(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】カルボジイミド組成物、硬化剤組成物、塗料組成物及び樹脂硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 79/00 20060101AFI20240105BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20240105BHJP
C09D 201/06 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C08L79/00
C08G18/28 015
C08G18/28 010
C09D201/06
(21)【出願番号】P 2022510759
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012993
(87)【国際公開番号】W WO2021193950
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2020057712
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】江邉 裕祐
(72)【発明者】
【氏名】稲田 博
(72)【発明者】
【氏名】田野 蕗子
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-138080(JP,A)
【文献】特開2016-196612(JP,A)
【文献】特開2006-117844(JP,A)
【文献】特開2000-319351(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006950(WO,A1)
【文献】特開2013-112755(JP,A)
【文献】特開2009-235278(JP,A)
【文献】特開2019-210402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C08G 18/00 - 18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含み、
前記水溶性の
変性ポリカルボジイミド(A)もしくは、
前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性剤が、ヒドロキシル基含有化合物であって水中におけるpKaが7以上16以下である化合物を少なくとも1つ含む、カルボジイミド組成物。
【請求項2】
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含み、
前記水溶性の
変性ポリカルボジイミド(A)もしくは、
前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性剤が、カルボン酸であって水中におけるpKaが4.8以下である化合物を少なくとも一つ含む、カルボジイミド組成物。
【請求項3】
前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率が、5%以上100%以下である請求項1
又は2に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項4】
前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数が4.0以下の範囲である請求項1
~3のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項5】
前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)が90/10以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項6】
前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率が、70%以下である、請求項1~
5のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項7】
前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率が、前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率より低い、請求項1~
6のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項8】
前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数が変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数よりも多い、請求項1~
7のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項9】
前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)のイソシアネートがポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル及び/又はアルキレングリコールモノアルキルエーテルで封止されている請求項1~
8のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項10】
前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)のイソシアネートを封止するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルのモル比が、20/80以上である請求項1~
9のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項11】
前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)もしくは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性剤が、イソシアネート、ヒドロキシル基含有化合物、チオール基含有化合物、非環式アミン、環式アミン、カルボン酸、及びカルボン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項12】
前記変性剤の骨格中に、電子求引性の官能基を少なくとも1つ含む、請求項
11に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項13】
前記変性剤の骨格中に、炭素数1以上12以下の環式飽和炭化水素基、炭素数1以上12以下の非環式飽和炭化水素基、炭素数2以上8以下の不飽和炭化水素基、及びハロゲン原子のうちいずれか1つが結合している請求項
11又は12に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項14】
前記変性剤の骨格中に、ヒドロキシル基、アミノ基、エーテル基、及びカルボニル基のうちいずれか1つが結合している、請求項
11~13のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物と、水と、を含む、硬化剤組成物。
【請求項16】
界面活性剤を更に含む、請求項
15に記載の硬化剤組成物。
【請求項17】
請求項
15又は
16に記載の硬化剤組成物と、カルボキシ基を有する化合物と、を含む、塗料組成物。
【請求項18】
請求項
17に記載の塗料組成物を硬化させてなる、樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボジイミド組成物、硬化剤組成物、塗料組成物及び樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造において塗装工程は、エネルギー消費量の約1/3を占めると言われており、環境や製造コストの削減の観点から、塗膜の焼き付けの低温化、塗装工程数の削減等が進められている。特に、主剤に含有されるカルボン酸(又はカルボキシ基)が塗膜の耐水性を低下させることから、塗膜の焼き付け時にカルボン酸を消費することが求められている。また、塗膜の焼き付けの低温化に伴い、低温環境下においてカルボン酸消費反応が起こることが求められている。一方で、保管環境下での塗料組成物の貯蔵安定性も必要である。これらの条件を満たす候補化合物として、カルボジイミド化合物が注目されている。
【0003】
特許文献1には、末端イソシアネート基がポリエチレンオキシド繰り返し単位を含有する親水性基で封止されたカルボジイミド系架橋剤が開示されている。該カルボジイミド系架橋剤は、水溶性又は水分散性に優れることが記載されている。また、特許文献2には、特定の2種のポリカルボジイミドを特定の比率で水性媒体中に存在させたカルボジイミド系水性樹脂架橋剤が開示されている。該カルボジイミド系水性樹脂架橋剤は、水性樹脂と長時間併存させた場合であっても水性樹脂を架橋させることが可能であると記載されている。
【0004】
一方、カルボジイミド基の貯蔵安定性を改善する試みとして、カルボジイミドをカルボジイミドと反応し得る反応性基と反応させて、カルボン酸との反応性を低減した官能基に変換することが行われる。例えば、特許文献3には、カルボジイミド基をアミンで変性した樹脂架橋剤が提示されている。また、特許文献4には、カルボジイミド基をイソシアネート基で変性させてなるウレトンイミン基を有する樹脂硬化剤が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-316930号公報
【文献】特許第6255114号公報
【文献】特開2013-112755号公報
【文献】国際公開第2019/221173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のカルボジイミド系水性樹脂架橋剤は、水性樹脂中のカルボン酸と反応し得るカルボジイミド基が存在している。そのため、水性樹脂との混合した際の長期間の保存において増粘又はゲル化が認められ、貯蔵安定性に改良の余地がある。
また、特許文献3及び4に記載の変性カルボジイミド系水性樹脂架橋剤は、貯蔵安定性に優れるものの、変性後の樹脂架橋剤の反応活性は80℃程度の低温下では著しく低下しており、100℃以上の高温下においてしか変性剤が解離せず、低温硬化性に改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び低温硬化性に優れるカルボジイミド組成物、並びに、前記カルボジイミド組成物を用いた硬化剤組成物、塗料組成物及び樹脂硬化物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1)水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含む、カルボジイミド組成物。
(2)前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率が、5%以上100%以下である(1)に記載のカルボジイミド組成物。
(3)前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数が4.0以下の範囲である(1)又は(2)に記載のカルボジイミド組成物。
(4)前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)が90/10以下である、(1)~(3)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(5)前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率が、70%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(6)前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率が、前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率より低い、(1)~(5)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(7)前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数が変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数よりも多い、(1)~(6)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(8)前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)のイソシアネートがポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル及び/又はアルキレングリコールモノアルキルエーテルで封止されている(1)~(7)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(9)前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)のイソシアネートを封止するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルのモル比が、20/80以上である(1)~(8)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(10)前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)もしくは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性剤が、イソシアネート、ヒドロキシル基含有化合物、チオール基含有化合物、非環式アミン、環式アミン、カルボン酸、及びカルボン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、(1)~(9)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(11)前記変性剤の骨格中に、電子求引性の官能基を少なくとも1つ含む、(10)に記載のカルボジイミド組成物。
(12)前記変性剤の骨格中に、炭素数1以上12以下の環式飽和炭化水素基、炭素数1以上12以下の非環式飽和炭化水素基、炭素数2以上8以下の不飽和炭化水素基、及びハロゲン原子のうちいずれか1つが結合している(10)又は(11)に記載のカルボジイミド組成物。
(13)前記変性剤の骨格中に、ヒドロキシル基、アミノ基、エーテル基及びカルボニル基のうちいずれか1つが結合している、(10)~(12)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(14)前記水溶性のポリカルボジイミド(A)もしくは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性剤が、ヒドロキシル基含有化合物であって水中におけるpKaが7以上16以下である化合物を少なくとも1つ含む、(10)~(13)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物。
(15)前記水溶性のポリカルボジイミド(A)もしくは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性剤が、カルボン酸であって水中におけるpKaが4.8以下である化合物を少なくとも一つ含む、(1)~(14)のいずれか1項に記載のカルボジイミド組成物。
(16)(1)~(15)のいずれか一項に記載のカルボジイミド組成物と、水と、を含む、硬化剤組成物。
(17)界面活性剤を更に含む、(16)に記載の硬化剤組成物。
(18)(16)又は(17)に記載の硬化剤組成物と、カルボキシ基を有する化合物と、を含む、塗料組成物。
(19)(18)に記載の塗料組成物を硬化させてなる、樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0009】
上記態様のカルボジイミド組成物によれば、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び低温硬化性に優れるカルボジイミド組成物を提供することができる。上記態様の硬化剤組成物は、前記カルボジイミド組成物を含み、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び低温硬化性に優れる。上記態様の塗料組成物は、前記硬化剤組成物を含み、貯蔵安定性及び低温硬化性に優れる。上記態様の樹脂硬化物は、前記塗料組成物を硬化させてなり、耐水性(構造保持性、耐白化性)(以下、単に「耐水性」と称する場合がある)に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の本実施形態に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0011】
≪カルボジイミド組成物≫
本実施形態のカルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含む。
【0012】
