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特許7413605高速且つ大きなカバレッジの光ワイヤレス通信のための受信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】高速且つ大きなカバレッジの光ワイヤレス通信のための受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/112 20130101AFI20240105BHJP
   H04B 10/66 20130101ALI20240105BHJP
【FI】
H04B10/112
H04B10/66
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023507828
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021070326
(87)【国際公開番号】W WO2022028888
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】20189817.8
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】カリード アミール マスード
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン クリスチャン
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-051400(JP,A)
【文献】特開2011-135206(JP,A)
【文献】特開2017-055375(JP,A)
【文献】特開2018-129095(JP,A)
【文献】特開2006-203873(JP,A)
【文献】特開2007-135144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0027658(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/112
H04B 10/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ワイヤレス通信信号を受信するための光フロントエンドサブシステムであって、当該光フロントエンドサブシステムは、
第1の光信号を受信するように構成される第1のアクティブ表面エリアを有する第1のフォトダイオードと、
第2の光信号を受信するように構成される第2のアクティブ表面エリアを有する第2のフォトダイオードと、
前記第1の光信号の受信信号強度を所定の基準値と比較するように構成されるスニファ回路と、
前記第1の光信号の受信信号強度が前記所定の基準値よりも高い場合、当該光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第1の光信号を選択し、そうではない場合、当該光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第2の光信号を選択するように構成されるスイッチと、
を含み、
前記第2のアクティブ表面エリアは、前記第1のアクティブ表面エリアよりも大きい、光フロントエンドサブシステム。
【請求項2】
前記第2のアクティブ表面エリアは、前記第1のアクティブ表面エリアの少なくとも2倍である、請求項1に記載の光フロントエンドサブシステム。
【請求項3】
前記第1のフォトダイオードは、第1の信号収集エリア内で前記第1の光信号を受信するように構成され、前記第2のフォトダイオードは、第2の信号収集エリア内で前記第2の光信号を受信するように構成され、前記第2の信号収集エリアは、前記第1の信号収集エリアよりも大きい、請求項1又は2記載の光フロントエンドサブシステム。
【請求項4】
前記第1の信号収集エリアは、前記第2の信号収集エリアによって完全にカバーされる、請求項に記載の光フロントエンドサブシステム。
【請求項5】
前記第1のフォトダイオードは、前記第2のフォトダイオードよりも高いデータレートをサポートするように構成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光フロントエンドサブシステム。
【請求項6】
前記スニファ回路は、受信信号強度を推定するように構成されるRMSディテクタを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光フロントエンドサブシステム。
【請求項7】
当該光フロントエンドサブシステムは、
前記第1のフォトダイオードに接続される第1のアンプであって、前記第1のフォトダイオードの特性にカスタマイズされる第1の増幅回路を使用して前記受信した第1の光信号を増幅するように構成される、第1のアンプと、
前記第2のフォトダイオードに接続される第2のアンプであって、前記第2のフォトダイオードの特性にカスタマイズされる第2の増幅回路を使用して前記受信した第2の光信号を増幅するように構成される、第2のアンプと、
を含み、
前記スニファ回路は、前記第1の光信号が前記第1のアンプによって増幅された後、前記第1の光信号の受信信号強度を第2の所定の基準値と比較するように構成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光フロントエンドサブシステム。
【請求項8】
前記第1のアンプ及び/又は前記第2のアンプは、トランスインピーダンスアンプである、請求項7に記載の光フロントエンドサブシステム。
【請求項9】
当該光フロントエンドサブシステムは、第3の光信号を受信するように構成される第3のアクティブ表面エリアを有する第3のフォトダイオードであって、前記第3のアクティブ表面エリアは、前記第1のアクティブ表面エリアよりも大きいが、前記第2のアクティブ表面エリアよりも小さい、第3のフォトダイオードを含み、
前記スニファ回路は、前記第3の光信号の受信信号強度を第3の所定の基準値と比較するように構成され、
前記スイッチは、前記第1の光信号の受信信号強度が前記所定の基準値よりも高い場合、当該光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第1の光信号を選択し、前記第1の光信号の受信信号強度が前記所定の基準値よりも高くなく、前記第3の光信号の受信信号強度が前記第3の所定の基準値よりも高い場合、当該光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第3の光信号を選択し、そうではない場合、当該光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第2の光信号を選択するように構成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光フロントエンドサブシステム。
【請求項10】
光ワイヤレス通信信号を受信するための光レシーバであって、当該光レシーバは、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光フロントエンドサブシステムと、
アナログ処理のために前記光フロントエンドサブシステムから入力信号を受けるように構成されるアナログフロントエンドコンポーネントと、
前記アナログフロントエンドコンポーネントからのアナログ処理された信号の出力にベースバンド処理を実施するように構成されるモデムコンポーネントと、
