(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240105BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20240105BHJP
A61B 5/18 20060101ALI20240105BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240105BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20240105BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20240105BHJP
【FI】
G08G1/09 V
A61B5/16 200
A61B5/18
G16Y10/40
G16Y20/40
G16Y40/60
(21)【出願番号】P 2022208925
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】519182659
【氏名又は名称】MONET Technologies株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山科 瞬
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/199256(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/070940(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
5/18
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
G16Y 10/40
20/40
40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者による前記イベントに対する処理の習熟度に基づいて、前記監視者が処理対象のイベントを処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する推定部と、
前記監視者の生体情報に基づいて、前記監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する算出部と、
前記イベント疲労度および前記許容疲労度に基づいて、前記監視者の中から前記処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する選択部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記選択部は、
前記イベント疲労度よりも前記許容疲労度の方が大きい前記監視者を前記対象監視者として選択する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、
前記自動運転車の車種、前記自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、前記イベントが発生した際に前記自動運転車が走行している道路の種類、または、前記イベントの種類に関する情報のうち少なくともいずれか1つに基づいて、前記イベント疲労度を推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、
学習対象の自動運転車の車種、学習対象の自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、学習対象のイベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、または、学習対象のイベントの種類に関する情報のうち少なくともいずれか1つが入力情報として入力された場合に、学習対象のイベントに関するイベント疲労度を出力情報として出力するよう学習された機械学習モデルを用いて、前記イベント疲労度を推定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推定部は、
学習対象の監視者の習熟度に応じて異なる複数の前記機械学習モデルを生成し、前記監視者の習熟度に応じた前記機械学習モデルを用いて、前記イベント疲労度を推定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記算出部は、
前記監視者が過去に処理したイベントの処理実績に基づいて、前記監視者の一日の最大許容疲労度を算出し、前記処理対象のイベントの発生日に前記監視者が前記処理対象のイベントの発生時点までに処理した各イベントのイベント疲労度の合計を前記最大許容疲労度から減算することで、前記許容疲労度を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記算出部は、
前記監視者の生体情報として、前記監視者の心拍数または自律神経に関する情報に基づいて、前記許容疲労度を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
過去に処理されたイベントの処理実績における監視者の処理結果を示す情報に基づいて、各地域における監視者の割り当て計画を作成する計画部をさらに備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置が実行するプログラムにより実現される情報処理方法であって、
自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者による前記イベントに対する処理の習熟度に基づいて、前記監視者が処理対象のイベントを処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する推定工程と、
前記監視者の生体情報に基づいて、前記監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する算出工程と、
前記イベント疲労度および前記許容疲労度に基づいて、前記監視者の中から前記処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する選択工程と、
を含む情報処理方法。
【請求項10】
自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者による前記イベントに対する処理の習熟度に基づいて、前記監視者が処理対象のイベントを処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する推定手順と、
前記監視者の生体情報に基づいて、前記監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する算出手順と、
前記イベント疲労度および前記許容疲労度に基づいて、前記監視者の中から前記処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する選択手順と、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動運転に関する技術開発が盛んに行われている。自動運転技術は、運転者が運転操作を行う代わりに、車両に搭載された制御システム(以下、「自動運転システム」)を用いて、車両の運転操作を自動化する技術である。以下では、運転者によって行われる運転操作のことを「手動運転」と記載し、自動運転システムによって行われる運転操作のことを「自動運転」と記載する場合がある。