本実施形態のカルボジイミド組成物は、水中で、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)が非水溶性のポリカルボジイミド(B)を覆った会合構造(会合体)を形成するものと推察される。このとき、会合構造において外側に存在する水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)のカルボジイミド基が変性されていることで、反応性が低い状態となっており、且つ、反応性の高い非水溶性のポリカルボジイミド(B)は会合構造の内側に存在する。そのため、主剤成分と混合した塗料組成物として貯蔵した場合においても、カルボジイミド基が主剤成分中のカルボジイミド基と反応し得る反応性基と反応することなく安定した状態で貯蔵することができる。一方で、当該塗料組成物を80℃程度の低温下で硬化させる際には、加熱により会合構造が崩れることで、反応性の高い未変性のカルボジイミド基が露出し、主剤成分の反応性基と反応することができる。また、これにより、十分な架橋構造が形成されることで、得られる塗膜の耐水性が良好なものとなる。
【0013】
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)における水溶性は、水中で、凝集体を形成せずに分散する性質を意味する。一方、非水溶性のポリカルボジイミド(B)における非水溶性は、水中で、それ単独では分散せずに凝集体を形成する性質を意味する。水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)及び非水溶性のポリカルボジイミド(B)を特定の質量比で混合することで、水中で、該水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)が非水溶性のポリカルボジイミド(B)を覆った、会合体を形成できる。
【0014】
水溶性及び非水溶性の指標としては、水100gに対する溶解度で示すことができる。本出願における水溶性の物質とは、水100gに対する溶解度が10g以上の物質を表し、非水溶性の物質とは、水100gに対する溶解度が10g未満の物質を表す。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)は、水100gに対する溶解度が10g以上であることが好ましく、30g以上であることがより好ましく、40g以上であることがさらに好ましく、40g超であることが特に好ましい。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、水100gに対する溶解度が10g未満であることが好ましく、5g未満であることがより好ましく、1g未満であることがさらに好ましい。
【0015】
なお、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)及び非水溶性のポリカルボジイミド(B)の水100gに対する溶解度は、例えば、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
【0016】
本実施形態のカルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率を適宜調整することで、主剤成分に由来するカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を調整することができ、塗料組成物としたときの貯蔵安定性をより向上させることができる。具体的には、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率を高くすることで水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と主剤成分であるカルボキシ基を有する化合物の反応性を低減することが可能であり、一方、変性率を低くすることで水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)とカルボキシ基を有する化合物の反応性を高めることが可能である。
より具体的には、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率の下限は、5%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましく、70%以上であることがこと更に好ましい。変性率が上記下限の範囲にあることで、塗料組成物としたときの貯蔵安定性をより優れたものとすることができる。一方、変性率の上限は、硬化剤組成物とした時の硬化性能の観点から、100%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下であることが更に好ましく、85%以下がこと更に好ましい。また、硬化剤組成物から未反応の水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)が溶出することを防ぐ観点から変性率は100%で無いことが好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下であることが更に好ましく、85%以下がこと更に好ましい。
【0017】
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率は、変性前のポリカルボジイミド中のカルボジイミド官能基のうち、カルボン酸との反応性を低減した官能基に変換された官能基の割合を表し、例えば、以下の方法を用いて算出することができる。なお、変性率はカルボジイミド官能基を定量することの可能な分析手法で有れば、如何なる手法を用いることが可能で、例えばNMRを始めとする分光学的手法や滴定、元素分析等の手法を用いることが可能で有る。
まず、変性前及び変性後の水溶性のポリカルボジイミドについて、赤外吸収スペクトル測定により、カルボジイミド基に由来する波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値を求める。次いで、得られた積分値から、下記式に基づいて変性率を算出することができる。具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて算出することができる。
【0018】
変性率(%)=(変性後の水溶性のポリカルボジイミドの波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値)/(変性前の水溶性のポリカルボジイミドの波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値)×100
【0019】
本実施形態のカルボジイミド組成物は、非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)を適宜調整することで、本実施形態のカルボジイミド組成物を含む塗料組成物において、硬化剤成分であるカルボジイミド組成物と、主剤成分に由来するカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を調整することができ、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び低温硬化性のバランスをより良好に保つことができる。具体的には、質量比(A)/(B)を高くする、すなわち水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の比率を高くすることで、水中において主剤成分であるカルボキシ基を有する化合物との反応性は低下するため、貯蔵安定性はより向上する。一方、質量比(A)/(B)を低くする、すなわち非水溶性のポリカルボジイミド(B)の比率を高くすることで、加熱硬化時において主剤成分であるカルボキシ基を有する化合物との反応性がより向上するため、塗料組成物としての低温硬化性はより向上する。より具体的には、非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)の上限は、90/10以下であることが好ましく、80/20以下であることがより好ましく、70/30以下であることが更に好ましい。質量比(A)/(B)が上記上限値以下であることで、塗料組成物としたときの低温硬化性をより優れたものとすることができる。一方、下限は、10/90以上であることが好ましく、20/80以上であることがより好ましく、30/70以上であることが更に好ましい。質量比(A)/(B)が上記下限値以上であることで、塗料組成物としたときの貯蔵安定性をより優れたものとすることができる。特に、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び低温硬化性のバランスの観点からは、質量比(A)/(B)が10/90以上90/10以下であることがより好ましく、20/80以上80/20以下であることがさらに好ましく、30/70以上70/30以下であることが特に好ましい。質量比(A)/(B)が上記範囲にあることで、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び低温硬化性のバランスをより良好に保つことができる。
【0020】
質量比(A)/(B)は、例えば、カルボジイミド組成物に含まれる水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)及び非水溶性のポリカルボジイミド(B)の質量から算出することができる。
【0021】
また、カルボジイミド組成物とした際の、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数の差を適宜調整することで、主剤成分に由来するカルボン酸(カルボキシ基)と反応した際の架橋構造を調整することが可能である。塗料組成物とした時の貯蔵安定性と、硬化性、並びに樹脂硬化物とした時のゲル分率、耐水性、外観の観点から非水溶性のポリカルボジイミド(B)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数が親水性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数よりも多いことが好ましく、ポリカルボジイミド(B)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数が親水性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数よりも1以上大きいことが好ましく、ポリカルボジイミド(B)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数が親水性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数よりも2以上大きいことが更に好ましく、ポリカルボジイミド(B)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数が親水性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数よりも3以上大きいことが特に好ましい。平均カルボジイミド基数を上記範囲とすることで、従来トレードオフの関係にあった、塗料組成物とした時の貯蔵安定性と、硬化性を両立することが可能となり、樹脂硬化物とした時のゲル分率、耐水性、外観に優れる樹脂硬化物を得ることが可能となる。
【0022】
次いで、本実施形態のカルボジイミド組成物を構成する各成分について詳細を以下に説明する。
【0023】
<水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)>
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)としては、特別な限定はなく、一般的に知られている水溶性の変性ポリカルボジイミドと同様であるが、末端構造が親水性基からなり、カルボジイミド基の少なくとも一部が変性剤により変性されているポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0024】
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)において、少なくとも一部のカルボジイミド基は、主剤成分中のカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を低減した官能基に変換(変性)されている。主剤成分中のカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を低減した官能基としては、ウレトンイミン基、イソウレア基、チオイソウレア基、グアニジン基、N-アシルウレア基、ウレア基、チオウレア基、カルボキシイミドアミド基等が挙げられる。反応性を低減した官能基の中でも、ウレトンイミン基、イソウレア基、チオイソウレア基、グアニジン基、カルボキシイミドアミド基はカルボジイミドとの間の平衡が存在し、加熱によってカルボジイミド基を生成することが可能で、硬化性を向上させることが出来る。加えて、カルボジイミド基の生成に必要な温度が低いほど硬化性を向上させることが出来るため好ましい。この観点から、ウレトンイミン基、イソウレア基、グアニジン基が好ましく、ウレトンイミン基、イソウレア基がより好ましく、ウレトンイミン基が特に好ましい。
これらの官能基を有する場合、非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)が高い場合でも、優れた硬化性を実現することが可能で有る。また、変性ポリカルボジイミド(A)の変性率が高い場合であっても、優れた硬化性を実現することが可能で有る。
一方、反応性を低減した官能基の中でも、N-アシルウレア基、ウレア基、チオウレア基はカルボジイミドとの間の平衡が存在しない、若しくは無視できるほど小さいことからカルボン酸との反応性を低減する効果が高い。従って、これらの官能基を有することで、優れた貯蔵安定性を実現することが可能で有る。
【0025】
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の原料となるポリカルボジイミドは、イソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化することで誘導されるものである。
イソシアネート化合物としては、ジイソシアネート及び該ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートが挙げられる。なお、前記イソシアネート化合物はジイソシアネートの他に2価以上のイソシアネートを一部含んでも良い。
【0026】
ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、IPDI、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、ジメチルシクロへキサンジイソシアネート(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート及びその混合物(以下、「TDIs」と略記する場合がある)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する場合がある)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(以下、「NDI」と略記する場合がある)、3,3-ジメチル-4,4-ジフェニレンジイソシアネート(以下、「TODI」と略記する場合がある)、粗製TDIs、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する場合がある)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、「TMXDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
中でも、ジイソシアネートとしては、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、脂環式ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートが好ましく、IPDI、水添MDI、MDI又はTMXDIがより好まく、IPDI又は水添MDIが特に好ましい。
【0027】
ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものが挙げられる。中でも、ポリイソシアネートはイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートが好ましい。
【0028】
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の原料となるポリカルボジイミド、すなわち、イソシアネート基末端が封止される前のポリカルボジイミドの数平均分子量は、300以上6000以下が好ましく、400以上5000以下がより好ましく、600以上4000以下がさらに好ましい。上記数平均分子量が上記範囲内であることで、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の水中での分散性をより向上することができ、本実施形態のカルボジイミド組成物を塗料組成物としたときの貯蔵安定性がより良好なものとなる。
