(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】改善されたギア保護のためのリン耐摩耗システム
(51)【国際特許分類】
C10M 137/04 20060101AFI20240105BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20240105BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240105BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
C10M137/04
C10M137/10 Z
C10M137/10 B
C10N40:04
C10N30:06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023099946
(22)【出願日】2023-06-19
【審査請求日】2023-08-23
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マーシャル ベイカー
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-527602(JP,A)
【文献】特開2011-42783(JP,A)
【文献】特開2016-180102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M、C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機又はギアボックス潤滑組成物であって、
(i)潤滑粘度の基油と、
(ii)式Iのトリアルキルホスフェートエステルを含む第1のリン化合物であって、
【化1】
式中、R
1、R
2、及びR
3が、独立して、C4~C8直鎖又は分岐アルキル基である、第1のリン化合物と、
(iii)式IIの無灰ジアルキルジチオホスフェート又はその塩を含む第2のリン化合物であって、
【化2】
式中、R
4及びR
5が、独立して、C3~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、R
6が、-H又は-CH
3である、第2のリン化合物と、
(iv)O,O-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ホスホロジチオ酸をエチレン
オキシド及び/又はプロピレンオキシドと反応させて第1の反応生成物を提供し、前記第1の反応生成物を五酸化リンと更に反応させて第2の反応生成物を提供し、前記第2の反応生成物を1つ以上の三級脂肪族一級アミンで中和して第3のリン化合物を提供することによって調製された、第3のリン化合物と、を含み、
前記第1、第2、及び第3のリン化合物が、合計で800~2000ppmのリンを前記潤滑組成物に提供し、前記第1のリン化合物が、280ppm~840ppmのリンを前記潤滑組成物に提供し、前記第2のリン化合物が、90~450ppmのリンを前記潤滑組成物に提供し、前記第3のリン化合物が、80~600ppmのリンを前記潤滑組成物に提供する、潤滑組成物。
【請求項2】
前記第1のリン化合物が、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェートである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記第2のリン化合物が、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロピオン酸である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記第1のリン化合物が、280ppm~840ppmのリンを前記潤滑組成物に提供し、前記第2のリン化合物が、90~450ppmのリンを前記潤滑組成物に提供し、前記第3のリン化合物が、180~600ppmのリンを前記潤滑組成物に提供する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記潤滑組成物が、ASTM D4172(40kgf)に準拠して0.5mm以下の摩耗傷跡を示し、90℃でCEC L-84に準拠して10以上の不合格荷重段階評価を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
総リンの30~60重量パーセントが前記第1のリン化合物によって提供され、総リンの12~35重量パーセントが、前記第2のリン化合物によって提供され、総リンの20~35重量パーセントが、前記第3のリン化合物によって提供される、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記潤滑組成物が、4~10cStのKV100を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記潤滑組成物が、前記第2及び第3のリン化合物の合計よりも
リン含有量に関して多くの前記第1のリン化合物を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
変速機又はギアボックスを潤滑する方法であって、前記方法が、
変速機又はギアボックス構成要素を潤滑組成物で潤滑することを含み、
前記潤滑組成物が、
(i)潤滑粘度の基油と、
(ii)式Iのトリアルキルホスフェートエステルを含む第1のリン化合物であって、
【化3】
式中、R
1、R
2、及びR
3が、独立して、C4~C8直鎖又は分岐アルキル基である、第1のリン化合物と、
(iii)式IIの無灰ジアルキルジチオホスフェート又はその塩を含む第2のリン化
合物であって、
【化4】
式中、R
4及びR
5が、独立して、C3~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、R
6が、-H又は-CH
3である、第2のリン化合物と、
(iv)O,O-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ホスホロジチオ酸をエチレン
オキシド及び/又はプロピレンオキシドと反応させて第1の反応生成物を提供し、前記第1の反応生成物を五酸化リンと更に反応させて第2の反応生成物を提供し、前記第2の反応生成物を1つ以上の三級脂肪族一級アミンで中和して第3のリン化合物を提供することによって調製された、第3のリン化合物と、を含み、前記第1、第2、及び第3のリン化合物が、合計で800~2000ppmのリンを前記潤滑組成物に提供し、
総リンの30~60重量パーセントが前記第1のリン化合物によって提供され、総リンの12~35重量パーセントが、前記第2のリン化合物によって提供され、総リンの20~35重量パーセントが、前記第3のリン化合物によって提供される、方法。
【請求項10】
前記第1のリン化合物が、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェートであり、かつ/又は前記第1のリン化合物が、280ppm~840ppmのリンを前記潤滑組成物に提供する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のリン化合物が、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロピオン酸であり、かつ/又は前記第2のリン化合物が、90~450ppmのリンを前記潤滑組成物に提供する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第3のリン化合物が、180~600ppmのリンを前記潤滑組成物に提供する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記潤滑組成物が、ASTM D4172(40kgf)に準拠して0.5mm以下の摩耗傷跡を示し、90℃でCEC L-84に準拠して10以上の不合格荷重段階評価を有し、かつ/又は前記潤滑組成物が、4~10cStのKV100を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記潤滑組成物が、前記第2及び第3のリン化合物の合計よりも
リン含有量に関して多くの前記第1のリン化合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のリン化合物が、280ppm~840ppmのリンを前記潤滑組成物に提供し、前記第2のリン化合物が、90~450ppmのリンを前記潤滑組成物に提供し、前記第3のリン化合物が、180~600ppmのリンを前記潤滑組成物に提供する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変速機及びギアボックス用の潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機及びギアボックスは、多くの場合、ドライブラインにおける様々なギア表面に摩耗を引き起こし得る圧力及び負荷に経時的に供される。潤滑剤は、摩耗損傷を最小化及び防止するために使用され得る。これは、大抵の場合、リン系耐摩耗化合物を潤滑剤添加剤として使用することで達成される。より新しい変速機潤滑剤は、効率及び燃料経済性を改善するためにより低い粘度のものであり、同時に機器保守費用を節約するためにより長いドレイン間隔を有することが期待される。したがって、ギアシステムをより長く、より厳しい条件下で保護するために、より新しい潤滑剤が必要とされている。
