(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ハンガー
(51)【国際特許分類】
A47G 25/32 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A47G25/32 A
(21)【出願番号】P 2020116976
(22)【出願日】2020-07-07
(62)【分割の表示】P 2016177040の分割
【原出願日】2016-09-09
【審査請求日】2020-08-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-16
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】516273327
【氏名又は名称】朴 捧材
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】朴 捧材
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】長馬 望
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-142377(JP,A)
【文献】特開平9-280242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類用ハンガーであって、
湾曲部と、前記湾曲部からハンガー本体側に向けて延びる直線状のフック基部とを備えたフックと、
前記フックに対し、前記フック基部に沿って、フック下端側から前記湾曲部側に向けてスライド可能なフック形状の部材である補助フックとを備え、
前記フックの開口部を向くフック内面に、前記フック基部から前記湾曲部に渡って溝が形成され、
前記補助フックが、前記溝に沿って上下方向にスライド可能であり、前記湾曲部側のスライド上限位置において、前記フックの開口部をカバーするカバー部を設け、
前記フックが、前記湾曲部から先の上下方向に延びるフック先端部を備え、
前記溝が、前記フック先端部から、前記湾曲部、前記フック基部にまで渡って形成され、
竿体またはハンガー吊るし棒に対して前記補助フックが掛けられると、前記補助フックが、前記溝に収容配置されることを特徴とする衣類用ハンガー。
【請求項2】
衣類用ハンガーのフック部分であって、
湾曲部と、前記湾曲部からハンガー本体側に向けて延びる直線状のフック基部とを備えたフックと、
前記フックに対し、前記フック基部に沿って、フック下端側から前記湾曲部側に向けてスライド可能なフック形状の部材である補助フックとを備え、
前記フックの開口部を向くフック内面に、前記フック基部から前記湾曲部に渡って溝が形成され、
前記補助フックが、前記溝に沿って上下方向にスライド可能であり、そして、前記湾曲部側のスライド上限位置において、前記フックの開口部をカバーするカバー部を設け、
前記フックが、前記湾曲部から先の上下方向に延びるフック先端部を備え、
前記溝が、前記フック先端部から、前記湾曲部、前記フック基部にまで渡って形成され、
竿体またはハンガー吊るし棒に対して前記補助フックが掛けられると、前記補助フックが、前記溝に収容配置されることを特徴とする衣類用ハンガーのフック部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類などを掛けるハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが竿体やハンガー吊るし棒などにハンガーのフックを掛けた場合、風などによってハンガーが回転し、竿体などから離脱する恐れがある。
【0003】
ハンガーが竿体などから離脱するのを防ぐため、例えば、下記特許文献1の脱落防止機能付き衣類用ハンガーが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、構造が簡易でなく、ハンガーを掛ける操作が面倒である。
【0006】
したがって、簡易な構造で、面倒な操作なくハンガーを竿体に掛けることができ、竿体などから離脱するのを防ぐことができるハンガーを提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である衣類用ハンガーは、湾曲部と、前記湾曲部からハンガー本体側に向けて延びる直線状のフック基部とを備えたフックと、前記フックに対し、前記フック基部に沿って、フック下端側から前記湾曲部側に向けてスライド可能なフック形状の部材(以下、補助フックという)とを備え、前記補助フックが、前記湾曲部側のスライド上限位置において、前記フックの開口部をカバーするカバー部を設けている。
