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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20240105BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B60W30/095
G08G1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022544476
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2021030029
(87)【国際公開番号】W WO2022044885
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2020141756
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】森多 花梨
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翔
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 由美
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064336(JP,A)
【文献】特開2020-100362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の周囲に存在する物体の検出情報に基づいて、前記自車と前記物体との衝突を回避するための走行支援を実行する走行支援装置(10)であって、
前記検出情報に基づいて、前記自車との衝突を回避すべき1次対象となる物体を判定する1次対象判定部(12)と、
前記検出情報に基づいて、前記1次対象との衝突を回避するための前記自車の操舵回避の経路を含むように、自車との衝突を回避すべき2次対象となる物体を判定する2次判定領域を設定する2次判定領域設定部(14)と、
前記検出情報に基づいて、前記2次判定領域において前記2次対象となる物体を判定する2次対象判定部(15)と、
前記自車の操舵支援を実行する操舵支援部(16)と、を備え、
前記2次判定領域設定部は、前記自車の走行車線である自車線内であり、かつ当該自車線が延びる方向において前記1次対象と前記自車との間の全領域を含むように、前記2次判定領域を設定し、
前記操舵支援部は、前記1次対象判定部により前記1次対象が存在すると判定され、かつ、前記2次対象判定部により前記2次対象が存在すると判定された場合に、前記自車の操舵回避を抑制する走行支援装置。
【請求項2】
前記2次判定領域設定部は、前記検出情報として取得した前記2次対象の種別、速度、大きさ、または位置に基づいて、前記2次判定領域を変更する請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記2次対象判定部は、前記検出情報に基づいて、前記2次対象が存在する存在領域を設定し、
前記存在領域が前記2次判定領域内に存在する場合に、前記2次対象が存在すると判定する請求項1または2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記2次対象判定部は、前記検出情報として取得した前記2次対象の種別、速度、大きさ、または位置に基づいて、前記存在領域を変更する請求項3に記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記2次対象判定部は、前記2次対象の種別が前記自車の進行方向に対向する方向に走行する車両である対向車の場合には、前記2次対象の種別が前記自車の進行方向と同方向に走行する車両である場合に比べ、前記存在領域を大きく設定する請求項4に記載の走行支援装置。
【請求項6】
自車の周囲に存在する物体の検出情報に基づいて、前記自車と前記物体との衝突を回避するための走行支援を実行する走行支援装置(10)であって、
前記検出情報に基づいて、前記自車との衝突を回避すべき1次対象となる物体を判定する1次対象判定部(12)と、
前記1次対象との衝突を前記自車の走行車線である自車線内で操舵制御により回避すると判断する場合において、前記検出情報に基づいて、操舵方向先に存在する対向車線を走行する対向車を検出した場合には、前記自車の操舵回避を抑制する操舵支援部(16)とを備える走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年8月25日に出願された日本出願番号2020-141756号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
自車の周囲の物体が、自車に対して衝突する可能性があると判定された場合に、自車の衝突回避制御を実行する走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0003】
自車の周囲の物体が、自車に対して衝突する可能性があると判定された場合に、自車を制動または操舵する等の衝突回避制御を実行する走行支援装置が知られている。特許文献1では、前方に検出された物体と自車とが衝突する可能性が高い場合に自動制動により自車を制動し、制動によっても衝突する可能性が高い場合には、さらに、自車を自動操舵する。自動操舵を実行するか否かについては、検出された物体と自車とが衝突する衝突予測位置における衝突予測速度が所定の閾値との比較に基づいて、判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-43262号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1では、自車の周囲の物体のうち、自車との衝突可能性が高い物体である1次対象との衝突を回避することのみを考慮して、自動制動や自動操舵を行う。しかしながら、1次対象との衝突を回避するため自動操舵を実行すると、自動操舵による回避経路に存在する、1次対象とは異なる他の物体との衝突可能性が高まることがある。
