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特許7413547コイル形成動作におけるイベントの力の検知及び相殺
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】コイル形成動作におけるイベントの力の検知及び相殺
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/02 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
B21C47/02 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022544335
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 US2020064533
(87)【国際公開番号】W WO2021150315
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】62/964,200
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ロジャー ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】スタニストリート,ティモシー フランシス
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-197135(JP,A)
【文献】特開平11-277134(JP,A)
【文献】特開平08-024945(JP,A)
【文献】特開平08-141638(JP,A)
【文献】特開平08-206732(JP,A)
【文献】特開2002-219514(JP,A)
【文献】特開平08-192223(JP,A)
【文献】特開平05-277555(JP,A)
【文献】特開2008-264878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0033844(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0136845(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイリング装置を使用するコイル形成動作によって、コイルの第1のラップ及びコイルの第2のラップを含むコイルの一部分を金属ストリップから形成する方法であって、
前記コイリング装置は、前記コイルの表面に接触するローラーを含み、
前記コイルの前記第2のラップは突起を含み、
前記方法は、
力ロードセルによって、前記金属ストリップが前記コイルに圧延される間、前記ローラーが前記突起に接触するとき、前記コイルによって加えられ、前記ローラーで受けた力を、第1のデータとしてキャプチャして力信号に変換し、
線形変換器によって、前記金属ストリップが前記コイルに圧延される間、前記コイルが前記突起に接触した位置に対応する前記ローラーの位置を第2のデータとしてキャプチャして位置信号に変換し、
リールエンコーダによって、前記コイルの表面に加えられた力を回転する前記コイルの角度位置に相関させ、前記コイルの角度位置に対応する信号を生成し、
回路によって、前記力信号、前記位置信号、及び前記コイルの角度位置に対応する信号を使用して、前記力信号又は前記位置信号のうち前記ローラーの圧延力に要する力の小さい方を選択し、前記圧延力及び前記突起の位置に対応する信号を決定する、
前記回路によって、前記ローラーに結合される油圧シリンダーに、前記信号を伝送し、
前記油圧シリンダーによって、前記信号に従って、前記ローラーに、前記ローラーが前記突起と接触し得るタイミングで前記コイルの圧延に利用する圧延力を減少させ、前記ローラーが前記突起を通過すると前記圧延力を戻す、
方法。
【請求項2】
前記回路は自己調整バンドパスフィルターのセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自己調整バンドパスフィルターのセットの各フィルターは、前記コイルの角速度の高調波に関連付けられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コイルの前記第2のラップの前記突起は、コイルの前記第1のラップの前縁によって少なくとも部分的に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ローラーはアイロニングローラーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
コイリング装置を使用するコイル形成動作によって、コイルの第1のラップ及びコイルの第2のラップを含むコイルの一部分を金属ストリップから形成するシステムであって、
前記コイルの前記第2のラップは突起を含み、
前記システムは、
前記コイルの表面に接触するローラーと、
前記金属ストリップが前記コイルに圧延される間、前記ローラーが前記突起に接触するとき、前記コイルによって加えられ、前記ローラーで受けた力を、第1のデータとしてキャプチャして力信号に変換する力ロードセルと、
前記金属ストリップが前記コイルに圧延される間、前記コイルが前記突起に接触した位置に対応する前記ローラーの位置を第2のデータとしてキャプチャして位置信号に変換する線形変換器と、
前記コイルの表面に加えられた力を回転する前記コイルの角度位置に相関させ、前記コイルの角度位置に対応する信号を生成するリールエンコーダと、
前記力信号及び前記位置信号、及び前記コイルの角度位置に対応する信号を使用して、前記ローラーの圧延力及び前記突起の位置に対応する信号を決定して、前記信号を伝送する回路と、
前記ローラーと結合され、前記信号を前記回路から受信して、前記信号に従って、前記ローラーに、前記ローラーが前記突起と接触し得るタイミングで前記コイルの圧延に利用する圧延力を減少させ、前記ローラーが前記突起を通過すると前記圧延力を戻す油圧シリンダーと、
を含む、システム。
【請求項7】
前記回路は自己調整バンドパスフィルターのセットを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記自己調整バンドパスフィルターのセットの各フィルターは、前記コイルの角速度の高調波に関連付けられる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コイルの前記第2のラップの前記突起は、コイルの前記第1のラップの前縁によって少なくとも部分的に形成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記ローラーはアイロニングローラーである、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年1月22日に出願された「SENSING AND OFFSETTING THE FORCE OF EVENTS IN A COIL FORMING OPERATION」と題された米国仮出願第62/964,200号の利益及び優先権を主張するものであり、その内容は、参照により、その全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、圧延機のコイラーに関する。より具体的には、ローラーとコイルの表面との間で一定力を維持するための制御方式に関するシステム及び方法が開示されている。
