本体部3Bのおもて面の左右方向にそれぞれ延在させる。更に、そのアンテナ6の各外周部6Bの一部6Ba(左右の各端部側)が、シールパッド3の裏面側を表す図4に示すように、本体部3Bの端面を介して裏面に廻される。これによって、各外周部6Bの一部6Ba(左右の各端部側)が、図4に示すように、本体部3Bの裏面に位置するように配置される。この結果、当該RFIDタグ4は、シールパット3の面に固定される。
【0023】
すなわち、RFIDタグ4を、本体部3Bの表面側に沿って貼り付け、更に、RFIDタグ4の左右の端部側を、本体部3Bに巻きつけるようにして、外周部6Bの一部6Baを本体部3Bの裏面側に貼り付ける。
なお、左右のアンテナ6の端部同士は、図4に示すように、非接触状態とする。
これによって、本実施形態のRFIDタグは、図5に示すように、シールパット3の裏面に位置するアンテナ6の部分(外周部6Bの一部6Ba)がコイル材表面に接触した状態で、当該コイル材1に取り付けられる。なお、シールパット3の裏面に位置するアンテナ6の部分(外周部6Bの一部6Ba)のおもて面には、表面保護層等が形成されていない。
【0024】
ここで、RFIDタグ4の周波数帯は、ピークが、例えばUHF帯(例えば900MHz~960MHz)の範囲内にあるように設定することが好ましい。
また、RFIDタグ4の通信可能な距離が、交信角度0度及び45度で2m以上、好ましくは4m以上となるように構成することが好ましい。
本実施形態では、RFIDタグ4が簡易な構造(例えば、ICチップ5とアンテナ6だけからの構成)であっても、アンテナ6の一部をコイル材1に接触されて使用されることで、コイル材1がアンテナ6の一部を構成して、通信距離を2m以上に設定可能となる。
【0025】
(作用その他)
本実施形態のシールパット3は、図1及び図5に示すように、シールパット3の足部(差し込み部3A)をコイル材1と結束バンド2の間に差し込むことで、コイル材1の表面を汚すことなく、RFIDタグ4を、コイル材1の外径側表面に容易に取り付けることができる。また、シールパット3の裏面をコイル材1表面に押しつけることができる。
また、本実施形態では、RFIDタグ4を簡易に取り付けることが出来るにも拘わらず、コイル材1の移動時に、RFIDタグ4の位置がずれたり、外れたりするおそれがない。
更に、RFIDタグ4付きのシールパット3は、結束バンド2を外すだけで、コイル材1から簡単に取り外すことができる。
【0026】
また、RFIDタグ4付きシールパット3を、コイル材1の外径側表面に設置する。このため、RFIDタグ4の設置が容易であるばかりでなく、梱包時や再梱包、開梱の際にも、コイル材1にRFIDタグ4が設置されていることを、簡易に確認することができる。
なお、RFIDタグ4付きシールパット3が、コイル材1の上半分側の範囲に位置するようにして、コイル材1の搬送や格納を行うことが好ましい。
【0027】
また、RFIDタグ付きのシールパット3は梱包紙内に使用されるので、梱包後も開梱後もコイル材1の個体識別管理ができる。そして、途中で梱包紙が取り外されたり、交換されたりしても、タグの取り違いがないので、より確実にコイル材1の個体識別が可能となる。
また、本実施形態のRFIDタグ4は、簡易な構造であるにも関わらず、シールパット形状に合わせた周波数特性を改良し、従来よりも読み取り(通信)距離拡大することができる。この結果、目視のように鉄鋼商品に近づくことなく、個体識別管理ができるようになる。
すなわち、本実施形態では、コイル材1の中央の空洞内にRFIDタグを設置する場合に比べて、RFIDタグ4を読み取り可能な位置の自由度(範囲)が向上する。
【0028】
ここで、RFIDタグへの個体識別情報の格納は、ライターによる書き込みで実行される。個体識別情報の格納は、タグをコイル材に取り付けた後でも良いし、取付け前でも良い。
また、コイル材1に取り付けたRFIDタグ4からの個体識別情報の読み取りは、リーダーによって実行される。リーダーは、例えば、コイル材1の搬送を行うコイルリフターなどの搬送装置に設けておく。この場合、コイル材1の入庫や出庫など、コイル材を搬送する際に、コイル材1の個体識別管理を行うことができる。
【0029】
図7に、コイルリフター100でのコイル材搬送時の状態の例を示す。なお、図7では、分かり易くするため、結束バンド2を省略している。
図7のように、本実施形態では、コイルリフター100の本体(非可動部)に設置したリーダー101によって、コイル材1に取り付けたRFIDタグ4からの情報の読み取りができる。すなわち、コイルリフター100の可動部に限定してリーダー101を取り付けなくても、RFIDタグ4からの情報の読み取りが可能である。
