(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】単離された物質を気化して吸入する方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61M 11/04 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
A61M11/04 300A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022115378
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2020101083の分割
【原出願日】2015-06-30
【審査請求日】2022-07-29
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517002649
【氏名又は名称】サイケ メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SYQE MEDICAL LTD.
【住所又は居所原語表記】14 HaTchiya Street, Tel-Aviv, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッドソン・ペリー
(72)【発明者】
【氏名】ショア・アーロン
(72)【発明者】
【氏名】クロール・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ・ビンヤミン
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/037794(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/126777(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の生物活性物質を使用者に肺送達するための投薬ユニットであって、前記投薬ユニットは、
上面と下面とを画定する平たい通気性のパレットであって、前記パレットは、それを通して空気の流れが通過できるような構造であり、前記パレットが、前記少なくとも1種類の生物活性物質と前記少なくとも1種類の生物活性物質を支持する
、粒子状で固体の担体材料とを備えており、前記担体材料は、前記少なくとも1種類の生物活性物質が気化する温度において耐熱性があり、前記パレットは、前記上面と前記下面との間で加熱要素及び前記パレットを通して、
空気が流れ得るのに十分な通気性がある、平たい通気性のパレットと、
前記パレットの前記上面と前記下面とに熱的に接触しており、かつエンクロージャーの第1の部分において前記上面にわたり延在し、エンクロージャーの第2の部分において
前記パレットの前記下面にわたり延在している
通気性のエンクロージャーであって、前記第1及び第2の部分の少なくとも1つが、前記パレットの前記上面と前記下面の少なくとも1つの面に熱的に接触しており、かつ前記少なくとも1つの面にわたり延在する
電気抵抗加熱
メッシュであり、前記上面と前記下面の間で前記
電気抵抗加熱
メッシュ及び前記パレットを通して
空気が流れ得るのに十分な通気性がある
前記電気抵抗加熱
メッシュを備える
通気性のエンクロージャーと、
を備えており、
前記
電気抵抗加熱
メッシュは、前記固体の担体材料と前記少なくとも1種類の生物活性物質を含む前記パレットを加熱するために前記パレットに直接接触するように構成されている、
投薬ユニット。
【請求項2】
前記パレットが多孔性である、請求項1に記載の投薬ユニット。
【請求項3】
前記パレットの通気性構造が、吸入する使用者によって引き起こされる引張力に相当する真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体
が流れることを可能にする、請求項
1に記載の投薬ユニット。
【請求項4】
前記担体材料が、前記生物活性物質の貯蔵温度から燃焼/分解温度までの範囲内に含まれる温度範囲において、前記生物活性物質と接触しているときに前記生物活性物質に対して実質的に非反応性である、請求項1から3のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項5】
前記担体材料が、前記生物活性物質の貯蔵温度から、前記生物活性物質の蒸発温度よりも50℃高い温度までの温度範囲において、前記生物活性物質と接触しているときに前記生物活性物質に対して実質的に非反応性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項6】
前記パレットの構造は、
(a)少なくとも1000平方メートル/グラム(m2/g)の表面/質量比を有するか、
(b)少なくとも500平方メートル/ミリリットル(m2/mL)の表面/体積比を有することのうちのいずれかを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項7】
前記
電気抵抗加熱
メッシュが少なくとも2つの向かい合う表面を備え、前記パレットの前記上面と前記下面とは、それぞれ、前記
電気抵抗加熱
メッシュの前記少なくとも2つの向かい合う表面に熱伝導的に接触する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項8】
フレームをさらに備えており、前記フレームの開口部に前記パレットが嵌め込まれている、請求項1から
7のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項9】
前記フレームが、前記生物活性物質が気化する温度の熱に対して耐熱性であるように選択される、請求項
8に記載の投薬ユニット。
【請求項10】
前記担体材料が、前記生物活性物質の蒸発温度よりも高い燃焼温度または分解温度または溶融温度を有する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項11】
前記担体材料が、少なくとも10μΩ・mの電気抵抗率を有し、少なくとも0.1W/mKの熱伝導率を有する、請求項1から1
0のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項12】
前記生物活性物質が、合成の生物活性物質を含む、請求項1から1
1のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項13】
前記
電気抵抗加熱
メッシュが、2つの端部を有しかつ前記パレットが中に配置される中空部を有するU字形状、を備えており、したがって、前記2つの端部の間に電圧が印加されたときに前記
電気抵抗加熱
メッシュの前記少なくとも2つの向かい合う表面の両方に電流が流れる、請求項
7に記載の投薬ユニット。
【請求項14】
前記少なくとも1種類の生物活性物質が、
Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビノール(CBN)、カンナビノジオール(CBDL)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビジバリン(CBDV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビトリオール(CBT)、テルペン、フラボノイド、アヘン、サルビノリン、カチノン、プカテイン、ツジョン、ダミアニン、ブルボカプニン、カバラクトン、ラゴキリン、ラクツカリウム、グラウシン、エルギン、イボガイン、アポルフィン、レオヌリン、アトロピン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニル、ヒドロモルフォン、メタドン、ミダゾラム、ナルブフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、オキシコドン、フェニトイン、レミフェンタニル、リザトリプタン、シルデナフィル、スフェンタニル、ゾルピデム、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される生物活性物質、を含む、請求項1から1
3のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項15】
前記担体材料の粒子は、前記電気抵抗加熱メッシュにおける孔の大きさよりも大きい、請求項1から14のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項16】
前記
電気抵抗加熱メッシュは、前記生物活性物質を、少なくとも部分的に、間接的な伝導により加熱するために位置している、請求項1から14のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【請求項17】
前記電気抵抗加熱メッシュは、開いた領域と閉じた領域の表面積の比が、1:1(50%)から1:3(33%)の範囲内である、請求項1から14のいずれか一項に記載の投薬ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、そのいくつかの実施形態においては、薬理学に関し、より詳細には、以下に限定されないが、気化性の物質を吸入によって制御下で送達する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物治療を必要とする被験者に生物活性(薬理活性)物質を効率的に送達するための数多くの方法および装置が、長年にわたり開発されてきた。現在の送達手法の最も一般的な3つの例は、経口摂取、静脈内投与、皮下注射である。これらの手法は一般的には効果的であるが、薬物動態学上のいくつかの制限があり、さらには患者が処方どおりに服用しないこともしばしばある。例えば、従来の方法における治療効果は、最初の投薬後しばしば数時間以内に消失し、その一方で、注射に伴う不快感によって薬物投与およびその持続が困難になることも多い。生物活性物質のバイオアベイラビリティが低い場合と、吐き気や嘔吐のために被験者が生物活性物質を摂取できない場合には、経口投与でも効果がないことがある。
【0003】
効果の高い生物活性物質の一例は、ドロナビノール(THCの純粋な異性体、すなわち(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール)であり、大麻の中に見つかったおもな生物活性物質の1つである。ドロナビノールは、合成的に製造され、マリノール(登録商標)という商標名で販売されているが、この薬物の使用は、その固有な特性(粘性や疎水性など)のためにかなり限られており、薬学的に表現すれば、経口摂取によって送達されたときにはバイオアベイラビリティが低く、また効果を制御できない。例えば効果が全身に達するまでの時間は、大麻の煙または気化した大麻を吸う場合の数秒~数分と比較して、マリノール(登録商標)では1時間以上かかる。症状をコントロールするのにちょうど十分な大麻の煙を吸うことに慣れた患者は、マリノールの決められた投薬量では効き目が強すぎることと、効くまでに時間がかかることに不満を訴えることがある。多くの患者によれば、マリノールでは大麻より強い幻覚作用が生じ、この違いは、特定の時点における被験者の中の生物活性物質の量を制御することが難しいことによって説明できるものとこれまで考えられており、なぜならこの粘性かつ疎水性の薬剤は、消化管を通じて取り込まれると、脂肪組織に一時的に蓄えられた後に中枢神経系の標的受容体に達するためである。
【0004】
煙の吸入は、煙を吸い込むという悪影響があり、また、燃えなかった生物活性物質は送達効率が低いことから一般的には推奨されないが、バイオアベイラビリティの低い薬物を気化させて蒸気を吸入することは、その薬物の注射および経口摂取に関連する問題に対する可能な解決策となりうる。部分的な解決策は、煙を吸い込むことの呼吸器に対する危険性を回避しながら、吸入された気化性の活性物質を送達することを目的とするいくつかの気化技術によって提供される。燃えているたばこの中心部の温度は750~800℃であるが、気化は任意の所定の温度において行うことができ、したがって、熱分解性の毒性化合物が生成される燃焼温度以下において、生物活性物質の蒸気を形成することができる。気化技術によって、一酸化炭素および強い発癌性化合物(多環芳香族炭化水素(PAH)、ベンゼン、タールなど)の形成が減少することが判明している。
【0005】
しかしながら、現在知られている無煙型の気化装置のいずれも、患者が吸入する量を正確かつ高い再現性でコントロールすることができないため、一般的な薬事基準および慣習下では、気化性の生物活性物質を投与する目的に利用することができない。気化性の生物活性物質の気相状態での肺送達では、実際に送達される用量が毎回変化し、その理由として、使用者が装填する用量が見た目による主観的な推定量であること、装填される用量が同じでも繰り返される吸入が同じタイミングではないこと、吸入の力学特性が一貫していないこと、時間の経過に伴って装置の内面に蒸気が凝結すること、挙げられる。したがって現在使用されている気化装置では、薬剤を適切に投与すること、および医療投薬計画を監視することが、非現実的または非実用的である。
【0006】
特許文献1には、患者の呼吸器系に薬物を肺送達するシステムおよび方法が開示されており、このシステムおよび方法では、大気圧に対して陽圧の清浄な空気において薬物が供給され、さまざまな形態で利用可能な薬物が、エアロゾル、霧状、または蒸気の形で、清浄な空気流の中に制御下で取り込まれる。
【0007】
特許文献2には、電子喫煙装置が開示されており、この、電子喫煙装置は、液体物質の供給部と、液体物質を吸い上げて、液体物質を気化させるのに十分な温度まで液体物質を加熱してエアロゾルを形成するように動作する加熱器/吸い上げ要素と、を含む。加熱器/吸い上げ要素は、2層以上の電気抵抗メッシュ材料を備えている。この装置では、被験者に送達される量の制御性および/または再現性が確保されない。
【0008】
Rabinowitz,J.D.らの非特許文献1には、関連するプロセス(同様に熱的に生成されたエアロゾルの吸入を含む)を通じての分解生成物なしに、純粋な医薬化合物を全身に送達する方法が記載されている。Rabinowitz,J.D.らによると、薬物を金属の加熱要素に薄膜としてコーティングし、加熱要素を加熱することによって気化させる。薬物のコーティングが薄いため、薬物が高温にさらされる時間長が最小であり、これにより薬物の熱分解が防止される。気化した気相の薬物は、急速に凝結および凝固してミクロンオーダーのエアロゾル粒子となる。
【0009】
本譲受人による特許文献3(この文書は参照によって本明細書に組み込まれている)には、特に、植物性材料から生物活性物質を加熱によって制御下で気化させて肺送達する定量吸入装置が開示されており、この装置は、植物性材料から正確な量の活性物質を高い再現性で気化させる一方で、所定の用量が完全に肺送達されるように空気流を制御するように構成されている。
【0010】
さらなる背景技術としては、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際特許出願公開第2008/116165号
【文献】米国特許出願公開第20140238423号明細書
【文献】国際特許出願第2012/085919号
【文献】国際特許出願第2008/024490号
【文献】国際特許出願第2008/024408号
【文献】米国特許第6,703,418号明細書
【文献】米国特許第7,169,378号明細書
【文献】米国特許第7,987,846号明細書
【文献】米国特許第8,235,037号明細書
【文献】米国特許出願公開第20140100249号明細書
【文献】米国特許出願公開第20120252885号明細書
【文献】米国特許出願公開第20100168228号明細書
【文献】米国特許出願公開第20080181942号明細書
【文献】米国特許出願公開第20080176885号明細書
【文献】米国特許出願公開第20080078382号明細書
【文献】米国特許出願公開第20070072938号明細書
【文献】米国特許出願公開第20060258738号明細書
【文献】米国特許出願公開第20060167084号明細書
【文献】米国仮特許出願第62/035,588号明細書
【文献】米国仮特許出願第62/085,772号明細書
【文献】米国仮特許出願第62/086,208号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】J. Pharmacol. Exp. Ther., 2004, 309(2), p. 769-75
【文献】“Leachables and Extractables Handbook: Safety Evaluation, Qualification, and Best Practices Applied to Inhalation Drug Products”, 2008, Editors: Douglas J. Ball, Daniel L. Norwood, Cheryl L. M. Stults, and Lee M. Nagao, Publisher: John Wiley & Sons, Inc.
【文献】“Best practices for extractables and leachables in orally inhaled and nasal drug products: an overview of the PQRI recommendations” by Norwood, D.L. et al., Pharm Res., 2008, 25(4), p. 727-39
【発明の概要】
【0013】
本明細書においては、加熱要素に熱的に接触する担体材料に塗布された少なくとも1種類の単離された生物活性物質を備えている投薬ユニットであって、加熱要素が、活性物質の所定の量を、肺送達する目的で気化させるように構成されている、投薬ユニットと、単離された活性物質の気化および肺送達をもたらす装置と、活性物質が制御下で解放される投薬ユニットを作製する方法と、活性物質を肺送達する方法と、単離された生物活性物質の肺送達によって治療可能である医学的状態を治療する方法と、を提供する。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によると、少なくとも1種類の生物活性物質を使用者に肺送達するための投薬ユニットであって、
パレットと、
パレットの表面の少なくとも一部分に熱的に接触しておりかつパレットの表面の少なくとも一部分にわたる電気抵抗加熱要素と、
を含み、
少なくとも1種類の生物活性物質が、単離された生物活性物質に含まれており、パレットが、固体の担体材料を含み、生物活性物質が、担体材料の内部および/または表面に存在する、
投薬ユニット、を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態によると、電気抵抗加熱要素は、パレットの少なくとも2つの向かい合う表面の全体にわたる。
【0016】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、生物活性物質の貯蔵温度から燃焼/分解温度までの範囲内に含まれる温度範囲において、生物活性物質と接触しているときに生物活性物質に対して実質的に非反応性である。
【0017】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、生物活性物質の貯蔵温度から、生物活性物質の蒸発温度よりも50℃高い温度までの温度範囲において、生物活性物質と接触しているときに生物活性物質に対して実質的に非反応性である。
【0018】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、生物活性物質の蒸発温度よりも高い燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度を有する。
【0019】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、生物活性物質の蒸発温度よりも少なくとも50℃高い燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度を有する。
【0020】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、少なくとも10μΩ・mの電気抵抗率を有する。
【0021】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、少なくとも0.1W/mKの熱伝導率を有する。
【0022】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、ガラス、石英、セラミック複合材料、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、からなる群から選択される物質、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態によると、パレットは、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で(under a pulling vacuum)少なくとも毎分0.5リットルの気体を通過させることのできる通気性構造を有する。
【0024】
いくつかの実施形態によると、パレットは、一体の通気性基質(unified air-permeable matrix)である。
【0025】
いくつかの実施形態によると、パレットは、全体として通気性である押し固められた複数の粒子である。
【0026】
いくつかの実施形態によると、粒子は、10ミクロンより大きい直径を有する。
【0027】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、少なくとも10センチポイズ(cP)の粘度を有する液体である。
【0028】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質の沸点は、80℃より高い。
【0029】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質のオクタノール-水-分配係数(logP)は、5より大きい。
【0030】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質のオクタノール-水-分配係数(logP)は、1より大きい。
【0031】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、合成の生物活性物質を含む。
【0032】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、植物性物質の純粋な抽出物を含む。
【0033】
いくつかの実施形態によると、生物活性物質は、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビノール(CBN)、カンナビノジオール(CBDL)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビジバリン(CBDV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビトリオール(CBT)、テルペン、フラボノイド、およびこれらの任意の組合せ、からなる群、から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態によると、生物活性物質は、アヘン、サルビノリン、カチノン、プカテイン、ツジョン、ダミアニン(damianin)、ブルボカプニン、カバラクトン、ラゴキリン、ラクツカリウム、グラウシン、エルギン、イボガイン、アポルフィン、レオヌリン、アトロピン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニル、ヒドロモルフォン、メタドン、ミダゾラム、ナルブフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、オキシコドン、フェニトイン、レミフェンタニル、リザトリプタン、シルデナフィル、スフェンタニル、ゾルピデム、からなる群、から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態によると、生物活性物質は、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール)である。
【0036】
いくつかの実施形態によると、生物活性物質は、担体材料の内部および/または表面に、所定の量において提供される。
【0037】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、金属製の加熱要素である。
【0038】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、2つの端部を有し、かつパレットが中に配置される中空部を有するU字形状、を備えており、したがって、2つの端部の間に電圧が印加されたときに少なくとも2つの向かい合う表面の両方に電流が流れる。
【0039】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素はパレットに固定されており、パレットを投薬ユニットに保持している。
【0040】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、パレットに包まれておりパレット内に延在する部分、を有する。
【0041】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素のうちパレット全体にわたる部分は、通気性の抵抗加熱要素である。
【0042】
いくつかの実施形態によると、通気性の抵抗加熱要素は、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を通過させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、抵抗メッシュを含む。
【0044】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、エッチングされた金属箔の少なくとも1つのリボン、を含む。
【0045】
いくつかの実施形態によると、エッチングされた金属箔のリボンは、リボンを通気性にする複数の穿孔を含むポリマー裏材によって裏打ちされている。
【0046】
いくつかの実施形態によると、エッチングされた金属箔のリボンは、高い抵抗を有する狭窄領域を含み、この狭窄領域は、生物活性物質の解放後、印加された電力の消散時に溶融してリボンに沿った電気的導通を遮断する。
【0047】
いくつかの実施形態によると、エッチングされた金属箔のリボンは、ヒューズ素子に取り付けられており、このヒューズ素子は、生物活性物質の解放後、印加された電力の消散時にリボンに沿った電気的導通を遮断するように構成されている。
【0048】
いくつかの実施形態によると、投薬ユニットは、パレットと加熱要素とを隔てている通気性の保持メッシュを含み、この保持メッシュは、パレットを投薬ユニットの中に保持するうえで十分にパレットを覆っている。
【0049】
いくつかの実施形態によると、通気性の保持メッシュは、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を通過させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、パレット全体にわたる領域の両側に電極接点受け入れ領域(electrode contact-receiving region)、を含む。
【0051】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、投薬ユニット引込み部(dose puller)の移動アームに取り付く形状を有する移動アーム連結領域(transport arm interlock region)、を含む。
【0052】
いくつかの実施形態によると、投薬ユニットは、複数の加熱要素領域を含み、各領域が電流を受け取るように個別に構成されている。
【0053】
いくつかの実施形態によると、加熱要素は、対応する複数のパレットに関連付けられている。
【0054】
いくつかの実施形態によると、投薬ユニットはフレームをさらに含み、フレームの開口部にパレットが嵌め込まれている。
【0055】
いくつかの実施形態によると、フレームは、少なくとも生物活性物質が気化する温度の熱に対して耐熱性である。
【0056】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、パレットに熱的に接触しており、少なくとも開口部全体にわたる。
【0057】
いくつかの実施形態によると、抵抗加熱要素は、その一部分が開口部の縁部付近においてフレームに埋め込まれている。
【0058】
いくつかの実施形態によると、フレームは、開口部から離れており抵抗加熱要素が取り付けられている領域、を含む。
【0059】
いくつかの実施形態によると、上記領域においてフレームの少なくとも一部分を溶融させ、したがってフレームの材料が抵抗加熱要素における1つまたは複数の開口部に流れ込むことによって、抵抗加熱要素が領域に取り付けられている。
【0060】
いくつかの実施形態によると、フレームは、投薬ユニット引込み部の移動アームに取り付く形状を有する移動アーム連結領域、を含む。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に提示されている実施形態のいずれかによる投薬ユニットのための動作ユニットであって、
投薬ユニットを格納位置から使用位置に移動させるように構成されている投薬ユニット引込み部と、
生物活性物質が動作ユニットの空気路と密封状態に位置が合うように、投薬ユニットを保持するように構成されている保持部と、
投薬ユニットが動作ユニット内にあるとき投薬ユニットの抵抗加熱要素の少なくとも2つの電気接点受け入れ領域に電気的に接触するように配置されている電極と、
を含む、動作ユニット、を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態によると、投薬ユニット引込み部は、投薬ユニットの受け入れ側領域と連結するための形状を有する投薬ユニット引込みアームであって、投薬ユニット引込みアームが動くことによって投薬ユニットが使用位置に移動する、または使用位置から取り出される、投薬ユニット引込みアーム、を含む。
【0063】
いくつかの実施形態によると、密封状態に位置が合うことによって、内部空洞内にパレットを貫く経路が画成され、パレットを通過した空気がこの経路に沿ってそのまま出口開口部に達する。
【0064】
いくつかの実施形態によると、保持部は、投薬ユニットを移動させるように構成されている機構、を含む。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に提示されている実施形態のいずれかによる動作ユニット、を含む吸入器装置、を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態によると、吸入器装置は、閉じた容器内に複数の投薬ユニットを含む投薬ユニット供給装置(dose unit dispensing apparatus)、を含む。
【0067】
いくつかの実施形態によると、閉じた容器は連動部を含み、この連動部は、容器から最初の投薬ユニットが供給された後、この最初の投薬ユニットが供給装置に戻るまでは容器から2番目の投薬ユニットが供給されることを防止する。
【0068】
いくつかの実施形態によると、投薬ユニットが気化装置に供給され、連動部の動作は、気化装置を投薬ユニット供給装置に挿入することを含む。
【0069】
いくつかの実施形態によると、本装置は把持室装置を含み、把持室装置は、
把持室装置が投薬ユニット容器に取り付けられているときに、投薬ユニット容器から投薬ユニットを密着状態に受け入れる寸法を有する空洞部と、
把持室装置が投薬ユニット容器から取り外されているときに、投薬ユニットに含まれている生物活性物質を気化させるため、密着状態に受け入れられた投薬ユニットの抵抗加熱要素に電流を供給するように動作する電力ユニットと、
を含む。
【0070】
いくつかの実施形態によると、投薬ユニット容器は、複数の投薬ユニットを含む。
【0071】
いくつかの実施形態によると、本装置は、生物活性物質を含むパレットを制御下で加熱するとき、生物活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量を解放するように構成されている。
【0072】
いくつかの実施形態によると、本装置は、投薬ユニットの内部および投薬ユニットの表面の1箇所または複数箇所における温度を感知する温度センサー、を含む。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に提示されている実施形態のいずれかによる投薬ユニットを製造する工程であって、
担体材料に、単離された生物活性物質を接触させるステップと、
生物活性物質が内部および/または表面に塗布された担体材料を含むパレットを形成するステップと、
パレットの1つの面の少なくとも一部分を電気抵抗加熱要素によって覆うステップと、
を含む、工程、を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態によると、パレットを形成するステップは、
生物活性物質が内部および/または表面に塗布された担体材料の複数の粒子を、投薬室の中に平たい表面上に配置するステップと、
複数の粒子が水平になるまで平たい表面を振動させるステップと、
水平になった複数の粒子を加圧してパレットを形成するステップと、
を含む。
【0075】
いくつかの実施形態によると、パレットを形成するステップは、担体材料から一部分を切り取って、一体の通気性基質を形成するステップ、を含む。
【0076】
いくつかの実施形態によると、担体材料から一部分を切り取るステップは、担体材料に単離された生物活性物質を接触させるステップの前に実行される。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によると、少なくとも1種類の生物活性物質を患者に肺送達する方法であって、
本明細書に提示されている実施形態のいずれかによる吸入器装置の動作ユニットに投薬ユニットを装填するステップと、
投薬ユニットの抵抗加熱要素に電流を印加し、これにより生物活性物質の所定の気化量を気化させ、これにより所定の気化量を制御下で解放するステップと、
を含む、方法、を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態によると、本方法は、電流を印加した後、パレットを通じて周囲空気を吸入し、これにより所定の気化量を患者の肺器官に肺送達するステップ、を含む。
【0079】
いくつかの実施形態によると、所定の気化量は、患者において生物活性物質の少なくとも1つのあらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/または少なくとも1つのあらかじめ選択される薬力学プロファイルを示すように、選択される。
【0080】