【背景技術】
【0003】
金属インゴットは、圧延動作中に金属ストリップに圧延できる。金属ストリップは、圧延機のコイラーを使用してコイルに圧延され得る。金属ストリップがコイルに圧延されるとき、コイルのラップ間に空気が閉じ込められ得る。空気の閉じ込めは、特に、スクラッチガウジ欠陥及びコイルのスコーピング等の特定の問題を生じさせ得る。圧延機のコイラーは、コイルの表面に接触し得るローラーを圧延機に組み込んで、コイルのラップ間の空気の閉じ込めを制限し得る。コイルの隆起または突起は、コイル及びローラーの半径方向力を生じさせ得、これにより、コイルの圧延中にコイルとローラーとの間で一定力が妨げられ得る。
【発明の概要】
【0004】
本特許で使用される用語「発明(invention)」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」、及び「本発明(the present invention)」は、本特許の主題の全て及び下記の特許請求の範囲を広く指すことが意図される。これらの用語を含む記述は、本明細書に説明される主題を制限するものではない、または下記の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を制限するものではないと理解されたい。本特許の適用を受ける本発明の実施形態は、この発明の概要ではなく、下記の特許請求の範囲によって定義される。この発明の概要は、本発明の様々な実施形態の高水準の概要であり、下記の発明を実施するための形態のセクションにさらに説明する概念の一部を紹介している。この発明の概要は、主張される主題の重要または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、主張される主題の範囲を決定するために単独で使用することも意図していない。主題は、本特許の明細書全体、図面のいずれかまたは全て、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されたい。
【0005】
本技術の例示的な実施形態は方法を含み得る。本方法は、例えば、コイリング装置を使用するコイル形成動作によって、コイルの第1のラップ及びコイルの第2のラップを含むコイルの一部分を金属ストリップから形成することであって、コイルの第2のラップは突起を含む、形成することと、金属ストリップがコイルに圧延される間、コイル形成動作中に第1のセンサーによって、コイルに関連付けられた第1のコイルデータをキャプチャすることであって、第1のコイルデータは、ローラーが突起に接触するとき、ローラーに加えられたコイルからの半径方向力に対応するデータを含む、キャプチャすることと、金属ストリップがコイルに圧延される間、コイル形成動作中に第2のセンサーによって、コイルに関連付けられた第2のコイルデータをキャプチャすることであって、第2のコイルデータは、ローラーがコイルに接触するとき、コイルの位置に対応するデータを含む、キャプチャすることと、第1のコイルデータ、第2のコイルデータ、及び回路を使用して、ローラーの圧延力及び突起の位置に対応する信号を決定することと、ローラーに結合された油圧シリンダーに、信号を伝送することであって、信号が油圧シリンダーによって受信された後、油圧シリンダーはローラーに圧延力をかけさせ、圧延力はコイルの半径方向力と逆である、伝送することと、を含み得る。
【0006】
追加の態様では、ローラーに圧延力をかけさせる油圧シリンダーは、ローラーがかけた力を低減することを含む。本方法は、さらに、コイルに電気的に接続されたリールエンコーダまたはコイルに機械的に接続された角度エンコーダを使用して、一定期間にわたるコイルの周波数に対応するデータを決定することを含み得る。追加の態様では、回路は、自己調整バンドパスフィルターのセットを含む。追加の態様では、自己調整バンドパスフィルターのセットの各フィルターは、コイルの角速度の高調波に関連付けられている。追加の態様では、コイルの第2のラップの突起は、コイルの第1のラップの前縁によって少なくとも部分的に形成される。追加の態様では、第2のコイルデータは、ローラーが突起に接触するときのコイルの位置に対応するデータを含む。追加の態様では、第1のセンサーは、ローラーに電気的に接続された力ロードセルである。追加の態様では、第2のセンサーは、油圧シリンダーに電気的に接続された線形変換器である。追加の態様では、ローラーはアイロニングローラーである。
【0007】
別の例示的な実施形態はシステムを含み得る。本システムは、例えば、コイルの表面に接触するように構成されたローラーであって、コイルは、コイリング装置を使用するコイル形成動作によって形成される、ローラーと、第1の方向にコイルによって送達された第1の力に対応する第1のデータをキャプチャするように構成された力ロードセルと、コイルの位置に対応する第2のデータをキャプチャするように構成された線形変換器と、第1のデータ及び第2のデータを使用して、第1の力に対抗するために第2の力に関連付けられた信号を決定するように構成された回路と、信号を回路から受信し、第1の方向とは反対の第2の方向で第2の力をローラーに送達するように構成された油圧シリンダーと、を含み得る。
【0008】
追加の態様では、ローラーに圧延力をかけさせる油圧シリンダーは、ローラーがかけた力を低減するように構成される。追加の態様では、本システムは、さらに、コイルに電気的に接続されたリールエンコーダ、またはコイルに機械的に接続された角度エンコーダを含み、リールエンコーダは、一定期間にわたるコイルの周波数に対応するデータを生成するように構成される。追加の態様では、回路は、自己調整バンドパスフィルターのセットを含む。追加の態様では、自己調整バンドパスフィルターのセットの各フィルターは、コイルの角速度の高調波に関連付けられている。追加の態様では、コイルの一部分は、金属ストリップからのコイルの第1のラップ及びコイルの第2のラップを含み、コイルの第2のラップは突起を含み、コイルの第2のラップの突起は、コイルの第1のラップの前縁によって少なくとも部分的に形成される。追加の態様では、第2のコイルデータは、ローラーが突起に接触するときのコイルの位置に対応するデータを含む。追加の態様では、ローラーはアイロニングローラーである。
【0009】
本開示に説明される様々な実施態様は、追加のシステム、方法、特徴、及び利点を含み得、これらは、必ずしも本明細書で明示的に開示することはできないが、以下の詳細な説明及び添付の図面を検討すれば、当業者には明らかであろう。そのようなシステム、方法、特徴、及び利点の全ては、本開示の範囲内に含まれ、及び添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0010】
以下の図を参照することによって、様々な実施形態の性質及び利点のさらなる理解を実現し得る。図の特徴及びコンポーネントは、本開示の一般的原理を強調するために示されている。添付図では、類似のコンポーネントまたは機能について、同じ参照符号が付けられ得る。さらに、同じタイプの様々なコンポーネントは、参照符号の後にダッシュを付け、類似のコンポーネントを区別する第2の符号を付けることで区別され得る。本明細書で第1の参照符号だけが使用される場合、説明は、第2の参照符号に関係なく、同じ第1の参照符号を有する類似のコンポーネントのいずれか1つに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】コイル内に空気が閉じ込められた金属ストリップから形成されたコイルを示す。
