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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】モータ制御システム及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/04 20060101AFI20240105BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240105BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240105BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20240105BHJP
【FI】
B60L3/04 E
B60L15/20 J
B60L9/18 J
H02P29/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022551327
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2021077946
(87)【国際公開番号】W WO2021170047
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】202010120914.7
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】徐▲魯▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲喩▼▲軼▼▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】杜智勇
(72)【発明者】
【氏名】▲齊▼阿喜
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲広▼明
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109263482(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106708003(CN,A)
【文献】特開2012-205332(JP,A)
【文献】特開2005-161961(JP,A)
【文献】特開2000-102288(JP,A)
【文献】中国実用新案第207853453(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/04
B60L 15/20
B60L 9/18
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともモータコントローラの故障データとステアリングコントローラの故障データを含む車両状態データを取得し、前記車両状態データに基づいて、車両に予期しない動力出力異常があると判断した場合、モータ出力トルクの遮断指令を出力する車両コントローラと、
前記車両コントローラに接続され、前記モータ出力トルクの遮断指令に応答して、トルクの出力を停止するようにモータを制御するモータコントローラと、を含み、
前記モータコントローラは、主制御ユニットと駆動ユニットを含み、
前記駆動ユニットは、一次側低圧側と二次側高圧側を含み、
前記車両コントローラからのモータ出力トルクの遮断指令は、前記駆動ユニットの前記一次側低圧側又は前記二次側高圧側に伝達され、
前記主制御ユニットは、前記モータの電圧、電流、回転角であるモータ状態データを取得し、前記モータ状態データに基づいてモータ運転が異常であると決定した場合、イネーブル遮断信号を出力し、
前記駆動ユニットは、前記イネーブル遮断信号と前記モータ出力トルクの遮断指令のいずれかの信号を受信した場合、トルクの出力を停止し、
前記車両コントローラと前記主制御ユニットの間にフィードバックチャネルが接続され、前記フィードバックチャネルは、CAN通信チャネル又はハードワイヤ接続チャネルを含み、
前記車両コントローラは、前記モータ出力トルクの遮断指令を前記主制御ユニットに送信し、前記主制御ユニットは、受信した前記モータ出力トルクの遮断指令を前記フィードバックチャネルを介して前記車両コントローラにフィードバックし、前記車両コントローラは、前記主制御ユニットによってフィードバックされた前記モータ出力トルクの遮断指令に基づいて、送信情報の正確さを決定することを特徴とするモータ制御システム。
【請求項2】