イソシアネート基末端が封止される前のポリカルボジイミドの数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定により測定することができる。具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
【0029】
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の末端において、ポリカルボジイミドと親水性基の結合様式は特に限定されないが、例えば、ウレタン結合、ウレア結合、カルボジイミド基、アミド結合等が挙げられる。
親水性基としては、ポリカルボジイミドに水溶性を付与することができる官能基であれば特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、水酸基、スルホン酸基、4級アンモニウム基、リン酸基等が挙げられる。中でも、エチレンオキサイド又はプロプレンオキサイドが好ましい。これら親水性基を1種単独で有していてもよく、2種以上組み合わせて有していてもよい。
また、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の水溶性が確保される限りにおいては、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の一部の末端構造が親水性基以外の官能基からなるものであってもよい。中でも、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)とカルボキシ基を含有する塗料との相溶性の観点から、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の末端構造が、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル及び/又はアルキレングリコールモノアルキルエーテルで封止されていることが好ましく、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルで封止されていることがより好ましい。ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルのモル比(ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル/アルキレングリコールモノアルキルエーテル)が20/80以上がより好ましく、20/80以上95/5未満であることがより好ましく、20/80以上85/15未満が更に好ましく、20/80以上75/25未満が特に好ましい。モル比が前記範囲にあることによりカルボキシ基を含有する塗料との相溶性が向上し、樹脂硬化物とした際の耐水性や外観が向上するため好ましい。
【0030】
また、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数を適宜調整することで、主剤成分に由来するカルボン酸(カルボキシ基)と反応した際の架橋構造を調整することが可能である。塗料組成物としたときの貯蔵安定性の観点から、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の1分子当たりの平均カルボジイミド基数は4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましく、1.0以下がこと更好ましい。平均カルボジイミド基数を前記範囲とすることにより、主剤成分と反応して生じる高分子量体の分子量を低減することが可能で、高分子量化により引き起こされる塗料組成物の増粘や、樹脂硬化物の耐水性低下、外観不良といった不具合を抑制することができる。
一方、1分子当たりの平均カルボジイミド基数の下限は特に限定されず、0でも良いが、0でないことが好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、1.5以上がこと更好ましく、2.0以上が特別好ましい。平均カルボジイミド基数を前記範囲とすることにより、樹脂硬化物とした際に水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)は主剤成分に由来するカルボン酸(カルボキシ基)と化学結合し、樹脂硬化物からの水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の溶出が抑制される。
【0031】
[水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法]
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)は、例えば、以下の工程を含む製造方法により得られる。なお、工程2Aと工程3Aとは、変性剤の種類に応じて適宜順番を変更して行うことができるが、工程2A、工程3Aの順で行うことが一般的である。
【0032】
(1)イソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化してポリカルボジイミドを得る工程(以下、「工程1A」と称する場合がある。);
(2)工程1Aで得られたポリカルボジイミドの末端イソシアネート基を、親水性基を有する化合物で封止して、親水性基末端ポリカルボジイミドを得る工程(以下、「工程2A」と称する場合がある。);
(3)工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミドの少なくとも一部のカルボジイミド基を変性剤で変性させて、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)を得る工程(以下、「工程3A」と称する場合がある。)
【0033】
(工程1A)
工程1Aでは、イソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒存在下で脱炭酸縮合反応させて、ポリカルボジイミドを得る。
【0034】
工程1Aで用いられるイソシアネート化合物としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示されたものと同様ものが挙げられる。
【0035】
反応温度は、例えば、100℃以上250℃以下とすることができる。
反応時間は、特に限定されないが、ポリカルボジイミドの数平均分子量が上記範囲内となる重合度に達するまでの時間とすることが好ましい。
【0036】
脱炭酸縮合反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素、エーテル、アミド結合を有する化合物、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する場合がある)、ジエチルエーテル等が挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0037】
カルボジイミド化触媒としては、例えば、ホスホレンオキサイド等が挙げられる。ホスホレンオキサイドとしては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド等が挙げられる。
【0038】
工程1Aにおいて、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、ポリカルボジイミドを取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、ポリカルボジイミドを取り出せばよい。また、取り出したポリカルボジイミドは、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
【0039】
工程1Aにおいては、反応終了後、ポリカルボジイミドを取り出さずに、次工程で用いてもよいが、目的物である水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の収率が向上する点から、ポリカルボジイミドを上述の方法で取り出すことが好ましい。
【0040】
(工程2A)
工程2Aでは、工程1Aで得られたポリカルボジイミドの末端イソシアネート基を、親水性基を有する化合物で封止して、親水性基末端ポリカルボジイミドを得る。
【0041】
親水性基を有する化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びそれらの重合体又は共重合体;アルコール、スルホン酸塩、4級アミン塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0042】
また、工程2Aにおいて、得られる水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の水溶性が確保される限りにおいては、親水性基を有する化合物と、親水性基を有さない化合物とを混合して使用することも可能である。
【0043】
親水性基を有する化合物の配合量は、ポリカルボジイミドの末端イソシアネート基のモル量に応じて、適宜調整することができる。
【0044】
反応温度は、例えば、100℃以上250℃以下とすることができる。
【0045】
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記工程1Aにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0046】
工程2Aにおいて、反応終了後は、工程1Aの場合と同様の方法で、親水性基末端ポリカルボジイミドを取り出すことができ、取り出した親水性基末端ポリカルボジイミドをさらに同様の方法で精製してもよい。
【0047】
(工程3A)
工程3Aでは、工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミドの少なくとも一部のカルボジイミド基を変性剤で変性させて、少なくとも一部のカルボジイミド基が主剤成分中に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)との反応性が低減された官能基に変換された、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)を得る。主剤成分中に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)との反応性が低減された官能基としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示された官能基と同様のものが挙げられる。
【0048】
変性剤としては、カルボジイミド基と反応し得る反応性基を有する化合物であればよく、例えば、イソシアネート類、アルコール類、フェノール類、チオール類、非環式アミン類、環式アミン類、オキシム類、活性メチレン類、カルボン酸類、水等が挙げられる。
変性剤の骨格中に電子求引性の官能基を有することにより、ポリカルボジイミドと変性剤の反応性を調整することが可能である。変性剤として、イソシアネート類、ヒドロキシル基含有化合物、チオール基含有化合物、非環式アミン類、環式アミン類、活性メチレン類、カルボン酸類、及び/又はカルボン酸誘導体類を用いる場合、電子求引性の官能基として、不飽和炭化水素基、ハロゲン基、カルボニル基のいずれか1つ以上を有することが好ましく、ハロゲン基、カルボニル基のいずれか1つ以上を有することが更に好ましく、カルボニル基を1つ以上有することが特に好ましい。電子求引性の官能基と結合していることでカルボジイミドとの反応性が向上し、副反応生成物の低減された変性ポリカルボジイミドの入手が容易であることから好ましい。
【0049】
また、変性剤の骨格中に疎水性の高い官能基を有することにより、変性ポリカルボジイミドの疎水性を調整することが可能で、樹脂硬化物とした際の耐水性、外観を調整することが可能である。この観点から、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、ハロゲン基のうちいずれか1つ以上を含むことが好ましく、炭素数1以上12以下の環式飽和炭化水素基、炭素数1以上12以下の非環式飽和炭化水素基、炭素数2以上8以下の不飽和炭化水素基、及びハロゲン原子のうちいずれか1つ以上を含むことがより好ましく、ハロゲン原子を1つ以上含むことが更に好ましく、フッ素原子を1つ以上含むことが特に好ましい。前記官能基を有する変性剤を用いることで、樹脂硬化物とした際の耐水性や外観を向上させることができる。
また、変性剤の骨格中にカルボン酸基を有する化合物との相溶性の高い官能基を有することにより、変性ポリカルボジイミドのカルボン酸(カルボキシ基)を有する化合物との相溶性を調整することが可能で、樹脂硬化物とした際の耐水性や外観を調整することが可能である。この観点から、ヒドロキシル基、アミノ基、エーテル基、及びカルボニル基のうちいずれか1つ以上を含むことが好ましく、エーテル基、カルボニル基のうちいずれか1つ以上含むことが更に好ましく、カルボニル基を1つ以上含むことが特に好ましい。
【0050】
イソシアネート類としては、1価のイソシアネート化合物が好ましく、例えば、飽和炭化水素基を有するイソシアネート類として、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート(各異性体)、ブチルイソシアネート(各異性体)、ペンチルイソシアネート(各異性体)、ヘキシルイソシアネート(各異性体)、ドデシルイソシアネート(各異性体)、エチルイソシアナトアセテート(各異性体)、ブチルイソシアナトアセテート(各異性体)、シクロペンチルイソシアネート(各異性体)、シクロヘキシルイソシアネート、不飽和炭化水素基を有するイソシアネート類として、アクリル酸2-イソシアナトエチル、メタクリル酸2-イソシアナトエチル、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェニルイソシアネート、エーテル基を有するイソシアネート類として、(S)-2-イソシアナト-3-ターシャリーブトキシプロピオン酸メチル、(S)-2-イソシアナト-3-ターシャリーブトキシプロピオン酸エチル、(S)-2-イソシアナト-3-ターシャリーブトキシプロピオン酸プロピル(各異性体)、(S)-2-イソシアナト-3-ターシャリーブトキシプロピオン酸ブチル(各異性体)、(S)-2-イソシアナト-3-ターシャリーブトキシプロピオン酸ペンチル(各異性体)、(S)-2-イソシアナト-3-ターシャリーブトキシプロピオン酸ヘキシル(各異性体)、(S)-2-イソシアナト-3-ターシャリーブトキシプロピオン酸ドデシル(各異性体)等、ハロゲン基を有するイソシアネート類として、2-フルオロフェニルイソシアネート、2-クロロフェニルイソシアネート、2-ブロモフェニルイソシアネート、2-ヨードフェニルイソシアネート、3-フルオロフェニルイソシアネート、3-クロロフェニルイソシアネート、3-ブロモフェニルイソシアネート、3-ヨードフェニルイソシアネート、4-フルオロフェニルイソシアネート、4-クロロフェニルイソシアネート、4-ブロモフェニルイソシアネート、4-ヨードフェニルイソシアネート、カルボニル基を有するイソシアネート類として、グリシンメチルエステルイソシアネート(Methyl Isocyanatoacetate)、グリシンエチルエステルイソシアネート(Ethyl Isocyanatoacetate)、グリシンプロピルエステルイソシアネート、グリシンブチルエステルイソシアネート(各異性体)、グリシンヘキシルエステルイソシアネート(各異性体)、グリシンドデシルエステルイソシアネート(各異性体)、ロイシンメチルエステルイソシアネート(Methyl 2-isocyanato-4-methyl pentanoate)、ロイシンエチルエステルイソシアネート(Ethyl 2-isocyanato-4-methyl pentanoate)、ロイシンプロピルエステルイソシアネート(各異性体)、ロイシンペンチルエステルイソシアネート(各異性体)、ロイシンヘキシルエステルイソシアネート(各異性体)、ロイシンドデシルエステルイソシアネート(各異性体)、イソシアナト酢酸エチル(Ethyl Isocyanatoacetate)等が挙げられる。
【0051】
