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特許7413639能動的細胞免疫療法のためのサイトカイン組成物を用いたリンパ球の増殖
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】能動的細胞免疫療法のためのサイトカイン組成物を用いたリンパ球の増殖
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240109BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240109BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
C12N5/0783
G01N33/53 Y
C07K14/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017517411
(86)(22)【出願日】2015-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2015063108
(87)【国際公開番号】W WO2015189357
(87)【国際公開日】2015-12-17
【審査請求日】2018-06-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】102014211167.6
(32)【優先日】2014-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520415557
【氏名又は名称】ポリバイオセプト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】マエウレアー、マーカス
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】光本 美奈子
【審判官】星 功介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/021503(WO,A1)
【文献】ONCOLOGY REV,2010,vol.4,p211-218
【文献】ASIAN PACOFOC J Tropicacl Med,2013,vol.6(6),p467-472
【文献】Tumor Biol,2014 Mar.,vol.35(3),p1997-2007
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N5/00-5/28,C07K14/54,G01N33/53
REGISTRY/CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD45RA-CCR7+のセントラルメモリーT細胞及びCD45RA-CCR7-の末梢性メモリーT細胞をインビトロで増殖させるための組成物であって、
インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン15(IL-15)およびインターロイキン21(IL-21)のみサイトカインとして含み、液状であり、液状の前記組成物中におけるIL-2の濃度が500IU/ml~2000IU/mlであり、IL-15の濃度が0.1ng/ml~100ng/mlであり、IL-21の濃度が0.1ng/ml~100ng/mlであり、
前記セントラルメモリーT細胞及び末梢性メモリーT細胞は、それぞれCD4+、CD8+、又はCD4-CD8-である、
前記組成物。
【請求項2】
L-2の濃度が800IU/ml~1200IU/mlの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
IL-15の濃度が、2ng/ml~50ng/mlの範囲内ある、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
IL-15の濃度が、5ng/ml~20ng/mlの範囲内である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
IL-21の濃度が2ng/ml~50ng/mlの範囲内である、請求項2請求項4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
IL-21の濃度が5ng/ml~20ng/mlの範囲内である、請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のサイトカイン組成物を用いて臨床的に有用なリンパ球集団を作製する方法を含む、能動細胞免疫療法に関する。本発明はさらに、サイトカイン組成物および作製された臨床的に有用なリンパ球に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国において、がんは依然として最も一般的な死因の一つである。例えば、合衆国およびドイツでは、がんは2番目に多い死因であり、死亡数はそれぞれ、560,000人(2009)および218,000人(2010)である。この一連の疾患を検出および治療する能力における改善にもかかわらず、多くのがんの生存率は低いままである。
【0003】
がん疾患の中で、膵がんは、合衆国およびスウェーデンにおけるがんによる死亡原因の第4位であり、改善の兆候が見られない。膵がんが診断されるまでに、患者の過半数は局所進行がんまたは転移性疾患により不治となっており、対症療法しか残されていない。生存期間中央値(medium survival)は約6ヶ月間である。腫瘍が切除可能であることで疾患治癒の可能性があるのは、患者の約15~20%に限られる。ほとんどのがんと同様、膵がんは早期の全身的な治療介入を必要とする全身性疾患である。多くの他の種類のがんと比較して、膵がんは、化学療法および放射線に強い抵抗性を示す。膵がんの予後不良の改善において意味のある大きな進歩を遂げるためには、新たな代替法およびより効率的な治療コンセプトの発見が不可欠である。膵がん生物学は、腫瘍進行および転移性を可能にする局所免疫抑制および全身免疫抑制の両方と関連がある。
【0004】
最も頻度が高い進行性神経膠腫であるグリア芽腫の状況も同様であり、発生率は合衆国において2~3/100.000である。グリア芽腫は、全ての頭蓋内腫瘍の12~15%を占め、組織球性腫瘍の50~60%を占める。新たな治療レジメンによって、全生存期間中央値(medium overall survival)が延長された(放射線療法単独による12.1ヵ月と比較して、放射線+テモゾロミドを用いて14.6ヵ月)。今までのところ、グリア芽腫を有する患者または膵がんを有する患者に対し、ロバストで且つ臨床的に有効な免疫療法プロトコルを開発しようという企図では、失敗が続いている。このようながんを治療するための1つのアプローチは、腫瘍による抑制を克服すること、ならびに/または、抗腫瘍性の細胞性免疫応答および体液性免疫応答を誘導すること、である。
【0005】
能動細胞免疫療法(ACI)と称される新たな治療分野は、最も有望な進展の1つである。がん免疫療法は、受動免疫療法か能動免疫療法のいずれかであり得る。受動療法は、サイトカイン、腫瘍特異的抗体または免疫細胞を含む免疫調節剤の養子移入(adoptive transfer)に基づく。これらの物質または細胞がその後患者に投与されることにより、抗腫瘍作用が惹起される。一般的に、これらの療法は、免疫記憶を生じさせないため、長期点滴に基づく治療を必要とする。一方、能動免疫療法は、身体のそれ自身の免疫細胞を用いて、抗原特異的な抗腫瘍効果を促進させる目的で、患者の免疫系を刺激する。さらに、能動免疫療法は、微小残存病変および腫瘍再発を防ぎ得る、永続性のある抗腫瘍反応を生み出すことに努める。
【0006】
腫瘍を標的としたT細胞(腫瘍反応性T細胞)を用いた臨床的に有用な長期寛解が、メラノーマを有する患者において達成された(2、3)。画期的な論文によって、最近、患者自身のT細胞が患者自身の腫瘍細胞、すなわち患者自身の「個人の(private)」変異を標的とする場合に、がん治療における最良且つ永続的な応答が達成されることが示された(4)。このような有望な結果は、上皮腫瘍を有する患者においても、すなわち、上皮がんにおける変異エピトープを標的とするT細胞の適応移植(adaptive transfer)によって、得られた(5)。これらのアプローチは通常、腫瘍病巣からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の回収または末梢血からのT細胞の回収に依存している。
【0007】
CTEP Subcommittee on Adaptive Cell Therapyの最近の報告により、末梢血由来の腫瘍反応性T細胞およびTILの増殖に関するプロトコルが要約された。
【0008】
この研究は、産物の一致性およびT細胞産物の効率的な収率に特に重点を置いた、TIL療法またはT細胞に基づく療法の使用のための指針に従うものであった。メラノーマを標的とするT細胞の一致性および収率は共に、生物学的製剤、すなわち、CD40LまたはPD-1を標的とする療法と併せて、T細胞に基づく戦略ががん治療の主流に入ることを可能にするであろう現在の方法論を用いることで、達成可能であると思われる。
【0009】
最小限に培養されたTILが、臨床用途のための最も効果的な表現型およびプロファイルを提供するものと見られる(11)。24ウェルプレート内で増殖され、免疫エフェクター機能と、さらに、IL-2、同種フィーダー細胞およびOKT3を用いた増殖について試験された、エキソビボ活性化された自己T細胞の使用が、今日までに最も成功を収めているアプローチであった(9、12、13)。
【0010】
CD4+またはCD8+腫瘍抗原(TAA)を標的とするT細胞が、GMP条件下で末梢血から作製され、後の患者の治療のために製剤化された。これは、自己のCD4+T細胞(14~16)またはCD8+T細胞(17)を用いて達成され、そのいくつかはNY-ESO-1抗原を標的とした(18)。これは、末梢循環中には十分なT細胞前駆体が存在することから、がんを有さない健常患者由来のPBMCにおいても可能である。標的対象療法(target directed therapy)のためのCD8+T細胞クローンを作製する様々なT細胞増殖法(19)が記述された。これは、抗腫瘍性リンパ球による患者の免疫系のクローン再増殖が、がん退縮を誘導し自己免疫も誘導することが示されたことから、非常に興味深い(20)。
【0011】
増殖培地製剤も、能動免疫療法の成功に関連し得る。飢餓によって、T細胞介在性免疫応答が影響を受け、飢餓誘導性免疫抑制、さらにある種のT細胞サブセットの増殖も誘導され得ることが、研究によって示された。この機構はレプチンによって仲介されると思われ(21)、レプチンは、B細胞発生および後のB細胞応答も調節する(22)。これにより、抗原提示を増強する、栄養分感知経路(nutrient sensor pathway)(すなわち、樹状細胞におけるGCN2)の発見がもたらされた(23)。より最近の研究では、サイトカインによって駆動されるT細胞増殖(TILまたはACTのエキソビボ増殖におけるもの等)が外来アミノ酸に依存すること、および、サイトカイン、すなわちIL-7、がアミノ酸輸送体発現に関連する遺伝子を発現上昇させたこと、が示された。従って、増殖培地要求物の改変は、T細胞増殖に使用されるそれぞれのサイトカイン混合物によって形作られ(24)、培地中のアミノ酸についても同様であり、両方の要素が臨床的に意味のあるT細胞の成熟および分化に影響を与えることになる。
【0012】
臨床(抗腫瘍)効果は、T細胞に基づく治療法に応答している患者からの生体外由来と定義される、CD45RA-CCR7+によって定義される、CD8+およびセントラルメモリー細胞によって仲介されると思われる。このようなT細胞の表現型は、生体外で増殖されたT細胞集団によって、および養子移入後の宿主因子によって、決定される。がん細胞を標的とする多様なT細胞集団は、有効な免疫応答、例えば、長期メモリーT細胞、さらにまた、(がん)標的細胞に即座に応答して抗腫瘍性免疫応答を引き起こし得るT細胞、例えば、グランザイムおよびパーフォリン等の細胞溶解性分子を発現する高分化型T細胞に有益であり得る(25、26)。長期メモリーの免疫記憶は、テロメア長によって測定され得る、増加能および半減期の増加によって、部分的に決定される(27、28)。
【0013】
(メラノーマ)特異的TILまたはT細胞クローンのどの段階がインビボ移植に最良であるかについては、インビトロおよびインビボにおける遺伝子発現の差異、ならびに個々の患者における示差的なサイトカイン環境が原因で、比較的にほとんど知られていない。個々の表現型だけでなく、分化型T細胞プール補充するであろうセントラルメモリーT細胞の長期の免疫学的記憶の提供と共に、免疫エフェクター機能(高分化型CD45RA+CCR7-)T細胞の急速な送達と関連した、異なる表現型も、T細胞の増殖に適した選択であり得る。
【0014】
T細胞の枯渇および機能喪失へのより高度な変化を示し、腫瘍抗原特異的T細胞(PD1+、および/またはLAG-3、4-1BB+である傾向がある(29))の富化も示し得る、T細胞上の活性化/枯渇マーカー、すなわちLAG-3、PD-1およびまたは4-1BBの発現も、同様に意義があると思われる。
【0015】
NY-ESO-1は、腫瘍抗原特異的T細胞の好適な標的であることが知られていた。NY-ESO-1は、がん検査抗原(cancer testing antigen)であり(36、37)、多数の腫瘍において発現される。例えば、Karolinskaにおいて、50のグリア芽腫病巣がNY-ESO-1タンパク質発現についてスクリーニングされ、グレード3およびグレード4のGBの35%がNY-ESO-1陽性であることが分かった。膵がん病巣のスクリーニングによって、より少ない数のNY-ESO-1タンパク質+特に転移性病巣において20%の範囲内のがん病巣が示された。NY-ESO-1は、NY-ESO-1を標的とするT細胞において明白な「非特異的」反応性無しに悪性細胞および精巣においてのみ発現されると思われるため、末梢血由来の腫瘍反応性T細胞を増殖するためにNY-ESO-1を標的とすることは標的の「安全な選択」であると思われる(36)。これは、抗腫瘍性リンパ球による患者の免疫系のクローン再増殖が、がん退縮、および潜在的リスクである自己免疫(20)を誘導することが示されたことから、非常に興味深い。NYESO-1は、NY-ESO-1反応性を増加させるためのDNAメチル化剤の使用とともに(39、40)、GBにおける、およびGB幹細胞における標的候補として、いくつかの研究において試験されている(38)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この技術的現状に鑑みて、本発明の目的は、免疫療法における改良法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は特に、サイトカインであるインターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-15(IL-15)および/またはインターロイキン-21(IL-21)を含む組成物がリンパ球、特に臨床的に有用なリンパ球、の優れた刺激および増殖をもたらすという知見に基づいている。サイトカイン混合物による増殖および刺激の方法は高感度であり、試料中の開始濃度が非常に低い場合であっても臨床的に有用なリンパ球集団の作製を可能にする。
【0018】
従って、第一の態様によれば、本発明は、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン15(IL-15)およびインターロイキン21(IL-21)から選択される少なくとも2種類のサイトカインを含む、リンパ球を増殖させるための組成物を提供する。
【0019】
このサイトカイン組成物を用いて、本発明者らは、抗原編集された(antigen edited)リンパ球集団を作製するための新規の方法を定めることができた。従って、第二の態様によれば、本発明は、
少なくとも1つのリンパ球を含む、哺乳動物由来の身体試料(body sample)、特に、組織試料または体液試料を得て、所望により身体試料中の細胞を分離する工程、
インビトロで身体試料を培養して試料中のリンパ球を増殖および/または刺激する工程であって、前記培養がIL-2、IL-15および/またはIL-21の使用を含む、前記工程、
ならびに、所望により培養試料中の臨床的に有用なリンパ球の存在を決定する工程、
を含む、臨床的に有用なリンパ球集団を作製する方法を提供する。
【0020】
本発明の第二の態様の方法は、臨床的に有用なリンパ球集団を含む、リンパ球集団の形成をもたらす。
【0021】
第三の態様によれば、本発明は、B細胞、NK細胞およびT細胞から選択される、第二の態様による方法によって得られる臨床的に有用なリンパ球を提供する。
【0022】
第四の態様によれば、本発明は、臨床的に有用なリンパ球集団を含む、本発明の第二の態様による方法によって得られるリンパ球集団を提供する。
【0023】
本発明の第二の態様による方法を用いて得られる臨床的に有用なリンパ球集団は、細胞免疫療法に特に有益である。
【0024】
第五の態様によれば、本発明は、本発明の第二の態様による臨床的に有用なリンパ球集団を作製する工程と、臨床的に有用なリンパ球集団を前記哺乳動物に投与する工程とを含む、哺乳動物における腫瘍疾患、感染症または自己免疫疾患を治療または予防するための免疫療法を提供し、ここで前記身体試料は前記哺乳動物から得られる。
【0025】
第六の態様によれば、本発明は、医学的処置で使用するための、特に、感染症、自己免疫疾患または腫瘍疾患を治療および予防するための、本発明の第一の態様による組成物を提供する。
【0026】