を含む、光レシーバ。
【請求項11】
光ワイヤレス通信システムであって、当該光ワイヤレス通信システムは、
請求項10に記載の光レシーバと、
1つ以上の光フロントエンドを含む光トランスミッタであって、前記1つ以上の光フロントエンドの各々が光源を含む、光トランスミッタと、
を含み、
前記光レシーバは、前記光トランスミッタによって送信される光ワイヤレス通信信号を受信するように構成される、光ワイヤレス通信システム。
【請求項12】
光ワイヤレス通信信号を受信するための光フロントエンドサブシステムの方法であって、当該方法は、前記光フロントエンドサブシステムが、
第1のアクティブ表面エリアを有する第1のフォトダイオードによって、第1の光信号を受信することと、
第2のアクティブ表面エリアを有する第2のフォトダイオードによって、第2の光信号を受信することと、
前記第1の光信号の受信信号強度を所定の基準値と比較することと、
前記第1の光信号の受信信号強度が前記所定の基準値よりも高い場合、前記光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第1の光信号を選択し、そうではない場合、前記光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第2の光信号を選択することと、
を含み、
前記第2のアクティブ表面エリアは、前記第1のアクティブ表面エリアよりも大きい、方法。
【請求項13】
当該方法は、前記光フロントエンドサブシステムが、
第3のアクティブ表面エリアを有する第3のフォトダイオードによって、第3の光信号を受信することであって、前記第3のアクティブ表面エリアは、前記第1のアクティブ表面エリアよりも大きいが、前記第2のアクティブ表面エリアよりも小さい、ことと、
前記第3の光信号の受信信号強度を第3の所定の基準値と比較することと、
前記第1の光信号の受信信号強度が前記所定の基準値よりも高い場合、前記光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第1の光信号、又は
前記第1の光信号の受信信号強度が前記所定の基準値よりも高くなく、前記第3の光信号の受信信号強度が前記第3の所定の基準値よりも高い場合、前記光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第3の光信号、又は
前記第1の光信号の受信信号強度が前記所定の基準値よりも高くなく、前記第3の光信号の受信信号強度が前記第3の所定の基準値よりも高くない場合、前記光フロントエンドサブシステムの出力信号として前記受信した第2の光信号、
を選択することと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピューティングプログラムであって、当該プログラムが処理手段を含む光フロントエンドサブシステムによって実行された場合、前記処理手段に請求項12又は13に記載の方法を実行させるコード手段を含む、コンピューティングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Li-Fiネットワーク等、光ワイヤレス通信ネットワーク(optical wireless communication network)の分野に関する。とりわけ、本明細書では、高速且つ大きなカバレッジの光ワイヤレス通信をサポートするためのレシーバダイバーシティを有するシステムに関する、様々な方法、装置、システム、及びコンピュータ可読媒体が開示される。
【背景技術】
【0002】
ラップトップ、タブレット、スマートフォン等、ますます多くの電子デバイスがワイヤレスでインターネットに接続することを可能にするために、ワイヤレス通信は、データレート及びリンク品質に関するこれまでにない要件に直面し、IoT(Internet-of-Things)に関する新たなデジタル革命を踏まえ、このような要件は年々高まっている。Wi-Fi(登録商標)等の無線周波数技術(Radio frequency technology)は、この革命に取り組むにはスペクトルキャパシティ(spectrum capacity)が限られている。一方、ライトフィデリティ(light fidelity)(Li-Fi)は、その本質的なセキュリティ強化(intrinsic security enhancement)、及び、可視光、紫外線(UV)、赤外線(IR)スペクトルの利用可能な帯域幅でより高いデータレートをサポートするケイパビリティ(capability)でますます注目を集めている。さらに、Li-Fiは指向性があり、光遮断材料によって遮蔽されるため、同じ帯域幅を空間的に再利用することによりユーザの密なエリアに、Wi-Fi(登録商標)と比較して、より多くのアクセスポイントを配備する可能性を備える。ワイヤレス無線周波数通信(wireless radio frequency communication)に対するこれらの重要な優位性は、Li-FiをIoTアプリケーション及び屋内ワイヤレスアクセスのための混雑した無線スペクトル(crowded radio spectrum)への圧力を緩和する有望なセキュアソリューションにしている。Li-Fiの他の利点としては、特定のユーザに保証される帯域幅、及び電磁干渉を受けやすいエリアにおいて安全に機能する能力(ability)が挙げられる。それゆえ、Li-Fiは、次世代のイマーシブコネクティビティ(immersive connectivity)を可能にする非常に有望な技術である。
【0003】
照明ベースの通信の分野ではいくつかの関連するターミノロジーがある。可視光通信(VLC:visible-light communication)は、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)等の強度変調光源によって、人間の目の持続性(persistence)よりも速くデータを送信する。Li-Fiは、日常照明器具(everyday luminaire)、例えば、室内照明又は屋外照明等の照明源によって発せられる光に信号を埋め込み、斯くして、照明器具からの照明を情報のキャリアとして使用することを可能にするために用いられることが多い。斯くして、光は、部屋等の対象環境を照らすための可視照明寄与(典型的には、光の主要な目的)と、環境に情報を提供するための埋め込まれた信号(典型的には、光の副次的な機能と考えられる)との両方を含み得る。このような場合、変調は、典型的には、人間の知覚を超えるように十分に高い周波数で、又は、少なくとも、目に見える一時的な光アーティファクト(例えば、フリッカ及び/又はストロボアーティファクト等)が、人間が気づかない若しくは少なくとも人間が許容できるように十分に高い周波数で十分に弱くなるように行われる。斯くして、埋め込まれた信号は、主要な照明機能に影響を与えない。すなわち、ユーザは、全体的な照明を知覚するだけで、当該照明に変調されているデータの効果は知覚しない。
【0004】
IEEE 802.15.7可視光通信パーソナルエリアネットワーク(VPAN:visible-light communication personal area network)規格は、対象のアプリケーションを4つのトポロジ(ピアツーピア、スター、ブロードキャスト、協調(coordinated))にマッピングする。光ワイヤレスPAN(OWPAN:Optical Wireless PAN)は、通信に、UV、IR等、不可視光も許容する、VPANよりも一般的な用語である。斯くして、Li-Fiは、双方向データ通信をサポートするために広範囲の光スペクトルを利用する、光ワイヤレス通信(OWC:optical wireless communication)技術の派生技術として一般に受け入れられている。