【0003】
変速機ギアの摩耗は、一般的に、個々のギア歯の表面に対する損傷であると理解されており、個々のギア歯間の接触運動に起因する経時的な材料の段階的な損失を伴う。当然ながら、除去する必要がある異なるタイプの構成要素摩耗が存在する。変速機ギアに関して2つの関連する摩耗機構としては、ASTM D4172に準拠して測定されるアブレシブ摩耗及びCEC L-84に準拠して測定される凝着摩耗が挙げられる。良好なアブレシブ摩耗を達成するために流体添加剤を選択することは、必ずしも許容可能な凝着摩耗をもたらすとは限らず、逆もまた同様であるため、より低い粘度の流体において両方の摩耗機構において合格性能を達成することは困難であった。
【発明の概要】
【0004】
1つのアプローチ又は実施形態では、変速機又はギアボックス潤滑組成物が、本明細書で提供される。態様では、潤滑組成物は、(i)潤滑粘度の基油と、(ii)式Iのトリアルキルホスフェートエステルを含む第1のリン化合物であって、
【0005】
【化1】
式中、R
1、R
2、及びR
3が、独立して、C4~C8直鎖又は分岐アルキル基である、第1のリン化合物と、(iii)式IIの無灰ジアルキルジチオホスフェート又はその塩を含む第2のリン化合物であって、
【0006】
【化2】
式中、R4及びR5が、独立して、C3~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、R6が、-H又は-CH3である、第2のリン化合物と、(iv)O,O-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ホスホロジチオ酸をエチレン及び/又はプロピレンオキシドと反応させて第1の反応生成物を提供し、当該第1の反応生成物を五酸化リンと更に反応させて第2の反応生成物を提供し、当該第2の反応生成物を1つ以上の三級脂肪族一級アミンで中和して第3のリン化合物を得る又は提供することによって調製された、第3のリン化合物と、を含み、当該第1、第2、及び第3のリン化合物が、合計で約800~約2000ppmのリンを潤滑組成物に提供する。
【0007】
他のアプローチ又は実施形態では、前段落の潤滑組成物は、任意の組み合わせで、1つ以上の任意選択的な特徴と組み合わされ得る。このような任意選択的な特徴は、以下のうちの1つ以上を含む。第1のリン化合物は、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェートであり、かつ/又は第1のリン化合物は、約280ppm~840ppmのリンを潤滑組成物に提供し、かつ/又は第2のリン化合物は、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロピオン酸であり、かつ/又は第2のリン化合物は、約90~約450ppmのリンを潤滑組成物に提供し、かつ/又は第3のリン化合物は、約80~約600ppmのリンを潤滑組成物に提供し、かつ/又は第1のリン化合物は、約280ppm~約840ppmのリンを潤滑組成物に提供し、第2のリン化合物は、約90~約450ppmのリンを潤滑組成物に提供し、第3のリン化合物は、約180~約600ppmのリンを潤滑組成物に提供し、かつ/又は潤滑組成物は、ASTM D4172(40kgf)に準拠して約0.5mm以下の摩耗傷跡を示し、90℃でCEC L-84に準拠して10以上の不合格荷重段階評価を有し、かつ/又は総リンの約30~約60重量パーセントが第1のリン化合物によって提供され、総リンの約12~約35重量パーセントが第2のリン化合物によって提供され、総リンの約20~約35重量パーセントが第3のリン化合物によって提供され、かつ/又は潤滑組成物は、約4~約15cStのKV100を有し、かつ/又は潤滑組成物は、第2及び第3のリン化合物の合計よりもリン含有量に関して多くの第1のリン化合物を含む。
【0008】
他の実施形態又はアプローチでは、変速機又はギアボックスを潤滑する方法が本明細書で提供される。態様では、本方法は、変速機又はギアボックス構成要素を潤滑組成物で潤滑することを含み、潤滑組成物は、(i)潤滑粘度の基油と、(ii)式Iのトリアルキルホスフェートエステルを含む第1のリン化合物であって、
【0009】
【化3】
式中、R
1、R
2、及びR
3が、独立して、C4~C8直鎖又は分岐アルキル基である、第1のリン化合物と、(iii)式IIの無灰ジアルキルジチオホスフェート又はその塩を含む第2のリン化合物であって、
【0010】
【化4】
式中、R
4及びR
5が、独立して、C3~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、R
6が、-H又は-CH
3である、第2のリン化合物と、(iv)O,O-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ホスホロジチオ酸をエチレン及び/又はプロピレンオキシドと反応させて第1の反応生成物を提供し、当該第1の反応生成物を五酸化リンと更に反応させて第2の反応生成物を提供し、当該第2の反応生成物を1つ以上の三級脂肪族一級アミンで中和して第3のリン化合物を得る又は提供することによって調製された、第3のリン化合物と、を含み、当該第1、第2、及び第3のリン化合物は、合計で約800~約2000ppmのリンを潤滑組成物に提供する。
【0011】
他のアプローチ又は実施形態では、前段落の方法実施形態は、任意の組み合わせで、1つ以上の任意選択的な特徴、ステップ、又は限定と組み合わされ得る。これらの任意選択的な特徴、ステップ、又は限定は、以下のうちの1つ以上を含む。第1のリン化合物は、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェートであり、かつ/又は第1のリン化合物は、約280ppm~840ppmのリンを潤滑組成物に提供し、かつ/又は第2のリン化合物は、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロピオン酸であり、かつ/又は第2のリン化合物は、約90~約450ppmのリンを潤滑組成物に提供し、かつ/又は第3のリン化合物は、約180~約600ppmのリンを潤滑組成物に提供し、かつ/又は潤滑組成物は、ASTM D4172(40kgf)に準拠して約0.5mm以下の摩耗傷跡を示し、90℃でCEC L-84に準拠して10以上の不合格荷重段階評価を有し、かつ/又は総リンの約30~約60重量パーセントが第1のリン化合物によって提供され、総リンの約12~約35重量パーセントが第2のリン化合物によって提供され、総リンの約20~約35重量パーセントが第3のリン化合物によって提供され、潤滑組成物は、約4~約10cStのKV100を有し、かつ/又は潤滑組成物は、第2及び第3のリン化合物の合計よりもリン含有量に関して多くの第1のリン化合物を含み、かつ/又は第1のリン化合物は、約280ppm~約840ppmのリンを潤滑組成物に提供し、第2のリン化合物は、約90~約450ppmのリンを潤滑組成物に提供し、第3のリン化合物は、約180~約600ppmのリンを潤滑組成物に提供する。
【0012】
なお他のアプローチ又は実施形態では、ASTM D4172(40kgf)に準拠して約0.5mm以下の摩耗傷跡、及び90℃でCEC L-84に準拠して10以上の不合格荷重段階評価を示す、潤滑剤を、好ましくはドライブラインに提供するために、第1のリン化合物、第2のリン化合物、及び第3のリン化合物の使用が本明細書において提供され、第1のリン化合物は、式Iのトリアルキルホスフェートエステルを含み、
【0013】
【化5】
式中、R
1、R
2、及びR
3は、独立して、C4~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、(iii)第2のリン化合物は、式IIの無灰ジアルキルジチオホスフェート又はその塩を含み、
【0014】
【化6】
式中、R
4及びR
5は、独立して、C3~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、R
6は、-H又は-CH
3であり、(iv)第3のリン化合物は、O,O-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ホスホロジチオ酸をエチレン及び/又はプロピレンオキシドと反応させて第1の反応生成物を提供し、当該第1の反応生成物を五酸化リンと更に反応させて第2の反応生成物を得る又は提供し、当該第2の反応生成物を1つ以上の三級脂肪族一級アミンで中和して第3のリン化合物を提供することによって調製される。
【0015】
なお更なる実施形態では、ドライブライン装置が本明細書に提供され、ドライブラインは、第1のリン化合物、第2のリン化合物、及び第3のリン化合物の本明細書の任意の実施形態を含む潤滑組成物を含む。
【0016】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示した発明の明細書及び発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供する。