従って、第七の態様によれば、本発明は、医学的処置で使用するための、特に、感染症、自己免疫疾患または腫瘍疾患を治療または予防するためのキットを提供する。ここで前記キットは、IL-2、IL-15およびIL-21、ならびに、所望により、TCRを刺激する成分の少なくとも1つ、特に、OKT3、共刺激分子、フィーダー細胞、および少なくとも臨床的に有用な抗原のアミノ酸配列を含むペプチドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、ゾレドロン酸と組み合わせたサイトカイン混合物IL-2、IL-15およびIL-21を用いたPBMCの増殖から得られた試料の、フローサイトメトリー解析の結果を表す3つのグラフを示している。試料はグラフの上部に示される異なる時点で採取した。測定されたシグナルは、Y軸方向のCD3シグナルおよびX軸方向のTCRγδシグナルである。γδT細胞は方形領域に見られる。元々着色していた画像(originally colored image)では、グレースケールで重複シグナルの強度を示している。方形領域内の細胞の割合が上部に示される。
図2図2は、PRDM2ペプチドの存在下でサイトカイン混合物を用いて増殖されたPBMCから得られたリンパ球の、フローサイトメトリー解析の結果を示している。左の大パネルはリンパ球増殖の開始時の試料の結果を示しており、右パネルは刺激から18日後の試料の結果を示している。細胞シグナルはCD4/CD8マーカーに基づいて分離される。右側の小パネルはリンパ球およびCD3+細胞のゲーティングを示している。
図3図3は、図2と同じ試料のフローサイトメトリー解析を示している。IFN-γマーカーおよびサイズによる細胞シグナルの分離(側方散乱光SSC)。
図4図4は、サイトカイン混合物ならびにINO80EおよびUCHL3による刺激を用いたPBMCの増殖の試料に対する、フローサイトメトリーの結果を示している。細胞シグナルは、リンパ球(4a)、CD3+(4b)についてゲーティングされ、次いで、CD8およびCD4シグナル(4c)に基づいて分離される。
図5図5は、INO80EまたはUCHL3による刺激後のダブルネガティブ且つCD8+の集団におけるIFN-γ産生を示している。
図6図6は、サイトカイン混合物ならびにINO80EおよびUCHL3ペプチドを用いて増殖されたPBMC細胞の解析を示している。INO80Eで刺激された細胞を、サイトカインCD107a(6d)、CD127(6e)およびCD117(6f)の産生について解析した。
図7図7a~図7fは、サイトカイン混合物およびCMVpp65による刺激を用いたPBMCの増殖の結果を示している。
図8図8は、NY-ESO-1を用いて増殖された細胞を刺激した後のIFN-γ解析の結果を示している:図8aおよび図8cは、それぞれ0日目および18日目に刺激されなかった。図8bおよび図8dは、それぞれ0日目および18日目にNY-ESO-1で刺激された。
図9図9は、0日目および18日目における再度のサバイビンによる刺激後の、グリア芽腫を有する患者から得られたPBMCから増殖された細胞のサイトカイン産生を示している。測定されたサイトカインはIL-2、IFN-γおよびTNF-αである。図9aはCD4+T細胞サブセットの結果を示しており、図9bはダブルネガティブT細胞サブセットの結果を示しており、図9cはCD8+T細胞サブセットの結果を示している。
図10図10は、フローサイトメトリーを用いた、リンパ球の表現型CD45RAおよびCCR7の解析を示している。再度、リンパ球は、0日目、およびサイトカイン混合物を用いた18日間の増殖後に測定される。
図11図11は、CD4+細胞(TH1/TH2)およびCD8+T細胞の表現型に対する増殖の効果の解析を示している。
図12図12は、HPVを有する患者の末梢血から増殖された細胞によるサイトカインCD107a発現の解析を示している。図12aはHPV L1ペプチド刺激後のCD107a発現を示しており、図12bはポジティブコントロールを示しており、図12cは刺激無し(培地)の結果を表す。CD8+T細胞のゲーティング過程が図12d~図12fに示される。
図13図13は、サイトカイン無し、IL-2、IL-15、IL-21またはIL-7、ならびにIL-2およびNY-ESO-1またはサバイビンによる刺激を用いて増殖されたリンパ球のIFN-γ産生を表す2つのグラフを示している。
図14図14は、サイトカイン無し、IL-2、IL-15、IL-21またはIL-7、ならびにIL-2およびEBNA-1、EBNA-3a、またはCMVpp65による刺激を用いて増殖されたリンパ球のIFN-γ産生を表す3つのグラフを示している。
図15図15は、Treg(調節性T細胞)がサイトカイン混合物を用いたT細胞の増殖の前および後に特定されたことを決定する、フローサイトメトリー解析を示している。左から右に:T細胞がCD4+T細胞に対しゲーティングされ、次に、活性化T細胞上のIL-2受容体の高発現を示すCD25highに対してゲーティングされた。次に、前記細胞はIl-2R(高CD125)細胞に対しゲーティングされ、IL-7受容体(CD127)およびFoxp3(細胞内)の発現について試験された。
図16図16は、CD8+サブセットにおけるPD-1+T細胞の割合を決定しているフローサイトメトリー解析を示している。
図17図17は、増殖されたリンパ球によりペプチド1~12でパルスされた自家B細胞の特異的溶解を示している。
図18図18は、腫瘍関連抗原NY-ESO-1の存在下でIL-2/IL-15/IL-21によって駆動される増殖の前のPBMCのフローサイトメトリー分析を示している。まず、CD3+T細胞がゲーティングされ、次に、CD3+T細胞がCD4+およびCD8+T細胞に対しゲーティングされる。
図19図19は、腫瘍関連抗原NY-ESO-1の存在下でIL-2/IL-15/IL-21によって駆動される増殖の前のPBMCのフローサイトメトリー分析を示している。まず、CD3+T細胞がゲーティングされ、次に、CD3+T細胞がCD4+およびCD8+T細胞に対しゲーティングされる。
図20図20は、腫瘍浸潤性の、サイトカインIL-2、IL-15、およびIL-21を用いてインビトロで培養された、インキュベーション1週間目のリンパ球培養物の画像を示している。
図21図21は、放射能(Cr51)標識および放出を用いた、自己腫瘍細胞に対する増殖されたリンパ球の細胞毒性アッセイの、機能的模式図の概要を示している。
図22図22は、グリア芽腫を有する患者から得られたTILから増殖されたリンパ球の、フローサイトメトリー解析の結果を示している。図3(A)は、基本表現型CD8+(左パネル)、CD4+(右パネル)およびダブルネガティブT細胞(右パネル)について別々に、特定の表現型:前駆T細胞(CD45RA+CCR7+)、セントラルメモリーT細胞(CD45RA-CCR7+)、末梢性メモリーT細胞(CD45RA-CCR7-)、および分化型エフェクターT細胞(CD45RA+CCR7-)への、16のTIL由来の増殖されたTILにおけるT細胞表現型の分布を示している。個々のデータ点は、基本表現型に基づく特定の表現型の割合を表す。データは、IL-2、IL-15およびIL-21が、T細胞前駆体だけでなく、長期の免疫保護を与え得る長期メモリー表現型を有するTILを増殖させることを示している。図22(B)は、T細胞活性化マーカーおよびT細胞枯渇マーカーの発現を示している。結果は、基本表現型CD8+(左パネル)、CD4+(右パネル)およびダブルネガティブT細胞(右パネル)に従って、(A)と同様に分類される。個々のデータ点は、基本表現型に基づくX軸上に示されるマーカーを発現する細胞の割合を表す。CD117(c-kit)は「幹細胞」関連マーカーであり、長期メモリーを有するT細胞を示し、CD107aは最近のT細胞脱顆粒のマーカーである。データは、IL-2、IL-15およびIL-21中で増殖されたTILが、長期の免疫細胞記憶および免疫監視を可能にさせるマーカー(例えばc-kit)を発現することを示している。
図23図23は、膵がんを有する患者の腫瘍組織から増殖されたリンパ球(TIL)のフローサイトメトリー分析の結果を示している。左のパネルは、前駆体(CD45RA+CCR7+)、セントラルメモリー(CD45RA-CCR7+)、末梢性メモリー(CD45RA-CCR7-)、および分化型エフェクター(CD45RA+CCR7-)へのCD4+T細胞の分布を示している。右のパネル CD8+細胞の分布。データは、IL-2、IL-15およびIL-21が、T細胞前駆体だけでなく、長期の免疫保護を与え得る長期メモリー表現型を有するTILを増殖させることを示している。
図24図24は、T細胞活性化マーカーおよびT細胞枯渇マーカー(4-1BB、LAG-3、TIM-3、以下参照)に関する、膵がんを有する患者の腫瘍組織から増殖されたリンパ球(TIL)の、フローサイトメトリー分析の結果を示している。結果は、CD4+/CD8+表現型CD4+(上段パネル)、CD8+(中段パネル)、DN(下段パネル)に従って分類される。個々のデータ点は、基本表現型に基づくX軸上に示されるマーカーを発現する細胞の割合を表す。データは、強力な抗腫瘍反応および最近の抗原暴露を示す広範囲のマーカーを発現するTILを示している。CD127分子(IL-7R)は強力なT細胞生存因子を仲介する。
図25図25は、PCRに基づくアプローチによって決定された、膵がんを有する患者の腫瘍組織から増殖されたT細胞のTCR長分布を示している。
図26図26は、グリア芽腫病巣由来の増殖されたリンパ球における、CD4+、CD8またはDN T細胞における、細胞内サイトカイン産生アッセイの結果を示している。図7Bのグラフは、刺激後にサイトカインIFNγおよびTNFαを産生するT細胞の割合を示している。図12Aは、PMA/イオノマイシン(ポジティブコントロール)による最大刺激および培地のみによるバックグラウンドを示している。図7Bは、腫瘍関連抗原、すなわちEGRvrIII、NY-ESO-1またはサバイビン、に由来する合成ペプチドによる刺激の結果を示している。データは、グリア芽腫を有する患者由来のIL-2、IL-15およびIL-21増殖されたTILが、通常共有される腫瘍関連抗原に低頻度で反応するT細胞を含有することを示している。
図27図27は、膵がん病巣由来の増殖されたリンパ球における、CD4+、CD8またはDN T細胞における、細胞内サイトカイン産生アッセイの結果を示している。図8Aのグラフは、CD4+(左)、CD8+(中央)およびDNサブセット(右)における、腫瘍関連抗原、すなわちメソテリン、NY-ESO-1またはサバイビング(surviving)、による刺激後の、サイトカインIFNγ(上段パネル)およびTNFα(下段パネル)を産生するT細胞の割合を示している。図8Bは、NY-ESO-1刺激を用いたフローサイトメトリー解析の例を示している。CD3+、次いでCD8+に対しゲーティングしたT細胞は、IFNγ産生(上段ボックス)またはTNFα産生(下段ボックス)と比較した、側方散乱光(SSC)におけるものである。これは、膵がんを有する患者由来のIL-2、IL-15およびIL-21増殖されたTILが、通常共有される腫瘍抗原、すなわちNY-ESO-1に対し強力な反応性を示すことを示している。
図28図28は、自己腫瘍細胞による刺激後の、グリア芽腫病巣由来の増殖されたリンパ球における、CD4+、CD8またはDN T細胞における、細胞内サイトカイン産生アッセイの結果を示している。図9Aのグラフは、自己腫瘍細胞による刺激後の、CD4+左パネル、CD8+(中段パネル)およびDN T細胞(右パネル)についての、サイトカインIFNγおよびTNFαを産生するT細胞の割合を示している。図9Bは、自己腫瘍細胞で刺激された細胞のフローサイトメトリー解析の例を示している。CD3+、次いでCD4+(上段ボックス)またはCD8+(下段ボックス)に対しゲーティングしたT細胞は、IFNγ産生(上段ボックス)またはTNFα産生(下段ボックス)と比較した、側方散乱光(SSC)におけるものである。これは、グリア芽腫を有する患者由来のIL-2、IL-15およびIL-21増殖されたTILが、自己腫瘍細胞に対し強力な反応性を示すことを示している。
図29図29は、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて増殖されたリンパ球のTNFα産生を測定する、細胞内サイトカイン産生アッセイの結果を示している。上段パネルはポジティブコントロール(最大刺激)を示している。中段パネルは、自己腫瘍細胞に応答した、CD4+ゲーティングした増殖されたT細胞のサイトカイン産生の結果を示している(左:全てTIL、右:VB2+T細胞に対しゲーティングされたTIL)。下段パネル:TIL集団全体(左)およびVB2+TIL(右)におけるバックグラウンド産生。データは、IL-2、IL-15、IL-21 TILにおける優先的に増殖されたTCR VBファミリー(ここでは、TCR VB2)が自己腫瘍細胞を対象としていることを示している。
図30図30は、刺激後の、膵腫瘍組織から増殖されたリンパ球におけるINFγのレベルを示している。TIL+腫瘍は、自己腫瘍細胞による増殖されたリンパ球の刺激に耐える。TIL+OKT3は、CD3抗体によるリンパ球の刺激に耐える。W6/32はCD8+TILを遮断する抗体である。抗体L243はCD4+TILを遮断する。データは、IL-2、IL-15およびIL-21増殖されたTILが、患者の自己腫瘍に特異的であることを示している。
図31図31は、自己腫瘍細胞に対する、グリア芽腫を有する患者由来の増殖されたTILの、細胞溶解反応の解析の結果を示している。X軸上の数字は腫瘍細胞に対するTILの比を表す。Y軸上のパーセンテージは、放射能放出によって測定された、増殖されたTILによる処理の4時間後の、殺傷された腫瘍細胞の数を表す。
図32図32は、自己腫瘍細胞に対する、グリア芽腫を有する患者由来の、増殖された単クローン性T細胞および/または優先的に増殖されたTILの、細胞溶解反応の解析の結果を示している。X軸上の数字は腫瘍細胞に対するTILの比を表す。Y軸上のパーセンテージは、放射能放出によって測定された、増殖されたTILによる処理の4時間後の、殺傷された腫瘍細胞の数を表す。
図33図33は、自己腫瘍細胞に対する、膵がんを有する患者由来の増殖されたTILの、細胞溶解反応の解析の結果を示している。X軸上の数字は腫瘍細胞に対するTILの比を表す。Y軸上のパーセンテージは、放射能放出によって測定された、増殖されたTILによる処理の4時間後の、殺傷された腫瘍細胞の数を表す。これらのIL-2、IL-15およびIL-21増殖されたTILは、非常に集束したTCRレパートリーを示し、自己腫瘍細胞に対し強力な細胞傷害反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明者らは、インターロイキンであるIL-2、IL-15およびIL-21の組み合わせが、リンパ球による免疫療法を顕著に改善することを発見した。1つの大きな利点は、IL-2、IL-15およびIL-21から選択されるサイトカインのうちの少なくとも2種を組み合わせた組成物を用いた、患者由来のリンパ球の増殖および刺激が、臨床的に有用なリンパ球、特にT細胞、の作製に特に有利である点である。
【0029】
本発明によれば、「臨床的に有用な(clinically relevant)リンパ球」は、臨床的に有用な抗原と特異的に相互作用する。臨床的に有用なリンパ球には3つのグループ、すなわち、腫瘍反応性リンパ球、感染症反応性リンパ球および自己免疫疾患反応性リンパ球、がある。
【0030】
「臨床的に有用なリンパ球」は、抗原編集(antigen-edited)リンパ球とも称される。臨床的に有用なという用語はまた、リンパ球のサブグループに対しても使用される。特に好ましい臨床的に有用なリンパ球は、臨床的に有用なT細胞または抗原編集T細胞である。
【0031】
本発明による「臨床的に有用な抗原」は、疾患に関与する抗原である。従って、臨床的に有用な抗原は、腫瘍関連抗原TAA、病原体関連抗原(PAA)または自己抗原であり得る。腫瘍反応性リンパ球はTAAと特異的に相互作用する。感染症反応性リンパ球はPAAと特異的に相互作用し、自己免疫疾患反応性リンパ球は自己抗原と特異的に相互作用する。
【0032】
本発明によれば、「抗原」(Ag)は、それぞれ適応免疫応答の受容体、TCRまたは抗体の標的としての機能を果たす、あらゆる構造体である。抗原は、特に、タンパク質、多糖類、脂質、およびその部分構造(ペプチド等)である。脂質および核酸は、タンパク質または多糖類と組み合わされた場合に、特に抗原性を示す。
【0033】
「病原体関連抗原」(PAA)とは、細菌、ウイルスおよび他の微生物等の病原体の、莢膜、細胞壁、鞭毛および毒素等の部分を指す。
【0034】
「自己抗原」は通常、ある個体由来の、同一個体の免疫系によって認識される、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質複合体である。この作用は通常、自己免疫疾患を引き起す。
【0035】
本発明による「腫瘍関連抗原」または「TAA」は、腫瘍細胞の表面上のMHCI分子もしくはMHCII分子または非古典的MHC分子によって提示される抗原である。本明細書で使用される場合、TAAには、腫瘍細胞の表面上のみに見られる「腫瘍特異的抗原」が包含され、正常細胞の表面上にあるものは含まれない。
【0036】
実施例に示されるように、IL-2、IL-15およびIL-21の組み合わせによって、患者から得られた身体試料中の臨床的に有用なリンパ球の増加を特異的に誘導することが可能である。本発明による方法は、臨床的に有用なリンパ球を増殖するための簡易なプロトコルを提供する。前記プロトコルは、樹状細胞を必要としないことから、技術の現状におけるプロトコルと比較して特に有益である。さらに、本発明者らは、IL-2、IL-15およびIL-21から選択されるサイトカインのうちの少なくとも2種を組み合わせたサイトカイン混合物による増殖後に得られたリンパ球集団が、臨床応用に有利なある組成のリンパ球を含有することを示すことができた。例えば、前記組成は、TH1ヘルパーT細胞を高い割合で含み、TH2ヘルパーT細胞はほとんど含まない。さらなる利点は、増殖されたリンパ球集団の治療効果の抑制を引き起こし得る調節性T細胞の有意な増殖が無い点である。
【0037】
