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  • 特許-リチウムイオン電池負極材料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池負極材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20240105BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240105BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240105BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/485
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022170556
(22)【出願日】2022-10-25
(65)【公開番号】P2023158230
(43)【公開日】2023-10-27
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】202210400775.2
(32)【優先日】2022-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522417960
【氏名又は名称】▲暉▼▲陽▼(▲貴▼州)新能源材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130993
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 弘揮
(72)【発明者】
【氏名】杜▲輝▼玉
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105140501(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106252626(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113675389(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110620221(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109888229(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸テトラブチルをグリセリン溶剤に分散させ、1~5wt%溶液を調製し、濃度が12g/Lであるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液を入れ、テトラメチル水酸化アンモニウムを加えPhを9~10に調整し、均一に混合し、その後、1wt%フッ化アンモニウム溶液を加え、均一に混合した後水熱反応釜に移し、150~200℃で1~6h加熱し、生成物を遠心させ、エタノール、水で10回洗浄し、真空乾燥炉に置き60℃で12h乾燥し、チタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンを得るステップ(1)と、
質量濃度が1~10wt%であるチタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンの有機溶液を調製し、その後質量濃度が1~10wt%であるリチウム塩溶液を加え、均一に混合した後、黒鉛を加え、均一に混合し、噴霧乾燥し、多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材を得るステップ(2)と、
質量比100:1~10で多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材及びフッ化アンモニウムを秤取し、管状炉に置き、なかでも、フッ化アンモニウムが気流の上流方向に位置し、アルゴン雰囲気下で、400℃で2時間加熱した後、800℃まで昇温させ6h炭化し、窒素、フッ素共ドープチタン酸リチウム/黒鉛複合材を得るステップ(3)とを含む、リチウムイオン電池負極材料の製造方法であって、
チタン酸テトラブチル:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド:テトラメチル水酸化アンモニウム:フッ化アンモニウムの質量比は1:20~40:0.1~1:0.5~2であり、
チタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタン:リチウム塩:黒鉛の質量比は1~10:1~10:100であることを特徴とする、リチウムイオン電池負極材料の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(2)において、リチウム塩は炭酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム又は硫化リチウムの1種であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池材料の技術分野に属し、具体的には、リチウムイオン電池負極材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のエネルギー密度及びその急速充電性能に対する要求の向上に伴い、リチウムイオン電池負極材料が高いエネルギー密度を有するとともに、材料の急速充電性能も向上することが求められる。