【0005】
Li-Fiシステムにおいて、信号は、さまざまな適切な変調技術のいずれかに従って、光のプロパティ、典型的には強度を変調することによって埋め込まれる。高速通信の場合、可視光通信ではなく赤外線(IR)通信が用いられることがよくある。紫外線及び赤外線放射は人間の目には見えないが、スペクトルのこれらの領域を利用する技術は、屈折率の場合等、波長依存性の結果としてばらつきが生じる可能性はあるが、同様である。多くの場合、紫外線及び/又は赤外線を利用することは、これらの周波数範囲が人間の目には見えず、よりフレキシビリティがシステムに導入されることができるため、有利である。無論、紫外量子(ultraviolet quantum)は、赤外及び/又は可視光に比べてより高いエネルギレベルを有するため、状況によっては紫外光の使用が望ましくない場合もある。
【0006】
変調に基づいて、光における情報は、任意の適切な光センサ又はフォトディテクタを用いて検出されることができる。例えば、光センサは、フォトダイオードであってもよい。光センサは、専用のフォトセル(ポイントディテクタ)、場合によってはレンズ、リフレクタ、ディフューザ又は蛍光体コンバータ(低速用)を備えたフォトセルのアレイ、又はフォトセル(ピクセル)のアレイ及びアレイに像を形成するためのレンズであってもよい。例えば、光センサは、スマートフォン、タブレット又はラップトップ等のユーザデバイスにプラグインするドングルに含まれる専用のフォトセルであってもよく、又は、センサは、統合されてもよく及び/又は3D顔認識のために元々は設計されている赤外線ディテクタのアレイ等、二重目的であってもよい。どちらにしても、これにより、ユーザデバイス上で動作するアプリケーションは、光を介してデータを受信することが可能になる。
【0007】
Li-Fiシステムは、THzの範囲の非許可帯域幅(un-licensed bandwidth)で非常に高いデータレートをサポートする可能性があるが、現在商業的に達成可能なビットレートは、典型的には、LED(可視又はIR)の低い固有の帯域幅(10~20MHz)に起因して、OFDM等のスペクトル効率の高い変調を使用して数百Mbpsの範囲にある。さらに、Li-Fiシステムが大きなカバレッジ(例えば、半値全幅(FWHM:full width at half maximum)の関数に従って30~60°)をサポートすることは非常に魅力的である。しかしながら、大きなカバレッジの要件は、典型的には、受信光パワーの大幅な低減(高いパスロス、TXパワーを目の安全制限下に維持)をもたらし、したがって、全体のスループットをさらに制限する可能性がある。一方、レーザ、又は垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL:vertical-cavity surface-emitting laser)ベースのLi-Fiシステムは、大きな変調帯域幅をサポートすることができる。しかしながら、目の安全のために、レーザ/VCSELによって発せられるパワー総量はかなり制限され、斯くして、大きなカバレッジを実現することは依然困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LEDベースの光ワイヤレス通信システムでは、比較的大きなFoV及び長い通信距離で、低~中のデータレートが達成されることができる。レーザ/VCSELベースの光ワイヤレス通信システムでは、比較的小さなカバレッジ(狭ビーム)及び短い通信距離で、より高いデータレートが達成されることができる。両システムの利点を活用するために、本発明者らは、レシーバ側のフォトダイオードのアクティブ表面エリアにダイバーシティ(diversity)を採用することを提案する。したがって、光レシーバは、高速及び大きなカバレッジ両方の光ワイヤレス通信をサポートするフレキシビリティを有する。
【0009】
上記に鑑み、本開示は、受信システムが高速及び大きなカバレッジの両方を達成することを可能にするレシーバダイバーシティ(receiver diversity)を提供するための方法、装置、システム、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読媒体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
とりわけ、本発明の目的は、請求項1に記載の光フロントエンドサブシステムによって、請求項9に記載の光レシーバによって、請求項10に記載の光ワイヤレス通信システムによって、請求項11に記載の光フロントエンドサブシステムの方法によって、及び請求項13に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、光ワイヤレス通信信号を受信するための光フロントエンドサブシステム(optical front-end subsystem)が、第1の光信号(optical signal)を受信するように構成される第1のアクティブ表面エリア(active surface area)を有する第1のフォトダイオードと、第2の光信号を受信するように構成される第2のアクティブ表面エリアを有する第2のフォトダイオードと、第1の光信号の受信信号強度を所定の基準値と比較するように構成されるスニファ回路(sniffer circuit)と、第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第1の光信号を選択し、そうではない場合(otherwise)、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第2の光信号を選択するように構成されるスイッチとを含み、第2のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアよりも大きい、光フロントエンドサブシステムが提供される。
【0012】
フォトダイオードは、デバイスの動作モードに基づいて光を電流又は電圧に変換する半導体デバイスである。場合によっては、フォトダイオードは、フォトディテクタ(photo detector)、光ディテクタ(light detector)、又はフォトセンサ(photo sensor)とも呼ばれる。フォトダイオードは、光学フィルタ、ビルトインレンズ(built-in lens)を含んでもよく、大きい又は小さい表面エリアを有してもよい。フォトダイオードは、通常、表面エリアが増加すると応答時間が遅くなる。デバイスの構造に依存して、フォトダイオードは、PNフォトダイオード、ショットキーフォトダイオード、PINフォトダイオード、及びアバランシェフォトダイオード等、異なるタイプに分類されることができる。異なるタイプのフォトダイオードは若干異なって機能する可能性があるが、これらのダイオードの基本的な動作は同じままである。有益には、光フロントエンドサブシステムは、少なくとも2つのフォトダイオード、第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオードを含む。ここで、第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオードは、同じタイプ又は異なるタイプのフォトダイオード、フォトディテクタ、光ディテクタ、又はフォトセンサであってもよい。