従って、第一の態様によれば、本発明は、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン15(IL-15)およびインターロイキン21(IL-21)から選択される少なくとも2種類のサイトカインを含む、リンパ球を増殖させるための組成物を提供する。
【0038】
IL-2、IL-15およびIL-21は、それぞれ4つのαヘリックス束を有する、サイトカインファミリーのメンバーである。IL-2は、主にT細胞に対するその直接的な作用を介して、免疫系、寛容性および免疫性の重要な機能において、重要な役割を果たす。IL-2は、T細胞の増加ならびにエフェクターT細胞およびメモリーT細胞への分化を誘導する。
【0039】
IL-15は、IL-2に構造的に類似したサイトカインである。IL-2と同様に、IL-15は、IL-2/IL-15受容体β鎖から構成される複合体に結合し、それを介してシグナル伝達する。IL-15は、T細胞の、特にCD8+T細胞の、活性化および増加を誘導し(30)、また、CD8+T細胞に有利な、抗原の非存在下でメモリー細胞を維持するための生存シグナルを提供し、単球を活性化する。IL-15は、腫瘍関連免疫抑制の阻害からの保護に加えて、免疫エフェクターT細胞の増加をむしろ駆動するものと見られる(31)。
【0040】
IL-21は、ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性T細胞を含む免疫系の細胞に対し強力な調節作用を有するサイトカインである。IL-21は、CD28+ CD127hi CD45RO+表現型を有するセントラルメモリー型T細胞を富化し、細胞傷害性T細胞の細胞傷害性(cytotoxity)を増強する。IL-21は、T細胞を、それらの分化および成熟の初期段階に維持し得る(35)。
【0041】
本発明によれば、IL-2、IL-15およびIL-21から選択されるサイトカインのうちの少なくとも2種を組み合わせた組成物は、「サイトカイン混合物」とも称される。
【0042】
本明細書で使用される「インターロイキン2」または「IL-2」とは、配列番号1によって定義されるヒトIL-2およびその機能的等価物を指す。IL-2の機能的等価物には、IL-2の機能を残しているIL-2の関連下部構造または融合タンパク質が包含される。従って、IL-2の定義は、配列番号1に対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するあらゆるタンパク質を含む。134個のアミノ酸を有し、15kDaの分子量を有する単鎖の非グリコシル化ポリペプチド鎖として大腸菌(E. coli)内で産生された組換えヒトIL-2が、プロスペック社(Prospec)からCYT-209として、凍結乾燥形態で市販されている。
【0043】
本明細書で使用される「インターロイキン15」または「IL-15」は、ヒトIL-15およびその機能的等価物を指す。IL-15の機能的等価物には、IL-15の機能を残しているIL-15の関連下部構造または融合タンパク質が包含される。従って、IL-15の定義は、配列番号2に対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するあらゆるタンパク質を含む。114個のアミノ酸(およびN末端メチオニン)を有し、12.8kDaの分子量を有する単鎖の非グリコシル化ポリペプチド鎖として大腸菌(E. coli)内で産生された組換えヒトIL-15が、プロスペック社からCYT-230として、凍結乾燥形態で市販されている。
【0044】
本明細書で使用される「インターロイキン21」または「IL-21」は、ヒトIL-21およびその機能的等価物を指す。IL-21の機能的等価物には、IL-21の機能を残しているIL-21の関連下部構造または融合タンパク質が包含される。従って、IL-21の定義は、配列番号3に対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するあらゆるタンパク質を含む。132個のアミノ酸を有し、15kDaの分子量を有する単鎖の非グリコシル化ポリペプチド鎖として大腸菌(E. coli)内で産生された組換えヒトIL-21が、プロスペック社からCYT-408として、凍結乾燥形態で市販されている。
【0045】
本明細書で使用される「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されていることが好ましい、あらゆる数のあらゆる種類のアミノ酸、好ましくは自然発生的なアミノ酸、から構成され得る。特に、ペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸、好ましくは少なくとも5個、少なくとも7個、少なくとも9個、少なくとも12個、または少なくとも15個のアミノ酸を含む。さらに、ペプチドの長さに上限は無い。しかし、本発明によるペプチドは、500のアミノ酸長を超過しないことが好ましく、300のアミノ酸長を超過しないことがより好ましく;250のアミノ酸長を超過しないことがさらにより好ましい。
【0046】
従って、用語「ペプチド」には、通常2~10のアミノ酸長を有するペプチドを指す「オリゴペプチド」、および、通常10超のアミノ酸長を有するペプチドを指す「ポリペプチド」が包含される。
【0047】
用語「タンパク質」は、少なくとも60個、少なくとも80個、好ましくは少なくとも100個のアミノ酸を有するペプチドを指す。
【0048】
本発明による用語「融合タンパク質」は、別々のタンパク質/ペプチドを元々はコードしていた2つ以上の遺伝子、cDNAまたは配列の連結を通じて作製された、タンパク質に関する。前記遺伝子は、同一の生物または異なる生物において自然発生的であり得、あるいは、合成ポリヌクレオチドであり得る。
【0049】
2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の関連性は、「配列同一性」というパラメーターによって説明される。本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度が、好ましくはバージョン3.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et a/., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)のNeedleプログラムにより実行される、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)を用いて決定される。使用される任意パラメーターは、ギャップ開始ペナルティ=10、ギャップ伸長ペナルティー=0.5、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換行列である。「最長の同一性」と標識されたNeedleの結果(thenobriefオプションを用いて得られた)は、同一性パーセントとして使用され、以下の通りに算出される:(同一の残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント内のギャップの総数)
【0050】
「を含む(including)」、「を含有する(containing)」または「を特徴とする(characterized by)」と同義である、移行語「を含む(comprising)」は、包括的またはオープンエンドであり、追加の記載されていない要素または方法工程を除外しない。移行句「からなる(consisting of)」は、通常それに付随する不純物を除いて、クレームに明記されていないあらゆる要素、工程、または成分を除外する。句「からなる(consisting of)」が、プリアンブルの直後ではなく、クレームのボディの節内に見られる場合、前記句はその節に記載された要素のみを限定し;他の要素は全体としてクレームから除外されない。移行句「から本質的に成る(consisting essentially of)」は、請求の範囲に記載されている発明の、明記された材料または工程「および基本的な新規の特徴に実質的に影響を与えないもの」にクレームの範囲を限定する。「『から本質的に成る(consisting essentially of)』クレームは、『からなる(consisting of)』形式で記載される閉鎖クレームと、『を含む(comprising)』形式で作成される完全開放クレームとの、中間を占める。」
【0051】
「増殖(expansion)」または「クローン増殖(clonal expansion)」とは、本明細書で使用される場合、もとは単一の細胞に由来する娘細胞の産生を意味する。リンパ球のクローン増殖では、全ての子孫は同じ抗原特異性を共有する。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、第一の態様による組成物は2種または3種のサイトカインを含む。さらなるサイトカインが、本発明による組成物によって提供される増殖結果に干渉し得る。
【0053】
あるいは、IL-2、IL-15およびIL-21の組み合わせに加えて使用される他のサイトカインは、リンパ球集団に良い影響を与え得る。従って、本発明の第一の態様の組成物は、IL-2、IL-15およびIL-21に加えて、より多くのサイトカインを含有し得る。例は、IL-1β、IL-4、GM-CSF、IL-12、IL-8、IL-17、TNFα、IL-32である。IL-1βは、特異的抗原との最初の接触後の、初回抗原刺激、エフェクターB細胞またはT細胞への分化に関与している。IL-4およびGM-CSFは、樹状細胞の刺激および/または初回抗原刺激に関与している。IL-12はTH1応答に関与している。IL-18はγδ-T細胞を刺激する。IL-17およびTNFαは炎症誘発性の作用をする。IL-32も、長期防御免疫応答に有利な、炎症誘発性の作用をする。
【0054】
第一の態様の一実施形態によれば、組成物はIL-2およびIL-15を含む。前記組成物はIL-2およびIL-21も含み得る。あるいは、前記組成物はIL-15およびIL-21を含み得る。サイトカインIL-2、IL-15およびIL-21のうちの2つで既に臨床的に有用なリンパ球集団を得るのに十分であり得るが、組成物に3つ全てのサイトカインを使用することが好ましい。
【0055】
さらなる実施形態によれば、第一の態様の組成物は液状である。特に、前記組成物は細胞培地である。本発明によれば、あらゆる公知の細胞培地が可能である。細胞培地の例としては、合成培地、血清、血漿もしくは全血由来の培地、またはそれらの任意の組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0056】
さらなる実施形態によれば、液状組成物中のIL-2の濃度は10~6000U/mlの範囲内である。国際単位(U)は、量またはIL-2の標準的な尺度である。濃度は、CTLL-2細胞の増加を誘導するその能力によって決定される。10U/ml未満の濃度は低濃度であり過ぎるため、いかなる有意な効果も達成できない。6000U/mlを超える濃度は細胞毒性効果を有し得る。IL-2の濃度は、500~2000U/mlの範囲内であることが好ましい。IL-2の濃度は、800~1100U/mlの範囲内であることがより好ましい。実施例に示されるように、最良の結果は約1000U/mlの濃度で達成された。
【0057】
第一の態様のさらなる実施形態によれば、IL-15の濃度は0.1~100ng/mlの範囲内である。前記濃度範囲はIL-2と同じ有理数に従う。0.1ng/ml未満の濃度は、いかなる有意な影響も細胞に与えないと考えられている。100ng/mlを超える濃度は細胞毒性効果を有し得る。IL-15の濃度は2~50ng/mlの範囲内であることが好ましく、5~20ng/mlの範囲内であることがより好ましい。最も好ましい濃度は約10ng/mlである。
【0058】
更なる実施形態では、IL-21の濃度は0.1ng/ml~の範囲内、好ましくは2~50ng/mlの範囲内、より好ましくは5~20ng/mlの範囲内である。
【0059】
本発明によれば、サイトカインのうちの1つのこれらの濃度範囲のいずれも、その他のサイトカインの濃度範囲のいずれとも組み合わせることができることを理解されたい。
【0060】
一実施形態によれば、前記組み合わせはIL-15およびIL-21の混合物を含む。前記混合物は、10~100ng/mlの範囲内のIL-15およびIL-21のそれぞれを含むことが好ましい。IL-15およびIL-21は、前駆体、メモリーおよびエフェクター集団内の特にリンパ球サブセットに対して、相乗効果を提供し得る。
【0061】
第一の態様の一実施形態によれば、前記組み合わせは、800~1000U/mlの濃度のIL-2、ならびに5~20ng/mlの濃度のIL-15およびIL-21を含む。別の実施形態によれば、前記組成物は、約1000U/mlの濃度のIL-2、ならびに約10ng/mlの濃度のIL-15およびIL-21を含む。
【0062】
IL-2、IL-15およびIL-21の組成物は、リンパ球組成物中、特に患者の試料中の、臨床的に有用なリンパ球の増殖を促進するのに特に有益である。実施例に示されるように、本発明者らは、患者の試料から特に臨床的に有用なリンパ球を作製するための方法を開発した。
【0063】
IL-2、IL-15およびIL-21の組成物は、リンパ球組成物中、特に患者の試料中の、臨床的に有用なリンパ球の増殖を促進するのに特に有益である。実施例に示されるように、本発明者らは、PD1およびLAG3+T細胞の頻度を減少させる方法を開発し、ここで、PD1および/またはLAG3発現は、抗原を経験したT細胞のマーカーとしてではなく、T細胞枯渇のマーカーとして働く。
【0064】
IL-2、IL-15およびIL-21の組成物は、リンパ球組成物中、特に患者の試料中の、臨床的に有用なリンパ球の増殖を促進するのに特に有益である。実施例に示されるように、本発明者らは、抗原を経験したT細胞のマーカーとしての、4-1BB発現の頻度を増加させる方法を開発した。
【0065】
従って、第二の態様によれば、本発明は、
少なくとも1つのリンパ球を含む、哺乳動物由来の身体試料、特に、組織試料または体液試料を得て、所望により身体試料中の細胞を分離する工程、
IL-2、IL-15およびIL-21から選択されるサイトカインのうちの少なくとも2種を使用することを含む、インビトロで身体試料を培養して試料中のリンパ球を増殖および/または刺激する工程、及び
所望により培養試料中の臨床的に有用なリンパ球の存在を決定する工程
を含む、臨床的に有用なリンパ球集団を作製する方法を提供する。
【0066】
IL-2、IL-15およびIL-21から選択されるサイトカインのうちの少なくとも2種は、上記で定義された濃度で使用されることが好ましい。3つ全てのサイトカイン、IL-2、IL-15およびIL-21が、一緒に使用されることが好ましい。
【0067】
実施例に示されるように、前記方法は、腫瘍反応性リンパ球、自己免疫疾患反応性リンパ球または感染症反応性リンパ球の集団を作製するのに使用することができる。第二の態様の方法によって作製されたリンパ球集団は、腫瘍反応性リンパ球集団であることが好ましい。
【0068】
リンパ球は一般的に、種々の異なるTリンパ球を含む。これらのリンパ球の中には、臨床的に有用な抗原、特に、腫瘍関連抗原、感染症関連抗原または自己免疫疾患関連抗原と相互作用するための適切な受容体を有するリンパ球が存在し得る。本発明による方法を用いることで、この臨床的に有用なリンパ球が特に、強力に増殖される。しかし、臨床的に有用な抗原に対し特異性を有していない他のリンパ球も、本発明による方法において増殖される。
【0069】
従って、IL-2、IL-15および/またはIL-21を含む組成物を用いた身体試料由来の細胞の培養の結果は、臨床的に有用なリンパ球集団を含むリンパ球集団の形成をもたらす。本発明の第二の態様による方法において、培養試料中の臨床的に有用なリンパ球の存在の決定は、可能であるが必須ではない工程である。増殖されたリンパ球集団を検証するのに有用な工程は、実際に、治療法(therapeutic)として使用することができる。
【0070】
身体試料は、リンパ球を含有するいかなる身体部分からも採取することができる。身体試料の例は、末梢血、臍帯血、骨髄、リンパ節、肝臓胸水、胸郭、腹腔、滑液(synvial fluid)、腹膜、腹膜後隙、胸腺、および腫瘍である。
【0071】
腫瘍由来のリンパ球試料は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とも称される。「TIL」は、本明細書で使用される場合、「腫瘍浸潤リンパ球」の略称である。TILは、腫瘍内、腫瘍上または腫瘍周辺に位置するあらゆる種類のリンパ球である。TILは、腫瘍内および腫瘍周辺に位置するあらゆる種類のリンパ球である。
【0072】
腫瘍におけるそれらの局在性によって、TILは、腫瘍関連抗原を経験済みであり得る。従って、臨床的に有用なリンパ球、特に腫瘍反応性リンパ球は、本発明による方法を用いて増殖抗原無しで増殖させることができる。
【0073】
末梢血由来の試料は末梢血単核球(PBMC)とも称される。疾患の種類に応じて、様々な身体試料が好適であり得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は、あらゆる哺乳動物、例えば、限定はされないが、マウスおよびハムスター等の齧歯目の哺乳類、ならびに、ウサギ等のウサギ目(order Logomorpha)の哺乳類、を指す。哺乳類は、ネコ(Feline)(ネコ(cat))およびイヌ(Canine)(イヌ(dog))を含む食肉目の哺乳類であることが好ましい。哺乳類は、ウシ(Bovine)(雌ウシ(cow))およびブタ(Swine)(ブタ(pig))を含む偶蹄目の哺乳類、または、ウマ(Equine)(ウマ(horse))を含む奇蹄目(order Perssodactyla)の哺乳類であることがより好ましい。哺乳類は、霊長目、セボイド目(Ceboid)、もしくはシモイド目(Simoid)の哺乳類(サル)、または真猿亜目(order Anthropoid)の哺乳類(ヒトおよび類人猿)であることが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物はヒトである。