【0017】
「ギア油」、「ギア流体」、「ギア潤滑剤」、「基ギア潤滑剤」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑剤」、及び「潤滑流体」という用語は、本明細書で考察されるような、過半量の基油と、半量未満の添加剤組成物と、を含む、最終潤滑生成物を指す。このようなギア流体は、例えば、変速機及び/又はリミテッド・スリップ・ディファレンシャルでは、金属と金属との接触状態を有する変速機及びギア駆動構成要素などの極圧状態において使用するものである。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、その通常の意味で使用され、当業者には既知である。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基と、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有する置換炭化水素置換基と、から独立して選択され、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「重量パーセント」又は「重量%」という用語は、別段の断りがない限り、列挙した成分の組成物全体の重量に対して表す百分率を意味している。本明細書の全てのパーセント数は、別段の指定がない限り、重量パーセントである。
【0020】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤が、全ての割合で油中に可溶性、溶解性、混和性、又は懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、約1~約200個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指している。本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、約3~約30個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指している。本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又はヘテロ原子、例えば、限定するものではないが窒素及び酸素を含み得る単環及び多環芳香族化合物を指している。
【0022】
本明細書で使用される場合、分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として約180~約18,000のMnを有する)を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって測定される。本明細書の任意の実施形態の分子量(Mn)は、Watersから入手されるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器又は類似の機器、及びWaters Empower Software又は類似のソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択的な機器)を設けることができる。GPCの作動条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒子サイズ5μ、及び細孔サイズの範囲100~10000Å)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、500~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(polystyrene、PS)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPS標準は、THFに溶解し、0.1~0.5重量パーセントの濃度で調製することができ、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、更に分子量分布情報を提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0023】
本開示全体を通して、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」などは、オープンエンドであると考えられ、明示的に列挙されていない任意の要素、ステップ、又は配合成分を含むことを理解すべきである。「から本質的になる」という句は、任意の明示的に列挙された要素、ステップ、又は配合成分、及び本発明の基本的及び新規の態様に実質的に影響を及ぼさない任意の追加の要素、ステップ、又は配合成分を含むことを意味している。本開示はまた、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」を使用して記載される任意の組成物は、具体的に列挙されたその成分「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」同じ組成物の開示を含むものとして解釈されるべきであることも企図している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ASTM D4172に従って測定されるアブレシブ摩耗、及びCEC L-84に従って測定される凝着摩耗の両方において良好な性能を達成する、ギア流体、変速機流体、パワー変速機流体、及び/又はドライブライン用途に好適な潤滑組成物が本明細書に開示される。1つのアプローチ又は実施形態では、本明細書の潤滑組成物は、凝着摩耗及びアブレシブ摩耗の合格を達成するために、潤滑粘度の基油及びリン含有耐摩耗化合物のトリオを含む。アプローチでは、リン含有化合物のトリオは、合計約800ppm~約2000ppmのリンを潤滑組成物に提供する。一態様では、リン含有耐摩耗化合物は、トリアルキルホスフェートエステルの第1のリン化合物と、無灰ジアルキルジチオホスフェートの第2のリン化合物と、ジチオホスフェートエステルアミン又はその塩の第3のリン化合物と、を含む。
【0025】
アプローチ又は実施形態では、第1のリン化合物は、式Iのトリアルキルホスフェートエステルであり、
【0026】
【化7】
式中、R
1、R
2、及びR
3が、独立して、C4~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、第2のリン化合物は、式IIの無灰ジアルキルジチオホスフェート又はその塩であり、
【0027】
【化8】
式中、R
4及びR
5は、独立して、C3~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、R
6は、-H又は-CH
3であり、第3のリン化合物は、O,O-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ホスホロジチオ酸をエチレン及び/又はプロピレンオキシドと反応させて第1の反応生成物を提供し、当該第1の反応生成物を五酸化リンと更に反応させて第2の反応生成物を提供し、当該第2の反応生成物を1つ以上の三級脂肪族一級アミンで中和して第3のリン化合物を提供することによって調製される。各リン化合物は、以下で更に考察される。
【0028】
第1のリン化合物
実施形態又はアプローチでは、第1のリン化合物は、トリアルキルホスフェートエステルの形態の無灰(金属不含)リン含有化合物である。いくつかのアプローチ又は実施形態では、第1のリン化合物は、約280ppm~約840ppmのリンを潤滑組成物に、他のアプローチでは、約420ppm~約770ppmのリン、更なるアプローチでは、約420ppm~約560ppm、又はなお他のアプローチでは、約560ppm~約840ppmのリンを提供する。代替的なアプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、約0.4重量パーセント~約1.2重量パーセントの第1のリン化合物を含み、他のアプローチでは、約0.6重量パーセント~約1.1重量パーセント、又は更なる他のアプローチでは、約0.6~約0.8重量パーセント、又はなお他のアプローチでは、約0.8~約1.2重量パーセントの第1のリン化合物を含む。
【0029】
他のアプローチ又は実施形態では、第1のリン化合物は、少なくとも約280ppm、少なくとも約300ppm、少なくとも約320ppm、少なくとも約340ppm、少なくとも約360ppm、少なくとも約380ppm、少なくとも約400ppm、少なくとも約420ppm、少なくとも約440ppm、少なくとも約460ppm、少なくとも約480ppm、少なくとも約500ppm、少なくとも約520ppm、少なくとも約540ppm、又は少なくとも約560ppm~約840ppm以下、約820ppm以下、約780ppm以下、約760ppm以下、約740ppm以下、約720ppm以下、約700ppm以下、約680ppm以下、約660ppm以下、約640ppm以下、約620ppm以下、約600ppm以下、約580ppm以下、又は約560ppm以下の範囲の量でリンを潤滑組成物に提供する。他のアプローチでは、潤滑油組成物中の第1のリン化合物の処理率は、少なくとも約0.4重量パーセント、少なくとも約0.5重量パーセント、少なくとも約0.6重量パーセント、少なくとも約0.7重量パーセント、少なくとも約0.8重量パーセント~約1.2重量パーセント以下、約1.0重量パーセント以下、約0.9重量パーセント以下、約0.8重量パーセント以下の範囲であり得る。