【0006】
上記に鑑み、本開示は、自動操舵により1次対象との衝突を回避した結果、その回避経路に存在する1次対象とは異なる他の物体との衝突可能性が高まることを抑制する技術を提供することを目的とする。
【0007】
本開示は、自車の周囲に存在する物体の検出情報に基づいて、前記自車と前記物体との衝突を回避するための走行支援を実行する走行支援装置を提供する。この走行支援装置は、前記検出情報に基づいて、前記自車との衝突を回避すべき1次対象となる物体を判定する1次対象判定部と、前記検出情報に基づいて、前記1次対象との衝突を回避するための前記自車の操舵回避の経路において、自車との衝突を回避すべき2次対象となる物体を判定する2次判定領域を設定する2次判定領域設定部と、前記検出情報に基づいて、前記2次判定領域において前記2次対象となる物体を判定する2次対象判定部と、前記自車と前記物体との衝突を回避するために前記自車の操舵支援を実行する操舵支援部と、を備える。前記操舵支援部は、前記1次対象判定部により前記1次対象が存在すると判定され、かつ、前記2次対象判定部により前記2次対象が存在すると判定された場合に、前記自車の操舵回避を抑制する。
【0008】
本開示によれば、1次対象判定部により、自車との衝突を回避すべき1次対象が判定された場合に、2次判定領域設定部により、1次対象との衝突を回避するために自車の操舵回避の経路において自車との衝突を回避すべき2次対象を判定するための2次判定領域が設定される。そして、2次対象判定部により、2次判定領域内において2次対象の判定が実行される。操舵支援部は、1次対象判定部により1次対象が存在すると判定された場合であっても、2次対象判定部により2次対象が存在すると判定された場合には、1次対象との衝突を回避するための自車の操舵回避を抑制する。このため、操舵支援部の自動操舵により1次対象との衝突を回避した結果、その回避経路に存在する1次対象とは異なる他の物体との衝突可能性が高まることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、第1実施形態に係る走行支援装置を含む走行支援システムを示す図であり、
図2図2は、1次対象について説明する図であり、
図3図3は、1次対象との衝突を回避するための自車の操舵回避の経路を示す図であり、
図4図4は、2次判定領域について説明する図であり、
図5図5は、2次判定領域内に2次対象が存在する状態を示す図であり、
図6図6は、実施形態に係る走行支援制御のフローチャートであり、
図7図7は、操舵回避の経路Rの設定について説明する図であり、
図8図8は、2次判定領域の設定について説明する図であり、
図9図9は、2次判定領域内における2次対象の判定について説明する図であり、
図10図10は、2次判定領域内における2次対象の判定について説明する図であり、
図11図11は、変形例に係る2次対象が先行車である場合の2次判定領域およびマージンについて説明する図であり、
図12図12は、変形例に係る2次対象が対向車である場合の2次判定領域およびマージンについて説明する図であり、
図13図13は、変形例に係る2次対象が歩行者である場合の2次判定領域およびマージンについて説明する図であり、
図14図14は、変形例に係る2次対象が静止物である場合の2次判定領域およびマージンについて説明する図であり、
図15図15は、変形例に係る2次対象と2次判定領域との位置関係について説明する図であり、
図16図16は、変形例に係る2次判定領域の設定について説明する図である。
図17図17は、変形例に係る2次判定領域の設定について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態に係る走行支援システムを示す。走行支援システムは、車両に搭載されており、ECU10と、物体検出装置20と、走行状態センサ30と、被制御装置40とを備えている。
【0011】
物体検出装置20は、カメラセンサ21と、レーダセンサ22とを含んでいる。カメラセンサ21およびレーダセンサ22は、自車の周囲の物体を検出する物体検出センサの一例である。物体検出センサとしては、上記の他に、超音波センサ、LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等の探査波を送信するセンサを備えていてもよい。
【0012】
カメラセンサ21は、例えばCCDカメラ、CMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等の単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。カメラセンサ21は、自車に1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。カメラセンサ21は、例えば、車両の車幅方向中央の所定高さに取り付けられており、車両前方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を俯瞰視点から撮像する。カメラセンサ21は、撮像した画像における、物体の存在を示す特徴点を抽出する。具体的には、撮像した画像の輝度情報に基づきエッジ点を抽出し、抽出したエッジ点に対してハフ変換を行う。ハフ変換では、例えば、エッジ点が複数個連続して並ぶ直線上の点や、直線どうしが直交する点が特徴点として抽出される。カメラセンサ21は、逐次撮像する撮像画像をセンシング情報としてECU10へ逐次出力する。
