(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】創傷ドレッシングの調製のためのアセンブリおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20240101AFI20240109BHJP
A61L 26/00 20060101ALI20240109BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61F13/00 305
A61L26/00
A61M35/00 Z
(21)【出願番号】P 2020516688
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(86)【国際出願番号】 IL2018051051
(87)【国際公開番号】W WO2019058375
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2017-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】517114528
【氏名又は名称】レッドドレス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クシュニール,アロン
(72)【発明者】
【氏名】クシュニール,イガル
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515602(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055622(WO,A1)
【文献】特表平5-508565(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0089551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/02
A61L15/16-15/64、26/00
A61M35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)内部に血液を導入するために構成されたエンクロージャであって、ブリスター凹部及び平坦な周縁部を備えた本体を有するブリスターの形状のエンクロージャと、(ii)前記エンクロージャの開口部にフィットする取り外し可能なフィルムと、を有する血餅成型器と、
前記エンクロージャに導入された血液を凝固させて、血餅を形成するのに十分な量の凝固開始剤と、
血餅支持マトリックスと、
を具え、
前記血餅支持マトリックスは、前記周縁部と
前記取り外し可能なフィルムとの間の周辺部分で保持され、前記エンクロージャ内に中央部を有し、前記血餅支持マトリックス上に形成された血餅を傷の上に移すことが可能であり、
ブリスター凹部が針により穴開けが可能であることを特徴とする創傷ドレッシングアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の創傷ドレッシングアセンブリにおいて、前記凝固開始剤が前記エンクロージャ内に含まれることを特徴とする創傷ドレッシングアセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の創傷ドレッシングアセンブリにおいて、前記血餅支持マトリックスが、ガーゼであることを特徴とする創傷ドレッシングアセンブリ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の創傷ドレッシングアセンブリにおいて、前記エンクロージャが、前記血液をエンクロージャに注入するときに過剰な圧力を除去するために事前に密閉された通気口を具えることを特徴とする創傷ドレッシングアセンブリ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の創傷ドレッシングアセンブリにおいて、前記エンクロージャの少なくとも一部が透明であることを特徴とする創傷ドレッシングアセンブリ。
【請求項6】
ある容量の血液を血餅成型器のエンクロージャに導入するステップであって、前記エンクロージャが、ブリスター凹部と平坦な周縁部とを含む本体を有するブリスターの形状であり、凝固開始剤を含み、前記血餅成型器は、前記エンクロージャの開口部にフィットする取り外し可能なフィルムと、血餅支持マトリックスとをさらに備える、ステップと、
前記血液の凝固が可能になるよう十分な時間、前記血液をエンクロージャ内に維持して、それにより血餅を得るステップと、
前記
取り外し可能なフィルムを取り外して、前記エンクロージャを開くステップと、
前記血餅を前記エンクロージャから抽出するステップと
を具え、
前記血餅支持マトリックスは、縁部と
前記取り外し可能なフィルムとの間の周辺部分で保持され、前記エンクロージャ内に中央部を有し、前記抽出は、前記
血餅支持マトリックスで血餅を除去することを含み、
ブリスター凹部が針により穴開けが可能であり、
前記導入は、前記ブリスター凹部(108)に穴を開けて、それを通して血液を注入することを含むことを特徴とする創傷ドレッシングを調製する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記血餅をドレッシング材の上に組み合わせるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法において、最初に、前記エンクロージャに穴を開けて通気口を形成して、次に、前記血液を注入することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか一項に記載の方法において、前記血液が全血であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、創傷治療の分野に属し、血餅の調製、および創傷治療においてその血餅を使用するための創傷ドレッシングアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性創傷および皮膚潰瘍は深刻な健康状態であり、効果的な創傷治療アプローチが、医療ニーズとして認識されている。
