IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長華科技股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-リードフレーム及びその製造方法 図1
  • 特許-リードフレーム及びその製造方法 図2
  • 特許-リードフレーム及びその製造方法 図3
  • 特許-リードフレーム及びその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】リードフレーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01L23/50 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023076372
(22)【出願日】2023-05-02
【審査請求日】2023-05-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512243395
【氏名又は名称】長華科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 啓一
(72)【発明者】
【氏名】春園 直樹
(72)【発明者】
【氏名】飯谷 一則
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/033126(WO,A1)
【文献】特開2021-019095(JP,A)
【文献】特開2022-103594(JP,A)
【文献】特開2016-105432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の側の面が表面積比1.0~1.3の平滑面からなる板状の銅材を用いて形成されたリードフレームであって、前記板状の銅材の平滑面からなる側における半導体素子の接続や導通のために接続する部位に所定の接続用めっき層を備え、且つ前記接続用めっき層の周囲に前記銅材の平滑面が5~20μmの幅で環状に露出した部位を備え、その他の部位に、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ200nm以上の針状結晶構造を備えた酸化銅の被膜で構成され、表面積比1.7~2.3の陽極酸化膜を備えたことを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記接続用めっき層は、前記板状の銅材に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層して形成されためっき層からなることを特徴とする請求項に記載のリードフレーム。
【請求項3】
少なくとも一方の側の面が表面積比1.0~1.3の平滑面からなる板状の銅材を準備する工程、
前記板状の銅材の平滑面からなる側に、リードフレームとして半導体素子の接続や導通のために接続する部位に対応する部位が開口しためっき用レジストマスクを形成する工程、
前記めっき用レジストマスクの開口から露出した前記板状の銅材に所定の接続用めっき層を形成する工程、
前記めっき用レジストマスクと前記接続用めっき層との界面及び前記めっき用レジストマスクと前記接続用めっき層の周囲における前記板状の銅材との界面に浸透する特性を有する銀めっき浴を用いて、前記接続用めっき層の上面と側面を覆うとともに、前記接続用めっき層の周囲における前記めっき用レジストマスクの下の前記板状の銅材を覆う銀めっき層を形成する工程、
前記めっき用レジストマスクを除去する工程、
前記銀めっき層を形成した前記板状の銅材を前記リードフレーム形状に形成する工程、
前記リードフレーム形状に形成した前記板状の銅材をアルカリ溶液に浸漬し、表面の酸化膜を除去する工程、
酸化膜を除去した前記板状の銅材を陽極として黒化処理液に浸漬し、前記板状の銅材における前記銀めっき層で覆われていない部位に表面積比が1.7~2.3の陽極酸化膜を形成する工程、
前記銀めっき層を剥離し、前記接続用めっき層の周囲に前記銅材の前記平滑面を環状に露出させる工程、
を含むことを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項4】
1.5A/dm以下の低電流密度で前記陽極酸化膜を形成することを特徴とする請求項に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項5】
前記銀めっき浴は、高シアン浴であることを特徴とする請求項に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項6】
前記接続用めっき層は、前記板状の銅材に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層して形成することを特徴とする請求項に記載のリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止される半導体パッケージに使用するリードフレーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂封止型半導体パッケージは、金属製のリードフレームと封止樹脂が使用される。そして、リードフレームの基材には、主に銅合金材が用いられる。封止樹脂には、主にエポキシ樹脂が用いられる。このタイプの半導体パッケージは、リードフレームの表面と封止樹脂との密着性に問題が生じることがある。ワイヤーボンディング実装の場合では、半導体素子を接続するための半導体素子接着用ペーストであるダイアタッチ材の溶剤が染み出して封止樹脂との密着性が損なわれる問題がある。フリップチップ実装の場合では、半田を用いて電気的な接続を行う際、半田が広がりショートする問題や広がった半田により封止樹脂との密着性がさらに悪化する問題がある。
【0003】