いくつかの実施形態によると、本方法は、
患者において単離された生物活性物質を本装置から肺送達することによって引き起こされる少なくとも1つの薬物動態パラメータおよび/または少なくとも1つの薬物動態変数および/または少なくとも1つの薬力学パラメータを求めるステップと、
患者において生物活性物質のあらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/またはあらかじめ選択される薬力学プロファイルを示す所定の気化量を、薬物動態パラメータおよび/または薬物動態変数および/または薬力学パラメータに基づいて決定するステップと、
生物活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量が送達されるように本装置を調整するステップと、
をさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態によると、薬物動態パラメータおよび/または薬物動態変数および/または薬力学パラメータのそれぞれが、個々の患者において求められ、したがって、所定の気化量が患者に対して個人的に決定される。
【0082】
いくつかの実施形態によると、あらかじめ選択される薬力学プロファイルは、望ましい効果の最小レベルから、望ましくない効果のレベルまでの間を範囲とする。
【0083】
いくつかの実施形態によると、薬力学プロファイルは、望ましい効果の最小レベルから、望ましくない効果の最小レベルまでの間を範囲とする。
【0084】
いくつかの実施形態によると、薬力学プロファイルは、望ましい効果の最小レベルから、望ましくない効果の最小レベルより高いレベルまでの間を範囲とする。
【0085】
いくつかの実施形態によると、望ましい効果および/または望ましくない効果の少なくとも一方を定義するステップは、患者および/または医師からの情報/指示を受け取るステップを含む。
【0086】
いくつかの実施形態によると、あらかじめ選択される薬力学プロファイルは、
治療効果の最小レベルよりも低いレベルの範囲内の薬力学プロファイル、
治療効果の最小レベルから、副作用が発現または自覚されない治療効果の最大レベルまでを範囲とする薬力学プロファイル、
副作用の最小レベルよりも高いレベルの範囲内の薬力学プロファイル、
からなる群、から選択される。
【0087】
いくつかの実施形態によると、薬力学プロファイルは、治療効果の最小レベルから、副作用が発現または自覚されない治療効果の最大レベルまでを範囲とする。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に提示されている実施形態のいずれかによる方法によってもたらされる、少なくとも1種類の生物活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量の吸入、によって治療可能である医学的状態、を治療する方法、を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態によると、医学的状態は、アルコール依存症、筋萎縮性側索硬化症、神経性無食欲症、不安障害、食欲の変動、ぜんそく、アテローム性動脈硬化、双極性障害、膀胱機能障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、コラーゲン関節炎、結直腸癌、クローン病、せん妄、消化器系疾患、ドラベ症候群、薬物依存症・渇望、ジストニア、てんかん、線維筋痛症、全般てんかん熱性痙攣プラス(GEFS+)、緑内障、グリオーマ、C型肝炎、HIVに伴う感覚性ニューロパチー、うつ病、ハンチントン舞踏病、高血圧、眼圧上昇、炎症性腸疾患(IBD)、不眠症、過敏性腸症候群(IBS)、食欲不振、白血病、偏頭痛、運動障害、多発性硬化症(MS)、吐き気、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、パーキンソン病、幻肢痛、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、月経前症候群、掻痒、精神障害、心因性疼痛(精神痛または身体表現性疼痛)、てんかん発作、敗血症性ショック/心原性ショック、性機能障害、皮膚腫瘍、睡眠時無呼吸、痙性、脊髄損傷、チック、トゥレット症候群、振戦、意図しない体重減少、嘔吐、からなる群、から選択される。
【0090】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によると、少なくとも1種類の生物活性物質を使用者に肺送達するための投薬ユニットであって、
開口部を有するフレームと、
固体の担体材料からなり、開口部に嵌め込まれているパレットと、
を含み、
パレットが、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体をパレットを通過させるのに十分に通気性である、
投薬ユニット、を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態によると、投薬ユニットは、パレットの少なくとも2つの向かい合う表面に熱的に接触しておりこれら少なくとも2つの向かい合う表面の全体にわたる抵抗加熱要素、を含み、パレットは、抵抗加熱要素との組合せにおいて、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を少なくとも2つの向かい合う表面の間でパレットを通過させるのに十分に通気性である。
【0092】
いくつかの実施形態によると、パレットは、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を少なくとも2つの向かい合う表面の間でパレットを通過させるのに十分に通気性である。
【0093】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、少なくとも10μΩ・mの電気抵抗率を有する。
【0094】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、少なくとも0.1W/mKの熱伝導率を有する。
【0095】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、ガラス、石英、セラミック複合材料、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、からなる群、から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態によると、パレットは、一体の通気性基質である。
【0097】
いくつかの実施形態によると、パレットは、全体として通気性である押し固められた複数の粒子である。
【0098】
いくつかの実施形態によると、粒子は、10ミクロンより大きい直径を有する。
【0099】
特に定義されていない限り、本明細書において使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明に関連する技術分野における通常の技術を有する者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施形態を実施または試験するとき、本明細書に記載されている方法および材料に類似するかまたは同等の方法および材料を使用できるが、いくつかの方法および/または材料が以下に記載してある。矛盾が生じる場合、定義を含めて本特許明細書に従うものとする。さらには、これらの材料、方法、および例は、説明のみを目的としており、本発明を制限することを意図していない。
【0100】
当業者には理解されるように、本発明の態様は、システム、方法、またはコンピュータプログラム製品として具体化することができる。したがって、本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、またはソフトウェアとハードウェアを組み合わせた実施形態、の形をとることができ、いずれも本明細書においては、一般に「回路」、「モジュール」、または「システム」と称することがある。さらに、いくつかの態様は、コンピュータ可読プログラムコードが具現化されている1つまたは複数のコンピュータ可読媒体において具体化されたコンピュータプログラム製品の形をとることができる。実施形態の方法および/またはシステムの実施においては、選択されたタスクを、手操作で、または自動的に、またはこれらの組合せによって、実行または完了することができる。さらには、本開示の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置に応じて、いくつかの選択されたタスクを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェアによって、あるいはオペレーティングシステムを用いるこれらの組合せによって、実施することができる。
【0101】
例えば、いくつかの実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施することができる。ソフトウェアとしては、いくつかの実施形態による選択されたタスクを、任意の適切なオペレーティングシステムを使用するコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実施することができる。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されている方法および/またはシステムのいくつかの実施形態による1つまたは複数のタスクは、データプロセッサ(複数の命令を実行するコンピューティングプラットフォームなど)によって実行される。オプションとして、データプロセッサは、命令および/またはデータを記憶する揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを記憶する不揮発性記憶装置(例えば磁気ハードディスクおよび/またはリムーバルメディア)、を含む。オプションとして、ネットワーク接続も提供される。オプションとして、ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(キーボードやマウスなど)も提供される。
【0102】
本特許または本特許出願のファイルには、カラーで作成された少なくとも1枚の図面が含まれている。カラーの図面を含む本特許または本特許出願公開の複写は、要求があり必要な費用が支払われたときに事務所によって提供される。
【0103】
本明細書では、いくつかの実施形態について、添付の図面を参照しながら一例としてのみ説明してある。以下では図面を詳細に参照するが、図示されている細部は一例であり、実施形態を実例を通じて説明することを目的としていることを強調しておく。これに関して、図面を参照しながらの説明によって、当業者には、いくつかの実施形態をどのように実施するかが明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1A-1B】いくつかの実施形態による、分解した状態および組み立てた状態の投薬ユニット(カートリッジ)と、いくつかの代替構造の概略図である。
【
図1C-1H】いくつかの実施形態による、分解した状態および組み立てた状態の投薬ユニット(カートリッジ)と、いくつかの代替構造の概略図である。
【
図1I-1M】いくつかの実施形態による、分解した状態および組み立てた状態の投薬ユニット(カートリッジ)と、いくつかの代替構造の概略図である。
【
図2A-2C】いくつかの実施形態による、吸入器装置において使用または吸入器装置として使用するカルーセル型の用量送達システムを概略的に示している。
【
図2D-2E】いくつかの実施形態による、吸入器装置において使用または吸入器装置として使用するカルーセル型の用量送達システムを概略的に示している。
【
図3A-3B】いくつかの実施形態による、投薬ユニットから生物活性物質を気化させて送達する把持室装置を概略的に示している。
【
図4A-4B】いくつかの実施形態による、カルーセルから投薬ユニットを装填してカルーセルから外した後、単離された生物活性物質を投薬ユニットから気化させて送達するための装置を概略的に示している。
【
図5】いくつかの実施形態による、連動部によって保護されている投薬ユニット供給装置と、着脱式の用量投与アセンブリとを概略的に示している。
【
図6】いくつかの実施形態による、吸入器装置と、医師インタフェースおよび/または患者インタフェースとを備えたシステムの概略図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、パーソナライズされた投薬計画を患者に処方する方法の流れ図である。
【
図8A-8C】いくつかの実施形態による、投薬計画を選択して患者に処方するための医師インタフェースの概略図である。
【
図8D】いくつかの実施形態による、投薬計画を選択して患者に処方するための医師インタフェースの印刷画面である。
【
図9】いくつかの実施形態による、患者から個人の薬力学(PD)パラメータを取得し、それに応じて投薬計画を修正する方法の流れ図である。
【
図10A】いくつかの実施形態による、患者インタフェースの印刷画面を示している。
【
図10B】いくつかの実施形態による、個人の薬力学(PD)パラメータを入力する前および後の患者の予測される薬力学プロファイルのグラフ表現を示している。
【
図10C】いくつかの実施形態による、患者インタフェースの印刷画面を示している。
【
図10D】いくつかの実施形態による、個人の薬力学(PD)パラメータを入力する前および後の患者の予測される薬物動態プロファイルのグラフ表現を示している。
【
図10E】いくつかの実施形態による、患者インタフェースの印刷画面を示している。
【
図11】いくつかの実施形態による、携帯型パーソナルデバイスおよび/または吸入器装置を使用して1つまたは複数のバイオマーカーを取得し、オプションとしてそれに応じて用量および/または投薬計画を修正する方法の流れ図である。
【
図12A-12C】いくつかの実施形態による、バイオマーカーを取得する、および/または、自覚される治療効果や副作用を患者が判断するのを支援する、さまざまなアプリケーションを備えた患者インタフェースの印刷画面である。
【
図13】いくつかの実施形態による、1種類または複数種類の活性物質を自動的かつ制御下で肺送達するように構成されている吸入器装置の概略図である。
【
図14A】いくつかの実施形態による、吸入器装置の構造(
図14A)と、個別のパレットを備えた、吸入器装置の投薬ユニット(
図14B)の概略図である。
【
図14B】いくつかの実施形態による、吸入器装置の構造(
図14A)と、個別のパレットを備えた、吸入器装置の投薬ユニット(
図14B)の概略図である。
【
図15】いくつかの実施形態による、
図6によるシステムを使用して個々の患者を治療する一方で、パーソナライズされた治療窓(therapeutic window)内に患者を維持する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
本開示は、そのいくつかの実施形態においては、薬理学に関し、より詳細には、以下に限定されないが、気化性の物質を吸入によって制御下で送達する方法および装置に関する。
【0106】
少なくとも一実施形態について詳しく説明する前に、本開示は、その適用において、以下の説明に記載されている、および/または図面に示されている、および/または実施例によって例示されている、構成要素の構造および配置および/または方法の細部に、必ずしも限定されないことを理解されたい。
【0107】
本発明者は、低い水溶解度および/または高い粘度および/または高い沸点を特徴とする生物活性(薬理活性)物質を注射および/または経口摂取によって制御送達することに伴う難しさに着眼し、そのような生物活性物質を気化させて吸入することによって送達する方法について詳細に検討した。上述したように、生物活性物質を含む植物性物質からの気化性の生物活性物質を肺(吸入)送達する方法および装置は、有効性が高く、薬学上の広く受け入れられる標準および慣習につながることが判明している。しかしながらこれらの方法および装置は、単離された生物活性物質(すなわちもはや植物性物質の一部を形成していない活性物質)を送達するようには設計されていない。
【0108】
本発明者は、単離された気化性の生物活性物質の所定の量を制御下でかつ高い再現性で送達するという課題に対する包括的な解決策を模索する中で、担体材料の内部および/または表面に少なくとも1種類の単離された生物活性物質を含むパレットと、パレットに熱的に接触しておりパレット全体にわたる加熱要素であって、したがって加熱要素に電流を印加したときに生物活性物質がパレットから気化する、加熱要素と、を含む投薬ユニット、を着想した。投薬ユニットは、1回または複数回の使用に対応する量(用量)の生物活性物質を含み、吸入器装置において使用することができる。吸入器装置は、加熱の強さおよび持続時間、および/または、吸入時に投薬ユニットを通過する空気流、を制御し、これにより生物活性物質の所定の気化量を制御下でかつ高い再現性で被験者に送達する。
【0109】
単離された生物活性物質の気化および吸入の方法:
いくつかの実施形態の一態様によると、吸入器装置を使用して少なくとも1種類の生物活性物質を吸入によって患者に肺送達する方法であって、吸入器装置が、1種類または複数種類の単離された生物活性物質を含む投薬ユニットから、1種類または複数種類の生物活性物質を気化によって制御下で解放するように構成されている、方法、を提供する。
【0110】
この方法は、実用上の理由と、患者が処方に従うかどうかと、単離された生物活性物質によっては、経口摂取および/または注射による投与に適さない、またはそのような投与が望ましくないものとなる固有の特性を有することから、経口摂取および/または注射によって投与することが難しい生物活性物質を、気化させて吸入することによって投与する方法である。少なくとも1種類の生物活性物質を吸入によって患者に肺送達するこの方法では、オプションとして定量吸入装置(MDI装置)を使用し、定量吸入装置とは、1種類または複数種類の生物活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量を、気化によって制御下で解放するように構成されている吸入器装置である。
【0111】
いくつかの実施形態によると、用語「吸入」は、使用者/患者によって行われる動作であって、気化した活性物質が肺の中に運ばれるように、装置を通じて周囲空気を自発的かつ意図的に吸い込むことを意味する。なお、いくつかの実施形態によると、自然な呼吸と、機械的な人工呼吸装置(このような装置はこの技術分野において公知である)によって行われる強制的な呼吸によっても、気化した活性物質を肺の中に運ぶことができることに留意されたい。
【0112】
いくつかの実施形態によると、投薬ユニットは、あらかじめ測定される所定の量の生物活性物質または単離された生物活性物質を備えるように意図されている。いくつかの実施形態においては、この量は、単発的に取り込まれる、または治療投薬計画の一部として取り込まれる単回用量に相当する。いくつかの実施形態においては、投薬ユニットは、単発的に取り込まれる、または治療投薬計画の一部として取り込まれる単回用量よりも多くの量に相当する量の単離された生物活性物質を含むように設計されている。したがって投薬ユニットは、投薬ユニット内に個別に含まれる複数回分の単回用量、または所定の一定分量において組み合わされて気化した状態で含まれる(combined and vaporized in pre-determined aliquots)複数回分の単回用量を含むことができる。単回用量としての単離された生物活性物質の量は、生物活性物質の気化効率を考慮して計算することができる。
【0113】
本明細書において使用されている用語「気化」(すべての活用形を含む)は、物質が、気体(蒸気)、霧、吸入された空気中に浮遊する液滴、またはエアロゾルとして運ぶことができるようになる、無燃焼(非燃焼)プロセスを意味する。いくつかの実施形態においては、「気化」は、物質が加熱により気体(蒸気)として運ぶことができるようになることを意味する。いくつかの実施形態においては、吸入による送達中、蒸気が冷えて凝結して霧(すなわち吸入された空気中に浮遊するその物質の液滴、またはその物質のエアロゾル)が形成されることがある。いくつかの実施形態の文脈においては、用語「気化」は、液体から気体への相転移(蒸発および沸騰)と、固体から気体への相転移(昇華)を包含する。いくつかの実施形態においては、用語「気化」は、蒸気の一部が凝結し、吸入した空気中に浮遊する小さい液滴が生じて霧またはエアロゾルが形成されている中間状態も含む。いくつかの実施形態によると、用語「気化」は、単離された物質が、気体として、または吸入された空気中に浮遊するその液滴として運ぶことができるようになるプロセスを意味し、すなわち本質的には、対象の物質が、気化される唯一の物質であり、吸入された空気以外の担体または任意の他の重要な成分が含まれないことを意味する。いくつかの実施形態によると、用語「気化」には、噴霧化(液体を、液体状態の多数の物質を含む小さい液滴の微細な噴霧に変換すること、または、液体をエアロゾルまたは霧に変換すること、微粒化とも称する)と、多数の物質を含む微細な固体粒子(粉末)の形で物質を運ぶ他の形態は、含まれない。
【0114】
いくつかの実施形態によると、用語「気化」には、物質が液体担体に溶解する、懸濁する、乳化する、または液体担体と混ざって、液体担体を含む霧、または液体担体を含むエアロゾルの形で運ぶことができるようになるプロセスは、含まれない。
【0115】
いくつかの実施形態によると、気化は、気化する物質の分圧を上昇させるのに十分である一方で物質が燃焼することのない温度まで物質を加熱することによって(物質の燃焼温度以下で)、行われる。一般に気化は、物質を、大気圧におけるその標準沸点の直前の温度、または等しい温度、またはそれより高い温度まで加熱することによって、行われる。いくつかの実施形態によると、気化は、物質の温度を上げて周囲圧力を下げる(負圧または真空をかける)ことによって行われる。周囲圧力を下げるステップは、一般に吸入動作によって行われ、吸入動作では、通常では大気圧より5~50mbarの範囲で低い負圧(負圧値、すなわち-5~-50mbar)が、物質の周囲の空気にかかる。
【0116】
本明細書において使用されている用語「気化量」は、蒸気の形態での活性物質の量を意味し、蒸気の形態での量は、装置内の加熱要素によって得られ、このときオプションとして空気流による蒸気の除去分を考慮する。なお、いくつかの実施形態においては、本開示の文脈における気化する活性物質の量は、推定量ではなく、標準的な試験方法によって直接測定される、加熱時に気化する実際の量を表すことに留意されたい。
【0117】
用語「所定の気化量」は、MDI装置によって投薬ユニットから意図的に解放される量を意味し、この量の大きさは、本明細書に記載されているように、投薬ユニットの設計、装置の設定、および/または投薬計画プロトコルによって決まる。
【0118】
用語「生物活性物質」、「薬理活性物質」、「生理活性物質」、および「活性物質」は、本明細書においては同義に使用されており、被験者に投与されたときに身体的効果および/または精神活性効果をもたらす化合物、高分子、薬物、複合体、錯体、またはこれらの任意の組合せを意味する。生物活性物質は、一般には、肺送達された後に全身経路(例えば血液、リンパ液)を介して標的の(1つまたは複数の)器官および/または組織に達したときに、所望の効果および/または有益な効果および/または治療効果をもたらす。活性物質は、天然起源物質または合成物質とすることができる。本発明を制限することのない活性物質の例としては、CNS活性物質、化学療法薬、鎮静剤、鎮痛剤、向精神薬が挙げられる。
【0119】
本明細書において使用されている用語「単離された生物活性物質」は、合成的に作成される生物活性物質、または天然物から抽出される生物活性物質を意味する。
【0120】
いくつかの実施形態によると、用語「単離された生物活性物質」は、例えば植物性物質などの天然物(セルロース系材料など不溶性の固体も含む)に対して、実質的に精製された物質を意味する。
【0121】
用語「単離された生物活性物質」は、天然物から可溶性画分として抽出される1種類または複数種類の物質の全体抽出物または選択的抽出物を包含するものとする。
【0122】
いくつかの実施形態においては、用語「単離された生物活性物質」は、抽出された生成物のうち、1種類または複数種類の溶媒および/または溶媒の混合物において本質的に混和性である、または本質的に溶解させることができる可溶性画分、を意味する。「本質的に溶解する」とは、単離された生物活性物質の合計質量のうち少なくとも90質量パーセントが、生物活性物質が分解することなく1種類または複数種類の溶媒に溶解する一方で、画分における10%未満、8%未満、5%未満、3%未満、または1%未満の不溶性の固体塊が溶解せずに残ることを意味する。「本質的に混和性である」とは、単離された生物活性物質の合計質量のうち少なくとも90質量パーセントが、生物活性物質が分解することなく1種類または複数種類の溶媒と混ざって透明な液体を形成することができる一方で、画分における10%未満、8%未満、5%未満、3%未満、または1%未満の不溶性の固体塊が溶解せずに残る、任意の形態(例えば、液体、樹脂、可溶性粉末)であることを意味する。いくつかの実施形態の文脈においては、単離された生物活性物質は、不溶性物質、不溶性画分、または不溶性成分を実質的に含まない、または、不溶性物質、不溶性画分、または不溶性成分の質量パーセントが10%未満、8%未満、5%未満、3%未満、または1%未満である。用語「不溶性」は、単離された生物活性物質が溶解する溶媒または溶媒の混合物に溶解しない物質を意味する。
【0123】
いくつかの実施形態においては、単離された生物活性物質のうち1種類または複数種類の溶媒に溶解することのできる量は、単離された生物活性物質の合計質量の質量パーセントで、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、である。
【0124】
いくつかの実施形態においては、「単離された生物活性物質」は、本質的に相当な残渣が残ることなく気化させることのできる生物活性物質を意味する、またはそのような生物活性物質を含む。「本質的に相当な残渣が残ることなく気化させる」とは、生物活性物質の合計質量の少なくとも50質量パーセントが、分解することなく気化する一方で、50質量パーセント未満が気化せずに残ることを意味する。いくつかの実施形態においては、本質的に分解することなく、かつ相当な残渣が残ることなく気化させることのできる生物活性物質の量は、生物活性物質の合計質量の質量パーセントで、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%である。
【0125】
いくつかの実施形態の文脈においては、単離された生物活性物質は、非気化性物質、非気化性画分、または非気化性成分を実質的に含まない。用語「非気化性」は、単離された生物活性物質の少なくとも50%を気化させるのに使用される条件(例:温度)において高い割合では気化しない、および/または、沸騰するかまたはそれ以外の形でその蒸気を形成する前に分解するかまたは燃える、および/または、単離された生物活性物質の少なくとも50%を気化させるのに使用される温度よりも高い沸点を有する、物質、または化合物の混合物、を意味する。
【0126】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、他の物質から単離された後さらに精製されていない、抽出プロセスの生成物である。いくつかの実施形態においては、精製されていない抽出物における、単離される生物活性物質の含有量は、単離される生物活性物質を含む精製されていない抽出物の質量を基準とする質量パーセントで、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%である。
【0127】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、他の物質から単離されて精製された、抽出プロセスの生成物または合成プロセスの生成物である。いくつかの実施形態においては、単離された生物活性物質の純度は、単離された生物活性物質を含む試料の質量を基準とする質量パーセントで、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%である。
【0128】
いくつかの実施形態によると、用語「単離された生物活性物質」は、それぞれの生物活性物質が異なる効果または類似する効果をもたらす、および/または、組み合わされたときに相乗効果を有する(それぞれの単独での効果の累積が、組み合わせたときの効果よりも小さい)、生物活性物質の組合せ、を意味する。
【0129】
いくつかの実施形態によると、「全体抽出」は、天然物の構成成分の可溶性画分を特定の溶媒に溶解させることができるように、天然物を処理するプロセスを意味し、この場合、水によって水性画分を抽出することができ、有機溶媒または不活性ガスによって有機画分を生成することができる。
【0130】
「選択的な抽出」は、選択された溶媒におけるそれぞれの溶解度に基づいて選択される本質的に1種類または複数種類の物質を含むペースト、樹脂、または粉末を生成する目的で、画分全体または抽出物全体をさまざまなステップおよび溶媒においてさらに処理し、これによって、本質的にいくつかの選択された主要成分(2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、または10種類の物質または化合物)(本明細書においては「共抽出物」と称する)からなる選択的抽出物を生成するプロセスである。
【0131】
全体抽出物および/または共抽出物および/または抽出・精製された1種類の物質は、それぞれ、単離された生物活性物質にすることができ、これは、(1種類または複数種類の)溶媒を実質的に除去することで(例えば蒸発させることで)、各溶媒に対して可溶性の物質を含む液体樹脂または乾燥粉末として、単離された生物活性物質を生成することによる。
【0132】
例えば、天然起源の栽培植物または品種改良された植物の試料は、1種類または複数種類の生物活性物質と、複数のさまざまな他の植物由来物質および不溶性物質を含みうるが、単離された生物活性物質の試料は、主として1種類の物質または化合物からなり、単離された生物活性物質の共抽出された試料は、試料の主成分であるいくつかの(2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、または10種類の)物質または化合物から主としてなる。それに対して微量成分および不純物は、質量パーセントで、試料の40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満である。
【0133】
生物活性物質が合成的に作成される実施形態においては、反応生成物に含まれる生物活性物質は、複数のさまざまな反応物質、副反応物、(1種類または複数種類の)溶媒、および他の物質と混ざっていることがあり、したがって、単離された生物活性物質の試料をさらに処理および精製して、単離された生物活性物質の試料が本質的に1種類の所望の物質または化合物からなる一方で、不純物の質量パーセントが、試料の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満であるようにする。
【0134】
いくつかの実施形態の文脈においては、単離された生物活性物質は、溶媒、不溶物、または担体を実質的に含まず、すなわち単離された生物活性物質は、溶液、乳状液、または懸濁液の中に存在するのではなく、また、他の単離された生物活性物質と組み合わされていない限りは、そのような他の物質と混ざっていない。組み合わされている場合、たとえいくつかの単離された生物活性物質が他の(1種類または複数種類の)単離された生物活性物質と一緒に溶解している、懸濁している、または乳状液に含まれていても、すべてが共送達される(co-delivered)ように意図されている。
【0135】
2種類以上の単離された生物活性物質が組み合わされる実施形態においては、この組合せは、本明細書に定義されている用語「単離された生物活性物質」に包含され、この場合、生物活性物質それぞれが、患者の肺に共送達されるように意図されている。本明細書において使用されている用語「共送達」は、2種類以上の生物活性物質が、1回の吸入ステップにおいて患者に送達される、および/または、1つの投薬ユニットの内部および/または表面に存在することを意味する。
【0136】
本明細書において使用されている用語「純粋な」は、1種類の特定の物質の量が、この物質とそれ以外の物質の混合物の合計量を基準としたとき、混合物の合計質量の90%より高い、91%より高い、92%より高い、93%より高い、94%より高い、95%より高い、96%より高い、97%より高い、98%より高い、99%より高い、99.5%より高い、99.9%より高い、または100%であることを意味する。
【0137】
本明細書に提示されている実施形態のいくつかによると、単離された生物活性物質としては、以下に限定されないが、
合成的に作成されて精製された(純度95%)生物活性物質、
2種類以上の個々に合成されて精製された(それぞれ純度95%)生物活性物質の組合せ、
微生物、植物、または動物から抽出された後に約90%の純度までさらに精製された天然起源の生物活性物質、または2種類以上の生物活性物質の組合せ(精製された抽出物)、
水溶液または有機溶媒(どちらか生物活性物質または生物活性物質の組合せの溶解度が高い方)において分画して乾燥させた後、さらに精製せずに使用される、微生物、植物、または動物の全体抽出物、
抽出物の何種類かの成分から1種類または複数種類の生物活性物質をさらに単離する目的で、さまざまな溶液または有機溶液において連続的に分画して乾燥させた後、さらに精製せずに使用される、微生物、植物、または動物の選択的抽出物、
それぞれが1種類または複数種類の生物活性物質を含む、2種類以上の精製された全体抽出物または選択的抽出物の組合せ、
1種類または複数種類の合成的に作成されて精製された生物活性物質と、それぞれが1種類または複数種類の生物活性物質を含む1種類または複数種類の精製された全体抽出物または選択的抽出物との組合せ、
が挙げられる。
【0138】
本明細書に開示されている方法は、最も受け入れられて普及している投与方法のいくつか(経口摂取や静脈/皮下注射など)を使用して、いくつかのタイプの生物活性物質を制御下に高い再現性で投与するときの問題に対処する。例えば、水性媒体や生理液に実質的に混ざらない疎水性の生物活性物質は、経口摂取または注射によって投与されたとき、低い吸収性、低い体内分布、低いバイオアベイラビリティを示すことがある。この技術分野において公知であるように、ある化合物が薬物として適切であることが判明する可能性は、その化合物が水性媒体においてある程度の溶解度を示す場合に高くなる。「リピンスキーの法則(ルールオブファイブ)」は、オクタノール-水-分配係数(logP)について言及し、化合物のLogPが5より小さいべきであるとし、5より大きいLogPを示す化合物は、ほとんどの薬物投与方法にとって疎水性が高すぎて、体内におけるその薬物の吸収および分布が良くないと考えられる。ただし、本開示の実施形態は、疎水性の生物活性物質に限定されず、したがって、LogPが5より小さい単離された生物活性物質も考えられることに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態においては、単離される生物活性物質は、1より大きいLogPを有する。
