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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】スクロールケーシングおよび遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
F04D29/44 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022515165
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016871
(87)【国際公開番号】W WO2021210164
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩切 健一郎
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174166(WO,A1)
【文献】特開2005-002951(JP,A)
【文献】国際公開第2017/072899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心圧縮機のスクロールケーシングであって、
前記遠心圧縮機のスクロール流路を形成するスクロール部を備え、
前記スクロール部の内周面において、
前記遠心圧縮機のディフューザ流路のハブ側流路面との接続位置を第1位置、
前記遠心圧縮機の径方向における最外側端を第2位置、
前記遠心圧縮機の軸方向における最前側端を第3位置、
前記径方向における最内側端を第4位置、
前記スクロール部の前記内周面に沿って前記第1位置から前記第4位置に向かう側である一方向側の端位置を第5位置、と定義した場合に、
前記スクロール部は、
前記第1位置から前記一方向側に延在する第1円弧部と、
前記第1円弧部よりも前記一方向側に形成された第2円弧部であって、前記第2位置から前記第4位置の間における前記第2位置及び前記第3位置を含んだ少なくとも一部の領域を含むように形成された第2円弧部と、
前記第2円弧部よりも前記一方向側に形成された第3円弧部であって、少なくとも前記第5位置を含むように形成された第3円弧部と、を少なくとも含むとともに、
前記第1円弧部の曲率半径をR1、前記第2円弧部の曲率半径をR2、前記第3円弧部の曲率半径をR3と定義した場合に、R1>R2>R3の関係を満たす近円形スクロール断面を有する、
スクロールケーシング。
【請求項2】
前記近円形スクロール断面は、R2/R1≧0.8、且つ、R3/R2≧0.8の関係を満たす、
請求項に記載のスクロールケーシング。
【請求項3】
前記スクロール流路におけるスクロール中心周りの角度位置について、前記スクロール流路の巻き始めと巻き終わりの合流位置を60度とし、前記合流位置から前記スクロール流路の下流側に向かって徐々に角度が大きくなるように角度位置を定義した場合に、
前記近円形スクロール断面は、前記角度位置が120度から360度に亘る範囲に形成される、
請求項1又は2に記載のスクロールケーシング。
【請求項4】
前記第3円弧部は、少なくとも前記第3位置、前記第4位置、及び前記第5位置を含むように形成される、
請求項1乃至の何れか1項に記載のスクロールケーシング。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1項に記載のスクロールケーシングを備える遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクロールケーシングおよび該スクロールケーシングを備える遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用又は舶用のターボチャージャのコンプレッサ部などに用いられる遠心圧縮機は、インペラの回転によって流体に運動エネルギを与えて径方向の外側に流体を吐出し、遠心力を利用して流体の圧力上昇を得るものである。かかる遠心圧縮機には、広い運転範囲において高圧力比と高効率化が求められており、種々の工夫が施されている。
【0003】
一般的には、遠心圧縮機は、渦巻状のスクロール流路を形成するスクロール部を有するスクロールケーシングを備え、スクロール流路の断面形状(スクロール断面)は、スクロール流路の全周に亘るような近円形状に形成される。従来の遠心圧縮機として、第1の曲率半径を有する第1円弧部と、第1の曲率半径とは異なる第2の曲率半径を有する第2円弧部と、を含むスクロール断面を有するものが知られている。
【0004】
スクロール断面に歪さが生じるとスクロール流路における圧力損失の発生を招く虞があるため、スクロール断面を真円に近づけることが行なわれる。スクロール断面を真円に近づける方策の一つとして、スクロール断面の大部分を第1円弧部により形成し、スクロール断面の残りの部分を第2円弧部により形成することが考えられる。第2円弧部は、第1円弧部の一端とディフューザ流路のチップ側流路面とを繋いでいる。この場合には、第1円弧部と第2円弧部との間に極端な曲率変化が生じるため、スクロール流路における圧力損失の発生を招く虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6053993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、スクロール断面を真円に近づける方策の一つとして、スクロール断面が全体として円形に近い形状となるように、第1の曲率半径と第2の曲率半径との差を小さなものにすることが考えられる。この場合には、第1円弧部と第2円弧部との間における曲率の変化を緩やかなものにできるため、上記の方策に比べて、スクロール流路における圧力損失の発生を抑制でき、遠心圧縮機の効率を向上させることができる。遠心圧縮機の更なる効率化を図るため、この方策よりも効果的にスクロール流路における圧力損失の発生を抑制することが求められる。
【0007】