【0013】
レーダセンサ22は、例えば、ミリ波帯の高周波信号を送信波とする公知のミリ波レーダである。レーダセンサ22は、自車に1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。レーダセンサ22は、例えば、自車の前端部に設けられ、所定の検出角に入る領域を物体検出可能な検出範囲とし、検出範囲内の物体の位置を検出する。具体的には、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。この探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体との距離を算出することができる。また、物体に反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、相対速度を算出する。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位を算出することができる。なお、物体の位置および方位が算出できれば、その物体の、自車に対する相対位置を特定することができる。
【0014】
レーダセンサ22等のミリ波レーダ、ソナー、LIDAR等の探査波を送信するセンサは、障害物によって反射された反射波を受信した場合に得られる受信信号に基づく走査結果をセンシング情報としてECU10へ逐次出力する。
【0015】
走行状態センサ30は、車速センサ31と、ステアセンサ32と、ヨーレートセンサ33と、ブレーキセンサ34と、アクセルセンサ35とを備えている。走行状態センサ30は、車両に搭載され、自車の走行状態を示す各種パラメータである走行情報(例えば、車速、ヨーレート、操舵角等)を検出可能なセンサ類である。ECU310は、走行状態センサ30の検出値を取得する。
【0016】
車速センサ31は、自車の車輪に動力を伝達する回転軸に設けられており、その回転軸の回転数に基づいて、自車の速度を求める。ステアセンサ32は、ステアリングに設けられており、運転者による操舵操作の方向、およびその操作量を検出する。ヨーレートセンサ33は、自車の操舵量の変化速度に応じたヨーレート信号をECU10に出力する。
【0017】
ブレーキセンサ34は、ブレーキペダルに設けられており、運転者によるブレーキペダルの操作の有無、およびその操作量を検出する。アクセルセンサ35は、アクセルペダルに設けられており、運転者によるアクセルペダルの操作の有無、およびその操作量を検出する。
【0018】
被制御装置40は、警報装置41と、ブレーキ装置42と、操舵装置43とを備えている。警報装置41、ブレーキ装置42、および操舵装置43は、ECU10からの制御指令により駆動する。
【0019】
警報装置41は、例えば自車の車室内に設置されたスピーカやディスプレイである。警報装置41は、ECU10からの制御指令に基づき警報音や警報メッセージ等を出力することにより、運転者に対し、物体との衝突の危険が及んでいることを報知する。
【0020】
ブレーキ装置42は、自車を制動する制動装置である。本実施形態においてECU10は、物体との衝突回避又は衝突被害の軽減のためのブレーキ機能として、運転者のブレーキ操作による制動力を増強して補助するブレーキアシスト機能、及び運転者のブレーキ操作がない場合に自動制動を行う自動ブレーキ機能を有している。ブレーキ装置42は、ECU10からの制御指令に基づき、これらの機能によるブレーキ制御を実施する。
【0021】
操舵装置43は、自車両を操舵するための装置であり、運転者の操舵操作またはECU10からの指令によって制御される。ECU10は、衝突回避または車線変更のために、操舵装置43を自動で制御する機能を有している。
【0022】
被制御装置40は、上記以外のECU10により制御される装置を含んでいてもよい。例えば、運転者の安全を確保するための安全装置等が含まれていてもよい。安全装置としては、具体的には、自車両の各座席に設けられたシートベルトを引き込むプリテンショナ機構を備えたシートベルト装置等を例示できる。
【0023】
ECU10は、物体認識部11と、1次対象判定部12と、1次回避判定部13と、2次判定領域設定部14と、2次対象判定部15と、操舵支援部16と、制動支援部17と、報知部18とを備えている。ECU10は、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えた、CPUが、ROMにインストールされているプログラムを実行することでこれら各機能を実現する。これによって、ECU10は、物体検出装置20および走行状態センサ30から取得した情報に基づいて、被制御装置40に制御指令を作成し、出力することにより、自車の走行支援を実行する走行支援装置として機能する。
【0024】
物体認識部11は、カメラセンサ21およびレーダセンサ22から物体の検出情報を取得し、カメラセンサ21から得られる特徴点と、レーダセンサ22から得られる物体の位置情報とを用いて、その位置に物体が存在していることを認識する。また、物体認識部11は、物体ごとに、自車に対する相対位置及び相対速度を対応付け、対応付けた相対位置と相対速度とに基づいて、自車の進行方向に直交する方向についての相対速度である横速度と、自車の進行方向についての相対速度である縦速度とを算出する。物体認識部11は、自車の周囲の所定の領域に設定された判定領域内に検出された物体を、衝突回避の対象となる対象物体として認識するように構成されていてもよい。また、物体認識部11は、路上構造物や白線の位置や大きさなどについても認識可能に構成されている。