前記車両コントローラは、CANバスを介して、前記モータ出力トルクの遮断指令を送信し、或いは、前記車両コントローラは、ハードワイヤを介して、モータ出力トルクの遮断指令を前記モータコントローラに伝達することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項3】
前記モータコントローラはさらに電源ユニットを含み、
前記電源ユニットは、前記主制御ユニットの状態を監視し、前記主制御ユニット又はそれ自体に異常が発生した時に安全遮断信号を出力し、
前記電源ユニットの安全遮断信号と前記主制御ユニットのイネーブル遮断信号は、前記駆動ユニットの一次側低圧側に伝達され、
前記駆動ユニットは、前記モータ出力トルクの遮断指令、前記安全遮断信号及び前記イネーブル遮断信号のいずれかの信号を受信した場合、トルクの出力を停止するようにモータを制御することを特徴とする請求項に記載のモータ制御システム。
【請求項4】
前記駆動ユニットは、2組であり、各組の前記駆動ユニットは、3つの駆動サブユニットを含み、1組の前記駆動ユニットの3つの前記駆動サブユニットは、上ブリッジアームの3つのパワーモジュールを制御し、別の組の前記駆動ユニットの3つの前記駆動サブユニットは、下ブリッジアームの3つのパワーモジュールを制御することを特徴とする請求項に記載のモータ制御システム。
【請求項5】
1組の前記駆動ユニットは、第1の電力供給電源から電力が供給され、別の組の前記駆動ユニットは、第2の電力供給電源から電力が供給され、或いは、2組の前記駆動ユニットは、同一の電力供給電源から電力が供給されることを特徴とする請求項に記載のモータ制御システム。
【請求項6】
前記車両コントローラによって伝達されたモータ出力トルクの遮断指令は、冗長信号であり同じレベル信号を用い、或いは、前記車両コントローラによって伝達されたモータ出力トルクの遮断指令は、双安定信号であり反対のレベル信号を用いることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のモータ制御システム。
【請求項7】
モータと、請求項1~のいずれか1項に記載のモータ制御システムとを含み、前記モータ制御システムは、前記モータを制御する、ことを特徴とする車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、ビーワイディーカンパニーリミテッドが2020年2月26日に提出した、名称が「モータ制御システム及び車両」の中国特許出願第「202010120914.7」号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、車両の技術分野に関し、特にモータ制御システム及び車両に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、電気自動車は急速に発展しており、バッテリー式電気自動車の動力源は、基本的にモータ駆動動力源であり、ハイブリッド自動車もモータ駆動システムを備える。車両への応用分野において、モータ駆動制御に対して、機能及び性能を考慮するだけでなく、安全性及び信頼性を考慮する必要がある。モータコントローラの設計過程において、一般的に、モータコントローラを自己改善型制御システムとして扱い、車両コントローラ(Vehicle control unit、VCU)は、モータコントローラ(Motor controller unit、MCU)にトルクイネーブル及びトルク指令を主に送信する。モータコントローラは、トルク出力及び他の指令を自分で判断する。モータ駆動システムトポロジーの典型的な構成を図1に示し、モータ制御システムアーキテクチャを図2に示す。
【0004】
しかしながら、モータ制御システムにおいて、予期しない状態の発生に対して、モータコントローラシステム自体の検出機構に完全に依存してより高い安全レベルを実現するには、より多くの検出機構と冗長機構を必要とし、コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、関連技術における技術的課題の1つを少なくともある程度解決しようとする。
【0006】
従って、本開示は、車両の安全レベルを向上させ、車両運行の安全性及び信頼性を向上させることができるモータ制御システムを提供することを目的とする。
【0007】
本開示は、車両を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様の実施例に係るモータ制御システムは、車両状態データを取得し、前記車両状態データに基づいて、車両に予期しない動力伝達故障があると判断した場合、モータ出力トルクの遮断指令を出力する車両コントローラと、前記車両コントローラに接続され、前記モータ出力トルクの遮断指令に応答して、トルクの出力を停止するようにモータを制御するモータコントローラと、を含む。