なお、特許文献1には、第1の曲率半径を有する第1円弧部と、第2の曲率半径を有する第2円弧部と、第3の曲率半径を有する第3円弧部と、を含むスクロール断面を有する遠心圧縮機のスクロール部が開示されている。特許文献1のスクロール部は、第2円弧部を第1円弧部や第3円弧部よりもフラットな形状にすることで、スクロール流路の断面形状が近円形状である場合に比べて、スクロール流路に導入された流体をスクロール流路における内周側に導きやすくしている。このように特許文献1のスクロール部は、スクロール流路の断面形状を、意図的に円形状から離れた形状にしている。このため、特許文献1は、本開示との関連性が低い。
【0008】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、スクロール流路における圧力損失の発生を抑制できるスクロールケーシング、および該スクロールケーシングを備える遠心圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示にかかるスクロールケーシングは、
遠心圧縮機のスクロールケーシングであって、
前記遠心圧縮機のスクロール流路を形成するスクロール部を備え、
前記スクロール部の内周面において、
前記遠心圧縮機のディフューザ流路のハブ側流路面との接続位置を第1位置、
前記遠心圧縮機の径方向における最外側端を第2位置、
前記遠心圧縮機の軸方向における最前側端を第3位置、
前記径方向における最内側端を第4位置、
前記スクロール部の前記内周面に沿って前記第1位置から前記第4位置に向かう側である一方向側の端位置を第5位置、と定義した場合に、
前記スクロール部は、
前記第1位置から前記一方向側に延在する第1円弧部と、
前記第1円弧部よりも前記一方向側に形成された第2円弧部であって、前記第2位置から前記第4位置の間における少なくとも一部の領域を含むように形成された第2円弧部と、
前記第2円弧部よりも前記一方向側に形成された第3円弧部であって、少なくとも前記第5位置を含むように形成された第3円弧部と、を少なくとも含むとともに、
前記第2円弧部の曲率半径をR2、前記第3円弧部の曲率半径をR3と定義した場合に、R2>R3の関係を満たす近円形スクロール断面を有する。
【0010】
本開示にかかる遠心圧縮機は、前記スクロールケーシングを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、スクロール流路における圧力損失の発生を抑制できるスクロールケーシング、および該スクロールケーシングを備える遠心圧縮機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態にかかる遠心圧縮機を備えるターボチャージャの構成を説明するための説明図である。
図2】一実施形態にかかる遠心圧縮機を備えるターボチャージャのコンプレッサ側を概略的に示す概略断面図であって、遠心圧縮機の軸線を含む概略断面図である。
図3】一実施形態にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。
図4】一実施形態にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。
図5】比較例にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。
図6図3図4に示される一実施形態にかかるスクロール部の形状と、図5に示される比較例にかかるスクロール部の形状と、を比較するための比較図である。
図7】一実施形態にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。
図8】一実施形態にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。
図9】一実施形態にかかる遠心圧縮機の軸方向視におけるスクロール流路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0014】
(遠心圧縮機、ターボチャージャ)
図1は、一実施形態にかかる遠心圧縮機を備えるターボチャージャの構成を説明するための説明図である。図2は、一実施形態にかかる遠心圧縮機を備えるターボチャージャのコンプレッサ側を概略的に示す概略断面図であって、遠心圧縮機の軸線を含む概略断面図である。
本開示の幾つかの実施形態にかかる遠心圧縮機1は、図1、2に示されるように、インペラ2と、スクロールケーシング3と、を備える。スクロールケーシング3は、図2に示されるように、インペラ2の周囲に配置された渦巻状のスクロール流路31を形成するスクロール部32を少なくとも有する。
【0015】
遠心圧縮機1は、例えば、自動車用、舶用又は発電用のターボチャージャ10や、その他産業用遠心圧縮機、送風機などに適用可能である。図示される実施形態では、遠心圧縮機1は、ターボチャージャ10に搭載される。ターボチャージャ10は、図1に示されるように、遠心圧縮機1と、タービン11と、回転シャフト12と、を備える。タービン11は、回転シャフト12を介してインペラ2に機械的に連結されたタービンロータ13と、タービンロータ13を回転可能に収容するタービンケーシング14と、を備える。
【0016】
図示される実施形態では、ターボチャージャ10は、図1に示されるように、回転シャフト12を回転可能に支持する軸受15と、軸受15を収容するように構成された軸受ケーシング16と、をさらに備える。軸受ケーシング16は、スクロールケーシング3とタービンケーシング14との間に配置され、例えば締結ボルトなどの締結部材により、スクロールケーシング3やタービンケーシング14に機械的に連結されている。
【0017】
以下、例えば図1に示されるように、遠心圧縮機1の軸線、すなわち、インペラ2の軸線CAが延在する方向を軸方向Xとし、軸線CAに直交する方向を径方向Yとする。軸方向Xのうち、遠心圧縮機1の吸入方向における上流側、すなわち、インペラ2に対して流体導入口33が位置する側(図中左側)を前側XFとする。また、軸方向Xのうち、遠心圧縮機1の吸入方向における下流側、すなわち、流体導入口33に対してインペラ2が位置する側(図中右側)を後側XRとする。
【0018】