【0025】
1次対象判定部12は、物体認識部11が取得した複数の検出情報の中から、自車との衝突を回避すべき1次対象となる物体を判定する。具体的には、物体認識部11は、自車の進行方向前方に存在する物体を1又は複数検出しており、検出された物体の中から、(1)物体の存在確率が高く、(2)自車進路内に存在する物体であり、且つ、(3)自車と物体とが衝突するまでの時間である衝突予測時間(TTC:Time to Collision)が最小である、との条件により、自車との衝突を回避すべき1次対象となる物体を特定する。ここで、自車進路内に存在する物体は、既知の技術を使い、例えば、自車線確率が高いこと、或いは、物体の横位置、に基づいて特定するとよい。これにより、例えば、進行方向において、自車の経路上に、自車に近い側にいる物体Aと、自車に遠い側にいる物体Bとが存在する場合においても、物体Bの方が物体Aに比べて衝突予測時間が小さいときには、物体Bが、1次対象となる物体として特定される。1次対象は、現在の自車の走行経路において衝突回避の対象となる対象物体である。対象物体の種別としては、例えば、車両、自転車、歩行者、ロードコーン等の静止物または移動体である。
【0026】
例えば、図2に示すように、y方向に直行する左白線WLと右白線WRとの間の走行車線を自車50がy軸の正方向に走行する場合に、自車50の前方(y軸の正方向)となる位置に存在する歩行者(T1)は、自車50が現在の走行経路を変更することなく直進すると、自車50と衝突する。この歩行者は、1次対象T1として認識され、1次対象判定部12は、1次対象T1が存在すると判定する。
【0027】
1次回避判定部13は、1次対象との衝突回避、もしくは衝突被害の軽減に関する制御の実行について判定する。具体的には、自車と1次対象との相対距離に基づいて、自車と1次対象とが衝突するまでの時間である衝突予測時間を算出する。そして、衝突予測時間と作動タイミングとの比較から、衝突を回避するために警報装置41、ブレーキ装置42、操舵装置43等の被制御装置40を作動させるか否かを判定する。なお、作動タイミングとは、警報装置41、ブレーキ装置42、操舵装置43を作動させたいタイミングであり、作動させる対象によってそれぞれ設定されていてもよい。
【0028】
図3に示すように、1次回避判定部13は、1次対象判定部12により1次対象T1が存在すると判定された場合に、1次対象T1との衝突回避の実行に先立って、1次対象T1との衝突を回避するための自車50の操舵回避の経路Rを設定する。操舵回避の経路Rは、自車50が左方向に操舵回避を実行した場合の将来の走行経路である。なお、操舵回避の経路Rは、左白線WLと右白線WRとの間の走行車線内において設定される。
【0029】
2次判定領域設定部14は、1次回避判定部13によって設定された操舵回避の経路において、自車との衝突を回避すべき2次対象となる物体を判定する2次判定領域を設定する。2次対象は、自車が操舵回避を実行した場合の将来の走行経路(操舵回避の経路)において衝突回避の対象となる対象物体である。
【0030】
図4に示すように、2次判定領域設定部14は、操舵回避の経路Rの周囲に2次判定領域A1を設定する。2次判定領域A1は、その領域内に操舵回避の経路Rの全体を含むように設定され、操舵回避の経路Rよりも広い領域に設定されていてもよい。図4に示すように、自車50と先行車51との間に1次対象T1が存在し、操舵回避の経路Rが左方向に操舵する経路である場合には、2次判定領域A1は、左白線WLと右白線WRとを両端とする走行車線内の1次対象T1と自車50との間の全領域と、1次対象T1と左白線WLとの間の領域とを含む略L字形状の領域となる。
【0031】
1次対象T1は、前述したように、物体の存在確率が高いものを選択するようにしているため、物体の存在確率が低いような場合には、1次対象T1から除外される可能性がある。このため、自車50と1次対象T1との間にも2次判定領域A1を設定することで、1次対象T1から除外された物体が、自車50と1次対象T1との間に存在していたとしても、その物体を制御の実行可否を判断するための対象とすることができる。
【0032】
2次対象判定部15は、物体認識部11が取得した検出情報に基づいて、2次判定領域において2次対象となる物体を判定する。より具体的には、物体認識部11が取得した検出情報に基づいて、自車との衝突を回避すべき2次対象となる物体が、2次判定領域内に存在しているか否かを判定する。例えば、図5に示すように、2次判定領域A1内に存在する歩行者(T2)は、自車50が操舵回避の経路Rを進行すると、自車50と衝突する。この歩行者は、2次対象T2として認識され、2次対象判定部15は、2次対象T2が存在すると判定する。
【0033】
2次対象判定部15は、検出情報に基づいて、2次対象が存在する存在領域を設定するように構成されていてもよい。例えば、2次対象の周囲にマージンを設定して、そのマージンを含むような存在領域を設定してもよい。さらには、2次対象判定部15は、存在領域が2次判定領域内に存在する場合に、2次対象が存在すると判定するように構成されていてもよい。2次対象の周囲にマージンを設定して、そのマージンを含むように設定した存在領域が2次判定領域内に存在するか否かを判定することにより、2次対象の種別や検出精度に関わらず、2次対象と自車との衝突をより確実に回避できる。