【0030】
他のアプローチでは、第1のリン化合物は、式Iの構造を有し得、
【0031】
【化9】
式中、R
1、R
2、及びR
3は、独立して、C4~C8直鎖又は分岐アルキル基である。第1のリン含有化合物は、約5~約10重量パーセントのリンを有し得る。1つの好ましいアプローチでは、第1のリン生成物は、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェートであり得る。
【0032】
第2のリン化合物
アプローチ又は実施形態では、本明細書の組成物の第2のリン化合物は、酸性チオホスフェート又はチオホスフェートエステル、例えば無灰アミン不含ジアルキルジチオリン酸エステル又は硫黄含有リン酸エステルである。他のアプローチ又は実施形態では、第2のリン化合物は、約90ppm~約450ppmのリンを潤滑組成物に、他のアプローチでは、約135ppm~約360ppmのリン、更なるアプローチでは、約135ppm~約270ppm、又はなお他のアプローチでは、約225ppm~約360ppmのリンを提供する。代替的なアプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、約0.1重量パーセント~約0.5重量パーセントの第2のリン化合物、他のアプローチでは約0.15重量パーセント~約0.4重量パーセント、更なるアプローチでは約0.15重量パーセント~約0.3重量パーセント、又はなお他のアプローチでは約0.3重量パーセント~約0.4重量パーセントの第2のリン化合物を含む。
【0033】
他のアプローチ又は実施形態では、第2のリン化合物は、少なくとも約90ppm、少なくとも約100ppm、少なくとも約120ppm、少なくとも約140ppm、少なくとも約160ppm、少なくとも約180ppm、少なくとも約200ppm、少なくとも約220ppm~約360ppm以下、約340ppm以下、約320ppm以下、約300ppm以下、又は約280ppm以下の範囲の量でリンを潤滑組成物に提供する。なお他のアプローチでは、潤滑油組成物中の第1リン化合物の処理率は、少なくとも約0.1重量パーセント、少なくとも約0.15重量パーセント、少なくとも約0.2重量パーセント、少なくとも約0.25重量パーセント、又は少なくとも約0.3重量パーセント~約0.5重量パーセント以下、約0.45重量パーセント以下、約0.4重量パーセント以下、約0.35重量パーセント以下、又は約0.3重量パーセント以下、又は約0.25重量パーセント以下の範囲であり得る。
【0034】
第2のリン化合物の酸性チオホスフェート、チオホスフェートエステル、又は硫黄含有リン酸エステルは、1つ以上の硫黄-リン結合を有し得る。一実施形態では、硫黄含有リン酸エステルは、酸性チオホスフェート、チオホスフェートエステル、チオリン酸、又はそれらの塩であり得る。チオリン酸エステルは、ジチオリン酸エステルであり得る。いくつかのより具体的なアプローチでは、酸性チオホスフェート又はチオホスフェートエステルは、式IIの構造又はその塩を有し得、
【0035】
【化10】
式中、R
4及びR
5は、各々独立して、直鎖又は分岐C1~C10ヒドロカルビル基であり、R
7は、C1~C10直鎖若しくは分岐カルボキシル基、又はC1~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキルアルカノエート基である。好ましくは、R
4及びR
5は、各々C3~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、R
7は、2-メチルプロピオン酸から誘導されており、その結果第2のリン生成物(又はその塩)は、以下の式IIの構造を有し、
【0036】
【化11】
式中、R
4及びR
5は、独立して、C3~C8直鎖又は分岐アルキル基(好ましくは、分岐C4基)であり、R
6は、-H又は-CH
3である。いくつかのアプローチ又は実施形態では、第2のリン生成物は、好ましくは、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロピオン酸である。
【0037】
第三のリン化合物
本明細書の耐摩耗システムの第3のリン化合物は、ジチオホスフェートエステルアミン塩である。アプローチでは、第3のリン化合物は、約180ppm~約600ppmのリンを潤滑組成物に、他のアプローチでは、約230ppm~約475ppmのリン、更なるアプローチでは、約135~約350ppm、又はなお他のアプローチでは、約350ppm~約470ppmのリンを提供する。代替的なアプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、約0.3重量パーセント~約1.0重量パーセントの第3のリン化合物、他のアプローチでは約0.4重量パーセント~約0.8重量パーセント、更なるアプローチでは約0.4重量パーセント~約0.6重量パーセント、又はなお他のアプローチでは約0.6重量パーセント~約0.8重量パーセントの第3のリン化合物を含む。
【0038】
他のアプローチ又は実施形態では、第3のリン化合物は、少なくとも約180ppm、少なくとも約200ppm、少なくとも約220ppm、少なくとも約240ppm、少なくとも約260ppm、少なくとも約280ppm、少なくとも約300ppm、少なくとも約320ppm、少なくとも約340ppm、又は少なくとも約360ppm~約600ppm以下、約580ppm以下、約580ppm以下、約540ppm以下、約520ppm以下、約500ppm以下、約480ppm以下、約460ppm以下、約440ppm以下、約420ppm以下、約400ppm以下、又は約380ppm以下の範囲の量でリンを潤滑組成物に提供する。なお他のアプローチでは、潤滑油組成物中の第3のリン化合物の処理率は、少なくとも約0.3重量パーセント、少なくとも約0.35重量パーセント、少なくとも約0.4重量パーセント、少なくとも約0.45重量パーセント、少なくとも約0.5重量パーセント、少なくとも約0.55重量パーセント、又は少なくとも約0.6重量パーセント~約1.0重量パーセント以下、約0.8重量パーセント以下、約0.7重量パーセント以下、約0.6重量パーセント以下、又は約0.55重量パーセント以下の範囲であり得る。
【0039】
アプローチでは、第3のリン化合物は、O,O-ジヒドロカルビルホスホロジチオ酸などのホスホロジチオ酸とエポキシドとを反応させて、第1の反応生成物を生成することによって作製される反応生成物である。次いで、第1の反応生成物を五酸化リンと反応させて、第2の反応生成物を提供する。次いで、第2の反応生成物をアミンで中和して、耐摩耗システムの第3のリン化合物を提供する。
【0040】
アプローチ又は実施形態では、多種多様なホスホロジチオ酸を使用して、第3のリン生成物を形成し得る。アプローチでは、第3のリン生成物を生成するための出発ホスホロジチオ酸は、式IIIの一般構造を有し得、
【0041】
【化12】
式中、R
8及びR
9は、C1~C30ヒドロカルビル基、好ましくはブチル、ラウリル、4-メチル-2-ペンチル基などの直鎖又は分岐アルキル基であり得る。式IIIの出発酸は、五硫化リンを好適なアルコール又はフェノールと反応させることによって調製され得る。一例では、アルコール又はフェノールは、約50℃~約200℃で五硫化リンと反応させ得る。
【0042】
実施形態では、第1の反応生成物を形成するために使用される好適なエポキシドとしては、式IVのものが挙げられる。
【0043】
【化13】
式中、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各々独立して、水素又は任意のC
1~C
30ヒドロカルビル基であり、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、α-メチルスチレンオキシド、それらの組み合わせ、及び類似のオキシドが挙げられ得る。好ましいオキシドとしては、エチレン及び/又はプロピレンオキシドが挙げられる。
【0044】
アプローチでは、第2の反応生成物を中和するための好適なアミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、炭素環式アミン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。実施形態では、アミンは、4~30個の炭素原子を有し得る。アミンは、いくつかのアプローチでは、少なくとも約8個の炭素原子を含有する脂肪族一級アミンを含み得、構造R14NH2を有し得、式中、R14は、例えば、tert-オクチル、tert-ドデシル、tert-テトラデシル、tert-オクタデシル、セチル、ベヘニル、ステアリル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル、ヘキサトリアコンタニル、及びペンタヘキサコンタニルなどの脂肪族基である。他の実施形態では、好適なアミンは、C11~C20三級アルキル一級アミン、より好ましくは、C11~C14三級アルキル一級アミンであり得る。更なるアミンとしては、シクロへキシルアミン、n-ヘキシルアミン、ドデシルアミン、ジ-ドデシルアミン、トリ-ドデシルアミン、N-メチル-オクチルアミン、ブチルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、N-ドデシルトリメチレンジアミン、アニリン、o-トルイジン、ベンジジン、フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチルフェニレンジアミン、β-ナフチルアミン、α-ナフチルアミン、モルホリン、ピペラジン、メタンジアミン、シクロペンチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、オクタメチレンジアミン、及びN,N’-ジブチルフェニレンジアミンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0045】