アルコール類としては、1価のアルコール化合物(モノアルコール)が好ましく、例えば、飽和炭化水素基を有するアルコールとして、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)、ドデカノール(各異性体)等、不飽和炭化水素基を有するアルコールとして、2-プロペンー1-オール、2-ブテンー1-オール、3-ブテンー1-オール、2-ペンテンー1-オール、3-ペンテンー1-オール、4-ペンテンー1-オール、2-ヘキセンー1-オール、3-ヘキセンー1-オール、4-ヘキセンー1-オール、5-ヘキセンー1-オール、ベンジルアルコール等、エーテル基を有するアルコールとして、1-メトキシー2-プロパノール、1-メトキシエタノール、1-エトキシエタノール、1-プロポキシエタノール、1-ブトキシエタノール、1-ペントキシエタノール、1-ヘキトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシー2-プロパノール、1-プロポキシー2-プロパノール、1-ブトキシー2-プロパノール、1-ペントキシー2-プロパノール、1-ブトキシー2-プロパノール等、ハロゲン基を有するアルコールとして、フルオロメタノール、クロロメタノール、ブロモメタノール、ヨードメタノール、ジフルオロメタノール、ジクロロメタノール、ジブロモメタノール、ジヨードメタノール、トリフルオロメタノール、トリクロロメタノール、トリブロモメタノール、トリヨードメタノール、2-フルオロエタノール、2-クロロエタノール、2-ブロモエタノール、2-ヨードエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、2,2-ジクロロエタノール、2,2-ジブロモエタノール、2,2-ジヨードエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2,2,2-トリブロモエタノール、2,2,2-トリヨードエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパノール、2,2,3,3,3-ペンタクロロプロパノール、2,2,3,3,3-ペンタブロモプロパノール、2,2,3,3,3-ペンタヨードプロパノール、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエタノール、2,2,2-トリクロロ-1-トリクロロメチルエタノール、2,2,2-トリブロモ-1-トリブロモメチルエタノール、2,2,2-トリヨード-1-トリヨードメチルエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-トリフルオロメチルプロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-トリクロロメチルプロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサブロモ-2-トリブロモメチルプロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサヨード-2-トリヨードメチルプロパノール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロー1-ペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタクロロー1-ペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタブロモー1-ペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタヨードー1-ペンタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサクロロイソプロパノール、ヘキサブロモイソプロパノール、ヘキサヨードイソプロパノール、2-フルオロベンジルアルコール、2―クロロベンジルアルコール、2-ブロモベンジルアルコール、2-ヨードベンジルアルコール、3-フルオロベンジルアルコール、3―クロロベンジルアルコール、3-ブロモベンジルアルコール、3-ヨードベンジルアルコール、4-フルオロベンジルアルコール、4―クロロベンジルアルコール、4-ブロモベンジルアルコール、4-ヨードベンジルアルコール等、カルボニル基を有するアルコール類として、ヒドロキシ酸エステル等、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸プロピル(各異性体)、グリコール酸ブチル(各異性体)、グリコール酸ペンチル(各異性体)、グリコール酸ヘキシル(各異性体)、グリコール酸ドデシル(各異性体)、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル(各異性体)、グリコール酸ブチル(各異性体)、グリコール酸ペンチル(各異性体)、グリコール酸ヘキシル(各異性体)、グリコール酸ドデシル(各異性体)、タルトロン酸メチル、タルトロン酸エチル、タルトロン酸プロピル(各異性体)、タルトロン酸ブチル(各異性体)、タルトロン酸ペンチル(各異性体)、タルトロン酸ヘキシル(各異性体)、タルトロン酸ドデシル(各異性体)、2-ヒドロキシ酪酸メチル、2―ヒドロキシ酪酸エチル、2-ヒドロキシ酪酸プロピル(各異性体)、2-ヒドロキシ酪酸ブチル(各異性体)、2―ヒドロキシ酪酸ペンチル(各異性体)、2-ヒドロキシ酪酸ヘキシル(各異性体)、2-ヒドロキシ酪酸ドデシル(各異性体)、3-ヒドロキシ酪酸メチル、3―ヒドロキシ酪酸エチル、3-ヒドロキシ酪酸プロピル(各異性体)、3-ヒドロキシ酪酸ブチル(各異性体)、3―ヒドロキシ酪酸ペンチル(各異性体)、3-ヒドロキシ酪酸ヘキシル(各異性体)、3-ヒドロキシ酪酸ドデシル(各異性体)、4-ヒドロキシ酪酸メチル、4―ヒドロキシ酪酸エチル、4-ヒドロキシ酪酸プロピル(各異性体)、4-ヒドロキシ酪酸ブチル(各異性体)、4―ヒドロキシ酪酸ペンチル(各異性体)、4-ヒドロキシ酪酸ヘキシル(各異性体)、4-ヒドロキシ酪酸ドデシル(各異性体)、リンゴ酸ジメチル、リンゴ酸ジエチル、リンゴ酸ジプロピル(各異性体)、リンゴ酸ジペンチル(各異性体)、リンゴ酸ジヘキシル(各異性体)、リンゴ酸ジドデシル(各異性体)、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル(各異性体)、クエン酸トリブチル(各異性体)、クエン酸トリペンチル(各異性体)、クエン酸トリヘキシル(各異性体)、クエン酸トリドデシル(各異性体)、イソクエン酸トリメチル、イソクエン酸トリエチル、イソクエン酸トリプロピル(各異性体)、イソクエン酸トリペンチル(各異性体)、イソクエン酸トリヘキシル(各異性体)、イソクエン酸トリドデシル(各異性体)、ヒドロキシ-2-プロパノン、ヒドロキシ-2-ブタノン、ヒドロキシ-2-ペンタノン、ヒドロキシ-2-ヘキサノン、ヒドロキシ-3-ブタノン、ヒドロキシ-3-ペンタノン、ヒドロキシ-3-ヘキサノン等、アミノ基を有するアルコールとして、2-(ジメチルアミノ)エタノール、3-(ジメチルアミノ)プロパノール、4-(ジメチルアミノ)ペンタノール、5-(ジメチルアミノ)ヘキサノール等が挙げられる。
フェノール類としては、フェノール、メチルフェノール(各異性体)、エチルフェノール(各異性体)、プロピルフェノール(各異性体)、ブチルフェノール(各異性体)ペンチルフェノール(各異性体)、ヘキシルフェノール(各異性体)、ヘプチルフェノール(各異性体)、オクチルフェノール(各異性体)、ノニルフェノール(各異性体)、ジメチルフェノール(各異性体)、ジエチルフェノール(各異性体)、ジプロピルフェノール(各異性体)、ジブチルフェノール(各異性体)、ジペンチルフェノール(各異性体)、トリメチルフェノール(各異性体)、トリエチルフェノール(各異性体)、トリプロピルフェノール(各異性体)、トリブチルフェノール(各異性体)、メトキシフェノール(各異性体)、エトキシフェノール(各異性体)、フェノキシフェノール(各異性体)、(フェニルメチル)フェノール(各異性体)、(フェニルプロピル)フェノール(各異性体)、フェニルフェノール(各異性体)、ナフトール(各異性体)、等が挙げられる。ハロゲン基を有するフェノール類として、2-フルオロフェノール、3-フルオロフェノール、4-フルオロフェノール、2,4-ジフルオロフェノール、2,6-ジフルオロフェノール、3,4-ジフルオロフェノール、3,5-ジフルオロフェノール、2,4,6-トリフルオロフェノール、3,4,5-トリフルオロフェノール、2,3,5,6-テトラフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ペンタフルオロフェニルフェノール、パーフルオロ-1-ナフトール、パーフルオロ-2-ナフトール、2-クロロフェノール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール、2,4-ジクロロフェノール、2,6-ジクロロフェノール、3,4-ジクロロフェノール、3,5-ジクロロフェノール、2,4,6-トリクロロフェノール、3,4,5-トリクロロフェノール、2,3,5,6-テトラクロロフェノール、ペンタクロロフェノール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-トリクロロメチルフェノール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-ペンタクロロフェニルフェノール、パークロロ-1-ナフトール、パークロロ-2-ナフトール、2-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、4-ブロモフェノール、2,4-ジブロモフェノール、2,6-ジブロモフェノール、3,4-ジブロモフェノール、3,5-ジブロモフェノール、2,4,6-トリブロモフェノール、3,4,5-トリブロモフェノール、2,3,5,6-テトラブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、2,3,5,6-テトラブロモ-4-トリブロモメチルフェノール、2,3,5,6-テトラブロモ-4-ペンタブロモフェニルフェノール、パーブロモ-1-ナフトール、パーブロモ-2-ナフトール、2-ヨードフェノール、3-ヨードフェノール、4-ヨードフェノール、2,4-ジヨードフェノール、2,6-ジヨードフェノール、3,4-ジヨードフェノール、3,5-ジヨードフェノール、2,4,6-トリヨードフェノール、3,4,5-トリヨードフェノール、2,3,5,6-テトラヨードフェノール、ペンタヨードフェノール、2,3,5,6-テトラヨード-4-トリヨードメチルフェノール、2,3,5,6-テトラヨード-4-ペンタヨードフェニルフェノール、パーヨード-1-ナフトール、パーヨード-2-ナフトール、2-(トリフルオロメチル)フェノール、3-(トリフルオロメチル)フェノール、4-(トリフルオロメチル)フェノール、2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェノール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール、2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェノール、3,4,5-トリス(トリフルオロメチル)フェノール等、カルボニル基を有するフェノールとして、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸プロピル、サリチル酸ブチル、サリチル酸ペンチル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸ドデシル、2-アセチルフェノール、3-アセチルフェノール、4-アセチルフェノール等、アミノ基を有するフェノールとして、1-アセチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)ピペラジン等が挙げられる。
【0052】
非環式アミン類としては、2級の非環式アミンが好ましく、例えば、飽和炭化水素基を有する非環式アミン類として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、N-エチルメチルアミン、N-エチルイソプロピルアミン、N-エチルプロピルアミン、N-ターシャリーブチルエチルアミン等、不飽和炭化水素基を有する非環式アミン類として、N-メチルベンジルアミン、N-エチルベンジルアミン、N-プロピルベンジルアミン、N-ブチルベンジルアミン等、エーテル基を有する非環式アミン類として、N-(2-メトキシエチル)メチルアミン、N-(2-エトキシエチル)メチルアミン、N-(2-プロポキシエチル)メチルアミン、N-(2-ブトキシエチル)メチルアミン、N-(2-ペントキシエチル)メチルアミン、N-(2-ヘキシトキシエチル)メチルアミン、N-(2-メトキシエチル)エチルアミン、N-(2-エトキシエチル)エチルアミン、N-(2-プロポキシエチル)エチルアミン、N-(2-ブトキシエチル)エチルアミン、N-(2-ペントキシエチル)エチルアミン、N-(2-ヘキシトキシエチル)エチルアミン等、ハロゲン基を有する非環式アミン類として、ビス(フルオロメチル)アミン、ビス(クロロメチル)アミン、ビス(ブロモメチル)アミン、ビス(ヨードメチル)アミン、ビス(ジフルオロメチル)アミン、ビス(ジクロロメチル)アミン、ビス(ジブロモメチル)アミン、ビス(ジヨードメチル)アミン、ビス(トリフルオロメチル)アミン、ビス(トリクロロメチル)アミン、ビス(トリブロモメチル)アミン、ビス(トリヨードメチル)アミン、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)アミン、ビス(2,2,2-トリクロロエチル)アミン、ビス(2,2,2-トリブロモエチル)アミン、ビス(2,2,2-トリヨードエチル)アミン、ビス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)アミン、ビス(2,2,3,3,3-ペンタクロロプロピル)アミン、ビス(2,2,3,3,3-ペンタブロモプロピル)アミン、ビス(2,2,3,3,3-ペンタヨードプロピル)アミン、ビス(2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル)アミン、ビス(2,2,2-トリクロロ-1-トリクロロメチルエチル)アミン、ビス(2,2,2-トリブロモ-1-トリブロモメチルエチル)アミン、ビス(2,2,2-トリヨード-1-トリヨードメチルエチル)アミン、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピル)アミン、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-トリクロロメチルプロピル)アミン、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサブロモ-2-トリブロモメチルプロピル)アミン、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサヨード-2-トリヨードメチルプロピル)アミン、ビス(2-フルオロフェニル)アミン、ビス(3-フルオロフェニル)アミン、ビス(4-フルオロフェニル)アミン、ビス(2-クロロフェニル)アミン、ビス(3-クロロフェニル)アミン、ビス(4-クロロフェニル)アミン、ビス(2-ブロモフェニル)アミン、ビス(3-ブロモフェニル)アミン、ビス(4-ブロモフェニル)アミン、ビス(2-ヨードフェニル)アミン、ビス(3-ヨードフェニル)アミン、ビス(4-ヨードフェニル)アミン、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)アミン、ビス(3,5-ジフルオロフェニル)アミン、ビス(2,6-ジクロロフェニル)アミン、ビス(3,5-ジクロロフェニル)アミン、ビス(2,6-ジブロモフェニル)アミン、ジ(3,5-ジブロモフェニル)アミン、ビス(2,6-ジヨードフェニル)アミン、ビス(3,5-ジヨードフェニル)アミン、ビス(2,4,6-トリフルオロフェニル)アミン、ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)アミン、ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)アミン、ビス(2,4,6-トリヨードフェニル)アミン、ビス(ペンタフルオロフェニル)アミン、ビス(ペンタクロロフェニル)アミン、ビス(ペンタブロモフェニル)アミン、ビス(ペンタヨードフェニル)アミン、ビス(2-(トリフルオロメチル)フェニル)アミン、ビス(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミン、ビス(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アミン、ビス(2,6-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アミン、ビス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アミン、ビス(2,4,6-トリ(トリフルオロメチル)フェニル)アミン等、カルボニル基を有するアミンとしてジメチルイミノジアセテート、ジエチルイミノジアセテート、ジプロピルイミノジアセテート、ジブチルイミノジアセテート、ジペンチルイミノジアセテート、ジヘキシルイミノジアセテート、N-メチルグリシンエチル、N-エチルグリシンエチル等、アミノ基を有する非環式アミン類として、N,N,N´-トリメチルエチレンジアミン等、ヒドロキシル基を有する非環式アミン類として、2-(メチルアミノ)エタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、1-(メチルアミノ)-2-プロパノール、1-(エチルアミノ)-2-プロパノール等が挙げられる。
【0053】
環式アミン類としては、2級の環式アミンが好ましく、例えば、飽和炭化水素基を有する環式アミンとして、ピロリジン、ピペリジン等、不飽和炭化水素を有する環式アミンとしてイミダゾール、ピラゾール、ピロール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、インドール等、エーテル基を有する環式アミンとしてモルホリン等、ハロゲン基を有する環式アミンとして、1-フルオロピペリジン、1-クロロピペリジン、1-ブロモピペリジン、1-ヨードピペリジン、2-フルオロピペリジン、2-クロロピペリジン、2-ブロモピペリジン、2-ヨードピペリジン、3-フルオロピペリジン、3-クロロピペリジン、3-ブロモピペリジン、3-ヨードピペリジン、4-フルオロピペリジン、4-クロロピペリジン、4-ブロモピペリジン、4-ヨードピペリジン、5-フルオロインドール、5-クロロインドール、5-ブロモインドール、5-ヨードインドール等、カルボニル基を有する環式アミンとして、4-ピペリジンカルボン酸メチル、4-ピペリジンカルボン酸エチル、4-ピペリジンカルボン酸プロピル(各異性体)、4-ピペリジンカルボン酸ブチル(各異性体)、4-ピペリジンカルボン酸ペンチル(各異性体)、4-ピペリジンカルボン酸ヘキシル(各異性体)、4-ピペリジンカルボン酸ドデシル(各異性体)等、アミノ基を有する環式アミン類として、1-メチルピペラジン、1-エチルピペラジン、1-プロピルピペラジン(各異性体)、1-ブチルピペラジン(各異性体)、1-ペンチルピペラジン(各異性体)、1-ヘキシルピペラジン(各異性体)、1-ドデシルピペラジン(各異性体)等、ヒドロキシル基を有する環式アミン類として、3-ヒドロキシピペリジン、4-ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0054】