【0034】
操舵支援部16は、1次回避判定部13により、1次対象との衝突回避のために操舵装置43を作動させることが判定された場合に、操舵装置43に対する制御指令を作成し、出力する。1次対象判定部12により1次対象が存在すると判定され、1次回避判定部13により、1次対象との衝突回避のために操舵装置43を作動させることが判定された場合には、操舵支援部16は、2次対象判定部15により2次対象が存在しないと判定されたことを条件として、操舵回避を実行する制御指令を作成し、操舵装置43に出力する。
【0035】
すなわち、操舵支援部16は、図2に示すように、1次対象判定部12により1次対象T1が存在すると判定され、1次回避判定部13により、1次対象T1との衝突回避のために操舵装置43を作動させることが判定された場合であっても、図5に示すように、2次対象判定部15により2次対象T2が存在すると判定された場合には、自車50について操舵回避を実行する制御指令の作成を抑制する。なお、「制御指令の作成を抑制する」とは、制御指令を作成しないことであってもよいし、制御指令の作成を保留することであってもよい。また、制御指令の作成を保留した状態において、所定時間内に所定の条件を満たすか否かの判定をさらに実行し、その判定結果に基づいて、制御指令を作成するか否かを判定するようにしてもよい。また、別の例としては、ほとんど操舵回避が実行されないように操舵制御を弱めるようにしてもよい。
【0036】
制動支援部17は、1次回避判定部13により、1次対象との衝突回避のためにブレーキ装置42を作動させることが判定された場合に、ブレーキ装置42を作動させる制御指令を作成し、ブレーキ装置42に出力する。
【0037】
報知部18は、1次回避判定部13により、1次対象との衝突を警告するために警報装置41を作動させることが判定された場合に、警報装置41を作動させる制御指令を作成し、警報装置41に出力する。
【0038】
ECU10が実行する走行支援制御について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。図6に示す処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0039】
まず、ステップS101では、カメラセンサ21およびレーダセンサ22による自車の周辺の物体の検出情報が取得され、ステップS102に進む。
【0040】
ステップS102では、ステップS101において取得された物体の検出情報に基づいて、物体認識を実行する。具体的には、自車と物体との距離、物体の横位置、自車に対する物体の相対速度などを算出する。その後、ステップS103に進む。
【0041】
ステップS103では、ステップS102において認識した物体のうちに、1次対象となる物体が存在するか否かを判定する。ステップS102において認識した物体のうち、現在の自車の走行経路において衝突回避の対象となる対象物体が存在する場合、その物体を1次対象として認定し、1次対象が存在すると判定して、ステップS104に進む。例えば、図2に示すような1次対象T1が存在する場合には、ステップS104に進む。ステップS102において認識した物体のうちに、現在の自車の走行経路において衝突回避の対象となる対象物体が存在しない場合、1次対象が存在しないと判定して、処理を終了する。
【0042】
ステップS104では、1次対象との衝突を回避するための自車の操舵回避の経路が存在するか否かを判定する。例えば、図3に示すような操舵回避の経路Rの設定が可能である場合には、操舵回避の経路が存在すると判定する。より具体的には、左白線WLと右白線WRとの間に、自車50が1次対象T1を回避して進行するのに十分な領域が存在する場合に、操舵回避の経路Rが存在すると判定する。例えば、図7に示すように、自車50が1次対象T1の位置y1の側方を通過する際に、1次対象T1と所定の横距離(x軸方向の距離)を確保できる場合に、経路Rが存在すると判定するようにしてもよい。より具体的には、図7において、経路Rは、その両端を経路左端RLと経路右端RWとする領域として設定できる。位置y1において、1次対象T1の左端の位置x1と、1次対象T1に近い側である経路右端RWの位置xRとの距離dxRを確保できる場合に、経路Rが存在すると判定する。なお、位置y1において、1次対象T1に遠い側である経路左端RLの位置xWLと、経路左端RLに近い側の白線である左白線WLの位置xWLとの距離を距離dxLとするとき、上記の距離dxRは、距離dxLと同程度に確保可能であることが好ましい。操舵回避の経路が存在すると判定した場合には、ステップS105に進む。操舵回避の経路が存在しないと判定した場合には、ステップS110に進む。ステップS110,S111は、操舵回避ではなく、制動や警報によって、1次対象と自車との衝突を回避または軽減するための処理である。
【0043】