そこで、樹脂封止型半導体パッケージに用いるリードフレームにおいては、封止樹脂との密着性を向上させるため、半導体素子の接続や導通のために接続が必要な部位を除いた全面に陽極酸化膜を形成する等の粗化処理を施すことが知られている。
【0004】
例えば、次の特許文献1には、電気的に接合する部位に銀めっき層を形成し、銀めっき層が形成されていないリードフレーム基材の全面に陽極酸化膜を形成した後、銀めっき層を剥離する技術が開示されている。
【0005】
しかし、リードフレームの表面に粗化処理を施した場合、半導体素子をリードフレーム搭載面へ固定する際に用いるダイアタッチ材に含まれる溶剤成分が、リードフレームの表面に形成した粗化面に毛細管現象により濡れ広がり易く、濡れ広がった溶剤成分がリードフレームと封止樹脂との密着性を低下させ、また、ワイヤーボンディングを行う場合にはワイヤーボンディングを阻害する虞がある。
【0006】
しかるに、特許文献2には、粗化面を形成するとともに、形成した粗化面の一部を潰して平坦度が高い粗化緩和面を形成することで、粗化領域と、粗化領域よりも平坦度が高い粗化緩和領域と、の2種類の粗化面を有することにより、毛細管現象による溶剤成分の濡れ広がりを抑制して、樹脂との密着性の低下を抑制およびワイヤーボンディング障害を回避するリードフレームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-019095号公報
【文献】特開2022-103594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示のリードフレームは、その製造方法において、金属板からリードフレーム形状を形成し、部分的にワイヤーボンディングが可能なめっき層を形成し、次にめっき層を形成したリードフレームの全面に粗化処理を行い、粗化領域を形成し、次に金型を用いて粗化領域の一部を押圧することで粗化緩和領域を形成している。
しかし、特許文献2に開示の技術では、粗化領域を形成後に金型を用いて粗化緩和領域を形成するための押圧工程が必要となる分、製造工程が増加して製造効率が低下するとともに、金型を用いた押圧工程のための製造設備が必要となり、コスト高となってしまう。
【0009】
また、電気的な接続に半田を使用する場合、例えば、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層された、接続用めっき層を介して半田接合するよりも、銅材に直接半田接合したほうが、接合強度は高いことが知られ、半田接合を行う部位に電気的な接続のための、接続用めっき層と銅材の両方が露出し、その他の表面に陽極酸化膜を備えたリードフレームが求められている。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであり、粗化緩和領域を備えることなく、半導体素子の接続や導通のために接続する部位の半田接続やダイアタッチ材による接続に好適で、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性に優れ、効率的、且つコストを抑えて製造することが可能なリードフレーム及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明によるリードフレームは、少なくとも一方の側の面が表面積比1.0~1.3の平滑面からなる板状の銅材を用いて形成されたリードフレームであって、前記板状の銅材の平滑面からなる側における半導体素子の接続や導通のために接続する部位に所定の接続用めっき層を備え、且つ前記接続用めっき層の周囲に前記銅材の平滑面が5~20μmの幅で環状に露出した部位を備え、その他の部位に、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ200nm以上の針状結晶構造を備えた酸化銅の被膜で構成され、表面積比1.7~2.3の陽極酸化膜を備えたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明のリードフレームにおいては、前記接続用めっき層は、前記板状の銅材に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層して形成されためっき層からなるのが好ましい。
【0014】
また、本発明によるリードフレームの製造方法は、少なくとも一方の側の面が表面積比1.0~1.3の平滑面からなる板状の銅材を準備する工程、前記板状の銅材の平滑面からなる側に、リードフレームとして半導体素子の接続や導通のために接続する部位に対応する部位が開口しためっき用レジストマスクを形成する工程、前記めっき用レジストマスクの開口から露出した前記板状の銅材に所定の接続用めっき層を形成する工程、前記めっき用レジストマスクと前記接続用めっき層との界面及び前記めっき用レジストマスクと前記接続用めっき層の周囲における前記板状の銅材との界面に浸透する特性を有する銀めっき浴を用いて、前記接続用めっき層の上面と側面を覆うとともに、前記接続用めっき層の周囲における前記めっき用レジストマスクの下の前記板状の銅材を覆う銀めっき層を形成する工程、前記めっき用レジストマスクを除去する工程、前記銀めっき層を形成した前記板状の銅材を前記リードフレーム形状に形成する工程、前記リードフレーム形状に形成した前記板状の銅材をアルカリ溶液に浸漬し、表面の酸化膜を除去する工程、酸化膜を除去した前記板状の銅材を陽極として黒化処理液に浸漬し、前記板状の銅材における前記銀めっき層で覆われていない部位に表面積比が1.7~2.3の陽極酸化膜を形成する工程、前記銀めっき層を剥離し、前記接続用めっき層の周囲に前記銅材の前記平滑面を環状に露出させる工程、を含むことを特徴としている。
【0015】
また、本発明のリードフレームの製造方法においては、1.5A/dm以下の低電流密度で前記陽極酸化膜を形成するのが好ましい。
【0016】
また、本発明のリードフレームの製造方法においては、前記銀めっき浴は、高シアン浴であるのが好ましい。
【0017】
