(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】フルオキセチンとビタミンD3またはその誘導体を含有する組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/593 20060101AFI20240109BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240109BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240109BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240109BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240109BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240109BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20240109BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240109BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61K31/593
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/14
A61K31/138
A61P17/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021570410
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 CN2020088902
(87)【国際公開番号】W WO2020238570
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】201910450610.4
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517194771
【氏名又は名称】ナンジン ルーイン ルンゼ バイオファーマシューティカル テクノロジー カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン,フゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ポン,ジーシェン
(72)【発明者】
【氏名】ユエ,ユンユン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ,リャンリャン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ,ジュンイー
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500249(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106667903(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108969512(CN,A)
【文献】特開平08-092099(JP,A)
【文献】特開昭60-174705(JP,A)
【文献】Therapeutic effects of vitamin D as adjunctive therapy to fluoxetine in patients with major depressive disorder,Aust N Z J Psychiatry,2013年,47(3),pp.271-5,doi: 10.1177/0004867412465022
【文献】Up-regulation of melanin synthesis by the antidepressant fluoxetine,Exp Dermatol,2012年,21(8),pp.635-7,doi: 10.1111/j.1600-0625.2012.01531.x
【文献】Regulation of melanin synthesis of B16 mouse melanoma cells by 1 alpha, 25-dihydroxyvitamin D3 and retinoic acid,Cancer Res,1985年,45(4),pp.1474-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 17/00
A61K 9/00- 9/72
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオキセチン並びにビタミンD3、カルシポトリオール、カルシトリオール及びタカルシトールから選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする、低色素性疾患の治療及び/又は緩和のための組成物。
【請求項2】
前記フルオキセチンは、フルオキセチンラセミ体、R-フルオキセチン又はその薬学的に許容される塩から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フルオキセチンとビタミンD3、カルシポトリオール、カルシトリオール及びタカルシトールから選ばれる1種又は2種以上との重量比は、10以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記フルオキセチンとビタミンD3、カルシポトリオール、カルシトリオール及びタカルシトールから選ばれる1種又は2種以上との重量比は、20以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記フルオキセチンとビタミンD3、カルシポトリオール、カルシトリオール及びタカルシトールから選ばれる1種又は2種以上との重量比は、500以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記フルオキセチンとビタミンD3、カルシポトリオール、カルシトリオール及びタカルシトールから選ばれる1種又は2種以上との重量比は、400以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記フルオキセチンとビタミンD3、カルシポトリオール、カルシトリオール及びタカルシトールから選ばれる1種又は2種以上との重量比は、200以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物の、低色素性疾患の治療および/または緩和のための医薬品の製造における使用。
【請求項10】
前記低色素性疾患は、白斑、白髪、白色粃糠疹、貧血性母斑又は色素失調症から選択されることを特徴とする請求項9に記載の使用。
【請求項11】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする
、低色素性疾患の治療及び/又は緩和のための製剤。
【請求項12】
前記製剤は、クリーム、軟膏、ゲル、エアゾール、スプレー、パウダー、溶液剤、芳香水、スピリッツ剤、グリセリン剤、可溶性ゲル剤、懸濁液剤、乳液剤、コーティング剤、ペースト剤、ローション、塗布剤及びチンキ剤から選択されることを特徴とする請求項11に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低色素性疾患の治療および/または緩和のための薬剤の技術分野に関し、より具体的に、フルオキセチンとビタミンD3またはその誘導体を含む組成物、および低色素性疾患の治療および/または緩和のための薬剤の製造への用途、ならびに前記組成物を含む医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
