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特許7413614X線発生装置、X線撮像装置およびモールド変圧器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】X線発生装置、X線撮像装置およびモールド変圧器
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/08 20060101AFI20240105BHJP
   H05G 1/06 20060101ALI20240105BHJP
   H05G 1/02 20060101ALI20240105BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H05G1/08 T
H05G1/06
H05G1/02 P
H01F27/24 P
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023546350
(86)(22)【出願日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2023009198
【審査請求日】2023-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 順也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120715(JP,A)
【文献】特開平09-115744(JP,A)
【文献】特開2018-206676(JP,A)
【文献】特開2014-041884(JP,A)
【文献】特開2008-153293(JP,A)
【文献】実開昭60-153515(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00 - 1/70
H01F 27/00 -27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器と、前記収納容器の中に配置された絶縁容器と、少なくとも一部分が前記絶縁容器の中に配置されたX線発生管と、前記絶縁容器の中に配置された複数の電気部品と、を備えるX線発生装置であって、
前記複数の電気部品は、モールド変圧器を含み、前記モールド変圧器は、コアと、前記コアに巻かれた第1巻線と、前記コアのうち前記第1巻線が巻かれた第1部分を覆い、かつ前記コアのうち前記第1巻線が巻かれていない第2部分を覆わない絶縁体と、前記絶縁体を介して前記コアに巻かれた第2巻線と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアの前記第2部分に向かって延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含む、
ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記放熱路は、絶縁性液体で満たされる、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記放熱路は、前記収納容器と前記絶縁容器との間の空間に対して連通している、
ことを特徴とする請求項2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記放熱路は、前記絶縁体よりも熱伝導率が高い絶縁材料で構成された部材を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項5】
収納容器と、前記収納容器の中に配置された絶縁容器と、少なくとも一部分が前記絶縁容器の中に配置されたX線発生管と、前記絶縁容器の中に配置された複数の電気部品と、を備えるX線発生装置であって、
前記複数の電気部品は、モールド変圧器を含み、前記モールド変圧器は、コアと、前記コアを覆う絶縁体と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアに向かって延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含み、
前記絶縁容器は、前記モールド変圧器を支持する支持面を含む壁を含み、
前記放熱路は、前記壁における前記コアの中心から最も近い位置と前記中心とを通る仮想線から離れた位置に配置されている、
ことを特徴とすX線発生装置。
【請求項6】
前記放熱路は、前記支持面を含む平面に対して前記放熱路が正射影された領域の少なくとも一部が、前記壁に対して前記コアが正射影された領域に収まるように、配置されている、
ことを特徴とする請求項5に記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記第2部分は、前記穴に満たされた前記絶縁性液体に対して露出し、又は、前記穴に満たされた前記絶縁性液体に対して被膜を介して露出している