【0008】
本発明の他の態様である衣類用ハンガーは、湾曲部と、前記湾曲部からハンガー本体側に向けて延びる直線状のフック基部とを備えたフックと、前記フックに対し、前記フック基部に沿って、フック下端側から前記湾曲部側に向けてスライド可能なフック形状の部材(以下、補助フックという)とを備え、前記補助フックが、前記フック基部に沿ってスライドする部分(以下、補助フック基部という)と、前記補助フック基部と繋がる、吊体に掛けられる部分(以下、吊体当接部という)と、前記補助フック基部と繋がっていて前記フックの先端部から離れる方向へ傾斜する斜面を有する部分(以下、カバー部という)とを有し、前記補助フックの前記吊体当接部が前記湾曲部と接するスライド上限位置へ近づくほど、前記カバー部の斜面側先端部と前記フックの先端部とが、より接近する。
【0009】
本発明の他の態様である衣類用ハンガーは、湾曲部と、前記湾曲部からハンガー本体側に向けて延びる直線状のフック基部とを備えたフックと、前記フックに対し、前記フック基部に沿って、フック下端側から前記湾曲部側に向けてスライド可能なフック形状の部材(以下、補助フックという)とを備え、前記補助フックが、前記フック基部に沿ってスライドする部分(以下、補助フック基部という)と、前記補助フック基部と繋がる、吊体に掛けられる部分(以下、吊体当接部という)と、前記補助フック基部と繋がっていて前記フックの先端部から離れる方向へ傾斜する斜面を有する部分(以下、カバー部という)とを有し、前記補助フックが、前記フック下端に形成された溝に収容された状態で下スライド限位置として支持され、前記補助フックの前記吊体当接部が前記湾曲部の内面に沿って形成された溝に収容された状態でスライド上限位置まで移動したとき、前記カバー部の斜面側端部と前記フック先端部の端部との距離間隔が、スライド下限位置からスライド上限位置との間で、最も狭い。
【0010】
例えば、ハンガーは、衣類などの掛物を掛けることが可能なハンガーであり、肩当部を設けたハンガー本体と、ハンガー本体よりフック側にあって、ハンガー本体に対して上下方向に相対移動可能な可動部材とを備える。そして、肩当部と可動部材との間で、掛物を挟むことが可能である。ただし「上下方向」は、フックとハンガー中央基部に沿った方向であり、フック側が上方向、その逆が下方向を表す。ハンガーには、ハンガー本体の吊り下げ棒に対向する押付部材を可動部材に設けるようにしてもよい。例えば、スライド機構をフックとハンガー本体中央基部と間に設けることで、可動部材を上下方向に移動させることが可能である。スライド機構は任意であり、例えば、ガイド部材を設ける一方でハンガー本体と可動部材の厚さを相違させ、一方を内部に挿通するようにすることができる。また、可動部材が、ハンガー本体と対向する下面に突起部材を設けることも可能である。
【0011】
ハンガーには、保持機構を設けることが可能であり、フックの下部に、手の拇指球あるいはその付近を当てることが可能な第1保持部材を設けることができる。例えば、フックの湾曲部とは反対方向に向けて延びる棒状部材を設けてもよい。また、同時に可動部材の中央基部、あるいはその他の箇所において、手の指を掛けることが可能な第2保持部材を設けることが可能である。例えば、可動部材の表面に指掛け可能な突出部材を設けてもよい。ハンガーには、可動部材に対し、下方向に向けて力を作用させる規制部材を設けることが可能である。例えば、弾性部材を設けて可動部材を下方向へ付勢させる構成にしてもよい。
【0012】
例えば、ハンガーは、ハンガー本体と、ハンガー本体に対して上下方向に相対移動可能な可動部材と、可動部材に対し、ハンガー本体に向けて力を作用させる規制部材とを備え、可動部材が、ハンガー本体の吊り下げ棒と対向する押付部材を有する。例えば、ハンガー本体の吊り下げ棒あるいはアームに取り付けられ、可動部材に対して下方向に向けて力を作用させる(付勢する)弾性部材などを設けることが可能である。
【0013】
例えば、ハンガーは、ハンガー本体と、ハンガー本体に対して上下方向に相対移動可能な可動部材と、ハンガー本体もしくは可動部材のいずれか一方に設けられ、手の拇指球あるいはその付近を当てることが可能な第1保持部材と、他方に設けられ、手の指を掛けることが可能な第2保持部材とを備える。例えば、フック開口部とは逆方向に延びる突出部材をハンガー本体と一体的なフックに設け、可動部材の表面(表面あるいは裏面)から突出する突出部材を設けることが可能である。
