IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.の特許一覧

<>
  • 特許-局所用組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】局所用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240109BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240109BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/06
A61K8/55
A61K8/37
A61K8/891
A61Q17/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020545168
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019056877
(87)【国際公開番号】W WO2019180039
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】18162879.3
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メンドロク-エディンガー, クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】シュリフク-ポシャルコ, アレクサンダー
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0152532(US,A1)
【文献】特開2011-068567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0156149(US,A1)
【文献】特開2014-080397(JP,A)
【文献】特表2011-520842(JP,A)
【文献】国際公開第2009/138485(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/198581(WO,A1)
【文献】特開2003-192557(JP,A)
【文献】国際公開第02/039972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
UVB及び/又はUVA範囲の光を吸収し、且つ周囲温度で液体である物質(UV遮蔽油)を含む局所用組成物であって、レーザー回折によって測定される50~300nmの範囲において選択される平均の個数基準の粒子径分布Dn50を有するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを更に含み、O/W乳化剤の存在下で水相中に分散された油相を含む水中油型(O/W)エマルジョンの形態である、局所用組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のUV遮蔽油の量は、0.1~30重量%範囲において選択される、請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項3】
前記ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲において選択される、請求項1又は2に記載の局所用組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のUV遮蔽油は、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン及びベンゾトリアゾールドデシルp-クレゾール並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項5】
前記ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、レーザー回折によって測定される、120~280nmの範囲において選択される平均の個数基準の粒子径分布Dn50を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項6】
前記ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、非晶質固体形態の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項7】
前記ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンのナノサイズ化された粒子を含有する水性分散液の形態で前記局所用組成物に組み込まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項8】
前記油相の量は、前記局所用組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項9】
前記油相の量は、前記局所用組成物の総重量を基準として10~60重量%の範囲において選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項10】
前記O/W乳化剤は、リン酸エステル乳化剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項11】
前記リン酸エステル乳化剤は、リン酸セチルである、請求項10に記載の局所用組成物。
【請求項12】
O/W乳化剤の存在下で水相中に分散された油相を含む水中油型(O/W)エマルジョンの形態である局所用組成物に含有されているUV遮蔽油の表面への移行を低減するための、レーザー回折によって測定される、1000nm未満の平均の個数基準の粒子径分布Dn50を有するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用。
【請求項13】
液体UV遮蔽油の表面、特にガラス又はプラスチック表面等への移行を低減するための方法であって、レーザー回折によって測定される、1000nm未満の平均の個数基準の粒子径分布Dn50を有するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを、前記液体UV遮蔽油を含む局所用組成物に添加することを包含し、前記局所用組成物が、O/W乳化剤の存在下で水相中に分散された油相を含む水中油型(O/W)エマルジョンの形態である、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の液体UV遮蔽油及びナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを含む局所用組成物と、UV遮蔽油の表面への移行を低減するための、ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用とに関する。
【0002】
サンケア製品は、長年にわたって大きく進化した。シワ、皮膚病及び皮膚癌に寄与する最も重要な因子は、UV-B線であると考えられていたため、初期の製剤は、使用者をUV-B放射から保護することを企図していた。しかしながら、より最近の研究では、UV-A放射も、日光による損傷並びに紅斑性狼瘡、黒色腫、非黒色腫皮膚癌等の皮膚疾患の発生に関し、同程度に又は更にそれを上回って重要性であることが示されている。したがって、現在、UVA(320~400nm)光及び/又はUVB(280~320nm)光を可能な限り排除することに焦点が当てられている。そのため、高いSPF(サンプロテクションファクター)を示すと同時に高いUVA防御性を示しながら、光安定性も有するサンケア製品に対する要求は、高まる一方である。