低色素性疾患とは、例えば、白斑、白髪、白斑性粃糠疹、貧血性母斑など、皮膚の局所的な色素脱失を主な臨床症状とする一般的な皮膚疾患であり、白斑と白髪は最も一般的なものである。白斑は、子供や青年の時期によく見られ、皮膚の色素沈着が局所的または広範囲に失われることを臨床的な特徴とする色素脱失性の皮膚疾患である。白髪とは、髪の毛が全体的または部分的に白くなることであり、先天性と後天性の二種類に分類される。先天性の白髪は家族歴を有することが多く、後天性の白髪は、老人性の白髪と、青少年や中年の人に見られる早期白髪の2種類がある。低色素性疾患は、皮膚や髪の毛におけるメラニン細胞が失われたり、メラニンの合成が機能しなくなったりすることが主な表現である。皮膚におけるメラニンは、主に表皮の基底層にあるメラニン細胞に存在しており、皮膚の表皮は胚の外胚葉に由来し、主にケラチノサイト(表皮細胞の約80~90%)、非ケラチノサイト(樹状細胞とも呼ばれ、主にメラニン細胞により構成され、表皮細胞の約2~3%を占めている)、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞により構成されている。メラニン細胞は、主に皮膚の基底層、目の虹彩、毛包などの部位に存在し、特に表皮に最も広く分布している。表皮の基底層にあるメラニン細胞の総数は20億個であり、表皮に存在するメラニン細胞は、肌の色を決定し、及び紫外線のダメージから肌を守る重要な役割を果たしている。そのため、表皮のメラニン細胞がダメージを受けたり、メラニン合成の機能が異常になったりすると、皮膚の色素異常又は白斑、白髪、母斑、メラノーマなどの疾患が起こる(非特許文献1)。
【0003】
特許文献1及び2には、色素喪失疾患の治療にフルオキセチンを用いることが開示され、主に、フルオキセチンがB16F10細胞及び人々の正常な皮膚色素細胞におけるメラニンの合成を促進し、メラニン合成に関連するタンパク質の発現量の増加を促進できることが記載されている。また、フルオキセチンをC57BL/6マウスに経口で投与し、メラニン合成に必要な皮膚色素合成に関連するタンパク質の発現を促進させることができる。また、色素喪失疾患に対してフルオキセチンを用いることが初めて提案されている。フルオキセチンを20mg/kg経口で投与し、正常なマウスの皮膚に着色を促進できることが報告されており、この原因としては皮膚における5-HT1A受容体の発現を調節することに関連していると考えられる(非特許文献2)。また、2.6mg/kgのフルオキセチンの経口で投与し、皮膚における5-HT1A受容体および5-HT2A受容体を調節することにより、慢性的な予測不可能なストレスと慢性的な拘束力のあるストレスによる誘発されたC57BL/6マウスの背側色素脱失皮膚の低色素化(非特許文献3)を改善することができる。特許文献3には、フルオキセチンを外用剤として0.1%g/gの規格で白斑の治療に用いられることが開示されている。上記の特許および文献は、フルオキセチンが所定量(2.6mg/kg~20mg/kg)で色素喪失疾患の治療の用途を有することを示している。
【0004】
臨床研究では、白斑患者のビタミンDおよびその代謝物である1,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25-(OH)2D3)の濃度が健康者に比べて低く、白斑の発症に関連する可能性があることが発見された(非特許文献4)。白斑患者は自己抗体Igが高
発現になると、補体溶解や細胞障害作用によってメラニン細胞が破壊されて白斑が形成されることがある。1,25-(OH)2D3は、自己抗体の産生を抑制することにより、メラニン細胞に対する自己抗体の破壊作用を軽減することができる(非特許文献5)。また、ビタミンD3誘導体のカルシポトリオールは、メラニン細胞のオートファジーを制御することにより、メラニン細胞のデンドライトに影響し、酸化ストレスによるメラニン細胞に対するダメージを軽減する(非特許文献6)。研究の結果から、皮膚の微小環境がメラニン細胞の機能に影響を与えることができ、カルボフランが免疫細胞の機能を調節することによりメラニン細胞の生存環境を改善し、メラニン細胞のアポトーシスやメラニン合成機能の喪失を回避できることは示唆された。白斑の治療に関するコンセンサス(2018年版)では、白斑の治療にビタミンD3誘導体の使用が推奨されており(非特許文献7及び非特許文献8)、その代表的なものがタカルシトールとカルシポトリオールであるが、その臨床の適応症状は乾癬である。カルシポトリオールは、1991年にレオ(Leo)社が乾癬の外用薬として初めて販売したものである。レオ社は2002年にカルシポトリオール塗布剤(商品名:ダーレックス、規格:50μg/ml(約50μg/g))とカルシポトリオール軟膏(規格:50μg/g)でそれぞれに中国市場に進入した。
【0005】
カルシポトリオール(10-9-10-5 mol/L)、即ち、約4.13x10-4-4.13μg/gは、正常なメラニン細胞におけるメラニン合成を促進することが報道されている(非特許文献9)。しかし、乾癬の治療中にカルシポトリオール軟膏(50μg/g)を顔面に使用した場合、発疹や潮紅などの副作用や血中カルシウム濃度が上昇するリスクがあるという臨床報告がある(非特許文献10)。また、フルオキセチン(20mg/日)の臨床使用では、長期内服時に不眠、眠気、自殺、神経障害などの副作用が起こりやすい(非特許文献11)。特許文献4は、フルオキセチンと漢方薬の併用による白斑の治療方法を開示している。
【0006】
本発明の発明者は、長期にわたる鋭意研究の結果、フルオキセチンとビタミンD3誘導体を併用し、白斑の治療に用い、優れた相乗効果が得られ、また、フルオキセチンとカルシポトリオールの単剤投与量を減少し、単剤の臨床副作用を回避することが可能であることを発見した。
【0007】
フルオキセチンとビタミンD3誘導体とを併用し、メラニン合成を促進することができ、ビタミンD3誘導体やフルオキセチンを単独使用する場合に比べ、優れた効果が得られ、治療効果を高めるのみならず、ビタミンD3誘導体またはフルオキセチンの投与量を減らし、有害な副作用の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許ZL201110403173.4
【文献】カナダ特許公開CA2877423A
【文献】米国特許US9,833,424B2
【文献】中国特許公開107375428A
【非特許文献】
【0009】
【文献】Wang Xiaoyan, Wang Tinglin, Zhou Cheng, et al. 中国6省・市における白斑の疫学調査[J]. 中国皮膚科学会誌、2010年、43(7):463-466
【文献】Liao S, Shang J, Tian X, et al. Up‐regulation of melanin synthesis by the antidepressant fluoxetine[J]. Experimental Dermatology, 2012, 21(8):635-637
【文献】Zhou L, Cai M , Ren Y , et al. The different roles of 5-HT1A/2A receptors in fluoxetine ameliorated pigmentation of C57BL/6 mouse skin in response to stress[J]. Journal of Dermatological Science, 2018, 92(3):222-229
【文献】Gu Wen Tao, Xu hui, Ma Hong, et al. 白斑患者における血清25-ヒドロキシビタミンD値の検出とカボトリオール治療の有効性[J]。臨床皮膚科学会誌、2016(8):572-574
【文献】Song Wen Ting,Zhao Guang. 白斑と自己免疫の研究の進展[J].中国美容医療,2011,20(2):327-330
【文献】Gong Q, Li X, Sun J, et al. The effects of calcipotriol on the dendritic morphology of human melanocytes under oxidative stress and a possible mechanism: Is it a mitochondrial protector?[J].Journal of Dermatological Science,2015,77(2):117-124
【文献】Zhang Qian.軽度から中等度の白斑に対するタカルシトール軟膏とカルシポトリオール軟膏の系統的評価[J].プライマリ・ケア医学会フォーラム、2018(14)
【文献】Gu Wen Tao, Xu hui, Ma Hong, et al.白斑患者における血清25-ヒドロキシビタミンD値の検出とカボトリオール治療の有効性観察[J]。臨床皮膚科学会誌、2016(8):572-574
【文献】Tang Luyan, Fu Wenwen, Zhang Yong, et al. メラニン細胞のメラニン合成に及ぼすカボトリオールの影響[J]。中国皮膚科学会誌, 2009, 42(11):771-773