【0013】
また、フォトダイオードのアクティブ表面エリア(active surface area)は、有効アクティブエリア(effective active area)、又は表面エリア(surface area)と呼ばれることもある。第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオードは異なるアクティブ表面エリアを有し、これにより、デバイスの異なる特性が、それらが異なる受信シナリオの要求に応えることを可能にする。スニファ回路は、第1のフォトダイオードからの受信した第1の光信号を第1の所定の基準値と比較するために使用される。第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高い場合、受信した第1の光信号が、光フロントエンドサブシステムの出力信号として選択される。そうではない場合、受信した第2の光信号が、光フロントエンドサブシステムの出力信号として選択される。第1の所定の基準値は、ファクトリープリセット(factory pre-set)で構成されてもよく、値は、第1のフォトダイオードのタイプ専用であってもよい。また、第1の所定の基準値は、第1のアクティブ表面エリアのサイズを踏まえて第1のフォトダイオードのタイプ専用であってもよい。また、第1の所定の基準値は、現場における光フロントエンドサブシステムの物理的な設置時に構成されてもよい。さらなる例において、第1の所定の基準値は、システムセットアップ、ユーザシナリオ、アプリケーション要件、又はユーザの好みに応じてユーザによって構成されてもよい。第1の所定の基準値、又は本質的に選択基準を調整することによって、光フロントエンドサブシステムは、第1のフォトダイオードによって受信される第1の光信号又は第2のフォトダイオードによって受信される第2の光信号のいずれかを優先的に選択してもよい。
【0014】
好ましくは、第2のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアの少なくとも2倍である。
【0015】
より大きなアクティブ表面エリアは、フォトダイオードが、入射光に応答してより多くの電流を生成するのに役立つが、より高い接合容量、したがって、より低い速度又はより狭い信号帯域幅を犠牲にすることになる。本発明は、異なるアプリケーションシナリオの要求に応えるためにアクティブ表面エリアのサイズに十分な違いを有する第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオードを用いることを目的とする。
【0016】
前述したように、LEDベースの光ワイヤレス通信システムは、比較的長い通信距離及び大きなカバレッジであるが、低~中のデータレートによって特徴付けられ、一方、VCSELベースの光ワイヤレス通信システムは、高いデータレートであるが、狭いFoVで比較的小さな角度カバレッジによって特徴付けられる。斯くして、受信した第1の光信号が光フロントエンドサブシステムの出力信号として採用される場合、VCSELベースのトランスミッタと関連して使用されてもよい。受信した第2の光信号が光フロントエンドサブシステムの出力信号として採用される場合、LEDベースのトランスミッタと関連して使用されてもよい。トランスミッタが、LED及びVCSELの両方を含むハイブリッドフロントエンド等、ハイブリッドセットアップのものである場合、光フロントエンドサブシステムは、フォトダイオードによって検出される光信号の受信信号強度に応じて最適なフォトダイオードを適応的に選択してもよい。これは、トランスミッタからの実際の距離、光の入射角、光の強度、及びパスロス等、実際のユーザシナリオの影響が、最終的にフォトダイオードによって検出される光信号の信号強度に反映されるためである。
【0017】
有利には、第1のフォトダイオードはさらに、第1の信号収集エリア(signal collection area)内で第1の光信号を受信するように構成され、第2のフォトダイオードはさらに、第2の信号収集エリア内で第2の光信号を受信するように構成され、第2の信号収集エリアは、第1の信号収集エリアよりも大きい。
【0018】
フォトダイオードの信号収集エリアは、光信号を受信するためのフォトダイオードのカバレッジとして理解されるべきである。場合によっては、カバレッジは、角度カバレッジ(angular coverage)、又は視野(FoV:field of view)として定義されることもある。典型的には、レンズのない裸のフォトダイオードは比較的広いFoV(120°等)を有し、その上のレンズが最終的な又は実際のFoVを定義することになる。レンズは、フォトダイオードのビルトインレンズであってもよい。
【0019】
アクティブ表面エリアに投影される入射光のみがフォトダイオードによって収集され、電流信号又は電圧信号の形態で、電気信号に変換されることができることに留意されたい。通常、小エリアフォトダイオードは、あまり光を収集せず、光信号収集(optical signal collection)を高めるために追加の光学系(レンズ)を必要とする。レンズは、入射光ビームをこの小さなアクティブエリアに収束させることになる。しかしながら、大きな入射角(広いFoV)が必要とされる場合、レンズによって生成される像のサイズも増加することになり、収束光ビームの一部がアクティブエリアに当たらず、それゆえ、角度入射カバレッジと光収集量との間にトレードオフを課す。斯くして、光信号を効率よく収集するために、より小さなアクティブ表面エリアを有する第1のフォトダイオードは、第2のフォトダイオードに比べて、より狭いFoVも有することが有益である。
【0020】
好ましいセットアップにおいて、第1の信号収集エリアは、第2の信号収集エリアによって完全にカバーされる。
【0021】
フォトダイオード、すなわちフォトディテクタのアクティブ表面エリアのエッジの不均一性(inhomogeneity)は、フォトダイオードの時間領域の応答を歪ませる不要な容量及び抵抗を生成する可能性があることが知られていた。斯くして、フォトダイオードへの入射光は、アクティブ表面エリア、すなわちアクティブエリアによく中心付けられる(well centered)ことも好ましい。斯くして、第1の信号収集エリアが、第2の信号収集エリアによって完全にカバーされることは有益であり得る。さらに、第1の信号収集エリア及び第2の信号収集エリアが同じ点を中心とすることも有益である。
【0022】
有利には、第1のフォトダイオードは、第2のフォトダイオードよりも高いデータレートをサポートするように構成される。
【0023】
前述のように、接合容量(junction capacitance)は、フォトダイオードの帯域幅及び応答速度に多大な影響を及ぼす。接合容量は、アクティブ表面エリアに正比例する。フォトダイオードのより大きなアクティブ表面エリアは、より大きな接合ボリューム(junction volume)を包囲し(encompass)、接合容量も増加する。したがって、第1のフォトダイオードのより小さなアクティブ表面エリアは、第2のフォトダイオードに比べて、より大きな信号帯域幅を可能にする。したがって、より高いデータレートが、第1のフォトダイオードによってサポートされることができる。
【0024】
好ましくは、スニファ回路はさらに、受信信号強度を推定するように構成されるRMS(2乗平均平方根(Root Mean Square))ディテクタを含む。