【0003】
したがって、現在のサンケア製品は、上述の要件を満たすために異なるUV遮蔽物質、特に液体UV遮蔽油等を多量に含有している。しかしながら、その結果として油の含有量が高くなることにより、そのようなサンケア製品は、消費者の許容性を低下させることが知られている不快な官能特性を呈することが多く、その結果として、製品を皮膚に塗布する量を、推奨されている使用水準よりも大幅に低下させることになる。
【0004】
この種のサンケア製品の更なる問題点は、表面、特に皮膚に適用した後、前記表面を他の表面と互いに接触させると、サンケア製品中に含まれる物質が他の表面に移行することにある(本明細書では「物質の移行」とも称する)。このような移行は、2つの意味で受け入れられない。第一に、このような物質の移行が起こると、処置、保湿又は保護等を施そうとしている皮膚の作用部位からそれらが除去されてしまうため、望ましくない。第二に、被接触面が前記物質、特に油等で汚染され、その結果として衣服等の布に染みが付いたり、装飾性又は機能性を有する面が汚染されたりすることが多い。後者は、機能性を低下させるという観点から受け入れられないだけでなく、視覚的及び/又は審美的な意味で不快な見た目を呈するために非常に望ましくない。その中に含有されている特に油等の物質は、特に、携帯電話のディスプレイ、スクリーン、眼鏡のレンズ又はタッチスクリーンにそのような物質が移行すると表面を汚すことによって悪影響を与え、これは、最終消費者にとって非常に望ましくない。したがって、表面が接触した際における局所用サンケア製品、特にその中に含まれる油の表面から表面(特に硬質表面)への移行を減らすことが強く望まれている。
【0005】
驚くべきことに、少なくとも1種の液体UV遮蔽油及びナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの組合せを含む組成物は、被接触面、特にガラス表面等への物質の移行を大幅に低下させることが見出された。
【0006】
したがって、一態様において、本発明は、少なくとも1種の液体UV遮蔽油を含む局所用組成物であって、ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを更に含む局所用組成物に関する。
【0007】
本発明による局所用組成物中における少なくとも1種の液体UV遮蔽油の(総)量は、好ましくは、0.1~30重量%の範囲、より好ましくは1~25重量%の範囲、最も好ましくは5~20重量%の範囲において選択される。
【0008】
本発明による局所用組成物中におけるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの量は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲、より好ましくは0.2~15重量%の範囲、最も好ましくは0.3~10重量%の範囲において選択される(活性物質を基準とする)。更に好適な範囲は、局所用組成物の総重量を基準として0.15~10重量%、0.2~10重量%及び0.5~10重量%である。
【0009】
本明細書において用いられる「局所用」という語は、本明細書では、特に皮膚、頭皮、睫毛、眉毛、爪、粘膜及び毛髪、好ましくは皮膚であるケラチン質物質に外用することを意味すると理解される。
【0010】
本明細書において用いられる「物質の移行」という語は、局所用組成物を表面に適用し、その後、前記表面を異なる物体の表面と接触させ、再び分離した場合、局所用組成物又はその何らかの成分がまとまって移行することを指す。この接触により、一部の物質は、最初の表面から異なる物体の表面に移行する。移行した物質の量は、第2の物体の重量増加を測定することによって求めることができる。
【0011】
本発明による局所用組成物は、局所的に適用することが意図されていることから、生理学的に許容される媒体、即ち皮膚、粘膜、ケラチン繊維等のケラチン質物質と適合性を有する媒体を含むことは、十分に理解される。特に、生理学的に許容される媒体は、化粧的に許容される担体である。
【0012】
「化粧的に許容される担体」という語は、特に、サンケア製品等の局所用化粧用組成物に従来使用されているあらゆる担体、及び/又は賦形剤、及び/又は希釈剤を指す。
【0013】
スキンケア産業に慣用されている本発明の局所用組成物中に使用するのに適した化粧品用担体、賦形剤及び希釈剤に加えて、添加剤及び活性成分の例は、例えば、オンラインINFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)からアクセス可能なInternational Cosmetic Ingredient Dictionary&Handbook by Personal Care Product Council(http://www.personalcarecouncil.org/)に記載されているが、これらに限定されるものではない。
【0014】
賦形剤、希釈剤、補助剤、添加剤等の必要量は、所望の製品形態及び用途に基づき、当業者によって容易に決定することができる。追加の成分は、油相に、水相に又は適切と見なされる場合には別個にのいずれかで添加することができる。
【0015】
有利な実施形態において、本発明による局所用組成物は、担体を、局所用組成物の総重量を基準として50%~99%、好ましくは60%~98%、より好ましくは70%~98%、例えば特に80%~95%含む。
【0016】
特に有利な実施形態において、担体は、少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも55重量%の水、特に55~90重量%等の水から更になる。
【0017】
本明細書において用いられる「液体UV遮蔽油」という語は、UVB及び/又はUVA範囲の光を吸収し、且つ周囲温度(即ち25℃)で液体である任意の物質を指す。この種のUV遮蔽油は、当業者によく知られており、特にケイ皮酸エステル、例えばメトキシケイ皮酸オクチル(PARSOL(登録商標)MCX)及びメトキシケイ皮酸イソアミル(Neo Heliopan(登録商標)E 1000)等、サリチル酸エステル、例えばホモサレート(2-ヒドロキシル安息香酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、PARSOL(登録商標)HMS)及びサリチル酸エチルヘキシル(サリチル酸エチルヘキシルとしても知られる2-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、PARSOL(登録商標)EHS)等、アクリル酸エステル、例えばオクトクリレン(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、PARSOL(登録商標)340)及び2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル等、ベンザルマロン酸のエステル、特にベンザルマロン酸ジアルキル等、例えば4-メトキシベンザルマロン酸ジ-(2-エチルヘキシル)及びポリシリコーン-15(PARSOL(登録商標)SLX)、ナフタリンジカルボン酸のジアルキルエステル、例えばナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル(Corapan(登録商標)TQ)等、マロン酸シリンギリデン、例えばマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン(Oxynex(登録商標)ST liquid)等、並びにベンゾトリアゾールドデシルp-クレゾール(Tinoguard(登録商標)TL)が含まれる。
【0018】