図示される実施形態では、図1に示されるように、スクロールケーシング3は、スクロールケーシング3の外部から流体(例えば、空気)を導入するための流体導入口33と、インペラ2およびスクロール流路31を通過した流体をスクロールケーシング3の外部に排出するための流体排出口34と、が形成されている。タービンケーシング14は、タービンケーシング14の内部に排ガスを導入する排ガス導入口141と、タービンロータ13を通過した排ガスをタービンケーシング14の外部に排出するための排ガス排出口142と、が形成されている。
【0019】
回転シャフト12は、図1に示されるように、軸方向Xに沿って長手方向を有する。回転シャフト12は、その長手方向の一方側(前側XF)にインペラ2が機械的に連結されており、その長手方向の他方側(後側XR)にタービンロータ13が機械的に連結されている。なお、本開示における「或る方向に沿って」とは、或る方向だけでなく、或る方向に対して傾斜する方向をも含むものである。
【0020】
ターボチャージャ10は、不図示の排ガス発生装置(例えば、エンジンなどの内燃機関)から排ガス導入口141を通って、タービンケーシング14の内部に導入された排ガスにより、タービンロータ13を回転させる。インペラ2は、回転シャフト12を介してタービンロータ13に機械的に連結されているので、タービンロータ13の回転に連動して回転する。ターボチャージャ10は、インペラ2を回転させることにより、流体導入口33を通って、スクロールケーシング3の内部に導入された流体を圧縮し、流体排出口34を通じて流体の供給先(例えば、エンジンなどの内燃機関)に送るようになっている。
【0021】
(インペラ)
インペラ2は、図2に示されるように、ハブ21と、ハブ21の外面22に設けられた複数のインペラ翼23と、を含む。ハブ21は、回転シャフト12の一方側に機械的に固定されているため、ハブ21や複数のインペラ翼23は、インペラ2の軸線CAを中心として回転シャフト12と一体的に回転可能に設けられている。インペラ2は、軸方向Xの前側XFから導入される流体を径方向Yにおける外側に導くように構成されている。図示される実施形態では、複数のインペラ翼23の夫々は、軸線CA周りの周方向に互いに間隔を開けて配置されている。複数のインペラ翼23のチップ側縁24は、チップ側縁24に対向するように凸状に湾曲するシュラウド面35との間に隙間(クリアランス)が形成されている。
【0022】
(スクロールケーシング)
図示される実施形態では、スクロールケーシング3は、図2に示されるように、スクロールケーシング3の外部からインペラ2に流体を導くための吸気流路36を形成する吸気流路部37と、シュラウド面35を有するシュラウド部38と、インペラ2を通過した流体をスクロールケーシング3の外部へ導くための上述したスクロール流路31を形成するスクロール部32と、を有する。スクロール流路31および吸気流路36の夫々は、スクロールケーシング3の内部に形成されている。
【0023】
吸気流路部37は、吸気流路36を形成する内壁面370を有する。内壁面370は、軸方向Xに沿って延在し、その前側XF端には、上述した流体導入口33が形成されている。スクロール部32は、スクロール流路31を形成する内周面320を有する。
【0024】
また、図示される実施形態では、スクロールケーシング3は、図2に示されるように、他の部材(例えば、軸受ケーシング16など)と組み合わされることで、インペラ2を回転可能に収容する空間であるインペラ室39と、インペラ2からの流体をスクロール流路31に導くためのディフューザ流路40と、が形成される。
【0025】
上述したシュラウド部38は、吸気流路部37とスクロール部32との間に設けられる。シュラウド部38のシュラウド面35は、インペラ室39の前側XF部分を形成している。また、シュラウド部38は、ディフューザ流路40の前側XF部分を形成するチップ側流路面41であって、シュラウド面35とスクロール部32の内周面320の一端とを繋ぐチップ側流路面41をさらに有する。図示される実施形態では、軸受ケーシング16は、シュラウド面35に対して後側XRに位置し、且つインペラ室39の後側XR部分を形成するインペラ室形成面161と、チップ側流路面41よりも後側XRにチップ側流路面41に対向して設けられるハブ側流路面162であって、インペラ室形成面161とスクロール部32の内周面320の他端(後述する第1位置P1)とを繋ぐハブ側流路面162と、を有する。図2に示されるような軸線CAに沿った断面において、チップ側流路面41およびハブ側流路面162の夫々は、軸線CAに交差(図示例では直交)する方向に沿って延在している。
【0026】
スクロールケーシング3の内部に導入された流体は、吸気流路36を後側XRに向かって流れた後に、インペラ2に送られる。インペラ2に送られた流体は、ディフューザ流路40およびスクロール流路31をこの順に流れた後に、流体排出口34からスクロールケーシング3の外部に排出される。
【0027】
(スクロール断面)
図3および図4の夫々は、一実施形態にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。図3図4では、スクロールケーシング3の軸線CAに沿った断面を概略的に示している。
以下、図3図4に示されるように、スクロール部32の内周面320において、遠心圧縮機1のディフューザ流路40のハブ側流路面162との接続位置を第1位置P1、遠心圧縮機1の径方向Yにおける最外側端を第2位置P2、遠心圧縮機1の軸方向Xにおける最前側端を第3位置P3、径方向Yにおける最内側端を第4位置P4、スクロール部32の内周面320に沿って第1位置P1から第4位置P4に向かう側である一方向UD側の端位置を第5位置P5と定義する。なお、第1位置P1は、内周面320において、軸方向Xにおける後側端であって、曲率半径が無限大(直線)から有限のものに変化する位置である。また、一方向UDは、スクロールケーシング3の軸線CAに沿った断面における、スクロール流路31の中心SCを中心とする反時計回り方向であり、一方向UD側は、その下流側である。
【0028】