【0003】
ここで、自動運転技術のレベル(以下、「自動運転レベル」)は、運転操作を行う主体等によって、例えば、レベル1からレベル5までの5段階に分類される(なお、無人での自動運転可能なレベルまで含めた場合には、6段階に分類される)。自動運転レベル4または自動運転レベル5では、運転者がいない状態で自動運転が行われるが、想定外の事態が発生した場合に対応できるように、安全運転に係る監視を遠隔で行う監視者を配置することが求められる。
【0004】
そこで、近年、自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者の割り当てに関する技術開発が盛んに行われている。例えば、複数の自動運転車両の各々が送信するアラームに基づいて、監視者が自動運転車両を監視する作業負荷の度合いを示す指標である監視コストを導出する。そして、監視コストに基づいて、複数の監視者の各々に監視させる自動運転車両を割り当てる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術では、監視コストに基づいて、複数の監視者の各々に監視させる自動運転車両を割り当てるに過ぎないため、監視者の監視負担を軽減することを可能とすることができるとは限らない。
【0007】
そこで、本開示では、監視者の監視負担を軽減することを可能とすることができる情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に係る情報処理装置は、自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者による前記イベントに対する処理の習熟度に基づいて、前記監視者が処理対象のイベントを処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する推定部と、前記監視者の生体情報に基づいて、前記監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する算出部と、前記イベント疲労度および前記許容疲労度に基づいて、前記監視者の中から前記処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する選択部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、監視者の監視負担を軽減することを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る情報処理の概要を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るイベント情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る生体情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る情報処理の詳細を示す図である。
【
図7】
図7は、情報処理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願に係る情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0012】
(実施形態)
〔1.はじめに〕
今後、自動運転技術の向上が進むことで、運転者がいない状態で運行が行われる自動運転レベル4や自動運転レベル5の自動運転での運行サービスが実現可能となると考えられる。また、自動運転レベル4や自動運転レベル5では、安全運転に係る監視を遠隔で行う監視者を配置し、自動運転システムでは判断できないような想定外の事態が発生した場合に、監視者が判断等の対応をできる状態での運行が求められる。すなわち、監視者による処理の対象となるイベントが発生した場合、自動運転システムに代わって、監視者がイベントに対処するための処理を行うことが求められる。
【0013】
ここで、監視者に求められる判断は、機械学習により多くのシナリオを学習してきた自動運転システムでさえも判断できない事態や状況に対する判断となるため、困難な判断となり、求められる判断に対する監視者の負荷は非常に高いものとなる可能性がある。
【0014】
具体的には、監視者による処理の対象となるイベントは、複数の事象が絡み合っており、監視者に対して複雑な判断が求められる。例えば、発生したイベントに対して監視者による対応が求められるケースがある。このようなケースとして、例えば、自動運転車の走行経路上に、事故や工事により走行ができない事象が発生した場合などに、監視者に対して運行継続の判断が求められるケースがある。また、例えば、車両の目の前で急な人の飛び出しなどが発生したことで、車内の乗客が転倒等の事故を起こし、監視者に対して今後の運転継続方法についての判断が求められるケースがある。また、注意を要する場合に監視者による対応が求められるケースがある。このようなケースとして、例えば、事故の多い地点などの危険道路を走行する場合に、監視者による運行の監視が求められるケースがある。また、運行遅延が発生している場合に監視者による対応が求められるケースがある。このようなケースとして、例えば、渋滞などにより予定の到着時間から遅れていることで、その後の運行全体が遅延し始めているケースがある。
【0015】
また、自動運転により運転される車両(以下、「自動運転車」ともいう)が注意すべき箇所(例えば、注意すべき運転を要する箇所)を走行する際は、監視者による監視が行われることが想定されるが、監視者は自ら自動運転車を運転している訳ではないため、どのような運転が行われるか想像がつかない場合もありうると考えられる。そのため、この場合も、監視作業に対する監視者の負荷は非常に高いものとなる可能性がある。
【0016】
これに対し、実施形態に係る情報処理装置は、自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者によるイベントに対する処理の習熟度に基づいて、監視者による処理の対象となるイベント(例えば、自動運転システムでは判断できないような想定外の事態や状況など、監視者による判断等の対応が求められるイベント)を監視者が処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する。また、情報処理装置は、遠隔監視を行っている全ての監視者の生体情報を取得し、各監視者の生体情報に基づいて、各監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する。また、情報処理装置は、イベント疲労度および許容疲労度に基づいて、全ての監視者の中から処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する。
【0017】