本発明の全ての実施形態において、特に有利な液体UV遮蔽油は、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン及びベンゾトリアゾールドデシルp-クレゾール並びにこれらの混合物である。
【0019】
最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、液体UV遮蔽油は、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーン-15並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
したがって、特に有利な結果は、最も好ましい液体UV遮蔽剤であるメトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート及びサリチル酸エチルヘキシルを用いることによって得られる。
【0021】
ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンという語は、ナノメートル範囲、即ち1000nm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは400nm未満、最も好ましくは300nm未満の平均粒子径を有する1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを指す。
【0022】
本明細書において用いられる「平均粒子径」という語は、例えば、Malvern Mastersizer 2000を用いたレーザー回折によって決定される平均の個数基準の粒子径分布D50(D0.5としても知られる)を指す(ISO 13320:2009)。
【0023】
特に有利な実施形態において、本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)によって測定される、10~900nmの範囲、例えば50~500nmの範囲、より好ましくは50~400nmの範囲、一層好ましくは100~300nmの範囲、例えば最も好ましくは120~280nmの範囲、一層好ましくは140~240nmの範囲又は150~220nmの範囲において選択される平均粒子径D50を有する。
【0024】
好ましくは、本発明の全ての実施形態において、本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、更に、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)によって求められたD10、D0.1としても知られる)が30~230nmの範囲、より好ましくは80~180nmの範囲、最も好ましくは100~160nmの範囲である。
【0025】
好ましくは、本発明の全ての実施形態において、本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、更に、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)によって求められたD90、D0.9としても知られる)が250~350nmの範囲、より好ましくは300~400nmの範囲、最も好ましくは325~375nmの範囲である。
【0026】
特に有利な本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)によって求められたD10が100~160nmの範囲であり、D50が150~220nmの範囲であり、且つD90が325~375nmの範囲である。
【0027】
本発明による1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンが非晶質固体形態の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンである場合に更に有利となる。なぜなら、そのような非晶質固体形態は、驚くべきことに、UV吸収/防御、SPFへの寄与及び製剤安定性に関して、それぞれの結晶形態と比較して向上した物理的特性を示すためである。
【0028】
本明細書において用いられる「非晶質固体形態」という語は、溶液又は混合物において液相から固相が急速に形成/分離することによって形成される固体粒子を指し、そのため、この固体は、結晶ネットワークを選択的に形成する時間がなく、したがって、得られた固体は、主として無秩序/半結晶質形態(本明細書では「非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン」とも称する)となる。この形態は、本明細書に例示するように、XRPD解析によって同定することができる。本発明による非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、UV吸収/防御、SPFへの寄与及び製剤安定性に関して、それぞれの結晶形態と比較して向上した物理的特性を示す。
【0029】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、≧750、好ましくは≧780の、320nmにおける比吸光度E 1/1によって特徴付けられる一方、それぞれの純粋な結晶形態は、比吸光度E 1/1がそれよりも大幅に低く、即ち320nmにおけるE 1/1が719のみである(活性物質を基準とする)。したがって、好ましい実施形態において、本発明による1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、少なくとも750、より好ましくは少なくとも780の、320nmにおける比吸光度E 1/1によって特徴付けられる。一層好ましくは、320nmにおける比吸光度E 1/1は、780~850の範囲、最も好ましくは800~845の範囲において選択される。
【0030】
比吸光度E 1/1(1cm/1%)は、当業者に知られており、これは、試験化合物を濃度1%(w/v)の溶液又は分散液とし、光学厚さを1cmとした場合のλmax(即ち吸光スペクトルにおいて吸光度が最大になる波長)における(ベースライン補正した)吸光度である。
【0031】
微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、実質的に図1の線3及び4に示す通りのX線粉末回折(XRPD)パターンによって更に特徴付けられ、これは、結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンのパターン(図1の線1及び2)と実質的に異なる。図1から読み取れるように、結晶形態の2θ=25~28°のピーク(CuΚ-α線)は、明確なベースライン分離によって特徴付けられる一方、非晶質固体形態は、前記ベースライン分離を示さない。X線回折パターンの記録は、Bruker D8装置を使用し、LynxEyeを用いて反射配置とし、CuΚα線を用いて実施した。
【0032】
他の実施形態において(又は追加の実施形態においてさえも)、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムによる開始温度が約345~351の範囲であり、熱容量が約115~135J/gの範囲であることで特徴付けることもできる。DSCによる吸熱は、実施例に概要を説明するように、Mettler Toledo DSC1(温度範囲:25℃~400℃;昇温速度:4℃/min)において記録した。
【0033】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非晶質固体形態は、0.40~0.55、より好ましくは0.44~0.54、最も好ましくは0.47~0.51の範囲のそのUVB吸光度対UVA吸光度比によって更に特徴付けられる。この比は、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを0.001%(w/v)の濃度で水中に分散して、UVスペクトルを測定し、290~319nm(UVB)の面積%を320~400nm(UVA)の面積%で除すことによって算出することによって決定される。