ステップS105では、操舵回避の経路に基づいて、2次判定領域を設定する。例えば、図3に示す操舵回避の経路Rのように、自車50を左方向に操舵することにより1次対象T1を回避する場合には、図8に示すように、距離L1~L5を設定する。距離L1は、自車50と1次対象T1とのy軸方向の距離(縦距離)である。具体的には、例えば、自車50の前端の位置y0から1次対象T1の後端の位置y1までのy軸方向の距離を、距離L1として設定できる。距離L2は、1次対象T1から2次判定領域A1の奥行き方向の上限までの縦距離である。具体的には、例えば、1次対象T1の後端の位置y1から2次判定領域A1の奥行き方向の上限の位置y2までのy軸方向の距離を、距離L2として設定できる。距離L3は、左白線WLと右白線WRとのx軸方向の距離で(横距離)である。具体的には、例えば、左白線WLの位置xWLと右白線WRの位置xWRとのx軸方向の距離を距離L3として設定できる。なお、x軸はy軸と直交し、縦距離と横距離とは、互いに直交する方向の距離を示す。距離L4は、自車50の操舵方向である左方向に位置する白線(左白線WL)と1次対象T1との横距離である。具体的には、例えば、左白線WLの位置xWLと1次対象T1の左端の位置x1とのx軸方向の距離を、距離L4として設定できる。距離L5は、領域オフセットであり、自車50の操舵方向である左方向における1次対象T1と2次判定領域A1との横距離である。具体的には、例えば、1次対象T1の左端の位置x1と2次判定領域A1のy1よりも奥側の領域における右端の位置x2とのx軸方向の距離を、距離L5として設定できる。距離L1~L5は、ステップS102において算出した自車と1次対象との距離、1次対象の横位置、自車に対する1次対象の相対速度、白線の位置等に基づいて、設定できる。その後、ステップS106に進む。
【0044】
ステップS106では、ステップS105において設定した2次判定領域に、2次対象が存在するか否かを判定する。ステップS106では、図8に示すように、2次対象T2の横方向(x軸方向)の両側に、マージンS1,S2が設定される。マージンS1は、自車50の操舵方向である左方向マージンであり、マージンS2は、自車50の操舵方向と逆方向の右方向マージンである。2次対象T2が検出されている領域に加えて、マージンS1,S2を含めた領域が、2次対象T2の存在領域として認定される。そして、認定された2次対象T2の存在領域の一部または全部が、2次判定領域A1内に存在している場合に、2次判定領域に2次対象が存在すると判定する。
【0045】
図9に示すように、2次対象T2のマージンS1の右端が左白線WLよりも左側である場合には、マージンS1,S2も含めた2次対象T2の存在領域が、2次判定領域A1の内部には存在しないと判定される。その結果、ステップS106において否定判定されて、ステップS109に進み、操舵支援を実行する。具体的には、ステップS104において設定した操舵回避の経路に従って、操舵回避を実行する制御信号を操舵装置43に出力する。その後、処理を終了する。
【0046】
図10に示すように、2次対象T2のマージンS1の右端が左白線WLよりも右側である場合には、マージンS1,S2も含めた2次対象T2の存在領域が、2次判定領域A1の内部に存在すると判定される。その結果、ステップS106において肯定判定されて、ステップS107に進む。
【0047】
ステップS107,S108は、操舵回避ではなく、制動や警報によって、1次対象と自車との衝突を回避または軽減するための処理である。ステップS107では、1次対象に対して、自動制動や警報による報知を実行するか否かについて判定する。具体的には、衝突予測時間と作動タイミングとの比較から、衝突を回避するために警報装置41、ブレーキ装置42を作動させるか否かを判定する。ステップS107において、肯定判定された場合には、ステップS108において、警報装置41に対する警報指令やブレーキ装置42による自動制動指令を実行した後、処理を終了する。ステップS107において、否定判定された場合には、そのまま処理を終了する。なお、ステップS110,S111に示す処理は、ステップS107,S108に示す処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0048】
上記のとおり、第1実施形態によれば、ECU10は、ステップS103に示すように、自車との衝突を回避すべき1次対象が存在すると判定され、ステップS104に示すように、1次対象との衝突を回避するための操舵回避の経路が存在すると判定された場合に、S105に示すように、操舵回避の経路に基づいて2次判定領域を設定する。そして、ステップS106,S109に示すように、2次判定領域内において2次対象が存在しないと判定された場合には、操舵回避の経路に沿って操舵支援が実行される。また、ステップS106~S108に示すように、2次判定領域内において2次対象が存在すると判定された場合には、操舵支援が実行されず、自動制動や警報による衝突回避処理が実行される。第1実施形態によれば、ECU10は、1次対象が存在すると判定された場合であっても、2次対象が存在すると判定された場合には、1次対象との衝突を回避するための自車の操舵回避を実行しない。このため、自動操舵により1次対象との衝突を回避することにより、その回避経路に存在する1次対象とは異なる他の物体との衝突可能性が高まることを抑制することができる。また、操舵回避を実行しない場合には、自動操舵以外の手段により、1次対象との衝突を回避することができる。
【0049】
(変形例)
2次判定領域設定部14は、2次対象の種別、速度、大きさ、位置等に基づいて、2次判定領域の大きさや設置位置を変更するように構成されていてもよい。同様に、2次対象判定部15は、2次対象の種別、速度、大きさ、位置等に基づいて、2次対象のマージンを変更し、存在領域を変更するように構成されていてもよい。2次対象の種別、速度、大きさは、物体認識部11により、物体検出装置20からの検出情報として取得することができる。
【0050】