図2】金属ストリップのスクラッチガウジ欠陥の例の写真を示す。
図3】本技術の実施形態による、コイルに力を加えるローラーを備えた金属ストリップから形成されたコイルを示す。
図4】本技術の実施形態による、金属ストリップ及びコイルの第2のラップの突起から形成されたコイルを示す。
図5】本技術の実施形態による、金属ストリップ、コイルの突起、及びローラーから形成された一連のコイルを示す。
図6】本技術の実施形態による、ローラーを備えたコイルと、ローラーを制御するように構成された油圧シリンダーシステムとを示す。
図7】本技術の実施形態による、コイリングプロセス全体を通して一定力を維持するための例示的な制御システムを示す。
図8】本技術の実施形態による、図7に示される制御システムの一部として使用される一連のフィルターの例を示す。
図9】本技術の実施形態による、例示的なプロセスの例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例の主題は、法定要件を満たすために特異性を用いて本明細書に説明されているが、この説明は、必ずしも、特許請求の範囲を制限することを意図していない。主張される主題は、他の方法で具現化され得、異なる要素またはステップを含み得、他の既存の技術または将来の技術と併せて使用され得る。この説明は、個々のステップの順序または要素の配置が明示的に説明されるときを除き、様々なステップまたは要素の中のまたはそれらの間の特定の順序または配置を暗示するとして解釈するべきではない。
【0013】
本願は、圧延機のコイラーに関する。より具体的には、ローラーとコイルの表面との間で一定力を維持するための制御方式に関するシステム及び方法が開示されている。コイルのサイズが時間の経過とともに増加するにつれて、ローラーは弧を描いて移動して、ニップに追従し得る。
【0014】
金属インゴットは、圧延動作中に金属ストリップに圧延できる。金属ストリップは、コイラー及びコイリング動作を使用してコイルに圧延され得る。金属ストリップがコイルに圧延されるとき、コイルのラップ間に空気が閉じ込められ得る。空気の閉じ込めは、特に、スクラッチガウジ欠陥及びコイルのスカルピング等の特定の問題を生じさせ得る。圧延機のコイラーは、コイルの表面に接触し得るローラーを圧延機に組み込んで、コイルのラップ間の空気の閉じ込めを制限し得る。コイルの隆起または突起は、コイル及びローラーの半径方向力を生じさせ得、これにより、コイルの圧延中にコイルとローラーとの間で一定力が妨げられ得る。「隆起」及び「突起」という用語は、本明細書では交換可能に使用され得る。
【0015】
より具体的には、圧延された金属ストリップの薄い性質のために小さい場合でも、金属ストリップは幅を有し、ひいては、金属ストリップの前縁はゼロ以外の高さを有する。金属ストリップがコイラー上でコイル状になり始めるとき、金属ストリップの前縁がコイルの第1のラップの起点になり得る。コイルの第2のラップが起点になるとき、金属ストリップの第2のラップが金属ストリップの前縁の上にあり、突起が生じる。突起は、コイルの前縁の幅と、コイルの第1のラップの外面とコイラードラムとの間の距離とによって生じ得る。ローラーは、コイルのニップでコイルの表面に接触し得る(コイルの「ニップ」は、コイル及び入ってくる金属ストリップ等の2つのローラーが接触する場所であり得る)。コイルの第1のラップ及びニップによって生じる突起がコイルの円周のそばの同じ位置にあるとき、突起はコイルからローラーへの余分な半径方向力を生じさせ得る。この余分な力により、ローラーとコイルとの間の力が不均一になり得る。制御方式は、コイルにそのような突起が存在するときでも、プロセス全体を通してローラーとコイル表面との間で一定力を維持するために偏心補償を使用し得る。
【0016】
図1は、コイル内に空気が閉じ込められた金属ストリップから形成されたコイルを示す。金属ストリップ102は、コイリングドラム106に供給され得る。金属ストリップ102の複数のラップがコイリングドラム106の周りに相互の上に層状に重ねられた後、金属ストリップはコイル101を構成する。コイリングドラム106(及びコイル101)が回転するにつれて、金属ストリップ102のより多くの部分がコイル上で層状になり、コイルの直径が増加する。
【0017】
コイル101が回転し、金属ストリップ102がコイル101に向かって移動しているとき、空気は、空気流の矢印108によって示されるように、金属ストリップの表面に沿って流れ得る。したがって、空気は、金属ストリップ102とコイル101との間に閉じ込められ得る。空気が金属ストリップ102とコイル101との間に閉じ込められる場合、言い換えれば、コイル101の一部であるとき金属ストリップの異なるラップ間に空気が閉じ込められる場合、空気はラップ間のスペースを占め得、ラップはコイルの一部であるときに意図したように一緒になるのを防ぎ得る。金属ストリップの異なるラップ間のこのスペース及び空気は、一定の悪影響を生じさせ得る。第1に、粒子はコイルのラップ間に閉じ込められ得る。第2に、ラップは互いに完全に接触していない場合があるため、ラップは相互に対して移動し得る。2つのラップが互いの間で接触が少ないとき、すなわち、より多くの空気がラップ間に閉じ込められるとき、コイルの2つのラップ間に存在する摩擦が少なくなり得る。粒子(例えば、汚れまたはほこり)が2つのコイルのラップ間に閉じ込められ、コイルの2つのラップが互いに対して移動する(例えば、スライドまたは回る)とき、粒子が移動するとき、粒子によりストリップに傷が付けられ得る。その傷は、「スクラッチガウジ欠陥」と呼ばれ得、その例は、図2に示され、下記に説明される。推定される他の悪影響も発生し得る。例えば、アイロニングローラー等のローラーは、コイルの突起からの跳ね返りによって生じる余分な負荷等の負荷の下で変形し得るコーティングを含む。別の例では、突起からの力の周期性により、過度の熱が発生し、ローラーコーティングが失敗し得る。本明細書に説明される偏心補償制御方式は、ローラーによってコイルの表面に加えられた力に対するコイルの突起の影響を低減することを目的としている。
【0018】
図2は、金属ストリップのスクラッチガウジ欠陥の例の写真を示す。画像110は、金属ストリップ113(例えば、図1の金属ストリップ102と同様であり得る)に現れるスクラッチガウジ欠陥を示す。図2に示されるように、圧延方向は、画像110の下から上に向かう方向である。欠陥は、圧延方向に1つ以上の密接なスクラッチとして現れ得る。圧延方向に複数のスクラッチが存在する場合、圧延方向のスクラッチを一緒につなぐ水平方向の横幅のスクラッチも存在し得る。
【0019】
画像111は、金属ストリップ114上のスクラッチガウジ欠陥の表面の3Dスキャンを示す。ストリップ114の部分113のギザギザ領域にはスクラッチ(複数可)が示され、隆起領域には、スクラッチ(複数可)の原因、つまり、コイルのラップ間に閉じ込められている小さな粒子が示される。ラップが相互に対して移動するとき、粒子がスライドして回るとき、粒子によりストリップに傷が付けられ得る。通常、ラップ間の移動は圧延方向に発生するが、コイルは、代わりに、横向きのスクラッチを発生させる横方向の移動を受け得る。
【0020】
コイルラップが相互に対して移動するのを防ぎ、及び/または空気(ひいては、粒子)がコイルラップ間に閉じ込められるのを防ぐことで、スクラッチゲージの欠陥を防ぐのに役立ち得る。これらの問題は両方とも、ラップ間に最小のスペースが存在するまたはスペースが存在しないように、コイルの隣接するラップを互いに対してプレスすることによって解決され得る。例えば、2つのラップが互いの間の接触が多くなるにつれて、2つのラップ間に存在する摩擦が大きくなる。アイロニングローラー等のローラーを使用して、入ってくる金属ストリップから生じる最新のラップを、その前の、既にコイルに巻き付けられているラップ(複数可)に対してプレスし得る。