【0139】
本明細書に提示されている装置および方法は、高いLogP値を示す活性物質を含めて、その疎水性にかかわらず、気化させることのできる任意の単離された生物活性物質を投与するうえで有用である。いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、20~37℃の温度範囲において、3より大きい、4より大きい、5より大きい、6より大きい、7より大きい、または8より大きいLogP値を有する。
【0140】
本明細書に提示されている装置および方法は、疎水性の単離された生物活性物質を投与するうえで有用であり、なぜなら活性物質が気化され、気体(活性物質の蒸気)として吸入によって送達されるためである。
【0141】
いくつかの単離された生物活性物質の使用を制限する別の要因は、生物活性物質の物理的形態であり、すなわち単離された形態において、濃度の低い液体、粘性の液体、または固体である。
【0142】
本明細書に提示されている装置および方法は、粘性液体である活性物質を含めてその物理的形態にかかわらず、気化させることのできる任意の単離された生物活性物質を投与するうえで有用であると考えられる。いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、少なくとも10センチポイズ(cP)、少なくとも20センチポイズ(cP)、少なくとも30センチポイズ(cP)、少なくとも40センチポイズ(cP)、少なくとも50センチポイズ(cP)、少なくとも60センチポイズ(cP)、少なくとも70センチポイズ(cP)、少なくとも80センチポイズ(cP)、少なくとも90センチポイズ(cP)、少なくとも100センチポイズ(cP)、少なくとも200センチポイズ(cP)、少なくとも300センチポイズ(cP)、少なくとも400センチポイズ(cP)、少なくとも500センチポイズ(cP)、少なくとも1000センチポイズ(cP)、少なくとも2000センチポイズ(cP)、少なくとも5000センチポイズ(cP)の粘性、または10000センチポイズ(cP)より高い粘性、を有する。
【0143】
本明細書に提示されている方法および装置は、比較的高い沸点を有する生物活性物質を含めて幅広い範囲の単離された生物活性物質を気化するのに適している。いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、80℃より高い、100℃より高い、150℃より高い、200℃より高い、250℃より高い、300℃より高い、350℃より高い、400℃より高い、450℃より高い、500℃より高い、550℃より高い、600℃より高い、650℃より高い、700℃より高い、または750℃より高い、沸点を有する。
【0144】
本明細書に提示されている方法および装置は、気化性である限りはその物理的形態、疎水性、粘度、および/または沸点にかかわらず、幅広い範囲の気化性の単離された生物活性物質を気化させるのに適している。いくつかの実施形態の文脈において使用されている用語「気化性」は、気化させて吸入によって肺送達するうえでの適合性を定義する物質の特性を意味する。この特性は、物質の沸騰温度または昇華温度に相当し、80℃ないし100℃~750℃の範囲内とすることができる。
【0145】
いくつかの実施形態によると、再現可能な所定の治療量において患者に効果的に送達される単離された生物活性物質は、比較的高い沸点を有し、かつ粘性、粘度、粘着性が高く油状の(疎水性、LogPが5より大きい)液体であり、気相においては、意図的または不注意に、何らかの賦形剤、担体、または任意の他の不活性または望ましくない物質と一緒に投与されることはない。
【0146】
この技術分野において公知であるように、アサ科に属す植物には、ヒトにおいて有益な治療活性をもたらすことが判明している各種の気化性の生物活性物質が含まれる。いくつかの実施形態によると、生物活性物質は、大麻から抽出、精製されるカンナビノイド、または合成的に作成、精製されるカンナビノイドである、またはそのようなカンナビノイドを含む。いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、単離されたカンナビノイド、例えば、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビノール(CBN)、カンナビノジオール(CBDL)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビジバリン(CBDV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビトリオール(CBT)、およびこれらの任意の異性体および/または任意の組合せ、である。
【0147】
なお、上記以外の気化性の単離された生物活性物質も本開示の範囲内であることが意図されており、このような生物活性物質としては、例えば以下に限定されないが、抽出物からの天然起源の生物活性物質または合成起源の生物活性物質、例えば、サルビノリン、カチノン、プカテイン、ツジョン、ダミアニン、ブルボカプニン、カバラクトン、ラゴキリン、ラクツカリウム、グラウシン、エルギン、イボガイン、アポルフィン、レオヌリン、および、合成の気化性の単離された生物活性物質、例えば、アトロピン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニル、ヒドロモルフォン、メタドン、ミダゾラム、ナルブフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、オキシコドン、フェニトイン、レミフェンタニル、リザトリプタン、シルデナフィル、スフェンタニル、ゾルピデムが挙げられる。
【0148】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、テルペン、フラボノイド、窒素化合物、その他の天然起源の化合物および合成化合物を含んだ、生物活性物質の共抽出物または合成物質の組合せを含む。例えば、カンナビノイド、テルペン、およびフラボノイドのいくつかの組合せは、カンナビノイドの効果を調節する、またはカンナビノイド単体での効果と比較して相乗効果をもたらすことが判明している。
【0149】
テルペンおよびテルペノイドとしては、以下に限定されないが、Δ3-カレン、β-セリネン、β-ピネン、β-フェランドレン、β-ファルネセン(β-Famesene)、β-カリオフィレン、β-ピネン、β-オイデスモール、α-テルピノレン、α-ピネン、α-フェランドレン、α-フムレン、α-ベルガモテン、α-テルピネオール、α-テルピネン、α-ピネン、α-フムレン、α-グアイエン(t)、α-セドレン、α-ビサボロール、バレンセン(t)、トランス-オシメン、トランス-オシメン、トランス-カリオフィレン(trans-Caryophyllcnc)、テルピノレン、t-2-ピナノール(t)、セリナ-3,7-(11)-ジエン、セリナ-3,7-(11)-ジエン(t)、サビネン水和物、ネロール、ミルセン、ミルセン、メントール、リナロール、リモネン、リモネン、イソボルネオール、グアイオール、グアイア-1(10),11-ジエン(t)、ゲルマクレンB(t)、ゲラニオール、ファルネセン(t)、オイデスマ-7(11)-エン-4-オール(t)、エレメン(t)、シス-オシメン、シス-オシメン、カリオフィレン酸化物、カリオフィレン酸化物、樟脳、カンフェン、ボルネオール、(+)フェンコール、が挙げられる。
【0150】
フラボノイドとしては、以下に限定されないが、カンフラビンA、カンフラビンB、カンフラビンC、ビテキシン、イソビテキシン、アピゲニン、ケンフェロール、ケルセチン、ルテオリン、オリエンチンが挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態によると、生物活性物質は、上に挙げたカンナビノイドのいずれか1種の単離された異性体、例えばTHCの異性体である(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノールとしても知られている)である。単離されたドロナビノールは、THCの他の異性体と同様に、水溶性0.0028mg/mL(23℃)、LogP値5.648、沸点157℃、粘度85~140cPを示す。
【0152】
投薬ユニット:
1種類または複数種類の気化性の単離された生物活性物質を吸入によって投与する本方法は、そのような生物活性物質の化学的特性および物理的特性の理由から、特別に設計された投薬ユニット(本明細書においては同義の用語としてカートリッジとも称する)を使用することによって実施され、この投薬ユニットは、少なくとも1種類の生物活性物質を気化させて使用者(例えば患者)に吸入させることができるように設計および構成されている。上述したように、生物活性物質は、いくつかの実施形態においては、使用者への経口摂取および/または注射では投与の効果が小さい、または投与が不可能となる原因である1つまたは複数の特性を特徴とする、単離された生物活性物質とすることができる。
【0153】
いくつかの実施形態の一態様によると、少なくとも1種類の生物活性物質を使用者に肺送達するための投薬ユニットであって、パレットと、パレットの表面の少なくとも一部分に熱的に接触しておりその部分全体にわたる電気抵抗加熱要素(本明細書においては同義の用語として抵抗加熱要素(例:金属抵抗加熱要素)とも称する)と、を含み、パレットが、固体の担体材料を備えており、所定の量の生物活性物質が、担体材料の内部および/または表面に存在する、投薬ユニット、を提供する。
【0154】
いくつかの実施形態においては、抵抗加熱要素は、パレットの少なくとも2つの向かい合う表面の全体にわたる。
【0155】
図1Aおよび
図1Bは、いくつかの実施形態による投薬ユニット(投薬物質気化カートリッジ、またはカートリッジ)の概略図を示している。投薬ユニット2300は、ハウジング2301の一部を形成しているフレーム2308における開口部2303に嵌め込まれるパレット2304と(
図1A)、パレット2304の少なくとも2つの向かい合う表面に熱的に接触しておりこれらの表面の全体にわたる抵抗加熱要素2306と(
図1B)、を有する。
図1C~
図1Mは、いくつかの実施形態による、投薬ユニットの代替構造の概略図を示している。
【0156】
本明細書において使用されている用語「パレット」は、それ自体では取り扱う、含める、調合する、および/または送達するうえで分散性が高すぎる物質(例:液体、ペースト、微粉末、微粒子、粘度の高い樹脂)を、取り扱う、保持する、格納する、調合する、および送達するための基質または基盤を構成する合成物を意味する。パレットによって、例えば、粘度の高い液体を調合することが可能になり、さらに、その液体をパレットから気化させた後に送達することが可能になる。
【0157】
オプションとして、液体、ペースト、または粘度の高い樹脂は、パレットに含めた後に乾燥する、またはそれ以外の方法で固体になる。いくつかの実施形態によると、パレットは、熱を加えたときに残留して患者に送達されない物質を含む。
【0158】
実施形態によると、パレットは固体の担体材料を含み、この担体材料は、単離された生物活性物質をそこから気化させて吸入できるように選択、設計されている。担体材料は、気化性の生物活性物質を担持および供給する目的に使用されるため、いくつかの化学的基準および物理的基準によって定義され、そのような基準として以下の1つまたは複数が挙げられる。
【0159】
少なくとも、予測される最も低い保管温度から動作温度までの温度範囲内、場合によってはいくらか広い確実な範囲(例:保管温度より50℃低い温度から、動作温度より約50℃高い温度までの間)内では、生物活性物質と接触しているときに生物活性物質に対して実質的に非反応性(化学的に不活性)であること。いくつかの実施形態によると、保管温度は、約-80℃、または約-40℃、または約-20℃もの低温であってもよいが、例えば室温(例:18~26℃)など、より高い温度およびより低い温度も本開示の範囲内であるものと意図されている。担体材料は、(少なくとも)生物活性物質の最高気化温度(またはわずかに、例えば50℃高い温度)まで、または生物活性物質の燃焼温度および/または分解温度までの温度においては、化学的に不活性であり、しかしながら、より高い温度も本開示の範囲内であるものと意図されている。
【0160】
燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度が、生物活性物質の燃焼/分解温度よりも高いこと。しかしながら、より高い燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度を有する担体材料も、本開示の範囲内であるものと意図されている。
【0161】
少なくとも0.1W/mKの熱伝導率を有する(担体はパレット全体にわたり熱を容易に放散させることができる)こと。
【0162】
少なくとも10μΩ・mの電気抵抗率を有する(抵抗加熱要素を通過する電流を短絡させるために担体の容量を下げる)こと。
【0163】
担体材料および生物活性物質を備えた合成物(充填されたパレット)として、充填されたパレットは、実質的に通気性である。言い換えれば、充填されたパレットは、吸入された気体(活性物質の蒸気を運ぶか否かにかかわらず一般には周囲空気)を通過させることのできる構造を特徴とする。いくつかの実施形態によると、パレットの構造は、吸入された気体を通過させることを特徴とし、この場合に通過とは、少なくとも1~5kPaの引張り真空下における、少なくとも毎分2リットル(L/分)の気体、少なくとも1.5L/分の気体、少なくとも1L/分の気体、少なくとも0.8L/分の気体、または少なくとも0.5L/分の気体によって定義され、引張り真空は、使用者の肺に空気が吸い込まれることによって発生する引張力に相当し、健康な成人における肺の最大吸込み気圧の平均値(average pulmonary peak)は約25mbarである。いくつかの実施形態によると、パレットの構造は、下限流量0.5L/分、パレット付近の最大負(引張り)圧25~40mbarまたは1~5kPaの負圧(-1~-5kPa)を生じさせ得ることを特徴とする。
【0164】
パレットを通気性にする目的で、例えばパレットを、一体の多孔性基質として形成することができ、またはパレットは、高密度または低密度に押し固められた複数の個々の多孔性粒子および/または無孔性粒子を備える。パレットが複数の個々の(結合していない)粒子から作製されているいくつかの実施形態においては、一般にパレットは、気体がパレットを通過できるように2つの向かい合う面に開口部を有する障壁によって囲まれ、したがって粒子はこれらの開口部より大きい。
【0165】
いくつかの実施形態によると、パレットの構造は、少なくとも1000平方メートル/グラム(m2/g)の表面/質量比を特徴とする。
【0166】
いくつかの実施形態によると、パレットの構造は、少なくとも500平方メートル/ミリリットル(m2/mL)の表面/体積比を特徴とする。
【0167】
より具体的には、いくつかの実施形態の文脈において使用されている用語「担体材料」は、パレットに充填する気化性の生物活性物質(すなわち熱によって気化させる物質)を物理的に支持する固体のパレット材料である。
【0168】
いくつかの実施形態によると、生物活性物質は、電気抵抗加熱要素に塗布されるのではなく、担体材料の内部および/または表面に塗布される。いくつかの実施形態においては、生物活性物質と抵抗加熱要素は、物理的に直接接触せずに、少なくともパレットを介して熱的に接触する。
【0169】
いくつかの実施形態においては、担体材料、または担体材料を備えているパレットは、以下の特性、すなわち、
化学的な適合性および受容性、
比較的高い燃焼/分解/溶融温度、
物理的な一体性、同質性、および全体性(wholeness)、
高い熱伝導率、
低い電気伝導度、の少なくとも1つを特徴とする。
【0170】
いくつかの実施形態の文脈においては、化学的な適合性および受容性は、実質的に化学的に安定かつ不活性であること、清浄であること、抽出性または溶出性の物質が存在しないこと、機械的に完全であること、という要件とみなすことができる。
【0171】
担体材料は、本明細書において提供される吸入型投薬ユニット(カートリッジ)に含まれる生物活性物質および構成要素と、吸入器装置の他の構成要素とに対して、少なくとも装置およびカートリッジの保管条件から動作条件までの範囲全体にわたり、化学的に安定かつ不活性(非反応性)であることが要求される。いくつかの実施形態においては、パレットおよび/または投薬ユニットを製造する工程中の化学的不活性性も要求され、例えば、工程において使用されうる極性溶媒や非極性溶媒と接触するとき、および/または、製造時に適用される温度範囲または他の条件において、安定かつ化学的に不活性であることが要求される。化学的な安定性および不活性性は、本明細書において提供されるカートリッジの製造工程中、保管時、および使用時に化学的変化または物理的変化を受ける担体材料またはその構成物質の割合、および/または、当業者に公知であり利用可能な薬局方および他の一般的に使用されている標準規格および慣習に従って、本明細書において提供される投薬ユニットの使用時に吸入されることが許可される、担体材料から発生する物質(本明細書では「浸出物および溶出物」と称する)の量、によって定義することができる。当業者は、例えば、PQRI(Product Quality Research Institute:製品品質研究所)によって公的に提供されている出版物、非特許文献2などの教本、非特許文献3などの科学的ピアレビューに記載されている、一般的に適用されているガイドラインに従って、上記の要件を守ることができる。
【0172】
さらに、担体材料は、生物活性物質が気化する温度、またはそれよりわずかに高い温度において耐熱性であるように選択する。言い換えれば、担体材料は、投薬ユニットの作製時に使用される温度よりも高く、かつ、吸入時に投薬ユニットを使用して生物活性物質を気化させるときの温度よりも高い、燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度、を示すように選択する。例えば、約250℃の沸点を有する生物活性物質を使用する実施形態では、この生物活性物質を気化させるのに使用される温度まで加熱されるときに化学的および機械的に安定であるように、担体材料を選択し、したがって、燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度が250℃より高い、270℃より高い、290℃より高い、300℃より高い、320℃より高い、350℃より高い、400℃より高い、450℃より高い、500℃より高い、600℃より高い、700℃より高い、または750℃より高い、担体材料を選択する。例えば、石英、ガラス、セラミック材料、およびいくつかの有機/無機高分子は、生物活性物質の沸点である約250℃よりも高い燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度を有する。
【0173】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、1種類または複数種類の物質から作製され、これらの物質としては、以下に限定されないが、ガラス、石英、セラミック複合材料、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ、炭素種(カーボンブラック、活性炭、グラフェン、黒鉛、フラーレンなど)、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、が挙げられる。
【0174】
物理的な一体性、同質性、および全体性の要件は、本明細書によって提供される投薬ユニットのパレットを作製するために取り扱って使用できる程度に物理的な完全性および機械的な完全性(脆性ではなく、砕けることもない)を維持するように担体材料が選択されるという意味において、化学的な受容性に対応する。言い換えれば、担体材料は、吸入型投薬ユニットの作製時にパレットに加工されるとき、または吸入型投薬ユニットの使用時に、大きさおよび形状が不均一な(特に、担体材料粒子の意図したサイズより小さい)粒子に割れたり砕けることがないように、選択する(後からの多孔性の要件を参照)。したがって、本明細書に提示されている投薬ユニットを作製する工程時に担体材料にかかる応力と、本明細書に説明されているように投薬ユニットを使用するときに投薬ユニットの担体材料がさらされる温度とを考慮しながら、脆性、延性、および延性-脆性遷移温度特性(これらの特性は、材料化学の技術分野における当業者に公知であり入手できる)に従って、担体材料を選択することができる。
【0175】
通気性(担体材料の多孔率、または担体材料を備えているパレットの特性)は、いくつかの実施形態によると、担体材料の表面および/または内部に生物活性物質が塗布されているときに吸入圧力下でパレットを通過できる空気流に基づいて定義される。したがって、担体材料の表面または内部に所定の量の生物活性物質が塗布されているときに、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で、少なくとも毎分0.5リットル(0.5L/分)ないし1L/minの空気流が得られるパレットを形成するうえで適した担体材料を選択する。いくつかの実施形態においては、担体材料は複数の粒子の形をとり、粒子は、本明細書に説明されているように押し固められてパレットを形成している状態で間を気体が流れることができる形状を有する。いくつかの実施形態においては、担体材料の粒子は、ビーズまたは回転楕円体の形状である。なお、回転楕円体形状の粒子は、本明細書において提供されている投薬ユニットを作製する工程において取扱いが容易である。
【0176】
担体材料の粒子としては、押し固めて通気性のパレットを形成することのできる繊維形状、箔形状、または任意の他の形状の粒子も考えられる。いくつかの実施形態においては、担体材料の粒子は、投薬ユニットの一部を形成している電気抵抗加熱要素(例:金属抵抗加熱要素)を備えた通気性の保持メッシュまたはウーブンメッシュ(woven mesh)における孔の大きさよりも、例えば10ミクロン大きい、または15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、または50ミクロン大きい。
【0177】
いくつかの実施形態においては、担体材料は、パレットを構成する単一のモノリシックな通気性の基質という形をとる。通気性の基質は、一般に焼結と称されるプロセスにおいて担体材料の粒子を溶かすことによって、および/または、当業者の知識の範囲内における、固体発泡体または他の通気性基質を形成するための任意の他の方法によって、形成することができる。
【0178】
パレットを形成する担体材料は、その表面または内部に塗布された生物活性物質を効率的かつ均一に加熱して気化させることが可能である熱伝導率を有するように選択する。したがって、担体材料の熱伝導率は、紙および他の植物由来の乾燥材料(アサの綿毛(cannabis floss)など)の熱伝導率(約0.01W/mK)よりも高い。例えば、担体材料の熱伝導率は、少なくとも0.1W/mK、少なくとも0.2W/mK、少なくとも0.3W/mK、少なくとも0.4W/mK、少なくとも0.5W/mK、少なくとも0.6W/mK、少なくとも0.7W/mK、少なくとも0.8W/mK、少なくとも0.9W/mK、少なくとも1W/mK、少なくとも5W/mK、少なくとも10W/mK、少なくとも20W/mK、少なくとも50W/mK、または少なくとも100W/mKである。例えば、シリコーン注型樹脂を含む担体材料は0.15~0.32W/mKの熱伝導率を示し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む担体材料は約0.25W/mKの熱伝導率を示し、ガラスを含む担体材料は約1W/mKの熱伝導率を示し、石英を含む担体材料は約3W/mKの熱伝導率を示し、Cr/Ni鋼(Cr:18%、Ni:8%)を含む担体材料は約16.3W/mKの熱伝導率を示す。
【0179】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、天然の植物性材料以外であり(ではなく)、化学的に処理されていない天然の植物性材料以外であり、機械的に加工されていない天然の植物性材料以外である。いくつかの実施形態によると、担体材料は、化学的に処理されていない天然の植物性材料および/または機械的に加工されていない天然の植物性材料を含まない。例えば、紙は、化学的に処理されて機械的に加工された植物性材料と定義することができるが、加圧してパレットにされる植物性材料は、本開示の文脈においては、化学的に処理されていない植物性材料とみなす。
【0180】
組み込まれている抵抗加熱要素または抵抗メッシュではなく担体材料に電流が流れることを回避するため、パレットを形成する担体材料は、低い電気伝導度または高い抵抗を有するように選択する。例えば、担体材料は、20℃における1μΩ・m(これは電気抵抗加熱要素に使用されるニクロムの抵抗にほぼ等しい)より高い抵抗を示すように選択する。したがって、担体材料の抵抗は、少なくとも10μΩ・m、少なくとも50μΩ・m、少なくとも100μΩ・m、少なくとも200μΩ・m、少なくとも400μΩ・m、少なくとも600μΩ・m、少なくとも800μΩ・m、または少なくとも1000μΩ・m(1mΩ・m)である。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む担体材料は約1023~1025Ω・mの抵抗を示し、ガラスを含む担体材料は約1011~1015Ω・mの抵抗を示し、溶融石英を含む担体材料は約7.5×1017Ω・mの抵抗を示す。
【0181】
いくつかの実施形態によると、担体材料は、例えば、以下に限定されないが、ガラス(複数の個々のビーズ、または焼結/フリット処理された通気性のガラス母材、またはゾルゲル前駆物質から得られるガラスの形式)、石英(複数の個々のビーズ、または通気性の溶融石英母材の形式)、セラミック複合材料(例えば炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al2O3)、および/またはムライト(Al2O3-SiO2)を含む)(複数の個々のビーズ、または通気性の溶融セラミックマトリックス、または通気性のセラミックマトリックス複合材料の形式)、高融点高分子(例:PTFE、シリコーン樹脂)(複数の個々の高分子ビーズ、または通気性の溶融高分子マトリックス、またはエマルジョン鋳型/由来の高分子発泡体マトリックスの形式)などの物質から形成することができる。いくつかの実施形態によると、担体材料は、液晶高分子(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ウルテム(登録商標)、テフロン(登録商標)、トーロン(登録商標)、アモデル(登録商標)、ライトン(登録商標)、フォートン(登録商標)、Xydear、レーデル(登録商標)、ユーデル(登録商標)、ポリプロピレン、PROPYLUX(登録商標)、ポリスルホン、または別の高分子材料から形成することができる。
【0182】
なお、いくつかの実施形態によるパレットを機械的に支持するハウジング(例えば
図1Aにおいてハウジング2301のフレーム2308における開口部2303内に囲むことによるパレット2304の支持: 詳細は後述する)を形成する材料は、いくつかの基準を用いて選択し、これらの基準は、担体材料の選択に従い、例えば、化学的な受容性の基準、比較的高い燃焼/分解/溶融温度の基準、低い電気伝導度の基準などである。担体材料の選択に適用される他の基準(例えば、物理的な一体性、同質性、および全体性、多孔性、高い熱伝導率など)は、ハウジング材料の選択には関連性が薄い、または要求されない。
【0183】
パレットにおける担体材料の内部および/または表面に塗布される生物活性物質の量は、いくつかの実施形態によると、患者/使用者に肺送達する(1種類または複数種類の)単離された生物活性物質の所定の気化量に対応し、すなわち、気化させる活性物質の貯蔵場所はパレットであるため、パレットには、気化、吸入させる活性物質の所望量を気化させて送達するのに十分な量の活性物質を含める。パレット内の活性物質の量は、20~500mg、10~200mg、9~150mg、8~100mg、7~50mg、5~20mg、1~10mg、10~70mg、10~60mg、12~50mg、12~40mg、15~40mg、12~30mg、または12~25mgの範囲とすることができる。
【0184】
カートリッジアセンブリ:
いくつかの実施形態においては、単離された生物活性物質は周囲温度より高い温度で気化し、その温度に達するのに外部からの相当な熱入力を必要とする。いくつかの実施形態においては、気化温度に達するまでの時間は、例えば約1000msec~5secの範囲内、例えば250msec、500msec、1000msec、または別の、より大きい、より小さい、または中間の値である。
【0185】
いくつかの実施形態においては、投薬ユニットまたはカートリッジに含まれる加熱要素は、金属(例えばニクロム、FeCrAl、白銅、および/またはステンレス鋼)を含む抵抗加熱要素である。オプションとして、加熱要素は、パレットに熱的に接触した状態で組み込まれている。熱的な接触には、例えば、直接接触している状態、または、高い熱伝導率を可能にする(例えば、銅、アルミニウム、真ちゅう、鋼などの高い熱伝導性材料からなる、および/または、約10μm未満、20μm未満、25μm未満、50μm未満、または別の、より大きい、より小さい、または中間の厚さの薄壁構造を有する)熱伝達層、を介して接触している状態、が含まれる。いくつかの実施形態においては、熱的な接触には、加熱要素のうちパレットを覆う部分の熱放射角度の実質的に全体(例えば90%より大きい、95%より大きい、99%より大きい、または別の、より大きい、より小さい、または中間の値)とパレットとが対応する十分な近さに、パレットと加熱要素が並置されている状態が含まれる。いくつかの実施形態においては、電極に印加されるピーク電流は、約1~10アンペアの範囲内であり、例えば約1アンペア、2アンペア、4アンペア、6アンペア、または別の、より高い、より低い、または中間の電流である。
【0186】
いくつかの実施形態においては、熱的な接触は、加熱要素が、パレットの1つまたは複数の表面(例えばパレットの1つの面、または表面積が最大である2つの向かい合う表面)全体にわたっており、それらの面に熱的に接触している状態、を含む。いくつかの実施形態においては、熱的な接触は、加熱要素が少なくとも部分的にパレットに埋め込まれている状態を含む。
【0187】
いくつかの実施形態においては、加熱要素は通気性である(空気を通過させることができる)。いくつかの実施形態においては、パレットは通気性である。通気性とは、例えば、吸込み圧力(引張力)(吸入によって発生する吸込み圧力など)下で、および/または、カートリッジの吸入側とは反対側から発生する陽圧下で、周囲温度における空気が、パレットおよび加熱要素の加熱されたアセンブリを通過する状態にあることである。
【0188】
いくつかの実施形態によると、加わる圧力は、4~20mmHg(約5~30mbar)、10~25mmHg、5~30mmHg、25~40mmHg、30~50mmHg範囲内、または同じ、より高い、より低い、および/または中間の境界値を有する別の範囲内である。
【0189】
いくつかの実施形態においては、加熱要素は、約180度の屈曲部を備えており、したがって加熱要素は、パレットをその少なくとも2つの面において囲むクリップ形状および/またはU字形状に形成されている。オプションとして、パレットのこれら2つの面それぞれは、加熱要素の表面と熱伝導的に接触している。オプションとして、カートリッジにおける加熱要素は、U字形状の2つの面同士が接触しないように配置されている。オプションとして、投薬ユニット加熱アセンブリによる加熱要素への電流の印加は、U字形状の(接点受け入れ領域を備えた)2つの端部に、または端部付近で行われ、したがってパレットの2つの面において同時に加熱を行うことができる。いくつかの実施形態においては、加熱要素への電流の印加は、カートリッジの片側または両側においてパレットの両面における接点受け入れ領域に接続することによる。加熱要素は、オプションとして、それぞれが独立して電流を受け取る2つ以上の部分に分割される。これに代えて、加熱要素は、単一の部品(オプションとして、パレットを完全に囲む部品)として設けられ、このとき電極を加熱要素の接点受け入れ領域に挿入することができ、したがってパレットに熱的に接触している加熱要素の範囲全体にわたり電位が発生する。
【0190】
いくつかの実施形態の一態様は、パレットおよび加熱要素とともにフレームを提供することに関する。いくつかの実施形態においては、フレームは、パレットを受け入れる開口部(投薬室)を備えている。いくつかの実施形態においては、投薬室の幅および長さで囲まれる表面積は、約20~100mm2の範囲内、例えば約25mm2、50mm2、66mm2、80mm2、100mm2、または別の、より大きい、より小さい、または中間の表面積である。いくつかの実施形態においては、この開口部領域は、一方の側において開いている。オプションとして、開口部領域の開いている側は、U字形状の加熱要素が取り付けられることによって閉じられている。
【0191】
いくつかの実施形態においては、フレームの開口部の寸法は、例えば約6mm×10mmであり、フレームによって約1mm厚の体積が画成される。オプションとして、開口部の面積は、約20~100mm2の範囲内、例えば20mm2、40mm2、50mm2、60mm2、80mm2、または別の、より大きい、より小さい、または中間の正面面積である。開口部は、オプションとして、実質的に正方形(例えば約8mm×8mm)として形成され、オプションとして、開口部は矩形(例えば長方形)であり、辺の比が、例えば1:2、1:3、1:4、1:10、または別の、より大きい、より小さい、中間の、または逆の、辺長比である。オプションとして開口部の寸法は、例えば約30mm×2mmである。いくつかの実施形態においては、開口部は、円形または楕円形である、またはフレームの範囲内の任意の形状および寸法を有する。
【0192】
いくつかの実施形態においては、開口部を有するフレームは、次の役割、すなわち、
・ パレットを、カートリッジの全体的な寸法に対する再現可能な位置に配置する。
・ パレットを機械的に安定させる(例えば、縁部における支持、曲げに抗する剛性、パレットの固定)。
・ カートリッジと係合する形状を有する機械的要素によってカートリッジを移動させることを可能にする、ラッチ/固定要素および/またはラッチ/固定面を提供する
・ 加熱要素の2つの平行な面が互いに接触することを防止する目的でこれらの面の間を絶縁する。
・ 加熱要素をカートリッジに密着させる/固定する/埋め込むための表面領域および/または体積領域を提供する。
のうちの1つまたは複数を果たす。
【0193】
いくつかの実施形態においては、開口部の一般的な機能として、製造時に投薬ユニットの骨組みを形成する、および/または、投与時に投薬ユニットの操作を支援することが含まれる。
【0194】