図11図14は、それぞれ、2次対象が先行車、対向車、歩行者、静止物である場合の2次判定領域およびマージンを示している。なお、対向車とは、自車の進行方向に対向する方向に走行する車両である。図12に示すように、2次対象T2が対向車である場合には、図11に示すように、2次対象T2が先行車である場合よりも、距離L2を長くし、マージンS1,S2を大きく設定するようにしてもよい。具体的には、例えば、図11に示す先行車の場合には、距離L2が10m、マージンS1,S2がそれぞれ1mであるのに対し、図12に示す対向車の場合には、距離L2が100m、マージンS1,S2がそれぞれ4.5mであるように設定してもよい。2次対象T2が対向車である場合には、2次対象T2が先行車である場合よりも、2次対象T2と自車50とが衝突する危険性が高い。このため、2次対象T2が対向車である場合には、2次対象T2が先行車である場合よりも、距離L2が大きい2次判定領域A2を設定する。また、マージンS1,S2を大きく設定することにより存在領域を大きく設定する。これにより、ステップS106において肯定判定され易くなり、2次対象T2と自車50との衝突をより確実に回避できる。
【0051】
また、図14に示すように、2次対象T2が、ロードコーン等の路上構造物であり、衝突回避の対象としての順位が低い物体である場合には、図13に示すように、2次対象T2が歩行者等の衝突回避の対象としての順位が高い物体である場合よりも、マージンS1,S2を大きく設定するようにしてもよい。具体的には、例えば、図13に示す歩行者の場合には、マージンS1,S2がそれぞれ1mであるのに対し、図14に示す対向車の場合には、マージンS1,S2がそれぞれ1.3mであるように設定してもよい。なお、図13,14における距離L2は、いずれも同じ10mに設定している。
【0052】
走行支援装置においては、物体種別により存在確率が設定され、存在確率が低い物体は物体の大きさが検出されない場合がある。例えば、歩行者のように存在確率が高いと設定された物体は、横幅(x軸方向の大きさ)等の物体の大きさについても検出される一方で、路上構造物のように存在確率が低いと設定された物体は、点として検出され、横幅等の物体の大きさについては検出されない場合がある。路上構造物のように存在確率の低い2次対象T2について横幅が検出されない場合であっても、歩行者のように存在確率が高い2次対象T2よりもマージンS1,S2を大きくすることにより、自車50との衝突をより確実に回避できる。
【0053】
また、図15に示すように、自車50の操舵回避の方向である左方向に存在する2次対象T2Lと、操舵回避と逆方向である右方向に存在する2次対象T2Rについて、マージンS1L,S2L,S1R,S2Rの大きさを変更してもよい。例えば、操舵回避の方向に存在する2次対象T2Lは、操舵回避と逆方向に存在する2次対象T2Rよりも自車50と衝突する危険性が高いため、マージンS1L,S2Lを、マージンS1R,S2Rよりも大きく設定してもよい。また、2次判定領域A1と逆側に設定されるマージンS2L,S2Rは、2次判定領域A1の側に設定されるマージンS1L,S1Rよりも小さく設定してもよいし、零に設定してもよい。
【0054】
また、図11図15において説明したマージンの大きさを変更することに替えて、図16に示すように、2次判定領域の横方向の大きさや位置を変更してもよい。2次判定領域A3は、2次対象T2に設定するマージンに相当する横方向長さMだけ左白線WLを超えた領域A3Lを含んでいる。例えば、横方向長さMを、図15に示すマージンS1Lと同じ値に設定すれば、2次対象T2についてマージンを設定しなくても、図15と同程度に2次対象の存在が判定され易くなる。
【0055】
2次判定領域設定部14は、領域オフセットL5の設定において、1次対象T1の種別に基づいて設定するように構成されていてもよいし、自車50の周囲の物体を検出する際の検出精度に基づいて設定するように構成されていてもよいし、1次対象T1が衝突予測時間TTC後に存在し得る領域に基づいて設定するように構成されていてもよい。例えば、物体の検出精度によっては、1つの1次対象T1について複数の物体が存在するような検出結果が得られる場合がある。このような場合に、1次対象T1からの横距離が領域オフセットL5よりも近い位置に検出された物体を、1次対象T1と同一物体として取り扱うことにより、物体の検出精度を補って、より適切に、2次判定領域を設定することができる。
【0056】
上記の各実施形態によれば、下記の効果を得ることができる。
【0057】
ECU10は、自車の周囲に存在する物体の検出情報に基づいて、自車と物体との衝突を回避するための走行支援を実行する走行支援装置として機能する。ECU10は、1次対象判定部12と、2次判定領域設定部14と、2次対象判定部15と、操舵支援部16とを備える。1次対象判定部12は、検出情報に基づいて、自車との衝突を回避すべき1次対象となる物体を判定する。2次判定領域設定部14は、検出情報に基づいて、1次対象との衝突を回避するための自車の操舵回避の経路において、自車との衝突を回避すべき2次対象となる物体を判定する2次判定領域を設定する。2次対象判定部15は、検出情報に基づいて、2次判定領域において2次対象となる物体を判定する。操舵支援部16は、自車の操舵支援を実行する機能を有する。そして操舵支援部16は、1次対象判定部12により1次対象が存在すると判定され、かつ、2次対象判定部15により2次対象が存在すると判定された場合に、自車の操舵回避を抑制する。すなわち、操舵支援部16は、1次対象判定部12により1次対象が存在すると判定された場合であっても、2次対象判定部15により2次対象が存在すると判定された場合には、1次対象との衝突を回避するための自車の操舵回避を抑制する。このため、操舵支援部16の自動操舵により1次対象との衝突を回避した結果、その回避経路に存在する1次対象とは異なる他の物体との衝突可能性が高まることを抑制することができる。