また、本発明のリードフレームの製造方法においては、前記接続用めっき層は、前記板状の銅材に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層して形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粗化緩和領域を備えることなく、半導体素子の接続や導通のために半田接続やダイアタッチ材による接続に好適で、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性に優れ、効率的、且つコストを抑えて製造することが可能なリードフレーム及びその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るリードフレームの製造方法により製造される、フリップチップ実装用のリードフレームの一例を一方の面側から概略的に示す説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリードフレームの製造方法により製造される、フリップチップ実装用のリードフレームの一例を他方の面側から概略的に示す説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
図3】本発明の一実施形態に係るフリップチップ実装用のリードフレームの製造工程の一例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係るリードフレームの製造方法により製造される、リードフレームの他の例としてワイヤーボンディング用のリードフレームを概略的に示す説明図で、(a)は一方の面側から見た平面図、(b)は他方の面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯及び本発明の作用効果について説明する。
【0021】
特許文献1に開示の技術は、本件出願人が出願し、本件発明者らとは別の発明者らにより導出された技術である。
この技術では、半導体素子の接続や導通のために接続が必要な部分に金属板が露出し、接続が必要な部分を除いた全面に酸化皮膜が形成されたリードフレームを製造するための方策として、試行錯誤を繰り返す過程において、陽極酸化膜を形成する黒化処理液に浸漬しても途中でマスクが剥がれることなく、且つ製造コストを低減できるめっき層を検討し、銀めっき層を用いることを導出するに至ったものである。
【0022】
そこで、本件発明者らは、この特許文献1の技術を用いて、粗化緩和領域を備えることなく、半導体素子の接続や導通のために接続する部位の半田接続やダイアタッチ材による接続に好適で、樹脂封止して半導体パッケージを製造した際に封止樹脂との密着性に優れたリードフレームを得るべく、次のような検討を行った。
【0023】
まず、本件発明者らは、特許文献1の技術を用いて、例えば、接続が必要な部位にニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層された接続用めっき層の上に同じ大きさの銀めっき層を形成し、銀めっき層をマスクとして陽極酸化膜を形成後に、銀めっき層を削除することを試みた。
しかし、このような方法では、例えば、接続が必要な部位に積層された接続用めっき層の周囲に陽極酸化膜が近接することとなり、半導体素子をリードフレーム搭載面へ固定する際に用いるダイアタッチ材に含まれる溶剤成分が、リードフレームの表面に形成した粗化面に毛細管現象により濡れ広がり封止樹脂との密着性を低下させる問題を解消できない。
しかも、接続が必要な部位に積層された接続用めっき層の上に同じ大きさの銀めっき層を形成した場合、その後の金属板(板状の銅材)の露出面に陽極酸化膜を形成する際に使用する黒化処理液中に銅イオンが溶出して銀めっき層とともに接続用めっき層の側面を変色させ易く、銀めっき層を除去しても、接続用めっき層の周縁部が変色したリードフレームとなってしまい、接続用めっき層の適性が低下し、製品としての価値を大きく損ねてしまう。
【0024】
このため、本件発明者らは、接続用めっき層と陽極酸化膜との間には、特許文献2に記載の粗化緩和領域に対応する領域を設ける必要があると考えた。
しかし、特許文献2に記載のような粗化緩和領域を設けるのでは、金型を用いて粗化領域の一部を押圧する工程が必要となり、製造工程が増加して製造効率が低下するとともに、金型を用いた押圧工程のための製造設備が必要となり、コスト高となってしまう。
【0025】
そこで、本件発明者らは、粗化緩和領域を設けずに、ダイアタッチ材に含まれる溶剤成分の陽極酸化膜をなす粗化面への毛細管現象による広がりを阻止できる方策について検討した。そして、銀めっき層を、接続用めっき層の周囲に及ぶように大きく形成し、陽極酸化膜を形成後に、銀めっき層を除去することで、接続用めっき層と陽極酸化膜との間にリードフレーム基材の平滑面を設けることができ、この平滑面により、半導体素子の接続や導通のために接続する際に用いるダイアタッチ材に含まれる溶剤成分の陽極酸化膜をなす粗化面への毛細管現象による広がりを阻止できると考えた。
【0026】
そして、本件発明者らは、特許文献1の技術を用いるとともに、銀めっき層を、接続用めっき層の周囲に及ぶよう大きく形成するために、接続用めっき層を形成するためのめっき用レジストマスクと、銀めっき層を形成するためのめっき用レジストマスクを別々に形成してリードフレームを形成することを考え、次の第1の試作を行った。
【0027】
(第1の試作)
表面積比が1.3以下のリードフレーム用で両面が平滑面からなる板厚0.2mmの板状の銅材(金属板)を準備した。
板状の銅材にリードフレームとして接続用めっき層に対応する部位が開口した第一のめっき用レジストマスクを形成し、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順にめっきを行い、接続用めっき層を形成した。
