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  • 特許-糸を綾振りするための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】糸を綾振りするための装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 13/06 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
D01H13/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022557147
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2021057381
(87)【国際公開番号】W WO2021191186
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】102020001938.2
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ベルナー
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-179434(JP,A)
【文献】仏国特許発明第556886(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回可能なガイドロッド(1)を備えた、糸を綾振りするための装置であって、前記ガイドロッド(1)は、糸ガイド(3)を備えたガイド端部(2)と、駆動端部(5)とを有していて、かつ定置の旋回軸(4)において回動可能に支承されており、前記ガイドロッド(1)の前記駆動端部(5)が駆動装置(9)に連結されている、装置において、
前記駆動装置(9)は往復式のリニア駆動装置(6)として構成されており、前記リニア駆動装置(6)は1つの連結部材(7)により前記ガイドロッド(1)の前記駆動端部(5)に結合されており、
前記連結部材はプッシュロッド(7)により形成されており、該プッシュロッド(7)は、回動ジョイント(8.1)により前記ガイドロッド(1)の前記駆動端部(5)に結合されていて、かつ第2の回動ジョイント(8.2)により前記リニア駆動装置(6)のプランジャ(6.2)に結合されていることを特徴とする、糸を綾振りするための装置。
【請求項2】
前記リニア駆動装置(6)は、ニューマチック式、ハイドロリック式または電気的なアクチュエータ(6.1)により構成されており、該アクチュエータ(6.1)は、前記プランジャ(6.2)を所定のストローク(H)の範囲内で線形に往復案内する、請求項記載の装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ(6.1)の前記ストローク(H)は、前記ガイド端部(2)の綾振り幅(V)を調節するために調節可能に形成されている、請求項記載の装置。
【請求項4】
前記ガイドロッド(1)の前記ガイド端部(2)はガイド脚部(1.1)の端部に形成されており、前記ガイドロッド(1)の前記駆動端部(5)は駆動脚部(1.2)の端部に形成されており、前記旋回軸(4)は、前記ガイド脚部(1.1)と前記駆動脚部(1.2)との間の領域に配置されており、前記ガイド脚部(1.1)と前記駆動脚部(1.2)の間に50°~180°の範囲の角度(α)が形成される、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記ガイド脚部(1.1)は、前記駆動脚部(1.2)の有効長さ(L)よりも大きな有効長さ(L)を有している、請求項記載の装置。
【請求項6】
前記糸を綾振りするための綾振り幅(V)は、前記リニア駆動装置(6)のストローク(H)および前記ガイドロッド(1)の幾何学長さに依存した計算式:
V=(L/L)×H
に基づいて生じる、請求項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の形式の糸を綾振りするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融紡糸プロセスにおける合成糸の製造時、またはテクスチャード加工プロセスにおける糸の処理時には、通常、プロセスの終わりに糸を貯蔵のために巻き取ってパッケージが形成される。このために、糸は、巻成されるべきパッケージのパッケージ幅内で往復案内され、これによりパッケージを形成するための綾巻きが生じる。このために、糸ガイドが往復式に駆動されるので、糸は巻き取られて円筒形または双円錐形の綾巻きパッケージを形成することができる。このような糸ガイドを駆動するために、先行技術では、糸ガイドがガイドロッドのガイド端部に配置されており、ガイドロッドが揺動するように駆動される、糸を綾振りするための装置が知られている。糸を綾振りするためのこのような装置は、西独国特許出願公開第1131575号明細書に基づいて既に長らく知られている。
【0003】
糸を綾振りするためのこの公知の装置では、ガイドロッドが、旋回軸において回動可能に支承されている。ガイドロッドのガイド端部に保持された糸ガイドを駆動するために、ガイドロッドの反対側に位置する駆動端部に駆動装置が作用する。ガイドロッドの駆動端部は、旋回軸に対して円軌道上で運動するので、駆動端部は、滑り結合部を介して、多関節の伝動装置により駆動される。この伝動装置は、溝付きディスクによって同一の形状の往復運動で作動されている。溝付きディスクにおいて環状に延びる溝の賦形ならびに溝の位置により、ガイドロッドのガイド端部が往復運動させられ、この場合、一定の綾振り幅となる。したがって、このような機械的な連結伝動装置は、可能な限り可変の綾振り幅で糸をガイドすることができるようにするために、完全に不適切である。