いくつかの実施形態においては、フレームは、気化温度において実質的に耐熱性(例えば、燃えない、溶解しない、寸法的に安定している)である高分子またはセラミックを含む。いくつかの実施形態においては、高分子は、例えば、液晶高分子(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ウルテム(登録商標)、テフロン(登録商標)、トーロン(登録商標)、アモデル(登録商標)、ライトン(登録商標)、フォートン(登録商標)、Xydear、レーデル(登録商標)、ユーデル(登録商標)、ポリプロピレン、PROPYLUX(登録商標)、ポリスルホン、または別の高分子材料を含む。
【0195】
いくつかの実施形態においては、ラッチ/固定要素は、投薬ユニット引込み部の移動アームまたは他の投薬ユニット移動機構に取り付く形状を有する移動アーム連結領域を備えている。
【0196】
いくつかの実施形態においては、パレットは、組み立てられたカートリッジ内で、開口部全体にわたる加熱要素によって完全に覆われている。いくつかの実施形態においては、加熱要素は、自身が開口部を完全に覆うことなく開口部全体にわたり延在する(例えば、リボンの巻き線の間に隙間のあるリボン加熱要素が設けられる)。いくつかの実施形態においては、閉じ込め仕切り(または閉じ込め障壁)の役割を果たす別の要素が設けられる。オプションとして、閉じ込め仕切りは、加熱要素およびパレット両方の上、および/または、加熱要素とパレットとの間に配置される。
【0197】
いくつかの実施形態の一態様は、パレットおよび加熱要素がフレーム内に配置されている形式における上述した投薬ユニットを製造する工程に関する。
【0198】
いくつかの実施形態においては、本工程は、
担体材料に生物活性物質を接触させるステップと、
生物活性物質が内部および/または表面に塗布されている担体材料を備えたパレットを形成するステップと、
パレットをその少なくとも1つの面において電気抵抗加熱要素によって覆うステップと、
を含む。
【0199】
上述したように、パレットは、複数の個々の粒子の形をとる、または一体の通気性基質の形をとることができ、これらの代替形態のそれぞれにおいて、担体材料を(1種類または複数種類の)生物活性物質に浸す、担体材料に(1種類または複数種類の)生物活性物質を噴霧する、および/または、担体材料の表面を(1種類または複数種類の)生物活性物質によってコーティングすることによって、またはそれ以外の方法によって担体材料に(1種類または複数種類の)生物活性物質を塗布することによって、担体材料に(1種類または複数種類の)生物活性物質を接触させる。
【0200】
(1種類または複数種類の)生物活性物質を塗布するステップは、パレットを作製する前、作製している間、および/または作製した後に、行うことができる。複数種類の単離された生物活性物質を塗布するときには、これらの生物活性物質を同時に、および/または連続的に塗布することができる。
【0201】
(1種類または複数種類の)生物活性物質を塗布するステップは、例えば、単離された(純粋な)液体、または生物活性物質(溶解液体または溶解固形物とすることができる)の溶液のいずれかとしての、液体形態の生物活性物質を使用して行うことができる。(1種類または複数種類の)生物活性物質の溶液を使用するときには、本工程は、担体材料またはその一部の内部および/または表面に単離された生物活性物質のコーティングが残るように、溶液の溶媒を蒸発させるステップ、をさらに含むことができる。
【0202】
いくつかの実施形態においては、複数の粒子からなるパレットを形成するプロセスは、
(1種類または複数種類の)単離された生物活性物質が内部および/または表面に塗布された担体材料の複数の粒子を、投薬室内に平たい表面上に配置するステップと、
複数の粒子が水平になるまで平たい表面を振動させるステップと、
水平になった複数の粒子を加圧してパレットを形成するステップと、
を含む。
【0203】
いくつかの実施形態においては、一体の通気性基質からなるパレットを形成するプロセスは、担体材料から一部分を切り取って、一体の通気性基質を形成するステップ、を含む。より大きい材料片から担体材料を切り取る実施形態においては、担体材料を切り取る前に、または切り取った後に、担体材料に(1種類または複数種類の)生物活性物質を塗布することができる。
【0204】
いくつかの実施形態においては、一体の通気性基質からなるパレットを形成するプロセスは、最終的なパレットの反転形状を有する金型の中で担体材料の複数の粒子を加圧して粒子を通気性基質に一体化するステップ、を含み、このようなプロセスを融着または焼結と称することができる。このような場合、(1種類または複数種類の)生物活性物質を塗布するステップは、加圧するステップの後に行う。
【0205】
いくつかの実施形態においては、測定された量の単離された生物活性物質が塗布された担体材料(充填された担体材料と称する)の、測定された量の粒子を、投薬室内に配置する。いくつかの実施形態においては、充填された担体材料の測定された量は、例えば、約1~100mgの範囲内である。いくつかの実施形態においては、投薬室は、パレットの形成時にパレットの範囲(例えばパレットの幅および長さの境界)が投薬室の境界によって制限されるようなサイズを有する。
【0206】
いくつかの実施形態においては、測定された量の充填された担体材料を、投薬室を振動させることによって水平にする。オプションとして、この振動の振幅は、約0.1mm~1.2mmの範囲内、例えば0.5mmである。振動の周波数は、例えば約20~300Hzの範囲内(例えば30Hz、45Hz、60Hz、75Hz、または別の、より高い、より低い、または中間の周波数)である。振動の持続時間は、例えば、100~1100msecの範囲内(例えば約300msec、400msec、500msec、800msec、または別の、より長い、より短い、または中間の時間)から選択する。オプションとして、充填された担体材料が投薬室から落下することを防ぐため、振動させる前に投薬室を固定する。
【0207】
いくつかの実施形態においては、水平にされた充填された担体材料から、加圧要素による圧縮によって、パレットを形成する。いくつかの実施形態においては、充填された担体材料を、約200~1500μmの範囲内の厚さ、または同じ、より大きい、より小さい、および/または中間の境界値を有する別の範囲内の厚さのパレットに、圧縮する。
【0208】
「空の」投薬ユニット:
いくつかの実施形態の一態様は、生物活性物質を充填せずに、パレットおよびオプションとしての加熱要素とともにフレームを提供することに関する。いくつかの実施形態においては、投薬ユニットのパレットの内部/表面に生物活性物質を塗布しないことを除いて、本質的に本明細書に記載されているように投薬ユニットを作製する。そのような「空の」投薬ユニットのパレットの内部/表面に生物活性物質を充填した時点で、その「充填された」投薬ユニットを、本質的に本明細書に記載されているように使用して生物活性物質を肺送達することができる。
【0209】
いくつかの実施形態においては、空の投薬ユニットは、例えば投薬ユニットの中のパレットに噴霧または液滴を導くことによって、充填することができる。オプションとして、充填は、加熱要素が取り外されているとき、または加熱要素を取り付ける前に行う。いくつかの実施形態においては、加熱要素および/またはフレームを含めて投薬ユニットの全体にわたり、生物活性物質を塗布する。オプションとして、このような場合、フレーム(場合によってはフレームおよび加熱要素)は、液体形態および/または乾燥形態の生物活性物質をはじく傾向にあるかまたは生物活性物質との接触を維持する傾向の低い材料からなる、またはそのような材料を含む。
【0210】
いくつかの実施形態においては、投薬ユニットのフレームからパレットを取り外し、単離された生物活性物質を、本明細書に記載されているようにパレットの表面および/または内部に塗布し、パレットを再びフレームに取り付けることによって、空の投薬ユニットを充填することができる。オプションとして、パレットの内部/表面に生物活性物質を充填する間に加熱要素に生物活性物質が塗布されないように、パレットを加熱要素から取り外す。
【0211】
投薬ユニットの供給器および活性化:
いくつかの実施形態の一態様は、一体化された加熱要素とともにパレットを担持する投薬ユニットを、把持室(気化性の単離された生物活性物質を物質送達路に閉じ込めながら加熱要素を作動させる)の中に位置決めして活性化させることに関し、したがって、投薬ユニットを位置決めして動作させる動作ユニットにさらに関する。
【0212】
いくつかの実施形態においては、位置決めは、(例えばカートリッジ移動機構によって)カートリッジを移動通路に沿って移動させることによる。いくつかの実施形態においては、把持室は、カートリッジをその両側において囲む構造であって、画成される内部空洞内にカートリッジを密封し、さらにカートリッジの加熱要素との電気的接触を形成する構造、を備える。オプションとして、電気的接触は、カートリッジの両側に形成される。オプションとして、電気的接触は、カートリッジを気化装置の電極に対して位置決めすることによって定義されるカートリッジの側面上の位置に形成される。オプションとして、加熱要素との電気的接触を形成するための接触パッドが、加熱要素から延びている。
【0213】
いくつかの実施形態の一態様は、物質気化器と組み合わせて使用するカートリッジ容器に関し、物質気化器は、
・ 投薬ユニット(カートリッジ)を物質気化器の中に受け入れるため、カートリッジ容器に取り付けられる、および、
・ 用量を投与するため、カートリッジ容器から取り外される。
【0214】
いくつかの実施形態においては、投薬ユニットの供給を制御するための連動機構の一部として、着脱式の物質気化器を使用する。例えば、いくつかの実施形態においては、前に使用されたカートリッジが供給容器に戻るまでは新しい投薬ユニットの抜き取りを防止する連動動作の一部として、物質気化器を使用する。
【0215】
いくつかの例の図解:
本明細書には、上に挙げた要素の複数の異なる実施形態の例と、組み立てられた物質投与ユニットの実施形態の例(これらの要素の少なくとも1つを省いてある)とを記載してある。なお、オプションとして、組み立てられた投薬ユニットの実施形態においては、異なる要素の実施形態が、別の組合せとしても組み合わされる(例えば、加熱要素の任意の設計とフレームの任意の設計を組み合わせる)ことを理解されたい。
【0216】
図1Aおよび
図1Bを参照し、これらの図は、いくつかの実施形態による、分解した状態および組み立てた状態の投薬ユニット2300(投薬物質気化カートリッジ)の概略図である。さらに
図1C~
図1Mを参照し、これらの図は、いくつかの実施形態による、投薬ユニットの代替構造2350、2360、2370、2380、2390、および2395を概略的に示している。
図1C、
図1E、
図1G、
図1J、および
図1Lは分解した状態の投薬ユニットを示しており、
図1D、
図1F、
図1H、
図1K、および
図1Mは組み立てた状態の投薬ユニットを示している。
【0217】
いくつかの実施形態においては、単離された生物活性物質の投薬量が、投薬ユニット2300の表面および/または内部に充填されている。投薬ユニット2300は、オプションとして、
パレット2304(オプションとして、迅速に気化させるために例えば平たく形成されている)、
パレット2304の機械的支持部(例えば、ハウジング2301のフレーム2308における開口部2303の中に囲むことによる支持部(オプションとしてフレーム形状である))、
投薬ユニット2300の移動を容易にする手段(例えば顎状ラッチ(latch mandibles)2302)、および/または、
パレット2304を気化させる手段(例えば抵抗加熱要素2306)、
を備えている。
【0218】
投薬ユニットは、使い捨て型である。使い捨て型の投薬ユニットの潜在的な利点として、生物活性物質の残渣を閉じ込めて処分できること、投薬量の支持部と移動部が近くに一体化されているため、投薬装置の中で投薬量を高い信頼性で移動させることができること、投薬システムのうち時間とともに性能を低下させうる条件にさらされる部分(気化用の加熱要素など)のメンテナンスおよび/またはチェックの必要性が減少すること、が挙げられる。
【0219】
オプションとして、投薬ユニットは、1回の吸入において使用される。単回使用型の投薬ユニットの潜在的な利点として、吸入器の設定時に生物活性物質の気化量を制御するうえでの精度および/または信頼性が向上する。
【0220】
例えば、充填された担体材料における単離された生物活性物質の濃度および/または拡散性を、製造時に、ある程度の精度で制御することができる。一般的には、装置の生成量(例えば気化して吸入される生物活性物質の量)の変動の程度を、意図した生成量の±15%未満の許容差に維持することができる。装置の生成量の変動に影響しうる他の要因としては、周囲条件、使用者の実際の使用方法、使用者の現在の健康状態が挙げられる。
【0221】
いくつかの実施形態においては、投薬ユニット2300は、開口部または受け入れ室2303を有するハウジング2301を備えている。オプションとして、ハウジング2301は、平たく細長い帯状部を備えており、受け入れ室2303は、この帯状部(フレーム2308)によって囲まれている開口部を備えている。投薬ユニット2300の作製時、パレット2304を受け入れ室2303に挿入する。オプションとして、パレットが受け入れ室2303の平たい形状に適合するように、挿入する前または挿入時にパレットを形成する。パレットを平たい形状に保持することは有利であり得、なぜなら表面積がより大きい、および/または厚さがより均一であることにより、気化および送達時に、迅速に加熱する、加熱の分布を均一にする、および/または、空気流の分布を均一にすることができる。
【0222】
いくつかの実施形態においては、パレットの寸法は、例えば、露出する表面領域が約6×10mm、厚さが約1mmである。オプションとして、パレットの厚さは、約0.1~1.0mmの範囲内、またはより大きい、より小さい、または中間の厚さである。オプションとして、パレットの正面面積は、約20~100mm2の範囲内、例えば20mm2、40mm2、50mm2、60mm2、80mm2、または別の、より大きい、より小さい、または中間の正面面積である。オプションとして、パレットは、正方形または実質的に正方形のパレット(例えは約8mm×8mm×1mm)に形成する。オプションとして、パレットは長方形であり、辺の比が、例えば1:2、1:3、1:4、1:10、または別の、より大きい、より小さい、または中間の辺長比である。オプションとして、パレットの寸法は、例えば約30mm×2mm×0.5mmである。対応するパレットの重量は、いくつかの実施形態においては約15mgである。いくつかの実施形態においては、パレットの重量は、約1~100mgの範囲、または同じ、より大きい、より小さい、および/または中間の境界値を有する別の範囲内で選択する。
【0223】
枠の役割を果たすハウジング2301によってパレット2304を囲むことの潜在的な利点として、機械的安定性が高まる。例えば、パレットは、実施形態によっては充填された担体材料の個々の粒子を備えており、したがって特にパレット2304が移動する、または曲げられた場合に、パレット2304から粒子が落ちやすい。カートリッジのフレーム2308内に囲むことによって、パレット2304自体には応力が直接かかることなくシステム内でパレット2304を移動させることができる。いくつかの実施形態においては、カートリッジの全長および全幅は、約20mm×10mm、または別の、より大きい、より小さい、または中間のサイズである。製造時、枠の役割を果たすハウジングの潜在的な利点として、パレットの加熱時に解放された気化物質を取り込むための空気が流れる管路をちょうどふさぐ正確なサイズのパレットが形成される。
【0224】
なお、いくつかの実施形態においては、十分な機械的安定性を達成するのに、パレットを完全に囲む必要はないことを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態においては(
図1Eおよび
図1Fを参照)、パレット2304は、「U」字形状のフレーム部分2361によって画成される、1つの側面が開いた投薬室2363の中にパレット2304を配置する。これにより、フレーム部分2361の開いた側面からパレット2304を投薬ユニット2360に嵌め込むことができる。「U」字形状のフレームでは、製造時におけるフレーム自体の成形および/または離型が単純になる、および/または時間短縮される。いくつかの実施形態においては、例えば、抵抗加熱要素2306や通気性のオーバーレイ(overlay)2375(オプションとして保持メッシュ:
図1G)などの構造、または別の構造によって、開いた側面を閉じる。
【0225】
いくつかの実施形態においては、パレットの別の支持部を設ける。例えば
図1Lの投薬ユニット2390Aには、フレームがまったく存在しない例を示してあり、この場合、フレーム2391A(オプションとして顎状ラッチ2392を含む)の範囲全体がパレット材料によって形成されている。いくつかの実施形態においては、作製された時点でパレット材料は十分に安定的であり、したがって使用するための追加の機械的支持部がまったく必要ないか比較的小さい(例えば、パレットがマガジンと把持室との間で移動するときにパレットが損傷しないままであるように圧縮されている)。オプションとして、安定性を加えるため、パレット材料の少なくとも一部分に結合剤を混ぜる。オプションとして、パレットは、十分な安定性を有する一体型のパレットであり、(1種類または複数種類の)生物活性物質を含むゲル、流体、または粉末を保持する役割を果たす。
【0226】
いくつかの実施形態においては、オプションとして複数種類のパレット材料、例えば、フレーム2391Aの領域のフレーム材料(活性物質を含む、または含まない)と、解放する活性物質を含むパレット領域2394Aにおける担体材料、を使用して、一体型のパレット/フレームを形成する。オプションとして、一体型のパレット/フレームを1種類の材料から形成するが、(1種類または複数種類の)活性物質をパレット領域2394Aのみに加える。これに加えて、またはこれに代えて、形成の条件(例えば圧縮して押し固める程度)が、パレットのうちフレームの役割を果たす部分と、パレットのうち生物活性物質を解放する部分とで異なる。いくつかの実施形態においては、担体材料は、例えば、パレット2393の中央付近の約60mm2を範囲とする。担体材料は活性物質を含む材料であり、加熱することができるように、投薬ユニットの中で加熱要素に対応する位置に配置されている。いくつかの実施形態においては、加熱要素2306も機械的支持を提供する。オプションとして、パレット/フレームアセンブリ2393は、加熱要素2306の複数の部分の間を電気的に絶縁する。加熱要素2306とパレット2393の間の取り付けは、例えば、使用時に安定性が維持される、この技術分野において公知の任意の方法(例えば、溶接、接着剤、コールドプレス、ホットプレス、および/またはピン)を使用することによる。
【0227】
いくつかの実施形態(例えば
図1Mにおける投薬ユニット2395)においては、パレット2399に、流れに対する通気性を高める穿孔2398が設けられている。この形態は、フレームが存在しないかまたはほぼ存在しない投薬ユニットの実施形態の場合に特に有利であり得る。例えば、投薬ユニット2395のパレット2399は、顎状ラッチ2396(パレットの一体部分として形成することができる)と、(透明に描いた)「U」字形状の加熱要素2306のみによって囲まれている。それ自体で機械的安定性を達成するのに十分な密度を有する担体材料では、その材料で形成されるパレットの通気性が低下することがあり、したがって薬物の気化が妨げられる。穿孔2398は、例えば、担体材料を押し固めるときに使用する工具(例えば金型)を用いて隙間を形成する、パレットの形成後に孔をあける、または別の方法によって、設ける。
【0228】
いくつかの実施形態(
図1Jおよび
図1Kにおける投薬ユニット2390)においては、顎状部2391は、(例えばポリマーまたは金属から作製される)個別の部品として設けられ、解放する活性物質を含む担体材料のパレット2394に取り付けられる。いくつかの実施形態においては、加熱要素2306または別の包囲構造が、追加の機械的支持を提供する。オプションとして、パレット2394と顎状部2391の取り付けには、接着剤を使用する。オプションとして、取り付けは、機械的な相互結合を含む。例えば、顎状部2391とパレット2394の一方をツメ部を有するように形成し、他方を溝部を有するように形成する、および/または、顎状部2391に突起部(例えば櫛状のスパイク)を設けて、その周囲にパレット2394を形成する。
【0229】
いくつかの実施形態(例えば
図1Iに示した投薬ユニット2380の断面図)においては、パレット2304を包む加熱要素2386が、加熱要素の2つの側面が出会う結合部2381において溶接されている。この形態の利点として、(特に、フレームの存在しない実施形態、または部分的にフレームが存在しない実施形態の一方の場合において)パレット2304に、追加の機械的安定性を提供することができる。溶接部2381によって加熱要素2386の導電性の幾何学状態(topology)が変化するため、オプションとして、加熱要素2386に加熱エネルギを供給する電極2331が、(オプションとして、必須ではないが、溶接領域2381自体に接触した状態で)加熱要素の両側に配置される。
【0230】
いくつかの実施形態においては、単離された生物活性物質を気化させるステップは、抵抗加熱要素2306または他の形式の抵抗加熱要素によって加熱することを含む。この場合の抵抗メッシュは、オプションとして、実質的な抵抗加熱を示す材料、例えば、ニクロム(一般的な抵抗率は約1~1.5μΩ・m)、FeCrAl(一般的な抵抗率は約1.45μΩ・m)、ステンレス鋼(一般的な抵抗率は約10~100μΩ・m)、および/または白銅(一般的な抵抗率は約19~50μΩ・m)、を含む。材料(例えば金属)の選択に従って、抵抗加熱要素全体としての総抵抗(例えば、約0.05~1Ω、0.5~2Ω、0.1~3Ω、または2~4Ωの範囲内、または同じ、より高い、より低い、および/または中間の境界値を有する別の範囲内)が達成されるように、加熱要素の長さおよび幅、厚さ、開口部のサイズ、および/または開口部のパターンなどのパラメータを調整する。
【0231】
オプションとして、組立て時、パレット2304をその1つまたは複数の面において覆う位置に、抵抗加熱要素2306をハウジング2301に取り付ける。例えば、抵抗加熱要素2306は、背面2309Aから延びてハウジング端部2311付近で折り返し、再び腹面2309Bに沿って延びている。オプションとして、受け入れ室2303の中に含まれるパレット2304が加熱要素2306によって囲まれるように、抵抗加熱要素2306が受け入れ室2303の周囲に延在している。いくつかの実施形態においては、抵抗加熱要素2306は、複数の個別のパネル(例えば
図1Cおよび
図1Dにおける、投薬ユニット2350の各面に1枚ずつのパネル2356,2356A)を備えている。オプションとして、これらのパネルは互いに電気的に接続されている。これに代えて、各パネルが個別の電気接続部を受け入れる。抵抗加熱要素の複数の個別のパネルを有する潜在的な利点として、パレットのあらかじめ選択された領域において制御下で気化させることができる。パレット2304の2つの面を囲む形態(いくつかの実施形態において使用される)の潜在的な利点として、加熱要素2306に電流を印加したときの気化の速度および/または均一性が高まる。いくつかの実施形態においては、これらエンクロージャのうちの一方のパネル2356のみが電気抵抗要素であり、他方のパネル2356Aは、オプションとしてメッシュ、または機械的な支持を提供する他の通気性構造(例えば多孔性構造)である。
【0232】
いくつかの実施形態においては、電気抵抗加熱要素2356,2356Aは同時に動作する。いくつかの実施形態においては、抵抗加熱要素は個別に動作する。後者の形態の潜在的な利点として、例えば、2種類の活性物質を個別に制御および/または解放する、あるいは、1種類の活性物質を2回の連続的な送達において制御および/または解放することができる。例えば、第1の加熱要素(例:パネル)を、その直下の活性物質を気化させるのに十分なエネルギで、ただし十分に短い時間だけ、または熱がパレット全体に達しない加熱パターンにおいて、動作させる。いくらかの時間の経過後(オプションとして最初の加熱と重なるように、または完全に個別に)、第2の加熱要素を動作させる。この方式は、時間または温度の関数として異なる気化特性を有する2種類の物質を(例えば2種類のパレット材料から)解放するときに有利であり得る。オプションとして、同時に気化するように2つの加熱プロファイルを調整する。これに加えて、またはこれに代えて、2種類の活性物質の気化のタイミングを意図的にずらす。例えば、香味剤またはマスキング剤を、パレットにおいて加熱要素の近くに配置し、この場合、香味剤またはマスキング剤が最初に気化し、短い時間の後に第2の活性物質が気化する(またはこの逆)。この方式は、例えば、不快な味を隠す、進行中の気化の状態を使用者に知らせる、および/または、吸入時におけるそれ以外の感覚を変化させるのに有利である。オプションとして、各電極はパレットの面全体を加熱する。これに代えて、気化のための加熱がパレットの一部分のみにおいて(オプションとして電極ごとに異なる部分において)起こるように、各加熱要素を形成する。いくつかの実施形態においては、一方の加熱要素を使用して、活性物質が解放されるより低い閾値までパレットを「予熱」し、第2の加熱要素を作動させて解放を達成する。予熱の後に解放のための加熱を行うことによって、活性物質の気化の時間が短くなりうる、および/または、解放時の濃度が高まりうる。このことは、肺に達する活性物質の量を増大させる、および/または、選択される狭い吸入深さを対象に解放を行うことを支援する。
【0233】
いくつかの実施形態においては、抵抗メッシュ2306は、開いた領域(開口部)と閉じた領域(メッシュの材料)の表面積の比が、約1:1(50%)~1:3(33%)の範囲内である。いくつかの実施形態においては、この比は、約10~20%、約20~40%、約30~50%、約40~70%、約60~80%、約70~90%の範囲内、または同じ、より高い、より低い、または中間の境界値を有する別の範囲内である。いくつかの実施形態においては、メッシュの開口部は、約10μm、約25μm、約32μm、約50μm、約75μm、約100μm、約200μm、約300~750μm、約700~1200μmの範囲内、または別の、より大きい、より小さい、または中間の範囲内である。オプションとして、少なくとも2種類の開口部が、異なるサイズおよび/または形状を有する。いくつかの実施形態においては、メッシュは、400/0.03 316ステンレス鋼メッシュ(穴0.033mm、穴数400/inch2、各穴は約0.033mm(33μm)、ワイヤ太さ0.03mm)である。
【0234】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの加熱要素2306は、その全体または一部分がパレット2304に埋め込まれている。オプションとして、加熱要素は、その一部分または全体がハウジング2301のフレームに埋め込まれている。例えば、ハウジング2301は、最初から加熱要素が所定の位置に配置された状態で型で作製する、および/または、別の製造段階において高温下で加熱要素2306を所定の位置に押し込む。オプションとして、複数の加熱要素2306が、完全に、または部分的にパレット2304に埋め込まれており、したがってこれらの加熱要素2306を同時に、または個別に動作させることができる。
【0235】
図1Gおよび
図1Hは、フレーム2371に埋め込まれている加熱要素2376を備えた、投薬ユニットの別の実施形態2370を示している。いくつかの実施形態においては、加熱要素2376は、複数の電極パッド2377の間に配置されている加熱部2378を備えている。組み立てられた投薬ユニットにおいては、加熱部2378は、受け入れ室2303全体にわたり、または受け入れ室2303の範囲内で、パレット2304の表面を横切る、またはパレット2304の中を通っている。例えば、パレット2304は、オプションとして、ばら材料(loose material)を加熱要素2376の周囲において加圧して所定の形状とし、加熱要素2376を埋め込むことによって、形成される。オプションとして、フレーム2371は、電極パッド2377を受け入れる1つまたは複数の凹部2377Aを備えている。いくつかの実施形態においては、投薬ユニットのフレーム2371の少なくとも1つの面全体にわたる通気性オーバーレイ2375によって、パレットの追加の機械的支持が提供される。オーバーレイ2375は、オプションとして、ポリマーメッシュ、または気体を通過させることのできる他の構造を備えている。
【0236】
いくつかの実施形態においては、加熱要素2376の加熱部2378は、受け入れ室2303を1回または複数回横切って電極パッド2377に結合されているワイヤとして形成されている。いくつかの実施形態においては、加熱部2378は、メッシュ、リボン、または他の形状を備えている。いくつかの実施形態においては、加熱部2378は、複数の個別の部分(分岐、層、または他の分割形態)に分割されている。いくつかの実施形態においては、加熱部2378は、解放する薬剤物質を含むパレットの実質的にすべての部分の近くに(例えば、1mm以内に、2mm以内に、または別の、より大きい、またはより小さい距離以内に)延びている。この形態の潜在的な利点として、加熱時に、より迅速および/またはより均一に活性物質が解放される。
【0237】
なお、電極接点2377は、加熱部2378によって接合されている以外は、互いに電気的に隔てられているが、例えば加熱部2378自体が延びる経路によっては、電極接点2377は必ずしも物理的に互いに離れて配置される必要はないことを理解されたい。オプションとして、これらの電極接点は、例えば受け入れ室2303の同じ側または異なる側に配置されている。
【0238】
いくつかの実施形態においては、抵抗加熱要素2306は、エッチングされた抵抗箔(例えば、連続的なリボンまたは他の形状にエッチングされ、ポリイミドおよび/またはシリコーンゴムなどのポリマーによって裏打ちされた箔)を備えている。オプションとして、投薬物質の気化時に空気が流れることができるように、裏打ちされた抵抗箔は、裏打ち材を貫いて穿孔されている。いくつかの実施形態においては、(加熱要素に適切な高電流を十分な時間にわたり送ることによって)使用後に加熱要素を壊す方法を提供する目的で、抵抗箔には、例えば、後から加える構成要素として、および/または、リボンのうちの意図的に薄く作製された領域として、ヒューズが追加されている。
【0239】
いくつかの実施形態においては、メッシュがハウジングの材料に埋め込まれるように、ハウジングが溶融および/または軟化するのに十分に高い温度を使用してメッシュをハウジングに押し付けることによって、抵抗加熱要素2306がカートリッジのハウジング2301に固定されている。いくつかの実施形態においては、ハウジングは、不活性であり耐熱性かつ非導電性の材料を含む。いくつかの実施形態においては、使用するハウジング材料は、例えば、液晶高分子(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ウルテム(登録商標)、テフロン(登録商標)、トーロン(登録商標)、アモデル(登録商標)、ライトン(登録商標)、フォートン(登録商標)、Xydear、レーデル(登録商標)、ユーデル(登録商標)、ポリプロピレン、PROPYLUX(登録商標)、ポリスルホン、または別の高分子材料を含む。
【0240】
液晶高分子(LCP)および/またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の潜在的な利点として、カートリッジ内に保持されている物質を気化させるのに必要な温度よりも高い温度に対する良好な耐熱性である。いくつかの実施形態においては、メッシュとハウジングの接合は、約280℃(あるいはLCPまたはPEEKを溶融および/または軟化させるのに十分に高い別の温度)で起こる。LCPおよびPEEKの潜在的な利点は、より低い温度(例えば約230℃の気化温度)における良好な熱的安定性である。
【0241】
個々の投薬ユニットそれぞれに加熱要素(抵抗加熱要素2306など)を設ける潜在的な利点として、使用ごとの性能が均一である。生物活性物質のうち加熱要素と接触した部分は、冷えた後も加熱要素に付着したままとなることがある。この蓄積物は、気化性能に影響しうる。遠隔加熱(例えば放射および/または間接的な伝導による)では、接触型の電極による直接的な伝導加熱と比較して、熱慣性が比較的高い(より大きい発熱量を必要とする)システムとなりうる。接触型の電極が汚れるという問題は、使い捨て型として設計することによって排除される。加熱の要件が下がると、安全性が高まりうる、および/または、装置の寿命が延びうる。さらに、加熱の要件が下がると、必要な電力供給量も減少し、これにより、(例えば電池式の加熱要素を有するシステムの場合に)携帯性が高く、充電寿命が長く、かつ安価な実施形態が可能となる。
【0242】
いくつかの実施形態においては、投薬ユニット2300は、投薬ユニットの移動時に使用するロック部材を備えている。ロック部材は、例えば、顎状ラッチ2302を備えている。このロックによって、マガジン式の投薬ユニット移動機構の1つまたは複数の対応する部材と噛み合わせて、投薬ユニットの固定および/または移動を行うことができる。投薬ユニットの移動、および/または不必要に動かないようにする固定は、投薬ユニットの「サイクル」の中で起こり、例えば、使用できるように複数の投薬ユニットが配置されている投薬ユニットの列の中に投薬ユニットを入れるとき、列の中で投薬ユニットの順番が進むとき、使用時に投薬ユニットが選択されるとき、投薬ユニットが使用位置に移動するとき、投薬ユニットが実際に使用されるとき、および/または、投薬ユニットが廃棄されるかまたは投薬ユニットの列の中の「使用済み」位置に移動するときである。
【0243】
カルーセルおよび気化装置:
次に
図2A~
図2Eを参照し、これらの図は、いくつかの実施形態による、吸入器装置またはMDI装置の一部として使用されるカルーセル型の用量送達システム2340を概略的に示している。
【0244】
いくつかの実施形態においては、用量送達システム2340は、エンクロージャ2324によって包まれている複数の投薬ユニット2300を保持するカルーセル2322と、投薬ユニット引込み部2314および把持室装置2320を備えた気化装置2321と、を備えている。カルーセルのエンクロージャ2324と気化装置2321は、互いに取り付けられる。カルーセル2322は回転し、投薬ユニットが装填された順序で、またはカルーセル2322の動作によって選択される別の順序で、投薬ユニットを気化装置2321に渡す。
【0245】