その第一のめっき用レジストマスクを剥離し、次に、形成した接続用めっき層の周囲より片側に20μm広い開口となる第二のめっき用レジストマスクを形成し、先に形成した接続用めっき層の上面と側面および接続用めっき層の周囲の20μmのエリアまで板状の銅材に銀めっき層を形成し、第二のめっき用レジストマスクを剥離した。
次に、銀めっき層を形成した板状の銅材に所定のリードフレーム形状が開口したエッチング用レジストマスクを形成し、エッチング加工を行ってリードフレーム形状に形成した。
次に、エッチング用レジストマスクを除去し、陽極酸化膜の成長を促進するためにリードフレーム形状に形成した板状の銅材をアルカリ溶液により表面洗浄した。
次に、リードフレーム形状に形成した板状の銅材を陽極として黒化処理液に浸漬し、銀めっき層が形成されていない板状の銅材の表面に表面積比が1.7~2.3の陽極酸化膜を形成した。
そして、銀めっき層を剥離することで、接続が必要な部位に接続用めっき層を備え、且つ接続用めっき層の周囲には銅材の平滑面が環状に露出する部分を備え、その他の部位に銅材の陽極酸化膜を備えたリードフレームを得た。
なお、黒化処理液による陽極酸化膜の形成は、高電流密度で形成すると短い針状結晶となって表面積比は1.5未満となるが、低電流密度で形成すると、長い針状結晶と短い針状結晶が混合した酸化被膜となり、表面積比が1.7以上となる。本試作では1.5A/dm以下の電流密度で陽極酸化膜を形成した。
【0028】
第1の試作では、粗化緩和領域を設けずに、ダイアタッチ材に含まれる溶剤成分の陽極酸化膜をなす粗化面への毛細管現象による広がりを阻止できるリードフレームを得られることが確認された。
しかし、第一のめっき用レジストマスクと、第二のめっき用レジストマスクを別々に形成する工程が必要となる。第二のめっき用レジストマスクを形成する工程を追加すると、製造コストが高く、量産に採用することは難しいことが判明した。
【0029】
そこで、本件発明者らは、めっき用レジストマスクを2回作成することなく、銀めっき層を、接続用めっき層の周囲に及ぶよう大きく形成する方策について検討した。
検討の過程において、本件発明者らは、一般に高シアン銀めっき浴がレジストマスクを劣化させ易く部分めっきに適さない点に着目し、部分めっきを行う際に、この高シアン銀めっき浴のレジストマスクを劣化させ易いという特性を逆用することで、めっき用レジストマスクと接続用めっき層との界面及びめっき用レジストマスクと接続用めっき層の周囲における板状の銅材との界面に銀めっき液を浸透させることができるのではないかと考えた。
そして、銀めっき液が、接続用めっき層の側面とレジストマスク側面の間に滲み込み、更にレジストマスクの下に滲み込めば、接続用めっき層の周囲の銅材を一部(部分的に)銀めっきで覆うことができ、陽極酸化膜形成の際の黒化処理液中に溶出する銅イオンの接続用めっき層への汚染による変色を阻止するとともに、ダイアタッチ材に含まれる溶剤成分の陽極酸化膜をなす粗化面への毛細管現象による広がりを阻止できるリードフレームを得ることができると考えた。
【0030】
(第2の試作)
そこで、本件発明者らは、第2の試作として、第1の試作と同様の板状の銅材を準備し、板状の銅材に同様の第一のめっき用レジストマスクを形成し、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順にめっきを行い、接続用めっき層を形成した後、第一のレジストマスクを剥離することなく、高シアン銀めっき浴を用いて銀めっき層を形成した。銀めっき層を形成後は、第1の試作と同様にリードフレーム形状を形成し、陽極酸化膜を形成し、銀めっき層を剥離し、リードフレームを得た。
第2の試作により作製したリードフレームは、接続が必要な部位に接続用めっき層を備え、且つ接続用めっき層の周囲には銅材の平滑面が環状に露出し、その他の部位に銅材の陽極酸化膜が形成されていた。また、接続用めっき層の周縁部は銅イオンに汚染されることなく、変色は見られなかった。
このことにより、本件発明者らは、接続用めっき層の形成に用いたレジストマスクをそのまま用いて高シアン銀めっき浴を用いて銀めっき層を形成すると、銀めっき層よりも下層のめっき層として同じめっき用レジストマスクを用いて形成される、接続用めっき層よりも広い範囲に銀めっき層が形成されるとの確証を得た。
これは、銀めっき液がめっき用レジストマスクと接続用めっき層との界面及びめっき用レジストマスクと接続用めっき層の周囲における板状の銅材との界面に浸透し、銀めっき層を形成した現象であると考えられる。
なお、第2の試作において、銀めっき層は厚さ1μmになるように形成した。レジストマスクの厚さは25μmとした。
また、接続用めっき層の周囲に露出した銅材は、概ね5~20μmの幅で平滑面が環状に露出していた。
【0031】
このような試行錯誤の結果を経て、本件発明者らは、粗化緩和領域を設けず、且つ、第二のめっき用レジストマスクを用いることなく、接続が必要な部位に備えた接続用めっき層の周縁部への銅イオンの汚染による変色を防止でき、半導体素子を接続する際に用いるダイアタッチ材に含まれる溶剤成分の陽極酸化膜をなす粗化面への毛細管現象による広がりを阻止できるリードフレームを得られることが確認でき、本発明のリードフレーム及びその製造方法を導出するに至った。
【0032】
本発明のリードフレームは、少なくとも一方の側の面が表面積比1.0~1.3の平滑面からなる板状の銅材を用いて形成されたリードフレームであって、前記板状の銅材の平滑面からなる側における半導体素子の接続や導通のために接続する部位に所定の接続用めっき層を備え、且つ前記接続用めっき層の周囲に前記銅材の平滑面が5~20μmの幅で環状に露出した部位を備え、その他の部位に、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ200nm以上の針状結晶構造を備えた酸化銅の被膜で構成され、表面積比1.7~2.3の陽極酸化膜を備えている。