【0034】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、例えば、国際公開第9522959号パンフレット又は国際公開第9703643号パンフレットにおいて概要が示されている、当該技術分野において標準的な微粉化方法によって製造することができ、それらは、参照により本明細書に援用される。
【0035】
1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子、即ち>350nmの粒子径を有する粒子は、例えば、国際公開第2002039972号パンフレットの実施例1に概説されているように又は本発明の実施例に示されているように調製することができる。
【0036】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを得るために、粗大粒子、より好ましくは非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子を、当該技術分野における従来の磨砕方法により、本明細書に示す全ての定義及び好ましい事項を有する粒子径が得られるまで、例えば粗大粒子を、任意選択的に、好ましくは磨砕助剤及び微粉化された有機UV遮蔽剤の調製に慣用されている更なる添加剤の存在下において、公知の磨砕装置、例えばジェットミル、ボールミル、振動ミル又はハンマーミル、好ましくは高速撹拌ミルを使用して微粉化する。好ましくは、最新のボールミルが使用され;このような種類の粉砕機の製造業者は、例えば、Netzsch(LMZ mill)、Drais(DCP-Viscoflow又はCosmo)、Buehler AG(遠心ミル)又はBachhoferである。
【0037】
本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、一般的な化粧用油に不溶であり、ここで、「不溶」という語は、室温(即ち約22℃)における一般的な化粧用油、例えば安息香酸アルキル(C12~15)、プロピレングリコール、鉱油等であるのみならず、水中においても、その溶解性が0.01重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、最も好ましくは0.03重量%未満であることを指し、したがってサンケア製品等の化粧用又は医薬組成物に組み込んだ後も特定の状態のままとなる。
【0038】
本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、粉末形態又はナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの分散液形態で使用することができる。好ましくは、本発明の全ての実施形態において、ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、例えば、湿式粉砕法によって直接得られるもの等、ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液形態で使用される。
【0039】
この種の水性分散液におけるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの量は、好ましくは、水性分散液の総重量を基準として10~90重量%、20~80重量%又は30~70重量%の範囲、より好ましくは25~60重量%の範囲、最も好ましくは25~55重量%の範囲において選択される。
【0040】
この種の水性分散液は、微粉化された有機UV遮蔽剤の調製に慣用されている一般的な添加剤、特に磨砕助剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤及び塩並びにこれらの混合物等を含むことができることが十分に理解されている。
【0041】
これらの添加剤は、例えば、水性分散液を安定化させるために、磨砕前、磨砕中又は磨砕後のいずれかで添加することができる。
【0042】
本発明による水性分散液中のこの種の添加剤の(総)量は、好ましくは、水性分散液の総重量を基準として0.01~25重量%の範囲、より好ましくは2~20重量%の範囲、最も好ましくは3~15重量%の範囲、例えば5~10重量%の範囲において選択される。
【0043】
好適な磨砕助剤は、分散剤として使用することができる、特にアニオン性、非イオン性、両性及びカチオン性界面活性剤並びにこれらの混合物等の界面活性成分である。
【0044】
最も好ましくは、本発明による全ての実施形態において、磨砕助剤は、アルキルポリグルコシドである。
【0045】
「アルキルポリグルコシド(APG)」という語は、一般式C2+nO(C10H(式中、nは、2~22の範囲において選択される整数であり、xは、グルコシド部分の平均重合度を表す(モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-及びポリ-グルコシド))を有する種類の非イオン性界面活性剤を表す。このAPGは、家庭用途及び産業用途に幅広く利用されている。これらは、一般に、トウモロコシ由来のグルコース及び植物由来の脂肪族アルコール等の再生可能な原料から得られる。これらのアルキルポリグルコシドは、一般に、グルコシド部分の平均重合度が1~1.7の範囲、好ましくは1.2~1.6の範囲、例えば1.4~1.6の範囲である。
【0046】
特に有利なアルキルポリグルコシドは、カプリリル(C)及びカプリル(C10)ポリグルコシドから基本的になるC8~10アルキルポリグルコシドである。好ましくは、この種のカプリリル(C)及びカプリル(C10)ポリグルコシドは、更に、カプリリル(C)モノグルコシド対カプリル(C10)モノグルコシドの比(%/%、%は、全てHPLC-MSによって求められた面積%である)が3:1~1:3の範囲、好ましくは約2:1~1:2の範囲、最も好ましくは1.5:1~1:1.5の範囲である。加えて、この種のC8~10アルキルポリグルコシドは、好ましくは、C12アルキルモノグルコシドを3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1.5重量%以下(HPLC-MSによって測定)で含む。この種のアルキルポリグルコシドは、より高級な(即ちC1416)アルキルポリグルコシドを基本的に含まないことが理解される。
【0047】
本発明の全ての実施形態において、特に有利なC8~10アルキルポリグルコシドは、トウモロコシ由来のグルコースと、ヤシ油及びパーム核油から誘導されたC及びC10脂肪族アルコールとから製造されたものであり、これは、例えば、商品名Green APG0810でShanghai Fine Chemicalから水性分散液として販売されている。
【0048】
本発明による水性分散液における磨砕助剤の量は、好ましくは、水性分散液の総重量を基準として1~20重量%の範囲、より好ましくは2~15重量%の範囲、最も好ましくは5~10重量%の範囲において選択される。
【0049】
好適な消泡剤は、担体油、シリコーン油及びシリコーン抑泡剤、疎水性シリカ、疎水性脂肪誘導体及びロウ、水不溶性ポリマー、両親媒性成分、乳化剤並びにカップリング剤を包含する。
【0050】
本発明による水性分散液に使用するのに特に好適な消泡剤は、シリコーン油(特にポリジメチルシロキサン等)及び/又はシリコン消泡剤(特に焼成又は疎水化シリカのシリコーン油中無水分散液等、最も具体的にはシメチコン等)である。最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、消泡剤は、シメチコンである。