他の任意選択的なアプローチでは、ヒドロキシ置換アミンもまた、第2の反応生成物の中和において使用され得る。例示的なヒドロキシル置換アミンとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、パラ-アミノフェノール、4-アミノ-ナフトール-1,8-アミノ-ナフトール-1、β-アミノアリザリン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-4’-ヒドロキシ-ジフェニルエーテル、2-アミノ-レゾルシノール、N-4-ヒドロキシブチル-ドデシルアミン、N-2-ヒドロキシエチル-n-オクチルアミン、N-2-ヒドロキシプロピルジノニルアミン、N,N-ジ-(3-ヒドロキシプロピル)-tert-ドデシルアミン、N-ヒドロキシトリエトキシエチル-tert-テトラデシルアミン、N-2-ヒドロキシエチル-tert-ドデシルアミン、N-ヒドロキシヘキサプロポキシプロピル-tert-オクタデシルアミン、及びN-5-ヒドロキシペンチルジ-n-デシルアミンが挙げられ得る。
【0046】
基油
1つのアプローチでは、本明細書の潤滑組成物又はギア流体に使用するための好適な基油としては、鉱油、合成油が挙げられ、全ての一般的な鉱油ベースストックが挙げられる。鉱油は、ナフテン系又はパラフィン系であり得る。鉱油は、酸、アルカリ、及び粘土又は塩化アルミニウムなどの他の薬剤を使用する従来の方法によって精製され得るか、又は、例えば、フェノール、二酸化硫黄、フルフラール、若しくはジクロロジエチルエーテルなどの溶媒を用いる溶媒抽出によって生成された抽出油であり得る。鉱油は、水素化処理若しくは水素化精製、冷却若しくは接触脱蝋プロセスによる脱蝋、又は水素化分解され得る(SK Innovation Co.,Ltd.(Seoul、Korea)からの水素化分解基油のYubase(登録商標)ファミリーなど)。鉱油は、天然原油源から生成され得るか、又は異性化ワックス材料若しくは他の精製プロセスの残留物から構成され得る。
【0047】
基油、又は本明細書の組成物中で使用される潤滑粘度の基油は、ドライブライン又はギア油用途に好適な任意の基油から選択され得る。例として、米国石油協会(American Petroleum Institute(API))Base Oil Interchangeability Guidelinesに指定される、グループI~Vの基油が挙げられる。これらの3つの基油のグループは、以下の通りである。
【0048】
【0049】
グループI、II、及びIIIは、鉱油プロセスストックであり、本出願のドライブライン又はギア流体に好ましい場合がある。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、当該産業において合成流体と称され得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。いくつかのアプローチでは、基油は、グループIとグループII油とのブレンドであり得、このブレンドは、約0%~約100%のグループI油、約0%~約100%のグループII油、約0%~約100%のグループIII油、又はグループIとII、グループIとIII、若しくはグループIIとIII油とのブレンドの様々なブレンドであり得る。
【0050】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源に由来するものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得る、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0051】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって更に処理される。
【0052】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られる油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理又は酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導される油もまた、有用であり得る。
【0053】
本明細書のギア流体中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供に起因する基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供に起因する基油以外のものである。
【0054】
基油はまた、合成基油のうちのいずれかであり得る。有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマー若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと呼ばれる)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0055】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製することができる。
【0056】
本明細書の組成物中の潤滑粘度の基油の量は、性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「過半量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、約90重量%超、又は95重量%超であり得る。
【0057】
いくつかのアプローチでは、好ましい基油又は潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、約120を超える粘度指数、及び約100℃で約2~約8cStの動粘度を有する。他のアプローチでは、潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、120を超える粘度指数、及び100℃で約4cStの動粘度を有する。基油は、40%超、45%超、50%超、55%超、又は90%超のCP(パラフィン系炭素含有量)を有し得る。基油は、5%未満、3%未満、又は1%未満のCA(芳香族炭素含有量)を有し得る。基油は、60%未満、55%未満、50%未満、又は50%未満、及び30%超のCN(ナフテン系炭素含有量)を有し得る。基油は、2未満又は1.5未満又は1未満の、1環ナフテン対2~6環ナフテンの割合を有し得る。
【0058】
本明細書の好適な変速機又はギア潤滑剤組成物は、以下の表2に列挙された範囲の添加剤成分を含み得る。
【0059】
【0060】
上記の各成分のパーセンテージは、最終的な添加剤又は潤滑油組成物の総重量に基づく、各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残部は、1つ以上の基油又は溶媒からなる。本明細書に記載される組成物の配合に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分組み合わせで基油又は溶媒にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。
【0061】
アプローチ又は実施形態では、本明細書の潤滑組成物は、第1のリン化合物によって提供される約280ppm~約840ppmのリン、第2のリン化合物によって提供される約90ppm~約450ppmのリン、及び第3のリン化合物によって提供される約180ppm~約600ppmのリンを含む。代替的なアプローチでは、総リンの約30~約60重量パーセントが第1のリン化合物によって提供され、総リンの約12~約35重量パーセントが第2のリン化合物によって提供され、総リンの約20~約35重量パーセントが第3のリン化合物によって提供される。なお他の任意選択的なアプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、第2及び第3のリン化合物の合計よりも多くの第1のリン化合物を含む。本明細書の任意の実施形態又はアプローチでは、3つのリン化合物のこのような組み合わせは、ASTM D4172(40kgf)に準拠して約0.5mm以下(好ましくは約0.48mm以下、より好ましくは約0.45mm以下、更により好ましくは約0.43mm以下)の摩耗傷跡を達成し、同時に、90℃でCEC L-84に準拠して10以上の不合格荷重段階評価も有する潤滑組成物を提供する。本明細書の潤滑組成物は、ASTM D445を使用して100℃で測定される、約4~約15cSt(好ましくは約4~約10、約4~約8、より好ましくは約5~約8cSt)のKV100を有する低粘度であっても、このような性能を達成する。