幾つかの実施形態にかかるスクロールケーシング3は、図3図4に示されるように、遠心圧縮機1のスクロール流路31を形成するスクロール部32(32A、32B)を備える。スクロール部32(32A、32B)は、図3図4に示されるように、第1位置P1から一方向UD側に延在する第1円弧部5と、第1円弧部5よりも一方向UD側に形成された第2円弧部6と、第2円弧部6よりも一方向UD側に形成された第3円弧部7と、を少なくとも含む近円形スクロール断面42を有する。第2円弧部6は、第2位置P2から第4位置P4の間における少なくとも一部の領域を含むように形成されている。第3円弧部7は、少なくとも第5位置P5を含むように形成されている。なお、図3図4では、第1円弧部5を一点鎖線で示し、第2円弧部6を点線で示し、第3円弧部7を二点鎖線で示している。
【0029】
第1円弧部5の曲率半径をR1、第2円弧部6の曲率半径をR2、第3円弧部7の曲率半径をR3と定義する。図3および図4に示される実施形態では、第1円弧部5、第2円弧部6および第3円弧部7の夫々は、各々の上流端から下流端までに亘り曲率半径R1~R3が一定になるように形成されている。
【0030】
図3図4に示されるように、第1円弧部5は、ハブ側流路面162や第2円弧部6に滑らかに連続していることが好ましい。また、第3円弧部7は、第2円弧部6に滑らかに連続していることが好ましい。また、近円形スクロール断面42は、真円に近い形状が好ましい。
【0031】
以下、一方向UDにおける上流端を単に「上流端」と表記し、一方向UDにおける下流端を単に「下流端」と表記することがある。
【0032】
図3に示される実施形態では、スクロール部32(32A)の第1円弧部5は、内周面320における第1位置P1から第2位置P2までに亘り延在している。第2円弧部6は、内周面320における第2位置P2から第3位置P3までに亘り延在している。第3円弧部7は、内周面320における第3位置P3から第5位置P5までに亘り延在している。
【0033】
スクロール部32(32A)の第1円弧部5は、その上流端51が第1位置P1においてハブ側流路面162に接続され、その下流端52が第2位置P2において第2円弧部6の上流端61に接続されている。第3円弧部7は、その上流端71が第3位置P3において第2円弧部6の下流端62に接続され、その下流端72が第5位置P5に位置している。
【0034】
図4に示される実施形態では、スクロール部32(32B)の近円形スクロール断面42は、第1円弧部5と第2円弧部6とを接続する第1直線部8をさらに含む。第1直線部8は、軸方向Xに沿って延在している。スクロール部32(32B)の第1円弧部5は、内周面320における第1位置P1から、第2位置P2よりも一方向UDにおける上流側の位置P6までに亘り延在している。第2円弧部6は、内周面320における第2位置P2から第4位置P4までに亘り延在している。第3円弧部7は、内周面320における第4位置P4から第5位置P5までに亘り延在している。
【0035】
スクロール部32(32B)の第1円弧部5は、その上流端51が第1位置P1においてハブ側流路面162に接続され、その下流端52が第2位置P2よりも一方向UDにおける上流側の位置P6において第1直線部8の上流端(後側端)81に接続されている。第2円弧部6は、その上流端61が第2位置P2において第1直線部8の下流端(前側端)に接続され、その下流端62が第4位置P4において第3円弧部7の上流端71に接続されている。第3円弧部7の下流端72は、第5位置P5に位置している。
【0036】
なお、他の幾つかの実施形態では、スクロール部32(32A、32B)の近円形スクロール断面42は、第2円弧部6と第3円弧部7とを接続する不図示の第2直線部をさらに含んでいてもよい。
【0037】
図5は、比較例にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。図6は、図3図4に示される一実施形態にかかるスクロール部の形状と、図5に示される比較例にかかるスクロール部の形状と、を比較するための比較図である。図6では、スクロール部32(32A、32B、32C)の内周面320における位置と曲率半径との関係を示している。
比較例にかかるスクロールケーシング30は、図5に示されるように、スクロール流路31を形成するスクロール部32Cを備える。スクロール部32Cは、第1位置P1から一方向UD側に延在する第1円弧部5Aと、第1円弧部5Aよりも一方向UD側に形成された第2円弧部6Aであって、少なくとも第5位置P5を含むように形成された第2円弧部6Aと、を含む近円形スクロール断面42Aを有する。第1円弧部5Aの曲率半径をR4とし、第2円弧部6Aの曲率半径をR5と定義する。第1円弧部5Aおよび第2円弧部6Aの夫々は、各々の上流端から下流端までに亘り曲率半径R4、R5が一定になるように形成されている。なお、図5では、第1円弧部5Aを一点鎖線で示し、第2円弧部6Aを二点鎖線で示している。
【0038】
第1円弧部5Aは、その上流端51Aが第1位置P1においてハブ側流路面162に接続され、その下流端52Aが第2円弧部6Aの上流端61Aに接続されている。第2円弧部6Aの下流端62Aは、第5位置P5に位置している。
【0039】
図6に示されるように、スクロール部32(32A、32B)の近円形スクロール断面42は、三つの円弧部(第1円弧部5、第2円弧部6および第3円弧部7)を含む。この場合には、二つの円弧部(第1円弧部5Aおよび第2円弧部6A)を含む近円形スクロール断面42A(比較例)に比べて、第2位置P2よりも一方向UD側において、円弧部間の曲率半径の差を小さく抑えることができる。例えば、スクロール部32(32A、32B)における第2円弧部6と第3円弧部7との間の曲率半径の差を、比較例にかかるスクロール部32Cの第1円弧部5Aと第2円弧部6Aとの間の曲率半径の差よりも小さなものにできる。
【0040】