【文献】Khullar G , Kanwar A J , Singh S , et al. Comparison of efficacy and safety profile of topical calcipotriol ointment in combination with NB-UVB vs. NB ‐ UVB alone in the treatment of vitiligo: a 24‐week prospective right-left comparative clinical trial[J]. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2014, 29(5):925-932
【文献】Coulter D M, Pillans P I. Fluoxetine and extrapyramidal side effects.[J]. American Journal of Psychiatry, 1989, 146(10):1352-3
【文献】Huang Ji Han, Huang Xiao Hui, Chen Zhi Yang, et al. 薬理試験における動物間および動物-ヒト間の等価用量換算[J]。中国臨床薬理と治療、2004年、9(9):1069-1072
【文献】Yuan Shou Jun. 多剤併用の薬効和算の数理と相乗拮抗作用の定量計算法[M]. 江蘇省鳳凰科学技術出版社,2016,初版
【発明の概要】
【0010】
本発明の発明者は、フルオキセチンとビタミンD3またはその誘導体とを併用することにより、両者の毒性を有効に低減することができると同時に、フルオキセチンは、ビタミンD3及びその誘導体と協働し、用量依存的にメラニン合成の増加を促進し、用量依存的にチロシナーゼ活性の上昇を促進することができることを発見し、そのため、メラニン合成の低下による低色素性疾患の治療又は改善に用いられる。白斑患者はビタミンD3レベルが低下すると、5-HTレベルが低下する。フルオキセチンは5-HT再取り込み阻害剤であり、フルオキセチンとビタミンD3およびその誘導体を併用することにより、体内における5-HTレベルを正常レベルに回復させることができる。本発明者は、所定用量のフルオキセチン(0.01-10mg/g)とカルシポトリオール(0.5-50μg/g)を併用すると、相乗効果が生じ、メラニン合成促進効果は、フルオキセチンおよびカルシポトリオールをそれぞれ単独使用する場合より優れ、フルオキセチンとカルシポトリオールを別々に使用する場合の薬効より優れていることを発見した。このように、色素喪失疾患の臨床治療においてカルシポトリオールとフルオキセチンを併用することにより、薬効を高めるのみならず、薬効を維持したまま、用量を減少し、副作用を軽減することができる。
【0011】
よって、本発明の目的は、フルオキセチンとビタミンD3(ビタミンD3)またはその誘導体との組成物、前記組成物は低色素性疾患の治療または緩和のための薬剤の製造への用途、ならびに前記組成物を含む医薬製剤を提供することである。
【0012】
本発明の構成は以下の通りである。
【0013】
本発明の1つの態様は、フルオキセチン及びビタミンD3又はその誘導体を含む組成物であり、前記組成物は低色素性疾患の治療及び/又は緩和のために使用される。
【0014】
好ましくは、前記フルオキセチンとビタミンD3又はその誘導体との重量比は、10以上、好ましくは20以上である。
【0015】
好ましくは、前記フルオキセチンとビタミンD3又はその誘導体との重量比は、500以下、好ましくは400以下、より好ましくは200以下である。
【0016】
好ましくは、前記フルオキセチンは、フルオキセチンラセミ体、R-フルオキセチン又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0017】
好ましくは、前記ビタミンD3又はその誘導体は、ビタミンD3、カルシポトリオール
、カルシポトリオール
、カルシトリオール及びタカルシトールから選ばれる1種又は2種以上である。
【0018】
前記組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むが、ただし、その賦形剤が本発明の目的を損なわないことを条件とする。例示の実例として、乳化剤、酸化防止剤、湿潤剤、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、pH調整剤、金属イオン錯化剤、投射剤、溶剤、液体グリース等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
前記組成物が賦形剤を含む場合、前記フルオキセチンの含有量は、組成物の0.01~10mg/g、好ましくは組成物の0.01~5mg/g、より好ましくは組成物の0.1~1mg/gである。
【0020】
好ましくは、前記ビタミンD3又はその誘導体の含有量は、組成物の0.005~500μg/g、好ましくは組成物の0.5~250μg/g、より好ましくは組成物の5~50μg/gである。
【0021】
本発明の他の態様は、低色素性疾患の治療および/または緩和のための医薬品の製造への上記組成物の用途である。
【0022】
前記低色素性疾患は、メラニン合成の低下に起因する疾患であり、白斑、白髪、白色粃糠疹、貧血性母斑又は色素失調症等から選択されるものである。
【0023】
本発明の他の態様は、上記組成物を含む製剤である。
【0024】
前記製剤は、クリーム、軟膏、ゲル、エアゾール、スプレー、パウダー、溶液剤、芳香水、チンキ剤、スピリッツ剤、グリセリン剤、可溶性ゲル剤、懸濁液剤、乳液剤、塗布剤、コーティング剤、ペースト剤、ローション、塗布剤及びチンキ剤から選択される。
【0025】
本発明の他の態様は、低色素性疾患を治療する方法であり、上記組成物又は上記組成物からなる製剤を局所投与により皮膚に塗布する手段を含む。
【0026】
好ましくは、前記組成物または前記組成物からなる製剤において、前記フルオキセチンの濃度は、組成物の0.01~10mg/g、好ましくは組成物の0.01~5mg/g組成物、より好ましくは組成物の0.1~1mg/gである。
【0027】
前記低色素性疾患は、メラニン合成の低下に起因する疾患であり、白斑、白髪、白色粃糠疹、貧血性母斑又は色素失調症等から選択される。
【0028】
本発明に記載された組成物におけるR-フルオキセチンおよびビタミンD3またはその誘導体は、互いに協働し、互いの毒性を軽減し、メラニン合成を促進し、チロシナーゼ活性を増加させることができる。従って、低色素性疾患の治療および/または緩和に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6および実施例7の実験の一部を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、実施例1において、フルオキセチン、ビタミンD3、カルシポトリオール、及びタカルシトールを単独で用いた場合の、ゼブラフィッシュの生存率に対する影響を示すグラフである。
【
図3】
図3は、実施例2の2.1部分にフルオキセチンと、濃度の異なるビタミンD3とを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例2の2.2部分にフルオキセチンと、濃度の異なるカルシポトリオールとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例2の2.3部分にフルオキセチンと、濃度の異なるタカルシトールとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例2の2.4部分にビタミンD3と、濃度の異なるフルオキセチンとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例2の2.5部分にカルシポトリオールと、濃度の異なるフルオキセチンとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例2の2.6部分にタカルシトールと、濃度の異なるフルオキセチンとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例3の3.1部分にフルオキセチンを単独用いた場合のゼブラフィッシュのメラニン含有量への影響を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例3の3.1部分にフルオキセチンを単独使用した場合の投与量と効果の関係を示すフィッティング・グラフである。
【
図11】
図11は、実施例3の3.2部分にフルオキセチンを単独用いた場合のゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性への影響を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例4の4.1部分にビタミンD3を単独用いた場合のゼブラフィッシュのメラニン含有量への影響を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例4の4.1部分にビタミンD3を単独用いた場合の投与量と効果の関係を示すフィッティング・グラフである。