オプションとして、一部またはすべての投薬ユニットが使用されたとき、またはそれらの有効期限が切れたとき、または投薬ユニットの組成物を変更するために交換する必要があるときに、カルーセルのエンクロージャ2324(およびその内容物)を新しいエンクロージャアセンブリに交換することができる。エンクロージャによって担持される投薬ユニットの数は、例えば約100である。オプションとして、投薬ユニットの数は、10~200の範囲内の別の数(例えば、10、40、80、120、180、または200)、または別の、より大きい、またはより小さい数である。いくつかの実施形態においては、カルーセルの直径は、例えば収容する投薬ユニットの数およびサイズに応じて、例えば約7~10cmの範囲内、または別の、より大きい、またはより小さい直径である。オプションとして、カルーセル2322は、同じ投薬ユニット、または複数の異なる投薬ユニット(例えば、単離された生物活性物質の異なる量、異なる濃度、および/または異なる組成を含む投薬ユニット)を備えている。なお、カルーセルは、投薬ユニットと組み合わせて使用可能なカートリッジ格納装置の唯一の形態ではないことを理解されたい。例えば、ばね式のマガジン型格納システムの中に投薬ユニットを格納することができる。カルーセルの潜在的な利点として、例えば投薬計画を調整する目的で、投薬ユニットの装填および/または取り出し時に、投薬ユニットの位置に(並び順に従わずに)自由にアクセスすることができる。カルーセルを使用することの別の潜在的な利点は、安全な保管、乱用の制御、安全性、その他の法規制および必要条件の遵守に関連する。
【0246】
動作サイクルの一例においては、投薬ユニット引込み部2314が作動して気化装置からカルーセルのエンクロージャ2324内に延び、このとき投薬ユニット引込み部2314が、例えば顎状ラッチ2302によって投薬ユニット2300と結合する。いくつかの実施形態においては、投薬ユニット引込み部2314は、顎状ラッチ2302内の所定の位置に「(パチンと)嵌まる」。いくつかの実施形態においては、投薬ユニット引込み部2314は2つの部分を備えており、これらの部分は、顎状部2302の両側を横方向に超えた後、顎状部2302によって画成されている空間内で互いに閉じる(嵌め合い挿入法よりも顎状部2302および/または投薬ユニット2300にかかる力が小さくなりうる)。さらなる動作において、投薬ユニット引込み部2314と、結合された投薬ユニット2300とが、一緒に気化装置の中に戻る。これにより投薬ユニット2300の投薬物質充填部2304が、空気取入口2312と連通する。なお、投薬ユニット引込み部は、作動アームによって移動させる以外の方式で動作することも可能であることを理解されたい。例えば、投薬ユニット「押し込み部」(例えば、カルーセル自体の内側のばね式部材を備えている)として、および/または、磁石(引き込みモード時)または複数の磁石(押し込み/引き込みモード時)として動作する。
【0247】
いくつかの実施形態においては、把持部材2310A,2310Bは、投薬物質を加熱してその中の気化性物質が気化されるように、カートリッジを閉じ込めて電極を所定の位置に配置する。
【0248】
次に
図3Aおよび
図3Bを参照し、これらの図は、いくつかの実施形態による、単離された生物活性物質を投薬ユニット2300から気化および送達する把持室装置2320を概略的に示している。
【0249】
投薬ユニット2300は、例えば投薬ユニット引込み部2314が顎状ラッチ2302と係合している状態で投薬ユニット引込み部2314を動かすことによって、把持室装置2320の中に運ばれる。
【0250】
いくつかの実施形態においては、把持室装置2320(気化装置とも称する)は、気化時に投薬ユニット2300を閉じ込める2つの把持部材2310A,2310Bを備えている。いくつかの実施形態においては、各把持部材2310A,2310Bは、対応する電極2330A,2330Bを担持しており、これらの電極は、投薬ユニット2300の一部を形成している抵抗加熱要素2306または他の加熱要素に密着するように配置されている。電極2330A,2330Bは、電源に電気的に接続されている。加熱は、いくつかの実施形態においては、電流を電極2330A,2330Bに流すことによって、抵抗加熱要素2306を介して行われる。電極2330A,2330Bは、熱を投薬物質充填部2304の表面全体に均一に分布させて伝えることができるように、投薬物質充填部の少なくとも1つの面(図示した例においては2つの面)の実質的に全体にわたり延びている経路を電流が流れるように、配置されている。
【0251】
いくつかの実施形態においては、空気流は、取入口2312を通過し、加熱されたパレット2304を通って出口開口部2312Bから出る。オプションとして、出口開口部2312Bは、気化した物質を使用者まで送るために配設されている管と流体連通している。オプションとして、把持部材2310A,2310Bは、取入口2312および出口2312Bの一部分を備えている。これによって把持部材2310A,2310Bを交互に開いて投薬ユニット2300を装着した後、把持部材2310A,2310Bを閉じて投薬ユニット2300の周囲の空気流路を密封することができ、したがって気化した単離された(1種類または複数種類の)生物活性物質が、画成された流路に閉じ込められる。
【0252】
用量を送達した後、投薬ユニットを取り出すときには、投薬ユニット引込み部2314を顎状ラッチ2302から外す。これは例えば、2つの部品が一緒に動かないようにしながら一方を他方からずらすことによる、および/または、2つの部品の一方を変形させることによる。例えば、投薬ユニット引込み部2314が通る溝の大きさを制限することによって、投薬ユニット2300が一緒に引き込まれない状態で、投薬ユニット引込み部2314をさらに引き込む。いくつかの実施形態においては、投薬ユニットを外した後に排出する。例えば、溝から外れた投薬ユニットを、投薬ユニット引込み部2314が戻る動作によって押し出す、および/または、それ以外の方法で完全に装置の外に出す。いくつかの実施形態においては、投薬ユニットは、使用済み投薬ユニットとして、カルーセル2322に(その投薬ユニットが取り出されたときと同じスロット、またはそれとは異なる別の利用可能なスロットに)戻る。オプションとして、この動作は、使い終わってから短い時間の後に、または直後に行われる。これに代えて、投薬ユニットは、装置の次回の使用時の一連の動作の中で取り出され、この場合、カルーセルがさらに送られて、使用される次の投薬ユニットを渡す。
【0253】
いくつかの実施形態においては、カルーセルに装填されている投薬ユニットへのアクセスは、それらが装填された順序で順次行われる。いくつかの実施形態においては、投薬の順序はあらかじめ決定されるが、変更することができる。例えば、ある期間内に投与する複数の異なる投薬量を、カルーセルに装填するときの順序で配置する。いくつかの実施形態においては、カルーセルの動作(送り)は、投薬ユニットを引き込む動作および/または投薬ユニットを戻す動作に機械的に結合されている一連の動作に実質的に従う。いくつかの実施形態においては、カルーセルの動作は、コントローラ(例えばマイクロプロセッサによって制御されるステッパモータまたは他の送り機構)の制御下にある。オプションとして、コントローラは、どの投薬量がどのカートリッジスロット内にあるか、および/またはその状態を、追跡する。オプションとして、コントローラは、自動的に、および/または、命令時に、適切な投薬ユニットを選択し、その投薬ユニットを引き込み可能な状態にするのに必要なスロット数だけ進めて所定の位置に配置する。オプションとして、この選択によって、カルーセル内の並び順に従わずに投薬ユニットにアクセスすることができる。オプションとして、カルーセルは、使用者が装置を作動させた結果として送られる。
【0254】
着脱式の気化・送達装置:
次に
図4Aおよび
図4Bを参照する。これらの図は、いくつかの実施形態による、カルーセルから投薬ユニットを装填してカルーセルから外した後、単離された生物活性物質を投薬ユニットから気化させて送達するための装置、を概略的に示している。
【0255】
いくつかの実施形態においては、把持室装置2320によって実行される機能を、着脱式のパーツによって実行する。したがって、少なくとも使用者に用量を投与する場合に、把持/加熱/投与サブアセンブリを、投薬ユニット格納/引き込み/移動サブアセンブリから分離することができる。いくつかの実施形態においては、把持/加熱/投与アセンブリ2400は、実質的に円筒状の本体(例えば、たばこ、シガリロ、葉巻、および/またはペンの形状)を備えており、投薬ユニット引込み/移動アセンブリの受け入れ部に挿入される。アセンブリ2400は、投薬ユニット引込み/移動アセンブリと係合する、および/または、手動または他の外部動作によって作動する摺動機構2410または他の構造、を備えている。
【0256】
オプションとして、摺動機構2410は、例えば投薬ユニット引込み部2314に関連して説明したように、アセンブリ2400の取り込み端部2440から滑り出て、係合部2415に投薬ユニット2300を係合させる。オプションとして、投薬ユニット2300(例えば細長いパレット2404を有するように形成されている)を、この把持/加熱アセンブリに引き込む。把持/加熱アセンブリは、オプションとして、ばね部材2407または別の手段によって付勢されている電極2430を備えており、ばね部材2407または別の手段は、電極2430を抵抗加熱要素2306に押し付けて抵抗加熱要素2306に電気的に接触させる。オプションとして、加熱するための電力は、ワイヤ2414を介して電極2430に接続されている電池2413によって供給される。
【0257】
オプションとして、電池2413は再充電可能であり、例えば電池2413は、カルーセルとともに組み立てられる本体によって提供される電源から再充電される。オプションとして、加熱は、制御手段(ボタンなど)の操作時に開始される、および/または、1種類または複数種類の自動的な作動制御、調整制御、および/または連動制御を受ける(例えば圧力の変化を感知した時点で加熱する、空気分流路が開いて送達の速度および/または用量を制御する)。送達時、端部2450に吸引力を印加することによって、(例えば吸入によって経口で)空気が本体2420を通じて取り込まれる。取り込み端部2440に吸い込まれた空気は、バッフル/導管2401,2408による作用によって、加熱されたパレット2404を通過し、気化した生物活性物質を端部2450まで運ぶ。
【0258】
分離可能な設計の潜在的な利点として、用量の投与時に使用者が投薬装置を取り扱うのに必要な操作が少なくなる。別の潜在的な利点として、投薬量の選択、管理、および制御という機能が、投薬自体から切り離されることである。投薬の動作(通常の電子たばこの動作に近い)が、投薬量の制御という、より臨床的な側面から切り離されることは、精神的にプラスに影響しうる。
【0259】
いくつかの実施形態においては、取り外し可能な投薬ユニットは、個別に加熱可能な複数の領域を備えている。例えば、複数の異なる開口部の中、および/または、個別に作動させることのできる複数の加熱要素が横切っている1つの開口部の中に、材料が充填される。オプションとして、複数の異なる充填領域が、複数の異なる種類の単離された生物活性物質を含む。例えば、大麻の充填領域の次に、オプションとして、1種類または複数種類の単離されたカンナビノイド(単離されたTHCなど)の充填領域、および/または、異なるカンナビノイド(単離されたCBDなど)充填領域を配置する。
【0260】
いくつかの実施形態においては、アナログ回路論理および/またはデジタル回路論理を使用して、どの加熱要素の領域に電流を流すかを制御する。例えばオプションとして、各加熱要素を、使用後に(例えばヒューズの破断によって)意図的に「燃やす」。適切に配置された検出回路が、最初の未使用の投薬領域を検出し、次の動作用にその領域を選択する。この方式の潜在的な利点として、1回の投薬を複数回の吸入に分散させることができる。もう1つの潜在的な利点として、1つの目的(例えば医薬目的)の投薬を、別の目的(例えば別の医薬目的、または娯楽目的の追加の吸入を可能にするため)の投薬と組み合わせることができる。別の潜在的な利点として、使用者の体験に多様性を与える目的で、複数種類の投薬タイプ(例えば、複数の異なる種類の単離された生物活性物質の組成物)を使用することができる。
【0261】
次に
図5を参照する。この図は、いくつかの実施形態による、連動装置によって保護されている投薬ユニット供給装置2500と、着脱式の用量投与アセンブリ2400とを概略的に示している。
【0262】
いくつかの実施形態においては、供給装置2500は、投与アセンブリ2400のための複数の受け入れ開口部2501,2502を備えている。いくつかの実施形態においては、開口部2501は、未使用の投薬ユニット2300C,2300Aがそこから投与アセンブリ2400に取り込まれる開口部である。いくつかの実施形態においては、供給装置2500から投薬ユニット2300Aが抜き取られた後、次の投薬ユニット2300Cは、連動装置によって適用される条件が満たされるまでは所定の位置に送られない。いくつかの実施形態においては、連動装置の動作には、投与アセンブリ2400を開口部2502に挿入することが含まれる。オプションとして、挿入されると、投薬ユニット2300Cが所定の位置に移動するように、(例えば機械的な動作および/またはコントローラが作動させる動作によって)カルーセルの動作がトリガーされる。いくつかの実施形態においては、投与アセンブリ2400を挿入する(オプションとして挿入してから取り外す)ことによって投薬ユニット2300Aが抜き取られるが、このとき投薬ユニット2300Aは、使用済みの投薬ユニット2300Bの以前の位置を占有する。この連動機構は、供給装置2500から一度に1つのみの投薬ユニットが取り出されるようにする役割を果たすことができる。いくつかの実施形態においては、開口部2502に挿入したときに投与アセンブリ2400内に投薬ユニット2300Aが検出されない限りは、カルーセルは送られない。いくつかの実施形態においては、投薬ユニット2300Aが投与アセンブリ2400に挿入されると、投薬ユニット2300Aおよび/または投与アセンブリ2400を壊さない限りは投薬ユニット2300Aを取り出すことができない。
【0263】
吸入器装置:
担体材料の全体にわたり塗布されている1種類または複数種類の単離された生物活性物質のパレットを備えており、それらの生物活性物質を加熱要素によって気化させるように構成されている、いくつかの実施形態による投薬ユニットは、加熱要素に電流を流し、加熱されたパレットを空気流が通過して、気化した活性物質を患者または使用者の肺器官に運ぶことができるように構成されている吸入器装置、において使用することができる。本明細書に提示されている投薬ユニットを使用する吸入器装置は、定量吸入器(MDI)装置とすることができる。
【0264】
いくつかの実施形態においては、本装置は、医療目的に適する正確な投薬を行うように構成されている。正確な投薬は、あらかじめ測定された量の(1種類または複数種類の)生物活性物質を使用することによって、および/または、気化に適用される熱プロファイル(例えば、温度および/または加熱速度および/または加熱時間)および/または流れプロファイル(例えば、流量および/または流量の変化および/または持続時間)を制御することによって、実施することができる。いくつかの実施形態においては、本装置は、精度の要件が厳しくないとき、(1種類または複数種類の)生物活性物質をほぼ気化させるように構成されている。
【0265】
いくつかの実施形態によると、吸入器装置は、本明細書に記載されている少なくとも1つの投薬ユニットを備えており、さらに、上述したように投薬ユニットを格納位置から使用位置に移動させ、加熱要素に電流を流すように構成されている動作ユニットを備えている。
【0266】
いくつかの実施形態によると、吸入器装置は、複数の投薬ユニットを保持する投薬ユニット供給装置をさらに備えている。
【0267】
いくつかの実施形態によると、吸入器装置は、上述したように、把持室装置(気化装置とも称する)をさらに備えている。
【0268】
いくつかの実施形態によると、吸入器装置は、本明細書に説明されている実施形態のいずれか1つ、およびこれらの任意の組合せを含めて、特許文献3、および/または、特許文献19、特許文献20、特許文献21のいずれか1つにその基本原理が記載されている、MDI装置である。
【0269】
いくつかの実施形態の一態様によると、少なくとも1種類の生物活性物質(薬理活性物質)の所定の気化量を患者に肺送達するように構成されているMDI装置であって、活性物質が、単離された生物活性物質であり、
本装置が、活性物質を含むパレットを制御下で加熱するときに活性物質の所定の気化量を送達するように構成されており、
所定の気化量が、それによって患者において活性物質のあらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/またはあらかじめ選択される薬力学プロファイルが達成されるように、選択され、
所定の気化量が、患者において本MDI装置から活性物質を肺送達することによって引き起こされる少なくとも1つの薬物動態(PK)パラメータおよび/または少なくとも1つの薬力学(PD)パラメータを測定すること(PK/PD調査)によって、導かれる、
MDI装置、を提供する。このようなPK/PDパラメータは、この技術分野において一般的に公知であり、本明細書において後から説明されており、確立されている方法(本明細書においてはPK/PD調査と称する)に従って測定または推定することができる。
【0270】
いくつかの実施形態によると、本MDI装置は、後から詳しく説明するように、患者インタフェース回路と通信するように構成されており、また、PKおよび/またはPD(PK/PD)データの取得および入力、患者の記録の記憶、患者および/または医師による本装置の初期設定の自動または手動の較正、調整、リセット、および再設定、を行うことができるように設計されているシステムに組み込まれるように構成されている。
【0271】
患者のコホート間のPK/PDのばらつきは、いくつかの単離された生物活性物質において著しく小さく、このことは、本開示のいくつかの実施形態による正確かつ一貫性のあるMDI装置を使用することによって、達成することができる。
【0272】
いくつかの実施形態によると、本明細書に提示されている方法および装置は、高い正確性、一貫性、精度、および再現性をさらに特徴とし、言い換えれば、患者によって吸入される活性物質の実際の気化量と、活性物質の所定の気化量との差が極めて小さい。
【0273】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1種類の物質からの少なくとも1種類のアクティブ薬理活性物質(active pharmaceutically active agent)を、熱を加えることによって制御下で気化させる吸入器装置は、
少なくとも1種類の単離された生物活性(薬理活性)物質を含むパレットを備えた少なくとも1つの投薬ユニット(カートリッジ)と、
薬理活性物質を気化させるためにパレットに熱を加えるようにされている加熱要素と、
加熱要素に給電するコントローラに従ってカートリッジを移動させるようにされている機構と、
を備えている。
【0274】
いくつかの実施形態によると、本吸入器装置は、少なくとも1種類の物質からの少なくとも1種類のアクティブ薬理活性物質を、加熱および空気流によって制御下で気化させるように構成されており、したがって、パレットを通る空気流を制御するようにされている機構をさらに備えている。
【0275】
いくつかの実施形態においては、本装置は、テープ、デイジー(daisy)(カルーセル)、またはマガジン内に配置されている複数の投薬ユニットをさらに備えている。オプションとして、またはこれに加えて、パレットは、各投薬ユニットにおいてパレットの単位面積あたり所定の量の薬理活性物質を有するように、テープ、デイジー、またはマガジンに編成されている。
【0276】
オプションとして、またはこれに加えて、投薬ユニットの厚さは、約0.1mm~約2.0mmの範囲である。オプションとして、またはこれに加えて、テープ、デイジー、またはマガジンは、合計で約5グラム~約100グラムの充填されたパレットを備えている。オプションとして、またはこれに加えて、テープ、デイジー、またはマガジンは、少なくとも2回の治療のための十分な量のアクティブ薬理活性物質を備えている。オプションとして、またはこれに加えて、カートリッジは、パレットに結合されている第1の材料層を備えており、この第1の層は、気体を通過させるのに十分に大きいが加熱されたパレット材料を保持するのに十分に小さい開口部、を備えている。オプションとして、またはこれに加えて、開口部の直径は、25μm~500μmの範囲である。オプションとして、またはこれに加えて、カートリッジは、パレットに結合されている第2の材料層を備えており、この第2の層は、熱を第2の層の実質的に全体にわたり分散させることなくパレットに熱を伝えるようにされている。オプションとして、またはこれに加えて、加熱要素およびパレットは、第1の層と第2の層との間に保持されている。
【0277】
いくつかの実施形態においては、本装置は、吸入ユニットをさらに備えており、この吸入ユニットは、薬理活性物質を吸入するためのマウスピースを備えており、マウスピースは、本装置の蒸気室との流体連通を形成し、蒸気室は、気化したアクティブ薬理活性物質を含む。
【0278】
オプションとして、マウスピースは、蒸気室から離れる方向への流体の流れを制御する一方向弁を備えている。オプションとして、またはこれに加えて、本装置は、マウスピースと流体連通しているセンサーをさらに備えており、このセンサーは、空気流量を推定して信号をコントローラに送るようにされており、コントローラは、その空気流量に従って薬理活性物質を気化させるようにされている。
【0279】
いくつかの実施形態においては、本装置は、熱の印加と、カートリッジの移動、および/または吸入によって発生する空気流量、とを同期させるように構成されているコントローラ、をさらに備えている。
【0280】
いくつかの実施形態においては、本装置は、加熱要素の作動を制御する回路(コントローラ)、をさらに備えている。
【0281】
いくつかの実施形態においては、本装置は、1つまたは複数の外部コンピュータおよび/またはシステムおよび/または患者/医師インタフェースと通信するための通信インタフェース、をさらに備えている。
【0282】
いくつかの実施形態においては、本装置は、薬理活性物質の気化を視覚的に示す投薬表示計、をさらに備えている、または関連付けられている。
【0283】
いくつかの実施形態においては、本装置は、携帯型であり、重量が約300グラム未満である。
【0284】
いくつかの実施形態においては、本装置は、処方データおよび使用データの少なくとも一方を保持するようにされているメモリ、をさらに備えている、または関連付けられており、このメモリはコントローラに結合されており、コントローラは、加熱要素、空気流、移動機構のうちの少なくとも1つを、用量データおよび/または投薬計画データに従って制御するようにされている。
【0285】
いくつかの実施形態においては、本装置は、関連付けられる患者による装置の使用を追跡するための一意のID、をさらに備えている。
【0286】
いくつかの実施形態においては、本装置は、装置の物理的な損傷を検出するようにされているセンサー、をさらに備えている。
【0287】
いくつかの実施形態によると、パレットからアクティブ薬理活性物質を制御下で気化させる方法であって、パレットがカートリッジ(投薬ユニット)として編成されており、
カートリッジの特定の領域に熱を加えて、アクティブ薬理活性物質の所定の量を気化させるステップと、
カートリッジを熱源に対して移動させるステップと、
を含む、方法、を提供する。
【0288】
これに代えて、加熱要素がカートリッジに含まれており、カートリッジを電気接点に対して移動させて加熱要素に給電する。
【0289】
いくつかの実施形態においては、本方法は、送達プロファイルに従ってアクティブ薬理活性物質を気化させるため、移動のタイミングおよび速度の少なくとも一方を調整するステップ、をさらに含む。
【0290】
いくつかの実施形態においては、気化させるステップは、肺送達時に気化させるステップ、を含む。
【0291】
いくつかの実施形態においては、熱を加えるステップは、開始信号の後500ミリ秒未満で目標温度に達するように熱を加えるステップ、を含む。
【0292】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1種類のパレットからの少なくとも1種類の単離されたアクティブ薬理活性物質を、熱を加えることによって制御下で気化させる方法であって、
1つまたは複数のカートリッジの中に編成されている1つまたは複数のパレットの1つまたは複数の領域を、使用者の1回のトリガーによって加熱して、少なくとも1種類のアクティブ薬理活性物質を解放するステップ、
を含む、方法、を提供する。オプションとして、上記の領域は、複数種類の単離されたアクティブ薬理活性物質を含む。
【0293】
いくつかの実施形態によると、単離されたアクティブ薬理活性物質を含むパレットを備えたカートリッジを製造する方法であって、カートリッジが、自動的に局所的な熱を加えて薬理活性物質を気化させる装置と組み合わせて使用するようにされており、
少なくとも1種類の、オプションとしてあらかじめ測定された量の、単離された薬理活性物質を、パレット材料の内部および/または表面に塗布するステップと、
オプションとして、単位質量の充填されたパレット材料の内部および/または表面に存在する薬理活性物質の量を測定するステップと、
パレット材料を加圧してカートリッジを形成するステップと、
を含む、方法、を提供する。
【0294】
オプションとして、薬理活性物質の量を測定するステップは、薬理活性物質を直接測定するステップと、薬理活性物質を含む材料の重さを測るステップ、の一方または両方を含む。
【0295】
いくつかの実施形態においては、粒子状の充填されたパレット材料を加圧するステップは、粒子のサイズよりも小さいサイズの開口部を有するカートリッジにおいて実行する。
【0296】
いくつかの実施形態においては、本方法は、アクティブ薬理活性物質の所定の量をカートリッジに記入するステップ、をさらに含む。
【0297】
いくつかの実施形態によると、治療用薬物を送達するためのカートリッジであって、単離されたアクティブ薬理活性物質が充填されたパレットであり、パレットに、カートリッジの単位面積あたり所定の量の薬理活性物質が充填されている、パレットと、カートリッジに含まれている加熱要素と、を備えているカートリッジ、を提供する。
【0298】
いくつかの実施形態においては、複数のカートリッジが、一巻きのテープ、カルーセル(デイジー)、またはマガジンとして編成されている。
【0299】
制御式の解放および送達:
いくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に記載されている吸入器装置を使用して、少なくとも1種類の単離された生物活性物質を制御下で解放する方法、を提供する。
【0300】
いくつかの実施形態によると、本方法は、いくつかの実施形態による、気化性の活性物質を含むパレット、を加熱し、この活性物質を効果的かつ効率的に気化させ、気化した活性物質を使用者に吸入させることによって、少なくとも1種類の気化性の活性物質の特定の量を肺吸入によって高い再現性かつ正確に送達することのできるMDI、を使用して実行される。MDIのこのような要件は、本発明を制限することのない例として、特許文献3と、特許文献19、特許文献20、および/または特許文献21のいずれかに開示されているMDI、によって満たされる(これらの文書は、その全体が本明細書に記載されている場合と同様に、参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0301】
可制御性は、投薬ユニット内の単離された(1種類または複数種類の)生物活性物質の量を制御する、および/または、加熱要素を流れる電流および/または通電時間の制御によって投薬ユニットに加えられる加熱レベルを制御する、および/または、生物活性物質の気化量を含む全体積が完全に吸入されるように装置内の空気流路の構造および/または空気流路を通る空気流を制御する、ことによって、達成される。
【0302】
単離された形態での生物活性物質の気化量が制御可能であることによって、例えば、既知であり実質的に予測可能かつ再現可能な薬理学的パラメータ(例えば薬物動態(PK)プロファイルや薬力学(PD)プロファイル)を有する医薬品(薬物、薬剤)として生物活性物質を使用する手段が提供され、これにより、既知であり実質的に予測可能かつ再現可能な治療窓に適合する所望の投薬計画を達成することが可能となる。したがって、いくつかの実施形態によると、本明細書に提示されている少なくとも1種類の単離された生物活性物質の所定の気化量を、制御下で蒸発によって解放して吸入によって肺送達する方法は、所定の気化量が、患者において活性物質のあらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/またはあらかじめ選択される薬力学プロファイルを示す気化量として選択されるように、実施する。
【0303】
本明細書において使用されている用語「治療窓」および「薬剤窓(pharmaceutical window)」は、同義であり、1種類または複数種類の薬理活性物質の一連の投薬によってもたらされる薬力学的効果(薬効)の範囲であって、1つまたは複数の望ましい(プラスの)効果と1つまたは複数の悪い(マイナスの)効果のバランスのとれた範囲、を意味する。いくつかの実施形態によると、治療窓/薬剤窓は、薬力学プロファイルと称する。この窓は、特定の時点に対応する、または任意の長さの期間(例えば分、時間、日、またはより長い、より短い、または任意の中間の時間長)にわたる。効果が望ましいか望ましくないかは、さまざまな基準、例えば以下に限定されないが、医療における慣習、規則、および法規、文化的規範および人口統計学的規範、遺伝的要因、個人的な選択および許容範囲、に基づいて定義することができる。例えば、効果が望ましいか望ましくないかは、治療の目的に基づき、かつ一般的に受け入れ可能な値に基づいて、定義することができ、オプションとして、患者の選択、許容範囲、日常的な活動など他のパラメータを考慮することができる。なお、ある効果が、いくつかの場合には望ましいものとみなされ、別の場合には望ましくないものとみなされうる(またはこの逆)ことに留意されたい。
【0304】
なお、いくつかの実施形態によると、あらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/または薬力学プロファイルを示すという表現は、その前提として、少なくとも1人の被験者において、単離された生物活性物質の気化量が、確立されている方法および受け入れ可能な基準に従って実施される薬物動態/薬力学(PK/PD)調査に基づいてあらかじめ決定されていることを意味し、この薬物動態/薬力学(PK/PD)調査は、本明細書に記載されているように、活性物質を含むパレットの加熱時に活性物質の一貫した正確な気化量を解放するように構成されているMDI装置を使用して、活性物質を被験者に肺送達することによる。さらに、いくつかの実施形態によると、あらかじめ選択される薬物動態プロファイルを示すという表現は、その前提として、少なくとも1つの望ましい薬物動態プロファイルが識別されており、分離された生物活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量によって、被験者においてその望ましい薬物動態プロファイルがもたらされることが判明していることを意味する。さらに、いくつかの実施形態によると、あらかじめ選択される薬力学プロファイルを示すという表現は、その前提として、少なくとも1つの望ましい薬力学プロファイルが識別されており、活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量によって、被験者においてその望ましい薬力学プロファイルが高い再現性でもたらされることが判明していることを意味する。さらに、いくつかの分離された生物活性物質の場合には、無作為な被験者がそれを経口摂取および/または注射したとき、薬物動態パラメータの値が、予測できない、および/または一貫性のない、および/または無効な値となり、そのような場合に本明細書に提示されている方法によって非常に有利な解決策が提供される。
【0305】
いくつかの実施形態においては、語「あらかじめ選択される」および「所定の」は、いずれも、語「意図された」、「目標の」、「所望の」、「望ましい」を意味する(または同義に使用されている)、または、語「効果的な」、「必要な」、「治療の」と同義に使用されている。
【0306】
さらに、望ましい薬物動態プロファイルおよび/または望ましい薬力学プロファイルは、一般に、特定の被験者または被験者のグループにおいて特定の薬理活性物質についてPK/PD調査を実施することによって生成することができることに留意されたい。さらに、単離された生物活性物質を含むパレットを加熱することによってその生物活性物質の特定の気化量を制御下に高い再現性で解放したときに吸入(肺送達)によって送達される薬理活性物質に関して、特定の被験者または被験者のグループにおいて、広く受け入れられている標準的なPK/PD調査を実施することは、例えば、本明細書に開示されているMDI装置、および/または、例えば特許文献3と、特許文献19、特許文献20、および/または特許文献21(これらの文書はいずれも参照によってその全体が本明細書に組み込まれている)のいずれかに開示されているMDI装置によって、可能になることに留意されたい。
【0307】
いくつかの実施形態においては、語「所定の気化量」は、薬物動態パラメータおよび/または薬力学パラメータを示すデータに基づいて決定される活性物質の量、すなわち、1人または複数の被験者/患者において特定の活性物質によって引き起こされる少なくとも1つのPKパラメータおよび/またはPDパラメータをモニターする、および/または記録する、および/または受信する、および/または分析する、および/または求めることによって決定された気化量、を記述する目的にも使用されている。
【0308】
いくつかの実施形態においては、所定の量を解放するようにMDI装置を設定・調整することは、あらかじめ選択されるPKプロファイルおよび/またはあらかじめ選択されるPDプロファイルがもたらされるように装置を調整することを意味する。本明細書に提示されている投薬ユニットからは、単離された生物活性物質が制御下で正確かつ高い再現性で解放されるため、本明細書において提供されるMDI装置を調整することが可能となる。
【0309】
いくつかの実施形態によると、本方法は、
MDI装置を使用して特定の気化量の生物活性物質を患者に肺送達することによって引き起こされる、少なくとも1つの薬物動態パラメータ(本明細書においては同じ意味で薬物動態的効果とも称する)および/または少なくとも1つの薬物動態変数および/または少なくとも1つの薬力学パラメータ(本明細書においては同じ意味で薬力学的効果とも称する)(これらの用語はこの技術分野において公知である)を求めるステップと、
患者において活性物質のあらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/またはあらかじめ選択される薬力学プロファイルを示す所定の気化量を、薬物動態パラメータおよび/または薬物動態変数および/または薬力学パラメータに基づいて決定するステップと、
活性物質の所定の気化量が送達されるようにMDI装置を調整/再調整/設定するステップと、
によって実行される。
【0310】