例えば図3に示されるように、ディフューザ流路40からスクロール流路31内に流れ込んだ流体は、旋回速度成分を有するので、第2位置P2よりも一方向UD側において、内周面320に沿って一方向UD側に向かって流れる旋回流SFを形成する。内周面320における第2位置P2よりも一方向UD側において、円弧部間の曲率半径の差を小さく抑え、内周面320の曲率変化量を小さなものにすることで、スクロール流路31内の旋回流SFの圧力損失を抑制できる。遠心圧縮機1の高流量運転時には、旋回流SFの旋回速度成分が大きなものになるので、スクロール流路31内の旋回流SFの圧力損失度合いが大きくなる。これに対して、内周面320の曲率変化量を小さなものにすることで、高い圧力損失低減効果を得ることができる。これにより、遠心圧縮機1の高流量運転時における効率を効果的に向上させることができる。
【0041】
上記の構成によれば、スクロール部32(32A、32B)は、少なくとも第1位置P1を含む第1円弧部5と、第1円弧部5よりも一方向UD側に形成され、第2位置P2から第4位置P4の間の少なくとも一部の領域を含む第2円弧部6と、第2円弧部6よりも一方向UD側に形成され、少なくとも第5位置P5を含む第3円弧部7と、を含む近円形スクロール断面42を有する。この場合には、近円形スクロール断面42は、三つの円弧部(第1円弧部5、第2円弧部6および第3円弧部7)を含むので、二つの円弧部(例えば、第1円弧部5A、第2円弧部6A)を含む場合に比べて、円弧部間の曲率半径の差を小さく抑えることができる。これにより、近円形スクロール断面42の第1円弧部5から第3円弧部7までに亘り、曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。
【0042】
幾つかの実施形態では、図6に示されるように、上述したスクロール部32(32A、32B)の内周面320は、少なくとも第2位置P2から第5位置P5に亘る範囲(好ましくは、第1位置P1から第5位置P5に亘る範囲)において、その曲率半径が一方向UD側に向かうにつれて単調減少するように形成されている。この場合には、近円形スクロール断面42における曲率の変化を緩やかなものにできるので、スクロール流路31における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を抑制できる。
【0043】
幾つかの実施形態では、図3図4図6に示されるように、上述したスクロール部32(32A、32B)の近円形スクロール断面42は、R2>R3の関係を満たす。第2円弧部6の曲率半径R2を、第3円弧部7の曲率半径R3よりも大きなものにすることで、近円形スクロール断面42における第2円弧部6と第3円弧部7との間の曲率の変化を緩やかなものにできる。第2円弧部6と第3円弧部7との間の曲率の変化を緩やかにすることで、第2円弧部6と第3円弧部7との間における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を抑制できる。また、上記の構成によれば、内周面320における第2位置P2から第5位置P5に亘る範囲において、内周面320の曲率半径を一方向UD側に向かうにつれて単調減少させることができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、図3、6に示されるように、上述したスクロール部32(32A)の近円形スクロール断面42は、R1>R2の関係を満たす。第1円弧部5の曲率半径R1を、第2円弧部6の曲率半径R2よりも大きなものにすることで、近円形スクロール断面42における第1円弧部5と第2円弧部6との間の曲率の変化を緩やかなものにできる。これにより、第1円弧部5と第2円弧部6との間の曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。また、上記の構成によれば、内周面320における第1位置P1から第5位置P5に亘る範囲において、内周面320の曲率半径を一方向UD側に向かうにつれて単調減少させることができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、図4図6に示されるように、上述したスクロール部32(32B)の近円形スクロール断面42は、R2>R1の関係を満たす。第1円弧部5の曲率半径R1を、第2円弧部6の曲率半径R2よりも小さなものにすることで、スクロール流路31の径方向における最外側端(第2位置P2)の、遠心圧縮機1の軸線CAからの距離を短いものにできるため、スクロールケーシング30の小型化、ひいては遠心圧縮機1の小型化が図れる。また、スクロール流路31における第1円弧部5に面する領域31Aは、ディフューザ流路40からの流れが入り込む領域であり、スクロール流路31内に形成される旋回流SFは、上記領域31Aよりも下流側(一方向UD側)に形成される。このため、第1円弧部5の曲率半径R1が、第2円弧部6の曲率半径R2よりも小さくても、上記領域31Aよりも下流側における圧力損失の発生を抑制することで、スクロール流路における圧力損失の発生を十分に抑制できる。なお、第1円弧部5の曲率半径R1は、第3円弧部7の曲率半径R3よりも小さくしてもよい。
【0046】
幾つかの実施形態では、図4に示されるように、上述したスクロール部32(32B)の近円形スクロール断面42は、R2>R1の関係を満たす。また、上述した近円形スクロール断面42は、第1円弧部5と第2円弧部6とを接続する第1直線部8を含む。
【0047】
スクロール流路31の径方向における最外側端(第2位置P2)の、遠心圧縮機1の軸線CAからの距離を短くしたときに、第1円弧部5と第2円弧部6とを直接接続させることが困難となる虞がある。上記の構成によれば、第1円弧部5と第2円弧部6とを接続する第1直線部8により、第1円弧部5と第2円弧部6とが接続する形状を容易に成立させることができる。なお、第1直線部8が長いと、スクロール流路31における圧力損失の増加を招く虞があるため、第1直線部8はできる限り短いものにすることが好ましい。
【0048】
図7は、一実施形態にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。図7では、上述したスクロール部32(32A)の内周面320における位置と曲率半径との関係を示している。また、図7には、内周面320の曲率を一方向UD側に向かうにつれて連続的に小さくなるように構成された無限数の円弧部を含むスクロール部32Dを併せて示している。
【0049】