【0058】
2次判定領域設定部14は、検出情報として取得した2次対象の種別、速度、大きさ、または位置に基づいて、2次判定領域を変更するように構成されていてもよい。2次対象の種別、速度、大きさ、または位置により、2次対象と自車との衝突の危険性が変わることに対して、適切に2次判定領域の大きさや設置位置等を変更することができ、2次対象と自車との衝突可能性をより適切に判定して、適切な走行支援を実行できる。
【0059】
2次対象判定部15は、検出情報に基づいて、2次対象が存在する存在領域を設定するように構成されていてもよい。さらには、2次対象判定部15は、存在領域が2次判定領域内に存在する場合に、2次対象が存在すると判定するように構成されていてもよい。2次対象の周囲にマージンを設定して、そのマージンを含むように設定した存在領域が2次判定領域内に存在するか否かを判定することにより、2次対象の種別や検出精度に関わらず、2次対象と自車との衝突をより確実に回避できる。
【0060】
2次対象判定部15は、検出情報として取得した2次対象の種別、速度、大きさ、または位置に基づいて、存在領域を変更するように構成されていてもよい。2次対象の種別、速度、大きさ、または位置により、2次対象と自車との衝突の危険性が変わることに対して、適切に2次対象の存在領域の大きさや設置位置等を変更することができ、2次対象と自車との衝突可能性をより適切に判定して、適切な走行支援を実行できる。具体的には、例えば、2次対象判定部15は、2次対象の種別が自車の進行方向に対向する方向に走行する車両(対向車)の場合には、2次対象の種別が自車の進行方向と同方向に走行する車両(例えば、先行車)である場合に比べ、存在領域を大きくするように構成されていてもよい。
【0061】
その他の実施形態として、上記の実施形態では、操舵支援部16は、操舵回避の判断において、2次判定領域内に2次対象が存在すると判断したときには、操舵回避を抑制するように構成されていたが、それに代えて、操舵回避する方向(操舵方向先)に存在する対向車線を走行する対向車が検出された場合には、自車の操舵回避を抑制するように構成されていてもよい。操舵回避する方向に、対向車が存在した場合には、自車と対向車とが接近するような振る舞いとなり、対向車に対してブレーキによる衝突回避が作動する可能性があるため、このようなシチュエーションを回避することができる。
【0062】
その他の実施形態として、上記の実施形態では、距離L2として、1次対象T1の後端の位置y1から2次判定領域A1の奥行き方向の上限の位置y2までのy軸方向の距離を設定する例を挙げたが、その他に、自車の速度に応じて距離L2を設定するようにしてもよい。例えば、自車の速度が大きくなるほど、距離L2を長く設定することで、自車の速度に応じた適切な判定領域を設定することができる。
【0063】
また、上記の実施形態では、2次対象の存在領域についてマージンS1,S2を設定したが、このマージンS1とマージンS2は、2次対象の進行方向に応じて変更するようにしてもよい。具体的には、2次対象の進行方向側のマージンが、進行方向の逆側のマージンよりも大きくなるように変更するようにしてもよい。なお、マージンS1,S2は、それ自体を変更してもよいし、マージンS1,S2に補正マージンを加えることにより全体としてマージンを変更してもよい。また、進行の速度に応じてマージンを変更するようにしてもよい。
【0064】
また、マージンS1、S2は自車と2次対象との距離に応じて変更するようにしてもよい。具体的には、マージンS1,S2は、自車から2次対象が近い場合には小さくし、自車から2次対象が遠い場合には大きく設定してもよい。また、マージンS1,S2は、自車が操舵回避を開始すると予測される地点より奥側に2次対象が存在する場合は大きく設定し、操舵回避を開始する地点より2次対象が手前側に存在する場合には小さく設定してもよい。このように設定することで、操舵回避を開始する前に存在する2次対象により、不要に操舵回避が実行されなくなることを抑制することができる。なお、自車に対して、横方向と縦方向とについてマージンをそれぞれ設定している場合には、横方向のマージンS1,S2のみを変更するようにしてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、図16に示すように、2次対象T2にマージンを設定することに替えて、2次判定領域A3に横方向長さMを左白線WLを超えた領域A3Lを追加してもよいと説明したが、これに限定されず、領域A3Lを追加すると共に、2次対象T2にマージンを設定してもよい。また、図16に示す領域A3Lに限らず、図17のように、左白線WLを超えた領域A3Laを設定してもよい。この左白線WLを超えた領域A3Laは、自車50が現在の位置から操舵により曲がり始めるまでに直進する距離Yの間を避けて設定されている。自車50が直進する区間では左白線WLに存在する2次対象との衝突可能性は極めて低く、この区間に左白線WLを超えた領域を設定すると、必要以上に1次対象T1に対する操舵回避を抑制することになる。領域A3Laのように、自車50が直進する区間では左白線WLを超えた領域を設定しないようにすることで、必要以上に1次対象T1に対する操舵回避が実行されなくなることを抑制することができる。
【0066】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0067】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17