本明細書において使用されている「薬物動態(PK)プロファイル」という表現は、薬理活性物質またはその代謝物(例えば活性代謝物)の身体濃度(bodily concentration)、すなわち、活性物質が投与された生体の生理学的システム(全身、血液、血漿、リンパ、組織、器官など)における活性物質またはその代謝物の時間の関数としての濃度、を意味する。一般に、薬物動態(PK)プロファイルは、化合物を投与した時点から、その化合物が生体においてもはや検出されなくなった時点まで、またはこの期間の一部において考慮される。したがってPKプロファイルは、特定の化合物の遊離、吸収、分散、代謝、排泄/分泌のメカニズムによる影響を受けたときの、特定の生理学的システムにおけるその化合物の投与から消失までの身体濃度を記述する。各生体、および生体の属の中の個々の生体それぞれは、活性物質の投与に対して異なって反応するため、PKプロファイルも異なることがあり、場合によっては被験者ごとに大きく変化し、1人の被験者においても、現在の体の状態、医学的状態、環境条件、さらには一日の時間帯によって、異なることがある。
【0311】
いくつかの実施形態によると、薬物動態プロファイルは、
用量: 被験者に投与される化合物または活性物質の1回の量
投薬: 複数の所定の用量(異なる量または同程度の量とすることができる)
投薬計画: さまざまな間隔(異なる時間長または同程度の時間長とすることができる)で与えられる投薬。いくつかの実施形態においては、投薬計画は送達期間の時間(例えば活性物質の投与期間または治療期間)も包含する
の1つまたは複数を、被験者に提供することによって達成される。
【0312】
これに代えて、投薬計画は、所定の間隔で与えられる、複数のあらかじめ決められた所定の気化量である。
【0313】
なお、PKプロファイルは、PKパラメータの時間の関数としての変化、または複数のPKパラメータの組合せの時間の関数としての変化に従って、求めることができることに留意されたい。PKプロファイルは、一般には、直接的に測定されたPKパラメータおよび/または間接的に測定されたPKパラメータを使用して、時間的尺度における濃度に関して評価する。例えば、PKプロファイルは、被験者における特定の薬理活性物質の時間の関数としての血漿中濃度とすることができる。
【0314】
本明細書において使用されている用語「あらかじめ選択される薬物動態プロファイル」は、望ましいものとして選択されたPKプロファイルを意味する。あらかじめ選択される薬物動態(PK)プロファイルは、各実施形態において説明したように、被験者において所望の薬力学的効果を達成する(例えば本明細書に説明されているように、治療窓の中に被験者を維持する)ことにおいて有効であると判明した以降に、選択することができる。
【0315】
PKパラメータとしては、一般には、
Ct: ある用量または投薬計画の活性物質を被験者に投与(送達、例えば肺送達)した後に、特定の生理学的システム内で(例えば血漿中で)求められた、測定された、または評価された、その活性物質の濃度
Cmax: 被験者に活性物質を投与した後に、特定の生理学的システム内で(例えば血漿中で)求められた、測定された、または評価された、その活性物質のピーク濃度
Tmax: 投与してからCmaxに達するまでに経過した時間
曲線下面積(AUC0→∞:ゼロから無限大): 一般には1回の投薬後または定常状態における、時間の関数としての濃度曲線の積分
Cmin: 次の用量が投与される前の、生体における活性物質の最低濃度
Tmin: Cminが検出されるまで、または次の用量が投与されるまでに経過した時間
Clast: 前回観察された定量化可能な濃度
λz: 終末相消失速度定数(terminal phase rate constant)
消失半減期(t1/2): 活性物質の濃度が元の値の半分に達成するのに要する時間
消失速度定数(kE): 活性物質が生体から除去される速度
投与速度(kin): 消失との平衡に達するのに必要な投与速度
クリアランス: 単位時間あたり活性物質が除去される血漿の体積
バイオアベイラビリティ: 活性物質のうち全身に循環する割合
変動: 定常状態における1つの投薬間隔内のピーク値トラフ値変動
が挙げられ、ただしこれらに限定されない。
【0316】
類似する(例えばヒトのグループのように生物学的な意味において類似する)個々の被験者の母集団のメンバーにおけるPKプロフィルを評価する手段として、PK変数(母集団の部分集合におけるPKプロファイルと相関関係があることが判明している)を使用して、母集団全体に含まれる個人それぞれのPKプロファイルを一般化する(推定する)ことができる。薬物動態変数としては、一般には、以下に限定されないが、体重、身長、肥満指数(BMI)、ウエスト・ヒップ比、除脂肪体重(LBM)、年齢、人種、背景疾患、患者病歴、併用している薬剤、性別、が挙げられる。なお、PK変数は個々の被験者それぞれの遺伝的性質および後成的性質に依存し、したがって個々の被験者においてPK変数を使用してPKプロファイル/PDプロファイルをある程度の精度で予測できることを理解されたい。しかしながら、薬理活性物質の投与を基本とする治療をパーソナライズする/個別化することは、一般には、個々の被験者において求められる個人のPK/PDパラメータ(データ)に基づく。一般的に、幅広い母集団の平均パラメータセットと個人のパラメータの間のずれは、著しく小さい。
【0317】
いくつかの実施形態の文脈においては、用語「治療」は、単離された生物活性物質を特定の用量で1回だけ経肺投与すること、または、活性物質を同じかまたは異なる用量で限られた一定の回数だけ(投薬)、同じかまたは異なる投薬間隔で経肺投与すること(投薬計画)、または、終わりをあらかじめ決めずに限られた回数だけ投与する慢性治療(継続的治療)を意味する。所定の投薬間隔で与えられる一連の所定の投薬を、本明細書においては一般に治療投薬計画または投薬計画と称する。
【0318】
いくつかの実施形態によると、本明細書に提示されている投薬ユニットは、一回の吸入セッションにおいて使用される単回用量を物理的に具現化したものである。
【0319】
本明細書に提示されている本方法のいくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質の肺送達には、1回の吸入セッションにおいてMDI装置によって解放される1種類の所定の気化量として送達される1種類の用量が含まれる、または、この用量を、1回の吸入セッションで行われる何回かの吸入として患者に投与することができる。これに代えて、それぞれ1種類または複数種類の所定の気化量において投与される一連の投薬(本明細書においては投薬と称する)であって、所定の投薬間隔で投与される一連の投薬を、本明細書においては投薬計画と称する。したがって投薬計画は、所定の投薬間隔における、1種類または複数種類の所定の気化量において投与される1種類または複数種類の用量(投薬)によって定義され、この場合、所定の気化量、用量、および投薬間隔それぞれは、同じかまたは異なっていることができる。
【0320】
いくつかの実施形態の文脈においては、特定の薬理活性物質のPKプロファイルは、患者に活性物質を投与するときの用量、投薬、および/または投薬計画の結果であり、あるいは、いくつかの実施形態によると、PKプロファイルは、患者において活性物質の特定の薬力学(PD)プロファイル、あらかじめ選択される薬力学プロファイル、またはそれ以外の所望の薬力学プロファイルをもたらす手段である。
【0321】
本明細書において使用されている用語「薬力学(PD)プロファイル」は、被験者における薬理活性物質の、時間の関数としての効果を意味する。したがって、用語「薬力学(PD)プロファイル」は、薬理活性物質を投与したときの、時間の関数としての生体の生物学的発現および生物学的反応すべての総和を意味する。薬力学プロファイルは、一般には、任意の特定の時点における(1つまたは複数の)薬物動態的効果の直接的または間接的な結果、または、任意の特定の期間にわたる、患者における活性物質の薬物動態プロファイルの直接的または間接的な結果である。
【0322】
薬力学プロファイルは、直接的および/または間接的に求められる薬力学的効果の時間の関数としての変化/変動を表す。
【0323】
薬力学的効果は、一般には、以下に限定されないが、望ましい(治療)効果(例えば個人的に自覚される治療効果)によって、および望ましくない(悪い)効果(例えば個人的に自覚される副作用)によって、およびバイオマーカー(望ましい効果および/または望ましくない効果を示す)のレベルを判定することによって、求めることができる(これらの用語については後から説明する)。いくつかの実施形態によると、薬力学プロファイル(あらかじめ選択される(望ましい)薬力学プロファイルとすることができる)は、特定の被験者における特定の活性物質の治療窓(この用語は本明細書内に定義されている)によって定義される。
【0324】
薬力学(PD)プロファイルは、一般には、反応なしの状態を起点とし、望ましい治療効果(治療効果の閾値より低い効果)の発現、治療窓、副作用(副作用の閾値よりも高い作用)の発現を経て、毒作用に至る目盛り上での、時間依存性の評価および/または測定値である。本明細書に提示されている投薬ユニット、装置、方法の潜在的な利点として、特定の単離された生物活性物質の吸入による投与を実施することが可能になり、これにより、同じ活性物質を経口摂取および/または注射によって投与したときにPDパラメータを評価する場合と比較すると、経口摂取および/または注射では上述したように疎水性、粘性、および活性物質に固有な他の特性のためにバイオアベイラビリティが低いため、任意の特定の被験者におけるPDパラメータを、より正確かつ高い再現性で評価することができる。
【0325】
したがって、本明細書において提供される投薬ユニット、装置、および方法を使用して実施されるこのようなPK/PD調査の結果を使用することで、少なくとも1種類の薬理活性物質の所定の気化量の初期値として、その活性物質を肺送達するように構成されているMDI装置によって投与されたときに、特定の患者においてその活性物質の最初のあらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/または最初のあらかじめ選択される薬力学プロファイルをもたらすことのできる所定の気化量、を決定することができる。さらには、そのようなPK/PD調査の結果を使用することで、同程度の一貫した初期結果を達成するための最初の所定の気化量が送達されるように、類似するMDI装置を調整およびプリセットすることができる。
【0326】
なお、いくつかの実施形態によると、患者/使用者は、患者の個人的/個人のパラメータおよび変数に基づいて決定されてはいない最初の所定の気化量を使用して肺送達を開始することができるが、本明細書において提供される方法は、オプションのステップとして、患者の個人のパラメータおよび変数を考慮して所定の気化量を決定するステップを含む。したがって、いくつかの実施形態によると、本方法は、あらかじめ選択されるPK/PDプロファイルをもたらす所定の気化量をパーソナライズするステップを含むことができる。この場合のパーソナライズするステップは、MDI装置を事前に調整するステップに置き換える、またはMDI装置を調整した後の補足的なステップとすることができる。
【0327】
治療の方法:
単離された生物活性物質またはその組合せの治療量を正確かつ高い再現性で送達するように構成されているMDI装置において使用される、本明細書において提供される投薬ユニットは、肺送達(吸入)による投与が有利である生物活性物質によって治療可能である医学的状態を治療する目的に使用することができる。このような治療方法は、特に、それ以外の投与形態によって投与することが困難である、または他の投与形態が非効果的または非効率的である単離された生物活性物質を使用して治療が行われるときに、他の方法よりも有利であり得る。
【0328】
いくつかの実施形態の一態様によると、少なくとも1種類の単離された生物活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量を肺送達する(吸入する)ことによって治療可能である医学的状態を患っている患者を治療する方法、を提供する。
【0329】
いくつかの実施形態によると、本方法は、単離された生物活性物質を含むパレットを制御下で加熱したときにその活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量を制御下で解放するように構成されている定量吸入装置から、その活性物質の蒸気を自発的に吸入することで、患者に肺送達することによって、実行される。
【0330】
いくつかの実施形態によると、活性物質の所定の気化量は、患者においてその活性物質の少なくとも1つのあらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/または少なくとも1つのあらかじめ選択される薬力学プロファイルを示すように、選択される。
【0331】
いくつかの実施形態においては、単離された生物活性物質は、単離されたカンナビノイド、例えば、以下に限定されないが、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、ドロナビノール((-)トランス-THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビノール(CBN)、カンナビノジオール(CBDL)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビジバリン(CBDV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビトリオール(CBT)、およびこれらの任意の組合せ、である。本開示のいくつかの態様および実施形態の文脈においては、他の単離された気化性の生物活性物質も考えられる。
【0332】
いくつかの実施形態によると、単離された生物活性物質は、カンナビノイドと、テルペンおよび/またはフラボノイドを含む。
【0333】
カンナビノイドとオプションのテルペンおよび/またはオプションのフラボノイドなどの、気化性の単離された生物活性物質を肺送達することによって治療可能である代表的な医学的条件としては、以下に限定されないが、アルコール依存症、筋萎縮性側索硬化症、神経性無食欲症、不安障害、食欲の変動、ぜんそく、アテローム性動脈硬化、双極性障害、膀胱機能障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、コラーゲン関節炎、結直腸癌、クローン病、せん妄、消化器系疾患、ドラベ症候群、薬物依存症・渇望、ジストニア、てんかん、線維筋痛症、全般てんかん熱性痙攣プラス(GEFS+)、緑内障、グリオーマ、C型肝炎、HIVに伴う感覚性ニューロパチー、うつ病、ハンチントン舞踏病、高血圧、眼圧上昇、炎症性腸疾患(IBD)、不眠症、過敏性腸症候群(IBS)、食欲不振、白血病、偏頭痛、運動障害、多発性硬化症(MS)、吐き気、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、パーキンソン病、幻肢痛、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、月経前症候群、掻痒、精神障害、心因性疼痛(精神痛または身体表現性疼痛)、てんかん発作、敗血症性ショック/心原性ショック、性機能障害、皮膚腫瘍、睡眠時無呼吸、痙性、脊髄損傷、チック、トゥレット症候群、振戦、意図しない体重減少、嘔吐、が挙げられる。
【0334】
いくつかの実施形態によると、本方法は、単離された生物活性物質の所定の気化量と、単離された生物活性物質の実際の気化量とのずれが、所定の気化量の20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満であるように、所定の気化量を解放するよう構成されているMDI装置、を使用することによって、実行する。
【0335】
いくつかの実施形態によると、本方法は、あらかじめ選択される薬物動態プロファイルと、実際の薬物動態プロファイルとのずれが、あらかじめ選択される薬物動態プロファイルの40%未満であるように、実行する。これに代えて、ずれは、35%未満、30%未満、25%未満、または20%未満である。なお、ずれは、薬物動態プロファイルにおけるずれ、または薬物動態プロファイルを構成する1つまたは複数の薬物動態パラメータ(例えばCtやCmax)におけるずれとすることができる。このようなずれは、たとえ経口摂取および/または注射が不利であることが判明している単離された生物活性物質の場合にも、小さいものと予測され、なぜなら、本明細書に提示されている一貫性のある正確かつ高精度のMDI装置において、本明細書において提供されている投薬ユニットを使用するときに、得られるPKパラメータのばらつきが小さいためである。
【0336】
いくつかの実施形態によると、本方法は、任意の特定の時点における、あらかじめ選択されるPDプロファイルと、自覚されるPDプロファイルとのずれが、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満であるように、実行する。任意の特定の時点における、あらかじめ選択されるPDプロファイルと、自覚されるPDプロファイルとのずれは、上述したPDパラメータを求めることによって評価することができる。ずれは小さいものと予測され、なぜなら先と同様に上述したPKパラメータのばらつきが小さいためである。
【0337】
本装置は、患者において任意のあらかじめ選択されるPDプロファイルが示されるように、任意の正確な量を一貫して送達するように構成することができるため、本明細書に提示されている装置および方法は、あらかじめ選択されるPDプロファイルを、
治療効果の最小レベルよりも低いレベル(治療窓より下)の範囲内、
治療効果の最小レベルから、副作用が受け入れられる(すなわち副作用が実質的に小さいかまたは発現しない、あるいは自覚されない)治療効果の最大レベルまで(治療窓の中)の範囲内、または
副作用の最小レベルよりも高いレベル(治療窓より上)の範囲内、
であるように、細かく制御することができる。
【0338】
上述したように、いくつかの実施形態によると、あらかじめ選択されるPDプロファイルは、患者における活性物質の治療窓に対応し、すなわち望ましい効果の最小レベルから望ましくない効果のレベルまでを範囲とする。
【0339】
いくつかの実施形態においては、あらかじめ選択されるPDプロファイルは、望ましい効果の最小レベルから望ましくない効果の最小レベルまでを範囲とする。
【0340】
いくつかの実施形態においては、あらかじめ選択されるPDプロファイルは、望ましい効果の最小レベルから、望ましくない効果の最小レベルより高いレベルまでを範囲とする。
【0341】
いくつかの実施形態においては、あらかじめ選択されるPDプロファイルは、治療効果の最小レベルから、副作用が受け入れられる治療効果の最大レベルまでを範囲とする。
【0342】
本方法および本装置は、任意のあらかじめ選択されるPDプロファイルにおいて、高い精度および再現性を提供する。したがって、いくつかの実施形態によると、任意の特定の時点における、あらかじめ選択される薬力学プロファイルと、自覚される薬力学プロファイルとのずれは、あらかじめ選択される薬力学プロファイルよりも、その25%未満、20%未満、10%未満、または5%未満だけ低い、および/または、あらかじめ選択される薬力学プロファイルよりも、その25%未満、20%未満、10%未満、または5%未満だけ高い。
【0343】
気化性の薬理活性物質を肺送達することによって治療可能な医学的条件の一例は、これに限定されないが、疼痛であり、疼痛は、本明細書に提示されている投薬ユニットから、気化したドロナビノールを肺送達することによって治療することができる。
【0344】
インタフェースおよびシステム:
本明細書に提示されている投薬ユニット(カートリッジ)、吸入器装置、および方法は、1種類または複数種類の生物活性物質を吸入することによって治療可能であるさまざまな医学的条件に対する、本発明以外の方法では複雑かつ課題を伴う投与・治療形態を、パーソナライズする、用量を設定可能にする、機械化する、および自動化するうえで、極めて適している。薬事上のガイドラインおよび要件に従って治療プロトコルをパーソナライズすることは容易ではないが、熱によって気化した活性物質を肺送達することに基づく、再現性の高い制御可能な治療は、それ以上に簡単なことではない。
【0345】
例えば本明細書および特許文献3に開示されているMDI装置によって達成されたように、精度、一貫性、および再現性の問題が解決し、さらに、広く受け入れられているPK/PDパラメータに基づいて、所望の治療窓の中に維持されるように装置を調整およびプリセットすることが可能となった後、本発明者は、任意の特定の患者に対して高いレベルでパーソナライズされた効果的な治療を提供することができるように、単離された生物活性物質を肺送達する装置を、さまざまな情報源から集められる入力を使用してリアルタイムで制御することのできる統合システムを着想した。
【0346】
図6は、いくつかの実施形態による、MDI装置と、医師インタフェースおよび/または患者インタフェースとを備えたシステムの概略図である。
【0347】
いくつかの実施形態においては、MDI装置901は、医師インタフェース903および/または患者インタフェース905と通信するように構成されている。いくつかの実施形態においては、MDI装置901は、これらのインタフェース903,905の一方または両方から入力を受信するように構成されている。これに加えて、またはこれに代えて、MDI装置901は、インタフェース903,905の一方または両方に出力を送るように構成されている。
【0348】
いくつかの実施形態においては、システムの構成要素の間の通信は、1つまたは複数のデータ伝送手段(USB接続、ケーブル接続、無線接続、任意の適切な有線および/または無線通信プロトコルなど)を介して実行される。
【0349】
いくつかの実施形態においては、システムの構成要素の間の通信は、1つまたは複数の通信モジュール(MDI装置901の通信モジュール907、医師インタフェース903の通信モジュール909、患者インタフェース905の通信モジュール911など)を通じて実行される。
【0350】
いくつかの実施形態においては、MDI装置901はコントローラ913を備えており、コントローラ913は、例えば、パレットの加熱を作動させることにより活性物質を気化させる、加熱プロファイルおよび/または熱の印加を制御する、MDI装置のカートリッジ送り機構を制御する、MDI装置901のメモリ919からデータを読み取る、電力使用量を制御する、および/またはその他の機能を行うように、構成されている。いくつかの実施形態においては、コントローラ913はメモリ919と通信する。オプションとして、メモリ919は、処方データ、個人の使用データ、患者の詳細、患者から取得された個人のPDパラメータ、用量/投薬/投薬計画の修正情報、用量/投薬計画の変更に伴って患者から得られたパラメータ、および/またはその他の値または情報、を記憶するように構成されている。いくつかの実施形態によると、コントローラ913は、メモリ919に記憶されている用量、投薬、および/または投薬計画のデータに従って、活性物質の肺送達を実行する。
【0351】
いくつかの実施形態においては、メモリ919は、特定の用量および/または投薬計画に関連する、および/または、患者における活性物質のあらかじめ選択される(望ましい)PDプロファイルに関連する、患者からのフィードバックデータ、および/または、使用データ、を記憶するように構成されている。
【0352】
いくつかの実施形態においては、例えばコントローラ915、メモリ921、通信モジュール909のうちの1つまたは複数を備えている医師インタフェース903は、パーソナルコンピュータ(タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、その他)、モバイルデバイス(スマートフォンなど)、ハンドへルドデバイス、ウェアラブルデバイス、リストデバイス、一体型アイウェアデバイス、クリニックまたは病院のモニター、および/または任意の他の適切な装置に構築・設定される。オプションとして、医師には、MDI装置901の遠隔操作機能が提供される。これに加えて、またはこれに代えて、医師は、MDI装置901を直接動作させる。いくつかの実施形態においては、医師は、個々の患者に適切な所定の気化量(用量、投薬、および/または投薬計画)を用いて、MDI装置901を事前にプログラムする(事前調整またはプリセットする)。いくつかの実施形態においては、例えば患者に指示する目的で、またはプリセット調整を行う目的で、医師インタフェース903から患者インタフェース905にデータが送られる。
【0353】
いくつかの実施形態においては、例えばコントローラ917、メモリ923、通信モジュール911のうちの1つまたは複数を備えている患者インタフェース905は、パーソナルコンピュータ(タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、その他)、モバイルデバイス(スマートフォンなど)に、および/またはMDI装置901自体に構築・設定される。
【0354】
いくつかの実施形態においては、患者インタフェース905は入力929を受信する。この入力は、患者、医師インタフェース、データベースサーバ、MDI装置のうちの1つまたは複数から受信することができる。さまざまなタイプの入力の例として、医師が決定して医師インタフェースに入力する用量および/または投薬計画、患者が入力する、および/または患者から取得される患者の現在の個人のPDパラメータ、例えばデータベースサーバやMDI装置のメモリに記録されている個人の使用統計情報、MDI装置によって検出される吸入の持続時間および/または吸入体積の情報、その他のタイプの入力、が挙げられる。
【0355】
いくつかの実施形態においては、患者インタフェース905はディスプレイ927を備えている。
【0356】
ディスプレイは、オプションとして、インタラクティブ(対話型)ディスプレイ(例えば、スマートフォン、ハンドヘルドデバイス、ウェアラブルデバイス、リストデバイス、または一体型アイウェアデバイスそれぞれのタッチスクリーン)である。
【0357】
いくつかの場合においては、特定の機能、例えば医師にデータを伝送する、データベースにアクセスして使用者/患者への指示などの情報を取得する、その他の機能は、患者インタフェース905によって行うことができるが、別の機能、例えば所定の気化量(用量)、投薬、および/または投薬計画を修正する、他の患者のプロトコルを見る、その他の機能などは、患者インタフェース905によって行うことはできない。オプションとして、医師が、患者インタフェースへのアクセス条件を個々の患者ごとに設定する。
【0358】
いくつかの実施形態においては、患者インタフェース905および/またはMDI装置901は、肺送達(吸入)の時間になるたびに患者に知らせるように構成されている。オプションとして、このお知らせは、メモリに記憶されている予定された投薬(投薬計画)に基づいて自動的に提供される。これに加えて、またはこれに代えて、お知らせは患者が設定する。これに加えて、またはこれに代えて、お知らせは医師が送信する。
【0359】
いくつかの実施形態においては、システムの構成要素のうちの1つまたは複数は、データベースから入力を受信する、および/または、データベースに情報を送信することによって、データベースサーバ925と通信する。いくつかの実施形態においては、データベースは、患者の個々のデータ(例えば、患者の治療歴/病歴、MDI装置901によって送信されるデータ、医師からの入力データ、患者からの入力データ、その他の情報)を含む。オプションとして、データベースサーバは、データに関する計算を実行するように構成されている。いくつかの実施形態においては、データベースサーバ925は、集合的なデータ(例えば、臨床実験の結果、別の患者の結果、研究データ、その他のデータのうちの1つまたは複数)を含む。オプションとして、データベースサーバ925は、さまざまな患者によって使用されている複数の治療システムと通信する。患者とMDI装置との間のさまざまなインタラクション(対話)からのデータが中央のデータベースに集められ、データベースは患者の個々の使用パターンを継続的に学習し、それに従って用量、投薬、および/または投薬計画を推奨する。集合的な使用者データベースを利用することによって、現在の患者および新規の患者に対する正確かつ予測的な用量、投薬、および/または投薬計画の生成を改善することができ、これにより治療の全体的な成功率が高まる。
【0360】
いくつかの実施形態においては、例えば、患者が指示されたときにMDI装置を使用しなかったり、事前に設定された投薬計画とは異なるタイミングでMDI装置を使用する状況において、MDI装置の不適切な設定や誤用を補正する目的で、所定の気化量(用量、投薬、および/または投薬計画)が、MDI装置901および/または患者インタフェース905によって患者から取得される個人のフィードバックデータに従って、患者インタフェースのコントローラ917および/またはMDI装置のコントローラ913によって自動的に修正される。これに応えて、1つまたは複数の対応策をとることができ、例えば、次回の投薬を延期する、次回の用量(および/またはそれ以降の用量)を増やす/減らす、その他の方法で投薬計画を変更する。
【0361】
いくつかの実施形態においては、MDI装置901を使用する患者は、生じうる副作用が患者の日常生活をできる限り妨げないように用量、投薬、および/または投薬計画が計画されるように望むことがある。特定の副作用は、家庭内や特定の時間帯においては耐えられ、症状の緩和との引換えとして受け入れることができるが、患者が自動車を運転したり会合に出席するなどの活動を行うときには、これらの副作用が望ましくないことがある。オプションとして、患者は、予定されている活動への支障が最小となるように、患者インタフェース905を使用する、および/またはMDI装置901を直接操作することによって、用量、投薬、および/または投薬計画の予定を立てる。
【0362】
これに加えて、またはこれに代えて、MDI装置901および/または患者インタフェース905は、例えば患者からの入力に基づいて、特定の用量および/または投薬計画を自発的に生成するように構成されている。一例においては、患者が自分の予定されている日常的な活動およびそれらの活動の日時を入力すると、それに応じて用量、投薬、および/または投薬計画が自動的に修正される。オプションとして、患者が、予定されている活動を行うのに適する状態であるように(例えば運転中に副作用のレベルが比較的低いかまたは自覚されないように)、用量、投薬、および/または投薬計画が自動的に修正される。
【0363】
いくつかの実施形態においては、患者は、例えば患者インタフェース905を使用して、用量、投薬、および/または投薬計画を自発的に修正することができる。オプションとして、患者が危険である状態を防止する(例えば過剰投薬を防止する)ため、修正の程度が限定される。
【0364】
いくつかの実施形態においては、患者は、たとえ具体的に指示されなくても、MDI装置901を単純に使用することができる。このような場合、その回の使用に応じて、次回の用量および/または投薬計画を自動的に修正することができる。オプションとして、用量および/または投薬計画の修正について、患者インタフェース905を通じて患者に知らされる。
【0365】
これに加えて、またはこれに代えて、このような変更について、例えば医師インタフェース903を通じて医師に知らされる。
【0366】
図7は、いくつかの実施形態による、MDI装置を使用して少なくとも1種類の活性物質を送達する患者に、投薬計画を処方する方法の流れ図である。
【0367】
いくつかの実施形態においては、医師は、MDI装置によって1種類または複数種類の活性物質の肺送達を実施することによって患者を治療することを決定する(1001)。
【0368】
いくつかの実施形態においては、患者データ(例えば、PK変数(例:年齢、性別、BMIなど)、病態生理学的状態、遺伝薬理学的変数、薬理ゲノミクス変数、その他のパラメータのうちの1つまたは複数)を、例えば医師および/または他の臨床スタッフによってシステムに入力する(1003)。オプションとして、患者のパラメータおよび個人的な変数を、医師インタフェースを使用して入力する。
【0369】
いくつかの実施形態においては、提案する用量、投薬、および/または投薬計画を生成する(1005)。オプションとして、用量、投薬、および/または投薬計画を、例えば医師インタフェースのソフトウェアによって自動的に生成する。これに加えて、またはこれに代えて、用量、投薬、および/または投薬計画を、医師によって計画する。いくつかの実施形態においては、データベースからのデータを使用して、または個人のフィードバックデータに従って、または例えば参照テーブルに従って、入力されている患者データと、あらかじめ決められた用量および/または投薬計画とのマッチング処理を行うことによって、用量、投薬、および/または投薬計画を生成する。
【0370】
いくつかの実施形態においては、選択された用量、投薬、および/または投薬計画に対して予測される患者のPK/PDプロファイルのシミュレーションを生成する(1007)。いくつかの実施形態においては、例えば治療効果や副作用を含む予測されるPK/PDプロファイルをシミュレートする。いくつかの実施形態においては、薬力学プロファイルおよび/または薬物動態プロファイルと、患者の個人データとを相互に関連付けることによって、治療窓を選択する。オプションとして、PK/PDプロファイルのシミュレーションおよび/またはあらかじめ選択された治療窓を、例えば医師インタフェースのディスプレイ上で、医師にグラフィカルに表示する。医師は、シミュレーションを考慮して、用量、投薬、および/または投薬計画を、患者により適合するように修正する(パーソナライズする)ことを決定することができる(1009)。いくつかの場合においては、医師は、提案する用量および/または投薬計画のパラメータ(用量、投薬、投薬計画、全体的な治療期間、その他の治療パラメータのうちの1つまたは複数)を変更することを決定することができる。
【0371】
いくつかの場合においては、治療は、患者において望ましい治療効果を得るために、1つ、2つ、または3つ以上のパレットから2種類以上の生物活性物質を、同時に、または連続的に投与することを含む。本システムでは、いくつかの実施形態によると、あらかじめ選択されるPDプロファイルが示される(例えば、個々の患者を、患者ごとに計算された治療窓内に維持する)ように、MDIを使用して(1つまたは複数のパレットから)2種類以上の薬理活性物質を任意の比率または所定の気化量で送達することが可能である。いくつかの実施形態においては、症状を緩和しながら副作用を抑えるため、投薬計画に従って異なる用量を選択的に投与する。
【0372】
いくつかの実施形態においては、選択された(オプションとしてさらに微調整された)用量、投薬、および/または投薬計画を、患者に処方する(1011)。
【0373】