【0075】
第二の態様の一実施形態によれば、身体試料が採取される哺乳動物はヒトである。哺乳動物は、腫瘍疾患を有し得るか、または腫瘍疾患を発症すリスクを有し得る。腫瘍疾患を発症するリスクは、高リスク、中程度のリスクおよび低リスクを含む。そのような前がん状態にある哺乳動物は、例えば、顕微鏡検査下で異常に見え、外見上正常に見えるその対応物におけるよりもがんが生じる可能性が高い、形態学的に異型の組織である、前がん病変を有する。
【0076】
さらに、哺乳動物は、感染症を有し得るか、または感染症を発症するリスクを有し得る。感染症を発症するリスクには、高リスク、中程度のリスクおよび低リスクが含まれる。哺乳動物はまた、自己免疫疾患を有し得るか、または自己免疫疾患を発症するリスクを有し得る。自己免疫疾患を発症するリスクには、高リスク、中程度のリスクおよび低リスクが含まれる。例えば、宿主のある特定の遺伝子変異(IFNγ受容体欠損、またはサイトカイン(例えばIL-12またはIFNγ)に対する抗体の獲得)の後に、細胞内感染(CMV、EBV、TB、HPV)を発症する、高リスク。中程度のリスクは、副腎皮質ステロイドを用いた免疫抑制、またはTNFαもしくはTNFα受容体を標的とする試薬を用いた患者の処置であるだろう。低リスクは、他の病原体による同時感染、または大手術中の免疫適格の一時的な低減であり得る。同様の例は、多発性硬化症、まれな神経系疾患(例えば、ナルコレプシー)、リウマチ様関節炎、ならびに胃腸管系と関連した慢性自己免疫疾患の、遺伝子マーカーと関連した様々な臨床症状である。
【0077】
哺乳動物が腫瘍疾患に罹患している、または腫瘍疾患を発症する可能性が高い場合、好ましい身体試料は末梢血または腫瘍それ自体である。実施例に示されるように、末梢(peripheral)および腫瘍由来のリンパ球は、強力な抗腫瘍特性を生じさせるための本発明による方法によって処理され得る。疾患が自己免疫疾患である場合、好ましい身体試料は末梢血である。さらに、疾患が感染症である場合も、好ましい身体試料は末梢血である。実施例に示されるように、臨床的に有用なリンパ球は、これらの場合、末梢血から増殖され得る。理論に拘束されるものではないが、末梢血は臨床的に有用な抗原(例えば腫瘍上の、または感染の)と接触したことがあるリンパ球を含有すると仮定される。
【0078】
リンパ球を増殖および/または刺激するためのインビトロにおける身体試料の培養は、一つまたは複数の下位工程を含み得る。従って、ある実施形態では、インビトロ培養は、リンパ球が検出可能になるまでの、IL-2、IL-15およびIL-21を含む培地中でのインキュベーションを含む第一増殖工程を含む。
【0079】
本発明による「検出可能な」とは、リンパ球が、例えば、特に顕微鏡法によって、可視となることを意味する。リンパ球は通常、5×10細胞/mlの濃度に達すると、標準的な光学顕微鏡法を用いて検出可能となる。
【0080】
リンパ球の検出は、ある特定の閾値を超えるリンパ球の存在を検出するのに好適な、当該技術分野において公知のあらゆる方法を含み得る。第一増殖工程は、サイトカイン混合物による細胞の刺激と共に、細胞増殖を穏やかに誘導するという目的を有する。
【0081】
第一増殖工程のインキュベーションの時間は、6時間~180日間の範囲内である。インキュベーション時間の広い範囲は、第一に、異なるドナー由来の試料が非常に異なった挙動をし得るという事実によるものである。また、異なる身体試料由来のリンパ球が非常に異なる成長速度を有するということが示された。例えば、グリア芽腫または膵がんの腫瘍に直接由来するリンパ球は、非常に異なった増殖をする。膵がん由来のリンパ球は、2~5日以内に既に検出可能である。グリア芽腫由来のリンパ球は、1~2週間後に初めて検出可能となる。従って、他の身体試料由来のリンパ球は、検出可能となるのにさらに長い時間がかかり得る。
【0082】
第一増殖工程のインキュベーション時間は4日間~10日間の範囲内であることが好ましい。末梢血細胞を用いて、約7日間のインキュベーション時間が他の増殖の結果に特に有益であることが示された。しかし、上記の通り、試料に依存して、4日間のみの増殖でも十分である場合があり、あるいは一方で、約10日間またはそれ以上必要である場合もある。実施例に示されるPBMCを用いての良好な結果により、6~8日間の範囲内、特に約7日間のインキュベーション時間が好ましい。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、第一増殖工程の培地は少なくとも1つの増殖抗原を含む。増殖抗原は公知の、臨床的に有用な、抗原またはその断片、変異体もしくはバリアントである。本明細書で使用される「変異体」は、少なくとも1つのアミノ酸の挿入、欠失または置換により参照配列と異なるアミノ酸配列と定義される。増殖抗原はTAA、PAAおよび自己抗原から選択されことが好ましい。
【0084】
本発明による方法は、複数の増殖抗原コピーを含むことが好ましい。増殖抗原コピーの数が増加すると、臨床的に有用なリンパ球、特にT細胞の増殖速度が増加する。
【0085】
本発明のある実施形態において、第一増殖工程の培地は複数の増殖抗原を含む。複数の増殖抗原は、公知の臨床的に有用な抗原および臨床的に有用な抗原の一つまたは複数の変異体を包含することが好ましい。抗原それ自体の代わりに、抗原を提示するMHCクラスI/ペプチド、特にペプチドも、変異され得る。増殖抗原としての臨床的に有用な抗原またはMHCクラスI分子の一つまたは複数の野生型、バリアントまたは変異体の使用は、名目上の臨床的に有用な抗原に対し反応性である、様々なリンパ球、特にT細胞をもたらす。
【0086】
第二の態様による方法の好ましい実施形態によれば、身体試料は腫瘍であり、増殖抗原は培養に使用されない。
【0087】
腫瘍試料中の細胞を分離する前に、腫瘍組織を2回洗浄することが好ましい。
【0088】
本発明の別の好ましい実施形態では、第一増殖工程の培地は複数の増殖抗原を含む。複数の抗原を有することによって、T細胞産物は、刺激性抗原の使用に関連するVβ使用によって示されるように、より多様なT細胞受容体レパートリーで反応する。
【0089】
本発明の別の好ましい実施形態、第一増殖工程の培地は複数の増殖抗原を含む。末梢血由来T細胞の刺激は、細胞傷害性(cytoxicity)によって定義される、多様なエピトープを認識するT細胞をもたらす。ナイーブT細胞が血液から選択され、そのような抗原で刺激された場合、多様な抗原エピトープが認識されるという結果をもたらす。
【0090】
これは、より限定された数の、または標準的な数のエピトープを認識する傾向にある予備刺激T細胞または腫瘍由来T細胞とは対照的である。
【0091】
増殖抗原の選択は、治療される疾患に依存する。具体的には、増殖された臨床的に有用なリンパ球集団が腫瘍疾患に対して使用される場合、第一増殖工程に添加される増殖抗原はTAAであることが好ましい。あるいは、治療される疾患が感染症である場合、第一増殖工程に添加される増殖抗原はPAAである。さらに、臨床的に有用なリンパ球集団が自己免疫疾患の治療に使用される場合、増殖抗原は自己抗原であることが好ましい。
【0092】
第一増殖工程における増殖抗原は、初期に既に細胞混合物中の臨床的に有用なリンパ球の刺激をもたらし、それにより、サイトカイン混合物と共に、臨床的に有用なリンパ球の増殖を増強すると考えられている。この刺激は、抗原活性化または抗原編集(antigen editing)とも称される。
【0093】
第一増殖工程の後に、第二増殖工程が続いてもよく、前記第二増殖工程では、細胞がIL-2、IL-15およびIL-21から選択されるサイトカインのうちの少なくとも2種に加えて、フィーダー細胞および/またはCD3に対する抗体と一緒にインキュベートされる。フィーダー細胞およびCD3に対する抗体を用いた増殖は、技術の現状において説明されている。フィーダー細胞は細胞成長の向上をもたらすと考えられている。フィーダー細胞は、増殖しない、または僅かしか増殖しない被照射細胞である。フィーダー細胞は、培養物(culture)中で接触する細胞の数を増加させ、さらに、増殖および拡張中の細胞培養物を養う。フィーダー細胞が、照射されたPBMC中に存在することが好ましい。同種フィーダー細胞は、増殖された臨床的に有用なリンパ球で治療される哺乳動物とは異なる生物に由来する。自己フィーダー細胞は治療される哺乳動物に由来する。
【0094】
CD3に対する抗体は、OKT3と定義される抗体であることが好ましい。OKT3は、免疫グロブリンIgG2aアイソタイプのマウスモノクローナル抗体である。OKT3の標的であるCD3は、成熟T細胞上にのみ存在する多分子複合体である。T細胞、OKT3および単球の間の相互作用によって、インビトロにおけるT細胞活性化が引き起こされる。
【0095】
フィーダー細胞は、CD3およびサイトカインのIL-2、IL-15およびIL-21と組み合わせて使用されることが好ましい。第二の態様による方法の一実施形態によれば、フィーダー細胞:リンパ球の比は1:1~1:100の範囲内である。フィーダー細胞:リンパ球の割当量(ration)は、1:2~1:50の範囲内であることが好ましい。実施例に示されるように、非常に低い割合のフィーダー細胞でも、臨床的に有用なリンパ球、特に臨床的に有用なT細胞の強力な増殖に十分である。
【0096】
実施例において、1:10の比は、リンパ球の成長および増殖を支援するのに十分である。従って、1:5~1:20の範囲内の値は異なる結果をもたらさないであろうと考えられる。少数のフィーダー細胞は少なくとも2つの利点を有する。第一に、紛れとなる細胞シグナルが少なくなり、それにより、より均一で信頼できる増殖結果が得られる。第二に、フィーダー細胞をより少なくすることで、前記方法によって得られる免疫療法産物中の、すなわち臨床的に有用なリンパ球集団中の、外来性物質がより少なくなる。
【0097】
第二増殖工程は、所望により、培地中に増殖抗原も含む。臨床的に有用な抗原または断片が第二増殖工程の培地に添加されないことが好ましい。
【0098】
本発明の第二の態様の好ましい実施形態によれば、前記方法はリフォーカス工程を含む。リフォーカス工程は、リフォーカス細胞(refocusing cell)を含む培地中での培養を含む。リフォーカス細胞は、身体試料が採取される哺乳動物、特にヒトに由来する細胞である。従って、リフォーカス細胞は、少なくとも1つのリフォーカス抗原(refocusing antigen)で処理された自己細胞である。本明細書で定義されるいかなる増殖抗原も、リフォーカス抗原として使用できる。前記方法において、一つまたは複数のリフォーカス抗原は、一つまたは複数の増殖抗原と同一であることが好ましい。
【0099】
リフォーカス細胞は、リフォーカス抗原と一緒に、少なくとも30分間、またはそれ以上、例えば少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間、または少なくとも10時間培養された細胞である。リフォーカスしながらインキュベーションした後、リフォーカス細胞は少なくとも40Gyで照射される。前記細胞は、少なくとも45Gyで、またはそれ以上で、例えば少なくとも50Gyで、照射されることが好ましく、55Gyの強度が特に好ましい。この処理により、抗原特異的T細胞は、より効率的に、増殖され、腫瘍、病原体または自己免疫細胞を認識し、がん細胞または前がん病変に対する保護を与え得る。
【0100】
リフォーカス工程の時間は、1~6日間の範囲内であり、好ましくは1~3日間である。リフォーカス工程は短めでもよいが、リフォーカス工程は増殖された臨床的に有用なリンパ球、特に、末梢血から増殖された臨床的に有用なリンパ球の収率に有意な向上をもたらす。
【0101】
また、リンパ球の数と比較したリフォーカス細胞の数はやや少ない。具体的には、リフォーカス細胞:リンパ球の比は1:1~1:100の範囲内である。リフォーカス工程が第一増殖工程の直後に行われ、その後第二増殖工程が続いた場合に、最良の結果が達成されることが分かっている。培養工程の順序は、臨床的に有用なリンパ球集団、特にT細胞の作製に特に有用である。
【0102】
前記方法の一実施形態によれば、第一増殖工程は、細胞培養物へIL-2、IL-15およびIL-21を同時添加することを含む。同時添加のために、IL-2、IL-15およびIL-21の混合物を調製し、それを細胞培地に添加することが可能であり、あるいは、IL-2、IL-15およびIL-21は別々にではあるが同時に細胞培地に添加される。実施例に示されるように、IL-2、IL-15およびIL-21の同時適用は、増殖されたリンパ球集団の好ましいリンパ球組成物をもたらす。
【0103】
増殖されたリンパ球集団の組成を変化させるために、本発明の方法では、第一増殖工程において細胞培地にIL-21のみを最初に添加することが可能である。IL-21の添加後、IL-15およびIL-2が同時にまたは別々に添加され得る。IL-15が2番目に添加され、IL-2が最後に添加されることが好ましい。別の実施形態では、IL-15が最初のサイトカインとして添加され、その後、IL-2およびIL-21が同時添加されるか、または、IL-2およびIL-21が別々に添加される。例えば、IL-21が2番目に添加され、IL-2が最後に添加される。
【0104】
第一増殖工程および/または第二増殖工程の培地は、少なくとも一つの増殖抗原を含み得る。増殖抗原は、例えば、公知のTAAの断片であり得る。増殖抗原として可能なTAAは、例えば、NY-ESO-1、チロシナーゼ腫瘍抗原、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP)-1、TRP-2、VEGFR-2、およびいくつかのMAGEファミリーのタンパク質、テロメラーゼ、p53、HER2/neu、メソテリン、癌胎児抗原(carcinoembryonic)、サバイビン、EGFRvIII、VEGF、CAMPATH1抗原、CD22、CA-125、ムチン-1、α-1-ゲトプロテイン(getoprotein)、PSMAである。
【0105】
TAAの断片は特にペプチドである。このようなペプチドは、例えば、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7のアミノ酸配列に対し少なくとも80%同一のアミノ酸配列の少なくとも8個の連続アミノ酸を含むペプチドであり得る。
【0106】
配列番号4は公知の腫瘍関連抗原NY-ESO-1のアミノ酸配列である。配列番号5は公知の腫瘍関連抗原サバイビンのアミノ酸配列である。配列番号6は公知の腫瘍関連抗原メソテリンのアミノ酸配列である。配列番号7は腫瘍関連抗原EGFRvIIIのアミノ酸配列である。
【0107】
増殖抗原は、例えば、公知のPAAの断片であり得る。増殖抗原であり得るPAAは、例えば、CMVpp65、またはEBV(EBNA-3、EBNA-1)、HPV-16/33E6、E7またはL1である。PAAの断片は特にペプチドである。このようなペプチドは、例えば、それぞれ公知の病原体関連抗原であるCMVpp65、EBNA-3、EBNA-1、およびHPV-L1のアミノ酸配列である、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号11のアミノ酸配列に対し少なくとも80%同一のアミノ酸配列の少なくとも8個の連続アミノ酸を含むペプチドであり得る。
【0108】
増殖抗原は、例えば、公知のPAAの断片であり得る。増殖抗原であり得る自己抗原は、例えば、PRDM2、UCHL3、INO80E、SLC12A6、およびリーリンである。PAAの断片は特にペプチドである。このようなペプチドは、例えば、それぞれ自己抗原のPRDM2、INO80E、UCHL3、およびデオキシリボヌクレアーゼBのアミノ酸配列である、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15のアミノ酸配列に対し少なくとも80%同一のアミノ酸配列の少なくとも8個の連続アミノ酸を含むペプチドであり得る。
【0109】
さらなるサイトカイン等の追加成分を、培養工程中に、特に第一増殖工程中もしくは第二増殖工程中またはリフォーカス工程中に、添加してもよい。
【0110】
さらに、プロモーター化合物を、培養工程で、特に第一増殖工程もしくは第二増殖工程またはリフォーカス工程で、添加してもよい。プロモーター化合物は第一増殖工程で添加されることが好ましい。本明細書で使用されるプロモーター化合物は、増殖プロセスにおいて特定のリンパ球サブセットの増殖を引き起こす化合物である。好ましいプロモーター化合物はゾレドロン酸である。ゾレドロン酸はγδT細胞の増殖を促進する。さらに好ましいプロモーター化合物は、B細胞の増殖を促進するものである。
【0111】
一実施形態によれば、培養工程に、特に第一増殖工程もしくは第二増殖工程またはリフォーカス工程に、共刺激化合物が添加される。共刺激化合物は、例えば、T細胞シグナルを仲介するCD28のリガンドである。T細胞シグナルを仲介するCD28のリガンドの例は、B7スーパーファミリーのメンバー、特に、B7-1(CD80)およびB7-2(CD86)である。
【0112】
第二の態様による方法の一実施形態によれば、増殖されたリンパ球試料中の臨床的に有用なリンパ球の存在の検査は、評価用抗原(evaluation antigen)の使用を含む。
【0113】
前記検査のために、リンパ球集団が評価用抗原と一緒にインキュベートされる。評価用抗原は、増殖抗原の定義下にある抗原であり得る。例えば、公知の臨床的に有用な抗原またはその断片が評価用抗原としてリンパ球集団の培地に添加され、リンパ球が刺激される。インキュベーション期間の後、臨床的に有用なリンパ球の活性化を示すパラメーターが測定される。
【0114】
評価用抗原は、MHCI複合体に結合した形態のリンパ球に添加されることが好ましい。例えば、評価用抗原は、MHCデキストラマー(dextramer)に結合したリンパ球に提示され得る。MHCデキストラマーは、ブドウ糖骨格に結合した蛍光標識されたMHC多量体である。