本発明のリードフレームのように、板状の銅材の表面積比1.0~1.3の平滑面からなる側における半導体素子の接続や導通のために接続する部位に備わる所定の接続用めっき層の周囲に銅材の平滑面が5~20μmの幅で環状に露出した部位を備え、その他の部位に酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ200nm以上の針状結晶構造を備えた酸化銅の被膜で構成され、表面積比1.7~2.3の陽極酸化膜を備えた構成とすれば、接続用めっき層と陽極酸化膜との間の平滑面が、接続用めっき層と半導体素子の接続に用いるダイアタッチ材に含まれる溶剤成分が陽極酸化膜の毛細管現象によって入り込むのを阻止できる。このため、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性を優れたものにすることができる。
また、本発明のリードフレームのように、半導体素子の接続や導通のために接続する部位に備わる所定の接続用めっき層の周囲に銅材の平滑面が環状に露出した部位を備えた構成とすれば、リードフレームの製造に用いる板状の銅材に備わる平滑面をそのまま用いることができ、特許文献2のような粗化面を形成後に金型を用いて粗化緩和領域を形成するための押圧工程が不要となり、その分、製造工程を減らし製造効率が向上するとともに、製造設備が不要となり、コストを低減できる。
【0033】
また、本発明のリードフレームのように、銅材の前記平滑面の表面積比は1.0~1.3であり、前記陽極酸化膜の表面積比は1.7~2.3である構すれば、封止樹脂の密着性に優れ、且つ半導体素子の接続に用いるダイアタッチ材に含まれる溶剤成分の陽極酸化膜への広がりを阻止できる。
【0034】
また、本発明のリードフレームは、好ましくは、前記接続用めっき層は、前記板状の銅材に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層して形成されためっき層からなる。
このように構成すれば、半導体素子の接続のために半田接合を行う部位に電気的な接続のための、接続用めっき層と銅材の両方が露出し、その他の表面に陽極酸化膜を備えた本発明のリードフレームを具現化できる。
【0035】
また、本発明のリードフレームの製造方法は、少なくとも一方の側の面が表面積比1.0~1.3の平滑面からなる板状の銅材を準備する工程、前記板状の銅材の平滑面からなる側に、リードフレームとして半導体素子の接続や導通のために接続する部位に対応する部位が開口しためっき用レジストマスクを形成する工程、前記めっき用レジストマスクの開口から露出した前記板状の銅材に所定の接続用めっき層を形成する工程、前記めっき用レジストマスクと前記接続用めっき層との界面及び前記めっき用レジストマスクと前記接続用めっき層の周囲における前記板状の銅材との界面に浸透する特性を有する銀めっき浴を用いて、前記接続用めっき層の上面と側面を覆うとともに、前記接続用めっき層の周囲における前記めっき用レジストマスクの下の前記板状の銅材を覆う銀めっき層を形成する工程、前記めっき用レジストマスクを除去する工程、前記銀めっき層を形成した前記板状の銅材を前記リードフレーム形状に形成する工程、前記リードフレーム形状に形成した前記板状の銅材をアルカリ溶液に浸漬し、表面の酸化膜を除去する工程、酸化膜を除去した前記板状の銅材を陽極として黒化処理液に浸漬し、前記板状の銅材における前記銀めっき層で覆われていない部位に表面積比が1.7~2.3の陽極酸化膜を形成する工程、前記銀めっき層を剥離し、前記接続用めっき層の周囲に前記銅材の前記平滑面を環状に露出させる工程、を含む。
このように構成すれば、特許文献2に記載の技術のような粗化緩和領域を備えることなく、半導体素子の接続や導通のために接続が必要な部位に備えた接続用めっき層の周囲には銅材の平滑面が環状に露出し、その他の部位に銅材の陽極酸化膜を形成することができ、しかも接続用めっき層の周縁部への銅イオンの汚染による変色を防止できる。さらに、製造工程において、接続用めっき層の形成と、銀めっき層の形成とで、別々にめっき用レジストマスクを形成する必要がなく、同じめっき用レジストマスクを兼用できる。
このため、半導体素子の接続や導通のために接続する部位の半田接続やダイアタッチ材による接続に好適で、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性に優れ、効率的、且つコストを抑えて製造することが可能なリードフレームを得ることができる。
【0036】
また、本発明のリードフレームの製造方法においては、好ましくは、1.5A/dm以下の低電流密度で前記陽極酸化膜を形成する。
このように構成すれば、長い針状結晶と短い針状結晶が混合した酸化被膜となり、表面積比が1.7以上の陽極酸化膜が得られ、陽極酸化膜の剥がれがなく、封止樹脂との密着度を向上させることができる。
【0037】
また、本発明のリードフレームの製造方法においては、好ましくは、前記銀めっき浴は、高シアン浴である。
このように構成すれば、本発明のリードフレームの製造方法における、めっき用レジストマスクと接続用めっき層との界面及びめっき用レジストマスクと接続用めっき層の周囲における板状の銅材との界面に浸透する特性を有する銀めっき浴を具現化できる。
【0038】
また、本発明のリードフレームの製造方法においては、好ましくは、前記接続用めっき層は、前記板状の銅材に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層して形成する。
このように構成すれば、半田接合を行う部位や半導体素子を搭載する部位に接続用めっき層と銅材の両方が露出し、その他の表面に陽極酸化膜を備えた本発明のリードフレームの製造方法を具現化できる。
【0039】
従って、本発明によれば、粗化緩和領域を備えることなく、半導体素子の接続や導通のために接続する部位の半田接続やダイアタッチ材による接続に好適で、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性に優れ、効率的、且つコストを抑えて製造することが可能なリードフレーム及びその製造方法が得られる。