【
図14】
図14は、実施例4の4.2部分にカルシポトリオールを単独用いた場合のゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性への影響を示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施例5の5.1部分にカルシポトリオールを単独用いた場合のゼブラフィッシュのメラニン含有量への影響を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例5の5.1部分にカルシポトリオールを単独用いた場合の投与量と効果の関係を示すフィッティング・グラフである。
【
図17】
図17は、実施例5の5.2部分にカルシポトリオールを単独用いた場合のゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性への影響を示すグラフである。
【
図18】
図18は、実施例6の6.1部分にフルオキセチンとビタミンD3とを併用した場合に、フルオキセチンとビタミンD3との比率の違いにより、ゼブラフィッシュのメラニンへの影響を示すグラフである。
【
図19】
図19は、実施例6の6.2部分に併用グループにおけるビタミンD3濃度を横軸とした予想加算効果と実効果を示すグラフである。
【
図20】
図20は、実施例7の7.1部分に併用グループにおけるカルシポトリオール濃度を横軸とした予想加算効果と実効果を示すグラフである。
【
図21】
図21は、実施例8の8.4部分にフルオキセチンクリーム、カルシポトリオールクリーム、フルオキセチンクリーム+カルシポトリオールクリーム、フルオキセチンカルシポトリオール配合クリームがロジンパラフィンワックスによる物理的脱毛のハイドロキノン(hydroquinone)モデルにおけるC57BL/6マウス背部の皮膚色に対する影響の効果を示すグラフである。
【
図22】
図22は、実施例8の8.4部分にフルオキセチンクリーム、カルシポトリオールクリーム、フルオキセチンクリーム+カルシポトリオールクリーム、フルオキセチンカルシポトリオール配合クリームがロジンパラフィンワックスによる物理的脱毛のハイドロキノン(hydroquinone)モデルにおけるC57BL/6マウスの背部皮膚における毛包のHE染色に対する影響の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照しながら本発明の具体的な実施例を詳しく説明するが、これらの図面は本発明の具体的な実施例を説明するものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施例において、特に明記していない限り、フルオキセチンはフルオキセチンラセミ体塩酸塩およびR-フルオキセチン塩酸塩を指す。以下の実施例および添付図面において、Fluがフルオキセチンの略称であり、VD3がビタミンD3の略称であり、Calがカルシポトリオールの略称であり、Talがタカルシトールの略称である。実施例にゼブラフィッシュとマウスの実験での投与量を臨床使用量の0.01と0.081に換算し、即ち、実施例にゼブラフィッシュにおけるフルオキセチンの用量範囲は0.1~100μg/mlであり、0.01~10mg/mlまたは0.01~10mg/gの臨床用量に換算される。具体的な換算方法は参考文献(非特許文献12)を参照されたい。実施例におけるC57BL/6マウスは、揚州大学実験動物センターから購入したものである。ゼブラフィッシュの成魚は国家ゼブラフィッシュリソースセンターから購入したものであり、胚が実験室内で自ら培養されたものである。フルオキセチンは浙江普洛家庭薬
有限会社から購入したものであり、カルシポトリオールは上海易勢化工有限会社から購入したものであり、ビタミンD3、PTU及びタカルシトールはSigma会社から購入したものである。
【実施例】
【0031】
実施例1:
1.1フルオキセチン、ビタミンD3、カルシポトリオール、及びタカルシトールを単独で用いた場合の、ゼブラフィッシュの生存率に対する影響、及びゼブラフィッシュの受精で得られた胚を以下のようにグループ分けをする。
【0032】
正常対照グループ:即ち、薬物を投与しないグループ
【0033】
PTU(1-フェニル-2-チオ尿素、PTUが可逆的チロシナーゼ阻害剤である)35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTUの含有水溶液で35時間に発育するまで培養した後に、ゼブラフィッシュ胚を精製水に入れ、25時間に培養を続けてゼブラフィッシュ生存率を観察する。
【0034】
PTU35時間+フルオキセチン処理グループ:純水の代わりに0.1、1、10、100μg/mlの濃度のフルオキセチン水溶液をそれぞれ使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0035】
PTU35時間+カルシポトリオール処理グループ:純水の代わりに0.005、0.05、0.5、5μg/mlの濃度のカルシポトリオール水溶液をそれぞれ使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0036】
PTU35時間+タカルシトール処理グループ:純水の代わりに0.005、0.05、0.5、5μg/mlの濃度のタカルシトール水溶液をそれぞれ使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0037】
PTU35時間+ビタミンD3処理グループ:純水の代わりに0.005、0.05、0.5、5μg/mlの濃度のビタミンD3水溶液をそれぞれ使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。結果は
図2に示す通りであり、Controlと比較すると、*はP<0.05を示し、***はP<0.001を示す。
【0038】
図2に示すように、ビタミンD3は5μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、IC50= 4.5μg/ml。カルシポトリオールは5μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、IC50= 3.5μg/ml。タカルシトールは5μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、IC50= 4.0μg/ml。フルオキセチンは100μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな影響を有し、IC50= 89.7μg/ml。
【0039】
実施例2:
2.1フルオキセチン(100μg/ml)と異なる濃度のビタミンD3とを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響
【0040】
ゼブラフィッシュ胚は以下のようにグループ分けをする。
【0041】
正常対照グループ:即ち、薬物を投与しないグループ
【0042】
PTU35時間処理グループ:実施例1のPTU35時間処理グループと同様の操作を行う。
【0043】
PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)処理グループ:純水の代わりに100μg/mlの濃度のフルオキセチン水溶液を使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0044】
PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)+ビタミンD3(0.005~0.5μg/ml)処理グループ:100μg/mlの濃度のフルオキセチン水溶液に、0.005、0.05、0.5μg/mlの濃度のビタミンD3をそれぞれに更に加えた以外に、上記PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)処理グループと同様の操作をした。
【0045】
結果は
図3に示す通りであり、PTU35時間処理と比較すると、***はP<0.001を示す、フルオキセチン(100μg/ml)処理グループと比較すると、##はP<0.01を示し、###はP<0.001を示す。
【0046】