【0025】
スニファ回路は、受信した第1の光信号の信号強度を測定し、当該信号強度を所定の基準値と比較する必要がある。斯くして、スニファ回路は、信号強度ディテクタを含む。好ましい例において、信号強度ディテクタは、RMS(Root Mean Square)ディテクタである。別の例では、信号強度ディテクタは、ピークディテクタであってもよいが、OFDMベースのシステムにとって、ピーク値は、あまりよくコンディショニングされていない統計的変数(less well conditioned statistical variable)である。さらなる例では、信号強度ディテクタは、AC成分平均ディテクタ(AC component average detector)であってもよい。
【0026】
スイッチは、MOSFET又はトランジスタであってもよい。
【0027】
一実施形態において、光フロントエンドサブシステムはさらに、第1のフォトダイオードに接続される第1のアンプであって、第1のフォトダイオードの特性にカスタマイズされる第1の増幅回路を使用して受信した第1の光信号を増幅するように構成される、第1のアンプと、第2のフォトダイオードに接続される第2のアンプであって、第2のフォトダイオードの特性にカスタマイズされる第2の増幅回路を使用して受信した第2の光信号を増幅するように構成される、第2のアンプとを含み、スニファ回路はさらに、第1の光信号が第1のアンプによって増幅された後、第1の光信号の受信信号強度を第2の所定の基準値と比較するように構成される。
【0028】
フォトダイオードからの出力電気信号は通常かなり小さいという事実を考えると、アンプが、典型的には、フォトダイオードからの小さな信号を、レシーバチェーンでさらに処理するのに十分大きくなることができるように増幅するために採用される。アンプは、典型的には、アンプ自身によってもたらされる熱雑音に起因して信号品質が劣化しないように、及び信号によって伝達される情報を保持するのに十分な信号帯域を維持するために、該アンプに先行するフォトダイオードの特性に応じてカスタマイズ及び/又は構成される。例えば、アンプは、SNRの劣化を避けるために十分な利得を提供すべきである。しかしながら、利得が高すぎると、不必要な複雑さ、コスト、電力消費を招く可能性がある。さらに、フォトダイオード容量の2次効果により、高周波数で過度な雑音利得の増加が生じる可能性があり、これは、高周波数域で信号品質をさらに劣化させる可能性がある。さらに、総入力容量、フォトダイオード信号範囲、所要の帯域幅、及び最小信号での所要の振れ(swing)等、1つ以上の他のパラメータが考慮されてもよい。個々のフォトダイオードに関してアンプをカスタマイズ及び/又は最適化するために多くの設計上のトレードオフがあることが分かる。斯くして、第1のアンプの最適化された設計から利益を得るために、スニファ回路は、増幅段の後に第1の光信号の受信信号強度を基準値と比較することが有利であり得る。
【0029】
好ましくは、第1のアンプ及び/又は第2のアンプは、トランスインピーダンスアンプ(TIA:transimpedance amplifier)である。
【0030】
TIAは電流-電圧コンバータの一種であり、電圧応答よりも電流応答が線形であるセンサによく使用される。TIAは、フォトダイオードの受信信号をコンディショニングするための初段アンプ(first stage amplifier)として非常によく使用される。
【0031】
別の実施形態において、光フロントエンドサブシステムはさらに、第3の光信号を受信するように構成される第3のアクティブ表面エリアを有する第3のフォトダイオードであって、第3のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアよりも大きいが、第2のアクティブ表面エリアよりも小さい、第3のフォトダイオードを含み、スニファ回路は、第3の光信号の受信信号強度を第3の所定の基準値と比較するように構成され、スイッチはさらに、第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第1の光信号を選択し、第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高くなく、第3の光信号の受信信号強度が第3の所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第3の光信号を選択し、そうではない場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第2の光信号を選択するように構成される。
【0032】
好ましくは、第2のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアの少なくとも2倍である。比率は、2倍よりはるかに大きくてもよい。例えば、第2のアクティブ表面エリアは、異なるアプリケーション要件を満たすために第1のアクティブ表面エリアの10倍以上であってもよい。また、第1のアクティブ表面エリアよりも大きいが、第2のアクティブ表面エリアよりも小さいアクティブ表面エリアを有する、第3のフォトダイオードが、光フロントエンドサブシステムに配備されてもよい。斯くして、スニファ回路は、まず、第1の光信号の受信信号強度を所定の基準値でチェックし、要件が満たされた場合、光フロントエンドサブシステムの出力として受信した第1の光信号を選択するように構成される。そうではない場合、スニファ回路は、さらに、第3の光信号の受信信号強度を第3の所定の基準値でチェックし、要件が満たされた場合、光フロントエンドサブシステムの出力として受信した第3の光信号を選択するように構成される。そうではない場合、受信した第2の光信号が出力として選択される。このようにして、光フロントエンドサブシステムは、可能な限り高い帯域幅を有する受信パスを優先的にアクティブにするように構成される。多様化するアプリケーションニーズによって追加のハードウェアコストが正当化される限り、さらなるフォトダイオードが、光フロントエンドサブシステムによって採用されてもよいことに留意されたい。
【0033】
第3のフォトダイオードは、第3の信号収集エリア内で第3の光信号を受信するように構成される。好ましくは、第3の信号収集エリアは、第1の信号収集エリアよりも大きいが、第2の信号収集エリアよりも小さい。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、光レシーバ(optical receiver)が提供される。光ワイヤレス通信信号を受信するための光レシーバであって、当該光レシーバは、本発明による光フロントエンドサブシステムと、アナログ処理のために光フロントエンドサブシステムから入力信号を受けるように構成されるアナログフロントエンドコンポーネントと、アナログフロントエンドコンポーネントからのアナログ処理された信号の出力にベースバンド処理を実施するように構成されるモデムコンポーネントとを含む。
【0035】
開示される光フロントエンドサブシステムは、光レシーバチェーンを完成するためにアナログフロントエンド及びモデムと結合されてもよい。光フロントエンドサブシステムにおける選択の後、1つの受信パスのみが有効であるので、アナログフロントエンド及びモデムは、従来の光レシーバにおけるものと同じであってもよい。
【0036】