なお、接続用めっき層を形成する前にソフトエッチングを行い、5μm未満の深さとなるエッチング加工を施すと、半田リフロー時の半田保持がし易くなるので好ましい。
【0040】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
本実施形態に係るリードフレームは、少なくとも一方の側の面が平滑面からなる板状の銅材を用いて形成されたリードフレームである。板状の銅材の平滑面からなる側における半導体素子の接続や導通のために接続する部位に所定の接続用めっき層を備え、且つ接続用めっき層の周囲に銅材の平滑面が環状に露出した部位を備えている。また、その他の部位に銅材の陽極酸化膜を備えている。
種々の形状を有するリ―ドフレームに適用することができ、リードフレームの形状は特に限定されないが、便宜上、図1図2に示す形状のリードフレームを一例として挙げて説明することとする。
【0041】
図1図2に示すリードフレーム1は、帯状金属材料として銅又は銅合金からなるとともに、両面が平滑面からなる板状の銅材10にエッチング加工やプレス加工により所定形状をなす、リードフレーム基材の上面側における半導体素子と電気的に接続する部位、下面側における外部機器と接続する部位の夫々に、ニッケルめっき層、パラジウムめっき層、金めっき層の順で積層された接続用めっき層11が形成されている。接続用めっき層11の周囲には、銅材の平滑面が環状に露出した部位10aを有している。また、接続用めっき層11及び銅材の平滑面が環状に露出した部位10aの他の部位には、銅材の陽極酸化膜13が形成されている。陽極酸化膜13は、酸化第一銅(CuO)と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH))とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ200nm以上の針状結晶構造を備えた、酸化銅の被膜で構成されている。
【0042】
次に、図1図2のように構成された本実施形態のリードフレーム製造方法について、図3を用いて説明する。なお、図3では便宜上、部分図を用いることとする。
本実施形態の製造方法では、まず、帯状金属材料として銅または銅合金からなるとともに、両面が表面積比1.0~1.3の平滑面からなる板状の銅材10をリードフレーム材料として準備する(図3(a)参照)。
次に、板状の銅材10の両面にドライフィルムレジスト等のレジスト層R1を形成する(図3(b)参照)。
次に、上面側のレジスト層R1には、フリップチップ実装における半導体素子の電極と電気的に接続する部位に対応する部位としての開口部に対応するパターン、下面側のレジスト層R1には、外部機器と電気的に接続する部位に対応する部位としての開口部に対応するパターンが夫々描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層R1を露光・現像し、めっき用レジストマスク30を形成する(図3(c)参照)。
次に、板状の銅材10における、めっき用レジストマスク30の開口部から露出した板状の銅材10の面に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層した接続用めっき層11を形成する(図3(d)、図3(d’)参照)。
次に、めっき用レジストマスク30と接続用めっき層11との界面及びめっき用レジストマスク30と接続用めっき層11の周囲における板状の銅材10との界面に浸透する特性を有する銀めっき浴(例えば、高シアンめっき浴)を用いて、接続用めっき層11の上面と側面を覆うとともに、接続用めっき層11の周囲におけるめっき用レジストマスク30の下の板状の銅材を覆う銀めっき層12を形成する(図3(e)、図3(e’)参照)。
【0043】
次に、めっき用レジストマスク30を除去する(図3(f)参照)。
次に、接続用めっき層11、銀めっき層12が形成された板状の銅材10の両面にドライフィルムレジスト等のレジスト層R2を形成する(図3(g)参照)。
次に、所定のリードフレーム形状のパターンが描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層R2を露光・現像し、エッチング用レジストマスク31を形成する(図3(h)参照)。
次に、エッチング液を用いてエッチング加工を行い、部分的に銀めっき層12が形成された板状の銅材10を所定のリードフレーム形状に形成する(図3(i)参照)。
次に、エッチング用レジストマスク31を除去する(図3(j)参照)。
これにより、板状の銅材10の上面側には半導体素子の電極と電気的に接続する部位に接続用めっき層11、接続用めっき層11の上面と側面及び接続用めっき層11の周囲に銀めっき層12が形成され、下面側には外部機器と電気的に接続する部位に接続用めっき層11、接続用めっき層11の上面と側面及び接続用めっき層11の周囲に銀めっき層12が形成され、その他の部位は全面にわたって平滑面が露出する。
【0044】
次に、部分的に銀めっき層12が形成された板状の銅材(リードフレーム基材)10を黒化処理液に浸漬し、リードフレーム基材10において金属板を陽極として通電することで、リードフレーム基材10における、接続用めっき層11を覆う銀めっき層12が形成された部位を除く全面に表面積比が1.7~2.3の陽極酸化膜13を形成する(図3(k)、図3(k’)参照)。
次に、銀めっき層12を剥離し、接続用めっき層11の周囲に銅材10の平滑面を環状に露出させる(図3(l)、図3(l’)参照)。
これにより、図1図2に示した、半導体素子の接続や導通のために接続する部位10に接続用めっき層11を備え、且つ接続用めっき層11を備えた部位の周囲に銅材の平滑面が環状に露出した部位10aを有し、それ以外の全面に陽極酸化膜13が形成されたリードフレームを得られる。
【0045】