【0021】
図3は、本技術の実施形態による、コイル上に力を加えるローラーを備えた金属ストリップから形成されたコイルを示す。アイロニングローラー等のローラー320は、金属ストリップ302及び/またはコイル301と接触し得、金属ストリップ302及び/またはコイル301に力316を加え得る。ローラー320によって加えられた力316は、コイル301のトップラップとコイル301の最新のラップ(すなわち、金属ストリップ302)との間に摩擦を発生させるように、金属ストリップ302をコイル301のトップラップに接触させ得る。この摩擦により、ラップを互いに対して移動させない場合がある、または移動を最小にさせ得、2つのラップ間に空気が閉じ込められるのを防ぎ得、ひいては、1つ以上の粒子がスクラッチガウジ欠陥もしくは他の欠陥または悪影響を生じさせるのを防ぎ得る。
【0022】
ローラー320は、例えば、ローラーがコイリングプロセス中に必要となり得るコンプライアンスを有することを可能にするポリマー材料で作られ得る。本技術の例では、ローラー320は鋼で作られ得、鋼により、ローラーがより多くの力を有して偏向し、コイルを安定に保つことが可能になり得る。さらに、追加のコイルをローラー320と組み合わせて使用し得る。2つ以上のコイルはシステムに含まれ得、別々にまたは同時に使用され得る。
【0023】
図4は、本技術の実施形態による、金属ストリップ及びコイルの第2のラップの突起から形成されたコイルを示す。コイル402は、コイルの多くの異なる「ラップ」を含み得る。ラップは、例えば、コイルの周りに1回到達する金属ストリップの一部分であり得る。したがって、新しいラップがコイルに追加されるたびにコイルの円周が異なり得るため、コイルの各ラップは、コイルの他のラップとはわずかに異なる長さであり得る。
【0024】
金属ストリップの前縁426は、コイル402の第1のラップ422の起点になり得る。コイルの第2のラップ424が起点になるとき、金属ストリップの第2のラップ424は、金属ストリップの前縁426の上にあり得、金属ストリップに隆起または突起428を生じさせる。突起428は、コイルの前縁の厚さT及びコイルの第1のラップの外面とコイラードラムとの間の距離で生じ得る。言い換えれば、コイルの突起におけるコイル402の直径は、コイルの他の部分におけるコイルの直径よりもわずかに大きくなり得る(例えば、金属ストリップの厚さTとほぼ同じだけ大きくなる)。この直径は、突起の始まりに徐々に増加し始め得、コイルの最大直径は、コイルの他の場所でのコイルの直径に金属層の厚さTを加えたものを含み得る。突起自体の全体の突起の厚さが徐々に変化するため、コイルの直径が突起の全体にわたって/突起を横断して徐々に変化し得る。コイルのサイズが増加するにつれて、ローラーがニップに追従するように、ローラーは弧を描いて移動し得る。
【0025】
突起428は、より多くのラップがコイルに追加されるにつれて、サイズが減少し得る。例えば、突起はコイルの第2のラップで最大になり得る。より多くのコイルのラップがコイルに追加されるにつれて、それらのラップの突起は、コイルの前のラップの突起と比較して、ますます小さくなり得る。
【0026】
図5は、本技術の実施形態による、金属ストリップ、コイルの突起、及びローラーから形成された一連のコイルを示す。図4に関して述べたように、コイル(例えば、コイル501)の第2のラップが起点になるとき、コイルの第2のラップは、金属ストリップの前縁の上にあり得、金属ストリップに突起528を生じさせる。例えば、アイロニングローラー等のローラー520を使用して、入ってくる金属ストリップから生じる第2のラップ(または、後続のラップ)を、その前の、既にコイルに巻き付けられているラップ(複数可)に対してプレスし得る。ローラー520は、コイルのニップでコイル501の表面に接触し得る。コイル501及びローラー520は、ローラーからコイルへの半径方向力516及びコイルからローラーへの半径方向力517を含む力を互いにかける。図5(c)に示されるように、コイルの第1のラップ及びニップによって生じる突起がコイルの円周のそばの同じ場所にあるとき、突起は、コイルからローラーに半径方向力517’の増加を生じさせ得る。この増加した力は、コイルによって生じる動的力または加速力であり得、これにより、コイルの負荷にスパイクが生じ得、コイル状になっている金属ストリップが損傷し得る。この増加した力により、ローラーとコイルとの間の力が全体的に不均一になり得る。言い換えれば、突起528は、コイルの表面に加えられた力の増加を生じさせ、ローラーが突起528をわたって移動している間、コイル501とローラー520との間の結合力が不均衡になる。同様に、ローラー520が突起528を通過した後、コイル501からローラー520への半径方向力517は再び減少し得る。したがって、コイル501とローラー520との間の力は、コイルの各ラップのコイリングの大部分の全体を通して一定であり得るが、一定力は突起528によって遮断され得る。また、突起は、ローラー520を金属ストリップの表面から瞬間的及び一時的に離させ得る、またはコイルの表面から「跳ね返らせ」得る。
【0027】
制御方式は、コイルの突起等の偏心外乱が存在するときでも、コイル501とローラー520との間で一定力を維持するために偏心補償を使用し得る。例えば、コイル501によって生じる増加した半径方向力517’を補償するために、コイル力と反対方向にあり得るローラー520からの力516が減り、力の組み合わせを、コイリングプロセス全体を通して一定に保ち得る。制御方式は、コイル501からの増加したコイル力を相殺するために力の減少をどの方法で行うべきかを決定するように構成され得る。
【0028】
図6は、本技術の実施形態による、ローラーを備えたコイルと、ローラーを制御するように構成された油圧シリンダーシステム600とを示す。本明細書に述べられるように、アイロニングローラー等のローラー620は、コイル601のラップに力を加えて、空気及び他の破片がコイルのラップ間に閉じ込められるのを防ぎ、ひいては、コイルのラップに起こり得る損傷を防ぐように構成され得る。図6に示されるように、ローラー620によって加えられた力は、油圧シリンダーシステムによって制御され得る。
【0029】
油圧シリンダーシステムは、ローラー620またはコイル601に結合された第1のセンサー(力ロードセル630等)を含み得る。力ロードセル630は、ローラーに(または、コイルに直接、もしくはローラーを介してコイルに)接続されるとき、本明細書に説明されるようなコイルの突起(例えば、突起528)によって生じる力等の、コイル601によってローラー620に加えられた機械力に比例する信号を返すことができる力センサーである。例えば、力ロードセル630は、ローラー620によって加えられた機械力に比例する信号を返し得、その信号は、コイル601によってローラー620に加えられた力を表し得る。したがって、次に、力ロードセルは、コイルを押し下げてコイルの上向きの力を相殺し、ローラー620とコイル601との間で一定力を維持するのに必要な力の量を表す信号をキャプチャする。コイル601によってローラー620に加えられた力を表し得る信号(例えば、信号641)は、さらなる処理のために、回路等の別のデバイスまたはデバイスのセットに伝送され得る。