【0009】
本開示の実施例のモータ制御システムによれば、車両コントローラのモータコントローラへの制御権を増加させることにより車両の安全性を向上させる。車両コントローラは、車両状態データを十分に利用し、予期しない動力伝達故障があると判断した場合、モータ出力トルクの遮断指令を出力する。モータコントローラが該指令を受信すると、モータ制御トルクの出力を停止し、モータ制御の安全状態に入り、モータコントローラ自体が予期しない状態故障を検出できないことによるモータコントローラの損傷を回避し、車両運行の安全性及び信頼性を向上させる。
【0010】
いくつかの実施例では、前記車両コントローラは、CANバスを介して、前記モータ出力トルクの遮断指令を送信し、或いは、前記車両コントローラは、ハードワイヤを介して、モータ出力トルクの遮断指令を前記モータコントローラに伝達する。
【0011】
いくつかの実施例では、前記モータコントローラは、主制御ユニット、電源ユニット及び駆動ユニットを含み、前記駆動ユニットは、一次側低圧側と二次側高圧側を含み、前記車両コントローラからのモータ出力トルクの遮断指令は、前記駆動ユニットの前記一次側低圧側又は前記二次側高圧側に伝達される。
【0012】
いくつかの実施例では、前記主制御ユニットは、モータ状態データを取得し、前記モータ状態データに基づいてモータ運転が異常であると決定した場合、イネーブル遮断信号を出力し、前記駆動ユニットは、前記イネーブル遮断信号と前記モータ出力トルクの遮断指令のいずれかの信号を受信した場合、トルクの出力を停止するようにモータを制御する。
【0013】
いくつかの実施例では、前記電源ユニットは、前記主制御ユニットの状態を監視し、前記主制御ユニット又はそれ自体に異常が発生した時に安全遮断信号を出力し、前記電源ユニットの安全遮断信号と前記主制御ユニットのイネーブル遮断信号は、前記駆動ユニットの一次側低圧側に伝達され、前記駆動ユニットは、前記モータ出力トルクの遮断指令、前記安全遮断信号及び前記イネーブル遮断信号のいずれかの信号を受信した場合、トルクの出力を停止するようにモータを制御する。
【0014】
いくつかの実施例では、前記駆動ユニットは、2組であり、各組の前記駆動ユニットは、3つの駆動サブユニットを含み、1組の前記駆動ユニットの3つの前記駆動サブユニットは、上ブリッジアームの3つのスイッチチューブモジュールを制御し、別の組の前記駆動ユニットの3つの前記駆動サブユニットは、下ブリッジアームの3つのスイッチチューブモジュールを制御する。
【0015】
いくつかの実施例では、1組の前記駆動ユニットは、第1の電力供給電源から電力が供給され、別の組の前記駆動ユニットは、第2の電力供給電源から電力が供給され、或いは、2組の前記駆動ユニットは、同一の電力供給電源から電力が供給される。
【0016】
いくつかの実施例では、前記車両コントローラによって伝達されたモータ出力トルクの遮断指令は、冗長信号であり同じレベル信号を用い、或いは、前記車両コントローラによって伝達されたモータ出力トルクの遮断指令は、双安定信号であり反対のレベル信号を用いる。
【0017】
いくつかの実施例では、前記車両コントローラと前記主制御ユニットの間にフィードバックチャネルが接続され、前記フィードバックチャネルは、CAN通信チャネル又はハードワイヤ接続チャネルを含み、
前記車両コントローラは、前記モータ出力トルクの遮断指令を前記主制御ユニットに送信し、前記主制御ユニットは、受信した前記モータ出力トルクの遮断指令を前記フィードバックチャネルを介して前記車両コントローラにフィードバックし、前記車両コントローラは、前記主制御ユニットによってフィードバックされた前記モータ出力トルクの遮断指令に基づいて、送信情報の正確さを決定する。
【0018】
上記目的を達成するために、本開示の第2の態様の実施例に係る車両は、モータと、上記実施例に記載のモータ制御システムとを含み、前記モータ制御システムが前記モータを制御する。
【0019】
本開示の実施例の車両によれば、モータ制御システムによるモータ制御により、車両の安全運行時間と運行信頼性を向上させる。
【0020】
本開示の追加の態様及び利点は、一部が以下の説明において示され、一部が以下の説明において明らかになるか又は本開示の実施により把握される。
【0021】
本開示の上記及び/又は追加の態様及び利点は、以下の図面を参照して実施例を説明することにより、明らかになって理解されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術におけるモータ駆動システムトポロジーの典型的な構成の概略図である。