なお、本実施形態のリードフレームは、図1図2に示したフリップチップ実装用のリードフレーム1の他、例えば、図4に示すように、ワイヤーボンディング接続用のリードフレーム1にも適用可能である。図4に示すリードフレーム1は、リードフレーム基材の上面側中央に位置するパッド部においてダイアタッチ材を介して半導体素子と接続する部位、パッド部の周囲に位置するリード部としてワイヤ-ボンディングにより半導体素子の電極と電気的に接続する部位、下面側における外部機器と接続する部位の夫々に、ニッケルめっき層、パラジウムめっき層、金めっき層の順で積層された接続用めっき層11が形成されている。そして、パッド部における接続用めっき層11の周囲には、銅材の平滑面が環状に露出した部位10aを有している。また、パッド部の上面側における接続用めっき層11及び銅材の平滑面が環状に露出した部位10aの他の部位、パッド部の裏面側全面には、銅材の陽極酸化膜13が形成されている。その他の構成は、図1図2に示したフリップチップ実装用のリードフレーム1と略同じである。
【0046】
本実施形態のリードフレーム1によれば、半導体素子の接続や導通のために接続する部位に接続用めっき層11を備え、且つ接続用めっき層11を備えた部位の周囲に銅材10の平滑面が環状に露出した部位10aを有し、その他の部位に銅材10の陽極酸化膜13を備えた構成としたので、接続用めっき層11と陽極酸化膜13との間の平滑面が、接続用めっき層11と電気的に接続する際に用いる半田の接合強度を向上させ、半導体素子の搭載に用いるダイアタッチ材に含まれる溶剤成分が陽極酸化膜13の毛細管現象によって入り込むのを阻止できる。このため、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性を優れたものにすることができる。
【0047】
また、本実施形態のリードフレーム1によれば、半導体素子の接続や導通のために接続する部位に備わる接続用めっき層11を備えた部位の周囲に銅材10の平滑面が環状に露出するような構成としたので、リードフレームの製造に用いる板状の銅材10に備わる平滑面をそのまま用いることができ、特許文献2のような粗化面を形成後に金型を用いて粗化緩和領域を形成するための押圧工程が不要となり、その分、製造工程を減らし製造効率が向上するとともに、製造設備が不要となり、コストを低減できる。
【0048】
また、本実施形態のリードフレーム1によれば、銅材10の平滑面の表面積比は1.0~1.3であり、陽極酸化膜13の表面積比は1.7~2.3である構成としたので、封止樹脂の密着性に優れ、且つ電気的に接続する部位に用いる半田の接合強度を向上させ、半導体素子の搭載に用いるダイアタッチ材に含まれる溶剤成分の陽極酸化膜への広がりを阻止できる。
【0049】
また、本実施形態のリードフレーム1によれば、接続用めっき層11を、板状の銅材10に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層して形成されためっき層からなる構成としたので、半田接合やダイアタッチ材による接合を行う部位に接続用めっき層と銅材の両方が露出し、その他の表面に陽極酸化膜を備えたリードフレームを具現化できる。
【0050】
また、本実施形態のリードフレーム1の製造方法によれば、両面が表面積比1.0~1.3の平滑面からなる板状の銅材10を準備する工程、板状の銅材10の平滑面に、リードフレームとして電気的に接続する部位に対応する部位が開口しためっき用レジストマスク30を形成する工程、めっき用レジストマスク30の開口から露出した板状の銅材10に接続用めっき層11を形成する工程、めっき用レジストマスク30と接続用めっき層11との界面及びめっき用レジストマスク30と接続用めっき層11の周囲における板状の銅材10との界面に浸透する特性を有する、高シアン銀めっき浴を用いて、接続用めっき層11の上面と側面を覆うとともに、接続用めっき層11の周囲におけるめっき用レジストマスク30の下の板状の銅材10を覆う銀めっき層12を形成する工程、めっき用レジストマスク30を除去する工程、銀めっき層12を形成した板状の銅材10をリードフレーム形状に形成する工程、リードフレーム形状に形成した板状の銅材10をアルカリ溶液に浸漬し、表面の酸化膜を除去する工程、酸化膜を除去したリードフレーム形状に形成した板状の銅材10を陽極として黒化処理液に浸漬し、リードフレーム形状に形成した板状の銅材10における銀めっき層12で覆われていない部位に表面積比が1.7~2.3の陽極酸化膜13を形成する工程、銀めっき層12を剥離し、接続用めっき層11の周囲に銅材10の平滑面を環状に露出させる工程、を含むような構成としたので、特許文献2に記載の技術のような粗化緩和領域を備えることなく、接続が必要な部位に備えた接続用めっき層の周縁部への銅イオンの汚染による変色を防止できる。さらに、製造工程において、接続用めっき層の形成と、銀めっき層の形成とで、別々にめっき用レジストマスクを形成する必要がなく、同じめっき用レジストマスクを兼用できる。
このため、半田接続やダイアタッチ材による接続に好適で、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性に優れ、効率的、且つコストを抑えて製造することが可能なリードフレームを得ることができる。
【0051】
また、本実施形態のリードフレーム1の製造方法によれば、1.5A/dm以下の低電流密度で前記陽極酸化膜を形成するような構成としたので、長い針状結晶と短い針状結晶が混合した酸化被膜となり、表面積比が1.7以上の陽極酸化膜が得られ、陽極酸化膜の剥がれがなく、封止樹脂との密着度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態のリードフレーム1の製造方法によれば、銀めっき浴に、高シアン浴を用いたので、めっき用レジストマスク30と接続用めっき層11との界面及びめっき用レジストマスク30と接続用めっき層11の周囲における板状の銅材10との界面に浸透する特性を有する銀めっき浴を具現化できる。
【0053】