【0004】
したがって、今日に至るまでは、ガイドロッドの駆動端部が、駆動される軸に保持されている、糸を綾振りするための装置しか定着していない。このようなシステムは、たとえば独国特許出願公開第19960024号明細書に基づいて電気的な駆動装置を伴って、または西独国特許出願公開第1560360号明細書に基づいて機械的な駆動装置を伴って知られている。しかし、これら全てのシステムにおいて、ガイドロッドの運動エネルギを駆動軸のトルクのみによって形成しなければならないことが必要である。その限りでは、ガイドロッドの慣性力は駆動軸に作用し、このことは特に反転点において対応して高い制動エネルギおよび駆動エネルギを必要とする。さらに、糸を可変の綾振り幅でガイドするために、正確な角度検出および角度制御が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた糸を綾振りする装置を改良して、ガイドロッドが正確かつ簡単に調節可能な綾振り幅で往復運動するよう駆動可能であるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、駆動装置が往復式のリニア駆動装置として構成されており、リニア駆動装置が、1つの連結部材によりガイドロッドの駆動端部に結合されていることによって解決される。
【0007】
本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載の特徴および特徴の組み合わせにより定義されている。
【0008】
本発明は、ガイドロッドの旋回運動を線形のリニア運動のみによって引き起こすことができるという特別な利点を有している。ガイドロッドの、円軌道上でガイドされる駆動端部への伝達のために、リニア駆動装置とガイドロッドとの間には1つの単純な連結部材が設けられており、これにより、ガイドロッドとリニア駆動装置との間の相対運動性が保証されている。その限りでは、ガイドロッドはリニア駆動装置によって迅速かつ極めて正確に旋回される。
【0009】
リニア駆動装置と、ガイドロッドの、円形のガイド軌道上でガイドされる駆動端部との間の相対運動性の伝達のために、連結部材がプッシュロッドにより形成されており、このプッシュロッドは、回動ジョイントによりガイドロッドの駆動端部に結合されていて、かつ第2の回動ジョイントによりリニア駆動装置のプランジャに結合されている本発明の改良形が有利に実施される。したがって、リニア駆動装置の線形運動を直接にプッシュロッドを介してガイドロッドの駆動端部に伝達することができる。
【0010】
糸を綾振りするための所定の綾振り幅を維持することができるように、リニア駆動装置は、ニューマチック式、ハイドロリック式または電気的なアクチュエータにより構成されており、アクチュエータは、プランジャを所定のストロークの範囲内で線形に往復案内する。したがって、リニア駆動装置のストロークにより、ガイドロッドのガイド端部における綾振り幅が規定される。
【0011】
規定された綾振り幅を調節するために、アクチュエータのストロークは、好適には調節可能に形成されている。これにより、種々異なるパッケージ幅または双円錐形のパッケージも、簡単に巻き取ることができる。
【0012】
できるだけコンパクトなアセンブリを得るために、好適には、ガイドロッドのガイド端部がガイド脚部の端部に形成されており、ガイドロッドの駆動端部が駆動脚部の端部に形成されており、旋回軸がガイド脚部と駆動脚部との間の領域に配置されており、ガイド脚部と駆動脚部との間に50°~180°の範囲の角度が形成される本発明の改良形が実施されている。したがって、リニア駆動装置のストローク運動をガイド端部の旋回運動に変換するために、特にL字形のガイドロッドを利用することができる。
【0013】
できるだけ小さなストロークで比較的大きな綾振り幅を引き起こすことができるように、ガイド脚部が駆動脚部の長さよりも数倍大きな長さを有している本発明の改良形が規定されている。したがって、比較的小さなストロークでできるだけ大きな綾振り幅を引き起こすために、梃子の原理を利用することができる。
【0014】
ガイド端部における綾振り幅の再現性および調節性のために、糸を綾振りするための綾振り幅が、リニア駆動装置のストロークおよびガイドロッドの幾何学長さに依存した以下のような計算式:
V=(L/L)×H
に基づいて生じる本発明の改良形が特に有利である。
【0015】
ここで、綾振り幅はV、ガイド脚部の長さはL、駆動脚部の長さはL、かつリニア駆動装置のストロークはHである。
【0016】
これにより、リニア駆動装置の調節可能な各ストロークに対して、糸の綾振り時に達成される綾振り幅を予め規定することができる。特に、ストローク増減および非対称なパッケージを構成するために、綾振り幅を対応して予め規定可能である。
【0017】
糸を綾振りするための本発明に係る装置を、以下に幾つかの実施例に基づき添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】糸を綾振りするための本発明に係る装置の第1の実施例を示す概略図である。