ことを特徴とする請求項に記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記絶縁体は、貫通孔を有し、前記第2巻線は、前記貫通孔を通過するように前記絶縁体を介して前記コアに巻かれている、
ことを特徴とする請求項に記載のX線発生装置。
【請求項9】
前記第1巻線は、一次巻線であり、前記第2巻線は、二次巻線である、
ことを特徴とする請求項8に記載のX線発生装置。
【請求項10】
前記第1巻線は、二次巻線であり、前記第2巻線は、一次巻線である、
ことを特徴とする請求項8に記載のX線発生装置。
【請求項11】
前記モールド変圧器は、前記第2巻線の少なくとも一部を覆う絶縁部材を更に含む、
ことを特徴とする請求項8に記載のX線発生装置。
【請求項12】
前記絶縁体は、前記絶縁体の表面に沿って前記第2巻線から前記コアに至る経路に凹凸を有する、
ことを特徴とする請求項8に記載のX線発生装置。
【請求項13】
前記第2巻線は、前記放熱路を囲まないように配置されている、
ことを特徴とする請求項8に記載のX線発生装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のX線発生装置と、
前記X線発生装置から放射されたX線を検出するX線検出器と、
を備えることを特徴とするX線撮像装置。
【請求項15】
モールド変圧器であって、
コアと、前記コアを覆う絶縁体と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアに向かう方向に延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含み、
前記放熱路は、前記絶縁体よりも熱伝導率が高い絶縁材料で構成された部材を含
前記放熱路は、前記コアの中心を通り前記方向に平行な仮想線から離れた位置に配置されている、
ことを特徴とするモールド変圧器。
【請求項16】
前記放熱路は、空間である、
ことを特徴とする請求項15に記載のモールド変圧器。
【請求項17】
前記コアに巻かれ前記絶縁体によって覆われた第1巻線と、前記絶縁体を介して前記コアに巻かれた第2巻線とを含み、
前記方向は、前記外部空間から前記コアのうち前記第1巻線が巻かれていない部分に向かう方向である
ことを特徴とする請求項15に記載のモールド変圧器。
【請求項18】
モールド変圧器であって、
コアと、前記コアを覆う絶縁体と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアに向かう方向に延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含み、
前記放熱路は、前記コアの中心を通り前記方向に平行な仮想線から離れた位置に配置されている、
ことを特徴とするモールド変圧器。
【請求項19】
前記モールド変圧器は、前記コアに巻かれ前記絶縁体によって覆われた第1巻線と、前記絶縁体を介して前記コアに巻かれた第2巻線とを含む、
ことを特徴とする請求項15又は16に記載のモールド変圧器。
【請求項20】
前記絶縁体は、貫通孔を有し、前記第2巻線は、前記貫通孔を通過するように前記絶縁体を介して前記コアに巻かれている、
ことを特徴とする請求項19に記載のモールド変圧器。
【請求項21】
前記第1巻線は、一次巻線であり、前記第2巻線は、二次巻線である、
ことを特徴とする請求項20に記載のモールド変圧器。
【請求項22】
前記第1巻線は、二次巻線であり、前記第2巻線は、一次巻線である、
ことを特徴とする請求項20に記載のモールド変圧器。
【請求項23】
前記モールド変圧器は、前記第2巻線の少なくとも一部を覆う絶縁部材を更に含む、
ことを特徴とする請求項19に記載のモールド変圧器。
【請求項24】
前記絶縁体は、前記絶縁体の表面に沿って前記第2巻線から前記コアに至る経路に凹凸を有する、
ことを特徴とする請求項19に記載のモールド変圧器。
【請求項25】
前記第2巻線は、前記放熱路を囲まないように配置されている、
ことを特徴とする請求項19に記載のモールド変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置、X線撮像装置およびモールド変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
検査装置等に用いられるX線発生装置において、小型化および耐電圧性の向上が求められている。そのためには、モールド変圧器の採用が有利であると考えられるが、従来のモールド変圧器では、コアの熱を効率的に排出することが難しく、そのため、X線発生装置の動作の安定性が損なわれうる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、X線発生装置の動作の安定性の向上に有利な技術を提供する。
【0004】