幾つかの実施形態では、図7に示されるように、上述したスクロール部32(32A)の近円形スクロール断面42は、R2/R1≧0.8、且つ、R3/R2≧0.8の関係を満たす。好ましくは、近円形スクロール断面42は、R2/R1≧0.9、且つ、R3/R2≧0.9の関係を満たす。
【0050】
上記の構成によれば、近円形スクロール断面42は、R2/R1≧0.8の関係を満たす。換言すると、第2円弧部6の曲率半径R2は、第1円弧部5の曲率半径R1に対する曲率半径の低減率が20%以下である。第1円弧部5と第2円弧部6との間の曲率変化量を小さなものにすることで、第1円弧部5と第2円弧部6との間における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。また、近円形スクロール断面42は、R3/R2≧0.8の関係を満たす。換言すると、第3円弧部7の曲率半径R3は、第2円弧部6の曲率半径R2に対する曲率半径の低減率が20%以下である。第2円弧部6と第3円弧部7との間の曲率変化量を小さなものにすることで、第2円弧部6と第3円弧部7との間における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。
特に、近円形スクロール断面42が、R2/R1≧0.9、且つ、R3/R2≧0.9の関係を満たす場合には、近円形スクロール断面42における内周面320の曲率を一方向UD側に向かうにつれて連続的に減少させた場合(スクロール部32D)と殆ど遜色のない圧力損失の低減効果を得ることができる。
【0051】
図8は、一実施形態にかかるスクロールケーシングのスクロール部の形状を説明するための説明図である。図8では、上述したスクロール部32(32B)の内周面320における位置と曲率半径との関係を示している。また、図8には、内周面320の曲率を一方向UD側に向かうにつれて連続的に小さくなるように構成された無限数の円弧部を含む減少させたスクロール部32Eを併せて示している。
【0052】
幾つかの実施形態では、図8に示されるように、上述したスクロール部32(32B)の近円形スクロール断面42は、R3/R2≧0.8の関係を満たす。好ましくは、近円形スクロール断面42は、R3/R2≧0.9の関係を満たす。
【0053】
上記の構成によれば、近円形スクロール断面42は、R3/R2≧0.8の関係を満たす。換言すると、第3円弧部7の曲率半径R3は、第2円弧部6の曲率半径R2に対する曲率半径の低減率が20%以下である。第2円弧部6と第3円弧部7との間の曲率変化量を小さなものにすることで、第2円弧部6と第3円弧部7との間における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。
特に、近円形スクロール断面42が、R3/R2≧0.9の関係を満たす場合には、近円形スクロール断面42における内周面320の曲率を一方向UD側に向かうにつれて連続的に減少させた場合(スクロール部32E)と殆ど遜色のない圧力損失の低減効果を得ることができる。
【0054】
上述した幾つかの実施形態では、上述した近円形スクロール断面42は、各々が一定の曲率半径を有する三つの円弧部(第1円弧部5、第2円弧部6および第3円弧部7)を含んでいたが、他の幾つかの実施形態では、近円形スクロール断面42は、例えば、図7図8に示されるような、内周面320における少なくとも第2位置P2から第5位置P5までに亘る範囲(好ましくは第1位置P1から第5位置P5までに亘る範囲)において、内周面320の曲率を一方向UD側に向かうにつれて連続的に減少させるように形成されている。この場合には、スクロール流路31における圧力損失を効果的に抑制できるが、内周面320の形状の形成が困難であり、スクロールケーシング3の製造コストの増大化を招く虞がある。これに対して、上述した三つの円弧部を含む近円形スクロール断面42は、内周面320の形状の形成が容易であり、スクロールケーシング3の製造コストの増大化を抑制できる。
【0055】
図9は、一実施形態にかかる遠心圧縮機の軸方向視におけるスクロール流路の概略図である。
図9に示されるように、上述したスクロール流路31におけるスクロール中心O周りの角度位置θについて、スクロール流路31の巻き始め311と巻き終わり312の合流位置を60度とし、合流位置からスクロール流路31の下流側(図中スクロール中心O周りの時計回り方向)に向かって徐々に角度が大きくなるように角度位置θを定義する。
幾つかの実施形態では、図9に示されるように、上述した近円形スクロール断面42は、角度位置θが120度から360度に亘る範囲Sに形成される。
【0056】
スクロール流路31は、巻き始め側に近いほどスクロール断面積が小さくなる。このため、巻き始め側では、上記近円形スクロール断面42の形成が困難となる虞がある。上記の構成によれば、近円形スクロール断面42の形成が容易である、角度位置θが120度から360度に亘る範囲Sに近円形スクロール断面42を形成することにより、スクロール流路31における圧力損失の発生を十分に抑制できる。なお、近円形スクロール断面42を、角度位置θが0度から120度に亘る範囲Tにも形成してもよい。近円形スクロール断面42は、上記範囲Sおよび範囲Tに形成されることが好ましい。
【0057】
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、上述したスクロール部32における第3円弧部7は、少なくとも第3位置P3、第4位置P4及び第5位置P5を含むように形成される。図示される実施形態では、第3円弧部7は、第3位置P3から第5位置P5までに亘り、その曲率半径R3が一定になっている。上記の構成によれば、第3円弧部7は、第3位置P3、第4位置P4及び第5位置P5を含むので、近円形スクロール断面42は、スクロール断面42内に形成される旋回流SFの旋回状態を決定するために需要な範囲である、第3位置P3から第5位置P5までに亘る範囲において、曲率の変化を緩やかなものにでき、上記範囲における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。特に、第3位置P3から第5位置P5までに亘る範囲において曲率半径R3を一定にすることで、上記範囲における曲率の急変に伴う圧力損失の発生をより効果的に抑制できる。