オキシム類としては、例えば、飽和炭化水素基を有するオキシム類としてホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、2-ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、不飽和炭化水素基を有するオキシム類としてα―ベンズアルドキシム等、ハロゲン基を有するオキシム類として2-フルオロベンズアルドキシム、2-クロロベンズアルドキシム、2-ブロモベンズアルドキシム、2-ヨードベンズアルドキシム、3-フルオロベンズアルドキシム、3-クロロベンズアルドキシム、3-ブロモベンズアルドキシム、3-ヨードベンズアルドキシム、4-フルオロベンズアルドキシム、4-クロロベンズアルドキシム、4-ブロモベンズアルドキシム、4-ヨードベンズアルドキシム等、カルボニル基を有するオキシム類として、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-オキシム等、ヒドロキシル基を有する環式アミン類として、1,3-ジヒドロキシアセトンオキシム等が挙げられる。
【0055】
その他ヒドロキシル基含有化合物としては、例えば、ジエチルヒドロキシルアミンを始めとするヒドロキシルアミン類、N-ヒドロキシスクシンイミドを始めとするヒドロキシスクシンイミド類、N―ヒドロキシフタルイミドを始めとするヒドロキシフタルイミド類等が挙げられる。
【0056】
チオール類としては、例えば飽和炭化水素基を有するチオール類として、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール(各異性体)、ペンタンチオール(各異性体)、ヘキサンチオール(各異性体)、ヘプタンチオール(各異性体)、オクタンチオール(各異性体)、ノナンチオール(各異性体)、デカンチオール(各異性体)、ウンデカンチオール(各異性体)、ドデカンチオール(各異性体)、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール等、不飽和炭化水素基を有するチオール類として、2-プロペン-1-チオール、ベンジルメルカプタン、チオフェノール等、ハロゲン基を有するチオール類として、3-フルオロ-1-プロパンチオール、3-クロロ-1-プロパンチオール、3-ブロモ-1-プロパンチオール、3-ヨード-1-プロパンチオール、2-フルオロチオフェノール、2-クロロチオフェノール、2-ブロモチオフェノール、2-ヨードチオフェノール、3-フルオロチオフェノール、3-クロロチオフェノール、3-ブロモチオフェノール、3-ヨードチオフェノール、4-フルオロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、4-ブロモチオフェノール、4-ヨードチオフェノール等、カルボニル基を有するチオール類として、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル(各異性体)、チオグリコール酸ペンチル(各異性体)、チオグリコール酸ヘキシル(各異性体)、チオグリコール酸ドデシル(各異性体)、チオ乳酸メチル、チオ乳酸エチル、チオ乳酸プロピル(各異性体)、チオ乳酸ペンチル(各異性体)、チオ乳酸ヘキシル(各異性体)、チオ乳酸ドデシル(各異性体)等、アミノ基を有するチオール類として、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-ジエチルアミノエタンチオール、2-ジプロピルアミノエタンチオール、2-ジブチルアミノエタンチオール、2-ジペンチルアミノエタンチオール、2-ジヘキシルアミノエタンチオール、2-ジドデシルアミノエタンチオール等、ヒドロキシル基を有するチオール類として、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1-プロパノール、4-メルカプト-1-ブタノール、5-メルカプト-1-ペンタノール、5-メルカプト-1-ヘキサノール、5-メルカプト-1-ドデカノール等、が挙げられる。
【0057】
活性メチレン類としては、例えば、飽和炭化水素基を有する活性メチレン類として、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル(各異性体)、マロン酸ジペンチル(各異性体)、マロン酸ジヘキシル(各異性体)、マロン酸ジドデシル(各異性体)、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル(各異性体)、アセト酢酸ペンチル(各異性体)、アセト酢酸ヘキシル(各異性体)、アセト酢酸ドデシル(各異性体)、アセチルアセトン、アセト酢酸イソプロピル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸tert-ブチルエチル、マロン酸イソプロピルエチル等、不飽和炭化水素基を有する活性メチレン類として、マロン酸ジベンジル、アセト酢酸ベンジル等、エーテル基を有する活性メチレン類として、マロン酸ビス(2-メトキシエチル)、アセト酢酸2-メトキシエチル等、ハロゲン基を有する活性メチレン類として、4-フルオロアセト酢酸メチル、4-クロロアセト酢酸メチル、4-ブロモアセト酢酸メチル、4-ヨードアセト酢酸メチル、4-フルオロアセト酢酸エチル、4-クロロアセト酢酸メチル、4-ブロモアセト酢酸エチル、4-ヨードアセト酢酸エチル、4-フルオロアセト酢酸プロピル(各異性体)、4-クロロアセト酢酸プロピル(各異性体)、4-ブロモアセト酢酸プロピル(各異性体)、4-ヨードアセト酢酸プロピル(各異性体)、4-フルオロアセト酢酸ブチル(各異性体)、4-クロロアセト酢酸ブチル(各異性体)、4-ブロモアセト酢酸ブチル(各異性体)、4-ヨードアセト酢酸ブチル(各異性体)、4-フルオロアセト酢酸ペンチル(各異性体)、4-クロロアセト酢酸ペンチル(各異性体)、4-ブロモアセト酢酸ペンチル(各異性体)、4-ヨードアセト酢酸ペンチル(各異性体)、4-フルオロアセト酢酸ヘキシル(各異性体)、4-クロロアセト酢酸ヘキシル(各異性体)、4-ブロモアセト酢酸ヘキシル(各異性体)、4-ヨードアセト酢酸ヘキシル(各異性体)、4-フルオロアセト酢酸ドデシル(各異性体)、4-クロロアセト酢酸ドデシル、4-ブロモアセト酢酸ドデシル、4-ヨードアセト酢酸ドデシル、トリフルオロアセチルアセトン、トリクロロアセチルアセトン、トリブロモアセチルアセトン、トリヨードアセチルアセトン等、が挙げられる。
【0058】
水溶性のポリカルボジイミド(A)もしくは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性剤として、ヒドロキシル基含有化合物を用いる場合、該変性剤の水中におけるpKaの下限は6が好ましく、7がより好ましく、8が更に好ましく、9がこと更に好ましい。一方、上限は16が好ましく、15がより好ましく、14が更に好ましく、13がこと更に好ましく、12が特別に好ましい。前記下限以上のpKaとすることで、カルボジイミド基とヒドロキシル基含有化合物が反応して形成される構造が水と反応して形成されるウレアを低減することができるため、樹脂硬化物とした際の耐水性が向上する。一方、前記上限以下のpKaとすることで、カルボジイミド基とヒドロキシル基含有化合物の反応性が向上し、温和な条件下でポリカルボジイミドの変性が可能となる。なお、水中におけるpKaとは、必ずしも水中で測定したものに限定されず、他の溶媒等で測定された値を水中におけるpKaに換算されたものでも良い。また、pKaは温度依存性が有ることが知られているが室温付近の値が一般的である。例えばエタノールのpKaは16、フェノールのpKaは10であることが一般に知られている。
【0059】
カルボン酸類としては、例えば、飽和炭化水素基を有するカルボン酸類として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、不飽和炭化水素基を有するカルボン酸類として、安息香酸、アニス酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ペンテン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、ソルビン酸等、エーテル基を有するカルボン酸類として、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、ブトキシ酢酸、ペントキシ酢酸、ヘキシロキシ酢酸、メトキシ乳酸、エトキシ乳酸、プロポキシ乳酸、ブトキシ乳酸、ペントキシ乳酸、ヘキシロキシ乳酸等、ハロゲン基を有するカルボン酸類として、フルオロ酢酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、ジヨード酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、トリヨード酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタクロロプロピオン酸、ペンタブロモプロピオン酸、ペンタヨードプロピオン酸、2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(トリクロロメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(トリブロモメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(トリヨードメチル)プロピオン酸、4,4,4-トリフルオロ酪酸、4,4,4-トリクロロ酪酸、4,4,4-トリブロモ酪酸、4,4,4-トリヨード酪酸、ヘプタフルオロ酪酸、ヘプタクロロ酪酸、ヘプタブロモ酪酸、ヘプタヨード酪酸、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキサン酸、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタクロロヘキサン酸、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタブロモヘキサン酸、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタヨードヘキサン酸、2-フルオロ安息香酸、2-クロロ安息香酸、2-ブロモ安息香酸、2-ヨード安息香酸、3-フルオロ安息香酸、3-クロロ安息香酸、3-ブロモ安息香酸、3-ヨード安息香酸、4-フルオロ安息香酸、4-クロロ安息香酸、4-ブロモ安息香酸、4-ヨード安息香酸等、カルボニル基を有するカルボン酸としては、ピルビン酸、マロン酸、マロン酸モノメチル、マロン酸モノエチル、マロン酸モノプロピル(各異性体)、マロン酸モノブチル(各異性体)、マロン酸モノペンチル(各異性体)、マロン酸モノヘキシル(各異性体)、マロン酸モノドデシル(各異性体)、アセト酢酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル(各異性体)、マレイン酸モノペンチル(各異性体)、マレイン酸モノヘキシル(各異性体)、マレイン酸モノドデシル(各異性体)、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル(各異性体)、フマル酸モノペンチル(各異性体)、フマル酸モノヘキシル(各異性体)、フマル酸モノドデシル(各異性体)、フタル酸モノメチル、フタル酸モノエチル、フタル酸モノプロピル、フタル酸モノブチル(各異性体)、フタル酸モノペンチル(各異性体)、フタル酸モノヘキシル(各異性体)、フタル酸モノドデシル(各異性体)、イソフタル酸モノメチル、イソフタル酸モノエチル、イソフタル酸モノプロピル(各異性体)、イソフタル酸モノブチル(各異性体)、イソフタル酸モノペンチル(各異性体)、イソフタル酸モノヘキシル(各異性体)、イソフタル酸モノドデシル(各異性体)、テレフタル酸モノメチル、テレフタル酸モノエチル、テレフタル酸モノプロピル(各異性体)、テレフタル酸モノブチル(各異性体)、テレフタル酸モノペンチル(各異性体)、テレフタル酸モノヘキシル(各異性体)、テレフタル酸モノドデシル(各異性体)、ヒドロキシル基を有するカルボン酸としてヒドロキシ酸等、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸モノメチル、リンゴ酸モノエチル、リンゴ酸モノプロピル(各異性体)、リンゴ酸モノペンチル(各異性体)、リンゴ酸モノヘキシル(各異性体)、リンゴ酸モノドデシル(各異性体)、クエン酸モノメチル、クエン酸モノエチル、クエン酸モノプロピル(各異性体)、クエン酸モノペンチル(各異性体)、クエン酸モノヘキシル(各異性体)、クエン酸モノドデシル(各異性体)、イソクエン酸モノメチル、イソクエン酸モノエチル、イソクエン酸モノプロピル(各異性体)、イソクエン酸モノペンチル(各異性体)、イソクエン酸モノヘキシル(各異性体)、イソクエン酸モノドデシル等(各異性体)、アミノ基を有するカルボン酸としてN,N-ジメチルグリシン、N,N-ジエチルグリシン、N,N-ジプロピルグリシン、N,N-ジブチルグリシン、N,N-ジペンチルグリシン、N,N-ジヘキシルグリシン、N,N-ジメチルアラニン、ジエチルアラニン、N,N-ジプロピルアラニン、N,N-ジブチルアラニン、N,N-ジペンチルアラニン、N,N-ジヘキシルアラニン等が挙げられる。
【0060】
水溶性のポリカルボジイミド(A)もしくは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性剤として、カルボン酸を用いる場合、該変性剤の水中におけるpKaの上限は4.8が好ましく、4.2がより好ましく、3.7が特に好ましい。前記上限のpKa以下とすることで、カルボジイミド基とカルボン酸が反応して得られるO-アシルウレア構造が、N-アシルウレア構造に変化する前にウレア構造を形成する反応を抑制し、ウレア構造を低減することが出来るため、樹脂硬化物とした際の耐水性が向上する。前述の通り、水中におけるpKaとは、必ずしも水中で測定したものに限定されず、他の溶媒等で測定された値を水中におけるpKaに換算されたものでも良い。また、pKaは温度依存性が有ることが知られているが室温付近の値が一般的である。例えば、酢酸のpKaは4.8、安息香酸のpKaは4.2で有ることが一般的に知られている。
【0061】
変性剤の配合量は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率が上記範囲内となるように、親水性基末端ポリカルボジイミドが有するカルボジイミド基のモル量に応じて、適宜調整することができる。
【0062】
反応温度は、例えば、20℃以上250℃以下とすることができ、30℃以上80℃以下とすることができる。
【0063】
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記工程1Aにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0064】
工程3Aにおいて、反応終了後は、工程1Aの場合と同様の方法で、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)を取り出すことができ、取り出した水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)をさらに同様の方法で精製してもよい。
【0065】
工程1Aで得られたポリカルボジイミド、工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミド、及び工程3Aで得られた水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0066】
<非水溶性のポリカルボジイミド(B)>
非水溶性のポリカルボジイミド(B)としては、特別な限定はなく、一般的に知られている非水溶性のポリカルボジイミドと同様であるが、末端構造が親水性を有しない基(疎水性基)からなるポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0067】
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の原料となるポリカルボジイミドは、イソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化することで誘導されるものである。
イソシアネート化合物としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、イソシアネート化合物がジイソシアネートである場合には、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、脂環式ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートが好ましく、IPDI、水添MDI、MDI又はTMXDIがより好まく、IPDI又は水添MDIが特に好ましい。