図2】従来技術におけるモータ制御システムアーキテクチャの概略図である。
図3】本開示の一実施例に係るモータ制御システムの概略図である。
図4】本開示の別の実施例に係るモータ制御システムの概略図である。
図5】本開示の一実施例に係るモータ制御システムの概略図である。
図6】本開示の一実施例に係る車両コントローラの遮断経路の冗長伝達信号の概略図である。
図7】本開示の一実施例に係る車両コントローラの遮断経路の双安定伝達信号の概略図である。
図8】本開示の一実施例に係る車両のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施例を詳細に説明する。上記実施例は図面に示され、全体を通して同一又は類似する符号は、同一又は類似する部品、若しくは同一又は類似する機能を有する部品を示す。以下、図面を参照しながら説明される実施例は、例示的なものであり、本開示を解釈するためのものであり、本開示を限定するものと理解すべきではない。
【0024】
以下、図3図7を参照して、本開示の実施形態の第1の態様におけるモータ制御システムを説明する。
【0025】
図3に示すように、本開示の実施例のモータ制御システム10は、車両コントローラ110と、モータコントローラ120を含む。
【0026】
車両コントローラ110は、車両状態データを取得し、車両状態データに基づいて、車両に予期しない動力出力異常があると判断した場合、モータ出力トルクの遮断指令を出力する。モータコントローラ120は、車両コントローラ110に接続され、モータ出力トルクの遮断指令に応答して、トルクの出力を停止するようにモータを制御する。
【0027】
具体的には、車両状態データは、車両の様々な運行検出データと各デバイスによってフィードバックされた故障データとを含んでもよく、例えば、車両コントローラ110は、車両バスを介して、車両の加速度センサなどの様々なセンサの情報と、レーダー検出、ミリ波検出などのスマート検出データと、モータコントローラ120の故障データ、ステアリングコントローラの故障データなどを含む車両故障データとを取得することができる。車両コントローラ110は、取得した車両状態データに基づいて、予期しない加速、動力駆動と一致しない運行状態、又は予期しない動力駆動状態などの予期しない動力出力異常があると判断した場合、モータ出力トルクの遮断指令を出力する。モータコントローラ120は、該指令を受信すると、トルク出力経路を直接遮断することができ、このときに、モータコントローラ120は、安全状態に入り、車両の動力出力の安全性を保証することにより、モータ制御システム10がより信頼できる。従来の車両制御システムに比べて、車両コントローラ110を増加させることにより、車両に予期しない故障が発生した場合、モータコントローラ120が安全状態に入るように、モータ制御トルクの出力を停止し、車両の安全運行を保証する。モータコントローラ120自体が予期しない加速などの故障を正常に検出できないため、モータ制御システム10に不可逆的な損害を与えることを回避することができる。
【0028】
本開示の実施例のモータ制御システム10によれば、車両コントローラ110のモータコントローラ120への制御権を増加させることにより車両の安全性を向上させ、車両コントローラ110は、車両状態データを十分に利用し、予期しない動力伝達故障があると判断した場合、モータ出力トルクの遮断指令を出力し、モータコントローラ120が該指令を受信すると、モータ制御トルクの出力を停止し、モータ制御の安全状態に入り、モータコントローラ120自体が予期しない状態故障を検出できないことによるモータコントローラ120の損傷を回避し、車両の安全運行時間と運行信頼性を向上させる。
【0029】
いくつかの実施例では、車両コントローラ110は、CANバスを介して、モータ出力トルクの遮断指令を送信し、或いは、車両コントローラ110は、ハードワイヤを介して、モータ出力トルクの遮断指令をモータコントローラ120に伝達し、すなわち、ハードワイヤを介して、制御信号をモータコントローラ120に直接伝達する。ハードワイヤを介する伝達は、安全性と適時性が高く、駆動故障があると判断した場合、モータコントローラ120ができるだけ早く安全状態に入るように、トルク遮断指令を適時に出力することに役立つため、車両のモータ制御システム10がより信頼できるようにする。
【0030】