【0003】
米国特許第9,180,142号は創傷治療法を開示し、そこでは、血液を凝固させ、形成された血餅がドレッシング材により傷の上に塗布される。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、血餅の使用による創傷治療に関する。本開示により具体的に提供されるのは、そのような血餅を調製するための創傷ドレッシングアセンブリ(例えば、一般に開示されている創傷治療に用いられる部品キットの形態)、そのような血餅を含む創傷ドレッシングを調製する方法、およびそれを用いて傷の手当てをする方法である。
【0005】
本開示に従って形成および使用される血餅は通常、本開示の教示により傷を手当てする患者本人の血液から形成されるが、これに限定されない。血液は通常全血であり、血液採取の医療行為において許可される任意の方法で対象から採取される。いくつかの他の実施形態において、血液は血液バンクからの全血である。
【0006】
その第1の態様により、本開示は、エンクロージャを有する血餅成型器を具える創傷ドレッシングアセンブリを提供し、エンクロージャは、本体の壁と、(エンクロージャの無菌状態を維持するために)エンクロージャの開口部を密封する取り外し可能なクロージャ(例えば、フィルムの形態)との間に画定され、通常はクロージャまたはその一部を取り外すことなく血液をその中に導入するように構成される。この装置は、以下の説明からさらに理解されるように、創傷の上に載せることを意図した血餅を形成するための型として機能する。
【0007】
一実施形態により、装置の壁またはクロージャの少なくとも一方が、針により穴開けが可能であり、それにより形成された穴を通して、密閉されたエンクロージャに血液が導入される。
【0008】
別の実施形態により、エンクロージャは血液導入用のポート、または、時に2つのポートを有し、1つは血液導入用、もう1つは通気用(例えば、血液導入中にエンクロージャからガスを排出できるようにする)である。通気ポートは、血液をエンクロージャに注入する際に過剰な圧力を除去することを意図して、事前に密閉されていてもよい。通常は、血液注入前に、そのような通気が可能になるように、通気孔が開かれる。
【0009】
他の1つの実施形態によれば、(血液容量を導入する前の)エンクロージャは真空下にある。
【0010】
いくつかの実施形態において、エンクロージャは、エンクロージャに導入された血液の凝固を促進するのに十分な量の凝固開始剤を含む。凝固開始剤を別の容器に入れて、血液をエンクロージャに導入する前に血液と混合する、或いは血液をエンクロージャに導入する前または後に血液とは別に注入してもよい。
【0011】
血液凝固開始剤は当技術分野で周知である。本開示の一実施形態において、血液凝固開始剤は少なくともカオリンを含む。血液凝固開始剤(カオリンまたは他の凝固開始剤)は、液体、粉末、顆粒等、任意の形態で提供されてもよい。
【0012】
血餅がエンクロージャ内に形成されると、創傷またはドレッシング材の上に移すことができる。
【0013】
アセンブリは、好ましくは、形成された血餅と一体化する、または埋め込まれることを意図した足場マトリックス(血餅支持マトリックス)をエンクロージャ内に含む。従って、足場マトリックスは、(i)血餅を全体的に支持する、(ii)一度形成された血餅の構造的完全性の維持を補助する、および/または(iii)血餅を創傷またはドレッシングの上に移すことが可能になり、そのような移動を通して血餅を支持する、という目的を有し得る。
【0014】
この支持足場マトリックスは通常、プラスチック網、布等の網の形をしている。いくつかの実施形態において、マトリックスは、例えばガーゼといった、ドレッシング材と同様の材料から作られる。
【0015】
血液注入は通常、マトリックスが血液内に入り、その後で形成される血餅内に入り込むように実行される。
【0016】
エンクロージャは、形成された血餅を、その血餅の完全性を損なわずに抽出するために構成された形状を有する。このため、クロージャによって最初に密閉/閉鎖されているエンクロージャの開口部は、そのような抽出が可能であるように広く、例えば、比較的浅い空洞の形状とすべきである。
【0017】
成型器は、創傷の様々な形状およびサイズに適合するよう、様々な形状およびサイズを有してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、エンクロージャは、エンクロージャ内に形成された凝血塊の最終的な全体形状を構成する形状および寸法、従って、その後で創傷の上に適用される血餅の形状および寸法を有する。エンクロージャの形状および寸法(従って、最終的な血餅の形状と寸法)は、使用目的と適用部位に応じて設計されてもよい。皮膚の傷または潰瘍上への適用という一般的な場合、エンクロージャは通常、開口部を有して設計され、開口部は、血餅全体をその完全性を損なわずに比較的容易に抽出が可能になるよう十分な幅を有する。血餅は通常、その高さ(厚さ)よりもかなり大きい横寸法を有するように形成され、例えば、上記のように比較的浅い空洞の形をしている。いくつかの他の実施形態において、例えば、トンネル状の傷の場合、相対的寸法は異なっていてもよく、そのような種類の傷に合わせて構成されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、少なくとも本体の壁は円形である(凸状またはU字型)。しかし、他のいくつかの実施形態において、本体の壁は多角形、例えば、立方体形状である。
【0020】
エンクロージャは、いくつかの実施形態によれば、ブリスターの一般的な形状を有し、クロージャは、本体の縁部から取り外し可能なフィルムである。エンクロージャは通常、例えば、本体の全部または一部で、透明な部分を含んでもよい。
【0021】
さらに、形成された血餅を、その血餅の完全性を損なわずに移動しやすくために、エンクロージャは通常、血餅がくっつかないか、ごく僅かにくっつく種類の材料から作られ、またはその材料で被覆される。
【0022】