【0051】
消泡剤は、好ましくは、水性分散液の総重量を基準として0~1重量%の範囲、より好ましくは0.01~0.2重量%の量から選択される(総)量で使用される。
【0052】
本発明による水性分散液中に使用するのに特に適した湿潤剤は、(ポリ)プロピレングリコールである。最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、湿潤剤は、プロピレングリコールである。
【0053】
この種の湿潤剤は、好ましくは、分散液の総重量を基準として0.1~1重量%の範囲、より好ましくは0.2~0.6重量%の量から選択される(総)量で使用される。
【0054】
本発明による水性分散液に使用するのに特に適した増粘剤は、キサンタンガム、ジェランガム及び/又はカルボキシメチルセルロースである。最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、増粘剤は、キサンタンガム又はジェランガムである。
【0055】
この種の増粘剤は、好ましくは、水性分散液の総重量を基準として0.1~1重量%の範囲、より好ましくは0.1~0.5重量%の量から選択される(総)量で使用される。
【0056】
好適な塩としては、リン酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、水酸化物、例えばリン酸水素二ナトリウム及び/又は水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0057】
塩は、存在する場合、水性分散液の総重量を基準として0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、最も好ましくは0.5~2.5重量%の(総)量で使用される。
【0058】
本発明の局所用組成物は、粉末形態である本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを、化粧的に許容される担体と、任意の従来法により、例えば2種の材料を単純に一緒に撹拌することによって物理的に混合することにより製造することができる。
【0059】
しかしながら、好ましい実施形態において、ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、上に概説した水性分散液形態で局所用組成物に組み込まれ、これは、当該技術分野における標準的な方法に従って局所用組成物に組み込まれる。
【0060】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも1種の液体UV遮蔽油と、本明細書に示すあらゆる定義及び好ましい事項を有するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液とを含む局所用組成物に関する。
【0061】
一層好ましい実施形態において、前記水性は、好ましくは、非晶質固体形態の微粉化されたナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、水と、磨砕助剤、湿潤剤、消泡剤及び増粘剤並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤とから基本的になる。
【0062】
一層好ましくは、前記水性分散液中の少なくとも1種の更なる添加剤は、C8~16アルキルポリグルコシドと、プロピレングリコール、キサンタンガム、ジェランガム及びシメチコン並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の更なる添加剤とである。
【0063】
最も好ましくは、本発明による全ての実施形態において、前記分散液は、
(i)水性分散液の総重量を基準として20~70重量%、好ましくは25~60重量%の、本明細書に示すあらゆる好ましい事項を及び定義有するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、
(ii)水性分散液の総重量を基準として2~15重量%、好ましくは5~10重量%の、上に示したあらゆる好ましい事項及び定義を有するC8~16アルキルポリグルコシドと、
(iii)水性分散液の総重量を基準として0~3重量%、好ましくは0.1~2重量%の、湿潤剤、消泡剤及び増粘剤並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と、
(iv)水性分散液の総重量を基準として25~60重量%、好ましくは30~45重量%の水と
から基本的になる。
【0064】
本発明に従い使用される「~から基本的になる」という語は、全ての成分、例えば成分(i)~(iv)の量の総和が100重量%以下となることを意味する。但し、例えば、成分(i)~(iv)のそれぞれの原料を介して導入される少量の不純物又は添加剤が存在し得ることは、排除しない。
【0065】
最も好ましくは、水性分散液(I)は、添加剤(iii-1)プロピレングリコールと、(iii-2)キサンタンガム又はジェランガムから選択される1種の増粘剤と、任意選択的に(iii-3)シメチコンとを含む。
【0066】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、少なくとも1種の液体UV遮蔽剤を含む局所用組成物の表面への移行を大幅に低減するため、本発明の更なる態様は、接触面への物質の移行を低減するための、少なくとも1種の液体UV遮蔽剤を含む局所用組成物における、本明細書に記載及び定義する微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用にある。
【0067】
移行した物質の量は、接触前後の物体(第2の物体)の重量を測定することによって求められる。接触後の重量増加は、第1の物体から第2の物体へ物質が移行したことに起因する。物質の移行の低減は、本発明による組成物を、本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを含まない対応する(本発明によらない)組成物と比較することによって決定される。この低減は、物質の移行に関する2つの測定の%で表される。
【0068】
この低減を20%超、更に25%超、更に最大45%まで到達させられることが見出された。O/Wエマルジョンに関して特に良好な結果が得られるため、O/Wエマルジョンが特に好ましい。
【0069】
局所用組成物を第1の表面に適用する。前記表面は、好ましくは皮膚、特にヒトの皮膚である。皮膚に替えて多孔質スポンジを使用することは、皮膚から他の表面への物質の移行を模擬するための良好な手法であることが見出された。
【0070】
被接触物体(第2の物体)の表面は、好ましくは、ガラス表面又はプラスチック若しくは布の表面である。
【0071】
表面が布である場合、化粧用組成物が布に染みを付ける可能性があるため、これは、局所用組成物の布、特に衣服への望ましくない移行を回避するために非常に有利である。
【0072】
特に、接触表面(即ち第2の物体の表面)は、ガラス表面である。
【0073】
最も好ましくは、被接触表面(即ち第2の物体の表面)は、老眼鏡若しくはサングラス等の光学ガラス又はスマートフォンのディスプレイ、携帯電話、コンピュータデバイス若しくはタブレットの表示画面に使用されるものなどのである。
【0074】
局所用組成物の物質の移行を低減することにより、特に機器や眼鏡の光学ガラス等のガラス上に、跡(特に指の跡)が、前記ガラス表面に指が触れた際に残る問題を低減するか又は回避さえすることができる。それにより、特に表面に残った前記物質が前記ガラスを透過する光線に与える望ましくない作用を大幅に低減するか又は回避することさえできる。