いくつかの実施例では、図3又は4に示すように、モータコントローラ120は、主制御ユニット130、電源ユニット140及び駆動ユニット150を含む。主制御ユニット130は、モータ制御の主機能演算に用いられる。電源ユニット140は、モータ制御システムに低圧電力を供給する。駆動ユニット150は、駆動信号を変換する。つまり、駆動ユニット150は、主制御ユニット130の信号を、パワーモジュールを駆動できる信号に変換する。主制御ユニット130、電源ユニット140、駆動ユニット150の接続関係を図3又は図4に示す。
【0031】
駆動ユニット150は、一次側低圧側と二次側高圧側を含む。図3に示すように、車両コントローラ110からのモータ出力トルクの遮断指令は、駆動ユニット150の一次側低圧側に伝達されてもよい。電源ユニット140の安全遮断信号と主制御ユニット130のイネーブル遮断信号は、駆動ユニット150の一次側低圧側に伝達され、車両コントローラ110からのモータ出力トルクの遮断指令と、電源ユニット140の信号と、主制御ユニット130の信号とは、イネーブル経路を構成してパワーモジュールの駆動ユニット150を制御する。
【0032】
具体的には、図3に示すように、信号FS_IO1とFS_IO2などの、車両コントローラ110から出力されたモータ出力トルクの遮断指令と、FS_signalなどの、電源ユニット140から出力された安全遮断信号と、dis/en_ableなどの、主制御ユニット130から出力されたイネーブル遮断信号とに対して論理和演算を行い、駆動ユニット150は、モータ出力トルクの遮断指令、安全遮断信号及びイネーブル遮断信号のいずれかの信号を受信した場合、モータ制御トルク信号の出力を停止することにより、モータ制御システム10が安全状態に入る。
【0033】
主制御ユニット130は、電圧、電流、回転角などのモータ状態データを取得し、モータ状態データに基づいてモータ運転が異常であると決定した場合、イネーブル遮断信号を出力する。駆動ユニット150は、イネーブル遮断信号とモータ出力トルクの遮断指令のいずれかの信号を受信した場合、モータ制御トルクの出力を停止することにより、モータが安全状態に入る。
【0034】
モータコントローラ120の電源ユニット140は、主制御ユニット130の状態を監視し、それ自体に異常が発生した時又は主制御ユニット130に異常が発生した時に、安全遮断信号を出力してもよく、モータコントローラ120のトルク出力を遮断してもよい。
【0035】
車両コントローラ110は、車両に予期しない加速などの予期しない制御状態が発生したことを発見すると、安全遮断信号を出力して、駆動経路を安全に遮断することができる。車両コントローラ110は、モータ駆動システムが安全状態に入るように、モータコントローラ120の一次側制御回路により遮断経路を制御する。
【0036】
いくつかの実施例では、図5に示すように、車両コントローラ110からのモータ出力トルクの遮断指令は、駆動ユニット150の二次側高圧側に伝達されてもよい。
【0037】
具体的には、信号FS_IO1とFS_IO2などの、車両コントローラ110から出力されたモータ出力トルクの遮断指令は、駆動ユニット150の二次側高圧側に伝達され、駆動板の駆動ユニット150を直接制御することができる。
【0038】
実施例では、主制御ユニット130と車両コントローラ110との間にフィードバックチャネルが設置されてもよい。モータコントローラ120は、車両コントローラ110のハードワイヤ制御情報状態を監視し、車両コントローラ110にフィードバックすることができる。具体的には、車両コントローラ110は、CANバス又はハードワイヤを介して、モータ出力トルクの遮断指令を主制御ユニット130に送信する。その後、主制御ユニット130は、受信したモータ出力トルクの遮断指令をフィードバックチャネルを介して車両コントローラ110にフィードバックする。フィードバックチャネルは、CAN通信チャネル又はハードワイヤ接続チャネルを含んでもよい。車両コントローラ110は、主制御ユニット130によってフィードバックされたモータ出力トルクの遮断指令に基づいて、送信情報の正確さを判断する。
【0039】
図3に示すように、FB_ss信号は、モータコントローラ120の主制御ユニット130と車両コントローラ110との間のフィードバックチャネルであり、CAN通信チャネルであってもよく、ハードワイヤフィードバックチャネルであってもよく、好ましくは、CAN通信チャネルである。FS_ss1とFS_ss2は、それぞれ車両コントローラ110のFS_IO1とFS_IO2のフィードバック経路であり、車両コントローラ110の安全遮断信号を主制御ユニット130にフィードバックする。その後、主制御ユニット130は、FB_ssチャネルを介して、受信した安全遮断信号を車両コントローラ110にフィードバックする。