一般的に、自動運転システムでは判断できないような想定外の事態や状況など、監視者による判断等の対応が求められるイベント(以下、「処理対象のイベント」と記載する場合がある)を監視者が処理することにより感じる疲労の度合い(以下、「イベント疲労度」)は、監視者による処理対象のイベントに対する処理の習熟度に応じて異なると考えられる。また、監視者にとって許容できる疲労の度合い(以下、「許容疲労度」)は、処理対象のイベントの発生日におけるイベントの発生時点までに各監視者が処理したイベントの件数やイベント種類、および、各監視者の個体差により、監視者ごとに異なると考えられる。これに対し、情報処理装置は、各監視者の習熟度に応じたイベント疲労度に基づいて、例えば、監視者の許容疲労度がイベント疲労度を上回らないような監視者を選択して、処理対象のイベントに割り当てることができる。これにより、情報処理装置は、各監視者に対して、各監視者が疲労しすぎないイベントを割り当てることができるので、監視者の監視負担を軽減することを可能とすることができる。また、情報処理装置は、各監視者に対して、各監視者が疲労しすぎないイベントを割り当てることができるので、監視者によるイベントの処理結果に関する成功率を向上させることができる。したがって、情報処理装置は、処理対象のイベントが発生した際に、処理対象のイベントに対して、全ての監視者の中から最適な監視者を選択して割り当てることができる。
【0018】
以下では、本実施形態に係る車両(以下、車両)は、公知の自動運転システムを備える。具体的には、車両は、自車の周辺の状況に関する情報を認識する機能を備える。例えば、車両は、カメラ、LiDAR(ライダー)、ミリ波レーダーまたは超音波センサなどの各種センサを備え、車両の周囲や前方を常時監視し、センサが取得した画像データなどから他の車両や歩行者、道路上の白線、標識などを認識する。
【0019】
また、車両は、GPSなどの衛星測位システム(GNSS)を備え、自車位置を特定する。また、車両は、タイヤの回転数から距離を計測する走行距離計(DMI)や、角速度や加速度を計測する慣性計測装置(IMU)を備え、自車位置を特定してもよい。また、車両は、SLAM技術を用いて、自車位置を特定してもよい。
【0020】
また、車両は、道路標識や車線情報などを含めた高精度な3次元地図情報を用いて、自車の位置情報とセンサデータを突合させることで、自車位置の特定精度を向上させてもよい。
【0021】
〔2.情報処理システムの構成〕
まず、
図1を用いて、実施形態に係る情報処理システム1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る情報処理システム1の構成例を示す図である。
図1に示すように、情報処理システム1には、車載装置10と、センサ装置20と、情報処理装置100とが含まれる。車載装置10と、センサ装置20と、情報処理装置100とは所定のネットワークNを介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、
図1に示した情報処理システム1には、複数台の車載装置10や、複数台のセンサ装置20や、複数台の情報処理装置100が含まれてもよい。
【0022】
車載装置10は、車両に搭載された情報処理装置である。車載装置10は、公知の自動運転システムを備える。具体的には、車載装置10は、車両が認識した自車の周辺の状況に関する情報に基づいて、車両の振る舞いを判断する機能を備える。例えば、車載装置10は、目的地までの情報に基づいて、どの経路を走行していくかといった行動計画を作成する機能を備える。また、車載装置10は、計画した経路を走行しながら、渋滞情報等に基づいて、経路の変更やレーンチェンジといった判断を行う機能を備える。また、車載装置10は、車両の振る舞いに関する判断に基づいて、車両を制御する機能を備える。例えば、車載装置10は、ステアリングやアクセルペダルなどを制御する機能を備える。また、車載装置10は、自動運転システムでは判断できないような想定外の事態や状況であるイベントが発生した場合に、発生したイベントに対して監視者を割り振るよう要求する要求情報を情報処理装置100に対して送信する。
【0023】
センサ装置20は、監視者の生体情報を検知する機能を有する。センサ装置20は、常時、監視者の生体情報を検知してよい。具体的には、センサ装置20は、生体センサである。例えば、センサ装置20は、心拍、脈拍、血圧、発汗量、呼吸、脳波、または筋電等を検知する各種センサであってよい。ここで、生体情報は、生体センサにより検知された情報であって、監視者の心拍、脈拍、血圧、発汗量、呼吸、脳波、または筋電等を示す情報である。例えば、センサ装置20は、人体に装着するタイプ(接触型ともいう)の生体センサであってよい。例えば、センサ装置20は、頭部に装着するメガネ型、手首に装着する時計型、または、腕に装着するリストバンド型のウェアラブルデバイスであってよい。監視者は勤務時間中に常時センサ装置20を装着する。また、接触型のセンサ装置20は、加速度センサやジャイロセンサを搭載し、生体情報の一例として、監視者の様々な行動情報を取得してよい。例えば、センサ装置20は、監視者の頭部動作をメガネ型のウェアラブルデバイスによって取得し、頭部動作の加速度から監視者の頭部ジェスチャを認識してよい。
【0024】
なお、センサ装置20は、非接触型のセンサであってもよい。例えば、センサ装置20は、カメラまたはマイクロフォン等であってよい。例えば、センサ装置20は、生体情報の一例として、カメラにより撮像された監視者の顔画像から脈拍間隔(脈拍と脈拍の時間間隔)を示す情報を検出してよい。また、センサ装置20は、生体情報の一例として、マイクロフォンにより収音された監視者の音声情報を検出してよい。また、センサ装置20は、以上説明した複数種類のセンサが複数個設けられていてもよい。また、センサ装置20は、所定時間ごとに各監視者の生体情報を情報処理装置100に対して送信する。
【0025】
情報処理装置100は、車載装置10から要求情報を受信した場合、発生したイベントに対して、自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者(以下、「監視者」)を割り振る情報処理装置である。また、情報処理装置100は、センサ装置20から所定時間ごとに各監視者の生体情報を取得し、各監視者の生体情報の履歴を記憶する。
【0026】
次に、
図2を用いて、実施形態に係る情報処理の概要について説明する。
図2は、実施形態に係る情報処理の概要を示す図である。
図2で説明する情報処理は、情報処理装置100によって実行される。
【0027】
図2では、簡単のため、遠隔監視を行っている全ての監視者が、ベテランの監視者であるAさん、初心者の監視者であるBさん、および、初心者かつ心配性の監視者であるCさんの3人である場合について説明する。なお、監視者の習熟度には、監視者の性格などの監視者のタイプが考慮されてよい。例えば、
図2では、初心者かつ心配性の監視者であるCさんの習熟度は、初心者の監視者であるBさんの習熟度よりも低い。また、
図2では、ベテランの監視者であるAさんの習熟度は、初心者の監視者であるBさんの習熟度よりも高い。以下では、Cさんの習熟度を「1」、Bさんの習熟度を「2」、Aさんの習熟度を「3」として説明する。
【0028】
まず、情報処理装置100は、監視者によるイベントに対する処理の習熟度に基づいて、監視者による処理の対象となるイベントを監視者が処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する。ここで、同じイベントに関するイベント疲労度であっても、習熟度が低い監視者が感じるイベント疲労度は、習熟度が高い監視者が感じるイベント疲労度よりも大きいと推定される。そこで、情報処理装置100は、学習対象の監視者の習熟度に応じて異なる複数の機械学習モデルを生成し、監視者の習熟度に応じた機械学習モデルを用いて、イベント疲労度を推定する。
【0029】