本発明の第1の側面は、X線発生装置に係り、前記X線発生装置は、収納容器と、前記収納容器の中に配置された絶縁容器と、少なくとも一部分が前記絶縁容器の中に配置されたX線発生管と、前記絶縁容器の中に配置された複数の電気部品と、を備える。前記複数の電気部品は、モールド変圧器を含み、前記モールド変圧器は、コアと、前記コアに巻かれた第1巻線と、前記コアのうち前記第1巻線が巻かれた第1部分を覆い、かつ前記コアのうち前記第1巻線が巻かれていない第2部分を覆わない絶縁体と、前記絶縁体を介して前記コアに巻かれた第2巻線と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアの前記第2部分に向かって延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含む。
本発明の第2の側面は、X線発生装置に係り、前記X線発生装置は、収納容器と、前記収納容器の中に配置された絶縁容器と、少なくとも一部分が前記絶縁容器の中に配置されたX線発生管と、前記絶縁容器の中に配置された複数の電気部品と、を備える。前記複数の電気部品は、モールド変圧器を含み、前記モールド変圧器は、コアと、前記コアを覆う絶縁体と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアに向かって延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含み、前記絶縁容器は、前記モールド変圧器を支持する支持面を含む壁を含み、前記放熱路は、前記壁における前記コアの中心から最も近い位置と前記中心とを通る仮想線から離れた位置に配置されている。
【0005】
本発明の第3の側面は、モールド変圧器に係り、前記モールド変圧器は、コアと、前記コアを覆う絶縁体と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアに向かう方向に延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含み、前記放熱路は、前記絶縁体よりも熱伝導率が高い絶縁材料で構成された部材を含み、前記放熱路は、前記コアの中心を通り前記方向に平行な仮想線から離れた位置に配置されている。
本発明の第4の側面は、モールド変圧器に係り、前記モールド変圧器は、コアと、前記コアを覆う絶縁体と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアに向かう方向に延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含み、前記放熱路は、前記コアの中心を通り前記方向に平行な仮想線から離れた位置に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態のX線発生装置の構成を模式的に示す図。
図2】モールド変圧器の構成を模式的に示す断面図。
図3】モールド変圧器の構成を模式的に示す側面図。
図4】モールド変圧器の構成を模式的に示す断面図。
図5】モールド変圧器の構成を模式的に示す側面図。
図6】変形例のモールド変圧器の構成を模式的に示す側面図。
図7】他の変形例のモールド変圧器の構成を模式的に示す側面図。
図8】比較例のモールド変圧器の構成を模式的に示す断面図。
図9】一実施形態のX線撮像装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。本明細書および添付図面では、XYZ座標系によって方向および配置が示される。
【0008】
図1には、本開示の一実施形態のX線発生装置100の構成が模式的に示されている。X線発生装置100は、収納容器20と、収納容器20の中に配置された絶縁容器50と、少なくとも一部分が絶縁容器50の中に配置されたX線発生管10と、絶縁容器50の中に配置された複数の電気部品と、を備えうる。収納容器20は、導電性部材で構成されうる。絶縁容器50は、絶縁体で構成される。絶縁容器50は、1又は複数の開口を有しうる。X線発生管10は、その少なくとも一部が絶縁容器50の中に配置され、絶縁容器50の1つの開口を通して絶縁容器50の中から外に延びように配置されうる。収納容器20の一部分は、X線発生管10と共有されうる。
【0009】
上記の複数の電気部品は、駆動回路14、モールド変圧器15、ケーブル16、18を含みうる。モールド変圧器15は、収納容器20の外部から引き込まれたケーブル17に電気的に接続された一次巻線と、ケーブル16に電気的に接続された二次巻線とを有する。駆動回路14は、モールド変圧器15からケーブル16を介して供給させる電力を使ってX線発生管10を駆動する。駆動回路14は、昇圧回路を含みうる。該昇圧回路は、例えば、コッククロフト・ウォルトン回路(CW回路)を含みうる。該昇圧回路は、例えば、収納容器20に対して負の高電圧を生成しうる。
【0010】