また、リーダーは、作業員がハンドリング可能なハンドタイプであっても良い。この場合、例えば、トラックなどの搬送車両に積載状態のコイル材1や、倉庫に置かれたコイル材1に作業員が近づいて、コイル材1の識別を行うことが可能となる。
【0030】
リーダーは、書き込み機能を備えたリーダライターであっても良い。この場合、RFIDタグからの情報の読み取りと共に、RFIDタグへの、追跡情報などの情報の追加や変
更を行ってもよい。
なお、アンテナ6の一部をコイル材1に電気的に接続することで、RFIDタグ4の通信距離が、理論値で約2倍以上、現場検証で約1.2倍以上の大きくなったことを確信している。
【0031】
<変形例>
(1)上記説明では、基体をシールパット3から構成する場合を説明しているが、基体を、シールパット3とは別部品であっても良い。この場合、RFIDタグ付きの基体を、シールパット3と同様に、結束バンド2とコイル材1との間に差し込むことで、コイル材1に取り付けると良い。
また、RFIDタグ付きの基体を、コイル材1の表面に、両面粘着テープで貼り付けても良い。ただし、貼り付け際の粘着剤がコイル材1表面に付着するため、それによってコイル材1の品質に悪影響が出る可能性がある。また、両面粘着テープはアンテナに触れないように設ける必要がある。また、テープの厚み分だけ、コイル材とアンテナとの間に隙間が形成される可能性がある。
このため、基体を、結束バンド2とコイル材1との間に差し込むことで、コイル材1に取り付けることが好ましい。
また、上述のようにシールパット3を基体とする方が好ましい。シールパット3を基体とした場合、RFIDタグをコイル材1に取り付けるための新たな作業が不要となる。
【0032】
(2)上記説明では、RFIDタグ4のアンテナ6を、シールパット3の裏面まで延長して配置しているが、RFIDタグ4のアンテナ6を、シールパット3のおもて面だけに配置しても良い。ただし、RFIDタグ4のアンテナ6を、シールパット3の裏面まで延長して配置した方が、RFIDタグ4の通信距離を稼ぐことができる。
また、RFIDタグは、図2のようなダイポール型に限定されない。図6に示すような、ループ型のアンテナパターンであっても良い。ただし、図6のような構成のRFIDタグでは、タグの基材としてのフィルム材7があることが好ましい。
また、基体をバンド上に貼り付けることで、RFIDタグ4をコイル材1に設けても良い
【0033】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)金属製の物品の表面に、絶縁材料からなる基体を介して、上記物品の個体識別情報を格納可能なRFIDタグを取り付け、上記RFIDタグ内の個体識別情報によって上記物品の個体識別を行う、
ことを特徴とする金属製物品の個体識別方法。
(2)上記RFIDタグは、上記基体における上記物品側の裏面とは反対側のおもて面側にICチップが設けられ、そのICチップに電気的に接続した無線通信用のアンテナが、上記基体のおもて面に沿って延在し、更に、そのアンテナの一部を、上記基体の裏面に配置して上記物品の金属面に接触させる。
【0034】
(3) 上記RFIDタグを取り付けた上記物品は梱包紙で梱包され、その梱包された状態で物品の個体識別を行う。
(4)上記金属製の物品は、金属帯をロール状に巻きつけられ結束バンドで拘束されてなるコイル材であり、
上記基体は、上記コイル材の表面と上記結束バンドとの間に差し込まれる差し込み部を有し、上記差し込み部以外の位置に上記RFIDタグが設けられ、上記差し込みでコイル材表面に取り付けられる。
【0035】
(5)上記基体は、上記結束バンドを結束する際に、上記コイル材の表面と上記結束バ
ンドとの間に配置されるシールパットである。
(6) 金属帯をロール状に巻きつけられ結束バンドで拘束されてなるコイル材における上記コイル材の表面と上記結束バンドとの間に配置されるシールパットであって、
そのシールパットの表面にRFIDタグを備える。
【0036】
(7)上記RFIDタグは、シールパットのおもて面側にICチップが設けられ、そのICチップに電気的に接続した無線通信用のアンテナが、シールパットの上記おもて面に沿って延在し、そのアンテナの一部が、シールパットの裏面に配置されている。
(8)本開示のRFIDタグ付きのシールパットを備えたコイル材。
(9)上記RFIDタグのピーク周波数が、900MHz~960MHzの範囲内にあり、上記RFIDの通信可能な距離が、交信角度0度及び45度で2m以上である。
【符号の説明】
【0037】
1 コイル材(金属製の物品)
2 結束バンド
3 シールパット(基体)
3A 差し込み部
3B 本体部
4 RFIDタグ
5 ICチップ
6 アンテナ
6A 周波数調整部
6B 外周部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7