また、イベント疲労度は、自動運転車の種類(車種)、自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、イベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、および、イベントの種類に関する情報に応じて異なると推定される。例えば、自動運転システムの精度の高さに応じて、自動運転システムの種類に「高級」(精度が高い)、「中級」(精度が普通)、「低級」(精度が低い)の3種類がある場合、自動運転システムの種類が「低級」である場合に監視者が感じるイベント疲労度が最も大きく、自動運転システムの種類が「高級」である場合に監視者が感じるイベント疲労度が最も小さいと推定される。車種についても、自動運転システムの種類と同様に推定される。また、一般的に、私道を走行する際は、公道を走行する際よりも注意が必要なので、道路の種類が「公道」である場合に監視者が感じるイベント疲労度よりも、道路の種類が「私道」である場合に監視者が感じるイベント疲労度の方が大きいと推定される。また、対向車の接近(以下、「対向車接近」)、人の飛び出し(以下、「人飛び出し」)、または、目の前の車が急ブレーキで止まる(以下、「目の前の車の急ブレーキ」)といった種類のイベントへの対応は、注意地域の監視といった種類のイベントと比べると、監視者の負荷が高いと考えられる。そのため、対向車接近、人飛び出し、または、目の前の車の急ブレーキといった種類のイベントを処理する場合に監視者が感じるイベント疲労度は、注意地域の監視といった種類のイベントを処理する場合に監視者が感じるイベント疲労度よりも大きいと推定される。
【0030】
そこで、情報処理装置100は、自動運転車の種類(車種)、自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、イベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、および、イベントの種類に関する情報に基づいて、総合的にイベント疲労度を推定する。具体的には、情報処理装置100は、学習対象の自動運転車の車種、学習対象の自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、学習対象のイベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、および、学習対象のイベントの種類に関する情報が入力情報として入力された場合に、学習対象のイベントに関するイベント疲労度を出力情報として出力するよう学習された機械学習モデルを用いて、イベント疲労度を推定する。
【0031】
図2では、車両A~Cは、それぞれ自動運転車の種類が異なる。また、自動運転システムA~Cは、それぞれ自動運転システムの種類が異なる。
図2では、自動運転システムAを搭載した車両Aが私道を走行している際に対向車接近という種類のイベント(以下、第1イベント)が発生した。このとき、情報処理装置100は、習熟度「1」の監視者に対応する機械学習モデルM3を用いて、習熟度「1」の監視者であるCさんが第1イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「9」であると推定する。また、情報処理装置100は、習熟度「2」の監視者に対応する機械学習モデルM2を用いて、習熟度「2」の監視者であるBさんが第1イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「8」であると推定する。また、情報処理装置100は、習熟度「3」の監視者に対応する機械学習モデルM1を用いて、習熟度「3」の監視者であるAさんが第1イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「5」であると推定する。
【0032】
また、
図2では、自動運転システムBを搭載した車両Bが公道を走行している際に人飛び出しという種類のイベント(以下、第2イベント)が発生した。このとき、情報処理装置100は、習熟度「1」の監視者に対応する機械学習モデルM3を用いて、習熟度「1」の監視者であるCさんが第2イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「35」であると推定する。また、情報処理装置100は、習熟度「2」の監視者に対応する機械学習モデルM2を用いて、習熟度「2」の監視者であるBさんが第2イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「30」であると推定する。また、情報処理装置100は、習熟度「3」の監視者に対応する機械学習モデルM1を用いて、習熟度「3」の監視者であるAさんが第2イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「25」であると推定する。
【0033】
また、
図2では、自動運転システムCを搭載した車両Cが公道を走行している際に目の前の車の急ブレーキという種類のイベント(以下、第3イベント)が発生した。このとき、情報処理装置100は、習熟度「1」の監視者に対応する機械学習モデルM3を用いて、習熟度「1」の監視者であるCさんが第3イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「20」であると推定する。また、情報処理装置100は、習熟度「2」の監視者に対応する機械学習モデルM2を用いて、習熟度「2」の監視者であるBさんが第3イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「18」であると推定する。また、情報処理装置100は、習熟度「3」の監視者に対応する機械学習モデルM1を用いて、習熟度「3」の監視者であるAさんが第3イベントを処理することにより感じるイベント疲労度を「15」であると推定する。
【0034】
続いて、情報処理装置100は、遠隔監視を行っている全ての監視者の生体情報を取得し、各監視者の生体情報に基づいて、各監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する。具体的には、情報処理装置100は、イベント発生当日の各監視者の生体情報を取得して、各監視者の許容疲労度を算出する。ここで、各監視者の許容疲労度は、各監視者の個体差により、監視者ごとに異なると考えられる。
【0035】
図2では、情報処理装置100は、Aさんの生体情報を取得し、Aさんの生体情報に基づいて、Aさんの許容疲労度を「30」と算出する。また、情報処理装置100は、Bさんの生体情報を取得し、Bさんの生体情報に基づいて、Bさんの許容疲労度を「20」と算出する。また、情報処理装置100は、Cさんの生体情報を取得し、Cさんの生体情報に基づいて、Cさんの許容疲労度を「10」と算出する。
【0036】
続いて、情報処理装置100は、イベント疲労度および許容疲労度に基づいて、全ての監視者の中から処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する。例えば、情報処理装置100は、イベント疲労度よりも許容疲労度の方が大きい監視者を対象監視者として選択する。
【0037】