X線発生管10は、電子を放出する電子放出部を含む陰極12と、該電子放出部から放射された電子が衝突することによってX線を発生するターゲットを含む陽極13とを有しうる。収納容器20は、接地されてよく、X線発生管10の陽極13は、収納容器20に対して電気的に接続されうる。駆動回路14は、X線発生管10の陰極12に対してケーブル18を介して負電位を供給しうる。ケーブル16、18は、導電性部材と、該導電性部材を被覆する絶縁材とを含みうるが、絶縁材を有しなくてもよい。絶縁容器50の内側の空間、収納容器20と絶縁容器50との間の空間57、および、絶縁容器50とX線発生管10との間の空間には、絶縁性液体(例えば、絶縁油)が充填されうる。また、駆動回路14の内側の空間にも絶縁性液体が充填されうる。X線発生管10の陰極12と収納容器20とは、電気的に絶縁されている。収納容器20と絶縁容器50の間の空間57は、絶縁性液体の対流を可能にする対流空間として機能しうる。絶縁容器50は、モールド変圧器15を支持する壁52を含みうる。壁52は、平面形状を有してもよいし、曲面形状を有してもよいし、他の形状を有してもよい。壁52は、モールド変圧器15を支持する支持面521を有する。
【0011】
図2および図3には、モールド変圧器15の構成が模式的に示されている。図2は、モールド変圧器15の模式的な断面図である。図3は、X軸のプラス方向から見たモールド変圧器15の側面図である。図3では省略されているが、モールド変圧器15の背後には、モールド変圧器15を支持するように絶縁容器50の壁52が存在する。モールド変圧器15は、コア60と、コア60を覆う絶縁体80と、コア60から絶縁体80の外部空間に熱を移動させる放熱路82と、を含みうる。放熱路82は、絶縁体80の外部空間からコア60に向かって延びるように絶縁体80に設けられた穴84を含む。放熱路82は、例えば、空間、あるいは流路であり、絶縁性液体で満たされうる。放熱路82は、放熱路82を通してコア60の一部である露出部ERが絶縁体80の外部空間に露出するように構成されてもよい。あるいは、放熱路82は、放熱路82を通してコア60の一部である露出部ERが被膜を介して絶縁体80の外部空間に露出するように構成されてもよい。該被膜は、コア60の熱が放熱路82を通して外部空間に十分に移動するように設けられうる。放熱路82は、絶縁体80よりも熱伝導率が高い絶縁材料(例えば、アルミナ)で構成された部材を含んでもよい。絶縁容器50あるいは壁52は、貫通開口54を有し、放熱路82あるいは穴84は、貫通開口54を通して絶縁体80の外部空間、例えば、空間57に連通し、あるいは面してもよい。
【0012】
コア60は、トロイダルコアでありうる。絶縁体80は、コア60を覆うようにモールド成形される。絶縁体80は、例えば、樹脂で構成される。絶縁体80は、コア60の開口部を通るように配置された貫通孔85を有しうる。モールド変圧器15は、コア60に巻かれ絶縁体80によって覆われた第1巻線と、絶縁体80を介してコア60に巻かれた第2巻線とを含みうる。第2巻線は、絶縁体80の貫通孔85を通過するように絶縁体80(の一部分)を介してコア60に巻かれうる。第1巻線および第2巻線は、2つの巻線を相互に区別するための表現である。図2に示された例では、第1巻線は一次巻線61であり、第2巻線は二次巻線62である。つまり、図2に示された例では、モールド変圧器15は、絶縁体80によって覆われた一次巻線61と、絶縁体80(の一部分)を介してコア60に巻かれた二次巻線62とを含みうる。二次巻線62は、絶縁体80の貫通孔85を通過するように絶縁体80(の一部分)を介して60に巻かれうる。
【0013】
図2に示された構成とは異なり、モールド変圧器15は、絶縁体80によって覆われた二次巻線62と、絶縁体80(の一部分)を介してコア60に巻かれた一次巻線61とを含んでもよい。この場合。一次巻線61は、絶縁体80の貫通孔85を通過するように絶縁体80(の一部分)を介して60に巻かれうる。
【0014】
図2に示された例に沿って説明すると、モールド変圧器15における絶縁性能は、二次巻線62とコア60の露出部ERとの間の沿面距離(絶縁体80の表面に沿った最短距離)に依存しうる。沿面距離の評価において、二次巻線62のうち考慮されるべき位置は、例えば、貫通孔85の出口付近である。つまり、沿面距離は、貫通孔85の出口付近における二次巻線62と露出部ERとの間の絶縁体80の表面に沿った最短距離でありうる。
【0015】
一次巻線61は、例えば、絶縁容器50あるいは壁52に設けられた配線孔56を通してケーブル17に接続されうる。配線孔56には、ネジなどの導電性部材が挿入され、該導電性部材を介してケーブル17と一次巻線61とが電気的に接続されてもよい。一次巻線61は、正端子、負端子を有しうるが、正端子、負端子、接地端子を有してもよい。ケーブル17は、一次巻線61の端子数に応じた導電線を含みうる。
【0016】
コア60は、前述のようにトロイダルコアでありうるが、他の形状を有するコア、例えば、EIコア、EEコア、EERコア、PQコアであってもよい。露出部ERは、コア60の円筒面(外周面)に設けられてもよいし、コア60の端面(図2では、XZ面に平行な面)、即ち、コア60の軸方向(図2では、Y方向)に直交する面に設けられてよい。あるいは、露出部ERは、円筒面あるいは外周面と端面との双方に設けられてもよい。
【0017】