【0062】
本明細書に記載される潤滑組成物は、先に考察されたように、潤滑並びに良好な凝着摩耗及びアブレシブ摩耗の両方を提供するように配合され得る。本明細書の潤滑組成物は、ギア、変速機、又はギアボックス構成要素などの機械部品を潤滑するために使用され得る。本開示による潤滑流体は、工業用ギア用途、自動車用ギア用途、車軸、及び固定ギアボックスなどのギア用途において使用され得る。ギアタイプとしては、スパー、スパイラル、ウォーム、ラックアンドピニオン、インボリュート、ベベル、ヘリカル、プラネタリ、及びハイポイドギア、並びに限定スリップ用途、及びディファレンシャルが挙げられ得るが、これらに限定されない。本明細書に開示される潤滑組成物はまた、ステップ自動変速機、無段変速機、半自動変速機、自動手動変速機、トロイダル変速機、及びデュアルクラッチ変速機を含む、自動又は手動変速機にも好適である。
【0063】
任意選択的な添加剤
他のアプローチでは、上記のこのような添加剤を含む潤滑剤はまた、このような成分及びその量が上記の段落に記載されるような性能特性に影響を及ぼさない限り、1つ以上の任意選択的な成分も含み得る。これらの任意選択的な成分は、以下の段落において記載される。
【0064】
他のリン含有化合物
本明細書の潤滑剤組成物は、言及されたリン化合物及び上記の量が満たされる限り、流体に耐摩耗の利益を付与し得る1つ以上の他のリン含有化合物を含み得る。1つ以上の他のリン含有化合物は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%の範囲の量で、潤滑油組成物中に存在し得る。任意選択的な他のリン含有化合物は、最大5000ppmのリン、又は約50~約5000ppmのリン、又は約300~約1500ppmのリン、又は最大600ppmのリン、又は最大900ppmのリンを潤滑剤組成物に提供し得る。
【0065】
1つ以上の他のリン含有化合物は、無灰リン含有化合物を含み得る。好適なリン含有化合物の例としては、チオホスフェート、ジチオホスフェート、ホスフェート、リン酸エステル、ホスフェートエステル、ホスファイト、ホスホネート、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はそれらのアミド塩、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第0612839号により完全に記載されている。
【0066】
ホスホネート及びホスファイトという用語は、潤滑剤業界ではしばしば互換的に使用されることに注意すべきである。例えば、ジブチル水素ホスホネートは、ジブチル水素ホスファイトと称されることがある。本発明の潤滑剤組成物が、ホスファイト又はホスホネートのいずれかと称されることがあるリン含有化合物を含むことは、本発明の範囲内である。
【0067】
上記のリン含有化合物のうちのいずれかでは、化合物は、約5重量パーセント~約20重量パーセントのリン、又は約5重量パーセント~約15重量パーセントのリン、又は約8重量パーセント~約16重量パーセントのリン、又は約6重量パーセント~約9重量パーセントのリンを有し得る。
【0068】
別のタイプのリン含有化合物は、すなわち、無灰(金属不含)リン含有化合物である。いくつかの実施形態では、無灰リン含有化合物は、ジアルキルジチオホスフェートエステル、アミル酸ホスフェート、ジアミル酸ホスフェート、ジブチル水素ホスフェート、ジメチルオクタデシルホスフェート、それらの塩、及びそれらの混合物であり得る。無灰リン含有化合物は、式:
【0069】
【化14】
を有し得、
式中、R1は、S又はOであり、R2は、-OR”、-OH、又は-R”であり、R3は、-OR”、-OH、又はSR’’’C(O)OHであり、R4は、-OR”であり、R’’’は、C1~C3分岐又は直鎖アルキル鎖であり、R”は、C1~C18ヒドロカルビル鎖である。リン含有化合物が式XIVに示した構造を有するとき、化合物は、約8~約16重量パーセントのリンを有し得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Sであり、R2は、-OR”であり、R3は、SR’’’COOHであり、R4は、-OR”であり、R’’’は、C3分岐アルキル鎖であり、R”は、C4であり、リン含有化合物は、80~900ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0071】
別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、-OHであり、R3は、-OR”又は-OHであり、R4は、-OR”であり、R”は、C5であり、リン含有化合物は、80~1500ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0072】
なお別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、OR”であり、R3は、Hであり、R4は、-OR”であり、R”は、C4であり、1つ以上のリン含有化合物は、80~1550ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0073】
他の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、-R”であり、R3は、-OCH3又は-OHであり、R4は、-OCH3であり、R”は、C18であり、1つ以上のリン含有化合物は、80~850ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0074】
いくつかの実施形態では、リン含有化合物は、式XIVに示される構造を有し、約80ppm~約4500ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する。他の実施形態では、リン含有化合物は、約150ppm~約1500ppmのリン、又は約300ppm~約900ppmのリン、又は約800ppm~1600ppmのリン、又は約900ppm~約1800ppmのリンを、潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0075】
他の耐摩耗剤
潤滑剤組成物はまた、リン不含化合物である他の耐摩耗剤も含み得る。かかる耐摩耗剤の例としては、ホウ酸エステル、ホウ酸エポキシド、チオカルバメート化合物(例えば、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、及びそれらの混合物)、硫化オレフィン、アジピン酸トリデシル、チタン化合物、及びヒドロキシルカルボン酸の長鎖誘導体、例えば、タルトレート誘導体、タルトラミド、タルトリミド、シトレート、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なチオカルバメート化合物は、モリブデンジチオカルバメートである。好適なタルトレート誘導体又はタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得る、アルキル-エステル基を含有し得る。タルトレート誘導体又はタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得る、アルキル-エステル基を含有し得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。追加の耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲において存在し得る。
【0076】
他の極圧剤
本開示の潤滑剤組成物はまた、他の極圧剤も含有し得る。極圧剤は、硫黄を含有し得、少なくとも12重量パーセントの硫黄を含有し得る。いくつかの実施形態では、潤滑油に添加される極圧剤は、少なくとも350ppmの硫黄、500ppmの硫黄、760ppmの硫黄、約350ppm~約2,000ppmの硫黄、約2,000ppm~約30,000ppmの硫黄、又は約2,000ppm~約4,800ppmの硫黄、又は約4,000ppm~約25,000ppmの硫黄を、潤滑剤組成物に提供するのに十分である。
【0077】