本発明の第3の態様によれば、光ワイヤレス通信システムが提供される。光ワイヤレス通信システムは、本発明による光レシーバと、1つ以上の光フロントエンドを含む光トランスミッタであって、1つ以上の光フロントエンドの各々が光源を含む、光トランスミッタとを含み、光レシーバは、光トランスミッタによって送信される光ワイヤレス通信信号を受信するように構成される。
【0037】
開示される光レシーバは、異なるトランスミッタセットアップに対処することができ、実際のアプリケーションシナリオに適応した最良の受信ケイパビリティを提供することができる。開示される光ワイヤレス通信システムにおいて、トランスミッタは、各々が光源を含む、1つ以上の光フロントエンドを含んでもよい。光源は、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)、又はLED及びVCSELの両方を含むハイブリッドフロントエンドのいずれかであってもよい。
【0038】
本発明の第4の態様によれば、光フロントエンドサブシステムの方法が提供される。光ワイヤレス通信信号を受信するための光フロントエンドサブシステムの方法であって、当該方法は、光フロントエンドサブシステムが、第1のアクティブ表面エリアを有する第1のフォトダイオードによって、第1の光信号を受信することと、第2のアクティブ表面エリアを有する第2のフォトダイオードによって、第2の光信号を受信することと、第1の光信号の受信信号強度を所定の基準値と比較することと、第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第1の光信号を選択し、そうではない場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第2の光信号を選択することとを含み、第2のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアよりも大きい。
【0039】
有利には、方法はさらに、光フロントエンドサブシステムが、第3のアクティブ表面エリアを有する第3のフォトダイオードによって、第3の光信号を受信することであって、第3のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアよりも大きいが、第2のアクティブ表面エリアよりも小さい、ことと、第3の光信号の受信信号強度を第3の所定の基準値と比較することと、第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第1の光信号、又は、第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高くなく、第3の光信号の受信信号強度が第3の所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第3の光信号、又は、第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高くなく、第3の光信号の受信信号強度が第3の所定の基準値よりも高くない場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第2の光信号を選択することとを含む。
【0040】
本発明はさらに、コンピューティングプログラムであって、当該プログラムが処理手段を含む光フロントエンドサブシステムによって実行された場合、処理手段に本発明で開示される光フロントエンドサブシステムの方法を実行させるコード手段を含む、コンピューティングプログラムに具現化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図面中、同様の参照文字は、一般に、異なる図にわたって同じ部分を指す。また、これらの図面は、必ずしも正しい縮尺ではなく、その代わりに、全般的に、本発明の原理を例示することに重点が置かれている。
図1】本発明の光フロントエンドサブシステムの1つの可能なシステムセットアップを示す。
図2】異なるアクティブ表面エリアに起因するレシーバダイバーシティの概念を示す。
図3】第1の信号収集エリア及び第2の信号収集エリアの配置の一例を示す。
図4】本発明の光フロントエンドサブシステムの別の可能なシステムセットアップを示す。
図5】本発明の光フロントエンドサブシステムのさらなる可能なシステムセットアップを示す。
図6】本発明の光レシーバの基本的な構成要素を概略的に示す。
図7】光フロントエンドサブシステムの方法のフローチャートを示す。
図8】光フロントエンドサブシステムの方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
ここで、本発明の様々な実施形態が、図1に示されるような光フロントエンドサブシステム100に基づいて述べられる。基本的なセットアップとして、光フロントエンドサブシステム100は、第1のフォトダイオード110、第2のフォトダイオード120、スニファ回路140、及びスイッチ150を含む。第1のフォトダイオード110及び第2のフォトダイオード120は、同じタイプ又は異なるタイプのフォトダイオードであってもよい。ここで、フォトダイオードは、アクティブ表面エリアを有する、フォトセンサ、光センサ、又はフォトディテクタ等、広義に理解されるべきである。第1のフォトダイオード110は、第2のフォトダイオード120と、アクティブ表面エリアのサイズが異なる。第2のフォトダイオード120の第2のアクティブ表面エリアは、第1のフォトダイオード110の第1のアクティブ表面エリアよりも大きい。斯くして、異なる応答時間が、第1のフォトダイオード110及び第2のフォトダイオード120によって提供される。したがって、より小さなアクティブ表面エリアを有する、第1のフォトダイオード110は、第2のフォトダイオード120と比較して、より高いデータレート通信をサポートすることが可能である。光トランスミッタからの距離が増大される場合、スニファ回路によって得られる比較結果による等、第1のフォトダイオードの受信信号強度は十分でなくなる。光フロントエンドサブシステム100は、第2の信号収集エリア、すなわち、第1の信号収集エリアと比較してより広いFoVからエネルギを収集するために第2のフォトダイオードを利用するように構成される。第2のフォトダイオードの方がアクティブ表面エリアが大きいので、第2のフォトダイオードは、低~中のデータレート通信のための光受信を行うように構成される。
【0043】
理想的には、第1のフォトダイオードは、VCSELベースの光トランスミッタ等、高速ナロービーム光トランスミッタと対をなすために使用される。第2のフォトダイオードは、LEDベースの光トランスミッタ等、中~低速ワイドビーム光トランスミッタと対をなすために使用される。斯くして、アクティブエリアのダイバーシティの特徴(active area diversity feature)を利用することにより、開示される光フロントエンドサブシステムは、選択により適応的に高速及び広いカバレッジ両方の光通信の利点を享受することができる。
【0044】
従来のセグメント化された光レシーバでは、2つ以上の均一なフォトダイオード又は光ディテクタが同時にイネーブルにされ、各々が異なる向きに向けられ、組み合わせて広いFoVをカバーしている。通常、適切なカバレッジを有するために、光レシーバは、4つ以上のフォトダイオードを必要とする可能性がある。高データレートを実現するために、各フォトダイオードは、極めて狭いFoVを有し、より多くのフォトダイオードが、信号収集エリア全体をカバーするために必要とされる可能性がある。斯くして、セグメント化されたソリューションと比較して、開示されるシステムは、フレキシビリティ、低ハードウェアコスト、及び低電力消費に関する利点を有する。