【0075】
更に、鏡面等の美しい面又は自動車のトップコート表面若しくは家具表面若しくは芸術工芸品等の非常に光沢のある若しくは高度に艶消しされた面に跡が残ることを大幅に減らすことができる。このような表面は、局所用組成物が適用された皮膚に接触した場合、特に先に局所用組成物に触れた指が接触した場合、念入りな清掃による維持が必要であるため、これは、非常に有利である。
【0076】
ディスプレイ装置、例えば携帯電話のディスプレイ、モニター、ラップトップ、携帯電話、又はタブレットの画面、又はタッチスクリーンの表面に残る跡を大幅に低減することができる。その結果として、可読性を向上することができる。タッチスクリーンの機能性は、表面の様相に依存するため、本発明は、前記ガラス表面の過度な清掃を必要とすることなく、タッチスクリーン機能の安定性を向上するのにも役立つ。
【0077】
物質の移行を低下することは、前記表面が皮膚に接触した場合にその清掃に関わる労力及び費用も大いに低減する。
【0078】
ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、局所用組成物の表面への移行を大幅に低減するため、本発明は、以下に更に関する。
・少なくとも1種のUV遮蔽油を含む局所用組成物のガラス又はプラスチック表面への移行を低減するために、本明細書に記載及び定義するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを局所用組成物中で使用する方法。
・少なくとも1種の液体UV遮蔽油を含む局所用組成物のガラス又はプラスチック表面への移行を低減するために、本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを局所用組成物中で使用する方法。
・少なくとも1種のUV遮蔽油を含む局所用組成物の表面、特にガラス又はプラスチック表面等への移行を低減するための、本明細書に記載及び定義するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用。
・少なくとも1種の液体UV遮蔽油を含む局所用組成物の表面、特にガラス又はプラスチック表面等への移行を低減するための方法であって、本明細書に記載及び定義するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを、少なくとも1種の液体UV遮蔽油を含む局所用組成物に添加することを包含する方法。
【0079】
更なる実施形態において、本発明は、日焼け止め剤として使用するための、本明細書に記載する実施形態による局所用組成物又は本明細書に記載する実施形態による局所用組成物の、日焼け止め剤としての使用に関する。
【0080】
好ましい本発明による局所用組成物は、スキンケア製剤、装飾用調製物及び機能性製剤である。
【0081】
スキンケア製剤の例としては、特に、光防御製剤、抗老化製剤、光老化治療用製剤、ボディオイル、ボディローション、ボディジェル、トリートメントクリーム、皮膚保護軟膏、スキンパウダー、保湿ジェル、保湿スプレー、顔及び/又は身体保湿剤、皮膚タンニング剤(即ちヒトの皮膚を人為的/サンレスで日焼け及び/又は褐色化させるための組成物)、例えばセルフタンニングクリームに加えて、美白製剤が挙げられる。
【0082】
装飾用調製物の例としては、特に、口紅、アイシャドー、マスカラ、乾燥及び湿潤メーキャップ製剤、ほお紅及び/又はおしろいが挙げられる。
【0083】
機能性製剤の例としては、活性成分を含む化粧及び医薬組成物、例えばホルモン製剤、ビタミン製剤、植物エキス製剤、抗老化製剤及び/又は抗菌(抗細菌又は抗真菌)製剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
特定の実施形態において、本発明による局所用組成物は、日光防御乳液、日光防御ローション、日光防御クリーム、日光防御オイル等の光防御製剤(サンケア製品)、あるSPF(日光防御指数)を有するサンブロック又はデイケアクリームである。その中でも関心が寄せられているのは、日光防御クリーム、日光防御ローション、日光防御乳液及び日光防御製剤である。
【0085】
本発明による局所用組成物は、溶媒又は脂肪質物質中の懸濁液又は分散液の形態とするか、又は代替的に、エマルジョン又はマイクロエマルジョン(特に水中油型(O/W)又は油中水型(W/O)、水中シリコーン型(Si/W)又はシリコーン中水型(W/Si)、PITエマルジョン、多重エマルジョン(例えば、油中水中油型(O/W/O)又は水中油中水型(W/O/W))、ピッカリングエマルジョン、ヒドロゲル、アルコール性ゲル、リポゲル、単相若しくは多相溶液若しくはベシクル分散液の形態とするか、又は他の通常の形態(ペン型容器で、パックとして又はスプレーとして適用することもできるもの)とすることができる。
【0086】
本発明の全ての実施形態において、好ましい局所用組成物は、油相及び水相を含むエマルジョン、特にO/W、W/O、Si/W、W/Si、O/W/O、W/O/W多重又はピッカリングエマルジョン等である。
【0087】
この種のエマルジョン中に存在する油相(即ちUV遮蔽油を含む、全ての油及び脂肪を含む相)の量は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%、例えば10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%の範囲、最も好ましくは15~40重量%の範囲である。
【0088】
この種のエマルジョン中に存在する水相の量は、好ましくは、局所用組成物の総重量を基準として少なくとも20重量%、例えば20~90重量%の範囲、好ましくは30~80重量%の範囲、最も好ましくは30~70重量%の範囲である。
【0089】
より好ましくは、本発明による局所用組成物は、O/W又はSi/W乳化剤の存在下で水相中に分散させた油相を含む水中油型(O/W)エマルジョン形態である。この種のO/Wエマルジョンの調製は、当業者によく知られており、実施例にも例示する。
【0090】
有利な実施形態において、O/W乳化剤は、リン酸エステル乳化剤である。本発明による具体的なリン酸エステル乳化剤は、セチルリン酸カリウムであり、例えばAmphisol(登録商標)KとしてDSM Nutritional Products Ltd Kaiseraugstから市販されている。
【0091】
特に好適なW/O又はW/Si乳化剤は、ポリグリセリル-2-ジポリヒドロキシステアラートである。
【0092】
少なくとも1種のW/O乳化剤は、好ましくは、組成物の総重量を基準として約0.001~10重量%の量、より好ましくは0.2~7重量%の量で使用される。
【0093】
本発明による局所用組成物は、更に有利には、例えばモノ-及びジグリセリド及び/又は脂肪族アルコール等からなる群から選択される少なくとも1種の補助界面活性剤を含む。補助界面活性剤は、一般に、組成物の総重量を基準として0.1~10重量%の範囲、特に0.5~6重量%の範囲等、最も具体的に1~5重量%の範囲等において選択される量で利用される。特に好適な補助界面活性剤は、アルキルアルコール、例えばセチルアルコール(Lorol C16、Lanette 16)、セテアリルアルコール(Lanette O)、ステアリルアルコール(Lanette 18)、ベヘニルアルコール(Lanette 22)、ステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル(Estol 3650)、水添ココグリセリル(Lipocire Na10)並びにこれらの混合物の一覧から選択される。
【0094】