【0115】
多量体MHC構造の使用には、複数の抗原コピーが単一のリンパ球に提示されることで、評価用抗原によるシミュレーション(simulation)が増加し得るという利点がある。あるいは、公知の臨床的に有用な抗原が、導入遺伝子として臨床的に有用な抗原を発現する細胞の形態で、評価用抗原として培養試料に提示され得る。さらに、細胞表面上の臨床的に有用な抗原を増殖されたリンパ球に提示する、少なくとも部分的に遺伝的に一致している同種細胞が添加され得る。
【0116】
臨床的に有用なリンパ球の存在を示すパラメーターは、例えば、一つまたは複数のサイトカインの産生、特に、IFN-γまたはTNFαの産生であり得る。臨床的に有用なリンパ球の存在を示すさらなるパラメーターは、細胞増殖の増加、細胞毒性の増加、細胞情報伝達および/または細胞内リン酸化の増加である。これらのパラメーターの決定は、当該技術分野において公知であり、実施例で例示される。
【0117】
好ましくは、公知の臨床的に有用な抗原に由来する評価用抗原の使用に加えて、治療される哺乳動物に特異的な臨床的に有用なリンパ球についても検査し得る。このために、増殖されたリンパ球と同じ哺乳動物に由来する細胞、特に腫瘍細胞が、評価用抗原の提示に使用される。これらの自己細胞を評価用提示抗原として用いて、必ずしも公知の臨床的に有用な抗原である必要はない臨床的に有用な抗原に特異的な、臨床的に有用なリンパ球の存在が検証され得る。
【0118】
本発明の第二の態様によるある実施形態では、培養試料に提示される評価用抗原は、培養試料と同じ哺乳動物に由来する細胞(自己細胞)、特に腫瘍細胞、少なくとも部分的に遺伝的に一致している同種細胞、特に腫瘍細胞、または導入遺伝子として臨床的に有用な抗原を発現する細胞から選択される形態をとる。
【0119】
さらなる実施形態によれば、臨床的に有用なリンパ球の存在の検査法は、リンパ球を少なくとも1つの評価用抗原と接触させ、サイトカイン産生、特にIFN-γもしくはTNFαの産生、細胞増殖、細胞毒性、シグナル伝達および/または細胞内リン酸化のうちのいずれか1つにおける変化を決定することを含む。
【0120】
これらのパラメーターの試験は、フローサイトメトリーおよび細胞選別と組み合わせることができる。従って、臨床的に有用なリンパ球集団、特に腫瘍反応性リンパ球集団を増殖されたリンパ球集団から単離することも可能である。単離された臨床的に有用なリンパ球集団は、さらに培養してもよいし、免疫療法に直接使用してもよい。
【0121】
本発明の第二の態様の方法は、臨床的に有用なリンパ球集団を含む、リンパ球集団の形成をもたらす。増殖されたリンパ球集団に含まれる臨床的に有用なリンパ球は、あらゆる種類のリンパ球であり得る。
【0122】
リンパ球には、B細胞、NK細胞およびT細胞が包含される。一実施形態によれば、臨床的に有用なリンパ球はB細胞である。一実施形態によれば、臨床的に有用なリンパ球はNK細胞である。
【0123】
第三の態様によれば、本発明は、T細胞、NK細胞またはB細胞である、第二の態様による方法によって得られる臨床的に有用なリンパ球を提供する。
【0124】
T細胞は、ヘルパーT細胞(T細胞またはCD4-T細胞)、特にTH1細胞、細胞傷害性T細胞(T細胞またはCD8+-T細胞)、特にCD8CXCR3T細胞、メモリーT細胞、特にセントラルメモリーT細胞(TCM細胞)、幹細胞メモリーT細胞(TSCM細胞)または末梢性メモリー細胞(TPM細胞)、γ-δT細胞(γδ-T細胞)、NK-T細胞、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、ダブルネガティブT細胞(CD3CD4CD8T細胞)から選択されることが好ましい。
【0125】
一実施形態によれば、臨床的に有用なリンパ球は、組織、特に腫瘍、または感染組織もしくは炎症組織への進入を促進する分子(例えばCXCR3)を発現するリンパ球である。さらなる実施形態によれば、臨床的に有用なリンパ球は、あらゆる長期メモリーマーカー、特にCD117およびc-kit、ならびに、溶解性免疫細胞応答マーカー、特にCD107aに富んだリンパ球である。説明された通り、増殖されたリンパ球集団は、臨床的に有用なリンパ球を含有するだけでなく、臨床的に有用な抗原を認識しない他のリンパ球も含有する。
【0126】
第二の態様による方法によって得られた培養物中の臨床的に有用な他のリンパ球は、治療効果に関与すると考えられる。第三の態様の一実施形態によれば、本発明は、免疫療法を含む医薬用途に有用なリンパ球の組み合わせの形成を促進する分子およびサイトカインを発現する第二の態様による方法によって得られたリンパ球に関する。医薬用途に有用なリンパ球の組み合わせは、T細胞前駆体、TCM、TSCMおよび/またはTPM細胞を含むことが好ましい。
【0127】
一実施形態によれば、第二の態様による方法によって得られたリンパ球は、臨床的に有用なリンパ球の増殖を促進する分子およびサイトカインを発現する。さらなる実施形態によれば、第二の態様による方法によって得られたリンパ球は、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-17およびこれらの任意の組み合わせから選択されるサイトカインを産生する。一実施形態によれば、リンパ球はCD3+CD4-CD8-T細胞である。
【0128】
第四の態様によれば、本発明は、臨床的に有用なリンパ球集団を含む、本発明の第二の態様による方法によって得られるリンパ球集団を提供する。
【0129】
リンパ球集団は、臨床的に有用なリンパ球集団から成り得る。臨床的に有用なリンパ球集団は、単クローン性(monoclonal)、少クローン性(oligoclonal)または多クローン性(polyclonal)であり得る。
【0130】
ある実施形態では、臨床的に有用なリンパ球集団は、多クローン性であり、複数の抗原または同一抗原の異なるエピトープに反応する。臨床的に有用なリンパ球集団は、様々な抗原に反応することが好ましい。
【0131】
複数の抗原に反応するリンパ球、特にT細胞は、前悪性細胞、腫瘍細胞および病原体の再発のリスクを防ぐことにより、免疫回避のリスクを減少させ得る。
【0132】
第四の態様によるリンパ球集団は、免疫療法に有益な、様々なリンパ球表現型、特にT細胞表現型の組成を有する。
【0133】
リンパ球集団における調節性T細胞の割合は低い。調節性T細胞は、リンパ球集団の治療的機能を抑制することが知られている。第四の態様の一実施形態によれば、リンパ球集団において、T細胞の総数に対するTregの割合は5%未満、好ましくは3%未満である。
【0134】
さらに、リンパ球集団中のT細胞の過半数はTH1表現型を含む。本発明の一実施形態によれば、T細胞の総数に対するTH1細胞の割合は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%である。
【0135】
CXCR3+細胞の割合の増加を示すことができたように、リンパ球集団において、細胞傷害性CD8+T細胞の割合は増加される。本発明の一実施形態によれば、CD8+T細胞の総数に対するCXCR3+細胞の割合は、少なくとも10%、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%である。
【0136】
さらに、リンパ球集団は、例えば4-1BB+表現型によって特定される、最近その抗原と接触したことがある、増加したT細胞数を含み得る。第四の態様の一実施形態によれば、T細胞の総数に対する4-1BB+T細胞の割合は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも2.5%である。一実施形態によれば、T細胞の総数に対するCD107+細胞の割合は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも2.5%である。CD117+T細胞は、長期メモリー集団と関連付けられている。
【0137】
CXCR3+表現型のCD8+T細胞はさらに、組織への浸潤性と関連付けられており、そのため、がんに対する免疫療法に特に有益であり得る。さらに、リンパ球集団は、十分な割合のCD3+CD4-CD8-細胞を含み得る。これらのダブルネガティブT細胞は、補助受容体CD4+またはCD8+依存であることから抗原標的に対し高度に特異的であり、炎症性サイトカインを産生する。従って、これらのダブルネガティブT細胞は細胞傷害性である。
【0138】
一実施形態によれば、リンパ球集団は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%の、T細胞の総数に対するある割合のCD3+CD4-CD8-細胞を含む。さらなる実施形態によれば、リンパ球集団におけるT細胞の総数に対するγδT細胞の割合は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%である。γδT細胞は、ストレスを受けた細胞、形質転換細胞、感染細胞、例えばCMV+標的細胞を認識する作用を有する。γδT細胞は、ウイルスにより形質転換された細胞も交差認識する。
【0139】
一実施形態によれば、リンパ球集団は以下の特徴を含む:
T細胞の総数に対するTregの割合が5%未満、好ましくは3%未満である;
細胞の総数に対するTH1細胞の割合が少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%である、
CD8T細胞の総数に対するCXCR3T細胞の割合が少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%である、
T細胞の総数に対する4-1BB+T細胞の割合が少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも2.5%である、
T細胞の総数に対するCD117+T細胞の割合が少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも2.5%である、
T細胞の総数に対するCD3+CD4-CD8-細胞の割合が少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%である;および
T細胞の総数に対するγδT細胞の割合が少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%である。
【0140】
一実施形態によれば、リンパ球集団において、T細胞の総数に対する前駆T細胞(CD45RA+CCR7+)の割合は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも3%である。セントラルメモリーT細胞は、T細胞治療の成功に関わることが既に示された。
【0141】
セントラルメモリー細胞は、治療に有益ないくつかのサイトカインを産生し、良好な記憶応答をもたらす。しかしながら、セントラルメモリー細胞は組織に十分に浸潤しない。ある実施形態では、T細胞の総数に対する末梢性メモリー細胞(CD45RA-CCR7-)の割合は、少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%である。末梢性メモリー細胞は、高いサイトカイン産生を示し、組織に十分に浸潤する。従って、これらの細胞ががんに対する免疫療法に特に有用である。
【0142】
また、高分化型T細胞(CD45RA+CCR7-)も組織に進入することができる。さらに、これらの細胞は、治療に有用なサイトカインの産生を示す。一実施形態によれば、T細胞の総数に対するエフェクターT細胞(CD45RA+CCR7-)の割合は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%である。T細胞の総数に対する前駆T細胞(CD45RA+CCR7+)の割合は、少なくとも1%であり得る。前記割合は少なくとも2%であることが好ましく、少なくとも3%であることがより好ましい。前駆T細胞は、サイトカイン産生のみを示し、かろうじて組織に進入する。しかし、これらの細胞は生涯の記憶効果を有する復帰T細胞(reverted T-cell)であってもよい。
【0143】
第五の態様によるリンパ球集団は、さらに、評価用抗原刺激無しの場合の標準偏差の少なくとも2倍である値を有する、評価用抗原による刺激後の細胞内サイトカイン産生を特徴とし得る。さらに、評価用抗原による刺激は、評価用抗原刺激無しの場合の標準偏差の少なくとも2倍である、ある値のCD107a誘導をもたらす。
【0144】
これらのパラメーターにより、リンパ球集団および/または臨床的に有用なリンパ球集団は、がん、感染症および自己免疫疾患の治療に有用な免疫療法産物である。
【0145】
第五の態様によれば、本発明は、哺乳動物における腫瘍疾患、感染症または自己免疫疾患を治療または予防するための免疫療法を提供する。前記免疫療法は、本発明の第二の態様による臨床的に有用なリンパ球集団を作製する工程、および、臨床的に有用なリンパ球集団を前記哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、身体試料は前記哺乳動物から得られる。感染症は、あらゆる公知の病原体に関連するあらゆる公知の感染症であり得る。
【0146】
本発明による腫瘍疾患は、あらゆるがん、例えば、急性リンパ球性がんのいずれか、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管、または肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管がん、関節のがん、頸部、胆嚢、または胸膜のがん、鼻、鼻腔、または中耳のがん、外陰部のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、子宮頸がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、腹膜、網、腸間膜のがん、膵がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、皮膚がん、軟部組織がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がん、膀胱がん、ならびに、例えば、食道がん、胃がん、膵がん、胃がん、小腸がん、消化管カルチノイド腫瘍、口腔がん、結腸がん、および肝胆道がん等の消化管がんであり得る。好ましいがんはグリア芽腫および膵がんである。
【0147】
臨床的に有用なリンパ球に対する免疫効果を回避するために、がん患者はT細胞の投与前に「条件付け(conditioned)」されてもよい。条件付け(conditioning)は3つの目的を有する。1つ目は注入されたリンパ球集団のためのより大きな空間を与えることであり、2つ目は有害エフェクターを取り除くことであり、3つ目はT細胞の急速な増殖および生存に有利であり得る増殖因子の産生、すなわち、自己のIL-7およびIL-15の産生を増加させることである。
【0148】
臨床的に有用なリンパ球は、薬剤的に許容できる担体と混合されることで、医薬組成物を形成し得、これも本開示の範囲内である。ある実施形態では、臨床的に有用なリンパ球は、対象に対し自家性であり得、すなわち、臨床的に有用なリンパ球が治療を必要としている対象から得られ、その後、同一対象に投与される。
【0149】
自己細胞の対象への投与は、非自己細胞の投与と比較した場合に、宿主細胞の拒絶反応の低減をもたらし得る。あるいは、宿主細胞は同種細胞であり、すなわち、前記細胞が第一対象から得られ、第一対象とは異なるが同じ種の第二対象に投与される。例えば、臨床的に有用な同種リンパ球は、ヒトドナーに由来し、ドナーと異なるヒトレシピエントに投与され得る。
【0150】
本明細書で開示される方法を実施するため、有効量の本明細書に記載の臨床的に有用なリンパ球、またはその組成物が、治療を必要としている対象(例えば、ヒトがん患者、感染症に罹患している患者、自己免疫疾患に罹患している患者)に、例えば静脈内投与等の適切な経路を介して、投与され得る。前記細胞は注射、カテーテル等によって導入され得る。所望であれば、追加の薬剤(例えば、サイトカイン)も同時導入または連続導入され得る。前記細胞またはその組成物のいずれも、有効量で対象に投与され得る。本明細書で使用される場合、有効量とは、投与後に対象に望ましい治療効果を与える、各々の作用剤(例えば、前記細胞またはその組成物)の量を指す。本明細書に記載の前記細胞または組成物の量が所望の治療効果を達成したかどうかの判定は、当業者には明らかであるだろう。例えば、参考文献2~5を参照されたい。有効量は、当業者によって認識される通り、治療されている特定の状態、状態の重症度、個々の患者パラメーター、例えば、年齢、身体状態、大きさ、性別および体重、治療の期間、併用療法の性質(もしあれば)、具体的な投与経路、ならびに、医療実施者(health practitioner)の知識および専門知識の範囲内である同様の要因に依存して、変動する。いくつかの実施形態において、有効量は、対象における所望の疾患または障害の、症状を緩和、軽減、寛解、改善、低減し、または、進行を遅延させる。
【0151】
「投与」とは、当業者に公知の種々の方法および送達系のいずれかを用いた、本明細書に記載の細胞または医薬組成物を含む組成物の対象への物理的な導入を指す。
【0152】
腫瘍反応性リンパ球集団の投与は、腫瘍付近への局所的な、または腫瘍内への、患者への導入であることが好ましい。あるいは、腫瘍反応性リンパ球集団は血液回路に投与される。他の臨床的に有用なリンパ球は血液回路に加えられることが好ましい。
【0153】
本発明の一実施形態によれば、対象は、キログラム体重当たり、少なくとも約、4×10、4.5×10、5×10、5.5×10、6×10、6.5×10、7×10、7.5×10、8×10、8.5×10、9×10、9.5×10、10×10、12.5×10、15×10、20×10、25×10、30×10、35×10、40×10、45×10、50×10、60×10、70×10、80×10、90×10個の細胞(必要に応じて他の範囲に拡大されたい)を含む、ある用量の臨床的に有用なリンパ球を投与される。