現在、市販されている負極材料は、主として人造黒鉛を中心とし、実際の比容量が約350~360mAh/g、充電倍率が1C~5C、初回効率が92~94%であり、次世代高エネルギー密度急速充電電池の要求を満足することができない。黒鉛材料のエネルギー密度及びその急速充電性能を向上するためには、一般的に、等方性がよく、骨材粒子径が低く、その被覆量が多いアモルファスカーボン材料を選択することにより達成するが、原料を選択向上する幅には限界があり、かつ、市販されている低インピーダンス原料はほぼ選別されてしまったが、インピーダンスが明らかに低減されていない。従って、黒鉛のコアのドーピング及びそのシェル被覆層のドーピングにより、充放電過程でイオンの拡散速度を向上し、その電子インピーダンスを低減し、パワー性能を改善する必要がある。同時に、ドーピング被覆は、さらに材料の初回効率を改善し、間接的に電池の正極グラム容量の発揮を向上し、エネルギー密度を向上することができる。現在、黒鉛材料のドーピング被覆には、アモルファスカーボン及びその窒素、ホウ素及びその導電剤、酸化物及びその固体電解質等の電子又はイオン導電性が高い材料を用いることが多い。例えば、中国特許出願番号202011383817.3では、黒鉛被覆材料及びその製造方法を開示している。その電池負極は、黒鉛の表面被覆層にタンタルドープリチウムランタンジルコニウム酸素及び導電材料をドープしたものであり、リチウムイオンの伝送速度及び拡散係数を効果的に向上することができるので、導電材料は材料の電子導電率を効果的に向上することができる。シェル中のタンタルドープリチウムランタンジルコニウム酸素、アモルファスカーボン及び導電材料は、相乗して良いリチウムイオン導電率及び電子導電性を示し、黒鉛被覆材料のイオン伝送速度及び導電性の向上に寄与し、黒鉛負極材料の倍率性能、安全性能及びサイクル性能を効果的に向上することができるが、初回効率が低く、パワー性能の改善が顕著ではない等のデメリットがある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、前記デメリットを克服して、黒鉛複合材の初回効率及びそのパワー性能を向上できるリチウムイオン電池負極材料の製造方法を提供することである。
【0004】
本発明に係るリチウムイオン電池負極材料の製造方法は、
【0005】
チタン酸テトラブチルをグリセリン溶剤に分散させ、1~5wt%溶液を調製し、濃度が12g/Lであるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液を入れ、テトラメチル水酸化アンモニウムを加えPhを9~10に調整し、均一に混合し、その後、1wt%フッ化アンモニウム溶液を加え、均一に混合した後水熱反応釜に移し、150~200℃で1~6h加熱し、生成物を遠心させ、エタノール、水で10回洗浄し、真空乾燥炉に置き60℃で12h乾燥し、チタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンを得るステップ(1)と、
【0006】
質量濃度が1~10wt%であるチタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンの有機溶液を調製し、その後質量濃度が1~10wt%であるリチウム塩溶液を加え、均一に混合した後、黒鉛を加え、均一に混合し、噴霧乾燥し、多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材を得るステップ(2)と、
【0007】
質量比100:1~10で多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材及びフッ化アンモニウムを秤取し、管状炉に置き、なかでも、フッ化アンモニウムが気流の上流方向に位置し、アルゴン雰囲気下で、400℃で2時間加熱した後、800℃まで昇温させ6h炭化し、窒素、フッ素共ドープチタン酸リチウム/黒鉛複合材であるリチウムイオン電池負極材料を得るステップ(3)とを含み、
【0008】
チタン酸テトラブチル:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド:テトラメチル水酸化アンモニウム:フッ化アンモニウムの質量比は1:20~40:0.1~1:0.5~2であり、
チタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタン:リチウム塩:黒鉛の質量比は1~10:1~10:100である。
【0009】
上述したリチウムイオン電池負極材料の製造方法では、前記ステップ(2)において、リチウム塩は炭酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム又は硫化リチウムの1種である。
【0010】
本発明は、従来技術に比べ、顕著な効果を有する。以上の技術的手段から分かるように、本発明は、まずチタン酸リチウムの前駆体である二酸化チタンへの窒素、フッ素ドーピングにより、そのインピーダンスを改善し、そのデメリットを低減することで、その後多孔質チタン酸リチウムの形成に基盤を作り、チタン酸リチウム形成後、再び材料への窒素、フッ素原子ドーピングにより、チタン酸リチウム形成過程でのデメリットを低減し、チタン酸リチウムの構造をさらに改善する。このように、コアに窒素、フッ素含有原子を2回被覆して多孔質チタン酸リチウムを得、コアの表面に被覆することで、黒鉛複合材の初回効率及びそのパワー性能を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られたチタン酸リチウム/黒鉛複合材のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施例1
【0013】