【0058】
幾つかの実施形態にかかる遠心圧縮機1は、図2に示されるように、上述したスクロールケーシング3を備える。この場合には、スクロール流路31における圧力損失の発生を抑制できるため、遠心圧縮機1の効率を向上できる。特に、高流量運転時に遠心圧縮機1の効率を効果的に向上できる。
【0059】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0060】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0061】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかるスクロールケーシング(3)は、
遠心圧縮機(1)のスクロールケーシング(3)であって、
前記遠心圧縮機のスクロール流路(31)を形成するスクロール部(32)を備え、
前記スクロール部の内周面(320)において、
前記遠心圧縮機のディフューザ流路(40)のハブ側流路面(162)との接続位置を第1位置(P1)、
前記遠心圧縮機の径方向における最外側端を第2位置(P2)、
前記遠心圧縮機の軸方向における最前側端を第3位置(P3)、
前記径方向における最内側端を第4位置(P4)、
前記スクロール部の前記内周面に沿って前記第1位置(P1)から前記第4位置(P4)に向かう側である一方向(UD)側の端位置を第5位置(P5)、と定義した場合に、
前記スクロール部(32)は、
前記第1位置(P1)から前記一方向側に延在する第1円弧部(5)と、
前記第1円弧部(5)よりも前記一方向側に形成された第2円弧部(6)であって、前記第2位置(P2)から前記第4位置(P4)の間における少なくとも一部の領域を含むように形成された第2円弧部(6)と、
前記第2円弧部(6)よりも前記一方向側に形成された第3円弧部(7)であって、少なくとも前記第5位置(P5)を含むように形成された第3円弧部(7)と、を少なくとも含むとともに、
前記第2円弧部(6)の曲率半径をR2、前記第3円弧部(7)の曲率半径をR3と定義した場合に、R2>R3の関係を満たす近円形スクロール断面(42)を有する。
【0062】
上記1)の構成によれば、スクロール部(32)は、少なくとも第1位置(P1)を含む第1円弧部(5)と、第1円弧部(5)よりも一方向(UD)側に形成され、第2位置(P2)から第4位置(P4)の間の少なくとも一部の領域を含む第2円弧部(6)と、第2円弧部(6)よりも上記一方向側に形成され、少なくとも第5位置(P5)を含む第3円弧部(7)と、を含む近円形スクロール断面(42)を有する。この場合には、近円形スクロール断面(42)は、三つの円弧部(第1円弧部5、第2円弧部6および第3円弧部7)を含むので、二つの円弧部を含む場合に比べて、円弧部間の曲率半径の差を小さく抑えることができる。これにより、近円形スクロール断面(42)の第1円弧部(5)から第3円弧部(7)までに亘り、曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。
【0063】
また、上記1)の構成によれば、第2円弧部(6)の曲率半径R2は、第3円弧部(7)の曲率半径R3よりも大きい。この場合には、近円形スクロール断面(42)における第2円弧部(6)と第3円弧部(7)との間の曲率の変化を緩やかなものにできる。第2円弧部(6)と第3円弧部(7)との間の曲率の変化を緩やかにすることで、第2円弧部(6)と第3円弧部(7)との間における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を抑制できる。
【0064】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のスクロールケーシング(3)であって、
前記近円形スクロール断面(42)は、前記第1円弧部(5)の曲率半径をR1と定義した場合に、R1>R2の関係を満たす。
【0065】
上記2)の構成によれば、近円形スクロール断面(42)において、第1円弧部(5)の曲率半径R1は、第2円弧部(6)の曲率半径R2よりも大きい。この場合には、近円形スクロール断面(42)における第1円弧部(5)と第2円弧部(6)との間の曲率の変化を緩やかなものにできる。これにより、第1円弧部(5)と第2円弧部(6)との間の曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。
【0066】
3)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のスクロールケーシング(3)であって、
前記近円形スクロール断面(42)は、前記第1円弧部(5)の曲率半径をR1と定義した場合に、R2>R1の関係を満たす。
【0067】
上記3)の構成によれば、近円形スクロール断面(42)において、第1円弧部(5)の曲率半径R1は、第2円弧部(6)の曲率半径R2よりも小さい。この場合には、スクロール流路(31)の径方向における最外側端(第2位置P2)の、遠心圧縮機の軸線(CA)からの距離を短いものにできるため、スクロールケーシング(30)の小型化、ひいては遠心圧縮機(1)の小型化が図れる。また、スクロール流路(31)における第1円弧部(5)に面する領域(31A)は、ディフューザ流路(40)からの流れが入り込む領域であり、スクロール流路(31)内に形成される旋回流(SF)は、上記領域(31A)よりも下流側(一方向UD側)に形成される。このため、第1円弧部(5)の曲率半径R1が、第2円弧部(6)の曲率半径R2よりも小さくても、上記領域(31A)よりも下流側における圧力損失の発生を抑制することで、スクロール流路(31)における圧力損失の発生を十分に抑制できる。
【0068】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載のスクロールケーシング(3)であって、
前記近円形スクロール断面(42)は、前記第1円弧部(5)と前記第2円弧部(5)とを接続する第1直線部(8)をさらに含む。