図2】糸を綾振りするための本発明に係る装置の別の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、糸を綾振りするための本発明に係る装置の第1の実施例が概略的に図示されている。この実施例は、ガイドロッド1を有しており、ガイドロッド1は、ガイド脚部1.1と、駆動脚部1.2とから形成されている。ガイドロッド1は、固定的な旋回軸4において回動可能に支承されている。旋回軸4は、ガイドロッド1において、ガイド脚部1.1と駆動脚部1.2との間の領域に配置されている。このために、ガイドロッド1はL字形に形成されており、これにより、ガイド脚部1.1と駆動脚部1.2との間には角度αが生じる。この場合、角度αは、50°~最大で180°の範囲で形成されていてよい。ガイドロッド1のガイド脚部1.1は、図1において参照符号Lで示されている有効長さを有している。これに対して、駆動脚部1.2は、参照符号L図1に記入されている有効長さを有している。ここで、ガイド脚部1.1の長さLは、駆動脚部1.2の長さLの何倍も大きい。有効長さLおよびLは、回動点としての旋回軸4、駆動脚部1.2に設けられた回動点8.1ならびにガイド端部2に関する。
【0020】
ガイド脚部1.1は、そのガイド端部2に糸ガイド3を有している。駆動脚部1.2は、駆動端部5において駆動装置9に結合されている。駆動装置9は、本実施例ではリニア駆動装置6により形成されており、このリニア駆動装置6は、アクチュエータ6.1およびプランジャ6.2を有している。プランジャ6.2と、駆動脚部1.2の駆動端部5との間には、プッシュロッド7の形態の連結部材が配置されている。このために、プッシュロッド7は、回動ジョイント8.1によって駆動脚部1.2の駆動端部5に結合されている。第2の回動ジョイント8.2により、プッシュロッド7はリニア駆動装置6のプランジャ6.2に連結されている。
【0021】
アクチュエータ6.1には、制御機器10が割り当てられている。この制御機器10によって、ガイド速度およびアクチュエータ6.1のストロークを制御することができる。このために、アクチュエータ6.1は、プランジャ6.2を運動させるためのニューマチック式、ハイドロリック式または電気的な手段を有していてよい。
【0022】
作動時に、リニア駆動装置6を介して、往復式の駆動運動がガイドロッド1の駆動脚部1.2の駆動端部5に導入される。したがって、駆動脚部1.2は、所定の回動角度で旋回軸4を中心として往復案内される。この回動運動は、ガイド脚部1.1に伝達される。ガイド脚部1.1の旋回角度、ひいてはガイドロッド1のガイド端部2により往復するように行われる、たとえばパッケージ幅に一致する綾振り幅は、破線で図示されたパッケージ表面において参照符号Vで図1に記入されている。パッケージは、本実施例では、参照符号11で示されている。ガイドロッド1のガイド端部2に設けられた糸ガイド3によって糸がガイドされる綾振り幅Vは、リニア駆動装置6のその都度調節されるストロークに依存する。この場合、特に、プランジャ運動H(t)の平均値および振り幅を調節することができる。これにより、ストローク増減も、綾振り幅Vに沿った糸置き位置も調節することができる。したがって、このストロークHは、ガイド端部2の綾振り幅に影響を与え、変更するための作動手段を形成する。駆動脚部1.2とガイド脚部1.1との間の幾何学的な関係に基づいて、綾振り幅Vは、リニア駆動装置6のストロークHによって前もって規定される。このために、
V=(L/L)×H
が当てはまる。その限りでは、各ストロークHに対して、綾振り幅Vは、ガイドロッド1の梃子の幾何学形状によって規定される。リニア駆動装置6におけるストロークの調節は、制御機器10により行われる。この場合、綾振り幅を、パッケージの巻成中にも変更することができ、これによりたとえばストローク増減またはパッケージの特定の賦形を達成することができる。
【0023】
図1に図示された実施例では、リニア駆動装置6は、ガイドロッド1を駆動するために、鉛直方向で往復するストローク運動を引き起こす。しかし、代替的には、リニア駆動装置6が水平方向のストローク運動を実施する可能性も生じる。これに関して図2に1つの実施例が図示されている。図2に示した実施例は、図1に示した実施例と同一の構造であり、ここでは単に差異のみを説明し、その他の箇所は上述の説明が参照される。
【0024】
図2に図示された実施例では、ガイドロッドはガイド脚部1.1と駆動脚部1.2とを有しており、これらの脚部1.1,1.2の間には、180°の角度αが形成されている。その限りではガイドロッド1は直線的に形成されおり、旋回軸4はガイド脚部1.1と駆動脚部1.2との間に配置されている。
【0025】
駆動脚部1.2の駆動端部5には、駆動装置9が連結されている。この駆動装置9は、本実施例では同様にリニア駆動装置6を有しており、リニア駆動装置6は、アクチュエータ6.1とプランジャ6.2とから形成されている。プランジャ6.2は、プッシュロッド7を介して、ガイドロッド1の駆動端部5に結合されている。この場合、プッシュロッド7は、回動ジョイント8.1を介して駆動脚部1.2に結合されており、第2の回動ジョイント8.2を介してプランジャ6.2に結合されている。プランジャ6.2は、アクチュエータ6.1によって水平方向で、ストロークHの範囲で往復案内される。このために、アクチュエータ6.1は、制御機器10により制御される。プッシュロッド7は、線形軌道上のプランジャ6.2と、円形軌道上の駆動端部5との間の相対運動を可能にするための連結部材を形成している。回動ジョイント8.1,8.2により、リニア駆動装置6とガイドロッド1との間の固定的な結合があらゆる位置において保証されている。
【0026】
図1および図2に示した実施例では、糸を綾振りするための装置は、この装置が例示的に糸を巻き取るための巻取り位置においてどのように使用可能であるかを示している。しかし、基本的には、リニア駆動装置に複数のガイドロッド1が対応配置されており、これによって複数の糸を並行して同時に巻き取って複数のパッケージを形成する可能性も生じる。その限りでは、アクチュエータ6.1のプランジャ6.2が、複数の連結部材を介して複数のガイドロッドに結合されていてよい。
図1
図2