図3に示すように、フルオキセチンは100μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、ビタミンD3の添加量の増加に伴いゼブラフィッシュの死亡率が徐々に減少する。この結果は、ビタミンD3とフルオキセチンとを併用することにより、ゼブラフィッシュにおけるフルオキセチンの毒性を低減できることを示唆している。
【0047】
2.2フルオキセチン(100μg/ml)と異なる濃度のカルシポトリオールとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響
【0048】
ゼブラフィッシュ胚は以下のようにグループ分けをする。
【0049】
正常対照グループ:即ち、薬物を投与しないグループ
【0050】
PTU35時間処理グループ:実施例1のPTU35時間処理グループと同様の操作を行う。
【0051】
PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)処理グループ:純水の代わりに100μg/mlの濃度のフルオキセチン水溶液を使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0052】
PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)+カルシポトリオール(0.005~0.5μg/ml)処理グループ:100μg/mlの濃度のフルオキセチン水溶液に、0.005、0.05、0.5μg/mlの濃度のカルシポトリオールをそれぞれに更に加えた以外に、上記PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)処理グループと同様の操作をした。
【0053】
結果は
図4に示す通りであり、PTU35時間処理と比較すると、***はP<0.001を示す、フルオキセチン(100μg/ml)処理グループと比較すると、##はP<0.01を示し、###はP<0.001を示し、ns はP>0.05を示す。
【0054】
図4に示すように、フルオキセチンは100μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、カルシポトリオールの添加量の増加に伴いゼブラフィッシュの死亡率が徐々に減少する。この結果は、カルシポトリオールとフルオキセ
チンとを併用することにより、ゼブラフィッシュにおけるフルオキセチンの毒性を低減できることを示唆している。
【0055】
2.3フルオキセチン(100μg/ml)と異なる濃度のタカルシトールとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響
【0056】
ゼブラフィッシュ胚は以下のようにグループ分けをする。
【0057】
正常対照グループ:即ち、薬物を投与しないグループ
【0058】
PTU35時間処理グループ:実施例1のPTU35時間処理グループと同様の操作を行う。
【0059】
PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)処理グループ:純水の代わりに100μg/mlの濃度のフルオキセチン水溶液を使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0060】
PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)+タカルシトール(0.005~0.5μg/ml)処理グループ:100μg/mlの濃度のフルオキセチン水溶液に、0.005、0.05、0.5μg/mlの濃度のタカルシトールをそれぞれに更に加えた以外に、上記PTU35時間+フルオキセチン(100μg/ml)処理グループと同様の操作をした。
【0061】
結果は
図5に示す通りであり、PTU35時間処理と比較すると、***はP<0.001を示す、フルオキセチン(100μg/ml)処理グループと比較すると、#はP<0.05を示し、##はP<0.01を示し、ns はP>0.05を示す。
【0062】
図5に示すように、フルオキセチンは100μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、タカルシトールの添加量の増加に伴いゼブラフィッシュの死亡率が徐々に減少する。この結果は、タカルシトールとフルオキセチンとを併用することにより、ゼブラフィッシュにおけるフルオキセチンの毒性を低減できることを示唆している。
【0063】
2.4ビタミンD3(5μg/ml)と異なる濃度のフルオキセチンとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響
【0064】
ゼブラフィッシュ胚は以下のようにグループ分けをする。
【0065】
正常対照グループ:即ち、薬物を投与しないグループ
【0066】
PTU35時間処理グループ:実施例1のPTU35時間処理グループと同様の操作を行う。
【0067】
PTU35時間+ビタミンD3(5μg/ml)処理グループ:純水の代わりに5μg/mlの濃度のビタミンD3水溶液を使用した以外に、実施例1におけるPTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0068】
PTU35時間+ビタミンD3(5μg/ml)+フルオキセチン(0.1~10μg/ml)処理グループ:5μg/mlの濃度のビタミンD3水溶液に、0.1、1、10μg/mlの濃度のフルオキセチンをそれぞれに更に加えた以外に、上記PTU35時間+
ビタミンD3(5μg/ml)処理グループと同様の操作をした。
【0069】
結果は
図6に示す通りであり、PTU35時間処理と比較すると、***はP<0.001を示す、ビタミンD3(5μg/ml)処理グループと比較すると、##はP<0.01を示し、ns はP>0.05を示す。
【0070】
図6に示すように、ビタミンD3は5μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、フルオキセチンの添加量の増加に伴いゼブラフィッシュの死亡率が徐々に減少する。この結果は、ビタミンD3とフルオキセチンとを併用することにより、ゼブラフィッシュにおけるビタミンD3の毒性を低減できることを示唆している。
【0071】
2.5カルシポトリオール(5μg/ml)と異なる濃度のフルオキセチンとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響
【0072】
ゼブラフィッシュ胚は以下のようにグループ分けをする。
【0073】
正常対照グループ:即ち、薬物を投与しないグループ
【0074】
PTU35時間処理グループ:実施例1のPTU35時間処理グループと同様の操作を行う。
【0075】
PTU35時間+カルシポトリオール(5μg/ml)処理グループ:純水の代わりに5μg/mlの濃度のカルシポトリオール水溶液を使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0076】
PTU35時間+カルシポトリオール(5μg/ml)+フルオキセチン(0.1~10μg/ml)処理グループ:5μg/mlの濃度のカルシポトリオール水溶液に、0.1、1、10μg/mlの濃度のフルオキセチンをそれぞれに更に加えた以外に、上記PTU35時間+カルシポトリオール(5μg/ml)処理グループと同様の操作をした。
【0077】
結果は
図7に示す通りであり、PTU35時間処理と比較すると、***はP<0.001を示す、カルシポトリオール(5μg/ml)処理グループと比較すると、###はP<0.001を示し、ns はP>0.05を示す。
【0078】
図7に示すように、カルシポトリオールは5μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、フルオキセチンの添加量の増加に伴いゼブラフィッシュの死亡率が徐々に減少する。この結果は、カルシポトリオールとフルオキセチンとを併用することにより、ゼブラフィッシュにおけるカルシポトリオールの毒性を低減できることを示唆している。
【0079】
2.6タカルシトール(5μg/ml)と異なる濃度のフルオキセチンとを併用した場合のゼブラフィッシュの生存率への影響
【0080】
ゼブラフィッシュ胚は以下のようにグループ分けをする。
【0081】
正常対照グループ:即ち、薬物を投与しないグループ
【0082】
PTU35時間処理グループ:実施例1のPTU35時間処理グループと同様の操作を行う。
【0083】
PTU35時間+タカルシトール(5μg/ml)処理グループ:純水の代わりに5μg/mlの濃度のタカルシトール水溶液を使用した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0084】