いくつかの実施形態においては、医師は、フォローアップとして、および患者の治療期間全体にわたり(例えば、数時間、1日、一週間、一ヶ月、および/または中間の、より長い、またはより短い期間にわたり)、1つまたは複数の情報を受け取り、これらは例えば、患者による装置の一般的な使用に関する情報、患者に処方された用量、投薬、および/または投薬計画に関する情報、患者によって使用されている投薬ユニット、患者の1つまたは複数の個人のPDパラメータ、例えば副作用の存在(精神活性レベルなど)および/または症状の強さ(痛みのレベルや1つまたは複数のバイオマーカーのレベルなど)に関する情報、および/またはその他の情報である。オプションとして、1つまたは複数の情報はリアルタイムで提供される。これに加えて、またはこれに代えて、情報は、活性物質の肺送達の終了時に提供される。これに加えて、またはこれに代えて、情報は、医師が要求したときに提供される。
【0374】
これに加えて、またはこれに代えて、医師に情報を送るタイミングを患者が決定する。
【0375】
いくつかの実施形態においては、情報は、自動的に、および/または、医師および/または患者からの指示/情報に応えて、MDI装置および/または患者インタフェースによって医師に送信される。オプションとして、1つまたは複数の情報が、以降に参照できるようにデータベースに記憶される。
【0376】
いくつかの実施形態においては、提供された情報に基づいて、用量、投薬、および/または投薬計画を調整する、またはそれ以外の修正を行う(1015)。オプションとして、修正はリアルタイムで実行する。いくつかの実施形態においては、特定の用量、投薬、および/または投薬計画を、オプションとしてリアルタイムで修正する。いくつかの実施形態においては、患者ごとに個別に定義されるPDパラメータの上限および下限を考慮しながら、用量および/または投薬計画を修正する。上限とは、用量、投薬、および/または投薬計画がそれを超えると実質的な副作用が存在する値である。下限とは、用量および/または投薬計画がそれを下回ると、活性物質の送達によって治療する対象であった症状が十分に緩和されない値である。
【0377】
図8A~
図8Dは、いくつかの実施形態による、用量、投薬、および/または投薬計画を選択して患者に処方するための医師インタフェースの概略図(
図8A)および印刷画面(
図8B~
図8D)である。
【0378】
図8Aは、医師インタフェースの一般的な表示1107を示している。いくつかの実施形態においては、患者データは入力部1109を通じて医師によって入力される。
【0379】
いくつかの実施形態においては、予測される、および/またはあらかじめ選択される薬物動態プロファイル1111、および/または、予測される、および/またはあらかじめ選択される薬力学プロファイル1113、のグラフィカル表示が、医師に提示される。オプションとして、これらのプロファイルの1つまたは複数が、例えば患者が治療される期間を含む時系列1115(例:1時間単位の目盛り)に対して、個別に、または一緒に示される。いくつかの実施形態においては、上限1119および下限1121を設定する治療窓1117が定義される。いくつかの実施形態においては、予測される、および/またはあらかじめ選択されるPK/PDプロファイルが治療窓1117の範囲内に収まるように、用量、投薬、および/または投薬計画が選択される。
【0380】
いくつかの実施形態においては、上下限は、例えば
図8Aに示したように直線として提示される一定値として定義される。これに代えて、上下限は、変化する一連の値を含むことができ、曲線として提示することができる。例えば、下限1121は望ましい治療効果を現し、上限1119は許容される副作用を表し、治療の初期段階では、例えば症状の緩和を加速させる目的で薬物動態プロファイルのC
maxの閾値を高く設定することができ、治療が望ましい状態で継続されるにつれて、C
maxの閾値を下げることができる。いくつかの実施形態においては、例えば治療の初期段階において患者における活性物質の初期蓄積(initial buildup)を達成し、その後は患者を安定状態に維持する目的で継続的な投薬(維持投薬)を提供するように、用量および/または投薬計画を選択する、および/または調整する。活性物質の初期蓄積は、一般的には、維持投薬時に与えられる活性物質量と比較して、より多い活性物質量に基づく。
【0381】
いくつかの実施形態においては、例えば個々の患者に対する活性物質の所定の気化量(用量、投薬、および/または投薬計画)を微調整するとき、医師は、限界1119および/または限界1121を上げるおよび/または下げる、プロファイル1113および/またはプロファイル1111のピークを上げるおよび/または下げる、時間軸に沿って治療期間を延長するおよび/または短縮する、その他の修正、のうちの1つまたは複数を実行することができる。
【0382】
なお、この図のグラフ表現は一例として示したものであり、さまざまなグラフ表現(棒グラフなど)を使用できることに留意されたい。いくつかの実施形態においては、プロファイル1111および/またはプロファイル1113を、不連続な方法で(例えば一連の点として)提示することができる。
【0383】
図8Bは、いくつかの実施形態による、所定の投薬計画に従って送達される所定の気化量を使用する患者の、予測される薬物動態プロファイルのシミュレーションを示している。医師インタフェース画面のこの例においては、医師は、患者データ1101(性別、体重、身長、投与する薬物、患者ID、その他のデータなど)を書き込んで、例えばグラフ1103に示したように、個々の患者の薬物動態プロファイルの推定(時間の経過に伴う患者における活性物質の血漿中濃度をシミュレートする)を得ることができる。
【0384】
同様に
図8Cは、個々の患者の予測される薬力学プロファイルの推定1105(時間の経過に伴う患者における副作用のレベルを示す)を示している。
【0385】
図8Dは、いくつかの実施形態による、医師インタフェースの印刷画面を示している。グラフ1103は、シミュレートされた薬物動態プロファイルを表しており、グラフ1105は、シミュレートされた薬力学プロファイルを表しており、これらのプロファイルは、この例では8時間の周期を表す時系列軸1115上に表示されている。患者の薬力学パラメータの目盛りは、例えば、個々の患者ごとに定義される、「痛みのある」状態(治療効果レベルより下)を示すセクションと、「最適な」状態(治療窓内)を示すセクションと、例えば「精神活性」状態(副作用レベルより上)を示すセクションとに、視覚的に分割されており、グラフとしてシミュレートされたPK/PDプロファイルが、これらのセクションに対して示されている。このシミュレーションにおいては、最初の投薬が8:00に行われ、その結果として薬力学パラメータおよび薬物動態パラメータの両方が変化し、「痛みのある」セクションから「最適な」セクションの中に上昇している。11:00に行われる2回目の投薬によって、患者が「最適」(治療窓)の範囲内に維持されている。
【0386】
図9は、いくつかの実施形態による、患者からフィードバックデータを取得し、それに応じて用量および/または投薬計画を修正/調整する方法の流れ図である。
【0387】
いくつかの実施形態においては、患者の個人のPDパラメータを取得する(1201)。いくつかの実施形態においては、PDパラメータは、副作用(精神活性レベルなど)、治療効果(痛みのレベルなど)、および/またはこれらのレベルの一方または両方の変化に関連する。PDパラメータは、例えば、単回用量の送達の前、および/または、投薬および/または投薬計画の送達の前に測定されたレベルを基準として評価される、レベルの絶対的定量および/またはレベルの相対的定量を含むことができる。PDパラメータは、単回用量の送達の前、間、および/または後に取得する、および/または、投薬および/または投薬計画の送達の前、間、および/または後に取得する、および/または、患者に治療が行われている一般的な期間の前、間、および/または後に取得することができる。
【0388】
いくつかの実施形態においては、PDパラメータは、患者によって、例えば患者インタフェースを使用して直接提供される。いくつかの実施形態においては、患者は、PDパラメータのレベルの個人的な判断に基づいて、PDパラメータの視覚表示を手動で調整することができる。一例においては、患者は、例えば患者インタフェースが構築・設定されている携帯電話および/または任意の他のパーソナルデバイスのタッチスクリーン上で、痛みのレベルを示すグラフの棒を高くしたり低くしたりすることができる。
【0389】
いくつかの実施形態においては、PDパラメータのレベルを明確に伝えることができない患者は、例えば後から説明するものなど、患者がPDパラメータの現在のレベルを判断することを支援する対話型の一連のツールを利用することができる。
【0390】
患者によって示される、個人的に自覚される意識的なPDパラメータに加えて、またはこれに代えて、バイオマーカーなどの個人のPDパラメータを、患者インタフェースおよび/またはシステムによって、例えばセンサーを使用して取得する。いくつかの実施形態においては、患者インタフェースが構築・設定されている携帯電話および/またはパーソナルコンピュータの1つまたは複数の標準的な構成要素が、パラメータを取得するためのセンサーとして機能する。患者からPDパラメータを取得するためのセンサーとして使用できるいくつかの構成要素としては、タッチスクリーン(例えば機敏性、目と手の協応、記憶力/認識力の状態を評価するのに使用できる)、ジャイロスコープ、加速度計、近接センサー、および/またはジェスチャーセンサー(IRセンサーなど)(例えば運動技能を評価するのに使用できる)、カメラおよび/または光源(例えば視覚追跡、サッケードの不一致(saccade variance)、目の血管拡張、瞳孔拡張、脈拍を検出するのに使用できる)、RGB照明(例えば環境認知を評価するのに使用できる)、磁力計および/またはGPS(例えば方向定位を評価するのに使用できる)、スピーカーおよび/またはマイクロフォン(例えば聴力、発声能力を評価するのに使用できる)、温度および/または湿度センサー(例えば体温を評価するのに使用できる)、が挙げられる。
【0391】
いくつかの実施形態においては、本MDI装置は、個人のフィードバックデータを取得するように構成されている。一例においては、本MDI装置は、流量センサーおよび/または圧力センサーを備えている。オプションとして、患者の呼吸に関連する情報を、流量センサーおよび/または圧力センサーを使用して取得する。いくつかの実施形態においては、センサーは、吸入の容積を検出するようにされている。吸入容積とPDパラメータ(痛みのレベルなど)の間に相関関係が存在しうるため、いくつかの実施形態においては、患者におけるPDパラメータを求める目的で流量および/または圧力の測定を行う。
【0392】
1つまたは複数の個人のPDパラメータが取得された時点で、それに応じて用量および/または投薬計画を修正することができる(1203)。いくつかの実施形態においては、提供された情報に基づいて患者の状態を改善または変化させる一方で、治療窓(症状が緩和する治療効果の下限と、副作用レベルがまだ耐えられる治療効果の上限との間)の中に患者を維持するなど、あらかじめ選択される薬力学プロファイルを達成する目的で、用量および/または投薬計画を修正する。いくつかの実施形態においては、最小限の治療効果を下回ったときに、患者による入力によって、用量を増やす、および/または、頻度もしくは量またはその両方に関して投薬計画を調整するように、MDI装置を構成することができる。オプションとして、最小限の治療効果を上回るレベルが得られるように、用量および/または投薬計画を修正する。
【0393】
これに加えて、またはこれに代えて、副作用が許容されうる最大レベルとなるように、用量および/または投薬計画を修正する。
【0394】
【0395】
図10Bは、ある患者(患者X、35歳、BMI値22)用に計算された3時間の投薬計画を示している。計算された投薬計画の一例によると、
図10Bにおいて赤い曲線によって示された3時間有効なPKプロファイルに対して、患者Xを治療窓内に維持するためには、患者Xは、いくつかの実施形態によるMDI装置を使用して、時間および用量として、00分:1.2mg、10分:1.0mg、60分:0.5mgにおいて、活性物質の肺送達を受ける必要がある。青い曲線は、示された用量において計算されたPDプロファイルの例を表している。図示したように、計算された投薬計画では、患者Xが上下限レベルの範囲(すなわち副作用レベルより下かつ治療効果レベルより上)の中、すなわち例示した悪い精神活性作用の目盛りにおいて2.5~7.5を範囲とする治療窓1303の中、に維持される。
【0396】
図10Cにおいては、治療の間および/または治療後に、患者Xは、副作用の限界値を変更したいことを、例えば患者インタフェース画面上で精神活性レベルのバー1301を上げることによって示す。バーを上げることによって、患者は、悪い精神活性作用の許容レベルを高くしたいことを示すことができる。すると
図10Dに示したように、患者の入力に基づいて治療窓が再定義される(例えば治療窓が精神活性の目盛りにおいて2.5~5の範囲に狭まる)。
【0397】
これに応じて、現在の用量および/または投薬計画を修正することができる。例えば、患者が経験している副作用(精神活性作用)のレベルを下げる目的で、最初の肺送達から例えば60分後の肺送達において予定されている所定の気化量を0.5mgから0.3mgに減らす。
【0398】
いくつかの実施形態においては、用量および/または投薬計画が、患者の入力に基づいて自動的に修正される。これに加えて、またはこれに代えて、患者の入力および/またはシミュレートされたプロファイルが、自動的に、および/または患者の要求時に医師に伝送され、医師が投薬計画を修正する。
【0399】
なお、治療効果および/または副作用に対する患者の感受性は、1日を通して変化することがあり、例えば、夜には痛みに対する高い感受性を示し、朝には認識能力が低下する患者の場合、夜は治療効果を感じにくい、または朝は副作用をより強く感じる。
【0400】
副作用レベルに加えて、または代えて、患者は、自分の治療効果のレベルおよび/または他の状態を示すことができ、それに応じて用量および/または投薬計画が修正される。
【0401】
図10Eは、患者によって動かすことのできる調整スライダー1305を含む患者インタフェースアプリケーションの例を示している。いくつかの実施形態においては、このアプリケーションは、現在の状態の推定を患者に提示し、この推定は、所定の用量、投薬、および/または投薬計画、患者から取得された以前の入力(例えばバイオマーカー、および/またはその他の直接または間接的な個人のPDパラメータを含む入力)、個々の患者の治療および効果の履歴、患者の使用記録、患者の医学的状態、集合的なデータベースからの情報、その他の情報、のうちの1つまたは複数に基づいて計算される。
【0402】
治療中および/または治療後に、患者は、自覚されるPDプロファイルが反映されるようにスライダーをドラッグすることができる。例えば、患者が完全な治療効果を感じている(例えば患者にもはや痛みがない)場合、患者は「最適」状態に(例:「精神活性」状態に)スライダーを動かすことができる。
【0403】
患者インタフェースは、患者から取得された入力を使用して、次回の用量および/または投薬計画を自動的に修正することができる。いくつかの実施形態においては、修正の情報1307(例えば次回の投薬は量が増えることを患者に知らせる)が患者に表示される。オプションとして、アプリケーションは、用量、投薬、および/または投薬計画を変更することに対する患者側の確認1309を要求するように構成される。
【0404】
いくつかの実施形態においては、患者からの入力および/または修正された設定は、医師インタフェースに自動的に伝送される。いくつかの場合においては、医師は、新たに定義される用量および/または投薬計画の設定を手動で変更することを決定する。
【0405】
図11は、いくつかの実施形態による、携帯型パーソナルデバイスおよび/またはMDI装置を使用して1つまたは複数のバイオマーカーを測定し、それに応じて用量および/または投薬計画を修正する方法の流れ図である。
【0406】
いくつかの実施形態においては、1つまたは複数のバイオマーカーを測定する(1401)。いくつかの実施形態においては、バイオマーカーは、治療される患者における副作用の存在および/または程度を示す。オプションとして、バイオマーカーの測定値を使用して、個々の患者の治療窓を決定する、および/または、患者を治療窓内に維持するように用量および/または投薬計画を制御する。
【0407】
副作用(認知障害や他の精神活性作用など)は、さまざまな遺伝形質および生物学的特徴が与えられたときに患者間で異なることがある。したがって、いくつかの実施形態においては、例えばシステム内の1つまたは複数のセンサー、および/または、患者インタフェースデバイス内に設けられている1つまたは複数のセンサー(例えば上述したような携帯電話のセンサーなど)を使用して、個人のバイオマーカー(CNSバイオマーカーなど)を患者から取得する。
【0408】
いくつかの非侵襲性バイオマーカー評価法としては、衝動性眼球運動の評価(サッケード運動など)、記憶テスト、適応追従(adaptive tracking)、指タッピング評価、重心動揺評価、視覚的アナログ尺度評価、その他の評価法が挙げられる。
【0409】
いくつかの実施形態においては、この技術分野において公知であるさまざまな非侵襲性バイオマーカー試験(認知課題など)を行うことができ、認知課題としては、例えば、反応時間、注意力、視空間スパン、名前の想起、物語の想起、顔の想起、名前と顔の関連付け、構築課題(construction)、言語流暢性、物品呼称、潜在記憶、論理的推論、その他の認知課題が挙げられる。
【0410】
いくつかの実施形態においては、バイオマーカーの測定値を医師に伝える(1403)。オプションとして、PDパラメータの測定値を、MDI装置のメモリおよび/または患者インタフェースのメモリに記憶する。これに加えて、またはこれに代えて、PDパラメータの測定値を、データベースにアップロードする。オプションとして、PDパラメータの測定値を、データベースに格納されているPDパラメータの測定値(例えば、個々の患者の以前のPDパラメータの測定値、別の患者のPDパラメータの測定値、文献からのPDパラメータの測定値など)と比較する。
【0411】
いくつかの実施形態においては、PDパラメータの測定値に従って用量および/または投薬計画を修正する(1405)。
【0412】
図12A~
図12Cは、いくつかの実施形態による、PDパラメータデータを取得する、および/または、患者が活性物質の気化量(用量および/または投薬計画)を決定するのを支援する、さまざまなアプリケーションを備えた患者インタフェースの印刷画面である。
【0413】
ここに一例として示したアプリケーション(携帯電話やタブレットコンピュータなどの携帯型パーソナルデバイスにインストールすることができる)においては、患者は、1つまたは複数の課題(ゲームなどの一部として組み込むことができる)を対話式に実行し、それらの課題に基づいて個人のPDパラメータを評価することができる。いくつかの実施形態においては、副作用レベル(患者の精神活性レベルなど)が、アプリケーションによって自動的に推定される。これに加えて、またはこれに代えて、アプリケーションは、自覚される治療効果および/または副作用を患者が明確に伝えることを支援し、それらを入力としてシステムに提供することができる。
【0414】
ここに示した課題としては、例えば、ターゲットを指で追う(
図12A)、ターゲットを目で追う(
図12B)、ターゲットに位置を合わせる(
図12C)が挙げられる。
【0415】
それ以外のアプリケーションとしては、例えば、この技術分野において公知である動作および方法(例えば、運転シミュレーション、カードの分類、計算テスト、時間の推測、記号のコピー、適応追跡(adaptive tracking)、反応時間、絵、言い回し技能)を使用してさまざまな個人のPDパラメータを測定するアプリケーション、および/または例えば上述した他のアプリケーション、が挙げられる。
【0416】
図13は、いくつかの実施形態による、1種類または複数種類の活性物質を自動的かつ制御下で肺送達するように構成されている吸入器装置の概略図である。
【0417】
いくつかの実施形態においては、装置1601は、投薬ユニット供給器1603(例えばパレットの供給器であって、パレットは薬理活性物質を含んでおりそこから薬理活性物質を気化させることができる)を備えている。いくつかの実施形態においては、投薬ユニット供給器は、活性物質の発生源である少なくとも1つのパレットの供給元と、例えば上述したように投薬ユニットを処理して送達可能な活性物質を得るための機構と、を備えている、またはそれらと連動している。
【0418】
パレットは、さまざまな形態(例えば固体の塊、固体の粒子、粉末など)を備えることができる。オプションとして、パレットは、カートリッジ、カプセル、および/またはその他の容器の中に含まれている。いくつかの実施形態においては、処理機構として、例えば、(例:気化するように)加熱する、エアロゾルにする、化学反応を起こす(例えば別の材料と混合することによる)、容器から生物活性物質を解放する(例えばカプセルを割って開く、噴射剤、結集(mobilizing)による)、その他のタイプの処理、が挙げられる。これに代えて、活性物質はただちに使用できる形態であり、パレットの加熱によって使用者に送達する前に何らの処理も必要としない。
【0419】
いくつかの実施形態においては、吸入器装置1601は、入力部1605を備えたMDI装置である。オプションとして、入力部1605は、用量および/または投薬計画に関連するデータを受け取るように構成されており、これらの用量および/または投薬計画に従って患者に活性物質が送達される。これに加えて、またはこれに代えて、入力部1605は、センサー(
図13には示していない)(装置1601内に含まれている、および/または装置1601の外部に設けられている)から、1つまたは複数の情報を受信するように構成されている。
【0420】
いくつかの実施形態においては、吸入器装置1601はコントローラ1607を備えており、コントローラ1607は、薬理活性物質の肺送達を開始する、および/または修正する、および/または終了するように構成されている。いくつかの実施形態においては、コントローラ1607は、投薬ユニット供給器1603を動作させ、例えば、加熱要素(抵抗加熱要素など)によるパレットの加熱を作動させる。いくつかの実施形態においては、コントローラ1607は、活性物質の所定の気化量(入力として受信される用量および/または投薬計画など)の送達を作動させる。いくつかの実施形態においては、コントローラ1607は、例えば1つまたは複数の弁を作動させることによって、活性物質の流れを制御する。いくつかの実施形態においては、コントローラは、現在の流量に基づいて活性物質を解放するようにされている。
【0421】
いくつかの実施形態においては、吸入器装置1601は、出力部1609を備えている。
【0422】
オプションとして、出力部1609は、患者によって係合可能な(engageable)マウスピースとして構成されている。マウスピースに代えて、出力部1609は、呼吸マスク、乳児用おしゃぶりに似たアタッチメント、および/または、蒸気の流れを患者に送達するのに適する他の構造、として構成することができる。
【0423】
いくつかの実施形態においては、装置1601の構成要素(投薬ユニット供給器、コントローラ、および/または他の構成要素など)は、ハウジング1611の中に収容されている。オプションとして、ハウジングは、ハンドヘルドデバイスとして使用するための形状および寸法を有する。
【0424】
いくつかの実施形態においては、MDI装置1601は、流れ制御機構を備えている。
【0425】
オプションとして、蒸気の流れは、1つまたは複数の弁を使用して制御される。いくつかの実施形態においては、例えば送達のタイミングを調整して、患者の吸入(例えば装置に組み込まれているセンサーによって示される)の間にのみ活性物質が患者の方に流れるようにすることによって、個々の患者ごとに流れが選択される、および/または修正される。いくつかの実施形態においては、本装置は、吸入を終える、より深く吸い込む、および/またはそれ以外に呼吸のリズムや強さを変更するタイミングを患者が直感的に認識することができるように、流れを修正するように構成されている。一例においては、吸入を終わるように患者に示すため、大きな流量のパルスを装置によって送り込む。
【0426】
いくつかの実施形態においては、装置の流出路の中に閉じ込められたまま患者に送達されない活性物質の量が減少するように、流れが選択される、および/または修正される。いくつかの場合においては、流れを制御することによって、閉じ込められる活性物質の量が既知の所定の量まで減少する。
【0427】
いくつかの実施形態においては、コントローラ1607によって流れを制御する。オプションとして、入力部1605において受信されたデータ、センサーによって取得されたデータ、および/または他の情報に従って、流れを制御する。
【0428】
個々の患者ごとに動作する流れ制御機構を備えた装置の潜在的な利点として、装置によって送達される活性物質のタイミングおよび/または所定の気化量に関して、患者への送達の精度が改善され、これによりシステム/MDI装置の性能が向上する。
【0429】
図14Aは、いくつかの実施形態による吸入器装置1701(MDI装置とすることができる)の構造の概略図である。
【0430】
この構造においては、投薬ユニット供給器1703は、投薬ユニット(カートリッジ)1705と、加熱要素1707と、送り部1709とを備えており、送り部1709は、加熱要素1707に対して(例えば加熱要素に接触するように、または加熱要素に近接するように)投薬ユニットを移動させる。
【0431】
いくつかの実施形態においては、加熱要素は、例えば伝導、対流、および/または輻射によって局所的な加熱を提供するように構成されている。いくつかの実施形態においては、パレットに含まれている気化性の薬理活性物質の蒸気を形成するのに適する温度まで、十分に短い時間でパレットを加熱する。いくつかの実施形態においては、パレットは、選択的および/または局所的に活性化することのできる移動する要素として編成されている。オプションとして、パレットは、1つにまとめられた複数の領域として編成されている。オプションとして、各領域が所定の気化量に対応する。
【0432】
いくつかの実施形態においては、パレットから解放された蒸気は、蒸気室1711の中に集まり、そこから流出路を通って患者まで送られる。
【0433】
オプションとして、流量を制御するために流出路に沿って弁1713が配置されている。
【0434】
いくつかの実施形態においては、装置1701はマウスピース1715を備えており、吸入に応えて蒸気がこのマウスピース1715から患者に送達される。これに代えて、例えば衰弱した患者に、オプションとして補助酸素と一緒に薬剤を送達するため、マウスピース1715を別の要素(例えばマスクおよび/または鼻カニューレ)に取り付けることができる。オプションとして、マウスピースは弁1713と流体連通している。
【0435】
いくつかの実施形態においては、装置1701は、動力源1717(例えば電池、手巻き式ばね、および/または壁のコンセント用プラグ)を備えている。
【0436】
いくつかの実施形態においては、装置1701は、例えば上述したようなコントローラ1719を備えており、コントローラ1719は、弁1713、動力源1717、投薬ユニット供給器1703のうちの1つまたは複数を制御するように構成されており、このとき投薬ユニット供給器は、全体として、またはその複数の構成要素が個別に制御される。いくつかの実施形態においては、コントローラ1719は、投薬ユニットの使用が認められていることを確認する。
【0437】
いくつかの実施形態においては、コントローラ1719はメモリ1721と通信し、コントローラはメモリ1721を読み取る、および/またはメモリ1721に書き込むことができる。
【0438】
図14Bは、複数の個別のパレット1725を備えた投薬ユニット1723を示している。各パレット1725は、1種類または複数種類の単離された生物活性物質を気化させるように意図された1つまたは複数の区画または領域1727を含み、これらの区画または領域1727は、パレットのハウジングとして機能する加熱要素1729に囲まれている。いくつかの実施形態においては、加熱要素1729は、パレットを囲むケージに似た金網の形状を有する。いくつかの実施形態においては、活性物質を気化させるため、加熱要素1729に電流が流れ、個々の特定の投薬ユニットに含まれている充填されたパレットを加熱する。生成された蒸気は、オプションとして蒸気室に集められ、患者に送達される。
【0439】
投薬ユニットが個々に加熱される潜在的な利点として、例えば移動する帯状の投薬ユニットを、固定された加熱要素によって加熱する場合と比較して、患者に送達される活性物質の所定の気化量が、より正確に制御される。特定の投薬ユニットを特定のタイミングにおいて個々に装填して加熱することにより、MDI装置の精度を向上させることができる。
【0440】
図15は、いくつかの実施形態による、
図6によるシステムを使用して、個々の患者を治療窓内に維持しながら治療する方法の流れ図である。
【0441】
いくつかの実施形態においては、MDI装置を、所定の気化量(用量および/または投薬計画)を用いてプログラムする(1801)。オプションとして、医師が手動で(例えば装置自体の作動ボタンを押すことによって)、および/または医師インタフェースを使用して、吸入器装置において用量および/または投薬計画を設定する。これに加えて、またはこれに代えて、用量および/または投薬計画を、患者インタフェースから送られる要求/情報に従ってMDI装置において設定する。
【0442】
いくつかの実施形態においては、装置を作動させて活性物質を患者に送達する(1803)。いくつかの実施形態においては、患者からの直接的および/または間接的なフィードバックデータをリアルタイムで取得する(1805)。オプションとして、肺送達(吸入セッション)の間全体にわたりフィードバックデータを取得する。治療は、一般には肺送達から始まり、その後5~20分の間に(例えば活性物質に対するあらかじめ選択される薬力学プロファイルが完全に表れたとき、および/またはそれより後の時点で)終わる。これに加えて、またはこれに代えて、一連の肺送達の全体にわたり(例えば1時間、3時間、5時間、9時間、12時間、またはこれらの中間の時間、より長い時間、またはより短い時間にわたり)、フィードバックデータを取得する。プロトコルには、例えば、連続する肺送達の間の間隔を15~180分の範囲内として1日あたり5~10回の肺送達を含めることができる。
【0443】
いくつかの実施形態においては、患者から取得されるフィードバックデータには、治療効果(例えば症状の強さ)および/または副作用(例えば患者の精神活性状態)など個人のPDパラメータが含まれる。
【0444】
いくつかの実施形態においては、患者インタフェースが患者との対話を通じてフィードバックデータを取得する。いくつかの実施形態においては、現在の状態に関する患者への質問が画面に表示され、患者はこれらの質問に答える。このような質問は、例えば、痛みのレベルを示すバー(患者が上げたり下げたりできる)の形で、提示することができる。これに加えて、またはこれに代えて、患者との対話型の1つまたは複数のアプリケーション(ゲームなど)によって、フィードバックデータを取得する。オプションとして、ユーザインタフェースと対話するときの患者の入力を分析することによって、非侵襲性バイオマーカーのレベルを推定する。これに加えて、またはこれに代えて、1つまたは複数のセンサーを使用して(例えば、非侵襲性バイオマーカーセンサーとして機能する、スマートフォン、ハンドヘルドデバイス、ウェアラブルデバイス、リストデバイス、または一体型アイウェアデバイスの構成要素を利用することによって)、さまざまなバイオマーカーを測定することにより、患者からフィードバックデータを取得する。
【0445】
いくつかの実施形態においては、個人のPDパラメータを、定期的に(例えば半日、毎日、毎週、毎月)、または必要時(例えば投薬および/または一連の投薬の前、投薬および/または投薬計画の変更前および/または変更後、その他)に、取得する。
【0446】
いくつかの実施形態においては、PDパラメータに応じて、用量および/または投薬計画を修正する(1807)。オプションとして、患者を治療窓内に維持しながら望ましい効果(例えば患者の痛みのレベルを下げる)を達成するように、用量および/または投薬計画を修正する。いくつかの実施形態においては、用量および/または投薬計画を、患者インタフェースによって繰り返し修正する。修正は、複数回行うことができ、例えば、1回または複数回の肺送達時、次の肺送達までの間、または肺送達後、および/または、患者が治療される治療期間全体にわたり、行うことができる。修正は、安全性の上限(例えば患者が危険な状態となりうる用量)によって制限する。
【0447】
いくつかの実施形態においては、患者インタフェースおよび/または吸入器(またはMDI)装置は、1回または複数回の肺送達を行うことを患者に思い出させる(1809))。このようなリマインダ(お知らせ)は、ポータブルデバイス/ハンドヘルドデバイス(例:スマートフォン、ハンドヘルドデバイス、ウェアラブルデバイス、リストデバイス、または一体型アイウェアデバイス)における視覚的な合図(例えば光で示す)、音、振動、通知、またはこれらの組合せとして、提供することができる。
【0448】
いくつかの実施形態においては、患者の使用データを、MDI装置のメモリおよび/または患者インタフェースのメモリに記録および記憶する。オプションとして、活性物質の送達を、使用データに応じて、可能な場合にはリアルタイムで修正する。例えば、患者が1回または複数回の肺送達を実行し忘れた場合、例えば、次の1回または複数回の肺送達において活性物質の量を増やした送達が設定されるように、用量および/または投薬計画を自動的に修正することができる。
【0449】
いくつかの実施形態においては、1801~1811に記載した動作のうち任意の1つまたは複数を繰り返すことができる。患者から個人のPDパラメータおよび/または使用データを繰り返し取得することによって、用量および/または投薬計画を継続的に調整することができ、これにより個々の患者に対する治療の実際の効果に基づいて、柔軟性のある高精度かつ正確なパーソナライズされた治療が患者に提供され、これは有利である。
【0450】
本出願から発生する特許権の存続期間中、単離された生物活性物質を気化させて吸入により送達する数多くの関連する投薬ユニットが開発されるものと予測されるが、用語「投薬ユニット」の範囲は、このような新規の技術すべてを含むものとする。
【0451】
本明細書に開示されている寸法および値は、記載されている正確な数値に厳密に限定されないものと理解されたい。そうではなく、特に明記されていない限り、このような寸法それぞれは、記載されている値と、その値の周囲の機能的に同等な範囲の両方を意味するものとする。例えば、「10μm」と開示されている寸法は、「約10μm」を意味するものとする。
【0452】
本明細書では、語「約」が前に付いている数値範囲は、記載されている範囲に限定されないことを理解されたい。そうではなく、語「約」が前に付いている数値範囲は、本開示によるマイクロカプセルまたは製剤における任意の要素に関して当業者によって受け入れられる範囲を含むものと理解されたい。
【0453】