また、イソシアネート化合物がポリイソシアネートである場合には、イソシアヌレート基、ウレタン基及びイミノオキサジアジンジオン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するポリイソシアネートが好ましい。
【0068】
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の原料となるポリカルボジイミド、すなわち、イソシアネート基末端が封止される前のポリカルボジイミドの数平均分子量は、300以上6000以下が好ましく、400以上5000以下がより好ましく、600以上4000以下がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲内であることで、非水溶性のポリカルボジイミド(B)を水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)が覆ってなる会合体(ミセル)の粒子径が大きくなりすぎて凝集及び沈殿することを効果に防止し、その結果、会合体の水分散性をより向上することができ、本実施形態のカルボジイミド組成物を塗料組成物としたときの貯蔵安定性がより良好なものとなる。
イソシアネート基末端が封止される前のポリカルボジイミドの数平均分子量は、例えば、GPC測定により測定することができる。具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
【0069】
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の末端において、ポリカルボジイミドと親水性を有しない基(「疎水性基」と称する場合がある)の結合様式は特に限定されないが、例えば、ウレタン結合、ウレア結合、カルボジイミド基、アミド結合等が挙げられる。
親水性を有しない基(疎水性基)としては、ポリカルボジイミドに非水溶性を付与することができる官能基であれば特に限定されないが、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合を含んでもよい、脂肪族アルキル基、脂環式アルキル基、脂肪族アルケニル基、脂環式アルケニル基、脂肪族アルキニル基等が挙げられる。中でも、エーテル結合を含んでもよい、脂肪族アルキル基又は脂環式アルキル基が好ましい。これら親水性を有しない基(疎水性基)を1種単独で有していてもよく、2種以上組み合わせて有していてもよい。
また、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の非水溶性が確保される限りにおいては、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の一部の末端構造が親水性基からなるものであってもよい。
【0070】
非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、カルボジイミド基の少なくとも一部が変性されていてもよく、変性されていなくてもよい。水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)との相溶性を向上させる観点からは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、カルボジイミド基の少なくとも一部が変性していることが好ましい。水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と非水溶性のポリカルボジイミド(B)の相溶性が向上することで、硬化剤組成物とした際の分散安定性が向上し、加えて樹脂硬化物とした際にポリカルボジイミド成分が樹脂硬化物中に均一に分散しカルボン酸と反応することで耐水性の向上に寄与する。具体的には、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率の下限は0%であっても良いが、0%でない方が好ましく、1%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましく、10%以上がこと更に好ましい。一方で、ポリカルボジイミド(B)の変性率を少なくすることで、塗料組成物としたときの低温硬化性及び塗膜としたときの耐水性を向上させることが出来る。この観点からは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率の上限は、70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、35%以下が更に好ましく、5%未満であることがこと更に好ましく、1%未満であることが特別に好ましく、0%が最も好ましい。
また、カルボジイミド組成物とした際の、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率と、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率の差を適宜調整することで、主剤成分に由来するカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を調整することが可能で有る。塗料組成物とした時の貯蔵安定性と、硬化性、並びに樹脂硬化物とした時のゲル分率、耐水性、外観の観点から、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも低いことが好ましく、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも10%以上低いことがより好ましく、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも30%以上低いことがさらに好ましく、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも50%以上低いことが特に好ましい。変性率を上記範囲とすることで、従来トレードオフの関係にあった、塗料組成物とした時の貯蔵安定性と、硬化性を両立することが可能となり、樹脂硬化物とした時のゲル分率、耐水性、外観に優れる樹脂硬化物を得ることが可能となる。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率は、上記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率と同様の方法を用いて算出することができる。
【0071】
[非水溶性のポリカルボジイミド(B)の合成方法]
非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、例えば;
イソシアネート化合物を、カルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化し、且つ、得られたポリカルボジイミドの末端イソシアネート基を、疎水性基を有する化合物で封止して、非水溶性のポリカルボジイミド(B)(疎水性基末端ポリカルボジイミドともいう)を得る工程(以下、「工程1B」と称する場合がある。);
を含む製造方法により得られる。
【0072】
(工程1B)
工程1Bでは、イソシアネート化合物のカルボジイミド化触媒存在下での脱炭酸縮合反応によるポリカルボジイミド化と、得られたポリカルボジイミドの末端イソシアネート基の疎水性基を有する化合物による封止化を同時に行い、非水溶性のポリカルボジイミド(B)を得る。
【0073】
なお、工程1Bにおいて、
イソシアネート化合物を、カルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化し、ポリカルボジイミドを得る工程(以下、「工程1B-1」と称する場合がある)と、
工程1B-1で得られたポリカルボジイミドを、疎水性基を有する化合物で封止して、非水溶性のポリカルボジイミド(B)を得る工程(以下、「工程1B-2」と称する場合がある。)と、
に分けて行ってもよいが、製造効率観点から、上記工程1B-1及び上記工程1B-2を同時に行うことが好ましい。
【0074】
工程1Bで用いられるイソシアネート化合物としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示されたものと同様ものが挙げられる。
【0075】
疎水性基を有する化合物としては、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合を含んでもよい、脂肪族アルカン、脂環式アルカン、脂肪族アルケン、脂環式アルケン、脂肪族アルキン等が挙げられる。
【0076】
また、工程1Bにおいて、得られる非水溶性のポリカルボジイミド(B)の非水溶性が確保される限りにおいては、疎水性基を有する化合物と、親水性基を有する化合物とを混合して使用することも可能である。
【0077】
疎水性基を有する化合物の配合量は、反応中に生成されるポリカルボジイミドの末端イソシアネート基のモル量に応じて、適宜調整することができる。
【0078】
反応温度は、例えば、100℃以上200℃以下とすることができる。
反応時間は、特に限定されないが、ポリカルボジイミドの数平均分子量が上記範囲内となる重合度に達するまでの時間とすることが好ましい。
【0079】
脱炭酸縮合反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aで例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0080】
カルボジイミド化触媒としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aで例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0081】
工程1Bにおいて、反応終了後は、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aの場合と同様の方法で、非水溶性のポリカルボジイミド(B)を取り出すことができ、取り出した非水溶性のポリカルボジイミド(B)をさらに同様の方法で精製してもよい。
【0082】
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の製造において、工程1Bで得られた疎水性基末端ポリカルボジイミドの少なくとも一部のカルボジイミド基を変性剤で変性させて、非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)を得る工程(以下、「工程2B」と称する場合がある。)を更に含んでもよい。
【0083】
工程2Bでは、工程1Bで得られた疎水性基末端ポリカルボジイミドの少なくとも一部のカルボジイミド基を変性剤で変性させて、少なくとも一部のカルボジイミド基が主剤成分中に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)との反応性が低減された官能基に変換された、非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)を得る。主剤成分中に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)との反応性が低減された官能基としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示された官能基と同様のものが挙げられる。
【0084】
変性剤としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程3Aにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0085】
変性剤の配合量は、非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)の変性率が上記範囲内となるように、疎水性基末端ポリカルボジイミドが有するカルボジイミド基のモル量に応じて、適宜調整することができる。
【0086】
反応温度は、例えば、20℃以上100℃以下とすることができ、30℃以上80℃以下とすることができる。
【0087】
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0088】
工程2Bにおいて、反応終了後は、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aの場合と同様の方法で、非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)を取り出すことができ、取り出した非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)をさらに同様の方法で精製してもよい。
【0089】
工程1Bで得られた非水溶性のポリカルボジイミド(B)(疎水性基末端ポリカルボジイミド)、及び工程2Bで得られた非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0090】
<カルボジイミド組成物の製造方法>
本実施形態のカルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、必要に応じて溶剤と、を混合することで、製造することができる。
【0091】
溶剤としては、水であってもよく、有機溶剤であってもよい。
有機溶剤としては、カルボジイミド基と反応性を有しないものであればよく、例えば、炭化水素、エーテル、アミド結合、エステル結合、ウレア結合を有する化合物、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテルとしては、例えば、THF、ジエチルエーテル等が挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。エステル結合を有する化合物としては、例えば、酢酸エチル等が挙げられる。ウレア結合を有する化合物としては、1,3-ジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。また、低温で保管する場合においてはカルボジイミド基と反応性を有するもので有ってもよく、有機溶剤が活性水素を有しても良い。
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0092】
≪硬化剤組成物≫
上記カルボジイミド組成物は、水分散性が良好であり、水系の硬化剤組成物として好適に用いることができる。
すなわち、一実施形態において、本発明は、上記カルボジイミド組成物と、水と、を含む、硬化剤組成物を提供する。
【0093】
<界面活性剤>
本実施形態の硬化剤組成物は、上記カルボジイミド組成物の水中での分散安定性、すなわち、上記カルボジイミド組成物中の水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)が非水溶性のポリカルボジイミド(B)を覆ってなる会合体の水中での分散安定性を向上させるために、界面活性剤を更に含むことが好ましい。
【0094】
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0095】
<その他硬化剤成分>
本実施形態の硬化剤組成物は、上記カルボジイミド組成物に加えて、その他の硬化剤成分(架橋剤成分)を含んでもよい。その他の硬化剤成分としては、例えば、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、ヒドラジン化合物、セミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0096】
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を側鎖に少なくとも2個有する重合体状の化合物、1分子中にオキサゾリン基を少なくとも2個有する単量体の化合物等が挙げられる。オキサゾリン化合物の市販品としては、例えば、エポクロスWS-500(日本触媒製、標品名)等が挙げられる。
【0097】
エポキシ化合物としては、1分子にエポキシ基を2個以上有する樹脂であればよい。エポキシ基含有化合物として具体的には、例えば、ビスフェノールにエポクロルヒドリンを付加させて得られるビスフェノール型エポキシ基含有化合物、フェノールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを付加させて得られるノボラック型エポキシ基含有化合物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基含有化合物は、必要に応じて水分散化した状態のものであってもよい。
【0098】
メラミン化合物としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られる部分又は完全メチロール化メラミン樹脂等が挙げられる。
前記アルデヒドとしは、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
また、メラミン化合物としては、前記メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をアルコールによって部分的に又は完全にエーテル化したものであってもよい。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