車両コントローラ110は、主制御ユニット130によってフィードバックされた安全遮断信号を受信した後、該信号が正確であるか否かを識別し、正確であれば、車両コントローラ110の送信情報が正確であり、そうでなければ、車両コントローラ110の送信情報に誤りがある。これにより、送信情報を監視するという目的を達成し、車両コントローラ110の送信情報の正確さと安全性を向上させることができる。別の実施例では、図4に示すように、FS_ss1とFS_ss2のフィードバック経路は、1つの経路FS_ss1に結合されて制御とフィードバックを行ってもよく、主制御ユニット130と車両コントローラ110との間の信号フィードバックにより、車両コントローラ110は、伝達データを監視して、伝達データが正確で安定することを保証することができる。
【0040】
実施例では、図3図4又は図5に示すように、駆動ユニット150は、2組であり、各組の駆動ユニット150は、3つの駆動サブユニットを含み、1組の駆動ユニット150の3つの駆動サブユニットは、上ブリッジアームの3つのパワーモジュールを制御し、別の組の駆動ユニット150の3つの駆動サブユニットは、下ブリッジアームの3つのパワーモジュールを制御する。
【0041】
図5に示すように、1組の駆動ユニット150は、第1の電力供給電源から電力を供給され、別の組の駆動ユニット150は、第2の電力供給電源から電力を供給される。すなわち、駆動ユニット150は、いずれも独立した電源から電力を供給され、つまり、駆動ユニット150は、2つの独立した電力供給電源Vccにより3相の上下ブリッジアームに電力を供給して、駆動板の動作の信頼性を保証する。車両コントローラ110と、モータコントローラ120の主制御部である主制御ユニット130と、電源ユニット140とは、いずれも、モータコントローラ120が安全状態に入るように、独立して駆動ユニット150を制御することができる。当然ながら、2組の駆動ユニット150は、同一の電力供給電源から電力を供給されてもよい。
【0042】
主制御ユニット130は、モータ状態データを取得し、モータ状態データに基づいてモータ運転が異常であると決定した場合、イネーブル遮断信号を出力する。駆動ユニット150は、イネーブル遮断信号とモータ出力トルクの遮断指令のいずれかの信号を受信した場合、トルクの出力を停止するようにモータを制御する。
【0043】
そして、モータコントローラ120の電源ユニット140は、主制御ユニット130の状態を監視し、それ自体又は主制御ユニット130に異常が発生した時に、安全遮断信号を出力する。電源ユニット140は、また、安全駆動を遮断し、駆動ユニット150を安全経路に切り替えることができる。
【0044】
車両コントローラ110は、車両に予期しない加速などの予期しない動力伝達状態が発生したことを発見すると、駆動経路を安全に遮断し、モータ駆動システムの安全状態に入るように、安全遮断信号を出力するように駆動ユニット150を直接制御することができる。
【0045】
モータコントローラ120の一次側制御回路により遮断経路を制御する代わりに、車両コントローラ110が、モータ駆動システムが安全状態に入るように、モータコントローラ120の二次側制御回路を直接制御することができる。モータコントローラ120と車両コントローラ110は、モータ駆動システムが安全状態に入るように、独立して駆動ユニット150を制御することができる。
【0046】
いくつかの実施例では、車両コントローラ110によって伝達されたモータ出力トルクの遮断指令は、冗長信号であり、同じレベル信号を用いる。図6に示すように、信号の信頼性を保証するように、2つの同じレベル信号を用いる。
【0047】
いくつかの実施例では、車両コントローラ110によって伝達されたモータ出力トルクの遮断指令は、双安定信号であり、反対のレベル信号を用いる。図7に示すように、2つの反対のレベル信号を用い、信号の差分により、コモンモード信号の干渉を低減して、信号の信頼性を保証することができる。或いは、モータ出力トルクの遮断指令は、CAN信号又は他の多重冗長信号であってもよい。
【0048】
要約すると、本開示の実施例のモータ制御システム10によれば、車両コントローラ110のモータコントローラ120への制御権を増加させることにより車両の安全性を向上させる。車両コントローラ110は、車両状態情報を十分に利用し、予期しない動力伝達故障があると判断した場合、モータ出力トルクの遮断指令を出力し、モータコントローラ120が該指令を受信すると、モータ制御トルクの出力を停止し、モータ制御の安全状態に入り、モータコントローラ120自体が予期しない状態故障を検出できないことによるモータコントローラ120の損傷を回避し、車両の安全運行時間と運行信頼性を向上させる。