【0014】
本発明によれば、簡易な構造で、面倒な操作なくハンガーを竿体に掛けることができて、竿体などから離脱するのを防ぐことができるハンガーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態であるハンガーの平面図である。
【
図2】
図1の右方向から見たハンガー側面図である。
【
図3】裏側から見た補助アームの部分的斜視図である。
【
図4】裏側から見たガイド部付近の概略的斜視図である。
【
図5】可動部材を上限位置まで持ち上げたときのハンガー平面図である。
【
図6】第2の実施形態におけるハンガーのフック部分を示した平面図である。
【
図7】補助フックが上限位置(竿にかけたとき)に移動したときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態であるハンガーの平面図である。
【0017】
ハンガー10は、三角形状のフレーム(ハンガー本体)12とフック20とを備え、ここでは衣類用ハンガーとして構成されている。フレーム12の中央基部13から横方向に延びるアーム22A、22Bは、上着を掛ける肩当部24A、24Bとして構成される。肩当部24A、24Bは、上着の襟あるいはネックから肩の部分までが載るように、中央基部13から緩やかに下がり、フレーム12の吊り下げ棒16と繋がるアーム端部26A、26Bまで延びている。なお、上着が着崩れしないように、肩当部24A、24Bの断面形状を楕円状にしてもよい。
【0018】
フック20と中央基部13との間には、互いに平行な一対のガイド片17A、17Bを備えたガイド部材17が設けられている。ガイド部材17は、中央基部13およびフック20に対して一体的であり、ガイド片17A、17Bは互いに所定距離間隔を設けて上下方向に延びている。
【0019】
ハンガー10には、フレーム12に対して上下方向に沿って移動可能な可動部材30が設けられている。ただし、中央基部13からフック20に向けた方向を上方向、その逆を下方向としている。可動部材30は、その中央基部31からフレーム12のアーム22A、22Bに沿って両側に延びる補助アーム32A、32Bを備え、補助アーム32A、32Bはフレーム12のアーム22A、22Bと対向する。
【0020】
補助アーム32A、32Bは、上着などの衣服を掛けることができるように、フレーム12のアーム22A、22Bと略同じ長さを有し、補助的な肩当部として構成されている。また、補助アーム32A、32Bの下面(フレーム12と対向する面)には、矩形状の突起部33が各アームに所定間隔で形成されている。
【0021】
中央基部31の下方には、T字型の押付部材37が形成されており、ガイド部材17に沿って延びる懸垂部37Aと、メインフレーム12の吊り下げ棒16と対向する台形状の押圧部37Bとを備える。押圧部37Bは、ズボン、ネクタイなどの衣類を吊り下げ棒16に吊るしたときに衣類を押し付けるため、吊り下げ棒16に平行な押付面37Cを備える。また、アーム22A、22Bの傾斜角度に平行な傾斜面37A´、37B´を両端に設けている。
【0022】
押圧部37Bの両端部39A、39Bには、細長い溝の先端に断面円状の穴が形成された係止部38A´、38B´が形成されており、吊り下げ棒16の両端部には、アーム端部26A、26Bに向けて湾曲した突起状の係止部16A、16Bが形成されている。係止部38A´と係止部16A、および係止部38B´と係止部16Bには、輪ゴムWが掛けられている。
【0023】
本実施形態では、フレーム12との間で上着などの衣類を挟むことが可能な可動部材30とともに、可動部材30を上下方向に移動させるスライド機構60がハンガー10の中央部に設けられている。また、ユーザが片手でハンガー10を保持したまま可動部材30を動かすことを可能にする保持機構70(突起部52、突起部材42A、42B(
図2参照))を備える。以下、これについて詳述する。
【0024】
図2は、
図1の右方向(アーム22B側)から見たハンガー側面図である。
図3は、補助アーム32Aの部分的斜視図である。
図4は、
図1の紙面裏側から見たガイド部材17付近の概略的斜視図である。なお、ここでは、フック20の開口部MTが
図1のように紙面左側を向く状態でハンガー本体12を紙面上から見た側を表側、その逆を裏側とする。
【0025】