【0045】
図2は、第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオードの異なるアクティブ表面エリアに起因するレシーバダイバーシティを示している。左図において、x軸は光フロントエンドサブシステムと光トランスミッタとの間の距離Dを表し、y軸は受信光信号の正規化されたパワー|P|を表す。Vrefは、光信号の受信信号強度と比較するための閾値として使用される所定の基準値を示す。右図において、x軸は受信光信号の正規化されたパワー|P|を表し、y軸はサポートされるべきデータレートRを表す。第1のフォトダイオードと第2のフォトダイオードとの特性を区別するために1st及び2ndによって曲線が示されている。図2から、光トランスミッタから同距離において、第2のフォトダイオードは、アクティブ表面エリアが大きいため、第1のフォトダイオードと比較してより多くのエネルギを収集することが可能であることがわかる。言い換えれば、同じエネルギを収集するために、第1のフォトダイオードは、短い通信距離又は狭いFoVを有する。しかしながら、同じ正規化された受信電力の場合、第1のフォトダイオードは、接合容量が小さく、応答時間が短いため、より高いデータレートをサポートすることが可能である。この意味において、第1のフォトダイオードは、比較的短い距離であるが高データレート通信のアプリケーションシナリオをカバーするために使用され、2のフォトダイオードは、比較的長い通信距離であるが低~中データレート通信のアプリケーションシナリオをカバーするために使用される。
【0046】
組み合わせることで、開示される光フロントエンドサブシステムは、大きなカバレッジ及び高データレート両方のアプリケーション要件をカバーすることが可能である。改善されたフレキシビリティは、比較的低いハードウェアコスト及びシステムの複雑さで提供される。
【0047】
第1のフォトダイオードは、第1の信号収集エリアZ1内で第1の光信号を受信するように構成され、第2のフォトダイオードは、第2の信号収集エリアZ2内で第2の光信号を受信するように構成される。例示のみを目的として、図3は、第1の信号収集エリアZ1及び第2の信号収集エリアZ2の配置の一例を提供している。Z1及び/又はZ2は、対称的な形状を有してもよいが、不規則な形状のものであってもよい。この例では、Z1及びZ2の両方は対称的な形状を有し、Z1はZ2によって完全にカバーされている。別の例では、Z1及びZ2は部分的に重なってもよく、又はまったく重ならなくてもよい。第1の信号収集エリアZ1及び第2の信号収集エリアZ2のサイズ及び形状は、主に第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオード上のレンズによって決定される。レンズの設計は、効率の良い光エネルギ収集を実現するために個々のフォトダイオードのアクティブ表面エリアを考慮すべきである。
【0048】
図4は、本発明の光フロントエンドサブシステムの別の可能なシステムセットアップを示している。このセットアップでは、第1のフォトダイオード110の特性にカスタマイズされる第1のアンプ160が、第1の光信号がスニファ回路140によって評価される前に受信した第1の光信号を増幅するために第1のフォトダイオード110に接続されている。同様に、第2のフォトダイオード120の特性にカスタマイズされる第2のアンプ170が、受信した第2の光信号を増幅するために第2のフォトダイオード120に接続されている。ここで、総入力容量、フォトダイオード信号範囲、所要の帯域幅、及び最小信号での所要の振れ等、個々のフォトダイオードに関連する1つ以上の特性又はパラメータが考慮されてもよい。斯くして、この例では、スニファ回路の評価(assessment)は、アンプによってコンディショニングされた後の受信した光信号に基づく。フォトダイオードからの出力電気信号は典型的にはかなり小さいので、フォトダイオードからの斯様に小さな信号を十分に大きな信号に増幅することは、さらなる処理に有益である。第1のアンプ160は第1のフォトダイオード110専用であり、第2のアンプ170は第2のフォトダイオード120専用であり、カスタマイズされた設計が、先行するフォトダイオードの特性を考慮してアンプに適用されることができる。斯くして、光フロントエンドサブシステムはさらに、なされる選択に依存して、受信した第1の光信号又は受信した第2の光信号のいずれかを処理するためにスイッチの後に別のアンプが置かれるオプションと比較して、2つのブランチにおいて最適化される。
【0049】
図5は、本発明の光フロントエンドサブシステムのさらなる可能なシステムセットアップを示している。第1のフォトダイオードの第1のアクティブ表面エリアよりも大きいが、第2のフォトダイオードの第2のアクティブ表面エリアよりも小さい第3のアクティブ表面エリアを有する、第3のフォトダイオード130が採用されている。前述のように、第2のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアの少なくとも2倍であり、比率は、10倍以上と大きくすることも可能である。斯くして、第3のフォトダイオードは、第1のアクティブ表面エリアと第2のアクティブ表面エリアとの間のサイズを有する第3のアクティブ表面エリアを有する。光フロントエンドサブシステムは、システムの複雑さと多種多様なアプリケーションシナリオをカバーする要件との間のバランスを提供するためにもう1つの微調整された受信チェーン(fine-tuned receiving chain)でさらに強化される。別のシナリオでは、光フロントエンドサブシステムは、ハードウェアコスト及び複雑さがアプリケーションニーズによって正当化される限り、さらなるフォトダイオードでさらに拡張されてもよい。
【0050】
図5のセットアップは、図1に開示されるようなシステムセットアップの上に構築されていることに留意されたい。また、第3のフォトダイオード130を採用する実施形態は、図4に示される実施形態と組み合わせて使用され、第3のアンプが、第3のフォトダイオード130の直後でスニファ回路140の前に置かれてもよい。
【0051】
図6は、本発明の光レシーバ200の基本的な構成要素を概略的に示している。光レシーバ200は、上述したような光フロントエンドサブシステム100、アナログフロントエンドコンポーネント210、及びモデムコンポーネント220を少なくとも含む。アナログフロントエンドコンポーネントは、アナログ処理のために光フロントエンドサブシステム100から入力信号を受け、モデムコンポーネントは、アナログフロントエンドコンポーネント210からのアナログ処理された信号の出力にベースバンド処理を実施するように構成される。光フロントエンドサブシステム100は、受信ダイバーシティを提供するために2つ以上のフォトダイオードを含むが、2つ以上のフォトダイオード間の選択は、光フロントエンドサブシステム100の内部で実施され、単一の出力信号のみが、受信チェーン内の次のコンポーネントであるアナログフロントエンドコンポーネント210に提供される。斯くして、アナログフロントエンドコンポーネント及びモデムコンポーネントは、帯域幅及びクロック速度等、処理能力は、第1のフォトダイオード又は第2のフォトダイオードからの受信した信号を処理するのに十分であるべきであるが、従来の光レシーバで使用されるものと同じハードウェアを使用してもよい。
【0052】