1gのチタン酸テトラブチルを50mlのグリセリン溶剤に分散させ、2wt%溶液を調製し、その後濃度が12g/Lであるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液を30ml入れ(0.5mLのテトラメチル水酸化アンモニウムを加えてpH=9に調整し)、均一に混合し、その後、1wt%フッ化アンモニア溶液を100g加え、均一に混合した後水熱反応釜に移し、180℃で3h加熱し、生成物を遠心させ(1000r/min、1h)、エタノール、水で順に10回洗浄し、真空乾燥炉に置き60℃で12h乾燥し、チタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンを得るステップ(1)と、
【0014】
5gのチタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンを100mlの四塩化炭素溶液に加え、質量濃度が5wt%であるチタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタン溶液を調製し、その後質量濃度が5wt%である炭酸リチウム溶液を100ml加え、均一に混合した後、100wt%である炭酸リチウム溶液を均一に混合し、噴霧乾燥し、多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材を得るステップ(2)と、
【0015】
100gの多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材及び5gのフッ化アンモニウムを秤取し、管状炉に置き、なかでも、フッ化アンモニウムが気流の上流方向に位置し、アルゴン雰囲気下で、400℃で2時間加熱した後、800℃まで昇温させ6h炭化し、窒素、フッ素共ドープチタン酸リチウム/黒鉛複合材であるリチウムイオン電池負極材料を得るステップ(3)とを含む、リチウムイオン電池負極材料の製造方法。
【0016】
実施例2
【0017】
1gのチタン酸テトラブチルを100mlのグリセリン溶剤に分散させ、1wt%溶液に調製し、濃度が12g/Lであるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液を20ml入れ(0.1mlのテトラメチル水酸化アンモニウムを加えてpHを調整し)、均一に混合し、その後、1wt%フッ化アンモニア溶液を50ml加え、均一に混合した後水熱反応釜に移し、150℃で6h加熱し、生成物を遠心させ(1000r/min、1h)、エタノール、水で順に10回洗浄し、真空乾燥炉に置き60℃で12h乾燥し、チタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンを得るステップ(1)と、
【0018】
1gのチタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンを100mlの四塩化炭素溶液に加え、質量濃度が1wt%であるチタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタン溶液を調製し、その後質量濃度が1wt%である水酸化リチウム溶液を100ml加え、均一に混合した後、100gの人造黒鉛を加え、均一に混合し、噴霧乾燥し、多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材を得るステップ(2)と、
【0019】
100gの多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材及び1gのフッ化アンモニウムを秤取し、管状炉に置き、なかでも、フッ化アンモニウムが気流の上流方向に位置し、アルゴン雰囲気下で、400℃で2時間加熱した後、800℃まで昇温させ6h炭化し、窒素、フッ素共ドープチタン酸リチウム/黒鉛複合材であるリチウムイオン電池負極材料を得るステップ(3)とを含む、リチウムイオン電池負極材料の製造方法。
【0020】
実施例3
【0021】
1gのチタン酸テトラブチルを20mlのグリセリン溶剤に分散させ、5wt%溶液に調製し、濃度が12g/Lであるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液を40ml入れ(1mlのテトラメチル水酸化アンモニウムを加えてpHを調整し)、均一に混合し、その後、1wt%フッ化アンモニア溶液を200ml加え、均一に混合した後水熱反応釜に移し、200℃で1h加熱し、生成物を遠心させ(1000r/min、1h)、エタノール、水で順に10回洗浄し、真空乾燥炉に置き60℃で12h乾燥し、チタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンを得るステップ(1)と、
【0022】
10gのチタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタンを100mlの四塩化炭素溶液に加え、質量濃度が10wt%であるチタン/窒素/フッ素ドープ多孔質二酸化チタン溶液を調製し、その後10wt%塩化リチウム溶液を100ml加え、均一に混合した後、100gの人造黒鉛を加え、均一に混合し、噴霧乾燥し、多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材を得るステップ(2)と、
【0023】
質量比100:1~10で100gの多孔質チタン酸リチウム被覆黒鉛複合材及び10gフッ化アンモニウムを秤取し、管状炉に置き、なかでも、フッ化アンモニウムが気流の上流方向に位置し、アルゴン雰囲気下で、400℃で2時間加熱した後、800℃まで昇温させ6h炭化し、窒素、フッ素共ドープチタン酸リチウム/黒鉛複合材であるリチウムイオン電池負極材料を得るステップ(3)とを含む、リチウムイオン電池負極材料の製造方法。