高い冷却性能を実現するためには、放熱路82は、コア60の熱を収納容器20と絶縁容器50との間に配置された空間57(対流空間)に伝達するように、換言すると、空間57に向けて延びるように配置されることが好ましい。ただし、放熱路82は、コア60の熱を絶縁容器50の内部空間に移動させるように、換言すると、絶縁容器50の内部空間に向けて延びるように配置されてもよい。放熱路82の断面形状は、例えば、矩形でありうるが、他の形状を有してもよい。放熱路82は、露出部ERと貫通開口54とを最短経路で接続するように配置されることが好ましい。
【0018】
図4を参照しながら放熱路82の好ましい配置について説明する。放熱路82は、絶縁容器50の壁52におけるコア60の中心Gから最も近い位置NPとコア60の中心Gとを通る仮想線VLから離れた位置に配置されることが好ましい。他の観点では、放熱路82は、コア60の中心Gを通る仮想線VLから離れた位置に配置されることが好ましい。他の観点では、放熱路82の少なくとも一部は、仮想線VLとは重ならない位置に配置されることが好ましい。このような配置は、二次巻線62と露出部ERとの間の沿面距離CDを長くするために有利である。なお、沿面距離は、仮想線VLに重なるように放熱路82が配置された場合に最短になりうる。更に、放熱路82を仮想線VLから離れた位置に配置することは、放熱路82の断面に面する露出部ERの面積を大きくすること、即ちコア60(露出部ER)から放熱路82への放熱効率を高めるために有利である。放熱路82の断面に面する露出部ERの面積は、露出部ERの円弧長に比例する。図4に例示されるように、放熱路82は、壁52の支持面521を含む平面に対して放熱路82が正射影された領域の少なくとも一部が、該平面に対してコア60が正射影された領域PRに収まるように配置されうる。
【0019】
図5は、Y軸のマイナス方向から見たモールド変圧器15の側面図である。絶縁体80は、絶縁体80の表面に沿って二次巻線62からコア60(露出部ER)に至る経路(沿面距離CDを規定する経路)上に凹凸87を有することが好ましい。凹凸87は、沿面距離CDを大きくし、絶縁性能を向上するように機能しうる。
【0020】
図6には、モールド変圧器15の変形例が示されている。図6は、X軸のプラス方向から見た変形例のモールド変圧器15の側面図である。変形例のモールド変圧器15は、二次巻線62(第2巻線)の少なくとも一部を覆う絶縁部材152を含む。絶縁部材152は、絶縁性能を向上するように機能しうる。
【0021】
図7には、モールド変圧器15の他の変形例が示されている。図7は、X軸のプラス方向から見た他の変形例のモールド変圧器15の側面図である。他の変形例のモールド変圧器15は、二次巻線62(第2巻線)の少なくとも一部を覆う絶縁部材153を含む。絶縁部材153は、絶縁性能を向上するように機能しうる。絶縁部材153は、例えば、モールド成形によって形成されうる。
【0022】
以上説明したモールド変圧器15において、図2図8に例示されるように、第2巻線62は、放熱路82を囲まないように配置されている。他の観点では、第2巻線62は、放熱路82を囲う位置とは異なる位置に配置されている。このような構成は、沿面距離CDを大きくし、絶縁性能を向上させるために有利である。図8には、比較例のモールド変圧器15’が示されている。比較例のモールド変圧器15’では、第2巻線62’が放熱路82を囲むように配置されている。比較例では、絶縁体80の表面に沿った二次巻線62’とコア60(露出部ER)との最短距離(沿面距離)が短いことが分かる。
【0023】
図9には、本開示の一実施形態のX線撮像装置200の構成が示されている。X線撮像装置200は、X線発生装置100と、X線発生装置100から放射され物体106を透過したX線104を検出するX線検出器112とを備えうる。X線撮像装置200は、制御装置120および表示装置130を更に備えてもよい。X線検出器112は、X線検出器112と、信号処理部114とを含みうる。制御装置120は、X線発生装置100およびX線検出器112を制御しうる。X線検出器112は、X線発生装置100から放射され物体106を透過したX線104を検出あるいは撮像する。信号処理部114は、X線検出器112から出力される信号を処理して、処理された信号を制御装置120に供給しうる。制御装置120は、信号処理部114から供給される信号に基づいて、表示装置130に画像を表示させうる。
【0024】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【要約】
X線発生装置は、収納容器と、前記収納容器の中に配置された絶縁容器と、少なくとも一部分が前記絶縁容器の中に配置されたX線発生管と、前記絶縁容器の中に配置された複数の電気部品と、を備える。前記X線発生装置は、前記複数の電気部品は、モールド変圧器を含む。前記モールド変圧器は、コアと、前記コアを覆う絶縁体と、前記コアから前記絶縁体の外部空間に熱を移動させる放熱路と、を含み、前記放熱路は、前記外部空間から前記コアに向かって延びるように前記絶縁体に設けられた穴を含む。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9