図2では、情報処理装置100は、第1イベントについては、監視者A、B、Cそれぞれが第1イベントを処理することにより感じるイベント疲労度がそれぞれ「5」、「8」、「9」であり、監視者A、B、Cそれぞれの許容疲労度がそれぞれ「30」、「20」、「10」である。この場合、監視者A、B、Cいずれの監視者についても、イベント疲労度よりも許容疲労度の方が大きいため、どの監視者を対象監視者として選択してもよい。しかしながら、監視者AおよびBの許容疲労度は、第1イベントのイベント疲労度との差分が大きいため、監視者AおよびBが第1イベントを処理すると、監視者AおよびBは能力を持て余すことになる。そこで、情報処理装置100は、監視者A、B、Cのうち、イベント疲労度と許容疲労度との差分が最も小さい監視者Cを対象監視者として選択する。これにより、情報処理装置100は、監視者の能力に応じたイベントを割り振ることができる。
【0038】
また、
図2では、情報処理装置100は、第2イベントについては、監視者A、B、Cそれぞれが第2イベントを処理することにより感じるイベント疲労度がそれぞれ「25」、「30」、「35」であり、監視者A、B、Cそれぞれの許容疲労度がそれぞれ「30」、「20」、「10」である。この場合、監視者A、B、Cのうち、イベント疲労度よりも許容疲労度の方が大きいのは、監視者Aのみである。したがって、情報処理装置100は、イベント疲労度「25」よりも許容疲労度「30」の方が大きい監視者Aを対象監視者として選択する。
【0039】
また、
図2では、情報処理装置100は、第3イベントについては、監視者A、B、Cそれぞれが第3イベントを処理することにより感じるイベント疲労度がそれぞれ「15」、「18」、「20」であり、監視者A、B、Cそれぞれの許容疲労度がそれぞれ「30」、「20」、「10」である。この場合、監視者A、B、Cのうち、イベント疲労度よりも許容疲労度の方が大きいのは、監視者AおよびBである。このとき、情報処理装置100は、第1イベントの場合と同様に、監視者AおよびBのうち、イベント疲労度と許容疲労度との差分が最も小さい監視者Bを対象監視者として選択する。
【0040】
〔3.情報処理装置の構成〕
次に、
図3を用いて、実施形態に係る情報処理装置100の構成について説明する。
図3は、実施形態に係る情報処理装置100の構成例を示す図である。
図3に示すように、情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130を有する。
【0041】
(通信部110)
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。通信部110は、ネットワークNを介して車載装置10と有線または無線で接続され、車載装置10との間で情報の通信を司る通信インターフェイスである。
【0042】
(記憶部120)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、制御部130が実行するプログラム(情報処理プログラムの一例)、または、制御部130が処理するデータを記憶する。
【0043】
また、
図3に示すように、記憶部120は、イベント情報記憶部121と、生体情報記憶部122を有する。以下、これらに記憶される情報について順を追って説明する。
【0044】
(イベント情報記憶部121)
イベント情報記憶部121は、自動運転システムでは判断できないような想定外の事態や状況など、監視者による判断等の対応が求められるイベント(以下、「処理対象のイベント」ともいう)に関する各種の情報を記憶する。ここで、
図4を用いて、イベント情報記憶部121が記憶する情報の一例を説明する。
図4は、実施形態に係るイベント情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【0045】
図4に示す例において、イベント情報記憶部121は、「道路ID」、「取得日時」、「処理結果」、「イベントの種類(1)」、「イベントの種類(2)」、「監視者」、「対象車種」、「道路種別」、「心拍数(HR)」、「自律神経(CVRR)」という項目に係る情報を紐付けて記憶する。
【0046】
「道路ID」は、処理対象のイベントが発生した道路を識別する識別情報を示す。具体的には、「道路ID」は、全国の交通網における各リンクを識別する識別情報であってよい。「取得日時」は、受信部131が処理対象のイベントに対して監視者を割り当てるよう要求する要求情報を車載装置10から受信した日時を示す。「処理結果」は、処理対象のイベントに対して割り当てられた監視者による処理対象のイベントの処理結果を示す。例えば、処理結果「×」は、監視者によるイベントの処理が失敗したことを示す。また、処理結果「○」は、監視者によるイベントの処理が成功したことを示す。「イベントの種類(1)」は、イベントの種類または内容を示す。「イベントの種類(2)」は、イベントの具体的な種類または内容を示す。「監視者」は、監視者に関する情報を示す。具体的には、「監視者」は、処理対象のイベントに対して割り当てられた監視者を識別する識別情報(例えば、監視者IDや監視者の氏名など)と監視者の習熟度を識別可能な情報(例えば、習熟度の高さを示す数値など)とを対応付けた情報を示す。「対象車種」は、処理対象のイベントに関する要求情報を送信した車両の種類を示す。「道路種別」は、処理対象のイベントが発生した道路の種類を示す。
【0047】
「心拍数(HR)」は、処理対象のイベントの処理前後における監視者の心拍数の変化量を示す。例えば、イベントの処理前後における監視者の心拍数の変化量が大きいことは、イベントの処理によって監視者が感じた疲労の度合いが大きいことを示す。一方、イベントの処理前後における監視者の心拍数の変化量が小さいことは、イベントの処理によって監視者が感じた疲労の度合いが小さいことを示す。「自律神経(CVRR)」は、処理対象のイベントの処理前後における監視者の心拍変動係数の変化量を示す。一般的に、心臓が拍動してから次に拍動するまでの時間間隔のことを心拍間隔と呼ぶ。心拍変動とは、心拍間隔の周期的な変動のことを指す。心拍変動は、自律神経の調整機能を示し指標であり、心拍変動が小さいことは、交感神経が優位であり、ストレスが大きい(つまり、疲労の度合いが大きい)ことを示す。一方、心拍変動が大きいことは、副交感神経が優位であり、ストレスが小さい(つまり、疲労の度合いが小さい)ことを示す。なお、心拍変動係数(CVRR)は、自律神経機能を検査するために用いられる生体情報である。例えば、イベントの処理前後における監視者の心拍変動係数の変化量が大きいことは、イベントの処理によって監視者が感じた疲労の度合いが大きいことを示す。一方、イベントの処理前後における監視者の心拍変動係数の変化量が小さいことは、イベントの処理によって監視者が感じた疲労の度合いが小さいことを示す。
【0048】
なお、イベント情報記憶部121に記憶される情報は、「道路ID」、「取得日時」、「処理結果」、「イベントの種類(1)」、「イベントの種類(2)」、「監視者」、「対象車種」、「道路種別」、「心拍数(HR)」、「自律神経(CVRR)」という項目に係る情報に限定されるものではなく、その他の任意の処理対象のイベントに関する情報が記憶されてよい。
【0049】
(生体情報記憶部122)
生体情報記憶部122は、監視者の生体情報に関する各種の情報を記憶する。生体情報記憶部122は、監視者の生体情報の履歴を記憶する。ここで、
図5を用いて、生体情報記憶部122が記憶する情報の一例を説明する。
図5は、実施形態に係る生体情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【0050】
図5に示す例において、生体情報記憶部122は、「取得日時」、「監視者」、「心拍数(HR)」、「自律神経(CVRR)」という項目に係る情報を紐付けて記憶する。