本発明によるO/Wエマルジョン形態である組成物は、例えば、O/Wエマルジョンのためのあらゆる製剤形態、例えば美容液、乳液又はクリームの形態で提供することができ、これらは、通常の方法に従って調製される。本発明の主題である組成物は、局所的に適用することが意図されており、特に例えばヒトの皮膚をUV放射による悪影響から保護する(抗シワ、抗老化、保湿、抗日光防御(anti-sun protection)等)ことを意図した皮膚科用又は化粧用組成物を構成することができる。
【0095】
本発明の有利な実施形態によれば、組成物は、化粧用組成物を構成し、皮膚に局所的に適用することが意図されている。
【0096】
最後に、本発明の主題は、特に、皮膚等のケラチン質物質を化粧的に処置するための方法であって、本明細書に定義する局所用組成物を特に皮膚等の前記ケラチン質物質に適用する方法にある。この方法は、サンバーン及び/又は光老化等のUV放射による悪影響から皮膚を保護するのに特に適している。
【0097】
本発明によれば、本発明による組成物は、更なる成分、例えば皮膚美白;日焼け防止;色素沈着過剰の治療;ざ瘡、シワ、小ジワ、萎縮及び/若しくは炎症の予防及び軽減;キレート形成及び金属イオン封鎖;抗セルライト及び痩身(例えば、フィタン酸)、引き締め、保湿及び賦活、セルフタンニング、鎮静のための成分;並びに弾力性及び皮膚バリアを向上する薬剤;並びに/又は更なるUV遮蔽剤物質;並びに局所用組成物に従来使用されている担体及び/若しくは賦形剤若しくは希釈剤を含むことができる。別段の指定がない限り、以下に述べる賦形剤、添加剤、希釈剤等は、本発明による局所用組成物に好適なものである。化粧用及び皮膚科用補助剤及び添加剤の必要量は、所望の製品に基づき、当業者が容易に決定することができる。更なる成分は、油相に、水相に又は適切と見なされれば別個にのいずれかで添加することができる。添加方式は、当業者によって容易に適合させることができる。
【0098】
本明細書において有用な化粧活性成分は、いくつかの例において、2つ以上の利点を提供することができるか又は2つ以上の作用機序を介して作用することができる。
【0099】
本発明の局所用化粧用組成物は、通常の化粧用助剤及び添加剤、例えば防腐剤/酸化防止剤、脂肪質物質/油、水、有機溶媒、シリコーン、増粘剤、柔軟剤、乳化剤、日焼け止め剤、消泡剤、保湿剤、美容成分(香料等)、界面活性剤、フィラー、金属イオン封鎖剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性若しくは両性ポリマー又はこれらの混合物、噴射剤、酸性化若しくは塩基性化剤、染料、着色剤、研磨剤、吸収剤、精油、皮膚感覚創出剤、収斂剤、消泡剤、顔料若しくはナノ顔料、例えば紫外放射を物理的に遮断することによって光防御効果を付与するのに適したもの又は化粧用組成物に通常配合される他の任意の成分も含むことができる。
【0100】
本発明の組成物に使用するのに適した、スキンケア産業に慣用されているこの種の化粧成分は、これらに限定されるものではないが、例えばthe International Cosmetic Ingredient Dictionary&Handbook by Personal Care Product Council (http://www.personalcarecouncil.org/)に記載されており、オンラインINFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)からアクセス可能である。
【0101】
化粧用及び皮膚科用補助剤及び添加剤の必要量は、所望の製品に基づき、この分野の当業者によって容易に選択することができ、これらに限定されるものではないが、実施例に例示する。
【0102】
言うまでもなく、当業者は、上に述べた任意選択的な更なる化合物及び/又はその量を、本発明による組合せに本来付随する有利な特性が、想定された添加によって悪影響を受けないか又は実質的に受けないように慎重に選択するであろう。
【0103】
本発明による局所用組成物は、一般に、pHが3~10の範囲、好ましくはpHが4~8の範囲、最も好ましくはpHが4~7の範囲である。pHは、必要に応じて、好適な酸、例えばクエン酸又は塩基、例えばNaOHを用いて、当該技術分野における標準的な方法を用いて容易に調整することができる。
【0104】
本発明による局所用組成物は、皮膚を鎮静及び軟化する1種又は複数のエモリエント剤を更に含むことができる。一例として、エモリエント剤は、炭酸ジカプリリルとすることができる。更なるエモリエント剤は、シリコーン(ジメチコン、シクロメチコン)、植物油(ブドウ種子、ゴマ種子、ホホバ等)、バター(カカオ脂、シヤ脂)、アルコール及びペトロラタム誘導体(ワセリン、鉱油)である。
【0105】
本発明による化粧用組成物は、有利には、防腐剤又は防腐助剤を含む。防腐剤又は防腐助剤は、存在する場合、好ましくは組成物の総重量を基準として0.01~2重量%の量、より好ましくは0.05~1.5重量%の量、最も好ましくは0.1~1.0重量%の量で使用される。特に好ましくは、本発明による化粧用組成物は、パラベン及び/又はメチルイソチアゾリジンからなる群から選択されるいかなる防腐剤も含まない。
【0106】
以下に示す実施例は、本発明の組成物及び効果を更に例示するために提供するものである。これらの実施例は例示のみを目的とし、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0107】
[実施例]
[1.ナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの調製]
[1.1 一般的方法]
粒子径は、全てISO 13320:2009に概説されている方法に準拠し、Malvern Mastersizer 2000を用いたレーザー回折により、且つ/又はCoulter Delsa Nano S(動的レーザー散乱)により測定した。
【0108】
示差走査熱量分析(DSC)は、Mettler Toledo DSC1(温度範囲25℃~400℃;昇温速度:4℃/min;空気中、試料2~3mg、2回測定の平均値)を用いて実施した。
【0109】
X線回折パターンは、Bruker D8 Advance powder X-ray diffractometerを使用し、反射(ブラッグ-ブレンターノ)配置で記録した。PXRD回折計にLynxEye検出器を取り付けた。一般に、試料の調製では、平坦な面を得るために軽く押しつけたことを除いて特別な処理を施さなかった。多形スクリーニングを行うための深さ1.0mmの単結晶シリコン試料ホルダー。試料は、カバーを載せずに測定した。管電圧を40kVとし、管電流を40mAとした。可変発散スライトを、開き角を3°として使用した。ステップサイズを0.02°2θとし、計数時間を37秒間とした。測定時に試料を0.5rpsで回転させた。
【0110】
E 1/1値は、UV/(vis)分光器(Perkin Elmer Lambda 650S)を用いて、320nmにおいて、次式に従ってベースライン補正を行うことによって求めた:E 1/1=(E 1/1@320nm)-(E 1/1@650nm)。
【0111】
UVB:UVA比は、それぞれ微粉化されたUV遮蔽剤を水中に活性成分の濃度を0.001%(w/v)として分散させて、UVスペクトルを測定し、290~319nm(UVB)の面積%を320~400nm(UVA)の面積%で除すことによって求めた。
【0112】
[1.2 1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大非晶質固体粒子(DBO-400(A))の調製]