光レシーバ200は、光通信システムにおいて光トランスミッタと光通信リンクを構築するために使用されてもよい。光レシーバによって提供されるフレキシビリティを考えると、光トランスミッタは、同様に1つ以上の光フロントエンドを含んでもよい。単一の光フロントエンドは、光信号を送信するための光源を含む。光源は、LED、レーザダイオード、VCSEL、又はLED及びVCSELの両方を含むハイブリッドフロントエンドであることができる。
【0053】
図7は、光ワイヤレス通信信号を受信するための光フロントエンドサブシステム100の方法500のフローチャートを示している。方法500は、光フロントエンドサブシステム100が、ステップS501において、第1のアクティブ表面エリアを有する第1のフォトダイオード110によって、第1の光信号を受信することと、ステップS502において、第2のアクティブ表面エリアを有する第2のフォトダイオード120によって、第2の光信号を受信することとを含む。その後、ステップS503において、光フロントエンドサブシステム100は、第1の光信号の受信信号強度を所定の基準値と比較し、ステップS504において、第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第1の光信号を選択し、そうではない場合、光フロントエンドサブシステム100の出力信号として受信した第2の光信号を選択し、第2のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアよりも大きい。
【0054】
図8は、光フロントエンドサブシステム100の方法500の別の実施態様のフローチャートを示している。方法500は、光フロントエンドサブシステム100が、ステップS501において、第1のアクティブ表面エリアを有する第1のフォトダイオード110によって、第1の光信号を受信することと、ステップS502において、第2のアクティブ表面エリアを有する第2のフォトダイオード120によって、第2の光信号を受信することとを含む。その後、ステップS503において、光フロントエンドサブシステム100は、第1の光信号の受信信号強度を所定の基準値と比較する。ステップS505において、方法は、光フロントエンドサブシステム100が、第3のアクティブ表面エリアを有する第3のフォトダイオード130によって、第3の光信号を受信することを含み、第3のアクティブ表面エリアは、第1のアクティブ表面エリアよりも大きいが、第2のアクティブ表面エリアよりも小さい。ステップS506において、光フロントエンドサブシステム100は、第3の光信号の受信信号強度を第3の所定の基準値と比較し、ステップS507において、
第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第1の光信号、又は
第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高くなく、第3の光信号の受信信号強度が第3の所定の基準値よりも高い場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第3の光信号、又は
第1の光信号の受信信号強度が所定の基準値よりも高くなく、第3の光信号の受信信号強度が第3の所定の基準値よりも高くない場合、光フロントエンドサブシステムの出力信号として受信した第2の光信号、
を選択する。
【0055】
第3のフォトダイオードは、第3の信号収集エリア内で第3の光信号を受信するように構成される。好ましくは、第3の信号収集エリアは、第1の信号収集エリアZ1よりも大きいが、第2の信号収集エリアZ2よりも小さい。
【0056】
本発明による方法は、コンピュータ実施方法(computer implemented method)としてコンピュータで、又は専用のハードウェアで、又は両方の組み合わせで実施されてもよい。
【0057】
本発明による方法のための実行可能コードは、コンピュータ/機械可読記憶手段に記憶されてもよい。コンピュータ/機械可読記憶手段の例としては、不揮発性メモリデバイス、光記憶媒体/デバイス、ソリッドステート媒体、集積回路、サーバ等が挙げられる。好ましくは、コンピュータプログラムプロダクトは、当該プログラムプロダクトがコンピュータで実行される場合に本発明による方法を実行するためのコンピュータ可読媒体に記憶された非一時的プログラムコード手段を含む。
【0058】
方法、システム及びコンピュータ可読媒体(一時的及び非一時的)は、上述の実施形態の選択された態様を実施するために提供されてもよい。
【0059】
用語「コントローラ」は、本明細書では、一般に、数ある機能の中でもとりわけ、1つ以上のネットワークデバイス又はコーディネータの動作に関連する様々な装置を述べるために使用される。コントローラは、本明細書で論じられる様々な機能を実行するように、数多くのやり方で(例えば、専用ハードウェアを用いて)実装されることができる。「プロセッサ」は、本明細書で論じられる様々な機能を実行するように、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされてもよい、1つ以上のマイクロプロセッサを採用する、コントローラの一例である。コントローラは、プロセッサを用いて、又はプロセッサを用いずに実装されてもよく、また、一部の機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、及び関連回路)との組み合わせとして実装されてもよい。本開示の様々な実施形態で採用されてもよいコントローラ構成要素の例としては、限定するものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)が挙げられる。
【0060】
様々な実装形態では、プロセッサ又はコントローラは、1つ以上の記憶媒体(本明細書では「メモリ」と総称され、例えば、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ、コンパクトディスク、光ディスク等)に関連付けられてもよい。一部の実装形態では、これらの記憶媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、本明細書で論じられる機能の少なくとも一部を実行する、1つ以上のプログラムでエンコードされてもよい。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されてもよく、あるいは、それらの記憶媒体上に記憶されている1つ以上のプログラムが、本明細書で論じられる本発明の様々な態様を実施するために、プロセッサ又はコントローラ内にロードされることができるように、可搬性であってもよい。用語「プログラム」又は「コンピュータプログラム」は、本明細書では、1つ以上のプロセッサ又はコントローラをプログラムするために採用されることが可能な、任意のタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)を指すように、一般的な意味で使用される。
【0061】
本明細書で使用される用語「ネットワーク」は、任意の2つ以上のデバイス間での、及び/又はネットワークに結合された複数のデバイスの間での、(例えば、デバイス制御、データ記憶、データ交換等のための)情報の転送を容易にする、(コントローラ又はプロセッサを含む)2つ以上のデバイスの任意の相互接続を指す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8