【0024】
比較例
【0025】
5gのノボラック樹脂を100mlの四塩化炭素溶液に加え、質量濃度が5wt%である樹脂溶液を調製し、その後100gの人造黒鉛を加え、均一に混合し、噴霧乾燥し、ハードカーボン被覆黒鉛複合材Bを得、その後、800℃まで昇温させ6h炭化し、黒鉛複合材を得た。
【0026】
1.物理化学性能測定
【0027】
1.1 SEM測定
【0028】
実施例1で製造されたチタン酸リチウム/黒鉛複合材をSEMで測定し、測定結果は図1に示す通りであった。図1から明らかなように、実施例1で製造された複合材は顆粒状となり、大きさ及び分布が均一であり、その粒子径は8~15μmであった。
【0029】
1.2 粉体導電率の測定
【0030】
粉体をブロック状構造に加圧した後、四探針測定器でその粉体の抵抗率を測定した。測定結果は表1に示す通りであった。
【0031】
1.3 粉体コンパクト密度の測定
【0032】
実施例1~3及び比較例で製造された複合材に対して粉体コンパクト密度を測定した。測定時に、一定の質量の粉体を秤取し金型に置き、2Tの圧力で加圧し(粉体コンパクト密度計により、1gの粉体を固定した釜に置いた後2Tの圧力で加圧し、10S静止させ、その後加圧下の体積の大きさを計算し、コンパクト密度を計算した)、粉体コンパクト密度を計算した。測定結果は表1に示す通りであった。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、実施例1~3で製造された黒鉛複合材の粉体抵抗率は明らかに比較例よりも小さかった。それは、材料の表面に窒素、フッ素が被覆されることで、材料のコンパクト密度を向上し、その窒素が材料の電子インピーダンスを低減したためである。同時に、多孔質構造は材料の比表面積を向上した。
【0035】
2.ボタン電池の測定
【0036】
それぞれ、実施例1~3及び比較例中のチタン酸リチウム/黒鉛複合材によりボタン電池A1、A2、A3、B1が組み付られた。組み付け方法としては、負極材料に粘着剤、導電剤及び溶剤を加え、撹拌しパルプ化し、銅箔に塗布し、乾燥、ローリングを行い、負極プレートを得た。用いられた粘着剤は、LA132粘着剤であり、導電剤はSPであり、負極材料はそれぞれ、実施例1~3及び比較例中のチタン酸リチウム/黒鉛複合材であり、溶剤は再蒸留水であった。各成分の割合は、負極材料:SP:LA132:再蒸留水=95g:1g:4g:220mLであり、電解液はLiPF6/EC+DEC(LiPF6の濃度が1.2mol/L、ECとDECの体積比が1:1)、金属リチウムシートは対電極であり、セパレータはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレンプロピレン(PEP)複合膜を用いた。ボタン電池の組立てはアルゴンガスを充填したグローブボックスで行い、電気化学性能測定はWuhan Land CT2001A型電池測定器上で行い、充放電電圧範囲は0.005Vから2.0Vであり、充放電倍率は0.1Cであった。測定結果は表2に示す通りであった。
【0037】
同時に前記負極プレートを取り、極片の液体吸収保持力を測定した。結果を表2に示す。
【0038】
表2 実施例と比較例のボタン電池及びその極片の液体吸収性能の比較
【0039】
【表2】
【0040】
表2から明らかなように、実施例1~3で得られた黒鉛複合負極材料を用いたリチウムイオン電池は、初回放電容量及び初回充放電効率、液体吸収力が、全て明らかに比較例よりも高かった。それは、実施例における高い比表面積が極片の液体吸収性能を向上し、同時に外層のチタン酸リチウムがその不可逆的損失を低減し、初回効率を向上したためである。
【0041】
3.パウチセルの測定
【0042】
実施例1~3及び比較例中の黒鉛複合材を負極材料として、負極極片が製造された。三元材料(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)を正極として、LiPF6溶液(溶剤がEC+DEC、体積比が1:1、LiPF6濃度が1.3mol/L)を電解液として、celegard2400をセパレータとして、2AhパウチセルA10、A20、A30及びB10、B20が製造された。その後、パウチセルのサイクル性能、倍率性能を測定した。
【0043】
倍率性能測定条件:充電倍率:1C/2C/3C/5C、放電倍率:1C;電圧範囲:2.8~4.2V。
【0044】
サイクル試験条件は、1C/1C、2.8~4.2V、温度:25±3℃、サイクル回数:500サイクルであった。
【0045】
測定結果を表3に示す。
【0046】
表3 実施例と比較例の定電流比及びサイクル性能の比較
【表3】
【0047】
表3から明らかなように、本発明の実施例1~3で製造されたチタン酸リチウム/黒鉛複合材から製造されたパウチセルはより良い定電流比を有し、比較例の定電流比は顕著に下がった。それは、実施例の材料の表面にリチウムイオンが被覆された多孔質チタン酸リチウムがイオン伝送速度を向上し、窒素、フッ素が材料の電子伝送速度を向上することで、電池の倍率性能を向上すると同時に、多孔質チタン酸リチウムが層ピッチが大きく、構造が安定するという特性を有することで、材料のサイクル性能を向上したためである。
【0048】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、本発明の趣旨及び原則から逸脱することなく為されたいかなる変形、等価な置換、改善等は、すべて本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1