【0154】
第五の態様の臨床的に有用なリンパ球集団による免疫療法は、
哺乳動物におけるがん細胞の退縮をもたらし;
前悪性病変から悪性病変への推移を妨げ;
腫瘍細胞もしくは前悪性細胞の急速な老化をもたらし;
自己抗原陽性細胞の除去をもたらし;
病原体の殺傷、増殖停止もしくは封じ込めをもたらし;
がん幹細胞を妨害し;および/または
がん細胞、もしくは自己抗原を発現する細胞の増殖停止を誘導する。
【0155】
第六の態様によれば、本発明は、医学的処置で使用するための、特に、感染症、自己免疫疾患または腫瘍疾患を治療および予防するための、本発明の第一の態様による組成物を提供する。
【0156】
第六の態様の一実施形態によれば、前記用途は、本発明の第二の態様による方法を用いた臨床的に有用なリンパ球集団の作製を含む。
【0157】
第六の態様による組成物の一実施形態によれば、前記用途は、本発明の第五の態様による免疫療法を含む。上記で論じた通り、サイトカイン混合物の特定のサイトカインは、必ずしも同時に使用される必要はなく、異なる時点で添加されてもよい。
【0158】
第七の態様によれば、本発明は、IL-2、IL-15およびIL-21を含む、医学的処置で使用するための、特に、感染症、自己免疫疾患または腫瘍疾患を治療または予防するための、キットを提供する。キットはさらに、TCRを刺激する成分の少なくとも1つ、特にOKT3、共刺激分子、フィーダー細胞および臨床的に有用な抗原のアミノ酸配列を含むペプチドを含んでいてもよい。キットは上述の成分の全てを含むことが好ましい。
【0159】
本発明はさらに以下の実施例によって定義される。
【実施例
【0160】
実施例1:末梢血単核球を用いたリンパ球増殖プロトコル
A)材料および機器
i)機器
24ウェルプレート(ベクトン・ディッキンソン社(BD)、REF353504)
滅菌メス
滅菌ピンセット
Medimachine(組織ホモジネート装置)(BD、カタログ番号340588)
Medicon、50μm、(BD、カタログ番号340591)
Filcons、200μm(BD、カタログ番号340613)
層流フード(クラス2バイオセイフティフード)
低温フリーザー、-80℃
冷蔵庫
遠心機
【0161】
ii)消耗品
手袋(ラテックス)
実験用白衣
滅菌遠心管、15mL
ピペットのチップ
ピペットエイド
廃棄物入れ
【0162】
iii)試薬
RPMI1640(ギブコ社、REF 61870-044)
Cellgro(セルジェニクス社(CellGenix)、カタログ番号20801-0100)
プールヒトAB血清(イノベイティブリサーチ社(Innoative Research)、IPLA-SerAB-13458)。
ウシ胎児血清(ギブコ社、REF:26140-079)。
抗CD3抗体(OKT3)、(バイオレジェンド社(BioLegend))、カタログ番号317304)。
ヒトIL-2(プロスペック社(Prospec)、カタログ番号CYT-209-b)。
ヒトIL-15(プロスペック社、カタログ番号cyt-230-b)。
ヒトIL-21(プロスペック社、カタログ番号cyt-408-b)
PEST(抗生物質)
アンホテリシン
【0163】
B)手順
アフェレーシスをNY-ESO-1で準備刺激された健常ドナーに対して行った。血液成分の分離後、白血球を含有する産物をその他から隔てた。細胞を、5%プールヒトAB血清、1000U/ml IL-2、10ng/ml IL-15および10ng/ml IL-21を含むCellgro中に懸濁させる。培地はさらに、増殖抗原として10μmol NY-ESO-1ペプチドを含有した。からの細胞の濃度。末梢血由来のリンパ球の増殖は、目的の抗原でパルスされた被照射自己PBMCによる刺激工程を含んでいた。このために、自己PBMCを室温で10mM NY-ESO-1ペプチドで2時間パルスし、次に55Gyで照射した。7日目に、パルスされた被照射自己PBMCをリンパ球培養液に加え、上記で定義された濃度のサイトカインと共に5%ヒトプールAB血清を添加した新鮮な培地中で再懸濁した。10日目に、5%プールヒトAB血清およびサイトカインを添加したCellgroを用いて、細胞を増殖させた。OKT3抗体を、1:10(フィーダー細胞:T細胞の比)の被照射フィーダー細胞(55Gy)、ペプチドおよびサイトカインを加えた上記の同一培地中30ng/mlの濃度で添加した。培養の17~20日目に、細胞は分析のために回収されるか、または、患者へ移植される。
【0164】
実施例2:末梢血単核球を用いたリンパ球増殖プロトコル
実施例2の手順は、ドナーがNY-ESO-1によるワクチン接種を受けた患者であったこと以外、実施例1の手順と同じである。
【0165】
実施例3:末梢血単核球を用いたリンパ球増殖プロトコル
実施例3は、ドナーが、腫瘍により既にTAA NY-ESO-1を発現されていた患者であること以外、実施例1と同じである。
【0166】
実施例4:γδT細胞はサイトカインIL-2、IL-15およびIL-21を用いて増殖されたリンパ球において富化され得る
ゾレドロン酸が5μMolの濃度で細胞培養物に添加されたという差異を有する、実施例1に記載されたプロトコルに従って、増殖が実行される。ゾレドロン酸はTCRγδT細胞の増殖を促進することが知られている。図1に示されるように、この実験設定により、頻度および絶対数の両方におけるTCRγδT細胞の強力な増加がもたらされる。図1には、異なる時点における増殖培養物のフローサイトメトリー画像が示される。従って、増殖の1日目に、3.68%の細胞がTCRγδを保有している。2日目に既に僅かな増加がある。際立ったことに、増殖の7日後には、ほぼ50%のT細胞がγδサブセットである。
【0167】
実施例5:サイトカイン混合物を用いたリンパ球の増殖はダブルネガティブT細胞(CD3+CD4-CD8-)を誘導する。
リンパ球をナルコレプシーを有する患者から得た。増殖抗原としてPRDM2ペプチドを用い、刺激したこと以外は実施例1に記載と同様に、増殖を行った。培養細胞を1日目および18日目にT細胞表現型について試験した。図2は、これらの試料のフローサイトメトリーの結果を示している。結果において、まず、リンパ球が選別され、次いで、CD3+リンパ球が選別される。これらの細胞は次に、CD4およびCD8の存在についてさらに解析される。パネルから、1日目以降、13%のみの細胞がダブルネガティブ状態であることが分かる。過半数の細胞はCD4+である。サイトカイン混合物を用いた18日間の増殖後は、92%の細胞がダブルネガティブ細胞(CD3+CD4-CD8-)T細胞である。
【0168】
さらに、PRDM2ペプチド刺激後の増殖されたリンパ球のIFN-γ産生の誘導が試験される。図3に示されるように、1日目は、0.89%のみの細胞がPRDM2刺激後にIFN-γを産生する。対照的に、18日目の試料は、サイトカインを産生するPRDM2に特異的なT細胞集団の有意な増加を示す。T細胞の大部分がCD3+CD4-CD8-状態であるため、これにより、増殖プロトコルが臨床的に有用なダブルネガティブT細胞の形成をもたらすことが示される。
【0169】
実施例6:選別されたデキストラマー細胞は、ペプチドおよびタンパク質抗原を搭載した自己EBV-LCLに応答してIFN-γを産生する
ナルコレプシーを有する2人の異なる患者から得られた血液を用い、再度PRDM2を増殖ペプチドとして用いて、実施例1による増殖プロトコルを実行した。患者につき2つの異なる設定において、DNAseBまたはPRDM2ペプチドを培地中のサイトカイン混合物に添加した。MHC拘束され、PRDM2またはDNAseBを標的とするCD3+CD4-CD8-T細胞および通常のCD8+T細胞を、フローサイトメトリーで選別し、それらが自然に処理および提示されたエピトープを認識するかどうかを試験した。同一患者由来のT細胞をペプチドまたは組換えタンパク質でパルスし、IFN-γ産生を測定した。実験の結果を表1にまとめる。
【0170】
【表1】
【0171】
測定値はIFN-γ濃度(pg/ml)である。この実験は、特異的抗原と組み合わせたIL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物が、臨床的に有用なT細胞、特に末梢血中の抗原に特異的なT細胞を増殖させることができることを示している。T細胞はいわゆるDN CD3+CD4-CD8-T細胞集団に優先的に属し得、これらのT細胞は高度に機能的に活性であり、IFN-γを産生し、生物学的および医学的に意義のある標的を認識する。
【0172】
実施例7:サイトカイン混合物および腫瘍関連抗原を用いて増殖されたリンパ球の解析
増殖抗原としてNY-ESO-1の代わりにINO80EおよびUCHL3を使用したことを除いて、実施例1に記載と同様に増殖手順を実行した。18日間の増殖の後、細胞を、フローサイトメトリーによって解析されるINO80EまたはUCHL3で刺激した。フローサイトメトリーの結果を図4および図5に示す。図4Aは、側方散乱および前方散乱によって分離された細胞のシグナルを示している。リンパ球は黒色の楕円で示されるようにゲーティングされる。選別されたリンパ球は次にCD3の存在について再度選別される。CD3+細胞を、CD8およびCD4の存在または非存在による分離によって、さらに解析した。この実験では、41%の細胞がCD8+であり、29.6%がCD4+であり、26.5%がダブルネガティブである。ダブルネガティブおよびCD8+を次に、標的抗原INO80EおよびUCHL3による刺激後のIFN-γ産生について試験した。T細胞がMHCクラス1/ペプチド複合体を用いて客観的に測定されることに留意されたい。図5Aに示される結果によれば、CD8+細胞の1.4%がINO80E刺激後にIFN-γを産生し、ダブルネガティブT細胞の0.56%も刺激後にIFN-γを産生する(図5B参照)。図5に示されるように、同様の結果がUCHL3活性化について得られ、CD8+細胞の0.34%がIFN-γを産生する。また、ダブルネガティブ細胞の0.45%がIFN-γを産生する(図5D参照)。
【0173】
INO80Eで刺激された細胞をサイトカイン産生についてさらに解析した。図6A図6Cは再度、CD8+ IFN-γ産生T細胞のゲーティングを示している。CD107a、CD127(IL-7R)およびCD117を産生する細胞の解析が図6D図6Fに示される。灰色のシグナルはCD3+CD8+T細胞集団全体(抗原特異性に関係なく)を表し、黒色のシグナルは抗原特異的であるCD3+CD8+T細胞を表す。解析は、TAA反応性CD8+T細胞が、細胞毒性と関連したマーカーであるCD107a、およびCD127(Il-7R受容体、生存シグナルを仲介)を発現するが、幹細胞様特性を有するT細胞のマーカーであるCD117は発現しないことを示している。
【0174】
実施例8:サイトカイン混合物およびCMVpp65ペプチドを用いたPBMCの増殖
PBMCをグリア芽腫を有する患者から得て、CMVpp65ペプチドを組み合わせた以外は実施例1に従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて増殖させた。この実験は、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物と組み合わせたCMVpp65ペプチド刺激が高親和性抗原特異的T細胞の強力な増殖をもたらすことを示している(四量体解析)。結果を図7A図7Dに示す。APC-CMV bzw. PE-CMVおよび(und)FITC-CMVは、i)同一のMHCクラスI-HLA-0201分子、ii)同一のペプチドを表す。ただし、MHC分子は変異型である。唯一の差異は、MHC分子における変異であり、これにより、異なる親和性を有するT細胞が検出される。CMV四量体は異なる変異がなされている。APC-CMV(中間の親和性、245位における変異;PE-CMV(高親和性)および(und)FITC-CMV(野生型、比較的低親和性)の間。データは、高親和性T細胞受容体が結合することを可能にするのみである変異型四量体が、高親和性T細胞(ならびに低親和性および中間の親和性を有するT細胞)を検出することを示している。高親和性T細胞は、より強力な免疫エフェクター機能を仲介し、腫瘍細胞および/または病原体の除去においてより優れていると考えられる。
【0175】
実施例9:サイトカイン混合物およびNY-ESO-1を用いた末梢血由来リンパ球の増殖後の腫瘍反応性T細胞の頻度解析
PBMCを膵がんを有する患者から得た。実験は実施例1に記載と同様に実行した。図8は、0日目および18日目における増殖の試料のフローサイトメトリー解析を示している。1日目では、NY-ESO-1刺激後のIFN-γ産生はたった1.85であるが、18日目ではこの濃度は9.25へと大幅に増加する(図8Bおよび図8D参照)。従って、NY-ESO-1特異的T細胞の数は増殖中に大幅に増加する。
【0176】
実施例10:がんを有する患者由来の末梢血からのサバイビン反応性T細胞の増殖
PBMCをグリア芽腫を有する患者から得て、公知のTAAサバイビンを共に用いる以外は実施例1に従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて増殖させた。再度、細胞を、1日目および18日間の培養後にフローサイトメトリーを用いて解析した。解析の前に、増殖された細胞をサバイビンで刺激した。細胞をCD4+T細胞、CD8+T細胞およびダブルネガティブT細胞に分類した。これらのグループにおいて、IL-2、IFN-γおよびTNF-αの濃度を測定した。図9AはCD4+細胞についての結果を示しており、図9Bはダブルネガティブについての結果を示しており、図9CはCD8+細胞についての結果を示している。結果は以下の通りにまとめることができる:時点0(T0)においては、サイトカイン産生によって定義される検出可能なT細胞応答は存在しない。対照的に、18日間の増殖後は、サバイビン特異的T細胞の存在を立証する、サバイビンによる刺激に応答した強力なサイトカイン産生が見られる。これに関して、T細胞応答は通常、サバイビンに対しての誘導が非常に困難であることを留意する必要がある。
【0177】
実施例11:増殖されたリンパ球の表現型解析
PBMCをグリア芽腫を有する患者から得た。増殖は実施例1に記載と同様に実行した。0日目および18日目の試料を、フローサイトメトリーを用いてCD45RAおよびCCR7の存在によって解析した。結果を図10Aおよび図10Bに示す。この実験において、細胞を以下のグループに分類した。CD45RAおよびCCR7についての陽性シグナル(グラフの右上部分)は前駆細胞を表す。CCR7+CD45RA-(右下)はセントラルメモリー細胞である。CCR7-を有するCD45RA陽性シグナル(左上領域)はエフェクター細胞であり、両領域における陰性シグナル(左下領域)は末梢性メモリー細胞である。図10Aおよび図10Bの比較において示されるように、セントラルメモリー細胞の数が、サイトカイン混合物を用いた増殖により、強く増加する(すなわち3.72から21.1に)ことは明らかである。末梢性メモリー細胞の数はわずかに増加し、一方、エフェクター細胞の数は強く減少する。前駆細胞の数は65.4から57.4にほんの僅か減少する。従って、本発明によるサイトカイン混合物を用いた増殖はセントラルメモリーT細胞を富化する。
【0178】
実施例12:様々なTAAと共にIL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて増殖した後の、様々なT細胞サブセットの分化解析
膵がんを有する患者由来のPBMCを、実施例1に従って、様々な抗原:メソテリンの細胞表面結合部分であるGPI、サバイビンおよびNY-ESO-1をで処理した。結果を以下の表2にまとめる:
【0179】
【表2】
【0180】
最初の欄で、解析されるT細胞サブセットが示される:CD4+、CD8+、CD4-且つCD8-。2番目の欄で、抗原刺激が定義される。最後の欄で、異なる実験の0日目および18日目における、セントラルメモリー、前駆体、分化型エフェクター細胞および末梢性メモリー細胞の割合が示される。これによると、メソテリン等のいくつかの抗原が、CD45RA+CCR7+によって定義される前駆細胞およびCD45RA-CCR7+によって定義されるセントラルメモリー細胞の増殖を特に駆動する。
【0181】
実施例13:前駆T細胞の富化およびc-kit発現
グリア芽腫を有する患者由来のPBMCを、抗原(EGRvIII、NY-ESO-1またはサバイビン)のペプチドを用いて、実施例1のプロトコルに従って増殖させた。細胞を、フローサイトメトリーにより解析される同じペプチドで刺激した。結果を表3にまとめる。
【0182】
【表3】
【0183】
数字は、時点0(増殖開始)と比較した、18日目の時点における、それぞれの抗原についての、親CD4+、CD8+、またはダブルネガティブ表現型におけるT細胞集団の割合である。抗原およびc-kit(CD117)の強い発現と関連した、CD45RA+CCR7+によって定義される前駆T細胞サブセットの富化が検出される。C-kitは幹細胞様特性を有するT細胞のマーカーである。CD117+T細胞は長期メモリー集団の提供と関連付けられている。刺激されたT細胞において細胞毒性/脱顆粒マーカーCD107aが強力に誘導されることも観察される。
【0184】
実施例14:サイトカイン混合物およびTAAペプチドを用いる増殖プロトコルは4-1BBおよびTIM-3陽性T細胞をもたらす
PBMCを膵がんを有する患者から得て、実施例1に従って増殖させた。再度、TAAペプチドをGPI、NY-ESO-1およびサバイビンから得た。フローサイトメトリーを用いて、様々なマーカーの存在を検査した。マーカーは、4-1BB、CD25、CD127、CTLA-4、LAG3、PD1およびTIM3である。結果を表4にまとめる。
【0185】
【表4】
【0186】