メラミン化合物の市販品としては、例えば、サイメル303、サイメル323、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル380、サイメル385、サイメル212、サイメル251、サイメル254、マイコート776(いずれもオルネクス社製、商品名)等が挙げられる。
【0099】
イソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環族若しくは芳香族に属する炭化水素基と、イソシアネート基とを有するジイソシアネート、又はポリイソシアネートである。前記ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン(1,3-H6-XDI)、3(4)-イソシアナトメチル-1-メチル-シクロヘキシルイソアネート(IMCI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアナトメチル)-ノルボルナン(NBDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-ベンゼン、1,3-ビス(2-イソシアナトプロピル-2)ベンゼン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)等が挙げられる。中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIが好ましい。
前記ポリイソシアネートとは、触媒を用いて、又は加熱をすることにより、前記ジイソシアネートを重合したものであり、分子中にイソシアヌレート構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、イミノジオキサジアジンジオン構造、ウレタン構造、ビウレット構造等が含まれる。中でも、耐候性の観点から、ポリイソシアネートは、イソシアヌレート構造を有するものが好ましい。
また、他のイソシアネート化合物として、4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(NTI)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(HTI)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(GTI)、リジントリイソシアネート(LTI)等のトリイソシアネートが挙げられる。
これらイソシアネート化合物は2種以上を併用しても構わない。
さらに、前記イソシアネート化合物を公知の活性メチレン系ブロック剤、公知のオキシム系ブロック剤、公知のアミン系ブロック剤及び公知のピラゾール系ブロック剤からなる群より選ばれる1種以上のブロック剤を用いてブロック化されたブロックイソシアネート化合物を用いることができる。
【0100】
中でも、その他の硬化剤成分としては、工業的入手の容易さ、低温硬化性、塗料の貯蔵性の観点で、メラミン化合物、又は(ブロック)イソシアネート化合物が好ましい。
【0101】
≪塗料組成物≫
上記硬化剤組成物は、主剤成分としてカルボキシ基を有する化合物と併用することで、電着塗料等の塗料組成物とすることができる。
すなわち、一実施形態において、本発明は、上記硬化剤組成物と、カルボキシ基を有する化合物と、を含む塗料組成物を提供する。
【0102】
本実施形態の塗料組成物は、上記カルボジイミド組成物を硬化剤成分として含むことで、貯蔵安定性及び低温硬化性に優れる。
【0103】
<カルボキシ基を有する化合物>
前記カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、カルボキシ基を有するポリエステル、カルボキシ基を有するポリアミド、カルボキシ基を有するポリウレタン、カルボキシ基を有するアクリル、カルボキシ基を有するポリオレフィン等が挙げられる。カルボキシ基を有するポリオレフィンを構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン-ポリエチレン(ランダム・ブロック)共重合体、その他の繰り返し単位の炭素数が4以上のポリオレフィン等が挙げられる。
これらカルボキシ基を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0104】
また、本実施形態の塗料組成物において、カルボキシ基を有する化合物は、その他成分と混合した主剤組成物の形態で用いてもよい。
【0105】
本実施形態の塗料組成物において、前記カルボキシ基を有する化合物のカルボキシ基に対する、上記カルボジイミド組成物のカルボジイミド基のモル当量比(カルボジイミド基/カルボキシ基)の下限値は、例えば0.1であり、0.2が好ましく、0.5がより好ましい。一方、カルボジイミド基/カルボキシ基の上限値は、例えば5.0であり、2.0が好ましく、1.5がより好ましい。
すなわち、カルボジイミド基/カルボキシ基は、0.1以上5.0以下であり、0.2以上2.0以下が好ましく、0.5以上1.5以下がより好ましい。
カルボジイミド基/カルボキシ基が上記範囲内であることで、得られる樹脂硬化物の耐水性がより優れ、且つ、架橋密度がより高くなる傾向にある。
【0106】
<添加剤>
本実施形態の塗料組成物には、必要に応じて、例えば、エポキシ樹脂、触媒、塗工改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機又は無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤等の添加剤を更に含んでもよい。これらの添加剤の配合量は、その目的及び用途により適宜決定される。
【0107】
≪樹脂硬化物≫
上記塗料組成物を硬化させることで、樹脂硬化物を得ることができる。
すなわち、一実施形態において、本発明は、上記塗料組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を提供する。本実施形態の樹脂硬化物は、耐水性が良好である。
【0108】
樹脂硬化物を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、上記塗料組成物が一液タイプの場合は塗料組成物をそのまま、被塗物又は被着物に塗布する方法が挙げられる。また、塗料組成物が二液タイプの場合は上記硬化剤組成物及びカルボキシ基を有する化合物と、必要に応じて添加剤等とを混合して、得られた塗料組成物を、被塗物又は被着物に塗布する方法が挙げられる。次いで、被塗物又は被着物に塗布された塗料組成物を加熱硬化させることにより、樹脂硬化物が得られる。また、得られた樹脂硬化物中のポリカルボジイミドの化学的な構造は種々の分析手法によって解析可能で有る。樹脂硬化物中に本発明に記載の硬化剤組成物がカルボン酸と反応若しくは未反応の状態で存在している場合、例えば、固体NMR測定、LC分析、GC分析、IR測定、ラマン測定、XPS測定により官能基、官能基比率等を明らかにすることが可能である。また、樹脂硬化物中に本発明に記載の硬化剤組成物に含まれるカルボジイミドとの平衡状態にある官能基が残留している場合、熱分解GC-MS等の熱分解生成物を分析する手法によっても構造を明らかにすることができる。
【0109】
塗料組成物の硬化温度の上限値は、例えば140℃であり、100℃が好ましく、80℃がより好ましい。一方、硬化温度の下限値は、例えば20℃であり、30℃が好ましく、40℃がより好ましい。
すなわち、塗料組成物の硬化温度は、20℃以上140℃以下であり、30℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。
【0110】
塗料組成物の塗装方法としては、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等が挙げられる。
【実施例】
【0111】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0112】
<物性の測定方法>
[物性1]
(数平均分子量)
イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(イソシアネート末端ポリカルボジイミド)の数平均分子量は、以下に示す測定条件にてGPC測定を行い、ポリスチレン基準の分子量として求めた。なお、検量線の作成には、分子量300以上40,000以下のポリスチレンを用いた。
【0113】
(測定条件)
装置:HLC-8320GPC(TOSOH)
カラム:TSKgelSuperH3000×1本(TOSOH)
TSKgelSuperH2000×1本(TOSOH)
TSKgelSuperH1000×1本(TOSOH)
キャリアー:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
試料濃度:1.0質量%
注入量:20μL
温度:40℃
検出方法:示差屈折計
【0114】
また、非水溶性のポリカルボジイミドにおいて、末端イソシアネート基の封止反応と、ポリカルボジイミド化反応を同時に行って合成したサンプルは、末端封止後の数平均分子量をGPCで測定し、得られた数平均分子量から封止構造を差し引いて、イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミドの数平均分子量を算出した。なお、末端がモノイソシアネートで封止されている場合には、封止前の構造から封止後の構造に変換される際、二酸化炭素の脱離が生じるため、その寄与分を計算に含めた。一方、末端がPGME等のアルコールで封止されている場合には、封止前の構造から封止後の構造に変換される際、二酸化炭素の脱離が生じないため、寄与分を考慮せず計算した。
具体的には、以下の式を用いて計算した。
【0115】
(1)シクロヘキシルイソシアネートで末端封止した場合
(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(PCI)の数平均分子量)=(末端封止後にGPCで求めたポリカルボジイミドの数平均分子量)-2×(シクロヘキシルイソシアネート分子量:125g/mol)+2×(二酸化炭素分子量:44g/mol)
【0116】
(2)プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で末端封止した場合
(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(PCI)の数平均分子量)=(末端封止後にGPCで求めたポリカルボジイミドの数平均分子量)-2×(PGME分子量:90g/mol)
【0117】
[物性2]
(変性率)
後述する「水溶性の変性ポリカルボジイミドの合成」の工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミドに変性剤を加えた直後(すなわち、変性前の親水性基末端ポリカルボジイミド(変性前の水溶性のポリカルボジイミド))と、「水溶性の変性ポリカルボジイミドの合成」の工程3Aで得られた水溶性の変性ポリカルボジイミドについて、赤外吸収スペクトル測定によりカルボジイミド基に由来する波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値を求め、下記式に基づいて変性率を算出した。
【0118】
変性率(%)=(水溶性の変性ポリカルボジイミドの波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値)/(親水性基末端ポリカルボジイミドの波長2150cm-1付近の吸収ピーク積分値)×100
【0119】
[物性3]
(水100gに対する溶解度)
メカニカルスターラーを接続した内容積300mLのガラス製攪拌槽に各水溶性の変性ポリカルボジイミド又は各非水溶性のポリカルボジイミドを1gから41gまでの範囲で加えた。その後、水:100gを加え、40℃48時間攪拌した後、混合物中の沈殿の有無を目視確認した。各水溶性の変性ポリカルボジイミド又は各非水溶性のポリカルボジイミドにおいて、沈殿が認められたときの質量と沈殿が認められなかったときの質量の境界を精度1gで求め、沈殿が認められなかったときの最大質量を水100gへの溶解度とした。この方法によって算出された各水溶性の変性ポリカルボジイミドの水100gに対する溶解度は10g以上であることが分かった。一方、各非水溶性のポリカルボジイミドの水100gに対する溶解度は1g未満であることが分かった。
【0120】
[物性4]
(1分子当たりの平均カルボジイミド官能基数)
ポリカルボジイミドの1分子当たりの平均カルボジイミド官能基数は、赤外吸収(IR)スペクトル測定のカルボジイミド基に由来する2150cm-1付近の吸収ピークの積分値からカルボジイミド基含有量(NCN%)を求めた後、NCN当量(g/mol)(カルボジイミド基1モル当たりの化学式量)を求め、NCN当量と、GPCで求めた数平均分子量(g/mol)から以下の式に基づいて求めた。
1分子当たりの平均カルボジイミド官能基数
=数平均分子量(g/mol)/NCN当量(g/mol)
【0121】
<評価方法>
[評価1]
(貯蔵安定性)
実施例及び比較例で得られたカルボジイミド組成物を主剤成分と混合して塗料組成物としたときの貯蔵安定性を、粘度変化を測定することで評価した。
具体的には、まず、固形分10質量%に調整した各カルボジイミド組成物:36gを、アクリルポリオール系主剤 SETAQUA6510:80gに添加した後、攪拌し、均一溶液(塗料組成物)とした。この均一溶液(塗料組成物)を40℃10日間加温し、加温前と加温後の粘度を測定した。次いで、加温後の粘度を加温前の粘度で除した値の百分率を粘度上昇率として、得られた粘度上昇率から、以下の評価基準に従い、貯蔵安定性を評価した。
【0122】
(評価基準)
○:粘度上昇率が120%未満
△:粘度上昇率が120%以上140%未満
×:粘度上昇率が140%以上
【0123】
[評価2]
(低温硬化性)
実施例及び比較例で得られたカルボジイミド組成物を主剤成分と混合して塗料組成物としたときの低温硬化性を、ゲル分率増加率を測定することで評価した。
具体的には、まず、イオン交換水:8gをポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):49gに添加した後、攪拌し、均一溶液とした。この均一溶液を、ポリスチレン板(以下、「PS板」と略記する場合がある)上に塗布し、80℃の乾燥機内で30分間焼付し硬化させた。その後、PS板から塗膜を切り出し平織金網に入れアセトン溶液に20時間浸漬した後、平織金網ごと塗膜を取り出し、乾燥機で乾燥した。そしてアセトン溶液浸漬前後の塗膜の変化質量を測定し、塗膜の変化質量を浸漬前の塗膜の質量で除した値の百分率を参照ゲル分率とした。
次に、固形分10質量%に調整した各カルボジイミド組成物:8gを、ポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):49gに添加した後、攪拌し、均一溶液(塗料組成物)とした。この均一溶液(塗料組成物)を上記と同様にPS板上に塗布し硬化させた後、上記と同様の方法を用いてゲル分率を測定した。次いで、得られたゲル分率から参照ゲル分率を差し引いた値をゲル分率増加率として求めた。次いで、得られたゲル分率増加率から、以下の評価基準に従い、低温硬化性を評価した。
【0124】
(評価基準)
○:ゲル分率増加率が2質量%以上
△:ゲル分率増加率が0質量%以上2質量%未満
×:ゲル分率増加率が0質量%未満
【0125】
[評価3]
(耐水性-構造保持性)
実施例及び比較例で得られたカルボジイミド組成物を用いた塗膜の耐水性を以下に示す方法により行った。
具体的には、まず、イオン交換水:8gをポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):49gに添加した後、攪拌し、均一溶液(塗料組成物)とした。この均一溶液(塗料組成物)をPS板上に塗布し80℃の乾燥機内で30分硬化させた。その後、塗膜上にОリング(内径:1.78mm、線径:1.78mm)を置き、Оリング中にイオン交換水を1mL滴下し、水の揮発を防止するためポリ塩化ビニリデン性フィルムで覆った。その後、144時間室温で静置し塗膜の形態を目視確認し参照とした。
次に、固形分40質量%に調整した各カルボジイミド組成物:8gを、ポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):49gに添加した後、攪拌し、均一溶液(塗料組成物)とした。この均一溶液(塗料組成物)を上記と同様にPS板上に塗布し硬化させた後、上記と同様の方法を用いて塗膜の形態を目視で確認し、参照と比較した。次いで、比較した結果から、以下の評価基準に従い、塗膜の耐水性(構造保持性)を評価した。
【0126】
(評価基準)
○:膜の状態を保持している(参照塗膜と比較して全く破壊されていない)
△:膜の一部がわずかに破壊されている(参照塗膜と比較して破壊の度合いが少ない)
×:膜が破壊されている(参照塗膜と同程度又はそれ以上に破壊されている)
[評価4]
(耐水性-耐白化性)
実施例及び比較例で得られたカルボジイミド組成物を用いた塗膜の耐水性を以下に示す方法により行った。
具体的には、まず、イオン交換水:8gをポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):49gに添加した後、攪拌し、均一溶液(塗料組成物)とした。この均一溶液(塗料組成物)をPS板上に塗布し80℃の乾燥機内で30分硬化させた。その後、塗膜上にОリング(内径:1.78mm、線径:1.78mm)を置き、Оリング中にイオン交換水を1mL滴下し、水の揮発を防止するためポリ塩化ビニリデン性フィルムで覆った。その後、144時間室温で静置し塗膜の白化程度を目視確認し参照とした。