多種多様な硫黄含有極圧剤が好適であり、硫化動物性又は植物性脂肪又は油、硫化動物性又は植物性脂肪酸エステル、リンの三価又は五価酸の完全又は部分エステル化エステル、硫化オレフィン(例えば、米国特許第2,995,569号、同第3,673,090号、同第3,703,504号、同第3,703,505号、同第3,796,661号、同第3,873,454号、同第4,119,549号、同第4,119,550号、同第4,147,640号、同第4,191,659号、同第4,240,958号、同第4,344,854号、同第4,472,306号、及び同第4,711,736号を参照されたい)、ジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第2,237,625号、同第2,237,627号、同第2,527,948号、同第2,695,316号、同第3,022,351号、同第3,308,166号、同第3,392,201号、同第4,564,709号、及び英国特許第1,162,334号を参照されたい)、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第4,218,332号を参照されたい)、及びポリスルフィドオレフィン生成物(例えば、米国特許第4,795,576号を参照されたい)が挙げられる。他の好適な例としては、硫化オレフィン、硫黄含有アミノ複素環化合物、5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、大部分のS3及びS4スルフィドを有するポリスルフィド、硫化脂肪酸、硫化分岐オレフィン、有機ポリスルフィド、及びそれらの混合物から選択される有機硫黄化合物が挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態では、極圧剤は、潤滑組成物において、最大約3.0重量%又は最大約5.0重量%の量で存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%~約0.5重量%存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約3.0重量%存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.6重量%~約1重量%の量で存在する。なお他の実施形態では、洗浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約1.0重量%の量で存在する。
【0079】
極圧剤の1つの好適なクラスは、式:Ra-Sx-Rbによって表される1つ以上の化合物から構成されるポリスルフィドであり、式中、Ra及びRbは、ヒドロカルビル基であり、その各々は、1~18個、他のアプローチでは、3~18個の炭素原子を含有し得、xは、2~8の範囲、典型的には2~5の範囲、特に3であり得る。いくつかのアプローチでは、xは、3~5の整数であり、xの約30~約60パーセントは、3又は4の整数である。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、又はアラルキルなどの多種多様なタイプであり得る。ジ-tert-ブチルトリスルフィドなどの三級アルキルポリスルフィド、及びジ-tert-ブチルトリスルフィドを含む混合物(例えば、主に又は完全にトリ-、テトラ-、及びペンタスルフィドから構成された混合物)を使用することができる。他の有用なジヒドロカルビルポリスルフィドの例としては、ジアミルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、及びジベンジルポリスルフィドが挙げられる。
【0080】
極圧剤の別の好適なクラスは、イソブテンなどのオレフィンを硫黄と反応させることによって作製された硫化イソブテンである。硫化イソブテン(SIB)、特に硫化されたポリイソブチレンは、典型的には、約10~約55重量%、望ましくは約30~約50重量%の硫黄含有量を有する。多種多様な他のオレフィン又は不飽和炭化水素、例えばイソブテンダイマー又はトライマーを使用して、硫化オレフィン極圧剤を形成することができる。硫化オレフィンを調製するための様々な方法が先行技術において開示されてきた。例えば、Myersの米国特許第3,471,404号、Papayらの米国特許第4,204,969号、Zaweskiらの米国特許第4,954,274号、DeGoniaらの米国特許第4,966,720号、及びHorodyskyらの米国特許第3,703,504号を参照されたい、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
前述の特許に開示されている方法を含む硫化オレフィンの調製するための方法は、「付加物」と典型的には称される材料の形成を含み、オレフィンをハロゲン化硫黄と、例えば一塩化硫黄と、反応させる。次いで、その付加物を硫黄源と反応させて、硫化オレフィンを提供する。硫化オレフィンの品質は、一般に、例えば、粘度、硫黄含有量、ハロゲン含有量、銅腐食試験重量損失などの様々な物理的特性によって測定される。米国特許第4,966,720号は、潤滑油における極圧添加剤として有用な硫化オレフィンと、それらの調製のための2段階反応と、に関する。
【0082】
酸化防止剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有し得る。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0083】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えばBASFから入手可能なIrganox(登録商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含み得、アルキル基は、約1~約18個、又は約2~約12個、又は約2~約8個、又は約2~約6個、又は約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(登録商標)4716を含み得る。
【0084】
有用な酸化防止剤としては、ジアリールアミン及びフェノールが挙げられ得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有し得、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、潤滑剤組成物に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%のフェノールとの混合物であり得る。
【0085】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0086】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0087】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0088】
分散剤
潤滑剤組成物中に含有される分散剤としては、分散させる粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素主鎖が挙げられ得るが、これに限定されない。典型的には、分散剤は、多くの場合架橋基を介してポリマー主鎖に結合しているアミン、アルコール、アミド、又はエステル極性部分を含む。分散剤は、米国特許第3,634,515号、同第3,697,574号、及び同第3,736,357号に記載されているようなマンニッヒ分散剤、米国特許第4,234,435号及び同第4,636,322号に記載されているような無灰スクシンイミド分散剤、米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、及び同第5,633,326号に記載されているようなアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号、及び同第5,627,259号に記載されているようなコッホ分散剤、並びに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、及び同第5,792,729号に記載されているようなポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、追加の分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、追加の分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。別の実施形態では、追加の分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフトされる無水物から誘導され得る。別の追加の分散剤は、高分子量エステル又は半エステルアミドであり得る。
【0090】
存在する場合、追加の分散剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約10重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。使用することができる分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約3重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であり得る。
【0091】
粘度指数改善剤
本明細書の潤滑剤組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の粘度指数改善剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改善剤は、星型ポリマーを含み得、好適な例は、米国特許出願公開第2012/0101017A1号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、粘度指数改善剤に加えて、又は粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0093】