【0030】
また、油圧シリンダーシステムは、油圧シリンダー632を含み得る。油圧シリンダー632は、直接または力ロードセル630を介してのいずれかでローラー620に結合され得、ローラーの位置を制御し得る。したがって、例えば、コイル601が、例えばコイル601の突起等が原因で、増加した力(力517’等)をローラー620に加えるとき、油圧シリンダー632は、コイル601によって加えられた増加した力に対抗するように、ローラー620をコイル601から引き離すように構成され得る。図6に示されるように及び図7にさらに詳細に検討されるように、油圧シリンダー632は、油圧シリンダー632によって制御されるローラー620によって加えられる調節された力を表す信号を油圧シリンダー632に伝送し得る回路等の他のコンポーネントに電気的に接続され得る。
【0031】
油圧シリンダーシステムは、また、サーボバルブ636を含み得る。サーボバルブ636は、油圧流体を油圧シリンダー632に送信する方法及び油圧流体量を制御する電動バルブである。言い換えれば、サーボバルブ636は、例えば、小さな電気信号を使用して油圧シリンダー632を制御するように構成され得る。サーボバルブ636は、回路(例えば、図7にさらに説明される回路)等の別のデバイスまたはデバイスのセットから信号640を受信するように構成され得、この信号は、油圧シリンダー632によって制御されるローラー620によって加える必要がある力を表し得る。
【0032】
また、油圧シリンダーシステムは、線形変換器634等の第2のセンサーを含み得る。線形変換器634は、例えば、油圧シリンダー632またはローラー620からの線形運動を電気信号に変換するように構成された位置センサーであり得る。例えば、線形変換器634は、ローラー620またはコイル601の位置をキャプチャし、その情報を信号642に変換し得、次に、信号642は、回路(例えば、図7にさらに説明される回路)等の別のデバイスまたはデバイスのセットに送信され、信号を使用して他の動作を行い得る。一例として、本明細書に説明されるように、信号642は、コイル601の増加した力を相殺するためにローラー620に加えられる力を決定するための制御方式の一部として使用され得る。
【0033】
また、油圧シリンダーシステムは1つ以上のアキュムレータ638を含み得る。いくつかの実施形態では、それらのアキュムレータはバルブ/シリンダーに近接して搭載され、アキュムレータ638は、油圧の即時の供給源を提供する。アキュムレータがない場合、油圧ポンプをバルブに接続するパイプの内部摩擦により、油圧アクチュエータの速度が制限され得る。アキュムレータは、隆起が事前設定されていない期間中に充電され、隆起の外乱中に圧力を維持するためにシステムに放電され得る。戻りラインのアキュムレータに関して、アキュムレータは排出された流体のシンクとして機能し得、それによって、パイプ摩擦によって生じる戻りラインの圧力上昇を防ぐ。
【0034】
図7は、本技術の実施形態による、コイリングプロセス全体を通して一定力を維持するための例示的な制御システム700を示す。図7に示されるように、図6のコイル、ローラー、及び油圧シリンダーシステム600は、図7の制御システム700の一部を構成する。制御システム700は、制御された方法で突起の位置を予測するように構成され得る。例えば、制御システム700は、突起がローラーと接触し得るタイミングを決定するように構成され得る。また、制御システム700は、突起がローラーと接触するときにコイル701によって生じる力を決定するように構成され得る。ローリングシステムのこれらの2つの特性を決定することにより、ローラーがコイルの突起と接触する特定の時間にローラーの下向きの力を調節することによって、システムがコイルの上向きの力を相殺することが可能になり得る。
【0035】
図4及び図5に関してより詳細に説明されるように、コイリングプロセス中にコイルと接触しているローラーがコイルの突起をわたって移動するとき、ローラーに接続された力ロードセルは、コイルの突起によって生じたときに、ローラーにかかる力の増加を検出し得る。ローラーがコイルの突起を通過した後、力ロードセルは力の減少を検出して元の力に戻り得る。この一時的な力の増加を相殺するために、ローラーが突起をわたって移動するときにコイルに対して一時的に減少する力を加え、ローラーがコイルの突起を通過すると、ローラーによる反力が再び増加するように、ローラーを構成し得る。このように、本システムは、コイリングプロセス全体を通して、すなわち、ローラーが突起と接触するとき、ローラーが突起と接触していないとき、ローラーの下向きの力及びコイルの上向きの力の組み合わせが均一である、またはそれらの力の組み合わせが一定であるようにローラーを調節するように構成され得る。
【0036】
力ロードセンサー及び線形変換器は、データをローラーから収集し得る。データは、コイルによって加えられたときにローラーで受けた力(例えば、力ロードセンサーによってキャプチャされた力)及びローラーの位置(例えば、線形変換器によってキャプチャされた位置)を表し得る。したがって、突起がローラーに接触しているとき、及び突起がローラーに接触していないときにコイルによって加えられた力、ならびにローラー及びコイルの互いに対する位置を表すデータを連続的にキャプチャし得る。例えば、力ロードセンサー及び線形変換器は、コイリングプロセスの第1のラップ(例えば、2つのラップ、3つのラップ、または4つのラップ等)の間にそのようなデータを収集し得る。ローラー及びコイルに関連付けられた力及び位置のデータがキャプチャされると、デバイスはこのデータを信号に変換し、それらをフィードバック制御ループの残りの部分に伝送し得る。例えば、線形変換器は、位置データをキャプチャし、それを位置信号742に変換し得、次に、線形変換器は、信号をフィードバック制御ループの位置部分に伝送し得る。また、力ロードセンサーは、力データをキャプチャし、それを力信号741に変換し得、力ロードセンサーは、次に、フィードバック制御ループの力部分に伝送し得る。また、回路は処理された位置信号(図7の「KP」)と力信号(図7の「KF」)との間で選び、その信号をサーボバルブに伝送し得るオークション回路744を含み得る。いくつかの実施形態では、サーボバルブ/油圧シリンダーアクチュエータは、アクチュエータによって加えられた力またはアクチュエータの位置のいずれかを制御し得る。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、両方を同時に制御できない場合がある。オークション回路744は、アクチュエータが、オークション回路の構成に応じて力コントローラーまたは位置コントローラーのいずれかの必要性を満たすことが可能になり得る。いくつかの実施形態では、オークション回路744は、2つのアクチュエータ基準のうちの最小のものを選択する。例えば、アイロニングローラーアセンブリがアイロニングローラーをコイルに接触させるように移動させるとき、アクチュエータの位置基準はストロークの50%に設定される一方、力基準は1000ニュートンに設定される。ローラーがコイルと接触していないため、力コントローラーの出力は、最大圧力を要求することによってシリンダーを伸ばそうとする。位置コントローラーは、接触ストロークでシリンダーを保持するために必要な圧力が少なくて済む。オークション回路744は、位置及び力の2つのうち小さい方を選ぶ。アイロニングローラーがコイルに接触するとき、位置基準は100%ストロークに切り替えられることによって、いくつかの実施形態では、100%の圧力を必要とする。力コントローラーは25%だけの圧力を必要して、回路によって選択され得る。