【0051】
「取得日時」は、監視者の生体情報を取得した日時を示す。「監視者」は、監視者を識別する識別情報を示す。「心拍数(HR)」は、取得日時における監視者の心拍数を示す。「自律神経(CVRR)」は、取得日時における監視者の心拍変動係数を示す。
【0052】
なお、生体情報記憶部122に記憶される情報は、「取得日時」、「監視者」、「心拍数(HR)」、「自律神経(CVRR)」という項目に係る情報に限定されるものではなく、その他の任意の監視者の生体情報に関する情報が記憶されてよい。
【0053】
(制御部130)
制御部130は、コントローラ(Controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によって、情報処理装置100の内部の記憶装置に記憶されている各種プログラム(情報処理プログラムの一例に相当)がRAM等の記憶領域を作業領域として実行されることにより実現される。
図3に示す例では、制御部130は、受信部131と、推定部132と、算出部133と、選択部134と、計画部135とを有する。
【0054】
以下では、
図6を用いて、実施形態に係る情報処理の詳細について説明する。
図6は、実施形態に係る情報処理の詳細を示す図である。なお、
図6に示す3人の監視者A~Cは、
図2に示す3人の監視者A~Cと同じ監視者である。
【0055】
(受信部131)
受信部131は、処理対象のイベントに対して監視者を割り当てるよう要求する要求情報を車載装置10から受信する。
図6に示す例では、受信部131は、注意すべき箇所を走行する際の監視(以下「注意地域の監視」)を行う監視者を割り当てるよう要求する要求情報を車両V1に搭載された車載装置10-1から受信する(ステップS1-1)。また、受信部131は、
図2で説明した第2イベントに対して監視者を割り当てるよう要求する要求情報を車両V2に搭載された車載装置10-2から受信する(ステップS1-2)。
【0056】
また、受信部131は、センサ装置20から所定時間ごとに各監視者の生体情報を取得する。例えば、受信部131は、センサ装置20が接触型である場合は、各監視者によって装着された各センサ装置20から所定時間ごとに各監視者の生体情報を取得する。また、受信部131は、センサ装置20が非接触型である場合は、各監視者を識別した上で、各監視者の生体情報を取得する。例えば、受信部131は、センサ装置20がカメラである場合には、公知の顔認証技術を用いて、複数の監視者が撮像された画像から、各監視者の顔を識別してよい。また、受信部131は、センサ装置20がマイクロフォンである場合には、公知の音声認識技術を用いて、各監視者の音声を識別してよい。受信部131は、各監視者の生体情報を取得すると、各監視者を識別可能な情報および各監視者の習熟度を示す情報と、各監視者の生体情報とを対応付けて生体情報記憶部122に格納する。
図6に示す例では、受信部131は、センサ装置20が接触型であり、監視者Aによって装着されたセンサ装置20-Aから監視者Aの心拍数を示す情報を取得する。また、受信部131は、監視者Bによって装着されたセンサ装置20-Bから監視者Bの心拍数を示す情報を取得する。また、受信部131は、監視者Cによって装着されたセンサ装置20-Cから監視者Cの心拍数を示す情報を取得する。
【0057】
(推定部132)
推定部132は、受信部131によって要求情報が受信された場合、自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者によるイベントに対する処理の習熟度に基づいて、監視者が処理対象のイベントを処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する。具体的には、推定部132は、学習対象の自動運転車の車種、学習対象の自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、学習対象のイベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、および、学習対象のイベントの種類に関する情報が入力情報として入力された場合に、学習対象のイベントに関するイベント疲労度を出力情報として出力するよう学習された機械学習モデルを用いて、イベント疲労度を推定する。より具体的には、推定部132は、学習対象の監視者の習熟度に応じて異なる複数の機械学習モデルを生成し、監視者の習熟度に応じた機械学習モデルを用いて、イベント疲労度を推定する。
【0058】
図6に示す例では、推定部132は、習熟度「3」、習熟度「2」、および、習熟度「1」それぞれに対応する機械学習モデルM1~M3それぞれを生成する。例えば、推定部132は、イベント情報記憶部121を参照して、習熟度「3」の監視者に割り当てられたイベントに紐づいた自動運転車の車種、自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、イベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、および、イベントの種類に関する情報を入力情報として機械学習モデルM1に入力した場合に、習熟度「3」の監視者に割り当てられたイベントに紐づいた監視者の心拍数の変化量を出力情報として出力するよう機械学習モデルM1を学習させる。ここで、監視者の心拍数の変化量は、イベント疲労度に対応する。なお、推定部132は、心拍数の変化量の代わりに、心拍変動係数(CVRR)の変化量を出力情報として出力するよう機械学習モデルM1を学習させてもよい。この場合、心拍変動係数(CVRR)の変化量が、イベント疲労度に対応する。また、推定部132は、心拍数の変化量および心拍変動係数(CVRR)の変化量に基づくスコアを算出してもよい。この場合、推定部132は、心拍数の変化量の代わりに、算出したスコアを出力情報として出力するよう機械学習モデルM1を学習させてもよい。この場合、算出したスコアが、イベント疲労度に対応する。このようにして、推定部132は、習熟度「3」に対応する機械学習モデルM1を生成する。同様にして、推定部132は、習熟度「2」に対応する機械学習モデルM2、および、習熟度「1」に対応する機械学習モデルM3を生成する。
【0059】
なお、
図6では、推定部132が、心拍数の変化量または心拍変動係数の変化量に基づいて、イベント疲労度を推定する場合について説明したが、推定部132は、心拍数の変化量および心拍変動係数の変化量以外の生体情報に基づいて、イベント疲労度を推定してもよい。例えば、推定部132は、カメラで撮影した監視者の顔画像から脈拍間隔(脈拍と脈拍の時間間隔)を検出する。続いて、推定部132は、脈拍間隔の時系列データを周波数解析することにより、自律神経機能の状態を表す指標を算出してもよい。例えば、推定部132は、自律神経機能の状態を表す指標として、LF(交感神経の活動を反映)、HF(副交感神経の活動を反映)、および、LF/HF(交感神経と副交感神経のバランスを反映)の値を算出する。続いて、推定部132は、心拍数の変化量または心拍変動係数の変化量を出力情報として出力する代わりに、自律神経機能の状態を表す指標(例えば、LF/HF)を出力情報として出力するよう各習熟度に対応する機械学習モデルを学習させてもよい。この場合、LF/HFの値が、イベント疲労度に対応する。例えば、LF/HFの値が大きいことは、イベントの処理によって監視者が感じた疲労の度合いが大きいことを示す。一方、LF/HFの値が小さいことは、イベントの処理によって監視者が感じた疲労の度合いが小さいことを示す。