次に、固形分40質量%に調整した各カルボジイミド組成物:8gを、ポリウレタン水分散体(第一工業製薬製、スーパーフレックス 150):49gに添加した後、攪拌し、均一溶液(塗料組成物)とした。この均一溶液(塗料組成物)を上記と同様にPS板上に塗布し硬化させた後、上記と同様の方法を用いて塗膜の白化程度を目視で確認し、参照と比較した。また、イオン交換水を拭き取った後、室温環境下で静置した後、再度白化程度を目視確認した。次いで、比較した結果から、以下の評価基準に従い、塗膜の耐水性(耐白化性)を評価した。
【0127】
(評価基準)
◎:白化が認められない
〇:白化が僅かに認められるものの、イオン交換水を拭き取った後1h経過後に白化が認められない
△:白化が明確に認められるものの、イオン交換水を拭き取った後24h経過後に白化が認められない
×:白化が明確に認められ、かつイオン交換水を拭き取った後24h経過後も白化が認められる
【0128】
<カルボジイミド化合物の合成>
[合成例1]
(水溶性の変性ポリカルボジイミドA-1の合成)
(1)工程1A:イソシアネート末端ポリカルボジイミドの合成
内容積1LのSUS316製攪拌槽に、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート:100gと3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(カルボジイミド化触媒):0.5gとを入れ、窒素雰囲気下190℃で20時間反応させて、イソシアネート末端ポリカルボジイミドを得た。反応後、赤外吸収(IR)スペクトル測定のイソシアネート基に由来する2250cm-1付近の吸収ピークの積分値からイソシアネート基含有量(NCO%)を測定した結果、5.7質量%(重合度5.6)であり、得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミドの数平均分子量は1485g/molであった。
【0129】
(2)工程2A:親水性基末端ポリカルボジイミドの合成
上記工程1Aで得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミドに、親水性基を有する化合物(以下、「親水性基含有化合物」と称する場合がある)として、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:550):64gを加え、窒素雰囲気下160℃で48時間反応させて、親水性基末端ポリカルボジイミドを得た。反応後、赤外吸収(IR)スペクトル測定によりイソシアネート基に由来する2250cm-1付近の吸収ピークの消失を確認した。
【0130】
(3)工程3A:水溶性の変性ポリカルボジイミドA-1の合成
上記工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミドに、変性剤として2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE):33gを加え、窒素雰囲気下40℃で72時間反応させて、水溶性の変性ポリカルボジイミドA-1を得た。反応後、赤外吸収(IR)スペクトル測定によりカルボジイミド基に由来する波長2150cm-1付近の吸収ピークの消失を確認した。従ってNCN%は0%であり、1分子当たりの平均カルボジイミド官能基数は0.0と求まった。
【0131】
[合成例2~144]
(水溶性の変性ポリカルボジイミドA-2~A-144の合成)
表1~5に示す、ジイソシアネート、末端構造の由来となる化合物及び変性剤を用いて、イソシアネート末端ポリカルボジイミド(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド)の数平均分子量及び得られた水溶性の変性ポリカルボジイミドの変性率が表1~5に示す値となるようにした以外は、合成例1と同様の方法を用いて、各水溶性の変性ポリカルボジイミドを得た。なお、末端構造の由来となる化合物を2種類用いた場合には、その配合比率は、表1~5に示すモル比となるように用いた。表1~5において、各略称は以下の化合物を意味する。
【0132】
(ジイソシアネート)
hMDI:ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
TDI:トルエンジイソシアネート
TMXDI:1,3-Bis(2-isocyanato-2-propyl)benzene
【0133】
(末端構造の由来となる化合物)
MPEG400:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:400)
MPEG500:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:500)
MPEG550:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:550)
MPEG1000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:1000)
MPEG2000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:2000)
MPEG5000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:5000)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PO-EO(970):ポリ(オキシエチレン、オキシプロピレン)グリコールモノブチルエーテル(数平均分子量:970)(下記一般式(I)で表される化合物;なお、式中、n1はプロピレンオキシド基の繰り返し数(平均重合数)を表し、n2はエチレンオキシド基の繰り返し数(平均重合数)を表す。n1及びn2は、それぞれ数平均分子量が上記値となるような任意の数である。)
【0134】
【0135】
(変性剤)
TFE:2,2,2-トリフルオロエタノール
HFIP:ヘキサフルオロイソプロパノール
BuNCO:ブチルイソシアネート
DIPA:ジイソプロピルアミン
Hexanol:1-ヘキサノール
FB:4-フルオロベンジルアルコール
PhOH:フェノール
FP:4-フルオロフェノール
BL:乳酸ブチル
DBM:Dibutyl DL-Malate
TBC:Tributyl Citrate
DEHA:ジエチルヒドロキシルアミン
BO:2-ブタノンオキシム
DT:1-ドデカンチオール
BE:2-ブロモエタノール
IE:2-ヨードエタノール
TCE:2,2,2-トリクロロエタノール
TFA:トリフルオロ酢酸
TCA:トリクロロ酢酸
CA:2-クロロ酢酸
BBA:2-ブロモ酢酸
MAA:メトキシ酢酸
AA:酢酸
PA:ピルビン酸
EI:Ethyl Isocyanatoacetate
MM:チオグリコール酸メチル
DEIA:DiethylIminodiacetate
PI:Piperidine
EPIA:Ethyl 4-piperidinecarboxylate
ACAC:アセチルアセトン
TFAC:Trifluoroacetylacetone
BA:安息香酸
NHS:N-Hydroxysuccinimide
NHP:N-Hydroxyphthalimide
LA:DL-乳酸
DG:N,N-dimethylglycine
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
[合成例145]
(非水溶性のポリカルボジイミドB-1の合成)
内容積1LのSUS316製攪拌槽に、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート:100g、シクロヘキシルイソシアネート(CHI):58g、及び3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(カルボジイミド化触媒):0.5gを入れ、窒素雰囲気下190℃で72時間反応させて、非水溶性のポリカルボジイミドB-1を得た。反応後赤外吸収(IR)スペクトル測定のイソシアネート基に由来する2250cm-1付近の吸収ピークは認められず、カルボジイミド基に由来する2150cm-1付近の吸収ピークが認められた。得られたポリカルボジイミドの数平均分子量は567g/molであった。当該数平均分子量から封止構造を差し引いて、下記式に基づきイソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(PCI)の数平均分子量を求めた結果、405g/molと算出された。カルボジイミド基に由来する2150cm-1付近の吸収ピークから求めたNCN当量は、212g/molであり、1分子当たりの平均カルボジイミド基数は2.7であった。
【0142】
(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(PCI)の数平均分子量)=(末端封止後にGPCで求めたポリカルボジイミドの数平均分子量)-2×(シクロヘキシルイソシアネート分子量:125g/mol)+2×(二酸化炭素分子量:44g/mol)
【0143】
[合成例146~162]
(非水溶性のポリカルボジイミドB-2~B-18の合成)
表6に示す、ジイソシアネート及び末端構造の由来となる化合物を用いて、イソシアネート末端ポリカルボジイミド(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド)の数平均分子量及び得られた非水溶性のポリカルボジイミドの変性率が表6に示す値となるようにした以外は、合成例145と同様の方法を用いて、各非水溶性のポリカルボジイミドを得た。
なお、変性剤を用いた非水溶性の変性ポリカルボジイミドは、合成例145に示す方法でイソシアネート基末端を封止した非水溶性のポリカルボジイミドを得た後に、表6に示す変性剤を加え、窒素雰囲気下40℃で72時間反応させて、非水溶性の変性ポリカルボジイミドを得た。反応後、赤外吸収(IR)スペクトル測定によりカルボジイミド基に由来する波長2150cm-1付近の吸収ピークを確認した。
表6において、各略称は以下の化合物を意味する。
【0144】
(ジイソシアネート)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
hMDI:ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート
IPDI:ジイソシアン酸イソホロン(異性体混合物)
TMXDI:1,3-Bis(2-isocyanato-2-propyl)benzene
(末端構造の由来となる化合物)
CHI:シクロヘキシルイソシアネート
IDBI:3-Isopropenyl-α,α-
dimethylbenzyl Isocyanate
【0145】
【0146】
[実施例1]
(カルボジイミド組成物PC-a1の製造)
水溶性の変性ポリカルボジイミドA-1:4g、及び、非水溶性のポリカルボジイミドB-1:4gを100mLナスフラスコに取り、テトラヒドロフラン(THF):20gを加えて、ポリカルボジイミドのTHF溶液とした。次いで、ポリカルボジイミドのTHF溶液にイオン交換水:30gを加えて、乳白色の溶液を得た。残留したTHFをイオン交換水と共に液温40℃、真空度5kPaの条件下で減圧留去し、その後イオン交換水を添加することで固形分10質量%の乳白色のカルボジイミド組成物PC-a1を得た。
【0147】
[実施例2~171及び比較例1~11]
(カルボジイミド組成物PC-a2~PC-a171及びPC-b1~PC-b11の製造)
表7~表13に示す、水溶性の変性ポリカルボジイミド及び非水溶性のポリカルボジイミドの種類及び配合比となるようにした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各カルボジイミド組成物を得た。
なお、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)を用いたカルボジイミド組成物では、イオン交換水を加える際に、DBSも同時に表9及び表13に示す添加量となるように加えた。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
表7~表12から、カルボジイミド組成物PC-a1~PC-a171(実施例1~171)では、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び低温硬化性が良好で、且つ、塗膜としたときの耐水性(構造保持性、耐白化性)も良好であった。
また、末端構造の由来となる化合物の数平均分子量が異なる水溶性の変性ポリカルボジイミドを用いたカルボジイミド組成物PC-a12及びPC-a13(実施例12及び13)の比較において、末端構造の由来となる化合物の数平均分子量が小さくなるほど、塗料組成物としたときの貯蔵安定性がより良好になる傾向がみられた。
また、イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミドの数平均分子量が異なる水溶性の変性ポリカルボジイミドを用いたカルボジイミド組成物PC-a14及びPC-a15(実施例14及び15)、並びに、PC-a16及びPC-a17(実施例16及び17)それぞれの比較において、イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミドの数平均分子量が小さくなるほど、塗料組成物としたときの貯蔵安定性がより良好になる傾向がみられた。
また、変性率の異なる水溶性の変性ポリカルボジイミドを用いたカルボジイミド組成物PC-a15及びPC-a17(実施例15及び17)、並びに、PC-a16及びPC-a18(実施例16及び18)それぞれの比較において、水溶性の変性ポリカルボジイミドの変性率が上昇するほど、塗料組成物としたときの貯蔵安定性がより良好になる傾向がみられた。
また、変性率の異なる非水溶性のポリカルボジイミドを用いたカルボジイミド組成物PC-a50~PC-a53(実施例50~53)の比較において、非水溶性のポリカルボジイミドの変性率が低下するほど、塗料組成物としたときの低温硬化性及び塗膜としたときの耐水性(構造保持性)がより良好になる傾向がみられた。
また、製造時に用いたジイソシアネートの種類(主鎖の骨格構造)が異なる非水溶性のポリカルボジイミドを用いたカルボジイミド組成物PC-a54及びPC-a55(実施例54及び55)の比較において、主鎖の骨格構造が脂環式イソシアネートのみから誘導されたものである非水溶性のポリカルボジイミドを用いたカルボジイミド組成物PC-a54のほうが、塗膜としたときの耐水性(構造保持性)がより良好になる傾向がみられた。
【0156】
一方、カルボジイミド組成物PC-b1(比較例1)、PC-b6(比較例6)、PC-b7(比較例7)、PC-b8(比較例8)、PC-b9(比較例9)、PC-b10(比較例10)、PC-b11(比較例11)では、塗料組成物としたときの低温硬化性及び塗膜としたときの耐水性(構造保持性)は良好であったが、塗料組成物としたときの貯蔵安定性が不良であった。これは、カルボジイミド組成物PC-b1(比較例1)、PC-b6(比較例6)、PC-b7(比較例7)、PC-b8(比較例8)、PC-b9(比較例9)、PC-b10(比較例10)、PC-b11(比較例11)に含まれる水溶性のポリカルボジイミドA-27、A-138、A-139の変性率が0%であり、貯蔵時に水溶性のポリカルボジイミドA-27、A-138、A-139のカルボジイミド基が主剤成分と反応してしまうことによるものであると推察された。
また、カルボジイミド組成物PC-b2~PC-b4(比較例2~4)では、塗料組成物としたときの貯蔵安定性が良好であったが、塗料組成物としたときの低温硬化性及び塗膜としたときの耐水性(構造保持性、耐白化性)が不良であった。これは、カルボジイミド組成物PC-b2~PC-b4(比較例2~4)に含まれる水溶性の変性ポリカルボジイミドA-28、A-6及びA-1の変性率が100%であり、カルボジイミド基が全て変性されており、反応性が低下していることから、硬化時に主剤成分と架橋構造を形成できないことによるものであると推察された。
また、カルボジイミド組成物PC-b5(比較例5)では、塗料組成物としたときの低温硬化性及び塗膜としたときの耐水性(構造保持性)は良好であったが、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び塗膜としたときの耐水性(耐白化性)が不良であった。これは、カルボジイミド組成物PC-b5(比較例5)に含まれるポリカルボジイミドが全て水溶性のポリカルボジイミドであり、各水溶性のポリカルボジイミドが分散した状態となり、会合構造が形成されないことで、貯蔵時に変性率が0%である水溶性の未変性ポリカルボジイミドA-29が主剤成分と反応してしまうことによるものであると推察された。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本実施形態のカルボジイミド組成物によれば、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び低温硬化性に優れるカルボジイミド組成物を提供することができる。本実施形態のポリカルボジイミド組成物は、水系塗料組成物の硬化剤として好適に用いられる。