また、本実施形態のリードフレーム1の製造方法によれば、接続用めっき層11を、板状の銅材10に、ニッケルめっき、パラジウムめっき、金めっきの順に積層して形成するような構成としたので、半導体素子の接続や半田接合を行う部位に電気的な接続のための、接続用めっき層と銅材の両方が露出し、その他の表面に陽極酸化膜を備えたリードフレームの製造方法を具現化できる。
【0054】
従って、本実施形態によれば、粗化緩和領域を備えることなく、半導体素子の接続や導通のために接続する部位の半田接続やダイアタッチ材による接続に好適で、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性に優れ、効率的、且つコストを抑えて製造することが可能なリードフレーム及びその製造方法が得られる。
【0055】
実施例1
リードフレーム用の金属板として厚さが0.2mmの銅材(古河電気工業:EFTEC64T)を準備した。金属板の表面積比は、1.1であった。(オリンパス短波長レーザ顕微鏡OLS-4100)
準備した金属板の表面に厚さ25μmのドライフィルムレジストをラミネートしてレジスト層を形成した。
次に、上面側のレジスト層には、半導体素子の電極と電気的に接続する部位に対応する部位としての約φ0.1mmの開口部に対応するパターン、下面側のレジスト層には、外部機器と電気的に接続する部位に対応する部位としての約φ0.3mmの開口部に対応するパターンが夫々描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層を露光・現像し、めっき用レジストマスクを形成した。
次にめっき用レジストマスクの開口部から露出した金属板に、まず、厚さ1μmのニッケルめっき層を形成した。その上に、パラジウムめっき層を厚さ約0.03μmになるように形成し、最後に金めっき層を厚さ約0.003μmになるように形成して、電気的な接続に必要な接続用めっき層を形成した。
次に、シアン化銀とシアン化カリウムを主成分とする高シアン銀めっき浴を用いて、めっき用レジストマスクの開口部から露出した金属板に、電解めっきにより約1μmの銀めっき層を形成し、めっき用レジストマスクを除去した。
次に、銀めっき層が形成された金属板の両面に同じドライフィルムレジストをラミネートしてレジスト層を形成した。
次に、所定のリードフレーム形状のパターンが描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層を露光・現像し、エッチング用レジストマスクを形成した。
次に、塩化第二鉄液を用いてスプレーエッチングを行い、部分的に銀めっき層が形成された金属板を所定のリードフレーム形状に形成し、エッチング用レジストマスクを除去した。
次に、アルカリ溶液である市販の黒化処理液を用いて、濃度90ml/l、液温は常温、処理時間60秒の設定で、所定のリードフレーム形状に形成した金属板を浸漬処理した。
次に、同じ市販の黒化処理液を用いて、濃度90ml/l、液温70℃、処理時間2.5分、電流密度0.5A/dmの設定で金属板を陽極として浸漬処理により全面に陽極酸化膜を形成した。
次に、黒化処理液中の銅イオンにより汚染された銀めっき層を市販の剥離液を用いて剥離した。
銀めっき層を剥離して、接続用めっき層としてニッケルめっき層とパラジウムめっき層と金めっき層が積層され、その周囲が概ね5~20μmのエリアで金属板が露出し、その他の所定のリードフレーム形状に形成された金属板の全面に陽極酸化膜が形成されたリードフレームを得た。
形成された陽極酸化膜の表面積比は、1.7~2.3であった。また、接続用めっき層の周縁部には、陽極酸化膜を形成する処理に用いた黒化処理液中の銅イオンの汚染による変色は見られず、良質な製品であることが確認できた。
なお、実施例1で用いた陽極酸化膜を形成する電流密度は、0.3~1.5A/dm、浸漬時間1~5分が好適と考えられる。
【0056】
比較例1
銀めっき層の形成に用いるめっき浴を、低シアン銀めっき浴とした以外は、実施例1と同様の材料、製造手順で、比較例1のリードフレームを得た。
比較例1のリードフレームは、接続用めっき層の周縁部への黒化処理液の汚染による変色が見られ、製品として不適切であることが確認された。
また、接続用めっき層に陽極酸化膜が近接して形成されており、接続用めっき層の周囲には実施例1のリードフレームのような金属板の平滑面が露出する部位は形成されず、半田接続や半導体素子の搭載に適さないことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のリードフレームは、封止樹脂で封止する半導体製造に用いるリードフレームが必要とされる分野に有用であり、半導体素子の接続や導通のために接続をする部位がめっき層を備えて構成されるリードフレームの他にも、板状の銅材などの金属板がそのまま電気的に接続する部位を構成するリードフレームにも有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 リードフレーム
10 リードフレーム基材(金属板、板状の銅材)
10a 銅材の平滑面が環状に露出した部位
11 接続用めっき層
12 銀めっき層
13 陽極酸化膜
30 めっき用レジストマスク
31 エッチング用レジストマスク
R1、R2 レジスト層
【要約】
【課題】粗化緩和領域を備えることなく、半導体素子の接続や導通のために接続する部位の半田接続やダイアタッチ材による接続に好適で、樹脂封止して半導体パッケージを製造したときの封止樹脂との密着性に優れ、効率的、且つコストを抑えて製造することが可能なリードフレームの提供。
【解決手段】少なくとも一方の側の面が平滑面からなる板状の銅材10を用いて形成されたリードフレーム1である。板状の銅材10の平滑面からなる側における半導体素子の接続や導通のために接続する部位に所定の接続用めっき層11を備え、且つ接続用めっき層11の周囲に銅材10の平滑面が環状に露出した部位10aを備え、その他の部位に銅材10の陽極酸化膜13を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4