ポリリン酸702g及びメタンスルホン酸4.28mlの混合物を90℃に加熱した。テレフタル酸65g及び2-アミノフェノール107gを加えた。混合物を180℃の不活性雰囲気中、8時間撹拌した後、氷水に移した。析出した生成物を濾過して水及び酢酸で洗浄した。析出物を水中に分散させ、pHを水酸化ナトリウムでpH8.0に調整し、濾過して水で洗浄した。粗生成物をトルエン及び1-ブタノールの3.3:1混合物中に懸濁させ、85℃で1時間撹拌し、濾過してジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させた。得られた非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗大粒子は、粒子径D50が380nm(Malvern)であった。
【0113】
[1.3 非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’イル)ベンゼンの水性分散液の調製(DBO-200分散液(A))]
(1)で概説したように得られたDBO-400が175g、水が324g及びGreen APG 0810が65gの懸濁液を調製した。次いで、この懸濁液をLabStar実験用粉砕機において、イットリウム安定化酸化ジルコニウム磨砕ビーズ(0.3mm、東ソーセラミックス(Tosoh Ceramic)、日本国)を使用して2時間粉砕し、粉砕室を冷却した(-12℃の飽和食塩水)。磨砕ビーズを除去した後、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの30%水性分散液を得た。
粒子径:
Malvern:D50 186nm(D10=126nm、D90=355nm)
Coulter:平均値(強度分布):171nm
E 1/1:839
DSC:開始温度:350℃;熱容量:132J/g
UVB:UVA比:0.49
X線:図1、線4
【0114】
[1.4 結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液(DBO-200分散液(C))の調製]
(1.2)で概説したように得られた粗大粒子をo-ジクロロベンゼンから再結晶させ、乾燥させることにより、結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン73.0%を得、次いでこれを(1.3)の概説と同様に粉砕した。磨砕ビーズを除去した後、結晶性1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの30%水性分散液を得た。
粒子径:
Coulter:平均値(強度分布):193nm
E 1/1:719;
DSC:開始温度:352℃;熱容量:153J/g。
UVB:UVA比:0.35
X線:図1、線2
【0115】
[1.5 粗大非晶質固体1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの水性分散液(DBO-400分散液(A))の調製]
(1)で概説した通りに得られたDBO-400が1.8g、水が3.51g及びGreen APG 0810が0.69gの懸濁液を調製した。次いで、この懸濁液を、周囲温度(22℃)で磁気的撹拌を用いて、均質な分散液が得られるまで撹拌した。マグネチックスターラーバーを取り出した後、平均粒子径D50が380nm(Malvern)である微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの30%水性分散液を得た。
【0116】
[2.物質の移行]
以下に概説するスポンジ試験を用いて物質の移行を測定した。
- スポンジクロス(Weita AGからのWeitawip Claire:セルロース/綿繊維混合物、200g/m、厚さ5mm)を76mm×26mmの小片に裁断する
- スポンジ試料を風袋引きする
- 各試料(=化粧用組成物)400mgを適用し、76mm×26mmのスポンジ表面全体に均一に分布させる
- 適用した試料を含むスポンジを秤量する
- スライドガラス(ガラスプレート76mm×26mm×1mm)を風袋引きする
- スライドガラス(ガラスプレート)をスポンジ上面に載せ、天秤用の500gの錘(高さ:6.3cm、接触面の直径:3.7cm)を10秒間載せて試料に一定の圧力を印加する
- スライドガラスを垂直方向に慎重に取り除く
- 取り除いたスライドガラスを秤量し、これに従ってガラスプレートに移行した試料の量を決定する
- 各組成物に関して試験を10回ずつ繰り返すことにより、各試料の平均値を得る。
【0117】
[2.1 粒子径に応じた物質の移行]
表1に概要を示す配合物を当該技術分野において標準的な方法に従って調製した。次いで、物質の移行を、上に概説したように評価した。
【0118】
【表1】
【0119】
表1から読み取れるように、本発明によるナノサイズ化された有機UV遮蔽剤を添加することにより、ガラス表面に移行したクリームの量が参照品と比較して大幅に低減され、ガラス表面の汚れが参照品と比較して少なくなった。
【0120】
[2.2 粒子径及び液体UV遮蔽油に応じた物質の移行]
表2に概要を示す配合物を当該技術分野における標準的な方法に従って調製した。次いで、物質の移行を、上に概説したように評価した。
【0121】
【表2】
【0122】
表2から読み取れるように、300nm未満の粒子径を有するナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを添加することにより、ガラス表面に移行した油の量は、>300nmの粒子径を有する粒子と比較して一層顕著に低減され、ガラス表面の汚れが一層少なくなった。更に、UV遮蔽油としてメトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸エチルヘキシル及びホモサレートを使用した場合に最良の結果が得られた。
【0123】
[2.3 エマルジョンの種類に応じた物質の移行]
表3に概要を示す配合物を当該技術分野における標準的な方法に従って調製した。次いで、物質の移行を、上に概説したように評価した。
【0124】
【表3】
【0125】
表から読み取れるように、本発明によるナノサイズ化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを添加することにより、ガラス表面に移行したクリームの量が参照品と比較して大幅に低減され、ガラス表面の汚れが参照品と比較して少なくなった。更に、この移行は、O/W配合物の方が対応するW/O配合物よりもはるかに少ない。
【0126】
[3.非晶質固体形態対結晶形態のUV性能]
表4に概要を示す配合物を当該技術分野における標準的な方法に従って調製した。その後、in vitro SPFを製造直後(t0)及び室温で1か月間保管した後(t1)に評価した。in vitro SPF試験をPMMAプレート(SchoenbergからのWW5、5cm×5cm、粗さ5μm)上で実施し、各配合物32.5mg(即ち1.3mg/cm)をPMMAプレート上に均一に塗布して15分間乾燥させた。
【0127】
in vitro SPFを、Labsphere 2000 UV Transmittance Analyzerを用いて測定した。各PMMAプレートについてプレート上の異なる点で9回測定を行い、それにより27個のデータ点を得た。結果を27個のデータ点の平均として求めた。
【0128】
【表4】
【0129】
表4から読み取れるように、非晶質固体DBOを使用することにより、対応する結晶形態と比較してSPFが非常に高くなる。更に、この種の配合物は、非晶質固体形態の場合には室温で1ヵ月間保管した後のin vitro SPF不変によって反映されるように、対応する結晶形態では室温で1ヵ月間保管した後のSPFが大幅に低下することと比較してより保存安定性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0130】
図1】X線粉末回折パターンを示す。
図1