粘度指数改善剤及び/又は分散剤粘度指数改善剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%、約3重量%~約20重量%、約3重量%~約15重量%、約5重量%~約15重量%、又は約5重量%~約10重量%であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、粘度指数改善剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリオレフィン又はオレフィンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数改善剤は、約40,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有する水素化スチレン/ブタジエンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数改善剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリメタクリレートである。
【0095】
他の任意選択的な添加剤
他の添加剤は、潤滑剤組成物に要求される1つ以上の機能を実行するように選択することができる。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。他の添加剤は、本開示に指定される添加剤に加えられ得、かつ/又は金属不活性化剤、粘度指数改善剤、無灰TBNブースタ、耐摩耗剤、腐食抑制剤、錆抑制剤、分散剤、分散剤粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全に配合された潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0096】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択的に酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0097】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0098】
好適な流動点降下剤としては、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物が挙げられ得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0099】
好適な錆抑制剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な錆抑制剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用な種類の酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な錆抑制剤は、高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態では、エンジン油は、錆抑制剤を含まない。
【0100】
錆抑制剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な任意選択的な量で使用され得る。
【0101】
潤滑剤組成物は、腐食抑制剤も含み得る(他の言及した成分のいくつかは銅腐食抑制特性も有し得ることに留意すべきである)。好適な銅腐食抑制剤としては、エーテルアミン、ポリエトキシル化化合物、例えば、エトキシル化アミン及びエトキシル化アルコール、イミダゾリン、モノアルキル、並びにジアルキルチアジアゾールなどが挙げられる。
【0102】
チアゾール、トリアゾール、及びチアジアゾールも、潤滑剤に使用され得る。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、及び2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。一実施形態では、潤滑剤組成物は、1,3,4-チアジアゾール、例えば、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-ジチアジアゾールを含む。
【0103】
発泡防止剤/界面活性剤もまた、本発明による流体に含まれ得る。そのような用途のための様々な薬剤が知られている。エチルアクリレートとヘキシルエチルアクリレートとのコポリマー、例えば、Solutiaから入手可能なPC-1244を使用することができる。他の実施形態では、4%DCFなどのシリコーン流体が含まれ得る。発泡防止剤の混合物もまた、潤滑剤組成物に存在し得る。
【0104】
実施例
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を例解するものである。これらの実施例並びに本出願の他の箇所において、全ての比率、部、及び百分率は、別段の指示がない限り重量基準である。これらの実施例は、例解のみを目的として提示されており、本明細書で開示される発明の範囲を限定するは意図されないということが意図される。
【0105】
実施例1
以下の3つのリン化合物を、以下を含む潤滑組成物において凝着摩耗及びアブレシブ摩耗の両方について評価した。
・リン化合物A:以下の構造を有する、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(7重量%のリンを含有する)、
【0106】
【化15】
・リン化合物B:以下の構造を有する、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイ]チオ]-2-メチル-プロピオン酸(9重量%のリンを含有する)、
【0107】
【化16】
・リン化合物C:約5.9重量%のリンを含有し、(i)O,O-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ホスホロジチオ酸をプロピレンオキシドと反応させて、第1の反応生成物を形成することと、(ii)第1の反応生成物を五酸化リンと反応させて、酸性ホスフェート中間体を形成することと、(iii)中間体の少なくとも主要部分をC11~C14三級アルキル一級アミンで中和することと、によって形成されたリン生成物。化合物Cは、約30重量パーセントの鉱油を含む。
【0108】
リン化合物A、B、及び/又はCを、表3に示す量で低粘度流体に組み込んだ。各潤滑剤はまた、洗浄剤、分散剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、及び発泡防止剤の同じ添加剤パッケージを含んでいた。各潤滑剤はまた、表4に示されるように、約6cStのKV100を達成するために鉱物基油を含む。
【0109】
【0110】
ギア表面にアブレシブ摩耗及び凝着摩耗保護を提供する各流体の能力を、それぞれASTM D4172(1200rpm/40kg/75℃/1時間)及びCEC L-84(90℃)を使用して測定した。結果を以下の表4に示す。
【0111】
【0112】
流体がリン化合物を含有しない場合(比較例1)、流体は、不十分なASTM D4172(40kgf)性能を有し、0.54mmの摩耗傷跡をもたらす。比較例1はまた、不十分な凝着摩耗性能を有し、6の不合格荷重段階(FLS)をもたらす。流体の目標性能は、ASTM D4172(40kgf)が0.5mm未満であり、CEC L-84がFLS(不合格荷重段階)9を超える、好ましくはFLS10以上を有することである。リン生成物A、B、又はCのいずれかが、単独で、又は流体中のリンの同等レベルで1つの他のリン化合物のみとの組み合わせで使用される場合(比較例2~7)、ASTM D4172又はCEC L-84のいずれも、要求される性能レベルを満たさない。3つのリン化合物A、B、及びCの全てが一緒に使用される場合にのみ、流体は、必要とされる性能レベルを満たし(発明例1)ASTM D4172(40kgf)では、例えば、0.43mmの摩耗傷跡を与え、CEC L-84は、FLS10を実証する。
【0113】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を排除するものではないように、非限定的であることを意図する。
【0114】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0115】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0116】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0117】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0118】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0119】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物を包含することを意図している。