【0037】
コイル及びローラーに関連付けられた位置及び力のデータは、継続的にキャプチャ及び監視され、その後、回路にフィードバックされ得る。言い換えれば、コイルが回転するとき、プロセスは継続し、エンコーダパルスがモデルの更新を発生させる。サーボバルブ/シリンダーアクチュエータは、2つの異なるコントローラー(つまり、位置コントローラー及び力コントローラー)によって制御される。オークション回路744では、KPは位置コントローラーを表し、KFは力コントローラーを表す。いくつかの実施形態では、一方だけが、その要求(例えば、出力)に応じて、任意の所与の時点でアクチュエータを制御する。それはフィードバックループであるため、力コントローラーには隆起の外乱を補正する能力がない場合がある。
【0038】
説明したようにデータを収集して相関させるプロセスは継続的に行われるが、そのプロセスは、ラップごとに行われ得る(例えば、回転の過程にわたって力及び角度位置のデータを収集し、何かを行い、その後、それを繰り返す)。
【0039】
様々な回路コンポーネントが油圧シリンダーシステムの一部とラインで接続されるように図7に示されているが、回路及び/または油圧シリンダーシステムの一部は、コイル、ローラー、油圧シリンダー、線形変換器、サーボバルブ等から離れて位置し得る。例えば、プロセッサーをコイルシステムから離れて位置し、例えば、線形変換器734から受信したデータまたは信号を処理し得る。線形変換器734は、コイリングシステムから(例えば、油圧シリンダーから)データまたは信号を以前にキャプチャしていた場合がある。
【0040】
制御システム700は、図6に説明した油圧シリンダーシステムのコンポーネントに加えて、リールエンコーダ746を含み得る。リールエンコーダ744は、コイル701の周波数を決定するように構成され得、これは、力予測回路750に関して下記に説明されるように使用され得る。制御方針の目標は、一連の力基準を生成することである。これらの力基準を合計すると、極性が反対で、振幅が隆起の外乱と等しいまたは実質的に等しいアクチュエータ力が生成される。いくつかの実施形態では、コントローラーは、アイロニングローラーによってコイルの表面に加えられた力を、コイルの角度位置と相関させる。次に、エンコーダは、コイルの角度位置に対応する信号を生成し得る。また、制御システム700はカウンタ752を含み得る。カウンタ752は、例えば、1回転あたり120パルスに設定され得、ひいては、ゼロから119まで繰り返しカウントし得る。下記により詳細に説明されるように、カウンタ752は、コイルの位置を、力予測回路750からの正弦波成分及び余弦波成分と相関させ得る。言い換えれば、カウンタ752は、コイルのどの部分が表されているかを示し得る。例えば、実施形態では、エンコーダが1回転あたり120パルスの速度でパルスの連続列を生成すると仮定する。カウンタがエンコーダから120パルスを蓄積するたびに、カウンタはゼロにリセットされる。次に、カウンタの各カウントは3度の回転を表す。カウンタ出力は、正弦波及び余弦波の周波数がコイルの回転周波数と一致するように、正弦波及び共正弦波の両方の発生器にフィードされる。カウンタがエンコーダパルスごとに2回カウントする場合、正弦信号及び余弦信号の周波数はコイルの周波数の2倍になる等である。測定された力とコイルの角度位置との相関は、各エンコーダパルスがカウントされるときに発生する。エンコーダ/カウンタの組み合わせは、コイルの角度位置に対応する信号を生成する任意のデバイスまたはデバイスの組み合わせに置き換えられ得る。
【0041】
上述のように、制御システム700は、また、1つ以上の力予測回路750を含み得、力予測回路750のそれぞれは、カウンタ752、正弦関数エンジン754、余弦関数エンジン756、及び最小平均二乗(LMS)アルゴリズム758を含み得る。力予測回路750からの正弦波(複数可)によって表される、コイルの突起によって生じるコイルの力に対抗するために使用できるローラーの減少した力をモデル化するために、各高調波における正弦波(複数可)の周波数、振幅、及び位相シフトを決定し得る。リールエンコーダ744を使用して、周波数を測定及び決定し得る。力予測回路750のそれぞれについて、振幅及び位相シフトを決定するために、相関制御方式(例えば、LMSアルゴリズム758)を使用し得る。LMSアルゴリズム758を使用して、負荷変換器からの力フィードバックは、正弦波754及び余弦波756に相関され得る。加算器760において、正弦波754及び余弦波756の出力が加算され得、加算器の出力は、コイルの突起によって生じるコイルの力を表す周波数、振幅、及び位相シフトを伴う力を表す信号を含む。
【0042】
例示的な力予測回路750は、例えば、これらの例示的なコンポーネントを備えた自己調整バンドパスフィルターであり得る。図7の制御システム700は、1つだけの力予測回路750を含むように示されているであるが、下記にさらに説明されるように、制御システム700は、他の任意の数の力予測回路750を含み得る。
【0043】
本明細書に説明されるように、油圧シリンダーは、ローラーに減少した力を生成させるように構成され得、減少した力は、コイルの突起によって生じる、コイルによって発生する力と極性が反対であり、コイリングプロセス全体を通して、ローラーとコイルとの間で力の組み合わせを均一に維持するのに十分である。制御システム700は、圧延力を生成するために使用するために(例えば、サーボバルブを介して)油圧シリンダーに関する正確に計算された反対の力を表す信号を生成するように構成され得る。言い換えれば、このアクティブシステムは、正確な量だけ、コイルに対して半径方向にアイロニングローラーを移動させるのに必要なエネルギーを提供し得る。ローラーが有する必要がある力を決定するために、突起の力を決定し、モデル化し得る。コイルの突起は、1つ以上の高調波(すなわち、正弦波の成分周波数)としてモデル化され得る。各成分周波数は、コイルがスピン/回転する周波数/角速度を表し得る。所与のモデリングに必要な周波数、ひいては力予測回路は、状況に基づいて適応的に決定され得る。例えば、いくつかの実施形態では、サーボバルブ/シリンダーアクチュエータは周波数限界がある。限界が45ヘルツであることが分かったと仮定してみる。コイリング動作が開始すると、コイルの角周波数は最大になるが、コイルの直径が大きくなるにつれて、周波数は減少する。コイルの最大周波数が15ヘルツである場合、最初の3つの高調波フィルターだけを使用する。4番目を使用した場合、必要なアクチュエータ周波数は60ヘルツになる。コイルの速度が低下すると、周波数が50ヘルツを下回るため、追加の高調波を適用できる。5つの高調波のそれぞれは、図8に示されるように相互に接続され得る別個の力予測回路750によって表される(図8は、3つの異なる高調波を表す例示的な3つの力予測回路850を示す)。
【0044】
理想的には、突起の完全なモデルを実現するために、突起は、無限数の高調波を含むセットとしてモデル化され得る。しかしながら、モデルを2、3、4、5、6、またはそれ以上の高調波等の2つ以上の高調波のセットとして表す場合でも、突起の比較的正確なモデルを提供し得る(例えば、5つの高調波を使用してモデルを生成することは、理論的には、無限数の高調波を使用し得るモデルの約90%の精度を提供し得る)。例えば、5つの高調波を使用して、モデルを生成し得る。5つの高調波のうち、1つの高調波は基本周波数(例えば、N Hz)を表し、残りの4つの高調波は基本周波数の倍数(2×N Hz、3×N Hz、4×N Hz、5×N Hz等)になる。コイルの速度が頻繁に変化し得るため、基本周波数、ひいては、5つの周波数の全てが頻繁に変化し得る。使用される高調波は、常に、所与の時点におけるコイルの現在の速度を表す。本明細書に説明されるアルゴリズムは時間ベースではなくイベントベースであるため(例えば、エンコーダからのパルスにより、実際のコード実行が発生する)、ミル速度の変化がパフォーマンスに影響を与えない場合がある。