PTU35時間+タカルシトール(5μg/ml)+フルオキセチン(0.1~10μg/ml)処理グループ:5μg/mlの濃度のタカルシトール水溶液に、0.1、1、10μg/mlの濃度のフルオキセチンをそれぞれに更に加えた以外に、上記PTU35時間+タカルシトール(5μg/ml)処理グループと同様の操作をした。
【0085】
結果は
図8に示す通りであり、PTU35時間処理と比較すると、***はP<0.001を示す、タカルシトール(5μg/ml)処理グループと比較すると、###はP<0.001を示し、ns はP>0.05を示す。
【0086】
図8に示すように、タカルシトールは5μg/mlの用量で、ゼブラフィッシュの生存率に対して明らかな抑制効果を有し、フルオキセチンの添加量の増加に伴いゼブラフィッシュの死亡率が徐々に減少する。この結果は、タカルシトールとフルオキセチンとを併用することにより、ゼブラフィッシュにおけるカルシポトリオールの毒性を低減できることを示唆している。
【0087】
実施例3:
3.1フルオキセチンを単独用いた場合のゼブラフィッシュのメラニン含有量への影響
【0088】
ゼブラフィッシュは以下のようにグループ分けをする。
【0089】
正常対照グループ(Control):ゼブラフィッシュの受精後に得られた胚を精製水に60時間までに培養した。
【0090】
PTU35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTUの含有水溶液で29時間に培養し、35時間に発育するまで培養した後に、前記胚を精製水に入れ、胚が60時間発育するまでに25時間培養を継続する。
【0091】
フルオキセチン(0.1、0.4、1.6、6.4、25.6μg/ml)処理グループ:35時間に発育された前記胚を0.1, 0.4, 1.6, 6.4, 25.6μg/mlのフルオキセチン水溶液でそれぞれに25時間に培養した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。NaOH溶解法を用いてゼブラフィッシュのメラニン定量分析が行われ、各ゼブラフィッシュのグループを集めて余分な水分を吸い取り、100μlのPBSを加え、氷浴中で1分間の超音波処理を行い、その後、4℃、12,000 r/minの遠心分離が10分間に行われ、得られた上清をタンパク質定量(BCA法)に用い、総タンパク含有量を算出する。下層のメラニン沈殿を100μlのNaOH(10%DMSO含有)に加え、80℃の水浴で2時間溶解させる。完全に溶解したメラニンを80μl/ウェルで96ウェルプレートに加え、波長405nmで吸光度を測定し、タンパク質1mgあたりのメラニン含有量を算出する。すべての実験は3回繰り返され、すべてのデータは一元配置分散分析(ANOVA)にかけ、その後にターキーテストも実施される。正常対照グループと比較すると、***はP<0.001を示す、PTU35時間処理グループと比較すると、#はP<0.05を示し、##はP<0.01を示し、ns はP>0.05を示す。
【0092】
図9に示すように、正常対照グループと比較すると、PTU35時間処理グループのメラニン含有量は明らかに減少しており、PTUがゼブラフィッシュに色素脱失を引き起こ
すことを示した。PTU35時間処理グループと比べて、フルオキセチン(6.4~25.6μg/ml)を投与すると、用量依存的にゼブラフィッシュのメラニン含有量の増加が促進できる。表1は、フルオキセチンを単独使用する際に(0.1~25.6μg/ml)ゼブラフィッシュのメラニン合成に対する有効率を計算した結果を示す。
図10はフルオキセチンを単独使用した場合の用量と効果の関係を示す。
【0093】
【0094】
3.2フルオキセチンを単独用いた場合のゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性への影響
【0095】
L-DOPA法を利用してゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性の測定が行われる。L-DOPA法によるゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性の測定は以下の通りである。実施例3の3.1の遠心分離の後に得られた上清を、BCA法によるタンパク質定量を行い、タンパク質の濃度を算出した。10μgのタンパク質を含む体積を96ウェルプレートに添加し、PBS (0.1 M, pH 6.8) で100μlまでに定量し、その後、0.1% g/mlのL-DOPAを100μl添加し、濃度ごとに3つの化合物ウェルを設置し、遮光して37℃で60分間インキュベートし、波長475nmでOD値を測定した。すべての実験は3回に繰り返され、すべてのデータは一元配置分散分析(ANOVA)にかけ、その後にターキーテストも実施される。正常対照グループと比較すると、***はP<0.001を示す、PTU35時間処理グループと比較すると、###はP<0.001を示し、##はP<0.01を示し、#はP<0.05を示し、ns はP>0.05を示す。
【0096】
図11の結果によると、正常対照グループと比較すると、PTU35時間処理グループでのチロシナーゼ活性は明らかに低下し、PTU35時間処理グループと比較すると、フルオキセチン(1.6-25.6μg/ml)は用量依存的にゼブラフィッシュにおけるチロシナーゼ活性を増加させることができる。
【0097】
実施例4:
4.1ビタミンD3を単独用いた場合のゼブラフィッシュのメラニン含有量への影響
【0098】
ゼブラフィッシュは以下のようにグループ分けをする。
【0099】
正常対照グループ(Control):ゼブラフィッシュの受精後に得られた胚を精製水に60時間までに培養した。
【0100】
PTU35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTU
の含有水溶液で29時間に培養し、35時間に発育するまで培養した後に、前記胚を精製水に入れ、胚が60時間発育するまでに25時間培養を継続する。
【0101】
ビタミンD3(0.005、0.02、0.08、0.32、1.28μg/ml)処理グループ:35時間に発育された前記胚を0.005、0.02、0.08、0.32、1.28μg/mlのビタミンD3水溶液でそれぞれに25時間に培養した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。メラニン含有量の測定方法について、実施例3における3.1部分を参照されたい。正常対照グループと比較すると、***はP<0.001を示す、PTU35時間処理グループと比較すると、ns はP>0.05を示す。
【0102】
図12に示すように、正常対照グループと比較すると、PTU35時間処理グループのメラニン含有量は明らかに減少し、PTUがゼブラフィッシュに色素脱失を引き起こすことを証明した。PTU35時間処理グループと比べて、ビタミンD3(0.005~1.28μg/ml)を投与すると、ゼブラフィッシュのメラニン含有量の増加を多少促進できるが、いずれも明らかな差異が存在しない。表2は、ビタミンD3を単独使用する際に(0.005~1.28μg/ml)ゼブラフィッシュ胚のメラニン合成に対する有効率を計算した結果を示す。
図13はビタミンD3の量と効果との関係を多項式でフィットした結果を示す。
【0103】
【0104】
4.2ビタミンD3を単独用いた場合のゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性への影響
【0105】
ゼブラフィッシュは以下のようにグループ分けをする。
【0106】
正常対照グループ(Control):ゼブラフィッシュの受精後に得られた胚を精製水に60時間までに培養した。
【0107】
PTU35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTUの含有水溶液で29時間に培養し、35時間に発育するまで培養した後に、前記胚を精製水に入れ、胚が60時間発育するまでに25時間培養を継続する。
【0108】
ビタミンD3(0.005、0.02、0.08、0.32、1.28μg/ml)処理グループ:35時間に発育された前記胚を0.005、0.02、0.08、0.32、1.28μg/mlのビタミンD3水溶液でそれぞれに25時間に培養した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0109】
チロシナーゼ活性の測定方法について、実施例3における3.2部分を参照されたい。正常対照グループと比較すると、***はP<0.001を示す、PTU35時間処理グループと比較すると、ns はP>0.05を示す。
【0110】
実験結果:
図14の結果によると、正常対照グループと比較すると、PTU35時間処
理グループでのゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性は明らかに低下し、PTU35時間処理グループと比較すると、ビタミンD3の投与量(0.005~1.28μg/ml)は、ゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性に対して明らかな影響はない。
【0111】
実施例5:
5.1カルシポトリオールを単独で用いた場合のゼブラフィッシュのメラニン含有量への影響
【0112】
ゼブラフィッシュは以下のようにグループ分けをする。
【0113】
正常対照グループ(Control):ゼブラフィッシュの受精後に得られた胚を精製水に60時間までに培養した。
【0114】
PTU35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTUの含有水溶液で29時間に培養し、35時間に発育するまで培養した後に、前記胚を精製水に入れ、胚が60時間発育するまでに25時間培養を継続する。
【0115】
カルシポトリオール(0.005、0.02、0.08、0.32、1.28μg/ml)処理グループ:35時間に発育された前記胚を0.005、0.02、0.08、0.32、1.28μg/mlのカルシポトリオール水溶液でそれぞれ25時間に培養した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。メラニン含有量の測定方法について、実施例3における3.1部分を参照されたい。正常対照グループと比較すると、***はP<0.001を示す、PTU35時間処理グループと比較すると、ns はP>0.05を示す。
【0116】
実験結果:
図15に示すように、正常対照グループと比較すると、PTU35時間処理グループのメラニン含有量は明らかに減少しており、PTUがゼブラフィッシュに色素脱失を引き起こすことを示した。PTU35時間処理グループと比べて、カルシポトリオール(0.005~1.28μg/ml)を投与しても、ゼブラフィッシュのメラニン含有量の増加に明らかな影響はない。表3は、カルシポトリオールを単独使用する際に(0.005~1.28μg/ml)ゼブラフィッシュのメラニン合成に対する有効率を計算した結果を示す。
図16はカルシポトリオールの量と効果の関係を多項式でフィットした結果を示す。
【0117】
【0118】
5.2カルシポトリオールを単独用いた場合のゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性への影響
【0119】
ゼブラフィッシュは以下のようにグループ分けをする。
【0120】
正常対照グループ(Control):ゼブラフィッシュの受精後に得られた胚を精製水
に60時間までに培養した。
【0121】
PTU35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTUの含有水溶液で29時間に培養し、35時間に発育するまで培養した後に、前記胚を精製水に入れ、胚が60時間発育するまでに25時間培養を継続する。
【0122】
カルシポトリオール(0.005、0.02、0.08、0.32、1.28μg/ml)処理グループ:35時間に発育された前記胚を0.005、0.02、0.08、0.32、1.28μg/mlのカルシポトリオール水溶液でそれぞれに25時間に培養した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0123】
チロシナーゼ活性の測定方法について、実施例3における3.2部分を参照されたい。Controlと比較すると、***はP<0.001を示す、PTU35時間処理グループと比較すると、ns はP>0.05を示す。
【0124】
図17の結果によると、正常対照グループと比較すると、PTU35時間処理グループでのゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性は明らかに低下し、PTU35時間処理グループと比較すると、カルシポトリオールの投与量(0.005~1.28μg/ml)は、ゼブラフィッシュのチロシナーゼ活性に対して明らかな影響はない。
【0125】
実施例6:
6.1異なる比率のフルオキセチンとビタミンD3とを併用した場合のゼブラフィッシュのメラニン合成への影響
【0126】
ゼブラフィッシュは以下のようにグループ分けをする。
【0127】
正常対照グループ(Control):ゼブラフィッシュの受精後に得られた胚を精製水に60時間までに培養した。
【0128】
PTU35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTUの含有水溶液で29時間に培養し、35時間に発育するまで培養した後に、前記胚を精製水に入れ、胚が60時間発育するまでに25時間培養を継続する。
【0129】
フルオキセチン+ビタミンD3(0.005μg/ml)処理グループ:35時間に発育された前記胚を0.4μg/mlのフルオキセチン+0.005μg/mlのビタミンD3、0.2μg/mlのフルオキセチン+0.005μg/mlのビタミンD3、0.1μg/mlのフルオキセチン+0.005μg/mlのビタミンD3、0.05μg/mlのフルオキセチン+0.005μg/mlのビタミンD3、0.025μg/mlのフルオキセチン+0.005μg/mlのビタミンD3、を含む水溶液にそれぞれに25時間に培養した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0130】
メラニン含有量の測定方法について、実施例3における3.1部分を参照されたい。Controlと比較すると、***はP<0.001を示す、PTU35時間処理グループと比較すると、ns はP>0.05を示し、#はP<0.05を示す。
【0131】
図18に示すように、フルオキセチンとビタミンD3を5:1、10:1、20:1、40:1、80:1でゼブラフィッシュに投与したところ、20:1の時に明らかな差異が見られた。従って、以下の実施例において、フルオキセチンとビタミンD3の比率を20:1として検討した。
【0132】
6.2フルオキセチンとビタミンD3とを併用した場合のゼブラフィッシュのメラニン合成への影響
【0133】
ゼブラフィッシュは以下のようにグループ分けをする。
【0134】
PTU35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTUの含有水溶液で29時間に培養し、35時間に発育するまで培養した後に、前記胚を精製水に入れ、胚が60時間発育するまでに25時間培養を継続する。
【0135】
フルオキセチン+ビタミンD3(0.1+0.005、0.4+0.02、1.6+0.08、6.4+0.32、25.6+1.28μg/ml+μg/ml)処理グループ:35時間に発育された前記胚を0.1μg/mlのフルオキセチン+0.005μg/mlのビタミンD3、0.4μg/mlのフルオキセチン+0.02μg/mlのビタミンD3、1.6μg/mlのフルオキセチン+0.08μg/mlのビタミンD3、6.4μg/mlのフルオキセチン+0.32μg/mlのビタミンD3、25.6μg/mlのフルオキセチン+1.28μg/mlのビタミンD3の水溶液にそれぞれに25時間に培養した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0136】
メラニン含有量の測定方法について、実施例3における3.1部分を参照されたい。
【0137】
表4は、フルオキセチンとビタミンD3をそれぞれ単独使用する場合、及びフルオキセチンとビタミンD3とを併用した場合のゼブラフィッシュのメラニン合成に対する有効率を示す。等価用量換算により得られたフルオキセチンとビタミンD3の予想加算効果をそれぞれ表5と表6に示す。ビタミンD3の投与量を横軸とし、予想加算効果と実際の効果を
図19に示す。フルオキセチンとビタミンD3の併用は、予想される加算効果より実際の加算効果の方が大きい。結果を分析したところ、表7に示すように、フルオキセチン(0.1~25.6μg/ml)とビタミンD3(0.005~1.28μg/ml)は使用量範囲において加算効果を有する。
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
実施例7:
7.1フルオキセチンとカルシポトリオールとを併用した場合のゼブラフィッシュのメラニン合成への影響
【0143】
ゼブラフィッシュは以下のようにグループ分けをする。
【0144】
PTU35時間処理グループ:6時間発育したゼブラフィッシュ胚を0.2mM PTUの含有水溶液で29時間に培養し、35時間に発育するまで培養した後に、前記胚を精製水に入れ、胚が60時間発育するまでに25時間培養を継続する。