表4において、T0は、増殖前(T0)の、第2欄において定義される個々のサブセットの濃度を表す。Agは、18日間の抗原刺激およびサイトカインで駆動される増殖を表す。4-1BBの値およびTIM3の値は、抗原を経験したT細胞を示す。実験および細胞サブセットのいくつかにおいて、特に4-1BB+T細胞が強く増加されることが分かる。例えばCD4+サブセットにおいて、NY-ESO-1による刺激は、4-1BB+T細胞において200倍の増加をもたらす(0.03から5,96)。
【0187】
実施例15:グリア芽腫を有する患者の末梢血から増殖されたリンパ球における細胞マーカーの詳細な解析
実験を、それぞれEGVRVIII、NY-ESO-1またはサバイビンを用いて、実施例1のプロトコルに従って行った。結果を表5にまとめる。
【0188】
【表5】
【0189】
再度、リンパ球はCD4またはCD8+の存在により分離される。表中の数字は、T0または18日間の増殖後(Ag)における、表中の第二欄に列挙される個々のマーカーについて陽性の細胞の割合を指す。再度、ほとんどの患者において、4-1BB+T細胞の強い誘導が見られる。
【0190】
実施例16:膵がんを有する患者およびグリア芽腫を有する患者から増殖されたリンパ球の解析
PBMCを、膵がんを有する患者およびグリア芽腫を有する患者から得た。実施例1によるプロトコルを用いてリンパ球を増殖させた。リンパ球培養物を種々のマーカーに対するフローサイトメトリーによって解析する。結果を表6に示す。
【0191】
【表6】
【0192】
第一欄には、どのリンパ球亜群が選別されたかが示される。第二欄には、試験された各マーカーが列挙される。マーカーが列挙されていない場合、この行は、細胞の総数に対する、選別マーカーCD3+およびCD4+、CD8+またはダブルネガティブを有する細胞の総数の割合を表す。再度、T0は増殖前の培養物を表し、THは18日目における回収の時点を表す。数字は、それぞれ第2欄または第1欄における選択されたマーカーを有する細胞の割合を表す。増殖後のCD4+細胞の過半数がTH1陽性であることに留意する必要がある。膵がんでは、数字は、22.2%から92.1%のCD4細胞へと増加する。グリア芽腫では、結果は少しだけはっきりせず、9.64%から68.1%のCD4細胞である。同様に、さらに、増殖後のCD8+T細胞においてCXCR3+の強い発現があり、膵臓では96.8%、グリア芽腫では85.5%である。従って、CD8+細胞のほぼ全てがCXCR3+である。さらに、高分化型T細胞から前駆体またはセントラルメモリーT細胞サブセットへの変化が留意される。
【0193】
図11は、膵がん患者由来の試料中のTH17、TH1、TH1およびTH2を測定するための実験のフローサイトメトリーのグラフを示している。まず、細胞はCCR6に対しゲーティングされ、次にそれぞれCCR3およびCCR4に対しゲーティングされる。
【0194】
実施例17:ある特定の抗原による刺激の非存在下における、これらの抗原に特異的なメモリーT細胞の増殖
膵がんを有する患者由来のPBMCを、腫瘍関連抗原NY-ESO-1を用いて、実施例1に従って、増殖させた。得られた細胞を以下の腫瘍関連抗原で4時間刺激した:CMV、EBNA-3a、INO80E、メソテリン、NY-ESO-1、サバイビンおよび(und)UCHL3。フローサイトメトリーを用いて、サイトカイン産生T細胞の割合を測定した。様々なT細胞サブセット(CD8+、CD4+およびダブルネガティブ)についての数字が表7に示される。以下のサイトカインを試験した:IFN-γ、IL-2およびTNF。興味深いことに、NY-ESO-1による刺激だけでなく、増殖プロセスで使用されなかった他の抗原による刺激も、サイトカイン産生T細胞、従って腫瘍反応性T細胞をもたらした。また、ウイルス標的の抗原(CMVおよびEBNA-3a)による刺激も、これらの標的に特異的なT細胞の存在を示す、サイトカインを産生するT細胞をもたらした。
【0195】
【表7】
【0196】
実施例18:HPV L1特異的増殖の後の細胞毒性
この実施例では、重篤なHPV疾患(HPV33およびHPV56)を患う患者から末梢血を得た。HPV L1ペプチドならびにIL-2、IL-15およびIL-21を含むサイトカイン混合物を用いて刺激を行った。18日間の増殖の後、細胞をL1ペプチドで刺激し、フローサイトメトリーで測定した。この結果を図12に示す。図12D図12Fは、それぞれリンパ球CD3+およびCD8+に対するゲーティングを示している。図12A図12Bおよび図12Cにおいて、長方形は、抗原特異的な脱顆粒/細胞毒性マーカーであるサイトカインCD107aを発現する細胞を示す領域を示している。図12AはL1ペプチドを用いて得られた結果であり、図12Bはポジティブコントロールを用いて得られた結果であり、図12Cはネガティブコントロールとして培地のみを用いて得られた結果である。これから、CD107aを産生する細胞の割合が0.77から2.23に増加している。
【0197】
実施例19:サイトカイン混合物および腫瘍抗原を用いて増殖されたT細胞は自己腫瘍細胞を認識する
グリア芽腫を有する患者由来のPBMCを、NY-ESO-1ペプチドおよびCMVpp65ペプチドで刺激した。グリア芽腫を有する患者由来の末梢血を、2つの設定において刺激性ペプチドがNY-ESO-1またはCMVpp65であった実施例4のプロトコルに従って処理した。再度、18日後に、刺激用の様々な抗原または自己腫瘍細胞を用いてサイトカイン産生アッセイを行った。ペプチドおよびサイトカイン混合物を用いたT細胞の抗原特異的増殖が、刺激性標的を対象としたT細胞の増殖をもたらし、さらにまた、患者自身の自己腫瘍細胞を対象としたT細胞の増殖ももたらすことが分かった。この反応性は、NY-ESO-1およびサイトカインを用いたT細胞の増殖前には存在しなかった。データを表8にまとめる。数字は親T細胞集団内に存在するT細胞の割合を表す。
【0198】
【表8】
【0199】
実施例20:2つの異なるサイトカイン混合物およびTAA刺激を用いたリンパ球増殖の比較
膵がんを有する患者由来の末梢血を得て、実施例4のプロトコルに従って処理した。様々な実験設定において、NY-ESO-1またはサバイビンをサイトカイン混合物と共に使用した。さらに、サイトカインの添加無しで、またはIL-7およびIL-2の組み合わせを用いて、同じ実験を行った。18日間の増殖の後、細胞を、NY-ESO-1またはサバイビンペプチド混合物による刺激後のそれらのIFN-γ産生について試験した。結果を図13に示す。図13は、他のサイトカイン組成物またはサイトカイン無しと比較した、IL-2、IL15およびIL-21を用いた増殖後の、IFN-γ産生の強い増加、およびそれによる、抗原特異的リンパ球の濃度の強い増加を示している。
【0200】
実施例21:2つの異なるサイトカイン混合物およびTAA刺激を用いたリンパ球増殖の比較
実施例20による実験を、ウイルス抗原EBNA-1、EBNA-3aおよびCMVpp65を用いて繰り返した。結果を図14にまとめる。図14は、他のサイトカイン組成物またはサイトカイン無しと比較した、IL-2、IL15およびIL-21を用いた増殖後の、IFN-γ産生の強い増加、およびそれによる、抗原特異的リンパ球の濃度の強い増加を示している。
【0201】
実施例22:サイトカイン混合物を用いたTreg増殖の解析
PBMC由来のT細胞をIL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物の存在下で培養し、Treg(調節性T細胞)を、フローサイトメトリーを用いてT細胞の増殖の前および後に同定した。結果を図15に示す。図15では、左から右に:T細胞がCD4+T細胞に対するゲーティング、次いで、活性化T細胞上のIL-2受容体の高発現を示すCD25highに対するゲーティングが示される。次に、前記細胞を、Il-2R(高CD125)細胞に対しゲーティングされ、IL-7受容体(CD127)およびFoxp3(細胞内)の発現について試験した。Treg細胞はCD4+CD25high、Foxp3+およびCD127ネガティブと定義される。Tregの数は最初低く(CD4+T細胞中0.07%)、T細胞増殖後はさらに低くなった(0.01%)。データは、IL-2が強いTreg増殖を駆動すると知られていることから、サイトカイン混合物がT細胞増殖においてより優れていることを示しており、また、Treg増殖を阻止する一方で抗腫瘍T細胞を増殖させる、IL-2/IL-15/IL-21の組み合わせの相乗効果も明示している。
【0202】
実施例23:増殖後のVBファミリー分布の解析
T細胞を、NY-ESO-1抗原と共にサイトカイン混合物IL-2/IL-15/IL-21を用いて21日間増殖させた。フローサイトメトリー解析を、増殖前(T0=時点0)および増殖後(TH=回収時(Time of harvest))に実行した。サイトカイン単独で刺激されたT細胞は対照として働く。結果を表9にまとめる。GRexフラスコ内で増殖されたCD8+T細胞におけるVB7.2ファミリーの強い優先的な増殖、ならびにCD8+T細胞(これもGRexフラスコ内で増殖)におけるVB13.2ファミリーの強い優先的な増殖に注目されたい。データは、抗原(NY-ESO-1)の存在が個々のTCR VBファミリーの優先的な増殖を駆動することを示しており、また、抗原(サイトカインのみによるものではない)によって駆動される反応の多様性も示している。集束した、なお多様なTCR VBファミリーが、多様な抗標的T細胞応答を示す。
【0203】
【表9】
【0204】
実施例24:CD8+細胞におけるPD1マーカー
Tリンパ球をIL-2/IL-15/IL-21およびNY-ESO-1ペプチド混合物を用いて増殖させた。上段パネル:前、下段パネル:サイトカイン/TAA増殖(=T細胞をIL-2/IL-15/IL-21の存在下で培養した)の後。フローサイトメトリー解析をT細胞刺激の前および後に行った。左から右に:i)リンパ球に対するゲーティング、ii)CD3+T細胞に対するゲーティング、iii)CD4/CD8に対するゲーティング。上段右:CD8+活性化T細胞(37%のT細胞)上のPD1発現。サイトカイン/TAAで増殖されたT細胞は、CD4CD8+T細胞上のPD1発現の減少を示す。データは、サイトカイン/ペプチドで増殖されたT細胞が、CD8+T細胞におけるPD1+T細胞の頻度の減少を示すことを示しており、これは、これらの増殖されたT細胞が、より長い寿命を示し、それ故腫瘍細胞に対する優れた有効性を示し得ることを意味する。
【0205】
実施例25:複数の抗原
HPV33由来のL1タンパク質由来の12の個々のペプチドからなるペプチド混合物を、サイトカイン混合物と共に使用して、HPV+病変を有する患者由来のT細胞を刺激した。21日目に、T細胞を、各々のペプチドを標的とした細胞毒性について試験した。ここでは、自己EBVで形質転換されたB細胞を採取し、ペプチド1~12でパルスし、次いで、標準的なCr51アッセイを行った。このアッセイは特定の標的を殺傷するT細胞の能力を測定する。結果を図16に示す。
【0206】
ドナーA由来のT細胞はペプチド11および12を強く認識する。dB由来のT細胞は、ペプチド11に対する強い反応性を有して、ペプチド7~12を強く認識した。これらのデータは、IL-2/IL-15/IL-21サイトカイン混合物およびペプチドを用いたT細胞の増殖によって、i)細胞傷害性T細胞の発生、および、ii)T細胞応答が多様であり、異なる一連の個々のペプチド種にフォーカスされること、がもたらされることを示している。これは、ペプチド/サイトカイン混合物で刺激されたT細胞が、優先的に細胞傷害性であり得、また、いくつかのエピトープを標的にし得ることを意味しており、これによって、前記T細胞は、異なる一連のペプチド種を表面上に提示する腫瘍細胞またはウイルス感染細胞の認識においてより多様となる。
【0207】
実施例26:PBMCのサイトカインおよびNY-ESO-1で駆動される増殖の前および後のCD117発現
PBMCを腫瘍関連抗原NY-ESO-1の存在下でIL-2/IL-15/IL-21混合物を用いて増殖させた。細胞を増殖前(図18)および増殖後(図19)にフローサイトメトリーで解析した。まず、CD3+T細胞がゲーティングされ、次に、CD3+T細胞がCD4+およびCD8+T細胞に対しゲーティングされる。CD117+細胞を次に、CD8+T細胞(上段)およびCD4+T細胞(下段パネル、左)に対して検出する。中段パネル:前駆物質T細胞を表す、高い集団密度のCD45RA+CCR7+T細胞を有するCD8+およびCD4+T細胞におけるCD45RA/CCR7発現(中段パネル)。右:CD117+T細胞(青色標識)がCD8+T細胞におけるエフェクターT細胞に存在しており;CD117+T細胞はCD4+T細胞サブセットにおける様々なT細胞集団において見つけることができる。データは、T細胞の「幹性(stem-ness)」の存在のマーカーであるCD117発現が様々なT細胞サブセットに存在していることを示している。CD117+T細胞は長期のT細胞記憶の供給源を提供するのに有益である。
【0208】
まず、CD3+T細胞がゲーティングされ、次に、CD3+T細胞がCD4+およびCD8+T細胞に対しゲーティングされる。CD8+T細胞(上段)およびCD4+T細胞(下段パネル、左)における、非常に強い発現および高頻度のCD117+細胞。中段パネル:前駆T細胞を表す、CD45RA+CCR7+T細胞において高い集団密度を有するCD8+およびCD4+T細胞におけるCD45RA/CCR7発現(中段パネル)。右:CD117+T細胞(青色標識)が、CD45RA+CCR7-T細胞(エフェクター)における末梢性エフェクターT細胞に存在している。CD84T細胞;CD117+T細胞がT細胞前駆体CD45RA+CCR7+集団に見られる。データは、T細胞の「幹性」の存在のマーカーであるCD117発現が様々なT細胞サブセットに存在していることを示している。CD117+T細胞は長期のT細胞記憶の供給源を提供するのに有益である。また、サイトカイン混合物が長期の免疫細胞記憶を引き起こすCD117+T細胞を強く増殖させ、また、CD117+T細胞が前駆T細胞に存在することで、長期の腫瘍免疫応答が確実となることが示される。
【0209】
実施例27:グリア芽腫からのTIL培養物の増殖
この実施例は、機能試験および免疫療法のための膵がん由来のTILを培養するための手順を説明する。
【0210】
材料、機器および消耗品については、実施例1を参照されたい。
【0211】
患者から得られた腫瘍組織を滅菌容器に入れた。前記組織を、滅菌メスを用いて1~2mmの小片に切り分けた。組織片を24ウェルプレートのウェルに1ウェル当たり1小片で入れた。10%ヒトAB血清を含有するCellgroを用いて細胞培地を調製した。この培地の中に、IL-2、IL-15およびIL-21を、IL-2については1000u/ml、IL-15およびIL-21のそれぞれについては10ng/mlの最終濃度となるように、添加する。さらに、PESTおよびアンホテリシンを培地に添加した。1mlの培地を各ウェルに添加し、細胞培養物を37℃で7日間インキュベートした。並行して、健常ドナー由来のPBMCを10%ヒトAB血清を含有するCellgro中で培養した。PBMCの濃度を測定し、10/mlの濃度に調整した。次に、PBMCを55Gyで18分間照射した。照射後、OKT3を10ng/mlの最終濃度となるように添加した。この培養物をOKT3含有フィーダー細胞と称する。TIL培養の10日目に、100μlのOKT3含有フィーダー細胞培養物を24ウェルプレートの各ウェルに添加する。従って、各ウェル内の培養物は、最終濃度10ng/mlのOKT3および総数10個のフィーダー細胞となる。TIL:フィーダー細胞の比は約1:10である。
【0212】
実施例28:膵がんからのTIL培養物の増殖
患者から得られた腫瘍組織を滅菌容器に入れた。前記組織を、滅菌メスを用いて1~2mmの小片に切り分けた。組織片を24ウェルプレートのウェルに1ウェル当たり1小片で入れた。10%ヒトAB血清を含有するCellgroを用いて細胞培地を調製した。この培地の中に、IL-2、IL-15およびIL-21を、IL-2については1000u/ml、IL-15およびIL-21のそれぞれについては10ng/mlの最終濃度となるように、添加する。さらに、PESTおよびアンホテリシンを培地に添加した。1mlの培地を各ウェルに添加し、細胞培養物を37℃で4日間インキュベートした。並行して、健常ドナー由来のPBMCを10%ヒトAB血清を含有するCellgro中で培養した。PBMCの濃度を測定し、10/mlの濃度に調整した。次に、PBMCを55Gyで18分間照射した。照射後、OKT3を10ng/mlの最終濃度となるように添加した。この培養物をOKT3含有フィーダー細胞と称する。TIL培養の10日目に、100μlのOKT3含有フィーダー細胞培養物を24ウェルプレートの各ウェルに添加する。従って、各ウェル内の培養物は、最終濃度10ng/mlのOKT3および総数10個のフィーダー細胞を含有する。TIL:フィーダー細胞の比は約1:10である。
【0213】
実施例29:組織から癌化細胞株を作製するための手順
膵臓腫瘍組織を術後に直接得て、滅菌容器に入れた。腫瘍組織を、滅菌メスを用いて1~2mmの小片に切り分けた。各組織片を24ウェルプレートのウェルに移す。10%ウシ胎児血清を含有する1mlのRPMI1640培地を各ウェルに添加する。7日目および14日目に培地を交換した。これは培地が除去され、同じ種類の新鮮な培地に置き換えられたことを意味する。腫瘍細胞が超高密度に達した際、培養物を6ウェルプレートに移した。
【0214】
実施例30:フィーダー細胞添加の正しい時点の決定
リンパ球濃度が非常に低いときにフィーダー細胞が添加された場合、フィーダー細胞の添加によって腫瘍浸潤リンパ球の良好な増殖がもたらされないことが分かった。図20Aは、1週間のインキュベーションのリンパ球培養物を示している。いくつかのリンパ球は検出可能であるが、リンパ球濃度は増殖基準線未満である。図20Bおよび図20Cは、2週間のインキュベーション後の同じリンパ球培養物を示している。ここで、検出することができるリンパ球の数が、この増殖基準線を越えて増加した。フィーダー細胞はこの工程で添加され得る。図1D、EおよびEは、フィーダー細胞の添加から4日後、1週間後および2週間後の培養物を示している。前記図では、図Dの画像から図Fの画像へと、リンパ球の数が大幅に増加していることが見て取れる。図Fでは、リンパ球が集まって培養物中の腫瘍細胞を攻撃していることが見て取れる。