【0069】
スクロール流路(31)の径方向における最外側端(第2位置P2)の、遠心圧縮機(1)の軸線(CA)からの距離を短くしたときに、第1円弧部(5)と第2円弧部(6)とを直接接続させることが困難となる虞がある。上記4)の構成によれば、第1円弧部(5)と第2円弧部(6)とを接続する第1直線部(8)により、第1円弧部(5)と第2円弧部(6)とが接続する形状を容易に成立させることができる。
【0070】
5)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のスクロールケーシング(3)であって、
前記近円形スクロール断面(42)は、R2/R1≧0.8、且つ、R3/R2≧0.8の関係を満たす。
【0071】
上記5)の構成によれば、近円形スクロール断面(42)は、R2/R1≧0.8の関係を満たす。換言すると、第2円弧部(6)の曲率半径R2は、第1円弧部(5)の曲率半径R1に対する曲率半径の低減率が20%以下である。第1円弧部(5)と第2円弧部(6)との間の曲率変化量を小さなものにすることで、第1円弧部(5)と第2円弧部(6)との間における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。また、近円形スクロール断面(42)は、R3/R2≧0.8の関係を満たす。換言すると、第3円弧部(7)の曲率半径R3は、第2円弧部(6)の曲率半径R2に対する曲率半径の低減率が20%以下である。第2円弧部(6)と第3円弧部(7)との間の曲率変化量を小さなものにすることで、第2円弧部(6)と第3円弧部(7)との間における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。
【0072】
6)幾つかの実施形態では、上記3)又は4)に記載のスクロールケーシング(3)であって、
前記近円形スクロール断面(42)は、R3/R2≧0.8の関係を満たす。
【0073】
上記6)の構成によれば、近円形スクロール断面(42)は、R3/R2≧0.8の関係を満たす。換言すると、第3円弧部(7)の曲率半径R3は、第2円弧部(6)の曲率半径R2に対する曲率半径の低減率が20%以下である。第2円弧部(6)と第3円弧部(7)との間の曲率変化量を小さなものにすることで、第2円弧部(6)と第3円弧部(7)との間における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。
【0074】
7)幾つかの実施形態では、上記1)~6)の何れかに記載のスクロールケーシング(3)であって、
前記スクロール流路(31)におけるスクロール中心(O)周りの角度位置(θ)について、前記スクロール流路(31)の巻き始め(311)と巻き終わり(312)の合流位置を60度とし、前記合流位置から前記スクロール流路(31)の下流側に向かって徐々に角度が大きくなるように角度位置(θ)を定義した場合に、
前記近円形スクロール断面(42)は、前記角度位置(θ)が120度から360度に亘る範囲(S)に形成される。
【0075】
スクロール流路(31)は、巻き始め(311)側に近いほどスクロール断面積が小さくなる。このため、巻き始め側では、上記近円形スクロール断面(42)の形成が困難となる虞がある。上記7)の構成によれば、近円形スクロール断面(42)の形成が容易である、角度位置(θ)が120度から360度に亘る範囲(S)に近円形スクロール断面(42)を形成することにより、スクロール流路(31)における圧力損失の発生を十分に抑制できる。
【0076】
8)幾つかの実施形態では、上記1)~7)の何れかに記載のスクロールケーシング(3)であって、
前記第3円弧部(7)は、少なくとも前記第3位置(P3)、前記第4位置(P4)、及び前記第5位置(P5)を含むように形成される。
【0077】
上記8)の構成によれば、第3円弧部(7)は、第3位置(P3)、第4位置(P4)及び第5位置(P5)を含むので、近円形スクロール断面(42)は、スクロール断面(42)内に形成される旋回流(SF)の旋回状態を決定するために需要な範囲である、第3位置から第5位置までに亘る範囲において、曲率の変化を緩やかなものにでき、上記範囲における曲率の急変に伴う圧力損失の発生を効果的に抑制できる。
【0078】
9)本開示の少なくとも一実施形態にかかる遠心圧縮機(1)は、
上記1)~8)の何れかに記載のスクロールケーシング(3)を備える。
【0079】
上記9)の構成によれば、スクロール流路(31)における圧力損失の発生を抑制できるため、遠心圧縮機(1)の効率を向上できる。特に、高流量運転時に遠心圧縮機(1)の効率を効果的に向上できる。
【符号の説明】
【0080】
1 遠心圧縮機
2 インペラ
21 ハブ
22 外面
23 インペラ翼
24 チップ側縁
3,30 スクロールケーシング
31 スクロール流路
31A 領域
32,32A~32E スクロール部
320 内周面
33 流体導入口
34 流体排出口
35 シュラウド面
36 吸気流路
37 吸気流路部
370 内壁面
38 シュラウド部
39 インペラ室
40 ディフューザ流路
41 チップ側流路面
42,42A 近円形スクロール断面
5,5A 第1円弧部
51,51A 上流端
52,52A 下流端
6,6A 第2円弧部
61,61A 上流端
62,62A 下流端
7 第3円弧部
71 上流端
72 下流端
8 第1直線部
10 ターボチャージャ
11 タービン
12 回転シャフト
13 タービンロータ
14 タービンケーシング
141 排ガス導入口
142 排ガス排出口
15 軸受
16 軸受ハウジング
161 インペラ室形成面
162 ハブ側流路面
CA 軸線
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P4 第4位置
P5 第5位置
P6 位置
R1~R5 曲率半径
S,T 範囲
SF 旋回流
UD 一方向
X 軸方向
XF (軸方向の)前側
XR (軸方向の)後側
Y 径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9