【0060】
また、
図6では、監視者の習熟度が習熟度「1」~習熟度「3」の3段階である場合について説明したが、監視者の習熟度は、2段階であってもよいし、4段階以上であってもよい。例えば、推定部132は、監視者の習熟度が「初心者」と「ベテラン」の2段階である場合は、監視者の習熟度「初心者」および監視者の習熟度「ベテラン」それぞれに対応する2種類の機械学習モデルを生成してよい。また、推定部132は、監視者の習熟度が習熟度「1」~習熟度「5」の5段階である場合には、監視者の習熟度「1」~習熟度「5」それぞれに対応する5種類の機械学習モデルを生成してよい。
【0061】
また、推定部132は、自動運転車の車種、自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、イベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、および、イベントの種類に関する情報に基づいて、イベント疲労度を推定する。
【0062】
図6に示す例では、推定部132は、機械学習モデルM1を用いて、監視者Aの受信部131が受信した注意地域の監視に関するイベント疲労度を推定する。例えば、推定部132は、監視者Aの受信部131が受信した注意地域の監視に関する自動運転車の車種、自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、イベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、および、イベントの種類に関する情報を入力情報として機械学習モデルM1に入力することで、監視者Aのイベント疲労度を推定する。同様にして、推定部132は、機械学習モデルM2を用いて、監視者Bの注意地域の監視に関するイベント疲労度を推定する。また、推定部132は、機械学習モデルM3を用いて、監視者Cの注意地域の監視に関するイベント疲労度を推定する(ステップS2-1)。
【0063】
また、推定部132は、機械学習モデルM1を用いて、監視者Aの受信部131が受信した第2イベントに関するイベント疲労度を推定する。例えば、推定部132は、監視者Aの受信部131が受信した第2イベントに関する自動運転車の車種、自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、イベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、および、イベントの種類に関する情報を入力情報として機械学習モデルM1に入力することで、監視者Aのイベント疲労度を推定する。同様にして、推定部132は、機械学習モデルM2を用いて、監視者Bの第2イベントに関するイベント疲労度を推定する。また、推定部132は、機械学習モデルM3を用いて、監視者Cの第2イベントに関するイベント疲労度を推定する(ステップS2-2)。
【0064】
(算出部133)
算出部133は、受信部131によって要求情報が受信された場合、監視者の生体情報に基づいて、監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する。具体的には、算出部133は、監視者が過去に処理したイベントの処理実績に基づいて、監視者の一日の最大許容疲労度を算出する。例えば、算出部133は、イベント情報記憶部121を参照して、各監視者が一日に処理したイベントに関するイベント疲労度の合計の平均を算出する。続いて、算出部133は、算出した平均を各監視者の一日の最大許容疲労度とする。
【0065】
続いて、算出部133は、処理対象のイベントの発生日に監視者が処理対象のイベントの発生時点までに処理した各イベントのイベント疲労度の合計を算出する。続いて、算出部133は、処理対象のイベントの発生日におけるイベント疲労度の合計を最大許容疲労度から減算することで、許容疲労度を算出する(ステップS3-1、3-2)。
【0066】
(選択部134)
選択部134は、イベント疲労度および許容疲労度に基づいて、監視者の中から処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する(ステップS4-1、4-2)。具体的には、選択部134は、イベント疲労度よりも許容疲労度の方が大きい監視者を対象監視者として選択する。また、選択部134は、イベント疲労度よりも許容疲労度の方が大きい監視者が複数存在する場合は、イベント疲労度と許容疲労度との差分が最も小さい監視者を対象監視者として選択する。
【0067】
(計画部135)
計画部135は、過去に処理されたイベントの処理実績における監視者の処理結果を示す情報に基づいて、各地域における監視者の割り当て計画を作成する。具体的には、計画部135は、監視者の処理結果を示す情報のうち、各地域におけるイベントの処理の失敗を示す情報の割合が所定の閾値を下回るように、各地域における監視者の割り当て計画を作成する(ステップS5)。
【0068】
〔4.効果〕
上述してきたように、実施形態に係る情報処理装置100は、推定部132と算出部133と選択部134とを備える。推定部132は、自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者によるイベントに対する処理の習熟度に基づいて、監視者が処理対象のイベントを処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する。算出部133は、監視者の生体情報に基づいて、監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する。選択部134は、イベント疲労度および許容疲労度に基づいて、監視者の中から処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する。
【0069】
一般的に、自動運転システムでは判断できないような想定外の事態や状況など、監視者による判断等の対応が求められるイベント(以下、「処理対象のイベント」と記載する場合がある)を監視者が処理することにより感じる疲労の度合い(以下、「イベント疲労度」)は、監視者による処理対象のイベントに対する処理の習熟度に応じて異なると考えられる。また、監視者にとって許容できる疲労の度合い(以下、「許容疲労度」)は、処理対象のイベントの発生当日におけるイベントの発生時点までに各監視者が処理したイベントの件数やイベント種類、および、各監視者の個体差により、監視者ごとに異なると考えられる。これに対し、情報処理装置100は、各監視者の習熟度に応じたイベント疲労度に基づいて、例えば、監視者の許容疲労度がイベント疲労度を上回らないような監視者を選択して、処理対象のイベントに割り当てることができる。これにより、情報処理装置100は、各監視者に対して、各監視者が疲労しすぎないイベントを割り当てることができるので、監視者の監視負担を軽減することを可能とすることができる。また、情報処理装置100は、各監視者に対して、各監視者が疲労しすぎないイベントを割り当てることができるので、監視者によるイベントの処理結果に関する成功率を向上させることができる。したがって、情報処理装置100は、処理対象のイベントが発生した際に、処理対象のイベントに対して、全ての監視者の中から最適な監視者を選択して割り当てることができる。
【0070】