【0145】
フルオキセチン+カルシポトリオール(0.1+0.005、0.4+0.02、1.6+0.08、6.4+0.32、25.6+1.28μg/ml+μg/ml)処理グループ:35時間に発育された前記胚を0.1μg/mlのフルオキセチン+0.005μg/mlのカルシポトリオール、0.4μg/mlのフルオキセチン+0.02μg/mlのカルシポトリオール、1.6μg/mlのフルオキセチン+0.08μg/mlのカルシポトリオール、6.4μg/mlのフルオキセチン+0.32μg/mlのカルシポトリオール、25.6μg/mlのフルオキセチン+1.28μg/mlのカルシポトリオールの水溶液にそれぞれに25時間に培養した以外に、上記PTU35時間処理グループと同様の操作をした。
【0146】
メラニン含有量の測定方法について、実施例3における3.1部分を参照されたい。
【0147】
表8は、フルオキセチンとカルシポトリオールをそれぞれ単独使用する場合、及びフルオキセチンとカルシポトリオールとを併用した場合のゼブラフィッシュのメラニン合成に対する有効率を示す。等価用量換算で得られたフルオキセチンとカルシポトリオールの予想加算効果をそれぞれに表9と表10に示す。カルシポトリオールの濃度を横軸とし、予想加算効果と実際の効果を
図20に示す。フルオキセチンとカルシポトリオールの併用は、
予想加算効果より実際の効果の方が大きい。結果を分析したところ、表11に示すように、フルオキセチン(0.1~25.6μg/ml)とカルシポトリオール(0.005~1.28μg/ml)は使用量範囲において加算効果を有する。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
実施例8:
8.1. フルオキセチンカルシポトリオール配合クリームの調製方法
フルオキセチン 0.1% (g/g)
カルシポトリオール 0.005% (g/g)
DL-α-トコフェロール 0.03% (g/g)
ステアリン酸 2.5% (g/g)
オクタデカノール 10.5% (g/g)
SDS 0.5% (g/g)
グリセリン 10% (g/g)
プロピレングリコール 3% (g/g)
流動パラフィン 8% (g/g)
精製水 65.365% (g/g)
【0153】
上記の測定値は、いずれもが重量パーセントで表示している。まず、オクタデカノール、ステアリン酸、流動パラフィンを80℃以上に加熱して保温し、溶液Iとして液状に溶か
す。次に、SDS、グリセリン、プロピレングリコール、トコフェロール、精製水を80℃以上に加熱し、溶液IIとした。200メッシュでふるい分けたフルオキセチンとカルシポトリオールをI液に順次に添加し、真空引き、約30分間に攪拌しながら乳化し、その
後に攪拌しながら乳化して冷却させ、約35℃まで冷却し、攪拌・乳化を停止し、パッケージに充填する。
【0154】
8.2. 0.1%g/gのフルオキセチンクリームの調製方法
フルオキセチン 0.1% (g/g)
DL-α-トコフェロール 0.03% (g/g)
ステアリン酸 2.5% (g/g)
オクタデカノール 10.5% (g/g)
SDS 0.5% (g/g)
グリセリン 10% (g/g)
プロピレングリコール 3% (g/g)
流動パラフィン 8% (g/g)
精製水 65.370% (g/g)
【0155】
上記の測定値は、いずれもが重量パーセントで表示している。オクタデカノール、ステアリン酸、流動パラフィンを80℃以上に加熱して保温し、溶液Iとして液状に溶かす。次
に、SDS、グリセリン、プロピレングリコール、トコフェロール、精製水を80℃以上に加熱し、溶液IIとした。200メッシュでふるい分けたフルオキセチンをI液に添加し
、真空引き、約30分間に攪拌しながら乳化し、その後に攪拌しながら乳化して冷却させ、約35℃まで冷却し、攪拌・乳化を停止し、パッケージに充填する。
【0156】
8.3. 0.005%のカルシポトリオールクリームの調製方法
カルシポトリオール 0.005% (g/g)
DL-α-トコフェロール 0.03% (g/g)
ステアリン酸 2.5% (g/g)
オクタデカノール 10.5% (g/g)
SDS 0.5% (g/g)
グリセリン 10% (g/g)
プロピレングリコール 3% (g/g)
流動パラフィン 8% (g/g)
精製水 65.465% (g/g)
【0157】
上記の測定値は、いずれもが重量パーセントで表示している。まず、オクタデカノール、ステアリン酸、流動パラフィンを80℃以上に加熱して保温し、溶液Iとして液状に溶か
す。次に、SDS、グリセリン、プロピレングリコール、トコフェロール、精製水を80℃以上に加熱し、溶液IIとした。200メッシュでふるい分けたカルシポトリオールをI
液に添加し、真空引き、約30分間に攪拌しながら乳化し、その後に攪拌しながら乳化して冷却させ、約35℃まで冷却し、攪拌・乳化を停止し、パッケージに充填する。
【0158】
8.4.フルオキセチンカルシポトリオール配合クリームがC57BL/6マウスのメラニン合成への影響
【0159】
上記調製された0.1g/gのフルオキセチンクリームと0.005g/gのカルシポトリオールクリーム、及び0.1g/gのフルオキセチンと0.005g/gのカルシポトリオールクリームの配合クリームを利用して、ハイドロキノン(hydroquinone)モデルにおけるC57BL/6マウスのメラニン合成への影響を検討した。
【0160】
健康な6~8週齢のC57BL/6雄マウス70匹を1週間に飼育した後に、体重別に、(1)正常対照グループ(Control)、(2)ハイドロキノン(hydroquinone)モデルグループ(Model)、(3)ブランクマトリックスグループ(Matrix)、(4)0.1g/gフルオキセチンクリームグループ、(5)0.005g/gカルシポトリオールクリームグループ、(6)0.1%g/g フルオキサチンクリームと0.005g/g カルシポトリオールクリーム時間別投与グループ、 (7) 0.1%g/g フルオキセチンと0.005%g/g カルシポトリオール配合クリームグループ、(8) メチシリングループ(重慶華邦医薬有限公司より購入)にランダムに分けた。各軟膏はいずれもが16.35mg/cm2の用量で投与されている。ロジンパラフィンワックスによる背中脱毛後 の(1)正常対照グループは無処理で対処する。(2)モデルグループには2.5%ハイドロキノン(hydroquinone)ゲルを朝塗りして10日後に投与を開始する、モデルグループに2.5%ハイドロキノン(hydroquinone)のみを投与した。(3) マトリックスグループは、午前中にハイドロキノン(hydroquinone)を塗布した後に、午後にブランクマトリックスを塗布した。(4) 0.1%フルオキセチンクリームグループは午後に0.1%g/g フルオキセチンクリームを塗布した。(5) 0.005g/gカルシポトリオールクリームグループは午後にカルシポトリオールクリームを塗布した。(6) グループは、先に0.1%g/g フルオキサチンを塗布した12時間後に、0.005g/gカルシポトリオールを塗布した。(7) 配合クリームの塗布量は16.25 mg/cm2
の配合クリームである。(8) メチシリングループは、0.1 mlのメチシリンを塗布し,C57BL/6マウスの皮膚を脱毛時から毎日に背部を写真撮影して観察し、メチシリン投与30日後にマウスを頸部処し,背部の皮膚を採取して4%パラホルムアルデヒドで固定してからHE切開を実施した。
【0161】
外観観察およびHE染色の結果は
図21と
図22に示す。正常対照グループと比べて、ハイドロキノン(hydroquinone)モデルグループでは、背中の肌色が著しく低下し、毛包におけるメラニンも減少している。マトリックスグループはモデルグループと同等であった。フルオキセチンクリームグループでは、マトリックスグループに比べ、背中の肌の色が明らかに濃くになり、毛根におけるメラニン量も増加している。また、カルシポトリオールクリームグループでは、肌の色が若干黒くなっており、マトリックスグループに比べ、毛根におけるメラニンが増加している。フルオキセチンクリームとカルシポトリオールクリームを時間別に別々に使用した場合、肌色と毛包におけるメラニンが増加したが、フルオキセチンクリーム単独使用とカルシポトリオールクリーム単独使用の時と比較すると、肌色と毛包におけるメラニンは大きな変化がなかった。一方、皮膚背部の色および毛包メラニンの含有量は、フルオキセチングループおよびカルシポトリオールクリームを単独使用グループに比べて、配合クリームグループの方が明らかに強くなっている。効果はフルオキセチンクリームとカルシポトリオールクリームの時間別投与よりも強い。