図2に示すように、可動部材30の厚さTは、フレーム12の厚さtよりも大きく、フレーム12と一体的なガイド部材17はフレーム12と同じ厚さtをもつ。
図3には、可動部材30の補助アーム32Bの下面32Sにおいて、フレーム12のアーム22Bが対向する領域KSを破線によって示している。一方、押付部材37では、両端部39A、39Bの厚さがフレーム12の厚さtと等しく、それ以外の懸垂部37A、押圧部37Bは可動部材30の厚さTに定められている。また、フック20の厚さは、フレーム12と同じ厚さTを有する。
【0026】
図4に示すように、可動部材30の中央基部31には、ガイド片17A、17Bを挿通させた内部空間IS1、IS2がそれぞれ形成されている。すなわち、フレーム12と一体的なガイド部材17は、可動部材30の中央基部31の内部を通ってフレーム12の中央基部13と繋がっている。中央基部31から延びる懸垂部37Aは、その幅が一対のガイド片17A、17Bの距離間隔に応じた幅であり、懸垂部37Aの移動方向がガイド部材17によって上下方向に案内される。
【0027】
一方、フレーム12の中央基部13には、表裏両面にそれぞれ一対の矩形状ガイド部材38A、38Bおよび38C、38Dが設けられている(
図1、2、4参照)。ガイド部材38A~38D各々の厚さは、フレーム12に対してガイド部材38A(38C)とガイド部材38B(38D)とを加えた厚さが可動部材30の厚さTと等しくなるように、定められている(
図2参照)。
【0028】
したがって、
図4に示すように、懸垂部37Aの表面と一対のガイド部材38A、38B(38C、38D)の表面とが面一となり、一対のガイド部材38A、38B(38C、38D)も、懸垂部37Aの移動方向を上下方向に規定する。
【0029】
また、一対のガイド部材38A、38B(38C、38D)は、可動部材30の移動範囲を制限し、中央基部31が一対のガイド部材38A、38B(38C、38D)と接している位置が可動部材30の下限位置となる。このとき押圧部37Bは、吊り下げ棒16側へ輪ゴムWの弾性力により付勢されている。このとき、フレーム12のアーム22A、22Bと可動部材30の補助アーム32A、32Bとの間には、略一定間隔の隙間が形成されている。なお、
図3に示すように、可動部材30に形成された複数の矩形状突起部33は、アーム22A、22Bとの対向領域KSを超えた距離間隔で配置されているため、アーム22A、22Bと当たらない。一方、フック20の厚さがフレーム12と同じ厚さTを有するため、可動部材30がフック20の下面20Uに当たる位置が、可動部材30の上限位置となる。
【0030】
図2に示すように、可動部材30の中央基部31には、左右方向(横方向)に沿って矩形状の突起部材42A、42Bが表面、裏面から突出するようにそれぞれ設けられている。一方、フレーム12と一体的なフック20には、フック20の湾曲部21とは逆方向のアーム22B側へ延びる棒状の突起部52が設けられている(
図1参照)。言い換えると、突起部52は、フック20の開口部MTとは逆方向に延びている。
【0031】
ユーザは、右手でハンガー10を保持する場合、突起部42Bに人差し指あるいは中指を引っ掛けるとともに、手の甲の拇指球の部分(
図1の符号X参照)を突起部52に載せる(当てる)。突起部52と突起部材42Bとの距離間隔は、このような片手のハンガー保持を可能とする距離間隔に定められており、ガイド部材17の上下方向長さもそれに従う。ユーザは、中指および/あるいは薬指を突起部材42に当て、親指側へ引くように動かすことで、ハンガー10を片手で保持しながら可動部材30を上方向へ動かすことができる。なお、左手で保持する場合、突起部材42Aに指を引っ掛けてハンガー10を保持すればよい。
【0032】
上述したように、押圧部37Bの係止部38A´、38B´と吊り下げ棒16の突起部16A、16Bには、輪ゴムWが掛けられている。輪ゴムWは、可動部材30が下限位置にある状態で弾性力を作用させており、押圧部37Bすなわち可動部材30に対し、吊り下げ棒16のある下方向に向けて力を作用させる。したがって、ユーザが可動部材30を上方向へ上げようとすると、可動部材30は輪ゴムWによる復元力が働き、可動部材30は、上へ移動するほど吊り下げ棒16側(下方向)へ強く引っ張られる。したがって、ユーザが指を突起部材42Aもしくは42Bから離すと、可動部材30は下限位置まで戻る。
【0033】