また、選択部134は、イベント疲労度よりも許容疲労度の方が大きい監視者を対象監視者として選択する。
【0071】
これにより、情報処理装置100は、各監視者に対して、各監視者が疲労しすぎないイベントを割り当てることができるので、監視者の監視負担を軽減することを可能とすることができる。また、情報処理装置100は、各監視者に対して、各監視者が疲労しすぎないイベントを割り当てることができるので、監視者によるイベントの処理結果に関する成功率を向上させることができる。
【0072】
また、推定部132は、自動運転車の車種、自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、イベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、または、イベントの種類に関する情報のうち少なくともいずれか1つに基づいて、イベント疲労度を推定する。
【0073】
これにより、情報処理装置100は、イベント疲労度の推定精度を向上させることができる。
【0074】
また、推定部132は、学習対象の自動運転車の車種、学習対象の自動運転車に搭載された自動運転システムの種類、学習対象のイベントが発生した際に自動運転車が走行している道路の種類、または、学習対象のイベントの種類に関する情報のうち少なくともいずれか1つが入力情報として入力された場合に、学習対象のイベントに関するイベント疲労度を出力情報として出力するよう学習された機械学習モデルを用いて、イベント疲労度を推定する。
【0075】
これにより、情報処理装置100は、イベント疲労度の推定精度を向上させることができる。
【0076】
また、推定部132は、学習対象の監視者の習熟度に応じて異なる複数の機械学習モデルを生成し、監視者の習熟度に応じた機械学習モデルを用いて、イベント疲労度を推定する。
【0077】
上述したように、イベント疲労度は、監視者による処理対象のイベントに対する処理の習熟度に応じて異なると考えられる。これにより、情報処理装置100は、イベント疲労度の推定精度をさらに向上させることができる。
【0078】
また、算出部133は、監視者が過去に処理したイベントの処理実績に基づいて、監視者の一日の最大許容疲労度を算出し、処理対象のイベントの発生日に監視者が処理対象のイベントの発生時点までに処理した各イベントのイベント疲労度の合計を最大許容疲労度から減算することで、許容疲労度を算出する。
【0079】
これにより、情報処理装置100は、処理対象のイベントの発生当日に監視者が処理したイベントの件数や種類、および、監視者の個体差を考慮した上で、許容疲労度を算出することができるため、監視者に応じた許容疲労度を精度よく算出することができる。
【0080】
また、算出部133は、監視者の生体情報として、監視者の心拍数または自律神経に関する情報に基づいて、許容疲労度を算出する。
【0081】
一般的に、生体情報は、個体差を反映すると考えられる。また、心拍数または自律神経に関する情報は、人間の疲労の度合いを精度よく反映する生体情報として知られている。これにより、情報処理装置100は、監視者に応じた許容疲労度を精度よく算出することができる。
【0082】
また、情報処理装置100は、計画部135をさらに備える。計画部135は、過去に処理されたイベントの処理実績における監視者の処理結果を示す情報に基づいて、各地域における監視者の割り当て計画を作成する。
【0083】
これにより、情報処理装置100は、例えば、監視者の処理結果を示す情報のうち、各地域におけるイベントの処理の失敗を示す情報の割合が少なくなるように(または、各地域におけるイベントの処理の成功を示す情報の割合が多くなるように)各地域における監視者の割り当て計画を作成することができる。したがって、情報処理装置100は、各地域におけるイベントの処理結果に関する失敗率を低下させる(つまり、成功率を向上させる)ことができる。
【0084】
また、計画部135は、監視者の処理結果を示す情報のうち、各地域におけるイベントの処理の失敗を示す情報の割合が所定の閾値を下回るように、各地域における監視者の割り当て計画を作成する。
【0085】
これにより、情報処理装置100は、各地域におけるイベントの処理結果に関する失敗率を低下させる(つまり、成功率を向上させる)ことができる。
【0086】
〔5.ハードウェア構成〕
また、上述してきた実施形態に係る情報処理装置100等の情報処理装置は、例えば
図7に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、実施形態に係る情報処理装置100を例に挙げて説明する。
図7は、情報処理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を備える。
【0087】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0088】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、所定の通信網を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを所定の通信網を介して他の機器へ送信する。
【0089】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0090】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0091】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る情報処理装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部130の機能を実現する。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から所定の通信網を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0092】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0093】
〔6.その他〕
また、上記実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0094】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0095】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 情報処理システム
10 車載装置
20 センサ装置
100 情報処理装置
110 通信部
120 記憶部
121 イベント情報記憶部
122 生体情報記憶部
130 制御部
131 受信部
132 推定部
133 算出部
134 選択部
135 計画部
【要約】
【課題】監視者の監視負担を軽減することを可能とする。
【解決手段】本願に係る情報処理装置は、自動運転車に関するイベントを遠隔から監視する監視者によるイベントに対する処理の習熟度に基づいて、監視者が処理対象のイベントを処理することにより感じる疲労の度合いを示すイベント疲労度を推定する推定部と、監視者の生体情報に基づいて、監視者にとって許容できる疲労の度合いを示す許容疲労度を算出する算出部と、イベント疲労度および許容疲労度に基づいて、監視者の中から処理対象のイベントの処理に割り当てる対象監視者を選択する選択部と、を備える。
【選択図】
図2