【0045】
フィードバック制御システムは、本質的に、位相遅延を含み得る。コントローラーの出力がコイルの角度位置と同期しない場合があるため、フィードフォワード制御コンポーネントが必要である。例えば、いくつかの実施形態では、制御信号はモデル対フィードバックに基づいている一方、モデル自体はフィードバックに基づいている。本明細書に説明されるように、本システムはフィードバックに依存してモデルを調整するが、本システムは、コイルの半径の変化を予想してアイロニング圧延力の基準を生成し得る。
【0046】
図9は、本技術の実施形態による、例示的なプロセスの例示的なフロー図である。ステップ902は、例えば、コイリング装置を使用するコイル形成動作によって、コイルの第1のラップ及びコイルの第2のラップを含むコイルの一部分を金属ストリップから形成することを含み得、コイルの第2のラップは突起を含む。突起または隆起は、コイルの第1のラップの前縁と、前縁と重なるコイルの第2のラップとによって生じ得る。突起は、第1のラップの前縁がゼロ以外の高さ/厚さを有するという事実によって生じ得る。
【0047】
ステップ904は、例えば、金属ストリップがコイルに圧延される間、コイル形成動作中に第1のセンサーによって、コイルに関連付けられた第1のコイルデータをキャプチャすることを含み得、第1のコイルデータは、ローラーが突起に接触するとき、ローラーに加えられたコイルからの半径方向力に対応するデータを含む。第1のセンサーは、コイルの力を検出し、そのデータを信号に転送するように構成された力ロードセルまたは他のデバイスを含み得る。第1のコイルデータは、例えば、突起、及び突起に接触するローラーによって生じるコイル力に対応するデータを含み得る。ステップ906は、金属ストリップがコイルに圧延される間、コイル形成動作中に第2のセンサーによって、コイルに関連付けられた第2のコイルデータをキャプチャすることを含み得、第2のコイルデータは、ローラーがコイルに接触するとき、コイルの位置に対応するデータを含む。第2のセンサーは、コイルの位置を検出し、そのデータを信号に転送するように構成された線形変換器または他のデバイスを含み得る。第2のコイルデータは、コイル位置に対応するデータを含み得る。コイル位置は、特定の時間におけるコイルの位置に関する様々な特定のデータを含み得る。一例では、コイル位置データは、コイル形成動作中の特定の時間におけるローラーの下のコイル表面の直径(例えば、突起の高さ)を含み得る。
【0048】
ステップ908は、例えば、第1のコイルデータ、第2のコイルデータ、及び回路を使用して、ローラーの圧延力及び突起の位置に対応する信号を決定することを含み得る。回路は、1つ以上の自己調整バンドパスフィルターで構成され得る。各バンドパスフィルターは、コイル速度の異なる高調波に関連付けられ得、フィルターの組み合わせを組み合わせて使用して、コイリングプロセス全体を通して、ローラーとコイルとの間の力の組み合わせを均一に保つように、コイルの力と反対のローラーの力を表す信号を出力し得る。ステップ910は、例えば、ローラーに結合された油圧シリンダーに、信号を伝送することを含み得、信号が油圧シリンダーによって受信された後、油圧シリンダーはローラーに圧延力をかけさせ、圧延力はコイルの半径方向力と逆である。反対の力が決定された後、その反対の力を表す信号が油圧シリンダーによってローラーに加えられ、コイリングプロセス全体を通して実質的に一定力を実現させる。
【0049】
上述の態様は、実施態様の考えられる単なる例であり、単に、本開示の原理を明確に理解するために記述されている。本開示の主旨及び原理から実質的に逸脱することなく、上述の例(複数可)に多くの変形及び修正を加えることができる。そのような修正及び変形の全ては、本開示の範囲内で本明細書に含まれ、要素またはステップの個々の態様または組み合わせに対する考えられる全ての請求項は、本開示によって立証されることが意図される。さらに、特定の用語が本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるが、それらは一般的及び説明的な意味だけで使用されており、説明された発明、また以下の特許請求の範囲を制限する目的ではない。
【0050】
本発明を示す文脈中で(特に、以下の特許請求の範囲の文脈中で)の「a」及び「an」及び「the」という用語、ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を対象とすると解釈するべきである。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に記載がない限り、無制限型用語(すなわち、「限定ではないが、~を含む(including,but not limited to)」を意味する)と解釈するべきである。「接続される(connected)」という用語は、介在するものがある場合でも、部分的にまたは全体的に、内部に含有される、取り付けられる、一緒に接合されると解釈するべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、単に、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個々に指す簡潔な方法としての役割を果たすことが意図され、それぞれの別個の値は、本明細書に個々に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に説明される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行われ得る。本明細書に提供される、任意の及び全ての例、または例を示す表現(例えば、「等」)の使用は、単に、本発明の実施形態をより良好に明らかにすることを意図し、別段の主張がない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる表現も、非請求要素を本発明の実践に必須であるとして示すと解釈するべきではない。
【0051】
本明細書に説明される概念に従って様々な例のタイプの追加の説明を提供する「EC」(実施例の組み合わせ)として明示的に列挙された少なくとも一部を含む例示的な例の集合を下記に提供する。これらの例は、相互に排他的、網羅的、または限定的であることを意図しておらず、本発明は、これらの例示的な例に制限されるのではなく、むしろ発行された特許請求の範囲及びその均等物の範囲内の考えられる全ての修正及び変形を包含する。
【0052】