図5は、可動部材30を上限位置まで持ち上げたときのハンガー平面図である。例えば、片方の手で上着の袖当たりを持ち、もう片方の手でハンガー10を保持しながら、指の操作で可動部材30を上方向に持ち上げる。
図5のように、可動部材30を上限位置まで持ち上げた状態で、上着をフレーム12のアーム22A、22Bを上着の肩部分に通し、掛け終ると同時に可動部材30の突起部材42A/42Bから指を離す。その結果、輪ゴムによる復元力によって可動部材30は下方向へ下がり、上着がフレーム12のアーム22A、22Bと可動部材30の補助アーム32A、32Bとの間に挟まれる。
【0034】
上述したように、補助アーム32A、32Bに形成された複数の突起部33各々は、フレーム12のアーム22A、22Bと当たらない距離間隔をもって対向配置されている。そのため、衣類のアーム22A、22Bに載せられた部分の両傍を突起部33が押し付ける。これによって、上着がフレーム12と可動部材30との間にしっかりと挟まれることになり、上着の滑り落ちを防止する。特に、滑りやすい素材から成る上着で、ハンガー10のサイズが上着のサイズと適合していないような場合においても、上着のすべり落ちを防ぐことができる。また、突起部33を設けることでフレーム12と可動部材30との間に隙間が生じ、通気性を保つことができる。
【0035】
また、上着だけでなく、ズボンなどの衣類だけを吊り下げ棒16に吊るす場合にも、片手操作で吊るすことができる。すなわち、可動部材30を持ち上げた状態で衣類を吊り下げ棒16に掛け、掛け終ると指を離すことにより、衣類が押圧部材37Bと吊り下げ棒16との間に挟まれ、確実に保持される。さらに、輪ゴムWで可動部材30を引っ張る構成であるため、可動部材30が下限位置にあるとき、ネクタイなどを吊り下げ棒16に掛けることもできる。
【0036】
このように本実施形態によれば、ハンガー10がフレーム12と可動部材30とを備え、可動部材30は、フレーム12と一体的なガイド部材17(17A、17B)とガイド部材38A~38Dを含むスライド機構60によって、フレーム12に対し上下方向に相対移動する。また、保持機構70(突起部52、突起部42A/42B)によって、可動部材30が片手操作でフック20に近づけることが可能となる。そして、輪ゴムWが押付部材37の動きを規制し、吊り下げ棒16のある下方向へ力を作用させることにより、ユーザが指を離すと、可動部材30は下方向に移動して吊り下げ棒16に押し付けられる。このような可動部材30、スライド機構60、保持機構70をハンガー10に設けることで、衣類をハンガー10に容易に素早く掛け、また、滑り落ちを防ぐことができる。特に、従業員用衣服など狭い場所に数多くのハンガーを掛ける場合、周囲の衣服が当たって滑り落ちることを防ぐことができる。また、竿体にハンガー10を吊るして洗濯物を干すような場合でも、風などで衣服が飛ばされるのを防ぐことができる。さらに、洗濯バサミを使用せずに、上着以外の衣類(靴下、タオルなど)を挟むこともできる。
【0037】
本実施形態では、補助アーム32A、32Bが補助的な肩当部となるように形成されているが、アーム22A、22Bの一部分を押し付けるだけの部材として構成してもよく、アーム22A、22Bに合わせた形状にしなくてもよい。また、可動部材30に複数の突起部33を設けなくてもよく、アーム22A、22Bと補助アーム32A、32Bとが下限位置で接するようにしてもよい。保持機構に関しては、フック20の突起部52のみ設け、可動部材30の任意の箇所を指に掛けるようにしてもよい。輪ゴムW以外の弾性部材によって規制部材を構成してもよく、例えば、フック側から力を作用させるバネなどをガイド部材付近に設けてもよい。また、弾性部材以外の部材によって可動部材30を下方向へ付勢させてもよい。
【0038】
なお、規制部材を設けず、可動部材30の自重あるは指の操作によって下方向に移動させるようにしてもよい。この場合、ガイド部材17と可動部材30とを摺動させ、指を離した状態でも可動部材30が所定位置に停止するようにしてもよい。一方、両手で保持することなどを考慮すれば、保持機構70を設けないハンガーを構成することも可能である。この場合、規制部材で可動部材30を移動させることで滑り落ちを防ぐことができる。これら規制部材、あるいは保持機構を取り除いた構成では、フレーム12もしくは可動部材30どちらかを相対的にフック側へ移動させればよく、肩当部をどちらか一方に設ければよい。さらに、自重によって可動部材30が下方向へ移動すること、保持機構がなくても片手保持可能な可動部材の形状にすることを考慮すれば、可動部材30のみ設けても衣類を容易に掛け、滑り落ちを防止することができる。