本明細書において使用されている語「約」は、特定の値に対して、その技術分野における通常の技能を有する者によって許容されると判断される誤差範囲内を意味し、この誤差範囲は、その値の測定方法または決定方法(すなわち測定システムの限界)にある程度依存する。例えば、「約」は、所定の値の10%まで、より好ましくは5%まで、さらに好ましくは最大1%までの範囲を意味しうる。本出願および請求項において特定の値が記載されている場合、特に明記されていない限り、語「約」の意味は、その特定の値の許容誤差範囲内である。
【0454】
語「備えている」、「含む」、「有する」、およびこれらの活用形は、「~を含み、ただしそれらに限定されない」を意味する。
【0455】
語「からなる」は、「~を含み、それらに限定される」を意味する。
【0456】
「本質的に~からなる」という表現は、組成物、方法、または構造が、追加の成分、追加のステップ、および/または追加の部分を含むことができるが、その場合の条件として、それら追加の成分、追加のステップ、および/または追加の部分が、特許請求の範囲に記載されている組成物、方法、または構造の基本的かつ新規の特徴を実質的に変化させない場合に限られることを意味する。
【0457】
本明細書では、単数形(「a」、「an」、および「the」)は、文脈から明らかに複数形が除外される場合を除いて、複数形も含む。例えば、語「化合物」または「少なくとも1種類の化合物」は、複数種類の化合物(その混合物を含む)を含みうる。
【0458】
語「例」および「例示的な」は、本明細書においては、「例、一例、または説明としての役割を果たす」を意味する目的で使用されている。「例」または「例示的な」として説明されている実施形態は、他の実施形態よりも好ましい、または有利であるとは必ずしも解釈されないものとし、さらには、他の実施形態の特徴を組み込むことが必ずしも排除されない。
【0459】
語「オプションとして」は、本明細書においては、「いくつかの実施形態において設けられ、他の実施形態では設けられない」を意味する目的で使用されている。いずれの特定の実施形態も、互いに矛盾しない限りは複数の「オプションの」特徴を含むことができる。
【0460】
本出願の全体を通じて、さまざまな実施形態は、範囲形式で提示されていることがある。範囲形式での記述は、便宜上および簡潔さのみを目的としており、発明の範囲を固定的に制限するようには解釈されないことを理解されたい。したがって範囲の記述には、具体的に開示されている、とりうる部分範囲すべてと、その範囲内の個々の数値とが含まれるものとみなされたい。例えば、1~6などの範囲の記述には、具体的に開示されている部分範囲(例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)と、この範囲内の個々の数(例えば1、2、3、4、5、および6)とが含まれるものとみなされたい。このことは、範囲の広さにかかわらずあてはまる。
【0461】
本明細書中に数値範囲が示されているときには、示された範囲内の任意の該当する数値(分数または整数)が含まれるものとする。第1の指示数と第2の指示数「との間を範囲とする」、および、第1の指示数「から」第2の指示数「までを範囲とする」という表現は、本明細書においては同義に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間のすべての分数および整数を含むものとする。
【0462】
本明細書において使用されている語「方法」は、与えられた課題を達成するための方法、手段、技術、手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学、医学の技術分野の専門家に公知である方法、手段、技術、手順、あるいは、これらの技術分野の専門家によって、公知の方法、手段、技術、手順から容易に開発される方法、手段、技術、手順、を含む(ただしこれらに限定されない)。
【0463】
本明細書において使用されている語「治療する」は、疾患の進行を抑止する、実質的に抑制する、遅らせる、回復させる、疾患の臨床症状または外観症状を実質的に改善する、疾患の臨床症状または外観症状の出現を実質的に防ぐことを含む。
【0464】
測定可能なパラメータのすべての値は、特に明記されていない限り、温度、圧力、その他の標準的な条件下で測定されることを想定する。
【0465】
明確さを目的として、個別の実施形態の文脈の中で説明されている発明の特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中に組み合わせて設けることもできることを理解されたい。逆に、簡潔さを目的として、1つの実施形態の文脈の中で説明されている発明のさまざまな特徴は、個別に設ける、またはそれらの一部を適切に組み合わせて設ける、または説明されている任意の他の実施形態において適切に設けることもできる。さまざまな実施形態の文脈の中で説明されている特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作・機能しない場合を除いて、それらの実施形態の必須の特徴とはみなさないものとする。
【0466】
上に説明されており、特許請求の範囲に請求されている本開示のさまざまな実施形態および態様は、以下の例において実験的に裏付けられる。
【0467】
実施例
以下の実施例を参照する。これらの実施例は、上の説明と合わせて、いくつかの実施形態を説明する(ただし本発明はこれらの実施例によって制限されない)。
【0468】
実施例1
一体の通気性基質として、パレット用フレームまたはハウジングに嵌め込むのに適するパレット寸法を有する、多孔率30%(実験室基準)のフリットガラスを使用した。
【0469】
50マイクロリットルのエタノールにおける、単離および精製された50mgのカンナビジオール(CBD)の溶液を調製した。この溶液を通気性基質の上に注ぎ、このとき溶液が基質から浸出することなく基質に染み込んだまま含有されるように注いだ。
【0470】
充填された通気性基質(すなわちパレット)を乾燥器の中に置き、CBDの沸点よりも低い温度(例えば100℃)でエタノールを蒸発させた。
【0471】
エタノールが蒸発した時点で(このことはパレットの一定重量に達することによって判断した)、パレットは、そのまま投薬ユニットに取り付けることのできる状態であった。投薬ユニットのフレームにパレットを配置した後、熱プレス(フレームを溶かしてその上にメッシュを重ねる)、超音波溶接、またはオプションとして生体適合性の接着剤によって、投薬ユニットのフレームにメッシュを融着させる。
【0472】
CBDの沸点は180℃である。対象となる使用者ほとんどが1回の吸入において薬物のすべてではないにしろ大部分を気化させて吸入することができるように、薬物を短時間で気化させて吸入させた(合計で約3秒)。パレットを、180℃以上、ただし通気性基質材料、フレーム材料、およびCBDの燃焼温度より低い温度まで、急速に加熱した。
【0473】
実施例2
一体の通気性基質として、パレット用フレームまたはハウジングに嵌め込むのに適するパレット寸法を有する、多孔率30%(実験室基準)のセラミックを使用した。
【0474】
50マイクロリットルのエタノールにおける、純粋なドロナビノール20mgの溶液を調製した。
【0475】
この溶液を通気性基質の上に注ぎ、このとき溶液が基質から浸出することなく基質に染み込んだまま含有されるように注いだ。
【0476】
充填された通気性基質(すなわちパレット)を乾燥器の中に置き、ドロナビノールの沸点よりも低い温度(例えば100℃)でエタノールを蒸発させる。
【0477】
エタノールが蒸発した時点で(このことは例えばパレットの一定重量に達することによって判断できる)、パレットは、そのまま投薬ユニットに取り付けることのできる状態である。投薬ユニットのフレームにパレットを配置した後、熱プレス(フレームを溶かしてその上にメッシュを重ねる)、超音波溶接、またはオプションとして生体適合性の接着剤によって、投薬ユニットのフレームにメッシュを融着させる。
【0478】
ドロナビノールの沸点は250℃である。薬物を短時間で気化させて吸入させる(合計で約3秒)、パレットを、250℃以上、ただし通気性基質材料、フレーム材料、およびドロナビノールの燃焼温度より低い温度まで加熱する。
【0479】
実施例3
平均粒径75μmのガラスビーズ(例えばSUPELCO 59201など)を、測定された量(約30m3)の酸によって洗浄/シラン処理し、投薬ユニットのフレーム内に配置する。オプションとして、ビーズを支持面に水平な方向に平らに配置し、高さの揃ったビーズの平面がフレーム内に形成されるまで、ビーズが内側に入った状態の投薬ユニットのフレームを(例えばビーズおよび/またはビーズの支持面を振動させることによって)垂直方向に揺らしながら、ビーズを投薬ユニットのフレーム内に分散させる。オプションとして、ビーズがフレームから落下することを防止するため、振動させる前に投薬ユニットのフレームを固定する。
【0480】
50μLのエタノールにおける、5mgのΔ9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノールTHC-10015S)および1mgのリモネン(Sigma-Aldrich社の62118-1mL)の溶液を調製する。
【0481】
この溶液をガラスビーズの上に静かに注ぎ、エタノールを蒸発させるため乾燥器の中に置く。オプションとして、これに代えて、ビーズを溶液に浸してから取り出して乾燥させた後、上述したようにフレーム内に配置する。
【0482】
エタノールが蒸発した時点で(このことは例えばビーズまたはパレット(すでに形成されている場合)の一定重量に達することによって判断できる)、THCおよびリモネンの量を測定または推定し、これは例えば、THC/リモネンの溶液を注いで乾燥させたビーズの重量を、洗浄した後にTHC/リモネンの溶液を注ぐ前のビーズの重量と比較することによる。
【0483】
ここまで、実施形態について、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、当業者には、多くの代替形態、修正形態、および変形形態が明らかであろう。したがって、添付の請求項の趣旨および広い範囲内に含まれるそのような代替形態、修正形態、および変形形態は、すべて本発明に包含されるものとする。
【0484】
本明細書に記載されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、これら個々の刊行物、特許、および特許出願それぞれが、参照によって本明細書に組み込まれることを明示的かつ個別に示されている場合と同じように、それぞれの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている。さらには、本出願において参考文献が引用または特定されていることは、そのような参考文献が本開示の従来技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されない。セクションの見出しが使用されている場合、それらの見出しは必ずしも本発明を制限するものとして解釈されない。
【0485】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第62/019,225号(代理人整理番号:59426、出願日:2014年6月30日)、米国仮特許出願第62/035,588号(代理人整理番号:59871、出願日:2014年8月11日)、米国仮特許出願第62/085,772号(代理人整理番号:59424、出願日:2014年12月1日)、米国仮特許出願第62/086,208号(代理人整理番号:61145、出願日:2014年12月2日)、および米国仮特許出願第62/164,710号(代理人整理番号:60652、出願日:2015年5月21日)の優先権を主張し、これらすべての文書の内容は、その全体が本明細書に記載されている場合と同様に、参照によって本明細書に全体が組み込まれている。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 少なくとも1種類の生物活性物質を使用者に肺送達するための投薬ユニットであって、
パレットと、
前記パレットの表面の少なくとも一部分に熱的に接触しており前記パレットの表面の前記少なくとも一部分にわたる電気抵抗加熱要素と、
を備えており、
前記少なくとも1種類の生物活性物質が、単離された生物活性物質に含まれており、前記パレットが、固体の担体材料を備えており、前記生物活性物質が、前記担体材料の内部および/または表面に存在する、
投薬ユニット。
[2] 前記電気抵抗加熱要素が、前記パレットの少なくとも2つの向かい合う表面の全体にわたる、[1]に記載の投薬ユニット。
[3] 前記担体材料が、前記生物活性物質の貯蔵温度から燃焼/分解温度までの範囲内に含まれる温度範囲において、前記生物活性物質と接触しているときに前記生物活性物質に対して実質的に非反応性である、[1]に記載の投薬ユニット。
[4] 前記担体材料が、前記生物活性物質の貯蔵温度から、前記生物活性物質の蒸発温度よりも50℃高い温度までの温度範囲において、前記生物活性物質と接触しているときに前記生物活性物質に対して実質的に非反応性である、[3]に記載の投薬ユニット。
[5] 前記担体材料が、前記生物活性物質の蒸発温度よりも高い燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度を有する、[1]から[4]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[6] 前記担体材料が、前記生物活性物質の蒸発温度よりも少なくとも50℃高い燃焼温度および/または分解温度および/または溶融温度を有する、[5]に記載の投薬ユニット。
[7] 前記担体材料が、少なくとも10μΩ・mの電気抵抗率を有する、[1]から[6]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[8] 前記担体材料が、少なくとも0.1W/mKの熱伝導率を有する、[1]から[5]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[9] 前記担体材料が、
ガラス、石英、セラミック複合材料、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、からなる群から選択される物質、を含む、
[1]から[8]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[10] 前記パレットが、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を通過させることのできる通気性構造を有する、[1]から[9]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[11] 前記パレットが、一体の通気性基質である、[1]から[10]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[12] 前記パレットが、全体として通気性である押し固められた複数の粒子である、[1]
から[10]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[13] 前記粒子が、10ミクロンより大きい直径を有する、[12]に記載の投薬ユニット。
[14] 前記単離された生物活性物質が、少なくとも10センチポイズ(cP)の粘度を有する液体である、[1]から[13]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[15] 前記単離された生物活性物質の沸点が80℃より高い、[1]から[14]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[16] 前記単離された生物活性物質のオクタノール-水-分配係数(logP)が5より大きい、[13]に記載の投薬ユニット。
[17] 前記単離された生物活性物質のオクタノール-水-分配係数(logP)が1より大きい、[13]に記載の投薬ユニット。
[18] 前記単離された生物活性物質が、合成の生物活性物質を含む、[1]から[17]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[19] 前記単離された生物活性物質が、植物性物質の純粋な抽出物を含む、[1]から[17]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[20] 前記少なくとも1種類の生物活性物質が、
Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビノール(CBN)、カンナビノジオール(CBDL)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビジバリン(CBDV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビトリオール(CBT)、テルペン、フラボノイド、およびこれらの任意の組合せ、からなる群、から選択される生物活性物質、を含む、
[1]から[19]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[21] 前記少なくとも1種類の生物活性物質が、
アヘン、サルビノリン、カチノン、プカテイン、ツジョン、ダミアニン、ブルボカプニン、カバラクトン、ラゴキリン、ラクツカリウム、グラウシン、エルギン、イボガイン、アポルフィン、レオヌリン、アトロピン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニル、ヒドロモルフォン、メタドン、ミダゾラム、ナルブフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、オキシコドン、フェニトイン、レミフェンタニル、リザトリプタン、シルデナフィル、スフェンタニル、ゾルピデム、からなる群、から選択される生物活性物質、を含む、
[1]から[20]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[22] 前記生物活性物質が、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール)である、[1]から[20]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[23] 前記生物活性物質が、前記担体材料の内部および/または表面に、所定の量において提供される、[1]から[22]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[24] 前記電気抵抗加熱要素が、金属製の加熱要素である、[1]から[23]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[25] 前記電気抵抗加熱要素が、2つの端部を有し、かつ前記パレットが中に配置される中空部を有するU字形状、を備えており、したがって、前記2つの端部の間に電圧が印加されたときに少なくとも2つの向かい合う表面の両方に電流が流れる、[1]から[24]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[26] 前記電気抵抗加熱要素が、前記パレットに固定されており、前記パレットを前記投薬ユニットに保持している、[25]に記載の投薬ユニット。
[27] 前記電気抵抗加熱要素が、前記パレットに包まれており前記パレット内に延在する部分、を有する、[26]に記載の投薬ユニット。
[28] 前記電気抵抗加熱要素のうち前記パレット全体にわたる部分が、通気性の抵抗加熱要素である、[1]から[27]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[29] 前記通気性の抵抗加熱要素が、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を通過させることができる、[28]に記載の投薬ユニット。
[30] 前記電気抵抗加熱要素が抵抗メッシュを備えている、[1]から[28]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[31] 前記電気抵抗加熱要素が、エッチングされた金属箔の少なくとも1つのリボンを備えている、[1]から[28]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[32] 前記エッチングされた金属箔の前記リボンが、前記リボンを通気性にする複数の穿孔を備えたポリマー裏材によって裏打ちされている、[31]に記載の投薬ユニット。
[33] 前記エッチングされた金属箔の前記リボンが、高い抵抗を有する狭窄領域を備えており、前記狭窄領域が、前記生物活性物質の解放後、印加された電力の消散時に溶融して前記リボンに沿った電気的導通を遮断する、[31]または[32]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[34] 前記エッチングされた金属箔の前記リボンが、ヒューズ素子に取り付けられており、前記ヒューズ素子が、前記生物活性物質の解放後、印加された電力の消散時に前記リボンに沿った電気的導通を遮断するように構成されている、[31]から[33]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[35] 前記パレットと前記加熱要素とを隔てている通気性の保持メッシュ、
を備えており、
前記保持メッシュが、前記パレットを前記投薬ユニット内に保持するうえで十分に前記パレットを覆っている、
[1]から[34]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[36] 前記通気性の保持メッシュが、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を通過させることができる、[35]に記載の投薬ユニット。
[37] 前記電気抵抗加熱要素が、前記パレット全体にわたる領域の両側に電極接点受け入れ領域を備えている、[1]から[35]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[38] 前記電気抵抗加熱要素が、投薬ユニット引込み部の移動アームに取り付く形状を有する
移動アーム連結領域、を備えている、[1]から[37]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[39] 複数の加熱要素領域であって、各領域が、電流を受け取るように個別に構成されている、前記複数の加熱要素領域、
を備えている、[1]から[38]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[40] 前記複数の加熱要素が、対応する複数のパレットに関連付けられている、[39]に記載の投薬ユニット。
[41] フレームをさらに備えており、前記フレームの開口部に前記パレットが嵌め込まれている、[1]から[40]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[42] 前記フレームが、少なくとも前記生物活性物質が気化する温度の熱に対して耐熱性である、[41]に記載の投薬ユニット。
[43] 前記電気抵抗加熱要素が、前記パレットに熱的に接触しており、かつ、少なくとも前記開口部全体にわたる、[41]に記載の投薬ユニット。
[44] 前記電気抵抗加熱要素が、前記開口部の縁部付近において前記フレームに部分的に埋め込まれている、[43]に記載の投薬ユニット。
[45] 前記フレームが、前記開口部から離れており前記電気抵抗加熱要素が取り付けられている領域、を備えている、[43]に記載の投薬ユニット。
[46] 前記領域において前記フレームの少なくとも一部分を溶融させ、したがって前記フレームの材料が前記抵抗加熱要素における1つまたは複数の開口部に流れ込むことによって、前記電気抵抗加熱要素が前記領域に取り付けられている、[45]に記載の投薬ユニット。
[47] 前記フレームが、投薬ユニット引込み部の移動アームに取り付く形状を有する移動アーム連結領域、を備えている、[41]から[46]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[48] [1]から[47]のいずれかに記載の投薬ユニットのための動作ユニットであって、
前記投薬ユニットを格納位置から使用位置に移動させるように構成されている投薬ユニット引込み部と、
前記生物活性物質が前記動作ユニットの空気路と密封状態に位置が合うように、前記投薬ユニットを保持するように構成されている保持部と、
前記投薬ユニットが前記動作ユニット内にあるとき前記投薬ユニットの前記電気抵抗加熱要素の少なくとも2つの電気接点受け入れ領域に電気的に接触するように配置されている電極と、
を備えている、動作ユニット。
[49] 前記投薬ユニット引込み部が、
前記投薬ユニットの受け入れ側領域と連結する形状を有する投薬ユニット引込みアームであって、前記投薬ユニット引込みアームが動くことによって前記投薬ユニットが前記使用位置に移動する、または前記使用位置から取り出される、前記投薬ユニット引込みアーム、
を備えている、
[48]に記載の動作ユニット。
[50] 前記密封状態に位置が合うことによって、内部空洞内に前記パレットを貫く経路が画成され、前記パレットを通過した空気が前記経路に沿ってそのまま出口開口部に達する、[48]に記載の動作ユニット。
[51] 前記保持部が、前記投薬ユニットを移動させるように構成されている機構、を備えている、[48]に記載の動作ユニット。
[52] [48]から[51]のいずれかに記載の動作ユニットを備えた吸入器装置。
[53] 閉じた容器内に複数の投薬ユニットを備える投薬ユニット供給装置、
を備えている、[52]に記載の装置。
[54] 前記閉じた容器が連動部を含み、前記連動部が、前記容器から最初の投薬ユニットが供給された後、前記最初の投薬ユニットが前記供給装置に戻るまでは前記容器から2番目の投薬ユニットが供給されることを防止する、[53]に記載の装置。
[55] 前記投薬ユニットが気化装置に供給され、前記連動部の動作が、前記気化装置を前記投薬ユニット供給装置に挿入することを含む、[53]および[54]のいずれかに記載の装置。
[56] 把持室装置、
を備えており、前記把持室装置が、
前記把持室装置が投薬ユニット容器に取り付けられているときに、前記投薬ユニット容器から投薬ユニットを密着状態に受け入れる寸法を有する空洞部と、
前記把持室装置が前記投薬ユニット容器から取り外されているときに、前記投薬ユニットに含まれている前記生物活性物質を気化させるため、前記密着状態に受け入れられた投薬ユニットの前記電気抵抗加熱要素に電流を供給するように動作する電力ユニットと、
を備えている、
[53]および[54]のいずれかに記載の装置。
[57] 前記投薬ユニット容器が、複数の前記投薬ユニットを含む、[56]に記載の装置。
[58] 前記生物活性物質を備えた前記パレットを制御下で加熱するとき、前記生物活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量を解放するように構成されている、[52]から[57]のいずれかに記載の装置。
[59] 前記投薬ユニットの内部および前記投薬ユニットの表面の1箇所または複数箇所における温度を感知する温度センサー、
を備えている、[52]から[58]のいずれかに記載の装置。
[60] [1]から[47]のいずれかに記載の投薬ユニットを製造する方法であって、
前記担体材料に、前記単離された生物活性物質を接触させるステップと、
前記生物活性物質が内部および/または表面に塗布された前記担体材料を備えたパレット、を形成するステップと、
前記パレットの1つの面の少なくとも一部分を前記電気抵抗加熱要素によって覆うステップと、
を含む、方法。
[61] 前記パレットを形成する前記ステップが、
前記生物活性物質が内部および/または表面に塗布された前記担体材料の複数の粒子を、投薬室の中に平たい表面上に配置するステップと、
前記複数の粒子が水平になるまで前記平たい表面を振動させるステップと、
前記水平になった複数の粒子を加圧して前記パレットを形成するステップと、
を含む、
[60]に記載の方法。
[62] 前記パレットを形成する前記ステップが、前記担体材料から一部分を切り取って、一体の通気性基質を形成するステップ、を含む、[60]に記載の方法。
[63] 前記切り取るステップが、前記接触させるステップの前に実行される、[62]に記載の方法。
[64] 少なくとも1種類の生物活性物質を患者に肺送達する方法であって、
[52]から[59]のいずれかに記載の吸入器装置の動作ユニットに投薬ユニットを装填するステップと、
前記投薬ユニットの前記電気抵抗加熱要素に電流を印加し、これにより前記生物活性物質の所定の気化量を気化させ、これにより前記所定の気化量を制御下で解放するステップと、
を含む、方法。
[65] 前記電流を印加した後、前記パレットを通じて周囲空気を吸入し、これにより前記所定の気化量を患者の肺器官に肺送達するステップ、
をさらに含む、[64]に記載の方法。
[66] 前記少なくとも1種類の所定の気化量が、
前記患者において前記生物活性物質の少なくとも1つのあらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/または少なくとも1つのあらかじめ選択される薬力学プロファイルを示すように、
選択される、
[65]に記載の方法。
[67] 前記患者において前記単離された生物活性物質を前記装置から肺送達することによって引き起こされる少なくとも1つの薬物動態パラメータおよび/または少なくとも1つの薬物動態変数および/または少なくとも1つの薬力学パラメータを求めるステップと、
前記患者において前記生物活性物質の前記あらかじめ選択される薬物動態プロファイルおよび/または前記あらかじめ選択される薬力学プロファイルを示す前記所定の気化量を、前記薬物動態パラメータおよび/または前記薬物動態変数および/または前記薬力学パラメータに基づいて決定するステップと、
前記生物活性物質の前記少なくとも1種類の所定の気化量が送達されるように前記装置を調整するステップと、
をさらに含む、[66]に記載の方法。
[68] 前記薬物動態パラメータおよび/または前記薬物動態変数および/または前記薬力学パラメータのそれぞれが、個々の患者において求められ、したがって、前記所定の気化量が前記患者に対して個人的に決定される、[67]に記載の方法。
[69] 前記あらかじめ選択される薬力学プロファイルが、望ましい効果の最小レベルから、望
ましくない効果のレベルまでの間を範囲とする、[66]から[68]のいずれかに記載の方法。
[70] 前記薬力学プロファイルが、前記望ましい効果の最小レベルから、前記望ましくない効果の最小レベルまでの間を範囲とする、[69]に記載の方法。
[71] 前記薬力学プロファイルが、前記望ましい効果の最小レベルから、前記望ましくない効果の最小レベルより高いレベルまでの間を範囲とする、[69]に記載の方法。
[72] 前記望ましい効果および/または前記望ましくない効果の少なくとも一方を定義するステップが、前記患者および/または医師からの情報/指示を受け取るステップを含む、[69]から[71]のいずれかに記載の方法。
[73] [64]から[72]のいずれかに記載の方法によってもたらされる、少なくとも1種類の生物活性物質の少なくとも1種類の所定の気化量の吸入、によって治療可能である医学的状態、を治療する方法。
[74] 前記医学的状態が、
アルコール依存症、筋萎縮性側索硬化症、神経性無食欲症、不安障害、食欲の変動、ぜんそく、アテローム性動脈硬化、双極性障害、膀胱機能障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、コラーゲン関節炎、結直腸癌、クローン病、せん妄、消化器系疾患、ドラベ症候群、薬物依存症・渇望、ジストニア、てんかん、線維筋痛症、全般てんかん熱性痙攣プラス(GEFS+)、緑内障、グリオーマ、C型肝炎、HIVに伴う感覚性ニューロパチー、うつ病、ハンチントン舞踏病、高血圧、眼圧上昇、炎症性腸疾患(IBD)、不眠症、過敏性腸症候群(IBS)、食欲不振、白血病、偏頭痛、運動障害、多発性硬化症(MS)、吐き気、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、パーキンソン病、幻肢痛、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、月経前症候群、掻痒、精神障害、心因性疼痛(精神痛または身体表現性疼痛)、てんかん発作、敗血症性ショック/心原性ショック、性機能障害、皮膚腫瘍、睡眠時無呼吸、痙性、脊髄損傷、チック、トゥレット症候群、振戦、意図しない体重減少、嘔吐、からなる群、から選択される、
[73]に記載の方法。
[75] 少なくとも1種類の生物活性物質を使用者に肺送達するための投薬ユニットであって、
開口部を有するフレームと、
固体の担体材料からなり、前記開口部に嵌め込まれているパレットと、
を備えており、
前記パレットが、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を前記パレットを通過させるのに十分に通気性である、
投薬ユニット。
[76] 前記パレットの少なくとも2つの向かい合う表面に熱的に接触しており前記少なくとも2つの向かい合う表面の全体にわたる電気抵抗加熱要素、
を備えており、
前記パレットが、前記電気抵抗加熱要素との組合せにおいて、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を前記少なくとも2つの向かい合う表面の間で前記パレットを通過させるのに十分に通気性である、
[75]に記載の投薬ユニット。
[77] 前記パレットが、少なくとも1~5kPaの引張り真空下で少なくとも毎分0.5リットルの気体を前記少なくとも2つの向かい合う表面の間で前記パレットを通過させるのに
十分に通気性である、[76]に記載の投薬ユニット。
[78] 前記担体材料が、少なくとも10μΩ・mの電気抵抗率を有する、[75]から[77]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[79] 前記担体材料が、少なくとも0.1W/mKの熱伝導率を有する、[75]から[78]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[80] 前記担体材料が、
ガラス、石英、セラミック複合材料、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、からなる群、から選択される、
[75]から[79]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[81] 前記パレットが、一体の通気性基質である、[75]から[80]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[82] 前記パレットが、全体として通気性である押し固められた複数の粒子である、[75]から[80]のいずれかに記載の投薬ユニット。
[83] 前記粒子が、10ミクロンより大きい直径を有する、[82]に記載の投薬ユニット。