EC1.方法であって、コイリング装置を使用するコイル形成動作によって、コイルの第1のラップ及びコイルの第2のラップを含むコイルの一部分を金属ストリップから形成することであって、コイルの前記第2のラップは突起を含む、前記形成することと、前記金属ストリップが前記コイルに圧延される間、前記コイル形成動作中に第1のセンサーによって、前記コイルに関連付けられた第1のコイルデータをキャプチャすることであって、前記第1のコイルデータは、ローラーが前記突起に接触するとき、前記ローラーに加えられた前記コイルからの半径方向力に対応するデータを含む、前記キャプチャすることと、前記金属ストリップが前記コイルに圧延される間、前記コイル形成動作中に第2のセンサーによって、前記コイルに関連付けられた第2のコイルデータをキャプチャすることであって、前記第2のコイルデータは、前記ローラーが前記コイルに接触するとき、前記コイルの位置に対応するデータを含む、前記キャプチャすることと、前記第1のコイルデータ、前記第2のコイルデータ、及び回路を使用して、前記ローラーの圧延力及び前記突起の位置に対応する信号を決定することと、前記ローラーに結合された油圧シリンダーに、前記信号を伝送することであって、前記信号が前記油圧シリンダーによって受信された後、前記油圧シリンダーは前記ローラーに前記圧延力をかけさせ、前記圧延力は前記コイルの前記半径方向力と逆である、前記伝送することと、を含む、前記方法。
【0053】
EC2.前記ローラーに前記圧延力をかけさせる前記油圧シリンダーは、前記ローラーがかけた前記力を低減することを含む、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0054】
EC3.前記コイルに電気的に接続されたリールエンコーダを使用して、一定期間にわたる前記コイルの周波数に対応するデータを決定することをさらに含む、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0055】
EC4.前記回路は自己調整バンドパスフィルターのセットを含む、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0056】
EC5.前記自己調整バンドパスフィルターのセットの各フィルターは、前記コイルの角速度の高調波に関連付けられる、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0057】
EC6.前記コイルの前記第2のラップの前記突起は、コイルの前記第1のラップの前縁によって少なくとも部分的に形成される、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0058】
EC7.前記第2のコイルデータは、前記ローラーが前記突起に接触したときの前記コイルの位置に対応するデータを含む、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0059】
EC8.前記第1のセンサーは、前記ローラーに電気的に接続された力ロードセルである、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0060】
EC9.前記第2のセンサーは、前記油圧シリンダーに電気的に接続された線形変換器である、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0061】
EC10.前記ローラーはアイロニングローラーである、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載の方法。
【0062】
EC11.コイルの表面に接触するように構成されたローラーであって、前記コイルは、コイリング装置を使用するコイル形成動作によって形成される、前記ローラーと、一方向に前記コイルによって送達された第1の力に対応する第1のデータをキャプチャするように構成された力ロードセルと、前記コイルの位置に対応する第2のデータをキャプチャするように構成された線形変換器と、前記第1のデータ及び前記第2のデータを使用して、前記第1の力に対抗するために第2の力に関連付けられた信号を決定するように構成された回路と、前記信号を前記回路から受信し、前記第1の方向とは反対の第2の方向で前記第2の力を前記ローラーに送達するように構成された油圧シリンダーと、を含む、システム。
【0063】
EC12.前記ローラーに前記圧延力をかけさせる前記油圧シリンダーは、前記ローラーがかけた前記力を低減することを含む、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0064】
EC13.前記コイルに電気的に接続されたリールエンコーダをさらに含み、前記リールエンコーダは、一定期間にわたる前記コイルの周波数に対応するデータを生成するように構成される、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0065】
EC14.前記回路は自己調整バンドパスフィルターのセットを含む、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0066】
EC15.前記自己調整バンドパスフィルターのセットの各フィルターは、前記コイルの角速度の高調波に関連付けられる、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0067】
EC16.前記コイルの一部分は、金属ストリップからのコイルの第1のラップ及びコイルの第2のラップを含み、コイルの前記第2のラップは突起を含み、前記コイルの前記第2のラップの前記突起は、コイルの前記第1のラップの前縁によって少なくとも部分的に形成される、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0068】
EC17.前記第2のコイルデータは、前記ローラーが前記突起に接触したときの前記コイルの位置に対応するデータを含む、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0069】
EC18.前記力ロードセルは前記ローラーに電気的に接続される、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0070】
EC19.前記線形変換器は前記油圧シリンダーに電気的に接続される、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0071】
EC20.前記ローラーはアイロニングローラーであることをさらに含む、先行または後続の実施例の組み合わせのいずれかに記載のシステム。
【0072】
本発明を実施するために発明者らに知られている最良の形態を含む本発明の好ましい実施形態が本明細書に説明される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読む際に、当業者に明らかになり得る。発明者らは、必要に応じて、当業者がそのような変形を使用することを予期し、発明者らにより、本発明は、本明細書に具体的に説明されるのとは別の方法で実践することが意図される。したがって、本発明は、適用法によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲で列挙される主題の全ての修正及び等価物を含む。さらに、それらの考えられる全ての変形における、上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包括される。
【0073】
本明細書で引用される出願公開、特許出願、特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照によって個々に及び具体的に組み込まれるものと示され、全体として本明細書で記載されているのと同じ程度に参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図6
図7
図8
図9