【0215】
実施例31:グリア芽腫から得られたTILから増殖されたリンパ球の表現型および活性化/枯渇マーカー発現の解析
腫瘍組織を16人のグリア芽腫患者から得た。TILを、実施例1のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、前記組織から増殖させた。
【0216】
A)
増殖された細胞を、CD3、CD4およびCD8を標的とする抗体を用いて、それらのCD4/CD8表現型についてフローサイトメトリー分析で解析した。
【0217】
結果を表10にまとめる。
【0218】
【表10】
【0219】
データは、各々の腫瘍から増殖できたTILが、大部分、CD3+T細胞を含有していることを示している。患者に依り、CD4+、CD8+およびDN T細胞のいずれか1つが過半数を占める。しかし、CD4+が最も頻繁に過半数を占めていることが分かった。表はまた、サイトカイン混合物が様々なCNS腫瘍組織構造由来のT細胞を増殖可能であることも示している(第4欄「診断」を参照)。
【0220】
B)
増殖された細胞を、それらの特定の表現型(前駆T細胞(CD45RA+CCR7+)、セントラルメモリーT細胞(CD45RA-CCR7+)、末梢性メモリーT細胞(CD45RA-CCR7-)、または分化型エフェクターT細胞(CD45RA+CCR7-))、ならびに、基本表現型CD8+、CD4+およびダブルネガティブT細胞における活性化/枯渇マーカーの発現について、フローサイトメトリー分析で解析した。TIL集団のフローサイトメトリー分析に使用した抗体を表11にまとめる。
【0221】
【表11】
【0222】
結果を図22Aおよび図22Bにまとめる。CD8+、CD4+またはDN T細胞の過半数が、効果的な抗がん反応および長期免疫記憶に不可欠であることが示されているセントラルメモリーT細胞サブセットに存在している。結果は、DN-T細胞の平均して強い増殖を示している。このサブセットは、高度に活性化されており、親和性T細胞受容体を有する。また、長期の免疫監視機構に有利な長期メモリーT細胞応答を与えるCD45RA+CCR7+前駆T細胞サブセットの強い増殖が観察される。
【0223】
報告された、T細胞における4-1BB、LAG-3またはTIM-3の発現(図3B参照)は、抗原/腫瘍特異的なT細胞を示している。前記実施例は、サイトカイン混合物が、有益な臨床応答と関連付けられている、メモリー(セントラルメモリー)T細胞サブセットに主に存在するTILを増殖させることを示しており、また、抗原特異性と関連したマーカーを有するTILが増殖されることも示している。
【0224】
実施例32:膵がんから得られたTILから増殖されたリンパ球の表現型および活性化/枯渇マーカー発現の解析
腫瘍組織を17人の膵がん患者から得た。表12は、患者の年齢、性別、試料および組織診断の種類をまとめている。
【0225】
【表12】
【0226】
TILを、実施例28のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、前記組織から増殖させた。CD3、CD4およびCD8を標的とする抗体を用いる、CD4/CD8表現型。
【0227】
A)
増殖された細胞を、CD3、CD4およびCD8を標的とする抗体を用いて、それらのCD4/CD8表現型についてフローサイトメトリー分析で解析した。結果を表13にまとめる。
【0228】
【表13】
【0229】
増殖された細胞を、基本表現型CD8+およびCD4+におけるそれらの特定の表現型(前駆T細胞(CD45RA+CCR7+)、セントラルメモリーT細胞(CD45RA-CCR7+)、末梢性メモリーT細胞(CD45RA-CCR7-)、または分化型エフェクターT細胞(CD45RA+CCR7-))について、フローサイトメトリー分析で解析した。結果を図23および図24にまとめる。
【0230】
CD8+、CD4+またはDN T細胞の過半数が、効果的な抗がん反応および長期免疫記憶に不可欠であることが示されているセントラルメモリーT細胞サブセットに存在している。結果は、DN-T細胞の平均して強い増殖を示している(データ未記載)。このサブセットは、高度に活性化されており、親和性T細胞受容体を有する。また、長期の免疫監視機構に有利な長期メモリーT細胞応答を与えるCD45RA+CCR7+前駆T細胞サブセットの強い増殖が観察される。
【0231】
報告された、T細胞における4-1BB、LAG-3またはTIM-3の発現(図24参照)は、抗原/腫瘍特異的なT細胞を示している。前記実施例は、サイトカイン混合物が、有益な臨床応答と関連付けられている、メモリー(セントラルメモリー)T細胞サブセットに主に存在するTILを増殖させることを示しており、また、抗原特異性と関連したマーカーを有するTILが増殖されることも示している。
【0232】
実施例33:膵がんを有する患者の腫瘍組織から増殖されたT細胞のTCR長の解析
腫瘍組織を17人の膵がん患者から得た。TILを、実施例28のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、前記組織から増殖させた。PCRに基づくアプローチを用いて、TCR長を測定した。TCRファミリーの「通常の」イメージは、T細胞受容体の長さのガウス分布である。単一のピークは個々のTCRファミリーにおける単クローン性を示唆している。図25に示されるデータは、自己腫瘍標的に対し焦点を置かれていることを示唆して、TIL組成物が単クローン性または多クローン性であることを示しており、サイトカイン混合物は、集束したTCRレパートリーの増殖を助ける。
【0233】
実施例34:グリア芽腫を有する患者から得られたTILから増殖されたリンパ球におけるサイトカイン産生の解析
腫瘍組織をグリア芽腫患者から得た。TILを、実施例1のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、腫瘍組織から増殖させた。増殖されたリンパ球を腫瘍関連抗原、すなわちEGRvrIII、NY-ESO-1またはサバイビンに由来するペプチドで刺激し、サイトカインIFNγおよびTNFαのうちのいずれか1つを産生する細胞の割合を測定した。
【0234】
結果を図26Bに示す。比較のために、最大刺激がポジティブコントロールとしてPMA/イオノマイシン(inonomycin)を用いて試験され、バックグラウンドシグナルが培地のみを用いて測定される(ネガティブコントロール)。結果は、増殖されたT細胞がこれらの通常共有される腫瘍抗原を認識することを示している。従って、サイトカイン混合物は、臨床的に意義があり、臨床応答と関連付けられている、腫瘍抗原に反応性の、グリア芽腫由来のT細胞を増殖させる。
【0235】
実施例35:膵がんを有する患者から得られたTILから増殖されたリンパ球におけるサイトカイン産生の解析
腫瘍組織を膵がん患者から得た。
【0236】
TILを、実施例27のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、腫瘍組織から増殖させた。増殖されたリンパ球を腫瘍関連抗原、すなわちEGRvrIII、NY-ESO-1またはサバイビンに由来するペプチドで刺激し、サイトカインIFNγおよびTNFαのうちのいずれか1つを産生する細胞の割合を測定した。結果を図27Aに示す。図27Bは、NY-ESO-1についてのフローサイトメトリー解析の画像を示している。結果により、増殖されたT細胞がこれらの通常共有される腫瘍抗原を認識することが確認される。従って、サイトカイン混合物は、臨床的に意義があり、臨床応答と関連付けられている、腫瘍抗原に反応性の、膵臓腫瘍由来のT細胞を増殖させる。
【0237】
実施例36:グリア芽腫を有する患者から得られたTILから増殖されたリンパ球におけるサイトカイン産生および自己刺激の解析
腫瘍組織をグリア芽腫患者から得た。TILを、実施例27のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、腫瘍組織から増殖させた。増殖されたリンパ球を自己腫瘍細胞で刺激した。結果を図28Aに示す。図28Bはフローサイトメトリー解析の画像を示している。結果により、増殖されたT細胞が自己腫瘍細胞を認識することが確認される。従って、サイトカイン混合物は、自己腫瘍細胞、従って患者自身の変異に反応性の、グリア芽腫由来のT細胞を増殖させる。
【0238】
実施例37:膵がんにおけるTCRの使用と自己腫瘍細胞の認識の関連付け
腫瘍組織をグリア芽腫患者から得た。TILを、実施例27のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、腫瘍組織から増殖させた。増殖されたリンパ球を自己腫瘍細胞で刺激した。TILをまずCD3+T細胞に対しゲーティングし、次にCD4+およびCD8+T細胞に対しゲーティングした。個々のVβファミリーの頻度を、TCR VB抗体パネルを用いて検査した。このTCRパネルはヒトTCRレパートリーの約75%を網羅しており、そのため、全てのTCR Vβファミリーが十分に捕捉されない可能性がある。TCR Vβファミリー分布は、10%を超え得るTCR VB2を除いて、各ファミリーにおいて約2~6%である。表14は、グリア芽腫を有する患者由来のTILにおけるVβ-2ファミリーの優先的な増殖を示している。
【0239】
【表14】
【0240】
表14のデータは、個々のTCR VBがTILにおいて優先的に増殖されることを示している。クローン性は配列決定によってのみ検討することができるといことに留意されたい。サイトカイン混合物が個々の患者における様々なTCR Vβファミリーを増殖することに留意されたい。これは、膵がんを有する患者においてだけでなく、グリア芽腫を有する患者においても当てはまる。また、いくつかのTILが単一または2つのVBファミリーから構成され、抗原駆動性T細胞増殖プロセスを示唆する、高度に集束したTCR VB増殖を示すことも留意されたい。優先的に増殖されることが示されたいくつかのTILは、単クローン性であることが示された。従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物は、患者自身の腫瘍細胞を標的とする、集束したT細胞応答を拡張させる。
【0241】
実施例38:膵がんにおけるTCRの使用と自己腫瘍細胞の認識の関連付け
腫瘍組織を膵がん患者から得た。TILを、実施例28のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、腫瘍組織から増殖させた。
【0242】
TCR Vβ抗体と組み合わせてCD3、CD4およびCD8を用いて、フローサイトメトリーによって、細胞を染色した。前記パネルはTCR VBレパートリー全体の75%までを網羅している。ある特定のT細胞ファミリーがこのパネルに網羅されていない25%に属する場合、前記T細胞ファミリーはこのパネルによって捕捉されない。結果を表15にまとめる。
【0243】
【表15-1】

【表15-2】

【表15-3】
【0244】
自己腫瘍細胞(単一細胞懸濁液)へのTILの暴露の3日後に、IFNγ産生が測定される。高レベルのIFNγ産生は自己腫瘍細胞を用いた後にのみ見られる(図35参照)。IFNγ産生はW6/32に対する抗体(CD8+TILを阻止)によって完全に阻止される。対照として、CD4+TILを阻止する抗体L243は反応性を阻止することができず、増殖された細胞リンパ球における反応性T細胞は全てCD8+である。データは、サイトカイン混合物が、非常に集束した、膵がんを有する患者由来の自己腫瘍細胞を特異的に認識する、TILを増殖させることを示している。膵がんを有する患者由来のTILにおける単クローン性TCRファミリー:IL-2、IL-15およびIl-21は、個々のTCR VBファミリーを優先的に増殖させ、T細胞ファミリーのそのような優先的な増殖は、抗原特異性および集束した抗腫瘍反応性と関連する。これらの優先的に増殖されたVBファミリーのいくつかは、単一のTCR VB鎖によって定義される、単クローン性T細胞を含有する。このような単クローン性TCR増殖は、集束した抗がん反応を示す。機能的反応解析は、単クローン的に増殖されたTILが自己腫瘍細胞を認識することを示した。
【0245】
実施例39:自己腫瘍細胞に対するグリア芽腫を有する患者由来の増殖されたTILの細胞溶解反応の解析
腫瘍組織をグリア芽腫患者から得た。TILを、実施例28のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、腫瘍組織から増殖させた。自己腫瘍細胞を実施例29のプロトコルに従って作製した。自己腫瘍細胞を放射能標識し、増殖されたTILと一緒に4時間培養する。腫瘍細胞の殺傷によって、後に測定される放射能の放出が引き起こされる。前記方法の原理を図21に示す。腫瘍細胞に対するTILの比に依存した細胞毒性効果が確認される結果が図31に示される。データは、サイトカイン混合物が自己腫瘍細胞に対して強い細胞毒性を有するTILを増殖させることを示している。
【0246】
あるいは、増殖された単クローン性T細胞および/または優先的に増殖されたTILを、同じ試験を用いて、それらの細胞毒性について試験した。結果を図32に示す。表16は、これらの免疫応答が自己腫瘍細胞を特異的に標的としていることを示している。データは、サイトカイン混合物が自己腫瘍に対する、細胞傷害反応を含む特異的反応性を有するTILを増殖させることを示している。
【0247】
B)
並行した実験において、自己腫瘍細胞を、IL-15、IL-21およびIL-2のサイトカイン混合物を用いてグリア芽腫から増殖されたTILと一緒に、3日間インキュベートした。インキュベーションの後、IFNγ産生(pg/mL)をELISAで測定した。CD4+またはCD8+細胞が腫瘍反応に関与しているかどうかを確認するために、CD8+T細胞に影響を与えるMHCクラスI抗原反応(W6/32)を阻止する抗体、または、CD4+T細胞に影響を与えるHLA-DR(MHCクラスII反応)を阻止する抗体を使用した。結果を表16にまとめる。
【0248】
【表16】
【0249】
IFNγ産生の欠如を示したTILは、標準的なCR51放出アッセイで測定された場合、強い細胞傷害性を有した。データは、TILが特異的に自己腫瘍細胞に対してIFNγを産生することを示している。
【0250】
実施例40:自己腫瘍細胞に対する膵がんを有する患者由来の増殖されたTILの細胞溶解反応の解析
腫瘍組織を膵がん患者から得た。TILを、実施例28のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、腫瘍組織から増殖させた。自己腫瘍細胞を実施例29のプロトコルに従って作製した。自己腫瘍細胞を放射能標識し、増殖されたTILと一緒に4時間培養する。腫瘍細胞の殺傷によって、後に測定される放射能の放出が引き起こされる。前記方法の原理を図7に示す。比較のために、および対照として、自己(メラノーマ)TIL系を使用した。細胞毒性効果が確認される結果を図33に示す。データは、サイトカイン混合物が膵がんを有する患者由来のTILも増殖させることを示している。これらのTILは、TCR使用に基づいて、高度にフォーカスされており、自己腫瘍に対して細胞傷害反応を含む特異的な反応性を示す。
【0251】
実施例41:CXCR3発現CD4+細胞分布の解析
腫瘍組織をグリア芽腫患者から得た。TILを、実施例27のプロトコルに従って、IL-2、IL-15およびIL-21のサイトカイン混合物を用いて、腫瘍組織から増殖させた。T細胞の機能およびホーミングを定義したマーカー発現について、細胞をフローサイトメトリーで解析した。
【0252】
解析の結果を表17にまとめる。Th1細胞およびCXCR3は増殖前は10%未満であった。データは、サイトカイン混合物がCD8+細胞がCXCR3+CD8+T細胞から本質的に成るT細胞産物をもたらすことを示している。この表現型は腫瘍組織に進入することができる。CD4+T細胞はほぼ全てがTH1特性を有する。TH1特性(IFNγおよびTNFαの産生)は抗腫瘍反応の向上をもたらす。また、強い自己免疫性反応および腫瘍反応と関連しており、また、腫瘍組織へのより良好な侵入を可能にするマーカーCXCR3を発現するT細胞サブセットである、CD3+CD4-CD8-(DN)T細胞も存在する。
【0253】
【表17】
【0254】
実施例42:膵がんを有する患者由来のTILによる通常共有される腫瘍抗原の認識
15の重複ペプチドとしてのTAAをTILと一緒に3日間インキュベートし、IFNγ産生(pg/mL)をELISAで測定した。さらに、抗原反応を、CD8+T細胞に影響を与えるMHCクラスI抗原反応(W6/32)を阻止する抗体、または、CD4+T細胞に影響を与えるHLA-DR(MHCクラスII反応、L243)を阻止する抗体によって阻止した。各試料におけるIFNγ産生(pg/mL)を表18に示す。抗MHCクラスI(CD8+T細胞を阻止)または抗MHCクラスII(CD4+を阻止)T細胞による阻止によって示される、抗原特異的であるTILにおけるIFNγ産生。結果から、TILが、膵がんを有する患者由来の、通常共有されるがん抗原、特に、NY-ESO-1またはメソテリンに対して、IFNγを産生することが確認される。
【0255】
【表18】
【0256】
本明細書に記載される本発明の多くの変更形態および他の実施形態が、上記の明細書および関連図面において提供される教示の利益を有する、本発明が属する分野の当業者に想起される。従って、本発明が開示された特定の実施形態に限定されないこと、ならびに、変更形態および他の実施形態が添付の特許請求の範囲の範囲に包含されることが意図されることを理解されたい。特定の用語が本明細書で使用されているが、それらの用語は一般的且つ説明的な意味においてのみ使用され、限定を目的としない。
【0257】
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