【0039】
上着を掛けるハンガーとしては、ズボンなどを押し付ける押付部材37を設けなくてもよく、吊り下げ棒のないアーム、フックのみからなるハンガーにも適用可能である。一方、ズボン、ネクタイなどを掛けることに着目すれば、可動部材30を押付部材37の上下移動目的のみで設けてもよい。この場合、アームのない横方向に延びる棒状のハンガー本体に対して押付部材を設ければよい。
【0040】
本実施形態では衣類用ハンガーとして構成しているが、靴用ハンガー、工場ラインで部品搬送時に使用されるハンガーなど、任意のハンガーに適用することが可能である。
【0041】
次に、
図6、7を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、フックに対して上下方向にスライド可能な補助フックが設けられている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
【0042】
図6は、ハンガーのフック部分を示した平面図である。
図7は、補助フックを上限位置へ移動させたときの平面図である。
【0043】
ハンガー100は、湾曲部121を備えたフック120を備え、竿体や吊り下げ要の棒などにフック120(湾曲部121)を掛けることが可能である。また、フック120は、上下方向に延びる直線状のフック基部123と、湾曲部121から先の上下方向に延びるフック先端部122とを備えている。一方、第2の実施形態では、厚さTのフック120とともに、湾曲部131を備えた厚さtの補助フック130が設けられている。補助フック130は、補助フック基部133を備えるとともに、湾曲部131によって形成される開口部MTを塞ぐカバー部分134を備える。カバー部分134は、斜面を有するカバー基部134Aから横方向に突起部134Bを延ばした構造になっている。なお、フック基部123の下部124も、カバー部分134と同様の形状になっている。
【0044】
フック120には、フック先端部122から湾曲部121、フック基部123、さらにはガイド部材17との接続部部分となるフック下面20Uにまで渡ったフック内面120Iに沿って、溝124が設けられている。そして、補助フック130は溝124に収容配置されるとともに、その移動方向が上下方向に規定されている。補助フック130の横方向サイズおよび溝124の深さは、補助フック130の湾曲部131の先端部分および補助フック基部133が、それぞれフック先端部122およびフック基部123に形成された溝124に沿って上下方向に摺動しながら相対移動できるように、定められている。
【0045】
補助フック130は、フック下部のガイド部材17付近を下限位置として支持されている。そして、補助フック130を上限位置へ移動させると、
図7に示すように、カバー部分134がフック先端部122に接近することによって、フック120の開口部MTを塞ぐ。ユーザが竿体やハンガー吊るし棒などに補助フック130に掛けることにより、ハンガー100は竿体に吊り下げられる。補助フック130によってフック120の開口部MTが塞がれているため、風などによってハンガー100が回転しても、竿体から脱落するのを防ぐことができる。また、竿体に補助フック130をかけるだけで補助フック130が上方向へ移動するため、ユーザは特別な操作をすることなく、補助フック130を使ってハンガーを掛けることができる。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態のようなスライド機構、可動部材、規制部材、保持機構を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10、100 ハンガー
12 フレーム(ハンガー本体)
13 中央基部
17 ガイド部材(スライド機構)
17A 17B ガイド片
20 フック
22A 22B アーム
24A 24B 肩当部
30 可動部材
31 中央基部(スライド機構)
32A 32B 補助アーム
33 突起部
37 押付部材
37A 懸垂部
37B 押圧部
38A~38D ガイド部材(スライド機構)
42A 42B 突起部材(第2保持部材)
52 突起部(第1保持部材)
120 フック
121 湾曲部
122 フック先端部
123 フック基部
130 補助フック
133 補助フック基部
134 カバー部分
W 輪ゴム(規制部材)