また、本明細書に開示される血餅成型器を利用して、創傷ドレッシングを調製する方法が本開示により提供される。一般的に、この方法は、血液容量を現在開示されている血餅成型器のエンクロージャに注入するステップと、血液容量が凝固するようにして、それにより装置のエンクロージャ内に血餅を得るステップと、クロージャを取り外すステップと、血餅をエンクロージャから抽出するステップとを具える。
【0023】
いくつかの実施形態において、例えば、鋭利な物体または針(例えば、後に血液の注入に用いる同じ針)によって、最初に、エンクロージャまたはクロージャの壁に穴を開けて通気口を形成し、そこで初めて血液がエンクロージャに注入されるという手順が本開示の方法内で考えられる。
【0024】
いくつかの実施形態において、抽出後、血餅をドレッシング材と組み合わせてもよい。そのような組み合わせは、血餅をドレッシング材の上に移し、その後で、血餅とドレッシング材とを組み合わせたものを傷の上に載せること、または、血餅を傷の上に直接載せてドレッシング材で被覆することが伴ってもよい。ドレッシング材は、ガーゼ、または傷の手当てに適する或いは一般的に使用される他の任意の材料であってもよい。
【0025】
また、本開示により、傷の手当てをする方法が提供される。この方法は、上記の方法での血餅の調製とその抽出、それから、抽出された血餅を傷の上に適用するステップを具える。血餅を傷の上に適用する前または後に、血餅を上記のように創傷ドレッシング材と組み合わせてもよい。
【0026】
本開示のアセンブリは、部品キット(別個の要素の集合体)の形態であってもよく、血餅成型器に加えて、本明細書で開示される方法で用いられる他の要素を含んでもよい。
【0027】
それに限定されることなく、そのような他の要素は、エンクロージャ内に形成された血餅を傷の上に移す手段を含んでもよい。従って、いくつかの実施形態において、アセンブリは、血餅取り出しツール、例えば、スプーンまたはスパチュラ状の装置を具える。このツールは、プラスチック、金属、木材、厚紙、シリコン、または他の適切な材料から作成可能であり、好ましくは、血餅の構造的完全性を維持する方法で、血餅をエンクロージャから取り出すために構成される。いくつかの実施形態において、除去ツールは、血餅をエンクロージャの壁から分離させるように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、アセンブリは、形成された血餅を創傷に対して固定する手段を具える。そのような手段は、ドレッシング材、例えば、ガーゼ、または傷の手当てをするために医療行為において使用され得るその他の材料であってもよい。
【0029】
加えて、または代替として、アセンブリは、採血容器、血液の早期凝固(例えば、エンクロージャに導入する前)を防止する血液凝固剤、血液採取および移送ツール等、採血に使用される要素を含んでもよい。
【0030】
米国特許第9,180,142号も参照され、その関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、実際にどのように実行されるかを例示するために、添付図面を参照しながら、実施形態を非限定的な例としてのみ説明する。
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による、ブリスターの形をしたエンクロージャの底面透視図を提供する写真である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、血液をエンクロージャに注入することを示す側面透視図である。
【
図3】
図3は、クロージャを取り外すと、エンクロージャ内に形成された血餅が見えることを示す。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に従って調製された創傷ドレッシングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付図面に示される実施形態は、ブリスターの形をしたエンクロージャを含み、これは本開示のより広い文脈の例示的な実施形態である。従って、特定の実施形態の説明は、本開示のより一般的な原理の例示を意図したものであり、限定を意図したものではない。
【0033】
最初に
図1を参照すると、全体を100で示す、ブリスターの形をしたエンクロージャの写真が示され、エンクロージャは、ブリスター凹部104と平坦な周縁部106とを含む本体102を有する。縁部には、ラミネート/フィルムの形態の取り外し可能なクロージャ108が取り付けられる。
【0034】
エンクロージャ100内に含まれるのは、凝固開始剤物質110であって、液体、粉末、顆粒等の形態であってもよい。凝固開始剤は、例えば、カオリンであってよい。また、エンクロージャに含まれるのは、血餅支持(足場)マトリックス112であって、ガーゼ、ポリマーメッシュ等から作られ、縁部とクロージャとの間の周辺部分に固定され、エンクロージャ内に中央部を有する。
【0035】
通常は全血である血液が採取され、それから、
図2Aおよび
図2Bに示すように、エンクロージャに注入される。具体的には、全血を含む注射器122の針120をクロージャ108に突き刺して、
図2Bに見られるように、血餅支持足場マトリックス112を十分覆うよう、エンクロージャの相当部分を満たすまで血液が注入される。また、最初に、例えば、血液注射針でクロージャに突き刺して通気口を形成し、その後で、血液のみを注入することも可能である。
【0036】
次に、血液は、凝固するのに十分な時間、エンクロージャ内に維持され、血液が凝固した後にフィルム108を取り外すと、
図3に見られるように、血餅支持足場マトリックス112を埋め込んた血餅132を含む血餅複合体130が見える。
【0037】
次に、血餅132と血餅支持マトリックス112とを含むこの血餅複合体130を、
図4に見られるように、例えば、ガーゼであるドレッシング材134と組み合わせて、ドレッシング-血餅複合体を形成することができる。このドレッシング-血餅複合体の組み合わせを、傷の上に移すことができる。或いは、
図3に見られるように、ブリスターのカバーを開けて、血餅複合体を出現させた後で、血餅複合体を傷の上に移し、血餅複合体が傷の上にある状態でドレッシング材をその上に適用することができる。