【0049】
以下、図面を参照しながら本開示の第2の態様の実施例に係る車両を説明する。
【0050】
図8は、本開示の第2の態様の実施例に係る車両20のブロック図である。図8に示すように、本開示の実施例の車両20は、モータ210と、上記実施例に記載のモータ制御システム10とを含む。モータ制御システム10は、上記モータを制御し、具体的な制御経路について、上記実施例の説明を参照することができる。
【0051】
本開示の実施例の車両20によれば、上記実施例のモータ制御システム10を用いてモータ210を制御することにより、車両20の運行時の安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0052】
なお、本開示の説明において、用語「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などで示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本開示を容易に説明し説明を簡略化するためのものに過ぎず、示された装置又は部品が特定の方位を有し、特定の方位で構成され、動作しなければならないことを示すか又は示唆するものではないため、本開示を限定するものであると理解すべきではない。
【0053】
また、用語「第1の」、「第2の」は、説明目的のためのみに用いられ、相対的な重要性を示すか又は示唆し、或いは示された技術的特徴の数量を示唆すると理解すべきではない。これにより、「第1の」、「第2の」で限定された特徴は、1つ以上の該特徴を明示的又は暗示的に含んでもよい。本開示の説明において、「複数」とは、明確かつ具体的な限定がない限り、2つ以上を意味する。
【0054】
本開示において、明確な規定及び限定がない限り、用語「取り付け」、「連結」、「接続」、「固定」などは、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続、着脱可能な接続、又は一体的な接続であってもよく、機械的な接続、又は電気的な接続であってもよく、直接的な連結、又は中間媒体を介した間接的な連結であってもよく、2つの部品の内部の連通、又は2つの部品の相互作用の関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本開示における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0055】
本開示において、明確な規定及び限定がない限り、第1の特徴が第2特徴の「上」又は「下」にあることは、第1の特徴と第2の特徴とが直接的に接触することを含んでもよいし、第1の特徴と第2の特徴とが中間媒体を介して間接的に接触することを含んでもよい。また、第1の特徴が第2の特徴の「上」、「上方」又は「上面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真上及び斜め上にあることを含んでもよいし、第1の特徴の水平高さが第2の特徴より高いことだけを表すことを含んでもよい。第1の特徴が第2の特徴の「下」、「下方」又は「下面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真下及び斜め下にあることを含んでもよいし、第1の特徴の水平高さが第2の特徴より低いことだけを表すことを含んでもよい。
【0056】
本明細書の説明において、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体的な例」又は「いくつかの例」などを参照する説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構成、材料又は特性が本開示の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例を意味するわけではない。また、説明された具体的な特徴、構成、材料又は特性は、任意の1つ又は複数の実施例又は例において適切に組み合わせることができる。また、互いに矛盾しない限り、当業者であれば、本明細書で説明された異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴を結合するか又は組み合わせることができる。
【0057】
以上、本開示の実施例を示し、説明したが、上記実施例は、例示的なものであり、本開示を限定するものと理解すべきではなく、当業者であれば、本開示の範囲で上記実施例に対して変更、修正、交換及び変形を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8